説明

蛍光体膜及びこれを用いた画像読み取り用ライン光源

【課題】入射光により蛍光される光の変換効率を高めることで発光強度を高めると共に、柔軟性を保った蛍光体膜を得ることを目的とする。
【解決手段】柔軟性を有する透光性の第1の樹脂層と、この第1の樹脂層に対向し柔軟性を有する透光性の第2の樹脂層と、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層とで挟持され所定の密度及び所定の厚みで積層され、前記第1の樹脂層を透光して入射する所定の光学波長を有する入射光を吸収して励起された前記入射光とは異なる光学波長の蛍光を生成する蛍光体粒子とを備え、前記入射光を反射させると共に前記蛍光との混色光を前記入射光の入射面側から照射する可撓性の蛍光体膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被読み取り対象(通常は紙媒体の印刷物、写真など)に光を照射し、被読み取り対象からの反射光を受光することで、被読み取り対象に形成された画像・文字・パターンなどを電子情報化する複写機やスキャナー等の読取り機器に使用される光源に備わる蛍光体粒子を含有した蛍光体膜及びこれ用いた画像読み取り用ライン光源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙媒体などに形成された画像・文字・パターンなどを電子情報化する複写機やスキャナー等の読み取り機器においては、光源から被読み取り対象物にライン状に光を照明する。この光源に設けられる蛍光体膜としては、LED素子によって蛍光体が励起される構成としたものが、例えば、特開2004−164977号公報(特許文献1参照)及び特開2007−300043号公報(特許文献2参照)に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の発明においては、LED素子から出射した青色光が導光板で導かれ、この導光板から出射した光を多層の蛍光体膜を透過させる事により、照明に必要な色味の光を生成している。また、特許文献2に記載の発明においては、LEDから出射した光を、キャップ型の蛍光体膜を透過させる事により必要な色味の光を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−164977号公報
【特許文献2】特開2007−300043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の発明は、いずれも蛍光体膜を透過した光を利用する為、蛍光体膜内の蛍光体粒子を、必要な透過光強度が得られる隙間で分散させて形成している。そのため、より発光強度を上げるために蛍光体粒子の充填率を高めて行くと、蛍光体粒子が密集し次第に透過が妨げられ、透過光強度は飽和・減少して所定の発光強度が得られなくなるという課題がある。
【0006】
また充填率の増加に伴い蛍光体膜の硬度も増していくことから、膜の柔軟性が減少し脆い膜質の蛍光体膜となり、所定の発光分布を得る為に様々な形に加工することが困難になるという課題がある。
【0007】
この発明は上記のような課題を解決する為になされたものであり、入射光により蛍光される光の変換効率を高めることで発光強度を高めると共に、柔軟性を保った蛍光体膜を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る蛍光体膜は、柔軟性を有する透光性の第1の樹脂層と、この第1の樹脂層に対向し柔軟性を有する透光性の第2の樹脂層と、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層とで挟持され所定の密度及び所定の厚みで堆積され、前記第2の樹脂層を透光して入射する所定の光学波長を有する入射光を吸収して励起された前記入射光とは異なる少なくとも1つの光学波長の蛍光を生成する蛍光体粒子とを備え、前記入射光を反射させると共に前記蛍光との混色光を前記入射光の入射面側から照射する可撓性のものである。
【0009】
この発明に係る画像読み取り用ライン光源は、LED光源と、このLED光源を端部に配置し、外周面に長軸方向に沿ってライン状に設けた細幅の光反射パターンを備え、内部に入射した前記LED光源からの光を長軸方向に沿って反射させながら伝搬させる棒状の導光体と、この導光体と所定の隙間を設けて前記導光体を取り囲むと共に、細長の前記光反射パターンに対向し長軸方向に沿って長溝で構成した開口部を設けた導光体ケースと、この導光体ケースの前記導光体側に設けられ、前記光反射パターンで散乱又は正反射して前記導光体の表面から出射した前記LED光源からの光を吸収して励起された前記LED光源からの光とは異なる少なくとも1つの光学波長の蛍光を生成する蛍光体粒子を所定の密度及び所定の厚みで堆積された蛍光体層に、この蛍光体層を挟持する柔軟性を有する透光性の樹脂層が前記蛍光体層の表裏面に積層された可撓性の蛍光体膜とを備え、前記蛍光を前記導光体の内部を透過させて前記開口部から前記LED光源からの光を含む混色光を被照射体に照射するものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る蛍光体膜及び画像読み取り用ライン光源によれば、蛍光体膜からの反射光を使用するので容易に照明強度が高められ、高い照明強度で高効率な光源が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1におけるライン光源の側面図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるライン光源の斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるライン光源の分解図である。
【図4】この発明の実施の形態1におけるライン光源の断面図である。
【図5】この発明の実施の形態1による画像読み取り用ライン光源の光路を説明する側面図である。
【図6】この発明の実施の形態1による画像読み取り用ライン光源の光路を説明する断面図である。
【図7】この発明の実施の形態1における蛍光体膜5の断面図である。
【図8】この発明の実施の形態1における蛍光体膜5の製造方法を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態1における蛍光体膜5の製造方法を示す図である。
【図10】蛍光体層の厚みと発光輝度との関係を説明する図である。
【図11】この発明の実施の形態1における蛍光体膜5の他の製造方法を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態1における蛍光体膜5の他の製造方法を示す図である。
【図13】この発明の実施の形態2における導光体3の長軸方向における蛍光体膜5の幅を示した図である。
【図14】この発明の実施の形態2における蛍光体膜5の幅の変化を示す導光体3の軸方向から見たライン光源の断面図である。
【図15】この発明の実施の形態3における蛍光体膜の断面構造を示す図である。
【図16】この発明の実施の形態4における蛍光体膜の断面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1におけるライン光源について、図1〜図4を用いて説明する。図1は、この発明の実施の形態1におけるライン光源の側面図である。図2は、この発明の実施の形態1におけるライン光源の斜視図である。図3は、この発明の実施の形態1におけるライン光源の分解図である。図4は、この発明の実施の形態1におけるライン光源の断面図である。
【0013】
LED光源1は、青色光を発光するLED素子を用いた光源である。LED回路2は、ガラスエポキシなどの基板2aにLED光源1を載置すると共に外部からの電源をLED光源1に供給するコネクタ2bとからなる。導光体3は透明なソーダガラス、透明な樹脂、又は透過率が80%程度の透明サファイアなど、屈折率(n)が1.5以上を有する部材を棒状に成形加工したもので、端部を鏡面処理し、この端部からLED光源1の光を入射させ、内部に入射した青色光を長手方向(長軸方向)に沿って導光する。この導光体3の内部を長軸方向に通過する光の経路を導光路と呼び、導光体3の長軸方向と直交する方向を通過する光の経路を横断路(透過路)と呼ぶ。
【0014】
図4において、円柱状の導光体3の外周面に対して0.1mm程度の所定の隙間dを隔てて内周面に蛍光体膜5を固着した導光体ケース6が導光体3を取り囲むように配置される。すなわち、導光体3の外周面と導光体ケース6の内周面とは長軸方向の読み取り領域に対して中止軸を同一とする同心円状に配置されている。
【0015】
導光体ケース6には、長軸方向に沿って長軸方向と直交する方向に一定幅の長溝を形成することで光を被照射体に出射する取り出し口となる開口部6aを設けている。この開口部6aの端部を長溝端部と呼ぶ。それぞれの長溝端部と所定の隙間を空けて対向する導光体3の外周面には、長軸方向に沿ってシルク印刷用の白色の光反射部材又は導光体3に直接切溝で形成したレンチキュラーレンズやプリズムパターンを用いて光反射パターン4が互いに平行して形成されている。したがって、導光体3の導光路を通過する青色光の一部は光反射パターン4で散乱又は正反射して導光体3の内部の横断路を透過して導光体3の表面から出射し、導光体ケース6の蛍光体膜5で捕捉される。
【0016】
導光体ケース6の内周面には、例えば約120μmの厚さtの蛍光体膜5が接着剤などを用いて固着されている。この蛍光体膜5には、黄色発光する蛍光体粒子を備え、この蛍光体膜5で青色光を捕捉し、一部の青色光は反射し、導光体3の内部を横断して開口部6aから被照射体に照射される。その他の青色光は蛍光体膜5で吸収され励起された黄色の蛍光を放出する。すなわち、蛍光体膜5は青色光とは異なる波長の光に変換された蛍光を生成する。
【0017】
生成された蛍光は、導光体3の内部を横断して開口部6aから複合光として被照射体に照射される。したがって青色光と黄色光とが混合した擬似白色光が被照射体に照明される。なお、導光体3は図3及び図4に示すように導光体ケース6の両端部と中央部に設けた突起部6bで固定される。
【0018】
ライン光源は、中空部を有するホルダー7の中空部の一端側にLED回路2の基板2aに載置したLED光源1を収納し、他端側に導光体3を組み込んだ導光体ケース6の端部を挿入することで構成される。図1においては、ホルダー7は導光体ケース6の両端側に設けられ、LED光源1から照射される青色光は導光体3の両端側から入射する。
【0019】
次に、LED光源1とホルダー7との関係について説明する。導光体3の端部に設けられる青色発光のLED光源1を搭載するLED回路2は、その保持機構であるホルダー7で固定され、LED回路2は導光体3や導光体ケース6に対して導光体3の端部で光が通過する照射軸を中心とする光学位置が一致するように取り付けられ、LED回路2には単数又は複数の青色LEDが配置される。またホルダー7の構造によりLED光源1は導光体3の端部に対して所定の間隔を保持し、LED光源1から出射する青色光が安定して導光体3の内部に取り込まれるように構成される。
【0020】
また、ホルダー7は導光体3や導光体ケース6の位置ずれを防止するために図1に示すように2段の嵌め合わせの差込構造を持ち、導光体3の両端部で位置決めを行う構造としている。さらに、導光体3に対するホルダー7の嵌め合わせは例えば導光体3の直径が4mmでは、2mm以上の深さとし、LED光源1から入射される青色光が導光体3の表面に対して全反射角よりも小さな角度で入射した光だけが導光体3の内部へ入射するようにし、ホルダー7の外部においてはLED光源1の直接光が照明光として直接関与しない構造としている。
【0021】
次にライン光源の動作について図5及び図6を用いて説明する。図5は、この発明の実施の形態1による画像読み取り用ライン光源の光路を説明する側面図である。図6は、この発明の実施の形態1による画像読み取り用ライン光源の光路を説明する断面図である。
【0022】
LED光源1から発せられた光は透明材料により形成された円柱状の導光体3の内部を他端側に向かって導光される過程において、導光体3に設けられた光反射パターン4で光は散乱又は正反射され、蛍光体膜5へ照射される。蛍光体膜5で発光した蛍光と蛍光体膜5で反射された青色光が混色し、導光体3を経由して反射板6の開口部6aから原稿などの被照射体に向かって蛍光と青色光とが照射される。
【0023】
蛍光体膜5について、図7を用いて説明する。図7は、この発明の実施の形態1における蛍光体膜5の断面図である。図7において、バインダーである例えば約40μmの厚みを有する膜状で、アスカーC硬度が約20以下の柔軟性を有し、約80%以上の透光率を有するシリコーン樹脂膜51と、シリコーン樹脂膜51の表面に例えば約40μmの厚みを有して密集して黄色の蛍光波長を持つ蛍光体粒子52aを積層した蛍光体層52と、シリコーン樹脂膜51とで蛍光体層52を挟み込むように積層されたバインダーである例えば例えば約40μmの厚みを有する膜状の透光性のシリコーン樹脂膜53とで形成されている。なお、シリコーン樹脂膜51とシリコーン樹脂膜53は、同一の素材である。
【0024】
蛍光体膜5は、シリコーン樹脂膜51側を導光体ケース6の内周面にシリコーン樹脂の接着剤を用いて固着され、シリコーン樹脂膜53側が導光体3の外周面に対峙するように導光体ケース6に取り付けられる。
【0025】
導光体3から出射した青色光は、シリコーン樹脂膜53を透光して蛍光体層52へ到達する。蛍光体層52は蛍光体粒子52aが密集して配置されているため青色光はシリコーン樹脂膜51へはほとんど透光しなく、一部の青色光は反射し、導光体3へと入射する。その他の青色光は蛍光体粒子52aに吸収され励起され黄色の蛍光を放出する。この放出された黄色の蛍光は、導光体3へと入射する。導光体3から蛍光体膜5へ照射される青色光は、蛍光体膜5からの黄色の蛍光と蛍光体膜5の表面で反射した青色光の拡散反射光が合わさって導光体3の横断路を透過して反射板6の開口部6aより放射され、被照射体に対して白色光による照明を行う。
【0026】
蛍光体膜5の製造方法について、図8及び図9を用いて説明する。図8及び図9は、この発明の実施の形態1における蛍光体膜5の製造方法を示す図である。塗布工程(S1)において、図9(a)に示すようにガラス板71の表面に液体状の透光性のシリコーン樹脂51を例えば約40μmの膜厚で塗布する。加熱工程(S2)において、ガラス板71の表面に塗布されたシリコーン樹脂51を加熱し、Bステージ状態にする。表面散布工程(S3)において、図9(b)に示すようにBステージ状態のシリコーン樹脂51の表面に蛍光体粒子52aを厚みが例えば約20μmとなるように散布する。
【0027】
張り合わせ工程(S4)において、図9(c)に示すように、Bステージ状態の2枚のシリコーン樹脂膜を蛍光体粒子面で張り合わせる。加熱硬化工程(S5)において、張り合わされたシリコーン樹脂膜を完全硬化(Cステージ)させ、蛍光体膜5にする。
【0028】
この発明の実施の形態1においては、蛍光体層は密集して配置された蛍光体粒子で形成され、蛍光体粒子に捕捉されない青色光は蛍光体層で反射され導光体に再び入射するので、高輝度の蛍光体膜が得られる。更に、蛍光体層の表裏面を柔軟なシリコーン樹脂で積層する構成としたので、柔軟性の良い蛍光体膜が得られ、導光体ケースの内面形状に沿った形に成形される効果がある。
【0029】
図10は、蛍光体層の厚みと発光輝度との関係を説明する図である。蛍光体層52は約40μmの厚みとしたが、図10に示すように、青色光を照射した際に発光強度が飽和する約40μm以上の厚みで蛍光体層52を形成することにより、蛍光を生成する変換効率を向上させて、省エネ化を図ると共に、蛍光体層52の厚みのばらつきによる発光強度が不均一になることを防止する効果がある。
【0030】
この発明の実施の形態1においては、シリコーン樹脂膜51及びシリコーン樹脂膜53の厚みは約40μmとしたが、固着される導光体ケース6の曲率になどに応じて、他の厚みとしても良い。
【0031】
この発明の実施の形態1においては、蛍光体膜5は図8及び図9に示すように、1組のガラス板の表面に塗布されたシリコーン樹脂の表面に蛍光体粒子を塗布し蛍光体層を形成したものを、蛍光体層同士で張り合わせる製造方法としたが、シリコーン樹脂に蛍光体粒子を混練し、このシリコーン樹脂をガラス板に塗布し、蛍光体粒子を沈殿させて蛍光体層を形成したものを、蛍光体層同士で張り合わせる製造方法においても、同様の効果が得られる。
【0032】
蛍光体膜5の他の製造方法について、図11及び図12を用いて説明する。図11及び図12は、この発明の実施の形態1における蛍光体膜5の他の製造方法を示す図である。混練工程(S11)において、液体状の透光性のシリコーン樹脂51に沈殿時に例えば約20μmの蛍光体層となる密度で、蛍光体粒子52aを混練する。塗布工程(S12)において、図12(a)に示すように、蛍光体粒子52aを混練したシリコーン樹脂51をガラス板71の表面に塗布する。沈殿工程(S13)において、図12(b)に示すようにシリコーン樹脂51内の蛍光体粒子52aを沈殿させて蛍光体層に分離する。
【0033】
加熱工程(S14)において、蛍光体粒子52aが蛍光体層に分離されたシリコーン樹脂51を加熱し、Bステージ状態にする。張り合わせ工程(S15)において、図12(c)に示すように、Bステージ状態の2枚のシリコーン樹脂膜を蛍光体層面で張り合わせる。加熱硬化工程(S16)において、張り合わされたシリコーン樹脂膜を完全硬化(Cステージ)させ、蛍光体膜5にする。
【0034】
実施の形態2.
図13は、この発明の実施の形態2における導光体3の長軸方向における蛍光体膜5の幅を示した図である。図13において、図1と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。蛍光体膜5は、図13(c)に示すように、LED光源1から導光体3の長軸方向に延伸するにつれ蛍光体膜5の幅が次第に広くなる構造としている。
【0035】
図14は、この発明の実施の形態2における蛍光体膜5の幅の変化を示す導光体3の軸方向から見たライン光源の断面図である。図14において、図4と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。図14(a)は、図13(c)のA−A部に相当するライン光源の断面図、図14(b)は、図13(c)のB−B部に相当するライン光源の断面図、図14(c)は、図13(c)のC−C部に相当するライン光源の断面図である。
【0036】
図14に示すように、蛍光体膜5は、導光体ケース6の開口部6aの中心軸に対向する軸を中心にして、次第に幅が広がり、図14(a)に示すように導光体3の一部の面から、図14(c)に示すように導光体3の周囲を覆うように幅が変化している。
【0037】
LED光源1から導光体3の長軸方向に延伸するにつれ幅が次第に広くなる蛍光体膜5の作用について図13を用いて述べる。図13(a)は、蛍光体膜5の長軸方向の幅が一様であるときの、LED光源1から発せられた導光体3に端部から入射した青色光61の伝搬を示す図である。LED光源1から発せられた光は透明材料により形成された円柱状の導光体3の内部を他端側に向かって導光される過程において、蛍光体膜5で反射されて導光体3から出射される青色光61aと共に、一部は蛍光体膜5の蛍光体層52の表面粗さにより散乱した散乱青色光61bとなり導光体3内を伝搬する。このため、導光体3から出射される長軸方向の光量81が不均一光量となる。
【0038】
図13(b)は、蛍光体膜5の長軸方向の幅が一様であるときの、LED光源1から発せられ導光体3の端部から入射した青色光61の、導光体3から出射される青色光61aと青色光61によって励起された黄色の蛍光62を示す図である。図13(b)において、青色光61aの長軸方向の光量の分布は、図13(a)で説明したとおりである。青色光61aが長軸方向において不均一光量であるため、青色光61によって励起される黄色の蛍光62も青色光61aの光量に対応して不均一光量となる。したがって、青色光61aと黄色の蛍光62との混色で得られる色度82も不均一となり、擬似白色光は導光体3の長軸方向の中央部付近で得られ、導光体3の端部側に向かうにつれ黄緑色光又は赤黄色光となる。
【0039】
図14(c)は、蛍光体膜5の長軸方向の幅が次第に広くなる構造であるときの、LED光源1から発せられ導光体3に端部から入射した青色光61の、導光体3から出射される青色光61aと青色光61によって励起された黄色の蛍光62を示す図である。図13(c)において、導光体3の端部側の蛍光体膜3の幅は狭いため、LED光源1から発せられ導光体3に端部から入射した青色光61の蛍光体層52により散乱した散乱青色光61bは少なくなり、導光体3内の散乱青色光61bの伝搬量は少なくなる。
【0040】
また、導光体3の端部側は図14(a)に示すように蛍光体膜5は導光体3の外周の一部を囲んでいるため、導光体3から出射した青色光61の大半は導光体ケース6の内周面で反射されて、再び導光体3へと入射し、導光体反射パターン4で反射され、蛍光体膜5でさらに反射され、開口部6aから照射される。したがって、導光体3の端部側の光量が増加するので、導光体3の長軸方向における光量が均一光量となる。
【0041】
同様に、導光体3の端部側における光量が増加するので、蛍光体膜5で励起される黄色の蛍光62の光量も増加し、青色光61aと黄色の蛍光62との混色で得られる色度82も均一となり、導光体3の長軸方向全般に渉って擬似白色光を得る。
【0042】
図13(c)においては、蛍光体膜5はステップ状に幅を広げているが、連続的に広げても同様の効果を得る。
【0043】
実施の形態3.
図15は、この発明の実施の形態3における蛍光体膜の断面構造を示す図である。図15において、図7と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。図15において、蛍光体膜5は、シリコーン樹脂膜51の表面に例えば約40μmの厚みを有して密集して黄色の蛍光体粒子52aを積層した蛍光体層52と、蛍光体層52の表面に例えば約40μmの厚みを有する膜状の透光性のシリコーン樹脂膜53と、シリコーン樹脂膜53の表面に例えば約40μmの厚みを有して密集して黄色の蛍光体粒子54aを積層した蛍光体層54と、蛍光体層54の表面に例えば約40μmの厚みを有する膜状の透光性のシリコーン樹脂膜55とで形成されている。なお、シリコーン樹脂膜51、シリコーン樹脂膜53及びシリコーン樹脂膜55は、同一の素材である。
【0044】
導光体3から出射した青色光61は、シリコーン樹脂膜55を透光して蛍光体層54へ到達する。蛍光体層54は蛍光体粒子54aが密集して配置されているため、青色光61はシリコーン樹脂膜53へはほとんど透光しないが、一部の青色光61はシリコーン樹脂膜53へと透光し、蛍光体層52へと透光する。
【0045】
蛍光体層52へ到達した一部の青色光は反射し、導光体3へと入射する。その他の青色光は蛍光体粒子52aに吸収され励起され黄色の蛍光62を放出する。この放出された黄色の蛍光62は、導光体3へと入射する。
【0046】
この発明の実施の形態3によれば、この発明の実施の形態1に示す単層の蛍光体層52に密度の不均一や何らかの欠損が生じて、LED光源1からの青色光61の一部が蛍光体層54を透過した場合でも、下層の蛍光体層52で透過した光を反射し、且つ透過した青色光61により励起した蛍光体層52内の蛍光体粒子52aから発した蛍光62も加わることにより、反射光輝度の低下が防止される。
【0047】
実施の形態4.
図16は、この発明の実施の形態4における蛍光体膜の断面構造を示す図である。図16において、図7及び図15と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。図16において、蛍光体膜5は、シリコーン樹脂膜51の表面に例えば約40μmの厚みを有して密集して黄色の蛍光体粒子52aを積層した蛍光体層52と、蛍光体層52の表面に例えば約40μmの厚みを有する膜状の透光性のシリコーン樹脂膜53と、シリコーン樹脂膜53の表面に例えば40μm未満の厚みを有して散在して赤色系又は緑色系の蛍光体粒子56aを積層した透光性の蛍光体層56と、蛍光体層56の表面に例えば約40μmの厚みを有する膜状の透光性のシリコーン樹脂膜55とで形成されている。なお、シリコーン樹脂膜51、シリコーン樹脂膜53及びシリコーン樹脂膜55は、同一の素材である。
【0048】
導光体3から出射した青色光61は、シリコーン樹脂膜55を透光して蛍光体層56へ到達する。蛍光体層56は蛍光体粒子56aが散在して配置されているため、青色光61の一部は蛍光体層56で反射及び励起して赤色系又は緑色系の蛍光64を発生し、他の青色光61はシリコーン樹脂膜53へ透光し、蛍光体層52へと透光する。
【0049】
蛍光体層52へ到達した一部の青色光は反射し、導光体3へと入射する。その他の青色光は蛍光体粒子52aに吸収され励起され黄色の蛍光62を放出する。この放出された黄色の蛍光62は、導光体3へと入射する。
【0050】
この発明の実施の形態4によれば、上層の異色の蛍光体粒子56aから発せられる蛍光64と、異色の蛍光体粒子56aが疎らに配された蛍光体層56を通り抜けた青色光61によって励起され反射してきた蛍光62とが混合する事によって、この発明の実施の形態1において得られる照明光の色度を調整できる効果がある。
【符号の説明】
【0051】
1・・LED光源(青色LED)
2・・LED回路 2a・・基板 2b・・コネクタ(外部端子)
3・・導光体(円柱導光体)
4・・光反射パターン(導光体反射パターン)
5・・蛍光体層
6・・導光体ケース 6a・・開口部 6b・・突起部 6c・・突起部
7・・ホルダー
51、53、55・・シリコーン樹脂膜
52、54、56・・蛍光体層
52a、54a、56a・・蛍光体粒子
61・・入射光(青色光) 61a・・青色光 61b・・散乱青色光
62、63、64・・蛍光
71・・ガラス板
81・・光量
82・・色度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性を有する透光性の第1の樹脂層と、この第1の樹脂層に対向し柔軟性を有する透光性の第2の樹脂層と、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層とで挟持され所定の密度及び所定の厚みで堆積され、前記第2の樹脂層を透光して入射する所定の光学波長を有する入射光を吸収して励起された前記入射光とは異なる少なくとも1つの光学波長の蛍光を生成する蛍光体粒子とを備え、前記入射光を反射させると共に前記蛍光との混色光を前記入射光の入射面側から照射する可撓性の蛍光体膜。
【請求項2】
柔軟性を有する透光性の第1の樹脂層と、この第1の樹脂層に対向し柔軟性を有する透光性の第2の樹脂層と、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層とで挟持され所定の密度及び所定の厚みで堆積され、前記第2の樹脂層を透光して入射する青色光を吸収して励起された黄色の蛍光を生成する蛍光体粒子とを備え、前記青色光を反射させると共に前記黄色の蛍光との混色により白色光を前記入射光の入射面側から照射する可撓性の蛍光体膜。
【請求項3】
表裏面が互いに対向し柔軟性を有する透光性の複数の樹脂層と、対向する前記それぞれの樹脂層で挟持され所定の密度及び所定の厚みで堆積され、それぞれの前記樹脂層を透光して入射する所定の光学波長を有する入射光を吸収して励起された前記入射光とは異なる少なくとも1つの光学波長の蛍光を生成する蛍光体粒子とを備え、前記入射光を反射させると共に前記蛍光との混色光を前記入射光の入射面側から照射する可撓性の蛍光体膜。
【請求項4】
表裏面が互いに対向し柔軟性を有する透光性の複数の樹脂層と、対向する前記それぞれの樹脂層で挟持され所定の密度及び所定の厚みで堆積され、それぞれの前記樹脂層を透光して入射する所定の光学波長を有する入射光を吸収して励起された前記入射光とは異なる少なくとも1つの光学波長の蛍光を生成する蛍光体粒子とを備え、それぞれの対向した樹脂層で挟持され積層された前記蛍光体粒子が、入射光の入射面側に向かうにつれ前記蛍光体粒子の密度が次第に粗となる構造を有し、前記入射光を反射させると共に前記蛍光との混色光を前記入射光の入射面側から照射する可撓性の蛍光体膜。
【請求項5】
LED光源と、このLED光源を端部に配置し、外周面に長軸方向に沿ってライン状に設けた細幅の光反射パターンを備え、内部に入射した前記LED光源からの光を長軸方向に沿って反射させながら伝搬させる棒状の導光体と、この導光体と所定の隙間を設けて前記導光体を取り囲むと共に、細長の前記光反射パターンに対向し長軸方向に沿って長溝で構成した開口部を設けた導光体ケースと、この導光体ケースの前記導光体側に設けられ、前記光反射パターンで散乱又は正反射して前記導光体の表面から出射した前記LED光源からの光を吸収して励起された前記LED光源からの光とは異なる少なくとも1つの光学波長の蛍光を生成する蛍光体粒子を所定の密度及び所定の厚みで堆積された蛍光体層に、この蛍光体層を挟持する柔軟性を有する透光性の樹脂層が前記蛍光体層の表裏面に積層された可撓性の蛍光体膜とを備え、前記蛍光を前記導光体の内部を透過させて前記開口部から前記LED光源からの光を含む混色光を被照射体に照射する画像読み取り用ライン光源。
【請求項6】
LED光源と、このLED光源を端部に配置し、外周面に長軸方向に沿ってライン状に設けた細幅の光反射パターンを備え、内部に入射した前記LED光源からの光を長軸方向に沿って反射させながら伝搬させる棒状の導光体と、この導光体と所定の隙間を設けて前記導光体を取り囲むと共に、細長の前記光反射パターンに対向し長軸方向に沿って長溝で構成した開口部を設けた導光体ケースと、この導光体ケースの前記導光体側に設けられ、前記光反射パターンで散乱又は正反射して前記導光体の表面から出射した前記LED光源からの光を吸収して励起された前記LED光源からの光とは異なる少なくとも1つの光学波長の蛍光を生成する蛍光体粒子を所定の密度及び所定の厚みで堆積された蛍光体層に、この蛍光体層を挟持する柔軟性を有する透光性の樹脂層が前記蛍光体層の表裏面に積層され、前記導光体ケースの開口部の長軸方向に対向する軸を中心軸とし、この中心軸に沿って前記LED光源側から前記長軸方向に延伸するに伴い前記中心軸の所定の長さまで幅が漸増する可撓性の蛍光体膜とを備え、前記蛍光を前記導光体の内部を透過させて前記開口部から前記LED光源からの光を含む混色光を被照射体に照射する画像読み取り用ライン光源。
【請求項7】
前記LED光源は青色光を発生し、前記蛍光体膜は前記青色光によって励起され黄色の蛍光を生成する蛍光体粒子を有し、前記青色光と前記黄色の蛍光との混色により白色光を照射する請求項5又は請求項6に記載の画像読み取り用ライン光源。
【請求項8】
前記蛍光体膜は、複数の前記樹脂層と複数の前記蛍光体層とを交互に積層した多層構造を有する請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の画像読み取り用ライン光源。
【請求項9】
前記蛍光体膜は、複数の前記樹脂層と複数の前記蛍光体層とを交互に積層した多層構造を有し、前記導光体の表面から出射した光の入射側に向かうにつれ前記複数の前記蛍光体層の蛍光体粒子の密度が次第に粗となる構造を有する請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の画像読み取り用ライン光源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−231299(P2012−231299A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98380(P2011−98380)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】