蛍光体ホイールおよびプロジェクター
【課題】蛍光体が高温になるのを抑えて、蛍光への変換効率の低下を抑えることができる蛍光体ホイールを提供すること。
【解決手段】本発明の蛍光体ホイール1は、所定の回転軸5を中心に回転可能とされた蛍光体ホイールであって、光を透過させる基板と、基板の表面に塗布された蛍光体3と、蛍光体を透過する光の光路を避けるように、蛍光体よりも回転軸側である内側、および蛍光体よりも回転軸の反対側である外側の少なくとも一方に貼り付けられた放熱板6,7と、を備える。
【解決手段】本発明の蛍光体ホイール1は、所定の回転軸5を中心に回転可能とされた蛍光体ホイールであって、光を透過させる基板と、基板の表面に塗布された蛍光体3と、蛍光体を透過する光の光路を避けるように、蛍光体よりも回転軸側である内側、および蛍光体よりも回転軸の反対側である外側の少なくとも一方に貼り付けられた放熱板6,7と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体ホイールおよびプロジェクター、特にレーザー光を励起させて蛍光を発する蛍光体ホイールの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プロジェクターの高性能化に関して、広色域かつ高効率な光源としてレーザーが注目されている。例えば特許文献1には、B光用のレーザーと、レーザー光によって蛍光体を励起させることでG光及びR光を蛍光として発生させるカラーホイールとにより、R、G、Bの照明光を得る技術が提案されている。
【0003】
しかしながら、高出力を得るために、蛍光体に照射される照射光の出力を高めることで、蛍光体の発熱量が増大してしまい、蛍光体が高温になってしまう。蛍光体が高温になると、蛍光への変換効率が低下し、明るさが低下してしまう。そこで、例えば特許文献2のように、カラーホイールにフィンを設けて、蛍光体の冷却を図ることも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−277516号公報
【特許文献2】特開2006−64784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カラーホイールにフィンを設けても、カラーホイールの回転に伴って空気が流動するにすぎず、あまり冷却効果を期待することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、蛍光体が高温になるのを抑えて、蛍光への変換効率の低下を抑えることができる蛍光体ホイール、およびその蛍光体ホイールを用いたプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、所定の回転軸を中心に回転可能とされた蛍光体ホイールであって、光を透過させる基板と、基板の表面に塗布された蛍光体と、蛍光体を透過する光の光路を避けるように、蛍光体よりも回転軸側である内側、および蛍光体よりも回転軸の反対側である外側の少なくとも一方に貼り付けられた放熱板と、を備えることを特徴とする。
【0008】
基板には、放熱板が貼り付けられているため、基板と蛍光体で蛍光体ホイールを構成するよりも、蛍光体ホイール全体の熱伝導率を高めることができる。これにより、蛍光体で発生した熱を、蛍光体からより離れた位置まで伝導させることができ、蛍光体の冷却効率の向上を図ることができる。また、蛍光体を透過する光の光路を避けるように放熱板が設けられているので、放熱板が光の透過の障害になりにくい。
【0009】
また、本発明の好ましい態様としては、蛍光体が塗布された面に放熱板が貼り付けられることが望ましい。蛍光体が塗布された面に放熱板が貼り付けられるので、蛍光体と放熱板との距離を近づけることができ、蛍光体と放熱板との間の熱抵抗を低減させることができる。したがって、蛍光体から放熱板へと熱が伝わりやすくなり、蛍光体の冷却効率の向上を図ることができる。
【0010】
また、本発明の好ましい態様としては、蛍光体と放熱板とが接するように設けられていることが望ましい。蛍光体と放熱板とを接触させることで、蛍光体と放熱板との間の熱抵抗をより一層低減させることができ、蛍光体の冷却効率のより一層の向上を図ることができる。
【0011】
また、本発明の好ましい態様としては、放熱板の厚さよりも蛍光体の厚さのほうが大きくなるように蛍光体が塗布されることが望ましい。蛍光体は、その厚さに高い精度が要求される場合がある。このような場合、蛍光体は、基板上に塗布された後で、型枠などを押し付けられて、その形状や厚みが整形される。ここで、蛍光体を放熱板よりも厚く形成しているので、型枠の押し付けが容易となり、蛍光体を整形しやすくすることができる。
【0012】
また、蛍光体のうち、放熱板を覆う部分は、蛍光体を透過する光の光路から外れるため、厚さのばらつきがある程度許容される。したがって、蛍光体の外周部や内周部で、型枠と蛍光体との間に隙間などができても、光路となる部分の厚さには影響がほとんどないため、不良品になりにくく、歩留まりの向上にも寄与できる。
【0013】
また、本発明の好ましい態様としては、蛍光体よりも外側に貼り付けられる放熱板は、基板よりも外側に張り出すような大きさで形成されていることが望ましい。外側に貼り付けられる放熱板が、基板よりも外側に張り出すような大きさで形成されるので、放熱板が空気に触れる面積を増やして、放熱効率を高めることができる。これにより、蛍光体の冷却効率の向上を図ることができる。
【0014】
また、蛍光体ホイールは、内側部分よりも外側部分のほうが回転する際の速度が大きくなる。また、外側部分に張り出させるほうが、内側部分に張り出させるよりも張り出し部分の面積を大きく形成しやすい。したがって、外側に貼り付けられる放熱板に、より多くの空気を触れさせることができ、放熱板からの放熱効率をより一層向上させて、蛍光体の冷却効率の向上を図ることができる。
【0015】
また、本発明の好ましい態様としては、放熱板には、突起部が形成されていることが望ましい。放熱板に突起が形成されることで、放熱板の放熱面積を増やすことができる。これにより、蛍光体から伝わる熱の放熱効率を向上させ、蛍光体の冷却効率を向上させることができる。
【0016】
また、本発明の好ましい態様としては、突起部は、蛍光体ホイールの回転方向に沿って延びる形状で形成されることが望ましい。蛍光体ホイールの回転方向に延びる形状で突起が形成されているので、蛍光体ホイールを回転させる際の空気抵抗の増加を抑えることができ、蛍光体ホイールを回転させるモーターへの負荷を抑制することができる。
【0017】
また、本発明の好ましい態様としては、突起部は、蛍光体ホイールの回転方向における前方側が尖るように形成されていることが望ましい。蛍光体ホイールの回転方向における前方側が尖った形状となるように突起が形成されているので、空気抵抗の増加をより一層抑えることができ、蛍光体ホイールを回転させるモーターへの負荷もより一層抑制することができる。
【0018】
また、本発明の好ましい態様としては、放熱板は、蛍光体の内側と外側の両方に設けられ、蛍光体の内側に設けられた放熱板と蛍光体の外側に設けられた放熱板とをつなぐ複数のリブをさらに備え、基板は、複数に分割されて、放熱板とリブとで形成される開口を塞ぐように設けられることが望ましい。
【0019】
基板が、複数に分割されて、放熱板とリブとで形成される開口を塞ぐように形成されるので、基板を小型に形成することができる。これにより、基板の使用量を減らすことができ、蛍光体ホイールの製造コストを抑制することができる。
【0020】
また、本発明の好ましい態様としては、基板は、熱伝導率の異方性を持ち、熱伝導率の高い軸が回転軸を中心とした放射線と略平行となるように設けられることが望ましい。基板の熱伝導率の高い軸が、蛍光体ホイールの回転軸を中心とする放射線と略平行となるように配置されるので、基板の内側や外側に配置された放熱板に、基板を介して熱が伝わりやすくなり、蛍光体の冷却効率の向上を図ることができる。
【0021】
また、本発明の好ましい態様としては、基板は、熱伝導率の異方性を持ち、熱伝導率の高い軸が回転軸と略平行となるように設けられることが望ましい。熱伝導率の高い軸が回転軸と略平行となるように基板が配置されるので、基板の面内での温度の偏りを抑えることができる。これにより、蛍光体での温度の偏りも抑えることができ、蛍光体の一部で蛍光への変換効率が低下することを抑えて、安定して蛍光を得やすくすることができる。
【0022】
また、本発明の好ましい態様としては、放熱板は、蛍光体の内側と外側の両方に設けられ、放熱板の間に形成される溝が、基板に向けて溝幅が狭くなるように形成されることが望ましい。蛍光体を整形するための型枠を、放熱板の間に形成された溝に挿入させて押し付ける場合、放熱板と型枠との隙間に蛍光体が入り込むことで、蛍光体の内周部や外周部が盛り上がってしまう場合がある。このように蛍光体に形成された盛り上がりが、蛍光体の厚さを均一化する上で障害となる場合がある。
【0023】
一方、放熱板の間に形成される溝が、基板に向けて溝幅が狭くなる、すなわち、溝を構成する壁面が斜面になるので、蛍光体に形成された盛り上がり部分が光の光路に含まれにくくなる。このように光路から外れた部分では、厚さのばらつきが、ある程度許容されるため、蛍光体の内周部や外周部の盛り上がりが、蛍光体の厚さを均一化する上での障害となりにくく、歩留まりの向上に寄与することができる。
【0024】
また、本発明の好ましい態様としては、放熱板の熱伝導率は、基板の熱伝導率の20倍以上であることが望ましい。放熱板の熱伝導率を基板の熱伝導率の20倍以上とすることで、蛍光体の温度上昇率を効果的に抑制することができる。
【0025】
また、本発明のプロジェクターは、光を射出する光源と、光源から射出される光が入射する位置に設けられた上記蛍光体ホイールと、蛍光体ホイールから射出された光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置と、を備えることを特徴とする。冷却効率の向上により蛍光への変換効率の低下が抑えられた蛍光体ホイールを備えるので、信頼性を向上させて、高品質な画像を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る蛍光体ホイールの概略構成を示す外観斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す蛍光体ホイールの横断面図である。
【図3】図3は、放熱板の熱伝導率と蛍光体の温度上昇量との関係を示す図である。
【図4】図4は、実施例1の変形例1に係る蛍光体ホイールの横断面図である。
【図5】図5は、実施例1の変形例2に係る蛍光体ホイールの横断面図である。
【図6】図6は、実施例1の変形例3に係る蛍光体ホイールの横断面図である。
【図7】図7は、実施例1の変形例4に係る蛍光体ホイールの横断面図である。
【図8】図8は、実施例1の変形例5に係る蛍光体ホイールの概略構成を示す外観斜視図である。
【図9】図9は、図8に示す蛍光体ホイールの横断面図である。
【図10】図10は、実施例1の変形例6に係る蛍光体ホイールの横断面図である。
【図11】図11は、本発明の実施例2に係る蛍光体ホイールの概略構成を示す平面図である。
【図12】図12は、図10に示す蛍光体ホイールの分解図である。
【図13】図13は、実施例2の変形例1に係る蛍光体ホイールの平面図である。
【図14】図14は、図13に示す蛍光体ホイールの分解図である。
【図15】図15は、本発明の実施例3に係るプロジェクターの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明の実施例1に係る蛍光体ホイールの概略構成を示す外観斜視図である。図2は、図1に示す蛍光体ホイールの横断面図である。
【0029】
蛍光体ホイール1は、光源から射出された光を励起させて蛍光を発生させるためのものである。蛍光体ホイール1は、基板2、蛍光体3、放熱板4を備えて構成される。基板2は、円形の薄板形状を呈する。基板2は、透明部材で構成されており、光を透過する性質を有する。基板2には、例えば、ガラス、白板、石英、水晶、サファイア、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)などが用いられる。
【0030】
基板2の中心には、円形の開口2aが形成されている。開口2aには、蛍光体ホイール1を回転させるためのモーター(図示せず)の駆動軸が挿入される。これにより、基板2の中心を通る回転軸5を中心に、基板2は回転可能とされる。
【0031】
蛍光体3は、基板2の中心と同じ中心の環状形状で、基板2の表面に塗布される。蛍光体3は、例えば、蛍光物質をバインダー(樹脂材料)に混合させたものを、基板2の表面に塗布することで形成される。蛍光体3が塗布された環状部分を透過する光の一部は、蛍光体3によって励起され、蛍光を発生させる。
【0032】
図示しない光源から、基板2に塗布された蛍光体3に向けてレーザー光などの光が照射される。ここで、蛍光体3のごく一部(例えば、1mm2程度)の領域に向けてレーザー光が照射される。そして、蛍光体ホイール1を、回転軸5を中心に回転させることで、蛍光体3の光が照射される領域が常に移動するように構成される。
【0033】
放熱板4は、薄板形状を呈し、基板2の表面に貼り付けられる。放熱板4は、比較的熱伝導率の高い材質のもので構成され、例えばアルミニウム板や銅板が用いられる。放熱板4は、蛍光体3よりも回転軸5側(以下、内側という)に貼り付けられる内側放熱板6と、蛍光体3よりも回転軸5の反対側(以下、外側という)に貼り付けられる外側放熱板7とを有して構成される。
【0034】
内側放熱板6には、基板2に形成された開口2aと重なるように、円形の開口6aが形成され、全体として環状形状を呈する。内側放熱板6に形成された開口6aにも、モーターの駆動軸が挿入される。内側放熱板6は、蛍光体3を透過する光の光路を避けつつ、その外周部分6bが蛍光体3に接するように形成される。
【0035】
外側放熱板7には、蛍光体3の外径と略同じ径の開口7aが形成され、全体として環状形状を呈する。外側放熱板7は、蛍光体3を透過する光の光路を避けつつ、その内周部分7bが蛍光体3に接するように形成される。また、外側放熱板7は、図2に示すように、基板2よりも外側に張り出すような大きさで形成される。
【0036】
図3は、放熱板4の熱伝導率を変化させた場合の、蛍光体3の温度上昇量を示す図である。図3では、熱伝導率が1W/k・mであるガラス板を基板2として用いた。そして、放熱板4の熱伝導率を変化させ、すなわち放熱板4の材質を変化させて、蛍光体3の温度上昇量を計測した。
【0037】
図3に示すように、放熱板4の熱伝導率が20W/k・mを超える付近、すなわち、放熱板4の熱伝導率が基板2の熱伝導率の20倍となる付近から、蛍光体3の温度上昇率を抑制する効果が顕著になる。そこで、放熱板4には、その熱伝導率が基板2の熱伝導率の20倍以上となる材質のものを用いることが好ましい。例えば、基板2にガラス板を用いた場合には、熱伝導率が約200W/k・m程度のアルミニウム板や、約350W/k・m程度の銅板を用いることができる。
【0038】
以上のように構成された蛍光体ホイール1には、蛍光体ホイール1を回転させた状態で、蛍光体3に向けてレーザー光などの光が照射される。蛍光体3に向けて照射された光は、基板2を透過し、蛍光体3に入射する。蛍光体3に入射した光の一部が励起されて蛍光となり、蛍光体3から射出される。蛍光体3を透過する光のエネルギーの一部が熱に変換されるため、蛍光体3は非常に高温になりやすい。
【0039】
ここで、上述したように、蛍光体ホイール1の回転によって、蛍光体3への光の入射領域が常に移動するようになる。光の入射領域を移動させることで、蛍光体3を全体的に満遍なく温度上昇させることができる。これにより、蛍光体3の一部だけで急激に温度が上昇し、蛍光への変換効率が低下したり、基板2が破損したりするのを抑制することができる。
【0040】
また、基板2には、放熱板4が貼り付けられているため、蛍光体ホイール1全体の熱伝導率を、基板2の熱伝導率よりも高めることができる。これにより、蛍光体3で発生した熱を、蛍光体3からより離れた位置まで伝導させることができ、蛍光体3の冷却効率の向上を図ることができる。
【0041】
また、内側放熱板6は、その外周部分6bが蛍光体3に接するように形成されるので、蛍光体3で発生した熱が内側放熱板6に直接伝わるので、基板2を介するよりも熱抵抗を低減させることができ、蛍光体3が冷却されやすくなる。また、内側放熱板6は、蛍光体3を透過する光の光路を避けるように設けられているので、光の透過の障害になりにくい。
【0042】
また、外側放熱板7は、その内周部分7bが蛍光体3に接するように形成されるので、蛍光体3で発生した熱が外側放熱板7に直接伝わるので、基板2を介するよりも熱抵抗を低減させることができ、蛍光体3が冷却されやすくなる。また、外側放熱板7は、蛍光体3を透過する光の光路を避けるように設けられているので、光の透過の障害になりにくい。
【0043】
外側放熱板7が、基板2よりも外側に張り出すような大きさで形成されるので、外側放熱板7が空気に触れる面積を増やして、放熱効率を高めることができる。これにより、蛍光体3の冷却効率の向上を図ることができる。
【0044】
また、蛍光体ホイール1は、内側部分よりも外側部分のほうが回転する際の速度が大きくなる。また、内側部分に張り出させるよりも張り出し部分の面積を大きく形成しやすい。したがって、外側放熱板7に、より多くの空気を触れさせることができ、放熱板4からの放熱効率をより一層向上させて蛍光体3の冷却効率を向上させることができる。
【0045】
また、熱伝導率に異方性を有する材料で基板2が構成されている場合には、熱伝導率の高い軸が回転軸5と略平行となるように基板2を配置してもよい。このように基板2を配置することで、基板2の面内での温度の偏りを抑えることができる。これにより、蛍光体3での温度の偏りも抑えることができるので、蛍光体3の一部で蛍光への変換効率が低下するのを抑えて、安定して蛍光を得やすくなる。
【0046】
図4は、実施例1の変形例1に係る蛍光体ホイール1の横断面図である。本変形例1では、放熱板4の厚さよりも蛍光体3の厚さのほうが大きくなるように蛍光体3が塗布される。この場合、基板2に対して放熱板4を先に貼り付けてから、蛍光体3を塗布することが好ましい。
【0047】
蛍光体3は、その厚さに高い精度が要求される場合がある。このような場合、蛍光体3は、基板2上に塗布された後で、型枠などを押し付けられて、その形状や厚みが整形される。ここで、蛍光体3を放熱板4よりも厚く形成する場合には、内側放熱板6と外側放熱板7との隙間に型枠を挿入させずに済むため、型枠の押し付けが容易となり、蛍光体3を整形しやすい。
【0048】
また、蛍光体3のうち、放熱板4を覆う部分は、蛍光体3を透過する光の光路から外れるため、厚さのばらつきがある程度許容される。したがって、蛍光体3の外周部や内周部で、型枠と蛍光体3との間に隙間などができても、光路となる部分の厚さには影響がほとんどないため、不良品の発生を抑えて、歩留まりの向上に寄与することができる。
【0049】
また、放熱板4が先に貼り付けられた状態で基板2に蛍光体3を塗布するので、蛍光体3が放熱板4に接触しやすく、蛍光体3と放熱板4とが離間することによる冷却効率の低下を抑えることができる。
【0050】
図5は、実施例1の変形例2に係る蛍光体ホイール1の横断面図である。本変形例1では、蛍光体3の厚さよりも放熱板4の厚さのほうが大きくなるように蛍光体3が塗布される。蛍光体3の厚さよりも放熱板4の厚さのほうを大きくするために、放熱板4の厚さを増すことができる。これにより、放熱板4が吸収できる熱の容量が増すため、蛍光体3から発生した熱が放熱板4に伝わりやすくなり、蛍光体3の冷却効率の向上を図ることができる。
【0051】
なお、本変形例2でも、変形例1と同様に、放熱板4を先に貼り付けてから、基板2に蛍光体3を塗布することで、蛍光体3が放熱板4に接触しやすくなる。これにより、蛍光体3と放熱板4とが離間することによる冷却効率の低下を抑えることができる。
【0052】
図6は、実施例1の変形例3に係る蛍光体ホイール1の横断面図である。本変形例3では、内側放熱板6と外側放熱板7との間に形成される溝が、基板2に向けて狭くなる。より具体的には、溝の壁面となる内側放熱板6の外周部分6bと、外側放熱板7の内周部分7bとが、図6に示すような斜面となるように形成されている。
【0053】
また、本変形例3では、変形例2と同様に、蛍光体3の厚さよりも放熱板4の厚さのほうが大きくなるように蛍光体3が塗布される。つまり、蛍光体3のほうが放熱板4よりも薄く形成される。この場合に、蛍光体3を型枠で整形するには、内側放熱板6と外側放熱板7との間に型枠を挿入させる必要がある。
【0054】
蛍光体3を整形するための型枠は、内側放熱板6と外側放熱板7との間に挿抜する必要があるため、放熱板4の間に挿入した際に、放熱板4との間に隙間ができてしまう。そして、型枠を蛍光体3に押し付けた際に、放熱板4と型枠との隙間に蛍光体3が入り込むことで、蛍光体3の内周部や外周部が盛り上がってしまう場合がある。
【0055】
このように、蛍光体3に形成された盛り上がりが、蛍光体3の厚さを均一化する上で障害となる場合がある。一方、本変形例3では、蛍光体3の内周部や外周部の盛り上がりが、斜面になっている内側放熱板6の外周部分6bや外側放熱板7の内周部分7bに遮られることで、蛍光体3を透過する光の光路に含まれにくくなる。上述したように、光路から外れた部分では、厚さのばらつきがある程度許容されるため、蛍光体3の内周部や外周部の盛り上がりが、蛍光体3の厚さを均一化する上での障害となりにくく、歩留まりの向上に寄与することができる。
【0056】
図7は、実施例1の変形例4に係る蛍光体ホイール1の横断面図である。本変形例4では、放熱板4と蛍光体3との間に隙間が形成されている。このような隙間は、基板2に対して先に蛍光体3を塗布してから、放熱板4を貼り付けた場合に生じやすい。隙間が形成されることで、蛍光体3で発生した熱が基板2を介して放熱板4に伝わるため、蛍光体3の冷却効率が、隙間が無い場合に比べて劣る場合がある。しかし、放熱板4が貼り付けられていない基板2に対して蛍光体3を塗布することができるので、蛍光体3の形状や厚さを整形しやすくなる。
【0057】
図8は、実施例1の変形例5に係る蛍光体ホイール1の概略構成を示す外観斜視図である。図9は、図8に示す蛍光体ホイール1の横断面図である。本変形例4では、内側放熱板6のみを基板2に貼り付けている。このように、外側放熱板を設けずに構成することで、蛍光体ホイール1のコンパクト化を図ることができる。また、部品点数を削減し、製造コストの抑制を図ることができる。
【0058】
図10は、実施例1の変形例6に係る蛍光体ホイール1の横断面図である。本変形例4では、放熱板4に突起9が形成されている。突起9は、放熱板4のうち、より外周側に近いほうに並列して形成されている。突起9は、蛍光体ホイール1の回転方向(矢印Xに示す方向)に延びる形状で形成されている。突起9は、蛍光体ホイール1の回転方向における前方側が尖った形状となるように形成されている。
【0059】
放熱板4に突起9が形成されることで、放熱板4の放熱面積を増やすことができる。これにより、蛍光体3から伝わる熱の放熱効率を向上させ、蛍光体3の冷却効率を向上させることができる。
【0060】
また、突起9は、放熱板4の外周側に近づけて形成されているので、蛍光体ホイール1を回転させた際に、内周側に近づけて形成するよりも突起9の速度を大きくすることができる。したがって、突起9に、より多くの空気を触れさせることができ、放熱板4からの放熱効率をより一層向上させて、蛍光体3の冷却効率を向上させることができる。
【0061】
また、突起9は、蛍光体ホイール1の回転方向に延びる形状で形成されているので、蛍光体ホイール1を回転させる際の空気抵抗の増加を抑えることができ、蛍光体ホイール1を回転させるモーターへの負荷を抑制することができる。また、突起9は、蛍光体ホイール1の回転方向における前方側が尖った形状となるように形成されているので、空気抵抗の増加をより一層抑えることができ、蛍光体ホイール1を回転させるモーターへの負荷もより一層抑制することができる。
【0062】
また、放熱板4に形成された突起9を、バランスウエイトとすれば、蛍光体ホイール1の回転を安定化させることができる。なお、突起9を、放熱板4上に、二重に設けたり、三重に設けたりして、より一層の蛍光体3の冷却効率の向上を図ってもよい。また、突起9を、外側放熱板に形成してもよい。
【実施例2】
【0063】
図11は、本発明の実施例2に係る蛍光体ホイールの概略構成を示す平面図である。図12は、図10に示す蛍光体ホイールの分解図である。上記実施例と同様の構成については、同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0064】
本実施例2では、基板12が、内側放熱板6と外側放熱板7との間を塞ぐことのできる環状の薄板を4分割した形状で構成されている。また、基板12の表面には蛍光体3が塗布されている。蛍光体3の塗布は、放熱板4に貼り付ける前に行ってもよいし、放熱板4に貼り付けてから行ってもよい。
【0065】
このように、基板12が、内側放熱板6と外側放熱板7との間を塞ぐことのできる環状の薄板を4分割した形状で構成されているので、上記実施例1に比べて、基板12の使用量を抑えて、蛍光体ホイール20の製造コストの抑制を図ることができる。
【0066】
なお、基板12が複数に分割して貼り付けられるので、熱伝導率に異方性を有する材料で基板12が構成されている場合には、基板12ごとに熱伝導率が高い軸を異なる方向に向けて配置することができる。
【0067】
例えば、基板12の熱伝導率の高い軸が、蛍光体ホイール20の回転軸5を中心とする放射線と略平行となるように配置してもよい。このように基板12を配置することで、基板12の内側や外側に配置された放熱板4に、基板12を介して熱が伝わりやすくなり、蛍光体3の冷却効率の向上を図ることができる。
【0068】
なお、基板12の全体で、熱伝導率の高い軸を、回転軸5を中心とする放射線と平行にすることが難しい場合には、基板12の一部、例えば基板12の中央部分で、熱伝導率の高い軸と回転軸5を中心とする放射線とが平行となるように基板12を配置してもよい。また、基板12は4分割する場合に限られず、その分割数は適宜変更可能である。
【0069】
図13は、実施例2の変形例1に係る蛍光体ホイール20の平面図である。図14は、図13に示す蛍光体ホイール20の分解図である。本変形例1では、放熱板4が、内側放熱板6、外側放熱板7、リブ10を有して構成される。リブ10は、内側放熱板6と外側放熱板7とをつなぐように複数設けられている。この構成により、放熱板4には、内側放熱板6、外側放熱板7、およびリブ10に囲まれた複数の開口4aが形成される。
【0070】
基板14は、それぞれの開口4aを塞ぐことのできる、平面視円弧状の薄板形状に形成される。基板14は、実施例1と同様に光の透過可能な透明材料で構成される。基板14は、放熱板4の開口4aを塞ぐように、放熱板4に貼り付けられる。
【0071】
また、基板14の表面には蛍光体3が塗布されている。蛍光体3の塗布は、放熱板4に貼り付ける前に行ってもよいし、放熱板4に貼り付けてから行ってもよい。
【0072】
このように、基板14が、それぞれの開口4aを塞ぐことのできる、平面視円弧状の薄板形状に形成されるので、環状形状の薄板を分割して基板14とする場合よりも、さらに基板14の使用量を減らすことができ、蛍光体ホイール20の製造コストをより一層抑制することができる。
【0073】
なお、基板14ごとに、熱伝導率の高い軸を異ならせて配置できるのは、上述したものと同様である。また、図13,14では、開口4aが4つ形成される場合を示しているが、これに限られず、開口4aの数は適宜変更可能である。
【実施例3】
【0074】
図15は、本発明の実施例3に係るプロジェクターの概略構成を示す図である。本実施例3に係るプロジェクター60は、実施例1に係る蛍光体ホイール1同様に構成された蛍光体ホイール63を有する光源装置61を備える。蛍光体ホイール63には、光源62から射出されたレーザー光が入射する。蛍光体ホイール63に入射した光は蛍光体(図示せず)を透過して、その一部が励起されて蛍光となる。蛍光体を透過した光と、励起された蛍光とにより、光源装置61からは、赤色(R)光、緑色(G)光、青色(B)光を含む照明光が射出される。
【0075】
均一化光学系64は、光源装置61から入射した光の強度分布を均一化させる光学系であって、例えばロッドインテグレーターを有する。ダイクロイックミラー65は、均一化光学系64からの光のうちB光を透過させ、R光及びG光を反射する。ダイクロイックミラー66は、R光を透過させ、G光を反射する。ダイクロイックミラー65、66は、光源装置61からの光を色ごとに分離する色分離光学系として機能する。
【0076】
ダイクロイックミラー66を透過したR光は、反射ミラー67、68で反射した後、R光用の空間光変調装置70Rへ入射する。空間光変調装置70Rは、R光を画像信号に応じて変調する。ダイクロイックミラー66で反射したG光は、G光用の空間光変調装置70Gへ入射する。空間光変調装置70Gは、G光を画像信号に応じて変調する。ダイクロイックミラー65を透過したB光は、反射ミラー69で反射した後、B光用の空間光変調装置70Bへ入射する。空間光変調装置70R、70G、70Bは、例えば、透過型の液晶表示装置である。
【0077】
色合成光学系であるクロスダイクロイックプリズム71は、空間光変調装置70R、70G、70Bでそれぞれ変調された各色光を合成する。投写光学系72は、クロスダイクロイックプリズム71で合成された各色光をスクリーン73へ投写する。
【0078】
プロジェクター60は、冷却効率の向上により蛍光体の蛍光への変換効率の低下が抑えられた蛍光体ホイール63を備えるので、信頼性を向上させて、高品質な画像を得ることが可能となる。なお、プロジェクター60は、実施例1と同様の構成の蛍光体ホイールに代えて、他の実施例と同様の蛍光体ホイールを備えるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上のように、本発明に係る蛍光体ホイールは、プロジェクターに用いる場合に適している。
【符号の説明】
【0080】
1 蛍光体ホイール、2 基板、2a 開口、3 蛍光体、4 放熱板、4a 開口、5 回転軸、6 内側放熱板、6a 開口、6b 外周部分、7 外側放熱板、7a 開口、7b 内周部分、9 突起、10 リブ、12,14 基板、20 蛍光体ホイール、60 プロジェクター、61 光源装置、62 光源、63 蛍光体ホイール、64 均一化光学系、65,66 ダイクロイックミラー、67,68,69 反射ミラー、70R,70G,70B 空間光変調装置、71 クロスダイクロイックプリズム、72 投写光学系、73 スクリーン、X 矢印
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体ホイールおよびプロジェクター、特にレーザー光を励起させて蛍光を発する蛍光体ホイールの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プロジェクターの高性能化に関して、広色域かつ高効率な光源としてレーザーが注目されている。例えば特許文献1には、B光用のレーザーと、レーザー光によって蛍光体を励起させることでG光及びR光を蛍光として発生させるカラーホイールとにより、R、G、Bの照明光を得る技術が提案されている。
【0003】
しかしながら、高出力を得るために、蛍光体に照射される照射光の出力を高めることで、蛍光体の発熱量が増大してしまい、蛍光体が高温になってしまう。蛍光体が高温になると、蛍光への変換効率が低下し、明るさが低下してしまう。そこで、例えば特許文献2のように、カラーホイールにフィンを設けて、蛍光体の冷却を図ることも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−277516号公報
【特許文献2】特開2006−64784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カラーホイールにフィンを設けても、カラーホイールの回転に伴って空気が流動するにすぎず、あまり冷却効果を期待することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、蛍光体が高温になるのを抑えて、蛍光への変換効率の低下を抑えることができる蛍光体ホイール、およびその蛍光体ホイールを用いたプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、所定の回転軸を中心に回転可能とされた蛍光体ホイールであって、光を透過させる基板と、基板の表面に塗布された蛍光体と、蛍光体を透過する光の光路を避けるように、蛍光体よりも回転軸側である内側、および蛍光体よりも回転軸の反対側である外側の少なくとも一方に貼り付けられた放熱板と、を備えることを特徴とする。
【0008】
基板には、放熱板が貼り付けられているため、基板と蛍光体で蛍光体ホイールを構成するよりも、蛍光体ホイール全体の熱伝導率を高めることができる。これにより、蛍光体で発生した熱を、蛍光体からより離れた位置まで伝導させることができ、蛍光体の冷却効率の向上を図ることができる。また、蛍光体を透過する光の光路を避けるように放熱板が設けられているので、放熱板が光の透過の障害になりにくい。
【0009】
また、本発明の好ましい態様としては、蛍光体が塗布された面に放熱板が貼り付けられることが望ましい。蛍光体が塗布された面に放熱板が貼り付けられるので、蛍光体と放熱板との距離を近づけることができ、蛍光体と放熱板との間の熱抵抗を低減させることができる。したがって、蛍光体から放熱板へと熱が伝わりやすくなり、蛍光体の冷却効率の向上を図ることができる。
【0010】
また、本発明の好ましい態様としては、蛍光体と放熱板とが接するように設けられていることが望ましい。蛍光体と放熱板とを接触させることで、蛍光体と放熱板との間の熱抵抗をより一層低減させることができ、蛍光体の冷却効率のより一層の向上を図ることができる。
【0011】
また、本発明の好ましい態様としては、放熱板の厚さよりも蛍光体の厚さのほうが大きくなるように蛍光体が塗布されることが望ましい。蛍光体は、その厚さに高い精度が要求される場合がある。このような場合、蛍光体は、基板上に塗布された後で、型枠などを押し付けられて、その形状や厚みが整形される。ここで、蛍光体を放熱板よりも厚く形成しているので、型枠の押し付けが容易となり、蛍光体を整形しやすくすることができる。
【0012】
また、蛍光体のうち、放熱板を覆う部分は、蛍光体を透過する光の光路から外れるため、厚さのばらつきがある程度許容される。したがって、蛍光体の外周部や内周部で、型枠と蛍光体との間に隙間などができても、光路となる部分の厚さには影響がほとんどないため、不良品になりにくく、歩留まりの向上にも寄与できる。
【0013】
また、本発明の好ましい態様としては、蛍光体よりも外側に貼り付けられる放熱板は、基板よりも外側に張り出すような大きさで形成されていることが望ましい。外側に貼り付けられる放熱板が、基板よりも外側に張り出すような大きさで形成されるので、放熱板が空気に触れる面積を増やして、放熱効率を高めることができる。これにより、蛍光体の冷却効率の向上を図ることができる。
【0014】
また、蛍光体ホイールは、内側部分よりも外側部分のほうが回転する際の速度が大きくなる。また、外側部分に張り出させるほうが、内側部分に張り出させるよりも張り出し部分の面積を大きく形成しやすい。したがって、外側に貼り付けられる放熱板に、より多くの空気を触れさせることができ、放熱板からの放熱効率をより一層向上させて、蛍光体の冷却効率の向上を図ることができる。
【0015】
また、本発明の好ましい態様としては、放熱板には、突起部が形成されていることが望ましい。放熱板に突起が形成されることで、放熱板の放熱面積を増やすことができる。これにより、蛍光体から伝わる熱の放熱効率を向上させ、蛍光体の冷却効率を向上させることができる。
【0016】
また、本発明の好ましい態様としては、突起部は、蛍光体ホイールの回転方向に沿って延びる形状で形成されることが望ましい。蛍光体ホイールの回転方向に延びる形状で突起が形成されているので、蛍光体ホイールを回転させる際の空気抵抗の増加を抑えることができ、蛍光体ホイールを回転させるモーターへの負荷を抑制することができる。
【0017】
また、本発明の好ましい態様としては、突起部は、蛍光体ホイールの回転方向における前方側が尖るように形成されていることが望ましい。蛍光体ホイールの回転方向における前方側が尖った形状となるように突起が形成されているので、空気抵抗の増加をより一層抑えることができ、蛍光体ホイールを回転させるモーターへの負荷もより一層抑制することができる。
【0018】
また、本発明の好ましい態様としては、放熱板は、蛍光体の内側と外側の両方に設けられ、蛍光体の内側に設けられた放熱板と蛍光体の外側に設けられた放熱板とをつなぐ複数のリブをさらに備え、基板は、複数に分割されて、放熱板とリブとで形成される開口を塞ぐように設けられることが望ましい。
【0019】
基板が、複数に分割されて、放熱板とリブとで形成される開口を塞ぐように形成されるので、基板を小型に形成することができる。これにより、基板の使用量を減らすことができ、蛍光体ホイールの製造コストを抑制することができる。
【0020】
また、本発明の好ましい態様としては、基板は、熱伝導率の異方性を持ち、熱伝導率の高い軸が回転軸を中心とした放射線と略平行となるように設けられることが望ましい。基板の熱伝導率の高い軸が、蛍光体ホイールの回転軸を中心とする放射線と略平行となるように配置されるので、基板の内側や外側に配置された放熱板に、基板を介して熱が伝わりやすくなり、蛍光体の冷却効率の向上を図ることができる。
【0021】
また、本発明の好ましい態様としては、基板は、熱伝導率の異方性を持ち、熱伝導率の高い軸が回転軸と略平行となるように設けられることが望ましい。熱伝導率の高い軸が回転軸と略平行となるように基板が配置されるので、基板の面内での温度の偏りを抑えることができる。これにより、蛍光体での温度の偏りも抑えることができ、蛍光体の一部で蛍光への変換効率が低下することを抑えて、安定して蛍光を得やすくすることができる。
【0022】
また、本発明の好ましい態様としては、放熱板は、蛍光体の内側と外側の両方に設けられ、放熱板の間に形成される溝が、基板に向けて溝幅が狭くなるように形成されることが望ましい。蛍光体を整形するための型枠を、放熱板の間に形成された溝に挿入させて押し付ける場合、放熱板と型枠との隙間に蛍光体が入り込むことで、蛍光体の内周部や外周部が盛り上がってしまう場合がある。このように蛍光体に形成された盛り上がりが、蛍光体の厚さを均一化する上で障害となる場合がある。
【0023】
一方、放熱板の間に形成される溝が、基板に向けて溝幅が狭くなる、すなわち、溝を構成する壁面が斜面になるので、蛍光体に形成された盛り上がり部分が光の光路に含まれにくくなる。このように光路から外れた部分では、厚さのばらつきが、ある程度許容されるため、蛍光体の内周部や外周部の盛り上がりが、蛍光体の厚さを均一化する上での障害となりにくく、歩留まりの向上に寄与することができる。
【0024】
また、本発明の好ましい態様としては、放熱板の熱伝導率は、基板の熱伝導率の20倍以上であることが望ましい。放熱板の熱伝導率を基板の熱伝導率の20倍以上とすることで、蛍光体の温度上昇率を効果的に抑制することができる。
【0025】
また、本発明のプロジェクターは、光を射出する光源と、光源から射出される光が入射する位置に設けられた上記蛍光体ホイールと、蛍光体ホイールから射出された光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置と、を備えることを特徴とする。冷却効率の向上により蛍光への変換効率の低下が抑えられた蛍光体ホイールを備えるので、信頼性を向上させて、高品質な画像を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る蛍光体ホイールの概略構成を示す外観斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す蛍光体ホイールの横断面図である。
【図3】図3は、放熱板の熱伝導率と蛍光体の温度上昇量との関係を示す図である。
【図4】図4は、実施例1の変形例1に係る蛍光体ホイールの横断面図である。
【図5】図5は、実施例1の変形例2に係る蛍光体ホイールの横断面図である。
【図6】図6は、実施例1の変形例3に係る蛍光体ホイールの横断面図である。
【図7】図7は、実施例1の変形例4に係る蛍光体ホイールの横断面図である。
【図8】図8は、実施例1の変形例5に係る蛍光体ホイールの概略構成を示す外観斜視図である。
【図9】図9は、図8に示す蛍光体ホイールの横断面図である。
【図10】図10は、実施例1の変形例6に係る蛍光体ホイールの横断面図である。
【図11】図11は、本発明の実施例2に係る蛍光体ホイールの概略構成を示す平面図である。
【図12】図12は、図10に示す蛍光体ホイールの分解図である。
【図13】図13は、実施例2の変形例1に係る蛍光体ホイールの平面図である。
【図14】図14は、図13に示す蛍光体ホイールの分解図である。
【図15】図15は、本発明の実施例3に係るプロジェクターの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明の実施例1に係る蛍光体ホイールの概略構成を示す外観斜視図である。図2は、図1に示す蛍光体ホイールの横断面図である。
【0029】
蛍光体ホイール1は、光源から射出された光を励起させて蛍光を発生させるためのものである。蛍光体ホイール1は、基板2、蛍光体3、放熱板4を備えて構成される。基板2は、円形の薄板形状を呈する。基板2は、透明部材で構成されており、光を透過する性質を有する。基板2には、例えば、ガラス、白板、石英、水晶、サファイア、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)などが用いられる。
【0030】
基板2の中心には、円形の開口2aが形成されている。開口2aには、蛍光体ホイール1を回転させるためのモーター(図示せず)の駆動軸が挿入される。これにより、基板2の中心を通る回転軸5を中心に、基板2は回転可能とされる。
【0031】
蛍光体3は、基板2の中心と同じ中心の環状形状で、基板2の表面に塗布される。蛍光体3は、例えば、蛍光物質をバインダー(樹脂材料)に混合させたものを、基板2の表面に塗布することで形成される。蛍光体3が塗布された環状部分を透過する光の一部は、蛍光体3によって励起され、蛍光を発生させる。
【0032】
図示しない光源から、基板2に塗布された蛍光体3に向けてレーザー光などの光が照射される。ここで、蛍光体3のごく一部(例えば、1mm2程度)の領域に向けてレーザー光が照射される。そして、蛍光体ホイール1を、回転軸5を中心に回転させることで、蛍光体3の光が照射される領域が常に移動するように構成される。
【0033】
放熱板4は、薄板形状を呈し、基板2の表面に貼り付けられる。放熱板4は、比較的熱伝導率の高い材質のもので構成され、例えばアルミニウム板や銅板が用いられる。放熱板4は、蛍光体3よりも回転軸5側(以下、内側という)に貼り付けられる内側放熱板6と、蛍光体3よりも回転軸5の反対側(以下、外側という)に貼り付けられる外側放熱板7とを有して構成される。
【0034】
内側放熱板6には、基板2に形成された開口2aと重なるように、円形の開口6aが形成され、全体として環状形状を呈する。内側放熱板6に形成された開口6aにも、モーターの駆動軸が挿入される。内側放熱板6は、蛍光体3を透過する光の光路を避けつつ、その外周部分6bが蛍光体3に接するように形成される。
【0035】
外側放熱板7には、蛍光体3の外径と略同じ径の開口7aが形成され、全体として環状形状を呈する。外側放熱板7は、蛍光体3を透過する光の光路を避けつつ、その内周部分7bが蛍光体3に接するように形成される。また、外側放熱板7は、図2に示すように、基板2よりも外側に張り出すような大きさで形成される。
【0036】
図3は、放熱板4の熱伝導率を変化させた場合の、蛍光体3の温度上昇量を示す図である。図3では、熱伝導率が1W/k・mであるガラス板を基板2として用いた。そして、放熱板4の熱伝導率を変化させ、すなわち放熱板4の材質を変化させて、蛍光体3の温度上昇量を計測した。
【0037】
図3に示すように、放熱板4の熱伝導率が20W/k・mを超える付近、すなわち、放熱板4の熱伝導率が基板2の熱伝導率の20倍となる付近から、蛍光体3の温度上昇率を抑制する効果が顕著になる。そこで、放熱板4には、その熱伝導率が基板2の熱伝導率の20倍以上となる材質のものを用いることが好ましい。例えば、基板2にガラス板を用いた場合には、熱伝導率が約200W/k・m程度のアルミニウム板や、約350W/k・m程度の銅板を用いることができる。
【0038】
以上のように構成された蛍光体ホイール1には、蛍光体ホイール1を回転させた状態で、蛍光体3に向けてレーザー光などの光が照射される。蛍光体3に向けて照射された光は、基板2を透過し、蛍光体3に入射する。蛍光体3に入射した光の一部が励起されて蛍光となり、蛍光体3から射出される。蛍光体3を透過する光のエネルギーの一部が熱に変換されるため、蛍光体3は非常に高温になりやすい。
【0039】
ここで、上述したように、蛍光体ホイール1の回転によって、蛍光体3への光の入射領域が常に移動するようになる。光の入射領域を移動させることで、蛍光体3を全体的に満遍なく温度上昇させることができる。これにより、蛍光体3の一部だけで急激に温度が上昇し、蛍光への変換効率が低下したり、基板2が破損したりするのを抑制することができる。
【0040】
また、基板2には、放熱板4が貼り付けられているため、蛍光体ホイール1全体の熱伝導率を、基板2の熱伝導率よりも高めることができる。これにより、蛍光体3で発生した熱を、蛍光体3からより離れた位置まで伝導させることができ、蛍光体3の冷却効率の向上を図ることができる。
【0041】
また、内側放熱板6は、その外周部分6bが蛍光体3に接するように形成されるので、蛍光体3で発生した熱が内側放熱板6に直接伝わるので、基板2を介するよりも熱抵抗を低減させることができ、蛍光体3が冷却されやすくなる。また、内側放熱板6は、蛍光体3を透過する光の光路を避けるように設けられているので、光の透過の障害になりにくい。
【0042】
また、外側放熱板7は、その内周部分7bが蛍光体3に接するように形成されるので、蛍光体3で発生した熱が外側放熱板7に直接伝わるので、基板2を介するよりも熱抵抗を低減させることができ、蛍光体3が冷却されやすくなる。また、外側放熱板7は、蛍光体3を透過する光の光路を避けるように設けられているので、光の透過の障害になりにくい。
【0043】
外側放熱板7が、基板2よりも外側に張り出すような大きさで形成されるので、外側放熱板7が空気に触れる面積を増やして、放熱効率を高めることができる。これにより、蛍光体3の冷却効率の向上を図ることができる。
【0044】
また、蛍光体ホイール1は、内側部分よりも外側部分のほうが回転する際の速度が大きくなる。また、内側部分に張り出させるよりも張り出し部分の面積を大きく形成しやすい。したがって、外側放熱板7に、より多くの空気を触れさせることができ、放熱板4からの放熱効率をより一層向上させて蛍光体3の冷却効率を向上させることができる。
【0045】
また、熱伝導率に異方性を有する材料で基板2が構成されている場合には、熱伝導率の高い軸が回転軸5と略平行となるように基板2を配置してもよい。このように基板2を配置することで、基板2の面内での温度の偏りを抑えることができる。これにより、蛍光体3での温度の偏りも抑えることができるので、蛍光体3の一部で蛍光への変換効率が低下するのを抑えて、安定して蛍光を得やすくなる。
【0046】
図4は、実施例1の変形例1に係る蛍光体ホイール1の横断面図である。本変形例1では、放熱板4の厚さよりも蛍光体3の厚さのほうが大きくなるように蛍光体3が塗布される。この場合、基板2に対して放熱板4を先に貼り付けてから、蛍光体3を塗布することが好ましい。
【0047】
蛍光体3は、その厚さに高い精度が要求される場合がある。このような場合、蛍光体3は、基板2上に塗布された後で、型枠などを押し付けられて、その形状や厚みが整形される。ここで、蛍光体3を放熱板4よりも厚く形成する場合には、内側放熱板6と外側放熱板7との隙間に型枠を挿入させずに済むため、型枠の押し付けが容易となり、蛍光体3を整形しやすい。
【0048】
また、蛍光体3のうち、放熱板4を覆う部分は、蛍光体3を透過する光の光路から外れるため、厚さのばらつきがある程度許容される。したがって、蛍光体3の外周部や内周部で、型枠と蛍光体3との間に隙間などができても、光路となる部分の厚さには影響がほとんどないため、不良品の発生を抑えて、歩留まりの向上に寄与することができる。
【0049】
また、放熱板4が先に貼り付けられた状態で基板2に蛍光体3を塗布するので、蛍光体3が放熱板4に接触しやすく、蛍光体3と放熱板4とが離間することによる冷却効率の低下を抑えることができる。
【0050】
図5は、実施例1の変形例2に係る蛍光体ホイール1の横断面図である。本変形例1では、蛍光体3の厚さよりも放熱板4の厚さのほうが大きくなるように蛍光体3が塗布される。蛍光体3の厚さよりも放熱板4の厚さのほうを大きくするために、放熱板4の厚さを増すことができる。これにより、放熱板4が吸収できる熱の容量が増すため、蛍光体3から発生した熱が放熱板4に伝わりやすくなり、蛍光体3の冷却効率の向上を図ることができる。
【0051】
なお、本変形例2でも、変形例1と同様に、放熱板4を先に貼り付けてから、基板2に蛍光体3を塗布することで、蛍光体3が放熱板4に接触しやすくなる。これにより、蛍光体3と放熱板4とが離間することによる冷却効率の低下を抑えることができる。
【0052】
図6は、実施例1の変形例3に係る蛍光体ホイール1の横断面図である。本変形例3では、内側放熱板6と外側放熱板7との間に形成される溝が、基板2に向けて狭くなる。より具体的には、溝の壁面となる内側放熱板6の外周部分6bと、外側放熱板7の内周部分7bとが、図6に示すような斜面となるように形成されている。
【0053】
また、本変形例3では、変形例2と同様に、蛍光体3の厚さよりも放熱板4の厚さのほうが大きくなるように蛍光体3が塗布される。つまり、蛍光体3のほうが放熱板4よりも薄く形成される。この場合に、蛍光体3を型枠で整形するには、内側放熱板6と外側放熱板7との間に型枠を挿入させる必要がある。
【0054】
蛍光体3を整形するための型枠は、内側放熱板6と外側放熱板7との間に挿抜する必要があるため、放熱板4の間に挿入した際に、放熱板4との間に隙間ができてしまう。そして、型枠を蛍光体3に押し付けた際に、放熱板4と型枠との隙間に蛍光体3が入り込むことで、蛍光体3の内周部や外周部が盛り上がってしまう場合がある。
【0055】
このように、蛍光体3に形成された盛り上がりが、蛍光体3の厚さを均一化する上で障害となる場合がある。一方、本変形例3では、蛍光体3の内周部や外周部の盛り上がりが、斜面になっている内側放熱板6の外周部分6bや外側放熱板7の内周部分7bに遮られることで、蛍光体3を透過する光の光路に含まれにくくなる。上述したように、光路から外れた部分では、厚さのばらつきがある程度許容されるため、蛍光体3の内周部や外周部の盛り上がりが、蛍光体3の厚さを均一化する上での障害となりにくく、歩留まりの向上に寄与することができる。
【0056】
図7は、実施例1の変形例4に係る蛍光体ホイール1の横断面図である。本変形例4では、放熱板4と蛍光体3との間に隙間が形成されている。このような隙間は、基板2に対して先に蛍光体3を塗布してから、放熱板4を貼り付けた場合に生じやすい。隙間が形成されることで、蛍光体3で発生した熱が基板2を介して放熱板4に伝わるため、蛍光体3の冷却効率が、隙間が無い場合に比べて劣る場合がある。しかし、放熱板4が貼り付けられていない基板2に対して蛍光体3を塗布することができるので、蛍光体3の形状や厚さを整形しやすくなる。
【0057】
図8は、実施例1の変形例5に係る蛍光体ホイール1の概略構成を示す外観斜視図である。図9は、図8に示す蛍光体ホイール1の横断面図である。本変形例4では、内側放熱板6のみを基板2に貼り付けている。このように、外側放熱板を設けずに構成することで、蛍光体ホイール1のコンパクト化を図ることができる。また、部品点数を削減し、製造コストの抑制を図ることができる。
【0058】
図10は、実施例1の変形例6に係る蛍光体ホイール1の横断面図である。本変形例4では、放熱板4に突起9が形成されている。突起9は、放熱板4のうち、より外周側に近いほうに並列して形成されている。突起9は、蛍光体ホイール1の回転方向(矢印Xに示す方向)に延びる形状で形成されている。突起9は、蛍光体ホイール1の回転方向における前方側が尖った形状となるように形成されている。
【0059】
放熱板4に突起9が形成されることで、放熱板4の放熱面積を増やすことができる。これにより、蛍光体3から伝わる熱の放熱効率を向上させ、蛍光体3の冷却効率を向上させることができる。
【0060】
また、突起9は、放熱板4の外周側に近づけて形成されているので、蛍光体ホイール1を回転させた際に、内周側に近づけて形成するよりも突起9の速度を大きくすることができる。したがって、突起9に、より多くの空気を触れさせることができ、放熱板4からの放熱効率をより一層向上させて、蛍光体3の冷却効率を向上させることができる。
【0061】
また、突起9は、蛍光体ホイール1の回転方向に延びる形状で形成されているので、蛍光体ホイール1を回転させる際の空気抵抗の増加を抑えることができ、蛍光体ホイール1を回転させるモーターへの負荷を抑制することができる。また、突起9は、蛍光体ホイール1の回転方向における前方側が尖った形状となるように形成されているので、空気抵抗の増加をより一層抑えることができ、蛍光体ホイール1を回転させるモーターへの負荷もより一層抑制することができる。
【0062】
また、放熱板4に形成された突起9を、バランスウエイトとすれば、蛍光体ホイール1の回転を安定化させることができる。なお、突起9を、放熱板4上に、二重に設けたり、三重に設けたりして、より一層の蛍光体3の冷却効率の向上を図ってもよい。また、突起9を、外側放熱板に形成してもよい。
【実施例2】
【0063】
図11は、本発明の実施例2に係る蛍光体ホイールの概略構成を示す平面図である。図12は、図10に示す蛍光体ホイールの分解図である。上記実施例と同様の構成については、同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0064】
本実施例2では、基板12が、内側放熱板6と外側放熱板7との間を塞ぐことのできる環状の薄板を4分割した形状で構成されている。また、基板12の表面には蛍光体3が塗布されている。蛍光体3の塗布は、放熱板4に貼り付ける前に行ってもよいし、放熱板4に貼り付けてから行ってもよい。
【0065】
このように、基板12が、内側放熱板6と外側放熱板7との間を塞ぐことのできる環状の薄板を4分割した形状で構成されているので、上記実施例1に比べて、基板12の使用量を抑えて、蛍光体ホイール20の製造コストの抑制を図ることができる。
【0066】
なお、基板12が複数に分割して貼り付けられるので、熱伝導率に異方性を有する材料で基板12が構成されている場合には、基板12ごとに熱伝導率が高い軸を異なる方向に向けて配置することができる。
【0067】
例えば、基板12の熱伝導率の高い軸が、蛍光体ホイール20の回転軸5を中心とする放射線と略平行となるように配置してもよい。このように基板12を配置することで、基板12の内側や外側に配置された放熱板4に、基板12を介して熱が伝わりやすくなり、蛍光体3の冷却効率の向上を図ることができる。
【0068】
なお、基板12の全体で、熱伝導率の高い軸を、回転軸5を中心とする放射線と平行にすることが難しい場合には、基板12の一部、例えば基板12の中央部分で、熱伝導率の高い軸と回転軸5を中心とする放射線とが平行となるように基板12を配置してもよい。また、基板12は4分割する場合に限られず、その分割数は適宜変更可能である。
【0069】
図13は、実施例2の変形例1に係る蛍光体ホイール20の平面図である。図14は、図13に示す蛍光体ホイール20の分解図である。本変形例1では、放熱板4が、内側放熱板6、外側放熱板7、リブ10を有して構成される。リブ10は、内側放熱板6と外側放熱板7とをつなぐように複数設けられている。この構成により、放熱板4には、内側放熱板6、外側放熱板7、およびリブ10に囲まれた複数の開口4aが形成される。
【0070】
基板14は、それぞれの開口4aを塞ぐことのできる、平面視円弧状の薄板形状に形成される。基板14は、実施例1と同様に光の透過可能な透明材料で構成される。基板14は、放熱板4の開口4aを塞ぐように、放熱板4に貼り付けられる。
【0071】
また、基板14の表面には蛍光体3が塗布されている。蛍光体3の塗布は、放熱板4に貼り付ける前に行ってもよいし、放熱板4に貼り付けてから行ってもよい。
【0072】
このように、基板14が、それぞれの開口4aを塞ぐことのできる、平面視円弧状の薄板形状に形成されるので、環状形状の薄板を分割して基板14とする場合よりも、さらに基板14の使用量を減らすことができ、蛍光体ホイール20の製造コストをより一層抑制することができる。
【0073】
なお、基板14ごとに、熱伝導率の高い軸を異ならせて配置できるのは、上述したものと同様である。また、図13,14では、開口4aが4つ形成される場合を示しているが、これに限られず、開口4aの数は適宜変更可能である。
【実施例3】
【0074】
図15は、本発明の実施例3に係るプロジェクターの概略構成を示す図である。本実施例3に係るプロジェクター60は、実施例1に係る蛍光体ホイール1同様に構成された蛍光体ホイール63を有する光源装置61を備える。蛍光体ホイール63には、光源62から射出されたレーザー光が入射する。蛍光体ホイール63に入射した光は蛍光体(図示せず)を透過して、その一部が励起されて蛍光となる。蛍光体を透過した光と、励起された蛍光とにより、光源装置61からは、赤色(R)光、緑色(G)光、青色(B)光を含む照明光が射出される。
【0075】
均一化光学系64は、光源装置61から入射した光の強度分布を均一化させる光学系であって、例えばロッドインテグレーターを有する。ダイクロイックミラー65は、均一化光学系64からの光のうちB光を透過させ、R光及びG光を反射する。ダイクロイックミラー66は、R光を透過させ、G光を反射する。ダイクロイックミラー65、66は、光源装置61からの光を色ごとに分離する色分離光学系として機能する。
【0076】
ダイクロイックミラー66を透過したR光は、反射ミラー67、68で反射した後、R光用の空間光変調装置70Rへ入射する。空間光変調装置70Rは、R光を画像信号に応じて変調する。ダイクロイックミラー66で反射したG光は、G光用の空間光変調装置70Gへ入射する。空間光変調装置70Gは、G光を画像信号に応じて変調する。ダイクロイックミラー65を透過したB光は、反射ミラー69で反射した後、B光用の空間光変調装置70Bへ入射する。空間光変調装置70R、70G、70Bは、例えば、透過型の液晶表示装置である。
【0077】
色合成光学系であるクロスダイクロイックプリズム71は、空間光変調装置70R、70G、70Bでそれぞれ変調された各色光を合成する。投写光学系72は、クロスダイクロイックプリズム71で合成された各色光をスクリーン73へ投写する。
【0078】
プロジェクター60は、冷却効率の向上により蛍光体の蛍光への変換効率の低下が抑えられた蛍光体ホイール63を備えるので、信頼性を向上させて、高品質な画像を得ることが可能となる。なお、プロジェクター60は、実施例1と同様の構成の蛍光体ホイールに代えて、他の実施例と同様の蛍光体ホイールを備えるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上のように、本発明に係る蛍光体ホイールは、プロジェクターに用いる場合に適している。
【符号の説明】
【0080】
1 蛍光体ホイール、2 基板、2a 開口、3 蛍光体、4 放熱板、4a 開口、5 回転軸、6 内側放熱板、6a 開口、6b 外周部分、7 外側放熱板、7a 開口、7b 内周部分、9 突起、10 リブ、12,14 基板、20 蛍光体ホイール、60 プロジェクター、61 光源装置、62 光源、63 蛍光体ホイール、64 均一化光学系、65,66 ダイクロイックミラー、67,68,69 反射ミラー、70R,70G,70B 空間光変調装置、71 クロスダイクロイックプリズム、72 投写光学系、73 スクリーン、X 矢印
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の回転軸を中心に回転可能とされた蛍光体ホイールであって、
光を透過させる基板と、
前記基板の表面に塗布された蛍光体と、
前記蛍光体を透過する光の光路を避けるように、前記蛍光体よりも前記回転軸側である内側、および前記蛍光体よりも前記回転軸の反対側である外側の少なくとも一方に貼り付けられた放熱板と、を備えることを特徴とする蛍光体ホイール。
【請求項2】
前記蛍光体が塗布された面に前記放熱板が貼り付けられることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体ホイール。
【請求項3】
前記蛍光体と前記放熱板とが接するように設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光体ホイール。
【請求項4】
前記放熱板の厚さよりも前記蛍光体の厚さのほうが大きくなるように前記蛍光体が塗布されることを特徴とする請求項2または3に記載の蛍光体ホイール。
【請求項5】
前記蛍光体よりも外側に貼り付けられる前記放熱板は、前記基板よりも外側に張り出すような大きさで形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。
【請求項6】
前記放熱板には、突起部が形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。
【請求項7】
前記突起部は、前記蛍光体ホイールの回転方向に沿って延びる形状で形成されることを特徴とする請求項6に記載の蛍光体ホイール。
【請求項8】
前記突起部は、前記蛍光体ホイールの回転方向における前方側が尖るように形成されていることを特徴とする請求項6または7に記載の蛍光体ホイール。
【請求項9】
前記放熱板は、前記蛍光体の内側と外側の両方に設けられ、
前記蛍光体の内側に設けられた放熱板と前記蛍光体の外側に設けられた放熱板とをつなぐ複数のリブをさらに備え、
前記基板は、複数に分割されて、前記放熱板と前記リブとで形成される開口を塞ぐように設けられることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。
【請求項10】
前記基板は、熱伝導率の異方性を持ち、熱伝導率の高い軸が前記回転軸を中心とした放射線と略平行となるように設けられることを特徴とする請求項9に記載の蛍光体ホイール。
【請求項11】
前記基板は、熱伝導率の異方性を持ち、熱伝導率の高い軸が前記回転軸と略平行となるように設けられることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。
【請求項12】
前記放熱板は、前記蛍光体の内側と外側の両方に設けられ、
前記放熱板の間に形成される溝が、前記基板に向けて溝幅が狭くなるように形成されることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。
【請求項13】
前記放熱板の熱伝導率は、前記基板の熱伝導率の20倍以上であることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。
【請求項14】
光を射出する光源と、
前記光源から射出される光が入射する位置に設けられた請求項1から13のいずれか1項に記載の蛍光体ホイールと、
前記蛍光体ホイールから射出された光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置と、を備えることを特徴とするプロジェクター。
【請求項1】
所定の回転軸を中心に回転可能とされた蛍光体ホイールであって、
光を透過させる基板と、
前記基板の表面に塗布された蛍光体と、
前記蛍光体を透過する光の光路を避けるように、前記蛍光体よりも前記回転軸側である内側、および前記蛍光体よりも前記回転軸の反対側である外側の少なくとも一方に貼り付けられた放熱板と、を備えることを特徴とする蛍光体ホイール。
【請求項2】
前記蛍光体が塗布された面に前記放熱板が貼り付けられることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体ホイール。
【請求項3】
前記蛍光体と前記放熱板とが接するように設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光体ホイール。
【請求項4】
前記放熱板の厚さよりも前記蛍光体の厚さのほうが大きくなるように前記蛍光体が塗布されることを特徴とする請求項2または3に記載の蛍光体ホイール。
【請求項5】
前記蛍光体よりも外側に貼り付けられる前記放熱板は、前記基板よりも外側に張り出すような大きさで形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。
【請求項6】
前記放熱板には、突起部が形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。
【請求項7】
前記突起部は、前記蛍光体ホイールの回転方向に沿って延びる形状で形成されることを特徴とする請求項6に記載の蛍光体ホイール。
【請求項8】
前記突起部は、前記蛍光体ホイールの回転方向における前方側が尖るように形成されていることを特徴とする請求項6または7に記載の蛍光体ホイール。
【請求項9】
前記放熱板は、前記蛍光体の内側と外側の両方に設けられ、
前記蛍光体の内側に設けられた放熱板と前記蛍光体の外側に設けられた放熱板とをつなぐ複数のリブをさらに備え、
前記基板は、複数に分割されて、前記放熱板と前記リブとで形成される開口を塞ぐように設けられることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。
【請求項10】
前記基板は、熱伝導率の異方性を持ち、熱伝導率の高い軸が前記回転軸を中心とした放射線と略平行となるように設けられることを特徴とする請求項9に記載の蛍光体ホイール。
【請求項11】
前記基板は、熱伝導率の異方性を持ち、熱伝導率の高い軸が前記回転軸と略平行となるように設けられることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。
【請求項12】
前記放熱板は、前記蛍光体の内側と外側の両方に設けられ、
前記放熱板の間に形成される溝が、前記基板に向けて溝幅が狭くなるように形成されることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。
【請求項13】
前記放熱板の熱伝導率は、前記基板の熱伝導率の20倍以上であることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。
【請求項14】
光を射出する光源と、
前記光源から射出される光が入射する位置に設けられた請求項1から13のいずれか1項に記載の蛍光体ホイールと、
前記蛍光体ホイールから射出された光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置と、を備えることを特徴とするプロジェクター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−8177(P2012−8177A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141387(P2010−141387)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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