説明

蛍光ランプと蛍光ランプの製造方法

【課題】水銀とガラスバルブのガラス材料との接触を防ぎ、蛍光膜の剥離を防ぐ目的以外に、光の取り入れ効率の改善を図ることのできる保護膜を有する蛍光ランプを提供する。
【解決手段】ガラス管体の内面に、2種類の粒度分布を有する粉体を含む分散液を塗布することにより内面に凹凸面21を有する保護膜20を形成し、保護膜20の内面に蛍光体膜30を形成する。蛍光体膜30の保護膜20との接触面も凹凸となるので発光方向が広がり、蛍光体膜30を透過した光線は保護膜20の凹凸面21で拡散されて保護膜20を経由してガラス管体10から外部に均等に投射される。保護膜20の表面が凹凸を持つことにより、保護膜20の内面にある蛍光体膜30からの発光をより有効に取り込むことが可能となり、輝度(明るさ)の改善につながる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光ランプと蛍光ランプの製造方法に関し、特にガラス管体内面に2種類の粒度分布を有する粉体から構成される保護膜を有する蛍光ランプと蛍光ランプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィラメント型蛍光ランプおよび冷陰極蛍光ランプの構造は、ガラス管体の内壁面に蛍光体層が設けられ、両端にそれぞれが封装された1対の電極を備える。
【0003】
本発明では、電極がフィラメントであり放電がフィラメント間で行われる蛍光ランプと、電極が冷陰極電極であり放電が冷陰極電極間で行われる蛍光ランプとを含めて単に蛍光ランプと称する。
【0004】
両者を区別する必要のあるときには、電極がフィラメントであり放電がフィラメント間で行われる蛍光ランプをフィラメント型蛍光ランプと称し、電極が冷陰極電極である蛍光ランプを冷陰極蛍光ランプと称する。
【0005】
このガラス管体の内部には、放電媒体として例えばネオンおよびアルゴンの混合ガスからなる希ガスと水銀とが封入され、ガラス管体の両端部が封止されてガラス管体内部が気密に封止されている。
【0006】
ガラス管体の内面に直接蛍光体膜が設けられている場合もあるが、水銀などの放電媒体とガラスとの化学反応、あるいは水銀の沈着に起因するガラス管体の黒化あるいは劣化を防止するために、ガラス管体の内面に保護膜を設けることも行なわれている。
【0007】
この場合は、通常ガラス管体の内面に、金属酸化物よりなる保護膜が塗布コーティングにより形成され、さらにこの保護膜の上に蛍光体膜が形成される。
【0008】
最近の機器に対する小型、高性能化の要求に伴って、特に冷陰極蛍光ランプに対する小型高性能化の要求が強まり、蛍光体材料の改善も含めて蛍光体膜からの光出力特性を改善することが求められている。また、一方で蛍光体膜のガラス管体からの剥離も問題となっている。
【0009】
特許文献1(特開平9−283082号公報)には、ガラスバルブの内面に凹凸面を蝕刻してその凹凸面上に蛍光体膜を形成した冷陰極蛍光バルブが開示されている。それによって蛍光体膜を透過した可視光が凹凸面で拡散され散乱光となって均等に放射されランプ表面の輝度が均一になるとともに光束が向上し、蛍光体層の剥離も防止されるとされている。
【0010】
特許文献2(特開2005−340066号公報)には、剥がれ不良を低減するためにガラス管体の内壁にフッ酸処理によりフロスト処理層を形成し、フロスト処理層上に保護膜あるいは蛍光体層を形成することにより、蛍光体層の剥がれを防止した冷陰極蛍光ランプが開示されている。
【0011】
特許文献3(特開2003−272559号公報)には、保護膜が蛍光体の小粒子と金属酸化物の微粒子とを含んでなること特徴とする蛍光ランプが開示されている。この保護膜により水銀の透過を抑制でき、保護膜に高い発光効率の蛍光を放つ機能を付加することができるとしている。
【特許文献1】特開平9−283082号公報
【特許文献2】特開2005−340066号公報
【特許文献3】特開2003−272559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に開示の冷陰極蛍光バルブでは、ランプ表面の輝度が均一になるとともに光束の分布状態が向上し、蛍光体膜の剥離も防止されるという効果はあるものの、保護膜が設けられておらないので、ガラスバルブ内に封入された水銀とガラスバルブを構成するガラス材料とが化学反応することにより透明なガラスバルブが着色して時間の経過とともに光束が低下するという問題は残されている。
【0013】
特許文献2に開示の冷陰極蛍光ランプでは、蛍光体層の剥がれによる不良を低減する効果はある。また、保護膜を設けずに直接蛍光体膜をガラス管体に形成した場合には、フロスト処理層により、蛍光体膜を透過した可視光が散乱光となってランプ表面の輝度が均一になるという効果がある。しかし、ガラスバルブ内に封入された水銀とガラスバルブを構成するガラス材料とが化学反応することにより、透明なガラスバルブが着色して時間の経過とともに光束が低下するという問題は残されている。
【0014】
保護膜を設けた場合には、水銀とガラス材料との化学反応は防げるが、保護膜の蛍光体膜との接合面は平滑なので蛍光体膜を透過した可視光が散乱光となってランプ表面の輝度が均一になるという効果は得られない。
【0015】
特許文献3に開示の蛍光ランプでは、保護膜自体は蛍光を放つ機能を有するが表面に凹凸構造は設けられていないので蛍光体膜を透過した可視光が散乱光となってランプ表面の輝度が均一になるという効果は得られない。
【0016】
従来、保護膜の目的としては、ガラス管の黒化あるいは劣化の防止に主眼がおかれており、保護膜を設けないことには問題があるが、保護膜を設けた場合でも特許文献3のように保護膜自体が蛍光発光機能を有するという例はあるものの、保護膜自体による光学的な特性の改善については、殆ど追求されてこなかった。
【0017】
本発明の目的は、水銀とガラスバルブのガラス材料との接触を防ぎ、蛍光膜の剥離を防ぐ目的以外に、光の取り入れ効率の改善を図ることのできる保護膜を有する蛍光ランプと蛍光ランプの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の蛍光ランプは、
ガラス管体と、ガラス管体内に設けられた一対の電極と、ガラス管体の内面に形成され、2種類の粒度分布を有する粉体から構成された保護膜と、保護膜の内面に形成された蛍光体膜と、ガラス管体内部に封入された放電媒体と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
保護膜が、2種類の粒度分布を有する粉体を含む分散液のガラス管体の内面への塗布により形成された保護膜であってもよく、保護膜を構成する粉体が、金属酸化物の微粒子であってもよく、金属酸化物がY、Ce、Laを含む希土類金属、Ti、Si、Al、Mgのいずれかの酸化物であってもよい。
【0020】
金属酸化物の第1の微粒子の中心粒径が0.001μmから0.1μmの範囲、望ましくは0.001μmから0.01μmの範囲にあり、金属酸化物の第2の微粒子の中心粒径が1μmから6μmの範囲、望ましくは2μmから5μmの範囲にあり、第2の微粒子の量が第1の微粒子の1%以下、望ましくは0.1%以下であってもよい。
【0021】
放電媒体が水銀と希ガスとから構成されてもよい。
【0022】
蛍光ランプがフィラメント型蛍光ランプであり、放電がフィラメント間で行われてもよく、蛍光ランプが冷陰極蛍光ランプであり、放電が冷陰極電極間で行われてもよい。
【0023】
本発明の蛍光ランプの製造方法は、
ガラス管体と、ガラス管体内に設けられた一対の電極と、ガラス管体の内面に形成された保護膜および蛍光体膜と、ガラス管体内部に封入された放電媒体とを備える蛍光ランプの製造方法であって、保護膜を、2種類の粒度分布を有する粉体を用いて構成することを特徴とする。
【0024】
保護膜が、2種類の粒度分布を有する粉体を含む分散液のガラス管体の内面への塗布により形成されてもよい。
【0025】
本発明の蛍光ランプは、内部に一対の電極を有し、放電媒体が封入されたガラス管体の管体の内面に、蛍光体膜を透過した放電媒体である水銀とガラス管体のガラス材料との接触を防ぐ保護膜を有しており、保護膜は2種類の粒度構成を有する粉体から構成されている。2種類の粒度構成を有する粉体から構成されている保護膜はガラス管体の内面への塗布により形成されるので、塗布時の塗布側である内面には大きな径の粉体が突出して凹凸形状となっている。この面の内部に形成される蛍光体膜の接触面も凹凸形状となるので、凹凸形状の蛍光体膜より発光した光線は拡散されて、保護膜およびガラス管体を通過してガラス管体の外方へ散乱光となって放射され、その光放射は均等となるのでランプの全光束が向上できる。保護膜の表面が凹凸を持つことにより、保護膜の内面にある蛍光体膜からの発光をより有効に取り込むことが可能となり、その光は均一となり、輝度(明るさ)の改善にもつながる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、ガラス管体の内面に保護膜を有しているので蛍光体膜を透過した放電媒体の水銀のガラス管体のガラス材料との接触による着色が防止できるとともに、保護膜の内面が凹凸形状となっているので内側の蛍光体膜の接触面も凹凸形状となり、凹凸形状の接触面から発光した光線は拡散されて、保護膜およびガラス管体を通過してガラス管体の外方へ散乱光となって放射され、その光放射は均等となるのでランプの全光束が向上できるという効果がある。
【0027】
また、蛍光体膜の接触面が凹凸形状となっているので、蛍光体膜の剥離を防止する効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態の蛍光ランプの断面図であり、図2は図1のA部の部分拡大図であり、(a)は本発明の第1の実施の形態であり、(b)は従来例である。第1の実施の形態では蛍光ランプをフィラメント型蛍光ランプとして説明するが、冷陰極蛍光ランプに対しても同様に適用できる。
【0029】
本発明の第1の実施の形態の蛍光ランプ1は、図1に示すように、円筒形で両端が封止されたガラス管体10、ガラス管体10の内面に塗布された保護膜20、保護膜の内面に形成された蛍光体膜30、ガラス管体10の両端に設けられた電極部40とから構成され、内部に水銀蒸気51と希ガス52とからなる放電媒体が封入されている。
【0030】
電極部40は、外部の電源と接続する電極41、電極41に接続され放電を行うフィラメント42、電極を保持する口金43、および電極部40をガラス管体10に固定するステム44とから構成される。
【0031】
ガラス管体10は、蛍光ランプ1を構成する基体であり、ガラス材質で構成されている。ガラス材質の組成やガラス管体の形状や大きさなどについては特に限定されるものではなく、透光性を有し脆弱でなければよい。ガラス管体10の形状は図示の管状に限定されるものではなく環状やグローブ状であってもよい。
【0032】
保護膜20は、蛍光体膜30に滲みこむ水銀蒸気51がガラス管体10と接触して両者が化学反応することを抑制するとともに、蛍光体膜30を透過する紫外線がガラス管体10を照射して上述の化学反応を加速することも抑制する。それによって化学反応で生ずるガラス管体10の黒化や変色が抑制されて蛍光ランプ1の光束低下が抑制される。保護膜の厚さは特に限定されないが、厚いと透過率を下げるので3μm以下であることが望ましい。
【0033】
本発明の保護膜20は、2種類の粒度分布を有する粉体を含む分散液をガラス管体10の内面へ塗布することにより形成される。保護膜を構成する粉体が、金属酸化物の微粒子であり、金属酸化物としては紫外線を吸収する性質を有する材料が好ましく、水銀と合性のわるいもの(例えば表面電荷として+になりやすい酸化物)、あるいはガラスより屈折率の低い酸化物が好ましい。
【0034】
具体的には、金属酸化物がY、Ce、Laを含む希土類金属、Ti、Si、Al、Mgのいずれかの酸化物であることが望ましい。
【0035】
金属酸化物の第1の微粒子の中心粒径が0.001μmから0.1μmの範囲、望ましくは0.001μmから0.01μmの範囲にあり、第2の微粒子の中心粒径が1μmから6μmの範囲、望ましくは2μmから5μmの範囲にあり、第2の微粒子の量が第1の微粒子の1%以下、望ましくは0.1%以下であることが望ましい。
【0036】
従来の保護膜では、図2(b)に示すように従来の保護膜22の表面は平面状であり、その上に蛍光体膜30が形成されており、蛍光体膜30の発光面は平面に近い状態であった。
【0037】
上述のような2種類の粒度分布を有する粉体を含む分散液をガラス管体10の内面へ塗布することにより形成された保護膜の表面は図2(a)に示すように径の大きい粒子が表面に配列されて凹凸面21となる。その上に形成された蛍光体膜30の表面も凹凸面21となり表面の粒子からの発光は拡散されて保護膜20に入射し、保護膜20とガラス管体10を透過して外部に広角度で投射される。
【0038】
このような蛍光ランプ1では、両方の電極部40間に電圧を印加すると両フィラメント42間で放電し、蛍光ランプ1は発光し、その発光は蛍光体膜30、保護膜20、およびガラス管体10を透過して外部に放射される。図2(b)に示される従来の蛍光ランプ2では蛍光体膜30を透過した光線は殆どその方向でガラス管体10から外部に投射される。
【0039】
図2(a)に示される本発明の蛍光ランプ2では蛍光体膜30を透過した光線は保護膜20の凹凸面21で拡散されて保護膜20を経由してガラス管体10外部に広角度で均等に投射される。
【0040】
このように本発明の保護膜20は、蛍光体膜30に滲みこむ水銀蒸気51がガラス管体10に接触して化学反応を行うのを防止するとともに、蛍光体膜30を透過する紫外線がガラス管体10と接触して上記の化学反応を起こすのを抑制する効果とともに、蛍光体膜30を透過した光線を保護膜20の凹凸面21で拡散して保護膜20を経由してガラス管体10外部に均等に投射する役割を担っている。
【0041】
さらに、蛍光体膜30と保護膜20との接触面は凹凸面21となっており、接触面積が大きくなっているので蛍光体膜30の剥離が防止される。
【0042】
図3は本発明の第2の実施の形態の蛍光ランプの断面図である。第2の実施の形態の蛍光ランプ2は、放電が冷陰極電極47間で行われる冷陰極蛍光ランプである。第2の実施の形態の電極部45は入線46と冷陰極電極47で構成されている点が第1の実施の形態と異なっている。電極部45以外の構成は第1の実施の形態と同じで、同様の機能を有するので、同じ符号を用いて構成や動作の説明は省略する。本実施の形態の構成は、冷陰極蛍光ランプのみならず蛍光体を使用するすべての放電灯に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施の形態の蛍光ランプの断面図である。
【図2】図1のA部の部分拡大図であり、(a)は本発明の第1の実施の形態であり、(b)は従来例である。
【図3】本発明の第2の実施の形態の蛍光ランプの断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1、2、3 蛍光ランプ
10 ガラス管体
20 保護膜
20a 大きい粒子
20b 小さい粒子
21 凹凸面
22 従来の保護膜
30 蛍光体膜
40、45 電極部
41 電極
42 フィラメント
43 口金
44 ステム
46 入線
47 冷陰極電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス管体と、
前記ガラス管体内に設けられた一対の電極と、
前記ガラス管体の内面に形成され、2種類の粒度分布を有する粉体から構成された保護膜と、
前記保護膜の内面に形成された蛍光体膜と、
前記ガラス管体内部に封入された放電媒体と、を備えたことを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
請求項1に記載の蛍光ランプにおいて、
前記保護膜が、2種類の粒度分布を有する粉体を含む分散液の前記ガラス管体の内面への塗布により形成された保護膜である蛍光ランプ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の蛍光ランプにおいて、
前記保護膜を構成する粉体が、金属酸化物の微粒子である蛍光ランプ。
【請求項4】
請求項3に記載の蛍光ランプにおいて、
前記金属酸化物がY、Ce、Laを含む希土類金属、Ti、Si、Al、Mgのいずれかの酸化物である蛍光ランプ。
【請求項5】
請求項3に記載の蛍光ランプにおいて、
前記金属酸化物の第1の微粒子の中心粒径が0.001μmから0.1μmの範囲、望ましくは0.001μmから0.01μmの範囲にあり、前記金属酸化物の第2の微粒子の中心粒径が1μmから6μmの範囲、望ましくは2μmから5μmの範囲にあり、第2の微粒子の量が第1の微粒子の1%以下、望ましくは0.1%以下である蛍光ランプ。
【請求項6】
請求項1に記載の蛍光ランプにおいて、
前記放電媒体が水銀と希ガスとから構成される蛍光ランプ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の蛍光ランプにおいて、
前記蛍光ランプがフィラメント型蛍光ランプであり、放電がフィラメント間で行われる蛍光ランプ。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の蛍光ランプにおいて、
前記蛍光ランプが冷陰極蛍光ランプであり、放電が冷陰極電極間で行われる蛍光ランプ。
【請求項9】
ガラス管体と、前記ガラス管体内に設けられた一対の電極と、前記ガラス管体の内面に形成された保護膜および蛍光体膜と、前記ガラス管体内部に封入された放電媒体と、を備える蛍光ランプの製造方法であって、
前記保護膜を、2種類の粒度分布を有する粉体を用いて構成することを特徴とする蛍光ランプの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の蛍光ランプの製造方法において、
前記保護膜が、2種類の粒度分布を有する粉体を含む分散液の前記ガラス管体の内面への塗布により形成される蛍光ランプの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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