説明

蛍光体

【課題】発光輝度が高く、プラズマ暴露による輝度低下が少ない真空紫外線励起発光素子用の蛍光体を提供する。
【解決手段】一般式mM1O・nM2O・2M32(式中のM1はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上、M2はMgおよびZnからなる群より選ばれる1種以上、M3はSiおよびGeからなる群より選ばれる1種以上、0.5≦m≦3.5、0.5≦n≦2.5、ただしm=n=1のときはM1はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる2種以上またはSrまたはBaである。)で表される化合物に付活剤としてEuおよびMnからなる群より選ばれる1種以上が含有されてなる真空紫外線励起発光素子用の蛍光体。ディオプサイド、オケルマナイト、メルウィナイトのいずれかと同じ結晶構造を有する上記記載の蛍光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下「PDP」という。)および希ガスランプなどの真空紫外線励起発光素子に好適な蛍光体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空紫外線等によって励起して発光させる蛍光体はすでに知られている。例えば、Ba、Mg、Al、Oと付活剤(Eu)とからなるBaMgAl1017:Euが真空紫外線励起発光素子用の青色蛍光体として、また例えば、Zn、Si、Oと付活剤(Mn)とからなるZn2SiO4:Mnが緑色蛍光体として、また例えば、Y、Gd、B、Oと付活剤(Eu)とからなる(Y,Gd)BO3:Eu赤色蛍光体として実用化されており、PDPや希ガスランプ等の真空紫外線励起発光素子用に用いられている。
【0003】
しかしながら、これら真空紫外線励起発光素子用の蛍光体にはさらなる輝度の向上が望まれていた。また、PDPおよび希ガスランプ等の真空紫外線励起発光素子においては、希ガス中で放電を行いプラズマを生成させることにより真空紫外線を発生しているが、プラズマに暴露されることにより蛍光体の輝度が低下する問題があり、プラズマ暴露による輝度低下の少ない真空紫外線励起発光素子用の蛍光体が求められており、上記したようなアルミン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩からなる蛍光体が検討されている。
ケイ酸塩からなる蛍光体としては、例えば、非特許文献1には真空紫外線励起発光素子用の蛍光体としてCaMgSi26:Euが開示されているが、輝度が十分ではなかった。
なお、特許文献1にはSr1.995MgSi27:Eu0.005,Dy0.025,Cl0.025およびSr0.445Ba1.55MgSi27:Eu0.005,Dy0.025,Cl0.025が開示されているが、暗所の表示用等に用いられる蓄光体用の蛍光体であり、真空紫外線励起については記載されていなかった。
【0004】
【非特許文献1】Extended abstracts of the sixth international conference on the science and technology of display phosphors,21−24
【特許文献1】米国特許第5839718号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、輝度が高く、プラズマ暴露による輝度低下が少ない真空紫外線励起発光素子用の蛍光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、かかる状況下、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、真空紫外線励起発光素子用には、ケイ酸塩またはゲルマン酸塩蛍光体の中でも、一般式mM1O・nM2O・2M32(式中のM1はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上、M2はMgおよびZnからなる群より選ばれる1種以上、M3はSiおよびGeからなる群より選ばれる1種以上、0.5≦m≦3.5、0.5≦n≦2.5、ただしm=n=1のとき、M1はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる2種以上またはSrまたはBaである。)で表される化合物に付活剤としてEuおよびMnからなる群より選ばれる1種以上が含有されてなる特定組成のケイ酸塩またはゲルマン酸塩蛍光体は輝度が高くかつプラズマ暴露による輝度低下が少ないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、以下の(1)〜(10)に関するものである。
(1)一般式mM1O・nM2O・2M32(式中のM1はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上、M2はMgおよびZnからなる群より選ばれる1種以上、M3はSiおよびGeからなる群より選ばれる1種以上、0.5≦m≦3.5、0.5≦n≦2.5、ただしm=n=1のときはM1はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる2種以上またはSrまたはBaである。)で表される化合物に付活剤としてEuおよびMnからなる群より選ばれる1種以上が含有された真空紫外線励起発光素子用の蛍光体。
(2)ディオプサイド(Diopside、透輝石)と同じ結晶構造を有する上記(1)記載の蛍光体。
(3)一般式(M41-aEua)(M51-bMnb)M626(式中のM4はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる2種以上またはSrまたはBa、M5はMgおよびZnからなる群より選ばれる1種以上、M6はSiおよびGeからなる群より選ばれる1種以上、0≦a≦0.5、0≦b≦0.5、0<a+b。)により表される組成を有する上記(2)記載の蛍光体。
(4)一般式Ca1-c-dSrcEudMgSi26(0<c≦0.1、0<d≦0.1。)で表される上記(2)記載の蛍光体。
(5)上記(1)記載の真空紫外線励起発光素子用の蛍光体であって、オケルマナイト(Akermanite、オケルマン石)と同じ結晶構造を有する蛍光体。
(6)一般式(M71-eEue2(M81-fMnf)M927(式中のM7はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上、M8はMgおよびZnからなる群より選ばれる1種以上、M9はSiおよびGeからなる群より選ばれる1種以上、0≦e≦0.5、0≦f≦0.5、0<e+f。)で表される組成を有する上記(5)記載の蛍光体。
(7)一般式(M101-gEug211Si27(式中のM10はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上、M11はMgおよびZnからなる群から選ばれる1種以上、0.001≦g≦0.1)で表される組成を有する上記(5)記載の蛍光体。
(8)一般式(M121-hEuh)(M131-iMni21427(式中のM12はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上、M13はMgおよびZnからなる群より選ばれる1種以上、M14はSiおよびGeからなる群より選ばれる1種以上、0≦h≦0.5、0≦i≦0.5、0<h+i。)で表される組成を有する上記(5)記載の蛍光体。
(9)上記(1)記載の真空紫外線励起発光素子用の蛍光体であって、メルウィナイト(Merwinite)と同じ結晶構造を有する蛍光体。
(10)一般式(M151-jEuj3(M161-kMnk)M1728(式中のM15はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上、M16はMgおよびZnからなる群より選ばれる1種以上、M17はSiおよびGeからなる群より選ばれた1種以上、0≦j≦0.5、0≦k≦0.5、0<j+k。)で表される組成を有する上記(9)記載の蛍光体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の蛍光体は輝度が高く、プラズマ暴露による輝度低下が少なく、特にPDPや希ガスランプなどの真空紫外線励起発光素子用に好適であり、高輝度の真空紫外線励起発光素子が実現できるので、工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明について詳しく説明する。
本発明の真空紫外線励起発光素子用の蛍光体は、一般式mM1O・nM2O・2M32(式中のM1はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上、M2はMgおよびZnからなる群より選ばれる1種以上、M3はSiおよびGeからなる群より選ばれる1種以上、0.5≦m≦3.5、0.5≦n≦2.5、ただしm=n=1のとき、M1はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる2種以上またはSrまたはBaである。)を母結晶とし、付活剤としてEuおよびMnからなる群より選ばれる1種以上が含有されてなることを特徴とし、ディオプサイド、オケルマナイト、メルウィナイトと同じ結晶構造をもつものが好ましい。
【0010】
ディオプサイド(Diopside、透輝石)と同型の結晶構造を有する場合の中でも、上記(1)の一般式においてm=1およびn=1の場合の一つである一般式(M41-aEua)(M51-bMnb)M626(式中のM4はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる2種以上またはSrまたはBa、M5はMgおよびZnからなる群より選ばれる1種以上、M6はSiおよびGeからなる群より選ばれる1種以上、0≦a≦0.5、0≦b≦0.5、0<a+b。)で表される組成を有する蛍光体が真空紫外線励起発光素子用として好ましい。
さらに、ディオプサイド(Diopside、透輝石)と同型の結晶構造を有する場合の中でも、上記(1)の一般式においてm=1およびn=1の場合の一つでありCaとSrを含む一般式Ca1-c-dSrcEudMgSi26(0<c≦0.1、0<d≦0.1。)で表される組成を有する蛍光体がさらに好ましい。
【0011】
オケルマナイト(Akermanite、オケルマン石)と同じ結晶構造を有する場合の中でも、上記(1)の一般式においてm=2およびn=1の場合の一つである一般式(M71-eEue2(M81-fMnf)M927(式中のM7はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上、M8はMgおよびZnからなる群より選ばれる1種以上、M9はSiおよびGeからなる群より選ばれる1種以上、0≦e≦0.5、0≦f≦0.5、0<e+f。)で表される組成を有する蛍光体が真空紫外線励起発光素子用として好ましい。さらに、前記一般式においてf=0でM9がSiの場合の一般式(M101-gEug211Si27(式中のM10はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上、M11はMgおよびZnからなる群から選ばれる1種以上、0.001≦g≦0.1)で表される
組成を有する蛍光体がさらに好ましい。
【0012】
また、オケルマナイトと同じ結晶構造を有する場合の中でも、上記(1)の一般式においてm=1およびn=2の場合の一つである一般式一般式(M121-hEuh)(M131-iMni21427(式中のM12はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上、M13はMgおよびZnからなる群より選ばれる1種以上、M14はSiおよびGeからなる群より選ばれる1種以上、0≦h≦0.5、0≦i≦0.5、0<h+i。)で表される組成を有する蛍光体も真空紫外線励起発光素子用として好ましい。
【0013】
メルウィナイト(Merwinite)と同型の結晶構造を有する場合の中でも、上記(1)の一般式においてm=3およびn=1の場合の一つである、一般式(M151-jEuj3(M161-kMnk)M1728(式中のM15はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上、M16はMgおよびZnからなる群より選ばれる1種以上、M17はSiおよびGeからなる群より選ばれた1種以上、0≦j≦0.5、0≦k≦0.5、0<j+k。)で表される組成を有する蛍光体が真空紫外線励起発光素子用として好ましい。
上記ディオプサイド、オケルマナイト、メルウィナイトと同じ結晶構造を持つ蛍光体のなかでも、ディオプサイド、メルウィナイトと同じ結晶構造を持つ蛍光体が好ましく、ディオプサイドと同じ結晶構造を持つ蛍光体がさらに好ましい。
【0014】
次に本発明の蛍光体の製造方法について説明する。
本発明の蛍光体を製造するための原料となるカルシウム源、ストロンチウム源、バリウム源としては、高純度(99%以上)の水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩など高温で分解し酸化物になりうるものかまたは高純度(99.9%以上)の酸化物が使用できる。
マグネシウム源、亜鉛源となる原料としては、高純度(99%以上)の水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩など高温で分解し酸化物になりうるものかまたは高純度(99%以上)の酸化物が使用できる。
ケイ素源、ゲルマニウム源となるとなる原料としては、高純度(99%以上)の水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩など高温で分解し酸化物になりうるものかまたは高純度(99%以上)の酸化物が使用できる。
【0015】
付活剤となるユーロピウム、マンガンを含む原料としては、高純度(99%以上)の水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩など高温で分解し酸化物になりうるものかまたは高純度(99%以上)の酸化物が使用できる。
【0016】
本発明の蛍光体の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、上記それぞれの原料を混合し焼成することにより製造することができる。好ましい組成の一つである一般式(M41-aEua)(M51-bMnb)M626(式中のM4はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる2種以上またはSrまたはBa、M5はMgおよびZnからなる群より選ばれる1種以上、M6はSiおよびGeからなる群より選ばれる1種以上、0≦a≦0.5、0≦b≦0.5、0<a+b。)で表される組成を有する蛍光体は、上記原料を所定の組成となるように秤量し配合し、混合して焼成することにより製造することができる。これらの原料の混合には通常工業的に用いられているボールミル、V型混合機、または攪拌装置等を用いることができる。
【0017】
混合した後、例えば1000℃から1500℃の温度範囲にて1〜100時間焼成することにより本発明の蛍光体が得られる。原料に水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩など高温で分解し酸化物になりうるものが使用した場合、本焼成の前に、例えば600℃から900℃の温度範囲にて仮焼することも可能である。
焼成雰囲気としては、特に限定されるものではないが、例えば水素を0.1〜10体積%含む窒素やアルゴン等の還元性雰囲気で焼成することが好ましい。また仮焼の雰囲気は大気雰囲気、還元性雰囲気のいずれでもよい。また、反応を促進するために、適量のフラックスを添加してもよい。
【0018】
さらに、上記方法にて得られる蛍光体を、例えばボールミル、ジェットミル等を用いて粉砕することができる。また、洗浄、分級することができる。得られる蛍光体の結晶性を高めるために、再焼成を行うこともできる。
【0019】
以上のようにして得られる本発明の蛍光体は真空紫外線励起によって高い輝度が得られ、プラズマ暴露による輝度低下が少ない。さらに、PDPおよび希ガスランプの製造においては、蛍光体にバインダーを加えて溶媒に分散させ、発光部に塗布して500℃程度で熱処理してバインダーを除去することにより蛍光体を設置する工程が一般的であるが、本発明の蛍光体は、この熱処理工程における輝度低下も少ない。従って、本発明の蛍光体をPDPおよび希ガスランプなどの真空紫外線励起発光素子用に用いた場合、高輝度で寿命の長いPDPおよび希ガスランプが実現できるので、真空紫外線励起発光素子用として好適である。
【0020】
本発明の蛍光体は真空紫外域以外の紫外線、X線および電子線などによっても励起可能であり、真空紫外域以外の紫外線、X線および電子線を励起源とした素子にも用いることができる。
【実施例】
【0021】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0022】
実施例1
炭酸カルシウム(和光純薬工業(株)製)CaCO3、炭酸ストロンチウム(和光純薬工業(株)製)SrCO3、酸化ユーロピウム(信越化学工業(株)製)Eu23、塩基性炭酸マグネシウム(和光純薬工業(株)製)(MgCO34Mg(OH)2・5H2O、酸化珪素(和光純薬工業(株)製)SiO2各原料をCaCO3:SrCO3:Eu23:(MgCO34Mg(OH)2・5H2O:SiO2のモル比が0.9215:0.0485:0.015:0.2:2になるように配合し混合した後、2体積%H2含有Ar雰囲気中で1200℃の温度で2時間焼成、解砕後、再度2体積%H2含有Ar雰囲気中で1200℃の温度で2時間焼成した。このようにして、組成式がCa0.9215Sr0.0485Eu0.03MgSi26で表される蛍光体を得た。この蛍光体に、6.7Pa(5×10-2Torr)以下の真空槽内で、得られた蛍光体にエキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製、H0012型)を用いて紫外線を照射したところ、青色の発光を示し、輝度は24cd/m2を示した。
【0023】
得られた蛍光体を、空気中で500℃、30分間熱処理を行った。蛍光体を取出して輝度を測定した結果、熱処理前に比較して輝度は全く低下しなかった。
【0024】
得られた熱処理前の蛍光体を、圧力が13.2Paで5体積%Xe−95体積%Neの組成の雰囲気中に設置し、10Wのプラズマに30分間、ついで50Wのプラズマに15分間曝露させた。蛍光体を取出して輝度を測定した結果、プラズマ曝露前に比較して輝度は全く低下しなかった。
【0025】
得られた熱処理、プラズマ暴露前の蛍光体を、空気中で500℃、30分間熱処理を行った。次いで、圧力が13.2Paで5体積%Xe−95体積%Neの組成の雰囲気中に設置し、10Wのプラズマに30分間、ついで50Wのプラズマに15分間曝露させた。蛍光体を取出して輝度を測定した結果、熱処理、プラズマ曝露前に比較して輝度の低下は4%であった。
【0026】
実施例2
炭酸ストロンチウム(和光純薬工業(株)製)SrCO3、炭酸バリウム(和光純薬工業(株)製)BaCO3、酸化ユーロピウム(信越化学工業(株)製)Eu23、塩基性炭酸マグネシウム(和光純薬工業(株)製)(MgCO34Mg(OH)2・5H2O、酸化珪素(和光純薬工業(株)製)SiO2各原料をSrCO3:BaCO3:Eu23:(MgCO34Mg(OH)2・5H2O:SiO2のモル比が2.28:0.57:0.075:0.2:2になるように配合、混合した後、2体積%H2含有Ar雰囲気中で1200℃の温度で2時間焼成した。このようにして、組成式がSr2.28Ba0.57Eu0.15MgSi28で表される蛍光体を得た。この蛍光体に、6.7Pa(5×10-2Torr)以下の真空槽内で、得られた蛍光体にエキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製、H0012型)を用いて紫外線を照射したところ、青色の発光を示し、輝度は30cd/m2を示した。
【0027】
実施例3
炭酸バリウム(関東化学(株)製)BaCO3、酸化ユーロピウム(信越化学工業(株)製)Eu23、酸化マグネシウム(関東化学(株)製)MgO、酸化珪素((株)高純度化学研究所製)SiO2各原料をBaCO3:Eu23:MgO:SiO2のモル比が1.98:0.01:1:2になるように配合し、また、生成物1モルに対してB23をフラックスとして0.1モル添加し、アセトン中、乳鉢で十分湿式混合し、乾燥した。得られた混合原料をステンレス製の金型に入れ、40MPaの圧力で加圧して直径15mm×厚さ3mmの円形ペレットに成形した。得られたペレットをアルミナ坩堝に入れ、5体積%H2−95体積%Ar雰囲気中で1200℃で3時間焼成した。このようにして、組成式がBa1.98Eu0.02MgSi27で表される蛍光体を得た。この蛍光体に、6.7Pa(5×10-2Torr)以下の真空槽内で、得られた蛍光体にエキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製、H0012型)を用いて紫外線を照射したところ、緑色の発光を示し、輝度は95cd/m2を示した。
【0028】
実施例4
(Sr0.99Eu0.012MgSi27を製造するにあたり、出発原料として、炭酸ストロンチウム(関東化学(株)製)SrCO3、酸化ユーロピウム(信越化学工業(株)製)Eu23、酸化マグネシウム(関東化学(株)製)MgO、酸化珪素((株)高純度化学研究所製)SiO2を用いた。これら原料をSrCO3:Eu23:MgO:SiO2のモル比が1.98:0.01:1:2になるように配合し、また、生成物(Sr0.99Eu0.012MgSi271モルに対してB23をフラックスとして0.1モル添加し、アセトン中、乳鉢で十分湿式混合し、乾燥した。得られた混合原料をステンレス製の金型に入れ、40MPaの圧力で加圧して直径15mm×厚さ3mmの円形ペレットに成形した。得られたペレットをアルミナ坩堝に入れ、5%H2−95%Ar雰囲気中で1200℃で3時間焼成した。焼成後得られた試料に、波長254nmまたは365nmの紫外線を照射すると、いずれの場合も高輝度の水色発光を示した。6.7Pa(5×10-2Torr)以下の真空槽内でエキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製)を用いて真空紫外線を照射したところ、水色の発光を示し、輝度は25cd/cm2を示した。
【0029】
実施例5
(Sr0.99Eu0.012ZnSi27を製造するにあたり、出発原料として、炭酸ストロンチウムSrCO3、酸化ユーロピウムEu23、酸化亜鉛ZnO、酸化珪素SiO2を用いた。これら原料をSrCO3:Eu23:ZnO:SiO2のモル比が1.98:0.01:1:2になるように配合し、フラックスとして生成物(Sr0.99Eu0.012ZnSi271モルに対してB23を0.1モル添加し、アセトン中で乳鉢で十分湿式混合し、乾燥した。得られた混合原料をステンレス製の金型に入れ、40MPaの圧力で加圧して直径15mm×厚さ3mmの円形ペレットに成形した。得られたペレットをアルミナ坩堝に入れ、5%H2−95%Ar雰囲気中で1200℃で3時間焼成した。焼成後得られた試料につき、254nmもしくは365nmの紫外線にて励起するといずれも高輝度の青緑色発光を示した。6.7Pa(5×10-2Torr)以下の真空槽内で得られた蛍光体にエキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製)を用いて真空紫外線を照射したところ、青緑色の発光を示した。
【0030】
比較例1
炭酸カルシウム(和光純薬工業(株)製)CaCO3、酸化ユーロピウム(信越化学工業(株)製)Eu23、塩基性炭酸マグネシウム(和光純薬工業(株)製)(MgCO34Mg(OH)2・5H2O)、酸化珪素(和光純薬工業(株)製)SiO2各原料をCaCO3:Eu23:(MgCO34Mg(OH)2・5H2O):SiO2のモル比が0.95:0.025:0.2:2になるように配合、混合した後、2体積%H2含有Ar雰囲気中で1200℃の温度で2時間焼成した。このようにして、組成式がCa0.95Eu0.05MgSi26で表される蛍光体を得た。この蛍光体に、6.7Pa(5×10-2Torr)以下の真空槽内で、得られた蛍光体にエキシマ146nmランプ(ウシオ電機社製、H0012型)を用いて紫外線を照射したところ、青色の発光を示し、輝度は12cd/m2を示した。
【0031】
比較例2
市販の青色発光蛍光体BaMgAl1017:Euを、空気中で500℃、30分間熱処理を行った。蛍光体を取出して輝度を測定した結果、熱処理前に比較して輝度が1%低下した。
【0032】
上記市販の青色発光蛍光体を、圧力が13.2Paで5体積%Xe−95体積%Neの組成の雰囲気中に設置し、10Wのプラズマに30分間、ついで50Wのプラズマに15分間曝露させた。蛍光体を取出して輝度を測定した結果、プラズマ曝露前に比較して輝度が25%低下した。
【0033】
上記市販の青色発光蛍光体を、空気中で500℃、30分間熱処理を行った。次いで、圧力が13.2Paで5体積%Xe−95体積%Neの組成の雰囲気中に設置し、10Wのプラズマに30分間、ついで50Wのプラズマに15分間曝露させた。蛍光体を取出して輝度を測定した結果、熱処理、プラズマ曝露前に比較して輝度が28%低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式mM1O・nM2O・2M32(式中のM1はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上、M2はMgおよびZnからなる群より選ばれる1種以上、M3はSiおよびGeからなる群より選ばれる1種以上、0.5≦m≦3.5、0.5≦n≦2.5、ただしm=n=1のときはM1はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる2種以上またはSrまたはBaである。)で表される化合物に付活剤としてEu、Mnからなる群より選ばれる1種以上が含有されてなることを特徴とする真空紫外線励起発光素子用の蛍光体。
【請求項2】
請求項1記載の真空紫外線励起発光素子用の蛍光体であって、ディオプサイド(Diopside、透輝石)と同じ結晶構造を有する蛍光体。
【請求項3】
一般式(M41-aEua)(M51-bMnb)M626(式中のM4はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる2種以上またはSrまたはBa、M5はMgおよびZnからなる群より選ばれる1種以上、M6はSiおよびGeからなる群より選ばれる1種以上、0≦a≦0.5、0≦b≦0.5、0<a+b。)で表される組成を有する請求項2記載の蛍光体。
【請求項4】
一般式Ca1-c-dSrcEudMgSi26(0<c≦0.1、0<d≦0.1。)で表される組成を有する請求項2記載の蛍光体。
【請求項5】
請求項1記載の真空紫外線励起発光素子用の蛍光体であって、オケルマナイト(Akermanite、オケルマン石)と同じ結晶構造を有する蛍光体。
【請求項6】
一般式(M71-eEue2(M81-fMnf)M927(式中のM7はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上、M8はMgおよびZnからなる群より選ばれる1種以上、M9はSiおよびGeからなる群より選ばれる1種以上、0≦e≦0.5、0≦f≦0.5、0<e+f。)で表される組成を有する請求項5記載の蛍光体。
【請求項7】
一般式(M101-gEug211Si27(式中のM10はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上、M11はMgおよびZnからなる群から選ばれる1種以上、0.001≦g≦0.1。)で表される組成を有する請求項5記載の蛍光体。
【請求項8】
一般式(M121-hEuh)(M131-iMni21427(式中のM12はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上、M13はMgおよびZnからなる群より選ばれる1種以上、M14はSiおよびGeからなる群より選ばれる1種以上、0≦h≦0.5、0≦i≦0.5、0<h+i。)で表される組成を有する請求項5記載の蛍光体。
【請求項9】
請求項1記載の真空紫外線励起発光素子用の蛍光体であって、メルウィナイト(Merwinite)と同じ結晶構造を有する蛍光体。
【請求項10】
一般式(M151-jEuj3(M161-kMnk)M1728(式中のM15はCa、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上、M16はMgおよびZnからなる群より選ばれる1種以上、M17はSiおよびGeからなる群より選ばれた1種以上、0≦j≦0.5、0≦k≦0.5、0<j+k。)で表される組成を有する請求項9記載の蛍光体。

【公開番号】特開2007−284683(P2007−284683A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138848(P2007−138848)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【分割の表示】特願2001−259235(P2001−259235)の分割
【原出願日】平成13年8月29日(2001.8.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】