説明

蛍光ランプ

【課題】 発光効率の低下防止と安全性向上とを両立可能な平面渦巻形蛍光ランプを提供することを目的とする。
【解決手段】 放電路が渦巻状でかつ、発光面が略平面状となるように形成された渦巻形の発光管10を備える蛍光ランプであって、発光管の管端部11aにおいて、フィラメントコイル電極13aに接続している一対の電極リード線14a等と排気管16とが封着され、前記封着が行われている封着部から露出した排気管16の部分及び発光管の管端部11aが管端蓋部30aにより囲繞され、かつ、フィラメントコイル電極13aが囲繞範囲から外れた箇所に存在し、発光管10の軸方向におけるフィラメントコイル電極13aと電極リード線14a等との接続位置から保持部材20までの距離Lが、7mm以上、10mm以下となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦巻形の蛍光ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保全のための省エネルギー及び省資源の時代を迎え、照明分野においても低効率の白熱電球や比較的大型の蛍光ランプなどの従来の光源に置き換え可能な省エネ、省資源光源として、種々のコンパクト形蛍光ランプが開発されている。
このコンパクト形蛍光ランプの1種として、図7に示すような放電路が平面状でかつ二重螺旋状に旋回し、端部が隣接する発光管の下方に位置した構成の発光管1110を備えた蛍光ランプ110が知られている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
この蛍光ランプ110は、いわゆる片口金タイプの二重渦巻形の蛍光ランプであって、発光管1110の管端部1111aおよび管端部1111bが、一個の口金1140の両端に設けられた保持部1120a及び保持部1120bのそれぞれによって保持されるとともに、管端部1111aおよび管端部1111bにおいて封着された電極リード線(不図示)が前記口金1140の電源接続端子に接続されている。
【0004】
また、図8に示すように、放電路が略一平面を二重渦巻状に旋回する発光管1210を備えた蛍光ランプ1200が開示されている。(例えば、特許文献1)
この蛍光ランプ1200は、いわゆる両口金タイプであって、発光管1210の管端部1211a及び管端部1211bに、それぞれ一対の電源接続用の端子ピンが配されたG型口金1240aおよびG型口金1240bが装着されている。
【0005】
蛍光ランプ1200は、発光管1210の外形が略円盤形状をなすいわゆる面光源であって、特許文献1に記載の蛍光ランプ110の発光管1100よりも全体的な厚みが薄くなるように構成されていることに特徴がある。
このため、灯具を薄く設計することができ、天井や壁にいわゆる直付けのダウンライトやウオールライト用の光源として好適である。
【0006】
また、蛍光ランプ1200は、発光面が略円板状であるため被照射面の配光分布が良好で、殊に店舗や住宅の照明用として好適である。
【非特許文献1】EU意匠25861−0005公報
【特許文献1】特開平9−45283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の二重渦巻形の蛍光ランプ110及び蛍光ランプ1200において、管端部1111bの終端部にチップ封止された排気管1100bが、また、管端部1211aの終端部には、チップ封止された排気管1210aが設けられていると想定して試作を行った。
ここで、上記チップ封止とは、内部が負圧になっているガラス製の排気管を、加熱することにより軟化させ、さらに、終端部を引き伸ばしながら引きちぎることによって封止する方法である。
【0008】
その結果、点灯時に排気管1110a及び排気管1210aの温度が、最冷点として設定している発光管の中央部の温度(以下、「最冷点部」という。)よりも低くなり、所望の発光効率が得られないということがわかった。
このため、排気管1110a及び排気管1210aの温度を上昇させ、排気管1110a及び排気管1210aをそれぞれ覆っている保持部1120b及びG型口金1240aの端部を発光管端部に配されたフィラメント(不図示)を覆う位置まで延長することも考えられる。
【0009】
これにより、フィラメント(不図示)から排気管1110a及び排気管1210aへと伝導する熱量が増え、排気管1110a及び排気管1210aの温度を高くすることができるとともに、発光管中央部の温度を低い設定とすることができるので、発光効率の低下を防止することができる。
しかしながら、このような構成では、前記保持部及び前記G型口金によってフィラメントを覆っているため、フィラメントの温度が通常よりも上昇する寿命末期において、保持部1120b及びG型口金1240aがフィラメントの熱によって変形または溶融して、発光管が脱落するという問題が生じる場合があることがわかった。
【0010】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたものであり、発光効率の低下防止と安全性向上とを両立可能な渦巻形の蛍光ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明に係る蛍光ランプは、放電路が渦巻状でかつ、発光面が略平面状となるように形成された渦巻形発光管を備える蛍光ランプであって、前記発光管端部において、フィラメントに接続している一対のリード線と排気管とが封着され、前記封着が行われている封着部から露出した前記排気管の部分及び前記発光管端部が囲繞部材により囲繞され、かつ、前記フィラメントが当該囲繞範囲から外れた箇所に存在し、発光管軸方向における前記フィラメントと前記リード線との接続位置から前記囲繞部材までの距離が、7mm以上、10mm以下となっている構成を有する。
【発明の効果】
【0012】
上記構成、即ち、前記接続位置から前記囲繞部材までの距離が、7mm以上、10mm以下となっているので、排気管を囲繞している囲繞部材が、寿命末期にフィラメントの温度が高温となっても変形及び溶融するほど高温になることがなく、かつ、排気管の温度が最冷点部よりも下がりすぎない。
また、前記囲繞部材は、前記囲繞部材は、前記発光管端部を保持しているとしてもよい。
【0013】
これにより、寿命末期にフィラメントの温度が上昇しても、変形及び溶融する温度に達しない囲繞部材に発光管が保持されているため、発光管の脱落が防止される。
また、前記囲繞部材は、その外表面において、囲繞している発光管の軸方向に略直交する方向に、溝部または凹部が形成されていることが望ましい。
前記溝部または前記凹部により、囲繞部材において、発光管の軸方向への熱の移動が妨げられ、温度勾配が急峻となり、前記接続位置から遠ざかった離間部位の温度を低くでき、離間部位において変形及び溶融する温度未満に維持することができる。
【0014】
また、前記囲繞部材は、ポリエチレンテレフタレートまたは液晶ポリマーからなり、さらに、前記溝部及び前記凹部には、前記囲繞部材よりも耐熱特性に優れた材料が埋設されていることが望ましい。
これにより、囲繞部材の大部分を安価な材料で作成することができ、さらに、耐熱性のある樹脂が前記溝部または前記凹部に埋設されることによって、温度上昇時における剛性及び強度を局所的に高めることで、囲繞部材全体の変形を抑えることができる。
【0015】
つまり、コストアップを抑えながら囲繞部材を変形し難くすることができる。
また、前記囲繞部材は、前記発光管端部を保持し、さらにもう一方の発光管端部において、当該発光管端部を保持する保持部材が配設されており、前記発光面の略中央を横切って、前記囲繞部材と前記保持部材とを連結する橋脚部が配設され、前記橋脚部に電源接続端子付の口金が付設されているとしてもよい。
【0016】
これにより、変形及び溶融する温度に達しない囲繞部材より保持されているため、熱による影響による発光管の脱落の発生が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る蛍光ランプについて、図面を参照しながら説明する。
(構成)
図1(a)及び図1(b)は、本発明の実施形態に係る蛍光ランプを示す図である。
本発明の一実施形態における蛍光ランプ1は、店舗・住宅照明等の天井直付ダウンライト用、ウオールライト用等として用いられる管入力が20Wの蛍光ランプであって、発光管10と、前記発光管10を固定する保持部材20とを備えている。
【0018】
1.発光管
図2(a),図2(b)は、保持部材20に取り付けられる以前の状態の発光管10を示す図である。
発光管10は、管端部11a及び11bにそれぞれ配置されたタングステン製のフィラメントコイル電極13a及びフィラメントコイル電極13b間に形成される放電路が、管中央部12cを中心として略一平面を渦巻状に旋回するとともに、管端部11a,11bが管中央部12cを挟んで互いに対向する形状の屈曲ガラス管12を備え、屈曲ガラス管12の管中央部12cに折返し部を有する平面二重渦巻形状を有している。
【0019】
略対向して離間する屈曲ガラス管12の管端部11a及び11bにおいて、それぞれフィラメントコイル電極13aの両端を掴持する一対の電極リード線14a及び14bと、フィラメントコイル電極13bの両端を掴持する一対の電極リード線14c及び14dとが、その一部を露出させた状態で気密封着されている。
さらに、一方の管端部11aには、併せて排気管16(発光管排気後に、先端部封止)が封着されている。
【0020】
なお、前記一対の電極リード線14a及び14bは、ビーズガラスマウント15aを介して互いの位置が固定されており、またこれと同様に前記一対の電極リード線14c及び14dも、ビーズガラスマウント15bを介して互いの位置が固定されている。
さらに、屈曲ガラス管12は、その主要な内表面に、希土類蛍光体(不図示)が塗布され、さらに、5mgの水銀17の他に、緩衝ガスとして約350Paのアルゴン(Ar)が封入されている。
【0021】
発光管10の中央に位置する管中央部12cは、その表面が外方に突出した凸形状で構成されており、ここにランプ点灯時における最冷点部が形成されている。
より具体的には、管中央部12cにおける凸部のサイズおよび肉厚は、高いランプ効率を得られるように、例えば電極間に位置する発光管10の主要部内径を4mm以上、18mm以下に設定した場合、管中央部12cにおける最冷点温度Tcが40℃以上、55℃以下の範囲に収まるように設定される。
【0022】
また、屈曲ガラス管12の部材としてバリウム・ストロンチウムシリケートガラス(軟化点675℃の軟質ガラス)を用い、また希土類蛍光体として3種類の赤、緑及び青発光のY:Eu、LaPO:Ce、Tb及びBaMgAl1627:Eu、Mn蛍光体を混合したものを用いる。
管内に封入される水銀17は、水銀単体のほかに、例えば亜鉛水銀及び錫水銀や、更にはビスマス・インジウム水銀などのアマルガムの形態で封入されてもよく、また緩衝ガスとしてアルゴン、ネオン、クリプトン等の混合ガスが封入されてもよい。
【0023】
2.保持部材
図1(a)及び図1(b)に示すように保持部材20は、発光管10の中心を横切るように配置された長尺体であり、この長尺体の中央に4つの電源接続用の端子ピン付きで柱状の口金40が付設されたものであって、長尺体の両端部において発光管10の管端部11a及び11bを保持している。
【0024】
端子ピンは、保持部材の長さ方向と直交する方向で、かつ、発光管10とは、反対側に延びて設けられている。
保持部材20には、作業者が指で把持可能な保持取手27a及び保持取手27bが付設されている。
把持部である保持取手27a及び保持取手27bは、口金40のうち端子ピンが設けられた側とは反対方向の箇所に立設して設けられ、発光管10の発光面から突出するように延出して設けられている。
【0025】
以下、保持部材20の構成について詳細に説明する。
保持部材20は、図3に示すような保持部材本体21と図4に示すような保持部材蓋体22とが重ね合わされた状態で接合されている。
この保持部材20は、発光管10の管端部11a,11bを保持するための保持部材本体21と、発光管10に電力を供給する保持部材蓋体22とから構成されている。
【0026】
保持部材本体21は成形加工された樹脂部材であり、また、保持部材蓋体22は、電源接続用の端子ピン43a,43b,43c,43dがインサート成型された樹脂部材である。
保持部材本体21及び保持部材蓋体22の材料は、ポリエチレンテレフタレート(融点約250℃)である。
【0027】
保持部材本体21は、図3(a),図3(b)及び図3(c)に示すように、円盤状の中央円形部23aの外縁における2箇所から、中央円形部23aの中心を通る直線上に存するように矩形板状の翼部23b及び翼部23cが外方に向かって延出されてなる保持基板23に対して、翼部23b及び翼部23cの両端それぞれにおいて、管端部11a及び11bそれぞれの収容部としての管端保持部24a及び24bが配設されて構成されている。
【0028】
管端保持部24a及び管端保持部24bにおいて、それぞれZ1方向における底面が半円形に湾曲している溝部25a及び溝部25bが配されており、さらに、溝部25a及び溝部25bの長手方向の一方に、それぞれ開口部26a及び開口部26bを有している。
保持部材20として組み立てられた後の開口部26a及び開口部26bは、それぞれ管端部11a及び管端部11bの挿入先となり、この挿入の際、溝部25a及び溝部25bの内部は、固定用のシリコン樹脂により満たされることとなる。
【0029】
また、溝部25a及び溝部25bの内部において、それぞれ主面がXZ平面と略平行する壁部29a及び壁部29bが配されており、これら壁部29a及び壁部29bの中央には、X軸方向に伸びるスリットを有している。
開口部26a及び開口部26bは、それぞれ管端部11a及び管端部11bの挿入先となる。
【0030】
保持部材本体21の中央円形部23aのZ1方向側に存する面には、一対の保持取手27a及び保持取手27bが一体成型されている。
この保持取手27a及び保持取手27bは、発光管10の発光面から照射方向側に突出している。
また、翼部23b及び翼部23cのZ方向側に存する面には、管端部11a及び管端部11bからの一対の電極リード線14a及び電極リード線14bと、一対の電極リード線14c及び電極リード線14dとを口金40にそれぞれ配線するための一対の配線溝28a及び配線溝28bと、配線溝28c及び配線溝28dとが形成されている。
【0031】
一方、保持部材蓋体22は、図4(a),図4(b)及び図4(c)に示すように、保持基板蓋部29と、その両端に保持部材本体21の管端保持部24a及び管端保持部24bのZ軸方向に存する開口部に蓋をするように接合される管端蓋部30a及び管端蓋部30bとからなっている。
管端蓋部30a及び管端蓋部30bのそれぞれの端部には、XZ平面と略平行する主面に半円形の切欠部を有する当接板30c及び当接板30dが配されている。
【0032】
そして、保持基板蓋部29の中央円形部の上面には、一個の口金40、例えばJIS−GU10q型が付設されている。
口金40は、全体が円筒形状の外枠部41のZ方向上面において、略正方形の凹部42が配された上蓋部41aが形成され、さらに、凹部42に発光管10から延出された電極リード線14a,電極リード線14b、電極リード線14c及び電極リード線14dそれぞれの接続先となる端子ピン43a,43b,43c,43dが挿設されている。
【0033】
また、外枠部41の凹部42におけるX1方向側及びX方向側の各側面において、Z方向に延びる溝部44a及び溝部44bが形成されている。
これらの溝部44a及び溝部44bは、それぞれ上蓋部41aの上面から外枠部41の底部に達する範囲に形成されており、さらに、この範囲の中間に灯具ソケットの爪部と嵌合するための爪部44d及び爪部44eが形成されている。
【0034】
つまり、溝部44a及び溝部44bは、口金40を灯具ソケットに装着する際、ガイドの役割を果たし、また、爪部44d及び爪部44eは、装着が容易に解除されないように固定するために灯具に設けられたフック(不図示)と係合する。
3.発光管と保持部材との位置関係
図5は、図1における想定断面におけるX矢視図である。
【0035】
管端部11aは、保持部材本体21と保持部材蓋体22とが嵌合することによって、溝部25a及び当接板30c間に形成される略円形状に開口部に挿入されると共に、管端部11aにおける平板状に押しつぶされている封着部が壁部29aのスリット内に挿入されている。
さらに、当接板30cと壁部29aとの間には、シリコン樹脂49が充填されている。
【0036】
管端部11a内に配されたフィラメントコイル電極13aと電極リード線14a及び14bとの接続位置Cを基準とするY1方向における排気管16の端部までの距離L0は12mmである。
本実施の形態に係る蛍光ランプ1では、チップ封止された排気管16が配設されている管端部11aにおいて、上記接続位置Cを基準とするY1方向、即ち、発光管の軸方向における保持部材までの距離L1を7mm以上、10mm以下に設定している。
【0037】
また、排気管16が配設されていない管端部11bでは、上記距離L1に相当する距離が、7mm以上に設定され、上限が設定されていない。
ここで、距離L1に相当する距離とは、フィラメントコイル電極13bと電極リード線14c及び14dとの接続位置から発光管の軸方向における保持部材までの距離のことである。
(距離L1の設定根拠)
発明者らは鋭意検討の末、排気管16の温度を最冷点部の温度よりも高く設定し、かつ、蛍光ランプの寿命末期においても排気管16を覆っている保持部材20の変形及び溶融を防止することができる距離L1を見出した。
【0038】
以下に距離L1を7mm以上、10mm以下に設定した根拠は、以下に示す試験結果による。
(試験条件)
試験品仕様 :20W形蛍光ランプ
周囲温度 :25℃(無風)
入力電圧 :100V
電流 :130mA
抵抗 :1280Ω
保持部材本体の材料:ポリエチレンテレフタレート
保持部材蓋体の材料:ポリエチレンテレフタレート
(試験内容)
保持部材20と発光管10との係合位置をずらして、距離L1の長さを変化させ、排気管16と保持部材20の温度を測定した。
【0039】
実際には、発光管10は、保持部材20とのオーバーラップ代を所定量確保する必要があるため、保持部材20と発光管10との係合位置をずらすことは困難であるが、保持部材20の温度評価を行う上では、上述のように保持部材20と発光管10との係合位置をずらして距離L1の長さを変化させた場合であっても、保持部材20の温度のピーク点は、発光管10と接触している部位で、かつ、接続位置Cに最も近い部位、即ち、開口部26a及び開口部26bの近傍となり、これらの部位が最も熱に対して過酷となるため、開口部26a及び開口部26bよりもさらに熱流路の下流に存する部位の状態が変化しているとしても、保持部材20における温度ピーク点における温度に影響を及ぼさない。
【0040】
また、排気管16についても、保持部材20と発光管10との係合位置が変化しても、保持部材20で囲繞されている限り、放熱に関する条件はいずれの係合位置においても同等とみることができる。
(試験結果)
【0041】
【表1】

【0042】
ここで、排気管温度の判定において、○は排気管16の温度が最冷点部の温度よりも高くなっていることを示し、△は排気管16の温度が最冷点部の温度と同等になっていることを示し、×は排気管16の温度が最冷点部の温度よりも低くなっていることを示す。
また、保持部材温度の判定において、○は保持部材20の温度が溶融温度よりも低くなっていることを示し、△は保持部材20の温度が溶融温度と同等になっていることを示し、×は保持部材20の温度が溶融温度よりも高くなっていることを示す。
【0043】
排気管16の温度を測定する位置としては、排気管16において最も温度が低くなる箇所を検出してその箇所を測定点としており、通常は、チップ封止されている部位が最も温度が低くなるので、ここではチップ封止部を測定点とした。
また、保持部材20の温度を測定する位置としては、保持部材20において最も温度が高くなる箇所を検出してその箇所を測定点としており、通常は、保持部材20のフィラメント側の端部が最も温度が低くなるので、ここではフィラメント側の端部を測定点とした。
【0044】
上記試験結果より、距離L1を10mm以下にすることで排気管16の温度が最冷点部の温度よりも高くなることが判る。
また、距離L1を7mm以上にすることで保持部材20の温度が溶融温度よりも低くなることが判る。
つまり、距離L1を7mm以上、10mm以下に設定することで、排気管の温度を最冷点部の温度よりも高く設定し、かつ、蛍光ランプの寿命末期においても排気管を覆っている部材の変形及び溶融を防止することができる。
(管端部11bにおける距離L1に相当する距離について)
一方、排気管16が配設されていない管端部11bでは、排気管の温度を最冷点部の温度よりも高くするという制約がないため、上述の距離L1に相当する距離を7mm以上に設定し、蛍光ランプの寿命末期において排気管を覆っている部材の変形及び溶融を防止しさえすればよい。
【0045】
上述したように、保持部材20として組み立てられた後の開口部26a及び開口部26bは、それぞれ管端部11a及び管端部11bの挿入先となり、この挿入の際、溝部25a及び溝部25bの内部は、固定用のシリコン樹脂により満たされることとなる。
4.その他の具体的寸法形状の一例
以下、蛍光ランプ1の管入力を20Wとした場合における、蛍光ランプ1の具体的な形状寸法について説明する。
【0046】
まず、発光管10の各部位の寸法については、主要部の管外径を9.0mm、管内径を7.6mm、電極間距離Leを800mm、二重渦巻形状の渦巻の一般部位における屈曲ガラス管12の管壁同士の隙間Gbを2.0mm、発光管10の最大外囲径Dを120mmにそれぞれ設定した。
ここで、上述の二重渦巻形状の渦巻の一般部位とは、発光管10における、中央の折り返し部の近傍及び管端部11a,11bの近傍を含まない部位のことである。
【0047】
また、発光管10の管端部11a,11bの近傍における屈曲ガラス管12の管壁同士の隙間Geを4.0mmに設定した。これは、電極部封着工程において発光管10の管端部11a,11bが加熱される際、加熱を要しない部位へ熱が伝導するのを軽減し、熱の伝導に起因する不具合の発生を抑制して歩留まりを向上させるためである。
保持部材20は、保持部材本体21の中央円形部23aの直径を48mm、翼部23b及び翼部23cの長手方向における長さを40mm、幅を16mm、また管端保持部24a及び管端保持部24bにそれぞれ設けられた溝部25a及び溝部25bについては、溝の長さを18mm、溝の深さを12mmに設定した。
【0048】
そして、保持部材20に付設された保持取手27a及び保持取手27bは、板状であって、その長手方向と直交する平面と交錯して得られる断面が楕円状となっており、長手方向の長さを25mm、幅を15mm及び中央肉厚を2.5mmにそれぞれ設定し、保持取手27aと保持取手27bとの間隔を18mmに設定した。
また、保持部材蓋体22における、口金40の外枠部41については、その外径を48mm、高さを20mmに設定した。
(製造方法)
以下、本実施形態である蛍光ランプ1の組み立て工程について説明する。
【0049】
蛍光ランプ1の組立工程における実施手順を時系列で列挙する。
(1)管端部11a及び11bを、それぞれ管端保持部24a及び管端保持部24bに挿入すると共に、管端部11a及び11bの封着部を、それぞれ壁部29aおよび壁部29bのスリットに挿入した後、開口部26aと壁部29aとの間、開口部26bと壁部29bとの間にシリコン樹脂に注入するとともに、管中央部12cの底面と保持部材本体21における中央円形部23aのZ1方向側に存する面との間にシリコン樹脂を塗布する。
(2)次いで発光管10の電極リード線14a,電極リード線14b、電極リード線14c及び電極リード線14dを保持部材蓋体22の口金40の端子ピン43a,43b,43c,43dにカシメにより接続する。
(3)保持部材本体21と保持部材蓋体22を超音波融着や嵌め込みなどにより接合して保持部材20とすると共に、蛍光ランプ1の組立を完了する。
(性能確認)
量産試作された蛍光ランプ1の光学特性を測定したところ、管入力20Wにおいて光束1800lmでランプ効率90lm/Wという優れたランプ特性と、また約11000hrsの定格寿命時間が得られた(数値は、いずれも平均値)。
【0050】
なお、本実施形態である蛍光ランプ1の構成は、基本的に管入力が20Wの品種以外の、例えば発光管内径が4.0mm〜18.0mmの管入力8W〜80Wの品種に適用したときでも、同様の効果を発揮するものである。
以上のように、本実施の形態における蛍光ランプは、発光管端部を覆っている保持部材と、フィラメントコイル電極aと電極リード線14aの接続位置を基準とする保持部材までの距離を7mm以上、10mm以下に設定しているため、排気管の温度を最冷点部の温度よりも高く設定し、かつ、蛍光ランプの寿命末期においても排気管を覆っている部材の変形及び溶融を防止することができる。
【0051】
これにより、蛍光ランプの発光効率の低下防止と安全性向上とを両立することができる。
なお、本実施形態である蛍光ランプ1の構成は、基本的に管入力が20Wの品種以外の、例えば発光管内径が4.0mm〜18.0mmの管入力8W〜80Wの品種に適用したときでも、フィラメントコイル電極13aと電極リード線14a及び電極リード線14bの接続位置を基準とする保持部材までの距離を7mm以上、10mm以下に設定することにより、上記と同様の効果、即ち、排気管の温度を最冷点部の温度よりも高く設定し、かつ、蛍光ランプの寿命末期においても排気管を覆っている部材の変形及び溶融を防止することができる。
【0052】
何故なら、管入力が20W以外の蛍光ランプにおいも、管端部の温度を管入力20W仕様の管端部の温度と略同一温度となるように設計するからである。
また、本実施の形態では、溝部25a及び溝部25bの内部において、それぞれ主面がXZ平面と略平行する壁部29a及び壁部29bが配されており、これら壁部29a及び壁部29bの中央には、X軸方向に伸びるスリットを有しているとしたが、このような壁部29a及び壁部29bが無くてもよい。
【0053】
また、本実施の形態では、管端蓋部30a及び管端蓋部30bのそれぞれの端部には、XZ平面と略平行する主面に半円形の切欠部を有する当接板30c及び当接板30dが配されているとしたが、このような管端蓋部30a及び管端蓋部30bが無くてもよい。
また、本実施の形態では、保持部材本体21及び保持部材蓋体22の材料は、ポリエチレンテレフタレートであるとしたが、このような材料に限らず、液晶ポリマー(融点約350℃)などのポリエチレンテレフタレートよりも耐熱性に優れた材料を用いてもよい。
【0054】
また、本実施の形態における保持部材本体21は、樹脂材料として1つの材料、即ち、ポリエチレンテレフタレートのみが使用されていたが、部分的に異なる材料を組み合わせて使用してもよい。
(変形例1)
以下、異なる材料を組み合わせて保持部材本体を構成する例について説明する。
【0055】
図6は、保持部材本体124aの形状のみが蛍光ランプ1と異なっている蛍光ランプの変形例を示す図である。
ポリエチレンテレフタレートからなる保持部材本体124aの外側の壁面には、図6に示すように、保持部材本体124a内に挿入されることとなる発光管10の管端部11a(不図示)の管軸方向に直交する方向に溝31a,32a,33aが配されており、さらに、これらの溝のそれぞれに、シリコン樹脂40a,41a,42aが充填されている。
【0056】
なお、シリコン樹脂が熱により変形する温度は、ポリエチレンテレフタレートよりも高い。
溝31a,32a,33aの配設位置は、図6に示されている各寸法のうち、B0が20mm、B1,B2,B3がそれぞれ4mm、a1,a2,a3が、それぞれ1mmに設定されている。
【0057】
保持部材本体124aの外側の壁面の厚みが1.0mm、溝31a,32a,33aそれぞれの深さが0.5mmとなっている。
一般にシリコン樹脂は、ポリエチレンテレフタレートよりも耐熱強度が優れており、高温環境下で軟化し難いため、熱による影響で保持部材本体124aが軟化した場合であっても、保持部材本体124aの外側の壁面にスリット状に配されたシリコン樹脂40a,41a,42aが剛性を保っているので、保持部材本体124a全体の剛性が低下し難い。
【0058】
保持部材本体124aの放熱特性も保持部材本体21と略同一であるため、排気管16の温度も保持部材本体21の場合と略同一である。
(変形例2)
変形例1の保持部材本体124aにおいて、溝31a,32a,33aにそれぞれシリコン樹脂を充填するとしたが、シリコン樹脂を充填しない、つまり、溝の形状を維持したままでもよい。
【0059】
保持部材本体124aの外面に配された溝31a,32a,33aによって、これらの溝がない場合に比べ放熱が若干促進されるが、これらの溝が有底であり、内部の空気が外部に漏れることがなく、さらにフィラメントコイル電極13aから排気管16への熱の移動は、主に発光管10の屈曲ガラス管12を介して行われるため、これらの溝の有無による排気管16の温度への影響は小さく、これらの溝が配されていなかったときと同様に排気管16の温度を最冷点温度よりも高めることができる。
【0060】
一方、保持部材本体124aは、発光管10に接触し、かつ、フィラメントコイル電極13aに近い側(以下、「熱伝導上流側」という。)が温度ピーク点となるが、例えこの部位が熱で軟化した場合であっても、熱伝導上流側からフィラメントコイル電極から遠い側(以下、「熱伝導下流側」という。)にかけての温度勾配を急峻にすることにより、熱伝導下流側における保持部材本体124aの熱軟化を防止し、保持部材本体全体として変形を抑えることができる。
【0061】
これにより、発光効率の低下防止と安全性向上とを両立することができる。
その他に、4つの電源接続端子ピンの設置位置が管端部である場合や、ピンが別々に設置、横向きに設置されてもよい。また、保持部材は発光管端部に設置されてもよい。
なお、本実施の形態の蛍光ランプは、4つの電源接続用の端子ピンが口金の中央に集中的に配されたいわゆる片口金タイプの蛍光ランプであったが、端子ピンの配設位置は、本実施の形態に記載されている構成に限るものではない。
【0062】
例えば、電源接続用の端子ピンが、対をなす端子ピン同士がそれぞれ別の位置に配設されていてもよいし、また、端子ピンの方向が横向きとなっていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の蛍光ランプは、発光管の端部が囲繞されている渦巻形蛍光ランプを用いる照明装置に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態の蛍光ランプを示す図であって、(a)は正面方向から見た斜視図、(b)は背面方向からから見た斜視図
【図2】本発明の実施形態の発光管を示す図であって、(a)は平面断面図、(b)は正面図
【図3】本発明の実施形態の保持部材本体21を示す図であって、(a)は正面断面図、(b)は平面図、(c)は底面図
【図4】本発明の実施形態の保持部材蓋体22を示す図であって、(a)は正面断面図、(b)は平面図、(c)は底面図
【図5】本発明の実施形態の発光管と保持部材の接続箇所の断面図
【図6】本発明の実施形態の発光管と保持部材の変形例を示す図
【図7】従来の蛍光ランプを示す図であって、(a)は底面図、(b)は平面図、(c)は正面図、(d)は側面図
【図8】従来の蛍光ランプを示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図
【符号の説明】
【0065】
1 蛍光ランプ
10 発光管
11a,11b 管端部
12 屈曲ガラス管
12c 管中央部
13a,13b フィラメントコイル電極
14a,14b,14c,14d 電極リード線
15a,15b ビーズガラスマウント
16 排気管
17 水銀
20 保持部材
21 保持部材本体
22 保持部材蓋体
23 保持基板
23a 中央円形部
23b,23c 翼部
24a,24b 管端保持部
25a,25b 溝部
26a,26b 開口部
27a,27b 保持取手
28a,28b,28c,28d 配線溝
29 保持基板蓋部
29a,29b 壁部
30a,30b 管端蓋部
30c,30d 当接板
31a,32a,33a 溝
40 口金
40a,41a,42a シリコン樹脂
41 外枠部
41a 上蓋部
42 凹部
43a,43b,43c,43d 端子ピン
44a,44b 溝部
44d,44e 爪部
49 シリコン樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電路が渦巻状でかつ、発光面が略平面状となるように形成された渦巻形発光管を備える蛍光ランプであって、
前記発光管端部において、フィラメントに接続している一対のリード線と排気管とが封着され、
前記封着が行われている封着部から露出した前記排気管の部分及び前記発光管端部が囲繞部材により囲繞され、かつ、前記フィラメントが当該囲繞範囲から外れた箇所に存在し、
発光管軸方向における前記フィラメントと前記リード線との接続位置から前記囲繞部材までの距離が、7mm以上、10mm以下となっていることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
前記囲繞部材は、前記発光管端部を保持していることを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプ。
【請求項3】
前記囲繞部材は、その外表面において、囲繞している発光管の軸方向に略直交する方向に、溝部または凹部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の蛍光ランプ。
【請求項4】
前記囲繞部材は、ポリエチレンテレフタレートまたは液晶ポリマーからなり、
さらに、前記溝部及び前記凹部には、前記囲繞部材よりも耐熱特性に優れた材料が埋設されていることを特徴とする請求項3記載の蛍光ランプ。
【請求項5】
前記囲繞部材は、前記発光管端部を保持し、さらにもう一方の発光管端部において、当該発光管端部を保持する保持部材が配設されており、
前記発光面の略中央を横切って、前記囲繞部材と前記保持部材とを連結する橋脚部が配設され、
前記橋脚部に電源接続端子付の口金が付設されていることを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−273331(P2007−273331A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98944(P2006−98944)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】