説明

蛍光ランプ

【課題】コストの上昇を回避しつつ、フィラメントの過熱による不具合を解決する。
【解決手段】内部に放電媒体が封入されたガラスバルブ2と、ガラスバルブ2の端部に設けられたステム6と、ステム6を貫通し、一端がガラスバルブ2の内部に配置され、他端がガラスバルブ2の外部に配置された一対のリード線7、7と、一対のリード線7、7の、ガラスバルブ2の内部に配置されている端部間に掛け渡されたフィラメント8と、一端がステム6に埋設されるとともに、他端がリード線7、7とは非接触な状態でガラスバルブ2の内部に配置された線材9、9とを有し、線材9、9は、ステム6とは異なる熱膨張係数を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な蛍光ランプは、ステムに支持された一対のリード線と、それらリード線間に掛け渡されたフィラメントとを含む電極を備えている。かかる電極を備えた蛍光ランプは、長期間に亘って使用されると、上記フィラメントが断線して寿命に至る。このとき、フィラメントの一部に電子が集中的に衝突して該フィラメントの温度が異常に高くなる。このため、フィラメントの近傍に配置されている口金などの部品が熱で溶融したり、ガラスバルブが破損したりすることがある。この不具合は、蛍光ランプを高周波点灯する場合に、その発生の確率が高い。
【0003】
そこで、上記不具合を解決すための様々な方法が提案されている。例えば、特許文献1には、透光性のガラス管からなるバルブと、フィラメント電極、このフィラメント電極の両端部を支持する一対のリード線およびこのリード線を封着するステムとを有し、バルブの少なくとも一端部に封装されたマウントと、リード線に接続されるとともに、少なくとも一部がステムに封着されたステムよりも熱膨張係数が大きい線材からなるダミー線と、バルブ内に封入された放電媒体とを具備していることを特徴とする蛍光ランプが記載されている。
【0004】
特許文献1によれば、上記構成を有する蛍光ランプでは、フィラメント電極が異常温度に上昇すると、この異常温度が主としてリード線を介してダミー線の一端側に伝熱され、さらにダミー線の他端側に伝熱されて他端側の温度が上昇する。そして、ステムも主としてリード線やダミー線から伝熱されて熱膨脹していく。このとき、ダミー線は、ステムよりも熱膨張係数が大きいので、ステムよりも大きく熱膨張するようになる。そして、熱膨脹が大きくなっていくと、やがて、ダミー線およびステムの封着部においてクラックが発生し、このクラックは次第に大きくなり、ステムの内面と外面を連通させるようになる。すなわち、バルブにリークが発生する。バルブにリークが発生すると、フィラメント電極間の放電が停止する。これにより、フィラメント電極は加熱されなくなり、バルブやその端部に装着された口金、あるいはランプソケットや照明装置等が溶融することが未然に防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−127632号公報(請求項1、段落[0040])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている蛍光ランプでは、フィラメントの過熱による上記不具合は解決されている。しかし、特許文献1に記載されている蛍光ランプでは、ダミー線がリード線に接続されているため、製造工程における加工に手間が掛かりコストの上昇を招く。
【0007】
本発明の目的は、コストの上昇を回避しつつ、フィラメントの過熱による不具合を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
内部に放電媒体が封入されたガラスバルブと、前記ガラスバルブの端部に設けられたステムと、前記ステムを貫通し、一端が前記ガラスバルブの内部に配置され、他端が前記ガラスバルブの外部に配置された一対のリード線と、前記一対のリード線の、前記ガラスバルブの内部に配置されている端部間に掛け渡されたフィラメントと、一端が前記ステムに埋設されるとともに、他端が前記リード線とは非接触な状態で前記ガラスバルブの内部に配置された線材とを有し、前記線材は、前記ステムとは異なる熱膨張係数を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
コストの上昇を回避しつつ、フィラメントの過熱による不具合を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の蛍光ランプの実施形態の一例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の蛍光ランプの実施形態の一例について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る蛍光ランプ1の一方の端部の断面図である。
【0012】
本実施形態に係る蛍光ランプ1は、環形の蛍光ランプ(サークライン)である。蛍光ランプ1は、環状に丸められた(ベンディング成形された)ガラスバルブ2を有し、ガラスバルブ2の隣接する2つの端部には、それら端部を跨ぐようにして不図示の口金が装着されている。口金には、接続端子が設けられており、接続端子は後述するリード線7、7に接続されている。
【0013】
ガラスバルブ2は、透光性のガラス管であり、両端がマウント3によって気密に封止されている。また、ガラスバルブ2の内面には不図示の蛍光体層が形成されている。さらに、ガラスバルブ2の内部には、所定量の水銀とアルゴンなどの希ガスからなる放電媒体が封入されている。本実施形態では、鉛(Pb)の含有量が1000ppm以下で、軟化温度が630℃以上の組成を有するガラスによってガラスバルブ2が形成されている。また、ガラスバルブ2の形状は特定の形状に限定されるものでなく、例えば、直管型、環型、U字型などのいずれの形状であってもよい。
【0014】
マウント3は、ガラスバルブ2と同一の組成を有し、一体成形されたフレア部5とステム6とを有する。マウント3はガラスバルブ2を封止するとともに電極4を支持している。電極4は、ステム6を貫通する一対のリード線7,7と、一対のリード線7、7の間に掛け渡されたフィラメント8とを有している。より具体的には、一対のリード線7,7はステム6を貫通しており、ステム6を貫通してガラスバルブ2の内部に臨むリード線7、7の一方の端部間にフィラメント8が掛け渡されている。
【0015】
各リード線7、7は、ガラスバルブ2の内側に突出しているインナーリード部と、ステムの外側に突出しているアウターリード部と、インナーリード部とアウターリード部とをつなぐ封着部とから構成されている。本実施形態では、ステム6と近似した熱膨張係数を有するジュメット線によって封着部が形成されている。具体的には、ステム6を貫通しているジュメット線の両端に、インナーリード部およびアウターリード部を構成する線材がそれぞれ溶接されている。すなわち、フィラメント8は、インナーリード部の端部間に掛け渡されている。ここで、フィラメント8は、タングステンワイヤからなり、2重コイル状またはトリプルコイル状に形成されている。
【0016】
一対のリード線7、7の間には、本発明の特徴である一対の線材9、9がリード線7、7と平行に配置されている。各線材9は、その一端がステム6に埋設されて支持されており、他端はガラスバルブ2の内部に臨んでいる。ここで、ガラスバルブ2の内部に臨んでいる線材9、9の端部は、リード線7、7を含む如何なる部材とも接触していない。各線材9、9は、ステム6とは異なる熱膨張係数を有する材料(本実施形態ではニッケル(N))からなる。線材9の本数は2本に限られるものではなく、1本でも3本以上であってもよい。
【0017】
さらに、マウント3(ステム6)には、ガラスバルブ2内の排気を行うとともに放電媒体の封入を行う排気管10が設けられている。もっとも、排気管10は、ガラスバルブ2の両端に設けられたマウント3のうち、一方のマウント3に設けられていればよい。ただし、両方のマウントに排気管が設けられた蛍光ランプが本発明の範囲から除外されるものではない。
【0018】
上記構成を有する蛍光ランプ1は、例えば高周波点灯装置に接続されて使用される(点灯される)。この際、長期間に亘り点灯されて寿命末期になり、フィラメント8の温度が上昇すると、線材9、9およびステム6の温度も上昇してそれぞれが熱膨脹する。このとき、線材9、9とステム6の熱膨張係数が異なるので、線材9、9とステム6との接触部分においてクラックが発生する。発生したクラックは次第に成長し、最終的にはステム6の内面と外面を連通させるようになる。すなわち、ガラスバルブ2にリークが発生する。ガラスバルブ2にリークが発生すると、フィラメント8間の放電が停止するので、フィラメント8を含む電極4の過熱が未然に防止される。
【符号の説明】
【0019】
1 蛍光ランプ
2 ガラスバルブ
3 マウント
4 電極
5 フレア部
6 ステム
7 リード線
8 フィラメント
9 線材
10 排気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に放電媒体が封入されたガラスバルブと、
前記ガラスバルブの端部に設けられたステムと、
前記ステムを貫通し、一端が前記ガラスバルブの内部に配置され、他端が前記ガラスバルブの外部に配置された一対のリード線と、
前記一対のリード線の、前記ガラスバルブの内部に配置されている端部間に掛け渡されたフィラメントと、
一端が前記ステムに埋設されるとともに、他端が前記リード線とは非接触な状態で前記ガラスバルブの内部に配置された線材とを有し、
前記線材は、前記ステムとは異なる熱膨張係数を有することを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
前記線材が前記一対のリード線の間に、それらリード線と平行に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプ。
【請求項3】
前記線材を2本以上有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の蛍光ランプ。
【請求項4】
前記ステムは、鉛の含有量が1000ppm以下、かつ、軟化温度が630℃以上の組成を有するガラスからなり、前記線材はニッケルからなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の蛍光ランプ。

【図1】
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