説明

虫侵入防止方法及びその装置

【課題】エアーカーテンが有する虫侵入防止機能と、防虫薬剤が有する虫侵入防止機能とを組み合わせ、さらに静電気を利用して虫に防虫薬剤を付着させて、出入口から虫が建造物内に入り込まないようにした虫侵入防止方法及びその装置を提供する。
【解決手段】エアー中の水蒸気を放電部により帯電し、その帯電水蒸気と防虫薬剤ガスとを混合し結合してクラスター化して、出入口4に向かってくる虫にクラスター化し帯電した防虫薬剤ガスを付着し易くして虫にダメージを与え、それでも出入口4に向かってくる虫に対しエアーカーテン自体によりその侵入を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の出入口を気流的に遮断するエアーカーテンに防虫薬剤ガスを放出して、防虫薬剤ガス含有エアーカーテンとし、この防虫薬剤ガス含有エアーカーテンによって、虫の侵入を阻止するようにした虫侵入防止方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の出入口を気流的に遮断するエアーカーテンにて虫の侵入を防止する技術は、既に多く実施されている。その一例としては、建造物の出入口に開閉扉が設けられてはいるが、この開閉扉が閉じていても、建造物内部の照明の光が屋外に透け出る場合に、開閉扉の透光部分に虫が視感出来る波長の光を選択的に吸収する防虫性透光材にて構成して、開閉扉近くに虫が集まらないようにし、さらに、出入口に上部から下部に向かうエアーカーテンを吹き下ろすエアーカーテン装置を設置することで、出入口の開閉扉が開いた状態でも虫の侵入を阻止するようにしたものである(例えば、特開平10−225255号公報参照)。
【0003】
さらに、エアーカーテンによる昆虫類侵入防止装置としては、建造物の出入口を開閉するシャッターを設け、このシャッターの両側前面に内部に送風機を備えた一対のハウジングを配置して、このハウジングとシャッターとで仕切る床面に捕虫ピットを設け、さらにシャッターの開閉とハウジング内の送風機から吹き出すエアー流とを制御する制御装置を有してなり、ハウジングは、互いに相対向する面に設けた吹出口及び外部に向けて開いた他面に設けた吸込口を有して、水平方向に吹き出すエアーカーテンを形成するエアーカーテン装置であり、このエアーカーテン装置の吹出口を制御装置にて移動させて、エアーカーテンの吹き出し方向を変えて、出入口のシャッターが開いた状態でも虫の侵入を阻止するようにしたものである(例えば、特開2003−161489号公報参照)。
【0004】
一方、防虫薬剤を使用して、建造物の開閉扉付の出入口から虫の侵入を防ぐものとしては、演算処理するコンピュータと、薬剤による有害生物防除装置と、これらを通信ケーブルにて接続してなり、この有害生物防除装置はコンピュータからの指令により薬剤を散布することで、出入口の開閉扉が開いた状態でも虫の侵入を阻止するようにしたものである(例えば、特開2004−344045号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開平10−225255号公報
【特許文献2】 特開2003−161489号公報
【特許文献3】 特開2004−344045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のエアーカーテン利用の虫侵入防止は、開閉扉が閉じていると虫が開閉扉を通した建造物内部の光に反応しないから、開閉扉近くに虫が集まらず、開閉扉が開くと内部の光に反応して虫が集まり出入口から建造物内に入ろうとするが、それをエアーカーテンにて阻止するものである。しかしながら、開いた開閉扉が直ぐに閉じるのであれば効果が期待できるが、そうでない場合はエアーカーテンのみで虫の侵入を阻止することになり、エアーカーテンの風速風量をかなり増加させないと、虫の侵入を阻止することが出来ないことになる。このため、建造物の空調負荷が大幅に増加することになると共に、出入口から建造物内に入る人に風速風量を増したエアーカーテンの影響が及ぶことになる。
【0007】
上記特許文献2のエアーカーテン利用の虫侵入防止は、エアーカーテン装置からのエアーカーテンの吹き出し方向を変えて、出入口のシャッターが開いた状態でも虫の侵入を阻止するようにしたものである。しかしながら、エアーカーテンの吹き出し方向を変えるだけでは、虫の飛翔力に打ち勝てず、結局のところ特許文献1の場合と同様にエアーカーテンの風速風量をかなり増加させないと、虫の侵入を阻止することが出来ないことになる。したがって、同じように、建造物の空調負荷が大幅に増加し、且つ出入口から建造物内に入る人に風速風量を増したエアーカーテンの影響が及ぶことになる。
【0008】
上記特許文献3の防虫薬剤利用の虫侵入防止は、状況に応じて細かく対応し、防虫薬剤を散布して、出入口の開閉扉が開いた状態でも虫の侵入を阻止するものである。しかしながら、虫の光に対する反応は思いの外強く、しかも虫の飛翔力もかなりあるので、出入口に防虫薬剤を散布したゾーンがあっても、虫に防虫薬剤の効果が及ぶ間もなく、一瞬にして防虫薬剤散布ゾーンを突き抜け、建造物内に虫が侵入してしまうことになる。したがって、建造物の出入口の外部及び内部に、常に防虫薬剤散布ゾーンを形成して、出入口に虫を寄せ付けないようにしておく必要がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、エアーカーテンが有する虫侵入防止機能と、防虫薬剤が有する虫侵入防止機能とを組み合わせ、さらに静電気を利用して侵入しようとする虫に防虫薬剤を付着させ易くして、出入口から虫が建造物内に入り込まないようにした虫侵入防止方法及びその装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を達成するために提案されたものであって、下記の構成からなることを特徴とするものである。
すなわち、請求項1記載の発明は、建造物の出入口を気流的に遮断するエアーカーテンに防虫薬剤ガスを放出して、防虫薬剤ガス含有エアーカーテンとし、該防虫薬剤ガス含有エアーカーテンにて前記出入口からの虫の侵入を阻止することを特徴とする虫侵入防止方法である。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、前記エアーカーテンを間隔を空けて複数とし、該複数のエアーカーテンの少なくとも一方に防虫薬剤ガスを放出して、防虫薬剤ガス含有エアーカーテンとし、該防虫薬剤ガス含有エアーカーテン及び残りのエアーカーテンにて前記出入口からの虫の侵入を阻止することを特徴とする虫侵入防止方法である。
【0012】
また、請求項3記載の発明は、前記建造物の出入口が開閉扉付であり、該開閉扉が開いている時にのみ前記防虫薬剤ガス含有エアーカーテンを吹き出して、前記出入口からの虫の侵入を阻止することを特徴とする虫侵入防止方法である。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、前記防虫薬剤ガスが、1以上の放電電極及び該1以上の放電電極に所定のスペースを有して設置した1以上の対向電極で構成し、これら両電極に所定の電圧を印加する電源からなる放電部にて帯電させたものであり、この帯電した防虫薬剤ガスをこれと逆の極性及び無極性の虫に付着させ、該虫に対し防虫薬剤ガスの機能を作用させ得るようにしたことを特徴とする虫侵入防止方法である。
【0014】
また、請求項5記載の発明は、前記防虫薬剤ガスが、1以上の放電電極及び該1以上の放電電極に所定のスペースを有して設置した1以上の対向電極で構成し、これら両電極に所定の電圧を印加する電源からなる放電部にて帯電させたエアー中の水蒸気と混合し結合してクラスター化させたものであり、このクラスター化し帯電した防虫薬剤ガスをこれと逆の極性及び無極性の虫に付着させ、該虫に対し防虫薬剤ガスの機能を作用させ得るようにしたことを特徴とする虫侵入防止方法である。
【0015】
また、請求項6記載の発明は、前記防虫薬剤ガスが、1以上の放電電極及び該1以上の放電電極に所定のスペースを有して設置した1以上の対向電極で構成し、これら両電極に所定の電圧を印加する電源からなる放電部にて帯電させた水蒸散部からの水蒸気と混合し結合してクラスター化させたものであり、このクラスター化し帯電した防虫薬剤ガスをこれと逆の極性及び無極性の虫に付着させ、該虫に対し防虫薬剤ガスの機能を作用させ得るようにしたことを特徴とする虫侵入防止方法である。
【0016】
そして、請求項7記載の発明は、建造物の開閉扉付出入口の外側に設けたエアーカーテン装置と、帯電した防虫薬剤ガスを供給する静電式薬剤噴霧装置とで構成し、該静電式薬剤噴霧装置は、1以上の放電電極及び該1以上の放電電極に所定のスペースを有して設置した1以上の対向電極で構成しこれら両電極に所定の電圧を印加する電源からなる放電部と、防虫薬剤をガス化させる薬剤蒸散部と、前記放電部にて帯電させたエアー中の水蒸気と前記薬剤蒸散部から放出した防虫薬剤ガスとを混合し結合してクラスター化し帯電した防虫薬剤ガスにする反応室と、該反応室内にエアーを送り込む送風機構と、からなり、前記静電式薬剤噴霧装置からクラスター化し帯電した防虫薬剤ガスを前記エアーカーテン装置に供給して、防虫薬剤ガス含有エアーカーテンを吹き出すようにしたことを特徴とする虫侵入防止装置である。
【0017】
また、請求項8記載の発明は、建造物の開閉扉付出入口の外側に設けたエアーカーテン装置と、帯電した防虫薬剤ガスを供給する静電式薬剤噴霧装置とで構成し、該静電式薬剤噴霧装置は、1以上の放電電極及び該1以上の放電電極に所定のスペースを有して設置した1以上の対向電極で構成しこれら両電極に所定の電圧を印加する電源からなる放電部と、水を水蒸気化する水蒸散部と、防虫薬剤をガス化させる薬剤蒸散部と、前記放電部を境にして上流側に前記水蒸散部を下流側に前記薬剤蒸散部を設置し、前記放電部にて帯電させた前記水蒸散部から放出した水蒸気と前記薬剤蒸散部から放出した防虫薬剤ガスとを混合し結合してクラスター化し帯電した防虫薬剤ガスにする反応室と、該反応室内にエアーを送り込む送風機構と、からなり、前記静電式薬剤噴霧装置からクラスター化し帯電した防虫薬剤ガスを前記エアーカーテン装置に供給して、防虫薬剤ガス含有エアーカーテンを吹き出すようにしたことを特徴とする虫侵入防止装置である。
【0018】
上記請求項1の発明による作用は次の通りである。すなわち、防虫薬剤ガス含有エアーカーテン中の防虫薬剤ガスにて虫を遠ざけ、それでも出入口に向かってくる虫に対しエアーカーテン自体によりその侵入を阻止する。
【0019】
上記請求項2の発明による作用は、一方の防虫薬剤ガス含有エアーカーテン中の防虫薬剤ガスにて虫を遠ざけ、そのエアーカーテン自体でもその侵入を阻止し、さらに他方のエアーカーテンの二段構えで出入口に向かってくる虫の侵入を阻止する。
【0020】
上記請求項3の発明による作用は、出入口の開閉扉が開いている時に吹き出された防虫薬剤ガス含有エアーカーテン中の防虫薬剤ガスにて虫を遠ざけ、それでも出入口に向かってくる虫に対しエアーカーテン自体によりその侵入を阻止する。
【0021】
上記請求項4の発明による作用は、防虫薬剤ガス含有エアーカーテン中の防虫薬剤ガスを放電部により帯電し、出入口に向かってくる虫に防虫薬剤ガスを付着し易くして虫にダメージを与え、それでも出入口に向かってくる虫に対しエアーカーテン自体によりその侵入を阻止する。
【0022】
上記請求項5の発明による作用は、エアー中の水蒸気を放電部により帯電し、その帯電水蒸気と防虫薬剤ガスとを混合し結合してクラスター化して、出入口に向かってくる虫にクラスター化し帯電した防虫薬剤ガスを付着し易くして虫にダメージを与え、それでも出入口に向かってくる虫に対しエアーカーテン自体によりその侵入を阻止する。
【0023】
上記請求項6の発明による作用は、水蒸散部からの水蒸気を放電部により帯電し、その帯電水蒸気と防虫薬剤ガスとを混合し結合してクラスター化して、出入口に向かってくる虫にクラスター化し帯電した防虫薬剤ガスを付着し易くして虫にダメージを与え、それでも出入口に向かってくる虫に対しエアーカーテン自体によりその侵入を阻止する。
【0024】
上記請求項7の発明による作用は、電源にて所定の電圧を印加する放電部に送風機構によりエアーを送るとその中の水蒸気が帯電し、その帯電した水蒸気と薬剤蒸散部から放出した防虫薬剤ガスとを、反応室にて混合し結合してクラスター化し帯電した防虫薬剤ガスにし、この防虫薬剤ガスをエアーカーテン装置に供給して、防虫薬剤ガス含有エアーカーテンを吹き出し、出入口に向かってくる虫にクラスター化し帯電した防虫薬剤ガスを付着し易くして虫にダメージを与え、それでも出入口に向かってくる虫に対しエアーカーテン自体によりその侵入を阻止する。
【0025】
上記請求項8の発明による作用は、電源にて所定の電圧を印加する放電部に送風機構によりエアーを送ると共に水蒸散部からの水蒸気も送り、そのエアー中に含有することになった水蒸気を帯電し、その帯電した水蒸気と薬剤蒸散部から放出した防虫薬剤ガスとを、反応室にて混合し結合してクラスター化し帯電した防虫薬剤ガスにし、この防虫薬剤ガスをエアーカーテン装置に供給し、防虫薬剤ガス含有エアーカーテンを吹き出して、出入口に向かってくる虫にクラスター化し帯電した防虫薬剤ガスを付着し易くして虫にダメージを与え、それでも出入口に向かってくる虫に対しエアーカーテン自体によりその侵入を阻止する。
【発明の効果】
【0026】
以上詳述したように、本発明によれば、以下のような効果がある。
請求項1記載の発明は、エアーカーテンが有する虫侵入防止機能と、防虫薬剤が有する虫侵入防止機能との相乗効果により、出入口から虫が建造物内に入り込まないようにする効果がある。
【0027】
請求項2記載の発明は、上記の効果に加えて、エアーカーテンが2重になることで、なお一層上記の効果が顕著になる。
【0028】
請求項3記載の発明は、上記の効果に加えて、出入口の開閉扉が開いている時に、エアーカーテンが有する虫侵入防止機能と、防虫薬剤が有する虫侵入防止機能との相乗効果を利かせて、出入口から虫が建造物内に入り込まないようにするから、運転コストを逓減することが出来る効果がある。
【0029】
請求項4記載の発明は、上記の効果に加えて、防虫薬剤ガス含有エアーカーテン中の帯電した防虫薬剤ガスを、出入口に向かってくる虫に付着し易くしてダメージを与えて、なお一層上記の効果が顕著になる。
【0030】
請求項5記載の発明は、上記の効果に加えて、エアー中の水蒸気を帯電させ、帯電した水蒸気と防虫薬剤ガスとを結合させてクラスター化し粒径を大きくして帯電量を多くし、虫に防虫薬剤ガスを付着させ易くして、虫により大きいダメージを与え、且つ、放電部の放電電極及び対向電極間に防虫薬剤ガスを直接通過させないから、防虫薬剤ガスの変質を極力抑えると共に、防虫薬剤ガスによる両電極の腐食などの不都合を起こさない効果がある。
【0031】
請求項6記載の発明は、上記の効果に加えて、水蒸散部からの水蒸気を帯電させ、帯電した水蒸散部からの水蒸気と薬剤ガスとを結合させてクラスター化し粒径を大きくして、帯電量を多くし虫に防虫薬剤ガスを付着させ易くして、且つ、放電部の放電電極及び対向電極間に薬剤ガスを直接通過させないし、通過した時が乾燥雰囲気下であっても水蒸散部からの充分な水蒸気により帯電効果を維持することが出来、薬剤ガスの変質を極力抑えると共に、薬剤ガスによる両電極の腐食などの不都合を起こさない効果がある。
【0032】
請求項7記載の発明は、上記した発明方法を効率良く実施出来る効果がある。
【0033】
請求項8記載の発明も、上記した発明方法を効率良く実施出来る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明方法における実施の形態を示す虫侵入防止装置を建造物の出入口に設置した状態の斜視図である(実施例1)。
【図2】図1の虫侵入防止装置を構成するエアーカーテン装置の正面図である(実施例1)。
【図3】エアーカーテン装置の断面図である(実施例1)。
【図4】図1の虫侵入防止装置を構成する静電式薬剤噴霧装置の概要図である(実施例1)。
【図5】図1の出入口の扉を開けた状態における虫侵入防止装置の作動を示す断面図である(実施例1)。
【図6】図1の虫侵入防止装置を構成する他の静電式薬剤噴霧装置の概要図である(実施例2)。
【図7】本発明方法における他の実施の形態を示す虫侵入防止装置を建造物の出入口に設置した状態の断面図である(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0035】
【実施例1】
【0036】
図において、虫侵入防止装置1は、建造物2の開閉扉3付出入口4の外側に設けたエアーカーテン装置5と、このエアーカーテン装置5に帯電した防虫薬剤ガスを供給する静電式薬剤噴霧装置6とで構成する。
【0037】
前記エアーカーテン装置5は、機体10に吸込口11とエアーカーテンを吹き出す吹出口12とを備え、これら吸込口11と吹出口12との間の機体10内に送風機13を配設し、この送風機13と吹出口12との間の機体2内に防虫薬剤ガスの放出口14を設けてなり、この放出口14からの防虫薬剤ガスを送風機13からのエアー流に放出すると共に、吹出口12からエアーカーテンを吹き出して、防虫薬剤ガス含有エアーカーテンとするものである。
【0038】
前記機体10は、偏平な箱体であり、正側面10aの上部に前記吸込口11が設けられ、底面10bに前記吹出口12が設けられている。機体10内は、仕切り板15により区切られ、吸込側室16と防虫薬剤ガス供給室17とに分かれている。これらの吸込側室16と防虫薬剤ガス供給室17とを跨いで、前記送風機13が配設されている。さらに、防虫薬剤ガスの放出口14は、仕切り板15に沿って取り付けられ、防虫薬剤ガス供給室17側に臨んでいる。そして、送風機13と防虫薬剤ガスの放出口14との間の防虫薬剤ガス供給室17側に混合器18が取り付けられている。この混合器18は、防虫薬剤ガスの機能を損なうことなく、効率よく混合出来るものであれば特に限定がない。この例では、2枚の乱流板18aを設けてなるものであり、送風機13からのエアー流に乱流を起こさせ、放出口14から防虫薬剤ガスが放出された際、効率良くエアー流と防虫薬剤ガスとを混合するものである。なお、この混合器18の設置は、必須条件ではない。
【0039】
機体2の吹出口12は、防虫薬剤ガス含有エアーカーテンを形成且つ吹き出すものであり、この防虫薬剤ガス含有エアーカーテンは前記出入口4を気流的に遮断するものであるから、遮断するのに充分な到達距離を防虫薬剤ガス含有エアーカーテンに付与しなければならない。したがって、吹出口12の内側に整流板19を平行に配設して、防虫薬剤ガス含有エアーカーテンを整流するための助走スペースを与えることで、遮断するために必要な到達距離を得るようにしている。
【0040】
前記送風機13は、防虫薬剤ガス含有エアーカーテンを得るための必要な風量と風圧とがあれば特に限定がないが、幅広の空間を分断するには貫流式の送風機がベターである。
【0041】
前記静電式薬剤噴霧装置6は、1以上の放電電極20及びこの1以上の放電電極20に所定のスペースを有して設置した1以上の対向電極21で構成しこれら両電極20、21に所定の電圧を印加する電源22からなる放電部23と、防虫薬剤をガス化させる薬剤蒸散部24と、放電部23にて帯電させたエアー中の水蒸気と薬剤蒸散部24から放出した防虫薬剤ガスとを混合し結合して、クラスター化し帯電した防虫薬剤ガスにする反応室25と、この反応室25内にエアーを送り込む送風機構26と、からなり、この静電式薬剤噴霧装置6からクラスター化し帯電した防虫薬剤ガスを前記エアーカーテン装置5に供給して、防虫薬剤ガス含有エアーカーテンを吹き出すのである。
【0042】
図4の放電部23は、放電を起こすのに最も簡単な構成を示すものであり、放電電極20が針状であり、対向電極21が円筒状であって、これら両電極2、3に電源22が接続しいている。なお、放電部23の両電極20、21の形状は、これら両電極間20、21に放電が起きそこに通気出来れば特に限定がない。
【0043】
電源22は、放電部23に対し必要な電圧及び電流を供給できるものであれば、特に限定がないが、放電電極20にプラスの電荷を印加したり、マイナスの電荷を印加したり、あるいはプラス・マイナスの電荷を交互に印加したり、する3種類の場合がある。放電部23の性質により、電源22は、3種類のいずれか1種類が選択されたり、3種類の切り替えが出来るものが選択されたりする。なお、電源22の電圧は、特に限定が無いが、1KVないし8KVの範囲内である。また、プラス・マイナスの電荷を交互に印加する電源22も、特に限定が無いが、商用電源の50Hzないし60Hzが採用されるのがベターである。
【0044】
前記薬剤蒸散部24は、防虫薬剤を貯留且つ蒸散させるものであり、その蒸散手段としては、強制的な加熱手段や超音波振動手段などがあるが、自然蒸散による場合も考えられる。要は防虫薬剤を必要とする量が必要に応じて蒸散出来れば良く、蒸散手段を格別限定しない。なお、防虫薬剤としては、例えば、ピレスロイド系の薬剤などがあるが、これも特に限定がない。
【0045】
前記反応室25は、放電部23にて帯電させたエアー中の水蒸気と薬剤蒸散部24から放出した防虫薬剤ガスとを混合して結合させる部屋であり、この反応室25は、放電部23により上流側反応室25aと下流側反応室25bとに分かれている。上流側反応室25aは前記送風機構26を内蔵し、下流側反応室25b内に薬剤蒸散部24を設けてある。なお、この薬剤蒸散部24自体は下流側反応室25b外に設けて、薬剤蒸散部24からの防虫薬剤ガスを放出するノズルを、下流側反応室25bの壁面に貫通させて設けてあっても良い。
【0046】
したがって、外部空間から入口27を通り、送風機構26により上流側反応室25a内に取り込まれたエアー及びそこに含まれている水蒸気は、放電部23の円筒の対向電極21内を通過して、放電部23によりエアー中の水蒸気は帯電し、さらにクラスター化して下流側反応室25b内に入る。この帯電しクラスター化したエアー中の水蒸気は、下流側反応室25b内にある薬剤蒸散部24からの防虫薬剤ガスと混合し結合してクラスターとなり、下流側反応室25bに設けられた出口28から、帯電しクラスター化した防虫薬剤ガスが、前記エアーカーテン装置5の放出口14を経由して、防虫薬剤ガス供給室17内に放出され、混合器18にて送風機13からのエアー流と混合され、さらに、整流板19にて遮断するために必要な到達距離を付与されて、吹出口12から帯電しクラスター化した防虫薬剤ガス含有エアーカーテンとして吹き出される。
【0047】
したがって、例えば、出入口に向かって来る虫が帯電している防虫薬剤ガスの極性と逆の極性であると、直ちに虫と防虫薬剤ガス7とが結合し、虫に対し防虫薬剤ガスが作用することになる。
【0048】
前記送風機構26は、反応室25内にエアーを送り込むことができれば特に限定がないが、通常ファンが採用される。その他、温度傾斜を生じさせて反応室25内にエアーを送り込だり、イオン風を生じさせて反応室25内にエアーを送り込だりしたものでもよい。また、この送風機構26は、反応室25に内蔵していても、外部に設置してあっても、いずれでもよい。
【0049】
次に、上記構成になる虫侵入防止装置1により、虫侵入防止方法を説明する。
図1に示す出入口4の開閉扉3が閉じた状態の虫侵入防止装置1において、まず、薬剤蒸散部23に防虫薬剤を充填した後、虫侵入防止装置1全体を作動状態にする。エアーカーテン装置5の送風機13が作動するから、吸込口11からエアーを吸い込み吹出口12からエアーカーテンを吹き出すことになる。
【0050】
一方、静電式薬剤噴霧装置6の送風機構26も作動するから、エアーが外部から入口27を通り上流側反応室25a内に入る。さらに、エアーは、放電部23の針状の放電電極20と円筒状の対向電極21との間を通り円筒状の対向電極21内を通過して下流側反応室25b内に入る。その過程で、電源22が放電電極20にプラスの電荷を印加する場合には、放電電極20からプラスイオンが放出し、電源22が放電電極20にマイナスの電荷を印加する場合には、放電電極20からマイナスイオンが放出し、さらに、電源22が放電電極20にプラスの電荷とマイナスの電荷とを交互に印加する場合には、放電電極20からプラスイオンとマイナスイオンとを交互に放出する。したがって、例えば、電源22が放電電極20にマイナスの電荷を印加するものであると、放電電極20からマイナスイオンが放出する(以下、放電電極20からマイナスイオンが放出するものとして説明する)。
【0051】
放電電極20からのマイナスイオンを含んだエアーは、その中の水蒸気が帯電して下流側反応室25b内に入ると、下流側反応室25b内の薬剤蒸散部24からその蒸散手段によって蒸散した防虫薬剤ガスと混合し結合して、クラスターとなりマイナスに帯電し、下流側反応室25bの出口28からマイナスに帯電したクラスター状の防虫薬剤ガスが、エアーカーテン装置5の放出口14を経由して防虫薬剤ガス供給室17に放出される。この防虫薬剤ガス供給室17内の混合器18にて送風機13からのエアー流と混合され、さらに、整流板19にて遮断するために必要な到達距離を付与されて、吹出口12から帯電しクラスター化した防虫薬剤ガス含有エアーカーテンとして、前記建造物出入口4の外側空間に吹き出されることになる。
【0052】
この出入口4の外側空間にいる虫は、ほとんどがプラスに帯電しているから、出入口4近くにいる虫とエアーカーテン中のマイナスに帯電している防虫薬剤ガスとが結合し、虫に対し防虫薬剤が作用することになり、加えて、出入口4及び開閉扉3並びにこれらの周辺の壁も通常プラスに帯電しているから、防虫薬剤が付着することになって、出入口4の周辺が虫侵入防止ゾーンとなり、虫が寄りつかない状態になっている。したがって、この虫侵入防止ゾーンを形成した後、出入口4の開閉扉3が閉じているので、一旦、虫侵入防止装置1全体を停止状態にする。
【0053】
そして、虫侵入防止装置1あるいはその周辺に取り付けた人感センサ30により、人を感知すると、開閉扉3が開く前に直ちに虫侵入防止装置1を作動状態にして、吹出口12から防虫薬剤ガス含有エアーカーテンを吹き出し、出入口4の周辺に虫侵入防止ゾーンを新たに形成してこれの再強化をする。したがって、開閉扉3が開いていても(図5参照)、出入口4から虫が入ることを防ぐことが出来る。
【0054】
なお、ここでは、出入口4に開閉扉3がある場合について説明したが、開閉扉3が無い場合は、出入口4が常時開放状態になるので、虫侵入防止装置1から防虫薬剤ガス含有エアーカーテンを常時吹き出して、出入口4から虫が入るのを防ぐことになる。また、防虫薬剤ガス含有エアーカーテンが帯電している場合について説明したが、単に、エアーカーテンに防虫薬剤ガスを放出したものでも、充分虫侵入防止効果がある。
【0055】
【実施例2】
【0056】
図6は、本発明の他の実施の形態を示す虫侵入防止装置1Aであり、図1ないし図5の実施の形態との相違点は、静電式薬剤噴霧装置6Aが上流側反応室25a内に水蒸散部31を有している点にある。したがって、送風機構26により、外部から入口27を通り上流側反応室25a内に入ったエアーは、上流側反応室25a内にある水蒸散部31からの水蒸気を取り込み、放電部23の円筒の対向電極21内を通過する。その過程で、水蒸気は、放電部23により発生したイオンと混合し結合して帯電し、この帯電した水蒸気自体が水素結合によりクラスター化して、このクラスター化した水蒸気が放電電極20の極性に帯電し、下流側反応室25b内に入る。
【0057】
この帯電しクラスター化した水蒸気と下流側反応室25b内の薬剤蒸散部24からの防虫薬剤ガスとを下流側反応室25b内で結合させて、この帯電しクラスター化した水蒸散部31からの水蒸気及び防虫薬剤ガスは、全体として、放電部23の放電電極20の極性になると共に、帯電容量の大きいものになって、下流側反応室25bに設けられた出口28から、エアーカーテン装置5の放出口14を経由して防虫薬剤ガス供給室17に放出される。この防虫薬剤ガス供給室17内の混合器18にて送風機13からのエアー流と混合され、さらに、整流板19にて遮断するために必要な到達距離を付与されて、吹出口12から帯電しクラスター化した防虫薬剤ガス含有エアーカーテンとして、前記建造物出入口4の外側空間に吹き出されることになる。その他の構成、作用は図1ないし図5の実施形態と同様なので、図面に符号を付してその詳細な説明を省略する。なお、水蒸散部31の水蒸気の蒸散手段は、実施例1の薬剤蒸散部24の場合と同様である。
【0058】
【実施例3】
【0059】
図7は、本発明の他の実施の形態を示す虫侵入防止装置1Bであり、図1ないし図5の実施の形態との相違点は、虫侵入防止装置1あるいは1Aと、静電式薬剤噴霧装置6が無く単なるエアーカーテン装置5とを組み合わせた点にある。したがって、一方の防虫薬剤ガス含有エアーカーテン中の防虫薬剤ガスにて虫を遠ざけ、そのエアーカーテン自体でもその侵入を阻止し、さらに他方のエアーカーテンの二段構えで出入口に向かってくる虫の侵入を阻止することが出来る。なお、虫侵入防止装置1あるいは1Aを2台設けて、二段構えとしても良い。その他の構成、作用は図1ないし図5の実施形態と同様なので、図面に符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0060】
以上、本発明の実施例1ないし3を説明したが、具体的な構成はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での変更・追加、各請求項における他の組み合わせにかかるものも、適宜可能であることが理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の虫侵入防止方法及びその装置は、建造物の出入口で開閉扉の有無に係わらず、出入口から虫が建造物内に入り込まないようにしたい場合に、利用可能性が極めて高くなる。
【符号の説明】
【0062】
1、1A、1B 虫侵入防止装置
2 建造物
3 開閉扉
4 出入口
5 エアーカーテン装置
6、6A 静電式薬剤噴霧装置
10 機体
10a 正側面
10b 底面
11 吸込口
12 吹出口
13 送風機
14 放出口
15 仕切り板
16 吸込側室
17 防虫薬剤ガス供給室
18 混合器
18a 乱流板
19 整流板
20 放電電極
21 対向電極
22 電源
23 放電部
24 薬剤蒸散部
25 反応室
25a 上流側反応室
25b 下流側反応室
26 送風機構
27 入口
28 出口
30 人感センサ
31 水蒸散部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の出入口を気流的に遮断するエアーカーテンに防虫薬剤ガスを放出して、防虫薬剤ガス含有エアーカーテンとし、該防虫薬剤ガス含有エアーカーテンにて前記出入口からの虫の侵入を阻止することを特徴とする虫侵入防止方法。
【請求項2】
前記エアーカーテンを間隔を空けて複数とし、該複数のエアーカーテンの少なくとも一方に防虫薬剤ガスを放出して、防虫薬剤ガス含有エアーカーテンとし、該防虫薬剤ガス含有エアーカーテン及び残りのエアーカーテンにて前記出入口からの虫の侵入を阻止する請求項1記載の虫侵入防止方法。
【請求項3】
前記建造物の出入口は開閉扉付であり、該開閉扉が開いている時に前記防虫薬剤ガス含有エアーカーテンを吹き出して、前記出入口からの虫の侵入を阻止する請求項1または2記載の虫侵入防止方法。
【請求項4】
前記防虫薬剤ガスは、1以上の放電電極及び該1以上の放電電極に所定のスペースを有して設置した1以上の対向電極で構成し、これら両電極に所定の電圧を印加する電源からなる放電部にて帯電させたものであり、この帯電した防虫薬剤ガスをこれと逆の極性及び無極性の虫に付着させ、該虫に対し防虫薬剤ガスの機能を作用させ得るようにした請求項1、2または3記載の虫侵入防止方法。
【請求項5】
前記防虫薬剤ガスは、1以上の放電電極及び該1以上の放電電極に所定のスペースを有して設置した1以上の対向電極で構成し、これら両電極に所定の電圧を印加する電源からなる放電部にて帯電させたエアー中の水蒸気と混合し結合してクラスター化させたものであり、このクラスター化し帯電した防虫薬剤ガスをこれと逆の極性及び無極性の虫に付着させ、該虫に対し防虫薬剤ガスの機能を作用させ得るようにした請求項1、2または3記載の虫侵入防止方法。
【請求項6】
前記防虫薬剤ガスは、1以上の放電電極及び該1以上の放電電極に所定のスペースを有して設置した1以上の対向電極で構成し、これら両電極に所定の電圧を印加する電源からなる放電部にて帯電させた水蒸散部からの水蒸気と混合し結合してクラスター化させたものであり、このクラスター化し帯電した防虫薬剤ガスをこれと逆の極性及び無極性の虫に付着させ、該虫に対し防虫薬剤ガスの機能を作用させ得るようにした請求項1、2または3記載の虫侵入防止方法。
【請求項7】
建造物の開閉扉付出入口の外側に設けたエアーカーテン装置と、該エアーカーテン装置に帯電した防虫薬剤ガスを供給する静電式薬剤噴霧装置とで構成し、該静電式薬剤噴霧装置は、1以上の放電電極及び該1以上の放電電極に所定のスペースを有して設置した1以上の対向電極で構成しこれら両電極に所定の電圧を印加する電源からなる放電部と、防虫薬剤をガス化させる薬剤蒸散部と、前記放電部にて帯電させたエアー中の水蒸気と前記薬剤蒸散部から放出した防虫薬剤ガスとを混合し結合してクラスター化し帯電した防虫薬剤ガスにする反応室と、該反応室内にエアーを送り込む送風機構と、からなり、前記静電式薬剤噴霧装置からクラスター化し帯電した防虫薬剤ガスを前記エアーカーテン装置に供給して、防虫薬剤ガス含有エアーカーテンを吹き出すようにしたことを特徴とする虫侵入防止装置。
【請求項8】
建造物の開閉扉付出入口の外側に設けたエアーカーテン装置と、該エアーカーテン装置に帯電した防虫薬剤ガスを供給する静電式薬剤噴霧装置とで構成し、該静電式薬剤噴霧装置は、1以上の放電電極及び該1以上の放電電極に所定のスペースを有して設置した1以上の対向電極で構成しこれら両電極に所定の電圧を印加する電源からなる放電部と、水を水蒸気化する水蒸散部と、防虫薬剤をガス化させる薬剤蒸散部と、前記放電部を境にして上流側に前記水蒸散部を下流側に前記薬剤蒸散部を設置し、前記放電部にて帯電させた前記水蒸散部から放出した水蒸気と前記薬剤蒸散部から放出した防虫薬剤ガスとを混合し結合してクラスター化し帯電した防虫薬剤ガスにする反応室と、該反応室内にエアーを送り込む送風機構と、からなり、前記静電式薬剤噴霧装置からクラスター化し帯電した防虫薬剤ガスを前記エアーカーテン装置に供給して、防虫薬剤ガス含有エアーカーテンを吹き出すようにしたことを特徴とする虫侵入防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−80866(P2012−80866A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244630(P2010−244630)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000228028)株式会社トルネックス (25)
【Fターム(参考)】