説明

薬理学的プロファイリングのための蛋白−蛋白相互作用

【課題】新薬開発プロセスの初期段階において薬物の安全性及び有効性を改善するために、化合物の薬理学的プロファイリングを行なう方法を提供する。
【解決手段】化合物は、試験化合物、薬物リード、既知の薬物又は毒物でもよい。上記化合物はアッセイのパネルに対してプロファイリングされる。好ましい態様には、蛋白−蛋白相互作用についてのハイコンテントアッセイが含まれる。構成物及び方法は薬物の有効性、安全性、及び毒性の基礎となる経路を同定し;望ましくない特性又は有毒な特性を有する新規化合物のふるい落としを行うために使用することができる。さらに、治療薬の新しい適応を同定し、化合物のライブラリーをスクリーニングし、リードの最適化を行ない、無傷細胞の状況における構造活性相関の研究を行うために使用することができる。構成物及び方法は任意の試験化合物、薬物、薬物標的、経路及び治療適用に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年4月12日出願の米国仮出願No.60/560,975に優先権を主張するものである。本出願は、2001年10月3日出願の係属中の米国特許出願No.09/968,864の一部継続出願であり、同出願は2000年10月5日出願の米国仮出願No.60/237,690に優先権を主張するものである。本出願は同時に、2003年1月29日出願の係属中の米国特許出願No.10/353,090の一部継続出願でもあり、同出願は2002年5月24日出願の係属中の米国出願No.10/154,758の継続出願であり、同出願は2000年2月7日出願の米国出願No.09/499,464、現米国特許No.6,428,951の継続出願であり、同出願は1998年2月2日出願の米国出願No.09/017,412、現米国特許No.6,270,964の継続出願である。これら全ての特許、出願及び仮出願の内容を参照により開示に含める。
【0002】
発明の背景
選択的な薬物という概念が、前世紀まで新しい治療法の発見及び開発を支配してきた。興味が持たれる生理的プロセスの基礎にある生化学的経路の中の標的に、ある分子が望ましい方法で作用することにより選択的に細胞生理学的変化がもたらされることが示されるならば、その分子は有用な治療薬となる可能性があると言える。しかしながら、治療上の標的に結合する絶妙に選択的な化合物でさえも、生きた細胞に接触すると全く予期しない作用、あるいは「オフ経路(off-pathway)」の作用を有するかもしれない。そのような作用は前臨床的に及び臨床的に高価な失敗をもたらしかねない。本発明の目的上、ある化合物が標的として意図したもの以外の経路における、その化合物の何らかの活性を「オフ経路」の活性と定義する。
【0003】
薬物の作用メカニズム及びそれらのオフ経路活性の同定は、生物環境を表わす無数の蛋白のそれぞれについてアッセイを設定することは実現不可能であるため、酵素アッセイにより達成することはできない。生細胞を構築する複雑な生化学経路内での薬物の作用様式を評価するには、その経路を直接探る方法が必要となる。それゆえに、薬理学的プロファイリングのための一般的な戦略を探求した。特に、大規模な薬物活性のプロファイリングに蛋白−蛋白相互作用の定量的測定が利用できるかどうかを判断しようと努めた。
【背景技術】
【0004】
本発明の背景は以下のとおりである。受容体へのアゴニストの結合は、他のシグナル伝達分子によって仲介される細胞内事象(イベント)のカスケードを誘導する。概念的に、そのようなシグナル伝達カスケードには、巨大分子複合体の内部における蛋白の調節された結合及び解離が関与する。さらに、蛋白−蛋白複合体の構築及び分解が、経路のアゴニスト、アンタゴニスト又は阻害物質の添加によりダイナミックに発生する。最終的に、特定の蛋白−蛋白複合体の構築及び分解が、細胞膜、細胞質、核、ミトコンドリア又は細胞内の他の区画のような特別の細胞内部位において発生する。
【0005】
細胞ベースの薬理学的プロファイリングはこれまではほとんどDNAマイクロアレイ(遺伝子チップ)を用いて行なわれてきた。DNAマイクロアレイは毒性ゲノム科学(toxicogenomics)の領域を生み出し、それには毒性を理解するためのmRNAの複雑な母集団の使用が含まれる。すなわち、細胞又は動物体を薬物で処理する;メッセンジャーRNAを細胞又は組織から単離する;さらに、薬物の非存在下及び存在下でのmRNAの遺伝子発現パターンを比較する。このような転写プロファイリングから化合物間の違いを明らかにすることができ、化合物は1つ以上の経路の最終的な転写活性に影響する。特定の条件又は処理に応答して刺激されるか又は抑制される特定の経路の同定は、疾患及び薬物反応の細胞メカニズムの解明に着手する際の有用な方法である。しかしながら、個々のmRNA分子のレベルの変化は、単一の時点で対応する蛋白のレベル又は活性に常に直接相関関係にあるわけではない。更に、多くの蛋白は多数の翻訳後修飾及び蛋白相互作用を経て、それが組織又は細胞内の蛋白の機能及び活性に影響することもありうる。従って、存在する全mRNA種、及びそれらが特定の時点において存在するレベルを単に同定するだけでは、特定の薬物の全体像を得ることは不可能であろう。結局、標的である薬物は何十もの遺伝子の転写に影響を及ぼして、遺伝子チップ実験の結果の解釈を骨の折れる作業にしかねない。
【0006】
細胞応答の調節は、最終的に細胞核に到達して細胞の遺伝装置を誘導し、初期の刺激に応答して新しく発現される蛋白を合成することになる一定の「閾値」数の分子相互作用によって仲介されている。レポーター遺伝子アッセイにより、標的の生物活性が、容易に検出される酵素又は蛋白レポーターの発現に結びつけられ、それによりシグナル伝達及び遺伝子発現に関連した細胞事象のモニタリングが可能になる。転写調節要素を様々なレポーター遺伝子に融合させることに基づいて、これらのシステムは細胞内部での遺伝子発現に関するシグナル伝達事象カスケードの作用を「報告する」。特別の応答要素の合成反復をレポーター遺伝子の上流に挿入して、生細胞の特定の経路の活性化によって産生されるシグナル伝達分子に応答してそれが発現するのを調節することができる。このようなアッセイは化学物質ライブラリーやリード薬物の生物学的作用の一次及び二次スクリーニングに有用であることが判っており、転写レポーターアッセイパネルは薬物活性のプロファイリングに使用されてきた(Bionaut社)。転写レポーターアッセイは、ある経路の化学的薬物に対する応答についての情報を提供する能力はあるが、そのようなアッセイは経路の活性化又は抑制の結果を単に測定するだけであって、化合物の作用部位を測定するものではない。
【0007】
シグナル伝達経路内の特定の事象を直接測定することにより、転写プロファイルの解釈に関連した問題は除かれるであろう。転写レポーターアッセイとは異なり、蛋白−蛋白相互作用のモニタリングにより得られる情報は、細胞シグナル伝達経路の終了点ではなく特別の分枝又は分岐点に対する薬物の作用を反映する。例えば、アゴニストによる経路の刺激により、(キナーゼのような)細胞内の蛋白の、(基質のような)同種の結合パートナーとの結合の増加を導くことができるかもしれない。この刺激によりキナーゼによる基質のリン酸化がもたらされる。従って、基質のリン酸化、又はアゴニストの非存在下及び存在下におけるキナーゼ/基質複合体の量若しくは位置を定量することにより、薬物作用を評価することができよう。この例において、キナーゼ/基質複合体は経路活性の標識の役割をしている。(受容体拮抗薬のような)経路の初点に作用するか又は受容体の下流の別の標的に作用する薬物は、細胞内のキナーゼ/基質複合体の量若しくは位置、又は修飾状態のいずれかを変化させるかもしれない。そのため、ある化合物の非存在下又は存在下におけるキナーゼ/基質複合体を評価することにより、化合物がその経路に作用しているかどうかを明らかにできるであろう。理想的には、そのような変化は無傷の細胞中で測定されよう。すなわち、問題の細胞を一定の期間、試験化合物で処理し、経路の標識又は相互作用を無傷の(生きているか又は固定された)細胞中で評価するであろう。
【0008】
ハイコンテントアッセイには、細胞内レベルで起きる事象を識別することができるという特別の期待が持てる。経路は、原形質膜でシグナルを受け取りそれらのシグナルを細胞核に伝達し、その結果として、遺伝子転写の活性化又は抑制をもたらす膜受容体により細胞内スペースにおいて高度に組織化されていることが多い。ハイコンテントアッセイでは、膜、細胞質ゾル、核及び他の細胞内区画中の蛍光シグナルを識別することができる。そのようなアッセイは1日に何百ものマイクロウェルプレートのスループットが可能な自動顕微鏡検査法によって行なわれ、それによりこの手法は中規模ないし大規模スケールで実施できる。
【0009】
以下及び参考文献に引用している本発明者自身の研究(Michnick et al.)を例外として、先行技術には薬理学的プロファイリングのための蛋白−蛋白相互作用の使用についての開示はない。さらに、先行技術は薬理学的プロファイリング及びリードふるい落としのためのハイコンテントアッセイの使用について何の教示もしていない。
【0010】
いくつかの方法が蛋白−蛋白相互作用の定量化に利用可能である。本発明のために本発明者らは、生細胞中で蛋白−蛋白複合体の定量化及び/又は位置測定を可能にする方法に注目し、蛍光偏光法のような追加的方法が結合事象の測定に適していることを認識している。利用可能な細胞ベースの方法として蛋白−蛋白相互作用の蛍光アッセイ又は生物発光アッセイが挙げられ、共鳴エネルギー転移(FRET又はBRET)、酵素サブユニット相補性、及び蛋白−フラグメント相補性アッセイ(PCA)が含まれる。当業者には本発明が選択される厳密なアッセイ方法論、検出方法又は特別の機器使用に限定されるものではないことが理解されるであろう。本発明は、特別の技術又は機器使用にかかわらず、その技術がアッセイ目的に十分な感度があり確固としたものである限り、蛋白−蛋白相互作用を薬理学的プロファイリングのために使用できることを教示するものである。
【0011】
最も広く普及している蛍光性の、細胞ベースの蛋白−蛋白相互作用アッセイは、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)又は生物発光共鳴エネルギー転移(BRET)の現象に基づくものである。FRETアッセイでは、FRETを受けることができる2つの異なる蛍光性レポーターの遺伝子が、問題のコード遺伝子に別々に融合され、融合蛋白が生細胞中に共発現される。問題の蛋白間に蛋白複合体が形成されると、これら2つの蛋白がオーバーラップする発光及び励起を有する場合、蛍光体が近接し、第一の「ドナー」蛍光体により光子が放出され、放出された光子がこの第二の「アクセプター」蛍光体により効率的に吸収されることになる。このFRETペアは、生細胞中でいずれかの蛍光体単独のものとは識別することができる、励起及び発光波長の特有の組合わせで蛍光を発する。特定の例として、様々なGFP変異体がFRETアッセイで使用されており、シアン、レモン色、強化緑色及び強化青色蛍光蛋白が挙げられる。BRETでは、発光蛋白、例えば酵素Renillaルシフェラーゼ(RLuc)がドナーとして使用され、緑色蛍光蛋白(GFP)がアクセプター分子として使用される。Rlucの基質となる化合物を追加して、Rlucによって放出された青色光の量をGFPによって放出された緑色光の量と比較することによりによりFRETシグナルが測定される。上記の2個の蛋白が近接していると青色に対する緑色の比率が増加する。ブリードスルー(bleedthrough)及び自己蛍光からのFRETのデコンボリューションを可能にする、より新しい方法が開発中である。さらに、蛍光寿命画像顕微鏡法(FLIM)により単純なFRET強度の定量に伴う多くの人為要素が取り除かれる。
【0012】
野性型ベータ・ガラクトシダーゼの活性、又はアルファもしくはオメガ相補性の現象のいずれかに基づいて多様なアッセイが構築されてきた。beta-galは、最大100万ダルトンの4量体及び8量体複合体を形成する多量体酵素である。beta-galサブユニットは、自己オリゴマー形成を経て活性を生じる。この自然発生による現象は様々なインビトロの均質系アッセイの開発に使用されており、30以上の特許の対象となっている。beta-galのアルファもしくはオメガ相補性は、1965年に初めて報告され、抗体−抗原、薬物−蛋白、蛋白−蛋白及び他の生体分子の相互作用を検出するためのアッセイの開発に利用されてきた。自己オリゴマー形成によるバックグラウンド活性は、自然に相補性を示す能力が低減されているか又は無視できる低親和性変異体サブユニットの開発によって部分的に解決されており、それによって、例えば、生細胞中のEGF受容体のリガンド依存性活性化の検出を含む多様なアッセイが可能になっている。
【0013】
PCAは、細胞内の蛋白−蛋白複合体の結合、解離又は位置の測定に特に有用な方法である。PCAは、生細胞中の蛋白−蛋白複合体の量及び細胞内の位置の決定や定量化を可能にする。PCAでは、蛋白は組換えポリペプチドフラグメントへの融合体として発現し、このポリペプチドフラグメント自体は(a)蛍光性又は発光性部分ではなく、(b)自然発生のものではなく、(c)レポーターの断片化によって作られるものである。Michnickら(US 6,270,964)は、PCAでは任意の問題のレポーター蛋白も使用できることを教示しており、それには上記のレポーターのいずれもが含まれる。すなわち、PCAに適したレポーターとしては、それらに限定されるものではないが、多数の酵素、及び蛍光性、発光性又は燐光性の蛋白のいずれもが挙げられる。単量体酵素及び単量体蛍光性蛋白を含む小さな単量体蛋白がPCAには好ましく、これらは小さな(〜150アミノ酸)フラグメントをもたらす。Michnickらによって確立された原理を使用していずれのレポーター蛋白も断片化することができるので、細胞のタイプ、標的、シグナル伝達プロセス及び選択された機器使用による特定の要求にアッセイを適合させることができる。最終的に、広範囲のレポーターフラグメントから選択できることにより、蛍光性、発光性、燐光性、又は他の検出可能なシグナルの構築が可能となり、ハイコンテント又はハイスループットアッセイフォーマットを選択すると、例えば生細胞中のエリスロポイエチン受容体のリガンド依存性の活性化の検出を含む多様なアッセイが可能になる。
【0014】
蛋白−蛋白相互作用の蛍光性アッセイは、受容体及び他の細胞内の標的を含む個々の標的に対する薬物効果を検出するために個々に使用されてきた。例えば、本発明者らはNFkappaB (p65/p50)複合体(Yu et al.)に基づく、細胞ベースの蛍光性ハイスループットスクリーニングアッセイを、PCAを使用して構築している。しかしながら、先行技術は薬理学的プロファイリングのためのそのようなアッセイパネルの使用については開示していない。
【0015】
本発明を完成する過程で、本発明者らは3つの仮説を試験した。第1の仮説は、ハイコンテントアッセイ、とりわけ、特定の経路内の特定の蛋白−蛋白複合体の定量的動的測定が、化合物又は薬物によるそれらの経路の活性化又は抑制の事前評価を可能にするであろうというものである。第2の仮説は、経路の活性化に応答して、2つのタイプの動的事象、すなわち、特定の複合体の量の増加若しくは減少、及び/又は、特別の蛋白−蛋白複合体のある細胞内区画から別の区画への移動が起きうるというものである。第3の仮説は、生細胞中の多種多様な別々の蛋白複合体の定量及び位置測定により、細胞全体に及ぶスケールでの薬物プロファイリングが可能になるであろうというものである。
【0016】
本発明を完成するにあたり、化合物の非存在下又は存在下における蛋白の動的な結合及び解離をモニターするために細胞ベースのアッセイを使用した。前述のいずれの蛍光性又は発光性の方法も本発明と組み合わせて使用するのに適しているが、本発明者らは蛋白−フラグメント相補性アッセイ(PCA)戦略を選択した。本発明者らは、生細胞中の別々の蛋白−蛋白相互作用について定量的な蛍光性アッセイのパネルを作成し、アッセイパネルに対して100以上の既知の薬物の活性を試験した。本発明者らは、標識ペアの強度及び/又は物理的な位置の変化により検出される応答又は「薬理学的プロファイル」のパターンが被験薬物の作用機序、特異性及びオフ経路作用に関連付けられることを実証するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題及び効果
薬物、薬物候補及び薬物リードの大規模な薬理学的プロファイリングのための方法を提供することが本発明の課題である。
さらに、ゲノム全体に渡る規模での化合物の活性、特異性、能力、時間経過及び作用機序を評価する方法を提供することも本発明の課題である。
【0018】
また、生細胞の状況における化合物の選択性を測定できるようにすることも本発明の課題である。
問題の細胞の生物学的状況における化合物のオフ経路作用の可能性、副作用又は毒性作用の検出を可能にすることも本発明の別の課題である。
【0019】
望ましい薬理学的プロファイルが得られるまで、反復方式でリード化合物のコレクション又はシリーズの薬理学的プロファイリングを行なうことにより、リード最適化を可能にすることが本発明の別の課題である。
さらに、望ましくない作用又は毒性作用を有する薬物候補のふるい落としを可能にすることも本発明の課題である。
【0020】
さらに、新規の薬物候補のための前臨床の安全性プロファイルを確立することも本発明の課題である。
さらに、臨床試験に先立って副作用、毒性作用、又は他のオフ経路作用を同定することにより、創薬プロセスの効率を改善することも本発明の課題である。
【0021】
さらに、臨床試験に先立って副作用、毒性作用、又は他のオフ経路作用を同定することにより、クラス中1位の薬物の安全性を改善することも本発明の課題である。
さらに、予定された特性を有する「デザイナードラッグ」の開発に適した方法を提供することも本発明の課題である。
【0022】
既知の薬物について新しい効能の同定を可能にすることが本発明の別の課題である。
任意の生化学経路における任意のクラスの薬剤の活性を分析する方法を提供することが本発明の別の課題である。
【0023】
さらに、薬物毒性の基礎となる生化学経路の同定を可能にすることも本発明の課題である。
さらに、広範囲の疾患において薬物の有効性の基礎となる生化学経路の同定を可能にすることも本発明の課題である。
【0024】
さらに、創薬と評価に有用なハイコンテント法、アッセイ及び構成物を提供することも本発明の課題である。
薬理学的プロファイリングに適した蛋白−蛋白相互作用のパネルを提供することが本発明の別の課題である。
【0025】
本発明は、任意の問題の経路、遺伝子、遺伝子ライブラリー、薬物標的クラス、レポーター蛋白、検出モード、合成又は天然産物、化学物質、アッセイフォーマット、自動器機使用又は細胞のタイプに広く適用可能であるという利点を持つ。
【課題を解決するための手段】
【0026】
発明の要約
本発明は、医薬上の発見のための上記の要件を満たすことを目指すものである。薬理学的に活性な薬剤の作用機序、選択性、及び副作用又はオフ経路作用を同定するために細胞ベースのアッセイを使用することができることを本発明は開示する。本発明は細胞ベースのアッセイ、特に蛋白−蛋白相互作用アッセイを用いた薬物分析及び薬理学的プロファイリングを実行するための一般的な戦略を提供するものである。さらに、本発明はこれらの目的を果たすために有用な広範な方法及び構成物を提供するものである。
【0027】
細胞応答は細胞内の区画中に存在する蛋白の複雑なネットワークによって媒介されている。細胞増殖、細胞死(アポトーシス)、化学走性、転移などはすべて蛋白−蛋白相互作用に関与する蛋白のレベルで制御されている。本発明の主題は、生化学ネットワーク上の化合物の作用の定量分析を可能にする方法である。本発明は、薬物クラス又は標的クラスにかかわらず任意の化合物の作用の分析を可能にする。
【0028】
本発明の新規の方法により以下のことが可能になる:(1)特定の細胞応答の分子構造の、そのような細胞構造を可能にしている個々の蛋白−蛋白相互作用のレベルにおける、直接的な視覚化;(2)以前には不可能であった方法による細胞のシグナル伝達ネットワーク上の薬物作用の直接的定量分析;及び(3)リード化合物及びリード薬物のそれらの作用機序に無関係な、定量的かつ予測的な薬理学的プロファイルの作成。
【0029】
本発明の好ましい態様は、問題の特定の蛋白をコード化する遺伝子を使用するが、特性決定された完全長cDNA(s)が好ましい。この方法は、しかしながら、部分的なcDNA又は蛋白ドメインも使用することができるので、完全長クローンに限定されるわけではない。蛋白−蛋白相互作用の測定を可能にするレポーター又はレポーターフラグメントのタグを付けたcDNAを、適当な発現ベクター中に挿入し、融合蛋白を問題の細胞中に発現させる。しかしながら、内在性の細胞遺伝子を、例えば非相同性組換えによってゲノムにレポーター又はレポーターフラグメントのタグを付けることにより使用することもできる。後者の場合、天然の蛋白が、天然の蛋白−蛋白複合体の検出を可能にする選別用レポータータグと共に発現される。
【0030】
上記の方法は、蛋白−蛋白相互作用を測定する方法及び/又は等価の経路標識のための、ハイコンテントアッセイ法を必要とする。好ましい態様では、蛋白相互作用は細胞内で測定される。そのような方法としては、FRET、BRET、2-ハイブリッド法又は3-ハイブリッド法、酵素サブユニット相補性法、及び蛋白フラグメント相補性(PCA)法を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。他の態様では、相互作用は組織切片、細胞ライセート又は細胞抽出液若しくは生物抽出液中で測定される。後者の場合、蛋白−蛋白複合体の測定のために広く多様な分析法を使用することができ、例えば、免疫組織化学的検査;ウエスタンブロット;免疫沈降及びそれに続く2次元ゲル電気泳動;質量分光法;リガンド結合法;量子ドット若しくは他のプローブ;又は特定の蛋白−蛋白複合体を定量する他の生化学的方法がある。このような方法は当業者に周知である。異なる蛋白−蛋白相互作用の測定に単一の技術を適用する必要はないことが強調されるべきである。任意の数及びタイプの定量的アッセイを本発明と共に組み合わせて使用することができる。
【0031】
酵母菌2-ハイブリッド法(Y2H)は本発明と共に使用することができるが、Y2Hのいくつかの特徴により直接蛍光分析法よりも有用性が低い。第一に、Y2Hは酵母細胞のような細胞の核の中に、問題の蛋白の発現を必要とすることが多く、それはほとんどのヒトの蛋白については不自然な状況であり、受容体のようなヒトの膜蛋白には全く使用できない。第二に、酵母菌は創薬において関心が持たれるヒトの生化学経路を含んでおらず、そのため新規の薬物となる可能性のある標的蛋白を経路ベースで発見及び確認することができない。第三に、蛋白−蛋白相互作用を直接中断させる化学物質を除けば、Y2Hは哺乳動物の生化学経路を中断させる活性分子の薬理学的同定において役に立たない。
【0032】
酵素−フラグメント相補性法及び蛋白−フラグメント相補性法は本発明において好ましい態様である。これらの方法は、生細胞内の蛋白−蛋白複合体の定量化及び細胞内位置特定を可能にする。
【0033】
酵素フラグメント相補性法では、蛋白をβ‐ガラクトシダーゼの天然の又は変異体のアルファ/ベータサブユニットのような酵素サブユニットへの融合体として発現させる。PCAでは、蛋白を合成ポリペプチドフラグメントへの融合体として発現させるが、その場合、ポリペプチドフラグメント自体は、(a)蛍光性又は発光性部分ではない;(b)自然発生のものではない;及び、(c)レポーターの断片化によって作られるものである。Michnickら(US 6,270,964)は、PCAでは問題の任意のレポーター蛋白を使用することができることを教示しており、それには上記のレポーターのいずれもが含まれる。すなわち、PCAに適したレポーターとしては、それらに限定されるものではないが、多数の酵素、及び蛍光性、発光性又は燐光性の蛋白のいずれもが挙げられる。単量体酵素及び単量体蛍光性蛋白を含む小さな単量体蛋白がPCAには好ましく、これらは小さな(〜150アミノ酸)フラグメントをもたらす。Michnickらによって確立された原理を使用していずれのレポーター蛋白も断片化することができるので、細胞型、標的、シグナル伝達プロセス及び選択された機器使用による特定の要求にアッセイを適合させることができる。最終的に、広範囲のレポーターフラグメントから選択できることにより、蛍光性、発光性、燐光性、又は他の検出可能なシグナルの構築、及びハイコンテント又はハイスループットアッセイフォーマットの選択が可能になる。
【0034】
先に示したように、PCA用の組換えポリペプチドフラグメントは個別に蛍光性又は発光性を示すものではない。PCAのこの特徴が、蛋白にGFP又は他の発光体のタグを付けたUS 6,518,021(Thastrup et al.)のような、蛍光性分子又は発光体で蛋白にタグを付けることを含む他の発明との相違を示す。PCAフラグメントは発光体ではなく、個々の蛋白の再分布のモニタリングはできない。対照的に、PCAで測定されるのは2個の蛋白の間の複合体形成である。
【0035】
本発明は、分析用に選ばれるタイプの細胞、体液又は抽出液に制限されるものではない。細胞のタイプは、哺乳動物細胞、ヒト細胞、バクテリア、酵母菌、プラント、真菌又は他の任意の問題の細胞のタイプでもよい。上記細胞はまた、細胞株、又は肝細胞のような一次細胞でもよい。上記細胞は、無傷の組織若しくは動物の成分、又は体外移植片若しくは異種移植片のような全体のものでもよく、或いは、体液又は器官から単離したものでもよい。例えば、本発明をバクテリア中で使用して、重要な経路を遮断する抗菌剤を同定することができ、重要な経路を遮断する抗真菌剤を同定するために真菌中で使用することもできる。本発明は、哺乳動物又はヒトの細胞中で、疾患に関係した経路を遮断し、オフ経路作用又は副作用を持たない薬剤を同定するために使用することもできる。本発明は、癌、糖尿病、心血管疾患、炎症、神経組織変成疾患、及び人類を苦しめる他の慢性又は急性疾患を含む、問題の任意の疾患に対する創薬に合わせて使用することができる。
【0036】
本発明は任意の環境、状況又はシステム中の生細胞又は組織で使用することができる。これには培養細胞、培養組織、及び生きている生物体が含まれる。例えば、本発明は、ショウジョウバエ又はゼブラフィッシュのようなモデル生物体で使用することができる。本発明はヌードマウスに使用することもできる。例えば、「PCA inside」のようなラベルが付けられた蛋白を発現させるヒト細胞をヌードマウスに異種移植片として移植し、薬物又は他の化合物をマウスに投与することができる。その後、細胞を移植組織から再抽出するか、又は、マウス全身を、Xenogen(アラミダ、カリフォルニア)から提供されるような動物生体画像システムを使用して画像処理することができる。さらに、分析すべき蛋白−蛋白相互作用を表わす蛋白融合がそのゲノム中に存在するトランスジェニック動物に、本発明を使用することもできる。
【0037】
任意のタイプの化合物を、ここに提供される方法で分析することができる。そのような化合物としては、活性を試験する必要がある合成分子、天然生成物、組み合わせライブラリー、既知若しくは推定上の薬物、リガンド、抗体、ペプチド、小型干渉RNA(siRNAs)又は任意の他の化学物質が含まれる。組み合わせライブラリースクリーニング又は他のハイスループットスクリーニングキャンペーンからのスクリーニングヒットを本発明と合わせて使用することもできる。本発明は、より望ましい特性を備えたそれらの化合物を、望ましい特性が劣るそれらの化合物と比較して同定するために使用することができる。従って、本発明は、予期しない属性、望ましくない属性、又は有毒な属性を有するリード化合物の最適化及び/又はふるい落としへの使用に適している。
【0038】
好ましい態様はハイコンテントアッセイフォーマットであるが、すべての場合ではないとしても多くの場合にハイスループットアッセイが使用できる。化学薬剤に反応して蛋白−蛋白複合体のが増加又は減少する場合、正味の蛍光又は発光シグナルを定量することができる。薬物に反応して蛋白−蛋白複合体の細胞内位置がシフトする事象では、個々の細胞を画像化し、蛋白−蛋白複合体から発せられるシグナル及びその細胞内の位置を検出する。これらの事象の多くの例をここに提供する。方法及びレポーターによっては、異なる状況に、より適していることもあるであろう。PCAでは、レポーターの選択により蛋白−蛋白複合体の定量化及び位置測定が可能になる。特定のレポーターが、異なる細胞タイプ、及び異なる蛋白−蛋白複合体について、より最適度が高かったり低かったりするであろう。
【0039】
多くの場合、蛋白−蛋白複合体の量はその複合体中の個々の蛋白の量の増減の結果として増減するであろうことは当業者が認めるところであろう。同様に、蛋白−蛋白複合体の細胞内の位置は、その複合体中の個々の蛋白の細胞内の位置のシフトの結果として変化することもありうる。そのような場合、複合体又は複合体の個々の成分のいずれかを評価することができ、結果は同等なものになるであろう。個々の経路標識(蛋白)に関するハイコンテントアッセイは、問題の蛋白に操作によりリンクさせた緑色蛍光蛋白(GFP)のような蛍光体又は発光体のタグを蛋白に付けるか;より新しい、SNAPタグ及びHaloタグ(インビトロジェン社、BioRad社)を含む自己標識法によるか;又は、セル・シグナリング・テクノロジーズ社(ベクトン・ディキンソン)及び他の多くの供給元から提供される、蛋白特異抗体又は修飾特異抗体を使用して、細胞生物学の分野で周知の免疫蛍光法を用いることにより、構築することができる。このような方法及び試薬はここに提供される蛋白−蛋白相互作用と合わせて使用することができる。特に、表1-2にリストされたものを含む個々の蛋白を本発明の薬理学的プロファイリングのためのハイコンテントアッセイを構築するために使用してもよい。
【0040】
本発明はさらに、細胞内の変調可能な経路に対する試験化合物の作用を検出するための戦略及び方法を提供するものである。経路を変調させる戦略は、任意の細胞タイプ及び任意の測定可能なパラメーター又はアッセイフォーマットと合わせて薬理学的プロファイリングに適用することができる。試験化合物は基本となる条件下では重要な作用を持たないかもしれないが、それらの作用は試験化合物及び、それに次いで経路変調剤(pathway modulator)で細胞を処理することにより検出できる。この戦略により本発明の感度が改善される。例えば、ある例では、試験化合物は基本条件下で効果を示さないかもしれないが、経路が活性化又は抑制されるかいずれかの条件下では明白な効果を示すことがある。経路を変調する戦略の例を、ここではGPCR経路(+イソプロテレノール)、サイトカイン経路(+TNF)及びDNA損傷応答経路(+カンプトテシン)について示す。任意の数の細胞経路を既知の変調剤によって活性化又は抑制することができ、それらは薬理学的プロファイリングの感度を改善するために使用することができる。
【0041】
ここに提供される方法及びアッセイは、アッセイフォーマットや小型化について柔軟に対応できるような、マルチウェル・フォーマット、微量定量プレート、マルチスポット・フォーマット、又はアレイで行ってもよい。アッセイ・フォーマット及び検出モードの選択は、分析するプロセスの生物学的状態及び複合体中の蛋白の機能によって決定される。いずれの場合でも、選ばれたレポーターによって産生されるシグナルの検出に適した任意の装置によって、本発明の対象である構成物を読み取ることができることに注目すべきである。発光性、蛍光性、又は生物発光性のシグナルは、蛍光マルチウェルプレートリーダー、蛍光活性化セルソーター(FACS)及び、シグナルの空間的解析が可能な自動セルベース画像システムを含む、様々な自動及び/又はハイスループット機器使用システムのいずれか1つを用いて容易に検出及び定量される。HCSを自動化するために、セロミクス社、アマシャム社、TTP社、Q3DM社(ベックマン・クルター)、エボテック社、ユニバーサル・イメージング社(モレキュラー・ディバイシーズ)及びツァイス社によって開発された自動螢光画像システム及び自動顕微鏡検査システムを含む、様々な機器使用システムが開発されている。光退色後蛍光回復法(FRAP)及び経時的蛍光顕微鏡検査法も生細胞中の蛋白の移動性を研究するために使用されてきた。本発明はUS 5,989,835及びUS 6,544,790に記載されている方法と合わせて使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、本発明の目的を具体例により示すものである。細胞の行動を制御する生化学ネットワークを回路図で表わしている。薬物及び化合物は細胞内において既知の(意図された)及び未知の(意図しない)作用を有する。蛋白−蛋白相互作用又は複合体は、生化学ネットワーク内では二元性の要素と言えるものであり、薬物及びリード化合物の既知及び未知の作用を同定するために探る対象とすることができる。
【図2】図2は、蛋白−蛋白複合体を形成する細胞内の蛋白の例を示すものである。細胞内の実質的にすべての蛋白は1つ以上の他の蛋白又は他の巨大分子とともに複合体を形成し、これらの巨大分子複合体の状況中でその活性を発揮する。アッセイを構築する対象となりうる複合体を形成する蛋白の例としては、(膜、細胞質ゾル又は核の)受容体;イオンチャンネル;アダプター蛋白;キナーゼ;ホスファターゼ;プロテアーゼ;ヌクレオチド結合蛋白及びヌクレオチド交換因子;生合成酵素又は分解酵素;シャペロン;交換因子及び輸送蛋白;アポトーシス、細胞骨格及び細胞周期機構;骨格蛋白及び構造蛋白;細胞骨格及び他の構造要素;並びに転写因子が挙げられる。
【図3】図3は、細胞内ネットワークを薬物作用及び薬理学的プロファイルに関連づける概念を示している。(A) 生化学的シグナル伝達ネットワークはモジュール又は機能的に関連し合う蛋白−蛋白相互作用のグループで構成される。3つの理論的モジュールを球体と棒の図形で表わす(モジュールA、B及びC)。球体はモジュール中でラインによって接続された蛋白相互作用を表わす。モジュールA及びモジュールBの間のシグナル送信が青色で示される複合体を経由して行われる。複合体中の各蛋白は上流の薬物活性をモニターするアッセイを構成できる可能性を持つ。赤色及び緑色はモジュールの薬物A-Cに対する応答を探るために選択されたアッセイを表わす。特定の薬物処理に応答して減少する蛋白複合体は赤色で示し、特定の薬物処理に応答して増加するものは緑色で示す。(B)種々の薬物(x軸上)対個々のアッセイ(y軸上)について得られた抑制(赤の相対色)及び活性化(緑の相対色)の定量的パターンを描くマトリックス。カテゴリーAの薬物(DA)はモジュールAに対して抑制作用を有し、それがモジュールBに送られる。こうしてモジュールAを表わす4つのアッセイでは、モジュールBを表わすアッセイと同様に、活性が減少した。カテゴリーBの薬物(DB)はモジュールBアッセイにのみ抑制作用を示し、カテゴリーCの薬物(DC)はモジュールCアッセイにのみ刺激作用を示す。
【図4】図4は、本発明による薬理学的プロファイリングの基礎となる工程を示す。
【図5】図5は、本発明による薬理学的プロファイリングのためのハイスループットシステムを示す。プロセス全体が微量定量プレートフォーマット又はアレイで自動化することができる。薬物作用の動力学を研究するために、薬物を細胞へ追加した後に異なる時点で分析することができる。画像は数値結果に変換され、数値データをリレーショナルデータベースに保存し、いくつものグラフ的、数値的又は統計的ルーチン処理によって分析することができる。
【図6A】図6Aは公表されているGPCR経路の概略図である。G蛋白結合受容体及びその下流の相互作用体は無傷細胞中で調べることができる蛋白−蛋白複合体を形成する。
【図6B】図6Bは、PCAによって評価した無傷ヒト細胞のGPCR経路中の蛋白複合体の例を示す。蛍光シグナルが、各蛋白−蛋白複合体(緑)の量及び細胞内位置を表している;核はヘキスト(青)で染色されている。ここに示すアッセイの詳細については表1-3及び実験プロトコールを参照のこと。このようなアッセイは本発明による薬理学的プロファイリングに使用することができる。
【図7A】図7Aは、ユビキチン・プロテアソーム及び細胞周期経路中の相互作用の公表されている概略図である。このような経路は蛋白−蛋白相互作用により調べることができる。
【図7B】図7Bは、ユビキチン化、スモイル化及び/又はプロテアソーム経路中の蛋白複合体の例を示す。ユビキチン又はSUMOを用いた蛋白の直接的相互作用を、PCAによって評価された、E3及びSUMOリガーゼのそれらの基質との相互作用で示した。このようなアッセイはこれらの経路に対する化合物の作用を検出するのに使用することができ、他の多くの蛋白についても構築することができる。
【図7C】図7Cは、プロテアソーム阻害剤であるALLNがプロテアソームによって制御されることが知られている蛋白−蛋白複合体の蓄積を引き起こすことを示す;従って、ALLNのこの作用は薬剤の予期された、又は「オン経路(on-pathway)」の作用である。これらの経路を抑制又は活性化若しくは強化する薬剤はこれらのアッセイにより同定することができる。
【図8A】図8Aは、種々のキナーゼと他の蛋白との相互作用を含む、シグナル伝達経路における相互作用の公表されている概略図である。
【図8B】図8Bは、PCAによって評価された無傷細胞中におけるキナーゼと他の蛋白の間の相互作用の例を示す。このようなアッセイは他の多くのキナーゼやシグナル伝達蛋白について構築することができ、これらの経路に対する既知の化合物又は新規の化合物の作用を検出するために使用することができる。
【図8C】図8Cは「上流」のキナーゼ抑制剤の「下流」の複合体に対する予想される作用を示す。Wortmannin及びLy294002は、PDK1及びAKT1の上流にあるPI3K(ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ)の抑制剤である。AKT1はPDK1の基質であり、PDK1と複合体を形成する。画像中に示されるように、PI3K抑制剤による細胞処理は、細胞膜のPDK1/AKT1の減量、及び細胞質ゾルへの複合体の再局在化をもたらす。変化は薬物添加の数分内に起きる;画像は90分時点で撮られたものである。「上流」及び「下流」という用語はシグナル伝達カスケードに関連して一般に使用され、「上流」の事象が「下流」の事象に先立つように、事象が時間経過順に生じることを示す。
【図8D】図8Dは、HEK293細胞における Ras/Raf-1複合体に対する2つの異なる非選択的キナーゼ阻害剤、インジルビン-3'-モノキシム及びBAY11-7082の作用を示す。複合体の数は薬物処理の数分以内に減少する;画像は30分時点で撮られたものである。
【図9A】図9Aは、シャペロン及びコシャペロンのお互いの間、及びクライアント蛋白との間の選択的相互作用の公表されている概略図である。
【図9B】図9Bは、既知のHSP阻害剤、ゲルダナマイシン(geldanamycin)又は17-アリルアミノ-ゲルダナマイシン(17-AAG)での細胞処理がクライアント−蛋白複合体の減量をもたらすことを示す。Akt1はHSP90のクライアント蛋白である。Akt1/p27について作用を示す。このようなアッセイはこれらの標的及び経路に対する既知の化合物又は新規の化合物の作用を評価するために使用することができる。
【図10A】図10Aは、核ホルモン受容体の関与する相互作用の公表されている概略図である。アゴニストであるロシグリタゾンは、その受容体であるPPARガンマと、この場合の、核内コアクティベーターであるRXRalphaの間の複合体の形成を誘導する。
【図10B】図10Bは、核ホルモン受容体の関与するいくつかの相互作用の例を示す。ここに示す他の例のように、PCAを使用してアッセイを構築した。このような蛋白−蛋白相互作用はこれらの経路における既知の化合物又は新規の化合物の作用を評価するために使用することができる。
【図11A】図11Aは、アポトーシスのミトコンドリア経路中の相互作用の公表されている概略図を示す。顕微鏡写真はミトコンドリア中のBad/Bcl-xLの実際の相互作用を示す;PCAシグナル(緑)は、ミトコンドリアの染色(赤)と同じところに局在化しており、蛋白複合体がミトコンドリア内に正確に局在化されていることを証明している。
【図11B】図11Bは、4つの異なる蛋白相互作用に対する、アポトーシス誘導剤であるスタウロスポリンの動的作用を示す。蛍光顕微鏡写真は、複合体の位置及び強度を示し、ヒストグラムは定量的画像分析に基づいたシグナルの定量結果を示す。このような蛋白−蛋白相互作用はこれらの経路における既知の化合物又は新規の化合物の作用を評価するために使用することができる。
【図12】図12(A-D)は、代表的な薬物作用を伴う種々の蛋白−蛋白相互作用に関する画像を示す。使用した蛋白と薬物の詳細は、表1及び表4に示す。ヘキスト(青色)及びYFP(緑色)の蛍光画像を示す(40X対物レンズ)。各カラムについて、左側のパネルは対照(賦形剤のみ)を示し、白字で複合体を記しており、右側のパネルは薬物/時間による効果を示す。アッセイを終了するまでに、「+CPT」と記したアッセイは500nMカンプトテシンで960分間刺激し、「+ISO」と記したアッセイは、2マイクロモルのイソプロテレノールで30分間刺激し、「+TNFalpha」と記したアッセイは、50ng/mlのヒトTNFalphaで20分間刺激した。p50:p65アッセイは複合体の細胞内局在化に対する薬物作用を可視化できるようにするために、核のヘキスト画像なしに示してある。特別の経路を誘導するカンプトテシン、イソプロテレノール及びTNFalphaの使用は、本発明で提供される経路変調戦略の一例である。
【図13A】図13Aは、蛋白−蛋白相互作用に対する定量的な薬物作用の例を示す。17個の異なる薬物を複数の時点で4個の別個の蛋白−蛋白相互作用について試験した。蛍光性の蛋白−蛋白複合体の細胞内局在性を示す代表的な顕微鏡写真を左側に示す。ヒストグラムは、星印をつけた画像に見られた薬物作用の定量的結果を表す。
【図13B】図13Bは、蛋白−蛋白相互作用に対する薬物作用の例を示す。17個の異なる薬物を複数の時点で4個の別個の蛋白−蛋白相互作用について試験した。蛍光性の蛋白−蛋白複合体の細胞内局在性を示す代表的な顕微鏡写真を左側に示す。ヒストグラムは、薬物作用(星印)の定量的結果を示す。
【図14A】図14Aは、薬理学的プロファイリングのための経路変調戦略の具体例を示すものである。細胞を試験化合物で処理した後、任意の化学組成又はタイプの経路変調剤で処理する。この戦略で、細胞経路に対する変調剤の作用を強化するか又は遮断する試験化合物を検出することができる。
【図14B】図14Bは、薬理学的プロファイリングのための経路変調戦略の有用性を示す。カンプトテシンは、Chk1/Cdc25Cについて示すように、DNA損傷応答経路の活性化を導いてDNA損傷を誘導するように使用された。その後、マトリックス中に示すように、カンプトテシンの作用を強化するか又は遮断する薬剤を同定することができる。同様のアッセイ戦略は任意の細胞経路、及び任意の経路変調剤を用いて行うことができる。
【図15A】図15Aは、GPCR経路のその既知のアゴニストによる活性化、及び拮抗剤による抑制を示す。イソプロテレノールは、β-アドレナリン作動性受容体(GPCR)及びβ-アレスチンの間の複合体形成を誘導した。プロパノロールによる前処理はイソプロテレノールの作用を遮断した。従って、イソプロテレノールの非存在下では、経路活性化剤を検出することができ;イソプロテレノールの存在下では、経路拮抗剤又は阻害剤を検出することができる。同様の戦略は、GPCR、膜受容体及び核受容体を含む任意の細胞受容体に適用することができる。
【図15B】図15Bは、GPCR経路におけるリード化合物の意図しない望ましくない「オフ経路の」作用を示す。この化合物は、癌治療が意図された抗増殖性の活性を有する市販の強力な選択的キナーゼ抑制剤で、GPCR経路に対して活性を有することは意図又は予期されていなかった。薬剤の作用を、経路変調戦略の有用性の例として、イソプロテレノールの存在下で観察した。この薬剤は直接GPCRに結合するのではないため、この意図しない作用は、この経路中のGRK(G-蛋白受容体キナーゼ)又は他の調節蛋白が抑制された結果である可能性があった。GPCRは心臓血管機能を調節するため、この「オフ経路の」活性は望ましくなく、このアッセイ結果によりこの化合物をふるい落とすことができた。同じ化学物質シリーズ内の他のリード化合物はこの活性を示さなかったため、続行することができた。
【図16A】図16Aは、メカニズムに基づく毒性を細胞に基づくアッセイで検出することができることを示す。既知の毒物である塩化カドミウム(10マイクロモル)のヒト細胞中の4つの異なる蛋白相互作用に対する明白な作用が画像とヒストグラムに示されている。画像は塩化カドミウムで細胞を処理した8時間後に撮られたものである。
【図16B】図16B.蛋白相互作用に対するアッセイ使用により、任意の新規薬剤の活性プロファイルを塩化カドミウムのような既知の毒物のプロファイルと比較して、その新規薬剤が毒物のそれと同様の細胞内活性を持つかどうかを調べることができる。表示の例では、4つの異なるアッセイを平行して行った。緑色はアッセイパラメーターの増加を示し、赤色は減少を示す。表示のプロファイルでは、2つの市販の化合物(リード101及び102)がカドミウムと同様のプロファイルを示し、その後げっ歯動物において肝毒性を有することが文書で証明された。これらのシリーズ中の他のリード化合物はこの毒性プロファイルを共有していなかった。
【図17A】図17A.107個の異なる既知の薬物の活性を53個の異なる蛋白相互作用のパネルに対して評価し、各相互作用はPCAを用いてHEK293細胞中で1つ以上の時点において試験した。各アッセイの結果は、効果なし(黒)、アッセイシグナルの増加(緑)又はアッセイシグナルの減少(赤)としてコード化されている。結果のマトリックスでは、薬物をX軸上に、アッセイをY軸上に示す。各薬物について特有の薬物用法示唆(プロファイル)が得られた。それぞれのアッセイ/時間/前処理の組合せから得られた数値的なアッセイ結果を、実験プロトコールに述べるようにクラスターに分け、薬物の活性プロファイルに基づいて薬物間の類似性及び相違性を評価した。
【図17B】図17B.図17AのX軸からの薬物クラスターを、ここでは系統図に付けた薬物名とともに示す。既知の薬物を同様の経路活性に基づいてクラスター分けし、この戦略がオン経路活性を大規模に正確に捕捉していることが確認できた。近い関係にある化合物間の選択性の違い(オフ経路活性)も観察し、広範囲の化合物及び標的のオフ経路活性を捕捉することに際してのこの戦略の能力が強調された。
【図18】図18は、異なる蛋白相互作用のアッセイのパネルにおいて、いくつかの異なる薬物標的クラスを代表する薬物リードのプロファイルを示すマトリックスである。色彩コードは図16Aと同様である。非選択的な薬物は、アッセイ・パネルにおいて、より選択的な薬物から容易に識別することができた。肝毒性があることがわかっている2個の化合物は、広範なオフ経路活性を示し、それはヒト細胞における選択性を一般的に欠いていることを示唆した。従って、蛋白相互作用のアッセイはヒト細胞における「クリーナー」(より選択的なもの)であるリード化合物を開発するためのリード最適化の間に繰り返して使用することができる。表示の例では、各薬物リードを、その細胞のIC50の3倍の濃度で試験した;用量作用曲線も任意のアッセイ・パネルの全域で効力を比較するために使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
発明の詳細な説明
薬物のオン経路及びオフ経路作用の同定(薬理学的プロファイリング)
全ての薬物は、生細胞中の蛋白に作用することにより影響を及ぼす。創薬の典型的なプロセスには、蛋白標的を選択し、問題の標的に対するインビトロのアッセイを確立することが含まれる。創薬の標的選択フェーズに続いて、その標的に対して望ましい作用を発揮する化合物の同定、スクリーニング又は開発が行われる。これは、化学薬品及び他の化合物のライブラリーのハイスループットスクリーニング;標的の結晶化及び、標的上の結合部位に適合するような化合物を設計するためのシリカ法又は湿式法;又はこれら及び類似の方法の組合わせのいずれかにより達成される。使用される方法にかかわらず、化合物には既知の標的、活性又は作用が常に存在する。しかしながら、ほとんどすべての場合、薬物及び薬物候補は生細胞と接触すると未知の作用を及ぼす。そのような未知の作用は、生細胞の生化学的環境を構築する何千もの蛋白の状況下において分子の特異性が不足している結果として起きている。場合によっては、これらの未知の作用が、その薬物が何百何千もの患者に投与されるまで見られなかった有害な生物学的結果又は毒性をもたらしうる。
【0044】
医薬品産業の中心的な課題はヒトにおいて安全かつ有効な薬物を開発することである。安全性と有効性の間のバランスを達成することは、臨床試験で薬物の75%が脱落することで証明されるように、通常困難なことである。多くの場合、ある薬物は完全に安全であるが、それが意図される患者集団に対して評価しうるほどの利益を提供できるほど、特別の条件下で十分な有効性は持っていない。あるいは、ある薬物は効き目はあるが、長い期間にわたって多数の患者を研究するまで明らかにならないような長期的な副作用を有する。急性及び慢性の毒性が市場からの薬物の撤退につながることがあり、そのような例はトログリタゾン(レズリン)及び他の薬物を含めて多数ある。従って、医薬品産業は臨床試験に先立って、薬物の選択性及び副作用の可能性を推測する意図からかなりの研究開発費を費やしている。しかしながら、薬物選択性をプロファイリングする方法は現在のところ非常に限られている。そこで本発明者らは、ゲノム全体に渡る規模で薬物のオン経路及びオフ経路作用の迅速な同定が可能になるような方法を探究した。
【0045】
複合体を形成する細胞内蛋白の例
細胞内の全ての蛋白は他の多数の蛋白と接触すると考えられる。さらに、細胞内には多くの経路が存在すると考えられており、それらは条件に応答するか又は特別の細胞表現型を機能させるために協力して働く蛋白の組織された集合を表わしている。図2は、蛋白−蛋白相互作用に関与する蛋白のクラスの例を提供するものである。これらの細胞内蛋白−蛋白相互作用のうちのあるものは構成性であり、すなわちそれらは外部刺激、環境条件又は他の変調因子に応答しない。「応答する」という表現により、ある動揺に反応して特別の蛋白−蛋白相互作用が増加、減少、又は細胞内分布若しくはパターンの変化を受けることを意味する。しかしながら、ほとんどではないとしても、多くの相互作用は生細胞中のある種の条件下で変調される。例えば、ある種の蛋白−蛋白相互作用は、アゴニスト、ホルモン若しくは生長因子が受容体に結合してシグナル伝達カスケードを誘導することによるか、又は細胞内の蛋白若しくは酵素を活性化する小分子により誘導される。他の相互作用は、例えば拮抗剤若しくは抗体が受容体に結合して、それによりシグナル伝達カスケードを遮断することによるか、経路にとって不可欠な蛋白をコード化する遺伝子を沈黙させるsiRNAにより、又は経路内の特別の蛋白を阻害する薬物により阻害されることもある。これらの例は、本発明の幅を例示するのが目的であって、本発明の実施について制限を加えるものではない。
【0046】
薬理学的プロファイリングのためのプロセス
薬物分析プロセスの概略を図4に示す。
工程1は、プロファイリングすべき化合物、薬物候補又は薬物の選択に関する。
工程2は、試験すべき蛋白−蛋白相互作用の選択に関する。これらは既知又は新規の相互作用する蛋白でもよい。相互作用する蛋白は合理的に、例えば経路若しくは相互作用蛋白ペアの予備知識により、又は経験的に、同定又は選択することができる。例えば、相互作用蛋白は、ベイト対ライブラリースクリーニング又はペア式(遺伝子対遺伝子)相互作用マッピングを含む1個又は複数の方法により同定することができる。さらに、無限の数の蛋白−蛋白相互作用アッセイを単純にランダムに構築することができ、任意の数の薬物又は化合物とのそれらの反応性に関して経験的に試験することができ、その結果を薬理学的プロファイルに組み入れることができる。薬理学的プロファイリングに使用できる蛋白−蛋白相互作用のタイプ、数又は同一性に実質的な制限はない。哺乳動物の細胞には何十万もの蛋白−蛋白相互作用が起きているものと思われる。しかしながら、あるものは構成性であり、他のあるものは余分なものであろう。構成性の相互作用、すなわち、薬物、アゴニスト、又は他の作用因子(perturbants)に応答しない相互作用は、薬理学的プロファイリングには役立たないであろう。幸運なことに、相互作用に関するアッセイを単純に構築し、ここで考察する多くのアッセイタイプのうちの1つを使用して、一連の薬物又は他の化合物に対する反応性を試験することにより、特定の蛋白−蛋白相互作用がプロファイリングに役立つかどうかを経験的に判断することができる。余分の相互作用とは、別の相互作用によって提供される情報と全く異ならない情報を提供する相互作用である。蛋白間の相互作用が次第にマッピングされて、ここで提供される方法に基づく完全な予測用アッセイのパネルを構築することが最終的に可能になるであろう。そのようなパネルによって、任意の化合物を試験して、生細胞中のすべての経路に対するその化合物の完全な活性スペクトルを確定し、また有害な効果を示唆する何らかのオフ経路活性を調べることが可能になるであろう。
【0047】
薬理学的プロファイリングの工程3は2個以上の蛋白−蛋白相互作用についてのアッセイを構築することに関する。そのようなアッセイを構築するのにふさわしい方法は広く普及しており、本発明の背景に詳細に述べてある。免疫捕捉法とともに2-ハイブリッド法やFRET法を含むそのような方法は文献中に十分立証されており、相互作用する蛋白ペアが適切に選択されて、問題の化合物又は薬物によるシグナル強度又は位置の変化を検出し定量するのに十分なだけの感度がその方法にあれば、本発明に簡単に適合させることができる。
【0048】
フラグメント相補性アッセイの場合、アッセイは以下のスキームに従って構築される。調べようとするシグナル伝達ネットワーク用に、選択された蛋白−蛋白ペアの各メンバーを、適当なベクター中へ、PCAレポーター分子をコード化するレポーターフラグメントとの(3'又は5'のいずれかの)インフレームな遺伝子融合体としてクローニングし、適当な細胞株中にトランスフェクションされた際に、細胞の中で続いて発現されるコード化された蛋白が、選択された元のcDNA中にコード化されている蛋白のアミノ末端又はカルボキシ末端のどちらかに蛋白(ポリペプチド)フラグメントを有するようにさせる。アッセイは一時的なトランスフェクション又は安定した細胞株若しくは感染体を使用して、例えば問題の蛋白を発現させるように設計されたレトロウイルス又はアデノウイルスを用いて、問題の相互作用の検出が可能になるように構築することができる。
【0049】
薬理学的プロファイリングの工程4では、各化合物又は薬物を各蛋白−蛋白相互作用に対して特定の時点及び薬物濃度にて試験する。各薬物結果を対照(無処理)の値と比較する。(陽性及び陰性対照は各時点及び刺激条件で、各アッセイについて行うことができる。)工程5で、アッセイの結果を組み合わせて各化合物の薬理学的プロファイルを確立させる。結果は様々な方法で表示することができる。ここに提示した例では、本発明者らは薬理学的プロファイルを描くためにマトリックスディスプレイ及び/又はヒストグラムを使用した。マトリックスの場合には、各スクリーンの結果を、赤色がシグナル強度又は位置の減少を表し緑色が増加を表すような色彩コードマトリックスで描くこともできる。赤色及び緑色の異なる濃淡を変化の強度を描くために使用することができる。このように、ディスプレイはマイクロアレイ実験のそれと同様である。
【0050】
経路分析に適したソフトウェアを使用して、薬理学的結果が上流及び下流での事象並びにそれらの事象に関連する薬物を示す図表に翻訳されている経路マップを作成することができる。適当な経路分析ソフトウェアはインジェニュイティ・システムズ、GeneGo及び他の多くの供給元から発売されている。
【実施例】
【0051】
実験プロトコール
本発明を大規模に適用するために、本発明者らはアポトーシス、細胞周期、DNA損傷反応、GPCRシグナル伝達、分子シャペロン相互作用、細胞骨格調節、プロテアソーム分解、有糸分裂誘発、炎症、及び核ホルモン受容体経路を含む重要な細胞プロセスを制御する経路について多数のアッセイを構築した。蛋白−蛋白複合体は、十分に特性決定された経路内の異なる階層的レベルでの相互作用を代表するように選択した。調べた経路の例、及び様々な標的についてのアッセイの例を、薬物、毒物及びリード化合物の予期された(「オン経路の」)作用及び予期しない作用の例とともに、本発明の図7ないし15に表した。本発明者らはこの手法の普遍性を強調するために広範囲の経路、蛋白、薬物及び標的クラスを扱った。
【0052】
調査した特定の蛋白の詳細を以下の表1ないし3に示す。任意の蛋白相互作用について、その相互作用に対する動的なアッセイを構築することができさえすれば、本発明が使用できることに注目することが重要である。さらに、細胞ベースのアッセイのための我々の経路変調戦略を含む本発明の特別の要素は、細胞中の蛋白複合体の、又は個々の蛋白でも、任意の測定パラメーターに適用することができる。
【0053】
ヒトのシグナル伝達ネットワーク上の薬物作用を評価するために、本発明者らはヒト細胞株(HEK293細胞)にハイコンテントアッセイを用いて薬物作用を分析した。このアッセイでは異なる条件下での特定のシグナル伝達の分岐点の活性を調べることが可能であり、活性は経路ネットワーク内の時間及び空間のレベルでモニターすることができる。この戦略を大規模に適用するために、本発明者らはアポトーシス、細胞周期、DNA損傷反応、GPCRシグナル伝達、分子シャペロン相互作用、細胞骨格調節、プロテアソーム分解、有糸分裂誘発、炎症、及び核ホルモン受容体経路を含む重要な細胞プロセスを制御する経路について多数のアッセイを構築した。複数の標的クラス及び経路を代表する多様なシグナル伝達分岐点の応答を分析することにより、本発明者らはオン経路及びオフ経路の薬物活性及び薬物選択性、メカニズムベースの毒性及び一般的な毒性、並びに薬物間の関連性を正確に示すことができた。
【0054】
PCAスクリーンは、相互作用する2個の蛋白に融合された場合にのみ折りたたまれて活性形態になるレポーター蛋白の相補性フラグメント(F[1]及びF[2])を使用する。蛋白−蛋白複合体(表1)は、十分に特性決定された経路内の異なる階層的レベルに生じる既知の相互作用を代表するように選択した。この例のために、本発明者らはYFPの強い蛍光性の変異体のフラグメントに基づいてアッセイを操作した(Remy and Michnick, 2001; Remy and Michnick, 2004; Remy et al., 2004)。この変異体は急速に(9分;Nagai et al., 2002)に成熟し、ヒト細胞中に低レベルで発現される完全長の蛋白間で形成される複合体の可視化、定量化及び位置測定を可能にする。発現を最小限にするという目標は、すなわち外生の蛋白による内在性経路の動揺の可能性を最小限にすることを意味した(Yu, 2003)。
【0055】
フラグメントの合成及び構築体の調製
PCA用のレポーターフラグメントはオリゴヌクレオチド合成により作成された(ブルー・ヘロン・バイオテクノロジー社、ボセル、WA)。最初に、ポリペプチドフラグメントYFP[1]及びYFP[2] (YFPのアミノ酸1-158及び159-239に対応する)をコード化するオリゴヌクレオチドを合成した。次に、PCR突然変異誘発を変異体フラグメントIFP[1]及びIFP[2]を産生させるために使用した。IFP[1]フラグメントはYFP[1]-(F46L、F64L、M153T)に対応し、IFP[2]フラグメントはYFP[2]-(V163A、S175G)に対応する。これらの突然変異は完全なYFP蛋白の蛍光強度を増加させることが示されている(Nagai et al., 2002)。以下に述べるような、問題の遺伝子を各レポーターフラグメントの5'-末端又は3'-末端のいずれかに融合させることができる配置をとる制限部位及びリンカー配列を組込むように、YFP[1]、YFP[2]、IFP[1]及びIFP[2]フラグメントをPCRにより増幅した。レポーター・リンカー・フラグメントカセットは、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)の複製起点(oriP)を組込むように修飾された哺乳動物発現ベクター(pcDNA3.1Z、インビトロジェン社)中にサブクローニングされた。oriPは、HEK293E細胞(293-EBNA、インビトロジェン社)のようなEBNA1遺伝子を発現させる細胞株中でのこれらの修飾ベクターのエピゾーム複製を可能にする。さらに、これらのベクターはSV40起点も保持しており、SV40ラージT抗原(例えば、HEK293T、Jurkat又はCOS)を発現させる細胞株中でのエピゾーム発現が可能である。変異したレポーターフラグメントの完全性及び新しい複製起点は配列決定によって確認された。
【0056】
PCA融合構築体を、多様な範囲の細胞経路に関与することが知られている多数の蛋白について調製した(表1)。問題の各遺伝子の完全長をコードする配列を、配列が確認されている完全長cDNAからのPCRによって増幅した。得られたPCR生成物をカラム精製し(セントリコン社)、指向性のクローニングを可能にするように適当な制限酵素で切断し、フレキシブルな10アミノ酸ペプチド(Gly.Gly.Gly.Gly.Ser)2をコードするリンカーによりYFP[1]、YFP[2]、IFP[1]又はIFP[2]の5'末端又は3'-末端のいずれかにインフレーム融合させた。このフレキシブルリンカーにより、融合体の配向性/配置が確実に、レポーターフラグメントを隣接部に運ぶのに最適なものとなる(Pelletier et al., 1998)。宿主株であるDH5-alpha(インビトロジェン社、カールスバード、CA)又はXL1 Blue MR (ストラタジーン社、ラ・ホーヤ、CA)中の組換え体を、コロニーPCRによってスクリーニングし、正確なサイズのインサートを含んでいるクローンを、問題の遺伝子の存在と適当なレポーターフラグメントのインフレーム融合を確認するために最終配列決定にかけた。融合構築体のサブセットをプライマーウォーキングによる完全インサート配列決定用に選択した。DNAはQiagen MaxiPrepキット(キアゲン社、チャッツワース、CA)を使用して単離した。PCRは適当な遺伝子−特異的プライマーとレポーター−特異的プライマーを組み合わせることにより、適正な遺伝子融合体が適正なサイズで内部欠失のない状態で存在することを確認して、各融合構築体の完全性を評価するために使用した。
【0057】
上述の蛍光性蛋白のフラグメントはすべて、共通所有権下にある2003年12月1日出願の米国特許出願 No.10/724,178の対象であり、その出願内容を参照により本明細書にすべて含める。
【0058】
一過性トランスフェクション
HEK293細胞を、10%FBS(ジェミニ・バイオ-プロダクツ社)、1%ペニシリン及び1%ストレプトマイシンを追加したMEMアルファ培地(インビトロジェン社)中で継代し、5%CO2で平衡化した37℃インキュベータ中で生育させた。トランスフェクションの約24時間前に、細胞を96ウェルのploy-D-Lysineコーテッドプレート(グライナー社)中にマルチドロップ384ペリスタル型ポンプシステム(サーモ・エレクトロン社、ウォルサム、Mass)を用いて7,500細胞/ウェルの密度で接種した。最大で100ngの相補性YFP又はIFPフラグメント融合ベクターをFugene 6(ロッシュ社)を用いて製造元のプロトコールに従って共トランスフェクトした。この研究でスクリーニングして選択したPCAペア、並びに対応する遺伝子及びレポーターフラグメント情報を表2にリストした。24時間又は48時間の発現の後に、細胞を下記に述べるような薬物のパネルに対してスクリーニングした。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
【表5】

【0064】
【表6】

【0065】
【表7】

【0066】
【表8】

【0067】
安定細胞株
いくつかの相互作用のために、安定細胞株を作成した。p50/p65及びIkBa/p65については、HEK293細胞をYFP[2]-p65融合ベクターを用いてトランスフェクトし、100μg/mlハイグロマイシンB(インビトロジェン社)を使用して安定細胞株を選択した。続いて、選択された細胞株を、YFP[1]-p50又はIκBα-YFP[1]でトランスフェクトし、YFP[1]-p50/YFP[2]-p65及びIκBα-YFP[1]/YFP[2]-p65を発現させる安定細胞株を単離し、50μg/mlハイグロマイシンB及び500μg/mlゼオシンを用いた二重抗生剤選別を行った。b2AR/B-アレスチンについては、HEK293細胞をYFP[1]- β-アレスチン融合ベクターを用いてトランスフェクトし、1000μg/mlゼオシンを使用して安定細胞株を選択した。続いて、選択された細胞株をベータ2-AR-YFP[2]融合ベクターでトランスフェクトし、YFP[1]-ベータ-アレスチン/ベータ2-AR-YFP[2]を発現させる安定細胞株を単離し、200μg/mlハイグロマイシンB及び500μg/mlゼオシンを用いた二重抗生剤選別を行った。Akt1/PDK1については、HEK293細胞をYFP[1]-Akt1及びPDK1-YFP[2]融合ベクターを用いて共トランスフェクトし、1000μg/mlゼオシンを使用して安定細胞株を選択した。すべての細胞株において、蛍光シグナルは少なくとも25回の継代にわたって安定であった(データ表示なし)。薬物処理の約24時間前に、細胞を96ウェルのploy-D-Lysineコーテッドプレート(グライナー社)中にマルチドロップ384ペリスタル型ポンプシステム(サーモ・エレクトロン社、ウォルサム、Mass)を用いて接種した。
【0068】
薬物試験
HEK293細胞(7,500/ウェル)は最大で100ngの相補性融合ベクターでFugene 6(ロッシュ社)を用いて製造元のプロトコールに従って共トランスフェクトした。トランスフェクションの24時間又は48時間後に、細胞を以下に述べるようにデュプリケイトのウェル中で薬物に対してスクリーニングした。p50:p65、betaArr2:beta2AR及びAkt1:Pdk1での薬物試験では、安定細胞株を薬物処理の24時間前に接種した。
【0069】
107個の異なる薬物(薬物名及び用量は表4に掲げる)を1つ以上の時点においてデュプリケイトで49個の別個のアッセイについて試験した。薬物濃度は公表されている細胞のIC50の約3倍(3X)になるように選択し、HEK293細胞において毒性が無いことを確実にするために試験した。液体を扱う工程はすべてバイオメック FX(ベックマン・インスツルメンツ社、フラートン、CA)を使用して行なった。PCAペアを発現する細胞は、薬物を含む細胞培養培地中で30分、90分及び8時間、又はDNA損傷応答経路の場合には18時間インキュベートした。ある種の経路については、細胞を最初に薬物で処理し、その後、アゴニスト(CPT、TNFアルファ又はイソプロテレノール)で刺激して経路を誘導させた。このようにして、アゴニストに依存した経路を遮断する薬物を同定することができた。薬物処理の後、細胞を33μg/mlヘキスト33342(モリキュラー・プローブス社)及び15μg/mlテキサスレッド共役−小麦胚芽アグルチニン(WGA;モリキュラー・プローブス社)、で同時に染色し、2%ホルムアルデヒド(テッド・ペラ社)で10分間固定した。続いて細胞をHBSS(インビトロジェン社)ですすぎ、画像収得の間は同じバッファー中で維持した。
【0070】
蛍光画像分析
ロボットアーム(CRSカタリスト・エクスプレス;サーモ・エレクトロン社、ウォルサム、Mass)を備えたディスカバリー-1自動蛍光画像処理機(モレキュラー・ディバイシーズ社)を用いて、細胞画像を得た。1ウェル当たり4個のオーバーラップしない細胞集団の画像を得るために以下のフィルターセットを使用した:
励起フィルター 480+/-40nm、発光フィルター 535+/-50nm(YFP);
励起フィルター 360+/-40nm、発光フィルター 465+/-30nm(ヘキスト);
励起フィルター 560+/-50nm、発光フィルター 650+/-40nm(テキサス・レッド;薬物研究用)。
各ウェルについて4個のスキャンが得られ、各スキャンは150-300個の細胞を表わした。各波長に一定の露光時間を使用して、所定のアッセイのための全ての画像を得た。
【0071】
16ビットのグレイスケールTIFFフォーマットでの生の画像を、ImageJ API/ライブラリー(http://rsb.info.nih.gov/ij/、NIH、MD)からのモジュールを使用して分析した。最初に、各蛍光チャンネルからの画像(ヘキスト、YFP及びテキサス・レッド;最後のみ薬物研究用)をImageJビルトイン・ローリングボール・アルゴリズムを使用して標準化した(Sternberg, 1983年)。PCAがそれぞれ特定の細胞内区画又は細胞小器官内にシグナルを発生させ、薬物処理が複合体の位置又はシグナル強度の変化をもららすことになるため、膜、核又は細胞質ゾルに局所化された蛍光シグナルを正確に計量するには異なるアルゴリズムが必要とされた。各アッセイを蛍光シグナルの細胞内位置によって分類し、各サンプル母集団中のシグナル強度の変化を4個の自動画像分析アルゴリズムのうちの1つを使用して定量した。
【0072】
アルゴリズム1:細胞全体を通じての蛍光の平均値の変化を、自動閾値処理されたヘキスト(核染色)、テキサス・レッド(WGA;細胞膜染色)又はYFP(PCAシグナル)画像に基づいてマスクを生成した後に定量した。閾値処理していないYFP画像(YI)から得られたヒストグラムを全体的なバックグラウンド(最も低い強度ピークの平均値)を定義するために使用した。3個のマスクすべてをオーバーレイしたものが個々の粒子(細胞に近似)を規定した。YI中の陽性のピクセルはスキャン中のすべての陽性粒子の平均ピクセル強度(陽性粒子平均、PPM)を計算するためにサンプリングされた。
【0073】
アルゴリズム2:核に限定された蛍光の変化を測定するために、核マスク中に存在するユーザ定義のゲート値以上のピクセルをすべてYIからサンプリングし、平均核蛍光及び核蛍光総計(ヘキスト・エリアについて標準化)を測定して、結果としてNucSum又はNuc Meanを得た。
【0074】
アルゴリズム3:蛍光総計の母集団変化を測定するために、ユーザ定義のゲート値以上のピクセルをすべてYIからサンプリングし、平均蛍光総計及び蛍光総計(ヘキスト・エリアについて標準化)を測定して、結果としてBulk Sum又はBulk Meanを得た。アルゴリズム4:膜における蛍光の変化を測定するために、閾値処理したテキサス・レッド(WGA)画像に基づくマスクを使用して、膜領域中のピクセルをサンプリングした。マニュアルで確立されているゲート値以上の膜関連ピクセルをサンプリングして、平均膜蛍光を測定した。
【0075】
すべてのアルゴリズムについて、データは平均値を計算する前に全体的なバックグラウンドに対して補正した。各アッセイについて、画像の試験セットが作成された。各セットは、賦形剤のみで処理した細胞の画像(対照)及びシグネチャー化合物(そのアッセイの既知の変調剤)で処理した細胞の画像が含まれた。画像中の蛍光を各アルゴリズムで定量し、結果をその画像のマニュアルスコアと比較して、処理サンプルと対照の間の差を定量するために最も適したアルゴリズムを割り出した。
【0076】
各アッセイにおける各処理の効果を、賦形剤対照(イソプロテレノール及びプロプラノロールについてはPBS;他の全薬物についてはDMSO)の結果と比較した。アルゴリズム1によって作成されたデータに対して、PPMは少なくとも8個のスキャンから各データポイント(PCAペア/刺激/薬物)についてプールした。全サンプルについてPPMを計算するのに先立ち、グループ(平均±3SD)の範囲外になる粒子を除外するためにアウトライアーフィルターを適用した。アルゴリズム2 -4において、各サンプルのNuc Sum、Bulk Sum又はMem Sumは、人為的蛍光を伴うスキャンを除外するために2SDフィルターを適用した後の薬物に対して少なくとも8個のスキャンからの平均値を表わす。薬物試験の結果は「シグネチャー」薬物について最低3回の別個の実験で繰り返され、反復実験間で一致を示した。
【0077】
マトリックス及びクラスタリング
マトリックスにおいて、横列はそれぞれ特有の薬物を表わし、カラムはそれぞれ特定の時点におけるTNFalpha、CPT又はイソプロテレノールのような経路変調剤の非存在下又は存在下での特有のアッセイを表わす。各データポイントは対照に対するサンプルの比率の対数を取ることにより形成されている。すべての列及びカラムは同等の比重を持つ。ウォード階層クラスタリングアルゴリズム(Ward, 1963)及びユークリッド距離測定法(http://www.r-project.org/)を処理のクラスタリングに使用した。表示の目的のために、マトリックス内の各データポイントは、アッセイ内の相対的な違いを例示するために色彩コード化してある。対照値に対する増加は緑色で表示され、減少は赤色で表示されている。それぞれの色はさらに2つのレベルに分けられる:レベル1(2x CV)、又はレベル2(1.5x CV)。レベル1はより明るい色調で表示され、レベル2はより暗い色調で表示される。
【0078】
結果
本発明の範囲
本発明者らは、本発明が薬理学的プロファイリング及び創薬のための普遍的な方法を提供するものであることを示した。この方法は問題の任意の試験化合物、薬物、毒物、薬物標的、経路又は細胞に適用することができる。広い範囲の蛋白及び経路について多数の例を図6ないし16に示す。
【0079】
本発明により薬物のオン経路及びオフ経路の作用の同定が可能になり、リード最適化及び選択的なふるい落としによって薬物候補の改良が可能になる。本発明は薬物リードの特性の評価、その特性の修飾、及び修飾されたリードの再試験に反復的な様式で適用することができる。この手法により、化合物の構造が特別のアッセイ結果及び薬理学的プロファイルに関連付けられた細胞構造−活性試験が可能であり、望ましい化学成分及び望ましくない化学成分の同定ができる。このように、生物系においてゲノム全体に渡る規模で化学的作用の検出を可能にするという点において、本発明は化学的ゲノミクスの一例と言える。本発明は細胞ベース又はインビトロのアッセイに使用することができるが、ここで使用する場合、細胞ベースのアッセイのほうが必要とする操作が少ない。
【0080】
薬物、毒物及びリード化合物のオン経路及びオフ経路作用
図6(A-B)は、GPCR経路における相互作用の例を示す。図7(A-C)は、ユビキチン/sumo/プロテアソーム経路における相互作用及びそれらの経路上での薬物作用の例を示す。図8(A-D)は、キナーゼシグナル伝達経路における相互作用及びそれらの経路上での薬物作用の例を示す。図9(A-B)は、ヒートショックプロテイン経路における相互作用及びそれらの経路上での薬物作用の例を示す。図10(A-B)は、核ホルモン受容体経路における相互作用及びそれらの経路上での薬物作用の例を示す。図11(A-B)は、アポトーシス経路における相互作用及びそれらの経路上での薬物作用の例を示す。図12は、様々な経路上での(経路変調剤の非存在下又は存在下での)薬物作用の別の例を示す。図13(A-B)は、ヒストグラムで描いた薬理学的プロファイルを示す。図14は経路変調戦略をDNA損傷応答経路での結果を用いて例示している。図15(A-B)は経路変調戦略をGPCR経路での結果を用いて例示している。これらの例は既知の薬物標的クラスを代表するものとして選択されている;これらの例、及び表1にリストされた相互作用は本発明の幅を例示するために提供されたものであり、本発明の範囲又は使用を制限することを意図したものではない。本発明は、任意の経路における任意の蛋白に適用することができる。蛋白相互作用及び薬物作用の例について以下で考察する。
【0081】
この戦略を用いると、薬物作用を薬物処理の数分又は数時間以内に見ることができ、短期的及び長期的作用の両方を測定することができる。図12(A-D)は、翻訳後修飾、蛋白分解若しくは安定化、又は蛋白転座を含む既知のメカニズムによって変調される17個の既知の蛋白複合体についての代表的な画像を示す。示された薬物はそれぞれ、特定の処理時間における特定の複合体についてのシグナルの、適当な賦形剤対照と比較した場合の、増加、減少、又は細胞内位置のシフトのいずれかを引き起こした。様々な複合体の画像はそれぞれの複合体の主に膜、核及び細胞質での位置を示し、これらのアッセイのハイコンテント性及び自動顕微鏡検査法によるシグナルの細胞内局在性を解明する能力が強調されている。
【0082】
例えば、多くのキナーゼは、Hsp90及びCdc37のようなシャペロンと相互作用する (Perdew et al., 1997; Stancato et al., 1993, Arlander et al., 2003)。そのような相互作用の画像を図12(A)に示す。HSPの薬理学的阻害剤(ゲルダナマイシン又は17-アリルアミノ-ゲルダナマイシン[17-AAG])は、クライアント蛋白の関与する多数の複合体の減量を引き起こした。例えば、Akt1:Hsp90beta、Akt1:p27、Cdc37:Akt1及びAkt1:Pdk1は全て、ゲルダナマイシン及び17-AAGに対して感受性があり、H-Ras:Raf-1、Chk1:Cdc25C、Cdc2:Cdc25C;Cdc2:Wee1;及びChk1:p53も同様であった。Akt1複合体に対するゲルダナマイシン及び17AAGの作用の例を、図12(A)、及び図9Bに示す。このように、生細胞を薬物で処理し、関心を寄せる経路中の蛋白複合体をモニターすることにより、標的に対する特異的な薬理学的作用と同様に標的間の物理的及び機能的な関連性を決定することができる。
【0083】
別の例では、beta2アドレナリン作動性受容体(beta2AR)はベータ-アレスチン(beta-ARR2)と相互作用し、続いてGPCRキナーゼ(GRK)によって受容体のリガンド誘導によるリン酸化が起きる(Lin et al., 2002)。アゴニストの非存在下では、目視できるbetaArr2:beta2AR複合体はなかった(図15、左パネル)。アドレナリンアゴニストであるイソプロテレノールによる細胞処理は、数分以内に多数のbetaArr2:beta2AR複合体の形成を引き起こした(図15、右パネル)。図15中の蛍光顕微鏡写真は、クラスリン被覆ピットによる、アレスチンの受容体への結合及びそれに続く内在化の時間的経過と一致する斑点状の細胞質パターンを示している(Zhang et al., 1996)。逆アゴニストであるプロプラノロールで細胞を前処理すると、予想されるようなイソプロテレノール誘導による相互作用及びbetaArr2:beta2ARの内在化が妨げられた(Zhang et al., 1996)。これらの結果は、この手法によってアゴニストとアンタゴニストの時間的な作用をそれらの既知の標的において直接検出することができることを強く示している。多くのGPCRがベータ-アレスチンに結合するので、これらの相互作用及び他の下流の相互作用もこの戦略を用いて調べることができる。
【0084】
以下の例で実証されるように、本発明の重要な特徴は経路の階層の異なるレベルで異なる薬物の作用を識別できることである。増殖細胞では、ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ(PI3K)が細胞膜にPdk及びAktを補充する(Anderson et al., 1998)。Wortmannin及びLY294002はPI3Kの既知の阻害剤であり(Vlahos et al., 1994)、Aktに対するホスホイノシチド(PIP3)膜受容体の合成を妨げ、それによりAktがホスファチジルイノシトール-3-依存性キナーゼ(Pdk1)によってリン酸化され活性化される場である膜へのAktの移動を妨げる。本発明者らは、Akt1とホスファチジルイノシトール-3-依存性キナーゼ(Pdk1)の間の複合体及びAkt1と、細胞周期調節において役割を果たすサイクリン依存性キナーゼ抑制剤であるp27(CDKN1B; Kip1)の間の複合体を評価することにより、Aktが関与する経路上での薬物の作用を研究した。対照ウェルでは、Akt1:Pdk1複合体は大部分が細胞膜に局在化した(図8C)が、Akt1:p27複合体は細胞核に集中した(図9B)。WortmanninとLY294002は、膜から細胞質へのAk1t:Pdk1の迅速な再局在化とAkt1:Pdk1複合体の全体量の減少をもたらしたが(図8C)、Akt1:p27には有意な効果を示さなかった(表示せず)。しかしながら、どちらの複合体もゲルダナマイシン及び17-AAGに感受性を示した。これらの結果は、核の中のAkt1:p27複合体のプールはAktシグナル伝達の初期段階に作用する薬物に感受性を示さないことを示唆している。Akt1:Pdk1及びAkt1:p27が別々の配置及び応答を示すことは、各アッセイがAktの全体的細胞内プールではなく特別のAkt複合体の生物学にのっとって、別個の細胞内プロセス及び細胞内区画での薬物の特有の作用の検出にとって重大な特徴を報告していることを例証している。上流で作用するキナーゼ抑制剤は下流での相互作用を調べることにより検出することができる。このことは図12D中に示され、そこではLY294002がCPTの存在下でp53:p53複合体を誘導している。また、図8Dでは、2つの異なる非特異的キナーゼ抑制剤がH-Ras1:Raf-1複合体を縮小させている。これらの結果は両方とも、図3に図解されているネットワークプロファイリング戦略の有用性を証明するものであり、本発明によりオン経路作用と同様にオフ経路作用も検出することができることを示している。
【0085】
G-蛋白共役受容体(GPCR)は、サイトカイン/成長因子受容体及び核ホルモン受容体と同様に、新薬の開発につながるような主要な標的クラスの蛋白と言える。核ホルモン受容体は、エストロゲンやテストステロンのようなステロイドの作用、レチノイド及びチアゾリジンジオンやフィブラートのような合成薬剤の作用を変調させる。核ホルモン受容体のアゴニストは、代謝疾患、糖尿病及び高脂血症の治療を含む様々な適用に向けて市販されている。図10Aは、これらの経路における相互作用、及び既知のアゴニストであるロシグリタゾン(アバンディアとして市販)のその受容体標的であるPPARgammaへの作用のいくつかを図解している。このようなアッセイは任意の数の既知の受容体又はオーファン受容体を調べたり、試験化合物がこれらの相互作用を活性化するか抑制するかどうかを判断するために使用することができる。さらに、ロシグリタゾンのような既知のアゴニストを、図14Aに図解されている経路変調戦略と共に使用して、活性化されているこれらの経路を遮断する薬剤を同定することもできる。
【0086】
上記で考察したシャペロン、GPCR、核ホルモン及びキナーゼが介在する経路に加えて、図12は、動的なGTPアーゼ介在プロセス、細胞骨格、細胞周期、アポトーシス、DNA損傷応答経路及び核ホルモン受容体相互作用に関与する複合体の例を示す。これらのレポーター複合体によって検出されるようなこれらの経路に対する薬物の代表的な作用を、ここに記述する。
【0087】
エフェクター蛋白とのGTPアーゼ相互作用は重要な分子スイッチとして認識されている。図8D及び図13Aは、BAY 11-7082を含む非選択的キナーゼ阻害剤に対して感受性を持っていた原型のGTPアーゼ:キナーゼエフェクター複合体(H-Ras:Raf1)を図解している。元はIKK阻害剤として同定されたBAY 11-7082は、予想されたようにTNFalphaに応答して細胞質から核へp50:p65(NFkappaB)が移動するのを遮断した(図12B) (Thevenod et al., 2000)。細胞骨格の形態を制御する経路に関して、LIMキナーゼ2(Limk2)はアクチンを解重合する因子コフィリンを不活性化する (Sumi et al., 1999)。Cofilin:Limk2複合体は、キナーゼ阻害剤インジルビン-3'-モノキシムによってほぼ完全に除去された(図12C)。研究した細胞周期蛋白にはCdc25C、Cdk4、サイクリンD1及びp53が含まれた。プロテアソーム阻害剤ALLNで処理すると、核の中にサイクリンD1:Cdk4が徐々に蓄積される結果となり(図12B及び13B)、これは26SプロテアソームによるサイクリンD1レベルの調節と一致している(Diehl et al., 1997)。イソプロテレノールはMnk1:Erk2を誘導し、この結果はアドレナリンアゴニストに誘導されたMAPK活性に関する以前の報告と一致している(Fig.12D) (Daaka et al., 1997; Muhlenbeck et al., 1998)。上に述べたように、LY294002はp53:p53を増加させ、これはAktがMdm2をリン酸化して活性化し、p53のユビキチン化及び分解を増加させるという報告と一致している(Ogawara et al., 2002)。
最後に、リガンドにより活性化される転写因子の複合体、PPARgamma:SRC-1(図12B)及びPPARgamma:RXRalpha(図10A)は、予測されたように、既知のPPARgammaアゴニストであるロシグリタゾンでの処理に反応して増加した(Nolte et al., 1998)。
【0088】
本発明者らはさらに、新規であるが、経路の構成についての公表された報告に一致する特定の薬物の興味深い作用を観察した。TNFalphaファミリーリガンドである蛋白サイトカインTRAIL(Wiley et al., 1995)はBcl-xL:Badを増加させた(図12B)。また、プロテインキナーゼ阻害剤Goe6976はPAK4と細胞骨格蛋白コフィリンとの複合体を増加させた(図12D)。酵母では、細胞が細胞周期のG2/M期に進むと、Cdc42及びPAK相同体が活性化され、細胞骨格に変化が生じた(Richman et al., 1999)。Goe6976は、チェックポイント(Chk)キナーゼの強力な阻害剤であり (Kohn et al., 2003)、G2/Mへの進行を促進する。従って、PAK4:コフィリンのようなCdc42/PAKより下流のプロセスに対してのGoe6976が介在する活性化は驚くべきことではない。本発明者らはまた、初めて転写因子(c-Jun)及びプロリル・イソメラーゼ(Pin1)を含む核複合体の画像を明らかにしている。Pin1は、キナーゼJNKによりリン酸化及び活性化された後、Junに結合する(Wulf et al., 2001)。本発明者らは、クロフィブレートによる細胞処理の後、Pin1:Jun複合体の強い抑制を観察した(図12D)。PPARalphaアゴニストであるクロフィブレートは、PPARalphaとその転写の共調整因子との結合を増加させ、c-Junの転写活性を低下させることが示され(Yokoyama et al., 1993)、これらの著者によりPPARgamma及びc-Junの直接的相互作用が示唆されている。さらに、PPARgammaアゴニストはJNK経路の活性を抑制することが示されており(Irukayama-Tomobe et al., 2004)、このことが本発明者らの観察したPin1:Jun複合体の減少をもたらすものと思われる。
【0089】
要するに、広い範囲の標的クラス及び細胞のプロセスにおいて予期される薬物効果及び予期されない薬物効果の両方を、蛋白複合体及び薬物処理に対するその反応をモニタリングすることにより短期的及び/又は長期的な時点で検出することができた。
【0090】
化学的に関連性のある薬物は細胞アッセイ・パネル中で共通の活性を有していた。
上に示した例は、蛋白複合体の空間的及び時間的な動力学を分析することにより、細胞の経路及びプロセスに対する薬物の個々の作用を測定することができることを例証している。本発明者らはこの手法を、6つの治療分野(癌、炎症、心血管疾患、糖尿病、神経障害、感染症)をターゲットとするか、又は細胞メカニズム(例えば、蛋白輸送)の一般的な変調剤として機能する、107個の異なる薬物の薬理学的プロファイリングにも用いた(表4)。生理的な化合物用量を超えた際にしばしば観察される広範囲な標的外作用を回避するために、本発明者らは生理学的に妥当な薬物濃度に注目した。薬物を、細胞経路に対する早期の作用を捕らえるために30分から16時間に及ぶ複数の時点で試験した。例えば、いくつかの化合物は、時間経過とともにアッセイシグナルを一様に増加させ、他のあるものはシグナル強度の二相性の変化をもたらし、また、他の薬物処理の結果、時間経過とともにシグナル強度が低下することもある。
【0091】
すべての薬物/アッセイの結果の定量的データは、薬物及び個々のアッセイ時点の両方についてクラスター化された色彩コードマトリックスで表示されており(図17A)、薬物クラスター系統図の拡大図を図17Bに示す。意外なことに、薬物が標的とする経路に関して報告しようとして意図的にアッセイを選択したわけではないという事実にもかかわらず、薬物は主に既知の構造−標的クラスにクラスター化した。この結果は、高度に枝分かれした細胞シグナル伝達ネットワーク内の蛋白複合体の動力学を評価することにより、細胞プロセス中で共有される薬物作用を解明できるかもしれないことを示唆している。報告上類似又は同等の細胞標的を持つ構造的に関連した薬物のグループについて、機能上のクラスターを作成した(図17B)。これらには、プロテアソーム阻害剤、ALLN及びMG-132;ベータ−アドレナリンGPCRアゴニスト、イソプロテレノール、クレンブテロール及びサルブタモール;HSP90阻害剤、17-AAG及びゲルダナマイシン;並びにPPARgammaアゴニスト、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン及びトログリタゾンが含まれる。これらの例及び他の例において、観察されるクラスターを導いた薬理学的プロファイル中の類似性は、薬物グループ内で共有される構造的特徴に関係していた。
【0092】
毒性の基礎にあるメカニズムを研究し、かつ特定の毒性メカニズムに関連した薬理学的プロファイルを確立するために、既知の毒物をこの発明と共に使用することができる。その後、リード化合物及び他の検査薬を既知の毒物と比較して、試験化合物が同様の活性を有するかどうかを判定することができる。例えば、図16Aに示すように、塩化カドミウムは多数の経路に対して明らかな作用を示した。これらのうちのいくつかは、NFkappaB (p50:p65)に対するカドミウムの作用のように、既知の又は予想されたものであり、これらのアッセイの中でカドミウムの予期された作用及び予期されなかった作用の両方を正確に示すことができた。図16Bに示すように、リード化合物のプロファイルをカドミウムのプロファイルと比較した。2個の特許リード化学物質はカドミウムと類似のプロファイルを示した。これらの化合物はその後、げっ歯動物に肝毒性をもたらすことが文書で証明された。本発明によるリード物質の薬理学的プロファイリングによって、動物試験の前にそれらの活性が同定され、前臨床試験にかかる時間と費用が節約されたであろう。
【0093】
薬物のいくつかの活性は一定の状況下では望ましいが、他の状況下では望ましくない。本発明はこれらの活性を同定するために使用することができる。図15Bは、腫瘍内科臨床用にキナーゼ抑制剤として元々設計された市販のリード化合物が、β-アドレナリン作動性受容体に強力な作用を有したことを示す。この活性は意図した適用の観点からは望ましくないものであり、そのためこの化合物はふるい落とされた。その後の研究から、この化合物が確かに心臓毒性を有することが示され、それにより、本発明並びにここに提供される蛋白−蛋白相互作用及びそれらの使用方法の有用性が確認された。
【0094】
この結果はさらに、我々が「経路変調(pathway modulation)戦略」(図14A)と呼ぶ本発明の重要な局面及び一般的な戦略を強調するものである。多くの細胞経路は、基本的な状態又は刺激されていない状態では活性が低いが、1つ以上のアゴニスト又は活性化剤により活性化することができる。最初に試験化合物で細胞を処理し、次にアゴニスト又は活性化剤で処理する場合、試験化合物の経路活性化を遮断する能力を測定することができる。これは図15Bで研究したリード化合物に当てはまる;すなわち、それはβ-アドレナリン作動性受容体を遮断し、イソプロテレノールの存在下でのみ作用は見られた。(イソプロテレノールの非存在下では、図15Bの左上の画像に示されるように、この経路は完全に遮断されている。)さらに、TNF依存性の経路を遮断する薬剤は、この薬剤で細胞を処理し、その後TNFで細胞を刺激することによりわかるであろう(図12)。
【0095】
経路変調戦略をさらに図14Bで例示し、そこでは細胞を試験化合物(薬物)で処理した後にカンプトテシンで処理した。カンプトテシン(CPT)は、一定期間にわたってDNA損傷を誘導し、図14Bの画像に示されるように、損傷応答経路中に様々な相互作用を誘導する。CPTの存在下における様々な化合物の作用の評価により、CPTの作用を遮断するか、又はCPTの作用を強める薬剤の検出が可能になった。これらの作用のうちのいくつかは状況に応じて望ましい時と望ましくない時があるであろう。例えば、チェックポイント・キナーゼの抑制剤は、DNA損傷性薬剤と合わせて腫瘍内科臨床で使用するために開発中である。このような薬剤にとっては、CPTとの相乗効果が望ましく、それはこの戦略により検出することができる。マトリックス中に示されるように、タキソール及びテルフェナジンはこれらの経路の多くを活性化した。対照的に、ゲルダナマイシン、17-AAG及びY27632はこれらの経路のいくつかにおいて逆の作用を示した。
【0096】
図14Bに示すように、テルフェナジンは既知の有効な抗癌剤であるパクリタキセル(タキソール)に見られたのと同様の様式でいくつかのDNA損傷応答経路を活性化した。このことから、テルフェナジンの潜在的な抗増殖活性の評価が促された。前立腺癌細胞株におけるテルフェナジンの研究から、ここで決定された薬理学的プロファイルに一致して、抗増殖性活性を有することが示された(データ表示なし)。従って、本発明による既知の薬物の薬理学的プロファイリングを使用して、ヒトの治療用に既知の薬物の潜在的な新規の用途、適応及び組合わせを迅速に同定することができるであろう。これは、既知の薬物に薬理学的プロファイリングを行ない、得られたプロファイルを既知の治療上の特性を持つ他の薬剤と比較することにより遂行される。試験薬剤が既知の/望ましいプロファイルを持った薬剤に類似のプロファイルを有する場合、その試験薬剤を機能アッセイで評価して、コンパレーター薬物と同じ機能を持つかどうかを判定することができる。
【0097】
いくつかの細胞経路は基礎状態において「オフ」であるが、経路のアゴニストで細胞を処理することにより「オン」に変えることができ、一方、他の細胞経路は基礎状態において「オン」であっても拮抗剤又は阻害剤で処理することにより「オフ」に変えることができる。例えば、基礎状態におけるAkt1:Pdk1の強い細胞膜シグナルにより示されるように(図8C、左パネル)、血清の存在下で生育したHEK293細胞中では、Aktは細胞膜に集中し、Akt1:Pdk1は「オン」である。例えば、問題の試験薬剤とともに、wortmannin又はLy294002のような拮抗剤又は阻害剤で、Akt1:Pdk1を発現する細胞を処理することもできる。試験薬剤がアンタゴニスト又は阻害剤の作用を打ち消すことができれば、それはすなわちAkt1:Pdk1シグナルを細胞膜(基礎)状態に回復させるであろう。このように、本発明は別の薬剤とともに、問題の試験化合物で細胞を処理するためのものである。各経路及びアッセイについて経験的に決定される最適なプロトコールにより、問題の試験化合物を投与する前、後又は同時に追加的な薬剤(経路変調剤)を投与することができる。薬理学的プロファイリングのための経路変調戦略が、蛋白−蛋白相互作用の測定に限定されることなく、任意の個々の蛋白、又はその翻訳後修飾状態の量又は細胞内位置を含む、他の経路活性の測定に適用することができる本発明のユニークな構成要素であることは、当業者に十分理解されるであろう。
【0098】
プロテインキナーゼであるAkt1が、wortmannin又はLy294002に応答して、本発明者らがAkt1:PDK1複合体について観察しているのと同様のパターンの細胞内再分布をとることは当業者に十分理解されるであろう。従って、Aktの細胞内位置及び再分布を測定することができるアッセイは、Akt1:Pdk1複合体の細胞内位置及び再分布を測定するアッセイの代用として使用することができる。Aktの再分布に対するアッセイはBioImage社(デンマーク)から市販されており、本発明と合わせて薬理学的プロファイリングに使用することもできる。同様に、NFkappaB複合体のp65サブユニットの再分布に対するアッセイは、本発明と合わせてp50:p65複合体の測定の代用として使用することができ、実質的に同様の結果をもたらすであろう。このようなアッセイはBioImage社(アッセイはGFPタグ付きのp65プロテインの発現に基づく)、又はCellomics社(アッセイはp65-特異抗体を用いた免疫蛍光検査法に基づく)のいずれかから入手可能である。最後の例として、ベータ−アレスチンの細胞内位置はベータ−アドレナリンアゴニスト及びアンタゴニストに応答して核内体にシフトする;これらのアッセイはTransFluorアッセイ(ノラック/モレキュラー・ディバイシーズ社)として知られており、図15Aに示される受容体:アレスチン複合体の測定の代用として使用してもよい。本発明は、薬理学的プロファイリングのためにハイコンテントアッセイパネルを使用するためのものであり、そのようなパネルは蛋白複合体又は相互作用を対象としたハイコンテント又はハイスループットアッセイに加えて個々の蛋白の再分布に対するハイコンテントアッセイを含んでいてもよい。
【0099】
本発明者らの発明はさらに、遺伝子チップのようなこれまで利用されてきた薬理学的プロファイリング戦略の持ついくつかの限界に取り組むものである。本発明の特徴は、経路内の複数のポイントで短期的及び、より長期的な作用を捕らえることができるということである。観察したアッセイ動力学のいくつかは、特により長い(8時間又は16時間の)時点ではアポトーシス又は細胞周期進行のような二次的又は機能的な細胞活動に対する反応であったが、より短い時点では化合物のより即時的な作用についての報告となる。複数の時点、及び経路階層内の複数のレベルでのシグナル伝達を調査することによって、問題の標的に直接関与するか又はそれに近接している変化を同定することができる。
【0100】
このような手法は、特別の蛋白の機能的・生化学的役割を明確にし、ヒトの治療法を開発する際に最も有望な標的を同定するために必要である。有害作用を持つ可能性のある化合物の迅速な排除(いわゆる「フェイル-ファースト」戦略)は同様に重要である。さらに、標的外(off-target)活性の特定の生化学的性質を理解することにより、分子の望ましい又は望ましくない機能的属性に取り組むための化学構造の改良が可能になると考えられる。ここで述べる戦略は、その後の研究から排除するために化合物にフラグを立てるか、又は他の治療領域の開発に改めて向けるための有効な手段を提供するものである。
【0101】
以下の特許及び出版物及びそれに引用されている参考文献の内容のすべてを、個々の特許、特許出願又は刊行物がそれぞれ記載されている場合と同様の範囲で、あらゆる目的についての全ての内容を参照として本明細書に含める。
【0102】
US 6,372,431 Cunningham, et al.
US 6,801,859 Friend, et al.
US 6,673,554 Kauvar, et al.
US 6,270,964 Michnick, et al.
US 6,294,330 Michnick, et al.
US 6,428,951 Michnick, et al.
US Patent Application 20030108869 Michnick, et al.
US Patent Application 20020064769 Michnick, et al.
US 6,342,345 Blau, et al.
US 5,891,646 Barak, et al.
US 6,110,693 Barak, et al.
US 6,518,021 Thastrup, et al.
US 5,583,217 Quante, et al.
US 5,516,902 Quante, et al.
US 5,514,561 Quante, et al.
US 5,338,843 Quante, et al.
【0103】
Alessi, D. R., Cuenda, A., Cohen, P., Dudley, D. T., and Saltiel, A. R. (1995). PD 098059 is a specific inhibitor of the activation of mitogen-activated protein kinase kinase in vitro and in vivo. J Biol Chem 270, 27489-27494.
Anderson, K. E., Coadwell, J., Stephens, L. R., and Hawkins, P. T. (1998). Translocation of PDK-1 to the plasma membrane is important in allowing PDK-1 to activate protein kinase B. Curr Biol 8, 684-691.
Angers et al., 2000, Detection of beta-2-adrenergic receptor dimerization in living cells using bioluminescence resonance energy transfer, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 3684-3689.
Arlander, S. J., Eapen, A. K., Vroman, B. T., McDonald, R. J., Toft, D. O., and Karnitz, L. M. (2003). Hsp90 inhibition depletes Chk1 and sensitizes tumor cells to replication stress. J Biol Chem 278, 52572-52577.
Basso, A. D., Solit, D. B., Chiosis, G., Giri, B., Tsichlis, P., and Rosen, N. (2002). Akt forms an intracellular complex with heat shock protein 90 (Hsp90) and Cdc37 and is destabilized by inhibitors of Hsp90 function. J Biol Chem 277, 39858-39866.
Bouwmeester, T., Bauch, A., Ruffner, H., Angrand, P. O., Bergamini, G., Croughton, K., Cruciat, C., Eberhard, D., Gagneur, J., Ghidelli, S., et al. (2004). A physical and functional map of the human TNF-alpha/NF-kappa B signal transduction pathway. Nat Cell Biol 6, 97-105.
Brazil, D. P., Park, J., and Hemmings, B. A. (2002). PKB binding proteins. Getting in on the Akt. Cell 111, 293-303.
Daaka, Y., Luttrell, L. M., and Lefkowitz, R. J. (1997). Switching of the coupling of the beta2-adrenergic receptor to different G proteins by protein kinase A. Nature 390, 88-91.
Dai, K., Kobayashi, R., and Beach, D. (1996). Physical interaction of mammalian CDC37 with CDK4. J Biol Chem 271, 22030-22034.
de Ruiter, N. D., Wolthuis, R. M., van Dam, H., Burgering, B. M., and Bos, J. L. (2000). Ras-dependent regulation of c-Jun phosphorylation is mediated by the Ral guanine nucleotide exchange factor-Ral pathway. Mol Cell Biol 20, 8480-8488.
Dempsey, P. W., Doyle, S. E., He, J. Q., and Cheng, G. (2003). The signaling adaptors and pathways activated by TNF superfamily. Cytokine Growth Factor Rev 14, 193-209.
Diehl, J. A., Zindy, F., and Sherr, C. J. (1997). Inhibition of cyclin D1 phosphorylation on threonine-286 prevents its rapid degradation via the ubiquitin-proteasome pathway. Genes Dev 11, 957-972.
Fry, D. W., Kraker, A. J., McMichael, A., Ambroso, L. A., Nelson, J. M., Leopold, W. R., Connors, R. W., and Bridges, A. J. (1994). A specific inhibitor of the epidermal growth factor receptor tyrosine kinase. Science 265, 1093-1095.
Galarneau, A., Primeau, M., Trudeau, L.-E. and Michnick, S.W. (2002). A Protein fragment Complementation Assay based on TEM1β-lactamase for detection of protein-protein interactions. Nat Biotechnol, 20: 619-622.
Gardner, O. S., Dewar, B. J., Earp, H. S., Samet, J. M., and Graves, L. M. (2003). Dependence of peroxisome proliferator-activated receptor ligand-induced mitogen-activated protein kinase signaling on epidermal growth factor receptor transactivation. J Biol Chem 278, 46261-46269.
Giaever, G., Flaherty, P., Kumm, J., Proctor, M., Nislow, C., Jaramillo, D. F., Chu, A. M., Jordan, M. I., Arkin, A. P., and Davis, R. W. (2004). Chemogenomic profiling: identifying the functional interactions of small molecules in yeast. Proc Natl Acad Sci U S A 101, 793-798.
Giaever, G., Shoemaker, D. D., Jones, T. W., Liang, H., Winzeler, E. A., Astromoff, A., and Davis, R. W. (1999). Genomic profiling of drug sensitivities via induced haploinsufficiency. Nat Genet 21, 278-283.
Gong, L., Li, Y., Nedeljkovic-Kurepa, A., and Sarkar, F. H. (2003). Inactivation of NF-kappaB by genistein is mediated via Akt signaling pathway in breast cancer cells. Oncogene 22, 4702-4709.
Hong, S., Lee, H. Y., Lee, Y. W., and Lee, H. W. (2000). Apicidin, a histone deacetylase inhibitor, inhibits proliferation of tumor cells via induction of p21WAF1/Cip1 and gelsolin. Cancer Res 60, 6068-6074.
Hanke, J. H., Gardner, J. P., Dow, R. L., Changelian, P. S., Brissette, W. H., Weringer, E. J., Pollok, B. A., and Connelly, P. A. (1996). Discovery of a novel, potent, and Src family-selective tyrosine kinase inhibitor. Study of Lck- and FynT-dependent T cell activation. J Biol Chem 271, 695-701.
Hazra, S., Xiong, S., Wang, J., Rippe, R. A., Krishna, V., Chatterjee, K., and Tsukamoto, H. (2004). Peroxisome proliferator-activated receptor gamma induces a phenotypic switch from activated to quiescent hepatic stellate cells. J Biol Chem 279, 11392-11401.
Hu, E., Kim, J. B., Sarraf, P., and Spiegelman, B. M. (1996). Inhibition of adipogenesis through MAP kinase-mediated phosphorylation of PPARgamma. Science 274, 2100-2103.
Huang J, Z. H., Haggarty SJ, Spring DR, Hwang H, Jin F, Snyder M, Schreiber SL (2004). Finding new components of the target of rapamycin (TOR) signaling network through chemical genetics and proteome chips. ProcNatlAcadSciUSA 101, 16594-16599.
Huh, W. K., Falvo, J. V., Gerke, L. C., Carroll, A. S., Howson, R. W., Weissman, J. S., and O'Shea, E. K. (2003). Global analysis of protein localization in budding yeast. Nature 425, 686-691.
Ihmels J, F. G., Bergmann S, Sarig O, Ziv Y, Barkai N (2002). Revealing modular organization in the yeast transcriptional network. NatGenet 31, 370-377.
Irukayama-Tomobe, Y., Miyauchi, T., Sakai, S., Kasuya, Y., Ogata, T., Takanashi, M., Iemitsu, M., Sudo, T., Goto, K., and Yamaguchi, I. (2004). Endothelin-1-induced cardiac hypertrophy is inhibited by activation of peroxisome proliferator-activated receptor-alpha partly via blockade of c-Jun NH2-terminal kinase pathway. Circulation 109, 904-910.
Ito, A., Kawaguchi, Y., Lai, C. H., Kovacs, J. J., Higashimoto, Y., Appella, E., and Yao, T. P. (2002). MDM2-HDAC1-mediated deacetylation of p53 is required for its degradation. Embo J 21, 6236-6245.
Kimura, Y., Rutherford, S. L., Miyata, Y., Yahara, I., Freeman, B. C., Yue, L., Morimoto, R. I., and Lindquist, S. (1997). Cdc37 is a molecular chaperone with specific functions in signal transduction. Genes Dev 11, 1775-1785.
Kohn, E. A., Yoo, C. J., and Eastman, A. (2003). The protein kinase C inhibitor Go6976 is a potent inhibitor of DNA damage-induced S and G2 cell cycle checkpoints. Cancer Res 63, 31-35.
Kunath, T., Gish, G., Lickert, H., Jones, N., Pawson, T., and Rossant, J. (2003). Transgenic RNA interference in ES cell-derived embryos recapitulates a genetic null phenotype. Nat Biotechnol 21, 559-561.
Lamphere, L., Fiore, F., Xu, X., Brizuela, L., Keezer, S., Sardet, C., Draetta, G. F., and Gyuris, J. (1997). Interaction between Cdc37 and Cdk4 in human cells. Oncogene 14, 1999-2004.
Li, W., Zhu, T., and Guan, K. L. (2004). Transformation potential of Ras isoforms correlates with activation of phosphatidylinositol 3-kinase but not ERK. J Biol Chem 279, 37398-37406.
Li, Y., and Sarkar, F. H. (2002). Inhibition of nuclear factor kappaB activation in PC3 cells by genistein is mediated via Akt signaling pathway. Clin Cancer Res 8, 2369-2377.
Lin, F. T., Chen, W., Shenoy, S., Cong, M., Exum, S. T., and Lefkowitz, R. J. (2002). Phosphorylation of beta-arrestin2 regulates its function in internalization of beta(2)-adrenergic receptors. Biochemistry 41, 10692-10699.
Losel, R., and Wehling, M. (2003). Nongenomic actions of steroid hormones. Nat Rev Mol Cell Biol 4, 46-56.
Lum PY, A. C., Stepaniants SB, Cavet G, Wolf MK, Butler JS, Hinshaw JC, Garnier P, Prestwich GD, Leonardson A, Garrett-Engele P, Rush CM, Bard M, Schimmack G, Phillips JW, Roberts CJ, Shoemaker DD (2004). Discovering modes of action for therapeutic compounds using a genome-wide screen of yeast heterozygotes. Cell 116, 121-137.

Lum, P. Y., Armour, C. D., Stepaniants, S. B., Cavet, G., Wolf, M. K., Butler, J. S., Hinshaw, J. C., Garnier, P., Prestwich, G. D., Leonardson, A., et al. (2004). Discovering modes of action for therapeutic compounds using a genome-wide screen of yeast heterozygotes. Cell 116, 121-137.
MacLean, M., and Picard, D. (2003). Cdc37 goes beyond Hsp90 and kinases. Cell Stress Chaperones 8, 114-119.
Mei, S., Ho, A. D., and Mahlknecht, U. (2004). Role of histone deacetylase inhibitors in the treatment of cancer (Review). Int J Oncol 25, 1509-1519.
Michnick, S.W., Remy, I., C.-Valois, F.X., Vallee-Belisle, A., Galarneau, A. and Pelletier, J.N. (2000) Detection of Protein-Protein Interactions by Protein Fragment Complementation Strategies, Parts A and B (John N. Abelson, Scott D Emr and Jeremy Thorner, editors) A Volume of Methods in Enzymology. 328, 208-230.
Ming, X. F., Viswambharan, H., Barandier, C., Ruffieux, J., Kaibuchi, K., Rusconi, S., and Yang, Z. (2002). Rho GTPase/Rho kinase negatively regulates endothelial nitric oxide synthase phosphorylation through the inhibition of protein kinase B/Akt in human endothelial cells. Mol Cell Biol 22, 8467-8477.
Mitsiades, C. S., Mitsiades, N., and Koutsilieris, M. (2004). The Akt pathway: molecular targets for anti-cancer drug development. Curr Cancer Drug Targets 4, 235-256.
Muhlenbeck, F., Haas, E., Schwenzer, R., Schubert, G., Grell, M., Smith, C., Scheurich, P., and Wajant, H. (1998). TRAIL/Apo2L activates c-Jun NH2-terminal kinase (JNK) via caspase-dependent and caspase-independent pathways. J Biol Chem 273, 33091-33098.
Nagai, T., Ibata, K., Park, E. S., Kubota, M., Mikoshiba, K., and Miyawaki, A. (2002). A variant of yellow fluorescent protein with fast and efficient maturation for cell-biological applications. Nat Biotechnol 20, 87-90.
Nolte, R. T., Wisely, G. B., Westin, S., Cobb, J. E., Lambert, M. H., Kurokawa, R., Rosenfeld, M. G., Willson, T. M., Glass, C. K., and Milburn, M. V. (1998). Ligand binding and co-activator assembly of the peroxisome proliferator-activated receptor-gamma. Nature 395, 137-143.
Ochel, H. J., Schulte, T. W., Nguyen, P., Trepel, J., and Neckers, L. (1999). The benzoquinone ansamycin geldanamycin stimulates proteolytic degradation of focal adhesion kinase. Mol Genet Metab 66, 24-30.
Ogawara, Y., Kishishita, S., Obata, T., Isazawa, Y., Suzuki, T., Tanaka, K., Masuyama, N., and Gotoh, Y. (2002). Akt enhances Mdm2-mediated ubiquitination and degradation of p53. J Biol Chem 277, 21843-21850.
Park, A., and Baichwal, V. R. (1996). Systematic mutational analysis of the death domain of the tumor necrosis factor receptor 1-associated protein TRADD. J Biol Chem 271, 9858-9862.
Parsons AB, B. R., Ding H, Li Z, Zhang C, Sheikh B, Brown GW, Kane PM, Hughes TR, Boone C (2004). Integration of chemical-genetic and genetic interaction data links bioactive compounds to cellular target pathways. NatBiotechnol 22, 62-69.
Pelletier, J. N., Campbell-Valois, F. X., and Michnick, S. W. (1998). Oligomerization domain-directed reassembly of active dihydrofolate reductase from rationally designed fragments. Proc Natl Acad Sci U S A 95, 12141-12146.
Pelletier, J.N., Remy, I. and Michnick, S.W. (1998). Protein-Fragment Complementation Assays: a General Strategy for the in vivo Detection of Protein-Protein Interactions. Journal of Biomolecular Techniques, 10: 32-39.
Perdew, G. H., Wiegand, H., Vanden Heuvel, J. P., Mitchell, C., and Singh, S. S. (1997). A 50 kilodalton protein associated with raf and pp60(v-src) protein kinases is a mammalian homolog of the cell cycle control protein cdc37. Biochemistry 36, 3600-3607.
Perlman, Z. E., Slack, M. D., Feng, Y., Mitchison, T. J., Wu, L. F., and Altschuler, S. J. (2004). Multidimensional drug profiling by automated microscopy. Science 306, 1194-1198.
Phelan, M. L., and Nock, S. (2003). Generation of bioreagents for protein chips. Proteomics 3, 2123-2134.
Picard, D. (2002). Heat-shock protein 90, a chaperone for folding and regulation. Cell Mol Life Sci 59, 1640-1648.
Pruitt, K., and Der, C. J. (2001). Ras and Rho regulation of the cell cycle and oncogenesis. Cancer Lett 171, 1-10.
Remy, I., Wilson, I.A. and Michnick, S.W. (1999). Erythropoietin receptor activation by a ligand-induced conformation change. Science, 283: 990-993.
Remy, I., and Michnick, S. W. (2001). Visualization of biochemical networks in living cells. Proc Natl Acad Sci U S A 98, 7678-7683.
Remy, I., and Michnick, S. W. (2003). Dynamic visualization of expressed gene networks. J Cell Physiol 196, 419-429.
Remy, I., and Michnick, S. W. (2004). Regulation of apoptosis by the Ft1 protein, a new modulator of protein kinase B/Akt. Mol Cell Biol 24, 1493-1504.
Remy, I., Montmarquette, A., and Michnick, S. W. (2004). PKB/Akt modulates TGF-beta signalling through a direct interaction with Smad3. Nat Cell Biol 6, 358-365.
Remy, I. and Michnick, S.W. (1999). Clonal Selection and In Vivo Quantitation of Protein Interactions with Protein Fragment Complementation Assays. Proc Natl Acad Sci USA, 96: 5394-5399.
Remy, I., Pelletier, J.N., Galarneau, A. and Michnick, S.W. (2002). Protein Interactions and Library Screening with Protein Fragment Complementation Strategies. Protein-protein interactions: A molecular cloning manual. E.A. Golemis, editor. Cold Spring Harbor Laboratory Press. Chapter 25, 449-475.
Richman, T. J., Sawyer, M. M., and Johnson, D. I. (1999). The Cdc42p GTPase is involved in a G2/M morphogenetic checkpoint regulating the apical-isotropic switch and nuclear division in yeast. J Biol Chem 274, 16861-16870.
Rodriguez-Viciana, P., Sabatier, C., and McCormick, F. (2004). Signaling specificity by Ras family GTPases is determined by the full spectrum of effectors they regulate. Mol Cell Biol 24, 4943-4954.
Rossi, et al., Monitoring protein-protein interactions in intact eukaryotic cells by beta-galactosidase complementation, Proc Natl Acad Sci USA 94: 8405-8410, 1997; and US 6,342,345
Ruehr et al., 1999, Cyclic AMP-dependent protein kinase binding to A-kinase anchoring proteins in living cells by fluorescence resonance energy transfer of green fluorescent protein fusion proteins, J. Biol. Chem. 274: 33092- 33096)
Schmid, J.A., et al. (2000) Dynamics of NFkappaB and IkappaBalpha studied with green fluorescent protein (GFP) fusion proteins. J. Biol. Chem. 275 (22): 17035-17042.
Semizarov, D., Kroeger, P., and Fesik, S. (2004). siRNA-mediated gene silencing: a global genome view. Nucleic Acids Res 32, 3836-3845.
Shoemaker, D. D., and Linsley, P. S. (2002). Recent developments in DNA microarrays. Curr Opin Microbiol 5, 334-337.
Stancato, L. F., Chow, Y. H., Hutchison, K. A., Perdew, G. H., Jove, R., and Pratt, W. B. (1993). Raf exists in a native heterocomplex with hsp90 and p50 that can be reconstituted in a cell-free system. J Biol Chem 268, 21711-21716.
Sternberg, S. R. (1983). Biomedical image processing. IEEE Computer 16, 22-34.
Subramaniam, R., Desveaux, D., Spickler, C., Michnick, S. W., and Brisson, N. (2001). Direct visualization of protein interactions in plant cells. Nat Biotechnol 19, 769-772.
Sumi, T., Matsumoto, K., Takai, Y., and Nakamura, T. (1999). Cofilin phosphorylation and actin cytoskeletal dynamics regulated by rho- and Cdc42-activated LIM-kinase 2. J Cell Biol 147, 1519-1532.
Teruel, T., Hernandez, R., Benito, M., and Lorenzo, M. (2003). Rosiglitazone and retinoic acid induce uncoupling protein-1 (UCP-1) in a p38 mitogen-activated protein kinase-dependent manner in fetal primary brown adipocytes. J Biol Chem 278, 263-269.
Thevenod, F., Friedmann, J. M., Katsen, A. D., and Hauser, I. A. (2000). Up-regulation of multidrug resistance P-glycoprotein via nuclear factor-kappaB activation protects kidney proximal tubule cells from cadmium- and reactive oxygen species-induced apoptosis. J Biol Chem 275, 1887-1896.
Varley, C. L., Stahlschmidt, J., Lee, W. C., Holder, J., Diggle, C., Selby, P. J., Trejdosiewicz, L. K., and Southgate, J. (2004). Role of PPARgamma and EGFR signalling in the urothelial terminal differentiation programme. J Cell Sci 117, 2029-2036.
Vlahos, C. J., Matter, W. F., Hui, K. Y., and Brown, R. F. (1994). A specific inhibitor of phosphatidylinositol 3-kinase, 2-(4-morpholinyl)-8-phenyl-4H-1-benzopyran-4-one (LY294002). J Biol Chem 269, 5241-5248.
Ward, J. (1963). Hierarchical grouping to optimize an objective function. Journal of the American Statistical Association 58, 236--244.
Westwick, J. K., Cox, A. D., Der, C. J., Cobb, M. H., Hibi, M., Karin, M., and Brenner, D. A. (1994). Oncogenic Ras activates c-Jun via a separate pathway from the activation of extracellular signal-regulated kinases. Proc Natl Acad Sci U S A 91, 6030-6034.
Westwick, J. K., Lambert, Q. T., Clark, G. J., Symons, M., Van Aelst, L., Pestell, R. G., and Der, C. J. (1997). Rac regulation of transformation, gene expression, and actin organization by multiple, PAK-independent pathways. Mol Cell Biol 17, 1324-1335.
White, M. A., Nicolette, C., Minden, A., Polverino, A., Van Aelst, L., Karin, M., and Wigler, M. H. (1995). Multiple Ras functions can contribute to mammalian cell transformation. Cell 80, 533-541.
Wiley, S. R., Schooley, K., Smolak, P. J., Din, W. S., Huang, C. P., Nicholl, J. K., Sutherland, G. R., Smith, T. D., Rauch, C., Smith, C. A., and et al. (1995). Identification and characterization of a new member of the TNF family that induces apoptosis. Immunity 3, 673-682.
Wulf, G. M., Ryo, A., Wulf, G. G., Lee, S. W., Niu, T., Petkova, V., and Lu, K. P. (2001). Pin1 is overexpressed in breast cancer and cooperates with Ras signaling in increasing the transcriptional activity of c-Jun towards cyclin D1. Embo J 20, 3459-3472.
Yokoyama, Y., Tsuchida, S., Hatayama, I., and Sato, K. (1993). Lack of peroxisomal enzyme inducibility in rat hepatic preneoplastic lesions induced by mutagenic carcinogens: contrasted expression of glutathione S-transferase P form and enoyl CoA hydratase. Carcinogenesis 14, 393-398.
Yu, H., West, M., Keon, B.H., Bilter, G.K., Owens, S., Lamerdin, J., Westwick, J.K. (2003). Measuring drug action in the cellular context using protein-fragment complementation assays. ASSAY and Drug Development Technologies 1, 811-822.
Zabel, U., and Baeuerle, P. A. (1990). Purified human I kappa B can rapidly dissociate the complex of the NF-kappa B transcription factor with its cognate DNA. Cell 61, 255-265.
Zaccolo and T. Pozzan, 2000, Imaging signal transduction in living cells with GFP-based probes, IUBMB Life 49: 1-5, 2000.
Zhang, J., Ferguson, S. S., Barak, L. S., Menard, L., and Caron, M. G. (1996). Dynamin and beta-arrestin reveal distinct mechanisms for G protein-coupled receptor internalization. J Biol Chem 271, 18302-18305.
【0104】
ここに開示した本発明の多くの形態は現時点での好ましい態様を構成するものであるが、他に多くのものが可能であり、また、好ましい態様及び他の可能な態様についてのさらに詳細な内容は限定的なものと解釈すべきではない。ここに使用される用語は限定するためではなく単に説明するためのものであり、多様な変更や多くの等価物が、請求されている本発明の趣旨又は範囲から外れることなく可能であると理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッセイパネルを含む構成物であって、当該パネルが2つ以上の蛋白−蛋白相互作用についてのアッセイを含む構成物。
【請求項2】
試験化合物又は試験化合物類を分析する方法であって、当該方法が、(A)アッセイパネルを構築する工程、ただし、当該パネルは2つ以上の蛋白−蛋白相互作用のアッセイを含む;(B)当該パネル中の当該アッセイの活性に対する化合物又は化合物類の作用を試験する工程;(C)当該アッセイの結果を利用して望ましい活性を有する化合物を同定する工程、を含む方法。
【請求項3】
化合物について安全性プロファイルを確立するための方法であって、当該方法が、(A)当該化合物を1つ以上の蛋白−蛋白相互作用に対して試験する工程、(B)当該化合物の各々について活性プロファイルを評価する工程;及び(C)当該プロファイルを既知の安全性プロファイルを有する薬物のプロファイルと比較する工程、を含む方法。
【請求項4】
既知の薬物について新しい治療上の適応を同定するための方法であって、当該方法が、(A)既知の薬局方から薬物を選択する工程;(B)当該薬物を2つ以上の蛋白−蛋白相互作用に対して試験する工程;(C)工程(B)から得られた結果を利用して新しい活性を有する薬物を同定する工程、を含む方法。
【請求項5】
薬物毒性を予測するアッセイを確立するための方法であって、当該方法が、(A)1つ以上のハイコンテントアッセイに対する1つ以上の毒性化合物の作用を試験する工程;及び(B)当該試験の結果を利用して毒性を予測するアッセイを同定する工程、を含む方法。
【請求項6】
ハイコンテントアッセイパネルであって、当該アッセイパネルの少なくとも1つのメンバーが既知の毒物に反応するアッセイパネル。
【請求項7】
ハイコンテントアッセイパネルであって、当該アッセイパネルの少なくとも1つのメンバーが既知の薬物に反応するアッセイパネル。
【請求項8】
毒性化合物に反応するアッセイを利用して新規の化合物又はライブラリーをスクリーニングする、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
薬物毒性の基礎にある経路を同定するための方法であって、当該方法が、(A)1つ以上の蛋白−蛋白相互作用に対する1つ以上の毒性化合物の作用を試験する工程;及び(B)当該試験の結果を利用して、毒性に関連した蛋白−蛋白相互作用を同定する工程、を含む方法。
【請求項10】
毒性化合物に反応する蛋白−蛋白相互作用がアッセイ中に使用される請求項7に記載の方法。
【請求項11】
請求項6に記載の方法であって、当該アッセイを利用して新規の化合物又はライブラリーをスクリーニングする工程を含む方法。
【請求項12】
試験化合物をプロファイリングするための方法であって、当該方法が、(a)細胞ベースのアッセイのパネルを構築する工程、ただし、当該パネルは2つ以上の蛋白−蛋白相互作用のアッセイを含む;(b)当該パネルを当該化合物に接触させる工程;(c)当該パネル中の蛋白−蛋白相互作用の量又は細胞内位置を測定する工程;(d)工程(C)の結果を利用して薬理学的プロファイルを構築する工程、を含む方法。
【請求項13】
アッセイパネルであって、当該アッセイパネルが2つ以上のハイコンテントアッセイで構成され、当該ハイコンテントアッセイの少なくとも1つが、細胞経路を変調させることが知られている薬剤の存在下で行われるアッセイパネル。
【請求項14】
蛋白−蛋白相互作用についてのアッセイであって、各相互作用の少なくとも1つのメンバーが表1に示されるリストから選択されているアッセイ。
【請求項15】
細胞又は細胞株のコレクションであって、当該細胞又は細胞株が第1の蛋白及び第2の蛋白を含み、当該第1の蛋白が合理的に分析されたレポーターの第1のフラグメントに操作可能に結合されており、第2の蛋白が合理的に分析されたリポーターの第2のフラグメントに操作可能に結合されているコレクション。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図8C】
image rotate

【図8D】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13A】
image rotate

【図13B】
image rotate

【図14A】
image rotate

【図14B】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate

【図16A】
image rotate

【図16B】
image rotate

【図17A】
image rotate

【図17B】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2011−139710(P2011−139710A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55453(P2011−55453)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【分割の表示】特願2007−508433(P2007−508433)の分割
【原出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(506099775)オデュッセイ セラ インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】