蛍光体微粒子分散液の製造方法、蛍光体微粒子分散液、コンポジット材の製造方法、及びコンポジット材
【課題】分散操作に伴う蛍光体微粒子表面の欠陥の発生を抑制しつつ蛍光体微粒子を分散媒に均一させる蛍光体微粒子分散液の製造方法、粒子表面の欠陥が少ない蛍光体微粒子が分散媒に均一分散した蛍光体微粒子分散液を提供する。
【解決手段】ローター15、ステータ12及び遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えるビーズミル2を用い、一次粒子径が2nmから20μmの蛍光体微粒子を分散媒に均一分散させる蛍光体微粒子分散液の製造方法であって、分散剤を添加し、かつ前記ビーズに極微小ビーズを使用すると共に前記ローターの回転速度を低速とし、前記蛍光体微粒子に与えるビーズ衝撃力を小さくし、前記蛍光体微粒子表面の欠陥の発生を抑制しつつ蛍光体微粒子を分散媒に均一分散させる。
【解決手段】ローター15、ステータ12及び遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えるビーズミル2を用い、一次粒子径が2nmから20μmの蛍光体微粒子を分散媒に均一分散させる蛍光体微粒子分散液の製造方法であって、分散剤を添加し、かつ前記ビーズに極微小ビーズを使用すると共に前記ローターの回転速度を低速とし、前記蛍光体微粒子に与えるビーズ衝撃力を小さくし、前記蛍光体微粒子表面の欠陥の発生を抑制しつつ蛍光体微粒子を分散媒に均一分散させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体微粒子を分散媒に均一分散させる分散液の製造方法及び蛍光体微粒子分散液、並びにポリマー中に蛍光体微粒子を均一分散させるコンポジット材の製造方法及びコンポジット材に関する。
本発明において、溶媒とは、少なくとも水、水溶液、水溶系溶剤、非水系溶剤又はこれらを2種以上含む混合物を言い、さらには反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、反応性溶媒などを含む場合もある。また分散媒とは、溶媒、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、分散剤又はこれらを2種以上含む混合物を言い、分散液とは分散媒に微粒子を分散させた液を言う。また、分散媒体とは、高分子などの固体状の分散媒体を言い、分散媒体に微粒子が分散、固定化されたものをコンポジット材と言う。
【背景技術】
【0002】
現在、白色LED(Light Emitting Diode)をはじめLEDと蛍光材料とを組み合わせた発光素子の開発研究が活発に行われている。白色LEDは、一般的に青色を発する青色発光ダイオードと、青色発光ダイオードから放射される光により励起され黄色を発する黄色発光蛍光体とを組み合わせることで実現される。青色発光ダイオードと黄色発光蛍光体とを組み合わせた従来の白色LEDの平均演算色評価数(Ra)は85前後であり、この値を高めるための提案がなされている。白色LEDと赤色LEDとを混在させることにより演色性を改善する方法は、コスト高となると共に演色性の経時変化が大きいとし、白色LEDと赤色の光を発光する赤色蛍光体を有し、器具全体としての発光スペクトルを目的の発光スペクトルとなるように調整する発光スペクトル調整部を備える白色LEDを用いた照明器具が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
蛍光体に関しては、次のような課題も指摘されている。ディスプレイに用いられている蛍光体の粒径は3〜10μm程度であり、粒子径の大きさが十分に小さくないため光学的なロスがある。蛍光体粒子の発光現象は表面領域での現象であり、蛍光体粒子の粒子径を小さすると比表面積が増加しそれだけ蛍光体粒子単位重量あたりの発光効率が増加することに大きなメリットがある。しかし、従来からサブミクロンサイズにまで蛍光体粒子を微細化すると蛍光体の発光強度が低下してくるため、その効果が相殺されると考えられるが、近年蛍光強度の向上したサブミクロン蛍光体やナノ蛍光体が試作されていて(例えば非特許文献1、非特許文献2参照)、蛍光体の微細化は多くの利点がある。特にナノサイズまで微細化されると、可視光領域での光が散乱されない透明体となるため、さらに発光強度の高い蛍光体となることが期待される。微細化の利点として蛍光体の使用量が減少することは、ディスプレイの小型化および省エネ化などが挙げられるため重要な課題である。例えば、粒子径5μmの蛍光体微粒子を用いて形成した厚さ19μmの蛍光体膜(例えば、蛍光体微粒子5層、充填率は25%、密度5g/cm3の場合)について、それに替わり粒子径0.5μmの蛍光体微粒子を用いると、同様に5層の粒子からなる膜を形成させると、その蛍光体膜の厚みは約2μmとなり、5μmの蛍光体微粒子の場合と比べて1/10の蛍光体重量に相当することが分かる。このように蛍光体の使用量は削減され発光体の小型に繋がる利点がある。しかしながら、一般に微粒子の粒子径が小さくなると粒子同士が安定な凝集状態を取り易くなり、微粒子の持つ機能性を上げるためには微粒子の分散操作が必然的に伴ってくる。蛍光体微粒子では、光学材料に適用させる場合、通常バインダーとしての光学樹脂などの分散媒体中に分散・固定化させることによるコンポジット材を形成して使用されるけれども、このとき分散性を高めるために蛍光体の表面を化合物で被覆する方法では輝度の劣化が起こるため、新たな高輝度のナノサイズ蛍光体が提案されている(例えば特許文献2および非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−52994号公報
【特許文献2】特開2007−99963号公報
【非特許文献1】B.Xia,I.W.Lenggoro and K.Okuyama:Novel Route to Nanoparticle Synthesis by Salt−Assisted Aerosol Decomposition,Adv.Mater.,13(20),1579−1582(2001)
【非特許文献2】I.W.Lenggoro,B.Xia,H.Mizushima,K.Okuyama and N.Kijima:Synthesis of LaPO4:Eu,Tb Phosphor Particles by Spray Pyrolysis,Mater.Lett.,50(2−3),92−96(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上に述べたように蛍光体材料を白色LEDなどの照明装置、ディスプレイなどで効率良く使用するには、蛍光体微粒子を高分子などの分散媒体に均一に分散し固定化させる必要があるが、微粒子は凝集力が強く、通常は粒子が凝集した状態で存在するため、凝集した蛍光体微粒子を分散媒に均一分散させることは容易ではない。蛍光体材料は結晶構造が重要で特に表面領域の構造がポイントであり、外部応力により材料表面に欠陥が生じ、結晶性が低下すると発光強度が低下するので、凝集する蛍光体微粒子の分散操作をより難しいものとしている。現在、分散操作時に蛍光体微粒子の表面に欠陥や結晶性の低下を生じさせることなく蛍光体微粒子を高分子などの分散媒体に均一に固定化させる技術は確立されていない。
【0005】
本発明の目的は、分散操作に伴う蛍光体微粒子表面の欠陥の発生を抑制しつつ蛍光体微粒子を分散媒に均一させる蛍光体微粒子分散液の製造方法、粒子表面の欠陥が少なく結晶性の低下しない蛍光体微粒子が分散媒に均一分散した蛍光体微粒子分散液を提供することである。また、蛍光体微粒子が高分子などの分散媒体に均一分散しかつ高い発光強度が得られるコンポジット材の製造方法及びそのコンポジット材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、ローター、ステータ及び遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えるビーズミルを用い、一次粒子径が2nmから20μmの蛍光体微粒子を分散媒に均一分散させる蛍光体微粒子分散液の製造方法であって、分散剤を添加し、かつ前記ビーズに極微小ビーズを使用すると共に前記ローターの回転速度を低速とし、前記蛍光体微粒子に与えるビーズ衝撃力を小さくし、前記蛍光体微粒子表面の欠陥の発生及び結晶性の低下を抑制しつつ蛍光体微粒子を分散媒に均一分散させることを特徴とする蛍光体微粒子分散液の製造方法である。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有しかつ反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと反応しない溶媒に分散剤を添加し、一次粒子径が2nmから20μmの蛍光体微粒子を、ローター、ステータ及び遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えるビーズミルを用い、前記ビーズに極微小ビーズを使用すると共に前記ローターの回転速度を低速とし、前記蛍光体微粒子に与えるビーズ衝撃力を小さくし、前記蛍光体微粒子表面の欠陥の発生及び結晶性の低下を抑制しつつ蛍光体微粒子を前記溶媒に均一分散させる第一工程と、第一工程で得られる分散液に前記反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合する第二工程と、第二工程で得られる分散液から前記溶媒を除去し、前記反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを分散媒とする蛍光体微粒子が均一分散した分散液を得る第三工程と、を含むことを特徴とする蛍光体微粒子分散液の製造方法である。
【0008】
請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載の蛍光体微粒子分散液の製造方法の構成に加え、さらに前記第三工程で得られる分散液に、前記第二工程で加えた第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有し、かつ前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは異なる第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合する第四工程と、第四工程で得られる分散液から第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去し、前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを分散媒とする蛍光体微粒子が均一分散した分散液を得る第五工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項の方法で製造された蛍光体微粒子分散液である。
【0010】
請求項5に記載の本発明は、請求項4で得られる蛍光体微粒子分散液を重合させ、又は請求項4で得られる蛍光体微粒子分散液に重合開始剤を添加した後、重合させコンポジット材を製造することを特徴とするコンポジット材の製造方法である。
【0011】
請求項6に記載の本発明は、前記第二工程で得られる分散液から溶媒を除去しつつ反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させ、又は前記第二工程で得られる分散液に重合開始剤を添加した後、溶媒を除去しつつ反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させコンポジット材を製造することを特徴とするコンポジット材の製造方法である。
【0012】
請求項7に記載の本発明は、前記第二工程で得られる分散液に前記第二工程で加えた第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有し、かつ前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは異なる第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合し、該分散液から前記溶媒及び前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去しつつ前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させ、又は前記第二工程で得られる分散液に前記第二工程で加えた第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有し、かつ前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは異なる第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、及び重合開始剤を添加した後、前記分散液から前記溶媒及び前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去しつつ前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させコンポジット材を製造することを特徴とするコンポジット材の製造方法である。
【0013】
請求項8に記載の本発明は、前記第四工程で得られる分散液から前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去しつつ前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させ、又は前記第四工程で得られる分散液に重合開始剤を添加した後、前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去しつつ前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させコンポジット材を製造することを特徴とするコンポジット材の製造方法である。
【0014】
請求項9に記載の本発明は、第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、該第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有しかつ該第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと反応しない溶媒、該第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有しかつ該第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは異なる第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、及び分散剤を分散媒とし、一次粒子径が2nmから20μmの蛍光体微粒子を、ローター、ステータ及び遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えるビーズミルを用い、前記ビーズに極微小ビーズを使用すると共に前記ローターの回転速度を低速とし、前記蛍光体微粒子に与えるビーズ衝撃力を小さくし、前記蛍光体微粒子表面の欠陥の発生を抑制しつつ前記分散媒に均一分散させ、該分散液から前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、及び前記溶媒を除去しつつ前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させ、又は該分散液に重合開始剤を添加した後、該分散液から前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、及び前記溶媒を除去しつつ前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させコンポジット材を製造することを特徴とするコンポジット材の製造方法である。
【0015】
請求項10に記載の本発明は、請求項5から請求項9のいずれか1項の方法で製造されたコンポジット材である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の蛍光体微粒子分散液の製造方法を用いることにより、分散操作に伴う蛍光体微粒子表面の欠陥の発生を抑制しつつ蛍光体微粒子を分散媒に均一させることが可能となり、粒子表面の欠陥が少ない蛍光体微粒子が分散媒に均一分散した蛍光体微粒子分散液を製造することができる。また、本発明のコンポジット材の製造方法を用いることにより、蛍光体微粒子が高分子などの分散媒体に均一分散しかつ高い発光強度が得られるコンポジット材を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の蛍光体微粒子分散液の製造方法は、ローター、ステータ及び遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えるビーズミルを用い、一次粒子径が2nmから20μmの蛍光体微粒子を分散媒に均一分散させる際、分散媒に分散剤を添加し、かつビーズに極微小ビーズを使用すると共にビーズミルのローターの回転速度を低速とし、蛍光体微粒子を分散媒に均一分散させる方法である。これにより蛍光体微粒子に与えるビーズ衝撃力を小さくすることができ、蛍光体微粒子表面の欠陥の発生を抑制しつつ蛍光体微粒子を分散媒に均一分散させることがでる。この方法で得られる蛍光体微粒子分散液中の蛍光体微粒子は、分散操作に伴い蛍光体微粒子表面に欠陥が殆ど生じなく結晶性も低下しないので高い発光強度が得られる。
【0018】
本発明の蛍光体微粒子分散液の製造で使用可能なビーズミルは、ローター、ステータ及び遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えるビーズミルであって、撹拌粒子には極微小ビーズを使用することが必要である。蛍光体微粒子分散液の製造に使用する撹拌粒子の大きさは、ビーズミルを用いて一次粒子径が10nm程度の酸化チタン、二酸化珪素を分散媒に均一分散させるときに使用する撹拌粒子の大きさに比較して小さい。後述の比較例で示すように、粒子径30μm、50μmの大きさの撹拌粒子であるビーズを使用すると、蛍光体微粒子を分散媒に十分に分散させることができない。本発明に適応可能な撹拌粒子であるビーズの素材としては、ジルコニア、アルミナ、シリカ、ガラス、炭化珪素、窒化珪素が例示される。さらにビーズミルは、遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構のセパレータの径をd、ステータの内径をDとしたとき、d/Dが0.5〜0.9であればより好ましい。このような形状を有するビーズミルであれば、短時間でより効率的に蛍光体微粒子分散液を製造することできる。
【0019】
蛍光体微粒子を分散媒に均一分散させるには、極微小ビーズを使用しかつビーズミルのローターの周速を低速とし、蛍光体微粒子に与えるビーズ衝撃力を小さくする必要がある。このときのローター周速は、ビーズミルを用いて一次粒子径が10nm程度の酸化チタン、二酸化珪素を分散媒に均一分散させるときのローター周速に比較して小さい。
【0020】
また、蛍光体微粒子分散液の製造において、蛍光体微粒子との親和性の低い分散媒に分散させる際には、凝集を防ぐために分散剤を添加する。分散剤は、蛍光体微粒子と親和性を有する基と分散媒と親和性を有する基とを有する分散剤であれば、特に限定されるものではない。例えば付与するべき官能基を有するシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤及び有機クロム系カップリング剤を挙げることができる。例えば蛍光体微粒子の分散剤として粒子表面処理のためにカップリング剤を用いるが、カップリング剤に付与すべき官能基がアミノ基の場合、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピル−トリメトキシシラン、n(ジメトキシメチルシリルプロピル)−エチレンジアミンなどのアミノ基を有するシランカップリング剤、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネートなどのアミノ基を有するチタネート系カップリング剤、クロミッククロリド系化合物などのアミノ基を有する有機クロム系カップリング剤を用いることができる。
【0021】
その他ビニル系のシランカップリング剤としては、アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランが例示される。
【0022】
エポキシ系のシランカップリング剤としては、ジエトキシ(グリシディルオキシプロピル)メチルシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−ブリシドキシプロピルトリエトキシシランが例示される。スチレン系のシランカップリング剤としては、p−スチリルトリメトキシシランが例示される。
【0023】
メタクリロキシ系のシランカップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランが例示される。アクリロキシ系のシランカップリング剤としては、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランが例示される。
【0024】
アミノ系のシランカップリング剤としては、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、1,2−エタンジアミン,N−{3−(トリメトキシシリル)プロピル}−,N−{(エテニルフェニル)メチル}誘導体・塩酸塩が例示される。
【0025】
ウレイド系のシランカップリング剤としては、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランが例示される。クロロプロピル系のシランカップリング剤としては、3−クロロプロピルトリメトキシシランが例示される。メルカプト系のシランカップリング剤としては、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキンシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキンシランが例示される。スルフィド系のシランカップリング剤としては、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルファイド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファイドが例示される。イソシアネート系のシランカップリング剤としては、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランが例示される。アルミニウム系カップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートが例示される。ケチミノ系ではN−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−アミノプロピルトリエトキシシランが例示される。
【0026】
本発明の蛍光体微粒子分散液の製造に使用可能な原料粉の大きさは特に限定されないけれども、一次粒子径が2nmから20μmの蛍光体微粒子であることが好ましく、種類も特定の原料粉に限定されるものではない。本発明に適用可能な原料粉としては、以下のものが例示される。BaMgAl10017:Eu(略称BAM:Eu)、Sr10(PO4)6Cl2:Eu、(Sr,Ba,Ca,Mg)5(PO4)3Cl:Eu、(Sr,Ba,Ca,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu(略称SCA)、LaPO4:Ce,Tb(略称LAP)、BaMgAl10017:Eu,Mn(略称BAM:Eu,Mn)、(Y,Gd)3Al10012:Ce(略称YAG:Ce)、Y2O3:Eu(略称YOX)、Y2O3S:Eu(略称YOS)。硫化亜鉛系蛍光体としてはZnS:Ag,Al、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al、ZnS:Mnなどが例示される。また、Zn2SiO4:Mn、(Y,Gd)BO4:Eu、(Y,Gd)BO3:Tb、(Y,Gd)BO3:Euなどが例示される。
【0027】
溶媒は、特定の種類の溶媒に限定されるものではなく、水、水溶液、水溶系溶剤、非水系溶剤及びこれらを2種以上含む混合物を意味し、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、反応性溶媒などを含む場合もある。これらは単一成分であってもよく、混合物であってもよい。また溶剤と反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとが混合されたものであってもよく、溶剤と反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと反応性溶媒とが混合されたものであってもよい。溶媒として混合物を使用する場合、混合物が相分離することなく均一相となっていることが望ましい。溶媒として以下のものが例示される。
【0028】
脂肪族炭化水素系溶剤として、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n―ヘプタン、オクタン、デカン、アイソパーなど。
水、および水溶液。脂肪族アルコールとしてメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、アミルアルコールなど、ケトン系溶剤としてはアセトン、MEKなど、エーテル系溶剤としてはジメチルエーテルなど、その他、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、四塩化炭素、ジクロルメタン、テトラクロルエチル、1.4−ジオキサンなど。
【0029】
グリコール系溶剤としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなど、プロピレンオキシド系用溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテルなど、その他、3.5.5ートリメチルー2−シクロヘキセンー1−オン、トリアセチン、1.3−ブチレングリコール、3−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブタノール、など。
【0030】
エステル系溶剤としてはメチルアセテート、エチルアセテート、nープロピルアセテート、イソプロピルアセテート、n−ブチルアセテート、nーアミルアセテート、イソアミルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、1.3−プロピレングリコールジアセテート、シクロヘキサノールアセテートなど。
芳香族溶剤として、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロルベンゼンなど。
【0031】
反応性モノマー、反応性オリゴマ及び反応性溶媒としては、以下のものが例示される。ビニル系のモノマーには、アクリル酸エステル、(メタ)メタクリレート系、アクリルアミド誘導体、その他の不飽和化合物が含まれ、アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸イソブチル、2−メトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、エチレンカーボネートが例示される。
【0032】
(メタ)メタクリレート系のビニルモノマーとしては、メタアクリル酸、メタアクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ターチャリーブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸エチルアクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸エチル樹脂、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ベルジル、メタクリル酸2−フェノキシメチル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸イソボニル、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(ペンタ)ヘキサアクリレート、トリプロピレングリコールジアクレリート、ポリエチレングリコールジアクリレートが例示される。
【0033】
アクリルアミド誘導体のビニルモノマーとしては、メタクリアミド、アクロイルモホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N―ジメリルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドが例示される。
【0034】
その他の不飽和化合物としてのビニルモノマーとしては、イソプレンスルホン酸ソーダ、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、(ポリ)アリルアミン、(ポリ)p−ビニルフェニルが例示される。
【0035】
非ビニル系のモノマーには、多価カルボン酸、多価アルコール、多価アミン含まれ、多価カルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンカルボン酸、CIC酸/Bis−CIC酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸(ジメチル)が例示される。多価アルコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,4´−ジホドロキシビフェニル、ジメチロールブタン酸、水素化ビスフェノールA、ネオペンチグリコール、1,3−プロパジオールが例示される。多価アミンとしては、m−キシリレンジアミン、1,4−ジアミノブタン、ノルボルナンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロへサンが例示される。その他の非ビニル系のモノマーには、2,2−ビス(p−シアナトフェニル)プロパンが例示される。
【0036】
カップリング剤も反応性モノマー、反応性オリゴマ及び反応性溶媒として好適に使用することが可能であり、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル・ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、特殊アミノシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどがある。
【0037】
またシリコーン樹脂としての反応性モノマー、反応性オリゴマ、反応性溶媒に反応性シリコーンオイルがあり、ストレートシリコーンとしてジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、変性シリコーンオイルとして側鎖型のアミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、異種官能基変性(エポキシ基、ポリエーテル基やアミノ基、ポリエーテル基などの反応性官能基をもつ)シリコーンオイルなど、両末端型としてポリシロキサンの両末端に反応性のアミノ基、エポキシ変性、カルボキシル基、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、ポリエーテル変性基を有するもの、片末端型としてポリシロキサンのどちらか片方の末端に反応性のカルビノール変性、エポキシ変性、メタクリル変性、アルコール性ジオールへ変性官能基をもつもの、側鎖両末端型としてポリシロキサンの側鎖の一部と両方の末端にアミノ基やアルコキシ基などをもつ反応性シリコーンオイル、その他、メタクリル変性基をもつ反応性シリコーンオイルがある。
【0038】
ポリマーを分散媒体とした蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材は、以下の方法で製造することができる。図1は、本発明の第一実施形態としての蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造手順を示すブロック図である。上記蛍光体微粒子分散液製造方法で反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを分散媒とした分散液を製造した後、この分散液に必要に応じて重合開始剤を添加し、加温するなど常法に則り反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させることで、蛍光体微粒子が均一分散し高い発光強度を有するコンポジット材を得ることができる。
【0039】
上記の蛍光体微粒子分散液及び蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造方法の他、以下の方法でも表面欠陥が少なく結晶性の低下しない蛍光体微粒子が分散媒に均一分散した蛍光体微粒子分散液、蛍光体微粒子がポリマー中に均一分散し高い発光強度を有するコンポジット材を製造することができる。なお以下のコンポジット材の製造工程において、蛍光体微粒子が分散媒に均一分散した蛍光体微粒子分散液が得られるので、蛍光体微粒子分散液の製造手順は、この中で説明する。
【0040】
図2は、本発明の第二実施形態としての蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造手順を示すブロック図である。第一工程として、上記分散液製造方法により分散液を製造する。このとき分散媒には、第二工程で添加する反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有しかつ反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと反応しない分散媒を使用する。第一工程では、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマが存在しないため、蛍光体微粒子が反応性モノマーなどを包含した状態で凝集することがなく、蛍光体微粒子が均一分散した分散液を得ることができる。蛍光体微粒子と溶媒との割合は、分散が維持できる範囲で任意に調整可能である。第二工程で、第一工程で得た蛍光体微粒子分散液に、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合する。第一工程で蛍光体微粒子は溶媒に十分に分散しており、かつこの溶媒と反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは相溶性を有するので、第一工程で得た蛍光体微粒子分散液に、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合することで、分散剤と溶媒と反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとの混合液に表面欠陥の少ない蛍光体微粒子が均一分散した蛍光体微粒子分散液を得ることができる。第二工程の撹拌混合操作は、第一工程で蛍光体微粒子は溶媒に十分に分散しているので、必ずしもビーズミルを用いて行う必要はない。さらに溶媒と反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは相溶性を有するので、液の粘度に適した汎用撹拌機を使用することで簡単に混合させることができる。汎用撹拌機に使用可能な撹拌翼としては、プロペラ翼、パドル翼、アンカー翼、ヘリカルリボン翼などが例示される。第二工程の撹拌混合操作で、必要以上に蛍光体微粒子に強いせん断エネルギ等を加えると、再凝集するため、注意が必要である。
【0041】
第三工程では、第二工程で得た分散液から第一工程で使用した溶媒を除去する。溶媒を除去する方法は特に限定されないけれども、常圧蒸留、減圧蒸留などの方法を用いることができる。なお、第二工程と第三工程とを明確に区別することなく、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加しつつ、溶媒を除去してもよい。上記第一工程から第三工程により、分散剤を含む反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを分散媒とする表面欠陥の少ない蛍光体微粒子が均一分散した蛍光体微粒子分散液を得ることができる。この分散液に必要に応じて重合開始剤を添加し、加温するなど常法に則り反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させることで蛍光体微粒子がポリマー中に均一分散し高い発光強度を有するコンポジット材を得ることができる。
【0042】
上記第二実施形態に示すコンポジット材の製造方法は、第一工程から第三工程により反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを分散媒とする蛍光体微粒子分散液を一度製造した後、この分散液を重合させることでコンポジット材を得る方法である。この方法の変形例として、図3に示すように第三工程の溶媒除去操作と平行して反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させ、コンポジット材を得てもよい。この方法は必要に応じて第二工程後に重合開始剤を添加し、第三工程の溶媒除去操作を比較的高温で行い、溶媒を除去しつつ反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させる方法である。これにより最終的に溶媒を全く含まないポリマーを分散媒体とするコンポジット材を得ることができる。さらにこの方法の変形例として、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと必要に応じて重合開始剤とを添加しつつ、溶媒を除去しながら反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させてもよい。
【0043】
さらに以下の第三実施形態に示す方法でも蛍光体微粒子が均一分散した分散液及びコンポジット材を得ることができる。図4は、本発明の第三実施形態としての蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造手順を示すブロック図である。前記第三工程で得た反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを分散媒とする蛍光体微粒子分散液に、第四工程として、第二工程で添加した反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは異なる反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合する。第四工程で添加する反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマは、第二工程で添加した反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマに比較し、蒸気圧が低い。第四工程での混合操作は、第二工程の混合操作と同じ要領で行えばよい。以下蒸気圧の高い反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、蒸気圧の低い反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとする。第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは相溶性を有する。
【0044】
第五工程では、蒸留操作などにより第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去する。なお、第四工程と第五工程とを明確に区別することなく、第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加しつつ、第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去してもよい。これにより分散剤を含む第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを分散媒とする表面欠陥の少ない蛍光体微粒子が均一分散した蛍光体微粒子分散液を得ることができる。この分散液に必要に応じて重合開始剤を添加し、加温するなど常法に則り反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させることで蛍光体微粒子がポリマー中に均一分散し高い発光強度を有するコンポジット材を得ることができる。第三実施形態に示すコンポジット材の製造方法は、第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマの分子量が比較的大きく、ビーズミルでこれら反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマに直接蛍光体微粒子を分散させにくい場合に好適に用いることができる。
【0045】
第三実施形態に示す蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造手順は、以下のように変形することも可能である。図5は、本発明の第三実施形態としての蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造手順の変形例を示すブロック図である。以下第三実施形態に示す製造手順との相違点を中心に説明する。図5に示すコンポジット材の製造手順は、図4に示す製造手順と異なり、第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合した後、第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去することなく、重合開始剤を添加し、第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去しつつ、第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させ、コンポジット材を製造する点に特徴がある。なお、重合開始剤は、第二反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと同時に、又は第二反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマよりも先に添加するように変形してもよく、不要な場合は添加する必要はない。
【0046】
さらに、以下の第四実施形態に示す方法でも蛍光体微粒子が均一分散した分散液及びコンポジット材を得ることができる。図6は、本発明の第四実施形態としての蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造手順を示すブロック図である。第四実施形態に示すコンポジット材の製造手順は、第一工程として、溶媒を分散媒とする表面欠陥の少ない蛍光体微粒子が均一分散した分散液を得た後、第二工程として第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合し、分散液を製造する。その後、必要に応じて重合開始剤を添加し、分散液中の溶媒及び第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを蒸留操作により除去しつつ、第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させコンポジット材を得る。なお、第四実施形態の変形例として、溶媒、第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、及び重合開始剤を一度に添加混合し、これら混合液に関してビーズミルを用いて蛍光体微粒子に与えるビーズ衝撃力を小さくし、蛍光体微粒子表面の欠陥の発生による結晶性の低下を抑制しつつ蛍光体微粒子を溶液に均一分散させる。その後分散液中の溶媒及び第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを蒸留操作により除去しつつ、第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させコンポジット材を得ることもできる。
【0047】
以上の方法で得られるポリマーを分散媒体とするコンポジット材は、蛍光体微粒子が均一分散し、さらにビーズミルを用いる分散操作に伴って発生する蛍光体微粒子の表面での欠陥が生じなく結晶性の低下がないので蛍光強度の低下がなく、LED照明装置に好適に使用することができる。なお、第一実施形態から第四実施形態に示すコンポジット材の製造方法において、気泡、クラックが含まれないコンポジット材とするためには、重合操作条件を適切に設定することが必要なことは、通常の重合反応と換わるところはない。
【実施例】
【0048】
実施例1
実験は次の要領で行った。分散機には、内容積が0.05Lのビーズミル(寿工業株式会社製αPMill−005)を使用した。蛍光体微粒子分散液製造装置1の基本的構成を図7に示す。蛍光体微粒子分散液製造装置1は、分散機であるビーズミル2と、ビーズミル2に原料スラリーを供給する原料スラリー供給ポンプ3、原料スラリーを調整する原料スラリータンク4を主に構成される。
【0049】
ビーズミル2は、冷却用のジャケット11を取付けたステータ12と、上部に遠心分離方式のビーズセパレータ13を有し、その下部にビーズを撹拌するためのローターピン14を同軸上に有するローター15、ローター15を駆動するモータ7を含み構成される。ローター15とステータ12とは軸封16によりシールされ、機内が密閉化されている。原料スラリータンク4は、撹拌機18を備え、原料スラリー供給ポンプ3は、原料スラリー(分散液)を定量的にビーズミル2へ供給する。ビーズミル2に供給された原料スラリーは、ステータ12内で撹拌粒子と衝突し、凝集した原料粉は分散される。ビーズセパレータ13により撹拌粒子が分離された原料スラリーは、戻りライン19を通じて原料スラリータンク4へ戻る。原料スラリータンク4は、冷却のためのジャケット(図示を省略)を備える。撹拌粒子には、粒子径0.015mmの球形のジルコニア微粒子を使用し、撹拌粒子の投入量は0.13kg(約0.035L)とした。またローターの周速は6m/sとした。
【0050】
実験は次の要領で行った。原料粉にサブミクロンの粒子径をもつ青色蛍光体微粒子としてBAM:Eu(DGTec社製:一次粒子径100〜400nm)、分散媒にコンポジットの分散媒体であるポリメタクリレート(PMMA)のモノマーであるメタクリル酸メチル(MMA)を使用した。12.5gの原料粉、102.5gの分散媒、分散剤としてKBM−5103(信越化学工業製シランカップリング剤)25gを原料スラリータンク4に投入し、撹拌混合し原料スラリーの調整を行った。ビーズミル2内には予め110gの分散媒を張込み、原料スラリー供給ポンプ3で10kg/hの割合で原料スラリーをビーズミル2に供給し、ビーズミル2内で原料粉の分散を行い、ビーズミルを通過したスラリー溶液は、戻りライン19を通じて原料スラリータンク4に戻した。この循環運転を180分間行った。固形分濃度(分散液中の原料粉濃度)は5.0重量%である。原料粉に対する分散剤の添加割合は200重量%である。粒度分布測定装置には、大塚電子株式会社製FPAR−1000を使用した。
【0051】
実験の結果、用いたBAM:Eu微粒子が、平均粒子径(メディアン径)D50が146.5nm、90%通過粒子径D90が212.1nmである、一次粒子まで均一に分散した分散液が得られた。この分散液を分散液Aとする。この結果を図8に示す。
【0052】
実施例2
分散媒にメタノールを用いた。12.5gの原料粉、125gの分散媒、12.5gの分散剤を原料スラリータンク4に投入し、撹拌混合し原料スラリーの調整を行った。ビーズミル2内には予め100gの分散媒を張込んだ。固形分濃度は5.0重量%、原料粉に対する分散剤の添加割合は100重量%である。その他の条件は、実施例1と同一である。実験の結果、図8に示すように分散液中の平均粒子径(メディアン径)D50は、137.4nm、90%通過粒子径D90は219.2nmであり、一次粒子まで分散した分散液が得られ、この分散液を分散液Bとする。実施例1のMMAを分散媒とする分散液Aに比べて分散性が良いことがわかった。
【0053】
実施例3
以下の要領でサブミクロン青色蛍光体とPMMAコンポジット材を製作し評価した。実施例1で製造した分散液Aに0.1重量%のAIBN(重合開始剤)を添加し、60℃で6時間加熱して重合させて、コンポジット材を作製した。このコンポジット材をコンポジットAとする。図9にこのコンポジットAの蛍光分光度を測定した結果を示した。用いたコンポジット材サンプルの厚みは2mmである。蛍光強度は日本分光製蛍光スペクトルメーターFP−6500型を用いて蛍光強度スペクトルを測定した。波長330nmの励起光をコンポジット材サンプルに照射し、サンプルを透過して発光する蛍光強度を測定した。その結果、450nmにピークをもつ蛍光スペクトルを検出した。また、サンプル面に発光むらのない蛍光を確認した。このことにより青色の蛍光特性を持ちまた発光むらのないポリメタクリル酸メチル(PMMA)からなる蛍光体コンポジット材が得られることが確認された。なお固形分とPMMAとの割合は、分散が維持できる範囲で任意に調整可能である。
【0054】
実施例4
以下の要領でサブミクロン青色蛍光体とシリコーン樹脂コンポジット材を製作し評価した。実施例2で作製した分散液Bはシリコーンレジンと相容性が低いため、次に示す溶剤置換を行って作製した。まず、分散液B20gとMMA20gとを混合した。その後、エバポレータを用いて減圧蒸留しメタノールを蒸発させて、MMA及び分散剤を分散媒とする分散液Cを製造した。さらに、この分散液Cにメチル系ストレートシリコーンレジン(信越化学工業製、KR242A)20gを添加混合し、エバポレータを用いて減圧蒸留しMMAを蒸発させて、シリコーンレジン及び分散剤を分散媒とする分散液Dを製造した。RTVゴム(信越化学工業製、KE109)でコーティングされた基板上に分散液Dを滴下した。その後減圧(−0.09MPa)し、気泡が発生した場合は、イソプロピルアルコールで消泡を行った。次ぎに55℃で30分から1時間加温した。この時、変形が懸念される場合は、RTVゴムコーティング基板でシリコーンレジンを挟んだ。さらに100℃で1時間、150℃で1時間と温度を上昇させ、最終的に200℃で20分間熱硬化を行った。その結果、ひび割れのない蛍光体コンポジット材を得ることができた。このコンポジト材をコンポジットDとする。この厚さは1mmである。波長330nmの励起光をコンポジット材に照射し、透過した蛍光強度を検出した。その結果、蛍光強度450nmにピークを検出し、蛍光透過性を持ち粒子むらの少ないシリコーン樹脂からなるコンポジットDが得られた。この結果を図9に示す。なお、固形分とシリコーン樹脂との割合は分散が維持できる範囲で任意に調整可能である。
【0055】
比較例1
2.5gの原料粉であるBAM:Eu粉末(DGTec社製:一次粒子径100〜400nm)、172.5gの分散媒であるMMA、分散剤であるKBM−5103を5g原料スラリータンク4に投入し、撹拌混合し原料スラリーの調整を行った。ビーズミル2内には予め70gの分散媒を張込んだ。撹拌粒子に粒子径0.05mmの球形のジルコニア粒子を使用し、ローターの周速を8m/sとした。スラリー循環量15kg/h、固形分濃度は1重量%、原料粉に対する分散剤の添加割合は200重量%である。他の条件は実施例1と同一である。480分の分散処理を行ったが、粒子は凝集状態から十分には分散しなかった。この分散液を分散液Eとする。分散液Eの平均粒子径(メディアン径)D50は、図8に示されるように、10423nm、90%通過粒子径D90は13366nmであった。また、この分散液Eに実施例1と同様に0.1重量%のAIBN(重合開始剤)を添加し、60℃で6時間加熱して重合させてコンポジットEを得た。このコンポジットEの蛍光分光度を測定した結果、図9に示すように450nmの蛍光強度は得られなかった。
【0056】
比較例2
撹拌粒子に粒子径0.03mmの球形のジルコニア粒子を使用し、ローターの周速を8m/sとした。スラリー循環量10kg/hとした。他の条件は比較例1と同一である。1380分の分散処理を行ったが、粒子は分散しなかった。この分散液を分散液E’とする。分散液E’中の平均粒子径(メディアン径)D50は、49817nm、90%通過粒子径D90は63956nmであった。
【0057】
比較例3
分散剤を添加することなく分散実験を行った。2.5gの原料粉、137.5gの分散媒を原料スラリータンク4に投入し、撹拌混合し原料スラリーの調整を行った。ビーズミル2内には予め110gの分散媒を張込んだ。固形分濃度は1重量%である。他の条件は実施例1と同一である。480分の分散処理を行ったが、粒子は分散しなかった。この分散液を分散液E’’とする。分散液E’’中の平均粒子径(メディアン径)D50は、120548nm、90%通過粒子径D90は153676nmであった。
【0058】
比較例4
分散剤を添加することなく分散実験を行った。分散媒にはメタノールを使用した。12.5gの原料粉、137.5gの分散媒を原料スラリータンク4に投入し、撹拌混合し原料スラリーの調整を行った。ビーズミル2内には予め100gの分散媒を張込んだ。固形分濃度は5重量%である。他の条件は実施例1と同一である。この分散液を分散液E’’’とする。分散液E’’’中の平均粒子径(メディアン径)D50は、17853nm、90%通過粒子径D90は31804nmであった。
【0059】
実施例5
原料粉にサブミクロン粒子径をもつ黄色の蛍光体であるYAG:Ce(一次粒子径200〜300nm)を用いた。2.5gの原料粉、132.5gの分散媒、分散剤5gを原料スラリータンク4に投入し、撹拌混合し原料スラリーの調整を行った。ビーズミル2内には予め110gの分散媒を張込んだ。固形分濃度は1.0重量%、原料粉に対する分散剤の添加割合は200重量%である。分散媒はMMAである。その他の条件は、実施例1と同一である。240分の分散実験を行い、分散液Fが得られた。図10に示すように、分散液F中の平均粒子径(メディアン径)D50は、239.1nm、90%通過粒子径D90は337.4nmであり、一次粒子まで分散した分散液が得られた。
【0060】
実施例6
分散媒にイソプロピルアルコールを用いた。原料粉に2.5gのYAG:Ce、132.5gの分散媒、分散剤5gを原料スラリータンク4に投入し、撹拌混合し原料スラリーの調整を行った。ビーズミル2内には予め110gの分散媒を張込んだ。固形分濃度は1.0重量%、原料粉に対する分散剤の添加割合は200重量%である。その他の条件は、実施例1と同一である。240分の分散実験を行った結果、分散液Gが得られた。分散液G中の平均粒子径(メディアン径)D50は、図10に示されるように、178.3nm、90%通過粒子径D90は261.8nmであり、一次粒子まで分散した分散液が得られた。
【0061】
実施例7
以下の要領でサブミクロンYAG:Ce蛍光体が分散媒体としてPMMAに分散したコンポジット材を製作し評価した。実施例5で製造した分散液Fに0.1%のAIBN(重合開始剤)を添加し、60℃で6時間加熱して重合させコンポジットFを得た。波長460nmの励起光を厚み1mmのコンポジットFに照射し、コンポジット材を透過する蛍光強度を検出した。その結果を図11に示す。このコンポジットFの発光特性は550nmを中心としたブロードなピークを示し、十分な蛍光の透過性を持ち、発光むらの少ないPMMA(ポリメタクリル酸メチル)からなるコンポジット材が得られた。なお、固形分とPMMAとの割合は分散が維持できる範囲で任意に調整可能である。
【0062】
実施例8
以下の要領でサブミクロン蛍光体とシリコーンレジンとのコンポジット材を製作し評価した。実施例6で作製した分散液G20gとMMA20gとを混合した。その後、エバポレータを用いて減圧蒸留しイソプロピルアルコールを蒸発させて、MMA及び分散剤を分散媒とする分散液を製造した。さらに、この分散液にメチル系ストレートシリコーンレジン(KR242A)20gを添加混合し、エバポレータを用いて減圧蒸留しMMAを蒸発させて、メチル系ストレートシリコーンレジン及び分散剤を分散媒とする分散液Hを製造した。RTVゴム(KE109)でコーティングされた基板上に分散液Hを滴下した。その後減圧(−0.09MPa)し、気泡が発生した場合は、イソプロピルアルコールで消泡を行った。次ぎに55℃で30分から1時間加温した。この時、変形が懸念される場合は、RTVゴムコーティング基板でシリコーンレジンを挟んだ。さらに100℃で1時間、150℃で1時間と温度を上昇させ、最終的に200℃で20分間熱硬化を行った。その結果、ひび割れのない蛍光体コンポジットHを得ることができた。波長460nmの励起光を厚み1mmのコンポジットHに照射し、透過した蛍光強度を検出した。その結果を図11に示すように、蛍光強度550nmを中心としたブロードなピークを検出し、蛍光透過性を持ち粒子むらの少ないシリコーン樹脂からなるコンポジット材が得られた。なお、固形分とシリコーン樹脂との割合は分散が維持できる範囲で任意に調整可能である。
【0063】
比較例5
ビーズ径φ0.1mm、周速12m/s、スラリー循環量10kg/hrで分散実験を行った。原料粉は12g、分散剤24g、分散媒184g、固形分濃度3wt%の分散条件である。ビーズミルには予め110gの溶媒を張り込んだ。他の条件は実施例5と同一である。作製した分散液を分散液Iとする。この分散液の平均粒子径は図10に示されるように、1.2μmである。分散液Iに0.1%のAIBN(重合開始剤)を添加し、60℃で6時間加熱して重合させ、コンポジットIを得た。このコンポジットIの蛍光分光度を測定した結果を図11に示す。波長460nmの励起光をコンポジットに照射し、透過光強度を測定した。その結果、実施例7と異なり蛍光強度550nmを中心としたブロードなピークは検出されなかった。0.10μmのビーズを用いることにより、強い分散力によって蛍光体微粒子の結晶性が破壊され、蛍光特性が失われたと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第一実施形態としての蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造手順を示すブロック図である。
【図2】本発明の第二実施形態としての蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造手順を示すブロック図である。
【図3】本発明の第二実施形態としての蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造手順の変形例を示すブロック図である。
【図4】本発明の第三実施形態としての蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造手順を示すブロック図である。
【図5】本発明の第三実施形態としての蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造手順の変形例を示すブロック図である。
【図6】本発明の第四実施形態としての蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造手順を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施例で使用した蛍光体微粒子分散液製造装置1の基本的構成を示す図である。
【図8】本発明の実施例1、2および比較例1の分散液A、BおよびEの粒径分布測定結果を示す図である。
【図9】本発明の実施例3、4および比較例1のコンポジットA、DおよびEの蛍光分光度を測定した結果を示す図である。縦軸は透過光強度で、330の弱い透過光は入射光、450nmにピークをもつ透過光がコンポジットの蛍光である。
【図10】本発明の実施例5、6および比較例5の分散液F、GおよびIの粒径分布測定結果を示す図である。
【図11】本発明の実施例7、8および比較例5のコンポジットF、HおよびIの蛍光分光度を測定した結果を示す図である。縦軸は透過光強度で、460nmにピークをもつ透過光は入射光、550nmにピークをもつ透過光がコンポジットの蛍光である。
【符号の説明】
【0065】
1 蛍光体微粒子分散液製造装置
2 ビーズミル
3 原料スラリー供給ポンプ
4 原料スラリータンク
7 駆動モータ
12 ステータ
13 ビーズセパレータ
14 ローターピン
15 ローター
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体微粒子を分散媒に均一分散させる分散液の製造方法及び蛍光体微粒子分散液、並びにポリマー中に蛍光体微粒子を均一分散させるコンポジット材の製造方法及びコンポジット材に関する。
本発明において、溶媒とは、少なくとも水、水溶液、水溶系溶剤、非水系溶剤又はこれらを2種以上含む混合物を言い、さらには反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、反応性溶媒などを含む場合もある。また分散媒とは、溶媒、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、分散剤又はこれらを2種以上含む混合物を言い、分散液とは分散媒に微粒子を分散させた液を言う。また、分散媒体とは、高分子などの固体状の分散媒体を言い、分散媒体に微粒子が分散、固定化されたものをコンポジット材と言う。
【背景技術】
【0002】
現在、白色LED(Light Emitting Diode)をはじめLEDと蛍光材料とを組み合わせた発光素子の開発研究が活発に行われている。白色LEDは、一般的に青色を発する青色発光ダイオードと、青色発光ダイオードから放射される光により励起され黄色を発する黄色発光蛍光体とを組み合わせることで実現される。青色発光ダイオードと黄色発光蛍光体とを組み合わせた従来の白色LEDの平均演算色評価数(Ra)は85前後であり、この値を高めるための提案がなされている。白色LEDと赤色LEDとを混在させることにより演色性を改善する方法は、コスト高となると共に演色性の経時変化が大きいとし、白色LEDと赤色の光を発光する赤色蛍光体を有し、器具全体としての発光スペクトルを目的の発光スペクトルとなるように調整する発光スペクトル調整部を備える白色LEDを用いた照明器具が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
蛍光体に関しては、次のような課題も指摘されている。ディスプレイに用いられている蛍光体の粒径は3〜10μm程度であり、粒子径の大きさが十分に小さくないため光学的なロスがある。蛍光体粒子の発光現象は表面領域での現象であり、蛍光体粒子の粒子径を小さすると比表面積が増加しそれだけ蛍光体粒子単位重量あたりの発光効率が増加することに大きなメリットがある。しかし、従来からサブミクロンサイズにまで蛍光体粒子を微細化すると蛍光体の発光強度が低下してくるため、その効果が相殺されると考えられるが、近年蛍光強度の向上したサブミクロン蛍光体やナノ蛍光体が試作されていて(例えば非特許文献1、非特許文献2参照)、蛍光体の微細化は多くの利点がある。特にナノサイズまで微細化されると、可視光領域での光が散乱されない透明体となるため、さらに発光強度の高い蛍光体となることが期待される。微細化の利点として蛍光体の使用量が減少することは、ディスプレイの小型化および省エネ化などが挙げられるため重要な課題である。例えば、粒子径5μmの蛍光体微粒子を用いて形成した厚さ19μmの蛍光体膜(例えば、蛍光体微粒子5層、充填率は25%、密度5g/cm3の場合)について、それに替わり粒子径0.5μmの蛍光体微粒子を用いると、同様に5層の粒子からなる膜を形成させると、その蛍光体膜の厚みは約2μmとなり、5μmの蛍光体微粒子の場合と比べて1/10の蛍光体重量に相当することが分かる。このように蛍光体の使用量は削減され発光体の小型に繋がる利点がある。しかしながら、一般に微粒子の粒子径が小さくなると粒子同士が安定な凝集状態を取り易くなり、微粒子の持つ機能性を上げるためには微粒子の分散操作が必然的に伴ってくる。蛍光体微粒子では、光学材料に適用させる場合、通常バインダーとしての光学樹脂などの分散媒体中に分散・固定化させることによるコンポジット材を形成して使用されるけれども、このとき分散性を高めるために蛍光体の表面を化合物で被覆する方法では輝度の劣化が起こるため、新たな高輝度のナノサイズ蛍光体が提案されている(例えば特許文献2および非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−52994号公報
【特許文献2】特開2007−99963号公報
【非特許文献1】B.Xia,I.W.Lenggoro and K.Okuyama:Novel Route to Nanoparticle Synthesis by Salt−Assisted Aerosol Decomposition,Adv.Mater.,13(20),1579−1582(2001)
【非特許文献2】I.W.Lenggoro,B.Xia,H.Mizushima,K.Okuyama and N.Kijima:Synthesis of LaPO4:Eu,Tb Phosphor Particles by Spray Pyrolysis,Mater.Lett.,50(2−3),92−96(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上に述べたように蛍光体材料を白色LEDなどの照明装置、ディスプレイなどで効率良く使用するには、蛍光体微粒子を高分子などの分散媒体に均一に分散し固定化させる必要があるが、微粒子は凝集力が強く、通常は粒子が凝集した状態で存在するため、凝集した蛍光体微粒子を分散媒に均一分散させることは容易ではない。蛍光体材料は結晶構造が重要で特に表面領域の構造がポイントであり、外部応力により材料表面に欠陥が生じ、結晶性が低下すると発光強度が低下するので、凝集する蛍光体微粒子の分散操作をより難しいものとしている。現在、分散操作時に蛍光体微粒子の表面に欠陥や結晶性の低下を生じさせることなく蛍光体微粒子を高分子などの分散媒体に均一に固定化させる技術は確立されていない。
【0005】
本発明の目的は、分散操作に伴う蛍光体微粒子表面の欠陥の発生を抑制しつつ蛍光体微粒子を分散媒に均一させる蛍光体微粒子分散液の製造方法、粒子表面の欠陥が少なく結晶性の低下しない蛍光体微粒子が分散媒に均一分散した蛍光体微粒子分散液を提供することである。また、蛍光体微粒子が高分子などの分散媒体に均一分散しかつ高い発光強度が得られるコンポジット材の製造方法及びそのコンポジット材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、ローター、ステータ及び遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えるビーズミルを用い、一次粒子径が2nmから20μmの蛍光体微粒子を分散媒に均一分散させる蛍光体微粒子分散液の製造方法であって、分散剤を添加し、かつ前記ビーズに極微小ビーズを使用すると共に前記ローターの回転速度を低速とし、前記蛍光体微粒子に与えるビーズ衝撃力を小さくし、前記蛍光体微粒子表面の欠陥の発生及び結晶性の低下を抑制しつつ蛍光体微粒子を分散媒に均一分散させることを特徴とする蛍光体微粒子分散液の製造方法である。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有しかつ反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと反応しない溶媒に分散剤を添加し、一次粒子径が2nmから20μmの蛍光体微粒子を、ローター、ステータ及び遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えるビーズミルを用い、前記ビーズに極微小ビーズを使用すると共に前記ローターの回転速度を低速とし、前記蛍光体微粒子に与えるビーズ衝撃力を小さくし、前記蛍光体微粒子表面の欠陥の発生及び結晶性の低下を抑制しつつ蛍光体微粒子を前記溶媒に均一分散させる第一工程と、第一工程で得られる分散液に前記反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合する第二工程と、第二工程で得られる分散液から前記溶媒を除去し、前記反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを分散媒とする蛍光体微粒子が均一分散した分散液を得る第三工程と、を含むことを特徴とする蛍光体微粒子分散液の製造方法である。
【0008】
請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載の蛍光体微粒子分散液の製造方法の構成に加え、さらに前記第三工程で得られる分散液に、前記第二工程で加えた第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有し、かつ前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは異なる第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合する第四工程と、第四工程で得られる分散液から第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去し、前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを分散媒とする蛍光体微粒子が均一分散した分散液を得る第五工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項の方法で製造された蛍光体微粒子分散液である。
【0010】
請求項5に記載の本発明は、請求項4で得られる蛍光体微粒子分散液を重合させ、又は請求項4で得られる蛍光体微粒子分散液に重合開始剤を添加した後、重合させコンポジット材を製造することを特徴とするコンポジット材の製造方法である。
【0011】
請求項6に記載の本発明は、前記第二工程で得られる分散液から溶媒を除去しつつ反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させ、又は前記第二工程で得られる分散液に重合開始剤を添加した後、溶媒を除去しつつ反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させコンポジット材を製造することを特徴とするコンポジット材の製造方法である。
【0012】
請求項7に記載の本発明は、前記第二工程で得られる分散液に前記第二工程で加えた第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有し、かつ前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは異なる第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合し、該分散液から前記溶媒及び前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去しつつ前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させ、又は前記第二工程で得られる分散液に前記第二工程で加えた第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有し、かつ前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは異なる第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、及び重合開始剤を添加した後、前記分散液から前記溶媒及び前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去しつつ前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させコンポジット材を製造することを特徴とするコンポジット材の製造方法である。
【0013】
請求項8に記載の本発明は、前記第四工程で得られる分散液から前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去しつつ前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させ、又は前記第四工程で得られる分散液に重合開始剤を添加した後、前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去しつつ前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させコンポジット材を製造することを特徴とするコンポジット材の製造方法である。
【0014】
請求項9に記載の本発明は、第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、該第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有しかつ該第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと反応しない溶媒、該第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有しかつ該第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは異なる第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、及び分散剤を分散媒とし、一次粒子径が2nmから20μmの蛍光体微粒子を、ローター、ステータ及び遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えるビーズミルを用い、前記ビーズに極微小ビーズを使用すると共に前記ローターの回転速度を低速とし、前記蛍光体微粒子に与えるビーズ衝撃力を小さくし、前記蛍光体微粒子表面の欠陥の発生を抑制しつつ前記分散媒に均一分散させ、該分散液から前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、及び前記溶媒を除去しつつ前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させ、又は該分散液に重合開始剤を添加した後、該分散液から前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、及び前記溶媒を除去しつつ前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させコンポジット材を製造することを特徴とするコンポジット材の製造方法である。
【0015】
請求項10に記載の本発明は、請求項5から請求項9のいずれか1項の方法で製造されたコンポジット材である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の蛍光体微粒子分散液の製造方法を用いることにより、分散操作に伴う蛍光体微粒子表面の欠陥の発生を抑制しつつ蛍光体微粒子を分散媒に均一させることが可能となり、粒子表面の欠陥が少ない蛍光体微粒子が分散媒に均一分散した蛍光体微粒子分散液を製造することができる。また、本発明のコンポジット材の製造方法を用いることにより、蛍光体微粒子が高分子などの分散媒体に均一分散しかつ高い発光強度が得られるコンポジット材を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の蛍光体微粒子分散液の製造方法は、ローター、ステータ及び遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えるビーズミルを用い、一次粒子径が2nmから20μmの蛍光体微粒子を分散媒に均一分散させる際、分散媒に分散剤を添加し、かつビーズに極微小ビーズを使用すると共にビーズミルのローターの回転速度を低速とし、蛍光体微粒子を分散媒に均一分散させる方法である。これにより蛍光体微粒子に与えるビーズ衝撃力を小さくすることができ、蛍光体微粒子表面の欠陥の発生を抑制しつつ蛍光体微粒子を分散媒に均一分散させることがでる。この方法で得られる蛍光体微粒子分散液中の蛍光体微粒子は、分散操作に伴い蛍光体微粒子表面に欠陥が殆ど生じなく結晶性も低下しないので高い発光強度が得られる。
【0018】
本発明の蛍光体微粒子分散液の製造で使用可能なビーズミルは、ローター、ステータ及び遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えるビーズミルであって、撹拌粒子には極微小ビーズを使用することが必要である。蛍光体微粒子分散液の製造に使用する撹拌粒子の大きさは、ビーズミルを用いて一次粒子径が10nm程度の酸化チタン、二酸化珪素を分散媒に均一分散させるときに使用する撹拌粒子の大きさに比較して小さい。後述の比較例で示すように、粒子径30μm、50μmの大きさの撹拌粒子であるビーズを使用すると、蛍光体微粒子を分散媒に十分に分散させることができない。本発明に適応可能な撹拌粒子であるビーズの素材としては、ジルコニア、アルミナ、シリカ、ガラス、炭化珪素、窒化珪素が例示される。さらにビーズミルは、遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構のセパレータの径をd、ステータの内径をDとしたとき、d/Dが0.5〜0.9であればより好ましい。このような形状を有するビーズミルであれば、短時間でより効率的に蛍光体微粒子分散液を製造することできる。
【0019】
蛍光体微粒子を分散媒に均一分散させるには、極微小ビーズを使用しかつビーズミルのローターの周速を低速とし、蛍光体微粒子に与えるビーズ衝撃力を小さくする必要がある。このときのローター周速は、ビーズミルを用いて一次粒子径が10nm程度の酸化チタン、二酸化珪素を分散媒に均一分散させるときのローター周速に比較して小さい。
【0020】
また、蛍光体微粒子分散液の製造において、蛍光体微粒子との親和性の低い分散媒に分散させる際には、凝集を防ぐために分散剤を添加する。分散剤は、蛍光体微粒子と親和性を有する基と分散媒と親和性を有する基とを有する分散剤であれば、特に限定されるものではない。例えば付与するべき官能基を有するシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤及び有機クロム系カップリング剤を挙げることができる。例えば蛍光体微粒子の分散剤として粒子表面処理のためにカップリング剤を用いるが、カップリング剤に付与すべき官能基がアミノ基の場合、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピル−トリメトキシシラン、n(ジメトキシメチルシリルプロピル)−エチレンジアミンなどのアミノ基を有するシランカップリング剤、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネートなどのアミノ基を有するチタネート系カップリング剤、クロミッククロリド系化合物などのアミノ基を有する有機クロム系カップリング剤を用いることができる。
【0021】
その他ビニル系のシランカップリング剤としては、アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランが例示される。
【0022】
エポキシ系のシランカップリング剤としては、ジエトキシ(グリシディルオキシプロピル)メチルシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−ブリシドキシプロピルトリエトキシシランが例示される。スチレン系のシランカップリング剤としては、p−スチリルトリメトキシシランが例示される。
【0023】
メタクリロキシ系のシランカップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランが例示される。アクリロキシ系のシランカップリング剤としては、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランが例示される。
【0024】
アミノ系のシランカップリング剤としては、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、1,2−エタンジアミン,N−{3−(トリメトキシシリル)プロピル}−,N−{(エテニルフェニル)メチル}誘導体・塩酸塩が例示される。
【0025】
ウレイド系のシランカップリング剤としては、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランが例示される。クロロプロピル系のシランカップリング剤としては、3−クロロプロピルトリメトキシシランが例示される。メルカプト系のシランカップリング剤としては、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキンシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキンシランが例示される。スルフィド系のシランカップリング剤としては、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルファイド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファイドが例示される。イソシアネート系のシランカップリング剤としては、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランが例示される。アルミニウム系カップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートが例示される。ケチミノ系ではN−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−アミノプロピルトリエトキシシランが例示される。
【0026】
本発明の蛍光体微粒子分散液の製造に使用可能な原料粉の大きさは特に限定されないけれども、一次粒子径が2nmから20μmの蛍光体微粒子であることが好ましく、種類も特定の原料粉に限定されるものではない。本発明に適用可能な原料粉としては、以下のものが例示される。BaMgAl10017:Eu(略称BAM:Eu)、Sr10(PO4)6Cl2:Eu、(Sr,Ba,Ca,Mg)5(PO4)3Cl:Eu、(Sr,Ba,Ca,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu(略称SCA)、LaPO4:Ce,Tb(略称LAP)、BaMgAl10017:Eu,Mn(略称BAM:Eu,Mn)、(Y,Gd)3Al10012:Ce(略称YAG:Ce)、Y2O3:Eu(略称YOX)、Y2O3S:Eu(略称YOS)。硫化亜鉛系蛍光体としてはZnS:Ag,Al、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al、ZnS:Mnなどが例示される。また、Zn2SiO4:Mn、(Y,Gd)BO4:Eu、(Y,Gd)BO3:Tb、(Y,Gd)BO3:Euなどが例示される。
【0027】
溶媒は、特定の種類の溶媒に限定されるものではなく、水、水溶液、水溶系溶剤、非水系溶剤及びこれらを2種以上含む混合物を意味し、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、反応性溶媒などを含む場合もある。これらは単一成分であってもよく、混合物であってもよい。また溶剤と反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとが混合されたものであってもよく、溶剤と反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと反応性溶媒とが混合されたものであってもよい。溶媒として混合物を使用する場合、混合物が相分離することなく均一相となっていることが望ましい。溶媒として以下のものが例示される。
【0028】
脂肪族炭化水素系溶剤として、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n―ヘプタン、オクタン、デカン、アイソパーなど。
水、および水溶液。脂肪族アルコールとしてメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、アミルアルコールなど、ケトン系溶剤としてはアセトン、MEKなど、エーテル系溶剤としてはジメチルエーテルなど、その他、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、四塩化炭素、ジクロルメタン、テトラクロルエチル、1.4−ジオキサンなど。
【0029】
グリコール系溶剤としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなど、プロピレンオキシド系用溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテルなど、その他、3.5.5ートリメチルー2−シクロヘキセンー1−オン、トリアセチン、1.3−ブチレングリコール、3−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブタノール、など。
【0030】
エステル系溶剤としてはメチルアセテート、エチルアセテート、nープロピルアセテート、イソプロピルアセテート、n−ブチルアセテート、nーアミルアセテート、イソアミルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、1.3−プロピレングリコールジアセテート、シクロヘキサノールアセテートなど。
芳香族溶剤として、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロルベンゼンなど。
【0031】
反応性モノマー、反応性オリゴマ及び反応性溶媒としては、以下のものが例示される。ビニル系のモノマーには、アクリル酸エステル、(メタ)メタクリレート系、アクリルアミド誘導体、その他の不飽和化合物が含まれ、アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸イソブチル、2−メトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、エチレンカーボネートが例示される。
【0032】
(メタ)メタクリレート系のビニルモノマーとしては、メタアクリル酸、メタアクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ターチャリーブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸エチルアクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸エチル樹脂、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ベルジル、メタクリル酸2−フェノキシメチル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸イソボニル、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(ペンタ)ヘキサアクリレート、トリプロピレングリコールジアクレリート、ポリエチレングリコールジアクリレートが例示される。
【0033】
アクリルアミド誘導体のビニルモノマーとしては、メタクリアミド、アクロイルモホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N―ジメリルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドが例示される。
【0034】
その他の不飽和化合物としてのビニルモノマーとしては、イソプレンスルホン酸ソーダ、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、(ポリ)アリルアミン、(ポリ)p−ビニルフェニルが例示される。
【0035】
非ビニル系のモノマーには、多価カルボン酸、多価アルコール、多価アミン含まれ、多価カルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンカルボン酸、CIC酸/Bis−CIC酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸(ジメチル)が例示される。多価アルコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,4´−ジホドロキシビフェニル、ジメチロールブタン酸、水素化ビスフェノールA、ネオペンチグリコール、1,3−プロパジオールが例示される。多価アミンとしては、m−キシリレンジアミン、1,4−ジアミノブタン、ノルボルナンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロへサンが例示される。その他の非ビニル系のモノマーには、2,2−ビス(p−シアナトフェニル)プロパンが例示される。
【0036】
カップリング剤も反応性モノマー、反応性オリゴマ及び反応性溶媒として好適に使用することが可能であり、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル・ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、特殊アミノシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどがある。
【0037】
またシリコーン樹脂としての反応性モノマー、反応性オリゴマ、反応性溶媒に反応性シリコーンオイルがあり、ストレートシリコーンとしてジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、変性シリコーンオイルとして側鎖型のアミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、異種官能基変性(エポキシ基、ポリエーテル基やアミノ基、ポリエーテル基などの反応性官能基をもつ)シリコーンオイルなど、両末端型としてポリシロキサンの両末端に反応性のアミノ基、エポキシ変性、カルボキシル基、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、ポリエーテル変性基を有するもの、片末端型としてポリシロキサンのどちらか片方の末端に反応性のカルビノール変性、エポキシ変性、メタクリル変性、アルコール性ジオールへ変性官能基をもつもの、側鎖両末端型としてポリシロキサンの側鎖の一部と両方の末端にアミノ基やアルコキシ基などをもつ反応性シリコーンオイル、その他、メタクリル変性基をもつ反応性シリコーンオイルがある。
【0038】
ポリマーを分散媒体とした蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材は、以下の方法で製造することができる。図1は、本発明の第一実施形態としての蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造手順を示すブロック図である。上記蛍光体微粒子分散液製造方法で反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを分散媒とした分散液を製造した後、この分散液に必要に応じて重合開始剤を添加し、加温するなど常法に則り反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させることで、蛍光体微粒子が均一分散し高い発光強度を有するコンポジット材を得ることができる。
【0039】
上記の蛍光体微粒子分散液及び蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造方法の他、以下の方法でも表面欠陥が少なく結晶性の低下しない蛍光体微粒子が分散媒に均一分散した蛍光体微粒子分散液、蛍光体微粒子がポリマー中に均一分散し高い発光強度を有するコンポジット材を製造することができる。なお以下のコンポジット材の製造工程において、蛍光体微粒子が分散媒に均一分散した蛍光体微粒子分散液が得られるので、蛍光体微粒子分散液の製造手順は、この中で説明する。
【0040】
図2は、本発明の第二実施形態としての蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造手順を示すブロック図である。第一工程として、上記分散液製造方法により分散液を製造する。このとき分散媒には、第二工程で添加する反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有しかつ反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと反応しない分散媒を使用する。第一工程では、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマが存在しないため、蛍光体微粒子が反応性モノマーなどを包含した状態で凝集することがなく、蛍光体微粒子が均一分散した分散液を得ることができる。蛍光体微粒子と溶媒との割合は、分散が維持できる範囲で任意に調整可能である。第二工程で、第一工程で得た蛍光体微粒子分散液に、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合する。第一工程で蛍光体微粒子は溶媒に十分に分散しており、かつこの溶媒と反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは相溶性を有するので、第一工程で得た蛍光体微粒子分散液に、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合することで、分散剤と溶媒と反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとの混合液に表面欠陥の少ない蛍光体微粒子が均一分散した蛍光体微粒子分散液を得ることができる。第二工程の撹拌混合操作は、第一工程で蛍光体微粒子は溶媒に十分に分散しているので、必ずしもビーズミルを用いて行う必要はない。さらに溶媒と反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは相溶性を有するので、液の粘度に適した汎用撹拌機を使用することで簡単に混合させることができる。汎用撹拌機に使用可能な撹拌翼としては、プロペラ翼、パドル翼、アンカー翼、ヘリカルリボン翼などが例示される。第二工程の撹拌混合操作で、必要以上に蛍光体微粒子に強いせん断エネルギ等を加えると、再凝集するため、注意が必要である。
【0041】
第三工程では、第二工程で得た分散液から第一工程で使用した溶媒を除去する。溶媒を除去する方法は特に限定されないけれども、常圧蒸留、減圧蒸留などの方法を用いることができる。なお、第二工程と第三工程とを明確に区別することなく、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加しつつ、溶媒を除去してもよい。上記第一工程から第三工程により、分散剤を含む反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを分散媒とする表面欠陥の少ない蛍光体微粒子が均一分散した蛍光体微粒子分散液を得ることができる。この分散液に必要に応じて重合開始剤を添加し、加温するなど常法に則り反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させることで蛍光体微粒子がポリマー中に均一分散し高い発光強度を有するコンポジット材を得ることができる。
【0042】
上記第二実施形態に示すコンポジット材の製造方法は、第一工程から第三工程により反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを分散媒とする蛍光体微粒子分散液を一度製造した後、この分散液を重合させることでコンポジット材を得る方法である。この方法の変形例として、図3に示すように第三工程の溶媒除去操作と平行して反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させ、コンポジット材を得てもよい。この方法は必要に応じて第二工程後に重合開始剤を添加し、第三工程の溶媒除去操作を比較的高温で行い、溶媒を除去しつつ反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させる方法である。これにより最終的に溶媒を全く含まないポリマーを分散媒体とするコンポジット材を得ることができる。さらにこの方法の変形例として、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと必要に応じて重合開始剤とを添加しつつ、溶媒を除去しながら反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させてもよい。
【0043】
さらに以下の第三実施形態に示す方法でも蛍光体微粒子が均一分散した分散液及びコンポジット材を得ることができる。図4は、本発明の第三実施形態としての蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造手順を示すブロック図である。前記第三工程で得た反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを分散媒とする蛍光体微粒子分散液に、第四工程として、第二工程で添加した反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは異なる反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合する。第四工程で添加する反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマは、第二工程で添加した反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマに比較し、蒸気圧が低い。第四工程での混合操作は、第二工程の混合操作と同じ要領で行えばよい。以下蒸気圧の高い反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、蒸気圧の低い反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとする。第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは相溶性を有する。
【0044】
第五工程では、蒸留操作などにより第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去する。なお、第四工程と第五工程とを明確に区別することなく、第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加しつつ、第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去してもよい。これにより分散剤を含む第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを分散媒とする表面欠陥の少ない蛍光体微粒子が均一分散した蛍光体微粒子分散液を得ることができる。この分散液に必要に応じて重合開始剤を添加し、加温するなど常法に則り反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させることで蛍光体微粒子がポリマー中に均一分散し高い発光強度を有するコンポジット材を得ることができる。第三実施形態に示すコンポジット材の製造方法は、第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマの分子量が比較的大きく、ビーズミルでこれら反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマに直接蛍光体微粒子を分散させにくい場合に好適に用いることができる。
【0045】
第三実施形態に示す蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造手順は、以下のように変形することも可能である。図5は、本発明の第三実施形態としての蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造手順の変形例を示すブロック図である。以下第三実施形態に示す製造手順との相違点を中心に説明する。図5に示すコンポジット材の製造手順は、図4に示す製造手順と異なり、第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合した後、第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去することなく、重合開始剤を添加し、第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去しつつ、第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させ、コンポジット材を製造する点に特徴がある。なお、重合開始剤は、第二反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと同時に、又は第二反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマよりも先に添加するように変形してもよく、不要な場合は添加する必要はない。
【0046】
さらに、以下の第四実施形態に示す方法でも蛍光体微粒子が均一分散した分散液及びコンポジット材を得ることができる。図6は、本発明の第四実施形態としての蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造手順を示すブロック図である。第四実施形態に示すコンポジット材の製造手順は、第一工程として、溶媒を分散媒とする表面欠陥の少ない蛍光体微粒子が均一分散した分散液を得た後、第二工程として第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合し、分散液を製造する。その後、必要に応じて重合開始剤を添加し、分散液中の溶媒及び第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを蒸留操作により除去しつつ、第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させコンポジット材を得る。なお、第四実施形態の変形例として、溶媒、第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、及び重合開始剤を一度に添加混合し、これら混合液に関してビーズミルを用いて蛍光体微粒子に与えるビーズ衝撃力を小さくし、蛍光体微粒子表面の欠陥の発生による結晶性の低下を抑制しつつ蛍光体微粒子を溶液に均一分散させる。その後分散液中の溶媒及び第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを蒸留操作により除去しつつ、第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させコンポジット材を得ることもできる。
【0047】
以上の方法で得られるポリマーを分散媒体とするコンポジット材は、蛍光体微粒子が均一分散し、さらにビーズミルを用いる分散操作に伴って発生する蛍光体微粒子の表面での欠陥が生じなく結晶性の低下がないので蛍光強度の低下がなく、LED照明装置に好適に使用することができる。なお、第一実施形態から第四実施形態に示すコンポジット材の製造方法において、気泡、クラックが含まれないコンポジット材とするためには、重合操作条件を適切に設定することが必要なことは、通常の重合反応と換わるところはない。
【実施例】
【0048】
実施例1
実験は次の要領で行った。分散機には、内容積が0.05Lのビーズミル(寿工業株式会社製αPMill−005)を使用した。蛍光体微粒子分散液製造装置1の基本的構成を図7に示す。蛍光体微粒子分散液製造装置1は、分散機であるビーズミル2と、ビーズミル2に原料スラリーを供給する原料スラリー供給ポンプ3、原料スラリーを調整する原料スラリータンク4を主に構成される。
【0049】
ビーズミル2は、冷却用のジャケット11を取付けたステータ12と、上部に遠心分離方式のビーズセパレータ13を有し、その下部にビーズを撹拌するためのローターピン14を同軸上に有するローター15、ローター15を駆動するモータ7を含み構成される。ローター15とステータ12とは軸封16によりシールされ、機内が密閉化されている。原料スラリータンク4は、撹拌機18を備え、原料スラリー供給ポンプ3は、原料スラリー(分散液)を定量的にビーズミル2へ供給する。ビーズミル2に供給された原料スラリーは、ステータ12内で撹拌粒子と衝突し、凝集した原料粉は分散される。ビーズセパレータ13により撹拌粒子が分離された原料スラリーは、戻りライン19を通じて原料スラリータンク4へ戻る。原料スラリータンク4は、冷却のためのジャケット(図示を省略)を備える。撹拌粒子には、粒子径0.015mmの球形のジルコニア微粒子を使用し、撹拌粒子の投入量は0.13kg(約0.035L)とした。またローターの周速は6m/sとした。
【0050】
実験は次の要領で行った。原料粉にサブミクロンの粒子径をもつ青色蛍光体微粒子としてBAM:Eu(DGTec社製:一次粒子径100〜400nm)、分散媒にコンポジットの分散媒体であるポリメタクリレート(PMMA)のモノマーであるメタクリル酸メチル(MMA)を使用した。12.5gの原料粉、102.5gの分散媒、分散剤としてKBM−5103(信越化学工業製シランカップリング剤)25gを原料スラリータンク4に投入し、撹拌混合し原料スラリーの調整を行った。ビーズミル2内には予め110gの分散媒を張込み、原料スラリー供給ポンプ3で10kg/hの割合で原料スラリーをビーズミル2に供給し、ビーズミル2内で原料粉の分散を行い、ビーズミルを通過したスラリー溶液は、戻りライン19を通じて原料スラリータンク4に戻した。この循環運転を180分間行った。固形分濃度(分散液中の原料粉濃度)は5.0重量%である。原料粉に対する分散剤の添加割合は200重量%である。粒度分布測定装置には、大塚電子株式会社製FPAR−1000を使用した。
【0051】
実験の結果、用いたBAM:Eu微粒子が、平均粒子径(メディアン径)D50が146.5nm、90%通過粒子径D90が212.1nmである、一次粒子まで均一に分散した分散液が得られた。この分散液を分散液Aとする。この結果を図8に示す。
【0052】
実施例2
分散媒にメタノールを用いた。12.5gの原料粉、125gの分散媒、12.5gの分散剤を原料スラリータンク4に投入し、撹拌混合し原料スラリーの調整を行った。ビーズミル2内には予め100gの分散媒を張込んだ。固形分濃度は5.0重量%、原料粉に対する分散剤の添加割合は100重量%である。その他の条件は、実施例1と同一である。実験の結果、図8に示すように分散液中の平均粒子径(メディアン径)D50は、137.4nm、90%通過粒子径D90は219.2nmであり、一次粒子まで分散した分散液が得られ、この分散液を分散液Bとする。実施例1のMMAを分散媒とする分散液Aに比べて分散性が良いことがわかった。
【0053】
実施例3
以下の要領でサブミクロン青色蛍光体とPMMAコンポジット材を製作し評価した。実施例1で製造した分散液Aに0.1重量%のAIBN(重合開始剤)を添加し、60℃で6時間加熱して重合させて、コンポジット材を作製した。このコンポジット材をコンポジットAとする。図9にこのコンポジットAの蛍光分光度を測定した結果を示した。用いたコンポジット材サンプルの厚みは2mmである。蛍光強度は日本分光製蛍光スペクトルメーターFP−6500型を用いて蛍光強度スペクトルを測定した。波長330nmの励起光をコンポジット材サンプルに照射し、サンプルを透過して発光する蛍光強度を測定した。その結果、450nmにピークをもつ蛍光スペクトルを検出した。また、サンプル面に発光むらのない蛍光を確認した。このことにより青色の蛍光特性を持ちまた発光むらのないポリメタクリル酸メチル(PMMA)からなる蛍光体コンポジット材が得られることが確認された。なお固形分とPMMAとの割合は、分散が維持できる範囲で任意に調整可能である。
【0054】
実施例4
以下の要領でサブミクロン青色蛍光体とシリコーン樹脂コンポジット材を製作し評価した。実施例2で作製した分散液Bはシリコーンレジンと相容性が低いため、次に示す溶剤置換を行って作製した。まず、分散液B20gとMMA20gとを混合した。その後、エバポレータを用いて減圧蒸留しメタノールを蒸発させて、MMA及び分散剤を分散媒とする分散液Cを製造した。さらに、この分散液Cにメチル系ストレートシリコーンレジン(信越化学工業製、KR242A)20gを添加混合し、エバポレータを用いて減圧蒸留しMMAを蒸発させて、シリコーンレジン及び分散剤を分散媒とする分散液Dを製造した。RTVゴム(信越化学工業製、KE109)でコーティングされた基板上に分散液Dを滴下した。その後減圧(−0.09MPa)し、気泡が発生した場合は、イソプロピルアルコールで消泡を行った。次ぎに55℃で30分から1時間加温した。この時、変形が懸念される場合は、RTVゴムコーティング基板でシリコーンレジンを挟んだ。さらに100℃で1時間、150℃で1時間と温度を上昇させ、最終的に200℃で20分間熱硬化を行った。その結果、ひび割れのない蛍光体コンポジット材を得ることができた。このコンポジト材をコンポジットDとする。この厚さは1mmである。波長330nmの励起光をコンポジット材に照射し、透過した蛍光強度を検出した。その結果、蛍光強度450nmにピークを検出し、蛍光透過性を持ち粒子むらの少ないシリコーン樹脂からなるコンポジットDが得られた。この結果を図9に示す。なお、固形分とシリコーン樹脂との割合は分散が維持できる範囲で任意に調整可能である。
【0055】
比較例1
2.5gの原料粉であるBAM:Eu粉末(DGTec社製:一次粒子径100〜400nm)、172.5gの分散媒であるMMA、分散剤であるKBM−5103を5g原料スラリータンク4に投入し、撹拌混合し原料スラリーの調整を行った。ビーズミル2内には予め70gの分散媒を張込んだ。撹拌粒子に粒子径0.05mmの球形のジルコニア粒子を使用し、ローターの周速を8m/sとした。スラリー循環量15kg/h、固形分濃度は1重量%、原料粉に対する分散剤の添加割合は200重量%である。他の条件は実施例1と同一である。480分の分散処理を行ったが、粒子は凝集状態から十分には分散しなかった。この分散液を分散液Eとする。分散液Eの平均粒子径(メディアン径)D50は、図8に示されるように、10423nm、90%通過粒子径D90は13366nmであった。また、この分散液Eに実施例1と同様に0.1重量%のAIBN(重合開始剤)を添加し、60℃で6時間加熱して重合させてコンポジットEを得た。このコンポジットEの蛍光分光度を測定した結果、図9に示すように450nmの蛍光強度は得られなかった。
【0056】
比較例2
撹拌粒子に粒子径0.03mmの球形のジルコニア粒子を使用し、ローターの周速を8m/sとした。スラリー循環量10kg/hとした。他の条件は比較例1と同一である。1380分の分散処理を行ったが、粒子は分散しなかった。この分散液を分散液E’とする。分散液E’中の平均粒子径(メディアン径)D50は、49817nm、90%通過粒子径D90は63956nmであった。
【0057】
比較例3
分散剤を添加することなく分散実験を行った。2.5gの原料粉、137.5gの分散媒を原料スラリータンク4に投入し、撹拌混合し原料スラリーの調整を行った。ビーズミル2内には予め110gの分散媒を張込んだ。固形分濃度は1重量%である。他の条件は実施例1と同一である。480分の分散処理を行ったが、粒子は分散しなかった。この分散液を分散液E’’とする。分散液E’’中の平均粒子径(メディアン径)D50は、120548nm、90%通過粒子径D90は153676nmであった。
【0058】
比較例4
分散剤を添加することなく分散実験を行った。分散媒にはメタノールを使用した。12.5gの原料粉、137.5gの分散媒を原料スラリータンク4に投入し、撹拌混合し原料スラリーの調整を行った。ビーズミル2内には予め100gの分散媒を張込んだ。固形分濃度は5重量%である。他の条件は実施例1と同一である。この分散液を分散液E’’’とする。分散液E’’’中の平均粒子径(メディアン径)D50は、17853nm、90%通過粒子径D90は31804nmであった。
【0059】
実施例5
原料粉にサブミクロン粒子径をもつ黄色の蛍光体であるYAG:Ce(一次粒子径200〜300nm)を用いた。2.5gの原料粉、132.5gの分散媒、分散剤5gを原料スラリータンク4に投入し、撹拌混合し原料スラリーの調整を行った。ビーズミル2内には予め110gの分散媒を張込んだ。固形分濃度は1.0重量%、原料粉に対する分散剤の添加割合は200重量%である。分散媒はMMAである。その他の条件は、実施例1と同一である。240分の分散実験を行い、分散液Fが得られた。図10に示すように、分散液F中の平均粒子径(メディアン径)D50は、239.1nm、90%通過粒子径D90は337.4nmであり、一次粒子まで分散した分散液が得られた。
【0060】
実施例6
分散媒にイソプロピルアルコールを用いた。原料粉に2.5gのYAG:Ce、132.5gの分散媒、分散剤5gを原料スラリータンク4に投入し、撹拌混合し原料スラリーの調整を行った。ビーズミル2内には予め110gの分散媒を張込んだ。固形分濃度は1.0重量%、原料粉に対する分散剤の添加割合は200重量%である。その他の条件は、実施例1と同一である。240分の分散実験を行った結果、分散液Gが得られた。分散液G中の平均粒子径(メディアン径)D50は、図10に示されるように、178.3nm、90%通過粒子径D90は261.8nmであり、一次粒子まで分散した分散液が得られた。
【0061】
実施例7
以下の要領でサブミクロンYAG:Ce蛍光体が分散媒体としてPMMAに分散したコンポジット材を製作し評価した。実施例5で製造した分散液Fに0.1%のAIBN(重合開始剤)を添加し、60℃で6時間加熱して重合させコンポジットFを得た。波長460nmの励起光を厚み1mmのコンポジットFに照射し、コンポジット材を透過する蛍光強度を検出した。その結果を図11に示す。このコンポジットFの発光特性は550nmを中心としたブロードなピークを示し、十分な蛍光の透過性を持ち、発光むらの少ないPMMA(ポリメタクリル酸メチル)からなるコンポジット材が得られた。なお、固形分とPMMAとの割合は分散が維持できる範囲で任意に調整可能である。
【0062】
実施例8
以下の要領でサブミクロン蛍光体とシリコーンレジンとのコンポジット材を製作し評価した。実施例6で作製した分散液G20gとMMA20gとを混合した。その後、エバポレータを用いて減圧蒸留しイソプロピルアルコールを蒸発させて、MMA及び分散剤を分散媒とする分散液を製造した。さらに、この分散液にメチル系ストレートシリコーンレジン(KR242A)20gを添加混合し、エバポレータを用いて減圧蒸留しMMAを蒸発させて、メチル系ストレートシリコーンレジン及び分散剤を分散媒とする分散液Hを製造した。RTVゴム(KE109)でコーティングされた基板上に分散液Hを滴下した。その後減圧(−0.09MPa)し、気泡が発生した場合は、イソプロピルアルコールで消泡を行った。次ぎに55℃で30分から1時間加温した。この時、変形が懸念される場合は、RTVゴムコーティング基板でシリコーンレジンを挟んだ。さらに100℃で1時間、150℃で1時間と温度を上昇させ、最終的に200℃で20分間熱硬化を行った。その結果、ひび割れのない蛍光体コンポジットHを得ることができた。波長460nmの励起光を厚み1mmのコンポジットHに照射し、透過した蛍光強度を検出した。その結果を図11に示すように、蛍光強度550nmを中心としたブロードなピークを検出し、蛍光透過性を持ち粒子むらの少ないシリコーン樹脂からなるコンポジット材が得られた。なお、固形分とシリコーン樹脂との割合は分散が維持できる範囲で任意に調整可能である。
【0063】
比較例5
ビーズ径φ0.1mm、周速12m/s、スラリー循環量10kg/hrで分散実験を行った。原料粉は12g、分散剤24g、分散媒184g、固形分濃度3wt%の分散条件である。ビーズミルには予め110gの溶媒を張り込んだ。他の条件は実施例5と同一である。作製した分散液を分散液Iとする。この分散液の平均粒子径は図10に示されるように、1.2μmである。分散液Iに0.1%のAIBN(重合開始剤)を添加し、60℃で6時間加熱して重合させ、コンポジットIを得た。このコンポジットIの蛍光分光度を測定した結果を図11に示す。波長460nmの励起光をコンポジットに照射し、透過光強度を測定した。その結果、実施例7と異なり蛍光強度550nmを中心としたブロードなピークは検出されなかった。0.10μmのビーズを用いることにより、強い分散力によって蛍光体微粒子の結晶性が破壊され、蛍光特性が失われたと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第一実施形態としての蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造手順を示すブロック図である。
【図2】本発明の第二実施形態としての蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造手順を示すブロック図である。
【図3】本発明の第二実施形態としての蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造手順の変形例を示すブロック図である。
【図4】本発明の第三実施形態としての蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造手順を示すブロック図である。
【図5】本発明の第三実施形態としての蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造手順の変形例を示すブロック図である。
【図6】本発明の第四実施形態としての蛍光体微粒子が均一分散したコンポジット材の製造手順を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施例で使用した蛍光体微粒子分散液製造装置1の基本的構成を示す図である。
【図8】本発明の実施例1、2および比較例1の分散液A、BおよびEの粒径分布測定結果を示す図である。
【図9】本発明の実施例3、4および比較例1のコンポジットA、DおよびEの蛍光分光度を測定した結果を示す図である。縦軸は透過光強度で、330の弱い透過光は入射光、450nmにピークをもつ透過光がコンポジットの蛍光である。
【図10】本発明の実施例5、6および比較例5の分散液F、GおよびIの粒径分布測定結果を示す図である。
【図11】本発明の実施例7、8および比較例5のコンポジットF、HおよびIの蛍光分光度を測定した結果を示す図である。縦軸は透過光強度で、460nmにピークをもつ透過光は入射光、550nmにピークをもつ透過光がコンポジットの蛍光である。
【符号の説明】
【0065】
1 蛍光体微粒子分散液製造装置
2 ビーズミル
3 原料スラリー供給ポンプ
4 原料スラリータンク
7 駆動モータ
12 ステータ
13 ビーズセパレータ
14 ローターピン
15 ローター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローター、ステータ及び遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えるビーズミルを用い、一次粒子径が2nmから20μmの蛍光体微粒子を分散媒に均一分散させる蛍光体微粒子分散液の製造方法であって、
分散剤を添加し、かつ前記ビーズに極微小ビーズを使用すると共に前記ローターの回転速度を低速とし、前記蛍光体微粒子に与えるビーズ衝撃力を小さくし、前記蛍光体微粒子表面の欠陥の発生及び結晶性の低下を抑制しつつ蛍光体微粒子を分散媒に均一分散させることを特徴とする蛍光体微粒子分散液の製造方法。
【請求項2】
反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有しかつ反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと反応しない溶媒に分散剤を添加し、一次粒子径が2nmから20μmの蛍光体微粒子を、ローター、ステータ及び遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えるビーズミルを用い、前記ビーズに極微小ビーズを使用すると共に前記ローターの回転速度を低速とし、前記蛍光体微粒子に与えるビーズ衝撃力を小さくし、前記蛍光体微粒子表面の欠陥の発生及び結晶性の低下を抑制しつつ蛍光体微粒子を前記溶媒に均一分散させる第一工程と、
第一工程で得られる分散液に前記反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合する第二工程と、
第二工程で得られる分散液から前記溶媒を除去し、前記反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを分散媒とする蛍光体微粒子が均一分散した分散液を得る第三工程と、
を含むことを特徴とする蛍光体微粒子分散液の製造方法。
【請求項3】
さらに前記第三工程で得られる分散液に、前記第二工程で加えた第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有し、かつ前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは異なる第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合する第四工程と、
第四工程で得られる分散液から第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去し、前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを分散媒とする蛍光体微粒子が均一分散した分散液を得る第五工程と、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の蛍光体微粒子分散液の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項の方法で製造された蛍光体微粒子分散液。
【請求項5】
請求項4で得られる蛍光体微粒子分散液を重合させ、又は請求項4で得られる蛍光体微粒子分散液に重合開始剤を添加した後、重合させコンポジット材を製造することを特徴とするコンポジット材の製造方法。
【請求項6】
前記第二工程で得られる分散液から溶媒を除去しつつ反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させ、又は前記第二工程で得られる分散液に重合開始剤を添加した後、溶媒を除去しつつ反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させコンポジット材を製造することを特徴とするコンポジット材の製造方法。
【請求項7】
前記第二工程で得られる分散液に前記第二工程で加えた第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有し、かつ前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは異なる第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合し、該分散液から前記溶媒及び前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去しつつ前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させ、又は前記第二工程で得られる分散液に前記第二工程で加えた第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有し、かつ前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは異なる第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、及び重合開始剤を添加した後、前記分散液から前記溶媒及び前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去しつつ前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させコンポジット材を製造することを特徴とするコンポジット材の製造方法。
【請求項8】
前記第四工程で得られる分散液から前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去しつつ前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させ、又は前記第四工程で得られる分散液に重合開始剤を添加した後、前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去しつつ前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させコンポジット材を製造することを特徴とするコンポジット材の製造方法。
【請求項9】
第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、該第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有しかつ該第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと反応しない溶媒、該第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有しかつ該第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは異なる第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、及び分散剤を分散媒とし、一次粒子径が2nmから20μmの蛍光体微粒子を、ローター、ステータ及び遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えるビーズミルを用い、前記ビーズに極微小ビーズを使用すると共に前記ローターの回転速度を低速とし、前記蛍光体微粒子に与えるビーズ衝撃力を小さくし、前記蛍光体微粒子表面の欠陥の発生を抑制しつつ前記分散媒に均一分散させ、
該分散液から前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、及び前記溶媒を除去しつつ前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させ、又は該分散液に重合開始剤を添加した後、該分散液から前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、及び前記溶媒を除去しつつ前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させコンポジット材を製造することを特徴とするコンポジット材の製造方法。
【請求項10】
請求項5から請求項9のいずれか1項の方法で製造されたコンポジット材。
【請求項1】
ローター、ステータ及び遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えるビーズミルを用い、一次粒子径が2nmから20μmの蛍光体微粒子を分散媒に均一分散させる蛍光体微粒子分散液の製造方法であって、
分散剤を添加し、かつ前記ビーズに極微小ビーズを使用すると共に前記ローターの回転速度を低速とし、前記蛍光体微粒子に与えるビーズ衝撃力を小さくし、前記蛍光体微粒子表面の欠陥の発生及び結晶性の低下を抑制しつつ蛍光体微粒子を分散媒に均一分散させることを特徴とする蛍光体微粒子分散液の製造方法。
【請求項2】
反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有しかつ反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと反応しない溶媒に分散剤を添加し、一次粒子径が2nmから20μmの蛍光体微粒子を、ローター、ステータ及び遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えるビーズミルを用い、前記ビーズに極微小ビーズを使用すると共に前記ローターの回転速度を低速とし、前記蛍光体微粒子に与えるビーズ衝撃力を小さくし、前記蛍光体微粒子表面の欠陥の発生及び結晶性の低下を抑制しつつ蛍光体微粒子を前記溶媒に均一分散させる第一工程と、
第一工程で得られる分散液に前記反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合する第二工程と、
第二工程で得られる分散液から前記溶媒を除去し、前記反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを分散媒とする蛍光体微粒子が均一分散した分散液を得る第三工程と、
を含むことを特徴とする蛍光体微粒子分散液の製造方法。
【請求項3】
さらに前記第三工程で得られる分散液に、前記第二工程で加えた第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有し、かつ前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは異なる第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合する第四工程と、
第四工程で得られる分散液から第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去し、前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを分散媒とする蛍光体微粒子が均一分散した分散液を得る第五工程と、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の蛍光体微粒子分散液の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項の方法で製造された蛍光体微粒子分散液。
【請求項5】
請求項4で得られる蛍光体微粒子分散液を重合させ、又は請求項4で得られる蛍光体微粒子分散液に重合開始剤を添加した後、重合させコンポジット材を製造することを特徴とするコンポジット材の製造方法。
【請求項6】
前記第二工程で得られる分散液から溶媒を除去しつつ反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させ、又は前記第二工程で得られる分散液に重合開始剤を添加した後、溶媒を除去しつつ反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させコンポジット材を製造することを特徴とするコンポジット材の製造方法。
【請求項7】
前記第二工程で得られる分散液に前記第二工程で加えた第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有し、かつ前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは異なる第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを添加混合し、該分散液から前記溶媒及び前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去しつつ前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させ、又は前記第二工程で得られる分散液に前記第二工程で加えた第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有し、かつ前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは異なる第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、及び重合開始剤を添加した後、前記分散液から前記溶媒及び前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去しつつ前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させコンポジット材を製造することを特徴とするコンポジット材の製造方法。
【請求項8】
前記第四工程で得られる分散液から前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去しつつ前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させ、又は前記第四工程で得られる分散液に重合開始剤を添加した後、前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを除去しつつ前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させコンポジット材を製造することを特徴とするコンポジット材の製造方法。
【請求項9】
第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、該第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有しかつ該第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと反応しない溶媒、該第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマと相溶性を有しかつ該第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマとは異なる第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、及び分散剤を分散媒とし、一次粒子径が2nmから20μmの蛍光体微粒子を、ローター、ステータ及び遠心分離により撹拌粒子であるビーズを分離するビーズ分離機構を備えるビーズミルを用い、前記ビーズに極微小ビーズを使用すると共に前記ローターの回転速度を低速とし、前記蛍光体微粒子に与えるビーズ衝撃力を小さくし、前記蛍光体微粒子表面の欠陥の発生を抑制しつつ前記分散媒に均一分散させ、
該分散液から前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、及び前記溶媒を除去しつつ前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させ、又は該分散液に重合開始剤を添加した後、該分散液から前記第一の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマ、及び前記溶媒を除去しつつ前記第二の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマを重合させコンポジット材を製造することを特徴とするコンポジット材の製造方法。
【請求項10】
請求項5から請求項9のいずれか1項の方法で製造されたコンポジット材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−90205(P2010−90205A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259143(P2008−259143)
【出願日】平成20年10月4日(2008.10.4)
【出願人】(505279215)寿工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月4日(2008.10.4)
【出願人】(505279215)寿工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
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