説明

蛍光ランプ

【課題】 発光管の蛍光体層に悪影響を与えることなく、かつ安定動作が可能な、波長400nm以下の光の透過を抑止する層(紫外線透過抑止層)を有する蛍光ランプを提供する。
【解決手段】 本蛍光ランプ1は、内面に蛍光体が塗布された発光管4と、発光管4の駆動用回路5と、発光管4と駆動回路5を固定するホルダー6を具備する。発光管4はグローブガラス7に覆われている。このグローブガラス7の内表面および外表面の少なくとも一方に波長400nm以下の光の透過を抑止する層(紫外線透過抑止層)8を設ける。紫外線透過抑止層8は、例えば、酸化チタンに加え、三酸化アンチモン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、および酸化亜鉛の少なくとも1種類を混合したものを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光ランプに係り、特に蛍光ランプの発光管より放射される紫外線の透過を抑止する層を有する蛍光ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
蛍光ランプの発光管より放射される紫外線は例えば器具や家具等の退色及び劣化をまねき、また400nm以下の光に視感度を持つ昆虫類を誘引するため、従来より、このような紫外線の透過を抑止する機能を有する、いわゆる無紫外線蛍光ランプが提案されている。この無紫外線蛍光ランプは、例えば発光管内面の蛍光体層とガラス管との間に酸化チタン、酸化セリウム等の波長400nm以下の光の透過を抑止する物質を塗布したものである。この種の蛍光ランプは例えば特開平8−102295号公報に記載されている。
【特許文献1】特開平8−102295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の蛍光ランプに波長400nm以下の光の透過を抑止する物質を塗布する技術では、発光管のガラスバルブ内表面に波長400nm以下の光の透過を抑止する物質を塗布後、その上に蛍光体を塗布する必要があった。しかし、ここで塗布される波長400nm以下の光の透過を抑止する物質の層が厚いため、発光管の管曲げの工程でガラス管の加工が難しく、蛍光体層が剥離しやすいという問題があった。又、波長400nm以下の光の透過を抑止する物質の層が厚いため、発光管製造工程において不純ガスが発光管外に充分排気できず、残留した不純ガスにより発光管の始動電圧が上昇し不点灯に至る恐れがあるという問題があった。
【0004】
従って本発明の目的は、発光管の蛍光体層に悪影響を与えることなく、かつ安定動作が可能な、波長400nm以下の光の透過を抑止する層(紫外線透過抑止層)を有する蛍光ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、蛍光ランプにおいて発光管の内側でなく外側に紫外線透過抑止層を設けることにより、上記問題を解決しようとするものである。
【0006】
すなわち、上記目的は、内面に蛍光体が塗布された発光管と、前記発光管の駆動用回路と、前記発光管と前記駆動回路を固定するホルダーを具備する蛍光ランプであって、前記発光管を覆うグローブガラスを備え、前記グローブガラスの内表面および外表面の少なくとも一方に波長400nm以下の光の透過を抑止する層を設けた蛍光ランプにより、達成される。
【0007】
また、上記目的は、内面に蛍光体が塗布された発光管と、前記発光管の駆動用回路と、前記発光管と前記駆動回路を固定するホルダーを具備する蛍光ランプであって、前記発光管の外表面に波長400nm以下の光の透過を抑止する層を設けた蛍光ランプにより、達成される。
【0008】
ここで、前記波長400nm以下の光の透過を抑止する層は、酸化チタンに加え、三酸化アンチモン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、および酸化亜鉛の少なくとも1種類を混合したものを含むことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発光管の蛍光体層に悪影響を与えることなく、かつ安定動作が可能な、波長400nm以下の光の透過を抑止する層(紫外線透過抑止層)を有する蛍光ランプを提供することができる。すなわち、本発明では、発光管製造工程を変更する事なく、簡単な構造で、かつ、波長400nm以下の光の透過を抑止する物質を発光管内表面に塗布した場合と同様に、蛍光ランプより放射される紫外線を抑制できる。これにより、蛍光ランプより放射される紫外線による器具や家具等の退色及び劣化を低減することが可能であり、また400nm以下の光に視感度を持つ昆虫類の誘引を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る蛍光ランプの実施例について電球形蛍光ランプを例にとって図面を参照しながら説明するが、本発明は電球形蛍光ランプに限定されない。
【実施例1】
【0011】
図1は本発明に係る電球形蛍光ランプの一実施例を示す図で、(a)はランプの一部切欠き図、(b)は(a)のA部の拡大図である。図1(a)に示すように、電球形蛍光ランプ1は、樹脂製のカバー2と、カバー2に固定された口金3と、例えば1つまたは複数のU字状屈曲形バルブからなる発光管4と、発光管4の駆動用回路5と、発光管4と駆動回路5を固定する樹脂製のホルダー6と、光拡散膜が未塗布のグローブガラス7とを備えて構成される。発光管4は、両端に電極を備え、内部には水銀および希ガスを含む放電媒体が封入されており、また、内面には蛍光体が塗布されている。発光管4はグローブガラス7で覆われている。
【0012】
これらの構成要素のうち、グローブガラス7は、図1(b)に示すように、その内表面に波長400nm以下の光の透過を抑止する層(紫外線透過抑止層)8が形成されている。この紫外線透過抑止層8は、例えば、酸化チタンに加え、三酸化アンチモン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、および酸化亜鉛の少なくとも1種類を混合したものを含む。グローブガラス7は、その内表面に予め光拡散膜が塗布されていても構わない。また、紫外線透過抑止層8はグローブガラス7の外表面に形成されても構わない。すなわち、紫外線透過抑止層8はグローブガラス7の内表面および外表面の少なくとも一方に設けることができる。また、グローブガラス7の内表面や外表面に形成される紫外線透過抑止層8は不均一でも構わない。
【0013】
本実施例における紫外線透過抑止層8の効果は次のとおりである。すなわち、紫外線透過抑止層8をグローブガラス7の内表面および外表面の少なくとも一方に形成することにより、発光管製造工程を変更する事なく、簡単な構造で、発光管内表面に紫外線透過抑止層8を形成した場合と同様に、蛍光ランプより放射される紫外線の透過を抑制することができる。
【0014】
図2は、本発明に係る紫外線透過抑止層を形成した電球形蛍光ランプと従来の紫外線透過抑止層未形成の電球形蛍光ランプの各発光強度曲線の一例を示すグラフである。本図の横軸は蛍光ランプから放射される光の波長(nm)を示し、縦軸は蛍光ランプの相対発光強度(任意単位)を示す。図2において、本発明に係る紫外線透過抑止層8を形成した電球形蛍光ランプの発光強度曲線9と従来の紫外線透過抑止層未形成の電球形蛍光ランプの発光強度曲線10とを比較すると分かるとおり、本発明に係る電球形蛍光ランプは発光管から放射される紫外線を約80%低減することができる。これにより、本発明によれば、紫外線による器具や家具等の退色及び劣化を抑えることができ、また400nm以下に視感度曲線11を持つ昆虫類の誘引を、紫外線透過抑止層8未形成の電球形蛍光ランプを使用した場合の0.4〜0.5倍に低減することができる。
【実施例2】
【0015】
図3は本発明に係る電球形蛍光ランプの他の実施例を示す図で、(a)はランプの一部切欠き図、(b)は(a)のA部の拡大図である。図3(a)に示すように、電球形蛍光ランプ1は、樹脂製のカバー2と、カバー2に固定された口金3と、1つまたは複数のU字状屈曲形バルブからなる発光管4と、発光管4の駆動用回路5と、発光管4と駆動回路5を固定する樹脂製のホルダー6と、光拡散膜が未塗布のグローブガラス7とを備えて構成される。発光管4は、両端に電極を備え、内部には水銀および希ガスを含む放電媒体が封入されており、また、内面には蛍光体が塗布されている。発光管4はグローブガラス7で覆われている。
【0016】
これらの構成要素のうち、発光管4は、図3(b)に示すように、その外表面に紫外線透過抑止層8が形成されている。この場合、グローブガラス7は内表面に光拡散膜が塗布されていても構わない。また、発光管4の外表面に形成される紫外線透過抑止層8は不均一でも構わない。なお、本実施例では紫外線透過抑止層8は発光管4の外表面に設けられており、グローブガラス7を省略してグローブレスタイプの蛍光ランプとすることができる。
【0017】
本実施例においても、図2の発光強度曲線9を得ることができ、上記実施例1の場合のように、簡単な構造で、発光管内表面に紫外線透過抑止層8を形成した場合と同様に、蛍光ランプより放射される紫外線の透過を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は蛍光ランプに係り、特に蛍光ランプの発光管より放射される紫外線の透過を抑止する層を有する蛍光ランプに関するものであり、産業上の利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る電球形蛍光ランプの一実施例を示す図で、(a)はランプの一部切欠き図、(b)は(a)のA部の拡大図である。
【図2】本発明に係る紫外線透過抑止層を形成した電球形蛍光ランプと従来の紫外線透過抑止層未形成の電球形蛍光ランプの各発光強度曲線の一例を示すグラフである。
【図3】本発明に係る電球形蛍光ランプの他の実施例を示す図で、(a)はランプの一部切欠き図、(b)は(a)のA部の拡大図である。
【符号の説明】
【0020】
1 電球形蛍光ランプ
2 樹脂製カバー
3 口金
4 発光管
5 駆動用回路
6 ホルダー
7 グローブガラス
8 紫外線透過抑止層
9 本発明に係る電球形蛍光ランプの発光強度曲線
10 従来の電球形蛍光ランプの発光強度曲線
11 昆虫の視感度曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面に蛍光体が塗布された発光管と、前記発光管の駆動用回路と、前記発光管と前記駆動回路を固定するホルダーを具備する蛍光ランプであって、前記発光管を覆うグローブガラスを備え、前記グローブガラスの内表面および外表面の少なくとも一方に波長400nm以下の光の透過を抑止する層を設けたことを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
内面に蛍光体が塗布された発光管と、前記発光管の駆動用回路と、前記発光管と前記駆動回路を固定するホルダーを具備する蛍光ランプであって、前記発光管の外表面に波長400nm以下の光の透過を抑止する層を設けたことを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項3】
前記波長400nm以下の光の透過を抑止する層は、酸化チタンに加え、三酸化アンチモン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、および酸化亜鉛の少なくとも1種類を混合したものを含むことを特徴とする請求項1または2記載の蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−100107(P2006−100107A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284382(P2004−284382)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000005474)日立ライティング株式会社 (130)
【Fターム(参考)】