説明

蛍光体の製造方法

【課題】液相法を用いて生成される蛍光体前駆体を焼成することによって得られる蛍光体の製造方法において、粒子径が小さく、且つ粒子径分布が狭く、さらには発光強度が良好な蛍光体の製造方法を提供する。
【解決手段】液相中で蛍光体前駆体を生成させた後、該蛍光体前駆体を焼成することにより蛍光体を得る蛍光体の製造方法において、蛍光体前駆体の生成開始から終了までの時間、pH7からpH14の範囲でpH制御を2回以上行いながら蛍光体前駆体を生成させる工程を有することを特徴とする蛍光体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液相法を用いて生成された蛍光体前駆体及び該蛍光体前駆体を焼成して製造された蛍光体、さらには該蛍光体前駆体生成装置に関する。さらに、本発明は、プラズマディスプレイパネルなどの各種のフラットパネルディスプレイ、陰極線管、蛍光ランプ、放射線増感紙、インクジェット用インク、電子写真トナー、ハロゲン化銀写真材料に好適に用いることができる蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化社会の進展の中でプラズマディスプレイパネルなどの各種のフラットパネルディスプレイやカラーブラウン管などのカラー陰極線管は、ハイビジョン用ブラウン管や高精細ディスプレイ管に象徴されるように大画面化、高コントラスト化が進むとともに、高精細化された画面を形成し得るように、より細かい画素をフェースプレート上に形成することが必要になっている。このため、蛍光体は発光輝度向上やフェースプレート面との付着力の向上など様々な特性の向上が求められている。
【0003】
これまでのフラットパネルディスプレイ用蛍光体はカラー陰極線管用に開発された粒径2〜7μm程度の粒子が用いられており、励起波長も各フラットパネルディスプレイ用に最適化されたものの開発が進んでいないため、様々な特性の向上が求められている。特に、今後のディスプレイの高精細化に伴って小粒径且つ単分散で高い輝度を持った蛍光体が求められている。
【0004】
一般的な蛍光体の製造方法として、蛍光体母体を構成する元素を含む化合物と賦活剤元素を含む化合物とを所定量混合した後に焼成して固体間反応を行う固相法と、蛍光体母体を構成する元素を含む溶液と賦活剤元素を含む溶液を共に混合して得られた蛍光体前駆体沈殿を固液分離してから焼成を行う液相法がある。
【0005】
蛍光体の発光効率と収率を高めるためには、蛍光体組成をできるだけ化学量論的な組成に近づける必要があるが、固相法では純粋に化学量論的な組成を有する蛍光体を製造することは難しい。固相法は固体間反応であるために、反応しない余剰の不純物や反応によって生ずる副塩等が残留することが往々にして起こり、化学量論的に高純度な蛍光体を得にくい。
【0006】
また、固相法によって得られる蛍光体は、比較的広い粒度分布を有し、特に多量の融剤を用いて焼成するときには、正規分布に近い広い粒度分布を有する蛍光体が得られる。そして、そういった蛍光体を用いて蛍光膜を形成するときには、輝度が高く、緻密な蛍光膜を得るためには、微細粒子や粗大粒子が多量に存在するのは好ましくない。これらの微細粒子や粗大粒子は必要に応じて分級操作により除去されるが、分級操作は作業性が悪く、収率を低下させ、特に、粗大粒子の形成は所望粒径の粒子の収率に大きく影響し、また、必ずしも確実に除去することができない。したがって、高精細陰極線管用蛍光膜の形成には、不要な微細粒子や粗大粒子、特に粗大粒子を焼成時に生成させないことが重要となる。
【0007】
また、固相法によって得られる蛍光体は、粒径が小さくなるほど、発光効率、発光輝度が低下するため、1μm以下で十分な発光効率、発光輝度を持った蛍光体はほとんど供給されてないのが実情である。粒径1μm以下の蛍光体に関する製造方法もいくつか開示されているが、特許文献1等のように分級操作により1μm以下の粒子を得ており、分級操作による蛍光体輝度の低下と収率の低下という問題が生じる。
【0008】
また、蛍光体製造の各工程において、凝集は粒子の粒径を増大させてしまい、蛍光体の微粒化に対して大きな妨げとなっていたが、これを防止する観点での発明は少なく、特許文献2等に焼結防止剤の記述が存在するのみであり、その効果については十分とはいえない。
【0009】
一方、液相法により蛍光体を製造する場合は、先ず、蛍光体前駆体である沈殿物を生成させた後、この蛍光体前駆体を焼成して蛍光体とする。液相法では、蛍光体を構成する元素イオンにより反応が生じるため、化学量論的に高純度な蛍光体が得やすいものの蛍光体の粒径や粒子形状、粒子径分布、発光特性などの諸特性は蛍光体前駆体の性状に大きく左右される。そのため、所望の蛍光体を得るには、蛍光体前駆体の生成時における粒子形状や粒子径分布の制御、不純物排除等に配慮することが必要である。
【0010】
それ故、液相法による蛍光体の製造に関する改良法が数多く提案されている。例えば特許文献3には蛍光ランプ用の希土類燐酸塩蛍光体の製造方法について、希土類元素のイオン及び燐酸イオンが共存する溶液をpH1.0から2.0に制御された水溶液中に添加して希土類燐酸塩蛍光体前駆体を生成する旨が開示されている。また、特許文献4には希土類酸化物の製造方法について、希土類イオンと蓚酸イオンとの反応を−5℃以上20℃以下に保った状態で反応させて球状希土類酸化物を生成する旨が開示されている。しかしながら、これらの方法では、固相法で得られる蛍光体と比べると高純度組成が得られる、球状粒子が得られる等のメリットがあるものの、小粒径と高い輝度を両立する蛍光体を得るにはまだ不十分であった。
【特許文献1】特開平8−81678号公報
【特許文献2】特開平6−306358号公報
【特許文献3】特開2001−172627号公報
【特許文献4】特開平9−71415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、液相法を用いて生成される蛍光体前駆体を焼成することによって得られる蛍光体の製造方法において、粒子径が小さく、且つ粒子径分布が狭く、さらには発光強度が良好な蛍光体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記目的を達成するために液相法による蛍光体の製造方法について鋭意検討した結果、この蛍光体前駆体の生成条件をコントロールすることによって、粒子径が小さく、且つ粒子径分布が狭い発光強度の良好な蛍光体が製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
本発明の構成は次のとおりである。
【0014】
(1) 液相中で蛍光体前駆体を生成させた後、該蛍光体前駆体を焼成することにより蛍光体を得る蛍光体の製造方法において、蛍光体前駆体の生成開始から終了までの時間、pH7からpH14の範囲でpH制御を2回以上行いながら蛍光体前駆体を生成させる工程を有することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【0015】
(2) 前記蛍光体前駆体を生成させる工程をバインダー存在下で行うことを特徴とする(1)に記載の蛍光体の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
粒子径が小さく、且つ粒子径分布が狭く、さらには発光強度が良好な蛍光体の製造方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0018】
蛍光体前駆体とは、蛍光体の中間生成物であり、この蛍光体前駆体を所定の温度で焼成することにより蛍光体が得られる。
【0019】
本発明に用いられる蛍光体の製造方法について説明する。
【0020】
本発明者等は、蛍光体前駆体の生成条件、特に蛍光体前駆体の生成開始から終了までの時間におけるpH、温度、蛍光体前駆体構成元素のイオン濃度、バインダー等の諸条件をコントロールすることによって、粒子径が小さく且つ粒子径分布が狭い発光強度の優れた蛍光体を製造出来ることを見出した。本発明の蛍光体の製造方法としては、蛍光体母体を構成する元素を含む溶液と賦活剤元素を含む溶液を共に混合して溶液中で蛍光体前駆体の沈殿を生成させ、この蛍光体前駆体を固液分離してから焼成する液相法が好ましく用いられる。
【0021】
本発明においては、蛍光体前駆体の沈殿方法に特に限定はなく、反応晶析法や共沈法、Sol−Gel法等のいずれの方法によっても好ましく生成することが出来る。また、蛍光体の種類や所望の特性を得るために、原料溶液等の添加速度や添加位置、撹拌条件などは適宜調整することが好ましい。
【0022】
図1に本発明における蛍光体前駆体の生成装置の概念図の一例を示すが、本発明はこの一例に限定されず、あらゆる態様が好ましく用いられる。図1において、容器1は最初に原料溶液[A]を含有している。撹拌機構2は、回転可能な軸に翼が付設されたものとして図示されているが、この機構を任意の常用の形状とすることが可能である。撹拌機構2を運転しながら、注加ノズル3を通して蛍光体原料溶液[B]を容器1に、そしてこれと同時に注加ノズル4を通して蛍光体原料溶液[C]を容器1にそれぞれ注加する。このとき、センサー6により反応に伴って変化する容器1内の特性値を測定し、所望の特性値になるように調整液添加装置等(図示せず)に必要な添加量をフィードバックして注加ノズル5から調整液を容器1に注加することでリアルタイムに特性値を制御する。特性値は原料溶液の添加時間中は変更しなくてもよいし、必要に応じて適宜変更してもよい。原料溶液の添加終了後、一定時間熟成処理を施して蛍光体前駆体の生成が終了する。熟成時においては、pH、温度、イオン濃度等の特性値は原料溶液添加時と同じでもよく、また、必要に応じて適宜変更してもよい。
【0023】
本発明でいう原料溶液とは、蛍光体の構成元素イオンまたは溶媒またはバインダーのうちの少なくとも一種類が含有されているものをいう。
【0024】
本発明では、蛍光体前駆体の生成開始から終了までの時間の少なくとも一部をpH制御しながら蛍光体前駆体を生成させることが好ましく、さらにはpH値をpH7からpH14の範囲で制御しながら蛍光体前駆体を生成することが好ましく、pH制御を少なくとも2回以上行って蛍光体前駆体を生成することが最も好ましい態様である。
【0025】
また、蛍光体前駆体の生成開始から終了までの時間の少なくとも一部を温度制御しながら蛍光体前駆体を生成することが好ましく、さらには温度を30℃から70℃の範囲で制御しながら蛍光体前駆体を生成することが好ましく、温度制御を少なくとも2回以上行って蛍光体前駆体を生成することが最も好ましい態様である。
【0026】
さらに、蛍光体前駆体の生成開始から終了までの時間の少なくとも一部を蛍光体の構成元素の少なくとも一種類のイオン濃度を制御しながら蛍光体前駆体を生成することが好ましく、イオン濃度を1×10-6mol/lから1×102mol/lの範囲で制御しながら蛍光体前駆体を生成することがより好ましく、イオン濃度制御を少なくとも2回以上行って蛍光体前駆体を生成することが最も好ましい態様である。
【0027】
本発明は、注加ノズル数は3系統に限定されるものではなく、製造すべき蛍光体の種類や特性に応じて適宜増減することができる。本発明は、センサーに用いられるものとしてpHセンサーを用いることが好ましい。また、別の態様では、センサーに用いられるものとして温度センサーを用いることが好ましい。さらに別の態様では、センサーに用いられるものとして蛍光体の構成元素の少なくとも一種類のイオン濃度を測定するイオン濃度センサーを用いることが好ましい。本発明の好ましい態様では、センサーは1種類に限定されるものではなく、少なくとも2種類以上使用する。蛍光体の種類や特性に応じて、pH、温度、イオン濃度、を適宜組み合わせて使用することができる。最も好ましくは全てのセンサーを用いて蛍光体前駆体を生成することである。
【0028】
また、予め別の容器で生成した結晶核を容器1に注加してもよく、さらには別の混合機で連続的に反応を生じさせた結晶核を連続的に容器1に供給する態様であってもよい。
【0029】
本発明は、バインダーの存在下で蛍光体前駆体を生成することが好ましい。本発明におけるバインダーは、粒子同士の凝集を防ぐために機能しており、特開2001−329262に開示されている晶癖制御に用いられている有機ポリマーとは明らかに機能が異なる。
【0030】
本発明におけるバインダーとしては、天然、合成を問わず公知の高分子化合物を用いることができる。その際、バインダーの平均分子量は、10,000以上が好ましく、10,000以上300,000以下がより好ましく、10,000以上30,000以下が特に好ましい。また、本発明におけるバインダーは、タンパク質が好ましく、ゼラチンが特に好ましい。また、単一の組成である必要はなく、各種バインダーを混合してもよい。
【0031】
本発明においては、蛍光体前駆体の固液分離方法に特に限定はなく、遠心分離、吸引濾過法等が好ましく用いられる。また、蛍光体前駆体溶液を乾燥機または噴霧熱分解炉のような焼成炉で直接処理してもよい。また、本発明においては、蛍光体前駆体の乾燥方法に特に限定はなく、真空乾燥、気流乾燥、流動層乾燥、噴霧乾燥等あらゆる方法が用いられる。
【0032】
さらに、本発明において、蛍光体前駆体の焼成温度、焼成時間に特に限定はなく、蛍光体の種類に応じて適宜選択することができる。焼成時のガス雰囲気は酸化性雰囲気、還元性雰囲気、または不活性雰囲気のいずれでもよく、目的に応じて適宜選択できる。また、焼成装置としては、特に限定はなく、公知の焼成装置を使用することができる。例えば、箱型炉や坩堝炉、ロータリーキルン、噴霧熱分解炉等が好ましく用いられる。
【0033】
本発明においては、燒結防止剤を添加しても添加しなくともよい。添加する場合は蛍光体前駆体生成時にスラリーとして添加してもよく、また、粉状のものを乾燥済蛍光体前駆体と共に混合して焼成する方法でも好ましく用いられる。さらに燒結防止剤に特に限定はなく、蛍光体の種類、焼成条件によって適宜選択される。例えば、蛍光体の焼成温度域によって800℃以下での焼成にはTiO2等の金属酸化物が、1,000℃以下での焼成にはSiO2が、1,700℃以下での焼成にはAl23が好ましく使用される。本発明においては、焼成後の蛍光体を洗浄することが望ましいが、必ずしも洗浄する必要はない。
【0034】
本発明に係る蛍光体は、平均粒径が1.0μm以下であることが好ましく、0.8μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましく、0.01μm以上0.3μm以下であることが最も好ましい。ここで示す平均粒径とは、粒子が立方体或いは八面体のいわゆる正常晶である場合には、粒子の稜の長さをいう。また、正常晶でない場合、例えば球状、棒状、或いは平板状の粒子の場合には、粒子の体積と同等な球を考えたときの直径を示す。
【0035】
本発明において、蛍光体粒子の形状に特に限定はないが、立方体形状が好ましく、さらには八面体形状が好ましく、球形状がより好ましい態様である。
【0036】
本発明の蛍光体は、粒径分布の変動係数が100%以下であることが好ましく、50%以下であることがさらに好ましく、30%以下であることが最も好ましい。ここで粒子サイズの変動係数とは、下式によって定義される値である。
【0037】
(粒子サイズの標準偏差/粒子サイズの平均値)×100=粒子分布の広さ(変動係数)[%]
本発明において、蛍光体は、必要に応じて表面改質剤や界面活性剤、微粒子シリカゲル、エアロジル、アルミナ等のマット化剤等により表面改質や分散性の向上を図ってもよい。
【0038】
本発明に係る無機蛍光体粒子の組成は例えば、特開昭50−6410号、同61−65226号、同64−22987号、同64−60671号、特開平1−168911号等に記載されており、特に制限はないが、結晶母体であるY22S、Zn2SiO4、Ca5(PO43Cl等に代表される金属酸化物及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物に、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを賦活剤または共賦活剤として組み合わせたものが好ましい。
【0039】
結晶母体の好ましい例としては、例えば、ZnS、Y22S、Y3Al512、Y2SiO5、Zn2SiO4、Y23、BaMgAl1017、BaAl1219、(Ba,Sr,Mg)O・BaAl23、(Y,Gd)BO3、YO3、(Zn,Cd)S、SrGa24、SrS、GaS、SnO2、Ca10(PO46(F,Cl)2、(Ba,Sr)(Mg、Mn)Al1017、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2、(La,Ce)PO4、CeMgAl1119、GdMgB510、Sr227、Sr4Al1425等が挙げられる。
【0040】
以上の結晶母体及び賦活剤または共賦活剤は、同族の元素と一部置き換えたものでも構わないし、とくに元素組成に制限はない。
【0041】
以下に無機蛍光体粒子の化合物例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0042】
[青色発光無機蛍光化合物]
(BL−1) Sr227:Sn4+
(BL−2) Sr4Al1425:Eu2+
(BL−3) BaMgAl1017:Eu2+
(BL−4) SrGa24:Ce3+
(BL−5) CaGa24:Ce3+
(BL−6) (Ba,Sr)(Mg,Mn)Al1017:Eu2+
(BL−7) (Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2:Eu2+
(BL−8) ZnS:Ag
(BL−9) CaWO4
(BL−10) Y2SiO5:Ce3+
(BL−11) ZnS:Ag,Ga,Cl
(BL−12) Ca259Cl:Eu2+
(BL−13) BaMgAl1423:Eu2+
(BL−14) BaMgAl1017:Eu2+,Tb3+,Sm2+
(BL−15) BaMgAl1423:Sm2+
(BL−16) Ba2Mg2Al1222:Eu2+
(BL−17) Ba2Mg4Al818:Eu2+
(BL−18) Ba3Mg5Al1835:Eu2+
(BL−19) (Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al1017:Eu2+
[緑色発光無機蛍光体粒子]
(GL−1) (Ba,Mg)Al1627:Eu2+,Mn2+
(GL−2) Sr4Al1425:Eu2+
(GL−3) (Sr,Ba)Al2Si28:Eu2+
(GL−4) (Ba,Mg)2SiO4:Eu2+
(GL−5) Y2SiO5:Ce3+,Tb3+
(GL−6) Sr227−Sr225:Eu2+
(GL−7) (Ba,Ca,Mg)5(PO43Cl:Eu2+
(GL−8) Sr2Si382SrCl2:Eu2+
(GL−9) Zr2SiO4,MgAl1119:Ce3+,Tb3+
(GL−10) Ba2SiO4:Eu2+
(GL−11) ZnS:Cu,Al
(GL−12) (Zn,Cd)S:Cu,Al
(GL−13) ZnS:Cu,Au,Al
(GL−14) Zn2SiO4:Mn2+
(GL−15) ZnS:Ag,Cu
(GL−16) (Zn,Cd)S:Cu
(GL−17) ZnS:Cu
(GL−18) Gd22S:Tb3+
(GL−19) La22S:Tb3+
(GL−20) Y2SiO5:Ce3+,Tb3+
(GL−21) Zn2GeO4:Mn2+
(GL−22) CeMgAl1119:Tb3+
(GL−23) SrGa24:Eu2+
(GL−24) ZnS:Cu,Co
(GL−25) MgO・nB23:Ce3+,Tb3+
(GL−26) LaOBr:Tb3+,Tm3+
(GL−27) La22S:Tb3+
(GL−28) SrGa24:Eu2+,Tb3+,Sm2+
[赤色発光無機蛍光体粒子]
(RL−1) Y22S:Eu3+
(RL−2) (Ba,Mg)2SiO4:Eu3+
(RL−3) Ca28(SiO462:Eu3+
(RL−4) LiY9(SiO462:Eu3+
(RL−5) (Ba,Mg)Al1627:Eu3+
(RL−6) (Ba,Ca,Mg)5(PO43Cl:Eu3+
(RL−7) YVO4:Eu3+
(RL−8) YVO4:Eu3+,Bi3+
(RL−9) CaS:Eu3+
(RL−10) Y23:Eu3+
(RL−11) 3.5MgO,0.5MgF2GeO2:Mn4+
(RL−12) YAlO3:Eu3+
(RL−13) YBO3:Eu3+
(RL−14) (Y,Gd)BO3:Eu3+
等。
【0043】
以下で、本発明に係る蛍光体の用途を例示するが、これに限定されるものではない。本発明に係る無機蛍光体は、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションディスプレイ、紫外発光有機エレクトロルミネッセンスディスプレイをはじめとするフラットパネルディスプレイ用蛍光体、カラー陰極線管用蛍光体、インクジェット用インク、電子写真トナー、ハロゲン化銀写真材料等の色材・メディア用蛍光体、増感紙用蛍光体として用いることが出来る。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
〈蛍光体1の製造〉
水1,000mlを溶液[A]とした。水500mlにイットリウムのイオン濃度が0.4659mol/l、ガドリニウムのイオン濃度が0.2716mol/l、ユウロピウムのイオン濃度が0.0388mol/lとなるように硝酸イットリウム六水和物、硝酸ガドリニウム、硝酸ユウロピウム六水和物を溶解し溶液[B]とした。水500mlにホウ素のイオン濃度が0.7763mol/lとなるようにホウ酸を溶解し溶液[C]とした。
【0046】
図1の容器1に溶液[A]を入れ、撹拌機構2を用いて撹拌を行った。その状態で溶液[B]、溶液[C]をそれぞれ溶液[A]の入った容器1の注加ノズル3、4より100ml/minの速度で等速添加を行った。添加後45分間熟成を行い、蛍光体前駆体1を得た。その後、蛍光体前駆体1を濾過乾燥し乾燥蛍光体前駆体1を得た。さらに、乾燥蛍光体前駆体1を1,400℃酸化条件下で2時間焼成し蛍光体1を得た。
【0047】
〈蛍光体2の製造〉
水1,000mlに硝酸を加えてpH5.5とした溶液を溶液[A]とした。水500mlにイットリウムのイオン濃度が0.4659mol/l、ガドリニウムのイオン濃度が0.2716mol/l、ユウロピウムのイオン濃度が0.0388mol/lとなるように硝酸イットリウム六水和物、硝酸ガドリニウム、硝酸ユウロピウム六水和物を溶解し溶液[B]とした。水500mlにホウ素のイオン濃度が0.7763mol/lとなるようにホウ酸を溶解し溶液[C]とした。
【0048】
図1の容器1に溶液[A]を入れ、撹拌機構2を用いて撹拌を行った。その状態で溶液[B]、溶液[C]をそれぞれ溶液[A]の入った容器1の注加ノズル3、4より100ml/minの速度で等速添加して白色沈殿を得た。このとき、センサー6(この場合はpHセンサーを用いた)からの信号をアンモニア添加装置(図示せず)にフィードバックして、注加ノズル5からアンモニアを加えながらpH5.5に制御して反応を行った。添加終了後45分間熟成を行い、蛍光体前駆体2を得た。その後、蛍光体前駆体2を濾過乾燥し乾燥蛍光体前駆体2を得た。さらに、乾燥蛍光体前駆体2を1,400℃酸化条件下で2時間焼成し蛍光体2を得た。
【0049】
〈蛍光体3の製造〉
水1,000mlにアンモニアを加えてpH8.0とした溶液を溶液[A]とした。水500mlにイットリウムのイオン濃度が0.4659mol/l、ガドリニウムのイオン濃度が0.2716mol/l、ユウロピウムのイオン濃度が0.0388mol/lとなるように硝酸イットリウム六水和物、硝酸ガドリニウム、硝酸ユウロピウム六水和物を溶解し溶液[B]とした。水500mlにホウ素のイオン濃度が0.7763mol/lとなるようにホウ酸を溶解し溶液[C]とした。
【0050】
図1の容器1に溶液[A]を入れ、撹拌機構2を用いて撹拌を行った。その状態で溶液[B]、溶液[C]をそれぞれ溶液[A]の入った容器1の注加ノズル3、4より100ml/minの速度で等速添加して白色沈殿を得た。このとき、センサー6(この場合はpHセンサーを用いた)からの信号をアンモニア添加装置(図示せず)にフィードバックして、注加ノズル5からアンモニアを加えながらpH8.0に制御して反応を行った。添加終了後45分間熟成を行い、蛍光体前駆体3を得た。その後、蛍光体前駆体3を濾過乾燥し乾燥蛍光体前駆体3を得た。さらに、乾燥蛍光体前駆体3を1,400℃酸化条件下で2時間焼成し蛍光体3を得た。
【0051】
〈蛍光体4の製造〉
水1,000mlにアンモニアを加えてpH8.0とした溶液を溶液[A]とした。水500mlにイットリウムのイオン濃度が0.4659mol/l、ガドリニウムのイオン濃度が0.2716mol/l、ユウロピウムのイオン濃度が0.0388mol/lとなるように硝酸イットリウム六水和物、硝酸ガドリニウム、硝酸ユウロピウム六水和物を溶解し溶液[B]とした。水500mlにホウ素のイオン濃度が0.7763mol/lとなるようにホウ酸を溶解し溶液[C]とした。
【0052】
図1の容器1に溶液[A]を入れ、撹拌機構2を用いて撹拌を行った。その状態で溶液[B]、溶液[C]をそれぞれ溶液[A]の入った容器1の注加ノズル3、4より100ml/minの速度で等速添加して白色沈殿を得た。このとき、センサー6(この場合はpHセンサーを用いた)からの信号をアンモニア添加装置(図示せず)にフィードバックして、注加ノズル5からアンモニアを加えながらpH8.0に制御して反応を行った。添加終了後、アンモニアを用いてpH11.0にして45分間熟成を行い、蛍光体前駆体4を得た。熟成時もセンサー6からの信号をアンモニア添加装置(図示せず)にフィードバックして、適宜アンモニアを加えながらpH11.0に制御した。その後、蛍光体前駆体4を濾過乾燥し乾燥蛍光体前駆体4を得た。さらに、乾燥蛍光体前駆体4を1,400℃酸化条件下で2時間焼成し蛍光体4を得た。
【0053】
〈蛍光体5の製造〉
水1,000mlに低分子ゼラチン30g(平均分子量約10万)を溶解した溶液を溶液[A]としたこと以外は蛍光体2の製造方法と同様にして、蛍光体5を得た。
【0054】
〈蛍光体6の製造〉
水1,000mlに低分子ゼラチン30g(平均分子量約10万)を溶解した溶液を溶液[A]としたこと以外は蛍光体3の製造方法と同様にして、蛍光体6を得た。
【0055】
〈蛍光体7の製造〉
水1,000mlに低分子ゼラチン30g(平均分子量約10万)を溶解した溶液を溶液[A]としたこと以外は蛍光体4の製造方法と同様にして、蛍光体7を得た。
【0056】
得られた蛍光体1〜7は粉末X線回折装置で組成を確認した結果、(Y,Gd)BO3:Eu3+であった。蛍光体(蛍光体1〜7)に真空紫外線(146nm)を照射し、それぞれの発光強度を求めた。次いで、蛍光体1を100%としたときのそれぞれの蛍光体の相対発光強度を算出した。また、電子顕微鏡により粒子の写真を撮影して平均粒径及び変動係数を算出した。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表1から明らかなように、本発明の製造方法を用いることにより小粒径、単分散且つ高発光強度な蛍光体を得ることが可能となった。
【0059】
(実施例2)
〈蛍光体8の製造〉
水800mlに珪素のイオン濃度が0.4655mol/lとなるようにメタ珪酸ナトリウムを溶解し溶液[A]とした。水800mlに亜鉛のイオン濃度が0.8845mol/lとなるように塩化亜鉛を溶解し溶液[B]とした。水200mlにマンガンのイオン濃度が0.1862mol/lとなるように塩化マンガン四水和物を溶解し溶液[C]とした。
【0060】
図1の容器1に溶液[A]を入れ、撹拌機構2を用いて撹拌を行った。その状態で溶液[A]の入った容器1の注加ノズル3、4からそれぞれ、溶液[B]を80ml/minの速度で、溶液[C]を20ml/minの速度で等速添加を行った。添加後120分間熟成を行い、蛍光体前駆体8を得た。その後、蛍光体前駆体8を濾過乾燥し乾燥蛍光体前駆体8を得た。さらに、乾燥蛍光体前駆体8を1,050℃窒素雰囲気下で3時間焼成し蛍光体8を得た。
【0061】
〈蛍光体9の製造〉
水800mlに珪素のイオン濃度が0.4655mol/lとなるようにメタ珪酸ナトリウムを溶解し溶液[A]とした。水800mlに亜鉛のイオン濃度が0.8845mol/lとなるように塩化亜鉛を溶解し溶液[B]とした。水200mlにマンガンのイオン濃度が0.1862mol/lとなるように塩化マンガン四水和物を溶解し溶液[C]とした。
【0062】
図1の容器1に溶液[A]を入れ、撹拌機構2を用いて撹拌を行った。その状態で溶液[A]の入った容器1の注加ノズル3、4からそれぞれ、溶液[B]を80ml/minの速度で、溶液[C]を20ml/minの速度で等速添加を行った。添加後120分間熟成を行い、蛍光体前駆体9を得た。このとき、センサー6(この場合はpHセンサーを用いた)からの信号を硝酸添加装置(図示せず)にフィードバックして、注加ノズル5から硝酸を加えながらpH6.5に制御して反応を行った。添加終了後120分間熟成を行い、蛍光体前駆体9を得た。その後、蛍光体前駆体9を濾過乾燥し乾燥蛍光体前駆体9を得た。さらに、乾燥蛍光体前駆体9を1,050℃窒素雰囲気下で3時間焼成し蛍光体9を得た。
【0063】
〈蛍光体10の製造〉
水800mlに珪素のイオン濃度が0.4655mol/lとなるようにメタ珪酸ナトリウムを溶解し溶液[A]とした。水800mlに亜鉛のイオン濃度が0.8845mol/lとなるように塩化亜鉛を溶解し溶液[B]とした。水200mlにマンガンのイオン濃度が0.1862mol/lとなるように塩化マンガン四水和物を溶解し溶液[C]とした。
【0064】
図1の容器1に溶液[A]を入れ、撹拌機構2を用いて撹拌を行った。その状態で溶液[A]の入った容器1の注加ノズル3、4からそれぞれ、溶液[B]を80ml/minの速度で、溶液[C]を20ml/minの速度で等速添加を行った。このとき、センサー6(この場合はpHセンサーを用いた)からの信号をアンモニア添加装置(図示せず)にフィードバックして、注加ノズル5からアンモニアを加えながらpH11.0に制御して反応を行った。添加終了後120分間熟成を行い、蛍光体前駆体10を得た。その後、蛍光体前駆体10を濾過乾燥し乾燥蛍光体前駆体10を得た。さらに、乾燥蛍光体前駆体10を1,050℃窒素雰囲気下で3時間焼成し蛍光体10を得た。
【0065】
〈蛍光体11の製造〉
水800mlに珪素のイオン濃度が0.4655mol/lとなるようにメタ珪酸ナトリウムを溶解し溶液[A]とした。水800mlに亜鉛のイオン濃度が0.8845mol/lとなるように塩化亜鉛を溶解し溶液[B]とした。水200mlにマンガンのイオン濃度が0.1862mol/lとなるように塩化マンガン四水和物を溶解し溶液[C]とした。
【0066】
図1の容器1に溶液[A]を入れ、撹拌機構2を用いて撹拌を行った。その状態で溶液[A]の入った容器1の注加ノズル3、4からそれぞれ、溶液[B]を80ml/minの速度で、溶液[C]を20ml/minの速度で等速添加を行った。このとき、センサー6(この場合はpHセンサーを用いた)からの信号をアンモニア添加装置(図示せず)にフィードバックして、注加ノズル5からアンモニアを加えながらpH11.0に制御して反応を行った。添加終了後、アンモニアを用いてpH13.0にして120分間熟成を行い、蛍光体前駆体11を得た。熟成時もセンサー6からの信号をアンモニア添加装置(図示せず)にフィードバックして、注加ノズル5から適宜アンモニアを加えながらpH13.0に制御した。その後、蛍光体前駆体11を濾過乾燥し乾燥蛍光体前駆体11を得た。さらに、乾燥蛍光体前駆体11を1,050℃窒素雰囲気下で3時間焼成し蛍光体11を得た。
【0067】
〈蛍光体12の製造〉
低分子ゼラチン(平均分子量約10万)を溶液[A]、溶液[B]、溶液[C]にそれぞれ3質量%ずつ加えて溶解したこと以外は、蛍光体9の製造方法と同様にして蛍光体12を得た。
【0068】
〈蛍光体13の製造〉
低分子ゼラチン(平均分子量約10万)を溶液[A]、溶液[B]、溶液[C]にそれぞれ3質量%ずつ加えて溶解したこと以外は、蛍光体10の製造方法と同様にして蛍光体13を得た。
【0069】
〈蛍光体14の製造〉
低分子ゼラチン(平均分子量約10万)を溶液[A]、溶液[B]、溶液[C]にそれぞれ3質量%ずつ加えて溶解したこと以外は、蛍光体11の製造方法と同様にして蛍光体14を得た。
【0070】
得られた蛍光体8〜14は粉末X線回折装置で組成を確認した結果、Zn2SiO4:Mn2+であった。蛍光体(蛍光体8〜14)に真空紫外線(146nm)を照射し、それぞれの発光強度を求めた。次いで、蛍光体8を100%としたときのそれぞれの蛍光体の相対発光強度を算出した。また、電子顕微鏡により粒子の写真を撮影して平均粒径及び変動係数を算出した。結果を表2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
表2から明らかなように、本発明の製造方法を用いることにより小粒径、単分散且つ高発光強度な蛍光体を得ることが可能となった。
【0073】
(参考例)
〈蛍光体15の製造〉
水1,000mlを溶液[A]とした。水500mlにイットリウムのイオン濃度が0.4659mol/l、ガドリニウムのイオン濃度が0.2716mol/l、ユウロピウムのイオン濃度が0.0388mol/lとなるように硝酸イットリウム六水和物、硝酸ガドリニウム、硝酸ユウロピウム六水和物を溶解し溶液[B]とした。水500mlにホウ素のイオン濃度が0.7763mol/lとなるようにホウ酸を溶解し溶液[C]とした。
【0074】
図1の容器1に溶液[A]を入れ温度を15℃に保ち、撹拌機構2を用いて撹拌を行った。その状態で同じく15℃に保った溶液[B]及び溶液[C]を溶液[A]の入った容器1の注加ノズル3、4からそれぞれ100ml/minの速度で等速添加して白色沈殿を得た。このとき、センサー6(この場合は温度センサーを用いた)からの信号を温度制御装置(図示せず)にフィードバックして、15℃に制御しながら反応を行った。添加終了後45分間熟成を行い、蛍光体前駆体15を得た。その後、蛍光体前駆体15を濾過乾燥し乾燥蛍光体前駆体15を得た。さらに、乾燥蛍光体前駆体15を1,400℃酸化条件下で2時間焼成し蛍光体15を得た。
【0075】
〈蛍光体16の製造〉
水1,000mlを溶液[A]とした。水500mlにイットリウムのイオン濃度が0.4659mol/l、ガドリニウムのイオン濃度が0.2716mol/l、ユウロピウムのイオン濃度が0.0388mol/lとなるように硝酸イットリウム六水和物、硝酸ガドリニウム、硝酸ユウロピウム六水和物を溶解し溶液[B]とした。水500mlにホウ素のイオン濃度が0.7763mol/lとなるようにホウ酸を溶解し溶液[C]とした。
【0076】
図1の容器1に溶液[A]を入れ温度を45℃に保ち、撹拌機構2を用いて撹拌を行った。その状態で同じく45℃に保った溶液[B]及び溶液[C]を溶液[A]の入った容器1の注加ノズル3、4からそれぞれ100ml/minの速度で等速添加して白色沈殿を得た。このとき、センサー6(この場合は温度センサーを用いた)からの信号を温度制御装置(図示せず)にフィードバックして、45℃に制御しながら反応を行った。添加終了後45分間熟成を行い、蛍光体前駆体16を得た。その後、蛍光体前駆体16を濾過乾燥し乾燥蛍光体前駆体16を得た。さらに、乾燥蛍光体前駆体16を1,400℃酸化条件下で2時間焼成し蛍光体16を得た。
【0077】
〈蛍光体17の製造〉
水1,000mlを溶液[A]とした。水500mlにイットリウムのイオン濃度が0.4659mol/l、ガドリニウムのイオン濃度が0.2716mol/l、ユウロピウムのイオン濃度が0.0388mol/lとなるように硝酸イットリウム六水和物、硝酸ガドリニウム、硝酸ユウロピウム六水和物を溶解し溶液[B]とした。水500mlにホウ素のイオン濃度が0.7763mol/lとなるようにホウ酸を溶解し溶液[C]とした。
【0078】
図1の容器1に溶液[A]を入れ温度を45℃に保ち、撹拌機構2を用いて撹拌を行った。その状態で同じく45℃に保った溶液[B]及び溶液[C]を溶液[A]の入った容器1の注加ノズル3、4からそれぞれ100ml/minの速度で等速添加して白色沈殿を得た。このとき、センサー6(この場合は温度センサーを用いた)からの信号を温度制御装置(図示せず)にフィードバックして、45℃に制御しながら反応を行った。添加終了後、80℃に加温して45分間熟成を行い、蛍光体前駆体17を得た。熟成時もセンサー6からの信号を温度制御装置(図示せず)にフィードバックして80℃に制御した。その後、蛍光体前駆体17を濾過乾燥し乾燥蛍光体前駆体17を得た。さらに、乾燥蛍光体前駆体17を1,400℃酸化条件下で2時間焼成し蛍光体17を得た。
【0079】
〈蛍光体18の製造〉
水1,000mlに低分子ゼラチン30g(平均分子量約10万)を溶解して溶液[A]を調整したこと以外は蛍光体15の製造方法と同様にして、蛍光体18を得た。
【0080】
〈蛍光体19の製造〉
水1,000mlに低分子ゼラチン30g(平均分子量約10万)を溶解して溶液[A]を調整したこと以外は蛍光体16の製造方法と同様にして、蛍光体19を得た。
【0081】
〈蛍光体20の製造〉
水1,000mlに低分子ゼラチン30g(平均分子量約10万)を溶解して溶液[A]を調整したこと以外は蛍光体17の製造方法と同様にして、蛍光体20を得た。
【0082】
得られた蛍光体15〜20は粉末X線回折装置で組成を確認した結果、(Y,Gd)BO3:Eu3+であった。蛍光体(蛍光体15〜20)に真空紫外線(146nm)を照射し、それぞれの発光強度を求めた。次いで、実施例1で製造した蛍光体1を100%としたときのそれぞれの蛍光体の相対発光強度を算出した。また、電子顕微鏡により粒子の写真を撮影して平均粒径及び変動係数を算出した。結果を表3に示す。
【0083】
【表3】

【0084】
表3から明らかなように、温度制御しながら蛍光体前駆体を生成させることにより小粒径、単分散且つ高発光強度な蛍光体を得ることが可能となった。
【0085】
(参考例)
〈蛍光体21の製造〉
水800mlに珪素のイオン濃度が0.4655mol/lとなるようにメタ珪酸ナトリウムを溶解し溶液[A]とした。水800mlに亜鉛のイオン濃度が0.8845mol/lとなるように塩化亜鉛を溶解し溶液[B]とした。水200mlにマンガンのイオン濃度が0.1862mol/lとなるように塩化マンガン四水和物を溶解し溶液[C]とした。
【0086】
図1の容器1に溶液[A]を入れ温度を25℃に保ち、撹拌機構2を用いて撹拌を行った。その状態で溶液[A]の入った容器1の注加ノズル3、4からそれぞれ、同じく25℃に保った溶液[B]を80ml/minの速度で、同じく25℃に保った溶液[C]を20ml/minの速度で等速添加を行った。添加後120分間熟成を行い、蛍光体前駆体21を得た。その後、蛍光体前駆体21を濾過乾燥し乾燥蛍光体前駆体21を得た。さらに、乾燥蛍光体前駆体21を1,050℃窒素雰囲気下で3時間焼成し蛍光体21を得た。
【0087】
〈蛍光体22の製造〉
水800mlに珪素のイオン濃度が0.4655mol/lとなるようにメタ珪酸ナトリウムを溶解し溶液[A]とした。水800mlに亜鉛のイオン濃度が0.8845mol/lとなるように塩化亜鉛を溶解し溶液[B]とした。水200mlにマンガンのイオン濃度が0.1862mol/lとなるように塩化マンガン四水和物を溶解し溶液[C]とした。
【0088】
図1の容器1に溶液[A]を入れ、温度を55℃に保ち撹拌機構2を用いて撹拌を行った。その状態で溶液[A]の入った容器1の注加ノズル3、4からそれぞれ、同じく55℃に保った溶液[B]を80ml/minの速度で、同じく55℃に保った溶液[C]を20ml/minの速度で等速添加を行った。添加後120分間熟成を行い、蛍光体前駆体22を得た。このとき、センサー6(この場合は温度センサーを用いた)からの信号を温度制御装置(図示せず)にフィードバックして、55℃に制御しながら反応を行った。添加終了後120分間熟成を行い、蛍光体前駆体22を得た。その後、蛍光体前駆体22を濾過乾燥し乾燥蛍光体前駆体22を得た。さらに、乾燥蛍光体前駆体22を1,050℃窒素雰囲気下で3時間焼成し蛍光体22を得た。
【0089】
〈蛍光体23の製造〉
水800mlに珪素のイオン濃度が0.4655mol/lとなるようにメタ珪酸ナトリウムを溶解し溶液[A]とした。水800mlに亜鉛のイオン濃度が0.8845mol/lとなるように塩化亜鉛を溶解し溶液[B]とした。水200mlにマンガンのイオン濃度が0.1862mol/lとなるように塩化マンガン四水和物を溶解し溶液[C]とした。
【0090】
図1の容器1に溶液[A]を入れ、温度を55℃に保ち撹拌機構2を用いて撹拌を行った。その状態で溶液[A]の入った容器1の注加ノズル3、4からそれぞれ、同じく55℃に保った溶液[B]を80ml/minの速度で、同じく55℃に保った溶液[C]を20ml/minの速度で等速添加を行った。このとき、センサー6(この場合は温度センサーを用いた)からの信号を温度制御装置(図示せず)にフィードバックして、55℃に制御しながら反応を行った。添加終了後、80℃に加温して120分間熟成を行い、蛍光体前駆体23を得た。熟成時も温度センサー6からの信号を温度制御装置(図示せず)にフィードバックして80℃に制御した。その後、蛍光体前駆体23を濾過乾燥し乾燥蛍光体前駆体23を得た。さらに、乾燥蛍光体前駆体23を1,050℃窒素雰囲気下で3時間焼成し蛍光体23を得た。
【0091】
〈蛍光体24の製造〉
低分子ゼラチン(平均分子量約10万)を溶液[A]、溶液[B]、溶液[C]にそれぞれ3質量%ずつ加えて溶解したこと以外は、蛍光体21の製造方法と同様にして蛍光体24を得た。
【0092】
〈蛍光体25の製造〉
低分子ゼラチン(平均分子量約10万)を溶液[A]、溶液[B]、溶液[C]にそれぞれ3質量%ずつ加えて溶解したこと以外は、蛍光体22の製造方法と同様にして蛍光体25を得た。
【0093】
〈蛍光体26の製造〉
低分子ゼラチン(平均分子量約10万)を溶液[A]、溶液[B]、溶液[C]にそれぞれ3質量%ずつ加えて溶解したこと以外は、蛍光体23の製造方法と同様にして蛍光体26を得た。
【0094】
得られた蛍光体21〜26は粉末X線回折装置で組成を確認した結果、Zn2SiO4:Mn2+であった。蛍光体(蛍光体21〜26)に真空紫外線(146nm)を照射し、それぞれの発光強度を求めた。次いで、実施例2で製造した蛍光体8を100%としたときのそれぞれの蛍光体の相対発光強度を算出した。また、電子顕微鏡により粒子の写真を撮影して平均粒径及び変動係数を算出した。結果を表4に示す。
【0095】
【表4】

【0096】
表4から明らかなように、温度制御しながら蛍光体前駆体を生成させることにより小粒径、単分散且つ高発光強度な蛍光体を得ることが可能となった。
【0097】
(参考例)
〈蛍光体27の製造〉
水800mlに珪素のイオン濃度が0.4655mol/lとなるようにメタ珪酸ナトリウムを溶解し溶液[A]とした。水800mlに亜鉛のイオン濃度が0.8845mol/lとなるように塩化亜鉛を溶解し溶液[B]とした。水200mlにマンガンのイオン濃度が0.1862mol/lとなるように塩化マンガン四水和物を溶解し溶液[C]とした。
【0098】
図1の容器1に溶液[A]を入れ、撹拌機構2を用いて撹拌を行った。その状態で溶液[B]を溶液[A]の入った容器の注加ノズル3から添加した。このとき、センサー6(この場合は亜鉛イオン濃度センサーを用いた)からの信号を塩化亜鉛添加装置(図示せず)にフィードバックして、亜鉛イオン濃度が2.2×10-1mol/lになるように制御しながら反応を行った。溶液[C]は20ml/minの速度で注加ノズル4から等速添加を行った。添加終了後120分間熟成を行い、蛍光体前駆体27を得た。その後、蛍光体前駆体27を濾過乾燥し乾燥蛍光体前駆体27を得た。さらに、乾燥蛍光体前駆体27を1,050℃窒素雰囲気下で3時間焼成し蛍光体27を得た。
【0099】
〈蛍光体28の製造〉
亜鉛イオン濃度が4.8×10-2mol/lになるように制御しながら反応を行うこと以外は、蛍光体27の製造方法と同様にして蛍光体28を得た。
【0100】
〈蛍光体29の製造〉
水800mlに珪素のイオン濃度が0.4655mol/lとなるようにメタ珪酸ナトリウムを溶解し溶液[A]とした。水800mlに亜鉛のイオン濃度が0.8845mol/lとなるように塩化亜鉛を溶解し溶液[B]とした。水200mlにマンガンのイオン濃度が0.1862mol/lとなるように塩化マンガン四水和物を溶解し溶液[C]とした。
【0101】
図1の容器1に溶液[A]を入れ、撹拌機構2を用いて撹拌を行った。その状態で溶液[B]を溶液[A]の入った容器の注加ノズル3から添加した。このとき、センサー6(この場合は亜鉛イオン濃度センサーを用いた)からの信号を塩化亜鉛添加装置(図示せず)にフィードバックして、亜鉛イオン濃度が4.8×10-2mol/lになるように制御しながら反応を行った。溶液[C]は注加ノズル4から20ml/minの速度で等速添加を行った。添加終了後、亜鉛イオン濃度を1×10-5mol/lに変更して120分間熟成を行い、蛍光体前駆体29を得た。熟成時もセンサー6からの信号を塩化亜鉛添加装置(図示せず)にフィードバックして6.7×10-4mol/lに制御した。その後、蛍光体前駆体29を濾過乾燥し乾燥蛍光体前駆体29を得た。さらに、乾燥蛍光体前駆体29を1,050℃窒素雰囲気下で3時間焼成し蛍光体29を得た。
【0102】
〈蛍光体30の製造〉
低分子ゼラチン(平均分子量約10万)を溶液[A]、溶液[B]、溶液[C]にそれぞれ3質量%ずつ加えて溶解したこと以外は、蛍光体27の製造方法と同様にして蛍光体30を得た。
【0103】
〈蛍光体31の製造〉
低分子ゼラチン(平均分子量約10万)を溶液[A]、溶液[B]、溶液[C]にそれぞれ3質量%ずつ加えて溶解したこと以外は、蛍光体28の製造方法と同様にして蛍光体31を得た。
【0104】
〈蛍光体32の製造〉
低分子ゼラチン(平均分子量約10万)を溶液[A]、溶液[B]、溶液[C]にそれぞれ3質量%ずつ加えて溶解したこと以外は、蛍光体29の製造方法と同様にして蛍光体32を得た。
【0105】
得られた蛍光体27〜32は粉末X線回折装置で組成を確認した結果、Zn2SiO4:Mn2+であった。蛍光体(蛍光体27〜32)に真空紫外線(146nm)を照射し、それぞれの発光強度を求めた。次いで、実施例2で製造した蛍光体8を100%としたときのそれぞれの蛍光体の相対発光強度を算出した。また、電子顕微鏡により粒子の写真を撮影して平均粒径及び変動係数を算出した。結果を表5に示す。
【0106】
【表5】

【0107】
表5から明らかなように、亜鉛イオン濃度を制御しながら蛍光体前駆体を生成させることにより小粒径、単分散且つ高発光強度な蛍光体を得ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明における蛍光体前駆体の生成装置の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0109】
1 容器
2 撹拌機構
3、4、5 注加ノズル
6 センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相中で蛍光体前駆体を生成させた後、該蛍光体前駆体を焼成することにより蛍光体を得る蛍光体の製造方法において、
蛍光体前駆体の生成開始から終了までの時間、pH7からpH14の範囲でpH制御を2回以上行いながら蛍光体前駆体を生成させる工程を有することを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項2】
前記蛍光体前駆体を生成させる工程をバインダー存在下で行うことを特徴とする請求項1に記載の蛍光体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−101224(P2008−101224A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295323(P2007−295323)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【分割の表示】特願2002−178380(P2002−178380)の分割
【原出願日】平成14年6月19日(2002.6.19)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】