説明

藻類での遺伝子発現の増強

本発明は、藻類での導入遺伝子の発現を増強する系を提供する。導入遺伝子を、それらのプロモーターの近傍に、特定のタンパク質の結合部位、例えばLexA結合部位を含むように改変する。藻類をまた、協調して作用するDNA結合部位への親和性をもつタンパク質に融合させた、ヌクレオソームを変化させるタンパク質を発現するように改変する。一例としてはLexA−p300融合タンパク質があり、ここでp300はコナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)由来である。LexA結合ドメインはp300を結合部位に誘導し、p300は導入遺伝子の近傍にあるヒストンをアセチル化することによりヌクレオソームの構造を緩ませ、その結果、その部位のクロマチン構造が再構築されて高レベルの発現が生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2010年10月30日出願の米国仮特許出願第61/256,921号、名称「藻類での遺伝子発現の増強(ENHANCED GENE EXPRESSION IN ALGAE)」の優先権を主張し、その全文は参照することにより本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は分子生物学の分野、具体的には藻類での導入遺伝子の発現に関する。
【背景技術】
【0003】
導入遺伝子は、ゲノム、真核細胞の場合には染色体、に導入された外生のDNA配列である。これらの遺伝子は通常、宿主のその他の遺伝子と同様に転写される。転写は通常、染色体のDNAを真核生物ではヌクレオソームと呼ばれている緊密な束にまとめる、クロマチン構造によって制御されている。特定の遺伝子の周囲にあるクロマチン構造がゆるむと、細胞の転写機構が、特定の遺伝子のDNAに接近できるようになる。染色実験から、真核生物で活発に転写された遺伝子はヌクレオソーム内でよりルーズになっており、真性染色体となることが分かっている。いくつかの例では、導入遺伝子は宿主の染色体に組み込まれているが、クロマチン構造が適切でないために発現しない。この現象は「遺伝子サイレンシング」と呼ばれている。ヌクレオソームをどの程度密に束ねるかを制御する能力は、宿主細胞での導入遺伝子の発現を補助することができる。哺乳類の細胞では、ヒストン「尾部」に対する高い修飾能力をもつ遺伝子であるp300(ヒストンアセチルトランスフェラーゼ又は「HAT」;CREB結合タンパク質ファミリーの場合は「CBP」としても知られる)を一緒に導入して発現させると、そのアセチルトランスフェラーゼ活性によってヒストンとDNAの関係がよりルーズになり、転写因子が遺伝子に接近することができるようになることから、発現レベルが上昇すると提唱されてきた。T.H.J. Kwaks et al., J. Biotechnology, 115:35-46 (2005)。
【0004】
微小藻類には広い範囲の生物、主に単細胞の水生生物が含まれる。単細胞の真核微小藻類(緑藻類、珪藻、及び褐藻類など)は光合成を行い、かつ、核、ミトコンドリア、及び葉緑体をもつ。藻類のクロマチン構造はその他の真核生物のものとは異なる。藻類のクロマチンが濃く染色されることは、これらのヌクレオソーム構造がより圧縮されていること、及びDNAとヒストンの関係がより緊密であることを示している。特に緑藻類のクロマチン構造におけるこれらの違いは、遺伝子発現のヒストンクロマチン制御機構が異なることを示唆するものである。
【0005】
真核微小藻類のクロマチン構造に見られるこれらの違いは、クロマチン介在性遺伝子サイレンシングにより、微小藻類の核に導入した遺伝子を安定に及び一過的に発現させることが難しいことの原因であると考えられる。H. Cerutti, A.M.J., N.W. Gillham, J.E. Boynton, Epigenetic silencing of a foreign gene in nuclear transformants of Chlamydomonas, The Plant Cell 9:925-945 (1997)。本発明者らが、哺乳類由来の抗アポトーシス遺伝子と蛍光レポーター遺伝子を藻類に導入した予備実験では、蛍光遺伝子の発現レベルが低いか、その発現は検出されなかった。このことにより、藻類で導入遺伝子を発現させることが難しいことを確認した。
【0006】
藻類は健康のためにヒトが摂取する栄養源として、かつ、バイオ燃料のバイオマスとしても重要だと考えられている。遺伝子工学によって藻類に導入した遺伝子の発現を(複数世代にわたって)安定させることは有用な培養藻類の新しい展望を切り開き、価値と評価を強く高めるだろう。しかしながら上述したように、安定で十分に高いレベルで遺伝子を発現させることは難しかった。藻類での導入遺伝子の発現を改善させるための方法、及び発現を安定させる方法は非常に有用であると考えられる。そのような方法のためには、緑藻類を含む微小藻類の独特で強固なヒストン介在性遺伝子サイレンシングを明らかにすることが必要であると考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】T.H.J. Kwaks et al., J. Biotechnology, 115:35-46 (2005)
【非特許文献2】H. Cerutti, A.M.J., N.W. Gillham, J.E. Boynton, Epigenetic silencing of a foreign gene in nuclear transformants of Chlamydomonas, The Plant Cell 9:925-945 (1997)
【発明の概要】
【0008】
一実施形態において本発明は、
DNA結合タンパク質に機能的に融合させた藻類由来p300を含み、少なくとも該DNA結合タンパク質ドメインのコード配列の一部分が藻類での発現を改善させるためにコドン最適化してある遺伝子発現増強(GEE)融合タンパク質のコード配列の機能的上流に配置した藻類に適した転写プロモーター、
藻類に適した転写プロモーターの機能的下流にに配置した少なくとも1つの導入遺伝子、及び
DNA結合タンパク質の結合部位であり、少なくとも1つの前記転写プロモーターの近くに配置した、少なくとも1つのDNA領域を含む、
藻類での遺伝子発現を高めるための、藻類中にある系を提供する。
【0009】
好ましい実施形態では、DNA結合タンパク質はLexA DNA結合ドメインである。別の好ましい実施形態では、GEE融合タンパク質のp300部分はコナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)由来である。より好ましい実施形態では、GEE融合タンパク質の一部分は、p300タンパク質のHATドメインのみから成る。p300又はp300のHATドメインのみは、コナミドリムシに加え、緑藻類を含むその他の微小藻類のホモログ由来であってもよい。
【0010】
別の実施形態では、藻類での発現を改善するために、導入遺伝子のコドンを変化させる。好ましい実施形態では、導入遺伝子又は目的の遺伝子(GOI)は蛍光−Bcl−xL融合遺伝子である。融合タンパク質は蛍光−Bcl−xL構築物(例えばYFP−Bcl−xL融合体又はVenus−Bcl−xL融合体)を含んでもよい。別の好ましい実施形態では、導入遺伝子がYFP/Venus遺伝子であり、融合タンパク質の一部分である必要はない。Venusは広範囲のpHで安定で、素早く折りたたまれ、かつ、標準的なYFPの30倍の強度をもつ、改良された黄色蛍光タンパク質(YFP)である。Nagai T., Ibata K., Park E.S., Kubota M., Mikoshiba K. and Miyawaki A. (2002). A variant of yellow fluorescent protein with fast and efficient maturation for cell-biological applications. Nature Biotechnol, 20, 87-90.
【0011】
別の実施形態においてこの系は、抗生物質耐性マーカーのような、少なくとも1つの選択マーカーをさらに含む。好ましい実施形態では1つのベクター中に、GEE融合タンパク質、少なくとも1つの導入遺伝子、及び2つのプロモーターを含む両方向性プロモーター領域を配置する。両方のプロモーターの近くにはDNA結合部位を配置し、GEE融合タンパク質と少なくとも1つの導入遺伝子をどちらか一方のプロモーターから発現させるように構成して、このベクターを系に導入する。より好ましい実施形態では、GEE融合タンパク質及び導入遺伝子を別個のベクターに入れて系に導入する。各ベクターは選択マーカーを含み、かつ、選択マーカーはそれぞれ異なる。別個のベクターにする場合、GEEベクターと目的遺伝子(GOI)のベクターは選択マーカーを含む。GEEをGOIのベクターとは別のベクターとして導入する場合、GEEベクターを、GOIを発現している2番目のベクターの受容株として役立つ、安定な藻類細胞株を生成するために使用してもよい。この安定なGEE藻類細胞株は、GOIを含む2番目のベクターの発現を高める機能をもつと考えられる。
【0012】
一層さらに別の実施形態では、藻類に適した転写プロモーターはhsp70、rbcS、nitA、actin、tubA2又はその組み合わせである。
【0013】
別のさらなる実施形態では、GEE融合タンパク質は、そのHAT領域がコナミドリムシのp300のHAT領域と少なくとも80%の同一性をもつ、藻類由来p300ホモログに機能的に融合させたDNA結合ドメインを含む。好ましくはGEE融合タンパク質は、コナミドリムシ由来のp300のHAT領域のHATドメインに機能的に融合させたDNA結合ドメインを含む。哺乳動物種由来のp300は、コナミドリムシのp300よりもかなりサイズが大きく、かつ、同一性が50%未満であることに注意する。
【0014】
本発明はまた、
DNA結合タンパク質に機能的に融合させた藻類由来p300を含み、少なくとも該DNA結合タンパク質ドメインのコード配列の一部分は藻類での発現を改善させるためにコドン最適化してある遺伝子発現増強(GEE)融合タンパク質のコード配列の機能的上流に配置した藻類に適した転写プロモーター、藻類に適した転写プロモーターの機能的下流に配置した少なくとも1つの導入遺伝子、及びDNA結合タンパク質の結合部位であり、少なくとも1つの前記転写プロモーターの近くに配置した少なくとも1つのDNA領域を含む、少なくとも1つのベクターで藻類を形質転換する工程、
形質転換された藻類細胞を選抜する工程、及び
前記GEE遺伝子及び/又は前記導入遺伝子の藻類での発現を検出する工程を含む、藻類において高レベルで遺伝子を発現させる方法を提供する。
【0015】
好ましい実施形態では、DNA結合タンパク質はLexA結合ドメインであり、より好ましくは、p300はコナミドリムシ由来である。より一層好ましくはGEE融合タンパク質は、コナミドリムシ由来p300タンパク質のHATドメインに機能的に融合させたLexA結合ドメインを含む。
【0016】
別の実施形態では、導入遺伝子はYFP−Bcl−xL融合タンパク質又はVenus−Bcl−xL融合タンパク質である。
【0017】
一層さらに別の実施形態では、まずGEE融合タンパク質を安定して発現しているベクターを選抜し、次に導入遺伝子を含むベクターを用いて選抜した藻類を形質転換することにより、別個のベクターに入れたGEE融合タンパク質及び前記導入遺伝子で藻類を形質転換する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の一実施形態におけるベクターの特徴を示している。転写される方向を矢印で示す。この図は、本明細書の別の部分で議論した、特定の構造要素を示している。線状の図は、ベクターの対応する領域、すなわち、融合させたLexA−p300タンパク質のコード領域及びGOIのコード領域の詳細を表している。この実施形態では、これら2つのコード領域はそれぞれ反対の方向に転写される(従って、「両方向性」と命名した)。これら2つのコード領域はLexA結合部位を含む遺伝子座によって分けられている。
【図2A】図2A及び2Bは、本発明の別の実施形態を示す。図2AはLexA−p300融合タンパク質を発現しているベクターである。
【図2B】図2A及び2Bは、本発明の別の実施形態を示す。図2Bは、藻類に導入することが望まれる別の遺伝子(「目的の遺伝子」又は「GOI」)を発現しているベクターを示している。この実施形態では、LexA−p300融合体及びGOIはそれぞれ、その5’末端に又は5’末端付近にLexA結合部位を含む。
【図3】図3は、藻類(コナミドリムシ、Chlamydomonas reinhardtii)由来の推定p300タンパク質と、図に示した系統発生学的に代表的な種由来の既知のp300タンパク質との比較を示す。それぞれの線の灰色に塗った部分は、ヒストンアセチラーゼ(HAT)ドメインを表す。見やすくするためにHATドメインを整列させた。これらの灰色の部分に書いてある数字は、各タンパク質のHATドメインとの同一性パーセントを示している。各図のタンパク質中に記載されているパーセンテージは、コナミドリムシ由来のp300タンパク質の、p300 HATドメインと比較した場合の同一性を示す。この図は、p300タンパク質全体のサイズと、このタンパク質中に含まれるHATドメインの位置に基づいて書かれている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
藻類で導入遺伝子を発現させることは困難である。H. Cerutti, A.M.J. et al., The Plant Cell 9:925-945 (1997)。同様に、本発明者らが癌抑制Bcl−xL遺伝子に融合させた黄色蛍光タンパク質(「YFP」)(この転写は、熱ショック転写エンハンサー(HSP70)に依存したrubiscoプロモーター(rcbS2)によって操作した)を用いて微小藻類を形質転換したところ、形質転換した微小藻類は蛍光を生産できなかった。しかしながら、わずかに長く生存した形質転換体は、(Bcl−xL遺伝子が僅かに発現した結果)形態に影響を受けていたことが観察された。このことにより、藻類での導入遺伝子の発現が低いことは遺伝子サイレンシングによると推測された。
【0020】
本発明は、藻類、好ましくは緑藻類、より好ましくは微小藻類、での導入遺伝子の発現を高めるために有効な方法を提供する。本発明の好ましい藻類は、単細胞の光合成藻類である。一層さらに好ましい藻類は微小藻類である。本発明を用いて藻類で発現させたGOI導入遺伝子の発現レベルはより高くなる。発現は、本発明の恩恵を受けることなく改変した、同じ導入遺伝子の藻類での発現と比較して、少なくとも50%、好ましくは約2から5倍に上昇する。蛍光導入遺伝子に関しては、発現は蛍光シグナルを観察するのに十分な程度上昇する。より好ましくは、クラミドモナス中の蛍光シグナルを観察する。
【0021】
導入遺伝子を藻類に導入する。本発明のある実施形態に従って、導入遺伝子をベクター上に配置する。ベクターは、DNA配列を含むカセットを藻類の染色体に導入するために用いられる核酸構造である。ベクターは宿主藻類細胞の核に導入され、そして導入遺伝子は藻類の中で転写/翻訳される。藻類の形質転換方法は当業者に周知である。例えば、ベクター構築物をエレクトロポレーションを用いて、プラスミド接合により、及びパーティクルボンバードメントによって導入してもよい。形質転換した藻類を固形の栄養培地又は液体培地中で回復させる。Elizabeth H Harris, Chlamydomonas As A Model Organism, Annual Review of Plant Physiology and Plant Molecular Biology 52:363-406 (2001)及びEMBO Practical Course: Molecular Genetics of Chlamydomonas, Laboratory protocols. Geneva, September 18-28, 2006。
【0022】
本発明の好ましいベクターは、目的のDNA配列を藻類の染色体に統合することができるプラスミドである。数多くのベクターが知られており、かつ、特徴付けられている。本発明の好ましいベクターはpSP124である。Lumbreras et al., Efficient foreign gene expression in Chlamydomonas reinhardtii mediated by an endogenous introns, The Plant Journal 14(4):441-447 (1998)。
【0023】
ベクターの改変方法は当該分野において周知である。ベクター骨格は、宿主細胞がベクターによって形質転換されたことを示す、形質転換マーカーをコードしている遺伝子を含んでいてもよい。形質転換マーカーは、ベクターを含まない細胞と、ベクターを含む細胞を選択するために用いる選択マーカー遺伝子であってもよい。選択マーカーは当業者に周知である。一般的に用いられる選択マーカーには、ブレオマイシンのような、特定の抗生物質に対する耐性を付与する遺伝子が挙げられる。ベクターを含む細胞だけが、抗生物質を含む培地上で生育できる。その他のベクター骨格はまた、単にどの細胞が形質転換されたかを示すマーカー遺伝子を含んでいてもよい。そのようなマーカーを用いる場合には、ベクターを含む細胞もベクターを含まない細胞も成長するが、ベクターを含む細胞はベクターによって付与される特定の特徴、例えば色を呈することにより、ベクターを含まない細胞から区別することができる。一般的に用いられる形質転換マーカー遺伝子は黄色又は緑色蛍光遺伝子である。そのような遺伝子を有するベクターを含む細胞は黄色又は緑色の蛍光を発する。その他の一般的な形質転換マーカーには、様々なルシフェラーゼ遺伝子が挙げられる。ルシフェラーゼ遺伝子を含む細胞は発光する。
【0024】
藻類の核で遺伝子を発現させるために有効な遺伝子発現制御機構の任意の組み合わせをベクター中に組み込むことができる。プラスミドは、異なる型のプロモーター、例えば構成的プロモーター又は誘導プロモーターを含んでいてもよい。本発明に好ましい転写プロモーターには、hsp70(「熱ショックタンパク質」プロモーター)、rbcS(「rubisco小サブユニット」プロモーター)及びtubA2(「アクチン」プロモーター)が挙げられる。ベクターは、通常は5’非翻訳領域又は「5’UTR」と呼ばれる、好適な翻訳エンハンサーエレメントを含む。本発明の好ましいエンハンサーはtubA2イントロン1、HSP70エンハンサー、及びrcbS2イントロン1である。本発明のベクターはまた、有効な翻訳終結因子である、3’UTRを含む。好ましい3’UTR配列の例としては、tubA2、HSP70、及びrcbS2の3’UTRが挙げられる。その他の有効なプロモーター、転写エンハンサー及び終結因子は具体的には、十分に高く、かつ、安定は発現を生じる組み合わせであってもよい。
【0025】
図1及び2に、これらの選択肢のいくつかを示す。例とした図1及び2で選択した特徴としては、コナミドリムシ遺伝子のプロモーター及び3’UTR領域、アクチン(チューブリン)をコードしているtubA2、rubisco小サブユニットをコードしているrbcS2、又は硝酸塩レダクターゼをコードしているnitAが挙げられる。さらに、hsp70A/rbcS2のタンデムプロモーターが導入遺伝子の発現を誘導するために好ましい。Schroda M., Beck C.F. and Vallon A., Sequence elements within an hsp70 promoter counteract transcriptional transgene silencing in Chlamydomonas. Plant J. 31:445-455 (2002)。このキメラプロモーターは、核と細胞質に局在する70kDの熱ショックタンパク質遺伝子のエンハンサー領域(NCBI GenBank ID:M76725;572−833bp)及び、核rubisco小サブユニット遺伝子のプロモーター(NBCI GenBank ID:X04472;934−1142bp)を含む。加えて、導入遺伝子の発現をより安定にするために、rbcS2遺伝子の1番目のイントロン(1307−1451bp)及び3’非翻訳領域(2401−2632bp)を含んでいてもよい。
【0026】
本発明のある実施形態では、目的の遺伝子(「GOI」)及び遺伝子サイレンシング阻害剤を含むカセットを、藻類、例えばコナミドリムシの核DNAに導入するために、1つ以上のベクターを用いる。GOIは藻類で発現することが望まれる任意の遺伝子であってよい。生存可能な目的の遺伝子には、藻類の代謝経路の制御に関与する遺伝子が含まれる。例えば、本発明の一実施形態では、Bcl−xL遺伝子を挿入し、藻類の核で発現させることができる。Bcl−xLはB細胞リンパ腫エクストラ−ラージの略語であり、アポトーシス(プログラム細胞死)の阻害剤として知られている。Boise L.H. et al., Bcl-x, a bcl-2-related Gene that Functions as a Dominant Regulator of Apoptotic Cell Death, Cell 74:597-608 (1993)。別の実施形態では、脂質又はイソプレノイドの生産経路に影響を及ぼす遺伝子を導入することが望まれる。アポトーシスを阻害するBcl−xLの能力により、その発現は藻類細胞をより長く生存させることを可能にする。微小藻類の寿命が長くなると、光バイオリアクターのような様々な産業的な応用に微小藻類を利用することが可能になる。
【0027】
遺伝子サイレンシング阻害剤をもまた藻類に導入する。遺伝子サイレンシング阻害剤は、藻類の核の中にあるヌクレオソームの緩みを誘導するペプチドである。遺伝子サイレンシング阻害剤には、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)及び、ヌクレオソーム上のエレメントを修飾してクロマチン構造を緩ませ、転写因子が目的の遺伝子に近づくことを可能にするその他のペプチドが含まれる。HATタンパク質並びにp300及びその他のHATタンパク質のHATドメインはヒストンのアセチル化を引き起こすことが知られており、本発明に用いることができる。本発明では、アセチル化活性に関与するドメイン又はタンパク質全体を使用する。Fukuda H, et al., Brief Funct. Genomic Proteomic, 5(3):190-208 (2006); Renthal W. and Nestler E.J., Semin Cell Dev Biol. 20(4):387-94 (Epub 2009); 及びLin Y.Y. et al., Genes Dev., 22(15):2062-74 (2008)を参照のこと。
【0028】
本発明の好ましい一実施形態では、遺伝子サイレンシング阻害剤として、p300タンパク質を使用する。より好ましくは、コナミドリムシ由来p300タンパク質を使用する。一層さらに好ましい実施形態では、コナミドリムシのp300タンパク質は、図3で詳細を示したホモログである。さらにより好ましい実施形態では、コナミドリムシp300遺伝子のHATドメインのみを用いる。図3及び配列番号4の対応する部分を参照のこと。
【0029】
図3では、コナミドリムシのp300と、系統発生学的に異なるその他のp300ホモログのアライメントの比較を示す。それぞれの線の灰色の部分はヒストンアセチラーゼ(HAT)ドメインを表す。見やすくするためにHATドメインを整列させた。これらの灰色の部分に含まれる数字は、それぞれのタンパク質のHATドメインの同一性パーセントを示している。各図のタンパク質中に記載されているパーセンテージは、コナミドリムシ由来のp300タンパク質の、p300 HATドメインと比較した場合の同一性を示す。図3は、p300タンパク質全体のサイズと、このタンパク質中に含まれるHATドメインの位置に基づいて書かれている。
【0030】
表1に、p300タンパク質、特にHATドメインを高度に保存している生物の例を挙げる。
【表1】

各カラムの一番上の欄に記載した生物種をそのクレードの代表とし、それを基準としてその他の生物における同一性パーセントを算出した。
【0031】
実際、植物及び哺乳類のp300ホモログ間の同一性パーセントもまた非常に高く、具体的には少なくとも約80%である。米国特許公開第2003/0145349号を参照のこと。しかしながら、コナミドリムシp300ホモログとその他の生物との相同性はより低い。同様に、コナミドリムシp300の完全長タンパク質はマウスp300タンパク質と11.5%が同一で、さらに9.9%が類似しており;ショウジョウバエp300タンパク質とは9.1%が同一で、さらに4.7%が類似しており;及びシロイヌナズナp300タンパク質とは23.6%が同一で、さらに9.9%が類似している。コナミドリムシ由来のタンパク質はより短いN末端又はC末端領域をもち、かつ、HATドメインの位置が、哺乳類又は植物のp300タンパク質のHATドメインとは異なっている。図3を参照のこと。このことは、タンパク質全体の異なる機能及び系統発生を示唆している。
【0032】
図1及び本明細書の他の部分で記載した様々なp300ホモログタンパク質は以下の通りである。
コナミドリムシ(C. reinhardtii)p300/HATタンパク質、NCBIデータベースID:159467703。
ボルボックス(V. carteri)p300/CBPタンパク質、NCBIデータベースID:300256266。
ソルガム(S. bicolor)推定p300タンパク質、Universal Protein Resource ID:C5XTZ4。
ポプラ(P. trichocarpa)Joint Genome InstituteデータベースからのGenBank ID:POPTR_007s15090。
ダイズ(G. max)タンパク質、Joint Genome InstituteデータベースID:PF02135。
シロイヌナズナ(A. thaliana)、HAC1/p300/CBP NCBIデータベースによるGenBank ID:NM_106550.3。
イネ(O. sativa)p300/CBPタンパク質、NCBIデータベースID:108792657。
ショウジョウバエ(D. melanogaster)CBP/HAT、NCBIデータベースによるGenbank ID:NM_079903.2。
ガンビエハマダラカ(A. gambiae)HATタンパク質、NCBIデータベースID:158289391。
フロリダマミズヨコエビ(C. floridanus)CBPタンパク質、NCBIデータベースID:307172990。
アカゲザル(M. musculus)E1A/BP/p300、NCBIデータベースよるGenBank ID:NM_177821.6。
アナウサギ(O. cuniculus)p300タンパク質、NCBIデータベースID:291410334。
ラット(R. norvegicus)p300タンパク質、NCBIデータベースID:XP_576312.3。
マウス(M. mulatta)p300HATタンパク質、NCBIデータベースID:XP_001102844.1。
ヒト(H. sapiens)p300タンパク質、NCBIデータベースID:NP_001420.2。
【0033】
本発明の別の好ましい実施形態では、遺伝子サイレンシング阻害剤をDNA結合タンパク質又はそのドメインに機能的に連結させ、又は好ましくは融合させた(連結した/融合させたタンパク質又はその/それらの遺伝子をこれ以降遺伝子発現増強ユニット、又は「GEE」と呼ぶ)。DNA結合タンパク質又はドメインは特定のDNA配列(結合部位又は「BS」)に結合して遺伝子サイレンシング阻害剤を、BSの近くの標的ヒストンに近づけ、それにより、その遺伝子の位置のヌクレオソームの緩みを誘導する。ヌクレオソームが緩むと、近くにあるDNA配列が転写因子に曝されてより活性に転写される。
【0034】
好ましい実施形態では本発明は、特定のDNA配列に結合する藻類タンパク質の発現を必要とする。この配列は、藻類で発現させるために、任意のGOIの上流を改変したものであってもよい。既知のDNA結合部位を含むタンパク質である可能性のある、DNA結合タンパク質/ドメインを用いることができる。本発明で使用できる、タンパク質を標的とする特定のDNAモチーフの例としては、Gal4タンパク質及び初期増殖応答タンパク質1が挙げられる。これらタンパク質のDNA結合部位モチーフは既知である。同様に、これらの並びにLexAタンパク質の結合ドメインが既知であり、かつ、完全長タンパク質の代わりに主に使用される。例えばYoung, K., Biol. Reprod., 58:302-311 (1998) 及び Joung, J. et al., Proc. Natnl. Acad. Sci., 97:7382-7 (2000)を参照のこと。Gal4のDNA結合部位(BS)は、5’−CGGAGGACAGTCCTCCG−3’である。
【0035】
LexAは好ましいDNA結合タンパク質の例である。LexAは細菌由来の遺伝子である。LexAタンパク質又は遺伝子は藻類では見つかっていない。従って、コナミドリムシのゲノムにはLexAのDNA結合配列は含まれていないと考えられる。本発明におけるLexAの機能は、特定のDNA配列(結合部位、「BS」)に結合することである。LexA結合部位は多数の部生物の上流プロモーターに見られる。LexAのBSに共通の配列はCTGTATATATATACAG、配列番号9である。LexAタンパク質の結合ドメインは既知であり、本発明の目的では、結合ドメインのみを用いることが好ましい。NCBIデータベースでのタンパク質IDは2293118、配列は、MKALTARQQEVFDLIRDHISQTGMPPTRAEIAQRLGFRSPNAAEEHLKALARKGVIEIVSGASRGIRLLQEEEEGLPLVGRVAAGEPLLAQQHIEGHYQVDPSLFKPNADFLLRVSGMSMKDIGIMDGDLLAVHKTQDVRNGQVVVARIDDEVTVKRLKKQGNKVELLPENSEFKPIVVDLRQQSFTIEGLAVGVIRNGDWLEFPGIRRPWRPLESTCSQANSGRISYDL、である。
【0036】
上述したように、DNA結合タンパク質又はそのドメイン、好ましくはLexAドメインを、DNA結合ドメインを構成し、協調してヌクレオソームを緩ませることが可能なタンパク質に翻訳されるように構築する。任意のヌクレオソームを緩ませることができるタンパク質を用いることができる。好ましくは、上述したように、コナミドリムシp300ドメインを用いる。
【0037】
1つの作用機序に制限されないが、1つのパートナーがDNAに結合し、その他が近傍のヒストンをアセチル化し、それにより、その場にあるDNAとヒストンの結合が緩むと考えられている。そのため、DNA結合ドメインとアセチル化ドメインが、互いに空間的に近くなるようにする任意の方法が好ましい。融合タンパク質がより好ましい。融合タンパク質中の2つのユニットの順番(N末端からの)は重要ではない。しかしながら、p300−LexA結合ドメインの例では、LexA結合ドメインが融合タンパク質のN末端になることが好ましい。「機能性」融合タンパク質を設計する。例としては、可撓性や方向性をもつようにする特定のリンカー領域、又はプライマー及び制限酵素部位のような遺伝子工学的特徴に対応する、単に「機能しない」タンパク質配列を戦略的に導入する。
【0038】
好ましくは、p300−LexA結合ドメイン融合タンパク質及びその遺伝子構築物を生成するように、GEEはp300ペプチドホモログであってもよく、かつ、DNA結合ドメインはLexA結合ドメインであってもよい。好ましくは、この融合タンパク質は藻類のp300−LexA結合ドメイン融合タンパク質である。より好ましくは、融合タンパク質はコナミドリムシのp300−LexA融合タンパク質である。あるいは、融合タンパク質は、コナミドリムシのp300−LexAタンパク質から選択したドメインを含む。配列番号4を参照のこと。一層さらに好ましくは、融合タンパク質は、藻類で発現させた場合の発現量がより高くなるように、そのコドン使用頻度を核酸レベルで修飾したLexA配列を含む。好ましくは、遺伝子(p300)の一部分が、配列番号1及び配列番号3に示したように藻類由来の遺伝子である場合でも、GEE融合タンパク質遺伝子全体を、藻類での好ましいコドン使用頻度に基づいて設計する。実際に、この系中の導入遺伝子(GOI)及びその他の遺伝子は好ましくは、藻類でのコドン使用頻度に基づいて最適化する。
【0039】
本発明では主に、その他の藻類p300ホモログ又はそれらのヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)ドメインを用いてもよいこと注意すべきである。しかしながら、これらの好ましいホモログは、コナミドリムシのp300と少なくとも約60%同一、好ましくは少なくとも約70%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%又はそれ以上同一でなければならない。ボルボックス(V. carteri、藻類)由来のp300ホモログが近年同定され、このHATドメインは、コナミドリムシのp300と約85%同一である。
【0040】
LexA−p300融合DNA(配列番号1)は、LexA結合ドメインと完全長コナミドリムシp300配列を含む融合タンパク質(典型的なGEE)をコードしているヌクレオチド配列であり、全ての融合体を藻類で好ましいコドン使用頻度を反映して設計した。Kazusaコドン使用頻度データベース(種ID:3055)から提供されたコナミドリムシの核でのコドン使用頻度の表に基づき、DNA20の遺伝子設計ソフトウェアを使用して変化させた。690番目のヌクレオチドまでの配列がLexADNA結合ドメインであり、700番目のヌクレオチドから、コナミドリムシp300の完全長配列が始まる。LexA結合ドメインとp300は3つのアミノ酸から成るペプチドリンカー(GVL)で連結され、この配列はPpuMI(9bp)のDNA制限部位を表す。NCBIデータベースのタンパク質ID:2293118からのアミノ酸配列を使用して、LexA遺伝子配列をコナミドリムシの核で発現させるためにコドン最適化する。
1 ATGAAGGCTCTGACCGCTCGCCAGCAGGAGGTGTTTGATCTGATTCGGGA
51 CCATATCAGCCAAACGGGCATGCCCCCTACGCGCGCGGAGATCGCGCAAC
101 GGCTGGGCTTCCGCTCCCCGAACGCGGCTGAGGAGCACCTGAAGGCGCTG
151 GCGCGCAAGGGTGTGATTGAGATCGTCTCCGGCGCGTCGCGGGGCATTCG
201 GCTGCTGCAGGAGGAGGAGGAGGGTCTGCCTCTGGTGGGGCGGGTGGCTG
251 CGGGCGAGCCCCTGCTGGCCCAGCAGCACATTGAGGGCCACTACCAAGTG
301 GACCCGTCCCTCTTCAAGCCGAACGCCGATTTCCTGCTGCGCGTCAGCGG
351 TATGAGCATGAAGGACATCGGCATCATGGACGGTGACCTGCTGGCCGTGC
401 ATAAGACGCAGGACGTGCGCAACGGCCAAGTGGTCGTCGCCCGCATCGAT
451 GACGAGGTGACCGTGAAGCGCCTGAAGAAGCAGGGGAACAAGGTCGAGCT
501 GCTGCCCGAGAACAGCGAGTTCAAGCCCATCGTGGTGGATCTGCGCCAGC
551 AATCCTTCACCATCGAGGGCCTGGCGGTGGGCGTGATCCGCAACGGCGAC
601 TGGCTGGAGTTCCCGGGCATCCGCCGCCCGTGGCGCCCTCTGGAGTCCAC
651 GTGCTCGCAGGCCAACTCCGGCCGCATTAGCTACGACCTGGGGGTCCTTA
701 TGGTGCCGATGGGCGCGCCCGCTATGCCCATGGGCAACAACGGCTCGCCC
751 ATGCTGAACGGCATGGGTATGTTCAACGCCCCGCAGCAGACCGTGCCCAA
801 CGGCGGGCCGGGTGGCGTGAACCCCATGGGCCAGGTGCCGGCGATGCCTG
851 CGCCGATCCCCAACGGCGGTCTGCCCGGTATGAACGCTGCCGGCGGTGCC
901 GACGATCCTGCGAAGCAGCGGGAGCAATCGATCCAGAAGCAGCAGCGCTG
951 GCTGCTGTTCCTGCGGCACTGCGCGAAGTGCCGGGCTCCCGGCGAGGACT
1001 GCCAGCTGAAGTCCCAGTGCAAGTTCGGCAAGCAGCTGTGGCAGCACATC
1051 CTGTCGTGCCAAAACCCGGCCTGCGAGTACCCGCGCTGCACCAACTCCAA
1101 GGATCTGCTCAAGCACCACCAGAAGTGCCAGGAGCAGACCTGCCCCGTGT
1151 GCATGCCGGTGAAGGACTACGTGAAGAAGACGCGCCAGGCGACCCAACAG
1201 CAGCAACAAATGCAGCAACAACAGCAAATCCAGCAACAGCAACAACAACA
1251 AATGCAACAGCAACAGATGCAACAGCAGCAGCTCCAGCAGCAGCAGATGC
1301 AACAACAACAGCAGATGCAGCAGCAGCAACAGCCCGGCGTGGGCGCCAAC
1351 TTCATGCCCACCCCGCCCATGATGCCGAACGGCATGTTCCCTCAACAGCA
1401 GCCCCAGCAGGCGATGCGCCTGAACGCCAACGGCCTCGGCGGCCAGAAGC
1451 GCCCCCACGAGATGATGGGTATGTCCAGCGGCGGCATGGACGGTATGAAC
1501 CAGATGGTGCCCGTCGGCGGCGGCGGCATGGGCATGTCGATGCCGATGGG
1551 TATGAACAACCCCATGCAGGGCGGTATGCCCCTGCAGCCTCCGCCCCAGG
1601 TGCAGGCTCCCGGTCAGGGCCCCATGATGAGCGCCCCTCAGCAGCAACAG
1651 CAGCAACCGGCCCCTAAGCGGGCGAAGACCGACGATGTGCTGCGCCAGAA
1701 CACGGGCACCAGCCTCCTGGAGACGTTCGACGCCAAGCAGATCCGCGTGC
1751 ACGTGGACCTGATCCGCGCTGCCGCGGTGACCCAGAAGGCCCAGCAGCCT
1801 CCCCCGGCTAACCCCGACGACGCGTGCAAGGTCTGCGCGCTGACGAAGCT
1851 GTCGTTCGAGCCCCCGGTGATTTACTGCTCGAGCTGCGGCCTGCGCATCA
1901 AGCGCGGCCAGATCTTCTACAGCACGCCTCCGGACCACGGCAACGACCTG
1951 AAGGGTTACTTCTGCCACCAGTGCTTCACCGACCAGAAGGGCGAGCGCAT
2001 CCTGGTGGAGGGCGTCTCGATCAAGAAGAGCGACCTGGTGAAGCGCAAGA
2051 ACGATGAGGAGATCGAGGAGGGGTGGGTGCAGTGCGACCACTGCGAGGGC
2101 TGGGTGCACCAGATTTGCGGCATGTTCAACAAGGGCCGGAACAACACGGA
2151 CGTCCACTACCTGTGCCCTGACTGCCTGGCCGTGGGCTACGAGCGCGGCC
2201 AGCGCCAGAAGACGGAGGTCCGCCCCCAGGCGATGCTCGAGGCGAAGGAT
2251 CTGCCCACGTCCCGGCTGTCCGAGTTTATTACGGAGCGCCTGAACCGCGA
2301 GCTGGAGAAGGAGCACCACAAGCGGGCTGAGCAGCAGGGCAAGCCGCTGC
2351 ACGAGGTGGCGAAGCCCGAGCCCCTGACCGTGCGGATGATCAACTCCGTG
2401 ATGAAGAAGTGCGAGGTCAAGCCGCGCTTCCACGAGACGTTCGGCCCCAC
2451 CGACGGCTACCCCGGGGAGTTCGGCTACCGGCAGAAGGTGCTGCTGCTGT
2501 TCCAAAGCCTGGACGGTGTCGACGTGTGCCTGTTCTGCATGTACGTGCAG
2551 GAGTACGGCAAGGACTGCCCTGCGCCCAACACCAACGTGGTGTACCTGTC
2601 GTATCTGGACTCCGTCAAGTACTTCCGCCCTGAGATTCCCTCGGCCCTGG
2651 GCCCTGCCGTGTCGCTGCGCACCTTCGTGTACCACCAACTCCTGATCGCC
2701 TACGTGGAGTTTACCCGCAACATGGGTTTTGAGCAGATGTACATTTGGGC
2751 GTGCCCGCCGATGCAAGGCGACGACTACATCCTGTACTGCCACCCGACCA
2801 AGCAGAAGACGCCGCGCTCGGACCGCCTGCGCATGTGGTACATTGAGATG
2851 CTGAAGCTGGCGAAGGAGGAGGGTATCGTGAAGCACCTGAGCACGCTGTG
2901 GGATACGTACTTCGAGGGCGGTCGCGACCACCGGATGGAGCGCTGCTCGG
2951 TCACGTACATTCCGTACATGGAGGGCGACTACTGGCCCGGCGAGGCTGAG
3001 AACCAGCTCATGGCCATTAACGACGCGGCCAAGGGCAAGCCTGGGACCAA
3051 GGGTGCGGGCAGCGCCCCGAGCCGCAAGGCCGGTGCCAAGGGCAAGCGCT
3101 ACGGCGGTGGCCCCGCCACGGCTGATGAGCAGCTGATGGCCCGCCTCGGT
3151 GAGATCCTGGGCGGGAACATGCGGGAGGACTTCATTGTGGTCCACATGCA
3201 GGTGCCCTGCACGTTCTGCCGCGCTCACATTCGGGGTCCGAACGTGGTGT
3251 ACCGCTATCGGACGCCGCCTGGCGCGACCCCTCCCAAGGCTGCCCCCGAG
3301 CGCAAGTTCGAGGGCATCAAGCTGGAGGGCGGTGGCCCCAGCGTGCCCGT
3351 GGGCACCGTCTCGAGCCTGACGATCTGCGAGGCGTGCTTTCGCGACGAGG
3401 AGACGCGCACGCTGACCGGCCAACAGCTGCGCCTGCCCGCTGGCGTGTCG
3451 ACCGCTGAGCTCGCGATGGAGAAGCTGGAGGAGATGATCCAGTGGGACCG
3501 CGACCCTGACGGCGACATGGAGAGCGAGTTCTTCGAGACGCGGCAGACCT
3551 TCCTGTCGCTGTGCCAGGGCAACCACTACCAGTTCGACACCCTCCGCCGC
3601 GCTAAGCACTCGTCGATGATGGTGCTCTACCACCTGCACAACCCCCACTC
3651 GCCGGCGTTCGCGTCCTCGTGCAACCAGTGCAACGCCGAGATCGAGCCGG
3701 GCAGCGGCTTTCGCTGCACCGTGTGCCCCGACTTCGACATGTGCGCCAGC
3751 TGCAAGGTCAACCCTCATAAGCGCGCCCTGGACGAGACGCGCCAGCGGCT
3801 GACCGAGGCCGAGCGCCGGGAGCGCAACGAGCAGCTGCAGAAGACCCTCG
3851 CCCTGCTGGTGCACGCCTGCGGCTGCCACAACAGCGCGTGCGGCTCCAAC
3901 AGCTGCCGCAAGGTGAAGCAGCTGTTCCAGCACGCGGTCCACTGCCAGAG
3951 CAAGGTGACCGGGGGCTGCCAGCTGTGCAAGAAGATGTGGTGCCTGCTGA
4001 ACCTGCACGCCAAGTCCTGCACCCGCGCGGACTGCCCGGTGCCGCGCTGC
4051 AAGGAGCTGAAGGAGCTGCGCCGGCGCCAAACGAACCGGCAGGAGGAGAA
4101 GCGCCGGGCGGCCTACGCCGCTATGCTGCGCAACCAGATGGCCGGCAGCC
4151 AGGCTCCGCGCCCCATGTAA SEQ ID NO 1.
【0041】
LexA−p300融合タンパク質(配列番号2)は、配列番号1によってコードされる核酸配列に対応するタンパク質の配列である。230個のアミノ酸を含み、230番目のアミノ酸までの配列がLexA結合ドメインである。完全長p300HATドメイン配列は234番目のアミノ酸から始まる。LexA結合ドメインとp300は3つのアミノ酸から成るペプチドリンカー(GVL)で連結され、この配列はPpuMI(9bp)のDNA制限部位を表す。
1 MKALTARQQEVFDLIRDHISQTGMPPTRAEIAQRLGFRSPNAAEEHLKAL
51 ARKGVIEIVSGASRGIRLLQEEEEGLPLVGRVAAGEPLLAQQHIEGHYQV
101 DPSLFKPNADFLLRVSGMSMKDIGIMDGDLLAVHKTQDVRNGQVVVARID
151 DEVTVKRLKKQGNKVELLPENSEFKPIVVDLRQQSFTIEGLAVGVIRNGD
201 WLEFPGIRRPWRPLESTCSQANSGRISYDLGVLMVPMGAPAMPMGNNGSP
251 MLNGMGMFNAPQQTVPNGGPGGVNPMGQVPAMPAPIPNGGLPGMNAAGGA
301 DDPAKQREQSIQKQQRWLLFLRHCAKCRAPGEDCQLKSQCKFGKQLWQHI
351 LSCQNPACEYPRCTNSKDLLKHHQKCQEQTCPVCMPVKDYVKKTRQATQQ
401 QQQMQQQQQIQQQQQQQMQQQQMQQQQLQQQQMQQQQQMQQQQQPGVGAN
451 FMPTPPMMPNGMFPQQQPQQAMRLNANGLGGQKRPHEMMGMSSGGMDGMN
501 QMVPVGGGGMGMSMPMGMNNPMQGGMPLQPPPQVQAPGQGPMMSAPQQQQ
551 QQPAPKRAKTDDVLRQNTGTSLLETFDAKQIRVHVDLIRAAAVTQKAQQP
601 PPANPDDACKVCALTKLSFEPPVIYCSSCGLRIKRGQIFYSTPPDHGNDL
651 KGYFCHQCFTDQKGERILVEGVSIKKSDLVKRKNDEEIEEGWVQCDHCEG
701 WVHQICGMFNKGRNNTDVHYLCPDCLAVGYERGQRQKTEVRPQAMLEAKD
751 LPTSRLSEFITERLNRELEKEHHKRAEQQGKPLHEVAKPEPLTVRMINSV
801 MKKCEVKPRFHETFGPTDGYPGEFGYRQKVLLLFQSLDGVDVCLFCMYVQ
851 EYGKDCPAPNTNVVYLSYLDSVKYFRPEIPSALGPAVSLRTFVYHQLLIA
901 YVEFTRNMGFEQMYIWACPPMQGDDYILYCHPTKQKTPRSDRLRMWYIEM
951 LKLAKEEGIVKHLSTLWDTYFEGGRDHRMERCSVTYIPYMEGDYWPGEAE
1001 NQLMAINDAAKGKPGTKGAGSAPSRKAGAKGKRYGGGPATADEQLMARLG
1051 EILGGNMREDFIVVHMQVPCTFCRAHIRGPNVVYRYRTPPGATPPKAAPE
1101 RKFEGIKLEGGGPSVPVGTVSSLTICEACFRDEETRTLTGQQLRLPAGVS
1151 TAELAMEKLEEMIQWDRDPDGDMESEFFETRQTFLSLCQGNHYQFDTLRR
1201 AKHSSMMVLYHLHNPHSPAFASSCNQCNAEIEPGSGFRCTVCPDFDMCAS
1251 CKVNPHKRALDETRQRLTEAERRERNEQLQKTLALLVHACGCHNSACGSN
1301 SCRKVKQLFQHAVHCQSKVTGGCQLCKKMWCLLNLHAKSCTRADCPVPRC
1351 KELKELRRRQTNRQEEKRRAAYAAMLRNQMAGSQAPRPM* SEQ ID NO 2.
【0042】
LexA−p300HATドメインDNA(配列番号3)は、コナミドリムシp300タンパク質のLexA結合ドメイン−アセチルトランスフェラーゼ(HAT)ドメインをコードしている遺伝子に対応する核酸配列である。同様に、LexA結合ドメインは690個のヌクレオチドを含む690番目のヌクレオチドまでの配列であり、p300HATドメイン配列は700番目のヌクレオチドから始まる。LexA結合ドメインとp300は3つのアミノ酸から成るペプチドリンカー(GVL)で連結され、この配列はPpuMI(9bp)のDNA制限部位を表す。
1 ATGAAGGCTCTCACCGCTCGCCAACAGGAGGTCTTTGATCTGATTCGCGA
51 CCACATCTCGCAGACCGGCATGCCGCCGACCCGGGCGGAGATTGCTCAGC
101 GGCTGGGCTTCCGGAGCCCCAACGCGGCCGAGGAGCACCTGAAGGCCCTC
151 GCGCGCAAGGGGGTGATCGAGATTGTCTCCGGCGCTAGCCGCGGCATCCG
201 CCTGCTGCAGGAGGAGGAGGAGGGCCTGCCGCTGGTCGGGCGGGTCGCGG
251 CCGGGGAGCCTCTGCTGGCCCAGCAGCACATCGAGGGCCACTACCAAGTG
301 GACCCCTCGCTGTTTAAGCCCAACGCGGACTTCCTGCTCCGGGTGTCGGG
351 CATGAGCATGAAGGACATCGGCATCATGGACGGCGACCTCCTGGCGGTGC
401 ACAAGACCCAGGACGTGCGCAACGGCCAGGTGGTCGTCGCGCGGATTGAC
451 GACGAGGTGACCGTGAAGCGGCTGAAGAAGCAGGGCAACAAGGTCGAGCT
501 GCTGCCCGAGAACTCGGAGTTCAAGCCTATCGTGGTCGACCTGCGCCAGC
551 AGTCCTTCACCATCGAGGGCCTGGCCGTGGGGGTCATCCGCAACGGTGAC
601 TGGCTGGAGTTCCCCGGCATCCGGCGCCCGTGGCGGCCGCTGGAGTCCAC
651 CTGCAGCCAGGCGAACTCCGGCCGCATCTCCTACGATCTGGGGGTCCTTG
701 AGGTGGCCAAGCCGGAGCCGCTGACCGTGCGGATGATCAACAGCGTGATG
751 AAGAAGTGCGAGGTCAAGCCCCGCTTCCACGAGACGTTCGGTCCGACCGA
801 CGGTTACCCCGGGGAGTTCGGCTACCGGCAGAAGGTGCTCCTCCTGTTCC
851 AGTCCCTCGACGGCGTCGACGTGTGCCTGTTCTGCATGTACGTGCAGGAG
901 TACGGGAAGGACTGCCCGGCGCCCAACACGAACGTGGTGTACCTGAGCTA
951 CCTGGACTCCGTCAAGTATTTCCGCCCCGAGATTCCCAGCGCCCTGGGCC
1001 CTGCGGTGAGCCTGCGGACCTTCGTGTACCACCAGCTCCTGATTGCGTAC
1051 GTGGAGTTCACGCGCAACATGGGCTTCGAGCAGATGTACATTTGGGCGTG
1101 CCCCCCCATGCAGGGGGACGACTATATCCTGTATTGCCATCCCACGAAGC
1151 AGAAGACCCCGCGCTCGGACCGCCTGCGCATGTGGTACATCGAGATGCTG
1201 AAGCTGGCTAAGGAGGAGGGCATCGTGAAGCACCTGTCGACGCTGTGGGA
1251 CACCTACTTCGAGGGCGGTCGCGACCACCGGATGGAGCGCTGCAGCGTGA
1301 CCTACATCCCCTACATGGAGGGCGACTACTGGCCTGGCGAGGCCGAGTAA SEQ ID NO 3.
【0043】
LexA−p300HATドメインAA(配列番号4)は、LexA結合ドメイン−コナミドリムシp300タンパク質の典型的なGEEタンパク質配列であり、ここでは、コナミドリムシp300はコナミドリムシp300酵素のヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)ドメインに限定されている。230個のアミノ酸を含む230番目のアミノ酸までの配列がLexA結合ドメインである。p300HATドメイン配列は234番目のアミノ酸から始まる。LexA結合ドメインとp300は3つのアミノ酸から成るペプチドリンカー(GVL)で連結している。
1 MKALTARQQEVFDLIRDHISQTGMPPTRAEIAQRLGFRSPNAAEEHLKAL
51 ARKGVIEIVSGASRGIRLLQEEEEGLPLVGRVAAGEPLLAQQHIEGHYQV
101 DPSLFKPNADFLLRVSGMSMKDIGIMDGDLLAVHKTQDVRNGQVVVARID
151 DEVTVKRLKKQGNKVELLPENSEFKPIVVDLRQQSFTIEGLAVGVIRNGD
201 WLEFPGIRRPWRPLESTCSQANSGRISYDLGVLEVAKPEPLTVRMINSVM
251 KKCEVKPRFHETFGPTDGYPGEFGYRQKVLLLFQSLDGVDVCLFCMYVQE
301 YGKDCPAPNTNVVYLSYLDSVKYFRPEIPSALGPAVSLRTFVYHQLLIAY
351 VEFTRNMGFEQMYIWACPPMQGDDYILYCHPTKQKTPRSDRLRMWYIEML
401 KLAKEEGIVKHLSTLWDTYFEGGRDHRMERCSVTYIPYMEGDYWPGEAE* SEQ ID NO 4.
【0044】
コドン最適化したVenus遺伝子配列が好ましい実施形態である。
1 ATGGTGTCGAAGGGTGAGGAGCTGTTTACCGGTGTCGTGCCTATTCTGGT
51 GGAGCTCGACGGCGACGTCAACGGGCACAAGTTTTCGGTGTCCGGCGAGG
101 GTGAGGGGGACGCGACGTACGGCAAGCTCACGCTGAAGCTGATCTGCACC
151 ACCGGCAAGCTGCCCGTCCCCTGGCCGACGCTGGTGACCACCCTGGGCTA
201 CGGCCTGCAGTGCTTCGCCCGCTACCCGGACCACATGAAGCAGCACGACT
251 TCTTCAAGTCGGCCATGCCCGAGGGGTACGTGCAGGAGCGCACGATCTTC
301 TTTAAGGACGATGGCAACTACAAGACCCGCGCTGAGGTGAAGTTCGAGGG
351 CGATACGCTGGTGAACCGCATCGAGCTCAAGGGCATCGACTTCAAGGAGG
401 ACGGCAACATCCTGGGTCACAAGCTGGAGTACAACTACAACTCCCACAAC
451 GTGTACATCACGGCGGATAAGCAGAAGAACGGCATCAAGGCCAACTTTAA
501 GATTCGCCATAACATCGAGGACGGCGGCGTGCAGCTCGCCGACCACTACC
551 AGCAGAACACCCCGATCGGCGACGGCCCCGTGCTGCTGCCCGATAACCAC
601 TACCTCAGCTACCAGTCGGCCCTGTCCAAGGATCCCAACGAGAAGCGCGA
651 TCACATGGTCCTCCTGGAGTTCGTGACCGCCGCTGGCATCACCCTGGGCA
701 TGGACGAGCTGTACAAGTAA SEQ ID NO 5.
【0045】
配列番号6は、配列番号5の核酸によってコードされているタンパク質である。Venusのアミノ酸配列。
1 MVSKGEELFTGVVPILVELDGDVNGHKFSVSGEGEGDATYGKLTLKLICT
51 TGKLPVPWPTLVTTLGYGLQCFARYPDHMKQHDFFKSAMPEGYVQERTIF
101 FKDDGNYKTRAEVKFEGDTLVNRIELKGIDFKEDGNILGHKLEYNYNSHN
151 VYITADKQKNGIKANFKIRHNIEDGGVQLADHYQQNTPIGDGPVLLPDNH
201 YLSYQSALSKDPNEKRDHMVLLEFVTAAGITLGMDELYK* SEQ ID NO 6.
【0046】
配列番号7は、本発明のVenus−Bcl−xL融合体をコードしている核酸である。これは藻類での好ましいコドン使用頻度に基づいて設計した。717番目のヌクレオチド配列がVenusを表す。VenusとBcl−xLは3つのアミノ酸から成るペプチドリンカー(GVL)で連結し、この配列はPpuMIのDNA制限部位(9bp)を表す。Bcl−xLは726番目のヌクレオチドから始まる。
1 ATGGTGTCGAAGGGTGAGGAGCTGTTTACCGGTGTCGTGCCTATTCTGGT
51 GGAGCTCGACGGCGACGTCAACGGGCACAAGTTTTCGGTGTCCGGCGAGG
101 GTGAGGGGGACGCGACGTACGGCAAGCTCACGCTGAAGCTGATCTGCACC
151 ACCGGCAAGCTGCCCGTCCCCTGGCCGACGCTGGTGACCACCCTGGGCTA
201 CGGCCTGCAGTGCTTCGCCCGCTACCCGGACCACATGAAGCAGCACGACT
251 TCTTCAAGTCGGCCATGCCCGAGGGGTACGTGCAGGAGCGCACGATCTTC
301 TTTAAGGACGATGGCAACTACAAGACCCGCGCTGAGGTGAAGTTCGAGGG
351 CGATACGCTGGTGAACCGCATCGAGCTCAAGGGCATCGACTTCAAGGAGG
401 ACGGCAACATCCTGGGTCACAAGCTGGAGTACAACTACAACTCCCACAAC
451 GTGTACATCACGGCGGATAAGCAGAAGAACGGCATCAAGGCCAACTTTAA
501 GATTCGCCATAACATCGAGGACGGCGGCGTGCAGCTCGCCGACCACTACC
551 AGCAGAACACCCCGATCGGCGACGGCCCCGTGCTGCTGCCCGATAACCAC
601 TACCTCAGCTACCAGTCGGCCCTGTCCAAGGATCCCAACGAGAAGCGCGA
651 TCACATGGTCCTCCTGGAGTTCGTGACCGCCGCTGGCATCACCCTGGGCA
701 TGGACGAGCTGTACAAGGGGGTCCTTATGAGCCAGAGCAACCGGGAGCTG
751 GTGGTGGACTTCCTGAGCTACAAGCTGAGCCAAAAGGGCTATAGCTGGTC
801 GCAGTTCTCCGACGTCGAGGAGAACCGGACCGAGGCCCCCGAGGGGACCG
851 AGTCCGAGATGGAGACGCCGAGCGCGATTAACGGCAACCCGAGCTGGCAC
901 CTGGCGGACTCCCCTGCCGTGAACGGCGCGACCGGCCACAGCTCCAGCCT
951 GGACGCGCGCGAGGTCATCCCGATGGCGGCCGTGAAGCAGGCCCTCCGCG
1001 AGGCCGGCGACGAGTTCGAGCTGCGCTATCGCCGCGCTTTCTCGGACCTG
1051 ACCAGCCAGCTGCACATCACCCCCGGCACGGCTTACCAAAGCTTCGAGCA
1101 GGTGGTGAACGAGCTGTTCCGCGACGGCGTGAACTGGGGTCGCATCGTGG
1151 CGTTCTTCAGCTTCGGCGGTGCGCTGTGCGTGGAGAGCGTCGACAAGGAG
1201 ATGCAGGTGCTGGTGTCGCGCATTGCGGCTTGGATGGCCACCTACCTGAA
1251 CGACCACCTGGAGCCCTGGATTCAGGAGAACGGCGGCTGGGACACCTTCG
1301 TCGAGCTGTACGGCAACAACGCTGCGGCGGAGAGCCGCAAGGGCCAAGAG
1351 CGGTTCAACCGCTGGTTCCTCACGGGGATGACCGTGGCGGGCGTCGTCCT
1401 GCTGGGCAGCCTGTTCTCGCGGAAGTAA SEQ ID NO 7.
【0047】
Venus−Bcl−xLタンパク質(配列番号8)は、配列番号7の核酸によってコードされされている融合タンパク質である。後半のBcl−xLタンパク質配列(233AA)は、NCBIデータベースからのGenBank ID:20336334のDNA配列によってコードされている。
1 MVSKGEELFTGVVPILVELDGDVNGHKFSVSGEGEGDATYGKLTLKLICT
51 TGKLPVPWPTLVTTLGYGLQCFARYPDHMKQHDFFKSAMPEGYVQERTIF
101 FKDDGNYKTRAEVKFEGDTLVNRIELKGIDFKEDGNILGHKLEYNYNSHN
151 VYITADKQKNGIKANFKIRHNIEDGGVQLADHYQQNTPIGDGPVLLPDNH
201 YLSYQSALSKDPNEKRDHMVLLEFVTAAGITLGMDELYKGVLMSQSNREL
251 VVDFLSYKLSQKGYSWSQFSDVEENRTEAPEGTESEMETPSAINGNPSWH
301 LADSPAVNGATGHSSSLDAREVIPMAAVKQALREAGDEFELRYRRAFSDL
351 TSQLHITPGTAYQSFEQVVNELFRDGVNWGRIVAFFSFGGALCVESVDKE
401 MQVLVSRIAAWMATYLNDHLEPWIQENGGWDTFVELYGNNAAAESRKGQE
451 RFNRWFLTGMTVAGVVLLGSLFSRK* SEQ ID NO 8.
【実施例】
【0048】
実施例1
本発明の代表的なベクター
【0049】
本発明の構築物を図1に示す。基にしたベクターはpSP124である。V. Lumbreras, D.R.S. and S. Purton, Plant J., 14(4):441-447 (1998)を参照のこと。ベクターの特徴を図1にあげた。すなわち、図1に示した2つの領域は、pSP124のベクター骨格の一部である。
【0050】
周知の技術により、それぞれの合成DNA断片を制限酵素部位を介して連結し、非pSP124配列を好ましく改変する。別の方法、及び方法を組み合わせて用いることも可能である。例えば、いくつかの特徴をPCR産物として、又はその他に使用可能な構築物からの「切り貼り」で導入してもよい。通常、得られたベクターを確認するために、配列決定及び/又はその他のアッセイ(例えばサイズ解析、ハイブリダイゼーション)を行う。
【0051】
一例として、BamHIを含み、EcoRIで終わる領域を合成することより、挿入断片の一部分を作出する(「合成_1」)。この領域には、転写エンハンサー領域、2つのLexA結合モチーフ、rubisco転写プロモーター(rbcS2の最初のイントロンを含む)、YFP−Bcl−xL融合タンパク質、及びrubiscoの3’UTRが含まれる。この例では、YFP及びBcl−xLのコード領域を藻類で好ましいコドン使用頻度に基づいて設計した。
【0052】
組み込む別の領域を高忠実度PCRで準備し、p300(HAT)遺伝子(「ゲノムPCR」)を効果的に提供する。ゲノムPCR断片に隣接した2tの領域を、合成DNAによりさらに準備する(「合成_2」)。p300遺伝子の上流の転写領域には、転写プロモーターとその下流にLexA結合ドメインコード配列、及び2つのLexA結合部位が含まれる。合成_2領域には3’UTRが含まれる。合成_2とゲノム領域は合わせて、LexA−p300融合タンパク質(GEE)をコードしている転写ユニットの全長を生成する。
【0053】
図1及びこれらの説明は効果的に、本発明の構築物の特徴の例を提供し、かつ、藻類に適したプラスミド中に特徴を加える方法を説明する。2つの転写単位は反対の方向に転写されるように配置され、それぞれは2つのLexA結合部位を有し、これによってLexA−p300が4つの部位のいずれかに結合する機会を作り出し、転写ユニットのいずれかの転写レベルに影響を及ぼす。3番目の転写ユニットは選択マーカーであるブレオマイシン耐性を提供する。
【0054】
このベクターの作出の根底にある概念、すなわち、DNA−BSの近傍に配置した遺伝子の発現レベルをBSを認識/結合するGEEの存在下で効果的に上昇させること、を変化させることなく、ベクター中に発現のためのさらなる又は異なる遺伝子、遺伝子発現を制御するための異なる特徴、及びその他の制限部位を組み込むこと、並びにLexA−BSの数を変えることなどの、その他の設計法が利用可能であることが当業者には明かだろう。
【0055】
実施例2
別の代表的なベクター
【0056】
大部分は同一だが、GEEユニットの有無が異なる2つのベクターを構築する。これらのベクターは互いに他の点では同じであり、かつ、図2Aのベクターと同様である。これらのベクターを同時に使用することにより、他の点は同一の遺伝的バックグラウンドでの、p300の活性及びLexAの役割を試験することができる。2つのベクターを使用することで、例えばその他の遺伝子の付加、さらに複数コピーのGEEの付加などのさらなる改変によるGEE活性の変化を試験することもまた可能である。
【0057】
特に、「LexA BS」には結合部位の数になんの制限もない。1つのBSから多くのBSにしても指定した位置に配置することができる。経験的には、過剰な部位による効果は期待できないことから、約8BSより多いBSの使用は好ましくない。好ましくは、約2−6のBSを領域に又は発現することが期待される遺伝子の5’末端に配置し、より好ましくは2−4BSである。
【0058】
実施例3
両方向性プロモーターを用いたGEEの効果の特徴付け
【0059】
実験1。GOIの位置にYFPレポーターをもつ両方向性構築物、及び2つの内の1つのGEE構築物の変異体(1)LexA−p300キメラ遺伝子は反対の方向に転写される(図1)又は(2)LexAのみが反対の方向に転写され対照となる、を使用する。
【0060】
2つの構築物で藻類を形質転換し、適切な抗生物質を含む選択培地(例えばブレオマイシンを含む培地)上で選抜した。選抜した後、各構築物による形質転換体から100個のコロニーを選択し、rtPCRによるmRNA発現、ウェスタンブロットによるタンパク質の発現、並びにフローサイトメトリー及び蛍光顕微鏡による単一の細胞での蛍光を試験することにより、YFP導入遺伝子の発現を解析する。クローン集団を2、4、6及び10世代継代する。高レベルでYFPを発現しているクローンの頻度を、LexA−p300及びLexAのみで比較する。LexA−p300GEEでは、核に導入した遺伝子の発現が上昇し、時間が経過しても高レベルの発現が維持される。
【0061】
実施例4
別個のプラスミドを用いたGEEの効果の特徴付け
【0062】
2セットの安定なクローンを作出する。1セット目は、LexA−p300融合体(図2A)をコードしている導入遺伝子を組み込んだ安定な細胞株で、これを次にYFPベクター(図2B)を発現しているプラスミドで形質転換する。2セット目はLexAのみ(p300融合パートナー以外は図2Aと同様)をコードしている導入遺伝子を組み込んだ安定な細胞株で、これを次にYFPベクター(図2B)を発現しているプラスミドで形質転換する。
【0063】
安定な細胞株を選択し、時間経過に伴うYFPの発現を、rtPCRによるmRNAの発現試験、ウェスタンブロットによるタンパク質発現の決定、並びにフローサイトメトリー及び蛍光顕微鏡による単一の細胞内の蛍光を試験することによって特徴付ける。クローン集団を2、4、6及び10世代継代する。同様に、高レベルでYFPを発現しているクローンの頻度をLexA−p300及びLexAのみで比較する。LexA−p300GEEでは、核に導入した遺伝子の発現が上昇し、時間が経過しても高レベルの発現が維持される。
【0064】
上に記載した本発明は、添付の請求項及び図面と合わせて読まれるべきである。実施形態及び実施例の詳細により、本発明の様々な実施を行うことができる。実施形態及び実施例は本発明を好ましい実施形態に制限することを意図しないが、本発明の特定の例として役立つ。開示した概念及び特定の実施形態を、変更を行うための、又は本発明と同じ目的をもつその他の方法及び系を設計するための基礎として容易に用いることができることを当業者は理解するだろう。
【0065】
本明細書で引用した、出版物、特許出願、特許及びウェブサイトに含まれる内容を含む全ての参考文献は、それぞれの参考文献が参照により組み込まれること個別に及び特定して示すものと同様に、参照することによりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0066】
本明細書において言及したウェブサイトは、2010年10月30日時点のものである。
【0067】
本明細書においては、別段の指定のない限り又はその文脈で明かに矛盾がない限り、本明細書で記載した文脈で使用される「1つ(a)」及び「1種(an)」及び「その(the)」及び同様の用語は、単数及び複数の両方を包含すると解釈される。
【0068】
本明細書における値の範囲の記載は、本明細書では単に、その範囲に中にある個々の値をそれぞれ個別に記載することの簡略法として役立ち、そして別段の指定のない限り本明細書においては、それぞれ個別の値は、本明細書で個々に記載されたかのうように、明細書中に組み込まれる。数値に伴って使用される場合、用語「約」は、述べられた数値の10%の偏差を含み、10%の偏差までの数値を示していると解釈される。任意の及び全ての実施例、又は例を示す言葉(「例えば」又は「など」)の使用は本明細書では、単に本発明の理解をより容易にするためだけに用いられ、請求項に記載の内限り、本発明の範囲を制限するものではない。明細書中のいずれの言葉も、請求項に記載されていない任意の要素が本発明の実施に必須であることを示しているとは解釈されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
藻類での遺伝子発現を増強する系であって、
DNA結合タンパク質に機能的に融合させた藻類由来p300を含み、少なくとも該DNA結合タンパク質ドメインのコード配列の一部分は藻類での発現を改善させるためにコドン最適化してある遺伝子発現増強(GEE)融合タンパク質のコード配列の機能的上流に配置した藻類に適した転写プロモーター、
藻類に適した転写プロモーターの機能的下流に配置した少なくとも1つの導入遺伝子、及び
DNA結合タンパク質の結合部位であり、少なくとも1つの前記転写プロモーターの近くに配置した、少なくとも1つのDNA領域を含む、
藻類での遺伝子発現を高めるための、藻類中にある、前記系。
【請求項2】
DNA結合タンパク質がLexAのDNA結合ドメインである、請求項1に記載の系。
【請求項3】
GEE融合タンパク質のp300部分がコナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)由来である、請求項1に記載の系。
【請求項4】
p300タンパク質のHATドメインのみがGEE融合タンパク質の一部分である、請求項1に記載の系。
【請求項5】
導入遺伝子の藻類での発現が改善されるようにコドンを変化させた、請求項1に記載の系。
【請求項6】
導入遺伝子が、蛍光−Bcl−xL融合遺伝子である、請求項5に記載の系。
【請求項7】
蛍光−Bcl−xL融合遺伝子がYFP−Bcl−xL融合体である、請求項6に記載の系。
【請求項8】
蛍光−Bcl−xL融合遺伝子がVenus−Bcl−xL融合体である、請求項6に記載の系。
【請求項9】
少なくとも1つの選択マーカーをさらに含む、請求項1に記載の系。
【請求項10】
GEE融合タンパク質と少なくとも1つの導入遺伝子を、2つのプロモーターの近傍に配置したDNA結合部位を含む1つの両方向性プロモーター領域から発現されるような構造で配置した1つのベクターを用いて導入する、請求項9に記載の系。
【請求項11】
GEE融合タンパク質と導入遺伝子を、それぞれが選択マーカーを含み、それぞれの選択マーカーが同じではない別個のベクターを用いて導入する、請求項9に記載の系。
【請求項12】
藻類に適した転写プロモーターがhsp70、rbcS、nitA、tubA2又はその組み合わせである、請求項1に記載の系。
【請求項13】
GEE融合タンパク質が、HAT領域がコナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)由来のp300のHAT領域と少なくとも80%の同一性を有する藻類由来p300ホモログに機能的に融合させたDNA結合ドメインを含む、請求項1に記載の系。
【請求項14】
GEE融合タンパク質が、HAT領域がコナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)由来のp300のHAT領域と少なくとも80%の同一性を有する藻類由来のp300ホモログのHATドメインに機能的に融合させたDNA結合ドメインを含む、請求項13に記載の系。
【請求項15】
藻類において高レベルで遺伝子を発現させる方法であって、
DNA結合タンパク質に機能的に融合させた藻類由来p300を含み、少なくとも該DNA結合タンパク質ドメインのコード配列の一部分は藻類での発現を改善させるためにコドン最適化してある遺伝子発現増強(GEE)融合タンパク質のコード配列の機能的上流に配置した藻類に適した転写プロモーター、藻類に適した転写プロモーターの機能的下流に配置した少なくとも1つの導入遺伝子、及びDNA結合タンパク質の結合部位であり、少なくとも1つの前記転写プロモーターの近くに配置した少なくとも1つのDNA領域を含む、少なくとも1つのベクターで藻類を形質転換する工程、形質転換された藻類細胞を選抜する工程、及び
前記GEE遺伝子又は前記導入遺伝子の藻類での発現を検出する工程を含む、前記方法。
【請求項16】
前記DNA結合タンパク質がLexA結合ドメインである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
p300がコナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)由来である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
GEE融合タンパク質が、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)由来p300タンパク質のHATドメインに機能的に融合させたLexA結合ドメインを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記導入遺伝子がYFP−Bcl−xL融合タンパク質又はVenus−Bcl−xL融合タンパク質である、請求項に17記載の方法。
【請求項20】
まずGEE融合タンパク質を安定して発現しているベクターを選抜し、次に導入遺伝子を含むベクターを用いて選抜した藻類を形質転換する、別個のベクターにのせた前記GEE融合タンパク質及び前記導入遺伝子を用いて藻類を形質転換する、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−509199(P2013−509199A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537176(P2012−537176)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/055012
【国際公開番号】WO2011/053935
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(512048767)シナプティック リサーチ,リミテッド ライアビリティ カンパニー (3)
【氏名又は名称原語表記】SYNAPTIC RESEARCH,LLC
【住所又は居所原語表記】1448 South Rolling Road,Baltimore,Maryland 21227
【Fターム(参考)】