虚血の検査
デバイスは、第1検出ゾーンおよび第2検出ゾーンと連通する入口を含む微小流体ネットワークを少なくとも部分的に画定する基板を備える。コバルト試薬とニッケル試薬とが、微小流体ネットワーク内に置かれる。第1電極が第1検出ゾーンと連通し、第2電極が第2検出ゾーンと連通する。デバイスは、入口に導入された血液由来サンプルを収容し、血液サンプルを第1および第2血液サンプル部分に区別し、第1血液サンプル部分の少なくとも一部とコバルト試薬の少なくとも一部とを含む第1混合物を生成し、第2血液サンプル部分の少なくとも一部とコバルト試薬の少なくとも一部とニッケル試薬の少なくとも一部を含む第2混合物を生成するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【優先権主張】
【0001】
本出願は、2007年2月15日付で出願された米国特許仮出願第60/889,962号明細書、2007年1月17日付で出願された米国特許仮出願第60/885,320号明細書、および、2006年2月15日付で出願された英国特許仮出願第GB0603049.8号明細書に対する優先権を主張し、これら各出願の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、例えば、ヒトなどの動物における虚血イベントの存在を決定するための検査に関する。
【背景】
【0003】
対象の種(例えば、分析物)に対する検査は、多数の応用分野を有する(例えば、医学、工業および環境解析において)。典型的には、分析物は、1つまたは複数の共存種を含むサンプル物質(例えば、混合物)中に存在している。例えば、哺乳類の血液蛋白質であるアルブミンは、分析物の例である。アルブミンは、粒子状物質(例えば、マクロファージおよび赤血球)などの共存種、イオン種(例えば、種々の塩および金属イオン)、気体(例えば、溶媒和した酸素および窒素)、および多数の生物学的化合物(例えば、蛋白質、リポ蛋白質、血液トリグリセリド、脂肪酸およびコレステロール)を含むサンプル物質である血液内で見られる。共存種の量および/または種類、ならびに他のサンプル特性(例えば、pH、温度および粘度)は、サンプル物質の種類によって、および同じサンプル物質のそれぞれのサンプル間で変化する可能性がある。共存種およびサンプル特性の変化は、検査に干渉(例えば、正確性および/または精度を低減)する可能性がある。このような干渉は、マトリックス効果として知られている。
【0004】
検査は、虚血、すなわち、例えば、血管の収縮または閉塞が原因で、体の一部への酸素供給が不足することに伴う状態の存在を決定するためになされてきた。虚血の2つの一般的な形態は、心臓血管の虚血と脳血管の虚血である。前者は、通常、冠動脈疾患の直接的な結果であり、一方、後者は、脳に至る動脈の狭窄が原因であることが多い。被験者が虚血イベントを発現している場合、虚血変性アルブミン(IMA)が被験者の血液中に発生し、被験者の血液中の正常な(すなわち、未変性の)アルブミンの量が減少する。
【0005】
IMAと正常なアルブミンとの間の相違点の1つは、IMAの方が特定の金属イオンを結合する能力が低いことである。国際特許公開公報第WO03/046538号は、この相違点に基づいて、被験者サンプル中の虚血イベントをインビトロ検出するための電気化学方法およびデバイスを記載している。この公報は、既知量の遷移金属イオンを血液サンプルに加え、その後、正常アルブミンがない金属イオン(例えば、正常アルブミンによって封鎖または結合されていない金属イオン)の電流または電位差を測定することを記載している。虚血イベントが存在することによって、正常アルブミンの量が減るため、遊離金属イオンの量は、虚血イベントがない場合よりも虚血イベントがある場合の方が多い。このWO03/046538号公報は、参照によりその内容は本明細書に組み込まれる。
【0006】
米国食品医薬品局は、虚血イベントの決定に用いるためのアルブミンコバルト結合(ACB(登録商標))試験を承認した。この試験は、血液蛋白質アルブミンと結合するコバルト量を光学的に測定することによって有効になる。被験者からの血清は、コバルトのない有色複合体を生成する試薬とは混合するが、アルブミンと複合されたコバルトとは混合しない。有色複合体の量は、光学的に決定され、被験者内の虚血イベントの存在を診断するために基準値と比較される。
【概要】
【0007】
本発明は、例えば、ヒトなどの哺乳類において、虚血イベントの存在を決定するための検査に関する。
【0008】
検査方法、システムおよびデバイスの例示的な実施形態は、以下のもの、および以下の全ての組み合わせを含む。
【0009】
1.コバルト試薬と血液由来サンプル物質とを備えた第1混合物を生成する手段と、
第1混合物内の遊離コバルトの量または濃度を決定する手段と、
コバルト試薬と、血液由来サンプル物質と、任意選択のニッケル試薬とを備える第2混合物を生成する手段であって、ニッケル試薬が第2混合物に含有されていない場合、第2混合物中のコバルト量は第1混合物中のコバルト量と異なる、手段と、
第2混合物内の遊離コバルトの量または濃度を決定する手段と、
を備える、検査デバイス。
【0010】
2.第2混合物を生成する手段は、ニッケル試薬を備えている、実施形態1の検査デバイス。
【0011】
3.ニッケル試薬は、デバイス内に乾燥状態で置かれている、実施形態2の検査デバイス。
【0012】
4.第1混合物を生成する手段は、デバイス内に乾燥状態で置かれているコバルト試薬を備えている、実施形態1から3のいずれかの検査デバイス。
【0013】
5.第1および第2混合物は、全塩化物濃度を少なくとも50mMまで上げるのに十分な量の塩化物補償試薬をさらに含む、先の実施形態のいずれかの検査デバイス。
【0014】
6.デバイスは、共通のサンプル収容ゾーンと連通する第1および第2検出ゾーンを備えている、先の実施形態のいずれかの検査デバイス。
【0015】
7.第1検出ゾーンおよび第2検出ゾーンと、
第1金属を含む第1試薬材料と、
第1金属か、アルブミンに対して第1金属よりも高い親和力を有するか、または第1金属と異なる量を含む第2金属のいずれかを含む、第2試薬材料と、
を備える検査デバイスであって、
このデバイスは、サンプル液を収容し、第1検出ゾーンにおいて、サンプル液の一部と第1試薬材料とを含む第1混合物を生成するように、かつ第2検出ゾーンにおいて、サンプル液の一部と第2試薬材料とを含む第2混合物を生成するように構成された、検査デバイス。
【0016】
8.上記第1および第2検出ゾーンは、電気化学的検出ゾーンである、実施形態5による検査デバイス。
【0017】
9.上記第1金属はコバルトである、実施形態5または6による検査デバイス。
【0018】
10.上記第2金属はニッケルである、実施形態5〜7のいずれかによる検査デバイス。
【0019】
11.第1金属は、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuおよびAgからなるグループから選択される、実施形態5から8のいずれかのデバイス。
【0020】
12.第2金属は、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuおよびAgからなるグループから選択される、実施形態5から9のいずれかの方法。
【0021】
13.上記第1および上記第2金属のうちの少なくとも一方は、サンプル液を加える前に乾燥状態で存在している、実施形態5から10のいずれかによる検査デバイス。
【0022】
14.上記サンプル液は、ヒト血液およびヒト血漿から選択される、実施形態5から11のいずれかによる検査デバイス。
【0023】
15.第1または第2金属は、金属塩の形をしている、実施形態5〜12のいずれかによる検査デバイス。
【0024】
16.検査リーダと、先の実施形態のうちのいずれかの検査デバイスとを備えた検査システム。
【0025】
17.検査リーダは検査デバイスを作動させて、第1および第2検出ゾーンにおける遊離第1金属のそれぞれの量を決定するように構成されている、実施形態16の検査システム。
【0026】
18.実施形態1〜15のいずれかによる検査デバイスを収容するように構成された検査リーダ。
【0027】
19.リーダは、少なくとも1つの電気化学検出器を備えている、実施形態18の検査リーダ。
【0028】
20.実施形態1から15のいずれかによる検査デバイスを固定および固定解除するのに適した検査デバイス固定機構を備えた、実施形態18または19の検査リーダ。
【0029】
21.固定機構は、検査デバイスを検査リーダに収容すると、検査デバイスの凹部に係合するよう構成された可動部材を備えている、実施形態20の検査リーダ。
【0030】
22.固定機構は、検査デバイスを検査リーダに収容すると、検査デバイスの各凹部に係合するようそれぞれが構成された2つの可動部材を備えている、実施形態21の検査リーダ。
【0031】
23.可動部材(複数可)は、回転可能である、実施形態21または22の検査リーダ。
【0032】
24.検査デバイス温度制御器をさらに備える、実施形態18から23のいずれかによる検査リーダ。
【0033】
25.温度制御器は、検査デバイスを検査リーダに収容すると、静止位置から熱的に結合する位置まで移動するように構成された可動熱遮蔽物を備え、熱的に結合した位置では、加熱要素が検査デバイスと熱接触状態に置かれる、実施形態24の検査リーダ。
【0034】
26.実施形態1〜15のいずれかによる検査デバイス、実施形態16または17のいずれかによる検査システム、または実施形態18〜23のいずれかによる検査リーダを使用して、血液由来サンプル物質中の第1金属試薬の遊離コバルトもしくは金属の量または濃度を決定すること。
【0035】
27.実施形態26による使用において、血液由来サンプル物質中の第1金属試薬の遊離コバルトもしくは金属の量または濃度を用いて、上記血液由来サンプル物質が採取された哺乳類の虚血イベントの存在を決定すること。
【0036】
28.実施形態1〜15のいずれかによる検査デバイス、実施形態16または17のいずれかによる検査システム、または実施形態18〜23のいずれかによる検査リーダを使用して、血液由来サンプル物質中の虚血変性アルブミン(IMA)の量または濃度を決定すること。
【0037】
29.実施形態28による使用において、虚血変性アルブミン(IMA)の濃度または量を用いて、上記血液由来サンプル物質が採取された哺乳類の虚血イベントの存在を決定すること。
【0038】
30.実施形態1〜15のいずれかによる検査デバイス、実施形態16または17のいずれかによる検査システム、または実施形態18〜23のいずれかによる検査リーダを使用して、上記血液由来サンプル物質が採取された哺乳類の虚血イベントの存在を決定する。
【0039】
31.ヒト血液から得られたサンプル中の虚血変性アルブミンの存在を決定する方法であって、
上記血液由来サンプル物質の一部をコバルト試薬に加えることによって、第1混合物を生成するステップと、
第1混合物中の遊離コバルトの量または濃度を決定して第1結果を得るステップと、
上記血液由来サンプル物質の別の部分を、コバルト試薬と、任意選択で、血液由来サンプル物質の上記部分にコバルト−アルブミン複合体の生成および存在を実質的に阻止するのに十分な量のニッケル試薬とに加えることによって第2混合物を生成するステップであって、
ニッケル試薬が第2混合物に含有されていない場合は、第2混合物中のコバルト量は、第1混合物中のコバルト量とは異なる、ステップと、
第2混合物中の遊離コバルトの量または濃度を決定して第2結果を得るステップと、
第1および第2結果を処理し、処理値を、虚血変性アルブミンを表す適切な基準値と比較するステップと、を備える方法。
【0040】
32.基準値は、虚血イベントの後に虚血変性アルブミンを含有することが知られているヒトの血液から得られるサンプル中の遊離コバルトの量または濃度を表す、実施形態31による方法。
【0041】
33.基準値は、先に採取された同じヒトから得られたサンプル中の遊離コバルトの量または濃度を表す、実施形態31による方法。
【0042】
34.実施形態1〜15のいずれかによる検査デバイス、実施形態16または17のいずれかによる検査システム、または実施形態18〜23のいずれかによる検査リーダを用いた、実施形態31〜34のいずれかによる方法。
【0043】
35.ヒト血液から得られたサンプル中の虚血変性アルブミンの存在を決定する方法であって、
上記血液由来サンプル物質の一部を第1金属を含む第1試薬に加えることによって、第1複合体を生成するステップと、
第1混合物中の遊離第1金属の量または濃度を決定して第1結果を得るステップと、
上記血液由来サンプル物質の別の部分を、ある一定量の第1試薬と、任意選択で、アルブミンに対して第1金属よりも高い親和力を有する第2金属を含むある一定量の第2試薬とに加えることによって第2混合物を生成するステップであって、第2金属の量は、血液由来サンプル物質の上記部分における第1金属−アルブミン複合体の生成および存在を実質的に阻止するのに十分であり、
第2試薬が第2混合物に含有されていない場合は、第2混合物中の第1金属の量は、第1混合物中の第1金属の量とは異なる、ステップと、
第2混合物中の遊離第1金属の量または濃度を決定して第2結果を得るステップと、
第1および第2結果を処理し、処理値を、虚血変性アルブミンを表す適切な基準値と比較するステップと、を備える方法。
【0044】
36.第1金属は、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuおよびAgからなるグループから選択される、実施形態17の方法。
【0045】
37.第2金属は、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuおよびAgからなるグループから選択される、実施形態18の方法。
【0046】
38.実施形態1〜15のいずれかによる検査デバイス、実施形態16または17のいずれかによる検査システム、または実施形態18〜23のいずれかによる検査リーダを用いた、実施形態17〜18のいずれかによる方法。
【0047】
39.それぞれが、血液由来サンプル物質の混合物とコバルト試薬を備える第1および第2電気化学検出ゾーンを備えた検査デバイスであって、サンプル物質は哺乳類から得られている、検査デバイスと、
検査デバイスを作動させて、第1および第2検出ゾーン内の各遊離コバルトの量を決定し、遊離コバルトの量に基づいて哺乳類の虚血イベントの存在を決定するように構成された検査リーダと、を備えた検査システム。
【0048】
40.コバルトと、哺乳類の血液から得られた第1血液由来サンプル物質とを含む第1混合物を生成するステップであって、サンプル物質はアルブミンを含む、ステップと、
第1混合物中に存在するアルブミンと複合されないコバルト量を示す第1信号を得るステップと、
コバルトとニッケルと哺乳類の血液から得られた第2血液由来サンプル物質とを含む第2混合物を生成するステップと、
第2混合物中に存在するアルブミンと複合されないコバルト量を示す第2信号を得るステップと、
少なくとも第1および第2信号に基づいて、その哺乳類の虚血の存在を示す検査結果を決定するステップと、を備える方法。
【0049】
41.検査結果の少なくとも一部に基づいて、その哺乳類の虚血の存在を決定するステップをさらに備える、実施形態40の方法。
【0050】
42.哺乳類はヒトである、実施形態40または41の方法。
【0051】
43.検査結果は、第1および第2電気化学信号間の差、第1および第2電気化学信号の比、またはそれらの組み合わせを示す、先の実施形態のいずれかの方法。
【0052】
44.第1および第2混合物のコバルトは、コバルトイオンであり、第2混合物のニッケルは、ニッケルイオンである、先の実施形態のいずれかの方法。
【0053】
45.第1信号は第1電気化学信号であり、第2信号は第2電気化学信号である、実施形態40の方法。
【0054】
46.第1電気化学信号を得るステップは電流測定法で実行され、第2電気化学信号を得るステップは電流測定法で実行される、実施形態45の方法。
【0055】
47.第1混合物を生成するステップは、第1サンプル物質とコバルト塩とを混合するステップを含み、コバルト塩は、第1混合物を生成する前には乾燥状態である、先の実施形態のいずれかの方法。
【0056】
48.第2混合物を生成するステップは、第2サンプル物質とコバルト塩とニッケル塩とを混合する工程を含み、コバルト塩とニッケル塩とは、第2混合物を生成する前には乾燥状態である、実施形態47の方法。
【0057】
49.第1混合物は、コバルト塩から生じる第1総量の塩化物イオンを含み、第2混合物は、ニッケル塩とコバルト塩とから得られる第2総量の塩化物イオンを含み、第1混合物は、コバルトおよびニッケルが遊離した塩化物ソースから得られるある一定量の塩化物を含み、ある一定量の塩化物は、第2および第1総量の塩化物の差の少なくとも50%である、先の実施形態のいずれかの方法。
【0058】
50.コバルトおよびニッケルが遊離した塩化物ソースは、アルカリ金属塩化物塩を含む、実施形態49の方法。
【0059】
51.アルカリ金属塩の実質的に全ては、塩化カリウムである、実施形態50の方法。
【0060】
52.塩化物の量は、第2および第1総量の塩化物の差の少なくとも75%である、実施形態51の方法。
【0061】
53.第1混合物を生成する前は、コバルト塩は、微小流体デバイス内で乾燥状態であり、第1混合物を生成するステップは、哺乳類の血液由来サンプル物質を微小流体デバイス内のコバルト塩と混合する工程を備える、実施形態47〜52のいずれかの方法。
【0062】
54.哺乳類の血液由来サンプル物質をコバルト塩と混合するステップは、微小流体デバイス内で、血液由来サンプル物質を機械的に移動する工程を備える、実施形態53の方法。
【0063】
55.微小流体デバイス内で、血液由来サンプル物質を機械的に移動するステップは、微小流体デバイス内で、血液由来サンプル物質およびコバルト塩と接触して置かれた、磁気的な影響を受ける部材を磁気的に移動する工程を含む、実施形態54の方法。
【0064】
56.部材の回転移動を引き起こすステップを備える、実施形態55の方法。
【0065】
57.第2混合物を生成するステップは、第2サンプル物質とニッケル塩とコバルト塩とを混合する工程を含み、ニッケル塩とコバルト塩とは、混合ステップを実行する前は乾燥状態である、実施形態53の方法。
【0066】
58.第2混合物を生成する前に、ニッケル塩およびコバルト塩は微小流体デバイス内で乾燥状態であり、第2混合物を生成するステップは、哺乳類の血液由来サンプル物質とニッケル塩とコバルト塩とを微小流体デバイス内で混合する工程を備える、実施形態57の方法。
【0067】
59.哺乳類の血液由来サンプル物質を、第2混合物のニッケル塩およびコバルト塩と混合するステップは、微小流体デバイス内で、血液由来サンプル物質を機械的に移動する工程を備え、哺乳類の血液由来サンプル物質を第1混合物のコバルト塩と混合するステップは、微小流体デバイス内で、血液由来サンプル物質を機械的に移動する工程を備える、実施形態58の方法。
【0068】
60.血液由来サンプル物質を機械的に移動するステップは、微小流体デバイス内に置かれた、磁気的な影響を受ける部材を磁気的に移動する工程を含む、実施形態59の方法。
【0069】
61.微小流体デバイス内に哺乳類からのある一定量の血液由来サンプル物質を収容するステップと、血液由来サンプル物質を少なくとも第1および第2部分に区別するステップとを備え、第1サンプルは、血液由来サンプル物質の第1部分の血液由来サンプル物質を含み、第2サンプルは、血液由来サンプル物質の第2部分の血液由来サンプル物質を含む、先の実施形態のいずれかの方法。
【0070】
62.血液由来サンプル物質を区別後、血液の第1部分を、微小流体デバイスのチャネルに沿って、微小流体デバイスの電気化学検出チャンバまで通すステップと、血液由来サンプル物質の第2部分を、微小流体デバイスのチャネルに沿って、微小流体デバイスの電気化学検出チャンバまで通すステップとを備える、実施形態61の方法。
【0071】
63.第1混合物を生成するステップは、第1検出チャンバ内で実行され、第2混合物を生成するステップは、第2検出チャンバ内で実行される、実施形態62の方法。
【0072】
64.第1信号は、第1検出チャンバの電極を用いて得られた第1電気化学信号であり、第2信号は、第2検出チャンバの電極を用いて得られた第2電気化学信号である、実施形態63の方法。
【0073】
65.血液由来サンプル物質の第1部分をチャネルに沿って通すステップは、血液由来サンプル物質を検出チャンバ内にまで通す前に、第1断面積を有するチャネル部分から第2のより小さい断面積を有するチャネル部分まで、血液由来サンプル物質を通す工程を備える、実施形態62の方法。
【0074】
66.アルブミンとの複合体を生成する第1試薬と、哺乳類の血液から得られる第1血液由来サンプル物質とを含む第1混合物を生成するステップと、
第1混合物中に存在するアルブミンと複合されない第1試薬の量を示す第1の値を決定するステップと、
第1試薬と、アルブミンとの複合体を生成するために第1試薬と競合する第2試薬と、第2サンプルとを含む第2混合物を生成するステップであって、第2サンプルは、哺乳類の血液由来サンプル物質から得られる、ステップと、
第2混合物中に存在するアルブミンと複合されない第1試薬の量を示す第2の値を決定するステップと、
少なくとも第1および第2の値に基づいて、第1混合物中に存在するアルブミンの量を表す値を決定するステップと、を備える方法。
【0075】
67.第1試薬はコバルトである、実施形態66の方法。
【0076】
68.第2試薬はニッケルである、実施形態66または67の方法。
【0077】
69.第1検出ゾーンおよび第2検出ゾーンと連通する入口を備えた微小流体ネットワークを、少なくとも部分的に画定する基板と、
微小流体ネットワーク内に置かれたコバルト塩と、
微小流体ネットワーク内に置かれたニッケル塩と、
第1検出ゾーンと電気化学的に結合する第1電極と、
第2検出ゾーンと電気化学的に結合する第2電極と、
を備えたデバイスであって、
このデバイスは、入口に導入された血液由来サンプル物質を収容し、サンプル物質を第1および第2血液サンプル部分に区別し、第1サンプル物質部分の少なくとも一部と、コバルト塩の少なくとも一部とを含む第1混合物を生成し、第2サンプル物質部分の少なくとも一部と、コバルト塩の少なくとも一部と、ニッケル塩の少なくとも一部とを含む第2混合物とを生成するように構成されている。
【0078】
70.第1および第2電極は、それぞれ、第1および第2混合物内に存在するコバルトを決定することができるように構成されている、実施形態69のデバイス。
【0079】
71.第1および第2検出ゾーンのそれぞれの最大容積は、25μlである、実施形態69または70のデバイス。
【0080】
72.デバイスは、第1混合物内で500μMの最小コバルト濃度を生成するように構成されている、実施形態69から71のいずれかのデバイス。
【0081】
73.デバイスは、第1混合物内で10mMの最大コバルト濃度を生成するように構成されている、実施形態69から72のいずれかのデバイス。
【0082】
74.デバイスは、第1混合物内で1mMの最大ニッケル濃度を生成するように構成されている、実施形態69から73のいずれかのデバイス。
【0083】
75.デバイスは、第2混合物内で4mMの最小ニッケル濃度を生成するように構成されている、実施形態69から74のいずれかのデバイス。
【0084】
76.デバイスは、第2混合物内で25mMの最大ニッケル濃度を生成するように構成されている、実施形態69から75のいずれかのデバイス。
【0085】
77.デバイスは、第2混合物内で500μMの最小コバルト濃度を生成するように構成されている、実施形態69から76のいずれかのデバイス。
【0086】
78.デバイスは、第2混合物内で10mMの最大コバルト濃度を生成するように構成されている、実施形態69から77のいずれかのデバイス。
【0087】
79.使用前に、コバルト塩は、微小流体デバイス内に乾燥状態で置かれ、ニッケル塩は、微小流体デバイス内に乾燥状態で置かれている、実施形態69から78のいずれかのデバイス。
【0088】
80.乾燥コバルト試薬の少なくとも一部は、第1および第2検出ゾーンのそれぞれに置かれている、実施形態79のデバイス。
【0089】
81.第1検出ゾーンと連通する入口を備えた微小流体ネットワークを、少なくとも部分的に画定する基板と、
第2検出ゾーンと連通する入口を備えた微小流体ネットワークを、少なくとも部分的に画定する基板と、
第1検出ゾーンを備えた微小流体ネットワークと連通して置かれた乾燥コバルト塩と、
第2検出ゾーンを備えた微小流体ネットワークと連通する乾燥コバルト塩と、
第2検出ゾーンを備えた微小流体ネットワーク内に置かれた乾燥ニッケル塩と、
第1検出ゾーンと電気化学的に結合する第1電極と、
第2検出ゾーンと電気化学的に結合する第2電極と、
を備えた電気化学デバイスであって、
このデバイスは、第1検出ゾーンと連通する入口に導入された血液由来サンプル物質を収容し、血液由来サンプル物質の少なくとも一部と、第1検出ゾーンを備える微小流体ネットワークのコバルト塩の少なくとも一部とを含む第1混合物を生成し、血液由来サンプル物質の少なくとも一部と、第2検出ゾーンを備える微小流体ネットワークのコバルト塩の少なくとも一部と、ニッケル塩の少なくとも一部とを含む第2混合物を生成するように構成されている。
【0090】
82.第1検出ゾーンと連通する入口を備えた微小流体ネットワークを少なくとも部分的に画定する基板と、第2検出ゾーンと連通する入口を備えた微小流体ネットワークを少なくとも部分的に画定する基板とは、同一の基板である、実施形態81の電気化学デバイス。
【0091】
83.第1検出ゾーンを備えた微小流体ネットワークの入口と、第2検出ゾーンを備えた微小流体ネットワークの入口とは、同一の入口である、実施形態81または82の電気化学デバイス。
【0092】
84.第1検出ゾーンと連通する入口を備えた微小流体ネットワークを、少なくとも部分的に画定する基板と、
第2検出ゾーンと連通する入口を備えた微小流体ネットワークを、少なくとも部分的に画定する基板と、
第1検出ゾーンを備えた微小流体ネットワーク内に置かれた第1試薬であって、第1試薬はアルブミンとの複合体を生成できる、第1試薬と、
第2検出ゾーンを備えた微小流体ネットワーク内に置かれた第1試薬と、
第2検出ゾーンを備えた微小流体ネットワーク内に置かれた第2試薬であって、第2試薬は、第1試薬と競合してアルブミンとの複合体を生成できる、第2試薬と、
第1検出ゾーンと電気化学的に結合する第1電極と、
第2検出ゾーンと電気化学的に結合する第2電極と、
を備えた電気化学デバイスであって、
このデバイスは、第1検出ゾーンと連通する入口に導入された血液由来サンプル物質を収容し、血液由来サンプル物質の少なくとも一部と、第1検出ゾーンを備える微小流体ネットワークの第1試薬の少なくとも一部とを含む第1混合物を生成し、血液由来サンプル物質の少なくとも一部と、第2検出ゾーンを備える微小流体ネットワークの第1試薬の少なくとも一部と、第2試薬の少なくとも一部とを含む第2混合物を生成するように構成されている、電気化学デバイス。
【0093】
85.入口と、接合部と連通する第1検出ゾーンと、接合部と連通する第2検出ゾーンとを備えた微小流体ネットワークを少なくとも部分的に画定する基板と、
微小流体ネットワーク内に乾燥状態で置かれ第1試薬であって、第1試薬は、血液由来サンプル物質によって移動されると、アルブミンを含む複合体を生成できる、第1試薬と、
微小流体ネットワーク内に乾燥状態で置かれた第2試薬であって、第2試薬は、血液由来サンプル物質によって移動されると、第1試薬と競合してアルブミンを含む複合体を生成できる、第2試薬と、
第1検出ゾーンと電気化学的に結合する第1電極と、
第2検出ゾーンと電気化学的に結合する第2電極と、
を備えたデバイスであって、
このデバイスは、入口に導入された血液由来サンプル物質を収容し、血液サンプルを接合部において第1および第2血液由来サンプル物質部分に区別し、第1血液由来サンプル物質部分の少なくとも一部と、第1試薬の少なくとも一部とを含む第1混合物を生成し、第2血液由来サンプル物質部分の少なくとも一部と、第1試薬の少なくとも一部と、第2試薬の少なくとも一部とを含む第2混合物を生成するように構成されている、デバイス。
【0094】
86.微小流体デバイス内に哺乳類の血液由来サンプル物質を収容するステップと、
血液由来サンプル物質の少なくとも一部を微小流体デバイスの検出ゾーンへ導入するステップであって、検出ゾーンはある一定量の乾燥コバルト塩と電極とを備えている、ステップと、
血液由来サンプル物質の第1表面と、検出ゾーン内に存在する実質的に全ての乾燥コバルト塩とを接触させるステップと、
血液由来サンプル物質の第2表面と電極とを接触させるステップであって、第2表面は第1表面と対向している、ステップと、
血液由来サンプル物質とコバルト塩とを混合して混合物を生成するステップと、
混合物中に存在するアルブミンと複合しないコバルトの量を決定するように電極を作動させるステップと、
を備える、方法。
【0095】
87.実質的に全ての乾燥コバルト塩は、検出ゾーン内に存在する乾燥コバルト塩の少なくとも70重量%である、実施形態86の方法。
【0096】
88.実質的に全ての乾燥コバルト塩は、第1主要表面上に配置され、導入するステップは、微小流体デバイスのチャネルから検出ゾーンに血液由来サンプル物質を導入する工程を備え、血液由来サンプル物質の第1表面と接触させるステップは、第1主要表面上に置かれた乾燥コバルトを可溶化する工程を備える、実施形態86または87の方法。
【0097】
89.作動ステップは、第1表面の下に配置された電極により実行される、実施形態86から88のいずれかの方法。
【0098】
90.微小流体デバイス内に哺乳類の血液由来サンプル物質を収容するステップと、
血液由来サンプル物質の少なくとも一部を微小流体デバイスの検出ゾーンに導入するステップであって、検出ゾーンは、ある一定量の試薬と電極とを備え、試薬は、血液由来サンプル物質中に存在するアルブミンとの複合体を生成できる、ステップと、
血液由来サンプル物質の第1表面と、検出ゾーン内に存在する実質的に全ての試薬を接触させるステップと、
血液由来サンプル物質の第2表面と電極とを接触させるステップであって、第2表面は第1表面と対向している、ステップと、
血液由来サンプル物質と試薬とを混合して混合物を生成するステップと、
混合物中に存在するアルブミンと複合しない試薬の量を決定するように電極を作動させるステップと、を備える方法。
【0099】
91.入口と、入口と連通する検出ゾーンとを備えた微小流体ネットワークを少なくとも部分的に画定する基板であって、検出ゾーンは第1および第2の対向する主要表面を有する、基板と、
検出ゾーン内に乾燥状態で置かれたコバルト塩と、
検出ゾーンの第1主要表面上に置かれた電極と、
を備えるデバイスであって、
使用前は、コバルト塩は、検出ゾーンの第1主要表面上には実質的に全く置かれておらず、
使用中、デバイスは、入口に導入された血液由来サンプル物質を収容し、検出ゾーンにおいて、血液由来サンプル物質の少なくとも一部と、コバルトの少なくとも一部とを含む混合物を生成するように構成されている、デバイス。
【0100】
92.電極とつながれたプロセッサをさらに備え、使用中は、プロセッサは電極を作動させて、検出ゾーン内に生成された混合物中に存在するアルブミンと複合しないコバルトの量を決定するように構成されている、実施形態91のデバイス。
【0101】
93.入口と、入口と連通する検出ゾーンとを備えた微小流体ネットワークを少なくとも部分的に画定する基板であって、検出ゾーンは、第1および第2の対向する主要表面を有した、基板と、
検出ゾーン内に乾燥状態で置かれた試薬であって、試薬は、哺乳類から得られた血液由来サンプル物質によって移動されると、アルブミンを含む複合体を生成できる、試薬と、
検出ゾーンの第1主要表面上に置かれた電極と、
を備えるデバイスであって、
使用前は、試薬は、検出ゾーンの第1主要表面上には実質的に全く置かれておらず、
使用中、デバイスは、入口に導入された血液由来サンプル物質を収容し、検出ゾーンにおいて、血液由来サンプル物質の少なくとも一部と、試薬の少なくとも一部とを含む混合物を生成するように構成されている、デバイス。
【0102】
94.使用前は、検出ゾーン内に存在する試薬の全質量のうち25%未満が、検出ゾーンの第1主要表面上に置かれている、実施形態93のデバイス。
【0103】
95.使用前は、検出ゾーン内に存在する試薬の全質量のうち10%未満が、検出ゾーンの第1主要表面上に置かれている、実施形態93または94のデバイス。
【0104】
96.電極と結合したプロセッサをさらに備え、使用中、プロセッサは電極を作動させて、検出ゾーン内で生成された混合物中に存在するコバルトと複合しない試薬の量を決定するように構成されている、実施形態93から95のいずれかのデバイス。
【0105】
97.哺乳類はヒトであり、プロセッサは、混合物中に存在する非複合体試薬の量に少なくとも部分的に基づいて、ヒトの虚血状態の存在を決定するように構成されている、実施形態93から96のいずれかのデバイス。
【0106】
98.試薬はコバルト塩であり、血液由来サンプル物質によって移動されると、コバルト塩のコバルトはアルブミンを含む複合体を生成できる、実施形態93から97のいずれかのデバイス。
【0107】
99.検出ゾーンは第1検出ゾーンであり、試薬は第1試薬であり、電極は第1電極であり、デバイスは、入口と連通する第2検出ゾーンであって、第2検出ゾーンは第1および第2の対向する主要表面を有する、第2検出ゾーンと、
第2検出ゾーン内に乾燥状態で置かれたある一定量の第1試薬と、
第2検出ゾーン内に乾燥状態で置かれた第2試薬であって、第2試薬は、哺乳類から得られた血液由来サンプルによって移動されると、第1試薬と競合してアルブミンと第2試薬を含むが第1試薬を含まない複合体を生成できる、第2試薬と、
第2検出ゾーンの第1主要表面上に置かれた第2電極と、
をさらに備え、
使用前は、第1および第2試薬は、第2検出ゾーンの第1主要表面上には実質的に全く置かれておらず、
使用中、デバイスは、入口に導入された血液由来サンプルを受け容れ、第2検出ゾーンにおいて、血液サンプルの少なくとも一部と第1および第2試薬の少なくとも一部とを含む第2混合物を生成するように構成されている、実施形態93から98のいずれかのデバイス。
【0108】
100.第1および第2電極とつながれたプロセッサをさらに備え、使用中、プロセッサは第1および第2電極を作動させて、第1および第2検出ゾーン内に生成された各混合物中に存在するある一定量の非複合体第1試薬を決定するように構成されている、実施形態99のデバイス。
【0109】
101.哺乳類はヒトであり、プロセッサは、第1および第2混合物中に存在する非複合体第1試薬の量に少なくとも部分的に基づいて、ヒトの虚血状態の存在を決定するように構成されている、実施形態99または100のデバイス。
【0110】
102.第1試薬はコバルト塩であり、血液由来サンプルによって移動されると、コバルト塩のコバルトはアルブミンを含む複合体を生成でき、第2試薬はニッケル塩であり、血液由来サンプルによって移動されると、ニッケル塩のニッケルはコバルトと競合してアルブミンとニッケルを含むがコバルトを含まない複合体を生成できる、実施形態99から101のいずれかのデバイス。
【0111】
103.検出ゾーンは、微小流体デバイス内に、血液由来サンプル物質を機械的に移動できる部材を備える、実施形態99から102のいずれかのデバイス。
【0112】
104.上記部材は、磁気的な影響を受ける部材であり、デバイスは、検出ゾーンにおいて、部材を移動できる、磁気的な影響を受ける磁界発生源をさらに備える、実施形態103の方法。
【0113】
105.微小流体デバイス内に哺乳類の血液由来サンプル物質を受け容れるステップと、
微小流体デバイス内で、血液由来サンプル物質の第1部分と乾燥コバルト塩とを混合して第1混合物を生成するステップと、
微小流体デバイス内で、血液由来サンプル物質の第2部分と乾燥コバルト塩および乾燥ニッケル塩とを混合して、第2混合物を生成するステップと、
デバイスの第1検出ゾーン内に置かれた第1混合物を用いて、第1混合物中に存在するコバルトの量を示す値を決定するステップと、
デバイスの第2検出ゾーン内に置かれた第2混合物を用いて、第2混合物中に存在するコバルトの量を表す値を決定するステップと、
を備えた方法であって、
混合するステップはそれぞれ、微小流体デバイスの異なった間隔を空けた位置に置かれた、磁気的な影響を受ける部材をそれぞれ磁気的に移動する工程を備える、方法。
【0114】
106.微小流体デバイス内に哺乳類の血液由来サンプル物質を収容するステップと、
第1混合物を生成するために微小流体デバイス内で血液由来サンプル物質の第1部分と第1試薬とを混合するステップであって、第1試薬はアルブミンとの複合体を生成できる、ステップと、
第2混合物を生成するために微小流体デバイス内に収容した血液由来サンプル物質の第2部分を、ある一定量の第1試薬および第2試薬と混合するステップであって、第2試薬は第1試薬と競合して、第1試薬を含まないアルブミンとの複合体を生成できる、ステップと、
デバイスの第1検出ゾーン内に置かれた第1混合物を用いて、第1混合物中に存在する第1試薬の量を表す値を決定するステップと、
デバイスの第2検出ゾーン内に置かれた第2混合物を用いて、第2混合物中に存在する第1試薬の量を表す値を決定するステップと、
を備えた方法であって、
混合するステップはそれぞれ、微小流体デバイスの異なった間隔を空けた位置に置かれた、磁気的な影響を受ける部材をそれぞれ磁気的に移動する工程を備える、方法。
【0115】
107.入口と、接合部と連通する第1検出ゾーンと、接合部と連通する第2検出ゾーンと、を備えた微小流体ネットワークを少なくとも部分的に画定する基板と、
第1検出ゾーン内に乾燥状態で置かれた第1試薬と、
第1検出ゾーン内に置かれた第1の磁気的な影響を受ける部材と、
第2検出ゾーン内に乾燥状態で置かれた、ある一定量の第1試薬と、
第2検出ゾーン内に置かれた第2の磁気的な影響を受ける部材と、
第1検出ゾーンと電気化学的に結合する第1電極と、
第2検出ゾーンと電気化学的に結合する第2電極と、
第1および第2の磁気的に影響を受ける部材を磁気的に操作するように構成された磁場システムと、
磁場システムを作動させるように構成されたプロセッサと、
を備えたデバイスであって、
このデバイスは、入口に導入された血液由来サンプルを収容し、接合部における血液サンプルを第1および第2血液由来サンプル物質部分に区別し、第1血液由来サンプル物質部分の少なくとも一部を第1検出ゾーンに収容し、第2血液由来サンプル物質部分の少なくとも一部を第2検出ゾーンに収容し、第1および第2検出ゾーンにおいて、第1および各部材に血液を移動するように磁場システムを作動させ、第1および第2混合物をそれぞれ生成するように構成され、プロセッサは第1および第2電極を作動させて、第1および第2混合物中に存在する第1試薬の量を表す各値を決定するように構成された、デバイス。
【0116】
108.入口と連通する検出ゾーンを備えた第1分岐と、入口と連通する第2検出ゾーンを備えた第2分岐とを備える微小流体ネットワークを、少なくとも部分的に画定する基板と、
第1分岐内に置かれた乾燥コバルト塩と、
第1検出ゾーン内に置かれた第1の磁気的に影響を受ける部材と、
第2分岐内に置かれた乾燥コバルト塩と、
第2分岐内に置かれた乾燥ニッケル塩と、
第2検出ゾーン内に置かれた第2の磁気的に影響を受ける部材と、
第1検出ゾーンと電気化学的に連通する第1電極と、
第2検出ゾーンと電気化学的に連通する第2電極と、
第1および第2の磁気的に影響を受ける部材を磁気的に操作するように構成された磁場システムと、
磁場システムを作動させるように構成されたプロセッサと、
を備えたデバイスであって、
第1および第2検出ゾーン内に各血液由来サンプルを収容すると、プロセッサは磁場システムを起動して、第1および各部材が、血液由来サンプルを第1および第2検出ゾーン内に移動させて、第1および第2混合物をそれぞれ生成するようにし、第1混合物は可溶化コバルトを含み、第2混合物は可溶化コバルトと可溶化ニッケルとを含み、プロセッサは第1および第2電極を作動させて、第1および第2混合物中に存在するコバルトの量を表す各値を決定するよう構成されている、デバイス。
【0117】
109.第1および第2混合物中に存在するコバルトの量を表す値は、混合物中のアルブミンと複合しないコバルトの各量を示している、実施形態108のデバイス。
【0118】
110.第1および第2分岐はそれぞれ、共通の接合部と連通し、接合部は共通の入口と連通している、実施形態108または109のデバイス。
【0119】
111.コバルトと第1サンプルとを含む第1混合物を生成するステップであって、第1サンプルは、哺乳類の血液由来サンプル物質から得られる、ステップと、
第1混合物中に存在するアルブミンと複合されたコバルトの量を示す第1値を決定するステップと、
コバルトと第2サンプルとを含む第2混合物を生成するステップであって、第2サンプルは、哺乳類の血液由来サンプル物質から得られ、第2混合物の第2サンプルの質量に対するコバルトの質量の比は、第1混合物の第1サンプルの質量に対するコバルトの質量の比よりも少なくとも50%高い、ステップと、
第2混合物中に存在するアルブミンと複合しないコバルトの量を表す第2値を決定するステップと、
少なくとも第1および第2値に基づいて、第1混合物中に存在するアルブミンの量を表す値を決定するステップと、
を備える方法。
【0120】
112.第2混合物の第2サンプルの質量に対するコバルトの質量の比は、第1混合物の第1サンプルの質量に対するコバルトの質量の比よりも少なくとも75%高い、実施形態111の方法。
【0121】
113.第2混合物の第2サンプルの質量に対するコバルトの質量の比は、第1混合物の第1サンプルの質量に対するコバルトの質量の比の約2倍である、実施形態111または112の方法。
【0122】
114.接合部と連通する入口と、接合部と連通する第1検出ゾーンと、接合部と連通する第2検出ゾーンとを備えた微小流体ネットワークを少なくとも部分的に画定する基板と、
微小流体ネットワーク内に置かれた乾燥コバルト塩と、
第1検出ゾーンと電気化学的に結合する第1電極と、
第2検出ゾーンと電気化学的に結合する第2電極と、
を備えたデバイスであって、
このデバイスは、入口に導入された血液由来サンプルを収容し、接合部において血液サンプルを第1および第2血液由来サンプル物質部分に区別し、第1血液由来サンプル物質部分の少なくとも一部と、コバルト塩の少なくとも一部とを含む第1混合物を生成し、第2血液由来サンプル物質部分の少なくとも一部を含む第2混合物を生成するように構成され、
第2混合物の第2サンプルの質量に対するコバルトの質量の比は、第1混合物の第1サンプルの質量に対するコバルトの質量の比よりも少なくとも50%高い、デバイス。
【0123】
115.第1および第2電極とつながれたプロセッサをさらに備え、使用中は、プロセッサは第1および第2電極のそれぞれを作動させて、第1混合物および第2混合物中に存在するアルブミンと複合しないコバルトの量を決定するよう構成されている、実施形態114のデバイス。
【0124】
116.第1試薬と、哺乳類の血液から得られた第1血液由来サンプル物質とを含む第1混合物を生成するステップであって、第1試薬は、血液由来サンプル物質中に存在するアルブミンとの複合体を生成できる、ステップと、
第1混合物中に存在するアルブミンと複合しない第1試薬の量を表す第1値を決定するステップと、
第1試薬と、哺乳類の血液から得られた第2血液由来サンプル物質とを含む第2混合物を生成するステップであって、第2混合物の第2サンプルの質量に対する第1試薬の質量の比は、第1混合物の第1サンプルの質量に対する第1試薬の質量の比よりも少なくとも50%高い、ステップと、
第2混合物中に存在するアルブミンと複合しない第1試薬の量を表す第2値を決定するステップと、
少なくとも第1および第2値に基づいて、第1混合物中に存在するアルブミンの量を示す値を決定するステップと、
を備える方法。
【0125】
117.接合部と連通する入口と、接合部と連通する第1検出ゾーンと、接合部と連通する第2検出ゾーンとを備えた微小流体ネットワークを、少なくとも部分的に画定する基板であって、第1試薬は、血液由来サンプル物質中に存在するアルブミンとの複合体を生成できる、基板と、
微小流体ネットワーク内に置かれた第1試薬と、
第1検出ゾーンと電気化学的に結合する第1電極と、
第2検出ゾーンと電気化学的に結合する第2電極と、
を備えたデバイスであって、
このデバイスは、入口に導入された血液由来サンプル物質を収容し、接合部において血液サンプル物質を第1および第2血液サンプル部分に区別し、第1血液由来サンプル物質部分の少なくとも一部と第1試薬の少なくとも一部とを含む第1混合物を生成し、第2血液由来サンプル物質部分の少なくとも一部と第1試薬の少なくとも一部とを含む第2混合物を生成するように構成され、
第2混合物の第2サンプルの質量に対する第1試薬の質量の比は、第1混合物の第1サンプルの質量に対する第1試薬の質量の比よりも少なくとも50%高い、デバイス。
【0126】
118.第1検出ゾーンと連通する入口を備えた微小流体ネットワークを、少なくとも部分的に画定する基板と、
第2検出ゾーンと連通する入口を備えた微小流体ネットワークを、少なくとも部分的に画定する基板と、
第1検出ゾーンを備える微小流体ネットワーク内に置かれた乾燥コバルト塩と、
第2検出ゾーンを備える微小流体ネットワーク内に置かれた乾燥コバルト塩と、
第1検出ゾーンと電気化学的に結合する第1電極と、
第2検出ゾーンと電気化学的に結合する第2電極と、
を備えた電気化学デバイスであって、
このデバイスは、第1検出ゾーンと連通する入口に導入された血液由来サンプルを収容し、血液由来サンプル物質の少なくとも一部と、第1検出ゾーンを備える微小流体ネットワークのコバルトの少なくとも一部とを含む第1混合物を生成し、血液由来サンプル物質の少なくとも一部と、第2検出ゾーンを含む微小流体ネットワークのコバルトの少なくとも一部とを含む第2混合物を生成するように構成され、
第2混合物の第2サンプルの質量に対するコバルトの質量の比は、第1混合物の第1サンプルの質量に対するコバルトの質量の比よりも少なくとも50%高い、電気化学デバイス。
【0127】
119.第1検出ゾーンと連通する入口を備えた微小流体ネットワークを、少なくとも部分的に画定する基板と、
第2検出ゾーンと連通する入口を備えた微小流体ネットワークを、少なくとも部分的に画定する基板と、
第1検出ゾーンを備える微小流体ネットワーク内に置かれた第1試薬であって、第1試薬は、アルブミンとの複合体を生成できる、第1試薬と、
第2検出ゾーンを備える微小流体ネットワーク内に置かれた第1試薬と、
第1検出ゾーンと電気化学的に結合する第1電極と、
第2検出ゾーンと電気化学的に結合する第2電極と、
を備えた電気化学デバイスであって、
このデバイスは、第1検出ゾーンと連通する入口に導入された血液由来サンプルを収容し、血液由来サンプル物質の少なくとも一部と、第1検出ゾーンを備える微小流体ネットワークの第1試薬の少なくとも一部とを含む第1混合物を生成し、血液由来サンプル物質の少なくとも一部と、第2検出ゾーンを含む微小流体ネットワークの第1試薬の少なくとも一部とを含む第2混合物を生成するように構成され、
第2混合物の第2サンプルの質量に対する第1試薬の質量の比は、第1混合物の第1サンプルの質量に対する第1試薬の質量の比よりも少なくとも50%高い、電気化学デバイス。
【0128】
120.第1コバルト試薬と哺乳類の血液由来サンプル物質との第1混合物を生成する手段と、
第1コバルト試薬と第2試薬と哺乳類の血液由来サンプル物質との第1混合物を生成する手段と、
第1混合物中の遊離コバルトの量を決定する手段と、
第2混合物中の遊離コバルトの量を決定する手段と、
少なくとも第1および第2混合物中の遊離コバルトの量に基づいて、哺乳類の虚血の存在を決定する手段と、
を備えるデバイス。
【0129】
121.第1試薬を含む第1混合物と分析物を含む第1サンプル物質とを生成するステップであって、第1試薬の第1部分と分析物とが複合体を生成する、ステップと、
第1混合物中の第1試薬の第2部分を決定するステップであって、第1試薬の第2部分は分析物と複合しない、ステップと、
第1試薬を含む第2混合物と、分析物を含む第2サンプル物質と、第2試薬とを生成するステップであって、第2試薬と分析物とが相互作用することにより、第1試薬と分析物の間で複合体を生成することを防ぐおよび/または低減するようにする、ステップと、
第2混合物中の第1試薬の第3部分を決定するステップであって、第1試薬の第3部分は分析物とは複合しない、ステップと、
を備える方法。
【0130】
122.第1試薬の第2部分の検出結果と第1試薬の第3部分の検出結果とに基づいて、第1および第2サンプル物質のうちの少なくとも一方中の分析物を決定するステップをさらに備える、実施形態121の方法。
【0131】
123.決定するステップは、電極を含む微小流体検査デバイス内で電気化学的に実行され、分析物を決定するステップは、微小流体デバイスを作動させるように構成された検査デバイスリーダ内の電子回路を用いて実行される、実施形態122の方法。
【0132】
124.分析物を決定するステップは、第1試薬の第2部分の検出結果と第1試薬の第3部分の検出結果との間の差を決定する工程を備える、実施形態122の方法。
【0133】
125.第2混合物を生成するステップは、第1混合物の少なくとも一部と第2試薬とを結合する工程を備える、実施形態121の方法。
【0134】
126.第1試薬の第2部分を決定するステップと、第1試薬の第3部分を決定するステップとは、第2および第3部分を電気化学的に決定する工程を備える、実施形態121の方法。
【0135】
127.第1混合物を生成するステップは、第1サンプル物質を、乾燥形にある第1試薬と接触させる工程を備える、実施形態126の方法。
【0136】
128.第1試薬は、第1サンプル物質と接触するとき、微小流体デバイスのマイクロチャネルの表面に沿って乾燥形である、実施形態127の方法。
【0137】
129.第1試薬は金属または金属の塩を含む、実施形態121の方法。
【0138】
130.第1試薬はコバルト塩を含む、実施形態129の方法。
【0139】
131.分析物は蛋白質を含む、実施形態129の方法。
【0140】
132.分析物はアルブミンである、実施形態129の方法。
【0141】
133.第2試薬は金属または金属の塩を含み、第2試薬は第1試薬とは異なる、実施形態12の方法。
【0142】
134.第2試薬はニッケル塩を含む、実施形態13の方法。
【0143】
135.第1サンプル物質と第2サンプル物質はそれぞれ哺乳類から得られる、実施形態13の方法。
【0144】
136.第1および第2サンプル物質はそれぞれ血液由来サンプル物質を含む、実施形態15の方法。
【0145】
137.第1試薬の第2部分の検出結果と第1試薬の第3部分の検出結果とに基づいて、第1および第2サンプル物質の少なくとも一方中の分析物を決定するステップをさらに含む、実施形態16の方法。
【0146】
138.分析物の決定結果に基づいて、哺乳類が虚血イベントを発現しているかどうかを決定するステップをさらに含む、実施形態17の方法。
【0147】
139.第1試薬の第2部分を決定するステップと第1試薬の第3部分を決定するステップとは、第2および第3部分を電気化学的に決定する工程を含む、実施形態18の方法。
【0148】
140.電気化学的に決定するステップは、少なくとも1つの共通電極を用いて、第2および第3部分を電気化学的に決定する工程を備える、実施形態19の方法。
【0149】
141.第1試薬と分析物を含む第1サンプル物質とを含む第1混合物を生成するステップであって、第1試薬の第1部分と分析物とが相互作用して、第1試薬を変性させる、ステップと、
分析物と相互作用した第1試薬の第1部分に影響を受けない方法を用いて、第1混合物中の第1試薬の第2部分を決定するステップと、
第1試薬と、分析物を含む第2サンプル物質と、第2試薬とを含む第2混合物を生成するステップであって、第2試薬と分析物とは相互作用して、第1試薬と分析物との間の相互作用を防ぐおよび/または低減する、ステップと、
分析物と相互作用した第1試薬の第1部分に影響を受けない方法を用いて、第2混合物中の第1試薬の第3部分を決定するステップと、
を含む方法。
【0150】
142.第1試薬の第2部分の検出結果と第1試薬の第3部分の検出結果とに基づいて、第1および第2サンプル物質の少なくとも一方中の分析物を決定するステップをさらに含む、実施形態21の方法。
【0151】
143.サンプル物質は哺乳類の血液であり、方法は、分析物の決定結果に基づいて、哺乳類が虚血イベントを発現しているかどうかを決定するステップをさらに備える、実施形態22の方法。
【0152】
144.分析物との相互作用による第1試薬の変性は、第1試薬と分析物との間で複合体を生成することである、実施形態21の方法。
【0153】
145.決定するステップは、電極を含む微小流体検査デバイス内で電気化学的に実行され、分析物を決定するステップは、微小流体デバイスを作動するように構成された検査デバイスリーダ内の電子回路を用いて実行される、実施形態22の方法。
【0154】
146.第1試薬は金属または金属の塩を含む、実施形態21の方法。
【0155】
147.第1試薬はコバルト塩を含む、実施形態26の方法。
【0156】
148.分析物は蛋白質を含む、実施形態26の方法。
【0157】
149.第2試薬は金属または金属の塩を含み、第2試薬は第1試薬とは異なる、実施形態26の方法。
【0158】
150.第2試薬はニッケル塩を含む、実施形態29の方法。
【0159】
151.第1試薬の第2部分を決定するステップと、第1試薬の第3部分を決定するステップとは、第2および第3部分を電気化学的に決定する工程を含む、実施形態21の方法。
【0160】
152.サンプル物質と分析物を含む第1試薬とを混合して第1混合物を生成するように構成された第1サンプル調製ゾーンであって、第1試薬と分析物とは複合体を生成できる、第1サンプル調製ゾーンと、
第1混合物の第1試薬の第1部分を決定するように構成された第1検出器であって、第1試薬の第1部分は分析物とは複合しない、第1検出器と、
分析物を含むサンプル物質と第1試薬および第2試薬とを混合して第2混合物を生成するように構成された第2サンプル調製ゾーンであって、第2試薬と分析物とは相互作用して、第1試薬と分析物との間の複合体の生成を防止および/または低減することができる、第2サンプル調製ゾーンと、
第2混合物中の第1試薬の第2部分を決定するように構成された第2検出器であって、第1試薬の第2部分は分析物と複合しない、第2検出器と、
第1および第2検出器から信号を受け取り、その信号に基づいて、第1および第2混合物のうちの少なくとも一方中の分析物を決定するように構成されたプロセッサと、
を含む、デバイス。
【0161】
153.第1サンプル調製ゾーンはコバルト塩を備え、第1試薬はコバルトイオンである、実施形態32のデバイス。
【0162】
154.第2サンプル調製ゾーンはニッケル塩を備え、第2試薬はニッケルイオンである、実施形態32のデバイス。
【0163】
155.プロセッサはさらに、サンプル物質が哺乳類からの血液由来物質を含む場合、分析物の決定に基づいて、その哺乳類が虚血イベントを発現しているかどうかを決定するように構成されている、実施形態32のデバイス。
【0164】
156.サンプル物質中の分析物を測定する方法であって、
検出可能な特性を有し、上記分析物を含む化学物質部分を生成できる試薬を提供するステップであって、化学物質部分は、試薬の上記検出可能な特性変化を示す、ステップと、
試薬の少なくとも一部と上記分析物からの上記化学物質部分の生成に寄与する条件下で、上記試薬と、その中の上記分析物が検査されるサンプル物質とを含む第1混合物を生成するステップと、
上記第1混合物中の、変化していない試薬の存在を検出するステップと、
試薬の少なくとも一部と上記分析物からの上記化学部分の生成に寄与する条件下で、上記試薬と、その中の上記分析物が検査されるサンプル物質と、別の試薬とを含む第2混合物を生成するステップであって、別の試薬と分析物とは合わさって別の化学種を生成することが好ましく、それによって、化学物質部分の生成を抑制する、ステップと、
上記第2混合物中の変化していない試薬の存在を検出するステップと、
検出結果からサンプル中の分析物の存在を決定するステップと、
を含む方法。
【0165】
157.検出ステップからのデータを、病状と対応する所定の基準値と関連付けるステップをさらに含む、実施形態36の方法。
【0166】
158.各容器が、検出可能な特性を有し、生理液のサンプルの成分と相互作用して試薬と化学部分を生成し、それによって試薬の検出可能な特性が変性されることが可能な試薬を収容する、複数の容器を含む、臨床検査室用のキットであって、
上記キットは、サンプル堆積ゾーンと、少なくとも1つの試薬処理ゾーンと、少なくとも1つの試薬とサンプルを上記処理ゾーンに導入する手段とを提供するように構成されたデバイスをさらに含み、
上記デバイスは、検出器に対して位置合わせし、それによって試薬(複数可)の検出可能な特性を検出できるように適応されている、キット。
【0167】
159.血液由来サンプル物質は、全血、血漿、血清、またはそれらの組み合せを含む、先の実施形態のいずれかの方法。
【0168】
160.血液由来サンプル物質は実質的に、全血、血漿、血清、またはそれらの組み合せからなる、先の実施形態のいずれかの方法。
【0169】
161.血液由来サンプル物質は、全血、血漿、血清、またはそれらの組み合せを含む、先の実施形態のいずれかのデバイス。
【0170】
162.血液由来サンプル物質は実質的に、全血、血漿、血清、またはそれらの組み合せからなる、先の実施形態のいずれかのデバイス。
【0171】
163.血液由来サンプル全血である、先の実施形態のいずれか。
【0172】
164.血液由来サンプルは血清である、先の実施形態のいずれか。
【0173】
165.哺乳類はヒトである、先の実施形態のいずれか。
【0174】
166.第1金属の塩と、塩化物補償試薬、懸濁促進試薬、可塑化試薬、分散試薬、緩衝試薬、消泡試薬、またはそれらの組み合せのうちの少なくとも1つとを含む試薬材料であって、金属は第1金属に対して親和力を有する、試薬材料。
【0175】
167.第1金属の塩と、第2金属の塩と、塩化物補償試薬、懸濁促進試薬、可塑化試薬、分散試薬、緩衝試薬、消泡試薬、またはそれらの組み合せのうちの少なくとも1つとを含む試薬材料であって、第2金属は、第1金属よりもアルブミンに対して高い親和力を有する、試薬材料。
【0176】
168.第1金属は、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuおよびAgからなるグループから選択される、実施形態166または実施形態167の試薬材料。
【0177】
169.第1金属はCoである、実施形態168の試薬材料。
【0178】
170.第2金属はNiである、実施形態168または169の試薬材料。
【0179】
171.可塑化試薬はセルロース誘導体を含んでいる、実施形態166から170のいずれかの試薬材料。
【0180】
172. 試薬材料は乾燥状態である、実施形態166から171のいずれかの試薬材料。
【0181】
173.実施形態166から172のいずれかの試薬材料を含む先のデバイスのいずれか。
【0182】
174.実施形態166から172のいずれかの試薬材料を含む先のデバイスのいずれかであって、試薬材料は、第2金属と、実施形態166から172のいずれかの試薬材料とを含まず、試薬材料は第2金属を含む、デバイス。
【0183】
175.実施形態166から172のいずれかの第1の量の試薬材料を含む先のデバイスのいずれかであって、第1の量の試薬材料は、第1の量の第1金属と、実施形態166から172のいずれかの第2の量の試薬材料とを有し、第2の量の試薬材料は、第1金属の2番目に大きい量を有する、デバイス。
【0184】
176.試薬材料のうちの一方はデバイスの第1検出ゾーン内に置かれ、他方の試薬材料は、デバイスの第2の検出ゾーン内に置かれている、実施形態174または175のデバイス。
【0185】
177.試薬材料は、検出ゾーン内でスクリーン印刷層として配置されている、実施形態172のデバイス。
【0186】
178.デバイスの検出ゾーン内に置かれた攪拌バーを備える、先のデバイスのいずれか。
【0187】
179.検出ゾーンの容積は約20μl以下である、実施形態178のデバイス。
【0188】
180.検出ゾーンはさらに、試薬材料を含む、実施形態178または179のデバイス。
【0189】
181.攪拌バーは可溶性試薬によって固定される、実施形態180のデバイス。
【0190】
182.攪拌バーは、サンプル物質が検出ゾーンに入るチャネルの縦軸に対して非ゼロの角度で検出ゾーン内に固定される、実施形態178から181のいずれかのデバイス。
【0191】
183.可溶性試薬は、実施形態166または実施形態167の試薬材料である、実施形態181のデバイス。
【0192】
184.可溶性試薬は、例えば、セルロース誘導体など可塑化試薬を含む、実施形態183のデバイス。
【0193】
185.検出ゾーンは、実施形態166または実施形態167の試薬材料のいずれかを含む、実施形態178または179のデバイス。
【0194】
186.デバイスの検出ゾーンにサンプルを導入するステップであって、検出ゾーンは、少なくとも1つの電極と、電極に対向する表面と、サンプル物質と、試薬材料と、攪拌バーとを備えた、ステップと、
攪拌バーを時間変動磁場に曝すステップであって、磁場は、攪拌バーを移動させ、攪拌バーを反対側表面に押し付ける、ステップと、
を含む方法。
【0195】
187.検出ゾーンの容積は約10μl以下である、実施形態186の方法。
【0196】
188.先の実施形態のいずれかのデバイスを用いて実行される、実施形態186または187の方法。
【0197】
189.試薬材料は、実施形態166または実施形態167の試薬材料のいずれかである、実施形態186から188の方法。
【0198】
特に記載しない限り、「アルブミン」、「正常アルブミン」および「未変性アルブミン」の用語は同義であり、金属結合能力が低下した虚血変性アルブミン(IMA)を除外する。
【0199】
特に記載しない限り、金属に対する、または試薬材料の文脈における参照は、金属の塩に対する参照を含む。
【0200】
特に記載しない限り、試薬材料の文脈における、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuまたはAgの参照は、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuまたはAgの塩に対する参照を含む。
【0201】
特に記載しない限り、サンプル物質および試薬材料を含む混合物の文脈における金属に対する参照は、金属もしくは溶媒和物のイオン、または、金属もしくは金属のイオンの他の複合体に対する参照を含む。
【0202】
特に記載しない限り、サンプル物質および試薬材料を含む混合物の文脚における、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuまたはAgの参照は、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuまたはAgのイオンもしくは溶媒和物、またはV、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuまたはAgの他の複合体、またはV、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuまたはAgのイオンに対する参照を含む。
【0203】
他の特徴、目的および利点は、本明細書および図面から、ならびに特許請求項から明らかとなろう。
【詳細な説明】
【0204】
本発明者らは、サンプル物質中の1つまたは複数の分析物の存在を(例えば、定量的または定性的に)決定するための検査を開示する。例示的な検査は、虚血イベントを過去に発現した(または現在発現している)と疑われる哺乳類(例えばヒト)から得られたサンプル物質(例えば、全血、血漿、血清またはそれらの組み合せなどの血液由来サンプル物質)中のアルブミンの量に関連する結果を決定することを含む。その結果に基づいて、哺乳類の虚血イベントの発現または非発現が決定される。
【0205】
図1を参照すると、検査方法100は、第1混合物生成ステップ110と第1コバルト電気化学決定ステップ120と第2混合物生成ステップ130と第2コバルト決定ステップ140と検査結果決定ステップ150とを含む。第1混合物生成ステップ110では、第1混合物が生成される。第1混合物は、コバルトとヒトからのサンプル物質とを含む。第1コバルト決定ステップ120では、第1混合物中のコバルト−アルブミン複合体がないコバルトを決定する。第2混合物生成ステップ130では、第2混合物が生成される。第2混合物は、コバルトとニッケルと同じヒトからのサンプル物質とを含む。第2電気化学決定ステップ140では、第2混合物中のコバルト−アルブミン複合体がないコバルトを決定する。検査結果決定ステップ150では、第1および第2決定ステップ120、140の結果に基づいて検査結果が決定される。検査結果は、ヒトの血液中のアルブミンの量に関連している。検査方法100は、ステップ150の検査結果に基づいて、(例えば、検査結果を基準値と比較することによって)ヒトの虚血イベントの発生を決定することをさらに含むことができる。以下に述べるとおり、第2決定ステップ140の結果は、第1決定ステップ120だけの結果に基づいた検査結果と比較すると、マトリックス効果に対する、決定ステップ150の検査結果の影響の受けやすさを低減する制御結果として作用することができる。
【0206】
次に、本発明者らは、検査方法100をより詳細に説明する。種々のソース(例えば哺乳類)から得られた種々のタイプのサンプル物質が、本明細書に記載される方法において使用するのに適しているが、本発明者らは、サンプル物質として、ヒトからの全血を用いることに関する非限定的な方法における方法100を具体的に示す。
【0207】
第1混合物生成ステップ110では、第1混合物が、コバルトを含む試薬材料と、ヒトからの全血を含むサンプル物質とを混合することによって生成される。第1混合物では、試薬材料からのコバルトの第1部分とヒトの血液からのアルブミンが、コバルト−アルブミン複合体(例えば、コバルトの第1部分が、アルブミンによって封鎖(例えば結合)される)を生成する。試薬材料からのコバルトの第2部分は(例えば、アルブミンによって封鎖(例えば結合)されない)アルブミンを含まないままである。第1混合物では、コバルトの総量とアルブミンを含まないコバルトの量との間の差が、アルブミンの量に関連している(例えば、比例する)。例えば、コバルトを封鎖するにはより多くのアルブミンが有効であるため、アルブミンの量が増えるにつれて、その差は大きくなる。コバルトを封鎖するのにより少ないアルブミンが有効であるため、アルブミンの量が減るにつれて、その差は小さくなる。
【0208】
サンプル物質(例えば血)は、所望通りに、ヒトから得ることができる。例示的な一実施形態では、サンプル物質は、「指先穿刺」、「静脈を介した採血」または同様の方法によって得られた血液を含む。血液は、(例えば、全血として)直接用いることができる。血液由来物質(例えば、血清)は、赤血球を分離するために血液を処理した後に用いることができる。典型的には、サンプル物質は、アルブミンと競合してコバルトを結合するキレート化剤(例えば、EDTA)をほとんどまたは全く含んでいない。
【0209】
検査方法100で用いられる総血液容量は所望通りとすることができる。総血液容量は、第1および第2混合物生成ステップ110、130を実行するために用いられる血液容量の合計である。一般に、第1および第2混合物生成ステップ110、130を実行するために用いられる血液容量は、ほぼ同じ(例えば、同じ)である。
【0210】
典型的には、方法100で用いられる総血液容量は、少数(例えば、3回以下、2回以下、1回)の「指先穿刺」で得ることができる。例えば、いくつかの実施形態では、方法100で用いられる総血液容量は、単一の「指先穿刺」で得られる。いくつかの実施形態では、方法100で用いられる総血液容量は、約100μl以下(例えば、75μl以下、50μl以下、30μl以下)である。いくつかの実施形態では、方法100で用いられる総血液容量は、約5μl以上(例えば、約10μl以上、約15μl以上)である。例示的な一実施形態では、方法100で用いられる総血液容量は、約20μlである。
【0211】
試薬材料には、サンプル物質と混合すると、コバルトイオンを提供するコバルト試薬が含まれる。典型的には、コバルト試薬は、固体物(例えば、コバルト塩の形のコバルト(例えば、塩化コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト、硝酸コバルトまたはこれらの組み合わせ))を含む。例示的な一実施形態では、試薬は、乾燥コバルト塩(例えば、塩化コバルト)を含む。サンプル物質(例えば、全血)は、乾燥コバルト塩と混合し、可溶化して、第1混合物を生成する。試薬材料は、ポリビニルアルコール(PVA)などの物質を含んでもよい。例えば、コバルト試薬(例えば、コバルト塩)は、PVAと混合することができる。代替的にまたは組み合わせとして、コバルト試薬は、液体のコバルト溶液(例えば、水性のコバルト溶液(例えば、塩化コバルト溶液))を含むことができる。
【0212】
第1混合物中のコバルトの濃度は、典型的には、第1混合物中の予想アルブミン濃度と、少なくとも同程度である(例えば、より高い)。第1混合物中の予想アルブミン濃度は、例えば、サンプル物質が得られる被験者のサンプル物質(例えば、血液由来物質)中の予想アルブミン濃度、第1混合物中の血液の量、および第1混合物の容積から予測可能である。
【0213】
血液中の予想アルブミン濃度は、所望通りに決定することができる。例えば、予想アルブミン濃度は、サンプル物質が得られる被験者のサンプル物質中のアルブミン濃度のうち、1つまたは複数の先の決定に基づいて決定することができる。代替的にまたは組み合わせとして、予想アルブミン濃度は、サンプルが得られる被験者と同様の被験者から、サンプル物質(例えば、血液由来物質)中の平均アルブミン濃度に基づいて決定することができる。ヒトの血液中の平均アルブミン濃度は、典型的には、個人の特性(例えば年齢)や生理学的状態による。一般に、約300μMから約900μMのアルブミン濃度が、平均が約750μMで観察される。
【0214】
いくつかの実施形態では、第1混合物中のコバルト濃度は、少なくとも約500μMである(例えば、少なくとも約750μM、少なくとも約1.0mM、少なくとも約1.75mM、少なくとも約3mM)。いくつかの実施形態では、第1混合物中のコバルト濃度は、約15mM以下(例えば、約10mM以下、約7.5mM以下、約5.0mM以下)。例示的な一実施形態では、第1混合物中のコバルト濃度は、約0.75mMから約2mMの間(例えば、約1.0mM)である。特に指定しない限り、本明細書で参照する濃度はいずれも、混合物の容積が赤血球の占める容積を含む場合に算出される「実際の」濃度である。「見掛けの」濃度とは、混合物の容積が赤血球の占める容積を除く場合に算出される濃度である。例えば、0.25mgのCoCl2(式量129.8)と47%のヘマトクリットを有する1mlの全血とを混合することによって調製された混合物は、赤血球が混合物の約0.47mlの容積を占めるために、約1.9mM(0.0025g×129.8−1g×0.001−1l)の実際のコバルト濃度と、約3.6mM(0.0025g×129.8−1g×0.00053−1l)の見掛けの濃度とを有する。したがって、赤血球が存在する場合、「見掛けの」濃度は、常に、実際の濃度よりも大きい。血清については、溶媒和された試薬の実際の濃度と見掛けの濃度とは同じである。
【0215】
第1混合物生成ステップ110で用いられる試薬材料は、塩化物補償試薬を含んでもよい。塩化物補償試薬を、第2混合物生成ステップ130に関して、以下で詳細に説明する。
【0216】
第1混合物生成ステップ110で用いられる試薬材料は、第1混合物中のコバルト試薬の懸濁を促進するように構成された懸濁促進試薬を含んでもよい。例示的な懸濁促進試薬は、例えば、オクチルフェノールエトキシレート、ポリソルベート(例えば、Tween80、Surfynol、Pluronic、ドデシルエーテル)などの表面活性剤(例えば、洗浄剤)、スルホスクシナメート、有機シリコン(例えば、Silwet)または二級アルコールエトキシレート(例えば、Dow Chemical CompanyのTergitol15−S−9)またはそれらの組み合わせである。表面活性剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、または両性であってもよい。その他の懸濁剤には、ポリアルコール(例えば、ソルビトール、キシリトール、エリスリトールといった糖アルコール)および糖類(例えば、トレハロースおよびスクロース)が含まれる。
【0217】
第1混合物生成ステップ110で用いられる試薬材料は、貯蔵中における試薬材料の損失を低減する(例えば、分裂および散逸を防ぐ)ように、および/または方法100を実行するデバイス(例えば、結合剤またはフィルム生成剤)を形成しやすくするように構成された可塑化試薬を含んでもよい。例示的な可塑化試薬は、セルロース誘導体(例えば、Natrosol GおよびNatrosol Lなどのヒドロキシエチルセルロース、Agualon、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはそれらの組み合わせ)である。例示的なセルロース誘導体の分子量は、約9.0×104から約7.2×105である。例示的なセルロース誘導体の重合度は、約300から約1,100の間である。重合度とは、重合反応における時間tでの平均重合体鎖の繰り返し単位の数である。例示的な実施形態においては、試薬材料とは、液体状態の場合、重量で約0.2%から10%(例えば、約1%)の可塑化試薬である。その他の可塑化試薬には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルピロリドン/酢酸ビニルが含まれる。
【0218】
第1混合物生成ステップ110で用いられる試薬材料は、分散試薬を含んでもよい。例示的な分散試薬には、シリカ粉末(例えば、Cabosil TS610)が含まれる。一般に、水に溶解せず、約0.1から10ミクロンの間のいずれかの大きさを有する、有機または無機顔料を分散試薬として用いることができる。
【0219】
試薬は、2つ以上の機能を果たしてもよい。例えば、懸濁促進試薬が、可塑化試薬として作用してもよい。
【0220】
第1混合物生成ステップ110で用いられる試薬材料は、サンプル物質(例えば、血液、血清またはその他の血液由来物質)と比較すると、試薬のpHを緩衝するように構成された緩衝試薬を含んでもよい。例えば、緩衝試薬は、サンプル物質とほぼ同じpHを有するように、試薬サンプル物質の混合物のpHを緩衝してもよい。例示的な緩衝剤のpHは、血液由来サンプルと混合したときに、約7から約7.8の間(例えば、約7.2から約7.6の間)である。3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)は、緩衝剤の例である。その他の緩衝剤には、リン酸、N−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)、イミダゾールおよびクエン酸塩緩衝剤が含まれる。
【0221】
第1混合物生成ステップ110で用いられる試薬材料は、生成中、および/または試薬材料を含むデバイスを生成中に、試薬材料の生成を最小限にするように構成された消泡試薬を含んでもよい。例示的な消泡試薬は、シリコーンエマルジョン(例えば、Basildon ChemicalsによるAntifoam FDP)である。
【0222】
方法100を続けると、第1電気化学決定ステップ120が、第1混合物中にアルブミンを含まないコバルトの量(例えば濃度)に関連する電気化学信号を得る工程を含む。遊離コバルトの量は、一般に、第1混合物中のアルブミンの存在によって減少する(また、一般に、第1混合物中でIMAの量が増加すると増加する)ため、電気化学信号の大きさは、第1混合物中のアルブミンの量にほぼ反比例(また、第1混合物中のIMAの量にほぼ比例)している。コバルトを封鎖するのにより多くのアルブミンが利用可能であるため、アルブミンの量が増えるにつれて、遊離コバルトの量は減少する。
【0223】
一実施形態の例では、第1電気化学信号決定ステップ120は、電流測定により実行される。アルブミンを含まないコバルトは、例えば、作用電極の電位を走査すると同時に、第1混合物中のコバルトイオンの還元または酸化から生じる電流を測定することによって、電流測定的に決定できる。コバルト−アルブミン複合体中のコバルトは、実質的には、酸化還元反応に関与しないため、電流は遊離コバルトの量を表す(例えば、比例する)。電流は、例えば電位範囲内の電流の最大絶対値として、または電位範囲内の総合電流として測定できる。電位範囲は、典型的には、コバルトの酸化還元反応が生じる電位(例えば、約0.6Vから約0.8Vの間の電位)に及ぶ。電気化学信号は電流を表す。一実施形態の例では、電圧が、約+1ボルトから−0.5ボルトの範囲にわたって走査され、電気化学信号が、約0.6Vから約0.8Vの間で測定される電流に基づいて決定される。例示的な電圧の走査速度は、約0.4V/秒から約1.0V/秒の間(例えば、約0.7V/秒)である。
【0224】
典型的には、第1混合物は、電気化学的な決定を実行する前に、電極の潜伏期間の間に電気化学信号を得るために用いられる電極と接触できる。電極の潜伏期間の間、作用電極は非ゼロ電圧に維持可能である。一般に、電極の潜伏期間は、約240秒以下(例えば、約120秒以下、約60秒以下)である。例示的な一実施形態では、潜伏期間は約40秒であり、作用電極は、Ag−AgCl(銀−塩化銀)基準電極に対して+1Vに維持される。
【0225】
例示的な電気化学検出は以下のように実行できる。電極と試薬材料がサンプル物質と接触して、混合物を生成する。サンプル物質が電極に供給され、作用電極は120秒間、0Vで維持される。作用電極は、Ag/AgCl基準に対して+1Vの極性を与えられ、40秒間維持される。作用電極の電位は、700mV/秒で+1Vから−0.5Vに掃引され、CoIIIがCoIIに還元することによる合成電流が測定される。遊離コバルトによる電気化学信号が、約+0.7Vにおける、電流対電位曲線のピーク高さから決定される(ピーク高さは、(+0.4から−0.2Vの間で最大正電流として決定される)ピークの底と、(+1から+0.4Vの間の最小電流値として決定される)ピークとの間の差を算出することによって決定される)。
【0226】
図2を参照すると、グラフ160は電流応答曲線162を表している。電流応答曲線162は、第1混合物生成ステップ110にしたがって、非虚血性被験者の血液を用いて調製された第1混合物中のコバルト濃度の関数として得られる還元電流の絶対値である。電流応答曲線168は、第1混合物生成ステップ110にしたがって、虚血性の被験者の血液を用いて調製された第1混合物中のコバルト濃度の関数として得られる還元電流の絶対値である。y軸に沿って示された値は、0.6Vと0.8Vの間の還元電流の負のピークと、電流対電圧走査の変曲点との差の絶対値である。変曲点は、約0.4〜0.6Vの電圧で生じる。
【0227】
曲線162、168については、非虚血性(N)または虚血性(I)被験者の血液の各飽和コバルト濃度[Co]Ns、[Co]Isは、混合物中のアルブミンのコバルト封鎖能力に等しいコバルト濃度に対応する。飽和コバルト濃度は、その混合物のアルブミン濃度に比例している。飽和コバルト濃度よりも低いコバルト濃度に関して、実質的に全てのコバルトがアルブミンによって複合され、電流はほぼゼロである。飽和コバルト濃度よりも高いコバルト濃度に関しては、追加コバルトのほぼ全てがアルブミンを含まないコバルト複合体として存在し、電流はコバルト濃度とともに直線的に増加する。例えば、[Co]Nsを上回る濃度における、曲線162の正の部分166は、式(式1)y=m[Co]+bN1で定義される。なお、yは電流であり、mは勾配であり、[Co]は実際のコバルト濃度であり、bN1は切片である。曲線162の負の部分167は、正の部分166の外挿である。図2で見られるとおり、曲線162が飽和コバルト濃度[Co]Nsに関連する量だけ右に移動しているので、切片bN1は負である。[Co]Isより上の濃度における曲線168の正の部分170は、式(式2)y=m[Co]+bI1で定義される。なお、bI1は、切片である。曲線168の負の部分171は、正の部分170の外挿である。IMAの量が増えるにつれて、第1混合物中の(および飽和コバルト濃度における)アルブミンの量は減少する。したがって、非虚血性混合物の飽和コバルト濃度[Co]Nsは、虚血性混合物の飽和コバルト濃度[Co]Isよりも高いコバルト濃度へ移動する。
【0228】
典型的には、電気化学的な決定は、コバルト−アルブミン複合体中のコバルトよりも、アルブミン複合体を含まない複合体であるコバルトにより影響を受ける。したがって、遊離コバルトの電気化学信号への寄与は、コバルト−アルブミン複合体中のコバルトの電気化学信号への寄与よりも高い。いくつかの実施形態では、遊離コバルトの電気化学信号(例えば電流)への寄与は、コバルト−アルブミン複合体中に存在するコバルトの寄与よりも、少なくとも約5倍大きい(例えば、少なくとも約7.5倍大きい、少なくとも約10倍大きい、少なくとも約20倍大きい)。
【0229】
方法100を続けると、第2混合物生成ステップ130では、コバルトとニッケルを含む試薬材料と、方法100のこの実例では、第1混合物生成ステップ120で用いられた血液を供給するヒトからの血液を含むサンプル物質とを混合することによって、第2混合物が生成される。第2混合物では、第1混合物生成ステップ120に関して述べたとおり、試薬材料からのコバルトの第1部分とヒトの血液からのアルブミンとが、コバルト−アルブミン複合体を生成する。試薬材料からのコバルトの第2部分は、アルブミンを含まないままである。第2混合物中のコバルト濃度は、典型的には、第1混合物中のコバルト濃度とほぼ同じ(例えば、同じ)である。しかし、ニッケルに対するアルブミンの親和力は、コバルトに対するアルブミンの親和力よりも高いので、アルブミンは、コバルト−アルブミン複合体と比較して、ニッケル−アルブミン複合体を優先的に生成する。したがって、ニッケルが存在すると、第1混合物と比較して、第2混合物中のアルブミンを含まないコバルトの量が増える。
【0230】
第2混合物生成ステップ130で用いられるサンプル物質は、第1混合物生成ステップ120で用いられるサンプル物質と同じ性質(例えば、容積、種類および/またはソース)を有していてもよい。典型的には、混合物生成ステップ110、130で用いられるサンプル物質は、同じソースから(例えば、同じ被験者から)得られる。典型的には、混合物生成ステップ110、130で用いられるサンプル物質は、同時に得られる。例示的な一実施形態においては、第1および第2混合物生成ステップ120、130で用いられるサンプル物質は、同時に得られた血液由来物質(例えば、全血、血漿、血清、またはそれらの組み合せ)である。例えば、第1および第2混合物生成ステップ120、130で用いられる血液は、わずか数回(例えば、3回以下、2回以下、1回のみ)の「指先穿刺」から生成された血液からのものであってもよい。
【0231】
第2混合物生成ステップ130の試薬材料には、サンプル物質と混合するとコバルトイオンを生成するコバルト試薬と、サンプル物質と混合するとニッケルイオンを生成するニッケル試薬とが含まれる。コバルト試薬は、一般に、第1混合物生成ステップ110で用いられる試薬(例えば、塩化コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト、硝酸コバルトまたはこれらの混合などのコバルト塩)と同じである。第2混合物中のコバルト濃度は、典型的には、第1混合物生成ステップ110で得られるコバルト濃度と同じである。
【0232】
典型的には、ニッケル試薬は、固体物(例えば、ニッケル塩の形のニッケル(例えば、塩化ニッケル(NiCl2)))を含んでいる。例示的な一実施形態では、その試薬は、乾燥コバルト塩と乾燥ニッケル塩とを含む。サンプル物質(例えば、全血)は、乾燥コバルト塩および乾燥ニッケル塩と混合し、可溶化して、第2混合物を生成する。第2混合物の試薬材料は、第1混合物生成ステップ110に関して述べたとおりPVAと混合することができる。代替的に、または組み合わせで、ニッケル試薬は、液体のニッケル溶液(例えば、水性のニッケル溶液(例えば、塩化ニッケル溶液))を含むことができる。
【0233】
一般に、第2混合物中のニッケル濃度は、コバルト−アルブミン複合体が実質的に全く存在しない程度に十分高い(例えば、コバルトの大部分またはほぼ全てが、コバルト−アルブミン複合体を生成することを阻止され、および/またはコバルト−アルブミン複合体と置き換えられる)。コバルト−アルブミン複合体が実質的に全く存在しないことによって、第2混合物中のコバルト−アルブミン複合体の濃度が、第2混合物中のアルブミン濃度(IMAの形態をしたアルブミンは含まず)よりも小さい(例えば、約20%未満、約10%未満、約5%未満、またはそれ以下)。
【0234】
典型的には、第2混合物中の全ニッケル濃度は、第2混合物中のコバルト濃度よりも高い。例えば、全ニッケル濃度のコバルト濃度に対する比率は、典型的には、少なくとも約1.5(例えば、少なくとも約3、少なくとも約5、少なくとも約10)である。全ニッケル濃度のコバルト濃度に対する比率は、典型的には、約25以下(例えば、約20以下、約15以下、約10以下)である。例示的な実施形態では、全ニッケル濃度のコバルト濃度に対する比率は、約3から約8の間(例えば、比率は約5.5)である。
【0235】
いくつかの実施形態においては、第1混合物中の全ニッケル濃度は、少なくとも約3mM(例えば、少なくとも約5mM、少なくとも約7.5mM、少なくとも約10mM、少なくとも約15mM)である。いくつかの実施形態では、第1混合物中の全ニッケル濃度は、約30mM以下(例えば、約25mM以下、約20mM以下、約15mM以下)である。例示的な実施形態では、第2混合物中のコバルト濃度は、約0.75mMと約2mMとの間(例えば、約1.0mM)であり、第2混合物中の全ニッケル濃度は、約3mMと約20mMとの間(例えば、約7.5mM)である。
【0236】
上述のとおり、第1混合物生成ステップ110で用いられる試薬材料は、塩化物補償試薬を含んでもよい。一般に、塩化物補償試薬は、第1および第2決定ステップ120、140の間で、より均一な電気化学的決定値を提供できる。
【0237】
典型的には、塩化物補償試薬は、第1混合物中の全塩化物イオンの濃度と第2混合物中の塩化物イオンの濃度とを均衡させる。第2混合物中の塩化物イオンの濃度は、ニッケル試薬が塩化ニッケルを含む場合はより高くなる。したがって、いくつかの実施形態では、第1混合物中の塩化物補償試薬は、塩化ニッケルの塩化物イオンによって、塩化物濃度と少なくともほぼ同じ(例えば、同じ)全塩化物濃度を提供する。例えば、第2混合物が7.5mMのNiCl2を含んでいる場合、第1混合物の塩化物補償試薬は、第1混合物に対して約15mMの塩化物イオンを提供するように選択される。
【0238】
いくつかの実施形態では、塩化物補償試薬は、第1および第2混合物生成ステップ110、130の両方で用いられる。これらの実施形態では、塩化物補償試薬による第1および第2混合物の両方への寄与は、典型的には、塩化物イオン濃度を、第1および第2決定ステップ120、140についてより安定した電気化学決定値を提供するレベルにまで高める。例えば、塩化物補償試薬によってもたらされる塩化物イオンの量を選択して、Ag−AgCl基準電極を安定させることができる。いくつかの実施形態では、第1および第2混合物のそれぞれは、第1および第2混合物中の全ての試薬ソース(サンプル物質から生じる塩化物イオンは含まない)からの全塩化物イオン濃度を、少なくとも約50mM(例えば、少なくとも約75mM、少なくとも約100mM、少なくとも約125mM)に高めるのに十分な塩化物補償試薬を含む。いくつかの実施形態では、第1および第2混合物はそれぞれ、第1および第2混合物中の全ての試薬ソース(サンプル物質から生じる塩化物イオンは含まず)からの全塩化物イオン濃度を、約200mM以下(例えば、約175mM以下、約150mM以下、約125mM以下)だけ高めるのに十分な塩化物補償試薬を含む。例示的な一実施形態においては、第1および第2混合物はそれぞれ、第1および第2混合物中の全ての試薬ソース(サンプル物質から生じる塩化物イオンは含まず)からの全塩化物イオン濃度を、約100mMだけ高めるのに十分な塩化物補償試薬を含む。
【0239】
典型的には、塩化物補償試薬は、塩化物に対する対イオンがアルブミン複合体を生成するためにコバルトと競合しないように、選択される。例示的な塩化物補償試薬は、アルカリ金属塩化物塩(例えば、塩化カリウム(KCl))である。
【0240】
第2混合物生成ステップ130で使用される試薬材料には、第1混合物生成ステップ110に関して説明した試薬材料の任意の組み合わせ(例えば、塩化物補償試薬、懸濁促進試薬、可塑試薬、分散試薬、緩衝試薬、消泡試薬、またはそれらの組み合わせ)が含まれてもよい。
【0241】
方法100を続けると、第2電気化学決定ステップ140は、第2混合物においてアルブミンを含まないコバルトの量(例えば濃度)に関する電気化学信号を得る工程を含む。第2混合物生成ステップ130に関して述べたとおり、ニッケルが存在しているために、第2混合物は、コバルト−アルブミン複合体を実質的に全く含まない。したがって、第2混合物中の遊離コバルトの量と、結果として得られる電気化学信号とは、第2混合物中のコバルトの総量にほぼ比例する。例えば、電気化学信号y2(図2)は、第2混合物中のアルブミンを含まないコバルトの量(例えば濃度)に比例する。
【0242】
電気化学的決定のステップ140は、決定ステップ120を実行するのに使用したのと同じ電気化学的方法を用いて実行される。例示的な一実施形態においては、決定ステップ140は、ステップ120に関して述べたとおり、電流測定によりなされる。例えば、約0.6Vと約0.8Vとの間の電位範囲において、コバルトの酸化還元反応から生じる電流を測定することによって、第2混合物中のニッケルの存在下で、遊離コバルトを決定することができる。電気化学信号は、測定された電流を表す。
【0243】
図2に戻ると、グラフ160は電流応答曲線172を示しており、この電流応答曲線172は、第2混合物生成ステップ130に従って調整された第2混合物中のコバルト濃度の関数として得られる還元電流の絶対値である。電流は、0.6Vと0.8Vとの間のピーク還元電流の絶対値である。応答曲線172は、式(式3)y=m[Co]+b2によって定義される。なお、yは電流であり、mは勾配であり、[Co]は見掛けのコバルト濃度であり、b2は切片である。図2で見られるとおり、ニッケルが存在するため、曲線172は、飽和コバルト濃度に関連する量だけ右に移動していないので、切片b2は、実質的にゼロである。ほぼ全てのコバルトが、アルブミンのないコバルト複合体として存在し、曲線172に沿った測定電流は、コバルト濃度とともに直線的に増加する。したがって、曲線172は、虚血性および非虚血性サンプル物質の両方から得られる曲線の代表である。典型的には、勾配mは、曲線162、168、170に対してほぼ同じである。
【0244】
方法100を続けると、検査結果決定ステップ150は、第1および第2決定ステップ120、140の電気化学信号に少なくとも部分的に基いて、検査結果を決定する工程を含む。第1および第2決定ステップで得られた結果は、以下に説明するとおり、適切な方法で処理される。第1決定ステップ120に関して述べたとおり、ニッケルがない場合に決定された電気化学信号の絶対値は、第1混合物中のアルブミンの量にほぼ反比例する(また、第1混合物中のIMAの量にほぼ比例する)。第2決定ステップ140に関して述べたとおり、ニッケルの存在下で決定された電気化学信号は、第2混合物中のコバルトの総量にほぼ比例する(また、アルブミンまたはIMAの量から実質的に独立している)。
【0245】
例示的な一実施形態においては、検査結果決定ステップ150は、(例えば、第2決定ステップ140の結果から第1決定ステップ120の結果を減算することによって)第1および第2決定ステップ120、140の結果間の差の大きさを示す差値を決定する工程を含む。図2に見られるとおり、差値174は、コバルト濃度[Co]Iを有する第2混合物において、決定ステップ140に従って得られた電気化学信号y2と、コバルト濃度[Co]Iを有する第1混合物中の非虚血性サンプル物質からの決定ステップ120に従って得られた電気化学信号yN1との間の差に対応する。差値176は、電気化学信号y2と、コバルト濃度[Co]Iを有する第1混合物中の虚血性サンプル物質からの決定ステップ120に従って得られた電気化学信号yI1との間の差に対応する。一般に、差値の大きさは、第1および第2混合物を生成するのに用いられるサンプル物質中のアルブミンの量を示している(例えば、比例している)。例えば、非虚血性サンプル物質からの差値174は、低減した量のアルブミン(およびIMAのより多い量)を含む虚血性サンプル物質からの差値176よりも大きい。
【0246】
差値は、所望通りに決定することができる。典型的には、差値は電気的に決定される(例えば、アナログもしくはデジタル回路、またはそれらの組み合わせを用いて)。例えば、いくつかの実施形態では、差値は、アナログ減算方式を用いて決定される。第1および第2決定ステップ120、140で決定される電気信号(例えば、電流または対応する電圧)は、アナログ減算回路に提供される。このような回路は、例えば、演算増幅器および抵抗を用いて形成できる。回路の出力は差値を表す。別の例として、差値は、デジタル処理で決定することができる。第1および第2決定ステップ120、140で決定された電気信号はそれぞれ、デジタル値に変換され、デジタル減算回路に提供される。回路の出力は差値を表す。さらに別の例として、差値はプロセッサを用いて決定されてもよく、このプロセッサはアナログおよびデジタル構成要素の組み合わせ(例えば、マイクロチップ内のように)を含むことができる。
【0247】
検査結果決定ステップ150は、そこならサンプル物質を得たヒトが、虚血イベント過去に発現したかまたは現在発現しているかどうかを決定するために用いることができる。例えば、虚血イベントの存在は、サンプル物質(例えば、全血などの血)を用いて決定された差値を基準値と比較することによって決定することができる。基準値は、例えば、虚血イベントを過去に発現したかまたは現在発現していることが知られている1人または複数の被験者から得られたサンプル物質、1人または複数の健常な被験者(例えば、虚血イベントを過去に発現したか、または現在発現している疑いがない被験者)から得られたサンプル物質、同じ被験者から得られたサンプル物質、またはそれらの組み合わせを用いて決定することができる。
【0248】
例示的な基準値は、虚血イベントを過去に発現したかまたは現在発現していることが知られている1人または複数の被験者から得られた同じ種類のサンプル物質を用いて決定された差値である。例えば、被験者から得られたサンプル物質に方法100を適用することによって決定された差値が、対応する基準の差値を下回る場合、被験者は虚血イベントを発現していると診断される。
【0249】
別の例示的な基準値は、1人または複数の健常な被験者(例えば、非虚血性被験者)から得られたサンプルの種類のサンプル物質を用いて決定された差値である。被験者から得られた同じ物質に方法100を適用することによって決定された差値が、対応する基準の差値を上回る場合、被験者は虚血イベントを発現していないと診断される。
【0250】
別の例示的な基準値は、同じ被験者から1つまたは複数の先の場合において得られるサンプル物質を用いて決定された差値である。例えば、方法100は、1つまたは複数の場合のそれぞれで被験者から得られたサンプル物質に適用可能である。検査結果(例えば、差値)は、各場合で得られたサンプルについて決定される。それぞれの場合は、時間的に(例えば、時間、日、週または月で)分離していてもよい。基準値(例えば、ベースラインの検査結果)が、1つまたは複数の先の検査結果から決定される。例えば、基準値は、複数の先の結果についての差値の平均値であってもよい。後続の検査結果は、その被験者の基準値と比較することができる。例えば、被験者から得られるサンプル物質に方法100を適用することによって決定される差値の絶対値が、その被験者の基準値を下回る場合、虚血イベントは発現していないと診断される。
【0251】
上述のとおり、第2決定ステップ140の結果は制御結果として作用して、決定ステップ150の検査結果(例えば、差値)を、検査結果が第1決定ステップ120だけの結果に基づく場合よりも、マトリックス効果により発生する誤差の影響を受けにくくすることができる。この利点は、これらのステップの真の結果(例えば、マトリックス効果がない場合に得られる結果)と比較して、マトリックス効果が決定ステップ120、140の結果を偏らせることができる方法によって生じる。第1および第2混合物中のマトリックス効果は、典型的には、同様の方法で(例えば、同じ方向(例えば、より高いか、またはより低い)および/または同程度に)決定120、140の結果を偏らせる。検査結果決定ステップ150は、決定ステップ120、140の結果を組み合わせることによって、マトリックス効果の大きさを小さくする。決定ステップ150の検査結果は、検査結果が第1決定ステップ120の結果のみに基づく場合よりも、マトリックス効果によって生じる誤差の影響を受けにくい。したがって、虚血の存在は、検査結果が第1決定ステップ120の結果のみに基づく場合よりも、高い信頼性で決定することができる。
【0252】
決定ステップ150は、差値の決定を含むと説明してきたが、他の実施形態が実行されてもよい。例えば、検査結果決定ステップ150は、第1および第2決定ステップ120、140の結果の比を表す比の値を決定する工程を含むことができる。例えば、比の値は、第1決定ステップ120の電気化学信号を、第2決定ステップ140の電気化学信号で割ることによって(例えば、y1I/y2)、生成可能である。このような比の値は、第1および第2混合物を生成するのに用いられるサンプル物質中のIMAの量を表す(例えば、反比例する)。例えば、サンプル物質(例えば、全血などの血液)を用いて決定された比の値を基準値と比較することによって、虚血イベントの存在を決定できる。基準値は、例えば、虚血イベントを過去に発現したかまたは現在発現していることが知られている1人または複数の被験者から得られたサンプル物質、1人または複数の健常な被験者(たとえば、虚血イベントを過去に発現したかまたは現在発現している疑いがない被験者)から得られたサンプル物質、同一の被験者から得られたサンプル物質、またはそれらの組み合わせを用いて決定することができる。
【0253】
他の例として、検査結果決定ステップ150は、差の比の値を決定する工程を含むことができる。例えば、比の差値は、第1および第2決定ステップ120、140のうちの一方または両方の電気化学信号によって、差値を割ることによって(例えば、[y1I−y2]/y2または、[y1I−y2]/(y1I×y2))生成できる。このような差の比の値は、第1および第2混合物を生成するのに用いられるサンプル物質中のIMAの量を表している(例えば、反比例している)。例えば、サンプル物質(例えば、全血などの血液)を用いて決定された差の比の値を基準値と比較することによって、虚血イベントの存在が決定できる。基準値は、例えば、虚血イベントを過去に発現したかまたは現在発現していることが知られている1人または複数の被験者から得られたサンプル物質、1人または複数の健常な被験者(たとえば、虚血イベントを過去に発現したかまたは現在発現している疑いがない被験者)から得られたサンプル物質、同一の被験者から得られたサンプル物質、またはそれらの組み合わせを用いて決定できる。
【0254】
差値、比の値、または差の比の値として決定された検査結果は全て、検査結果が第1決定ステップ120だけの結果に基づく場合よりも、マトリックス効果により発生する誤差の影響を受けにくいという利点を共有する。したがって、虚血の存在は、検査結果が第1決定ステップ120の結果のみに基づく場合よりも、高い信頼性で決定することができる。検査結果決定ステップ150は、代替的に(または、組み合わせて)、差、比、および差の比に加えて、決定ステップ120、140の電気化学信号の別の組み合わせを生成する工程を含むことができる。一般に、このような組み合わせは、上述の利点を共有し、虚血の存在を決定するために用いることもができる。
【0255】
方法100を、全血を用いて例示してきたが、他のサンプル物質が用いられてもよい。例えば、サンプル物質は、代替的に、または追加で、血液由来物質(例えば、血漿、血清、またはそれらの組み合わせ)を含むことができる。典型的には、赤血球が不足する物質(例えば、血漿または血清)が全血と置き換えられる(または結合する)場合、より多くの量の試薬を用いて、赤血球の不足により生じる多量の必要容積を補償する。
【0256】
いくつかの実施形態においては、方法100は、血清および/または血漿を用いて実行される。このような実施形態では、第1および第2混合物中のコバルト濃度は、典型的には、少なくとも約1mM(例えば、少なくとも約1.25mM、少なくとも約1.75mM、少なくとも約3mM、少なくとも約4mM)である。いくつかの実施形態では、第1混合物中の全コバルト濃度は、約25mM以下(例えば、約20mM以下、約15mM以下、約10mM以下)である。例示的な一実施形態では、第1混合物中のコバルト濃度は、約1mMと約3.5mMとの間(例えば、約1.5mM)である。血清および血漿は、赤血球が不足するため、見掛けの濃度と実際の濃度とは同じである。
【0257】
血清および/または血漿を用いると、コバルト試薬に対するニッケルの量の比は、第2混合物生成ステップ130について説明した比と同じであってもよい。第1混合物中のニッケル濃度は、典型的には、少なくとも約4mM(例えば、少なくとも約6mM、少なくとも約9mM、少なくとも約12mM、少なくとも約17mM)である。いくつかの実施形態では、第1混合物中の全ニッケル濃度は、約40mM以下である(例えば、約30mM以下、約25mM以下、約20mM以下)。例示的な実施形態では、第2混合物中のコバルト濃度は、約1mMと約3.5mMとの間(例えば、約1.5mM)であり、第2混合物中のニッケル濃度は、約4mMと約25mMとの間(例えば、約10mMである)。
【0258】
コバルト濃度とニッケル濃度に関する変更を除いて、全血を用いた場合と同様に血漿および/または血清を用いて、方法100を実行することができる。例えば、第1および第2混合物生成ステップにおいて、血清および/または血漿とともに用いられた試薬材料は、第1および第2混合物生成ステップ110、130に関して説明したとおり、塩化物補償試薬、懸濁促進試薬および/または可塑試薬を含んでもよい。サンプル物質の容積は、第1および第2混合物生成ステップ110、130と同じであってもよい。電気化学信号と検査結果とが、ステップ120、140、150と同じように決定されてもよい。虚血イベントが、血漿および/または血清を用いて得られた基準値を用いて、全血を用いて説明したのと同様に、決定されてもよい。
【0259】
コバルトと、結果的に低減した量のコバルト−アルブミン複合体を生じる第2試薬(例えばニッケル)とを含む第2混合物を生成するステップを含む測定方法を説明してきたが、他の実施形態が実行されてもよい。
【0260】
図3を参照すると、測定方法400は、第1混合物生成ステップ410と、第1コバルト決定ステップ420と、第2混合物生成ステップ430と、第2コバルト決定ステップ440と、検査結果決定ステップ450とを含む。種々の種類のサンプル物質が、本明細書で説明した方法において用いるのに適しているが、発明者らは、まず、全血をサンプル物質として用いることに関して、方法100を例として示す。
【0261】
第1混合物生成ステップ410において、コバルトとヒトからの血液とを含んだ第1混合物が生成される。第1コバルト電気化学決定ステップ420において、第1混合物中のコバルト−アルブミン複合体がないコバルトが決定される。第2混合物生成ステップ430では、第1混合物中のコバルトの量とは異なる量のコバルトと、ヒトからの血液とを含む第2混合物が生成される。第2コバルト電気化学決定ステップ440では、第2混合物中のコバルト−アルブミン複合体がないコバルトが決定される。検査結果決定ステップ450では、第1および第2決定ステップ420、440の結果に基づいて検査結果が決定される。典型的には、検査結果は、ヒトの血液中のアルブミンの量に関連する。方法400は、(例えば、検査結果を標準値と比較することによって)測定決定ステップ450の結果に基づいて、ヒトの虚血イベントの発生を決定する工程をさらに含むことができる。
【0262】
第1混合物生成ステップ410では、コバルトを含む試薬材料と、ヒトからの血液を含むサンプル物質とを混合することによって、第1混合物が生成される。第1混合物生成ステップ410は、方法100の第1混合物生成ステップ110について説明したのと同様に実行できる。例えば、試薬材料とサンプル物質は、方法100のステップ110について説明したものと同じ種類、量、容積であってもよい。例示的な一実施形態では、ステップ410の試薬材料は、乾燥コバルト塩(例えば、塩化コバルト)であり、サンプル物質は、(例えば、1回または複数回の「指先穿刺」からの)全血である。例示的な一実施形態では、第1混合物中のコバルト濃度は、約0.75mMと約2mMとの間(例えば、約1.0mM)である。
【0263】
第2混合物生成ステップ410で用いられる試薬材料は、混合物生成ステップ110、130に関して説明した試薬材料の任意の組み合わせ(例えば、塩化物補償試薬、懸濁促進試薬、可塑化試薬、分散試薬、緩衝試薬、消泡試薬、またはそれらの組み合わせ)を含んでもよい。
【0264】
第1コバルト電気化学決定ステップ420は、第1混合物中でアルブミン複合体を含まないコバルトを、電気化学的に決定する工程を含む。決定ステップ420の結果は、第1混合物中でアルブミンを含まないコバルトの量(例えば濃度)に関する電気化学信号である。第1コバルト決定ステップ420は、方法100の第1決定ステップ120について説明したのと同様に実行できる。例えば、コバルト決定ステップ420は、第1決定ステップ120について説明したものと同じ電流測定条件を用いて、遊離コバルトを電流測定的に決定する工程を含むことができる。例示的な実施形態では、第1決定ステップ420は、約0.6Vと約0.8Vとの間の電位範囲内で生じたコバルトイオンの酸化還元反応から生じる電流を測定することによって、遊離コバルトを電流測定により決定する工程を含む。
【0265】
方法400を続けると、第2混合物決定ステップ430では、第1混合物生成ステップ410で用いられる量よりも多い量のコバルトを含む試薬材料と、第1混合物生成ステップ420で用いられる血液を供給するヒトからの血液を含むサンプル物質とを混合することによって、第2混合物が生成される。例えば、図2に見られるとおり、第2混合物生成ステップ430は、ステップ410において生成された第1混合物のコバルト濃度[Co]1よりも大きいコバルト濃度[Co]2を有する第2混合物を生成する工程を含む。
【0266】
第2混合物では、第1混合物生成ステップ120に関して述べたとおり、試薬材料からのコバルトの第1部分と、ヒトの血液からのアルブミンとが、コバルト−アルブミン複合体を生成する。試薬材料からのコバルトの第2部分は、アルブミンを含まないままである。しかし、第2混合物中のコバルト濃度[Co]2は、第1混合物中のコバルト濃度[Co]1より高いために、第2混合物中には、第1混合物中よりも多くの遊離コバルトが存在する。
【0267】
いくつかの実施形態では、第1混合物中(ステップ410)のコバルトの総量に対する第2混合物中(ステップ430)のコバルト濃度の割合は、少なくとも約1.25(例えば、少なくとも約1.5、少なくとも約2)である。いくつかの実施形態では、第1混合物中(ステップ410)のコバルトの総量に対する第2混合物中(ステップ430)のコバルト濃度の割合は、約5以下(例えば、約3以下、約2.5以下)である。例示的な一実施形態においては、第1混合物中(ステップ410)のコバルトの総量に対する第2混合物中(ステップ430)のコバルト濃度の割合は、約2である。
【0268】
例示的な実施形態においては、第2混合物中のコバルト濃度は、約3.5mM以下である。例えば、第1混合物中のコバルト濃度は、約1.0mMであってもよく、第2混合物中のコバルト濃度は、約2mMであってもよい。
【0269】
第2混合物生成ステップ430で用いられる試薬材料は、コバルト試薬の量が、第2混合物中のコバルト濃度よりも高くなるように選択されるほかは、第1混合物生成ステップ410で用いられる材料と同一であってもよい。第2混合物生成ステップ430で用いられる試薬材料は、混合物生成ステップ110、130に関して説明した試薬材料(例えば、塩化物補償試薬、懸濁促進試薬、可塑化試薬、分散試薬、緩衝試薬、消泡試薬、またはそれらの組み合わせ)のいずれの組み合わせを含んでもよい。
【0270】
方法400を続けると、第2決定ステップ440は、第2混合物中のアルブミン複合体を含まないコバルトを電気化学的に決定する工程を含む。決定ステップ440の結果は、第2混合物中でアルブミンを含まないコバルトの量(例えば、濃度)に関する電気化学信号である。ステップ440の電気化学的な決定は、決定ステップ420を実行するのに用いたものと同じ電気化学的方法を用いて実行される。例示的な一実施形態では、決定ステップ440は、ステップ120について述べたとおり電流測定により実行される。例えば、約0.6Vと約0.8Vとの間の電位範囲において、コバルトの酸化還元反応から生じる電流を測定することによって、第2混合物中のニッケルの存在下で、遊離コバルトを決定することができる。図2に見られるとおり、電気化学信号yI2は、虚血性サンプル物質を含む第2混合物から得られ、電気化学信号yN2は、非虚血性サンプル物質を含む第2混合物から得られる。
【0271】
方法400を続けると、検査結果決定ステップ450は、第1および第2決定ステップ420、440の電気化学信号に少なくとも部分的に基づいて、検査結果を決定する工程を含む。いくつかの実施形態では、決定ステップ450は、第1および第2決定ステップ420、440の結果によって定義された勾配および切片を決定する工程を含む。例えば、切片bI1は、電気化学信号yI1およびyI2から決まる(図2、曲線168)。切片bN1は、電気化学信号yN1およびyN2から決まる(図2、曲線162)。
【0272】
決定ステップ450の検査結果を用いて、サンプル物質が得られたヒトが虚血イベントを過去に発現したかまたは現在発現しているかどうかを決定できる。例えば、虚血イベントの存在は、サンプル物質(例えば、全血などの血液)を用いて決定された切片を、基準値と比較することによって決定することができる。例示的な基準値は、虚血イベントを過去に発現したかまたは現在発現していることが知られている1人または複数の被験者から得られたものと同じ種類のサンプル物質を用いて決定された切片である。被験者から得られたサンプル物質に方法400を適用することによって決定された切片が、対応する基準の差値を下回る場合、被験者が虚血イベントを発現していると診断される。例えば、虚血性サンプル物質から決定された切片bI1は、非虚血性サンプル物質を用いて決定された切片bN1を下回る。
【0273】
切片bI1およびbN1は、検査結果決定ステップ150に基づいて決定された差値176、174に対応する。例えば、差値176(図2)は、y2−yI1=m([Co]1−[Co]1)+b2−bI1(式4)によって与えられる。なお、[Co]1は、第1および第2混合物中のコバルト濃度である。差値176は、b2がゼロに近い場合、bI1にほぼ等しい。同様に、差値174は、b2がゼロに近い場合、bN1にほぼ等しい
【0274】
決定ステップ450の検査結果は、決定ステップ420、440の組み合わせに基づいて結果を決定する工程を含むため、検査結果が第1決定ステップ420の結果のみに基づいている場合よりも、ステップ450は、マトリックス効果の影響を受けにくいという利点を共有している。したがって、方法400に基づいた虚血性の決定も、第1決定ステップ420の結果のみに基づいて決定を実行する場合よりも、マトリックス効果の影響を受けにくい。
【0275】
全血を用いて方法400を説明してきたが、その他のサンプル物質を用いることもできる。例えば、サンプル物質は、代替的に、または追加で、血液由来物質(例えば、血漿、血清またはそれらの組み合わせ)を含むことができる。方法100について説明したとおり、赤血球が不足する物質(例えば、血漿または血清)が、全血と置き換えられる(または混合する)場合、典型的には、より多くの量の試薬を用いて、赤血球の不足により生じる多量の必要容積を補償する。
【0276】
次に、発明者らは、(例えば、血液由来流体(例えば、全血、血清、血漿またはそれらの組み合わせ)を用いて方法100または400に従って)測定を実行するためのデバイスおよびシステムを説明する。
【0277】
図4A〜4Cを参照すると、微小流体デバイス200は、主基板202と2つの副基板204、206とを含む。主基板202と副基板204は、サンプル物質用入口210と、チャネル212によって入口210に接続された第1検出ゾーン214とを含む第1微小流体ネットワーク208を画定している。第1微小流体ネットワーク208は、サンプル物質を収容し、(例えば、方法100の第1混合物生成ステップ110に従って)試薬−サンプル物質混合物を生成するように構成されている。第1検出ゾーン214は、コバルト試薬を含む試薬材料(図示せず)と、攪拌バー216と、通気孔218と、それぞれ第1、第2、第3リード線221、223、225と接続されている第1、第2、第3電極220、222、224とを含む。主基板202と副基板206とは、サンプル物質用入口228と、チャネル232によって入口228に接続された第2検出ゾーン230とを含む第2微小流体ネットワーク226を画定している。第2微小流体ネットワーク226は、サンプルを収容し、(例えば、方法100の第2混合物生成ステップ130に従って)試薬−サンプル物質混合物を生成するように構成されている。第2検出ゾーン230は、コバルト試薬とニッケル試薬とを含む試薬材料(図示せず)と、攪拌バー216と、通気孔234と、それぞれ第1、第2、第3リード線237、239、241と接続されている第1、第2、第3電極236、238、240とを含む。
【0278】
図5Aを参照すると、検査システム250は、検査リーダ252と検査デバイス200とを含む。検査リーダ252は、入口254と、電気化学検出器256と、表示器258と、磁気攪拌バーアクチュエータ259と、典型的には検出器256、攪拌バーアクチュエータ259および/または表示器258と結合したプロセッサ260とを含む。使用中、微小流体デバイス200は、リーダ252の入口254内に受け入れられる。攪拌バーアクチュエータ259は、検出ゾーン214、230内の各サンプル物質−試薬混合物の生成を支援するために、検出ゾーン内で攪拌バー216を動かす(例えば回転させる)。電気化学検出器256は、リード線221、223、225を介して電極220、222、224を、および、リード線237、239、241を介して電極236、238、240を作動させるための、それぞれの接点257(1つのみ図示)を含む。プロセッサ260は、電気化学検出器256から電気化学信号を受け取り、その信号に基づいて検査結果を決定する。表示器258は、検査結果および/またはその結果に基づいた虚血状態の存在の決定を表示する。
【0279】
入口210、228はそれぞれ、サンプル収容ゾーン262、264に近接している。各ゾーン262、264は、副基板204、206の各サンプル物質収容面266、268と、主基板202内の各切欠部270、272によって画定されている。使用中、各サンプル物質のそれぞれの量(例えば、全血などの血液由来物質)が、各サンプル収容ゾーン262、264に導入される。サンプル物質収容面266、268はサンプルを保持し、表面266、268によって毛細管作用を促進し、切欠部270、272の壁部が、そのサンプルを入口210、228に吸引する。入口210、228と接するサンプル物質は、各チャネル212、232に沿って、検出ゾーン214、230へ毛細管作用によって流れる。
【0280】
入口210に供給されたサンプル物質(例えば、全血、血漿、血清またはそれらの組み合わせ)は、毛細管作用によって、検出ゾーン214内へ流れる。サンプル物質が入ると、通気孔218によって、気体(例えば空気)が検出ゾーン214を出る。検出ゾーン214に収容されたサンプル物質は、検出ゾーン内の試薬材料と混合(例えば、懸濁または可溶化)して、第1混合物生成ステップ110に従って第1混合物を生成する。入口228に供給されたサンプル物質(例えば、全血)は、毛細管作用によって、検出ゾーン230内に流れる。サンプル物質が入ると、通気孔234によって、気体(例えば空気)が検出ゾーン230を出る。検出ゾーン230に収容されたサンプル物質は、検出ゾーン内の試薬材料と混合(例えば、懸濁または可溶化)して、第2混合物生成ステップ130に従って第2混合物を生成する。
【0281】
サンプル収容ゾーン262、264と検出ゾーン214、230とは、(例えば、方法100の決定ステップ120、140に従って)電気化学的な決定を実行するのに十分な量のサンプル物質を収容するように構成されている。典型的には、検出ゾーン214、230のそれぞれの自由容積は、少数回数(例えば、3回以下、2回以下、1回)の「指先穿刺」で得られた、ある一定量のサンプル物質(例えば、血液)によって充填可能である。例えば、いくつかの実施形態では、検出ゾーンの全体の自由容積は、単一の「指先穿刺」からの血液で充填されることができる。各検出ゾーンの自由容積は、サンプル物質と試薬材料を充填するのに利用可能な容積である。自由容積には、攪拌バー216の容積は含まれない。いくつかの実施形態では、検出ゾーン214、230の全体の自由容積は、約100μl以下(例えば、75μl以下、50μl以下、30μl以下)である。いくつかの実施形態では、検出ゾーン214、230の統合された自由容積は、約2.5μl以上(例えば、約5μl以上、約15μl以上)である。例示的な一実施形態では、検出ゾーン214、230の全体の自由容積は、約5〜約10μlである。
【0282】
典型的には、検出ゾーン214、230の各寸法と容積は、ほぼ同じ(例えば、実質的に同一)である。いくつかの実施形態では、各検出ゾーンの平均半径方向寸法(例えば、直径)は、少なくとも約2mm(例えば、少なくとも約3mm)であり、平均半径方向寸法(例えば、直径)は、約7.5mm以下(例えば、約6mm以下、約5mm以下)である。例示的な一実施形態では、各検出ゾーンの平均半径方向寸法は、約4mmである。いくつかの実施形態では、検出ゾーン214、230の平均高さは、それぞれ、少なくとも約100μm(例えば、少なくとも約250μm、少なくとも約300μm)であり、平均高さはそれぞれ、約1000μm以下(例えば、約750μm以下、約500μm以下)である。例示的な一実施形態では、検出ゾーン214、230の平均高さは、それぞれ、約100〜200μm(例えば、約150μmから約175μm)である。
【0283】
検出ゾーン214の試薬材料は、サンプル物質と混合するとコバルトイオンを提供するコバルト試薬を含む。例示的なコバルト試薬は、方法100の第1混合物生成ステップ110に関して述べたコバルト試薬である。例えば、コバルト試薬は、固体物(例えば、コバルト塩の形のコバルト(例えば、塩化コバルト))を含むことができる。試薬は、乾燥コバルト塩であってもよい。サンプル物質は、コバルト試薬を可溶化して、方法100の第1混合物生成ステップ110に関して述べたような特性(例えば、コバルト濃度)を有する混合物を生成する。
【0284】
コバルト試薬の量は、検出ゾーン214内で達成されるコバルト濃度と、検出ゾーンの自由容積とに依存する。試薬の量は、方法100および400に関して述べたとおり、サンプル物質の自由容積によって(例えば、赤血球によって占められるサンプルの容積によって)変化してもよい。
【0285】
いくつかの実施形態では、コバルト試薬の量は、可溶化されるとき、少なくとも約500μM(例えば、少なくとも約750μM、少なくとも約1.0mM、少なくとも約1.75mM、少なくとも約3mM)の検出ゾーン214内のコバルト濃度を得るのに十分である。いくつかの実施形態では、コバルト試薬の量は、可溶化されるとき、約15mM以下(例えば、約10mM以下、約7.5mM以下、約5.0mM以下)の検出ゾーン214内のコバルト濃度を得るのに十分である。例示的な一実施形態では、コバルト試薬の量は、可溶化されたとき、約0.75mMと約2mMとの間(例えば、約1.0mM)の検出ゾーン214においてコバルト濃度を得るのに十分である。上述のとおり、本明細書で参照するいずれの濃度も、容積が、赤血球によって占められる容積を含むことによって決定される「実際の」濃度である。サンプルでほぼ完全に充填された検出ゾーンに関しては、混合物の容積は、検出ゾーンの充填された容積である。
【0286】
検出ゾーン214の試薬材料は、例えば、混合物生成ステップ110、130に関して述べたとおり、本明細書で述べたいずれの試薬(例えば、塩化物補償試薬、懸濁促進試薬、可塑化試薬、分散試薬、緩衝試薬、消泡試薬、またはそれらの組み合わせ)を含んでもよい。
【0287】
検出ゾーン230の試薬材料は、コバルトイオンを提供するコバルト試薬と、サンプル物質と混合するとニッケルイオンを提供するニッケル試薬とを含む。例示的なコバルト試薬は、方法100の第1混合物生成ステップ110と検出ゾーン214に関して述べたコバルト試薬である。例えば、コバルト試薬は、固体物(例えば、コバルト塩の形のコバルト(例えば、塩化コバルト))を含むことができる。試薬は、乾燥コバルト塩であってもよい。例示的なニッケル試薬は、方法100の第2混合物生成ステップ130に関して述べたニッケル試薬である。例えば、ニッケル試薬は、固体物(例えば、ニッケル塩の形のニッケル(例えば、塩化ニッケル(NiCl2)))を含むことができる。例示的な一実施形態では、試薬は、乾燥コバルト塩と乾燥ニッケル塩とを含む。
【0288】
サンプル物質がコバルト試薬とニッケル試薬とを可溶化して、方法100の第2混合物生成ステップ130に関して述べたのと同様の特性(例えば、コバルト濃度およびニッケル濃度)を有する混合物を生成する。例えば、検出ゾーン230におけるニッケル濃度は、典型的には、コバルト−アルブミン複合体が実質的に存在しない程度に高い(例えば、コバルトのほとんどまたはほぼ全てが、コバルト−アルブミン複合体を生成することを妨げられ、および/またはコバルト−アルブミン複合体から排除される)。典型的には、検出ゾーン230のニッケル試薬は、コバルト試薬によって提供されるコバルト濃度よりも高い全ニッケル濃度を提供する。例えば、コバルト試薬によって提供されるコバルト濃度に対する、ニッケル試薬によって提供される全ニッケル濃度の割合は、典型的には、少なくとも約1.5(たとえば、少なくとも約3、少なくとも約5、少なくとも約10)である。ニッケル試薬およびコバルト試薬によって提供されるコバルト濃度に対する全ニッケル濃度の割合は、典型的には、約25以下(例えば、約20以下、約15以下、約10以下)である。例示的な一実施形態においては、その割合は約5.5である。
【0289】
いくつかの実施形態では、ニッケル試薬の量は、少なくとも約3mM(例えば、少なくとも約5mM、少なくとも約7.5mM、少なくとも約10mM、少なくとも約15mM)の検出ゾーン230内の全ニッケル濃度を提供するのに十分である。いくつかの実施形態では、ニッケル試薬の量は、約30mM以下(例えば、約25mM以下、約20mM以下、約15mM以下)の検出ゾーン230内の全ニッケル濃度を提供するのに十分である。例示的な一実施形態においては、コバルト試薬の量は、約3.5mM以下(例えば、約1.5mM)の検出ゾーン230内のコバルト濃度を提供するのに十分であり、ニッケル試薬の量は、約5mMと約20mMとの間(例えば、約7.5mM)の検出ゾーン230における全ニッケル濃度を提供するのに十分である。
【0290】
検出ゾーン214に関して述べたのと同様に、検出ゾーン230の試薬材料は、例えば、混合物生成ステップ110、130に関して述べたとおり、本明細書で述べた試薬のいずれの組み合わせ(例えば、塩化物補償試薬、懸濁促進試薬、可塑試薬、分散試薬、緩衝試薬、消泡試薬、またはそれらの組み合わせ)を含んでもよい。
【0291】
攪拌バー216は、検出ゾーン214、230内に嵌まり込むようなサイズおよび形状とされ、検出ゾーン内でのサンプルおよび試薬材料の混合を助ける。典型的には、対応する検出ゾーン214、230の容積に対する攪拌バー216の容積の割合は、少なくとも約0.04(例えば、少なくとも約0.06、少なくとも約0.07)である。容積の割合は、約0.15以下(例えば、約0.12以下、約0.1以下)であってもよい。例示的な一実施形態においては、対応する検出ゾーン214、230の容積に対する攪拌バー216の容積の割合は、約0.07〜0.1(例えば、約0.85)である。
【0292】
対応する検出ゾーン214、230の高さに対する攪拌バー216の高さの比率は(検出ゾーン内に位置する攪拌バーで取られた)、典型的には、少なくとも約0.6(例えば、少なくとも約0.65、少なくとも約0.7)である。高さの比率は、典型定には、約0.9以下(例えば、約0.8以下)である。例示的な一実施形態では、高さの比率は、約0.75と約0.8との間(例えば、約0.775)である。
【0293】
いくつかの実施形態では、攪拌バー216の長さは、約2mmと約4mmとの間(例えば、約3mm)であり、攪拌バー216の幅は、約0.25mmと約0.6mmとの間(例えば、約0.45mm)であり、攪拌バー216の高さは、約0.15mmと約0.6mmとの間(例えば、約0.3mm)である。いくつかの実施形態では、攪拌バー216の容積は、約0.25μlと約0.6μlとの間(例えば、約0.45μl)である。
【0294】
典型的には、攪拌バー216はコーティングされ、試薬とサンプル物質との相互作用を最小限にし、および検出ゾーン内の電極の短絡を防ぐ。例示的な一実施形態では、攪拌バーは、パリレンでコーティングされる。代替案として、またはさらに、攪拌バーはPVPでコーティングされてもよい。
【0295】
各検出ゾーン214、230におけるサンプル物質と試薬材料の混合を助けるために、攪拌バーアクチュエータ259が、攪拌バー216を交番磁場に曝して、攪拌バー216を検出ゾーン214、230内で移動させる(例えば、回転させる)。攪拌バー216は、磁気的に影響を受けやすい材料(例えば、鉄または鉄含有金属)で形成されている。攪拌バー216の運動によって、検出ゾーン内の物質が移動し、それによって、サンプルおよび試薬材料の混合が促進される。プロセッサは攪拌バーアクチュエータ259を作動させて、攪拌バー216の運動速度を制御する。例えば、攪拌バーアクチュエータ259はフィードバックループを用いて、攪拌バー216の回転速度を制限してもよい。回転速度を制限することによって、攪拌バー216が、検出ゾーン214、230内の物質を移動させる能力を高め、それによって、サンプルおよび試薬材料の混合を促進する。
【0296】
攪拌バーアクチュエータ259は、典型的には、それぞれが低い必要電力を有する一組のDCモータ(例えば、大きさが約10×6mmの95cモータ)を含む。光学的なフィードバックループを用いてモータの速度を制御することにより、回転変動を減少させる。試薬がサンプルと混合すると、混合物の粘度が変化する。これによって、攪拌バー216とモータの磁石との間の誘導結合によって生じるモータの抗力が変化する。
【0297】
混合中、光学システムを用いてモータの回転速度を決定する。速度は、典型的には、モータに印加される電圧のデューティサイクルを変更することによって、モータに印加されるDC電圧を変調することで制御される。図5Bを参照すると、所望の速度を達成するために、Tonの持続時間が変調可能である。リーダ252によって、デューティサイクルの実時間フィードバック制御が可能となり、ごくわずかなオーバーシュートで所望の速度を達成する。したがって、デフォルト設定では高速(例えば、約10,000rpm)で回転するモータに、制御アルゴリズムを適用することによって、回転速度を制御することができる。例示的な一実施形態では、回転速度は、約250〜約1500rpm(例えば、約480〜約1250rpm、例えば、約1000rpm)に制御される。混合が、一定期間(例えば、約90秒など約60〜120秒)行われる。
【0298】
リーダ252が電極220、222、224を作動させて、方法100の第1決定ステップ120に従って、検出ゾーン214内で生成される混合物内の遊離コバルトの量を決定する。プロセッサ252もまた電極236、238、240を作動させて、方法100の第2決定ステップ140に従って、検出ゾーン230内で生成された混合物内の遊離コバルトの量を決定する。
【0299】
デバイス200は、所望通り形成可能である。基板202、204、206は、例えば、射出成形など任意の所望の方法によって形成できる。例示的な基板材料には、射出成形可能なポリマーなどのポリマーが含まれる。例示的なポリマーは、ポリエステルである。他の適切な材料には、アルミナセラミック、ガラス(例えば、溶融シリカ)、石英およびシリコンが含まれる。基板材料はコーティングして、その疎水性を変更する(例えば、基板材料をより親水性にするために)ことができる。
【0300】
電極およびリード線は、典型的には、主基板202上に形成される。電極およびリード線は、カーボンインク、銀インクまたは金インクで基板にスクリーン印刷することによって堆積することができる。適切なインク(例えば、ペースト)の例には、カーボンD2ペースト(GEM Ltd)および銀/塩化銀ペースト(DuPont)が含まれる。典型的には、カーボンーペーストは、作用電極および対電極に用いられる。銀/塩化銀ペーストは、典型的には、基準電極に用いられる。電極および/またはリード線は、少なくとも部分的に、絶縁層でコーティングすることができる。例示的な絶縁層は、誘電D1ペースト(GEM Ltd)などの誘電ペーストから生成される。電極およびリード線はまた、基底部に導電性材料(例えば、金、銀またはアルミニウムなど)を蒸着またはスパッタリングし、次いで、レーザーアブレーションまたは写真平板マスキング、およびウェットもしくはドライエッチングによって形成できる。
【0301】
主基板202と結合されると微小流体ネットワークを形成する副基板204、206の形状は、所望通りに形成できる。このような形状には、チャネル212、232を形成する溝と、検出ゾーン214、230を形成する凹部と、通気孔218、234を形成する通路とが含まれる。例示的な一実施形態では、副基板204、206は、大部分(例えば、このような形状の全て)を含む射出成形によって形成される。他の技術を用いて、このような形状体を形成してもよい。例えば、各形状体は、レーザーアブレーション、エッチングを伴ったフォトリソグラフィー、インプリンティング、またはマイクロマシニングによって形成できる。
【0302】
試薬材料は、所望通り堆積することができる。いくつかの実施形態では、試薬材料は、主基板202と結合する前に、副基板の凹部内に堆積される。試薬の堆積は、例えば、電磁弁およびサーボまたはステッパー駆動シリンジを用いて、ノズルから供給または吸引することによって達成可能である。
【0303】
これらの方法は、接触または非接触モードで、試薬の液滴または線を堆積することができる。試薬材料は、典型的には、完成したデバイス内の検出ゾーンの一部を形成する基板上に堆積される。例えば、試薬材料は、複数の液滴(例えば、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも約10液滴)で堆積することができる。いくつかの実施形態では、試薬材料は、50以下の液滴(例えば、25以下の液滴)で堆積される。
【0304】
試薬を堆積する他の方法には、パッド印刷、スクリーン印刷、圧電プリントヘッド(例えば、インクジェット印刷)、または、試薬を放出するために圧縮されたポーチ(「ケーキアイサー(cake icer)」)から堆積することが含まれる。堆積は、湿度および温度が調節された環境下で実施することが好ましい。それぞれの試薬は、同じまたは異なる位置に分配できる。
【0305】
いくつかの実施形態では、試薬はスクリーン印刷される。例えば、試薬材料は、デバイスの基板の表面上にスクリーン印刷することができる。いくつかの実施形態では、試薬は、電極の表面上に直接堆積(例えば、印刷)される。いくつかの実施形態では、試薬は、完成したデバイス内の電極と対向する基板の表面上に堆積(例えば、印刷)される。
【0306】
典型的には、検出ゾーンに供給される試薬材料の容積(乾燥前)は、検出ゾーンの容積よりも小さい。いくつかの実施形態では、供給される試薬材料の容積は、検出ゾーンの容積の約50%以下(例えば、約25%以下、約20%以下、約15%以下)である。いくつかの実施形態では、供給される試薬材料の容積(乾燥前)は、検出ゾーンの容積の約5%以上(例えば、約7.5%以上、約10%以上)である。例示的な実施形態では、容積(乾燥前)が約0.5μlと約5μlとの間(例えば、約1μlと約2μlとの間)の試薬材料が供給される。供給される試薬材料のコバルトおよび/またはニッケルは、典型的には、供給される試薬材料の容積(例えば、約1μl)に対する検出ゾーンの容積(例えば、約5μl)の比を乗算した、使用中に検出ゾーンで生成された試薬サンプル物質混合物におけるコバルトまたはニッケルの所望の濃度(例えば、約1.75mMのCo)によって与えられる濃度(すなわち、1.75mMのCo(5μl/1μl)=8.75mMのCo)を有する。
【0307】
供給される試薬材料は水溶液であってもよく、または、供給される試薬材料は1つまたは複数の有機溶媒(例えば、アセトン、エタノールまたはそれらの組み合わせ)を含むことができる。
【0308】
任意選択で、蛍光または着色添加剤が、試薬に加えられてよく、これにより、試薬の相互汚染および所望の堆積ゾーンの外への溢れ出しを検出できる。製品の性能は、相互汚染によって損なわれる可能性がある。堆積ゾーンは、近接しているかまたは少し離れていてもよい。蛍光または着色添加剤は、検査デバイスの動作、特に分析物の検出を阻害しないように選択される。
【0309】
堆積後、試薬は乾燥される。乾燥は、大気乾燥、赤外線乾燥、強制空気で支援された赤外線乾燥、紫外線乾燥、強制加温、制御された相対湿度乾燥、またはこれらの組み合わせによって達成できる。
【0310】
攪拌バー216は、先に説明したとおり、試薬材料の堆積前または後に、副基板204、206の凹部内に堆積されてもよい。試薬材料は、検出ゾーン内で攪拌バーを固定するために用いることができる。例えば、攪拌バーは、試薬材料がまだ湿っている間に、基板の凹部内に堆積された試薬材料と接触することができる。固定は、典型的には、攪拌バーが作動して試薬の可溶化を支援できる程度である。
【0311】
試薬材料は、検出ゾーンに入るサンプル物質が試薬材料を可溶化し、それによって、攪拌バーが回転し、試薬材料の可溶化を機械的に支援することが可能な程度まで溶解可能である。典型的には、試薬材料は、セルロース誘導体(例えば、Agualon社によるNatrosol Gなどのヒドロキシエチルセルロース)などの可塑化試薬を含む。いくつかの実施形態では、攪拌バーの長軸が、検出ゾーンに入るサンプル物質の流れに対して、非ゼロの角度(例えば、少なくとも約45°、少なくとも約70°、少なくとも約80°、ほぼ垂直)になるように、攪拌バーが固定される。例えば、攪拌バーの長軸は、サンプル物質が検出ゾーンに入るチャネルの長手方向軸に対して、このような非ゼロの角度であってもよい。典型的には、攪拌バーは、攪拌バーが検出ゾーンの側壁に接触しないように固定される。
【0312】
副基板204、206は、主基板202の対応する部分と結合して、微小流体ネットワークを形成する。結合は、例えば、副基板と主基板との間に置かれた、接着剤が裏面に付けられたラミネートを用いて達成することができる。
【0313】
いくつかの実施形態では、試薬材料の堆積は、副基板と主基板とが結合後になされる。結合後の堆積は、例えば、少なくとも部分的に(例えば、完全に)、検出容積を試薬材料溶液(例えば、コバルト溶液またはコバルト/ニッケル溶液)で充填し、次いで、乾燥(例えば、凍結乾燥)することによって達成可能である。検出容積が、完全に試薬材料溶液で充填される場合、検出ゾーン容積に対する堆積試薬材料の質量の比は、検出ゾーン容積の変化には関係なく一定である。
【0314】
検査デバイス200と検査リーダ252とを、方法100に従って検査を実行するものとして例示してきたが、デバイスおよび検査リーダは、他の検査を実行するように構成されてもよい。例えば、デバイスおよびリーダは、方法400に従って検査を実行するように構成することができる。このような実施形態では、デバイスの第1検出ゾーンは、デバイス200の検出ゾーン214と同じ特性(例えば、大きさおよび試薬の成分)を有してもよい。第2検出ゾーンは、デバイス200の検出ゾーン230と同じ大きさであってもよいが、例えば、塩化物補償試薬、懸濁促進試薬、可塑化試薬、分散試薬、緩衝試薬、消泡試薬、またはそれらの組み合わせを含む、方法400のステップ430に関して説明したような試薬成分を含む。
【0315】
検査リーダは、任意選択で虚血イベントの決定を含む方法400に従ってデバイスを作動させるように構成されている。
【0316】
微小流体デバイスはサンプル物質の2つの別個の部分のそれぞれについて決定を実行する、と説明してきたが、デバイスは他の構成を有してもよい。図6Aおよび6Bを参照すると、デバイスは、サンプル物質の単一部分を用いて複数回決定を実行する(例えば、方法100または400に従って)よう構成されている。デバイス300は、検査システム250を用いたデバイス200の作動に関して説明したとおり、検査リーダ252を用いて作動可能(例えば、方法100または400に従って)である。
【0317】
デバイス300は、第1および第2外側基板302、304と、任意選択の中間基板306とを含む。基板302、304、306は、第1および第2微小流体ネットワーク308、326を画定している。第1微小流体ネットワーク308は、サンプル物質入口310と、チャネル312によって入口310に接続された第1検出ゾーン314とを含む。第1微小流体ネットワーク308は、サンプル物質を収容し、試薬−サンプル物質混合物を生成する(例えば、方法100の第1混合物形成ステップ110に従って)ように構成されている。第1検出ゾーン314は、コバルト試薬を含んだ試薬材料(図示せず)と、攪拌バー216と、通気孔318と、それぞれ第1、第2、第3リード線321、323、325と接続されている第1、第2、第3電極320、322、324とを含む。第2微小流体ネットワーク326は、チャネル332によって入口320に接続された第2検出ゾーン330を含む。第2微小流体ネットワーク326は、サンプルを収容し、試薬−サンプル物質混合物を生成する(例えば、方法100の第2混合物形成ステップ130に従って)ように構成されている。第2検出ゾーン330は、コバルト試薬とニッケル試薬を含んだ試薬材料(図示せず)と、攪拌バー216と、通気孔334と、それぞれ第1、第2、第3リード線337、339、341と接続されている第1、第2、第3電極336、338、340とを含む。
【0318】
第1外側基板302は、微小流体ネットワーク308、326に対応する形状体を含む。例えば、溝380、382(図6B)は、微小流体ネットワーク308、326のチャネル312、332(図6A)とそれぞれ対応し、凹部384、386は、微小流体ネットワーク308、326の検出ゾーン314、330(図6A)にそれぞれ対応している。典型的には、基板302は、ポリマーで形成され、所望通りに形成できる(例えば、射出成形によって)。
【0319】
デバイス300では、中間基板306が、第1および第2外側基板302、204の間に置かれて。中間基板306は、各基板302、304の内面392、394とそれぞれ接合する第1および第2接着面388、390を含む。中間基板306は、第1および第2微小流体ネットワーク308、326に対応する形状(例えば、切欠部)を含む。
【0320】
第2外側基板304は、第1外側基板302と協働して、微小流体ネットワーク308、326を封止する。第2外側基板304は、電極320、322、324、336、338、340とリード線321、323、325、337、339、341とを支持する。電極およびリード線は、所望通りに形成できる(例えば、スクリーン印刷、フォトリソグラフィーおよびレーザーアブレーションによって)。
【0321】
入口310は、外側基板302のサンプル物質受取表面366と、中間基板306内の開口370とによって画定されたサンプル収容ゾーン362に近接している。使用中、各量のサンプル物質(例えば、全血、血漿、血清またはそれらの組み合わせなどの血液由来物質)が、サンプル収容ゾーン362に導入される。サンプル物質受取表面366は、サンプルを支持し、収容ゾーン262、264について述べたとおり、収容ゾーン362内の毛細管作用によって、そのサンプルが入口310、328に吸引される。入口310、328と接触したサンプル物質は、毛細管作用によって、各チャネル312、332に沿って検出ゾーン314、330に流れる。
【0322】
入口310に供給されたサンプル物質(例えば、血液由来物質)は、毛細管作用によって、検出ゾーン314に流れる。サンプル物質が入ると、通気孔318によって、気体(例えば空気)が検出ゾーン314から出ることができる。検出ゾーン314に収容されたサンプル物質は、検出ゾーン内の試薬材料と混合(例えば、懸濁または可溶化)して、第1混合物形成ステップ110に従って第1混合物を生成する。入口328に供給されたサンプル物質(例えば、全血)は、毛細管作用によって、検出ゾーン330に流れる。サンプル物質が入ると、通気孔334によって、気体(例えば空気)が検出ゾーン330を出ることができる。検出ゾーン330に収容されたサンプル物質は、検出ゾーン内の試薬材料と混合(例えば、懸濁または可溶化)して、第2混合物形成ステップ130に従って第2混合物を生成する。
【0323】
サンプル収容ゾーン362と検出ゾーン314、330とは、電気化学的な決定を実行する(例えば、方法100の決定ステップ120、140に従って)のに十分な量のサンプル物質を収容するように構成されている。典型的には、検出ゾーン314、330のそれぞれの自由容積は、少数回数(例えば、3回以下、2回以下、1回)の「指先穿刺」で得られた、ある一定量の血液によって充填可能である。例えば、いくつかの実施形態では、検出ゾーン314、330の全体の自由容積は、単一の「指先穿刺」からの血液で充填されることができる。各検出ゾーンの自由容積は、サンプル物質と試薬材料を充填するのに利用可能な容積である。自由容積には、攪拌バー216の容積は含まれない。いくつかの実施形態では、検出ゾーン314、330の全体の自由容積は、約100μl以下(例えば、75μl以下、50μl以下、30μl以下)である。いくつかの実施形態では、検出ゾーンの全体の自由容積は、約5μl以上(例えば、約10μl以上、約15μl以上)である。例示的な一実施形態では、検出ゾーン314、330の全体の自由容積は、約20μlである。典型的には、検出ゾーン314、330の各寸法と容積は、ほぼ同じ(例えば、実質的に同一)である。
【0324】
検出ゾーン314の試薬材料は、サンプル物質と混合するとコバルトイオンを提供するコバルト試薬を含む。検出ゾーン314の試薬材料の成分および種類は、検出ゾーン214について、および方法100の第1混合物形成ステップ110に関して説明したものと同じであってもよい。例えば、コバルト試薬は、固体物(例えば、コバルト塩の形のコバルト(例えば、塩化コバルト))を含むことができる。試薬は、乾燥コバルト塩であってもよい。サンプル物質は、コバルト試薬を可溶化して、方法100の第1混合物形成ステップ110に関して述べたとおりの特性(例えば、コバルト濃度)を有する混合物を生成する。
【0325】
コバルト試薬の量は、検出ゾーン314内で達成されるコバルト濃度と、検出ゾーンの自由容積とに依存する。コバルト試薬の量は、検出ゾーン214について述べたものと同じであってもよい。例えば、例示的な一実施形態では、コバルト試薬の量は、可溶化されると、約3.5mM以下(例えば、約1.5mM以下)の検出ゾーン314内のコバルト濃度を得るのに十分である。
【0326】
検出ゾーン314の試薬材料は、本明細書で述べるいずれの試薬、例えば、混合物形成ステップ110、130に関して説明した試薬(例えば、塩化物補償試薬、懸濁促進試薬、可塑化試薬、分散試薬、緩衝試薬、消泡試薬、またはそれらの組み合わせ)を含んでもよい。
【0327】
検出ゾーン330の試薬材料は、コバルトイオンを提供するコバルト試薬と、サンプル物質と混合するとニッケルイオンを提供するニッケル試薬とを含む。検出ゾーン330の試薬材料は、例えば、デバイス200の検出ゾーン230に関して述べたいずれの試薬材料であってもよい。例示的なコバルト試薬は、方法100の第1混合物形成ステップ110と検出ゾーン214、314に関して述べたコバルト試薬である。例えば、コバルト試薬は、固体物(例えば、コバルト塩の形のコバルト(例えば、塩化コバルト))を含むことができる。試薬は、乾燥コバルト塩であってもよい。例示的なニッケル試薬は、検出ゾーン230と方法100の第2混合物形成ステップ130に関して述べたニッケル試薬である。例えば、ニッケル試薬は、固体物(例えば、ニッケル塩の形のニッケル(例えば、塩化ニッケル(NiCl2)))を含んでもよい。例示的な一実施形態では、試薬は、乾燥コバルト塩と乾燥ニッケル塩とを含む。
【0328】
サンプル物質がコバルト試薬とニッケル試薬とを可溶化して、検出ゾーン230と方法100の第2混合物形成ステップ130に関して述べたような特性(例えば、コバルト濃度およびニッケル濃度)を有する混合物を生成する。例えば、検出ゾーン330内のニッケル濃度は、典型的には、コバルト−アルブミン複合体が実質的に存在しない程度に高い(例えば、コバルトのほとんどまたはほぼ全てが、コバルト−アルブミン複合体を生成することを妨げられ、および/またはコバルト−アルブミン複合体から除外される)。典型的には、検出ゾーン330のニッケル試薬は、コバルト試薬によって提供されるコバルト濃度よりも高い全ニッケル濃度を提供する。例えば、コバルト試薬によって提供されるコバルト濃度に対する、ニッケル試薬によって提供される全ニッケル濃度の割合は、典型的には、少なくとも約1.5(例えば、少なくとも約3、少なくとも約5、少なくとも約10)である。ニッケル試薬およびコバルト試薬によって提供されるコバルト濃度に対する全ニッケル濃度の割合は、典型的には、約25以下(例えば、約20以下、約15以下、約10以下)である。例示的な一実施形態においては、その割合は約5.5である。
【0329】
検出ゾーン330内のニッケル試薬の量は、デバイス200の検出ゾーン230について述べたものと同じであってもよい。例えば、例示的な一実施形態では、コバルト試薬の量は、約3.5mM以下(例えば、約1.5mM以下)の検出ゾーン330内のコバルト濃度を提供するのに十分であり、ニッケル試薬の量は、約5mMと約20mMとの間(例えば、約7.5mM以下)の検出ゾーン330内の全ニッケル濃度を提供するのに十分である。
【0330】
検出ゾーン230に関して述べたとおり、検出ゾーン330の試薬材料は、本明細書で述べるいずれの試薬(例えば、混合物形成ステップ110、130に関して述べたような試薬(例えば、塩化物補償試薬、懸濁促進試薬、可塑化試薬、分散試薬、緩衝試薬、消泡試薬、またはそれらの組み合わせ))を含んでもよい。
【0331】
それぞれの検出ゾーン314、330内のサンプル物質と試薬材料の混合を促進するために、システム252について説明したとおり、攪拌バー216を用いて検出ゾーン内の物質を移動させることができる。
【0332】
方法100に従って検査を実行するとして、検査デバイス300を具体的に説明してきたが、デバイスは、他の検査を実行するように構成されてもよい。例えば、デバイスは、方法400に従って検査を実行するように構成することができる。このような実施形態では、デバイスの第1検出ゾーンは、デバイス300の検出ゾーン314と同じ特性(例えば、大きさおよび試薬の成分)を有してもよい。第2検出ゾーンは、デバイス300の検出ゾーン330と同じ大きさであってもよいが、例えば、本明細書で述べたいずれかの試薬(例えば、混合物形成ステップ110、130に関して述べたような試薬(例えば、塩化物補償試薬、懸濁促進試薬、可塑化試薬、分散試薬、緩衝試薬、消泡試薬、またはそれらの組み合わせ))を含む、方法400のステップ430に関して説明したような試薬成分を含む。
【0333】
リーダは、虚血性イベントの決定を任意選択で含む方法400に従ってデバイスを作動させるように構成されている。
【0334】
図7A〜15を参照すると、検査リーダ500は、検査デバイスを作動させて検査を実行するように構成されている。例えば、検査リーダは、方法100または方法400に従って、デバイス200またはデバイス300を作動させることができる。
【0335】
典型的には、リーダ500は、入口554と、電気化学検出器と、表示器558と、磁気攪拌バーアクチュエータ559と、制御パネル561と、典型的には検出器、攪拌バーアクチュエータおよび/または表示器とつながれたプロセッサとを含む。使用中、検査デバイス(例えば、デバイス200または400)は、リーダ552の入口554内に受け入れられる。攪拌バーアクチュエータ559は、検査デバイスの検出ゾーン内の各サンプル物質−試薬混合物の生成を促進するために、検出ゾーン内で攪拌バー216を動かす(例えば回転させる)。電気化学検出器は各接点(図示せず)を含み、検査デバイスの電極を作動させる。プロセッサは、電気化学検出器から電気化学信号を受け取り、その信号に基づいて検査結果を決定する。表示器558は、検査結果および/またはその結果に基づいた虚血性状態の存在の決定を表示する。
【0336】
磁気攪拌バーアクチュエータは、2つのロータをそれぞれ駆動する単一のモータを有するギア駆動システムを含む。したがって、各ロータは同じ速度で回転する。ギアシステムは、混合される溶液の粘度/抗力効果が攪拌速度に影響を与える可能性を低減する。組み込まれたエンコーダディスク(周囲に均等な間隔で位置する多数の孔)を有するピニオンギアを用いて、混合機の回転速度を監視し、ロータの速度をフィードバック制御することを可能にしている。
【0337】
リーダ500は、検査中に検査ストリップの検出ゾーンの内容物(例えば、サンプル物質および試薬の混合物)の温度を制御するように構成された加熱機構を含む。典型的には、加熱機構は、検査を実行するのに適した温度を確立するように構成されている。血液由来サンプルの場合、その温度は、典型的には、約35°と40℃との間(例えば、約37℃)である。
【0338】
加熱機構は、リーダ500によって受け入れられた検査デバイスと熱的に接触(例えば、直接物理接触)するように構成された熱ブロック557を含む。典型的には、熱ブロックは、検査デバイスがリーダに挿入されると、検査デバイスと熱的に接触(例えば、直接物理接触)するように動く(例えば、回転する)よう構成されている。熱ブロック557は、受入れ位置(例えば、図8Cおよび9A)と、熱ブロック557が検査デバイスと熱的に接触する熱接触位置(例えば、図11B)との間を移動できる。検査デバイスの検出ゾーンの内容物の温度と、加熱機構体の熱ブロックの温度との間の関係を校正することにより、内容物の温度が熱ブロックの温度から予測できるようにされる。検査デバイスと温度制御器の熱ブロックとが熱的に接触しているため、温度制御器は、検査リーダの温度でなく加熱ブロックの温度を監視することができる。
【0339】
熱制御器においてリーダ500を用いて、加熱機構の機能を確認する(例えば、検査デバイス検出ゾーンの内容物の温度と熱ブロックの温度との間の校正を確認する)ことができる。典型的には、熱制御器の寸法および形状を検査デバイスと同等にして、制御器をリーダ500によって収容可能にし、および、挿入されると熱ブロックを制御器と熱的に接触可能にする。熱制御器は、制御器の温度を監視する温度センサ(例えば、サーミスタ)を含む。温度センサは、典型的には、制御器の接点と接続している。温度センサの接点は、典型的には、リーダにおいて用いられる検査デバイスの電極の接点と同じ位置に配置されている。
【0340】
温度センサの位置と温度制御器の熱的特性(例えば、温度制御器の熱伝導性および熱容量)が、検査デバイスと同様になるように、または、検査デバイスの熱的特性に関して既知の関係を有するように選択される。使用中、リーダ500は、(例えば、熱ブロックの温度を走査することによって)熱ブロックの温度の関数として熱制御器の温度を監視する。リーダ500は、熱ブロックの温度に対して検査デバイスの温度を校正する校正値を決定する。
【0341】
図16を参照すると、検査デバイス700は、SDメモリカード型インターフェースと類似のデザインを有する。図12〜14もまた参照すると、検査リーダ500は、検査デバイスがリーダに挿入されると、検査デバイスと係合して、検査デバイスを所定の位置に「固定」するロック形状体449を含む。典型的には、ロック形状体は検査デバイスを磁気攪拌バーアクチュエータに対して正確な位置に固定して、反応チャンバの内容物の効果的な混合を保証する。図15A〜15Cを参照すると、リーダ500は、検査後に検査デバイスを取り外す(例えば、少なくとも部分的に取り外す)ように構成された検査リーダ取出機構体を含む。取出機構体は、押しボタン447と押出体551とを含む。押出体は、検査デバイスの肩部に対して回転することによって、検査デバイス700を取り外すように作動する。
【0342】
検査デバイス700は、本明細書で述べた他の検査デバイスの任意の形状体(例えば、入口、チャネル、検出ゾーン、電極および/または試薬材料)を有して構成することができる。図示した例示的な一実施形態では、デバイス700は、第1および第2外側基板702、704と、任意選択の中間基板706とを含む。基板702、704、706は、デバイス300について述べたとおり、第1および第2微小流体ネットワークを画定している。第1微小流体ネットワークは、サンプル物質入口と、チャネルによってその入口に接続された第1検出ゾーンとを含む。第1微小流体ネットワークは、サンプル物質を収容し、(例えば、方法100の第1混合物形成ステップ110に従って)試薬−サンプル物質混合物を生成するように構成されている。第1検出ゾーンは、コバルト試薬を含んだ試薬材料(図示せず)と、攪拌バー216と、通気孔718と、それぞれ第1、第2、第3リード線720、722、724と接続されている第1、第2、第3電極721、723、725とを含む。第2微小流体ネットワークは、チャネルによって入口に接続された第2検出ゾーンを含む。第2微小流体ネットワークは、サンプルを収容し、試薬−サンプル物質混合物を生成する(例えば、方法100の第2混合物形成ステップ130に従って)ように構成されている。第2検出ゾーンは、コバルト試薬とニッケル試薬を含んだ試薬材料(図示せず)と、攪拌バー216と、通気孔734と、それぞれ第1、第2、第3リード線737、739、741(図16Bに示されているように基板704の下にある)と接続されている第1、第2、第3電極336、338、340とを含む。デバイス700は、方法100に従ってリーダによって作動することができる。
【0343】
方法100に従って混合物を生成し、決定を実行するように構成されている、として検査デバイス700を説明してきたが、他の実施形態も可能である。例えば、デバイス700は、本明細書で述べた他の方法に従って作動するように構成することができる。例示的な一実施形態では、デバイス700は、方法400に従って混合物を生成し、決定を実行するように構成されている。
【0344】
検査デバイスは、サンプルの第1部分に第1検査を実施し、サンプルの第2部分に第2検査を実施する、として説明してきたが、他のデバイスおよび方法を用いることも可能である。例えば、いくつかの実施形態では、検査デバイスは、サンプル(例えば血液由来サンプル)に、(例えば、方法100の第1コバルト決定ステップ120または方法400の第1コバルト決定ステップ420に従って)第1検査を実施する。デバイスは、第1検査を実施するのに用いられたサンプルの同じ部分に、(例えば、方法100の第2コバルト決定ステップ140または方法400の第2コバルト決定ステップ440に従って)第2検査を実施する。
【0345】
図17を参照すると、検査デバイス801は、コバルトのみの検査と、コバルトとニッケルの検査との両方のための検出容量を含む。デバイス801は、入口802と、入口に流体的に接続された第1検出容量804と、第1検出容量804にチャネル808を介して流体的に接続された第2検出容量806とを含む。第1検出容量804は、第1電極810とコバルト試薬とを含み、第2検出容量806は第2電極812とニッケル試薬とを含む。
【0346】
使用中、ある一定量のサンプル物質(例えば、血液由来物質)が、入力ポート802を通してデバイス801に導入される。デバイス801は、検査リーダによって受け入れられる。接点814、816は、リーダの対応する接点(図示せず)を介して、電極とリーダのプロセッサとの間の通信を確立する。
【0347】
血液の第1部分が、チャネル808に沿って(例えば、毛細管作用によって)、第1検出容積804内に入り、塩化コバルト塩と混合して第1混合物を生成する。第1混合物中のアルブミンが、第1混合物中のコバルトの一部と複合する。リーダは第1検出ゾーン804の電極810を作動さて、第1混合物中の遊離コバルトを決定する。第1検出ゾーン804からの第1混合物が、チャネル808に沿って(例えば、毛細管作用によって)、第2検出ゾーン812内に入り、塩化ニッケル塩と混合して第2混合物を生成する。第2混合物中のニッケルは、第1混合物中に存在していたコバルト−アルブミン複合体からコバルトを離して移動させる。
【0348】
リーダは、第2検出ゾーン818の第1、第2および第3電極826、828、830を作動させて、第2混合物中の遊離コバルトを決定する。第1および第2混合物中に存在するコバルトの量の結果に基づいてリーダは、デバイス801に導入されたサンプル物質(例えば、血液)中に存在するアルブミンの量を示す結果を決定し、上述のとおり、虚血性イベントの存在を決定することができる。
【0349】
図18を参照すると、デバイス850は、入力ポート802と、第1検出ゾーン804とを含む。入力ポート302は、第1検出ゾーン804に流体的に接続されている。第1検出ゾーン304は、接点816と電気的に通信する電極810を含む。デバイス850はまた、入力ポート802と流体的に接続された第2検出ゾーン806を含む。第2検出ゾーン806は、接点814と電気的に通信する電極812を含む。検出ゾーン804、806は、バリア818によって分離されている。バリア818は、検出ゾーン804と806との間の流体交換を防ぐ。バリア818は、例えば、基板の一部として(例えば、射出成形中に)、または蓋の一部として形成可能である。バリア818は、例えば、ゾーン804および806の間の壁の形を取ることができ、または、窪みの形(例えば、基板内にある)を取ることにより、窪みを横切って流体が移動することを(例えば、毛細管作用を阻害することによって)効果的に防ぐことができる。
【0350】
第1検出ゾーン804は、コバルト試薬を含み、第2検出ゾーン806は、コバルト試薬とニッケル試薬とを含む。使用中、ある一定量のサンプル物質(例えば、ヒトからの血液)が、入力ポート802を介してデバイス801に導入される。デバイス850は、検査リーダによって受け入れられる。接点814、816によって、デバイスの電極とリーダの接点との間の通信が確立される。リーダは、方法100または400のコバルト検出ステップに従って、デバイスの電極を作動させる。
【0351】
次に、発明者らは特定の追加の実施形態について説明する。一般に、以下に従って変更されるいずれの方法、デバイス、リーダ、システム、試薬材料またはそれらの一部も、本開示の一部と見なされる。
【0352】
血液由来サンプル物質を用いる方法およびデバイスを説明してきたが、他のサンプル物質を用いることもできる。例えば、適切なサンプル物質には、組織(例えば、心臓組織)、尿、リンパ液、唾液またはそれらの組み合わせなど生体物質が含まれる。例示的な一実施形態では、サンプルには、血液由来物質(例えば、血液、血漿および/または血清)またはそれらの組み合わせが含まれる。他の適切なサンプル物質には、工業および/または研究物質(例えば、石油、細胞培養、原料)および環境物質(例えば、水、溶剤、土壌、空気)が含まれる。
【0353】
ヒトからのサンプル物質を用いる方法およびデバイスを説明してきたが、生物学的サンプル物質は他のソースから得られてもよい。例えば、サンプル物質は、別の哺乳類(例えば、ウシ(例えば雌牛)、ブタ(例えば豚)、げっ歯類(例えばマウス)または、ウマ(例えば馬))から得られてもよい。典型的には、このようなサンプルは、血漿、血清または全血などの血液由来サンプルである。サンプル物質はまた、製造されたソース(例えば、細胞培養、溶剤、石油および食料品)に由来してもよい。
【0354】
アルブミンを決定するための方法およびデバイスを説明してきたが、他の分析物を決定することもできる。例えば、いくつかの実施形態では、分析物には、生物学的分析物(例えば、蛋白質(例えば血液中に見られる蛋白質)、虚血変性アルブミンまたはそれらの組み合わせ)が含まれる。本明細書で説明した方法およびデバイスの例示的な環境用途には、例えば、ヒトおよび動物の診断、(例えば、毒性の薬剤、金属、毒素、細菌、藻類などによる)汚染に関する環境サンプルの検査が含まれる。食料品を分析して、許容できないレベルの微生物、細菌またはウィルスによる汚染が存在しないことを保証することもできる。本発明の方法およびデバイスを利用できる他の分野には、科学捜査、水産養殖、獣医学、農業、食品加工および醸造が含まれる。
【0355】
コバルトとの複合体の生成に基づいて分析物(例えば、アルブミン)を決定することを含む方法およびデバイスを説明してきたが、アルブミンまたは他の分析物を決定するために、コバルト以外の第1試薬が用いられてもよい。適切な第1試薬の例には、その物質に対して分析物(例えば、アルブミン)が混合物中の少なくとも1つの他の化合物(例えば、IMA)とは異なる(例えば、高い)親和力を有する物質で、その物質に対して分析物との親和力を別の物質(例えば、ニッケル)によって変更できる物質であり、さらに分析物(例えば、アルブミン)と結合すると、分析物を含まない場合とは異なる感度で検出できる物質が含まれる。例えば、他の金属(例えば、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuおよびAg)は、それぞれ、IMAよりも容易にアルブミンと複合体を生成する。このような金属は、アルブミンと結合するために他の物質(例えば、他の金属と(例えば、互いに)または抗体と)と競合し、アルブミンと結合すると、アルブミンを含まない場合とは異なる感度で、検出する(例えば、電気化学的に)ことができる。例えば、Cu、Ni、Zn、Mn(マンガン)、CoおよびMgは、アルブミンに対して親和力が低下している(Cuの親和力が最も高い)。一般に、方法100は、任意にコバルトを他の金属(例えば、Ni、Zn、MnまたはMg)のうちの1つと置き換え、任意にコバルトを置き換えるのに選択された金属よりもアルブミンに対する親和力が高い他の金属のうちの1つとNiを置き換えることによって、実行できる。例示的な一実施形態では、方法100は、コバルトを用い、ニッケルを銅と置き換えることによって実行される。
【0356】
追加の適切な物質には、アルブミンに対する親和力がIMAとは異なる抗体が含まれる。
【0357】
一般に、決定ステップ120は、第1混合物中の第1試薬(例えば、コバルト)を決定する工程を含む。第1試薬は、典型的には、分析物と相互作用すると(例えば、分析物と複合するとき)、このような相互作用が存在しない場合(例えば、分析物と複合しないとき)とは異なる(例えば、低い)感度で検出可能な材料である。したがって、第1混合物中の第1試薬の決定された量は、典型的には、第1試薬の総量よりも少ない。なぜなら、分析物と相互作用した第1試薬は、検出されず、および/または分析物と相互作用していない第1試薬よりも低い感度で検出されるからである。
【0358】
コバルトとアルブミンとの間の相互作用を変更するために第2試薬(例えば、ニッケル)を用いる方法およびデバイスを説明してきたが、他の第2試薬が、代替的に、または追加で、用いられてもよい。一般に、コバルトとアルブミンとの間の相互作用を変更する(例えば、低減する)任意の材料が使用可能である。典型的な材料は、アルブミンと結合するためにコバルトと競合し、および/またはコバルトに対する親和力を低減するためにアルブミンを変性させる。例えば、いくつかの実施形態では、別の金属(例えば、銅、遷移金属またはそれらの組み合わせ)が、コバルトとアルブミンとの間の相互作用を変更するために、単独で、またはニッケルと組み合わせて用いられる。例示的な一実施形態では、第2混合物を生成するステップ130は、サンプル物質の一部を銅と混合する工程(例えば、水溶液(例えば硫酸銅溶液)および/または固体銅塩(例えば硫酸銅)として)を含む。他の適切な物質には、生物学的物質(例えば、コバルト結合を阻止する、アルブミンに対する抗体)が含まれる。
【0359】
一般に、決定ステップ140は、第2試薬の存在下で、第1試薬を決定する工程を含む。典型的には、第2試薬と分析物とは相互作用して、第1試薬と分析物との間の相互作用を変更することができる。例えば、第2試薬と分析物とが相互作用することによって、典型的には、第1試薬と分析物との間の相互作用が防止さ、低減され、競合され、および/または破壊される。一般に、分析物に対する第2試薬の親和力は、分析物に対する第1試薬の親和力よりも大きい。
【0360】
第2試薬は、典型的には、第1試薬と分析物との間の相互作用を変更する(例えば、防止および/または低減する)ことが可能な種である。いくつかの実施形態では、第2試薬は、第1試薬を、分析物との複合体と置き換える。一般に、第2試薬は、分析物に対する第1試薬の親和力よりも大きい、分析物に対する親和力を有する種である。例えば、いくつかの実施形態では、分析物は蛋白質(例えば、アルブミン)であり、第1試薬は、分析物と複合する金属イオン(例えば、コバルト)であり、第2試薬は、第1試薬と比較して優先的に分析物と複合する金属イオン(例えば、ニッケル、銅、遷移金属またはそれらの組み合わせ)である。
【0361】
第1および第2試薬は両方とも同じ種類の物質(例えば、両試薬とも金属イオンでもよい)であってもよいが、これらの試薬は異なる種類の物質であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、第1試薬は金属イオン(例えば、コバルト、ニッケル、銅、遷移金属またはそれらの組み合わせ)であり、第2金属は、異なったタイプの種(例えば、分析物に対する抗体(例えば、アルブミンに対する抗体)、蛋白質、酵素、または、第1試薬の検出性を変更する他の種などの生物学的化合物)である。
【0362】
決定ステップ140において、第2混合物中の第1試薬が決定される。決定ステップ120、140は、典型的には同じ検出方法を用いて実行される。第2試薬は、第1試薬と分析物との間の相互作用を変更するので、第2混合物中で決定された第1試薬の量140は、典型的には、第1混合物中で決定された量120よりも多い。
【0363】
決定ステップ150において、サンプル物質内に存在する分析物の量を表す値が、決定ステップ120、140の結果に少なくとも部分に基づいて決定される。典型的には、第1混合物中で決定された第1試薬の量120と、第2混合物中で決定された第1試薬の量140との差は、サンプル物質中の分析物の量を表す(例えば、比例している)。いくつかの実施形態では、サンプル物質中に存在する分析物の量を表す値は、第1混合物中で決定された第1試薬の量120と、第2混合物中で決定された第1試薬の量140との差に少なくとも部分的に基づいて決定される。
【0364】
第1試薬は、典型的には、分析物と相互作用する(例えば、分析物と複合体を生成することによって)ことが可能な種である。いくつかの実施形態では、第1試薬は、コバルトなどの金属(例えば、金属イオン)である。
【0365】
遊離第1試薬(例えばコバルト)の量を電気化学的に決定することを含む方法およびデバイスを説明してきたが、他の決定方法が用いられてもよい。例えば、ボルタンメトリー(例えば、ストリッピングボルタンメトリー)および電位差測定法を含む他の電気化学的方法を用いることができる。さらに、他の電極構成(例えば、櫛状電極)を用いることもできる。
【0366】
追加の適切な決定方法には、光学的方法(例えば、蛍光または吸収分光法)が含まれる。いくつかの実施形態では、第1試薬は、比色法によって検出される。例えば、微小流体デバイスの検出ゾーンが、光をデバイスに入射および/または出射可能にする、1つまたは複数の光窓を有してもよい。サンプル物質は、遊離コバルトの存在下で有色の複合体を生成するが、アルブミンと複合したコバルトとの有色の複合体は生成しない試薬と混合する。結果として得た混合物の光学密度に基づいて、遊離コバルトの決定がなされる。
【0367】
サンプル物質を固形試薬(例えば、塩)と混合するデバイスについて説明してきたが、他の構成が用いられてもよい。例えば、本明細書で説明したデバイスはいずれも、それぞれ液体試薬(例えば、方法100または400に従って第1および第2混合物を生成するための、試薬材料を含む水溶液)を収容した1つまたは複数の試薬ポーチを備えて構成できる。試薬ポーチ、典型的には、1つまたは複数のチャネルによって、微小流体ネットワークに接続されている。デバイス上の試薬ポーチはまた、あるいは代替的にサンプル物質の特性を変更する試薬を含むことにより、分析物の決定を支援することができる。例示的な試薬には、緩衝剤、溶解剤、pH調節剤および希釈剤が含まれる。使用中、試薬ポーチは作動(例えば、破裂)して、試薬ポーチ内の試薬がサンプル物質と混合することが可能になる(例えば、2005年11月5日付で出願された米国特許出願第60/736,302号明細書を参照のこと。なお、この内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0368】
分析物と相互作用していない第1試薬と比較して、分析物と相互作用している第1試薬に対して異なる感度を有する検出方法を用いた方法およびデバイスを説明してきたが、他の検出方法が用いられてもよい。いくつかの実施形態では、検出方法は、相互作用していない第1試薬から、相互作用した第1試薬を区別する。例えば、この方法は、相互作用した第1試薬と相互作用していない第1試薬とを表す信号が、異なった電位および/または電流で生じる電気化学的方法であってもよい。別の実施例として、検出方法は、相互作用した第1試薬と相互作用していない第1試薬とを表す信号が、異なった波長で生じるか、または異なった寿命もしくは分極を有する光学的方法であってもよい。
【実施例】
【0369】
以下は非限定的な実施例である。
【0370】
実施例1:全血におけるコバルトの電流測定的な還元曲線
ヒトソースからの全血とコバルト試薬(CoCl2)とを混合して、全血中の1mMのCo溶液(コバルトのみの溶液)を調製した。同じソースからの全血と、コバルト試薬(CoCl2)と、ニッケル試薬(NiCl2)とを混合して、全血中の1mMのCo/5mMのNi溶液(コバルト/ニッケル溶液)を調製した。コバルト還元電流がこれらの溶液から得られた。全血は、虚血性イベントを発現していないヒトソースを表していると考えられる。
【0371】
図17を参照すると、第1および第2コバルト還元電流600、602は、コバルトのみの溶液から得られたコバルト還元電流を表している。第3および第4コバルト還元電流604、606は、コバルト/ニッケル溶液から得られたコバルト還元電流を表している。電気化学信号608は、0.6Vと0.8Vとの間の曲線600の還元電流の負ピーク609と、約0.4〜0.6Vの電圧で生じる曲線の変曲点611との差である。電気化学信号610は、0.6Vと0.8Vとの間の曲線606の還元電流の負ピーク613と、約0.4〜0.6Vの電圧で生じる曲線の変曲点615との差である。
【0372】
曲線604、606を得るために用いられる溶液中にニッケルが存在するために、コバルトは溶液中のアルブミンと置き換えられた。したがって、より多くのコバルトが電流測定により検出される遊離コバルトとして利用可能であった。したがって、コバルト/ニッケル溶液からの電気化学信号610は、コバルトのみの溶液からの電気化学信号608よりも大きな振幅を有する。
【0373】
実施例2:全血中にニッケルまたは銅が存在する場合のコバルトの電気化学信号
実施例1の溶液を調製するために用いられたヒトソースからの全血を、コバルト試薬(CoCl2)と銅試薬(CuCl2)と混合して、複数のコバルト/銅溶液を調製した。コバルト/銅溶液は、それぞれ1mMのCoであり、0mMから10mMの範囲の銅濃度を有していた。同じヒトソースからの全血を、コバルト試薬(CoCl2)とニッケル試薬(NiCl2)と混合して、複数のニッケル/銅溶液を調製した。ニッケル/銅溶液は、それぞれ1mMのCoであり、0mMから20mMの範囲の銅濃度を有していた。コバルト還元電流がコバルト/銅溶液およびコバルト/ニッケル溶液のそれぞれから得られた。
【0374】
図20を参照すると、電流対Ni濃度曲線620は、Ni濃度に対するコバルト/ニッケル溶液からの電気化学信号をグラフ表示している。電流対Cu濃度曲線622は、Cu濃度に対するコバルト/銅溶液からの電気化学信号をグラフ表示している。電気化学信号は、実施例1で説明したのと同様にして得られた。
【0375】
コバルト/ニッケル溶液およびコバルト/銅溶液に関しては、遊離コバルトの量が増えるために、コバルトの電気化学信号の振幅は、ニッケルまたは銅濃度の増加とともに大きくなった。電気化学信号は、約5mMのニッケルまたは銅濃度で飽和した(すなわち、大きくならなくなった)。これは、実質的に全てのコバルトが、アルブミンによって結合されたコバルトとは対照的に、遊離コバルトとして有効であったことを示している。
【0376】
実施例3:全血中のコバルトの電気化学信号の校正曲線
実施例1の溶液を調製するために用いられたヒトソースからの全血を、コバルト試薬(CoCl2)と混合して、複数の校正液を調製した。校正液は、それぞれ1mMのCoから3mMのCoの範囲にあるコバルト濃度を有していた。ニッケルは用いられなかった。電気化学信号は、実施例1で説明したのと同様にして得られた。
【0377】
図21を参照すると、校正液から得られた電気化学信号630が、コバルト濃度に対して示されている。直線632は、電気化学信号630に対する最小二乗最適近似直線である。最適近似直線632は、全血溶液中のアルブミンがコバルトの一部と結合するために、負の切片を有する。アルブミンによって結合されたコバルトの量は、最適近似勾配および切片に基づいて、約0.94mMと予測することができる。
【0378】
実施例4:血清中にニッケルまたは銅が存在する場合のコバルトの電気化学信号
実施例1の溶液を調製するために用いられたヒトソースからの全血を沈殿させて、血漿を調製した。血漿をコバルト試薬(CoCl2)および銅試薬(CuCl2)と混合して、複数のコバルト/銅溶液を調製した。コバルト/銅溶液のそれぞれは1.5mMのCoであり、0mMから10mMの範囲の銅濃度を有していた。血漿の別の部分を、コバルト試薬(CoCl2)とニッケル試薬(NiCl2)と混合して、複数のニッケル/銅溶液を調製した。ニッケル/銅溶液のそれぞれは1.5mMのCoであり、0mMから20mMの範囲の銅濃度を有していた。コバルト還元電流が、コバルト/銅溶液およびコバルト/ニッケル溶液のそれぞれから得られた。
【0379】
図22を参照すると、電流対Ni濃度曲線640は、Ni濃度に対するコバルト/ニッケル溶液からの電気化学信号をグラフ表示している。電流対Cu濃度曲線642は、Cu濃度に対するコバルト/銅溶液からの電気化学信号をグラフ表示している。電気化学信号は、実施例1で説明したのと同様にして得られた。
【0380】
コバルト/ニッケル溶液およびコバルト/銅溶液に関しては、遊離コバルトの量が増えるために、コバルトの電気化学信号の振幅は、ニッケルまたは銅濃度の増加に伴って大きくなった。電気化学信号は、約5mMのニッケルまたは銅濃度で、実質的に飽和した(すなわち、大きくならなくなった)。これは、実質的に全てのコバルトが、アルブミンによって結合したコバルトとは対照的に、遊離コバルトとして有効であったことを示している。
【0381】
実施例5:血清中のコバルトの電気化学信号の校正曲線
実施例4からの血清をコバルト試薬(CoCl2)と混合して、複数の校正液を調製した。校正液は、それぞれ1.5mMのCoから4mMのCo(コバルトのみの溶液)の範囲にあるコバルト濃度を有していた。血清の別の部分をコバルト試薬(CoCl2)とニッケル試薬(NiCl2)と混合して、複数の校正液を調製した。校正液は、それぞれ1.5mMのCoから4mMのCoの範囲にあるコバルト濃度と、20mMのニッケル濃度を有していた(コバルト/ニッケル溶液)。
【0382】
電気化学信号は、実施例1で説明したのと同様にして得られた。
【0383】
図23を参照すると、コバルトのみの校正液から得られた電気化学信号650が、コバルト濃度に対して示されている。直線652は、電気化学信号650に対して最小二乗最適近似直線である。最適近似直線652は、全血溶液中のアルブミンがコバルトの一部と結合するために、負の切片を有している。アルブミンによって結合されたコバルトの量は、最適近似勾配および切片に基づいて、約1.5mMと予測することができる。コバルト/ニッケル校正液から得られた電気化学信号654が、コバルト濃度に対してグラフ表示されている。直線656は、電気化学信号654に対する最小二乗最適近似直線である。
【0384】
実施例6:全血中の電気化学的なコバルト信号に対するニッケルの効果
コバルトの電気化学的な(EC)決定に対するニッケル濃度の効果を試験するために実験が行われた。
【0385】
血液を、水性の塩化コバルト溶液と、水性の塩化ニッケル溶液のシリーズのうちの1つと混合して、一連の混合物を生成した。混合物のそれぞれは、コバルト中では1.5mM(見掛けではなく実際)であり、ニッケル中では1〜20mM(見掛けではなく実際)の範囲にあった。同じソースからの血液を、第2の水性の塩化コバルト溶液と、水性の塩化ニッケル溶液のシリーズのうちの1つと混合して、一連の混合物を生成した。混合物はそれぞれ、コバルト中では2.5mM(見掛けではなく実際)であり、ニッケル中では1〜20mM(見掛けではなく実際)の範囲にあった。
【0386】
ピペットを用いて溶液を検査デバイスに導入し、コバルトを電流測定により決定した。
【0387】
図24を参照すると、1.5mMのコバルト溶液と2.5mMのコバルト溶液の両方に対するピーク電流応答は、最大値が約4mMのニッケルに到達するまでニッケル濃度とともに増加する。その後、コバルト応答は減少するが、10〜20mMの間で急激に減少するのではない。この挙動は、アルブミンと結合するためにニッケルがコバルトと競合するという考えと一致している。アルブミンが、結合したニッケルと飽和状態になるまで、ニッケル濃度が上昇するので、ニッケルが存在すると、「遊離」コバルトの濃度が増す。飽和点の後は、ニッケルをさらに追加してもコバルト信号はそれ以上増加しない。ニッケルの飽和濃度が、両方に対して同じように現れるという事実
【0388】
全血に加えられる試薬の濃度に対するヘマトクリットの潜在的な効果に留意することは重要である。なぜなら、発明者らは、コバルトが(したがって、おそらくニッケルも)、周囲の血漿中のこれらの金属イオンの実際の濃度が予想よりも高い原因となる赤血球から排除されていると考えているからである。この特定の血液サンプルは、47%のヘマトクリットを有していた。これは、1ミリリットルの血液が、コバルトとニッケルを含むために、0.53mlだけの血漿を有していることを意味している。したがって、これらの血漿濃度は以下のように調節されてもよい。すなわち、コバルト;1.5mM(実際)→2.8mM(見掛け);2.5mM→4.7mM(見掛け)、ニッケル;4mM→7.5mM(見掛け);20mM→38mM(見掛け)。このヘマトクリットの提示された「濃度」効果は、49%のヘマトクリットを有する全血サンプルが、5mM(実際)のニッケル飽和点を有する(コバルト応答に対して)という先の発見によって、強く裏付けられるが、これは、得られた血清についても試験すると、ニッケル飽和点は10mMになる――ヘマトクリットによって予測される変化である。
【0389】
血液血漿中で7.5mMのアルブミン−飽和ニッケル濃度を達成するには、30%のヘマトクリットを有する血液が、5.25mMの「見掛けの」濃度(これは、赤血球がニッケルイオンを排除しない場合に達成される濃度である)に対して十分なニッケルの量を受け入れる必要がある。同じ量のニッケルが、60%のヘマトクリット血液の血漿で、13mMの濃度を生成する。この作業で用いられる血液は、6.9mMの見掛けのニッケル濃度において、13mMの血漿ニッケル濃度を有している。4〜6.9mMのニッケルでは、コバルト信号に比較的小さい差しかなかった。
【0390】
実施例7:コバルトを用いたアルブミンの決定
複数のヒトの血液サンプルが得られた。第1サブセットのサンプルが、健常な被験者の静脈からの採血によって得られた。サンプルは、全血として直接用いられるか、またはサンプルを遠心分離にかけて赤血球を除去し、血清もしくは血漿のいずれかを生成した。第2サブセットのサンプル(虚血性サンプル)が、外部の供給者から得られた。サンプルは、使用前に保存するため1mLの量に分割された凍結血清サンプルとして供給された。サンプルは、虚血性イベントを発現していると疑われる患者から得られた。血液サンプルはそれぞれ、第1および第2の100μLの部分に分けられた。
【0391】
第1の100μLの血液サンプル部分のそれぞれは、次のように処理された。第1の100μLの部分を、5μLの水性の塩化コバルトおよび塩化カリウム溶液と混合して、最終的な濃度が2.25mMの塩化コバルトと75mMの塩化カリウムとを有する混合物を生成した。この混合物を2分間培養した。コバルトの第1部分が、混合物中のアルブミンと複合体を生成した。
【0392】
混合物の10μL量が、試験片の検出ゾーンに加えられた。この試験片は、ポリエステル基板とポリマー膜とによって画定された検出ゾーンを含んでいた。検出ゾーンは、第1および第2のスクリーン印刷された炭素電極と、銀/塩化銀基準電極とを含んでいた。
【0393】
第1作用電極が、+1.0ボルトで40秒間維持された。第1作用電極の電位が、+1.0から−0.5ボルトで、+0.7ボルト/秒で走査された。+0.6〜+0.8ボルトの最大負電流が決定された。この電位範囲における実質的に全ての電流は、アルブミンと複合しないコバルトにより発生した。
【0394】
混合物の第2の量に、アルブミンコバルト結合(ACB(登録商標))試験を実施して、混合物中に存在するアルブミンのコバルト結合能力を光学的に決定した。血液サンプルのみがACB(登録商標)試験を用いて分析された。
【0395】
図25を参照すると、第1の100μLの血液サンプル部分に対して決定された最大負電流が、ACB(登録商標)試験によって決定されたそのサンプルに対するコバルト結合能力に対してグラフ表示されている。図26では、健常なサンプルが、虚血サンプルによって形成される線からずれた第1の線を形成している。このずれは、2つのサンプルの種類の間の処理または付随種の差から生じると推定される。
【0396】
実施例8:ニッケルの存在下でコバルトを用いるアルブミンの決定
実施例7からの第2の100μLの血液サンプル部分のそれぞれは、以下のように処理された。第2の100μLの血液サンプル部分を、5μLの水性の塩化ニッケル、塩化コバルトおよび塩化カリウム溶液と混合して、20mMのニッケル濃度、0.7mMのコバルト濃度および75mMの塩化カリウムを有する溶液を生成した。この混合物を2分間培養した。ニッケルは、混合物中で、優先的に(コバルトと比較して)、アルブミンとの複合体を生成した。実質的に全てのコバルトはアルブミンと複合しないままであった。
【0397】
混合物の10μL量が、実施例1で説明したのと同様にして、試験片の検出ゾーンに加えられた。第1作用電極が+1.0ボルトで40秒間維持された。第1作用電極の電位が、+1.0から−0.5ボルトで、+0.7ボルト/秒で走査された。+0.6〜+0.8ボルトの最大負電流が決定された。この電位範囲における実質的に全ての電流は、アルブミンと複合しないコバルトにより発生した。
【0398】
図27を参照すると、第2の100μLの血液サンプル部分に対して決定された最大負電流と、第1の100μLの血液サンプル部分との差が、ACB(登録商標)試験によって決定されたそのサンプルに対するコバルト結合能力に対してグラフ表示されている。
【0399】
図24および図25のデータを比較すると、健常なサンプルは、虚血サンプルによって形成された線と重なる線を形成していることがわかる。ニッケルを使用することで、図24で見られた電流のずれが補正された。さらに、直線近似の質から決定される図25のデータの精度は、図24のデータの精度よりも優れている。
【0400】
実施例8
サンプルが上述と同様に試験された。ただし、コバルト濃度は、両方の場合とも(すなわち、20mMのニッケルを追加せずに検査した場合、または追加して検査した場合)、2.25mMで一定であった。図26は、ACB値に対してプロットされたコバルト酸化電流のピーク高さ(nAの単位)を示している。図7は、20mMのニッケルの存在下で試験された場合のサンプルに対する結果を示している。図22では、コバルトおよびニッケルの測定値に対するコバルトのみの測定値の割合が、ACB値に対してグラフ表示されている。図示されているとおり、直線に対する近似は、図21よりも図22の方が格段に優れている。
【0401】
実施例9
胸痛または他の心臓の症状の発作を経験している(または最近経験した)ヒト被験者が、医療専門家によって診断される。専門家は、胸痛または症状が、主に心臓が原因のものであると決定する。この決定後に、被験者からの被験者血液由来物質を複数機会にわたり検査して、被験者が虚血性イベントを発現している(または過去に発現したか)どうかを決定する。例えば、被験者は、本明細書で説明した検査システム(例えば、本明細書で説明した検査リーダおよび検査デバイス)を用いて虚血性イベントの存在を決定してもよい。決定後のある一定期間の間に、ある一定間隔で、複数機会のそれぞれについて検査が実行される。間隔は、典型的には、少なくとも約4時間および約12時間、例えば、約6〜約8時間である。期間は、典型的には、胸痛が、実際に心臓が原因であるイベントにおいては、被験者にとってリスクの高い期間に及ぶ。例えば、測定は少なくとも約24時間、例えば少なくとも約48時間、または少なくとも約72時間実行されることがある。
【0402】
実施例10
本明細書で述べた方法およびデバイスのいずれかを用いて、患者の既知の心疾患の治療を経験した患者の虚血の存在を決定する。治療(バイパス、ステント)は、手術後数ヶ月以内に、合併症および新たな虚血または心筋梗塞を引き起こすことが多いため、虚血を監視することが有効である。虚血の存在は、イベントまたは外科的治療の後に、複数機会について決定される(例えば、方法100または400に従って)。これら複数機会のうちの1つまたは複数による結果を用いて基準を形成する。以降の結果が、その基準と比較される。例えば、1週間に少なくとも数回(例えば、毎日または1日に複数回、例えば、1日に少なくとも2回)決定を行うことができる。IMAのレベルの増加は、虚血または心筋症状の可能性(例えば、新たな心臓発作)を表している。
【0403】
実施例11
本明細書で説明した方法およびデバイスで使用するのに適した試薬が調製された。300gの水と、5gのMOPS緩衝液(Sigma M9027)と、1.0gのAntifoam FDP(Basildon Chemicals)と、0.75gのTergitol 15−S−9と、13.3gのヒドロキシエチルセルロース(Aqualon社からのNatrosol G)とを含む混合物が生成された。この混合物を夜通し回転させてNatrosol Gを確実に適切に溶解した。270gの溶液が新しい容器に移された。8.0gのシリカ粉末(Cabosil TS610)が加えられ、シリカを均一に分散させるためにシルバーソンミキサーが用いられた。
【0404】
シリカ粉末を含む250gの混合物が、新たな容器に移され、0.875gの塩化コバルトが混合物に加えられた。
【0405】
実施例12
実施例11で調製された試薬材料が、本明細書で説明したデバイスの電極に塗布された。試薬は、試薬をインクとしてスクリーン印刷することによって、塗布された。印刷は、デバイスの作用電極、基準電極および対電極を範囲に含む矩形内でなされた。基板を電極上に積層して、内側高さが150ミクロンの検出ゾーンを得た。攪拌バーは使用しなかった。印刷された試薬は乾燥された。複数のデバイスが形成された。
【0406】
上記で準備されたデバイスを異なるニッケル濃度と混合した血液を用いて試験し、異なるコバルト結合能力を有する血液を模倣した。その血液を検出ゾーンに加えて、攪拌または他の混合促進なしに、試薬材料との混合物を生成した。
【0407】
各混合物中の遊離コバルトの量が、本明細書で説明したとおり、電流測定法を用いて決定された。
【0408】
比較のため、5マイクロリットルの水性の塩化コバルト溶液と95マイクロリットルの血液とを混合することにより検査を実行して、血液中の最終的なコバルト濃度1.5mMを得た。この混合物を、スクリーン印刷された試薬を有するデバイスと同じであるが、試薬なしのデバイスに加えた。遊離コバルトの量が、電流測定法を用いて決定された。
【0409】
印刷された試薬を用いて生成された混合物中の遊離コバルトの量は、水性のコバルト試薬を用いて生成された量と同じであった。これによって、印刷された試薬のコバルトが、混合促進がなくても、サンプル物質内のアルブミンと再懸濁および結合したことが立証された。
【0410】
他の実施形態は、以下の特許請求項の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0411】
【図1】検査方法のフローチャートである。
【図2】図1の方法により調製された3つの混合物のうちのそれぞれについて、コバルト濃度の関数として電気化学信号を表すグラフである。
【図3】検査方法のフローチャートである。
【図4A】検査を実行する検査デバイスの上面図である。
【図4B】図4Aのデバイスの斜視図である。
【図4C】図4Aのデバイスの検出ゾーンで切断された部分断面である。
【図5A】図4の検査デバイスと、検査デバイスを作動させるように構成された検査リーダとを含むシステムである。
【図5B】図5Aの検査リーダの磁気攪拌バーアクチュエータの動作を示している。
【図6A】検査を実行する検査デバイスの上面図である。
【図6B】図6Aの検査デバイスの分解斜視図である。
【図7A】検査リーダの上面図である。
【図7B】図7Aの検査リーダの側面図である。
【図7C】図7Aの検査リーダの上面斜視図である。
【図7D】図7Aの検査リーダの底面斜視図である。
【図8A】図7Aの検査リーダの組立順序のステップを示している。
【図8B】図7Aの検査リーダの組立順序のステップを示している。
【図8C】図7Aの検査リーダの組立順序のステップを示している。
【図8D】図7Aの検査リーダの組立順序のステップを示している。
【図9A】図7Aの検査リーダと検査デバイス(例えば、図4Aまたは図6Aのデバイス)の分解部分斜視側面図である。
【図9B】図7Aの検査リーダと検査デバイスの図の分解された部分端部である。
【図10A】図7Aの検査リーダと検査デバイスの図の分解された部分斜視先端部である。
【図10B】図7Aの検査リーダと検査デバイスの斜視図である。
【図11A】図9Aにおけるのと同様の分解部分斜視側面図であるが、検査デバイスは検査リーダに完全に収容されている。
【図11B】図9Bにおけるのと同様の図の分解された部分端部であるが、検査デバイスは検査リーダに完全に収容されている。
【図12】図10Aにおけるのと同様の分解部分斜視上端部であるが、検査デバイスは完全に収容されている。
【図13A】図7Aのデバイスの分解部分図であるが、検査デバイスは検査リーダに部分的に収容されている。
【図13B】図7Aのデバイスの分解部分図であるが、検査デバイスは検査リーダに完全に収容されている。
【図14】押し出しボタンを示した、図7Aのデバイスの斜視図を示している。
【図15A】図7Aの検査リーダから検査デバイスを押し出すための機構体を示した分解部分図である。
【図15B】図7Aの検査リーダから検査デバイスを押し出すための機構体を示した分解部分図である。
【図15C】図7Aの検査リーダから検査デバイスを押し出すための機構体を示した分解部分図である。
【図16A】微小流体ネットワークと、図4Aの検査デバイスまたは図6Aの検査デバイスに関して記載された構成部品を含むことが可能な検査デバイスを示している。
【図16B】微小流体ネットワークと、図4Aの検査デバイスまたは図6Aの検査デバイスに関して記載された構成部品を含むことが可能な検査デバイスを示している。
【図16C】微小流体ネットワークと、図4Aの検査デバイスまたは図6Aの検査デバイスに関して記載された構成部品を含むことが可能な検査デバイスを示している。
【図17】検査を実行する検査デバイスの上面図である。
【図18】検査を実行する検査デバイスの上面図である。
【図19】全血中の1mMのCo溶液と、同じソースからの全血における1mMのCo/5mMのNi溶液とに対する、電流測定によるコバルトの還元電流対電圧のプロットを示すグラフである。
【図20】全血中の1mMのCo溶液に対する、電流測定によるコバルトの還元電流対ニッケル濃度のプロットと、同じソースからの全血中の1mMのCo溶液に対する、電流測定によるコバルトの還元電流対銅の濃度のプロットとを示したグラフである。
【図21】図20のソースと同じソースからの全血中の1〜3mMの範囲にあるコバルト濃度に対する、電流測定によるコバルトの還元電流対コバルト濃度のプロットを示すグラフである。
【図22】血清中の1.5mMのCo溶液に対する、電流測定によるコバルトの還元電流対ニッケル濃度のプロットと、図20のソースと同じソースからの全血から調製された血清からの血清中の、1.5mMのCo溶液に対する、電流測定によるコバルトの還元電流対銅の濃度のプロットとを示したグラフである。
【図23】血清中の1.5〜4mMの範囲にあるコバルト濃度に対する、電流測定によるコバルトの還元電流対コバルト濃度のプロットと、20mMのNi濃度を有する血清中の0〜4mMの範囲にあるコバルト濃度に対する、電流測定によるコバルトの還元電流対コバルト濃度のプロットとを示すグラフであり、血清は、図20のソースと同じソースからの全血から調製されたものである。
【図24】全血中のコバルトからの電気化学信号に対するニッケル濃度の影響を示すグラフである。
【図25】複数の血液由来サンプルのそれぞれについて、ACB値に対して示されたコバルトの還元電流を示すグラフである。
【図26】追加したニッケルの存在下で測定された、複数の血液由来サンプルのそれぞれについて、ACB値に対して示されたコバルトの還元電流を示すグラフである。
【図27】ACB値に対して示されたコバルトの還元電流を示すグラフである。
【図28】ACB値に対して示された測定電流の比率を示すグラフである。
【優先権主張】
【0001】
本出願は、2007年2月15日付で出願された米国特許仮出願第60/889,962号明細書、2007年1月17日付で出願された米国特許仮出願第60/885,320号明細書、および、2006年2月15日付で出願された英国特許仮出願第GB0603049.8号明細書に対する優先権を主張し、これら各出願の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、例えば、ヒトなどの動物における虚血イベントの存在を決定するための検査に関する。
【背景】
【0003】
対象の種(例えば、分析物)に対する検査は、多数の応用分野を有する(例えば、医学、工業および環境解析において)。典型的には、分析物は、1つまたは複数の共存種を含むサンプル物質(例えば、混合物)中に存在している。例えば、哺乳類の血液蛋白質であるアルブミンは、分析物の例である。アルブミンは、粒子状物質(例えば、マクロファージおよび赤血球)などの共存種、イオン種(例えば、種々の塩および金属イオン)、気体(例えば、溶媒和した酸素および窒素)、および多数の生物学的化合物(例えば、蛋白質、リポ蛋白質、血液トリグリセリド、脂肪酸およびコレステロール)を含むサンプル物質である血液内で見られる。共存種の量および/または種類、ならびに他のサンプル特性(例えば、pH、温度および粘度)は、サンプル物質の種類によって、および同じサンプル物質のそれぞれのサンプル間で変化する可能性がある。共存種およびサンプル特性の変化は、検査に干渉(例えば、正確性および/または精度を低減)する可能性がある。このような干渉は、マトリックス効果として知られている。
【0004】
検査は、虚血、すなわち、例えば、血管の収縮または閉塞が原因で、体の一部への酸素供給が不足することに伴う状態の存在を決定するためになされてきた。虚血の2つの一般的な形態は、心臓血管の虚血と脳血管の虚血である。前者は、通常、冠動脈疾患の直接的な結果であり、一方、後者は、脳に至る動脈の狭窄が原因であることが多い。被験者が虚血イベントを発現している場合、虚血変性アルブミン(IMA)が被験者の血液中に発生し、被験者の血液中の正常な(すなわち、未変性の)アルブミンの量が減少する。
【0005】
IMAと正常なアルブミンとの間の相違点の1つは、IMAの方が特定の金属イオンを結合する能力が低いことである。国際特許公開公報第WO03/046538号は、この相違点に基づいて、被験者サンプル中の虚血イベントをインビトロ検出するための電気化学方法およびデバイスを記載している。この公報は、既知量の遷移金属イオンを血液サンプルに加え、その後、正常アルブミンがない金属イオン(例えば、正常アルブミンによって封鎖または結合されていない金属イオン)の電流または電位差を測定することを記載している。虚血イベントが存在することによって、正常アルブミンの量が減るため、遊離金属イオンの量は、虚血イベントがない場合よりも虚血イベントがある場合の方が多い。このWO03/046538号公報は、参照によりその内容は本明細書に組み込まれる。
【0006】
米国食品医薬品局は、虚血イベントの決定に用いるためのアルブミンコバルト結合(ACB(登録商標))試験を承認した。この試験は、血液蛋白質アルブミンと結合するコバルト量を光学的に測定することによって有効になる。被験者からの血清は、コバルトのない有色複合体を生成する試薬とは混合するが、アルブミンと複合されたコバルトとは混合しない。有色複合体の量は、光学的に決定され、被験者内の虚血イベントの存在を診断するために基準値と比較される。
【概要】
【0007】
本発明は、例えば、ヒトなどの哺乳類において、虚血イベントの存在を決定するための検査に関する。
【0008】
検査方法、システムおよびデバイスの例示的な実施形態は、以下のもの、および以下の全ての組み合わせを含む。
【0009】
1.コバルト試薬と血液由来サンプル物質とを備えた第1混合物を生成する手段と、
第1混合物内の遊離コバルトの量または濃度を決定する手段と、
コバルト試薬と、血液由来サンプル物質と、任意選択のニッケル試薬とを備える第2混合物を生成する手段であって、ニッケル試薬が第2混合物に含有されていない場合、第2混合物中のコバルト量は第1混合物中のコバルト量と異なる、手段と、
第2混合物内の遊離コバルトの量または濃度を決定する手段と、
を備える、検査デバイス。
【0010】
2.第2混合物を生成する手段は、ニッケル試薬を備えている、実施形態1の検査デバイス。
【0011】
3.ニッケル試薬は、デバイス内に乾燥状態で置かれている、実施形態2の検査デバイス。
【0012】
4.第1混合物を生成する手段は、デバイス内に乾燥状態で置かれているコバルト試薬を備えている、実施形態1から3のいずれかの検査デバイス。
【0013】
5.第1および第2混合物は、全塩化物濃度を少なくとも50mMまで上げるのに十分な量の塩化物補償試薬をさらに含む、先の実施形態のいずれかの検査デバイス。
【0014】
6.デバイスは、共通のサンプル収容ゾーンと連通する第1および第2検出ゾーンを備えている、先の実施形態のいずれかの検査デバイス。
【0015】
7.第1検出ゾーンおよび第2検出ゾーンと、
第1金属を含む第1試薬材料と、
第1金属か、アルブミンに対して第1金属よりも高い親和力を有するか、または第1金属と異なる量を含む第2金属のいずれかを含む、第2試薬材料と、
を備える検査デバイスであって、
このデバイスは、サンプル液を収容し、第1検出ゾーンにおいて、サンプル液の一部と第1試薬材料とを含む第1混合物を生成するように、かつ第2検出ゾーンにおいて、サンプル液の一部と第2試薬材料とを含む第2混合物を生成するように構成された、検査デバイス。
【0016】
8.上記第1および第2検出ゾーンは、電気化学的検出ゾーンである、実施形態5による検査デバイス。
【0017】
9.上記第1金属はコバルトである、実施形態5または6による検査デバイス。
【0018】
10.上記第2金属はニッケルである、実施形態5〜7のいずれかによる検査デバイス。
【0019】
11.第1金属は、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuおよびAgからなるグループから選択される、実施形態5から8のいずれかのデバイス。
【0020】
12.第2金属は、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuおよびAgからなるグループから選択される、実施形態5から9のいずれかの方法。
【0021】
13.上記第1および上記第2金属のうちの少なくとも一方は、サンプル液を加える前に乾燥状態で存在している、実施形態5から10のいずれかによる検査デバイス。
【0022】
14.上記サンプル液は、ヒト血液およびヒト血漿から選択される、実施形態5から11のいずれかによる検査デバイス。
【0023】
15.第1または第2金属は、金属塩の形をしている、実施形態5〜12のいずれかによる検査デバイス。
【0024】
16.検査リーダと、先の実施形態のうちのいずれかの検査デバイスとを備えた検査システム。
【0025】
17.検査リーダは検査デバイスを作動させて、第1および第2検出ゾーンにおける遊離第1金属のそれぞれの量を決定するように構成されている、実施形態16の検査システム。
【0026】
18.実施形態1〜15のいずれかによる検査デバイスを収容するように構成された検査リーダ。
【0027】
19.リーダは、少なくとも1つの電気化学検出器を備えている、実施形態18の検査リーダ。
【0028】
20.実施形態1から15のいずれかによる検査デバイスを固定および固定解除するのに適した検査デバイス固定機構を備えた、実施形態18または19の検査リーダ。
【0029】
21.固定機構は、検査デバイスを検査リーダに収容すると、検査デバイスの凹部に係合するよう構成された可動部材を備えている、実施形態20の検査リーダ。
【0030】
22.固定機構は、検査デバイスを検査リーダに収容すると、検査デバイスの各凹部に係合するようそれぞれが構成された2つの可動部材を備えている、実施形態21の検査リーダ。
【0031】
23.可動部材(複数可)は、回転可能である、実施形態21または22の検査リーダ。
【0032】
24.検査デバイス温度制御器をさらに備える、実施形態18から23のいずれかによる検査リーダ。
【0033】
25.温度制御器は、検査デバイスを検査リーダに収容すると、静止位置から熱的に結合する位置まで移動するように構成された可動熱遮蔽物を備え、熱的に結合した位置では、加熱要素が検査デバイスと熱接触状態に置かれる、実施形態24の検査リーダ。
【0034】
26.実施形態1〜15のいずれかによる検査デバイス、実施形態16または17のいずれかによる検査システム、または実施形態18〜23のいずれかによる検査リーダを使用して、血液由来サンプル物質中の第1金属試薬の遊離コバルトもしくは金属の量または濃度を決定すること。
【0035】
27.実施形態26による使用において、血液由来サンプル物質中の第1金属試薬の遊離コバルトもしくは金属の量または濃度を用いて、上記血液由来サンプル物質が採取された哺乳類の虚血イベントの存在を決定すること。
【0036】
28.実施形態1〜15のいずれかによる検査デバイス、実施形態16または17のいずれかによる検査システム、または実施形態18〜23のいずれかによる検査リーダを使用して、血液由来サンプル物質中の虚血変性アルブミン(IMA)の量または濃度を決定すること。
【0037】
29.実施形態28による使用において、虚血変性アルブミン(IMA)の濃度または量を用いて、上記血液由来サンプル物質が採取された哺乳類の虚血イベントの存在を決定すること。
【0038】
30.実施形態1〜15のいずれかによる検査デバイス、実施形態16または17のいずれかによる検査システム、または実施形態18〜23のいずれかによる検査リーダを使用して、上記血液由来サンプル物質が採取された哺乳類の虚血イベントの存在を決定する。
【0039】
31.ヒト血液から得られたサンプル中の虚血変性アルブミンの存在を決定する方法であって、
上記血液由来サンプル物質の一部をコバルト試薬に加えることによって、第1混合物を生成するステップと、
第1混合物中の遊離コバルトの量または濃度を決定して第1結果を得るステップと、
上記血液由来サンプル物質の別の部分を、コバルト試薬と、任意選択で、血液由来サンプル物質の上記部分にコバルト−アルブミン複合体の生成および存在を実質的に阻止するのに十分な量のニッケル試薬とに加えることによって第2混合物を生成するステップであって、
ニッケル試薬が第2混合物に含有されていない場合は、第2混合物中のコバルト量は、第1混合物中のコバルト量とは異なる、ステップと、
第2混合物中の遊離コバルトの量または濃度を決定して第2結果を得るステップと、
第1および第2結果を処理し、処理値を、虚血変性アルブミンを表す適切な基準値と比較するステップと、を備える方法。
【0040】
32.基準値は、虚血イベントの後に虚血変性アルブミンを含有することが知られているヒトの血液から得られるサンプル中の遊離コバルトの量または濃度を表す、実施形態31による方法。
【0041】
33.基準値は、先に採取された同じヒトから得られたサンプル中の遊離コバルトの量または濃度を表す、実施形態31による方法。
【0042】
34.実施形態1〜15のいずれかによる検査デバイス、実施形態16または17のいずれかによる検査システム、または実施形態18〜23のいずれかによる検査リーダを用いた、実施形態31〜34のいずれかによる方法。
【0043】
35.ヒト血液から得られたサンプル中の虚血変性アルブミンの存在を決定する方法であって、
上記血液由来サンプル物質の一部を第1金属を含む第1試薬に加えることによって、第1複合体を生成するステップと、
第1混合物中の遊離第1金属の量または濃度を決定して第1結果を得るステップと、
上記血液由来サンプル物質の別の部分を、ある一定量の第1試薬と、任意選択で、アルブミンに対して第1金属よりも高い親和力を有する第2金属を含むある一定量の第2試薬とに加えることによって第2混合物を生成するステップであって、第2金属の量は、血液由来サンプル物質の上記部分における第1金属−アルブミン複合体の生成および存在を実質的に阻止するのに十分であり、
第2試薬が第2混合物に含有されていない場合は、第2混合物中の第1金属の量は、第1混合物中の第1金属の量とは異なる、ステップと、
第2混合物中の遊離第1金属の量または濃度を決定して第2結果を得るステップと、
第1および第2結果を処理し、処理値を、虚血変性アルブミンを表す適切な基準値と比較するステップと、を備える方法。
【0044】
36.第1金属は、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuおよびAgからなるグループから選択される、実施形態17の方法。
【0045】
37.第2金属は、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuおよびAgからなるグループから選択される、実施形態18の方法。
【0046】
38.実施形態1〜15のいずれかによる検査デバイス、実施形態16または17のいずれかによる検査システム、または実施形態18〜23のいずれかによる検査リーダを用いた、実施形態17〜18のいずれかによる方法。
【0047】
39.それぞれが、血液由来サンプル物質の混合物とコバルト試薬を備える第1および第2電気化学検出ゾーンを備えた検査デバイスであって、サンプル物質は哺乳類から得られている、検査デバイスと、
検査デバイスを作動させて、第1および第2検出ゾーン内の各遊離コバルトの量を決定し、遊離コバルトの量に基づいて哺乳類の虚血イベントの存在を決定するように構成された検査リーダと、を備えた検査システム。
【0048】
40.コバルトと、哺乳類の血液から得られた第1血液由来サンプル物質とを含む第1混合物を生成するステップであって、サンプル物質はアルブミンを含む、ステップと、
第1混合物中に存在するアルブミンと複合されないコバルト量を示す第1信号を得るステップと、
コバルトとニッケルと哺乳類の血液から得られた第2血液由来サンプル物質とを含む第2混合物を生成するステップと、
第2混合物中に存在するアルブミンと複合されないコバルト量を示す第2信号を得るステップと、
少なくとも第1および第2信号に基づいて、その哺乳類の虚血の存在を示す検査結果を決定するステップと、を備える方法。
【0049】
41.検査結果の少なくとも一部に基づいて、その哺乳類の虚血の存在を決定するステップをさらに備える、実施形態40の方法。
【0050】
42.哺乳類はヒトである、実施形態40または41の方法。
【0051】
43.検査結果は、第1および第2電気化学信号間の差、第1および第2電気化学信号の比、またはそれらの組み合わせを示す、先の実施形態のいずれかの方法。
【0052】
44.第1および第2混合物のコバルトは、コバルトイオンであり、第2混合物のニッケルは、ニッケルイオンである、先の実施形態のいずれかの方法。
【0053】
45.第1信号は第1電気化学信号であり、第2信号は第2電気化学信号である、実施形態40の方法。
【0054】
46.第1電気化学信号を得るステップは電流測定法で実行され、第2電気化学信号を得るステップは電流測定法で実行される、実施形態45の方法。
【0055】
47.第1混合物を生成するステップは、第1サンプル物質とコバルト塩とを混合するステップを含み、コバルト塩は、第1混合物を生成する前には乾燥状態である、先の実施形態のいずれかの方法。
【0056】
48.第2混合物を生成するステップは、第2サンプル物質とコバルト塩とニッケル塩とを混合する工程を含み、コバルト塩とニッケル塩とは、第2混合物を生成する前には乾燥状態である、実施形態47の方法。
【0057】
49.第1混合物は、コバルト塩から生じる第1総量の塩化物イオンを含み、第2混合物は、ニッケル塩とコバルト塩とから得られる第2総量の塩化物イオンを含み、第1混合物は、コバルトおよびニッケルが遊離した塩化物ソースから得られるある一定量の塩化物を含み、ある一定量の塩化物は、第2および第1総量の塩化物の差の少なくとも50%である、先の実施形態のいずれかの方法。
【0058】
50.コバルトおよびニッケルが遊離した塩化物ソースは、アルカリ金属塩化物塩を含む、実施形態49の方法。
【0059】
51.アルカリ金属塩の実質的に全ては、塩化カリウムである、実施形態50の方法。
【0060】
52.塩化物の量は、第2および第1総量の塩化物の差の少なくとも75%である、実施形態51の方法。
【0061】
53.第1混合物を生成する前は、コバルト塩は、微小流体デバイス内で乾燥状態であり、第1混合物を生成するステップは、哺乳類の血液由来サンプル物質を微小流体デバイス内のコバルト塩と混合する工程を備える、実施形態47〜52のいずれかの方法。
【0062】
54.哺乳類の血液由来サンプル物質をコバルト塩と混合するステップは、微小流体デバイス内で、血液由来サンプル物質を機械的に移動する工程を備える、実施形態53の方法。
【0063】
55.微小流体デバイス内で、血液由来サンプル物質を機械的に移動するステップは、微小流体デバイス内で、血液由来サンプル物質およびコバルト塩と接触して置かれた、磁気的な影響を受ける部材を磁気的に移動する工程を含む、実施形態54の方法。
【0064】
56.部材の回転移動を引き起こすステップを備える、実施形態55の方法。
【0065】
57.第2混合物を生成するステップは、第2サンプル物質とニッケル塩とコバルト塩とを混合する工程を含み、ニッケル塩とコバルト塩とは、混合ステップを実行する前は乾燥状態である、実施形態53の方法。
【0066】
58.第2混合物を生成する前に、ニッケル塩およびコバルト塩は微小流体デバイス内で乾燥状態であり、第2混合物を生成するステップは、哺乳類の血液由来サンプル物質とニッケル塩とコバルト塩とを微小流体デバイス内で混合する工程を備える、実施形態57の方法。
【0067】
59.哺乳類の血液由来サンプル物質を、第2混合物のニッケル塩およびコバルト塩と混合するステップは、微小流体デバイス内で、血液由来サンプル物質を機械的に移動する工程を備え、哺乳類の血液由来サンプル物質を第1混合物のコバルト塩と混合するステップは、微小流体デバイス内で、血液由来サンプル物質を機械的に移動する工程を備える、実施形態58の方法。
【0068】
60.血液由来サンプル物質を機械的に移動するステップは、微小流体デバイス内に置かれた、磁気的な影響を受ける部材を磁気的に移動する工程を含む、実施形態59の方法。
【0069】
61.微小流体デバイス内に哺乳類からのある一定量の血液由来サンプル物質を収容するステップと、血液由来サンプル物質を少なくとも第1および第2部分に区別するステップとを備え、第1サンプルは、血液由来サンプル物質の第1部分の血液由来サンプル物質を含み、第2サンプルは、血液由来サンプル物質の第2部分の血液由来サンプル物質を含む、先の実施形態のいずれかの方法。
【0070】
62.血液由来サンプル物質を区別後、血液の第1部分を、微小流体デバイスのチャネルに沿って、微小流体デバイスの電気化学検出チャンバまで通すステップと、血液由来サンプル物質の第2部分を、微小流体デバイスのチャネルに沿って、微小流体デバイスの電気化学検出チャンバまで通すステップとを備える、実施形態61の方法。
【0071】
63.第1混合物を生成するステップは、第1検出チャンバ内で実行され、第2混合物を生成するステップは、第2検出チャンバ内で実行される、実施形態62の方法。
【0072】
64.第1信号は、第1検出チャンバの電極を用いて得られた第1電気化学信号であり、第2信号は、第2検出チャンバの電極を用いて得られた第2電気化学信号である、実施形態63の方法。
【0073】
65.血液由来サンプル物質の第1部分をチャネルに沿って通すステップは、血液由来サンプル物質を検出チャンバ内にまで通す前に、第1断面積を有するチャネル部分から第2のより小さい断面積を有するチャネル部分まで、血液由来サンプル物質を通す工程を備える、実施形態62の方法。
【0074】
66.アルブミンとの複合体を生成する第1試薬と、哺乳類の血液から得られる第1血液由来サンプル物質とを含む第1混合物を生成するステップと、
第1混合物中に存在するアルブミンと複合されない第1試薬の量を示す第1の値を決定するステップと、
第1試薬と、アルブミンとの複合体を生成するために第1試薬と競合する第2試薬と、第2サンプルとを含む第2混合物を生成するステップであって、第2サンプルは、哺乳類の血液由来サンプル物質から得られる、ステップと、
第2混合物中に存在するアルブミンと複合されない第1試薬の量を示す第2の値を決定するステップと、
少なくとも第1および第2の値に基づいて、第1混合物中に存在するアルブミンの量を表す値を決定するステップと、を備える方法。
【0075】
67.第1試薬はコバルトである、実施形態66の方法。
【0076】
68.第2試薬はニッケルである、実施形態66または67の方法。
【0077】
69.第1検出ゾーンおよび第2検出ゾーンと連通する入口を備えた微小流体ネットワークを、少なくとも部分的に画定する基板と、
微小流体ネットワーク内に置かれたコバルト塩と、
微小流体ネットワーク内に置かれたニッケル塩と、
第1検出ゾーンと電気化学的に結合する第1電極と、
第2検出ゾーンと電気化学的に結合する第2電極と、
を備えたデバイスであって、
このデバイスは、入口に導入された血液由来サンプル物質を収容し、サンプル物質を第1および第2血液サンプル部分に区別し、第1サンプル物質部分の少なくとも一部と、コバルト塩の少なくとも一部とを含む第1混合物を生成し、第2サンプル物質部分の少なくとも一部と、コバルト塩の少なくとも一部と、ニッケル塩の少なくとも一部とを含む第2混合物とを生成するように構成されている。
【0078】
70.第1および第2電極は、それぞれ、第1および第2混合物内に存在するコバルトを決定することができるように構成されている、実施形態69のデバイス。
【0079】
71.第1および第2検出ゾーンのそれぞれの最大容積は、25μlである、実施形態69または70のデバイス。
【0080】
72.デバイスは、第1混合物内で500μMの最小コバルト濃度を生成するように構成されている、実施形態69から71のいずれかのデバイス。
【0081】
73.デバイスは、第1混合物内で10mMの最大コバルト濃度を生成するように構成されている、実施形態69から72のいずれかのデバイス。
【0082】
74.デバイスは、第1混合物内で1mMの最大ニッケル濃度を生成するように構成されている、実施形態69から73のいずれかのデバイス。
【0083】
75.デバイスは、第2混合物内で4mMの最小ニッケル濃度を生成するように構成されている、実施形態69から74のいずれかのデバイス。
【0084】
76.デバイスは、第2混合物内で25mMの最大ニッケル濃度を生成するように構成されている、実施形態69から75のいずれかのデバイス。
【0085】
77.デバイスは、第2混合物内で500μMの最小コバルト濃度を生成するように構成されている、実施形態69から76のいずれかのデバイス。
【0086】
78.デバイスは、第2混合物内で10mMの最大コバルト濃度を生成するように構成されている、実施形態69から77のいずれかのデバイス。
【0087】
79.使用前に、コバルト塩は、微小流体デバイス内に乾燥状態で置かれ、ニッケル塩は、微小流体デバイス内に乾燥状態で置かれている、実施形態69から78のいずれかのデバイス。
【0088】
80.乾燥コバルト試薬の少なくとも一部は、第1および第2検出ゾーンのそれぞれに置かれている、実施形態79のデバイス。
【0089】
81.第1検出ゾーンと連通する入口を備えた微小流体ネットワークを、少なくとも部分的に画定する基板と、
第2検出ゾーンと連通する入口を備えた微小流体ネットワークを、少なくとも部分的に画定する基板と、
第1検出ゾーンを備えた微小流体ネットワークと連通して置かれた乾燥コバルト塩と、
第2検出ゾーンを備えた微小流体ネットワークと連通する乾燥コバルト塩と、
第2検出ゾーンを備えた微小流体ネットワーク内に置かれた乾燥ニッケル塩と、
第1検出ゾーンと電気化学的に結合する第1電極と、
第2検出ゾーンと電気化学的に結合する第2電極と、
を備えた電気化学デバイスであって、
このデバイスは、第1検出ゾーンと連通する入口に導入された血液由来サンプル物質を収容し、血液由来サンプル物質の少なくとも一部と、第1検出ゾーンを備える微小流体ネットワークのコバルト塩の少なくとも一部とを含む第1混合物を生成し、血液由来サンプル物質の少なくとも一部と、第2検出ゾーンを備える微小流体ネットワークのコバルト塩の少なくとも一部と、ニッケル塩の少なくとも一部とを含む第2混合物を生成するように構成されている。
【0090】
82.第1検出ゾーンと連通する入口を備えた微小流体ネットワークを少なくとも部分的に画定する基板と、第2検出ゾーンと連通する入口を備えた微小流体ネットワークを少なくとも部分的に画定する基板とは、同一の基板である、実施形態81の電気化学デバイス。
【0091】
83.第1検出ゾーンを備えた微小流体ネットワークの入口と、第2検出ゾーンを備えた微小流体ネットワークの入口とは、同一の入口である、実施形態81または82の電気化学デバイス。
【0092】
84.第1検出ゾーンと連通する入口を備えた微小流体ネットワークを、少なくとも部分的に画定する基板と、
第2検出ゾーンと連通する入口を備えた微小流体ネットワークを、少なくとも部分的に画定する基板と、
第1検出ゾーンを備えた微小流体ネットワーク内に置かれた第1試薬であって、第1試薬はアルブミンとの複合体を生成できる、第1試薬と、
第2検出ゾーンを備えた微小流体ネットワーク内に置かれた第1試薬と、
第2検出ゾーンを備えた微小流体ネットワーク内に置かれた第2試薬であって、第2試薬は、第1試薬と競合してアルブミンとの複合体を生成できる、第2試薬と、
第1検出ゾーンと電気化学的に結合する第1電極と、
第2検出ゾーンと電気化学的に結合する第2電極と、
を備えた電気化学デバイスであって、
このデバイスは、第1検出ゾーンと連通する入口に導入された血液由来サンプル物質を収容し、血液由来サンプル物質の少なくとも一部と、第1検出ゾーンを備える微小流体ネットワークの第1試薬の少なくとも一部とを含む第1混合物を生成し、血液由来サンプル物質の少なくとも一部と、第2検出ゾーンを備える微小流体ネットワークの第1試薬の少なくとも一部と、第2試薬の少なくとも一部とを含む第2混合物を生成するように構成されている、電気化学デバイス。
【0093】
85.入口と、接合部と連通する第1検出ゾーンと、接合部と連通する第2検出ゾーンとを備えた微小流体ネットワークを少なくとも部分的に画定する基板と、
微小流体ネットワーク内に乾燥状態で置かれ第1試薬であって、第1試薬は、血液由来サンプル物質によって移動されると、アルブミンを含む複合体を生成できる、第1試薬と、
微小流体ネットワーク内に乾燥状態で置かれた第2試薬であって、第2試薬は、血液由来サンプル物質によって移動されると、第1試薬と競合してアルブミンを含む複合体を生成できる、第2試薬と、
第1検出ゾーンと電気化学的に結合する第1電極と、
第2検出ゾーンと電気化学的に結合する第2電極と、
を備えたデバイスであって、
このデバイスは、入口に導入された血液由来サンプル物質を収容し、血液サンプルを接合部において第1および第2血液由来サンプル物質部分に区別し、第1血液由来サンプル物質部分の少なくとも一部と、第1試薬の少なくとも一部とを含む第1混合物を生成し、第2血液由来サンプル物質部分の少なくとも一部と、第1試薬の少なくとも一部と、第2試薬の少なくとも一部とを含む第2混合物を生成するように構成されている、デバイス。
【0094】
86.微小流体デバイス内に哺乳類の血液由来サンプル物質を収容するステップと、
血液由来サンプル物質の少なくとも一部を微小流体デバイスの検出ゾーンへ導入するステップであって、検出ゾーンはある一定量の乾燥コバルト塩と電極とを備えている、ステップと、
血液由来サンプル物質の第1表面と、検出ゾーン内に存在する実質的に全ての乾燥コバルト塩とを接触させるステップと、
血液由来サンプル物質の第2表面と電極とを接触させるステップであって、第2表面は第1表面と対向している、ステップと、
血液由来サンプル物質とコバルト塩とを混合して混合物を生成するステップと、
混合物中に存在するアルブミンと複合しないコバルトの量を決定するように電極を作動させるステップと、
を備える、方法。
【0095】
87.実質的に全ての乾燥コバルト塩は、検出ゾーン内に存在する乾燥コバルト塩の少なくとも70重量%である、実施形態86の方法。
【0096】
88.実質的に全ての乾燥コバルト塩は、第1主要表面上に配置され、導入するステップは、微小流体デバイスのチャネルから検出ゾーンに血液由来サンプル物質を導入する工程を備え、血液由来サンプル物質の第1表面と接触させるステップは、第1主要表面上に置かれた乾燥コバルトを可溶化する工程を備える、実施形態86または87の方法。
【0097】
89.作動ステップは、第1表面の下に配置された電極により実行される、実施形態86から88のいずれかの方法。
【0098】
90.微小流体デバイス内に哺乳類の血液由来サンプル物質を収容するステップと、
血液由来サンプル物質の少なくとも一部を微小流体デバイスの検出ゾーンに導入するステップであって、検出ゾーンは、ある一定量の試薬と電極とを備え、試薬は、血液由来サンプル物質中に存在するアルブミンとの複合体を生成できる、ステップと、
血液由来サンプル物質の第1表面と、検出ゾーン内に存在する実質的に全ての試薬を接触させるステップと、
血液由来サンプル物質の第2表面と電極とを接触させるステップであって、第2表面は第1表面と対向している、ステップと、
血液由来サンプル物質と試薬とを混合して混合物を生成するステップと、
混合物中に存在するアルブミンと複合しない試薬の量を決定するように電極を作動させるステップと、を備える方法。
【0099】
91.入口と、入口と連通する検出ゾーンとを備えた微小流体ネットワークを少なくとも部分的に画定する基板であって、検出ゾーンは第1および第2の対向する主要表面を有する、基板と、
検出ゾーン内に乾燥状態で置かれたコバルト塩と、
検出ゾーンの第1主要表面上に置かれた電極と、
を備えるデバイスであって、
使用前は、コバルト塩は、検出ゾーンの第1主要表面上には実質的に全く置かれておらず、
使用中、デバイスは、入口に導入された血液由来サンプル物質を収容し、検出ゾーンにおいて、血液由来サンプル物質の少なくとも一部と、コバルトの少なくとも一部とを含む混合物を生成するように構成されている、デバイス。
【0100】
92.電極とつながれたプロセッサをさらに備え、使用中は、プロセッサは電極を作動させて、検出ゾーン内に生成された混合物中に存在するアルブミンと複合しないコバルトの量を決定するように構成されている、実施形態91のデバイス。
【0101】
93.入口と、入口と連通する検出ゾーンとを備えた微小流体ネットワークを少なくとも部分的に画定する基板であって、検出ゾーンは、第1および第2の対向する主要表面を有した、基板と、
検出ゾーン内に乾燥状態で置かれた試薬であって、試薬は、哺乳類から得られた血液由来サンプル物質によって移動されると、アルブミンを含む複合体を生成できる、試薬と、
検出ゾーンの第1主要表面上に置かれた電極と、
を備えるデバイスであって、
使用前は、試薬は、検出ゾーンの第1主要表面上には実質的に全く置かれておらず、
使用中、デバイスは、入口に導入された血液由来サンプル物質を収容し、検出ゾーンにおいて、血液由来サンプル物質の少なくとも一部と、試薬の少なくとも一部とを含む混合物を生成するように構成されている、デバイス。
【0102】
94.使用前は、検出ゾーン内に存在する試薬の全質量のうち25%未満が、検出ゾーンの第1主要表面上に置かれている、実施形態93のデバイス。
【0103】
95.使用前は、検出ゾーン内に存在する試薬の全質量のうち10%未満が、検出ゾーンの第1主要表面上に置かれている、実施形態93または94のデバイス。
【0104】
96.電極と結合したプロセッサをさらに備え、使用中、プロセッサは電極を作動させて、検出ゾーン内で生成された混合物中に存在するコバルトと複合しない試薬の量を決定するように構成されている、実施形態93から95のいずれかのデバイス。
【0105】
97.哺乳類はヒトであり、プロセッサは、混合物中に存在する非複合体試薬の量に少なくとも部分的に基づいて、ヒトの虚血状態の存在を決定するように構成されている、実施形態93から96のいずれかのデバイス。
【0106】
98.試薬はコバルト塩であり、血液由来サンプル物質によって移動されると、コバルト塩のコバルトはアルブミンを含む複合体を生成できる、実施形態93から97のいずれかのデバイス。
【0107】
99.検出ゾーンは第1検出ゾーンであり、試薬は第1試薬であり、電極は第1電極であり、デバイスは、入口と連通する第2検出ゾーンであって、第2検出ゾーンは第1および第2の対向する主要表面を有する、第2検出ゾーンと、
第2検出ゾーン内に乾燥状態で置かれたある一定量の第1試薬と、
第2検出ゾーン内に乾燥状態で置かれた第2試薬であって、第2試薬は、哺乳類から得られた血液由来サンプルによって移動されると、第1試薬と競合してアルブミンと第2試薬を含むが第1試薬を含まない複合体を生成できる、第2試薬と、
第2検出ゾーンの第1主要表面上に置かれた第2電極と、
をさらに備え、
使用前は、第1および第2試薬は、第2検出ゾーンの第1主要表面上には実質的に全く置かれておらず、
使用中、デバイスは、入口に導入された血液由来サンプルを受け容れ、第2検出ゾーンにおいて、血液サンプルの少なくとも一部と第1および第2試薬の少なくとも一部とを含む第2混合物を生成するように構成されている、実施形態93から98のいずれかのデバイス。
【0108】
100.第1および第2電極とつながれたプロセッサをさらに備え、使用中、プロセッサは第1および第2電極を作動させて、第1および第2検出ゾーン内に生成された各混合物中に存在するある一定量の非複合体第1試薬を決定するように構成されている、実施形態99のデバイス。
【0109】
101.哺乳類はヒトであり、プロセッサは、第1および第2混合物中に存在する非複合体第1試薬の量に少なくとも部分的に基づいて、ヒトの虚血状態の存在を決定するように構成されている、実施形態99または100のデバイス。
【0110】
102.第1試薬はコバルト塩であり、血液由来サンプルによって移動されると、コバルト塩のコバルトはアルブミンを含む複合体を生成でき、第2試薬はニッケル塩であり、血液由来サンプルによって移動されると、ニッケル塩のニッケルはコバルトと競合してアルブミンとニッケルを含むがコバルトを含まない複合体を生成できる、実施形態99から101のいずれかのデバイス。
【0111】
103.検出ゾーンは、微小流体デバイス内に、血液由来サンプル物質を機械的に移動できる部材を備える、実施形態99から102のいずれかのデバイス。
【0112】
104.上記部材は、磁気的な影響を受ける部材であり、デバイスは、検出ゾーンにおいて、部材を移動できる、磁気的な影響を受ける磁界発生源をさらに備える、実施形態103の方法。
【0113】
105.微小流体デバイス内に哺乳類の血液由来サンプル物質を受け容れるステップと、
微小流体デバイス内で、血液由来サンプル物質の第1部分と乾燥コバルト塩とを混合して第1混合物を生成するステップと、
微小流体デバイス内で、血液由来サンプル物質の第2部分と乾燥コバルト塩および乾燥ニッケル塩とを混合して、第2混合物を生成するステップと、
デバイスの第1検出ゾーン内に置かれた第1混合物を用いて、第1混合物中に存在するコバルトの量を示す値を決定するステップと、
デバイスの第2検出ゾーン内に置かれた第2混合物を用いて、第2混合物中に存在するコバルトの量を表す値を決定するステップと、
を備えた方法であって、
混合するステップはそれぞれ、微小流体デバイスの異なった間隔を空けた位置に置かれた、磁気的な影響を受ける部材をそれぞれ磁気的に移動する工程を備える、方法。
【0114】
106.微小流体デバイス内に哺乳類の血液由来サンプル物質を収容するステップと、
第1混合物を生成するために微小流体デバイス内で血液由来サンプル物質の第1部分と第1試薬とを混合するステップであって、第1試薬はアルブミンとの複合体を生成できる、ステップと、
第2混合物を生成するために微小流体デバイス内に収容した血液由来サンプル物質の第2部分を、ある一定量の第1試薬および第2試薬と混合するステップであって、第2試薬は第1試薬と競合して、第1試薬を含まないアルブミンとの複合体を生成できる、ステップと、
デバイスの第1検出ゾーン内に置かれた第1混合物を用いて、第1混合物中に存在する第1試薬の量を表す値を決定するステップと、
デバイスの第2検出ゾーン内に置かれた第2混合物を用いて、第2混合物中に存在する第1試薬の量を表す値を決定するステップと、
を備えた方法であって、
混合するステップはそれぞれ、微小流体デバイスの異なった間隔を空けた位置に置かれた、磁気的な影響を受ける部材をそれぞれ磁気的に移動する工程を備える、方法。
【0115】
107.入口と、接合部と連通する第1検出ゾーンと、接合部と連通する第2検出ゾーンと、を備えた微小流体ネットワークを少なくとも部分的に画定する基板と、
第1検出ゾーン内に乾燥状態で置かれた第1試薬と、
第1検出ゾーン内に置かれた第1の磁気的な影響を受ける部材と、
第2検出ゾーン内に乾燥状態で置かれた、ある一定量の第1試薬と、
第2検出ゾーン内に置かれた第2の磁気的な影響を受ける部材と、
第1検出ゾーンと電気化学的に結合する第1電極と、
第2検出ゾーンと電気化学的に結合する第2電極と、
第1および第2の磁気的に影響を受ける部材を磁気的に操作するように構成された磁場システムと、
磁場システムを作動させるように構成されたプロセッサと、
を備えたデバイスであって、
このデバイスは、入口に導入された血液由来サンプルを収容し、接合部における血液サンプルを第1および第2血液由来サンプル物質部分に区別し、第1血液由来サンプル物質部分の少なくとも一部を第1検出ゾーンに収容し、第2血液由来サンプル物質部分の少なくとも一部を第2検出ゾーンに収容し、第1および第2検出ゾーンにおいて、第1および各部材に血液を移動するように磁場システムを作動させ、第1および第2混合物をそれぞれ生成するように構成され、プロセッサは第1および第2電極を作動させて、第1および第2混合物中に存在する第1試薬の量を表す各値を決定するように構成された、デバイス。
【0116】
108.入口と連通する検出ゾーンを備えた第1分岐と、入口と連通する第2検出ゾーンを備えた第2分岐とを備える微小流体ネットワークを、少なくとも部分的に画定する基板と、
第1分岐内に置かれた乾燥コバルト塩と、
第1検出ゾーン内に置かれた第1の磁気的に影響を受ける部材と、
第2分岐内に置かれた乾燥コバルト塩と、
第2分岐内に置かれた乾燥ニッケル塩と、
第2検出ゾーン内に置かれた第2の磁気的に影響を受ける部材と、
第1検出ゾーンと電気化学的に連通する第1電極と、
第2検出ゾーンと電気化学的に連通する第2電極と、
第1および第2の磁気的に影響を受ける部材を磁気的に操作するように構成された磁場システムと、
磁場システムを作動させるように構成されたプロセッサと、
を備えたデバイスであって、
第1および第2検出ゾーン内に各血液由来サンプルを収容すると、プロセッサは磁場システムを起動して、第1および各部材が、血液由来サンプルを第1および第2検出ゾーン内に移動させて、第1および第2混合物をそれぞれ生成するようにし、第1混合物は可溶化コバルトを含み、第2混合物は可溶化コバルトと可溶化ニッケルとを含み、プロセッサは第1および第2電極を作動させて、第1および第2混合物中に存在するコバルトの量を表す各値を決定するよう構成されている、デバイス。
【0117】
109.第1および第2混合物中に存在するコバルトの量を表す値は、混合物中のアルブミンと複合しないコバルトの各量を示している、実施形態108のデバイス。
【0118】
110.第1および第2分岐はそれぞれ、共通の接合部と連通し、接合部は共通の入口と連通している、実施形態108または109のデバイス。
【0119】
111.コバルトと第1サンプルとを含む第1混合物を生成するステップであって、第1サンプルは、哺乳類の血液由来サンプル物質から得られる、ステップと、
第1混合物中に存在するアルブミンと複合されたコバルトの量を示す第1値を決定するステップと、
コバルトと第2サンプルとを含む第2混合物を生成するステップであって、第2サンプルは、哺乳類の血液由来サンプル物質から得られ、第2混合物の第2サンプルの質量に対するコバルトの質量の比は、第1混合物の第1サンプルの質量に対するコバルトの質量の比よりも少なくとも50%高い、ステップと、
第2混合物中に存在するアルブミンと複合しないコバルトの量を表す第2値を決定するステップと、
少なくとも第1および第2値に基づいて、第1混合物中に存在するアルブミンの量を表す値を決定するステップと、
を備える方法。
【0120】
112.第2混合物の第2サンプルの質量に対するコバルトの質量の比は、第1混合物の第1サンプルの質量に対するコバルトの質量の比よりも少なくとも75%高い、実施形態111の方法。
【0121】
113.第2混合物の第2サンプルの質量に対するコバルトの質量の比は、第1混合物の第1サンプルの質量に対するコバルトの質量の比の約2倍である、実施形態111または112の方法。
【0122】
114.接合部と連通する入口と、接合部と連通する第1検出ゾーンと、接合部と連通する第2検出ゾーンとを備えた微小流体ネットワークを少なくとも部分的に画定する基板と、
微小流体ネットワーク内に置かれた乾燥コバルト塩と、
第1検出ゾーンと電気化学的に結合する第1電極と、
第2検出ゾーンと電気化学的に結合する第2電極と、
を備えたデバイスであって、
このデバイスは、入口に導入された血液由来サンプルを収容し、接合部において血液サンプルを第1および第2血液由来サンプル物質部分に区別し、第1血液由来サンプル物質部分の少なくとも一部と、コバルト塩の少なくとも一部とを含む第1混合物を生成し、第2血液由来サンプル物質部分の少なくとも一部を含む第2混合物を生成するように構成され、
第2混合物の第2サンプルの質量に対するコバルトの質量の比は、第1混合物の第1サンプルの質量に対するコバルトの質量の比よりも少なくとも50%高い、デバイス。
【0123】
115.第1および第2電極とつながれたプロセッサをさらに備え、使用中は、プロセッサは第1および第2電極のそれぞれを作動させて、第1混合物および第2混合物中に存在するアルブミンと複合しないコバルトの量を決定するよう構成されている、実施形態114のデバイス。
【0124】
116.第1試薬と、哺乳類の血液から得られた第1血液由来サンプル物質とを含む第1混合物を生成するステップであって、第1試薬は、血液由来サンプル物質中に存在するアルブミンとの複合体を生成できる、ステップと、
第1混合物中に存在するアルブミンと複合しない第1試薬の量を表す第1値を決定するステップと、
第1試薬と、哺乳類の血液から得られた第2血液由来サンプル物質とを含む第2混合物を生成するステップであって、第2混合物の第2サンプルの質量に対する第1試薬の質量の比は、第1混合物の第1サンプルの質量に対する第1試薬の質量の比よりも少なくとも50%高い、ステップと、
第2混合物中に存在するアルブミンと複合しない第1試薬の量を表す第2値を決定するステップと、
少なくとも第1および第2値に基づいて、第1混合物中に存在するアルブミンの量を示す値を決定するステップと、
を備える方法。
【0125】
117.接合部と連通する入口と、接合部と連通する第1検出ゾーンと、接合部と連通する第2検出ゾーンとを備えた微小流体ネットワークを、少なくとも部分的に画定する基板であって、第1試薬は、血液由来サンプル物質中に存在するアルブミンとの複合体を生成できる、基板と、
微小流体ネットワーク内に置かれた第1試薬と、
第1検出ゾーンと電気化学的に結合する第1電極と、
第2検出ゾーンと電気化学的に結合する第2電極と、
を備えたデバイスであって、
このデバイスは、入口に導入された血液由来サンプル物質を収容し、接合部において血液サンプル物質を第1および第2血液サンプル部分に区別し、第1血液由来サンプル物質部分の少なくとも一部と第1試薬の少なくとも一部とを含む第1混合物を生成し、第2血液由来サンプル物質部分の少なくとも一部と第1試薬の少なくとも一部とを含む第2混合物を生成するように構成され、
第2混合物の第2サンプルの質量に対する第1試薬の質量の比は、第1混合物の第1サンプルの質量に対する第1試薬の質量の比よりも少なくとも50%高い、デバイス。
【0126】
118.第1検出ゾーンと連通する入口を備えた微小流体ネットワークを、少なくとも部分的に画定する基板と、
第2検出ゾーンと連通する入口を備えた微小流体ネットワークを、少なくとも部分的に画定する基板と、
第1検出ゾーンを備える微小流体ネットワーク内に置かれた乾燥コバルト塩と、
第2検出ゾーンを備える微小流体ネットワーク内に置かれた乾燥コバルト塩と、
第1検出ゾーンと電気化学的に結合する第1電極と、
第2検出ゾーンと電気化学的に結合する第2電極と、
を備えた電気化学デバイスであって、
このデバイスは、第1検出ゾーンと連通する入口に導入された血液由来サンプルを収容し、血液由来サンプル物質の少なくとも一部と、第1検出ゾーンを備える微小流体ネットワークのコバルトの少なくとも一部とを含む第1混合物を生成し、血液由来サンプル物質の少なくとも一部と、第2検出ゾーンを含む微小流体ネットワークのコバルトの少なくとも一部とを含む第2混合物を生成するように構成され、
第2混合物の第2サンプルの質量に対するコバルトの質量の比は、第1混合物の第1サンプルの質量に対するコバルトの質量の比よりも少なくとも50%高い、電気化学デバイス。
【0127】
119.第1検出ゾーンと連通する入口を備えた微小流体ネットワークを、少なくとも部分的に画定する基板と、
第2検出ゾーンと連通する入口を備えた微小流体ネットワークを、少なくとも部分的に画定する基板と、
第1検出ゾーンを備える微小流体ネットワーク内に置かれた第1試薬であって、第1試薬は、アルブミンとの複合体を生成できる、第1試薬と、
第2検出ゾーンを備える微小流体ネットワーク内に置かれた第1試薬と、
第1検出ゾーンと電気化学的に結合する第1電極と、
第2検出ゾーンと電気化学的に結合する第2電極と、
を備えた電気化学デバイスであって、
このデバイスは、第1検出ゾーンと連通する入口に導入された血液由来サンプルを収容し、血液由来サンプル物質の少なくとも一部と、第1検出ゾーンを備える微小流体ネットワークの第1試薬の少なくとも一部とを含む第1混合物を生成し、血液由来サンプル物質の少なくとも一部と、第2検出ゾーンを含む微小流体ネットワークの第1試薬の少なくとも一部とを含む第2混合物を生成するように構成され、
第2混合物の第2サンプルの質量に対する第1試薬の質量の比は、第1混合物の第1サンプルの質量に対する第1試薬の質量の比よりも少なくとも50%高い、電気化学デバイス。
【0128】
120.第1コバルト試薬と哺乳類の血液由来サンプル物質との第1混合物を生成する手段と、
第1コバルト試薬と第2試薬と哺乳類の血液由来サンプル物質との第1混合物を生成する手段と、
第1混合物中の遊離コバルトの量を決定する手段と、
第2混合物中の遊離コバルトの量を決定する手段と、
少なくとも第1および第2混合物中の遊離コバルトの量に基づいて、哺乳類の虚血の存在を決定する手段と、
を備えるデバイス。
【0129】
121.第1試薬を含む第1混合物と分析物を含む第1サンプル物質とを生成するステップであって、第1試薬の第1部分と分析物とが複合体を生成する、ステップと、
第1混合物中の第1試薬の第2部分を決定するステップであって、第1試薬の第2部分は分析物と複合しない、ステップと、
第1試薬を含む第2混合物と、分析物を含む第2サンプル物質と、第2試薬とを生成するステップであって、第2試薬と分析物とが相互作用することにより、第1試薬と分析物の間で複合体を生成することを防ぐおよび/または低減するようにする、ステップと、
第2混合物中の第1試薬の第3部分を決定するステップであって、第1試薬の第3部分は分析物とは複合しない、ステップと、
を備える方法。
【0130】
122.第1試薬の第2部分の検出結果と第1試薬の第3部分の検出結果とに基づいて、第1および第2サンプル物質のうちの少なくとも一方中の分析物を決定するステップをさらに備える、実施形態121の方法。
【0131】
123.決定するステップは、電極を含む微小流体検査デバイス内で電気化学的に実行され、分析物を決定するステップは、微小流体デバイスを作動させるように構成された検査デバイスリーダ内の電子回路を用いて実行される、実施形態122の方法。
【0132】
124.分析物を決定するステップは、第1試薬の第2部分の検出結果と第1試薬の第3部分の検出結果との間の差を決定する工程を備える、実施形態122の方法。
【0133】
125.第2混合物を生成するステップは、第1混合物の少なくとも一部と第2試薬とを結合する工程を備える、実施形態121の方法。
【0134】
126.第1試薬の第2部分を決定するステップと、第1試薬の第3部分を決定するステップとは、第2および第3部分を電気化学的に決定する工程を備える、実施形態121の方法。
【0135】
127.第1混合物を生成するステップは、第1サンプル物質を、乾燥形にある第1試薬と接触させる工程を備える、実施形態126の方法。
【0136】
128.第1試薬は、第1サンプル物質と接触するとき、微小流体デバイスのマイクロチャネルの表面に沿って乾燥形である、実施形態127の方法。
【0137】
129.第1試薬は金属または金属の塩を含む、実施形態121の方法。
【0138】
130.第1試薬はコバルト塩を含む、実施形態129の方法。
【0139】
131.分析物は蛋白質を含む、実施形態129の方法。
【0140】
132.分析物はアルブミンである、実施形態129の方法。
【0141】
133.第2試薬は金属または金属の塩を含み、第2試薬は第1試薬とは異なる、実施形態12の方法。
【0142】
134.第2試薬はニッケル塩を含む、実施形態13の方法。
【0143】
135.第1サンプル物質と第2サンプル物質はそれぞれ哺乳類から得られる、実施形態13の方法。
【0144】
136.第1および第2サンプル物質はそれぞれ血液由来サンプル物質を含む、実施形態15の方法。
【0145】
137.第1試薬の第2部分の検出結果と第1試薬の第3部分の検出結果とに基づいて、第1および第2サンプル物質の少なくとも一方中の分析物を決定するステップをさらに含む、実施形態16の方法。
【0146】
138.分析物の決定結果に基づいて、哺乳類が虚血イベントを発現しているかどうかを決定するステップをさらに含む、実施形態17の方法。
【0147】
139.第1試薬の第2部分を決定するステップと第1試薬の第3部分を決定するステップとは、第2および第3部分を電気化学的に決定する工程を含む、実施形態18の方法。
【0148】
140.電気化学的に決定するステップは、少なくとも1つの共通電極を用いて、第2および第3部分を電気化学的に決定する工程を備える、実施形態19の方法。
【0149】
141.第1試薬と分析物を含む第1サンプル物質とを含む第1混合物を生成するステップであって、第1試薬の第1部分と分析物とが相互作用して、第1試薬を変性させる、ステップと、
分析物と相互作用した第1試薬の第1部分に影響を受けない方法を用いて、第1混合物中の第1試薬の第2部分を決定するステップと、
第1試薬と、分析物を含む第2サンプル物質と、第2試薬とを含む第2混合物を生成するステップであって、第2試薬と分析物とは相互作用して、第1試薬と分析物との間の相互作用を防ぐおよび/または低減する、ステップと、
分析物と相互作用した第1試薬の第1部分に影響を受けない方法を用いて、第2混合物中の第1試薬の第3部分を決定するステップと、
を含む方法。
【0150】
142.第1試薬の第2部分の検出結果と第1試薬の第3部分の検出結果とに基づいて、第1および第2サンプル物質の少なくとも一方中の分析物を決定するステップをさらに含む、実施形態21の方法。
【0151】
143.サンプル物質は哺乳類の血液であり、方法は、分析物の決定結果に基づいて、哺乳類が虚血イベントを発現しているかどうかを決定するステップをさらに備える、実施形態22の方法。
【0152】
144.分析物との相互作用による第1試薬の変性は、第1試薬と分析物との間で複合体を生成することである、実施形態21の方法。
【0153】
145.決定するステップは、電極を含む微小流体検査デバイス内で電気化学的に実行され、分析物を決定するステップは、微小流体デバイスを作動するように構成された検査デバイスリーダ内の電子回路を用いて実行される、実施形態22の方法。
【0154】
146.第1試薬は金属または金属の塩を含む、実施形態21の方法。
【0155】
147.第1試薬はコバルト塩を含む、実施形態26の方法。
【0156】
148.分析物は蛋白質を含む、実施形態26の方法。
【0157】
149.第2試薬は金属または金属の塩を含み、第2試薬は第1試薬とは異なる、実施形態26の方法。
【0158】
150.第2試薬はニッケル塩を含む、実施形態29の方法。
【0159】
151.第1試薬の第2部分を決定するステップと、第1試薬の第3部分を決定するステップとは、第2および第3部分を電気化学的に決定する工程を含む、実施形態21の方法。
【0160】
152.サンプル物質と分析物を含む第1試薬とを混合して第1混合物を生成するように構成された第1サンプル調製ゾーンであって、第1試薬と分析物とは複合体を生成できる、第1サンプル調製ゾーンと、
第1混合物の第1試薬の第1部分を決定するように構成された第1検出器であって、第1試薬の第1部分は分析物とは複合しない、第1検出器と、
分析物を含むサンプル物質と第1試薬および第2試薬とを混合して第2混合物を生成するように構成された第2サンプル調製ゾーンであって、第2試薬と分析物とは相互作用して、第1試薬と分析物との間の複合体の生成を防止および/または低減することができる、第2サンプル調製ゾーンと、
第2混合物中の第1試薬の第2部分を決定するように構成された第2検出器であって、第1試薬の第2部分は分析物と複合しない、第2検出器と、
第1および第2検出器から信号を受け取り、その信号に基づいて、第1および第2混合物のうちの少なくとも一方中の分析物を決定するように構成されたプロセッサと、
を含む、デバイス。
【0161】
153.第1サンプル調製ゾーンはコバルト塩を備え、第1試薬はコバルトイオンである、実施形態32のデバイス。
【0162】
154.第2サンプル調製ゾーンはニッケル塩を備え、第2試薬はニッケルイオンである、実施形態32のデバイス。
【0163】
155.プロセッサはさらに、サンプル物質が哺乳類からの血液由来物質を含む場合、分析物の決定に基づいて、その哺乳類が虚血イベントを発現しているかどうかを決定するように構成されている、実施形態32のデバイス。
【0164】
156.サンプル物質中の分析物を測定する方法であって、
検出可能な特性を有し、上記分析物を含む化学物質部分を生成できる試薬を提供するステップであって、化学物質部分は、試薬の上記検出可能な特性変化を示す、ステップと、
試薬の少なくとも一部と上記分析物からの上記化学物質部分の生成に寄与する条件下で、上記試薬と、その中の上記分析物が検査されるサンプル物質とを含む第1混合物を生成するステップと、
上記第1混合物中の、変化していない試薬の存在を検出するステップと、
試薬の少なくとも一部と上記分析物からの上記化学部分の生成に寄与する条件下で、上記試薬と、その中の上記分析物が検査されるサンプル物質と、別の試薬とを含む第2混合物を生成するステップであって、別の試薬と分析物とは合わさって別の化学種を生成することが好ましく、それによって、化学物質部分の生成を抑制する、ステップと、
上記第2混合物中の変化していない試薬の存在を検出するステップと、
検出結果からサンプル中の分析物の存在を決定するステップと、
を含む方法。
【0165】
157.検出ステップからのデータを、病状と対応する所定の基準値と関連付けるステップをさらに含む、実施形態36の方法。
【0166】
158.各容器が、検出可能な特性を有し、生理液のサンプルの成分と相互作用して試薬と化学部分を生成し、それによって試薬の検出可能な特性が変性されることが可能な試薬を収容する、複数の容器を含む、臨床検査室用のキットであって、
上記キットは、サンプル堆積ゾーンと、少なくとも1つの試薬処理ゾーンと、少なくとも1つの試薬とサンプルを上記処理ゾーンに導入する手段とを提供するように構成されたデバイスをさらに含み、
上記デバイスは、検出器に対して位置合わせし、それによって試薬(複数可)の検出可能な特性を検出できるように適応されている、キット。
【0167】
159.血液由来サンプル物質は、全血、血漿、血清、またはそれらの組み合せを含む、先の実施形態のいずれかの方法。
【0168】
160.血液由来サンプル物質は実質的に、全血、血漿、血清、またはそれらの組み合せからなる、先の実施形態のいずれかの方法。
【0169】
161.血液由来サンプル物質は、全血、血漿、血清、またはそれらの組み合せを含む、先の実施形態のいずれかのデバイス。
【0170】
162.血液由来サンプル物質は実質的に、全血、血漿、血清、またはそれらの組み合せからなる、先の実施形態のいずれかのデバイス。
【0171】
163.血液由来サンプル全血である、先の実施形態のいずれか。
【0172】
164.血液由来サンプルは血清である、先の実施形態のいずれか。
【0173】
165.哺乳類はヒトである、先の実施形態のいずれか。
【0174】
166.第1金属の塩と、塩化物補償試薬、懸濁促進試薬、可塑化試薬、分散試薬、緩衝試薬、消泡試薬、またはそれらの組み合せのうちの少なくとも1つとを含む試薬材料であって、金属は第1金属に対して親和力を有する、試薬材料。
【0175】
167.第1金属の塩と、第2金属の塩と、塩化物補償試薬、懸濁促進試薬、可塑化試薬、分散試薬、緩衝試薬、消泡試薬、またはそれらの組み合せのうちの少なくとも1つとを含む試薬材料であって、第2金属は、第1金属よりもアルブミンに対して高い親和力を有する、試薬材料。
【0176】
168.第1金属は、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuおよびAgからなるグループから選択される、実施形態166または実施形態167の試薬材料。
【0177】
169.第1金属はCoである、実施形態168の試薬材料。
【0178】
170.第2金属はNiである、実施形態168または169の試薬材料。
【0179】
171.可塑化試薬はセルロース誘導体を含んでいる、実施形態166から170のいずれかの試薬材料。
【0180】
172. 試薬材料は乾燥状態である、実施形態166から171のいずれかの試薬材料。
【0181】
173.実施形態166から172のいずれかの試薬材料を含む先のデバイスのいずれか。
【0182】
174.実施形態166から172のいずれかの試薬材料を含む先のデバイスのいずれかであって、試薬材料は、第2金属と、実施形態166から172のいずれかの試薬材料とを含まず、試薬材料は第2金属を含む、デバイス。
【0183】
175.実施形態166から172のいずれかの第1の量の試薬材料を含む先のデバイスのいずれかであって、第1の量の試薬材料は、第1の量の第1金属と、実施形態166から172のいずれかの第2の量の試薬材料とを有し、第2の量の試薬材料は、第1金属の2番目に大きい量を有する、デバイス。
【0184】
176.試薬材料のうちの一方はデバイスの第1検出ゾーン内に置かれ、他方の試薬材料は、デバイスの第2の検出ゾーン内に置かれている、実施形態174または175のデバイス。
【0185】
177.試薬材料は、検出ゾーン内でスクリーン印刷層として配置されている、実施形態172のデバイス。
【0186】
178.デバイスの検出ゾーン内に置かれた攪拌バーを備える、先のデバイスのいずれか。
【0187】
179.検出ゾーンの容積は約20μl以下である、実施形態178のデバイス。
【0188】
180.検出ゾーンはさらに、試薬材料を含む、実施形態178または179のデバイス。
【0189】
181.攪拌バーは可溶性試薬によって固定される、実施形態180のデバイス。
【0190】
182.攪拌バーは、サンプル物質が検出ゾーンに入るチャネルの縦軸に対して非ゼロの角度で検出ゾーン内に固定される、実施形態178から181のいずれかのデバイス。
【0191】
183.可溶性試薬は、実施形態166または実施形態167の試薬材料である、実施形態181のデバイス。
【0192】
184.可溶性試薬は、例えば、セルロース誘導体など可塑化試薬を含む、実施形態183のデバイス。
【0193】
185.検出ゾーンは、実施形態166または実施形態167の試薬材料のいずれかを含む、実施形態178または179のデバイス。
【0194】
186.デバイスの検出ゾーンにサンプルを導入するステップであって、検出ゾーンは、少なくとも1つの電極と、電極に対向する表面と、サンプル物質と、試薬材料と、攪拌バーとを備えた、ステップと、
攪拌バーを時間変動磁場に曝すステップであって、磁場は、攪拌バーを移動させ、攪拌バーを反対側表面に押し付ける、ステップと、
を含む方法。
【0195】
187.検出ゾーンの容積は約10μl以下である、実施形態186の方法。
【0196】
188.先の実施形態のいずれかのデバイスを用いて実行される、実施形態186または187の方法。
【0197】
189.試薬材料は、実施形態166または実施形態167の試薬材料のいずれかである、実施形態186から188の方法。
【0198】
特に記載しない限り、「アルブミン」、「正常アルブミン」および「未変性アルブミン」の用語は同義であり、金属結合能力が低下した虚血変性アルブミン(IMA)を除外する。
【0199】
特に記載しない限り、金属に対する、または試薬材料の文脈における参照は、金属の塩に対する参照を含む。
【0200】
特に記載しない限り、試薬材料の文脈における、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuまたはAgの参照は、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuまたはAgの塩に対する参照を含む。
【0201】
特に記載しない限り、サンプル物質および試薬材料を含む混合物の文脈における金属に対する参照は、金属もしくは溶媒和物のイオン、または、金属もしくは金属のイオンの他の複合体に対する参照を含む。
【0202】
特に記載しない限り、サンプル物質および試薬材料を含む混合物の文脚における、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuまたはAgの参照は、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuまたはAgのイオンもしくは溶媒和物、またはV、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuまたはAgの他の複合体、またはV、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuまたはAgのイオンに対する参照を含む。
【0203】
他の特徴、目的および利点は、本明細書および図面から、ならびに特許請求項から明らかとなろう。
【詳細な説明】
【0204】
本発明者らは、サンプル物質中の1つまたは複数の分析物の存在を(例えば、定量的または定性的に)決定するための検査を開示する。例示的な検査は、虚血イベントを過去に発現した(または現在発現している)と疑われる哺乳類(例えばヒト)から得られたサンプル物質(例えば、全血、血漿、血清またはそれらの組み合せなどの血液由来サンプル物質)中のアルブミンの量に関連する結果を決定することを含む。その結果に基づいて、哺乳類の虚血イベントの発現または非発現が決定される。
【0205】
図1を参照すると、検査方法100は、第1混合物生成ステップ110と第1コバルト電気化学決定ステップ120と第2混合物生成ステップ130と第2コバルト決定ステップ140と検査結果決定ステップ150とを含む。第1混合物生成ステップ110では、第1混合物が生成される。第1混合物は、コバルトとヒトからのサンプル物質とを含む。第1コバルト決定ステップ120では、第1混合物中のコバルト−アルブミン複合体がないコバルトを決定する。第2混合物生成ステップ130では、第2混合物が生成される。第2混合物は、コバルトとニッケルと同じヒトからのサンプル物質とを含む。第2電気化学決定ステップ140では、第2混合物中のコバルト−アルブミン複合体がないコバルトを決定する。検査結果決定ステップ150では、第1および第2決定ステップ120、140の結果に基づいて検査結果が決定される。検査結果は、ヒトの血液中のアルブミンの量に関連している。検査方法100は、ステップ150の検査結果に基づいて、(例えば、検査結果を基準値と比較することによって)ヒトの虚血イベントの発生を決定することをさらに含むことができる。以下に述べるとおり、第2決定ステップ140の結果は、第1決定ステップ120だけの結果に基づいた検査結果と比較すると、マトリックス効果に対する、決定ステップ150の検査結果の影響の受けやすさを低減する制御結果として作用することができる。
【0206】
次に、本発明者らは、検査方法100をより詳細に説明する。種々のソース(例えば哺乳類)から得られた種々のタイプのサンプル物質が、本明細書に記載される方法において使用するのに適しているが、本発明者らは、サンプル物質として、ヒトからの全血を用いることに関する非限定的な方法における方法100を具体的に示す。
【0207】
第1混合物生成ステップ110では、第1混合物が、コバルトを含む試薬材料と、ヒトからの全血を含むサンプル物質とを混合することによって生成される。第1混合物では、試薬材料からのコバルトの第1部分とヒトの血液からのアルブミンが、コバルト−アルブミン複合体(例えば、コバルトの第1部分が、アルブミンによって封鎖(例えば結合)される)を生成する。試薬材料からのコバルトの第2部分は(例えば、アルブミンによって封鎖(例えば結合)されない)アルブミンを含まないままである。第1混合物では、コバルトの総量とアルブミンを含まないコバルトの量との間の差が、アルブミンの量に関連している(例えば、比例する)。例えば、コバルトを封鎖するにはより多くのアルブミンが有効であるため、アルブミンの量が増えるにつれて、その差は大きくなる。コバルトを封鎖するのにより少ないアルブミンが有効であるため、アルブミンの量が減るにつれて、その差は小さくなる。
【0208】
サンプル物質(例えば血)は、所望通りに、ヒトから得ることができる。例示的な一実施形態では、サンプル物質は、「指先穿刺」、「静脈を介した採血」または同様の方法によって得られた血液を含む。血液は、(例えば、全血として)直接用いることができる。血液由来物質(例えば、血清)は、赤血球を分離するために血液を処理した後に用いることができる。典型的には、サンプル物質は、アルブミンと競合してコバルトを結合するキレート化剤(例えば、EDTA)をほとんどまたは全く含んでいない。
【0209】
検査方法100で用いられる総血液容量は所望通りとすることができる。総血液容量は、第1および第2混合物生成ステップ110、130を実行するために用いられる血液容量の合計である。一般に、第1および第2混合物生成ステップ110、130を実行するために用いられる血液容量は、ほぼ同じ(例えば、同じ)である。
【0210】
典型的には、方法100で用いられる総血液容量は、少数(例えば、3回以下、2回以下、1回)の「指先穿刺」で得ることができる。例えば、いくつかの実施形態では、方法100で用いられる総血液容量は、単一の「指先穿刺」で得られる。いくつかの実施形態では、方法100で用いられる総血液容量は、約100μl以下(例えば、75μl以下、50μl以下、30μl以下)である。いくつかの実施形態では、方法100で用いられる総血液容量は、約5μl以上(例えば、約10μl以上、約15μl以上)である。例示的な一実施形態では、方法100で用いられる総血液容量は、約20μlである。
【0211】
試薬材料には、サンプル物質と混合すると、コバルトイオンを提供するコバルト試薬が含まれる。典型的には、コバルト試薬は、固体物(例えば、コバルト塩の形のコバルト(例えば、塩化コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト、硝酸コバルトまたはこれらの組み合わせ))を含む。例示的な一実施形態では、試薬は、乾燥コバルト塩(例えば、塩化コバルト)を含む。サンプル物質(例えば、全血)は、乾燥コバルト塩と混合し、可溶化して、第1混合物を生成する。試薬材料は、ポリビニルアルコール(PVA)などの物質を含んでもよい。例えば、コバルト試薬(例えば、コバルト塩)は、PVAと混合することができる。代替的にまたは組み合わせとして、コバルト試薬は、液体のコバルト溶液(例えば、水性のコバルト溶液(例えば、塩化コバルト溶液))を含むことができる。
【0212】
第1混合物中のコバルトの濃度は、典型的には、第1混合物中の予想アルブミン濃度と、少なくとも同程度である(例えば、より高い)。第1混合物中の予想アルブミン濃度は、例えば、サンプル物質が得られる被験者のサンプル物質(例えば、血液由来物質)中の予想アルブミン濃度、第1混合物中の血液の量、および第1混合物の容積から予測可能である。
【0213】
血液中の予想アルブミン濃度は、所望通りに決定することができる。例えば、予想アルブミン濃度は、サンプル物質が得られる被験者のサンプル物質中のアルブミン濃度のうち、1つまたは複数の先の決定に基づいて決定することができる。代替的にまたは組み合わせとして、予想アルブミン濃度は、サンプルが得られる被験者と同様の被験者から、サンプル物質(例えば、血液由来物質)中の平均アルブミン濃度に基づいて決定することができる。ヒトの血液中の平均アルブミン濃度は、典型的には、個人の特性(例えば年齢)や生理学的状態による。一般に、約300μMから約900μMのアルブミン濃度が、平均が約750μMで観察される。
【0214】
いくつかの実施形態では、第1混合物中のコバルト濃度は、少なくとも約500μMである(例えば、少なくとも約750μM、少なくとも約1.0mM、少なくとも約1.75mM、少なくとも約3mM)。いくつかの実施形態では、第1混合物中のコバルト濃度は、約15mM以下(例えば、約10mM以下、約7.5mM以下、約5.0mM以下)。例示的な一実施形態では、第1混合物中のコバルト濃度は、約0.75mMから約2mMの間(例えば、約1.0mM)である。特に指定しない限り、本明細書で参照する濃度はいずれも、混合物の容積が赤血球の占める容積を含む場合に算出される「実際の」濃度である。「見掛けの」濃度とは、混合物の容積が赤血球の占める容積を除く場合に算出される濃度である。例えば、0.25mgのCoCl2(式量129.8)と47%のヘマトクリットを有する1mlの全血とを混合することによって調製された混合物は、赤血球が混合物の約0.47mlの容積を占めるために、約1.9mM(0.0025g×129.8−1g×0.001−1l)の実際のコバルト濃度と、約3.6mM(0.0025g×129.8−1g×0.00053−1l)の見掛けの濃度とを有する。したがって、赤血球が存在する場合、「見掛けの」濃度は、常に、実際の濃度よりも大きい。血清については、溶媒和された試薬の実際の濃度と見掛けの濃度とは同じである。
【0215】
第1混合物生成ステップ110で用いられる試薬材料は、塩化物補償試薬を含んでもよい。塩化物補償試薬を、第2混合物生成ステップ130に関して、以下で詳細に説明する。
【0216】
第1混合物生成ステップ110で用いられる試薬材料は、第1混合物中のコバルト試薬の懸濁を促進するように構成された懸濁促進試薬を含んでもよい。例示的な懸濁促進試薬は、例えば、オクチルフェノールエトキシレート、ポリソルベート(例えば、Tween80、Surfynol、Pluronic、ドデシルエーテル)などの表面活性剤(例えば、洗浄剤)、スルホスクシナメート、有機シリコン(例えば、Silwet)または二級アルコールエトキシレート(例えば、Dow Chemical CompanyのTergitol15−S−9)またはそれらの組み合わせである。表面活性剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、または両性であってもよい。その他の懸濁剤には、ポリアルコール(例えば、ソルビトール、キシリトール、エリスリトールといった糖アルコール)および糖類(例えば、トレハロースおよびスクロース)が含まれる。
【0217】
第1混合物生成ステップ110で用いられる試薬材料は、貯蔵中における試薬材料の損失を低減する(例えば、分裂および散逸を防ぐ)ように、および/または方法100を実行するデバイス(例えば、結合剤またはフィルム生成剤)を形成しやすくするように構成された可塑化試薬を含んでもよい。例示的な可塑化試薬は、セルロース誘導体(例えば、Natrosol GおよびNatrosol Lなどのヒドロキシエチルセルロース、Agualon、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはそれらの組み合わせ)である。例示的なセルロース誘導体の分子量は、約9.0×104から約7.2×105である。例示的なセルロース誘導体の重合度は、約300から約1,100の間である。重合度とは、重合反応における時間tでの平均重合体鎖の繰り返し単位の数である。例示的な実施形態においては、試薬材料とは、液体状態の場合、重量で約0.2%から10%(例えば、約1%)の可塑化試薬である。その他の可塑化試薬には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルピロリドン/酢酸ビニルが含まれる。
【0218】
第1混合物生成ステップ110で用いられる試薬材料は、分散試薬を含んでもよい。例示的な分散試薬には、シリカ粉末(例えば、Cabosil TS610)が含まれる。一般に、水に溶解せず、約0.1から10ミクロンの間のいずれかの大きさを有する、有機または無機顔料を分散試薬として用いることができる。
【0219】
試薬は、2つ以上の機能を果たしてもよい。例えば、懸濁促進試薬が、可塑化試薬として作用してもよい。
【0220】
第1混合物生成ステップ110で用いられる試薬材料は、サンプル物質(例えば、血液、血清またはその他の血液由来物質)と比較すると、試薬のpHを緩衝するように構成された緩衝試薬を含んでもよい。例えば、緩衝試薬は、サンプル物質とほぼ同じpHを有するように、試薬サンプル物質の混合物のpHを緩衝してもよい。例示的な緩衝剤のpHは、血液由来サンプルと混合したときに、約7から約7.8の間(例えば、約7.2から約7.6の間)である。3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)は、緩衝剤の例である。その他の緩衝剤には、リン酸、N−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)、イミダゾールおよびクエン酸塩緩衝剤が含まれる。
【0221】
第1混合物生成ステップ110で用いられる試薬材料は、生成中、および/または試薬材料を含むデバイスを生成中に、試薬材料の生成を最小限にするように構成された消泡試薬を含んでもよい。例示的な消泡試薬は、シリコーンエマルジョン(例えば、Basildon ChemicalsによるAntifoam FDP)である。
【0222】
方法100を続けると、第1電気化学決定ステップ120が、第1混合物中にアルブミンを含まないコバルトの量(例えば濃度)に関連する電気化学信号を得る工程を含む。遊離コバルトの量は、一般に、第1混合物中のアルブミンの存在によって減少する(また、一般に、第1混合物中でIMAの量が増加すると増加する)ため、電気化学信号の大きさは、第1混合物中のアルブミンの量にほぼ反比例(また、第1混合物中のIMAの量にほぼ比例)している。コバルトを封鎖するのにより多くのアルブミンが利用可能であるため、アルブミンの量が増えるにつれて、遊離コバルトの量は減少する。
【0223】
一実施形態の例では、第1電気化学信号決定ステップ120は、電流測定により実行される。アルブミンを含まないコバルトは、例えば、作用電極の電位を走査すると同時に、第1混合物中のコバルトイオンの還元または酸化から生じる電流を測定することによって、電流測定的に決定できる。コバルト−アルブミン複合体中のコバルトは、実質的には、酸化還元反応に関与しないため、電流は遊離コバルトの量を表す(例えば、比例する)。電流は、例えば電位範囲内の電流の最大絶対値として、または電位範囲内の総合電流として測定できる。電位範囲は、典型的には、コバルトの酸化還元反応が生じる電位(例えば、約0.6Vから約0.8Vの間の電位)に及ぶ。電気化学信号は電流を表す。一実施形態の例では、電圧が、約+1ボルトから−0.5ボルトの範囲にわたって走査され、電気化学信号が、約0.6Vから約0.8Vの間で測定される電流に基づいて決定される。例示的な電圧の走査速度は、約0.4V/秒から約1.0V/秒の間(例えば、約0.7V/秒)である。
【0224】
典型的には、第1混合物は、電気化学的な決定を実行する前に、電極の潜伏期間の間に電気化学信号を得るために用いられる電極と接触できる。電極の潜伏期間の間、作用電極は非ゼロ電圧に維持可能である。一般に、電極の潜伏期間は、約240秒以下(例えば、約120秒以下、約60秒以下)である。例示的な一実施形態では、潜伏期間は約40秒であり、作用電極は、Ag−AgCl(銀−塩化銀)基準電極に対して+1Vに維持される。
【0225】
例示的な電気化学検出は以下のように実行できる。電極と試薬材料がサンプル物質と接触して、混合物を生成する。サンプル物質が電極に供給され、作用電極は120秒間、0Vで維持される。作用電極は、Ag/AgCl基準に対して+1Vの極性を与えられ、40秒間維持される。作用電極の電位は、700mV/秒で+1Vから−0.5Vに掃引され、CoIIIがCoIIに還元することによる合成電流が測定される。遊離コバルトによる電気化学信号が、約+0.7Vにおける、電流対電位曲線のピーク高さから決定される(ピーク高さは、(+0.4から−0.2Vの間で最大正電流として決定される)ピークの底と、(+1から+0.4Vの間の最小電流値として決定される)ピークとの間の差を算出することによって決定される)。
【0226】
図2を参照すると、グラフ160は電流応答曲線162を表している。電流応答曲線162は、第1混合物生成ステップ110にしたがって、非虚血性被験者の血液を用いて調製された第1混合物中のコバルト濃度の関数として得られる還元電流の絶対値である。電流応答曲線168は、第1混合物生成ステップ110にしたがって、虚血性の被験者の血液を用いて調製された第1混合物中のコバルト濃度の関数として得られる還元電流の絶対値である。y軸に沿って示された値は、0.6Vと0.8Vの間の還元電流の負のピークと、電流対電圧走査の変曲点との差の絶対値である。変曲点は、約0.4〜0.6Vの電圧で生じる。
【0227】
曲線162、168については、非虚血性(N)または虚血性(I)被験者の血液の各飽和コバルト濃度[Co]Ns、[Co]Isは、混合物中のアルブミンのコバルト封鎖能力に等しいコバルト濃度に対応する。飽和コバルト濃度は、その混合物のアルブミン濃度に比例している。飽和コバルト濃度よりも低いコバルト濃度に関して、実質的に全てのコバルトがアルブミンによって複合され、電流はほぼゼロである。飽和コバルト濃度よりも高いコバルト濃度に関しては、追加コバルトのほぼ全てがアルブミンを含まないコバルト複合体として存在し、電流はコバルト濃度とともに直線的に増加する。例えば、[Co]Nsを上回る濃度における、曲線162の正の部分166は、式(式1)y=m[Co]+bN1で定義される。なお、yは電流であり、mは勾配であり、[Co]は実際のコバルト濃度であり、bN1は切片である。曲線162の負の部分167は、正の部分166の外挿である。図2で見られるとおり、曲線162が飽和コバルト濃度[Co]Nsに関連する量だけ右に移動しているので、切片bN1は負である。[Co]Isより上の濃度における曲線168の正の部分170は、式(式2)y=m[Co]+bI1で定義される。なお、bI1は、切片である。曲線168の負の部分171は、正の部分170の外挿である。IMAの量が増えるにつれて、第1混合物中の(および飽和コバルト濃度における)アルブミンの量は減少する。したがって、非虚血性混合物の飽和コバルト濃度[Co]Nsは、虚血性混合物の飽和コバルト濃度[Co]Isよりも高いコバルト濃度へ移動する。
【0228】
典型的には、電気化学的な決定は、コバルト−アルブミン複合体中のコバルトよりも、アルブミン複合体を含まない複合体であるコバルトにより影響を受ける。したがって、遊離コバルトの電気化学信号への寄与は、コバルト−アルブミン複合体中のコバルトの電気化学信号への寄与よりも高い。いくつかの実施形態では、遊離コバルトの電気化学信号(例えば電流)への寄与は、コバルト−アルブミン複合体中に存在するコバルトの寄与よりも、少なくとも約5倍大きい(例えば、少なくとも約7.5倍大きい、少なくとも約10倍大きい、少なくとも約20倍大きい)。
【0229】
方法100を続けると、第2混合物生成ステップ130では、コバルトとニッケルを含む試薬材料と、方法100のこの実例では、第1混合物生成ステップ120で用いられた血液を供給するヒトからの血液を含むサンプル物質とを混合することによって、第2混合物が生成される。第2混合物では、第1混合物生成ステップ120に関して述べたとおり、試薬材料からのコバルトの第1部分とヒトの血液からのアルブミンとが、コバルト−アルブミン複合体を生成する。試薬材料からのコバルトの第2部分は、アルブミンを含まないままである。第2混合物中のコバルト濃度は、典型的には、第1混合物中のコバルト濃度とほぼ同じ(例えば、同じ)である。しかし、ニッケルに対するアルブミンの親和力は、コバルトに対するアルブミンの親和力よりも高いので、アルブミンは、コバルト−アルブミン複合体と比較して、ニッケル−アルブミン複合体を優先的に生成する。したがって、ニッケルが存在すると、第1混合物と比較して、第2混合物中のアルブミンを含まないコバルトの量が増える。
【0230】
第2混合物生成ステップ130で用いられるサンプル物質は、第1混合物生成ステップ120で用いられるサンプル物質と同じ性質(例えば、容積、種類および/またはソース)を有していてもよい。典型的には、混合物生成ステップ110、130で用いられるサンプル物質は、同じソースから(例えば、同じ被験者から)得られる。典型的には、混合物生成ステップ110、130で用いられるサンプル物質は、同時に得られる。例示的な一実施形態においては、第1および第2混合物生成ステップ120、130で用いられるサンプル物質は、同時に得られた血液由来物質(例えば、全血、血漿、血清、またはそれらの組み合せ)である。例えば、第1および第2混合物生成ステップ120、130で用いられる血液は、わずか数回(例えば、3回以下、2回以下、1回のみ)の「指先穿刺」から生成された血液からのものであってもよい。
【0231】
第2混合物生成ステップ130の試薬材料には、サンプル物質と混合するとコバルトイオンを生成するコバルト試薬と、サンプル物質と混合するとニッケルイオンを生成するニッケル試薬とが含まれる。コバルト試薬は、一般に、第1混合物生成ステップ110で用いられる試薬(例えば、塩化コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト、硝酸コバルトまたはこれらの混合などのコバルト塩)と同じである。第2混合物中のコバルト濃度は、典型的には、第1混合物生成ステップ110で得られるコバルト濃度と同じである。
【0232】
典型的には、ニッケル試薬は、固体物(例えば、ニッケル塩の形のニッケル(例えば、塩化ニッケル(NiCl2)))を含んでいる。例示的な一実施形態では、その試薬は、乾燥コバルト塩と乾燥ニッケル塩とを含む。サンプル物質(例えば、全血)は、乾燥コバルト塩および乾燥ニッケル塩と混合し、可溶化して、第2混合物を生成する。第2混合物の試薬材料は、第1混合物生成ステップ110に関して述べたとおりPVAと混合することができる。代替的に、または組み合わせで、ニッケル試薬は、液体のニッケル溶液(例えば、水性のニッケル溶液(例えば、塩化ニッケル溶液))を含むことができる。
【0233】
一般に、第2混合物中のニッケル濃度は、コバルト−アルブミン複合体が実質的に全く存在しない程度に十分高い(例えば、コバルトの大部分またはほぼ全てが、コバルト−アルブミン複合体を生成することを阻止され、および/またはコバルト−アルブミン複合体と置き換えられる)。コバルト−アルブミン複合体が実質的に全く存在しないことによって、第2混合物中のコバルト−アルブミン複合体の濃度が、第2混合物中のアルブミン濃度(IMAの形態をしたアルブミンは含まず)よりも小さい(例えば、約20%未満、約10%未満、約5%未満、またはそれ以下)。
【0234】
典型的には、第2混合物中の全ニッケル濃度は、第2混合物中のコバルト濃度よりも高い。例えば、全ニッケル濃度のコバルト濃度に対する比率は、典型的には、少なくとも約1.5(例えば、少なくとも約3、少なくとも約5、少なくとも約10)である。全ニッケル濃度のコバルト濃度に対する比率は、典型的には、約25以下(例えば、約20以下、約15以下、約10以下)である。例示的な実施形態では、全ニッケル濃度のコバルト濃度に対する比率は、約3から約8の間(例えば、比率は約5.5)である。
【0235】
いくつかの実施形態においては、第1混合物中の全ニッケル濃度は、少なくとも約3mM(例えば、少なくとも約5mM、少なくとも約7.5mM、少なくとも約10mM、少なくとも約15mM)である。いくつかの実施形態では、第1混合物中の全ニッケル濃度は、約30mM以下(例えば、約25mM以下、約20mM以下、約15mM以下)である。例示的な実施形態では、第2混合物中のコバルト濃度は、約0.75mMと約2mMとの間(例えば、約1.0mM)であり、第2混合物中の全ニッケル濃度は、約3mMと約20mMとの間(例えば、約7.5mM)である。
【0236】
上述のとおり、第1混合物生成ステップ110で用いられる試薬材料は、塩化物補償試薬を含んでもよい。一般に、塩化物補償試薬は、第1および第2決定ステップ120、140の間で、より均一な電気化学的決定値を提供できる。
【0237】
典型的には、塩化物補償試薬は、第1混合物中の全塩化物イオンの濃度と第2混合物中の塩化物イオンの濃度とを均衡させる。第2混合物中の塩化物イオンの濃度は、ニッケル試薬が塩化ニッケルを含む場合はより高くなる。したがって、いくつかの実施形態では、第1混合物中の塩化物補償試薬は、塩化ニッケルの塩化物イオンによって、塩化物濃度と少なくともほぼ同じ(例えば、同じ)全塩化物濃度を提供する。例えば、第2混合物が7.5mMのNiCl2を含んでいる場合、第1混合物の塩化物補償試薬は、第1混合物に対して約15mMの塩化物イオンを提供するように選択される。
【0238】
いくつかの実施形態では、塩化物補償試薬は、第1および第2混合物生成ステップ110、130の両方で用いられる。これらの実施形態では、塩化物補償試薬による第1および第2混合物の両方への寄与は、典型的には、塩化物イオン濃度を、第1および第2決定ステップ120、140についてより安定した電気化学決定値を提供するレベルにまで高める。例えば、塩化物補償試薬によってもたらされる塩化物イオンの量を選択して、Ag−AgCl基準電極を安定させることができる。いくつかの実施形態では、第1および第2混合物のそれぞれは、第1および第2混合物中の全ての試薬ソース(サンプル物質から生じる塩化物イオンは含まない)からの全塩化物イオン濃度を、少なくとも約50mM(例えば、少なくとも約75mM、少なくとも約100mM、少なくとも約125mM)に高めるのに十分な塩化物補償試薬を含む。いくつかの実施形態では、第1および第2混合物はそれぞれ、第1および第2混合物中の全ての試薬ソース(サンプル物質から生じる塩化物イオンは含まず)からの全塩化物イオン濃度を、約200mM以下(例えば、約175mM以下、約150mM以下、約125mM以下)だけ高めるのに十分な塩化物補償試薬を含む。例示的な一実施形態においては、第1および第2混合物はそれぞれ、第1および第2混合物中の全ての試薬ソース(サンプル物質から生じる塩化物イオンは含まず)からの全塩化物イオン濃度を、約100mMだけ高めるのに十分な塩化物補償試薬を含む。
【0239】
典型的には、塩化物補償試薬は、塩化物に対する対イオンがアルブミン複合体を生成するためにコバルトと競合しないように、選択される。例示的な塩化物補償試薬は、アルカリ金属塩化物塩(例えば、塩化カリウム(KCl))である。
【0240】
第2混合物生成ステップ130で使用される試薬材料には、第1混合物生成ステップ110に関して説明した試薬材料の任意の組み合わせ(例えば、塩化物補償試薬、懸濁促進試薬、可塑試薬、分散試薬、緩衝試薬、消泡試薬、またはそれらの組み合わせ)が含まれてもよい。
【0241】
方法100を続けると、第2電気化学決定ステップ140は、第2混合物においてアルブミンを含まないコバルトの量(例えば濃度)に関する電気化学信号を得る工程を含む。第2混合物生成ステップ130に関して述べたとおり、ニッケルが存在しているために、第2混合物は、コバルト−アルブミン複合体を実質的に全く含まない。したがって、第2混合物中の遊離コバルトの量と、結果として得られる電気化学信号とは、第2混合物中のコバルトの総量にほぼ比例する。例えば、電気化学信号y2(図2)は、第2混合物中のアルブミンを含まないコバルトの量(例えば濃度)に比例する。
【0242】
電気化学的決定のステップ140は、決定ステップ120を実行するのに使用したのと同じ電気化学的方法を用いて実行される。例示的な一実施形態においては、決定ステップ140は、ステップ120に関して述べたとおり、電流測定によりなされる。例えば、約0.6Vと約0.8Vとの間の電位範囲において、コバルトの酸化還元反応から生じる電流を測定することによって、第2混合物中のニッケルの存在下で、遊離コバルトを決定することができる。電気化学信号は、測定された電流を表す。
【0243】
図2に戻ると、グラフ160は電流応答曲線172を示しており、この電流応答曲線172は、第2混合物生成ステップ130に従って調整された第2混合物中のコバルト濃度の関数として得られる還元電流の絶対値である。電流は、0.6Vと0.8Vとの間のピーク還元電流の絶対値である。応答曲線172は、式(式3)y=m[Co]+b2によって定義される。なお、yは電流であり、mは勾配であり、[Co]は見掛けのコバルト濃度であり、b2は切片である。図2で見られるとおり、ニッケルが存在するため、曲線172は、飽和コバルト濃度に関連する量だけ右に移動していないので、切片b2は、実質的にゼロである。ほぼ全てのコバルトが、アルブミンのないコバルト複合体として存在し、曲線172に沿った測定電流は、コバルト濃度とともに直線的に増加する。したがって、曲線172は、虚血性および非虚血性サンプル物質の両方から得られる曲線の代表である。典型的には、勾配mは、曲線162、168、170に対してほぼ同じである。
【0244】
方法100を続けると、検査結果決定ステップ150は、第1および第2決定ステップ120、140の電気化学信号に少なくとも部分的に基いて、検査結果を決定する工程を含む。第1および第2決定ステップで得られた結果は、以下に説明するとおり、適切な方法で処理される。第1決定ステップ120に関して述べたとおり、ニッケルがない場合に決定された電気化学信号の絶対値は、第1混合物中のアルブミンの量にほぼ反比例する(また、第1混合物中のIMAの量にほぼ比例する)。第2決定ステップ140に関して述べたとおり、ニッケルの存在下で決定された電気化学信号は、第2混合物中のコバルトの総量にほぼ比例する(また、アルブミンまたはIMAの量から実質的に独立している)。
【0245】
例示的な一実施形態においては、検査結果決定ステップ150は、(例えば、第2決定ステップ140の結果から第1決定ステップ120の結果を減算することによって)第1および第2決定ステップ120、140の結果間の差の大きさを示す差値を決定する工程を含む。図2に見られるとおり、差値174は、コバルト濃度[Co]Iを有する第2混合物において、決定ステップ140に従って得られた電気化学信号y2と、コバルト濃度[Co]Iを有する第1混合物中の非虚血性サンプル物質からの決定ステップ120に従って得られた電気化学信号yN1との間の差に対応する。差値176は、電気化学信号y2と、コバルト濃度[Co]Iを有する第1混合物中の虚血性サンプル物質からの決定ステップ120に従って得られた電気化学信号yI1との間の差に対応する。一般に、差値の大きさは、第1および第2混合物を生成するのに用いられるサンプル物質中のアルブミンの量を示している(例えば、比例している)。例えば、非虚血性サンプル物質からの差値174は、低減した量のアルブミン(およびIMAのより多い量)を含む虚血性サンプル物質からの差値176よりも大きい。
【0246】
差値は、所望通りに決定することができる。典型的には、差値は電気的に決定される(例えば、アナログもしくはデジタル回路、またはそれらの組み合わせを用いて)。例えば、いくつかの実施形態では、差値は、アナログ減算方式を用いて決定される。第1および第2決定ステップ120、140で決定される電気信号(例えば、電流または対応する電圧)は、アナログ減算回路に提供される。このような回路は、例えば、演算増幅器および抵抗を用いて形成できる。回路の出力は差値を表す。別の例として、差値は、デジタル処理で決定することができる。第1および第2決定ステップ120、140で決定された電気信号はそれぞれ、デジタル値に変換され、デジタル減算回路に提供される。回路の出力は差値を表す。さらに別の例として、差値はプロセッサを用いて決定されてもよく、このプロセッサはアナログおよびデジタル構成要素の組み合わせ(例えば、マイクロチップ内のように)を含むことができる。
【0247】
検査結果決定ステップ150は、そこならサンプル物質を得たヒトが、虚血イベント過去に発現したかまたは現在発現しているかどうかを決定するために用いることができる。例えば、虚血イベントの存在は、サンプル物質(例えば、全血などの血)を用いて決定された差値を基準値と比較することによって決定することができる。基準値は、例えば、虚血イベントを過去に発現したかまたは現在発現していることが知られている1人または複数の被験者から得られたサンプル物質、1人または複数の健常な被験者(例えば、虚血イベントを過去に発現したか、または現在発現している疑いがない被験者)から得られたサンプル物質、同じ被験者から得られたサンプル物質、またはそれらの組み合わせを用いて決定することができる。
【0248】
例示的な基準値は、虚血イベントを過去に発現したかまたは現在発現していることが知られている1人または複数の被験者から得られた同じ種類のサンプル物質を用いて決定された差値である。例えば、被験者から得られたサンプル物質に方法100を適用することによって決定された差値が、対応する基準の差値を下回る場合、被験者は虚血イベントを発現していると診断される。
【0249】
別の例示的な基準値は、1人または複数の健常な被験者(例えば、非虚血性被験者)から得られたサンプルの種類のサンプル物質を用いて決定された差値である。被験者から得られた同じ物質に方法100を適用することによって決定された差値が、対応する基準の差値を上回る場合、被験者は虚血イベントを発現していないと診断される。
【0250】
別の例示的な基準値は、同じ被験者から1つまたは複数の先の場合において得られるサンプル物質を用いて決定された差値である。例えば、方法100は、1つまたは複数の場合のそれぞれで被験者から得られたサンプル物質に適用可能である。検査結果(例えば、差値)は、各場合で得られたサンプルについて決定される。それぞれの場合は、時間的に(例えば、時間、日、週または月で)分離していてもよい。基準値(例えば、ベースラインの検査結果)が、1つまたは複数の先の検査結果から決定される。例えば、基準値は、複数の先の結果についての差値の平均値であってもよい。後続の検査結果は、その被験者の基準値と比較することができる。例えば、被験者から得られるサンプル物質に方法100を適用することによって決定される差値の絶対値が、その被験者の基準値を下回る場合、虚血イベントは発現していないと診断される。
【0251】
上述のとおり、第2決定ステップ140の結果は制御結果として作用して、決定ステップ150の検査結果(例えば、差値)を、検査結果が第1決定ステップ120だけの結果に基づく場合よりも、マトリックス効果により発生する誤差の影響を受けにくくすることができる。この利点は、これらのステップの真の結果(例えば、マトリックス効果がない場合に得られる結果)と比較して、マトリックス効果が決定ステップ120、140の結果を偏らせることができる方法によって生じる。第1および第2混合物中のマトリックス効果は、典型的には、同様の方法で(例えば、同じ方向(例えば、より高いか、またはより低い)および/または同程度に)決定120、140の結果を偏らせる。検査結果決定ステップ150は、決定ステップ120、140の結果を組み合わせることによって、マトリックス効果の大きさを小さくする。決定ステップ150の検査結果は、検査結果が第1決定ステップ120の結果のみに基づく場合よりも、マトリックス効果によって生じる誤差の影響を受けにくい。したがって、虚血の存在は、検査結果が第1決定ステップ120の結果のみに基づく場合よりも、高い信頼性で決定することができる。
【0252】
決定ステップ150は、差値の決定を含むと説明してきたが、他の実施形態が実行されてもよい。例えば、検査結果決定ステップ150は、第1および第2決定ステップ120、140の結果の比を表す比の値を決定する工程を含むことができる。例えば、比の値は、第1決定ステップ120の電気化学信号を、第2決定ステップ140の電気化学信号で割ることによって(例えば、y1I/y2)、生成可能である。このような比の値は、第1および第2混合物を生成するのに用いられるサンプル物質中のIMAの量を表す(例えば、反比例する)。例えば、サンプル物質(例えば、全血などの血液)を用いて決定された比の値を基準値と比較することによって、虚血イベントの存在を決定できる。基準値は、例えば、虚血イベントを過去に発現したかまたは現在発現していることが知られている1人または複数の被験者から得られたサンプル物質、1人または複数の健常な被験者(たとえば、虚血イベントを過去に発現したかまたは現在発現している疑いがない被験者)から得られたサンプル物質、同一の被験者から得られたサンプル物質、またはそれらの組み合わせを用いて決定することができる。
【0253】
他の例として、検査結果決定ステップ150は、差の比の値を決定する工程を含むことができる。例えば、比の差値は、第1および第2決定ステップ120、140のうちの一方または両方の電気化学信号によって、差値を割ることによって(例えば、[y1I−y2]/y2または、[y1I−y2]/(y1I×y2))生成できる。このような差の比の値は、第1および第2混合物を生成するのに用いられるサンプル物質中のIMAの量を表している(例えば、反比例している)。例えば、サンプル物質(例えば、全血などの血液)を用いて決定された差の比の値を基準値と比較することによって、虚血イベントの存在が決定できる。基準値は、例えば、虚血イベントを過去に発現したかまたは現在発現していることが知られている1人または複数の被験者から得られたサンプル物質、1人または複数の健常な被験者(たとえば、虚血イベントを過去に発現したかまたは現在発現している疑いがない被験者)から得られたサンプル物質、同一の被験者から得られたサンプル物質、またはそれらの組み合わせを用いて決定できる。
【0254】
差値、比の値、または差の比の値として決定された検査結果は全て、検査結果が第1決定ステップ120だけの結果に基づく場合よりも、マトリックス効果により発生する誤差の影響を受けにくいという利点を共有する。したがって、虚血の存在は、検査結果が第1決定ステップ120の結果のみに基づく場合よりも、高い信頼性で決定することができる。検査結果決定ステップ150は、代替的に(または、組み合わせて)、差、比、および差の比に加えて、決定ステップ120、140の電気化学信号の別の組み合わせを生成する工程を含むことができる。一般に、このような組み合わせは、上述の利点を共有し、虚血の存在を決定するために用いることもができる。
【0255】
方法100を、全血を用いて例示してきたが、他のサンプル物質が用いられてもよい。例えば、サンプル物質は、代替的に、または追加で、血液由来物質(例えば、血漿、血清、またはそれらの組み合わせ)を含むことができる。典型的には、赤血球が不足する物質(例えば、血漿または血清)が全血と置き換えられる(または結合する)場合、より多くの量の試薬を用いて、赤血球の不足により生じる多量の必要容積を補償する。
【0256】
いくつかの実施形態においては、方法100は、血清および/または血漿を用いて実行される。このような実施形態では、第1および第2混合物中のコバルト濃度は、典型的には、少なくとも約1mM(例えば、少なくとも約1.25mM、少なくとも約1.75mM、少なくとも約3mM、少なくとも約4mM)である。いくつかの実施形態では、第1混合物中の全コバルト濃度は、約25mM以下(例えば、約20mM以下、約15mM以下、約10mM以下)である。例示的な一実施形態では、第1混合物中のコバルト濃度は、約1mMと約3.5mMとの間(例えば、約1.5mM)である。血清および血漿は、赤血球が不足するため、見掛けの濃度と実際の濃度とは同じである。
【0257】
血清および/または血漿を用いると、コバルト試薬に対するニッケルの量の比は、第2混合物生成ステップ130について説明した比と同じであってもよい。第1混合物中のニッケル濃度は、典型的には、少なくとも約4mM(例えば、少なくとも約6mM、少なくとも約9mM、少なくとも約12mM、少なくとも約17mM)である。いくつかの実施形態では、第1混合物中の全ニッケル濃度は、約40mM以下である(例えば、約30mM以下、約25mM以下、約20mM以下)。例示的な実施形態では、第2混合物中のコバルト濃度は、約1mMと約3.5mMとの間(例えば、約1.5mM)であり、第2混合物中のニッケル濃度は、約4mMと約25mMとの間(例えば、約10mMである)。
【0258】
コバルト濃度とニッケル濃度に関する変更を除いて、全血を用いた場合と同様に血漿および/または血清を用いて、方法100を実行することができる。例えば、第1および第2混合物生成ステップにおいて、血清および/または血漿とともに用いられた試薬材料は、第1および第2混合物生成ステップ110、130に関して説明したとおり、塩化物補償試薬、懸濁促進試薬および/または可塑試薬を含んでもよい。サンプル物質の容積は、第1および第2混合物生成ステップ110、130と同じであってもよい。電気化学信号と検査結果とが、ステップ120、140、150と同じように決定されてもよい。虚血イベントが、血漿および/または血清を用いて得られた基準値を用いて、全血を用いて説明したのと同様に、決定されてもよい。
【0259】
コバルトと、結果的に低減した量のコバルト−アルブミン複合体を生じる第2試薬(例えばニッケル)とを含む第2混合物を生成するステップを含む測定方法を説明してきたが、他の実施形態が実行されてもよい。
【0260】
図3を参照すると、測定方法400は、第1混合物生成ステップ410と、第1コバルト決定ステップ420と、第2混合物生成ステップ430と、第2コバルト決定ステップ440と、検査結果決定ステップ450とを含む。種々の種類のサンプル物質が、本明細書で説明した方法において用いるのに適しているが、発明者らは、まず、全血をサンプル物質として用いることに関して、方法100を例として示す。
【0261】
第1混合物生成ステップ410において、コバルトとヒトからの血液とを含んだ第1混合物が生成される。第1コバルト電気化学決定ステップ420において、第1混合物中のコバルト−アルブミン複合体がないコバルトが決定される。第2混合物生成ステップ430では、第1混合物中のコバルトの量とは異なる量のコバルトと、ヒトからの血液とを含む第2混合物が生成される。第2コバルト電気化学決定ステップ440では、第2混合物中のコバルト−アルブミン複合体がないコバルトが決定される。検査結果決定ステップ450では、第1および第2決定ステップ420、440の結果に基づいて検査結果が決定される。典型的には、検査結果は、ヒトの血液中のアルブミンの量に関連する。方法400は、(例えば、検査結果を標準値と比較することによって)測定決定ステップ450の結果に基づいて、ヒトの虚血イベントの発生を決定する工程をさらに含むことができる。
【0262】
第1混合物生成ステップ410では、コバルトを含む試薬材料と、ヒトからの血液を含むサンプル物質とを混合することによって、第1混合物が生成される。第1混合物生成ステップ410は、方法100の第1混合物生成ステップ110について説明したのと同様に実行できる。例えば、試薬材料とサンプル物質は、方法100のステップ110について説明したものと同じ種類、量、容積であってもよい。例示的な一実施形態では、ステップ410の試薬材料は、乾燥コバルト塩(例えば、塩化コバルト)であり、サンプル物質は、(例えば、1回または複数回の「指先穿刺」からの)全血である。例示的な一実施形態では、第1混合物中のコバルト濃度は、約0.75mMと約2mMとの間(例えば、約1.0mM)である。
【0263】
第2混合物生成ステップ410で用いられる試薬材料は、混合物生成ステップ110、130に関して説明した試薬材料の任意の組み合わせ(例えば、塩化物補償試薬、懸濁促進試薬、可塑化試薬、分散試薬、緩衝試薬、消泡試薬、またはそれらの組み合わせ)を含んでもよい。
【0264】
第1コバルト電気化学決定ステップ420は、第1混合物中でアルブミン複合体を含まないコバルトを、電気化学的に決定する工程を含む。決定ステップ420の結果は、第1混合物中でアルブミンを含まないコバルトの量(例えば濃度)に関する電気化学信号である。第1コバルト決定ステップ420は、方法100の第1決定ステップ120について説明したのと同様に実行できる。例えば、コバルト決定ステップ420は、第1決定ステップ120について説明したものと同じ電流測定条件を用いて、遊離コバルトを電流測定的に決定する工程を含むことができる。例示的な実施形態では、第1決定ステップ420は、約0.6Vと約0.8Vとの間の電位範囲内で生じたコバルトイオンの酸化還元反応から生じる電流を測定することによって、遊離コバルトを電流測定により決定する工程を含む。
【0265】
方法400を続けると、第2混合物決定ステップ430では、第1混合物生成ステップ410で用いられる量よりも多い量のコバルトを含む試薬材料と、第1混合物生成ステップ420で用いられる血液を供給するヒトからの血液を含むサンプル物質とを混合することによって、第2混合物が生成される。例えば、図2に見られるとおり、第2混合物生成ステップ430は、ステップ410において生成された第1混合物のコバルト濃度[Co]1よりも大きいコバルト濃度[Co]2を有する第2混合物を生成する工程を含む。
【0266】
第2混合物では、第1混合物生成ステップ120に関して述べたとおり、試薬材料からのコバルトの第1部分と、ヒトの血液からのアルブミンとが、コバルト−アルブミン複合体を生成する。試薬材料からのコバルトの第2部分は、アルブミンを含まないままである。しかし、第2混合物中のコバルト濃度[Co]2は、第1混合物中のコバルト濃度[Co]1より高いために、第2混合物中には、第1混合物中よりも多くの遊離コバルトが存在する。
【0267】
いくつかの実施形態では、第1混合物中(ステップ410)のコバルトの総量に対する第2混合物中(ステップ430)のコバルト濃度の割合は、少なくとも約1.25(例えば、少なくとも約1.5、少なくとも約2)である。いくつかの実施形態では、第1混合物中(ステップ410)のコバルトの総量に対する第2混合物中(ステップ430)のコバルト濃度の割合は、約5以下(例えば、約3以下、約2.5以下)である。例示的な一実施形態においては、第1混合物中(ステップ410)のコバルトの総量に対する第2混合物中(ステップ430)のコバルト濃度の割合は、約2である。
【0268】
例示的な実施形態においては、第2混合物中のコバルト濃度は、約3.5mM以下である。例えば、第1混合物中のコバルト濃度は、約1.0mMであってもよく、第2混合物中のコバルト濃度は、約2mMであってもよい。
【0269】
第2混合物生成ステップ430で用いられる試薬材料は、コバルト試薬の量が、第2混合物中のコバルト濃度よりも高くなるように選択されるほかは、第1混合物生成ステップ410で用いられる材料と同一であってもよい。第2混合物生成ステップ430で用いられる試薬材料は、混合物生成ステップ110、130に関して説明した試薬材料(例えば、塩化物補償試薬、懸濁促進試薬、可塑化試薬、分散試薬、緩衝試薬、消泡試薬、またはそれらの組み合わせ)のいずれの組み合わせを含んでもよい。
【0270】
方法400を続けると、第2決定ステップ440は、第2混合物中のアルブミン複合体を含まないコバルトを電気化学的に決定する工程を含む。決定ステップ440の結果は、第2混合物中でアルブミンを含まないコバルトの量(例えば、濃度)に関する電気化学信号である。ステップ440の電気化学的な決定は、決定ステップ420を実行するのに用いたものと同じ電気化学的方法を用いて実行される。例示的な一実施形態では、決定ステップ440は、ステップ120について述べたとおり電流測定により実行される。例えば、約0.6Vと約0.8Vとの間の電位範囲において、コバルトの酸化還元反応から生じる電流を測定することによって、第2混合物中のニッケルの存在下で、遊離コバルトを決定することができる。図2に見られるとおり、電気化学信号yI2は、虚血性サンプル物質を含む第2混合物から得られ、電気化学信号yN2は、非虚血性サンプル物質を含む第2混合物から得られる。
【0271】
方法400を続けると、検査結果決定ステップ450は、第1および第2決定ステップ420、440の電気化学信号に少なくとも部分的に基づいて、検査結果を決定する工程を含む。いくつかの実施形態では、決定ステップ450は、第1および第2決定ステップ420、440の結果によって定義された勾配および切片を決定する工程を含む。例えば、切片bI1は、電気化学信号yI1およびyI2から決まる(図2、曲線168)。切片bN1は、電気化学信号yN1およびyN2から決まる(図2、曲線162)。
【0272】
決定ステップ450の検査結果を用いて、サンプル物質が得られたヒトが虚血イベントを過去に発現したかまたは現在発現しているかどうかを決定できる。例えば、虚血イベントの存在は、サンプル物質(例えば、全血などの血液)を用いて決定された切片を、基準値と比較することによって決定することができる。例示的な基準値は、虚血イベントを過去に発現したかまたは現在発現していることが知られている1人または複数の被験者から得られたものと同じ種類のサンプル物質を用いて決定された切片である。被験者から得られたサンプル物質に方法400を適用することによって決定された切片が、対応する基準の差値を下回る場合、被験者が虚血イベントを発現していると診断される。例えば、虚血性サンプル物質から決定された切片bI1は、非虚血性サンプル物質を用いて決定された切片bN1を下回る。
【0273】
切片bI1およびbN1は、検査結果決定ステップ150に基づいて決定された差値176、174に対応する。例えば、差値176(図2)は、y2−yI1=m([Co]1−[Co]1)+b2−bI1(式4)によって与えられる。なお、[Co]1は、第1および第2混合物中のコバルト濃度である。差値176は、b2がゼロに近い場合、bI1にほぼ等しい。同様に、差値174は、b2がゼロに近い場合、bN1にほぼ等しい
【0274】
決定ステップ450の検査結果は、決定ステップ420、440の組み合わせに基づいて結果を決定する工程を含むため、検査結果が第1決定ステップ420の結果のみに基づいている場合よりも、ステップ450は、マトリックス効果の影響を受けにくいという利点を共有している。したがって、方法400に基づいた虚血性の決定も、第1決定ステップ420の結果のみに基づいて決定を実行する場合よりも、マトリックス効果の影響を受けにくい。
【0275】
全血を用いて方法400を説明してきたが、その他のサンプル物質を用いることもできる。例えば、サンプル物質は、代替的に、または追加で、血液由来物質(例えば、血漿、血清またはそれらの組み合わせ)を含むことができる。方法100について説明したとおり、赤血球が不足する物質(例えば、血漿または血清)が、全血と置き換えられる(または混合する)場合、典型的には、より多くの量の試薬を用いて、赤血球の不足により生じる多量の必要容積を補償する。
【0276】
次に、発明者らは、(例えば、血液由来流体(例えば、全血、血清、血漿またはそれらの組み合わせ)を用いて方法100または400に従って)測定を実行するためのデバイスおよびシステムを説明する。
【0277】
図4A〜4Cを参照すると、微小流体デバイス200は、主基板202と2つの副基板204、206とを含む。主基板202と副基板204は、サンプル物質用入口210と、チャネル212によって入口210に接続された第1検出ゾーン214とを含む第1微小流体ネットワーク208を画定している。第1微小流体ネットワーク208は、サンプル物質を収容し、(例えば、方法100の第1混合物生成ステップ110に従って)試薬−サンプル物質混合物を生成するように構成されている。第1検出ゾーン214は、コバルト試薬を含む試薬材料(図示せず)と、攪拌バー216と、通気孔218と、それぞれ第1、第2、第3リード線221、223、225と接続されている第1、第2、第3電極220、222、224とを含む。主基板202と副基板206とは、サンプル物質用入口228と、チャネル232によって入口228に接続された第2検出ゾーン230とを含む第2微小流体ネットワーク226を画定している。第2微小流体ネットワーク226は、サンプルを収容し、(例えば、方法100の第2混合物生成ステップ130に従って)試薬−サンプル物質混合物を生成するように構成されている。第2検出ゾーン230は、コバルト試薬とニッケル試薬とを含む試薬材料(図示せず)と、攪拌バー216と、通気孔234と、それぞれ第1、第2、第3リード線237、239、241と接続されている第1、第2、第3電極236、238、240とを含む。
【0278】
図5Aを参照すると、検査システム250は、検査リーダ252と検査デバイス200とを含む。検査リーダ252は、入口254と、電気化学検出器256と、表示器258と、磁気攪拌バーアクチュエータ259と、典型的には検出器256、攪拌バーアクチュエータ259および/または表示器258と結合したプロセッサ260とを含む。使用中、微小流体デバイス200は、リーダ252の入口254内に受け入れられる。攪拌バーアクチュエータ259は、検出ゾーン214、230内の各サンプル物質−試薬混合物の生成を支援するために、検出ゾーン内で攪拌バー216を動かす(例えば回転させる)。電気化学検出器256は、リード線221、223、225を介して電極220、222、224を、および、リード線237、239、241を介して電極236、238、240を作動させるための、それぞれの接点257(1つのみ図示)を含む。プロセッサ260は、電気化学検出器256から電気化学信号を受け取り、その信号に基づいて検査結果を決定する。表示器258は、検査結果および/またはその結果に基づいた虚血状態の存在の決定を表示する。
【0279】
入口210、228はそれぞれ、サンプル収容ゾーン262、264に近接している。各ゾーン262、264は、副基板204、206の各サンプル物質収容面266、268と、主基板202内の各切欠部270、272によって画定されている。使用中、各サンプル物質のそれぞれの量(例えば、全血などの血液由来物質)が、各サンプル収容ゾーン262、264に導入される。サンプル物質収容面266、268はサンプルを保持し、表面266、268によって毛細管作用を促進し、切欠部270、272の壁部が、そのサンプルを入口210、228に吸引する。入口210、228と接するサンプル物質は、各チャネル212、232に沿って、検出ゾーン214、230へ毛細管作用によって流れる。
【0280】
入口210に供給されたサンプル物質(例えば、全血、血漿、血清またはそれらの組み合わせ)は、毛細管作用によって、検出ゾーン214内へ流れる。サンプル物質が入ると、通気孔218によって、気体(例えば空気)が検出ゾーン214を出る。検出ゾーン214に収容されたサンプル物質は、検出ゾーン内の試薬材料と混合(例えば、懸濁または可溶化)して、第1混合物生成ステップ110に従って第1混合物を生成する。入口228に供給されたサンプル物質(例えば、全血)は、毛細管作用によって、検出ゾーン230内に流れる。サンプル物質が入ると、通気孔234によって、気体(例えば空気)が検出ゾーン230を出る。検出ゾーン230に収容されたサンプル物質は、検出ゾーン内の試薬材料と混合(例えば、懸濁または可溶化)して、第2混合物生成ステップ130に従って第2混合物を生成する。
【0281】
サンプル収容ゾーン262、264と検出ゾーン214、230とは、(例えば、方法100の決定ステップ120、140に従って)電気化学的な決定を実行するのに十分な量のサンプル物質を収容するように構成されている。典型的には、検出ゾーン214、230のそれぞれの自由容積は、少数回数(例えば、3回以下、2回以下、1回)の「指先穿刺」で得られた、ある一定量のサンプル物質(例えば、血液)によって充填可能である。例えば、いくつかの実施形態では、検出ゾーンの全体の自由容積は、単一の「指先穿刺」からの血液で充填されることができる。各検出ゾーンの自由容積は、サンプル物質と試薬材料を充填するのに利用可能な容積である。自由容積には、攪拌バー216の容積は含まれない。いくつかの実施形態では、検出ゾーン214、230の全体の自由容積は、約100μl以下(例えば、75μl以下、50μl以下、30μl以下)である。いくつかの実施形態では、検出ゾーン214、230の統合された自由容積は、約2.5μl以上(例えば、約5μl以上、約15μl以上)である。例示的な一実施形態では、検出ゾーン214、230の全体の自由容積は、約5〜約10μlである。
【0282】
典型的には、検出ゾーン214、230の各寸法と容積は、ほぼ同じ(例えば、実質的に同一)である。いくつかの実施形態では、各検出ゾーンの平均半径方向寸法(例えば、直径)は、少なくとも約2mm(例えば、少なくとも約3mm)であり、平均半径方向寸法(例えば、直径)は、約7.5mm以下(例えば、約6mm以下、約5mm以下)である。例示的な一実施形態では、各検出ゾーンの平均半径方向寸法は、約4mmである。いくつかの実施形態では、検出ゾーン214、230の平均高さは、それぞれ、少なくとも約100μm(例えば、少なくとも約250μm、少なくとも約300μm)であり、平均高さはそれぞれ、約1000μm以下(例えば、約750μm以下、約500μm以下)である。例示的な一実施形態では、検出ゾーン214、230の平均高さは、それぞれ、約100〜200μm(例えば、約150μmから約175μm)である。
【0283】
検出ゾーン214の試薬材料は、サンプル物質と混合するとコバルトイオンを提供するコバルト試薬を含む。例示的なコバルト試薬は、方法100の第1混合物生成ステップ110に関して述べたコバルト試薬である。例えば、コバルト試薬は、固体物(例えば、コバルト塩の形のコバルト(例えば、塩化コバルト))を含むことができる。試薬は、乾燥コバルト塩であってもよい。サンプル物質は、コバルト試薬を可溶化して、方法100の第1混合物生成ステップ110に関して述べたような特性(例えば、コバルト濃度)を有する混合物を生成する。
【0284】
コバルト試薬の量は、検出ゾーン214内で達成されるコバルト濃度と、検出ゾーンの自由容積とに依存する。試薬の量は、方法100および400に関して述べたとおり、サンプル物質の自由容積によって(例えば、赤血球によって占められるサンプルの容積によって)変化してもよい。
【0285】
いくつかの実施形態では、コバルト試薬の量は、可溶化されるとき、少なくとも約500μM(例えば、少なくとも約750μM、少なくとも約1.0mM、少なくとも約1.75mM、少なくとも約3mM)の検出ゾーン214内のコバルト濃度を得るのに十分である。いくつかの実施形態では、コバルト試薬の量は、可溶化されるとき、約15mM以下(例えば、約10mM以下、約7.5mM以下、約5.0mM以下)の検出ゾーン214内のコバルト濃度を得るのに十分である。例示的な一実施形態では、コバルト試薬の量は、可溶化されたとき、約0.75mMと約2mMとの間(例えば、約1.0mM)の検出ゾーン214においてコバルト濃度を得るのに十分である。上述のとおり、本明細書で参照するいずれの濃度も、容積が、赤血球によって占められる容積を含むことによって決定される「実際の」濃度である。サンプルでほぼ完全に充填された検出ゾーンに関しては、混合物の容積は、検出ゾーンの充填された容積である。
【0286】
検出ゾーン214の試薬材料は、例えば、混合物生成ステップ110、130に関して述べたとおり、本明細書で述べたいずれの試薬(例えば、塩化物補償試薬、懸濁促進試薬、可塑化試薬、分散試薬、緩衝試薬、消泡試薬、またはそれらの組み合わせ)を含んでもよい。
【0287】
検出ゾーン230の試薬材料は、コバルトイオンを提供するコバルト試薬と、サンプル物質と混合するとニッケルイオンを提供するニッケル試薬とを含む。例示的なコバルト試薬は、方法100の第1混合物生成ステップ110と検出ゾーン214に関して述べたコバルト試薬である。例えば、コバルト試薬は、固体物(例えば、コバルト塩の形のコバルト(例えば、塩化コバルト))を含むことができる。試薬は、乾燥コバルト塩であってもよい。例示的なニッケル試薬は、方法100の第2混合物生成ステップ130に関して述べたニッケル試薬である。例えば、ニッケル試薬は、固体物(例えば、ニッケル塩の形のニッケル(例えば、塩化ニッケル(NiCl2)))を含むことができる。例示的な一実施形態では、試薬は、乾燥コバルト塩と乾燥ニッケル塩とを含む。
【0288】
サンプル物質がコバルト試薬とニッケル試薬とを可溶化して、方法100の第2混合物生成ステップ130に関して述べたのと同様の特性(例えば、コバルト濃度およびニッケル濃度)を有する混合物を生成する。例えば、検出ゾーン230におけるニッケル濃度は、典型的には、コバルト−アルブミン複合体が実質的に存在しない程度に高い(例えば、コバルトのほとんどまたはほぼ全てが、コバルト−アルブミン複合体を生成することを妨げられ、および/またはコバルト−アルブミン複合体から排除される)。典型的には、検出ゾーン230のニッケル試薬は、コバルト試薬によって提供されるコバルト濃度よりも高い全ニッケル濃度を提供する。例えば、コバルト試薬によって提供されるコバルト濃度に対する、ニッケル試薬によって提供される全ニッケル濃度の割合は、典型的には、少なくとも約1.5(たとえば、少なくとも約3、少なくとも約5、少なくとも約10)である。ニッケル試薬およびコバルト試薬によって提供されるコバルト濃度に対する全ニッケル濃度の割合は、典型的には、約25以下(例えば、約20以下、約15以下、約10以下)である。例示的な一実施形態においては、その割合は約5.5である。
【0289】
いくつかの実施形態では、ニッケル試薬の量は、少なくとも約3mM(例えば、少なくとも約5mM、少なくとも約7.5mM、少なくとも約10mM、少なくとも約15mM)の検出ゾーン230内の全ニッケル濃度を提供するのに十分である。いくつかの実施形態では、ニッケル試薬の量は、約30mM以下(例えば、約25mM以下、約20mM以下、約15mM以下)の検出ゾーン230内の全ニッケル濃度を提供するのに十分である。例示的な一実施形態においては、コバルト試薬の量は、約3.5mM以下(例えば、約1.5mM)の検出ゾーン230内のコバルト濃度を提供するのに十分であり、ニッケル試薬の量は、約5mMと約20mMとの間(例えば、約7.5mM)の検出ゾーン230における全ニッケル濃度を提供するのに十分である。
【0290】
検出ゾーン214に関して述べたのと同様に、検出ゾーン230の試薬材料は、例えば、混合物生成ステップ110、130に関して述べたとおり、本明細書で述べた試薬のいずれの組み合わせ(例えば、塩化物補償試薬、懸濁促進試薬、可塑試薬、分散試薬、緩衝試薬、消泡試薬、またはそれらの組み合わせ)を含んでもよい。
【0291】
攪拌バー216は、検出ゾーン214、230内に嵌まり込むようなサイズおよび形状とされ、検出ゾーン内でのサンプルおよび試薬材料の混合を助ける。典型的には、対応する検出ゾーン214、230の容積に対する攪拌バー216の容積の割合は、少なくとも約0.04(例えば、少なくとも約0.06、少なくとも約0.07)である。容積の割合は、約0.15以下(例えば、約0.12以下、約0.1以下)であってもよい。例示的な一実施形態においては、対応する検出ゾーン214、230の容積に対する攪拌バー216の容積の割合は、約0.07〜0.1(例えば、約0.85)である。
【0292】
対応する検出ゾーン214、230の高さに対する攪拌バー216の高さの比率は(検出ゾーン内に位置する攪拌バーで取られた)、典型的には、少なくとも約0.6(例えば、少なくとも約0.65、少なくとも約0.7)である。高さの比率は、典型定には、約0.9以下(例えば、約0.8以下)である。例示的な一実施形態では、高さの比率は、約0.75と約0.8との間(例えば、約0.775)である。
【0293】
いくつかの実施形態では、攪拌バー216の長さは、約2mmと約4mmとの間(例えば、約3mm)であり、攪拌バー216の幅は、約0.25mmと約0.6mmとの間(例えば、約0.45mm)であり、攪拌バー216の高さは、約0.15mmと約0.6mmとの間(例えば、約0.3mm)である。いくつかの実施形態では、攪拌バー216の容積は、約0.25μlと約0.6μlとの間(例えば、約0.45μl)である。
【0294】
典型的には、攪拌バー216はコーティングされ、試薬とサンプル物質との相互作用を最小限にし、および検出ゾーン内の電極の短絡を防ぐ。例示的な一実施形態では、攪拌バーは、パリレンでコーティングされる。代替案として、またはさらに、攪拌バーはPVPでコーティングされてもよい。
【0295】
各検出ゾーン214、230におけるサンプル物質と試薬材料の混合を助けるために、攪拌バーアクチュエータ259が、攪拌バー216を交番磁場に曝して、攪拌バー216を検出ゾーン214、230内で移動させる(例えば、回転させる)。攪拌バー216は、磁気的に影響を受けやすい材料(例えば、鉄または鉄含有金属)で形成されている。攪拌バー216の運動によって、検出ゾーン内の物質が移動し、それによって、サンプルおよび試薬材料の混合が促進される。プロセッサは攪拌バーアクチュエータ259を作動させて、攪拌バー216の運動速度を制御する。例えば、攪拌バーアクチュエータ259はフィードバックループを用いて、攪拌バー216の回転速度を制限してもよい。回転速度を制限することによって、攪拌バー216が、検出ゾーン214、230内の物質を移動させる能力を高め、それによって、サンプルおよび試薬材料の混合を促進する。
【0296】
攪拌バーアクチュエータ259は、典型的には、それぞれが低い必要電力を有する一組のDCモータ(例えば、大きさが約10×6mmの95cモータ)を含む。光学的なフィードバックループを用いてモータの速度を制御することにより、回転変動を減少させる。試薬がサンプルと混合すると、混合物の粘度が変化する。これによって、攪拌バー216とモータの磁石との間の誘導結合によって生じるモータの抗力が変化する。
【0297】
混合中、光学システムを用いてモータの回転速度を決定する。速度は、典型的には、モータに印加される電圧のデューティサイクルを変更することによって、モータに印加されるDC電圧を変調することで制御される。図5Bを参照すると、所望の速度を達成するために、Tonの持続時間が変調可能である。リーダ252によって、デューティサイクルの実時間フィードバック制御が可能となり、ごくわずかなオーバーシュートで所望の速度を達成する。したがって、デフォルト設定では高速(例えば、約10,000rpm)で回転するモータに、制御アルゴリズムを適用することによって、回転速度を制御することができる。例示的な一実施形態では、回転速度は、約250〜約1500rpm(例えば、約480〜約1250rpm、例えば、約1000rpm)に制御される。混合が、一定期間(例えば、約90秒など約60〜120秒)行われる。
【0298】
リーダ252が電極220、222、224を作動させて、方法100の第1決定ステップ120に従って、検出ゾーン214内で生成される混合物内の遊離コバルトの量を決定する。プロセッサ252もまた電極236、238、240を作動させて、方法100の第2決定ステップ140に従って、検出ゾーン230内で生成された混合物内の遊離コバルトの量を決定する。
【0299】
デバイス200は、所望通り形成可能である。基板202、204、206は、例えば、射出成形など任意の所望の方法によって形成できる。例示的な基板材料には、射出成形可能なポリマーなどのポリマーが含まれる。例示的なポリマーは、ポリエステルである。他の適切な材料には、アルミナセラミック、ガラス(例えば、溶融シリカ)、石英およびシリコンが含まれる。基板材料はコーティングして、その疎水性を変更する(例えば、基板材料をより親水性にするために)ことができる。
【0300】
電極およびリード線は、典型的には、主基板202上に形成される。電極およびリード線は、カーボンインク、銀インクまたは金インクで基板にスクリーン印刷することによって堆積することができる。適切なインク(例えば、ペースト)の例には、カーボンD2ペースト(GEM Ltd)および銀/塩化銀ペースト(DuPont)が含まれる。典型的には、カーボンーペーストは、作用電極および対電極に用いられる。銀/塩化銀ペーストは、典型的には、基準電極に用いられる。電極および/またはリード線は、少なくとも部分的に、絶縁層でコーティングすることができる。例示的な絶縁層は、誘電D1ペースト(GEM Ltd)などの誘電ペーストから生成される。電極およびリード線はまた、基底部に導電性材料(例えば、金、銀またはアルミニウムなど)を蒸着またはスパッタリングし、次いで、レーザーアブレーションまたは写真平板マスキング、およびウェットもしくはドライエッチングによって形成できる。
【0301】
主基板202と結合されると微小流体ネットワークを形成する副基板204、206の形状は、所望通りに形成できる。このような形状には、チャネル212、232を形成する溝と、検出ゾーン214、230を形成する凹部と、通気孔218、234を形成する通路とが含まれる。例示的な一実施形態では、副基板204、206は、大部分(例えば、このような形状の全て)を含む射出成形によって形成される。他の技術を用いて、このような形状体を形成してもよい。例えば、各形状体は、レーザーアブレーション、エッチングを伴ったフォトリソグラフィー、インプリンティング、またはマイクロマシニングによって形成できる。
【0302】
試薬材料は、所望通り堆積することができる。いくつかの実施形態では、試薬材料は、主基板202と結合する前に、副基板の凹部内に堆積される。試薬の堆積は、例えば、電磁弁およびサーボまたはステッパー駆動シリンジを用いて、ノズルから供給または吸引することによって達成可能である。
【0303】
これらの方法は、接触または非接触モードで、試薬の液滴または線を堆積することができる。試薬材料は、典型的には、完成したデバイス内の検出ゾーンの一部を形成する基板上に堆積される。例えば、試薬材料は、複数の液滴(例えば、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも約10液滴)で堆積することができる。いくつかの実施形態では、試薬材料は、50以下の液滴(例えば、25以下の液滴)で堆積される。
【0304】
試薬を堆積する他の方法には、パッド印刷、スクリーン印刷、圧電プリントヘッド(例えば、インクジェット印刷)、または、試薬を放出するために圧縮されたポーチ(「ケーキアイサー(cake icer)」)から堆積することが含まれる。堆積は、湿度および温度が調節された環境下で実施することが好ましい。それぞれの試薬は、同じまたは異なる位置に分配できる。
【0305】
いくつかの実施形態では、試薬はスクリーン印刷される。例えば、試薬材料は、デバイスの基板の表面上にスクリーン印刷することができる。いくつかの実施形態では、試薬は、電極の表面上に直接堆積(例えば、印刷)される。いくつかの実施形態では、試薬は、完成したデバイス内の電極と対向する基板の表面上に堆積(例えば、印刷)される。
【0306】
典型的には、検出ゾーンに供給される試薬材料の容積(乾燥前)は、検出ゾーンの容積よりも小さい。いくつかの実施形態では、供給される試薬材料の容積は、検出ゾーンの容積の約50%以下(例えば、約25%以下、約20%以下、約15%以下)である。いくつかの実施形態では、供給される試薬材料の容積(乾燥前)は、検出ゾーンの容積の約5%以上(例えば、約7.5%以上、約10%以上)である。例示的な実施形態では、容積(乾燥前)が約0.5μlと約5μlとの間(例えば、約1μlと約2μlとの間)の試薬材料が供給される。供給される試薬材料のコバルトおよび/またはニッケルは、典型的には、供給される試薬材料の容積(例えば、約1μl)に対する検出ゾーンの容積(例えば、約5μl)の比を乗算した、使用中に検出ゾーンで生成された試薬サンプル物質混合物におけるコバルトまたはニッケルの所望の濃度(例えば、約1.75mMのCo)によって与えられる濃度(すなわち、1.75mMのCo(5μl/1μl)=8.75mMのCo)を有する。
【0307】
供給される試薬材料は水溶液であってもよく、または、供給される試薬材料は1つまたは複数の有機溶媒(例えば、アセトン、エタノールまたはそれらの組み合わせ)を含むことができる。
【0308】
任意選択で、蛍光または着色添加剤が、試薬に加えられてよく、これにより、試薬の相互汚染および所望の堆積ゾーンの外への溢れ出しを検出できる。製品の性能は、相互汚染によって損なわれる可能性がある。堆積ゾーンは、近接しているかまたは少し離れていてもよい。蛍光または着色添加剤は、検査デバイスの動作、特に分析物の検出を阻害しないように選択される。
【0309】
堆積後、試薬は乾燥される。乾燥は、大気乾燥、赤外線乾燥、強制空気で支援された赤外線乾燥、紫外線乾燥、強制加温、制御された相対湿度乾燥、またはこれらの組み合わせによって達成できる。
【0310】
攪拌バー216は、先に説明したとおり、試薬材料の堆積前または後に、副基板204、206の凹部内に堆積されてもよい。試薬材料は、検出ゾーン内で攪拌バーを固定するために用いることができる。例えば、攪拌バーは、試薬材料がまだ湿っている間に、基板の凹部内に堆積された試薬材料と接触することができる。固定は、典型的には、攪拌バーが作動して試薬の可溶化を支援できる程度である。
【0311】
試薬材料は、検出ゾーンに入るサンプル物質が試薬材料を可溶化し、それによって、攪拌バーが回転し、試薬材料の可溶化を機械的に支援することが可能な程度まで溶解可能である。典型的には、試薬材料は、セルロース誘導体(例えば、Agualon社によるNatrosol Gなどのヒドロキシエチルセルロース)などの可塑化試薬を含む。いくつかの実施形態では、攪拌バーの長軸が、検出ゾーンに入るサンプル物質の流れに対して、非ゼロの角度(例えば、少なくとも約45°、少なくとも約70°、少なくとも約80°、ほぼ垂直)になるように、攪拌バーが固定される。例えば、攪拌バーの長軸は、サンプル物質が検出ゾーンに入るチャネルの長手方向軸に対して、このような非ゼロの角度であってもよい。典型的には、攪拌バーは、攪拌バーが検出ゾーンの側壁に接触しないように固定される。
【0312】
副基板204、206は、主基板202の対応する部分と結合して、微小流体ネットワークを形成する。結合は、例えば、副基板と主基板との間に置かれた、接着剤が裏面に付けられたラミネートを用いて達成することができる。
【0313】
いくつかの実施形態では、試薬材料の堆積は、副基板と主基板とが結合後になされる。結合後の堆積は、例えば、少なくとも部分的に(例えば、完全に)、検出容積を試薬材料溶液(例えば、コバルト溶液またはコバルト/ニッケル溶液)で充填し、次いで、乾燥(例えば、凍結乾燥)することによって達成可能である。検出容積が、完全に試薬材料溶液で充填される場合、検出ゾーン容積に対する堆積試薬材料の質量の比は、検出ゾーン容積の変化には関係なく一定である。
【0314】
検査デバイス200と検査リーダ252とを、方法100に従って検査を実行するものとして例示してきたが、デバイスおよび検査リーダは、他の検査を実行するように構成されてもよい。例えば、デバイスおよびリーダは、方法400に従って検査を実行するように構成することができる。このような実施形態では、デバイスの第1検出ゾーンは、デバイス200の検出ゾーン214と同じ特性(例えば、大きさおよび試薬の成分)を有してもよい。第2検出ゾーンは、デバイス200の検出ゾーン230と同じ大きさであってもよいが、例えば、塩化物補償試薬、懸濁促進試薬、可塑化試薬、分散試薬、緩衝試薬、消泡試薬、またはそれらの組み合わせを含む、方法400のステップ430に関して説明したような試薬成分を含む。
【0315】
検査リーダは、任意選択で虚血イベントの決定を含む方法400に従ってデバイスを作動させるように構成されている。
【0316】
微小流体デバイスはサンプル物質の2つの別個の部分のそれぞれについて決定を実行する、と説明してきたが、デバイスは他の構成を有してもよい。図6Aおよび6Bを参照すると、デバイスは、サンプル物質の単一部分を用いて複数回決定を実行する(例えば、方法100または400に従って)よう構成されている。デバイス300は、検査システム250を用いたデバイス200の作動に関して説明したとおり、検査リーダ252を用いて作動可能(例えば、方法100または400に従って)である。
【0317】
デバイス300は、第1および第2外側基板302、304と、任意選択の中間基板306とを含む。基板302、304、306は、第1および第2微小流体ネットワーク308、326を画定している。第1微小流体ネットワーク308は、サンプル物質入口310と、チャネル312によって入口310に接続された第1検出ゾーン314とを含む。第1微小流体ネットワーク308は、サンプル物質を収容し、試薬−サンプル物質混合物を生成する(例えば、方法100の第1混合物形成ステップ110に従って)ように構成されている。第1検出ゾーン314は、コバルト試薬を含んだ試薬材料(図示せず)と、攪拌バー216と、通気孔318と、それぞれ第1、第2、第3リード線321、323、325と接続されている第1、第2、第3電極320、322、324とを含む。第2微小流体ネットワーク326は、チャネル332によって入口320に接続された第2検出ゾーン330を含む。第2微小流体ネットワーク326は、サンプルを収容し、試薬−サンプル物質混合物を生成する(例えば、方法100の第2混合物形成ステップ130に従って)ように構成されている。第2検出ゾーン330は、コバルト試薬とニッケル試薬を含んだ試薬材料(図示せず)と、攪拌バー216と、通気孔334と、それぞれ第1、第2、第3リード線337、339、341と接続されている第1、第2、第3電極336、338、340とを含む。
【0318】
第1外側基板302は、微小流体ネットワーク308、326に対応する形状体を含む。例えば、溝380、382(図6B)は、微小流体ネットワーク308、326のチャネル312、332(図6A)とそれぞれ対応し、凹部384、386は、微小流体ネットワーク308、326の検出ゾーン314、330(図6A)にそれぞれ対応している。典型的には、基板302は、ポリマーで形成され、所望通りに形成できる(例えば、射出成形によって)。
【0319】
デバイス300では、中間基板306が、第1および第2外側基板302、204の間に置かれて。中間基板306は、各基板302、304の内面392、394とそれぞれ接合する第1および第2接着面388、390を含む。中間基板306は、第1および第2微小流体ネットワーク308、326に対応する形状(例えば、切欠部)を含む。
【0320】
第2外側基板304は、第1外側基板302と協働して、微小流体ネットワーク308、326を封止する。第2外側基板304は、電極320、322、324、336、338、340とリード線321、323、325、337、339、341とを支持する。電極およびリード線は、所望通りに形成できる(例えば、スクリーン印刷、フォトリソグラフィーおよびレーザーアブレーションによって)。
【0321】
入口310は、外側基板302のサンプル物質受取表面366と、中間基板306内の開口370とによって画定されたサンプル収容ゾーン362に近接している。使用中、各量のサンプル物質(例えば、全血、血漿、血清またはそれらの組み合わせなどの血液由来物質)が、サンプル収容ゾーン362に導入される。サンプル物質受取表面366は、サンプルを支持し、収容ゾーン262、264について述べたとおり、収容ゾーン362内の毛細管作用によって、そのサンプルが入口310、328に吸引される。入口310、328と接触したサンプル物質は、毛細管作用によって、各チャネル312、332に沿って検出ゾーン314、330に流れる。
【0322】
入口310に供給されたサンプル物質(例えば、血液由来物質)は、毛細管作用によって、検出ゾーン314に流れる。サンプル物質が入ると、通気孔318によって、気体(例えば空気)が検出ゾーン314から出ることができる。検出ゾーン314に収容されたサンプル物質は、検出ゾーン内の試薬材料と混合(例えば、懸濁または可溶化)して、第1混合物形成ステップ110に従って第1混合物を生成する。入口328に供給されたサンプル物質(例えば、全血)は、毛細管作用によって、検出ゾーン330に流れる。サンプル物質が入ると、通気孔334によって、気体(例えば空気)が検出ゾーン330を出ることができる。検出ゾーン330に収容されたサンプル物質は、検出ゾーン内の試薬材料と混合(例えば、懸濁または可溶化)して、第2混合物形成ステップ130に従って第2混合物を生成する。
【0323】
サンプル収容ゾーン362と検出ゾーン314、330とは、電気化学的な決定を実行する(例えば、方法100の決定ステップ120、140に従って)のに十分な量のサンプル物質を収容するように構成されている。典型的には、検出ゾーン314、330のそれぞれの自由容積は、少数回数(例えば、3回以下、2回以下、1回)の「指先穿刺」で得られた、ある一定量の血液によって充填可能である。例えば、いくつかの実施形態では、検出ゾーン314、330の全体の自由容積は、単一の「指先穿刺」からの血液で充填されることができる。各検出ゾーンの自由容積は、サンプル物質と試薬材料を充填するのに利用可能な容積である。自由容積には、攪拌バー216の容積は含まれない。いくつかの実施形態では、検出ゾーン314、330の全体の自由容積は、約100μl以下(例えば、75μl以下、50μl以下、30μl以下)である。いくつかの実施形態では、検出ゾーンの全体の自由容積は、約5μl以上(例えば、約10μl以上、約15μl以上)である。例示的な一実施形態では、検出ゾーン314、330の全体の自由容積は、約20μlである。典型的には、検出ゾーン314、330の各寸法と容積は、ほぼ同じ(例えば、実質的に同一)である。
【0324】
検出ゾーン314の試薬材料は、サンプル物質と混合するとコバルトイオンを提供するコバルト試薬を含む。検出ゾーン314の試薬材料の成分および種類は、検出ゾーン214について、および方法100の第1混合物形成ステップ110に関して説明したものと同じであってもよい。例えば、コバルト試薬は、固体物(例えば、コバルト塩の形のコバルト(例えば、塩化コバルト))を含むことができる。試薬は、乾燥コバルト塩であってもよい。サンプル物質は、コバルト試薬を可溶化して、方法100の第1混合物形成ステップ110に関して述べたとおりの特性(例えば、コバルト濃度)を有する混合物を生成する。
【0325】
コバルト試薬の量は、検出ゾーン314内で達成されるコバルト濃度と、検出ゾーンの自由容積とに依存する。コバルト試薬の量は、検出ゾーン214について述べたものと同じであってもよい。例えば、例示的な一実施形態では、コバルト試薬の量は、可溶化されると、約3.5mM以下(例えば、約1.5mM以下)の検出ゾーン314内のコバルト濃度を得るのに十分である。
【0326】
検出ゾーン314の試薬材料は、本明細書で述べるいずれの試薬、例えば、混合物形成ステップ110、130に関して説明した試薬(例えば、塩化物補償試薬、懸濁促進試薬、可塑化試薬、分散試薬、緩衝試薬、消泡試薬、またはそれらの組み合わせ)を含んでもよい。
【0327】
検出ゾーン330の試薬材料は、コバルトイオンを提供するコバルト試薬と、サンプル物質と混合するとニッケルイオンを提供するニッケル試薬とを含む。検出ゾーン330の試薬材料は、例えば、デバイス200の検出ゾーン230に関して述べたいずれの試薬材料であってもよい。例示的なコバルト試薬は、方法100の第1混合物形成ステップ110と検出ゾーン214、314に関して述べたコバルト試薬である。例えば、コバルト試薬は、固体物(例えば、コバルト塩の形のコバルト(例えば、塩化コバルト))を含むことができる。試薬は、乾燥コバルト塩であってもよい。例示的なニッケル試薬は、検出ゾーン230と方法100の第2混合物形成ステップ130に関して述べたニッケル試薬である。例えば、ニッケル試薬は、固体物(例えば、ニッケル塩の形のニッケル(例えば、塩化ニッケル(NiCl2)))を含んでもよい。例示的な一実施形態では、試薬は、乾燥コバルト塩と乾燥ニッケル塩とを含む。
【0328】
サンプル物質がコバルト試薬とニッケル試薬とを可溶化して、検出ゾーン230と方法100の第2混合物形成ステップ130に関して述べたような特性(例えば、コバルト濃度およびニッケル濃度)を有する混合物を生成する。例えば、検出ゾーン330内のニッケル濃度は、典型的には、コバルト−アルブミン複合体が実質的に存在しない程度に高い(例えば、コバルトのほとんどまたはほぼ全てが、コバルト−アルブミン複合体を生成することを妨げられ、および/またはコバルト−アルブミン複合体から除外される)。典型的には、検出ゾーン330のニッケル試薬は、コバルト試薬によって提供されるコバルト濃度よりも高い全ニッケル濃度を提供する。例えば、コバルト試薬によって提供されるコバルト濃度に対する、ニッケル試薬によって提供される全ニッケル濃度の割合は、典型的には、少なくとも約1.5(例えば、少なくとも約3、少なくとも約5、少なくとも約10)である。ニッケル試薬およびコバルト試薬によって提供されるコバルト濃度に対する全ニッケル濃度の割合は、典型的には、約25以下(例えば、約20以下、約15以下、約10以下)である。例示的な一実施形態においては、その割合は約5.5である。
【0329】
検出ゾーン330内のニッケル試薬の量は、デバイス200の検出ゾーン230について述べたものと同じであってもよい。例えば、例示的な一実施形態では、コバルト試薬の量は、約3.5mM以下(例えば、約1.5mM以下)の検出ゾーン330内のコバルト濃度を提供するのに十分であり、ニッケル試薬の量は、約5mMと約20mMとの間(例えば、約7.5mM以下)の検出ゾーン330内の全ニッケル濃度を提供するのに十分である。
【0330】
検出ゾーン230に関して述べたとおり、検出ゾーン330の試薬材料は、本明細書で述べるいずれの試薬(例えば、混合物形成ステップ110、130に関して述べたような試薬(例えば、塩化物補償試薬、懸濁促進試薬、可塑化試薬、分散試薬、緩衝試薬、消泡試薬、またはそれらの組み合わせ))を含んでもよい。
【0331】
それぞれの検出ゾーン314、330内のサンプル物質と試薬材料の混合を促進するために、システム252について説明したとおり、攪拌バー216を用いて検出ゾーン内の物質を移動させることができる。
【0332】
方法100に従って検査を実行するとして、検査デバイス300を具体的に説明してきたが、デバイスは、他の検査を実行するように構成されてもよい。例えば、デバイスは、方法400に従って検査を実行するように構成することができる。このような実施形態では、デバイスの第1検出ゾーンは、デバイス300の検出ゾーン314と同じ特性(例えば、大きさおよび試薬の成分)を有してもよい。第2検出ゾーンは、デバイス300の検出ゾーン330と同じ大きさであってもよいが、例えば、本明細書で述べたいずれかの試薬(例えば、混合物形成ステップ110、130に関して述べたような試薬(例えば、塩化物補償試薬、懸濁促進試薬、可塑化試薬、分散試薬、緩衝試薬、消泡試薬、またはそれらの組み合わせ))を含む、方法400のステップ430に関して説明したような試薬成分を含む。
【0333】
リーダは、虚血性イベントの決定を任意選択で含む方法400に従ってデバイスを作動させるように構成されている。
【0334】
図7A〜15を参照すると、検査リーダ500は、検査デバイスを作動させて検査を実行するように構成されている。例えば、検査リーダは、方法100または方法400に従って、デバイス200またはデバイス300を作動させることができる。
【0335】
典型的には、リーダ500は、入口554と、電気化学検出器と、表示器558と、磁気攪拌バーアクチュエータ559と、制御パネル561と、典型的には検出器、攪拌バーアクチュエータおよび/または表示器とつながれたプロセッサとを含む。使用中、検査デバイス(例えば、デバイス200または400)は、リーダ552の入口554内に受け入れられる。攪拌バーアクチュエータ559は、検査デバイスの検出ゾーン内の各サンプル物質−試薬混合物の生成を促進するために、検出ゾーン内で攪拌バー216を動かす(例えば回転させる)。電気化学検出器は各接点(図示せず)を含み、検査デバイスの電極を作動させる。プロセッサは、電気化学検出器から電気化学信号を受け取り、その信号に基づいて検査結果を決定する。表示器558は、検査結果および/またはその結果に基づいた虚血性状態の存在の決定を表示する。
【0336】
磁気攪拌バーアクチュエータは、2つのロータをそれぞれ駆動する単一のモータを有するギア駆動システムを含む。したがって、各ロータは同じ速度で回転する。ギアシステムは、混合される溶液の粘度/抗力効果が攪拌速度に影響を与える可能性を低減する。組み込まれたエンコーダディスク(周囲に均等な間隔で位置する多数の孔)を有するピニオンギアを用いて、混合機の回転速度を監視し、ロータの速度をフィードバック制御することを可能にしている。
【0337】
リーダ500は、検査中に検査ストリップの検出ゾーンの内容物(例えば、サンプル物質および試薬の混合物)の温度を制御するように構成された加熱機構を含む。典型的には、加熱機構は、検査を実行するのに適した温度を確立するように構成されている。血液由来サンプルの場合、その温度は、典型的には、約35°と40℃との間(例えば、約37℃)である。
【0338】
加熱機構は、リーダ500によって受け入れられた検査デバイスと熱的に接触(例えば、直接物理接触)するように構成された熱ブロック557を含む。典型的には、熱ブロックは、検査デバイスがリーダに挿入されると、検査デバイスと熱的に接触(例えば、直接物理接触)するように動く(例えば、回転する)よう構成されている。熱ブロック557は、受入れ位置(例えば、図8Cおよび9A)と、熱ブロック557が検査デバイスと熱的に接触する熱接触位置(例えば、図11B)との間を移動できる。検査デバイスの検出ゾーンの内容物の温度と、加熱機構体の熱ブロックの温度との間の関係を校正することにより、内容物の温度が熱ブロックの温度から予測できるようにされる。検査デバイスと温度制御器の熱ブロックとが熱的に接触しているため、温度制御器は、検査リーダの温度でなく加熱ブロックの温度を監視することができる。
【0339】
熱制御器においてリーダ500を用いて、加熱機構の機能を確認する(例えば、検査デバイス検出ゾーンの内容物の温度と熱ブロックの温度との間の校正を確認する)ことができる。典型的には、熱制御器の寸法および形状を検査デバイスと同等にして、制御器をリーダ500によって収容可能にし、および、挿入されると熱ブロックを制御器と熱的に接触可能にする。熱制御器は、制御器の温度を監視する温度センサ(例えば、サーミスタ)を含む。温度センサは、典型的には、制御器の接点と接続している。温度センサの接点は、典型的には、リーダにおいて用いられる検査デバイスの電極の接点と同じ位置に配置されている。
【0340】
温度センサの位置と温度制御器の熱的特性(例えば、温度制御器の熱伝導性および熱容量)が、検査デバイスと同様になるように、または、検査デバイスの熱的特性に関して既知の関係を有するように選択される。使用中、リーダ500は、(例えば、熱ブロックの温度を走査することによって)熱ブロックの温度の関数として熱制御器の温度を監視する。リーダ500は、熱ブロックの温度に対して検査デバイスの温度を校正する校正値を決定する。
【0341】
図16を参照すると、検査デバイス700は、SDメモリカード型インターフェースと類似のデザインを有する。図12〜14もまた参照すると、検査リーダ500は、検査デバイスがリーダに挿入されると、検査デバイスと係合して、検査デバイスを所定の位置に「固定」するロック形状体449を含む。典型的には、ロック形状体は検査デバイスを磁気攪拌バーアクチュエータに対して正確な位置に固定して、反応チャンバの内容物の効果的な混合を保証する。図15A〜15Cを参照すると、リーダ500は、検査後に検査デバイスを取り外す(例えば、少なくとも部分的に取り外す)ように構成された検査リーダ取出機構体を含む。取出機構体は、押しボタン447と押出体551とを含む。押出体は、検査デバイスの肩部に対して回転することによって、検査デバイス700を取り外すように作動する。
【0342】
検査デバイス700は、本明細書で述べた他の検査デバイスの任意の形状体(例えば、入口、チャネル、検出ゾーン、電極および/または試薬材料)を有して構成することができる。図示した例示的な一実施形態では、デバイス700は、第1および第2外側基板702、704と、任意選択の中間基板706とを含む。基板702、704、706は、デバイス300について述べたとおり、第1および第2微小流体ネットワークを画定している。第1微小流体ネットワークは、サンプル物質入口と、チャネルによってその入口に接続された第1検出ゾーンとを含む。第1微小流体ネットワークは、サンプル物質を収容し、(例えば、方法100の第1混合物形成ステップ110に従って)試薬−サンプル物質混合物を生成するように構成されている。第1検出ゾーンは、コバルト試薬を含んだ試薬材料(図示せず)と、攪拌バー216と、通気孔718と、それぞれ第1、第2、第3リード線720、722、724と接続されている第1、第2、第3電極721、723、725とを含む。第2微小流体ネットワークは、チャネルによって入口に接続された第2検出ゾーンを含む。第2微小流体ネットワークは、サンプルを収容し、試薬−サンプル物質混合物を生成する(例えば、方法100の第2混合物形成ステップ130に従って)ように構成されている。第2検出ゾーンは、コバルト試薬とニッケル試薬を含んだ試薬材料(図示せず)と、攪拌バー216と、通気孔734と、それぞれ第1、第2、第3リード線737、739、741(図16Bに示されているように基板704の下にある)と接続されている第1、第2、第3電極336、338、340とを含む。デバイス700は、方法100に従ってリーダによって作動することができる。
【0343】
方法100に従って混合物を生成し、決定を実行するように構成されている、として検査デバイス700を説明してきたが、他の実施形態も可能である。例えば、デバイス700は、本明細書で述べた他の方法に従って作動するように構成することができる。例示的な一実施形態では、デバイス700は、方法400に従って混合物を生成し、決定を実行するように構成されている。
【0344】
検査デバイスは、サンプルの第1部分に第1検査を実施し、サンプルの第2部分に第2検査を実施する、として説明してきたが、他のデバイスおよび方法を用いることも可能である。例えば、いくつかの実施形態では、検査デバイスは、サンプル(例えば血液由来サンプル)に、(例えば、方法100の第1コバルト決定ステップ120または方法400の第1コバルト決定ステップ420に従って)第1検査を実施する。デバイスは、第1検査を実施するのに用いられたサンプルの同じ部分に、(例えば、方法100の第2コバルト決定ステップ140または方法400の第2コバルト決定ステップ440に従って)第2検査を実施する。
【0345】
図17を参照すると、検査デバイス801は、コバルトのみの検査と、コバルトとニッケルの検査との両方のための検出容量を含む。デバイス801は、入口802と、入口に流体的に接続された第1検出容量804と、第1検出容量804にチャネル808を介して流体的に接続された第2検出容量806とを含む。第1検出容量804は、第1電極810とコバルト試薬とを含み、第2検出容量806は第2電極812とニッケル試薬とを含む。
【0346】
使用中、ある一定量のサンプル物質(例えば、血液由来物質)が、入力ポート802を通してデバイス801に導入される。デバイス801は、検査リーダによって受け入れられる。接点814、816は、リーダの対応する接点(図示せず)を介して、電極とリーダのプロセッサとの間の通信を確立する。
【0347】
血液の第1部分が、チャネル808に沿って(例えば、毛細管作用によって)、第1検出容積804内に入り、塩化コバルト塩と混合して第1混合物を生成する。第1混合物中のアルブミンが、第1混合物中のコバルトの一部と複合する。リーダは第1検出ゾーン804の電極810を作動さて、第1混合物中の遊離コバルトを決定する。第1検出ゾーン804からの第1混合物が、チャネル808に沿って(例えば、毛細管作用によって)、第2検出ゾーン812内に入り、塩化ニッケル塩と混合して第2混合物を生成する。第2混合物中のニッケルは、第1混合物中に存在していたコバルト−アルブミン複合体からコバルトを離して移動させる。
【0348】
リーダは、第2検出ゾーン818の第1、第2および第3電極826、828、830を作動させて、第2混合物中の遊離コバルトを決定する。第1および第2混合物中に存在するコバルトの量の結果に基づいてリーダは、デバイス801に導入されたサンプル物質(例えば、血液)中に存在するアルブミンの量を示す結果を決定し、上述のとおり、虚血性イベントの存在を決定することができる。
【0349】
図18を参照すると、デバイス850は、入力ポート802と、第1検出ゾーン804とを含む。入力ポート302は、第1検出ゾーン804に流体的に接続されている。第1検出ゾーン304は、接点816と電気的に通信する電極810を含む。デバイス850はまた、入力ポート802と流体的に接続された第2検出ゾーン806を含む。第2検出ゾーン806は、接点814と電気的に通信する電極812を含む。検出ゾーン804、806は、バリア818によって分離されている。バリア818は、検出ゾーン804と806との間の流体交換を防ぐ。バリア818は、例えば、基板の一部として(例えば、射出成形中に)、または蓋の一部として形成可能である。バリア818は、例えば、ゾーン804および806の間の壁の形を取ることができ、または、窪みの形(例えば、基板内にある)を取ることにより、窪みを横切って流体が移動することを(例えば、毛細管作用を阻害することによって)効果的に防ぐことができる。
【0350】
第1検出ゾーン804は、コバルト試薬を含み、第2検出ゾーン806は、コバルト試薬とニッケル試薬とを含む。使用中、ある一定量のサンプル物質(例えば、ヒトからの血液)が、入力ポート802を介してデバイス801に導入される。デバイス850は、検査リーダによって受け入れられる。接点814、816によって、デバイスの電極とリーダの接点との間の通信が確立される。リーダは、方法100または400のコバルト検出ステップに従って、デバイスの電極を作動させる。
【0351】
次に、発明者らは特定の追加の実施形態について説明する。一般に、以下に従って変更されるいずれの方法、デバイス、リーダ、システム、試薬材料またはそれらの一部も、本開示の一部と見なされる。
【0352】
血液由来サンプル物質を用いる方法およびデバイスを説明してきたが、他のサンプル物質を用いることもできる。例えば、適切なサンプル物質には、組織(例えば、心臓組織)、尿、リンパ液、唾液またはそれらの組み合わせなど生体物質が含まれる。例示的な一実施形態では、サンプルには、血液由来物質(例えば、血液、血漿および/または血清)またはそれらの組み合わせが含まれる。他の適切なサンプル物質には、工業および/または研究物質(例えば、石油、細胞培養、原料)および環境物質(例えば、水、溶剤、土壌、空気)が含まれる。
【0353】
ヒトからのサンプル物質を用いる方法およびデバイスを説明してきたが、生物学的サンプル物質は他のソースから得られてもよい。例えば、サンプル物質は、別の哺乳類(例えば、ウシ(例えば雌牛)、ブタ(例えば豚)、げっ歯類(例えばマウス)または、ウマ(例えば馬))から得られてもよい。典型的には、このようなサンプルは、血漿、血清または全血などの血液由来サンプルである。サンプル物質はまた、製造されたソース(例えば、細胞培養、溶剤、石油および食料品)に由来してもよい。
【0354】
アルブミンを決定するための方法およびデバイスを説明してきたが、他の分析物を決定することもできる。例えば、いくつかの実施形態では、分析物には、生物学的分析物(例えば、蛋白質(例えば血液中に見られる蛋白質)、虚血変性アルブミンまたはそれらの組み合わせ)が含まれる。本明細書で説明した方法およびデバイスの例示的な環境用途には、例えば、ヒトおよび動物の診断、(例えば、毒性の薬剤、金属、毒素、細菌、藻類などによる)汚染に関する環境サンプルの検査が含まれる。食料品を分析して、許容できないレベルの微生物、細菌またはウィルスによる汚染が存在しないことを保証することもできる。本発明の方法およびデバイスを利用できる他の分野には、科学捜査、水産養殖、獣医学、農業、食品加工および醸造が含まれる。
【0355】
コバルトとの複合体の生成に基づいて分析物(例えば、アルブミン)を決定することを含む方法およびデバイスを説明してきたが、アルブミンまたは他の分析物を決定するために、コバルト以外の第1試薬が用いられてもよい。適切な第1試薬の例には、その物質に対して分析物(例えば、アルブミン)が混合物中の少なくとも1つの他の化合物(例えば、IMA)とは異なる(例えば、高い)親和力を有する物質で、その物質に対して分析物との親和力を別の物質(例えば、ニッケル)によって変更できる物質であり、さらに分析物(例えば、アルブミン)と結合すると、分析物を含まない場合とは異なる感度で検出できる物質が含まれる。例えば、他の金属(例えば、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuおよびAg)は、それぞれ、IMAよりも容易にアルブミンと複合体を生成する。このような金属は、アルブミンと結合するために他の物質(例えば、他の金属と(例えば、互いに)または抗体と)と競合し、アルブミンと結合すると、アルブミンを含まない場合とは異なる感度で、検出する(例えば、電気化学的に)ことができる。例えば、Cu、Ni、Zn、Mn(マンガン)、CoおよびMgは、アルブミンに対して親和力が低下している(Cuの親和力が最も高い)。一般に、方法100は、任意にコバルトを他の金属(例えば、Ni、Zn、MnまたはMg)のうちの1つと置き換え、任意にコバルトを置き換えるのに選択された金属よりもアルブミンに対する親和力が高い他の金属のうちの1つとNiを置き換えることによって、実行できる。例示的な一実施形態では、方法100は、コバルトを用い、ニッケルを銅と置き換えることによって実行される。
【0356】
追加の適切な物質には、アルブミンに対する親和力がIMAとは異なる抗体が含まれる。
【0357】
一般に、決定ステップ120は、第1混合物中の第1試薬(例えば、コバルト)を決定する工程を含む。第1試薬は、典型的には、分析物と相互作用すると(例えば、分析物と複合するとき)、このような相互作用が存在しない場合(例えば、分析物と複合しないとき)とは異なる(例えば、低い)感度で検出可能な材料である。したがって、第1混合物中の第1試薬の決定された量は、典型的には、第1試薬の総量よりも少ない。なぜなら、分析物と相互作用した第1試薬は、検出されず、および/または分析物と相互作用していない第1試薬よりも低い感度で検出されるからである。
【0358】
コバルトとアルブミンとの間の相互作用を変更するために第2試薬(例えば、ニッケル)を用いる方法およびデバイスを説明してきたが、他の第2試薬が、代替的に、または追加で、用いられてもよい。一般に、コバルトとアルブミンとの間の相互作用を変更する(例えば、低減する)任意の材料が使用可能である。典型的な材料は、アルブミンと結合するためにコバルトと競合し、および/またはコバルトに対する親和力を低減するためにアルブミンを変性させる。例えば、いくつかの実施形態では、別の金属(例えば、銅、遷移金属またはそれらの組み合わせ)が、コバルトとアルブミンとの間の相互作用を変更するために、単独で、またはニッケルと組み合わせて用いられる。例示的な一実施形態では、第2混合物を生成するステップ130は、サンプル物質の一部を銅と混合する工程(例えば、水溶液(例えば硫酸銅溶液)および/または固体銅塩(例えば硫酸銅)として)を含む。他の適切な物質には、生物学的物質(例えば、コバルト結合を阻止する、アルブミンに対する抗体)が含まれる。
【0359】
一般に、決定ステップ140は、第2試薬の存在下で、第1試薬を決定する工程を含む。典型的には、第2試薬と分析物とは相互作用して、第1試薬と分析物との間の相互作用を変更することができる。例えば、第2試薬と分析物とが相互作用することによって、典型的には、第1試薬と分析物との間の相互作用が防止さ、低減され、競合され、および/または破壊される。一般に、分析物に対する第2試薬の親和力は、分析物に対する第1試薬の親和力よりも大きい。
【0360】
第2試薬は、典型的には、第1試薬と分析物との間の相互作用を変更する(例えば、防止および/または低減する)ことが可能な種である。いくつかの実施形態では、第2試薬は、第1試薬を、分析物との複合体と置き換える。一般に、第2試薬は、分析物に対する第1試薬の親和力よりも大きい、分析物に対する親和力を有する種である。例えば、いくつかの実施形態では、分析物は蛋白質(例えば、アルブミン)であり、第1試薬は、分析物と複合する金属イオン(例えば、コバルト)であり、第2試薬は、第1試薬と比較して優先的に分析物と複合する金属イオン(例えば、ニッケル、銅、遷移金属またはそれらの組み合わせ)である。
【0361】
第1および第2試薬は両方とも同じ種類の物質(例えば、両試薬とも金属イオンでもよい)であってもよいが、これらの試薬は異なる種類の物質であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、第1試薬は金属イオン(例えば、コバルト、ニッケル、銅、遷移金属またはそれらの組み合わせ)であり、第2金属は、異なったタイプの種(例えば、分析物に対する抗体(例えば、アルブミンに対する抗体)、蛋白質、酵素、または、第1試薬の検出性を変更する他の種などの生物学的化合物)である。
【0362】
決定ステップ140において、第2混合物中の第1試薬が決定される。決定ステップ120、140は、典型的には同じ検出方法を用いて実行される。第2試薬は、第1試薬と分析物との間の相互作用を変更するので、第2混合物中で決定された第1試薬の量140は、典型的には、第1混合物中で決定された量120よりも多い。
【0363】
決定ステップ150において、サンプル物質内に存在する分析物の量を表す値が、決定ステップ120、140の結果に少なくとも部分に基づいて決定される。典型的には、第1混合物中で決定された第1試薬の量120と、第2混合物中で決定された第1試薬の量140との差は、サンプル物質中の分析物の量を表す(例えば、比例している)。いくつかの実施形態では、サンプル物質中に存在する分析物の量を表す値は、第1混合物中で決定された第1試薬の量120と、第2混合物中で決定された第1試薬の量140との差に少なくとも部分的に基づいて決定される。
【0364】
第1試薬は、典型的には、分析物と相互作用する(例えば、分析物と複合体を生成することによって)ことが可能な種である。いくつかの実施形態では、第1試薬は、コバルトなどの金属(例えば、金属イオン)である。
【0365】
遊離第1試薬(例えばコバルト)の量を電気化学的に決定することを含む方法およびデバイスを説明してきたが、他の決定方法が用いられてもよい。例えば、ボルタンメトリー(例えば、ストリッピングボルタンメトリー)および電位差測定法を含む他の電気化学的方法を用いることができる。さらに、他の電極構成(例えば、櫛状電極)を用いることもできる。
【0366】
追加の適切な決定方法には、光学的方法(例えば、蛍光または吸収分光法)が含まれる。いくつかの実施形態では、第1試薬は、比色法によって検出される。例えば、微小流体デバイスの検出ゾーンが、光をデバイスに入射および/または出射可能にする、1つまたは複数の光窓を有してもよい。サンプル物質は、遊離コバルトの存在下で有色の複合体を生成するが、アルブミンと複合したコバルトとの有色の複合体は生成しない試薬と混合する。結果として得た混合物の光学密度に基づいて、遊離コバルトの決定がなされる。
【0367】
サンプル物質を固形試薬(例えば、塩)と混合するデバイスについて説明してきたが、他の構成が用いられてもよい。例えば、本明細書で説明したデバイスはいずれも、それぞれ液体試薬(例えば、方法100または400に従って第1および第2混合物を生成するための、試薬材料を含む水溶液)を収容した1つまたは複数の試薬ポーチを備えて構成できる。試薬ポーチ、典型的には、1つまたは複数のチャネルによって、微小流体ネットワークに接続されている。デバイス上の試薬ポーチはまた、あるいは代替的にサンプル物質の特性を変更する試薬を含むことにより、分析物の決定を支援することができる。例示的な試薬には、緩衝剤、溶解剤、pH調節剤および希釈剤が含まれる。使用中、試薬ポーチは作動(例えば、破裂)して、試薬ポーチ内の試薬がサンプル物質と混合することが可能になる(例えば、2005年11月5日付で出願された米国特許出願第60/736,302号明細書を参照のこと。なお、この内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0368】
分析物と相互作用していない第1試薬と比較して、分析物と相互作用している第1試薬に対して異なる感度を有する検出方法を用いた方法およびデバイスを説明してきたが、他の検出方法が用いられてもよい。いくつかの実施形態では、検出方法は、相互作用していない第1試薬から、相互作用した第1試薬を区別する。例えば、この方法は、相互作用した第1試薬と相互作用していない第1試薬とを表す信号が、異なった電位および/または電流で生じる電気化学的方法であってもよい。別の実施例として、検出方法は、相互作用した第1試薬と相互作用していない第1試薬とを表す信号が、異なった波長で生じるか、または異なった寿命もしくは分極を有する光学的方法であってもよい。
【実施例】
【0369】
以下は非限定的な実施例である。
【0370】
実施例1:全血におけるコバルトの電流測定的な還元曲線
ヒトソースからの全血とコバルト試薬(CoCl2)とを混合して、全血中の1mMのCo溶液(コバルトのみの溶液)を調製した。同じソースからの全血と、コバルト試薬(CoCl2)と、ニッケル試薬(NiCl2)とを混合して、全血中の1mMのCo/5mMのNi溶液(コバルト/ニッケル溶液)を調製した。コバルト還元電流がこれらの溶液から得られた。全血は、虚血性イベントを発現していないヒトソースを表していると考えられる。
【0371】
図17を参照すると、第1および第2コバルト還元電流600、602は、コバルトのみの溶液から得られたコバルト還元電流を表している。第3および第4コバルト還元電流604、606は、コバルト/ニッケル溶液から得られたコバルト還元電流を表している。電気化学信号608は、0.6Vと0.8Vとの間の曲線600の還元電流の負ピーク609と、約0.4〜0.6Vの電圧で生じる曲線の変曲点611との差である。電気化学信号610は、0.6Vと0.8Vとの間の曲線606の還元電流の負ピーク613と、約0.4〜0.6Vの電圧で生じる曲線の変曲点615との差である。
【0372】
曲線604、606を得るために用いられる溶液中にニッケルが存在するために、コバルトは溶液中のアルブミンと置き換えられた。したがって、より多くのコバルトが電流測定により検出される遊離コバルトとして利用可能であった。したがって、コバルト/ニッケル溶液からの電気化学信号610は、コバルトのみの溶液からの電気化学信号608よりも大きな振幅を有する。
【0373】
実施例2:全血中にニッケルまたは銅が存在する場合のコバルトの電気化学信号
実施例1の溶液を調製するために用いられたヒトソースからの全血を、コバルト試薬(CoCl2)と銅試薬(CuCl2)と混合して、複数のコバルト/銅溶液を調製した。コバルト/銅溶液は、それぞれ1mMのCoであり、0mMから10mMの範囲の銅濃度を有していた。同じヒトソースからの全血を、コバルト試薬(CoCl2)とニッケル試薬(NiCl2)と混合して、複数のニッケル/銅溶液を調製した。ニッケル/銅溶液は、それぞれ1mMのCoであり、0mMから20mMの範囲の銅濃度を有していた。コバルト還元電流がコバルト/銅溶液およびコバルト/ニッケル溶液のそれぞれから得られた。
【0374】
図20を参照すると、電流対Ni濃度曲線620は、Ni濃度に対するコバルト/ニッケル溶液からの電気化学信号をグラフ表示している。電流対Cu濃度曲線622は、Cu濃度に対するコバルト/銅溶液からの電気化学信号をグラフ表示している。電気化学信号は、実施例1で説明したのと同様にして得られた。
【0375】
コバルト/ニッケル溶液およびコバルト/銅溶液に関しては、遊離コバルトの量が増えるために、コバルトの電気化学信号の振幅は、ニッケルまたは銅濃度の増加とともに大きくなった。電気化学信号は、約5mMのニッケルまたは銅濃度で飽和した(すなわち、大きくならなくなった)。これは、実質的に全てのコバルトが、アルブミンによって結合されたコバルトとは対照的に、遊離コバルトとして有効であったことを示している。
【0376】
実施例3:全血中のコバルトの電気化学信号の校正曲線
実施例1の溶液を調製するために用いられたヒトソースからの全血を、コバルト試薬(CoCl2)と混合して、複数の校正液を調製した。校正液は、それぞれ1mMのCoから3mMのCoの範囲にあるコバルト濃度を有していた。ニッケルは用いられなかった。電気化学信号は、実施例1で説明したのと同様にして得られた。
【0377】
図21を参照すると、校正液から得られた電気化学信号630が、コバルト濃度に対して示されている。直線632は、電気化学信号630に対する最小二乗最適近似直線である。最適近似直線632は、全血溶液中のアルブミンがコバルトの一部と結合するために、負の切片を有する。アルブミンによって結合されたコバルトの量は、最適近似勾配および切片に基づいて、約0.94mMと予測することができる。
【0378】
実施例4:血清中にニッケルまたは銅が存在する場合のコバルトの電気化学信号
実施例1の溶液を調製するために用いられたヒトソースからの全血を沈殿させて、血漿を調製した。血漿をコバルト試薬(CoCl2)および銅試薬(CuCl2)と混合して、複数のコバルト/銅溶液を調製した。コバルト/銅溶液のそれぞれは1.5mMのCoであり、0mMから10mMの範囲の銅濃度を有していた。血漿の別の部分を、コバルト試薬(CoCl2)とニッケル試薬(NiCl2)と混合して、複数のニッケル/銅溶液を調製した。ニッケル/銅溶液のそれぞれは1.5mMのCoであり、0mMから20mMの範囲の銅濃度を有していた。コバルト還元電流が、コバルト/銅溶液およびコバルト/ニッケル溶液のそれぞれから得られた。
【0379】
図22を参照すると、電流対Ni濃度曲線640は、Ni濃度に対するコバルト/ニッケル溶液からの電気化学信号をグラフ表示している。電流対Cu濃度曲線642は、Cu濃度に対するコバルト/銅溶液からの電気化学信号をグラフ表示している。電気化学信号は、実施例1で説明したのと同様にして得られた。
【0380】
コバルト/ニッケル溶液およびコバルト/銅溶液に関しては、遊離コバルトの量が増えるために、コバルトの電気化学信号の振幅は、ニッケルまたは銅濃度の増加に伴って大きくなった。電気化学信号は、約5mMのニッケルまたは銅濃度で、実質的に飽和した(すなわち、大きくならなくなった)。これは、実質的に全てのコバルトが、アルブミンによって結合したコバルトとは対照的に、遊離コバルトとして有効であったことを示している。
【0381】
実施例5:血清中のコバルトの電気化学信号の校正曲線
実施例4からの血清をコバルト試薬(CoCl2)と混合して、複数の校正液を調製した。校正液は、それぞれ1.5mMのCoから4mMのCo(コバルトのみの溶液)の範囲にあるコバルト濃度を有していた。血清の別の部分をコバルト試薬(CoCl2)とニッケル試薬(NiCl2)と混合して、複数の校正液を調製した。校正液は、それぞれ1.5mMのCoから4mMのCoの範囲にあるコバルト濃度と、20mMのニッケル濃度を有していた(コバルト/ニッケル溶液)。
【0382】
電気化学信号は、実施例1で説明したのと同様にして得られた。
【0383】
図23を参照すると、コバルトのみの校正液から得られた電気化学信号650が、コバルト濃度に対して示されている。直線652は、電気化学信号650に対して最小二乗最適近似直線である。最適近似直線652は、全血溶液中のアルブミンがコバルトの一部と結合するために、負の切片を有している。アルブミンによって結合されたコバルトの量は、最適近似勾配および切片に基づいて、約1.5mMと予測することができる。コバルト/ニッケル校正液から得られた電気化学信号654が、コバルト濃度に対してグラフ表示されている。直線656は、電気化学信号654に対する最小二乗最適近似直線である。
【0384】
実施例6:全血中の電気化学的なコバルト信号に対するニッケルの効果
コバルトの電気化学的な(EC)決定に対するニッケル濃度の効果を試験するために実験が行われた。
【0385】
血液を、水性の塩化コバルト溶液と、水性の塩化ニッケル溶液のシリーズのうちの1つと混合して、一連の混合物を生成した。混合物のそれぞれは、コバルト中では1.5mM(見掛けではなく実際)であり、ニッケル中では1〜20mM(見掛けではなく実際)の範囲にあった。同じソースからの血液を、第2の水性の塩化コバルト溶液と、水性の塩化ニッケル溶液のシリーズのうちの1つと混合して、一連の混合物を生成した。混合物はそれぞれ、コバルト中では2.5mM(見掛けではなく実際)であり、ニッケル中では1〜20mM(見掛けではなく実際)の範囲にあった。
【0386】
ピペットを用いて溶液を検査デバイスに導入し、コバルトを電流測定により決定した。
【0387】
図24を参照すると、1.5mMのコバルト溶液と2.5mMのコバルト溶液の両方に対するピーク電流応答は、最大値が約4mMのニッケルに到達するまでニッケル濃度とともに増加する。その後、コバルト応答は減少するが、10〜20mMの間で急激に減少するのではない。この挙動は、アルブミンと結合するためにニッケルがコバルトと競合するという考えと一致している。アルブミンが、結合したニッケルと飽和状態になるまで、ニッケル濃度が上昇するので、ニッケルが存在すると、「遊離」コバルトの濃度が増す。飽和点の後は、ニッケルをさらに追加してもコバルト信号はそれ以上増加しない。ニッケルの飽和濃度が、両方に対して同じように現れるという事実
【0388】
全血に加えられる試薬の濃度に対するヘマトクリットの潜在的な効果に留意することは重要である。なぜなら、発明者らは、コバルトが(したがって、おそらくニッケルも)、周囲の血漿中のこれらの金属イオンの実際の濃度が予想よりも高い原因となる赤血球から排除されていると考えているからである。この特定の血液サンプルは、47%のヘマトクリットを有していた。これは、1ミリリットルの血液が、コバルトとニッケルを含むために、0.53mlだけの血漿を有していることを意味している。したがって、これらの血漿濃度は以下のように調節されてもよい。すなわち、コバルト;1.5mM(実際)→2.8mM(見掛け);2.5mM→4.7mM(見掛け)、ニッケル;4mM→7.5mM(見掛け);20mM→38mM(見掛け)。このヘマトクリットの提示された「濃度」効果は、49%のヘマトクリットを有する全血サンプルが、5mM(実際)のニッケル飽和点を有する(コバルト応答に対して)という先の発見によって、強く裏付けられるが、これは、得られた血清についても試験すると、ニッケル飽和点は10mMになる――ヘマトクリットによって予測される変化である。
【0389】
血液血漿中で7.5mMのアルブミン−飽和ニッケル濃度を達成するには、30%のヘマトクリットを有する血液が、5.25mMの「見掛けの」濃度(これは、赤血球がニッケルイオンを排除しない場合に達成される濃度である)に対して十分なニッケルの量を受け入れる必要がある。同じ量のニッケルが、60%のヘマトクリット血液の血漿で、13mMの濃度を生成する。この作業で用いられる血液は、6.9mMの見掛けのニッケル濃度において、13mMの血漿ニッケル濃度を有している。4〜6.9mMのニッケルでは、コバルト信号に比較的小さい差しかなかった。
【0390】
実施例7:コバルトを用いたアルブミンの決定
複数のヒトの血液サンプルが得られた。第1サブセットのサンプルが、健常な被験者の静脈からの採血によって得られた。サンプルは、全血として直接用いられるか、またはサンプルを遠心分離にかけて赤血球を除去し、血清もしくは血漿のいずれかを生成した。第2サブセットのサンプル(虚血性サンプル)が、外部の供給者から得られた。サンプルは、使用前に保存するため1mLの量に分割された凍結血清サンプルとして供給された。サンプルは、虚血性イベントを発現していると疑われる患者から得られた。血液サンプルはそれぞれ、第1および第2の100μLの部分に分けられた。
【0391】
第1の100μLの血液サンプル部分のそれぞれは、次のように処理された。第1の100μLの部分を、5μLの水性の塩化コバルトおよび塩化カリウム溶液と混合して、最終的な濃度が2.25mMの塩化コバルトと75mMの塩化カリウムとを有する混合物を生成した。この混合物を2分間培養した。コバルトの第1部分が、混合物中のアルブミンと複合体を生成した。
【0392】
混合物の10μL量が、試験片の検出ゾーンに加えられた。この試験片は、ポリエステル基板とポリマー膜とによって画定された検出ゾーンを含んでいた。検出ゾーンは、第1および第2のスクリーン印刷された炭素電極と、銀/塩化銀基準電極とを含んでいた。
【0393】
第1作用電極が、+1.0ボルトで40秒間維持された。第1作用電極の電位が、+1.0から−0.5ボルトで、+0.7ボルト/秒で走査された。+0.6〜+0.8ボルトの最大負電流が決定された。この電位範囲における実質的に全ての電流は、アルブミンと複合しないコバルトにより発生した。
【0394】
混合物の第2の量に、アルブミンコバルト結合(ACB(登録商標))試験を実施して、混合物中に存在するアルブミンのコバルト結合能力を光学的に決定した。血液サンプルのみがACB(登録商標)試験を用いて分析された。
【0395】
図25を参照すると、第1の100μLの血液サンプル部分に対して決定された最大負電流が、ACB(登録商標)試験によって決定されたそのサンプルに対するコバルト結合能力に対してグラフ表示されている。図26では、健常なサンプルが、虚血サンプルによって形成される線からずれた第1の線を形成している。このずれは、2つのサンプルの種類の間の処理または付随種の差から生じると推定される。
【0396】
実施例8:ニッケルの存在下でコバルトを用いるアルブミンの決定
実施例7からの第2の100μLの血液サンプル部分のそれぞれは、以下のように処理された。第2の100μLの血液サンプル部分を、5μLの水性の塩化ニッケル、塩化コバルトおよび塩化カリウム溶液と混合して、20mMのニッケル濃度、0.7mMのコバルト濃度および75mMの塩化カリウムを有する溶液を生成した。この混合物を2分間培養した。ニッケルは、混合物中で、優先的に(コバルトと比較して)、アルブミンとの複合体を生成した。実質的に全てのコバルトはアルブミンと複合しないままであった。
【0397】
混合物の10μL量が、実施例1で説明したのと同様にして、試験片の検出ゾーンに加えられた。第1作用電極が+1.0ボルトで40秒間維持された。第1作用電極の電位が、+1.0から−0.5ボルトで、+0.7ボルト/秒で走査された。+0.6〜+0.8ボルトの最大負電流が決定された。この電位範囲における実質的に全ての電流は、アルブミンと複合しないコバルトにより発生した。
【0398】
図27を参照すると、第2の100μLの血液サンプル部分に対して決定された最大負電流と、第1の100μLの血液サンプル部分との差が、ACB(登録商標)試験によって決定されたそのサンプルに対するコバルト結合能力に対してグラフ表示されている。
【0399】
図24および図25のデータを比較すると、健常なサンプルは、虚血サンプルによって形成された線と重なる線を形成していることがわかる。ニッケルを使用することで、図24で見られた電流のずれが補正された。さらに、直線近似の質から決定される図25のデータの精度は、図24のデータの精度よりも優れている。
【0400】
実施例8
サンプルが上述と同様に試験された。ただし、コバルト濃度は、両方の場合とも(すなわち、20mMのニッケルを追加せずに検査した場合、または追加して検査した場合)、2.25mMで一定であった。図26は、ACB値に対してプロットされたコバルト酸化電流のピーク高さ(nAの単位)を示している。図7は、20mMのニッケルの存在下で試験された場合のサンプルに対する結果を示している。図22では、コバルトおよびニッケルの測定値に対するコバルトのみの測定値の割合が、ACB値に対してグラフ表示されている。図示されているとおり、直線に対する近似は、図21よりも図22の方が格段に優れている。
【0401】
実施例9
胸痛または他の心臓の症状の発作を経験している(または最近経験した)ヒト被験者が、医療専門家によって診断される。専門家は、胸痛または症状が、主に心臓が原因のものであると決定する。この決定後に、被験者からの被験者血液由来物質を複数機会にわたり検査して、被験者が虚血性イベントを発現している(または過去に発現したか)どうかを決定する。例えば、被験者は、本明細書で説明した検査システム(例えば、本明細書で説明した検査リーダおよび検査デバイス)を用いて虚血性イベントの存在を決定してもよい。決定後のある一定期間の間に、ある一定間隔で、複数機会のそれぞれについて検査が実行される。間隔は、典型的には、少なくとも約4時間および約12時間、例えば、約6〜約8時間である。期間は、典型的には、胸痛が、実際に心臓が原因であるイベントにおいては、被験者にとってリスクの高い期間に及ぶ。例えば、測定は少なくとも約24時間、例えば少なくとも約48時間、または少なくとも約72時間実行されることがある。
【0402】
実施例10
本明細書で述べた方法およびデバイスのいずれかを用いて、患者の既知の心疾患の治療を経験した患者の虚血の存在を決定する。治療(バイパス、ステント)は、手術後数ヶ月以内に、合併症および新たな虚血または心筋梗塞を引き起こすことが多いため、虚血を監視することが有効である。虚血の存在は、イベントまたは外科的治療の後に、複数機会について決定される(例えば、方法100または400に従って)。これら複数機会のうちの1つまたは複数による結果を用いて基準を形成する。以降の結果が、その基準と比較される。例えば、1週間に少なくとも数回(例えば、毎日または1日に複数回、例えば、1日に少なくとも2回)決定を行うことができる。IMAのレベルの増加は、虚血または心筋症状の可能性(例えば、新たな心臓発作)を表している。
【0403】
実施例11
本明細書で説明した方法およびデバイスで使用するのに適した試薬が調製された。300gの水と、5gのMOPS緩衝液(Sigma M9027)と、1.0gのAntifoam FDP(Basildon Chemicals)と、0.75gのTergitol 15−S−9と、13.3gのヒドロキシエチルセルロース(Aqualon社からのNatrosol G)とを含む混合物が生成された。この混合物を夜通し回転させてNatrosol Gを確実に適切に溶解した。270gの溶液が新しい容器に移された。8.0gのシリカ粉末(Cabosil TS610)が加えられ、シリカを均一に分散させるためにシルバーソンミキサーが用いられた。
【0404】
シリカ粉末を含む250gの混合物が、新たな容器に移され、0.875gの塩化コバルトが混合物に加えられた。
【0405】
実施例12
実施例11で調製された試薬材料が、本明細書で説明したデバイスの電極に塗布された。試薬は、試薬をインクとしてスクリーン印刷することによって、塗布された。印刷は、デバイスの作用電極、基準電極および対電極を範囲に含む矩形内でなされた。基板を電極上に積層して、内側高さが150ミクロンの検出ゾーンを得た。攪拌バーは使用しなかった。印刷された試薬は乾燥された。複数のデバイスが形成された。
【0406】
上記で準備されたデバイスを異なるニッケル濃度と混合した血液を用いて試験し、異なるコバルト結合能力を有する血液を模倣した。その血液を検出ゾーンに加えて、攪拌または他の混合促進なしに、試薬材料との混合物を生成した。
【0407】
各混合物中の遊離コバルトの量が、本明細書で説明したとおり、電流測定法を用いて決定された。
【0408】
比較のため、5マイクロリットルの水性の塩化コバルト溶液と95マイクロリットルの血液とを混合することにより検査を実行して、血液中の最終的なコバルト濃度1.5mMを得た。この混合物を、スクリーン印刷された試薬を有するデバイスと同じであるが、試薬なしのデバイスに加えた。遊離コバルトの量が、電流測定法を用いて決定された。
【0409】
印刷された試薬を用いて生成された混合物中の遊離コバルトの量は、水性のコバルト試薬を用いて生成された量と同じであった。これによって、印刷された試薬のコバルトが、混合促進がなくても、サンプル物質内のアルブミンと再懸濁および結合したことが立証された。
【0410】
他の実施形態は、以下の特許請求項の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0411】
【図1】検査方法のフローチャートである。
【図2】図1の方法により調製された3つの混合物のうちのそれぞれについて、コバルト濃度の関数として電気化学信号を表すグラフである。
【図3】検査方法のフローチャートである。
【図4A】検査を実行する検査デバイスの上面図である。
【図4B】図4Aのデバイスの斜視図である。
【図4C】図4Aのデバイスの検出ゾーンで切断された部分断面である。
【図5A】図4の検査デバイスと、検査デバイスを作動させるように構成された検査リーダとを含むシステムである。
【図5B】図5Aの検査リーダの磁気攪拌バーアクチュエータの動作を示している。
【図6A】検査を実行する検査デバイスの上面図である。
【図6B】図6Aの検査デバイスの分解斜視図である。
【図7A】検査リーダの上面図である。
【図7B】図7Aの検査リーダの側面図である。
【図7C】図7Aの検査リーダの上面斜視図である。
【図7D】図7Aの検査リーダの底面斜視図である。
【図8A】図7Aの検査リーダの組立順序のステップを示している。
【図8B】図7Aの検査リーダの組立順序のステップを示している。
【図8C】図7Aの検査リーダの組立順序のステップを示している。
【図8D】図7Aの検査リーダの組立順序のステップを示している。
【図9A】図7Aの検査リーダと検査デバイス(例えば、図4Aまたは図6Aのデバイス)の分解部分斜視側面図である。
【図9B】図7Aの検査リーダと検査デバイスの図の分解された部分端部である。
【図10A】図7Aの検査リーダと検査デバイスの図の分解された部分斜視先端部である。
【図10B】図7Aの検査リーダと検査デバイスの斜視図である。
【図11A】図9Aにおけるのと同様の分解部分斜視側面図であるが、検査デバイスは検査リーダに完全に収容されている。
【図11B】図9Bにおけるのと同様の図の分解された部分端部であるが、検査デバイスは検査リーダに完全に収容されている。
【図12】図10Aにおけるのと同様の分解部分斜視上端部であるが、検査デバイスは完全に収容されている。
【図13A】図7Aのデバイスの分解部分図であるが、検査デバイスは検査リーダに部分的に収容されている。
【図13B】図7Aのデバイスの分解部分図であるが、検査デバイスは検査リーダに完全に収容されている。
【図14】押し出しボタンを示した、図7Aのデバイスの斜視図を示している。
【図15A】図7Aの検査リーダから検査デバイスを押し出すための機構体を示した分解部分図である。
【図15B】図7Aの検査リーダから検査デバイスを押し出すための機構体を示した分解部分図である。
【図15C】図7Aの検査リーダから検査デバイスを押し出すための機構体を示した分解部分図である。
【図16A】微小流体ネットワークと、図4Aの検査デバイスまたは図6Aの検査デバイスに関して記載された構成部品を含むことが可能な検査デバイスを示している。
【図16B】微小流体ネットワークと、図4Aの検査デバイスまたは図6Aの検査デバイスに関して記載された構成部品を含むことが可能な検査デバイスを示している。
【図16C】微小流体ネットワークと、図4Aの検査デバイスまたは図6Aの検査デバイスに関して記載された構成部品を含むことが可能な検査デバイスを示している。
【図17】検査を実行する検査デバイスの上面図である。
【図18】検査を実行する検査デバイスの上面図である。
【図19】全血中の1mMのCo溶液と、同じソースからの全血における1mMのCo/5mMのNi溶液とに対する、電流測定によるコバルトの還元電流対電圧のプロットを示すグラフである。
【図20】全血中の1mMのCo溶液に対する、電流測定によるコバルトの還元電流対ニッケル濃度のプロットと、同じソースからの全血中の1mMのCo溶液に対する、電流測定によるコバルトの還元電流対銅の濃度のプロットとを示したグラフである。
【図21】図20のソースと同じソースからの全血中の1〜3mMの範囲にあるコバルト濃度に対する、電流測定によるコバルトの還元電流対コバルト濃度のプロットを示すグラフである。
【図22】血清中の1.5mMのCo溶液に対する、電流測定によるコバルトの還元電流対ニッケル濃度のプロットと、図20のソースと同じソースからの全血から調製された血清からの血清中の、1.5mMのCo溶液に対する、電流測定によるコバルトの還元電流対銅の濃度のプロットとを示したグラフである。
【図23】血清中の1.5〜4mMの範囲にあるコバルト濃度に対する、電流測定によるコバルトの還元電流対コバルト濃度のプロットと、20mMのNi濃度を有する血清中の0〜4mMの範囲にあるコバルト濃度に対する、電流測定によるコバルトの還元電流対コバルト濃度のプロットとを示すグラフであり、血清は、図20のソースと同じソースからの全血から調製されたものである。
【図24】全血中のコバルトからの電気化学信号に対するニッケル濃度の影響を示すグラフである。
【図25】複数の血液由来サンプルのそれぞれについて、ACB値に対して示されたコバルトの還元電流を示すグラフである。
【図26】追加したニッケルの存在下で測定された、複数の血液由来サンプルのそれぞれについて、ACB値に対して示されたコバルトの還元電流を示すグラフである。
【図27】ACB値に対して示されたコバルトの還元電流を示すグラフである。
【図28】ACB値に対して示された測定電流の比率を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルト試薬と血液由来サンプル物質とを含む第1混合物を生成する手段と、
前記第1混合物中の遊離コバルトの量または濃度を決定する手段と、
コバルト試薬と、血液由来サンプル物質と、任意選択のニッケル試薬とを含む第2混合物を生成する手段であって、前記第2混合物中にニッケル試薬が含まれていない場合は、前記第2混合物中のコバルトの量が、前記第1混合物中のコバルトの量とは異なる、手段と、
前記第2混合物中の遊離コバルトの量または濃度を決定する手段と、
を備える検査デバイス。
【請求項2】
前記第2混合物を生成する手段がニッケル試薬を含む、請求項1に記載の検査デバイス。
【請求項3】
前記ニッケル試薬が、当該検査デバイス内では乾燥状態で置かれている、請求項2に記載の検査デバイス。
【請求項4】
前記第1混合物を生成する手段が、当該検査デバイス内では乾燥状態で置かれているコバルト試薬を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の検査デバイス。
【請求項5】
第1検出ゾーンおよび第2検出ゾーンと、
第1金属を有する第1試薬材料と、
前記第1金属、あるいは、アルブミンに対して前記第1金属よりも高い親和力を有するか、または前記第1金属と異なる量を含む第2金属のいずれかを含む、第2試薬材料と、
を備える検査デバイスであって、
当該検査デバイスが、サンプル液を収容し、前記第1検出ゾーンにおいて、前記サンプル液の一部と前記第1試薬材料とを含む第1混合物を生成するように、および前記第2検出ゾーンにおいて、前記サンプル液の一部と前記第2試薬材料とを含む第2混合物を生成するように構成された検査デバイス。
【請求項6】
前記第1検出ゾーンおよび前記第2検出ゾーンが電気化学的検出ゾーンである、請求項5に記載の検査デバイス。
【請求項7】
前記第1金属がコバルトである、請求項5または6に記載の検査デバイス。
【請求項8】
前記第2金属がニッケルである、請求項5〜7のいずれか一項に記載の検査デバイス。
【請求項9】
前記第1金属が、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuおよびAgからなるグループから選択される、請求項5〜8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第2金属が、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuおよびAgからなるグループから選ばれる、請求項5〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1金属および前記第2金属のうちの少なくとも一方が、サンプル液を加える前に乾燥状態で存在している、請求項5〜10のいずれか一項に記載の検査デバイス。
【請求項12】
前記サンプル液が、ヒト血液およびヒト血漿から選択される、請求項5〜11のいずれか一項に記載の検査デバイス。
【請求項13】
前記第1または第2金属は前記金属の塩の形である、請求項5〜12のいずれか一項に記載の検査デバイス。
【請求項14】
ヒト血液に由来したサンプル中の虚血変性アルブミンの存在を決定する方法であって、
前記血液由来サンプル物質の一部をコバルト試薬に加えることによって、第1混合物を生成するステップと、
前記第1混合物中の遊離コバルトの量または濃度を決定して、第1結果を得るステップと、
前記血液由来サンプル物質の別の部分を、コバルト試薬と、任意選択で、前記血液由来サンプル物質の前記部分にコバルト−アルブミン複合体の生成および存在を実質的に阻止するのに十分な量のニッケル試薬とを加えることによって、第2混合物を生成するステップであって、ニッケル試薬が前記第2混合物に含まれていない場合は、前記第2混合物中のコバルトの量が、前記第1混合物中のコバルトの量とは異なる、ステップと、
前記第2混合物中の遊離コバルトの量または濃度を決定して、第2結果を得るステップと、
前記第1結果および前記第2結果を処理し、処理値を、虚血変性アルブミンを表す適切な基準値と比較するステップと、
を備える、方法。
【請求項15】
前記基準値が、虚血性イベントの後に虚血変性アルブミンを含有することが知られているヒトの血液から得られたサンプル中の遊離コバルトの量または濃度を表す、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記基準値が、先に採取された同じヒトの血液から得られたサンプル中の遊離コバルトの量または濃度を表す、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
ヒト血液から得られたサンプル中の虚血変性アルブミンの存在を決定する方法であって、
前記血液由来サンプル物質の一部を、第1金属を含む第1試薬に加えることによって、第1混合物を生成するステップと、
前記第1混合物中の遊離第1金属の量または濃度を決定して、第1結果を得るステップと、
前記血液由来サンプル物質の別の部分を、前記第1試薬の量と、任意選択で、アルブミンに対して前記第1金属よりも高い親和力を有する第2金属を含むある一定量の第2試薬とを加えることによって第2混合物を生成するステップ
であって、前記第2金属の量が、前記血液由来サンプル物質の前記部分における第1金属アルブミン複合体の生成および存在を実質的に阻止するのに十分であり、前記第2試薬が前記第2混合物に含まれていない場合は、前記第2混合物中の前記第1金属の量が、前記第1混合物中の前記第1金属の量とは異なる、ステップと、
前記第2混合物中の遊離第1金属の量または濃度を決定して、第2結果を得るステップと、
前記第1結果および前記第2結果を処理し、前記処理値を、虚血変性アルブミンを表す適切な基準値と比較するステップと、
を備える、方法。
【請求項18】
前記第1金属が、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuおよびAgからなるグループから選択される、請求項17の方法。
【請求項19】
前記第2金属が、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuおよびAgからなるグループから選択される、請求項18の方法。
【請求項20】
それぞれが血液由来サンプル物質の混合物とコバルト試薬を含む、第1電気化学検出ゾーンおよび第2電気化学検出ゾーンを備えた検査デバイスであって、前記サンプル物質が、哺乳類から得られている、検査デバイスと、
前記検査デバイスを作動させて、前記第1電気化学検出ゾーンおよび前記第2電気化学検出ゾーン内の各遊離コバルトの量を決定し、および遊離コバルトの量に基づいて前記哺乳類の虚血性イベントの存在を決定するように構成された検査リーダと、
を備えた、検査システム。
【請求項1】
コバルト試薬と血液由来サンプル物質とを含む第1混合物を生成する手段と、
前記第1混合物中の遊離コバルトの量または濃度を決定する手段と、
コバルト試薬と、血液由来サンプル物質と、任意選択のニッケル試薬とを含む第2混合物を生成する手段であって、前記第2混合物中にニッケル試薬が含まれていない場合は、前記第2混合物中のコバルトの量が、前記第1混合物中のコバルトの量とは異なる、手段と、
前記第2混合物中の遊離コバルトの量または濃度を決定する手段と、
を備える検査デバイス。
【請求項2】
前記第2混合物を生成する手段がニッケル試薬を含む、請求項1に記載の検査デバイス。
【請求項3】
前記ニッケル試薬が、当該検査デバイス内では乾燥状態で置かれている、請求項2に記載の検査デバイス。
【請求項4】
前記第1混合物を生成する手段が、当該検査デバイス内では乾燥状態で置かれているコバルト試薬を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の検査デバイス。
【請求項5】
第1検出ゾーンおよび第2検出ゾーンと、
第1金属を有する第1試薬材料と、
前記第1金属、あるいは、アルブミンに対して前記第1金属よりも高い親和力を有するか、または前記第1金属と異なる量を含む第2金属のいずれかを含む、第2試薬材料と、
を備える検査デバイスであって、
当該検査デバイスが、サンプル液を収容し、前記第1検出ゾーンにおいて、前記サンプル液の一部と前記第1試薬材料とを含む第1混合物を生成するように、および前記第2検出ゾーンにおいて、前記サンプル液の一部と前記第2試薬材料とを含む第2混合物を生成するように構成された検査デバイス。
【請求項6】
前記第1検出ゾーンおよび前記第2検出ゾーンが電気化学的検出ゾーンである、請求項5に記載の検査デバイス。
【請求項7】
前記第1金属がコバルトである、請求項5または6に記載の検査デバイス。
【請求項8】
前記第2金属がニッケルである、請求項5〜7のいずれか一項に記載の検査デバイス。
【請求項9】
前記第1金属が、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuおよびAgからなるグループから選択される、請求項5〜8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第2金属が、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuおよびAgからなるグループから選ばれる、請求項5〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1金属および前記第2金属のうちの少なくとも一方が、サンプル液を加える前に乾燥状態で存在している、請求項5〜10のいずれか一項に記載の検査デバイス。
【請求項12】
前記サンプル液が、ヒト血液およびヒト血漿から選択される、請求項5〜11のいずれか一項に記載の検査デバイス。
【請求項13】
前記第1または第2金属は前記金属の塩の形である、請求項5〜12のいずれか一項に記載の検査デバイス。
【請求項14】
ヒト血液に由来したサンプル中の虚血変性アルブミンの存在を決定する方法であって、
前記血液由来サンプル物質の一部をコバルト試薬に加えることによって、第1混合物を生成するステップと、
前記第1混合物中の遊離コバルトの量または濃度を決定して、第1結果を得るステップと、
前記血液由来サンプル物質の別の部分を、コバルト試薬と、任意選択で、前記血液由来サンプル物質の前記部分にコバルト−アルブミン複合体の生成および存在を実質的に阻止するのに十分な量のニッケル試薬とを加えることによって、第2混合物を生成するステップであって、ニッケル試薬が前記第2混合物に含まれていない場合は、前記第2混合物中のコバルトの量が、前記第1混合物中のコバルトの量とは異なる、ステップと、
前記第2混合物中の遊離コバルトの量または濃度を決定して、第2結果を得るステップと、
前記第1結果および前記第2結果を処理し、処理値を、虚血変性アルブミンを表す適切な基準値と比較するステップと、
を備える、方法。
【請求項15】
前記基準値が、虚血性イベントの後に虚血変性アルブミンを含有することが知られているヒトの血液から得られたサンプル中の遊離コバルトの量または濃度を表す、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記基準値が、先に採取された同じヒトの血液から得られたサンプル中の遊離コバルトの量または濃度を表す、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
ヒト血液から得られたサンプル中の虚血変性アルブミンの存在を決定する方法であって、
前記血液由来サンプル物質の一部を、第1金属を含む第1試薬に加えることによって、第1混合物を生成するステップと、
前記第1混合物中の遊離第1金属の量または濃度を決定して、第1結果を得るステップと、
前記血液由来サンプル物質の別の部分を、前記第1試薬の量と、任意選択で、アルブミンに対して前記第1金属よりも高い親和力を有する第2金属を含むある一定量の第2試薬とを加えることによって第2混合物を生成するステップ
であって、前記第2金属の量が、前記血液由来サンプル物質の前記部分における第1金属アルブミン複合体の生成および存在を実質的に阻止するのに十分であり、前記第2試薬が前記第2混合物に含まれていない場合は、前記第2混合物中の前記第1金属の量が、前記第1混合物中の前記第1金属の量とは異なる、ステップと、
前記第2混合物中の遊離第1金属の量または濃度を決定して、第2結果を得るステップと、
前記第1結果および前記第2結果を処理し、前記処理値を、虚血変性アルブミンを表す適切な基準値と比較するステップと、
を備える、方法。
【請求項18】
前記第1金属が、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuおよびAgからなるグループから選択される、請求項17の方法。
【請求項19】
前記第2金属が、V、As、Co、Cu、Sb、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Ni、Hg、Cd、Fe、Pb、AuおよびAgからなるグループから選択される、請求項18の方法。
【請求項20】
それぞれが血液由来サンプル物質の混合物とコバルト試薬を含む、第1電気化学検出ゾーンおよび第2電気化学検出ゾーンを備えた検査デバイスであって、前記サンプル物質が、哺乳類から得られている、検査デバイスと、
前記検査デバイスを作動させて、前記第1電気化学検出ゾーンおよび前記第2電気化学検出ゾーン内の各遊離コバルトの量を決定し、および遊離コバルトの量に基づいて前記哺乳類の虚血性イベントの存在を決定するように構成された検査リーダと、
を備えた、検査システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公表番号】特表2009−526990(P2009−526990A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554876(P2008−554876)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際出願番号】PCT/IB2007/000369
【国際公開番号】WO2007/093902
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(302044591)インバーネス・メデイカル・スウイツツアーランド・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (38)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際出願番号】PCT/IB2007/000369
【国際公開番号】WO2007/093902
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(302044591)インバーネス・メデイカル・スウイツツアーランド・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (38)
【Fターム(参考)】
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