説明

蛍光ランプ

【課題】直流電源で点灯駆動できること、ランプ管形状を任意にできること、長寿命であること、発光効率が高い蛍光ランプを提供すること。
【解決手段】ランプ管12内面に紫外光を可視光に変換するフォトルミネセンス蛍光体18が設けられ、ランプ管12内に陽極16と電界放射型の冷陰極14とが対向配置されてなり、陽極16と冷陰極14との間に直流電圧が印加されて冷陰極14から電子放出が行われ、この放出された電子により封入ガスが励起されて紫外光を発生すると共にこの紫外光がフォトルミネセンス蛍光体18で可視光に変換されて外部に放出する構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプ管内に電子衝突により励起されて紫外光を発生するガスが封入された冷陰極型の蛍光ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱電子放出型の蛍光ランプは、ランプ管内面に蛍光体が被着され、ランプ管内に対向配置された1対のフィラメント電極間に数十kHzの高周波電圧を印加することによりランプ管内を放電させ、この放電エネルギによって内部に封入してあるガスの原子が励起して共鳴遷移することによって紫外光を発生させ、この紫外光で蛍光体を励起して可視光を放射するようにしている。このような蛍光ランプのタイプとしては、直管(ストレート)形や環形(サークル形)が一般的であるが、この他に電球形やコンパクト形等も近年普及してきている。蛍光ランプは、明るさやエネルギー効率に優れているなどの特長を有するため、一般家庭あるいは事務所などの照明光源として広く一般に普及されて使用されている(特許文献1参照)。このような蛍光ランプは、高周波電源で両フィラメント電極を駆動する必要があること、ランプ管両端に一対のフィラメント電極を配置する必要があること、および放電のためランプ形状が円管形状となり、ランプ形状を平面形状化しにくいこと、等の課題がある。
【0003】
また、蛍光ランプとして冷陰極タイプのものがある。この冷陰極タイプにおいては冷陰極から真空中に電子を放出させ、この放出した電子を蛍光体に衝突させ、この蛍光体を励起発光させるようになっている。このような冷陰極において用いる蛍光体は、電子線により励起するカソードルミネセンスであり、このカソードルミネセンスはTVセット、コンピュータモニタ、レーダスクリーン等のCRT内面に形成されており、広く汎用されて普及している。しかしながら、カソードルミネセンスの場合、衝突電子が蛍光体に欠陥を生成するなどによりCRTの作動寿命を左右し、カソードルミネセンスは発光効率が極めて低いという課題がある。
【特許文献1】特開2000−285863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、直流電源で点灯駆動できること、ランプ管形状を任意にできること、長寿命であること、発光効率が高い蛍光ランプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による蛍光ランプは、ランプ管内に電子衝突により励起されて紫外光を発生するガスが封入され、かつランプ管内面に紫外光を可視光に変換するフォトルミネセンス蛍光体が設けられ、ランプ管内に陽極と電界放射型の冷陰極とが対向配置されてなり、前記陽極と冷陰極との間に直流電圧が印加されて該冷陰極から電子放出が行われ、この放出された電子により前記封入ガスが励起されて紫外光を発生すると共にこの紫外光がフォトルミネセンス蛍光体で可視光に変換されて外部に放出することを特徴とするものである。フォトルミネセンス蛍光体は光により励起する蛍光体である。ここで、ルミネセンスとは蛍光体物質が励起源から受け取ったエネルギーを発光により放出することであり、その励起源の種類から電界で励起するエレクトロルミネセンス(EL)と、光により励起するフォトルミネセンス(PL)と、電子線により励起するカソードルミネセンス(CL)とに分類することができる。フォトルミネセンス蛍光体には、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット蛍光体(YAG)があり、この蛍光体は530nm付近に発光ピークをもち広い波長範囲に渡って発光することが知られている。
【0006】
本発明の蛍光ランプは、陽極と電界放射型の冷陰極との間に直流電源により電界を印加し、冷陰極から電子放出させて蛍光体を発光駆動することができ、また、ランプ管形状は円管形状やフラットパネル形状等、任意にできる上に、フォトルミネセンス蛍光体を用いるので長寿命かつ高発光効率の蛍光ランプを提供することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、直流電源で点灯駆動でき、ランプ管形状を任意にでき、長寿命であり、発光効率が高い蛍光ランプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態1に係る蛍光ランプを説明する。実施の形態1の蛍光ランプは電界放射型の冷陰極蛍光ランプである。図1は、実施の形態1の蛍光ランプの断面図である。実施の形態1の蛍光ランプは内部に水銀やキセノン等の紫外光発生用の蒸気やガス等と放電維持用のアルゴンガス等のキャリアガスが封入されたランプ管12を備える。ランプ管12内にはワイヤ状の電界放射型の冷陰極14が配置されている。ランプ管12の内面には陽極16とフォトルミネセンス蛍光体18とが積層されている。陽極16はITO(酸化インジウム・錫)やアルミニウム等の金属をスパッタリングやEB蒸着等により薄膜状にして形成されている。陽極16の材料は、蛍光発光を直接見るタイプ(直視タイプ)ではITO、アルミニウムのいずれでもよいが、陽極16を介して蛍光発光を見る透過タイプではITOを用いることが好ましい。直視タイプでは、特に材料の限定はないが、例えば、上記酸化インジウム・錫の他に酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、カルコゲン化亜鉛、窒化ガリウム、窒化インジウム、CdTeなどの無機材料を挙げることができる。ただし、電子速度が高速の場合はアルミニウムを電子が透過できるので、透過タイプでもITO、アルミニウムのいずれでもよい。
【0009】
フォトルミネセンス蛍光体18は、陽極16上にスラリー塗布法、電気永動法、沈降法等により塗布することにより形成されている。
【0010】
冷陰極14は、ランプ管12のほぼ中心を該ランプ管12の管軸方向にワイヤ状に延びて配置される。冷陰極14は、直流電源15から直流電圧が印加されることにより陽極16との間で発生する電界により陽極16全体をカバーするよう電子を放出する電界放射型である。冷陰極14は、導線14aと、この導線14aの表面に形成されたナノウォール状の微細突起を有する炭素薄膜14bとにより形成されている。図2に冷陰極14表面の炭素薄膜14bの写真を示す。この写真に示すように炭素薄膜14bはナノウォール状である。冷陰極14は、1つまたは複数の導線14aを直線状または屈曲状したものでもよいし、複数の導線14aを拠り合わせて陽極16全体をカバーする構成のものでもよい。導線14aにはニッケルやその合金等がある。炭素薄膜14bは、ナノウォール状の微細突起を有する。ナノウォール状の炭素薄膜14bは、プラズマCVD法、例えば、電子サイクロトロン共鳴法(ECR−PCVD法)により形成することができる。
【0011】
以上の構成を備えた実施の形態1の蛍光ランプ10においては、陽極16と冷陰極14との間に直流電圧を印加することにより、冷陰極14から電子を電界放出させる。この放出した電子はランプ管12内の封入ガスと衝突して紫外光を発生する。フォトルミネセンス蛍光体18は紫外光照射により可視光20を発生することができる。実施の形態1に係る蛍光ランプ10においては、大型軽量高性能かつ低価格化志向の液晶表示装置のバックライトに適用することができる。
【0012】
図3は本発明の実施の形態2に係る蛍光ランプの断面図であり、図3に示す実施の形態2の蛍光ランプ10においては、ランプ管12の内面にフォトルミネセンス蛍光体18のみ形成され、陽極16は形成されていない。陽極16と冷陰極14はランプ管12の管軸方向一端側に対向配置されている。ランプ管12の内部には実施の形態1と同様のガスが封入されている。すなわち、実施の形態2では冷陰極14はランプ管12全体に延びるワイヤ状ではなく、ランプ管12の管軸方向一端側において陽極16と対向した状態で配置されている。実施の形態2に係る蛍光ランプにおいては、大型軽量高性能かつ低価格化志向の液晶表示装置のバックライトに適用することができる。
【0013】
図4は本発明の実施の形態3に係る蛍光ランプの断面図である。実施の形態3における蛍光ランプ10のランプ管12の内部には実施の形態1と同様のガスが封入されている。ランプ管12は、前面パネル12a、背面パネル12b、両パネル12a,12b間に介装されたスペーサパネル(符号をとっていない)からなるフラットパネル形状になっている。前面パネル12aは例えばガラス基板からなり可視光を外部に照射することができるようになっている。前面パネル12aの内面には陽極16が平面状に形成されている。フォトルミネセンス蛍光体18も、陽極16に平面形状に形成されている。冷陰極14は、陽極16と間隔を隔てて一方向にワイヤ状に延びて配置される。冷陰極14は、陽極電圧10〜15kV程度の印加により陽極16との間で発生する電界により陽極16の平面領域全体をカバーするよう電子を放出する電界放射型である。冷陰極14は、導線14aと、この導線14aの表面に形成された多数のナノウォール状の微細突起を有する炭素薄膜14bとにより形成されている。実施の形態3に係る蛍光ランプ10においては、大型軽量高性能かつ低価格化志向の液晶表示装置のバックライトに適用することができる。
【0014】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で、種々な変更ないしは変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1に係る蛍光ランプの断面図である。
【図2】図1の冷陰極の写真である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る蛍光ランプの断面図である。
【図4】本発明の実施の形態3に係る蛍光ランプの断面図である。
【符号の説明】
【0016】
10 蛍光ランプ
12 ランプ管
14 冷陰極
16 陽極
18 フォトルミネセンス蛍光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプ管内に電子衝突により励起されて紫外光を発生するガスが封入され、かつランプ管内面に紫外光を可視光に変換するフォトルミネセンス蛍光体が設けられ、ランプ管内に陽極と電界放射型の冷陰極とが対向配置されてなり、前記陽極と冷陰極との間に直流電圧が印加されて該冷陰極から電子放出が行われ、この放出された電子により前記封入ガスが励起されて紫外光を発生すると共にこの紫外光がフォトルミネセンス蛍光体で可視光に変換されて外部に放出する、ことを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
前記冷陰極が、ワイヤあるいは基板上にカーボンナノウォールを設けて構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプ。
【請求項3】
前記陽極が、前記ランプ管の内面に設けられ、前記冷陰極が前記陽極に対向して前記ランプ管内を長手方向に配設されている、ことを特徴とする請求項2に記載の蛍光ランプ。
【請求項4】
前記陽極と冷陰極とが前記ランプ管の管軸方向一端側に対向配置されている、ことを特徴とする請求項2に記載の蛍光ランプ。
【請求項5】
前記ランプ管が、フラットパネル型である、ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の蛍光ランプ。



【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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