説明

蚊忌避剤

【課題】塗りムラ、べたつき感、刺激性、テカリ等の皮膚に直接塗布するタイプの蚊忌避剤の課題を解決し、簡便かつ安全な経口摂取する蚊忌避剤を提供する。
【解決手段】ゲラニオール及び/又はシンナミックアルデヒトを、1回あたりの摂取量が4mg以上となる量含有する飴剤からなり、口腔内で溶かして摂取することを特徴とする蚊忌避剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口摂取により蚊を忌避する効果を有する蚊忌避剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の蚊忌避剤としては、DEET(N,N−ジエチル−3−メチルベンズアミド)等の蚊忌避有効成分とするエアゾール式、ウェットティッシュ式等のものが提案されている。しかしながら、これらは人の皮膚に直接塗布するものであり、塗りムラが生じた場合に、未塗布部分は吸血されたり、皮膚に塗布した際のべたつき感、刺激性、テカリを生じたり、といった問題があり、これらの課題を解決する技術が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−7554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、塗りムラ、べたつき感、刺激性、テカリ等の皮膚に直接塗布するタイプの蚊忌避剤の課題を解決し、簡便かつ安全な経口摂取する蚊忌避剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、ゲラニオール及び/又はシンナミックアルデヒトを含有する飴剤であって、これを1回あたりの摂取量が4mg以上となるように、口腔内で溶かして摂取することにより、蚊を忌避することができることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0006】
従って、本発明は下記蚊忌避剤を提供する。
[1].ゲラニオール及び/又はシンナミックアルデヒトを、1回あたりの摂取量が4mg以上となる量含有する飴剤からなり、口腔内で溶かして摂取することを特徴とする蚊忌避剤。
[2].ゲラニオール及び/又はシンナミックアルデヒトを4mg以上含有する飴剤からなり、口腔内で溶かして摂取することを特徴とする蚊忌避剤。
[3].飴剤中のゲラニオール及び/又はシンナミックアルデヒトの含有量が0.1〜1.5質量%である[1]又は[2]記載の蚊忌避剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡便かつ安全で、皮膚に直接塗布するタイプの蚊忌避剤の課題を解決できる、経口摂取する蚊忌避剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の蚊忌避剤は、ゲラニオール及び/又はシンナミックアルデヒトを、1回あたりの摂取量が4mg以上となる量含有する飴剤からなり、口腔内で溶かして摂取する蚊忌避剤である。
【0009】
[ゲラニオール]
ゲラニオールは、ゼラニウムから発見された直鎖モノテルペノイドの1種である。下記式(1)で示される。分子量は154.25、融点15℃、沸点229℃で、無色又は薄い黄色の液体で、水には不溶である。
【0010】
【化1】

【0011】
[シンナミックアルデヒト]
芳香族アルデヒトの1種であり、下記式(2)で示される。分子量は132.16、融点−7.5℃、沸点251℃で黄色の油状液体である。水に難溶で、エタノール、ジエチルエーテル等の有機溶媒に易溶である。
【0012】
【化2】

【0013】
ゲラニオール及び/又はシンナミックアルデヒトの飴剤中の摂取量は、成人一人あたり4mg以上であり、6mg以上が好ましく、8mg以上がより好ましい。これらは過剰に摂取しても特に問題はないが、上限は16mgにしてもよい。1回の摂取量が4mg以下であると蚊忌避効果が不十分となる。飴剤中の含有量は、1回の摂取量が4mg以上となるようにすればよく、例えば、ゲラニオール及び/又はシンナミックアルデヒトを4mg以上、好ましくは6mg以上、8mg以上とすればよく、上限は16mgとしてもよい。また、飴剤中のゲラニオール又はシンナミックアルデヒトの含有量は0.1〜1.5質量%が好ましく、0.1〜0.8質量%がより好ましい。ゲラニオール及び/又はシンナミックアルデヒトの含有量が1.5質量%を超えると、嗜好性が悪くなるおそれがある。2成分を併用する場合は、上記量はその合計量をいう。
【0014】
本発明の蚊忌避剤は、口腔内で固形の飴剤を溶かして摂取することにより、蚊忌避効果を発揮する。例えば、ガムやドリンク剤等の剤型では蚊忌避効果が不十分となる。摂取時間(飴剤を溶かす時間)は特に限定されないが、3分以上が好ましく、4分以上がより好ましく、8分以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、20分以下としてもよい。
【0015】
[飴剤]
本発明の飴剤はゲラニオール及び/又はシンナミックアルデヒトを必要量含有していれば特に問題はなく、飴剤に通常用いられる任意成分を適量配合することができる。任意成分としては、飴剤に通常用いられる成分であれば特に限定されないが、還元水あめ等の水あめ(10〜70質量%);白糖、黒糖等の砂糖(5〜50質量%)、植物油脂、動物油脂等のショートニング(0.05〜5質量%)、クエン酸等の酸味料、ゲラニオール及びシンナミックアルデヒト以外の香料、着色料、果汁、ビタミン剤、水等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。飴剤の大きさは、上記摂取量及び含有量となれば特に限定されず、1〜16g程度であるが、食べやすさの点から1〜8gが好ましい。また、飴剤はハードタイプでもソフトタイプでもよいが、効果の点からハードタイプが好ましい。
【0016】
飴剤の製造方法は特に限定されず、公知の方法を選択できる。例えば、上記水あめや砂糖と、水とを混合した飴生地を130〜170℃に加熱し、水分含量が3〜9質量%ぐらいまで煮詰めた後、70℃以上130℃未満に冷却した後、ゲラニオール又はシンナミックアルデヒト及び他の任意成分を加え、混合する。得られた混合物を成型する。成型法は特に限定されず、デポジット法、スタンピング法等の公知の方法を選択できる。
【実施例】
【0017】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。特に明記のない場合は、「%」は「質量%」を示す。
【0018】
[実施例1〜4、比較例1]
還元水あめ、砂糖及び水を混合した飴生地(水分75質量%)に調製した後、水分含量が5%となるまで160℃で煮詰めた。80〜120℃になるまで冷却した後、植物油脂、クエン酸、ゲラニオール又はシンナミックアルデヒトを添加・混合した。得られた混合物をデポジット法で成型し、表1に示す組成のハードタイプの飴(1g/1個)を得た。
【0019】
[比較例2,3]
表1に示す組成のガムを、ガムベースをニーダーに入れ約120℃で溶解撹拌し、それを50℃まで冷却したところで混合機に投入し、その混合機の中のガムベースに、砂糖、還元水あめ、植物油脂、クエン酸、ゲラニオール又はシンナミックアルデヒドを投入し、50℃で約1時間撹拌練成し、それを射出成型機によりシート状に押し出すとともに、圧延し、裁断して1枚1gのガムを得た。
【0020】
[蚊忌避効果]
表1の飴及びガムについては、約4分かけて摂取した。表2の飴については表中に記載の時間で摂取した。摂取1時間後に蚊を9〜14匹(総供試虫数)入れたゲージ内に左腕を入れた。10分後にゲージから左腕を引き抜き、腕の紅斑より吸血数を数え、下記式により吸血率(%)を算出した。
吸血率(%)=吸血数/総供試虫数×100
吸血率(%)から下記基準に基づき蚊忌避効果を示した。
<蚊忌避効果基準>
○:吸血率(%)が40%以下
△:吸血率(%)が40%を超え60%未満
×:吸血率(%)が60%以上
【0021】
【表1】

【0022】
[実施例5〜8]
表2に示す組成、配合量及び飴の重さのハードタイプの飴を、上記実施例に準じて調製した。得られた飴及びガムについて、上記方法で蚊忌避効果を評価した。結果を表中に併記する。なお、飴1gの摂取時間は3分52秒、2gは8分53秒、4gは12分23秒、8gは16分16秒であった。
【0023】
【表2】

【0024】
上記の結果から、本発明の蚊忌避効果は、飴中の配合割合ではなく、1回の飴摂取量(飴中の絶対量)に依存するものであることが分かった。なお、実施例8は嗜好性に劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲラニオール及び/又はシンナミックアルデヒトを、1回あたりの摂取量が4mg以上となる量含有する飴剤からなり、口腔内で溶かして摂取することを特徴とする蚊忌避剤。
【請求項2】
ゲラニオール及び/又はシンナミックアルデヒトを4mg以上含有する飴剤からなり、口腔内で溶かして摂取することを特徴とする蚊忌避剤。
【請求項3】
飴剤中のゲラニオール及び/又はシンナミックアルデヒトの含有量が0.1〜1.5質量%である請求項1又は2記載の蚊忌避剤。

【公開番号】特開2010−270072(P2010−270072A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123990(P2009−123990)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】