説明

蛍光コバラミンおよびその使用

【課題】蛍光コバラミンおよびこれらの化合物の使用する方法を提供する。
【解決手段】コバラミンに共有結合した蛍光、リン光、ルミネセントまたは光−発生化合物を含む蛍光コバラミン。これらの蛍光コバラミンは、(a)癌細胞を含むリンパ節の同定を含め、癌細胞および組織を健康な細胞および組織から区別し、および(b)コバラミン−療法バイオコンジュゲートを用いる化学療法に個体が陽性的に応答するかを判断するために診断および予後マーカーとして用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、National Institutes of Health,Bethesda,メリーランド州から与えられた補助金番号R01CA73003およびCA87685下、部分的には政府の支援でなされた。合衆国政府は本発明においてある種の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本発明は、(ここではCobalaFluorsという場合もある)蛍光コバラミンおよびこれらの化合物の使用に関する。さらに詳しくは、本発明は、コバラミンに共有結合した蛍光、リン光、ルミネセント、光−発生化合物よりなる蛍光コバラミンに関する。これらの蛍光コバラミンは、(a)癌細胞を含むリンパ節の同定を含め、健康な細胞および組織から癌細胞および組織を区別し、および(b)コバラミン−ベースの治療バイオコンジュゲートを用いる化学療法に個体が陽性的に応答するかを判断するための診断および予後マーカーとして用いることができる。
【0003】
発明の背景を明らかにし、特定の場合には、実施に関してさらに詳細を供するために本明細書中で用いる刊行物および他の資料は引用により本明細書の一部と見なし、便宜のため、以下の本文においては、著者および日付によって参照し、添付のビブリオグラフィーにおいて著者によりアルファベット順にリストする。
【0004】
迅速に分裂する細胞は、DNA複製に先立って一炭素代謝を支持するために酵素メチオニンシンターゼのための補因子としてコバラミンを必要とする。(Hogenkampら、1999)。急性前骨髄球白血病においては、B12結合蛋白質であるトランスコバラミンおよびハプトコリンの濃度の増加のため、血液の不飽和B12結合能力の3ないし26倍の増加が観察される(Schneiderら、1987;Rachimelwitzら,1971)。また、固体腫瘍を持つある患者は、トランスコバラミンおよびハプトコリンの循環レベルの有意な増加を呈する(Carmelら.1975)。不飽和血清コバラミン結合能力の増加は、迅速に分裂する細胞によるコバラミンの取込増加に対応する。もし111Inのごときガンマ線放出放射性核種を八座キレーターであるジエチレントリアミン四酢酸(DTPA)を介してコバラミンに結合させると、腫瘍は、診断イメージング目的の十分なコバラミンでさえ、隔離する(HogenkampおよびCollins,1997)。これは、移植された線維肉腫を持つマウスにおいて(HogenkampおよびCollins,1997)ならびに乳癌を持つヒトにおいて(Collinsら,1999)、および前立腺、肺および脳の腫瘍において(Collinsら,2000)示されている。
【0005】
黒色腫および乳癌の外科処置のためのセンチネルリンパ節概念において、色素または放射性核種を腫瘍の周りの組織に注入して、腫瘍を排出する最初のリンパ節を同定する(Mortonら,1992;McGreevy,1998)。この節はセンチネル節と呼ばれ、それは、初代腫瘍を超える転移の程度を測定するために診断テストで取り出される。この手法は議論を呼んでいる。というのも、それは患者の約12%において転移性病気を検出しないからである(McMastersら,1999)。注入される色素または放射性核種は癌細胞に対して特異的ではないが、外科医は、腫瘍の領域を排出する初代リンパ節を同定するに過ぎない。癌細胞に特異的な蛍光マーカーを用いることによって高偽陰性率は劇的に改良されるはずである。
【0006】
かくして、改良された結果を伴って、癌細胞または細胞の診断および予後で用いることができる剤に対する要望が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、蛍光コバラミンおよびそれらの化合物の使用に関する。さらに詳しくは、本発明は、コバラミンに共有結合した蛍光、リン光、ルミネセント、または光−発生化合物よりなる蛍光コバラミンに関する。これらの蛍光コバラミンは、(a)癌細胞を含むリンパ節の同定を含め、健康な細胞および組織から癌細胞および組織を区別するために、および(b)コバラミン−治療バイオコンジュゲートを用いる化学療法に個体が陽性的に応答するかを判断するために、診断および予後マーカーとして用いることができる。本発明の蛍光コバラミンは、(1)癌細胞による迅速な輸送および貯蔵(最大取込は4ないし6時間において起こる)、(2)非常に低い濃度にて肉眼で検出できる明るいリン光、および(3)非毒性成分の必要な特性を供給する。
【0008】
本発明の一つの態様において、蛍光、リン光、ルミネセントまたは光−発生化合物がコバラミン(ビタミンB12)に共有結合した蛍光コバラミンが提供される。該蛍光、リン光または光−発生化合物は、コバルト原子、コリン環、またはコバラミンのリボース部位に共有結合することができる。該蛍光、リン光、ルミネセントまたは光−発生化合物はコリン環またはリボース部位に共有結合されるのが好ましい。いずれの蛍光、リン光、ルミネセントまたは光−発生化合物も蛍光コバラミンを調製するのに利用することができるが、可視光線または赤外線で励起できる蛍光、リン光、ルミネセントまたは光−発生化合物を利用するのが好ましい。好ましい蛍光化合物の例は限定されるものではないが、フルオレセイン、フルオレセイン−5EX、メトキシクマリン、ナフトフルオレセイン、BODIPY 493/503、BODIPY FL、BODIPY、R6G、BODIPY 530/550、BODIPY TMR、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY TR、カスケードブルー、ダンシル、ジアルキルアミノクマリン、4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン、2’,7’−ジクロロフルオレセイン、エオシン、エオシンF3S、エリスロシン、ヒドロキシクマリン、リサミンローダミンB、メトキシクマリン、ナフトフルオレセイン、NBD、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴングリーン514、PyMPO、ピレン、ローダミン6G、ローダミングリーン、ローダミンレッド、ロドールグリーン、2’,4’,5’,7’−テトラブロモスルホンフルオレセイン、テトラメチルローダミン(TMR)、テキサスレッド、X−ローダミン、Cy2色素、Cy3色素、Cy5色素、Cy5.5色素、または量子ドット構造体を含む。本発明の好ましい蛍光コバラミンは、コバラミンから蛍光またはリン光化合物を分離する必要性なくして可視光線または赤外光によって励起されると蛍光を発する。該光は適当なフィルターを備えたレーザーまたはファイバーオプティック光源によって供することができる。良好な組織への侵入のためには、赤色光が好ましい。
【0009】
本発明の第2の態様において、蛍光コバラミンを用いて癌細胞を健康な細胞から区別する。本発明のこの態様の1つの具体例において、外科的処置に先立って、蛍光コバラミンを患者に投与する。初代腫瘍におけるか転移性部位におけるかを問わず、癌細胞における蛍光、リン光、ルミネセンスまたは発せられた光の存在は、外科医が組織を規定するのに用いられる。第2の具体例において、腫瘍の位置を排出するリンパ節による取込に適したように蛍光コバラミンは患者に投与される。蛍光、リン光、ルミネセンスまたは発せられた光の存在は、外科的処置の間に除去すべきリンパ節を同定する。この後者の具体例おいて、腹腔鏡検査、内視鏡および顕微鏡技術を用いて、癌細胞を持つリンパ節を同定することができる。これらの技術の使用は陽性リンパ節の同定および検索を容易とする。
【0010】
本発明の第3の態様において、蛍光コバラミンを用いて、コバラミン−ベースの治療バイオコンジュケートを用いる化学療法に個体が陽性的に応答するかを判断する。この態様においては、蛍光コバラミンを用いて、コバラミンを輸送し、貯蔵する特定の細胞型の能力を定量的におよび定性的に評価する。大量のコバラミンを輸送し貯蔵する種々のタイプの癌は、コバラミン−ベースの治療バイオコンジュゲートでの療法のための良好な候補である。腫瘍細胞コバラミン結合、取込、輸送および貯蔵の定量は、エピ蛍光顕微鏡、蛍光腹腔鏡検査、蛍光内視鏡検査またはフルオロサイトメトによって、肉眼での観察下にて蛍光を測定することによって(例えば、組織スライド)行うことができる。
【0011】
本発明の第4の態様において、蛍光コバラミンを用いて、血液、血漿、血清、脳脊髄液または尿中のコバラミンのレベルを測定し、または血液、血漿、血清または脳脊髄液における未結合コバラミン結合能力の量を測定する。
【0012】
本発明の第5の態様において、腹腔鏡または内視鏡可視化用い、いずれの蛍光分子(癌−標的化または非標的化)も検出することができる。
【0013】
発明の詳細な記載
本発明は、蛍光コバラミンおよびこれらの化合物の使用に関する。さらに詳しくは、本発明は、コバラミン(ビタミンB12)に共有結合した蛍光化合物(フルオロフォア)、リン光化合物(ホスホロフォア)、ルミネセント化合物(ケミルミネセントクロモフォア)または光−発生化合物を含む蛍光コバラミンに関する。これらの蛍光コバラミンは、(a)癌細胞を含むリンパ節の同定を含め、健康な細胞および組織から癌細胞および癌性組織を区別し、および(b)コバラミン−治療バイオコンジュゲートを用いる化学療法に個体が陽性的に応答するかを決定するために診断および予後マーカーとして用いることができる。
本発明の蛍光コバラミンは、一般式:
【0014】
【化1】

【0015】
[RはCN、OH、OH、CH、5’−デオキシアデノシンまたは(CH)pNHC(=S)Yであり;R、R、R、R、RおよびRは独立してCONHまたはCO−XYであり;RはCHOHまたはCHO(C=O)XYであり;RはOHまたはO(C=O)XYであり;Xは式N(CHNHO(C=O)またはNH−(CH−NHを有するリンカーであり;Yはフルオロフォア、ホスホロフォア、ケミルミネセントクロモフォアまたは光−発生分子であり;mは0または1であり、nは0ないし50であって、pは2ないし10であり、但し、RないしRの基のうちの少なくとも1つはYを含み、さらに、
がCN、OH、OH、CH、5’−デオキシアデノシンまたは(CHNHC(=S)Yであり;R、R、R、R、RおよびRが独立してCONHまたはCO−XYであり;RがOHまたはO(C=O)XYであり;mが1であり;XがN(CHNHO(C=O)であって;RないしRおよびRの基のうちの少なくとも1つがYを含む場合、RはCHOHではなく;かつ
がCN、OH、OH、CH、5’−デオキシアデノシンまたは(CHNHC(=S)Yであり;R、R、R、R、RおよびRが独立してCONHまたはCO−XYであり;RがOHまたはO(C=O)XYであり;mが0であって;RないしRおよびRの基のうちの少なくとも1つがYを含む場合、RはCHOHではない]
によって表すことができる。少なくともRはYを含むことが好ましい。
【0016】
本発明の蛍光コバラミンは、フルオロフォア、ホスホロフォア、ケミルミネセントクロモフォアまたは光−発生分子をコバラミンに共有結合させることによって調製される。該フルオロフォア、ホスホロフォア、ケミルミネセントクロモフォアまたは光−発生分子は、直接的にまたはリンカー分子を介して、コバルト原子、コリン環またはリボース糖に共有結合される。共有結合は、好ましくは、リンカー分子の使用で達成される。該フルオロフォア、ホスホロフォア、ケミルミネセントクロモフォアまたは光−発生分子がコバラミンのコバルト原子に結合すれば、コバルト原子のスピンによる消光を介して、蛍光、リン光または発せられた光はその強度が減少する。加えて、蛍光コバラミンが光に長く暴露されると、コバルト−炭素結合が切断され、フルオロフォア、ホスホロフォア、ケミルミネセントクロモフォアまたは光−発生分子がコバラミンから放出される(Howardら,1997)。かくして、フルオロフォア、ホスホロフォア、ケミルミネセントクロモフォアまたは光−発生分子をコバラミン分子のコリン環またはリボース部位に結合させるのが好ましい。これらの後者の蛍光コバラミンは、フルオロフォア、ホスホロフォア、ケミルミネセントクロモフォアまたは光−発生分子がコバルト原子に共有結合した蛍光コバラミンの不利な点を有しない。
【0017】
フルオロフォア、ホスホロフォア、ケミルミネセントクロモフォアまたは光−発生分子のコリン環または5’−リボースヒドロキシ基上のカルボキシレートへの結合は、より低い感度および光不安定性の問題を回避する。一般に、コリン環カルボキシレート誘導体(CollinsおよびHogenkamp,1997)は知られているが、蛍光マーカーを含む化合物は合成されていない。フルオロフォア、ホスホロフォア、ケミルミネセントクロモフォアまたは光−発生分子は、公表された方法に従ってコバラミンモノカルボキシレートを誘導体化することによって、コバルト原子よりはむしろ、コリン環に直接結合させることができる(CollinsおよびHogenkamp,1997およびそこに引用された文献)。図1は、本発明による修飾で用いることができるコバラミン上の部位を示す。
【0018】
いずれのフルオロフォア、ホスホロフォア、ケミルミネセントクロモフォアまたは光−発生分子も蛍光コバラミンを調製するのに利用することができるが、可視光または赤外光で励起することができるフルオロフォアを利用するのが好ましい。蛍光コバラミンのイン・ビボ使用では、可視光または赤外光を用いるのが好ましい。好ましいフルオロフォアの例は、限定されるものではないが、フルオレセイン、フルオレセイン−5EX、メトキシクマリン、ナフトフルオレセイン、BODIPY 493/503、BODIPY FL、BODIPY R6G、BODIPY 530/550、BODIPY TMR、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY TR、カスケードブルー、ダンシル、ジアルキルアミノクマリン、4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオセレイン、2’,7’−ジクロロフルオレセイン、エオシン、エオシンF3S、エリスロシン、ヒドロキシクマリン、リサミンローダミンB、メトキシクマリン、ナフトフルオレセイン、NBD、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴングリーン514、PyMPO、ピレン、ローダミン6G、ローダミングリーン、ローダミンレッド、ロドールグリーン、2’,4’,5’,7’−テトラブロモスルホンフルオレセイン、テトラメチルローダミン(TMR)、テキサスレッド、X−ローダミン、Cy2色素、Cy3色素、Cy5色素、Cy5.5色素、または量子ドット構造体を含む。本発明の好ましいフルオレセインは、フルオロフォアをバイオコンジュゲートから切断する必要性なくして、可視光または赤外光によって励起されると蛍光を発する。該光は、適当なフィルターを設けたレーザーまたはファイバーオプティック光源によって供することができる。良好な組織への侵入のためには赤色光が好ましい。
【0019】
正常および白血病人骨髄において蛍光コバラミンアナログの異なる取込があることが判明した。正常骨髄細胞および白血病骨髄芽細胞(癌細胞)の間の差は特に注目すべきであり、正常細胞によって摂取されるコバラミンは検出できない。健康な個体からの骨髄細胞は蛍光標識を示さない。また、元来潜在的化学療法化合物として合成された、ドキソルビシン−コバラミンコンジュゲートの取込があることも判明した。該ドキソルビシン−コバラミンコンジュゲートの細胞取込は、P−388ネズミ白血病細胞ならびにHCT−116ヒト結腸腫瘍細胞で観察することができる。かくして、コバラミンの蛍光誘導体の取込は白血病および固体腫瘍細胞系で起こる。これらの結果は、全ての癌細胞がコバラミンの輸送および貯蔵を増加させるという知識と組み合わせると、癌細胞を正常な細胞から区別する蛍光コバラミンの使用の一般的適用性を証明する。
【0020】
かくして、本発明の蛍光コバラミンは、
・蛍光顕微鏡、蛍光腹腔鏡検査、蛍光内視鏡検査またはフローサイトメトリーを介して肉眼で癌性組織を同定し;
・組織バイオプシーからの組織切片または試料中の癌性細胞を同定し;
・イン・ビボ、エクス・ビボまたはイン・サイチュにおいて腫瘍の境界を画定し;
・イン・ビボ、エクス・ビボまたはイン・サイチュにて癌を診断し、検出し、予後し、予測しまたはモニターし;
・イン・ビボ、エクス・ビボまたはイン・サイチュにて転移性癌を同定し;
・癌の進行段階を判断し;
・経皮的に癌を同定し;
・転移性癌を経皮的に同定し;
・腹腔鏡検査または内視鏡検査のごとき最小限侵入的技術の使用を含め、センチネルリンパ節または複数リンパ節、または腋窩リンパ節また複数リンパ節を含めたリンパ節において癌を同定し;
・乳癌、卵巣癌、肺癌、前立腺癌、上皮癌(腺癌)、肝臓癌、黒色腫およびリンパ腫のごとき癌の治療、検出、予測、予後またはモニタリングにおいて転移性病気を同定し;
・白血病またはリンパ腫を診断し、予測し、予後し、モニターしまたは特徴付けるために、骨髄吸引物または末梢血液試料のフローサイトメトリー実験を行い;
・コバラミン−療法バイオコンジュゲートの使用に基づく化学療法に患者が陽性的に応答するか否かを予測し;
・バイオプシーまたはランペクトミーにおいて腫瘍の微細境界の画定を改良し;
・バイオプシー、ランペクトミーまたは腫瘍摘除において癌細胞を残す確率を減少させ、それにより、残りの癌細胞を除去するために、補足的外科処置の必要性を減少させるのに用いることができる。
【0021】
予測とは、腫瘍の生物学的挙動、腫瘍が療法に対してどのように(好都合にまたは不都合に)応答するかの理解をいう。予後とは、療法後の患者の予測される結果(すなわち、療法後の5年または10年生存の可能性)をいう。モニタリングとは、治療後の残存する病気の療法および検出の成功の判断をいう。その例は、白血病の治療後に骨髄芽細胞の存在につき骨髄をテストするための蛍光コバラミンコンジュゲートの使用である。特徴付けとは、密接に関連したタイプの腫瘍を比較した、腫瘍のタイプの記載または定量的分類をいう。
【0022】
本発明の蛍光コバラミンは、当該分野で知られた慣用的癌の診断、検出、予測、予後、モニタリングまたは特徴付けの方法に従って投与することができる。例えば、蛍光コバラミンは静脈内、鞘内、腫瘍内、筋肉内、リンパ内または経口投与することができる。典型的には、本発明の蛍光コバラミンは医薬上許容される担体と混合される。該担体は、投与で望まれる製剤の形態、例えば、経口、非経口、静脈内、鞘内、腫瘍内、腫瘍周辺および硬膜外に応じて、広く種々の形態をとることができる。該組成物は、抗酸化剤、安定化剤、保存剤等をさらに含むことができる。技術およびプロトコルの例はRemington’s Pharmaceutical Sciencesに見出すことができる。投与すべき蛍光コバラミンの量は、典型的には、1ないし500mgである。
【0023】
本明細書中に示すごとく、コバラミンアナログは、ハプトコリン(TCIまたはHC)、内生因子(IF)またはトランスコバラミン(TCII)のごときコバラミン輸送蛋白質によって高い親和性でもって認識される。大きな分子のコバラミンへの結合は蛋白質結合に影響しないようである。
【0024】
リンパ節における転移性病気を同定する外科医の能力の改良は、例えば、健康な組織を保存し、除去される腋窩リンパ節の数を最小化することによって、外科的療法を進歩させる。これは、患者の生活の質を改良し、罹患率および長期死亡率を改良する。リンパ節まで広がった癌細胞の正確な同定は、健康な腋窩節を容赦しつつ、病的管および節のみの除去を可能とする。本発明は極めて価値がある。例えば、毎年の乳癌の186,000の新しい事例において、初代腫瘍を除去し、関連するリンパ節の状態を測定する外科的処置の数はかなりのものである。全ての腋窩リンパ節および管の形式的な除去は、局所的な浮腫および増大した罹患率に導く。転移性癌細胞を含む腋窩リンパ節および管の非−除去は、減少した生存および増加した長期の死亡率に導く。
【0025】
センチネルリンパ節バイオプシーアプローチにおいて、青色色素および/または放射性トレーサーを腫瘍近くの乳房に注入する。腕の下で小さな切除を行って、色素の痕跡または放射能を探し、乳房の領域を排出し、その結果、転移性癌細胞を最も含みそうなリンパ節を同定する。本発明によると、蛍光コバラミンは、センチネルリンパ節バイオプシーで現在用いられる青色色素および放射性同位体トレーサーを置き換える。本発明の蛍光コバラミンの使用は、全てのタイプの癌へのセンチネルリンパ節バイオプシーアプローチの適用を可能とする。加えて、本発明の蛍光コバラミンは、癌の分析、特に、リンパ節における癌細胞の分析における、腹腔鏡、内視鏡および顕微鏡技術のごとき最小限に侵入的な技術の使用を可能とする。蛍光コバラミンの使用は、陽性リンパ節の同定および検索を容易とする。かくして、本発明によると、蛍光コバラミンは、以下の:乳房、皮膚(黒色腫)、婦人科(卵巣、前立腺、子宮、頚部、外陰部、陰茎、精巣)、頭部および首(唇、舌、口、咽頭)、消化器官(食道、胃、小腸、大腸、直腸、結腸、肝臓、すい臓)、骨、結合組織、泌尿器官(膀胱、腎臓)、眼、脳および中枢神経系、内分泌腺(胸腺)、リンパ組織、ホジキン病、非−ホジキン病、リンパ種、多発性骨髄腫の癌または複数癌で用いることができる。
【0026】
加えて、本発明の蛍光コバラミンの使用は、癌細胞を含有し、かつ除去されなければならないリンパ節の同定に対して、腹腔鏡および内視鏡技術のごとき最小限に侵入的な技術の使用を可能とする。この提案された技術が、より正確で苦痛の少ない方法で、手術可能な乳癌を持つ患者において腋窩リンパ節を外科的に調べる2つの現在の方法を置き換えるように設計される。今日用いられている2つの手術は、大きな切除(ほぼ5インチ)を用い、低レベルのリンパ節(10−15)の全てを除去する標準的な腋窩節切開である。第2の現在の実験方法は、センチネルリンパ節バイオプシーである。この方法は、第1のリンパ節を同定して、乳房を排除するのに目に見える色素またはガンマエミッターいずれかを用いる。これは、同様に、大きな切除およびリンパ経路の技術的に挑戦される調査を必要とする。本発明のコバラミン分子は、癌を持つ節に対してフルオロフォアを採用する。リンパ節は、腹腔鏡装置を用いる3つの小さな切除(3−5mm)を介して直接的に調べる。密接な手術技術は、レーザー励起に対して暗い視野を提供する。腫瘍を担うリンパ節におけるコバラミン−フルオロフォアからの刺激された光の明るい発光は、陽性リンパ節の同定および検索を容易とするであろう。この方法の結果、切開はより小さく、苦痛はより少なく、かつ精度は良好となる。同様な原理は、内視鏡技術で癌細胞を検出する蛍光コバラミンの使用に適用される。
【0027】
さらに、本発明の蛍光コバラミンは癌細胞によって異なって取り入れられるので、これらの蛍光コバラミンは、外科医が癌性組織を選択的に切除し、それにより、健康な組織を残すことができるのを可能とする改良されたマーカーである。
【0028】
腹腔鏡または内視鏡により検出されるべき癌細胞に結合した蛍光コバラミンの能力は、蛍光分子を用いて、腹腔鏡または内視鏡によりセンチネルリンパ節を測定することができる。かくして、いずれの蛍光分子(癌−標的化または非−標的化)も、腹腔鏡または内視鏡可視化を用いてリンパ節で検出することができる。その例として、現在、センチネルリンパ節手法で行われているように、赤色フルオロフォアを腫瘍内に注入することができよう。腋窩の通気は、外科医が、蛍光節を(2つの小さな切除を介して)腹腔鏡により見出し、それにより、センチネル節の一般的位置を見出すのを助けるための放射性トレーサーの使用を回避することを可能とする。
【0029】
本発明の蛍光コバラミンは、手術内マーカーとしていくつかの改良を提供する。これらの改良は、以下のものを含む:
・蛍光マーカーはいずれの節が周期的骨盤窩を排出しているかを単に示すよりはむしろ、リンパ管および節中の癌細胞に特異的である。また蛍光マーカーは癌細胞を健康な細胞から区別する。
・該マーカーは、蛍光検出によって供される内生感度のため、低濃度で用いることができる。現在用いられている青色色素は活性な節をあいまいとする傾向にあり、病理学者により組織の外科処置後の調査を複雑化する。また、青色色素は出血する血管をあいまいとする傾向にあり、それにより、節の外科的切除および引き続いての創傷の閉鎖を複雑化する。蛍光マーカーの使用はこれらの問題を回避するはずである。
・癌細胞に特異的な蛍光マーカーは、現在実施される手法で見られるような、5ないし10%の偽陰性率を改良する。
・増大した偽陰性率は、患者および外科医によるこの技術の許容性を改良する。これは、外科医がこの手法を学ぶのに必要な訓練時間(典型的には、完全な軸方向の節の切開、30以上のケース)を減少させる。
・蛍光マーカーは、癌細胞の可視化のための腹腔鏡、内視鏡および顕微鏡技術の使用を可能とする。また、これらの技術を用いて、初代腫瘍、転移性腫瘍、腋窩リンパ節、鼡径リンパ節および頚部リンパ節を可視化することができる。これらの技術は、癌の分析において、大きな切除およびリンパ経路の技術的に挑戦する調査の必要性を低減化する。これらの技術の結果、切開は小さくなり、苦痛が少なくなり、精度は良好となる。
【0030】
本発明のさらなる具体例において、血液、血漿、血清または他の体液中の天然に生じるコバラミン(ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミン、アデノシルコバラミンまたはシアノコバラミン)の濃度または量を測定するために競合的結合アッセイで用いることができる。このタイプのアッセイにおいて、蛍光コバラミンは、当業者によく知られた競合結合アッセイにおける放射性標識コバラミンの代わりに用いられる。コバラミンについての放射性アッセイは、とりわけ、ここに引用して、その各々を本明細書の一部とみなす米国特許第6,096,290号;第5,614,394号;第5,227,311号;第5,187,107号;第5,104,815号;第4,680,273号;第4,465,775号;第4,355,018号に記載されてきた。このアッセイ手法を用いて、血液、血漿、血清または体液中の不飽和コバラミン結合能力の量、ならびに蛋白質トランスコバラミン、ハプトコリンまたは内生因子に結合したコバラミンの濃度を測定することができる。蛍光コバラミンの使用は、臨床化学結合アッセイにおける放射性標識コバラミンよりも有意な利点を有する。なぜならば、それは、放射性−標識コバラミンに伴う特別な出荷、取り扱いおよび廃棄手法を必要としないからである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、コバラミン分子に対する修飾するための部位を示す。
【図2】図2は、本発明による1つの蛍光コバラミンの合成を示す。
【図3】図3は、コバラミンモノカルボン酸の合成を示す。
【図4】図4は、コバラミンカルボン酸と1,12−ジアミノドデカンとのコンジュゲーションを示す。
【図5】図5は、フルオレセイン−5EX−NHSエステルとジアミノドデカンコバラミン誘導体とのコンジュゲーションを示す。
【図6】図6は、フルオレセイン−5EX−b−コバラミン誘導体CBC−123の蛍光発光スペクトルを示す。
【図7】図7は、CobalaFluor Yの合成を示す。
【図8】図8は、CobalaFluor Y(Cy5 CobalaFluor)の蛍光発光スペクトルを示す。
【図9】図9は、CM5 BIAcoreチップに対するコバラミンアナログの固定化を示す。
【図10】図10は、競合アッセイセンソルグラムを示す。
【図11】図11は、TCII結合についてのコバラミンの競合を示す。
【図12A】図12Aは、コバラミン、コバラミンアナログおよびCobalaFluorについてのKd値を示す。
【図12B】図12Bは、コバラミン、コバラミンアナログおよびCobalaFluorについてのKd値を示す。
【図12C】図12Cは、コバラミン、コバラミンアナログおよびCobalaFluorについてのKd値を示す。
【図13】図13は、動物モデルにおける腫瘍イメージングを示す。
【図14】図14は、新形成乳房組織における腫瘍イメージングを示す。
【図15】図15は、新形成リンパ節組織における腫瘍イメージングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
実施例
以下に実施例を挙げて本発明をさらに記載するが、それは例示的として掲げるのであって、断じて本発明を限定する意図のものではない。当該分野でよく知られた標準的な技術および後に具体的に記載する技術を利用した。
【0033】
実施例1
フルオロフォアのコバルトへの結合による蛍光コバラミンの合成
コバラミン局所化の目で見えるインジケーターとして、フルオレセインをコバラミンに共有結合させることによって、コバラミンの5つの蛍光アナログを調製した。緑色光の照射下で、フルオレセイン分子は黄色光を発し、これは0.1ppmよりも低い濃度までの暗く適合された目によって検出することができる。この発光は、エピ蛍光顕微鏡を介する、ならびに肉眼での観察による癌細胞の感度の良い検出を可能とする。5つの蛍光コバラミンの各々は、固有の蛍光を呈した。これらの化合物の全ては、公表された技術に従って、塩化アミノプロピルをコバ(I)ラミンと反応させて、アミノプロピルコバ(III)ラミンを生じさせることによって合成した。引き続いての工程において、アミノプロピルコバ(III)ラミンを種々のフルオロフォアイソチオシアネート(すなわち、フルオレセインイソチオシアナート「FITC」)と反応させて、アミノプロビルリンカーを介してコバラミンに結合した対応するフルオロフォア(すなわち、フルオレセイン−アミノプロピル−コバ(III)ラミン)を得た。この酵素の反応を、図2に示す。
同様にして、フルオロフォアがナフトフルオレセインまたはオレゴングリーンである蛍光コバラミンを調製した。全ての蛍光コバラミンは、組換えトランスコバラミン(rhTCII)に対して高い親和性を保持し、かくして、天然に生じるコバラミンで観察されるのと同様な生物学的分布を可能とすることが判明した。
【0034】
実施例2
癌細胞によるコバラミンアナログの取込
白血病骨髄芽細胞調製物は急性骨髄性白血病(AML)M1を有する61歳の患者の骨髄から作成した(FAB分類において、最小限に成熟した骨髄芽細胞)。実施例1に記載されたごとく調製した蛍光コバラミンで、細胞を収穫3日後に処理した。正常および白血病ヒト骨髄における、蛍光顕微鏡または蛍光フルオサイトメトリーによって測定した、蛍光コバラミンアナログの異なる取込が見出された。正常骨髄細胞および白血病骨髄芽細胞(癌細胞)の間の差は特に注目すべきであり、正常細胞によって取り込まれるコバラミンは検出できない。健康な個体からの骨髄試料は蛍光標識を示さなかった。もともと、優れた化学療法化合物として合成されたドキソルビシン−コバラミンコンジュゲートが、T−388ネズミ白血病細胞およびHTC−116ヒト結腸腫瘍細胞で観察された。これらの結果は、白血病および固体腫瘍細胞系におけるコバラミンの蛍光誘導体の取込を説明する。
【0035】
実施例3
シアノコバラミンモノカルボン酸の調製
b−、d−およびe−モノカルボン酸はシアノコバラミンの酸触媒加水分解によって調製した。図3参照。簡単に述べれば、シアノコバラミン(527.0mg,0.389ミリモル)を100mlの丸底フラスコに入れ、40mlの0.5M HClに溶解させた。フラスコを50℃の水浴に入れ、4時間攪拌した。表1に掲げたグラジエントを用い、反応をHPLC(Waters, Inc. 3.9×300mm DeltaPak 100 C−18カラム)を介してモニターした。
【0036】
【表1】

【0037】
4時間後、反応を室温まで冷却した。pHメーターを用い、pHをNaOH(10%)で7.0に調整した。まず、当該カラムを10mlのメタノール、続いて、15mlの脱イオン水ですすぐことによって、粗物質をC−18 SepPakカラム(Waters, Inc. P/N WATO23635)を用いて脱塩した粗物質をシリンジを介してカラムに適用し、10ないし15mlの脱イオン水ですすぎ、続いて、10mlのメタノールで溶出した。回転蒸発を介してメタノールを除去し、赤色化合物が得られた(5016−12−33)。
【0038】
粗反応混合物を最小量の脱イオン水で溶解させ、表2に計算されたグラジエントを用い、溶液の半分を半分取HPLC(Waters, Inc. 25.0×300mm 100 C−18カラム)に注入した。
【0039】
【表2】

【0040】
大きな試験管を用いて、28.0分(b−モノカルボン酸、CBC195)、30.1分(d−モノカルボン酸、CBC−226)および34.6分(e−モノカルボン酸)におけるピークを収集した。純粋な画分を脱イオン水で1:1希釈し、前記したのと同様に脱塩した。全ての場合、赤色固体が得られた。
【0041】
CBC−195(b−モノカルボン酸):2つの分取ランにおいて、74.8mgのb−モノカルボン酸(14.4%)が単離された。予期されたごとく、M+1ピーク(1356)およびM+22ピーク(1378)を示す陽イオン電子スプレー質量スペクトル(ES)が得られた。b−モノカルボン酸(CBC−195)は14%の全収率で得られた。
【0042】
CBC−226(d−モノカルボン酸):2つの分取ランにおいて、38.6mgのd−モノカルボン酸(7.3%)が単離された。予測したごとく、M+1ピーク(1356)および対応するM+Naピーク(1378)を示す陽イオン電子スプレー質量スペクトル(ES)が得られた。d−モノカルボン酸(CBC−226)は7%の全収率で得られた。
【0043】
e−モノカルボン酸は14%の全収率にてほぼ78mgが単離された。
【0044】
実施例4
CNCbl酸と1,12ジアミノデカンとのコンジュゲーション
b−およびd−アミンは図4に示すごとく調製した。CBC−195(55.4mg,0.0408ミリモル)を小さなガラスバイアルに添加し、約2.5mlのDMSOに溶解させ、続いて、EDCI HCl(12mg.0.0626ミリモル)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(25mg,0.217ミリモル)を添加した。反応を室温にて一晩攪拌した。以前の試みにより、反応を駆動して完了させるには数当量のEDCIおよびNHS(合計6当量)が必要であった。24時間後、さらに1当量のEDCIを添加し、合計26時間以内に反応は完了した。表3のグラジエントを用いて、反応をHPLCを介してモニターした。CBC−195は9.07分の保持時間を有し、CBC−195のNHS−エステルは10.55分の保持時間を有する。
【0045】
【表3】

【0046】
別のグラスバイアル中にて、1,12−ジアミノドデカン(81.8mg,0.408ミリモル)を約2mlのDMSOに溶解させた。4.0ml/時間にてシリンジを用い、前記反応混合物を滴下して二量体化を最小化させた。生成物は直ちに形成され、14.56分の保持時間を有する。粗反応混合物を100mlの1:1 CHCl:EtOに添加し、赤色沈殿が形成された。ガラスフリットを用い、赤色化合物を濾過し、CHClの20mlの2回分、アセトンの20mlの2回分、および最終的にEtOの20mlの2回分で洗浄した。
【0047】
粗反応生成物を再少量の脱イオン水に溶解させて表4に計算されたグラジエントをを用いて溶液を半分取HPLC(Waters,Inc.,25.0×100mm 100 C−18カラム)に注入した。
【0048】
【表4】

【0049】
大き試験管を用い、8.70分におけるピーク(b−アミン、CBC−208)を収集した。純粋な画分を蒸留水で1:1希釈し、まず、当該カラムを10mlのメタノールで、続いて、15ml脱イオン水ですすぐことによって、C−18 SepPakカラム(Waters, Inc. P/N WATO23635)を用いて脱塩した。シリンジを介して純粋な物質をカラムに適用し、10ないし15mlの脱イオン水ですすぎ、続いて、10mlのメタノールで溶出した。回転蒸発を介してメタノールを除去し、6mgの赤色化合物が得られた。
【0050】
CBC−208(b−アミン):合計6.0mgのアミンが単離されたと予測されるごとく、M+1ピーク(1538)およびM+23ピーク(1560)を示す陽性イオン電子スプレー質量スペトクトル(ES)が得られた。CBC−208は、精製の後、9.5%の収率で得られた。
【0051】
CBC−226(d−アミン):表3におけるのと同一のHPLCグラジエントを用い、d−モノカルボン酸は、9.32分のHPLC保持時間を有し、NHS−エステルは10.96分において移動し、d−アミン(CBC−226)は14.93分において移動する。予測されるごとく、M+1ピーク(1538)および対応するM+Naピーク(1560)を示す粗物質の陽イオン電子スプレー質量スペクトル(ES)が得られた。
【0052】
実施例5
CBC−208およびフルオレセイン−5EX−NHSのコンジュゲーション
CBC−208は、図5に従い、(Molecular Probes,Inc.から入手可能な)フルオレセイン誘導体のフルオレセイン−5EXにカップリングされている。CBC−208(6.0mg,3.87μモル)を小さなグラスバイアルに添加し、約0.5mlのDMSOに溶解させ、続いて、フルオレセイン−5EX−NHS(2.5mg,4.23μモル)を添加した。反応物を室温にて一晩攪拌した。表5中の方法を用い、反応をHPLCを介してモニターした。
【0053】
【表5】

【0054】
反応は最初非常に迅速に進行し、10分間の接触後に過ぎないのに所望の生成物を形成した。CBC−208は11.47分の保持時間を有し、生成物(CBC−123)は14.24分の保持時間を有する。さらに1当量のフルオレセイン化合物を添加すると、反応は完了し、粗混合物は88%純度である。
【0055】
出発物質フルオレセイン−5EX−NHSのHPLC分析はそれが75%純度に過ぎないことを示し、これは、反応を駆動させて完了させるのになぜさらなる当量が必要であるかを説明する。
【0056】
CBC−123(b−フルオレセインコバラミン誘導体):この化合物は合成からの粗単離物と同様にほぼ90%純度であり、不純物の大部分は未反応のCBC−208である。M+1ピーク(2013)および対応するM+Naピーク(2035)を示す粗物質の陽イオン電子スプレイ質量スペクトル(ES)が得られた。精製前収率は22%である。
【0057】
350nmにおける励起での光分解の前および後に、本化合物の蛍光スペクトルを粗化合物から取った(図6参照)。光分解の前および後に蛍光の有意な変化はなく、これは、当該化合物が光安定であり、明らかに蛍光性であって、コバラミンの近くからの減少した蛍光を呈しないことを示唆する。
【0058】
実施例6
顕微鏡を介する乳癌組織のエクス・ビボ調査
正常周辺組織が付着した乳癌を含む悪性および良性腫瘍の試料を患者から切り出す。これらの試料は、University of Utah Institutional Review Board(IRB)およびHuntsman Cancer Institute Clinical Cancer Investigation Committee(CCIC)の同意の下に採取する。生きた組織の試料を、前記で調製した蛍光コバラミン誘導体の1つと共に4ないし6時間インキュベートする。各試料の薄い組織片をクリオミクロトームで調製し、エピ蛍光顕微鏡によって、蛍光マーカーの量を正常および癌性組織で定量する。解剖病理学者による評価のため、対応する組織片をヘマトキシリン/エオシン(H&E)染料で染色する。正常および癌性細胞の間の界面を注意深く調べる。腫瘍内部からの細胞も蛍光マーカーの取込について調べる。というのは、腫瘍の低酸素領域内の細胞がしばしば代謝を低下させているからである。
【0059】
より具体的には、最少必須培地、アルファ修飾(α−MEM;7.5%新生ウシ血清、2.5%胎児ウシ血清、0.2%ナイスタチン、2.5%ペニシリン/ストレプトマイシン、pH7.2;Sigma)を調製し、滅菌された25mLのネジ頂部組織培養フラスコに一部を入れた(10mL)。培地を37℃とし、組織試料を、α−MEM中の蛍光標識コバラミン(50nM;実施例1のコバラミン−オレゴングリーンおよびコバラミン−ナフトフルオレセインコンジュゲートおよび実施例5のコバラミン−フルオレセインコンジュゲート)および組換えヒトTCII(50pM)と共にインキュベートした。ヒト乳房組織試料はIRM−認可のプロトコルに従って獲得した。組織をフラスコから取り出し、ダルベッコウのリン酸緩衝化生理食塩水(DPBS;Sigma)で洗浄し、凍結切片スライシング用のOCT化合物(Shandon)と共に−20℃の真鍮プレート上に設置した。−20℃にて、CTD Harrisクリオスタット中で組織をスライスした(4ないし6μm片)。薄い組織片を小さな美術用のブラシで後ろに引き、100%エタノールで顕微鏡スライドグラスに固定した。標準ヘマトキシリン染色手法:95%エタノール、20秒;水、5秒;ヘマトキシリン(Fisher)、45秒;水、5秒;藍染料液(水道水)、10秒;95%エタノール、10秒;100%エタノール、10秒;キシレン、10秒;およびキシレン、10秒を用いて、スライドを染色した。相コントラストおよびエピ蛍光顕微鏡によって、10×、60×および100×倍率でスライドを評価した。
【0060】
3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムチアゾリルブロマイド(MTT;Sigma)を用いて、蛍光コバラミンでの3時間のインキュベーションの時間の後に組織の代謝能力を定量的に測定した。組織の一部を培地から取り出し、DPBSで洗浄し、MTT(2mL;2.5mg/mL)に浸漬した。37℃の5%CO雰囲気下にてこの組織を3時間インキュベートした。このインキュベーション期間の間に、コハク酸脱水素酵素活性によると、組織試料中の生きた細胞はMTT色素を紫色ホルマザンまで還元した(CelisおよびCelis,1998)。組織をDPBSで洗浄し、前記にて概説したクリオミクロトーム手法に従って調製して、組織の代謝能力を確実とした。
【0061】
蛍光コバラミンバイオコンジュゲートは、新形成および健康乳房組織双方において幾分蓄積し、新形成乳房組織は、健康な乳房組織よりも多くの蛍光コバラミンを隔離した。健康な乳房組織によって隔離された蛍光コバラミンの量は予測したよりも大きいが、それは、健康な細胞による有意な内部化よりもむしろ結合組織内の構造への非特異的結合によるものと考えられる。
【0062】
実施例7
リンパ節における癌細胞のエクス・ビボ調査
転移性病気を持つ切り出したリンパ節を患者から取り出し、前記調製の蛍光コバラミン誘導体のうちの1つと共に4ないし8時間インキュベートする。各リンパ節を切片化し、蛍光コバラミンの癌細胞への輸送につき顕微鏡で調べる。この実験は、イメージングおよび可視化のために十分な蛍光コバラミンを取り込むリンパ節内の転移性細胞の能力を示した。
【0063】
実施例8
患者がコバラミン−ベースの治療バイオコンジュゲート化学療法に好都合に応答するか否かを判断するための蛍光コバラミンの使用
白血病を持つ患者からの骨髄吸引物および末梢血液試料を蛍光コバラミンコンジュゲートと共にインキュベートする。4ないし8時間後、骨髄吸引物または末梢血液試料を洗浄して、取り込まれなかった蛍光標識を除去し、エピ蛍光顕微鏡またはフローサイトメトリーによる定性的または定量的蛍光分析に細胞試料を付す。有意な量の蛍光コバラミンを取り込んだ細胞はより明るい蛍光を呈する。有意な量の蛍光コバラミンの取り込みは、患者の白血病のタイプが、コバラミン−ベースの治療剤での治療に好都合に応答するであろうことを示す。蛍光コバラミンコンジュゲートでの処理の後に有意な蛍光を示さない骨髄吸引物または末梢血液試料は、当該患者がコバラミン−ベースの治療コンジュゲートに好都合に応答しないであろうことを示す。同様のアプローチを固体腫瘍に適用することができる。この場合、切り出した腫瘍組織の一部を蛍光コバラミンコンジュゲート共にインキュベートし、約4ないし8時間後、腫瘍組織中の蛍光を定量する。腫瘍組織によって呈される蛍光が大きくなれば、癌が、コバラミン−ベースの化学療法での治療に好都合に応答するであろう確率は大きくなる。
【0064】
実施例9
CobalaFluor Yの合成
一般的脱塩手法。2カラム容量のメタノールおよび3カラム容量の脱イオン水でカートリッジをコンディショニングすることによって、全てのコバラミンを10gのC−18 SepPak(Waters,Inc.)で脱塩した。コバラミンをカラムに適用し、3カラム容量の脱イオン水で洗浄し、メタノール(10mL)で溶出させた。回転蒸発を介してメタノールを除去し、生成物を凍結乾燥によって乾燥した。
【0065】
シアノコバラミン−b−モノカルボン酸の調製。シアノコバラミン−b−モノカルボン酸は修飾された公表プロトコルに従って調製した(Antonら,1980)。簡単に述べると、CNCbl(3.5g,2.6ミリモル)を350mLの1.0M HClに溶解させた。反応を4時間で37℃まで加熱し、逆相HPLCを介してモニターした。粗物質を脱塩し、次いで、半分取HPLCを介して精製した。しかしながら、粗反応混合物は45%を超えるシアノコバラミンを含有したので(HPLCによる)、イオン交換カラムを用いて未反応シアノコバラミンを分離した。粗物質をddHOに溶解させ、2.5×30cm Dowex AG−X1(アセテート形態)カラムに適用した。CNCblを脱イオン水でカラムから溶出させた。次いで、3つのモノカルボン酸を0.04M酢酸ナトリウム(pH4)で溶出させ、半分取HPLCを介してさらに精製した。b−モノカルボン酸は分析HPLCによると97%純度で単離された(10%全収率):ES MS:(1:1 HO:CHCN) M+H=1356.3(C6388CoN1315Pとして計算=1356.5)、M+Na=1378.4(C6388CoN1315PNaとして計算=1378.5)。また、d−およびe−モノカルボン酸は、共に、各々、4%および7%の全収率で単離された。
【0066】
シアノコバラミン−b−モノカルボン酸についての分析HPLC方法:分析クロマトグラフィーは、Waters DeltaPak C−18 300×3.9mmのカラムを用い、2mL/分の液速で行った。90%溶液A(0.05Mのリン酸緩衝液、pH3.0)および10%溶液B(9:1アセトニトリルおよび水)の最初の2分間のイソクラティック流動の後、83.7%のAおよび16.3%のBまでの16分間の直線グラジエントにより、保持時間が15.7分の所望のb−モノカルボン酸誘導体が溶出された。d−モノカルボン酸は16.9分の保持時間を有し、e−モノカルボン酸は19.5分の保持時間を有した。
【0067】
シアノコバラミン−b−モノカルボン酸についての半分取HPLC:クロマトグラフィーは、Waters DeltaPak C−18 2.5×30cmの半分取カラムを用い、40mL/分の液速で行った。90%溶液A(0.05Mリン酸緩衝液、pH3.0)および10%溶液B(9:1アセトニトリルおよび水)の4.1分のイソクラティック流動の後、83.7%のAおよび16.3%のBまでの32.9分の直線グラジエントにより、コバラミン誘導体が溶出した。3つのCNCbl−モノカルボン酸の保持時間は以下の通りであった:b−モノカルボン酸は23.1分に溶出し、d−モノカルボン酸は26.6分に溶出し、e−モノカルボン酸は32.1分に溶出した。
【0068】
コバラミン−b−(5−アミノペンチルアミド)の合成。シアノコバラミン−b−モノカルボン酸1(50mg,0.037ミリモル)を、EDCI(71mg,0.37ミリモル)およびNHS(25mg,0.22ミリモル)で、乾燥した10mL丸底フラスコ中にて溶解させた。窒素を5分間フラッシュすることによって、該フラスコを脱気した。シリンジを介してジメチルスルホキシド(5mL)を添加し、反応混合物を6時間攪拌した。気密性シリンジを用い、この混合物を丸底フラスコから取り出し、1,5−ジアミノペンタン(43μL,0.37ミリモル)を該フラスコに入れた。Cbl混合物を5分間にわたって1,5−ジアミノペンタンに滴下して、2:1アダクトの形成を最小化した。逆相HPLCを用いて、反応をモニターした。出発物質が消費されると、1:1 CHCl:ジエチルエーテル(60mL)の溶液からコバラミンが沈殿した。得られた固体を媒体フリットフィルターで濾過し、ジエチルエーテル(2×10mL)で洗浄し、メタノールでフィルターから溶出させた。粗混合物を同等容量の水で希釈し、半分取カラムに注入して、シアノコバラミン−b−(5−アミノペンチルアミド)2を精製した。所望の生成物を含有する画分を前記したごとくに脱塩し、回転蒸発によって乾燥した。シアノコバラミン−b−(5−アミノペンチルアミド)が得られた:70%収率;分析HPLCにより98%純度;ES MS:(1:1 HO:CHCN) M+H=1440.5(C68100CoN1514Pとして計算=1440.7)、M+Na=1462.4(C68100CoN1514PNaとして計算=1462.6);ε362nm=HO中19500M−1cm−1
【0069】
シアノコバラミン−b−(5−アミノペンチルアミド)2についての分析HPLC方法:
分析クロマトグラフィーは、Waters DeltaPak C−18 300×3.9mmカラムにて、2mL/分の液速で行った。95%溶液A(0.05Mリン酸緩衝液、pH3.0)および5%溶液B(9:1アセトニトリルおよび水)の2分間のイソクラティック流動の後、70%Aおよび30%Bまでの16.4分間の直線グラジエントにより、11.8分において注目する化合物が溶出した。
【0070】
シアノコバラミン−b−(5−アミノペンチルアミド)2についての半分取HPLC:半分取クロマトグラフィーは、Waters DeltaPak C−18 25×30cmの半分取カラムを用いて、40mL/分で行った。4.1分間の95%溶液A(0.05Mリン酸緩衝液 pH3.0)および5%溶液B(9:1アセトニトリルおよび水)のイソクラティック流動の後、70%Aおよび30%Bへの18分間の直線グラジエントにより所望の生成物を溶出した。
【0071】
CobalaFluor Yの合成(Cy5−コバラミン=Cy5−Cbl=Cy5 Cobala Fluor)。この合成を図7に示す。簡単に述べれば、シアノコバラミン−リボース−5’−O−(6−アミノヘキシルアミド)は、公表されたプロトコル(McEwanら,1999)に従い、シアノコバラミン(Sigma Chemical Co.)を用いて調製した。2:1ジエチルエーテル:塩化メチレン(50mL)を用いコバラミンを沈殿させ、やはりこの溶媒混合液(2×10mL)で洗浄した。反応をモニターし、逆相HPLCを介して生成物を精製した。標準的な手法に従い、生成物を脱塩した。シアノコバラミン−リボース−5’−O−(6−アミノヘキシルアミド)(20mg,0.013ミリモル)を乾燥した10mLの丸底フラスコに入れて、5分間窒素でフラッシュすることによって脱気した。ジメチルスルホキシド(1mL)をシリンジを介して添加してコバラミンを溶解させた。Cy5スクシンイミジルエステル(10mg,0.013ミリモル;Amersham Pharmacia)およびDIPEA(15μl,0.13)をフラスコに添加し、反応混合物を1時間攪拌した。逆相HPLCを用いて、反応をモニターした。出発物質が消費されると、2:1ジエチルエーテル:CHClの溶液(50mL)によりコバラミンが沈殿した。得られた固体を微細なフリットフィルターで濾過し、ジエチルエーテルおよびCHCl混合液(2×10mL)で洗浄し、メタノールを用いてフィルターから溶出させた。組混合物を半分取カラムに注入して、CobalaFluor Yを精製し、標準的な手法に従って脱塩した。図8はCobalaFluor Yの蛍光発光スペクトルを示す。
【0072】
シアノコバラミン−リボース−5’−O−(6−アミノヘキシルアミド)についての分析HPLC方法:分析クロマトグラフィーは、Waters DelataPak C−18 300×3.9mmカラムを用い、2mL/分の液速で行った。95%溶液A(0.05Mリン酸緩衝液、pH3.0)および5%溶液B(9:1アセトニトリルおよび水)の初期の2分間のイソクラティック流動の後、70%Aおよび30%Bへの18分間の直線グラジエントにより、所望のシアノコバラミン−リボース−5’−O−(6−アミノヘキシルアミド)を溶出させて、保持時間は12.5分であった。
【0073】
シアノコバラミン−リボース−5’−O−(6−アミノヘキシルアミド)についての半分取HPLC:クロマトグラフィーはWaters DeltaPak C−18 2.5×30cmの半分取カラムを用いて、40m/分の液速で行った。95%溶液A(0.05Mリン酸緩衝液 pH3.0)および5%溶液B(9:1アセトニトリルおよび水)の4.1分間のイソクラティック流動の後、70%Aおよび30%Bまでの直線グラジエントによりコバラミン誘導体を溶出させた。所望のシアノコバラミン−リボース−5’−O−(6−アミノヘキシルアミド)の保持時間は15.5分であった。
【0074】
CobalaFluor Yについての分析HPLC:分析クロマトグラフィーはWaters DeltaPak C−18300×3.9mm)カラムにて、2mL/分の液速で行った。95%溶液A(0.01M TEA緩衝液,pH7.0)および5%溶液B(9:1アセトニトリルおよび水)の2分間のイソクラティック流動の後、45%Aおよび55%Bまでの16.4分間の直線グラジエントにより13.6分においてCobalaFluor Yを溶出させた。
【0075】
CobalaFluor Yについての半分取HPLC:半分取クロマトグラフィーはWaters DeltPack C−18 25×30cmの半分取カラムを用い、20mL/分で行った。95%溶液A(0.01M TEA緩衝液,pH7.0)および5%溶液B(9:1アセトニトリルおよび水)の2分間のイソクラティック流動の後、70%および30%Bまでの27.4分間の直線グラジエントにより12.2分において所望の生成物を溶出させた。
【0076】
実施例10
競合アッセイ
材料。コバラミンのブタ非−内生因子(HC およびIFの50:1混合物)、およびブタ内生因子はSigma Chemical Co.から購入した。HPLCトレースは、Waters 2487デュアル波長吸光度ディテクターを備えたWaters Delta 600システムを用いて得た。BIACORE2000および3000(BIACORE AB)装置を表面プラズモン共鳴バイオセンサー分析のために用いた。
【0077】
CNCbl−b−(5−アミノペンチルアミド)の固定化。全てのSPR実験は、BIACORE2000オプティカルバイオセンサーで行った。標準CM5センサーチップ(BIACORE AB)のフローセル中のカルボキシメチルデキストランの表面を、37℃の0.1M EDCIおよび0.025M NHSの混合物を20μL/分において15分間チップを通って流すことによって、活性化した。pH4.5の10mM酢酸ナトリウム中に希釈したCNCbl−b−(5−アミノペンチルアミド)2を、図9に示すごとくチップの3つのフローセルに固定化した。2μL/分の速度にて、Cblアナログをフローセルに40分間パルス状で与えることによって、高密度センサー表面(500−700 RU)を作り出した。全ての4つのフローセル中のチップの表面に残存する結合部位を、5μL/分にて16分間1.0MエタノールアミンpH8.5でブロックした。フローセル3を参照表面として用いて、非特異的結合および装置のノイズを差し引いた。
【0078】
蛋白質標準曲線。30℃にてHBSランニング緩衝液(150mM NaCl, 10mM HEPES, pH7.5, 3.4mM EDTA, 1mg/mL BSA,および0.005% P20界面活性剤)を用い、全ての標準曲線および競合アッセイを行った。rhTCII、NIFおよびIF結合CNCbl−b−5−(アミノペンチルアミド)についてもキャリブレーション曲線を以下のごとく作成した。HBS緩衝液中に希釈した各蛋白質(15.6−500pM)のストック溶液を、20μL/分にて10分間フローセルを通じて注入して結合を分析した。結合した蛋白質を8M尿素、0.125%SDS、およびランニング緩衝液で除去した。各蛋白質試料を二連で分析した。
【0079】
見掛けの溶液平衡解離定数の測定。種々のコバラミンアナログへのrhTCII、NIFおよびIFの結合は、溶液競合結合アッセイによって分析した(Niebaら,1996)。0.01ないし100nMの範囲のアナログ濃度を、200pMのrhTCII、200pMのNIFまたは500pMのIFを含む等容量中でインキュベートした。30℃において、20μL/分の速度にて競合するCblアナログおよび蛋白質のアリコットを注入することによって、結合データを作成し、8M尿素、0.125%SDSおよび緩衝液のパルスで表面を再生した。各コバラミンについての競合アッセイは、二連で行った。
【0080】
データの解析。参照表面から観察された結合応答を差し引き、3つのブランク注入の平均を差し引くことによって、バイオセンサーデータを解析用に調製した(Myszka 1999)。競合アッセイからのデータを、BIAevaluations 3.0ソフトエウェアを備えた非線形最小二乗回帰分析に適合させた。図10は競合アッセイのセンソグラムを示す。図11はTCII結合についてのコバラミンの競合を示す。結合データを図12Aないし図12Cに示す。これらの結果は、コバラミンアナログが高い親和性をもってコバラミン輸送蛋白質(トランスコバラミン、ハプトコリンおよび内生因子)によって認識されることを示す。また、この認識は表面プラズモン共鳴によっても示された。コバラミンへの大きな分子の結合は、蛋白質結合に影響するようには見えない。
【0081】
実施例11
動物モデル実験
腫瘍を持つマウスにおけるイン・ビボ取込。メスマウスの右後足に1×10 RD995腫瘍細胞を皮下移植することによって、腫瘍をマウスに移植する。マウス腫瘍細胞系をイン・ビトロで増殖させた。細胞の移植から6週間後、10mm腫瘍が目に見えた。この時点で、マウスに、滅菌生理食塩水に溶解させた2.2μgのCobalaFluor Yの後眼窩静脈内注射を与えた。注射から6時間後、ハロタンを吸入させてマウスを沈静させた。腫瘍をスライスして開き、633nm HeNeレーザを照射した。HeNeレーザを用い、CobalaFluor Yの注射54時間後にもマウスの腫瘍を分析した。マウスを切開し、内部器官および健康な組織を分析することができた。結果を図13に示す。これは、蛍光標識コバラミンがマウスにおいて腫瘍組織に局在化することを示す。
【0082】
実施例12
組織取込実験
蛍光コバラミン取込。最小必須培地、アルファ修飾(α−MEM;7.5%新生児ウシ血清、2.5%胎児ウシ血清、0.2%ナイスタチン、2.5%ペニシリン/ストレプトマイシン、pH7.2;Sigma)を調製し、滅菌した25mLのスクリュー頂部組織バイオフラスコに一部を入れた(10mL)。培地を37℃とし、組織試料(新形成乳房組織、健康な乳房組織、新形成リンパ節組織および健康なリンパ節組織)をα−MEM中で蛍光標識したコバラミン(10pM)、シアノコバラミン(1nM)と共に3時間インキュベートした。ヒト組織試料をIRB認可のプロトコルに従って獲得した。組織をフラスコから取り出し、ダルベッコウのリン酸緩衝化生理食塩水(DPBS;Sigma)で洗浄し、−20℃にて、凍結片スライシングのためにOCT化合物(Shandon)と共に真鍮プレート上に設置した。−20℃にて、組織をCTD Harrisクリスタット中でスライスした(4ないし6μmの切片)。小さな美術用ブラシで組織片を引き戻し、100%エタノールで顕微鏡スライドグラスに固定した。標準ヘマトキシリン染色手法:95%エタノール、20秒;水、5秒;ヘマトキシリン(Fisher)、45秒;水、5秒;藍染色溶液(水道水)、10秒;95%エタノール、10秒;100%エタノール、10秒;キシレン、10秒;およびキシレン、10秒を用いてスライドグラスを染色した。スライドグラスを10×、60×および100×の倍率にてエピ蛍光顕微鏡によって評価した。(a)新形成乳房組織における腫瘍イメージングを図14に示し、(b)新形成リンパ節組織を図15に示す。
【0083】
細胞の生存率および組織代謝活性アッセイ。3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムチアゾリルブロマイド(MTT;Sigma)を用いて、蛍光コバラミンとの3時間のインキュベーション時間後に、組織の代謝能力を定量的に測定した。組織の一部を培地から取り出し、DPBSで洗浄し、MTT(2mL;2.5mg/mL)に浸漬した。37℃の5%CO雰囲気下でこの組織を3時間インキュベートした。このインキュベーション期間の間、組織細胞中の生きた細胞は、コハク酸脱水素酵素活性によって、MTT色素を紫色ホルマザンまで還元した。組織をDPBSで洗浄し、前記にて概説したクリオミクロトーム手法に従って調製して、組織の代謝能力を確実とした。イン・ビトロにて、健康および新形成組織は共に蛍光コバラミンを取り込むことが判明した。
【0084】
本発明の方法および組成物は種々の具体例の形態で取り込むことができ、その少数のみをここに開示したことは認識されるであろう。他の具体例が存在し、本発明の精神を逸脱しないことは当業者に明らかであろう。かくして、記載された具体例は例示的なものであって、限定するものと解釈されるべきではない。
【0085】
参考文献
Carmel, R. (1975). "Extreme Elevation of Serum Transcobalamin I in Patients with Metastatic Cancer."New Engl J Med 292:282-284.
Celis, A. および Celis, J.E. (1998). Cell Biology, pp. 9-11.
Collins, D. A. および Hogenkamp, H. P. C. (1997). "Transcobalamin II Receptor Imaging via Radiolabeled Diethylene-Triaminepentaacetate Cobalamin Analogs." J Nucl Med 38:717-723.
Collins, D.A.ら. (1999). "Tumor Imaging via Indium-111-Labeled DTPA-Adenosyl-cobalamin." Mayo Clinic Proceedings 74: 687-691.
Collins, D.A.ら. (2000). "Biodistribution of Radiolabeled Adenosylcobalamin in Patients Diagnosed with Various Malignancies." Mayo ClinicProceedings 75:568-580.
Flodh, H. (1968). "Accumulation of labelled Vitamin B-12 in Some Transplanted Tumors." Acta Ratiol Suppl 284:55-60.
Hogenkamp, H. P.C.ら. (1999). "The Pharmacological Uses of Cobalamin Bioconjugates." In The Chemistry and Biochemistry of B-12, Banerjee, R., Ed., John Wiley & Sons, New York, pp. 385-410.
Howard, W.A.ら. (1997). "Sonolysis Promotes Indirect C-Co Bond Cleavage of Alkylcob(III)alamins." Bioconj Chem 8:498-502.
McGreevy, J. M. (1998). "Sentinel Lymph Node Biopsy in Breast Cancer." Curr Surg 55:301-4.
Mitchell, A. M.ら. (1999). "Targeting Leukemia Cells with Cobalamin Bioconjugates" In Enzymatic Mechanisms, Frey, P. A.; Northrop, D. B., Eds., pp 150-154.
McMasters, K. M.ら. (1999). "Sentinel Lymph Node Biopsy for Breast Cancer -- Not yet the Standard of Care." New England J Med 339:990.
Morton, D. L.ら. (1992). "Technical Details of Intraoperative Lymphatic Mapping for Early Stage Melanoma." Arch Surg 127:392-9.
Rachmilewitz, B,ら. (1971). , "Serum Transcobalamin in Myeloid Leukemia." J Lab Clin Med 78:275.
Schneider, Z. および Stroinski, A. (1987). Comprehensive B12, de Gruyter, Berlin, pp. 358.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
【化1】

[RはCN、OH、OH、CH、5’−デオキシアデノシルまたは(CHNHC(=S)Yであり;R、R、R、R、RおよびRはCONHであり;RはCHOHまたはCHO(C=O)XYであり;RはOHまたはO(C=O)XYであり;Xは式NH−(CH−NHO(C=O)またはNH−(CH−NHを有するリンカーであり;Yはフルオレセイン、ナフトフルオレセイン、フルオレセイン−5EX、4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン、2’,7’−ジクロロフルオレセイン、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴングリーン514、Cy5、Cy2、Cy3およびCy5.5よりなる群から選択されるフルオロフォアであり;mは0または1であり、nは0ないし50であって、pは2ないし10であり、但し、R、RおよびRの基のうちの少なくとも1つはYを含み、さらに、
がCN、OH、OH、CH、5’−デオキシアデノシルまたは(CHNHC(=S)Yであり;R、R、R、R、RおよびRがCONHであり;RがOHまたはO(C=O)XYであり;mが1であり;XがNH−(CH−NHO(C=O)であって;RおよびRの基のうちの少なくとも1つがYを含む場合、RはCHOHではなく;かつ
がCN、OH、OH、CH、5’−デオキシアデノシルまたは(CHNHC(=S)Yであり;R、R、R、R、RおよびRがCONHであり;RがOHまたはO(C=O)XYであり;mが0であって;RおよびRの基のうちの少なくとも1つがYを含む場合、RはCHOHではない]を有するコバラミンであって、該コバラミンからYが切断されることなく、可視光を照射すると、蛍光を発する該コバラミン。
【請求項2】
が、フルオロフォアを含む請求項1記載のコバラミン。
【請求項3】
が、フルオロフォアを含む請求項1記載のコバラミン。
【請求項4】
が、フルオロフォアを含む請求項1記載のコバラミン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1記載のコバラミンおよび医薬上許容される担体を含む組成物。
【請求項6】
癌性組織または細胞が、蛍光を発し、健康な組織が、より少ない蛍光を呈することを特徴とする、癌性であるか、または癌性細胞を含むことが疑われる組織において、癌組織または癌性細胞を含む組織を同定するための組成物の製造における請求項1〜4のいずれか1記載のコバラミンの使用。
【請求項7】
癌性組織が、蛍光を発し、健康な組織が、より少ない蛍光を呈することを特徴とする、癌性組織と健康な組織を目視により区別するための組成物の製造における請求項1〜4のいずれか1記載のコバラミンの使用。
【請求項8】
腫瘍組織が蛍光を発し、および腫瘍の境界を明らかにすることを特徴とする、イン・ビボ、エクス・ビボまたはイン・サイチュにて腫瘍の境界を明らかにするための組成物の製造における請求項1〜4のいずれか1記載のコバラミンの使用。
【請求項9】
転移性癌組織または細胞が、蛍光を発することを特徴とする、該転移性癌組織または細胞を同定するための組成物の製造における請求項1〜4のいずれか1記載のコバラミンの使用。
【請求項10】
癌組織または細胞が、蛍光を発し、健康な組織が、より少ない蛍光を呈することを特徴とする、イン・ビボ、エクス・ビボまたはイン・サイチュにて癌を診断、検出またはモニターするための組成物の製造における請求項1〜4のいずれか1記載のコバラミンの使用。
【請求項11】
癌組織または細胞が、蛍光を発し、健康な組織が、より少ない蛍光を呈することを特徴とする、個体の癌の治療、診断、検出またはモニタリングにおいて転移性病気を同定するための組成物の製造における請求項1〜4のいずれか1記載のコバラミンの使用。
【請求項12】
非−癌性細胞に比較して癌細胞のより大きな蛍光が、癌細胞が治療に都合よく応答することを示すことを特徴とする、治療に対する癌細胞の応答を予測するための組成物の製造における請求項1〜4のいずれか1記載のコバラミンの使用。
【請求項13】
該治療が、コバラミン−化学療法またはホルモン療法である請求項12記載の使用。
【請求項14】
コバラミン−ベースの療法に対する癌細胞の応答が、非−癌性細胞と比較して、該癌細胞の蛍光に直接比例することを特徴とする、癌の進行段階を決定するための組成物の製造における請求項1〜4のいずれか1記載のコバラミンの使用。
【請求項15】
健康な組織または細胞の蛍光より大きい該癌組織または細胞の蛍光が、該療法に対する都合よい治療の応答または患者の結果を示すことを特徴とする、イン・ビボ、エクス・ビボまたはイン・サイチュにて癌の療法後の治療の応答または患者の結果を予測するための組成物の製造における請求項1〜4のいずれか1記載のコバラミンの使用。
【請求項16】
請求項1〜4のいずれか1記載のコバラミンを含み、癌性組織または細胞が、蛍光を発し、健康な組織が、より少ない蛍光を呈することを特徴とする、癌性であるか、または癌性細胞を含むことが疑われる組織において、癌組織または癌性細胞を含む組織を同定するための剤。
【請求項17】
請求項1〜4のいずれか1記載のコバラミンを含み、癌性組織が、蛍光を発し、健康な組織が、より少ない蛍光を呈することを特徴とする、癌性組織と健康な組織を目視により区別するための剤。
【請求項18】
請求項1〜4のいずれか1記載のコバラミンを含み、腫瘍組織が蛍光を発し、および腫瘍の境界を明らかにすることを特徴とする、イン・ビボ、エクス・ビボまたはイン・サイチュにて腫瘍の境界を明らかにするための剤。
【請求項19】
請求項1〜4のいずれか1記載のコバラミンを含み、転移性癌組織または細胞が、蛍光を発することを特徴とする、該転移性癌組織または細胞を同定するための剤。
【請求項20】
請求項1〜4のいずれか1記載のコバラミンを含み、癌組織または細胞が、蛍光を発し、健康な組織が、より少ない蛍光を呈することを特徴とする、イン・ビボ、エクス・ビボまたはイン・サイチュにて癌を診断、検出またはモニターするための剤。
【請求項21】
請求項1〜4のいずれか1記載のコバラミンを含み、癌組織または細胞が、蛍光を発し、健康な組織が、より少ない蛍光を呈することを特徴とする、個体の癌の治療、診断、検出またはモニタリングにおける転移性病気を同定するための剤。
【請求項22】
請求項1〜4のいずれか1記載のコバラミンを含み、非−癌性細胞に比較して癌細胞のより大きな蛍光が、癌細胞が治療に都合よく応答することを示すことを特徴とする、治療に対する癌細胞の応答を予測するための剤。
【請求項23】
該治療が、コバラミン−化学療法またはホルモン療法である請求項22記載の剤。
【請求項24】
請求項1〜4のいずれか1記載のコバラミンを含み、コバラミン−ベースの療法に対する癌細胞の応答が、非−癌性細胞と比較して、該癌細胞の蛍光に直接比例することを特徴とする、癌の進行段階を決定するための剤。
【請求項25】
請求項1〜4のいずれか1記載のコバラミンを含み、健康な組織または細胞の蛍光より大きい癌組織または細胞の蛍光が、療法に都合よい治療の応答または患者の結果を示すことを特徴とする、イン・ビボ、エクス・ビボまたはイン・サイチュにて癌の療法後の治療の応答または患者の結果を予測するための剤。
【請求項26】
請求項1〜4のいずれか1記載のコバラミンを用いて、試料に対して競合結合アッセイを行い、次いで、該試料中に存在するコバラミンの量を測定することを特徴とする試料中のコバラミンの量をアッセイする方法。
【請求項27】
請求項1〜4のいずれか1記載のコバラミン用いて、試料から単離されたコバラミン結合蛋白質に対して競合結合アッセイを行い、次いで、該試料中の不飽和コバラミン結合能力の量を測定することを特徴とする該試料中のコバラミン結合蛋白質の不飽和コバラミン結合能力の量をアッセイする方法。
【請求項28】
請求項1〜4のいずれか1記載のコバラミンを用いて、試料から単離されたコバラミン結合蛋白質から分離されたコバラミンの競合結合アッセイを行い、次いで、該試料中の該蛋白質に結合したコバラミンの量を測定することを特徴とする該試料中のコバラミン結合蛋白質に結合したコバラミンの量をアッセイする方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate

【図12C】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2011−52003(P2011−52003A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−243948(P2010−243948)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【分割の表示】特願2002−572885(P2002−572885)の分割
【原出願日】平成14年3月15日(2002.3.15)
【出願人】(500189230)ユニバーシティ・オブ・ユタ・リサーチ・ファウンデーション (11)
【Fターム(参考)】