説明

蛍光体

【課題】高い色純度を有するPDP用赤色蛍光体を提供する。
【解決手段】PDP用赤色蛍光体は、YBO:Eu3+または(Y,Gd)BO:Eu3+で表され、少なくともネオジム(Nd)化合物が付着していることを特徴とした3価のユウロピウム(Eu3+)付活希土類ホウ酸塩蛍光体である。バナジン酸ネオジム(NdVO)等のネオジム(Nd)化合物が付着することで、発光輝度が高く、長寿命であり、さらに色純度の高い蛍光体となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面ディスプレイ、特にプラズマディスプレイパネルなど、優れた色再現性を求められる用途に適した蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体は、蛍光ランプ(FL)、冷陰極型蛍光ランプ(CCFL)、キセノンランプなどの真空紫外線ランプ、最近では発光ダイオード(LED)等の照明機器に用いられたり、CRT、プラズマディスプレイパネル(PDP)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等のディスプレイ機器に用いられたり、またカラー液晶ディスプレイ(LCD)のバックライト中のCCFL、FED、LED等の光源中に用いられている。
【0003】
このうち、特にディスプレイ機器やLCDのバックライトに用いられる光源は、高い発光輝度、長寿命のほかに、ディスプレイとして高い色再現性が求められている。
高い色再現性を実現するためには、赤色、緑色、青色の光の三原色の色純度が高いことが求められる。色純度が高い光とは、究極的には単色光すなわちレーザー光のように単一の波長のみで構成されている光となるが、一般的な光源では、実際にこのような単色光を容易に得ることは難しい。例えば蛍光体からの発光では、蛍光体の種類によって、発光ピークの幅が異なり、または複数の発光ピークを有するものもあるため、任意の発光色で色純度の高い光を得ることは難しい。
【0004】
また、蛍光体の種類によっては、比較的色純度に優れた蛍光体もあるが、その蛍光体が同時に高い発光輝度や長寿命といった優れた特性を同時に併せ持つことは稀である。
例えばPDPに用いられる蛍光体では、緑色を発光する蛍光体としてZnSiO:Mn2+蛍光体、青色を発光する蛍光体としてBaMgAl1017:Eu2+蛍光体、赤色を発光する蛍光体として(Y,Gd)BO:Eu3+が代表的に用いられており、これらのPDP用蛍光体は、真空紫外線(VUV)領域の光の照射により、効率よく励起され良好な輝度を示すと供に、好適な寿命特性を有する。しかしながら、赤色蛍光体の(Y,Gd)BO:Eu3+蛍光体の発光スペクトルは図2の比較例1に示すように592nm付近、610nm付近および626nm付近に強い発光ピークを有する。592nmに強い発光ピークを持つために、色度は(x=0.639、y=0.360)と橙赤色となり、色再現域の点で好ましくない。
【0005】
この、PDP用赤色蛍光体の発光色を改善するため、例えば別の蛍光体であるY:Eu3+やYVO:Eu3+、Y(P,V)O:Eu3+などが提案された(例えば特許文献1参照。)。しかしながら、これらY:Eu3+やYVO:Eu3+、Y(P,V)O:Eu3+などの蛍光体は、発光色の色度は改善するものの、PDP用としては輝度が低下したり、寿命が短かったりなど、実用性に問題があった。
このほかに、PDP用蛍光体に顔料等の着色剤を用い、コントラストの改善を図る技術が開示されている(例えば特許文献2参照。)。しかしながら、発光色の改善を図るものではない。
【0006】
【特許文献1】特開昭50−67782号公報 (第1頁)
【特許文献2】特開平8−287835号公報 (第2頁、第4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述の従来技術に鑑み、高い発光輝度や長寿命といった特性を損なうことなく、より色純度の高いPDP用の蛍光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく種々の検討や実験を行なった結果、上記のPDP用赤色蛍光体である、3価のユウロピウム付活希土類ホウ酸塩蛍光体に、特定の希土類の化合物を蛍光体表面に付着させることにより、得られる発光色の色純度が向上することを見出した。
【0009】
請求項1記載の蛍光体は、3価のユウロピウム(Eu3+)付活希土類ホウ酸塩蛍光体であり、少なくともネオジム(Nd)化合物が付着していることを特徴としているものである。
そして、3価のユウロピウム(Eu3+)付活希土類ホウ酸塩蛍光体にネオジム(Nd)化合物を付着させることにより、蛍光体の発光色が調整され、より色純度の向上した蛍光体となる。
【0010】
請求項2記載の蛍光体は、請求項1記載の蛍光体において、3価のユウロピウム(Eu3+)付活希土類ホウ酸塩蛍光体は、YBO:Eu3+または(Y,Gd)BO:Eu3+で表されることを特徴としているものである。
そして、YBO:Eu3+または(Y,Gd)BO:Eu3+で表される蛍光体にネオジム(Nd)化合物を付着させることにより、蛍光体の発光色が調整され、より色純度の向上した蛍光体となる。
【0011】
請求項3記載の蛍光体は、請求項1ないし2記載の蛍光体において、ネオジム(Nd)化合物は、バナジン酸塩、タングステン酸塩、モリブデン酸塩、アルミン酸塩、酸硫化物、酸化物の少なくとも1つ以上からなることを特徴としているものである。
そして、3価のユウロピウム(Eu3+)付活希土類ホウ酸塩蛍光体にこれらのネオジム(Nd)化合物を付着させることにより、蛍光体の発光色が調整され、より色純度の向上した蛍光体となる。
【0012】
請求項4記載の蛍光体は、請求項1ないし2記載の蛍光体において、ネオジム(Nd)化合物は、NdVO、Nd12、KNdW、NdMo12、KNdMo、NdAlO,NdS,Ndの少なくとも1つ以上で表される化合物からなることを特徴としているものである。
そして、3価のユウロピウム(Eu3+)付活希土類ホウ酸塩蛍光体にこれらのネオジム(Nd)化合物を付着させることにより、蛍光体の発光色が調整され、より色純度の向上した蛍光体となる。
【0013】
請求項5記載の蛍光体は、請求項1ないし4記載の蛍光体において、ネオジム(Nd)化合物は、平均粒径D50が0.05μm以上1μm以下の微粒子であることを特徴としているものである。
そして、3価のユウロピウム(Eu3+)付活希土類ホウ酸塩蛍光体に付着させるネオジム(Nd)化合物の粒度を、平均粒径D50で0.05μm以上1μm以下の微粒子とすることにより、より効果的に蛍光体の発光色が調整され、より色純度の向上した蛍光体となる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の蛍光体によれば、3価のユウロピウム(Eu3+)付活希土類ホウ酸塩蛍光体に、少なくともネオジム(Nd)化合物が付着したことで、蛍光体の発光色が調整され、より色純度の向上した蛍光体を得られる。
【0015】
請求項2記載の蛍光体によれば、請求項1記載の蛍光体において、3価のユウロピウム(Eu3+)付活希土類ホウ酸塩蛍光体は、YBO:Eu3+または(Y,Gd)BO:Eu3+としたことで、蛍光体の発光色が調整され、より色純度の向上した蛍光体を得られる。
【0016】
請求項3記載の蛍光体によれば、請求項1ないし2記載の蛍光体において、ネオジム(Nd)化合物を、バナジン酸塩、タングステン酸塩、モリブデン酸塩、アルミン酸塩、酸硫化物、酸化物の少なくとも1つ以上からなる構成としたことで、蛍光体の発光色が調整され、より色純度の向上した蛍光体を得られる。
【0017】
請求項4記載の蛍光体によれば、請求項1ないし2記載の蛍光体において、ネオジム(Nd)化合物を、NdVO、Nd12、KNdW、NdMo12、KNdMo、NdAlO,NdS,Ndの少なくとも1つ以上で表される化合物からなる構成としたことで、蛍光体の発光色が調整され、より色純度の向上した蛍光体を得られる。
【0018】
請求項5記載の蛍光体によれば、請求項1ないし4記載の蛍光体において、ネオジム(Nd)化合物を、平均粒径D50が0.05μm以上1μm以下の微粒子であるとしたことで、より効果的に蛍光体の発光色が調整され、より色純度の向上した蛍光体を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態における蛍光体を製造する工程を説明する。本発明に係る蛍光体は、成分元素を含む化合物を所定の比率になるように混合し、得られた混合物を所定の条件下で焼成した後に、さらに特定の化合物を付着させることにより得られる。
【0020】
PDP用赤色蛍光体の、3価のユウロピウム付活希土類ホウ酸塩蛍光体としては、YBO:Eu3+、(Y,Gd)BO:Eu3+などが挙げられるが、ここでは(Y,Gd)BO:Eu3+蛍光体を用いて説明する。
この(Y,Gd)BO:Eu3+蛍光体は、610nm付近および626nm付近の赤色発光の他に592nm付近に強い橙色発光ピークを有するため、その発光色は、色度が例えばx=0.639、y=0.360と、橙赤色となり、色純度も悪く、PDP用の赤色光源としては橙色成分が多く好ましくない。
【0021】
ここで、ネオジム(Nd)化合物として例えばバナジン酸ネオジム(NdVO)、アルミン酸ネオジム(NdAlO)、タングステン酸ネオジム(Nd12)をフィルター材料として用い、上記の(Y,Gd)BO:Eu3+付活蛍光体の表面にこれらフィルター材料の微粒子を付着させ、フィルター材料微粒子付着蛍光体とする。これらのNd化合物フィルター材料微粒子は、可視光線領域全般的には、反射率は高いが、460nm〜480nm付近、510nm〜530nm付近、580nm〜610nm付近等に吸収波長領域を有する。
このNd化合物フィルター材料微粒子を上記のEu3+付活蛍光体の表面に付着させることにより、592nm付近のピークはNd化合物フィルター材料微粒子のフィルター効果により吸収され抑制されるが、残りの610nm付近および630nm付近のピークはほぼ吸収されないため、発光輝度をほとんど損なうことなく、色純度が高まり、PDP用として好ましい蛍光体となる。
【0022】
なお、フィルター材料微粒子のフィルター効果は、その粒径に依存する。平均粒径D50として、およそ0.05μmから1μm程度の微粒子が好ましい。1μmを超える場合、蛍光体の発光に対するフィルター効果が小さくなり、0.05μm未満の場合、フィルター材料微粒子自体の体色が極めて薄くなり、やはりフィルター効果が小さくなり、好ましくない。
Nd化合物のフィルター材料微粒子は、例えばボールミルやビーズミルなどの手段によりその粒度を小さくする。
【0023】
フィルター材料微粒子の蛍光体表面への付着方法は、さまざまな方法があるが、例えばフィルター材料微粒子を水等に所定の割合で分散させた懸濁液を作製し、この懸濁液中に対象となる蛍光体を加えて攪拌混合することによって蛍光体表面にフィルター材料微粒子を付着させる。
このとき、効果的に付着させるため、例えば水ガラス系のような無機バインダを加えても良い。また、代替として、水酸化亜鉛や水酸化アルミニウムのようにコロイド状態となる水酸化物を用いても良く、このほかゼラチンやアラビアゴム等の粘着性のある有機物を用いても良い。
懸濁液中にて蛍光体が充分に攪拌された後、攪拌を停止し蛍光体を沈降させる。上澄み液を除いた後、洗浄、ろ過、乾燥、篩別を経て、フィルター材料微粒子が表面に付着した蛍光体を得る。
こうして得られた微粒子が付着した蛍光体は、フィルター材料微粒子等が付着していない通常の蛍光体と同様に扱うことができる。
【0024】
そのほか、ネオジム化合物としては、KNdW、NdMo12、KNdMo、NdS、Nd等も好適に用いることができる。
また、これらネオジム化合物のうち、ネオジム元素の一部をエルビウム(Er)元素で置換してもよい。このとき、エルビウム元素で置換する量は50モル%程度までが好ましい。このとき、置換量が50モル%を超えると、ネオジムに特徴的な吸収が弱くなるという問題がある。
このほか、例えば上記エルビウムのように、ネオジム化合物の特徴的な吸収を阻害しない物質であれば、フィルター材料微粒子中に他の物質が同時に含まれていてもよい。
【0025】
次に、上記一実施の形態の実施例として、本発明のフィルター材料微粒子付着蛍光体とその特性について説明する。
【実施例1】
【0026】
はじめに、PDP用赤色蛍光体としてフィルター材料微粒子の付着した(Y,Gd)BO:Eu3+蛍光体の特性について説明する。
【0027】
まず(Y,Gd)BO:Eu3+蛍光体を合成する。
原料として、77.7gの酸化イットリウム(Y)(Yとして0.688モル)、46.6gの酸化ガドリニウム(Gd)(Gdとして0.257モル)、9.7gの酸化ユウロピウム(Eu)(Euとして0.055モル)及び74.1gのホウ酸(HBO)(Bとして1.2モル)とを十分よく混合した後、石英ルツボに充填し、1060℃で3時間焼成し、その後過剰なホウ酸を除去するために、得られた焼成体を温水で数回洗浄し、ボールミル工程を経て(Y,Gd)BO:Eu3+蛍光体を得た。この(Y,Gd)BO:Eu3+蛍光体は、(Y0.688,Gd0.257)BO:Eu3+0.055で表される組成を有している。
【0028】
この(Y,Gd)BO:Eu3+蛍光体に付着させるフィルター材料微粒子としてネオジム化合物のバナジン酸ネオジム(NdVO)を選択した。
このNdVO微粒子は、原料として336.5gの酸化ネオジム(Nd)(Ndとして2モル)と181.9gの五酸化バナジウム(V)(Vとして2モル)とを十分よく混合した後、石英ルツボに充填し1200℃で4時間焼成した後に、洗浄、ボールミル工程を経て微粒子化して得た。
得られたNdVO微粒子をレーザー回折式粒度分布測定装置(型式:SALD−2100 株式会社島津製作所製)で粒度分布を測定したところ、平均粒径D50は0.75μm、最大粒径D100は4.45μmであった。
【0029】
次に、フィルター材料微粒子を付着させる工程を説明する。
得られた上記NdVO微粒子3gを、純水500ml中に加え、攪拌して分散させて懸濁液をつくる。この懸濁液500mlに、(Y,Gd)BO:Eu3+蛍光体(平均粒径D50は2.6μm)100gを加え攪拌混合し、さらに1M−塩化亜鉛(ZnCl)水溶液を10ml加え攪拌混合する。充分に混合された後に、さらに希アンモニア水(約14%)を少しずつ添加してpH9になるように調整する。その後、攪拌を停止し、蛍光体を沈降させる。上澄み液を除去後に、数回純水洗浄を行い、ろ過後、乾燥工程、篩別工程を経て、目的のNdVO微粒子を3質量%付着させた蛍光体を得る。この得られたNdVO微粒子付着蛍光体を実施例1とした。
【0030】
比較のため、NdVO微粒子をつけていない(Y,Gd)BO:Eu3+蛍光体を、比較例1とした。さらに、NdVO微粒子のかわりに、従来のブラウン管や特許文献2等でコントラスト向上を図るために用いられた顔料として「べんがら」(酸化第二鉄系顔料)を上記NdVO微粒子と同様の方法で蛍光体に対して0.1質量%の割合で付着させた(Y,Gd)BO:Eu3+蛍光体を用意した。この得られたべんがら付着蛍光体を比較例2とした。
【0031】
次に、実施例1、比較例1および比較例2の発光特性を測定した。発光輝度は輝度計(型式:LS−110 コニカミノルタ製)を用いて測定した。また、反射スペクトル及び発光スペクトルをファイバマルチチャンネル分光器(型式:USB2000 Ocean Optics社製)を用いて測定した。反射スペクトル測定は、照射光源として40W電球を用い、標準白色板(東京電色製 No.57992)の反射を1とした時の相対値を反射率として求めた。発光スペクトルは、励起光として146nmの真空紫外線を、真空紫外エキシマ光照射装置(ウシオ電機株式会社製)を用いて照射した。その結果を、実施例1、比較例1および比較例2の反射スペクトルを図1に、実施例1と比較例1の発光スペクトルを図2に示す。
また、この発光スペクトルから比較例1のピーク強度を1としたときの相対ピーク比を、輝度とともに表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
図1に示すように、比較例1の反射スペクトルに比べて、実施例1の反射スペクトルは580nmから600nm付近に大きなピークを持ち、この付近の波長の光を効果的に吸収していることがわかる。一方、比較例2の反射スペクトルは約580nm以下の波長の光を大きく吸収しているものの、590nm付近の波長の光はあまり吸収していない。
また、図2および表1に示すように、実施例1では592nmの発光ピークを効果的に抑制しつつ、他の610nmおよび626nmの発光ピークへの影響は小さいことがわかる。しかし、比較例2では、いずれの発光ピークも一様に抑制してしまっている。
すなわち、本発明の蛍光体の実施例1は、592nmのピークに対する特異的なフィルター効果が顕著であることがわかり、これに対して比較例2すなわち従来の赤色顔料であるべんがらを付着させた蛍光体では、592nm,610nm,626nmの3つの発光ピーク強度は、顔料なしの比較例1の蛍光体に比べて、いずれも一様に小さくなっており、592nmのピークに対する特異的なフィルター効果はほとんど無いことがわかる。
【0034】
なお、このときの色度は、比較例1が(x=0.639,y=0.360)であるのにに対して、実施例1は(x=0.646,y=0.353)であり、色度も改善されていることがわかった。しかし、比較例2は(x=0.641,y=0.359)と比較例1とほとんど変化しなかった。
次に、(Y,Gd)BO:Eu3+蛍光体に、さまざまなフィルター材料微粒子を用いた例を示す。
【実施例2】
【0035】
(Y,Gd)BO:Eu3+蛍光体に、フィルター材料微粒子として、タングステン酸ネオジム(Nd12)を用いた他は、実施例1と同様の方法で蛍光体に対して3質量%の割合で微粒子を付着させ、Nd12微粒子付着蛍光体を得た。これを実施例2とした。
このとき、Nd12微粒子は、原料として168.3の酸化ネオジム(Nd)(Ndとして1モル)と347.8gの三酸化タングステン(WO)(Wとして1.5モル)とを十分よく混合した後、石英ルツボに充填し1000℃で4時間焼成した後に、洗浄、ボールミル工程を経て微粒子化して得たもので、実施例1と同様に粒度分布そ測定したところ、平均粒径D50は0.50μm、最大粒径D100は1.28μmであった。
【実施例3】
【0036】
(Y,Gd)BO:Eu3+蛍光体に、フィルター材料微粒子として、実施例1のバナジン酸ネオジムの一部をエルビウムで置換した(Nd0.5Er0.5)VOを用いた他は、実施例1と同様の方法で蛍光体に対して3質量%の割合で微粒子を付着させ、(Nd0.5Er0.5)VO微粒子付着蛍光体を得た。これを実施例3とした。
このとき、(Nd0.5Er0.5)VO微粒子は、原料として168.3gの酸化ネオジム(Nd)(Ndとして1モル)と191.3gの酸化エルビウム(Er)(Erとして1モル)と181.9gの五酸化バナジウム(V)(Vとして2モル)とを十分よく混合した後、石英ルツボに充填し1200℃で4時間焼成した後に、洗浄、ボールミル工程を経て微粒子化して得たもので、実施例1と同様に粒度分布を測定したところ、平均粒径D50は0.63μm、最大粒径D100は1.93μmであった。
【実施例4】
【0037】
(Y,Gd)BO:Eu3+蛍光体に、フィルター材料微粒子として、アルミン酸ネオジム(NdAlO)を用いた他は、実施例1と同様の方法で蛍光体に対して3質量%の割合で微粒子を付着させ、NdAlO微粒子付着蛍光体を得た。これを実施例4とした。
このとき、NdAlO微粒子は、原料として336.5gの酸化ネオジム(Nd)(Ndとして2モル)と102.0gのアルミナ(Al)(Alとして2モル)とを十分よく混合した後、石英ルツボに充填し1420℃で5時間焼成した後に、洗浄、ボールミル工程を経て微粒子化して得たもので、実施例1と同様に粒度分布を測定したところ、平均粒径D50は0.80μm、最大粒径D100は3.61μmであった。
【0038】
このようにして得られた実施例2ないし実施例4の発光特性を実施例1と同様に評価した。その結果を表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
表2に示すように、本発明の蛍光体の実施例2ないし実施例4は、いずれも592nmのピーク強度が、他のピーク(610nm、626nm)と比較して格段に抑制されており、592nmのピークに対する特異的なフィルター効果が顕著であることがわかる。
【実施例5】
【0041】
つぎに、フィルター材料微粒子の付着したYBO:Eu3+蛍光体の特性について説明する。
原料として、106.7gの酸化イットリウム(Y)(Yとして0.945モル)、9.7gの酸化ユウロピウム(Eu)(Euとして0.055モル)及び74.1gのホウ酸(HBO)(Bとして1.2モル)とを十分よく混合した後、石英ルツボに充填し、1060℃で3時間焼成し、その後過剰なホウ酸を除去するために、得られた焼成体を温水で数回洗浄し、ボールミル工程を経てYBO:Eu3+蛍光体を得た。このYBO:Eu3+蛍光体は、Y0.945BO:Eu3+0.055で表される組成を有している。
【0042】
このYBO:Eu3+蛍光体に付着させるフィルター材料微粒子としてネオジム化合物のバナジン酸ネオジム(NdVO)を選択し、実施例1と同様の方法で蛍光体に対して4質量%の割合で微粒子を付着させ、NdVO微粒子付着YBO:Eu3+蛍光体を得た。これを実施例5とした。
得られた実施例5の発光特性を実施例1と同様に評価し、その結果を表3に示す。なおお、このときの輝度および相対ピーク比は、微粒子を付着させていないYBO:Eu3+蛍光体を基準とした相対値で表す。
【0043】
【表3】

【0044】
表3に示すように、本発明の蛍光体の実施例5は、いずれも592nmのピーク強度が、他のピーク(610nm、626nm)と比較して格段に抑制されており、592nmのピークに対する特異的なフィルター効果が顕著であることがわかる。
【0045】
なお、以上のように3価のユウロピウム付活希土類ホウ酸塩蛍光体にフィルター材料微粒子を付着させる場合、対象となる蛍光体や、目的とする発光強度、色度等の条件により、その付着させる量を適宜調整することでフィルター効果を調整できる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のPDP用フィルター材料微粒子付着の蛍光体は、発光輝度が高く、長寿命であり、さらに色純度が高いため、例えばパネル表面等に特殊なフィルター等を用いなくとも、色再現性の高い優れたPDPを構成することができる。
このほか、同じく真空紫外線励起で発光する例えばキセノン(Xe)ランプのような用途であって、色純度の向上が望まれるものにも好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施の形態の蛍光体の反射スペクトルを表すグラフである。
【図2】本発明の一実施の形態の蛍光体の発光スペクトルを表すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともネオジム(Nd)化合物が付着していることを特徴とした3価のユウロピウム(Eu3+)付活希土類ホウ酸塩蛍光体。
【請求項2】
上記3価のユウロピウム(Eu3+)付活希土類ホウ酸塩蛍光体は、YBO:Eu3+または(Y,Gd)BO:Eu3+で表されることを特徴とした請求項1記載の蛍光体。
【請求項3】
上記ネオジム(Nd)化合物は、バナジン酸塩、タングステン酸塩、モリブデン酸塩、アルミン酸塩、酸硫化物、酸化物の少なくとも1つ以上からなることを特徴とした請求項1ないし2記載の蛍光体。
【請求項4】
上記ネオジム(Nd)化合物は、NdVO、Nd12、KNdW、NdMo12、KNdMo、NdAlO,NdS,Ndの少なくとも1つ以上で表される化合物からなることを特徴とした請求項1ないし2記載の蛍光体。
【請求項5】
上記ネオジム(Nd)化合物は、平均粒径D50が0.05μm以上1μm以下の微粒子であることを特徴とした請求項1ないし4記載の蛍光体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−280773(P2009−280773A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137239(P2008−137239)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(390031808)根本特殊化学株式会社 (21)
【Fターム(参考)】