説明

蛍光ランプ及びその製造方法

【課題】二酸化ケイ素を主成分として含有する保護層を種々の条件の下で容易に作製することができ、保護層と透光管との密着性が高く、水銀の消費を抑制し輝度の維持を図ることができることができる蛍光ランプを提供する。
【解決手段】放電により紫外線を発生する水銀を含むガスを封入した透光管と、該透光管の内壁上に順次設けられた保護層及び蛍光体層とを有する蛍光ランプにおいて、保護層が、透光管の表面と同じ極性の電荷を有する酸化ケイ素粒子を40質量%以上50質量%未満の範囲で、透光管と異なる極性の電荷を有する2種以上の金属酸化物粒子を50質量%以上60質量%未満の範囲で且つ各金属酸化物粒子が40質量%を超えない範囲で含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光ランプ及びその製造方法に関し、より詳しくは、紫外線透過を抑制する保護層と透光管との密着性が高く、湾曲部分における保護層のひび割れが抑制され、水銀の消費を抑制し輝度の維持を図ることができる蛍光ランプ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光ランプは、内部に希ガスと水銀とを気密に保持したガラスバルブ等の透光管の両端部付近に設けられる電極に電圧を印加して、希ガスを電離させ、電離した希ガスを電極に衝突させて二次電子を放出させグロー放電を生起させ、これにより励起された水銀が、185nmや、253.7nmの波長の紫外線を放射する。この紫外線によりガラスバルブの内壁面に設けられた蛍光体が励起され可視光を発光する。この種の蛍光ランプにおいては、水銀から放出される紫外線が蛍光体の励起に使用されずガラスバルブを透過して蛍光ランプ外部へ漏洩するのを抑制するため、紫外線の吸収率又は反射率が高い材質からなる保護層がガラスバルブの内壁面と蛍光体層との間に設けられている。このような保護層として、二酸化ケイ素を含有するものは紫外線の透過率が低く、ガラス等からなる透光管に含まれるアルカリ金属と水銀との接触を抑制する作用が高く、これらが反応して水銀を消費すると共に、黒色の反応生成物が透光管に付着し、透光管を透過する蛍光量を低下させ、蛍光ランプの輝度が低下するのを抑制する効果が高いことが知られている。
【0003】
二酸化ケイ素を含有する保護層を有する蛍光ランプとして、平均粒径10〜100nmのアルミナ、イットリア、シリカ、酸化亜鉛、チタニア及びセルア等の一種又は複数種の微粒子を用いた保護層を有する蛍光ランプ(特許文献1)、特定のBET比表面積を有するシリカを50wt%以上、その残りの金属酸化物、イットリア、チタニア等を含む保護膜を有する蛍光ランプ(特許文献2)等が報告されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載される保護膜は、ガラスバルブの屈曲部に応じて伸縮し、屈曲部における蛍光体層のひび割れや剥がれを抑制するというものである。特許文献2に記載される保護膜は、その厚さを厚くすることによりガラスバルブに含まれるアルカリ金属と水銀との反応を妨げると共に、紫外線の反射率を高くし、紫外線の利用効率を高め、ランプ光束の低下を抑制するものである。
【0005】
しかしながら、二酸化ケイ素は水、溶媒への分散性が低く、特に、微粒子の二酸化ケイ素を主成分として含む塗布液を透光管の内壁に塗工して、均一な保護層を形成するのは非常に困難である。このため、微粒子の二酸化ケイ素は保護層としての優れた機能を有するものの、この機能を生かした保護層を工業的に生産するには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−294242
【特許文献2】特開2006−49280
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、二酸化ケイ素を主成分として含有する保護層を種々の条件の下で容易に作製することができ、保護層と透光管との密着性が高く、湾曲部における保護層のひび割れが抑制され、水銀の消費を抑制し輝度の維持を図ることができることができる蛍光ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、蛍光ランプの保護層の材質について研究を行った。その結果、二酸化ケイ素はガラス等の透光管の極性と同じ極性を有することから、ガラス表面に二酸化ケイ素の塗膜を設けた場合、密着が充分でなく剥離し易いことを見い出した。このため、平均粒子径がナノスケールの二酸化ケイ素を主成分として含有し、その極性が二酸化ケイ素と異なる、即ち、透光管の極性と異なる2種以上の金属酸化物を含むことにより、保護層が透光管に馴染み、保護層と透光管との密着性が向上することの知見を得た。かかる知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、放電により紫外線を発生する水銀を含むガスを封入した透光管と、該透光管の内壁上に順次設けられた保護層及び蛍光体層とを有する蛍光ランプにおいて、保護層が、透光管の表面と同じ極性の電荷を有する酸化ケイ素粒子を40質量%以上50質量%未満の範囲で、透光管と異なる極性の電荷を有する2種以上の金属酸化物粒子を50質量%以上60質量%未満の範囲で且つ各金属酸化物粒子が40質量%を超えない範囲で含有することを特徴とする蛍光ランプに関する。
【0010】
また、本発明は、放電により紫外線を発生する水銀を含むガスを封入した透光管と、該透光管の内壁上に順次設けられた保護層及び蛍光体層とを有する蛍光ランプの製造方法であって、保護層を、透光管の表面と同じ極性の電荷を有する酸化ケイ素粒子を固形分中40質量%以上50質量%未満の範囲で、透光管と異なる極性の電荷を有する2種以上の金属酸化物粒子を固形分中50質量%以上60質量%未満の範囲で且つ各金属酸化物粒子が40質量%を超えない範囲で含有する塗布液を用いて形成することを特徴とする蛍光ランプの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の蛍光ランプは、二酸化ケイ素を主成分として含有する保護層を種々の条件の下で容易に作製することができ、保護層と透光管との密着性が高く、保護層のひび割れが抑制され、水銀の消費を抑制し輝度の維持を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の蛍光ランプの一例の熱電極蛍光ランプの概略図を示す図である。
【図2】本発明の蛍光ランプの一例の冷陰極蛍光ランプの概略図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の蛍光ランプは、放電により紫外線を発生する水銀を含むガスを封入した透光管と、該透光管の内壁上に順次設けられた保護層及び蛍光体層とを有する蛍光ランプにおいて、保護層が、透光管の表面と同じ極性の電荷を有する酸化ケイ素粒子を40質量%以上50質量%未満の範囲で、透光管と異なる極性の電荷を有する2種以上の金属酸化物粒子を50質量%以上60質量%未満の範囲で且つ各金属酸化物粒子が40質量%を超えない範囲で含有することを特徴とする。
【0014】
本発明の蛍光ランプに用いられる透光管は、表面が二酸化ケイ素と同じ極性の電荷をもつものであればいずれであってもよい。透光管表面の電荷の極性は、ゼータ電位測定装置を用いて測定することができる。
【0015】
このような透光管の材質としては、内部空間に希ガス、水銀を保持し、放電が行われる空間を形成し、発生した蛍光を透過する透明度を有するもので、例えば、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス、その他、アルミノケイ酸ガラス、ホウ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス等を挙げることができる。
【0016】
上記透光管の形状としては直管型、湾曲型、環形、バルブ型等いずれであってもよく、また、その口径もいずれであってもよく、例えば、15mm以上38mm以下等を挙げることができる。ガラスバルブの肉厚としては、具体的には、例えば、1.0±0.1mmを挙げることができる。
【0017】
上記透光管の内部空間には、希ガスと共に紫外線を発生する水銀が封入されている。希ガスとしては、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノン、ヘリウム等を1種又は2種を組み合わせて用いることができる。封入する希ガスの量としては、蛍光ランプの点灯時において、蒸気圧が例えば、1〜10Paとなるような量を挙げることができる。また、透光管に封入される水銀は、水銀そのものとして、また、アマルガムとして使用することができる。封入する水銀の量としては、蛍光ランプの点灯時において、蒸気圧が例えば、1〜10Pa等となるような量を挙げることができる。透光管内で発生した放電電子が水銀原子に衝突し、水銀原子が253.7nmを含む紫外線を発生する。
【0018】
上記透光管の両端には、透光管内に封入される水銀原子から紫外線を放射させるための放電を発生させる手段として1対の電極が設けられる。かかる電極としては、例えば、バリウム、カルシウム、イットリウム等の酸化物等のエミッタ物質を塗布したタングステンコイル等からなる熱電極を用いることができる。熱電極間に電圧が印加されると、エミッタから放出される電子により希ガスを電離させ、この希ガスのイオンが電極に衝突してグロー放電を生起させ、水銀を励起して紫外線を放出させる。また、冷陰極ランプの電極としては、例えば、ニッケル、モリブデン等により成形されたカップ状の電極を開口を対向させて配置させたものを挙げることができる。この電極間に電圧が印加されると、透光管内に僅かに存在する電子により希ガスを電離させ、これが電極に衝突することにより放電を生起させ、水銀から紫外線を放射させる。
【0019】
上記電極にはリード線が接続され、透光管の両端を気密に密閉する密閉部材を貫通して突出して設けられるリード線を介して、電極に外部電源が供給されるようになっている。
【0020】
上記透光管の内壁面には保護層及び蛍光体層が順次設けられる。
【0021】
上記透光管の内壁面に設けられる保護層は、透光管の外部へ紫外線が放出されるのを抑制し、透光管内部空間に導入される水銀が透光管に含有されるアルカリ金属との接触を抑制するために設けられる。保護層は、二酸化ケイ素粒子と、二酸化ケイ素粒子と極性が異なる2種以上の金属酸化物粒子とを含有する。
【0022】
二酸化ケイ素粒子は、ガラス等の透光管と同じ極性の電荷を有するが、放電を促進させることができる非導電性を有する。このため、二酸化ケイ素粒子を主成分として含む保護層においては、電極に印加される電流が保護層を流れて放電の発生が妨げられるのを抑制することができ、放電開始電圧を低く維持し、消費電力の増加を抑制することができる。
【0023】
二酸化ケイ素粒子の平均粒子径は、10nm以上20nm以下であることが好ましく、より好ましくは13nm以上18nm以下であり、15nm近傍であることが更に好ましい。平均粒子径が10nm以上であれば、保護層を塗工により形成する場合、塗布液が高粘度になるのを抑制し、その形成を容易にすることができ、また、得られる保護層に剥離が生じるのを抑制することができる。また、二酸化ケイ素粒子の平均粒子径が20nm以下であれば、保護層を塗工により形成する場合、塗布液の分散安定性が損なわれるのを抑制し、得られる保護層が高密度となり、水銀と透光管に含まれる成分との反応を抑制する効果が高く、また、紫外線遮断効果が高くなる。
【0024】
ここで、二酸化ケイ素粒子の平均粒子径は、レーザー回折粒度分布測定装置により測定した測定値を採用することができる。尚、金属酸化物の平均粒子径も同様の測定方法による測定値を採用することができる。
【0025】
金属酸化物粒子は、2種以上の金属酸化物粒子を含み、それぞれの金属酸化物粒子が二酸化ケイ素粒子と極性が異なる電荷を有するものであり、発光する蛍光に対して低屈折率であり透過率が高いものであることが好ましい。金属酸化物粒子のもつ電荷の極性は、ゼータ電位測定装置を用いて測定することができる。
【0026】
上記金属酸化物粒子としては、具体的には、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化ランタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の粒子を挙げることができる。金属酸化物粒子を2種以上を有することにより、保護層を塗工により形成する場合、塗膜に柔軟性を付与し、保護層のひび割れを抑制することができる。特に、透光管が湾曲部を有する場合であっても、保護層のひび割れを高度に抑制する効果が得られる。これらの粒子のうち、酸化アルミニウム粒子、酸化マグネシウム粒子は、蛍光の透過率が高いため、好ましく、2種以上の組合せとしては、酸化アルミニウム粒子と酸化イットリウム粒子、酸化マグネシウム粒子と酸化イットイルム粒子等を挙げることができる。
【0027】
金属酸化物粒子の平均粒子径は、10nm以上100nm以下の範囲が好ましく、より好ましくは、20nm以上80nm以下の範囲であり、50nm近傍であることが更に好ましい。金属酸化物粒子の平均粒子径がこの範囲であれば、保護層と透光管との密着性を向上させることができる。
【0028】
保護層には、これらの他、二酸化ケイ素粒子、金属酸化物粒子の機能を阻害しない範囲において、水銀と反応性が低く、紫外線の透過を抑制する物質を含有していてもよい。
【0029】
保護層中の二酸化ケイ素粒子の含有量は40質量%以上50質量%未満である。二酸化ケイ素粒子の含有量が40質量%以上であれば、保護層に電流が流れることにより放電の発生が阻害されるのを抑制することができ、50質量%未満であれば、保護層を塗工により形成する場合、塗布液が分散安定性に優れ、取扱いが容易となり、得られる保護層は透光管と密着性に優れるものとなる。保護層中の金属酸化物粒子の含有量は、合計で50質量%以上60質量%未満であり、各金属酸化物粒子の含有量は40質量%を超えない範囲である。金属酸化物粒子の合計の含有量が上記範囲であれば、保護層の導電性が高くなるのを抑制し、放電の発生を妨げず、充分な蛍光を発光させることができる。各金属酸化物粒子の含有量が40質量%を超えない範囲であれば、保護層に柔軟性を付与し、透光管との密着性が高く、透光管の曲げ工程における保護層のひび割れを抑制することができる。
【0030】
このような保護層の厚さとしては、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、より好ましくは、0.5μm以上5μm以下であり、更に好ましくは1μm前後である。保護層の厚さが0.5μm以上であれば、水銀と透光管に含まれる成分との反応を抑制する効果が高く、紫外線遮断効果が高くなり、10μm以下であれば、蛍光の保護層の透過率の低下を抑制することができる。保護層中、二酸化ケイ素粒子が、0.01mg/cm2以上0.03mg/cm2以下の範囲で含有されることが好ましい。
【0031】
上記保護層上に設けられる蛍光体層は、水銀原子から放射される253.7nmの紫外線により可視光を発光する蛍光体を含有する。蛍光体としては、特に限定されるものではなく、いずれのものであってもよいが、熱に対して劣化が少なく、また、水銀の吸着が少なく、蛍光ランプの始動時において水銀蒸気圧が高い状況が継続する場合があるが、そのような場合においても、水銀の吸着が少ないものが好ましい。このような蛍光体の一例として、例えば、Y23:Eu、YVO4:Eu、LaPO4:Ce,Tb、(Ba,Eu)MgAl1017、(Ba,Sr,Eu)(Mg,Mn)Al1017、Sr10(PO46l2:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46l2:Eu等を挙げることができる。また、蛍光体層は、このような蛍光体を適宜組み合わせ、水銀から放射される253.7nmの紫外線により励起され、緑色、赤色、青色領域の可視光を発光させ、演色に優れた白色光を得ることも可能である。例えば、赤色蛍光体として、Y23:Eu、緑色蛍光体として、LaPO4:Ce,Tb、青色蛍光体として、BaMgAl1017:Euの組み合わせを一例として挙げることができる。
【0032】
上記蛍光体層の厚さは、例えば、10μm以上30μm以下の範囲を挙げることができる。蛍光体層中、蛍光体が、3mg/cm2以上5mg/cm2以下の範囲で含有されることが好ましい。
【0033】
この種の蛍光ランプを駆動させる点灯回路としては、蛍光ランプと別途に設けた点灯回路により電極を予熱し高圧パルスを発生するスターター式点灯回路を用いることができるが、蛍光ランプと一体化して設けた、電極予熱回路と昇圧回路とを有する安定器を備えたラピッドスタート式点灯回路、更に高周波変換回路を備えたインバータ式点灯回路を用いることもできる。点灯回路を一体化して設ける場合、ガラスバルブを湾曲若しくは屈曲し、その周囲を更にグローブで覆い、点灯回路に接続された口金を有する電球型としても、また、ガラスバルブが外部に露出した構造としてもよい。
【0034】
上記蛍光ランプを製造する方法は、特に限定されるものではないが、本発明の蛍光ランプの製造方法によることが好ましい。
【0035】
本発明の蛍光ランプの製造方法は、放電により紫外線を発生する水銀を含むガスを封入した透光管と、該透光管の内壁上に順次設けられた保護層及び蛍光体層とを有する蛍光ランプの製造方法であって、保護層を、透光管の表面と同じ極性の電荷を有する酸化ケイ素粒子を固形分中40質量%以上50質量%未満の範囲で、透光管と異なる極性の電荷を有する2種以上の金属酸化物粒子を固形分中50質量%以上60質量%未満の範囲で且つ各金属酸化物粒子が40質量%を超えない範囲で含有する塗布液を用いて形成することを特徴とする。
【0036】
以下、具体的に説明する。まず、透光管内壁面に保護層を形成する。保護層を形成するには、平均粒子径10nm以上20nm以下の微粒子化した二酸化ケイ素を固形分中、40質量%以上50質量%未満の範囲で、2種以上の金属酸化物の微粒子を固形分中、50質量%以上60質量%未満であって、各金属酸化物粒子が40質量%を超えない範囲で、分散液中に分散させ、得られた分散液を透光管内壁面に塗布、乾燥する方法を用いることができる。分散液への分散は、二酸化ケイ素粒子と金属酸化物粒子を同時に行ってもよいが、二酸化ケイ素粒子を先行させ、二酸化ケイ素粒子の分散液に、金属酸化物粒子を分散させることもできる。使用する分散媒としては、具体的には、水や、アルコール類、酢酸ブチル、キシレン等の有機溶剤や、これらを混合したものを挙げることができる。分散液には、その他、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)等の増粘剤等の粘度調整剤等を必要に応じて添加することができる。分散液の塗布方法としては、コーティング、浸漬、スプレー塗布等いずれであってもよい。所定の厚さに塗布した後、自然乾燥や、強制乾燥等の乾燥方法により乾燥することができる。強制乾燥の場合、エアーブロー等の速度や温度が高い場合、表面のみの乾燥が先行し、内部の乾燥速度が遅く内外に応力が発生し、亀裂発生の要因となる。このため、例えば、温度、エアーブロ−速度を調整して行うことが好ましい。
【0037】
二酸化ケイ素粒子を上記粒子径となるように、微粒子化する方法としては、例えば、ジェットミル、ボールミル、ビーズミル等を用いることができる。
【0038】
保護層の上に蛍光体層を形成する。蛍光体層を形成するには、上記蛍光体を含有する分散液を調製し、これを保護層の形成と同様に、保護層上に塗布、乾燥して形成することができる。
【0039】
透光管の両端部に電極を配置し、それぞれの電極に接続されるリード線を貫通させた封止部材でガラスバルブの両端部を密封する。その後、希ガスと水銀を透光管内へ導入して製造することができる。
【0040】
本発明の蛍光ランプの一例として、図1(a)、(b)に示す熱電極蛍光ランプ10を挙げることができる。図1に示す蛍光ランプは、透光管1内壁面上に保護層2、蛍光体層3が順次設けられ、透光管1の両端部付近にコイル形状の電極6がステム5を介して設けられ、封止部材(口金)7を貫通して設けられるリード線4により外部電源に接続されるようになっている。両端が封止部材により気密に密閉される透明管内部には希ガス及び水銀が封入されている。
【0041】
また、本発明の蛍光ランプの他の例として、図2に示す冷陰極蛍光ランプ20を挙げることができる。図2に示す冷陰極蛍光ランプは、透光管21内壁面上に、保護層22、蛍光体層23が順次設けられ、透光管21の両端部付近にカップ形状の開口26aを相互に対向させた電極26が設けられ、ガラスビード等の封止部材27を貫通して設けられるコバール等のリード線24により外部電源に接続されるようになっている。両端が封止部材により気密に密閉される透光管内部25には希ガス及び水銀が封入されている。
【0042】
本発明の蛍光ランプは、熱電極蛍光ランプ、冷陰極蛍光ランプ等何れにも適用することができ、保護層が二酸化ケイ素や金属酸化物が均一に分散され、透光管に密着されて設けられることにより、水銀の消費を抑制し、外部に漏洩する紫外線の遮蔽効果が高く、輝度の低下が抑制され、高輝度を維持することができる。
【実施例】
【0043】
以下に実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されない。
[実施例1]
平均粒子径約15nmの二酸化ケイ素粒子を水に分散させた後、平均粒子径約50nmの酸化アルミニウム粒子と、平均粒子径約50nmの酸化イットリウムを加え、混合攪拌し、保護層用分散液を調製した。得られた保護層用分散液を、口径16mmのガラスバルブの内壁面に浸漬塗布し、約50〜70℃で、約10分乾燥し、約1μm厚さの保護層を作製した。
【0044】
蛍光体としてY2O3:Eu、LaPO4:Ce,Tb、(Ba,Eu)MgAl10O17:Euを300g有機溶媒に分散させ蛍光体層形成用分散液を調製した。得られた分散体液を、保護層上に浸漬塗布し、約50〜70℃で、約15分乾燥し、約20μm厚さの蛍光体層を作製した。
【0045】
得られたガラスバルブを用い、タングステンコイル等の電極をガラスバルブの両端に配置し、リード線を貫通させた口金により、電極とリード線の接続を取りガラスバルブの両端を密封した。ガラスバルブ内へ、水銀を10mg以下封入し、アルゴン等を導入し、図1に示す熱電極蛍光ランプを作製した。
【0046】
得られた蛍光ランプに、交流電圧を印加して点灯させ、点灯直後と、100時間後に可視光量を、クーゲルにより測定し、減衰率を算出した。結果を表1に示す。
[比較例1]
保護層として、酸化アルミニウム粒子のみを用いた他は、実施例1と同様にして、熱電極蛍光ランプを作製し、点灯して可視光量を測定した。結果を表1に示す。
【0047】
結果から、実施例1においては、比較例1と比較して、可視光量の減衰率が改善されたことが分かった。
【0048】
【表1】

【符号の説明】
【0049】
1、21 透光管
2、22 保護層
3、23 蛍光体層
6、26 電極
7、27 封止部材
10 熱電極蛍光ランプ
20 冷陰極蛍光ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電により紫外線を発生する水銀を含むガスを封入した透光管と、該透光管の内壁上に順次設けられた保護層及び蛍光体層とを有する蛍光ランプにおいて、保護層が、透光管の表面と同じ極性の電荷を有する酸化ケイ素粒子を40質量%以上50質量%未満の範囲で、透光管と異なる極性の電荷を有する2種以上の金属酸化物粒子を50質量%以上60質量%未満の範囲で且つ各金属酸化物粒子が40質量%を超えない範囲で含有することを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
二酸化ケイ素の平均粒子径が、10nm以上20nm以下の範囲であることを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。
【請求項3】
放電により紫外線を発生する水銀を含むガスを封入した透光管と、該透光管の内壁上に順次設けられた保護層及び蛍光体層とを有する蛍光ランプの製造方法であって、保護層を、透光管の表面と同じ極性の電荷を有する酸化ケイ素粒子を固形分中40質量%以上50質量%未満の範囲で、透光管と異なる極性の電荷を有する2種以上の金属酸化物粒子を固形分中50質量%以上60質量%未満の範囲で且つ各金属酸化物粒子が40質量%を超えない範囲で含有する塗布液を用いて形成することを特徴とする蛍光ランプの製造方法。
【請求項4】
二酸化ケイ素の平均粒子径が、10nm以上20nm以下であることを特徴とする請求項3記載の蛍光ランプの製造方法。

【図1】
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【図2】
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