説明

蛍光増白剤の水性分散体

本発明は、貯蔵の間の沈殿を防ぐために、分散剤または他の安定化添加物を必要としない1種または2種以上の蛍光増白剤(OBA)の水性分散体に関する。蛍光増白剤は、紙および他のセルロース系基材の増白のための優れた性質を有するスルホン化トリアジニルアミノスチルベン化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵の間に沈殿を避けるために、分散剤または他の安定化添加物を必要としない1種または2種以上の蛍光増白剤(OBA)の水性分散体に関する。蛍光増白剤は、紙および他のセルロース系基材の増白のための優れた性質を有するスルホン化トリアジニルアミノスチルベン化合物である。
【背景技術】
【0002】
蛍光増白剤の水性分散体は、当技術分野で公知である。ドイツ国特許第A−2715864号明細書は、アニオン性、カチオン性または非イオン性分散剤の使用によって安定化するスラリーを開示する。米国特許第5,076,968号明細書は、蛍光増白剤の貯蔵安定性のある懸濁液を得るためのアニオン性ポリサッカリドの使用を開示する。また欧州特許第A−385374号明細書は、安定剤としてアニオン性ポリサッカリド、特にキサンタンを開示する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、何らかの追加の添加物は、増白工程中に逆効果となることが可能で、したがって分散剤または他の化合物のような何らかの安定剤を必要としない水性分散体は、技術上の利点となるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
驚いたことに、貯蔵安定性のある、そうした添加物を含まないスルホン化トリアジニルアミノスチルベン化合物の水性分散体を調製でき、そして紙、繊維製品または他のセルロース系基材の蛍光増白に有利に使用できることが見出された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
したがって本発明の目的は、
活性物質として、式(I)の1種または2種以上の蛍光増白剤を含有する水性分散体である。
【0006】
【化1】

【0007】
(ここでRは、式(II)、(III)または(IV)のラジカルであり
【化2】


【0008】
そして両者のラジカルRは、同一または異なってもよく、
Mが、アルカリ金属カチオン、または非置換もしくはC〜Cアルキルもしくはヒドロキシアルキル基で置換されたアンモニウムカチオンである)。
【0009】
Mは、Na、Li、K+、またはC〜Cアルキルもしくはヒドロキシアルキル基で置換されたアンモニウムカチオンである分散体であることが好ましい。最も好ましいのはNaである。
また異なるRを有する式(I)の2〜4の蛍光増白剤の混合物を含有する分散体が好ましい。
即時(instant)分散体は、10〜40重量%の活性物質、好ましくは14〜26重量%の活性物質を含む。
【0010】
適当な場合には、即時の分散体は、消泡剤、殺生剤または両者の化合物を0.01%〜0.5重量%さらに含んでもよい。
式(I)の蛍光増白剤は、公知の物質であり、そして例で記載したように公知の方法によって調製可能である。
【0011】
即時分散体は、何らかの分散剤または安定剤の使用なしで調製され、そしてそれにもかかわらず貯蔵安定的である。安定なスラリーを得るためにそうした分散体が常に何らかの添加物を必要とした従来技術からすると、これは完全に予想外である。
したがって、さらに本発明の目的は、蛍光増白剤の合成から生じる熱い有機油性相を冷水中で攪拌し、攪拌を継続して周囲温度まで冷却し、少量のあらかじめ調製したスラリー(0.1% 〜1重量%)を種結晶とし、そして所定の強度まで最終的に希釈することを特徴とする分散体の調製方法である。
【0012】
即時分散体は、その中の撹乱させる可能性のある添加物の不利益がなく、紙、繊維製品または他のセルロース系基材の蛍光増白に充分に適している。
即時分散体を、乾燥繊維を基準として一般的に0.1〜5%、好ましくは1〜3重量%でパルプの懸濁液に直接的に加え、紙シートの生成のために使用し、次に圧縮しそして乾燥することができる。
【0013】
即時分散体は、チョークまたは他の白色顔料、1種または2種以上の分散剤、第1ラテックスバインダーそして次いで第2バインダー、そして次いで他の添加物と混合することによって得ることができる水性コーティング組成物に、直接的に加えられても良い。乾燥繊維を基準として一般的に0.1〜5%、好ましくは1〜3重量%の即時分散体を、コーティング組成物として使用し、次に紙シート、コートされた紙シートに適用し、次に乾燥する。
以下の例は、本発明をさらに説明するであろう。
【実施例】
【0014】
示されていない場合には、"%"は"重量%"を意味する。
一般合成
OBAスラリーの合成を水中で行う。塩化シアヌルを、湿潤剤および氷を含む水の中でスラリーにする。4,4’ジアミノ−2,2’スチルベンジスルホン酸の水溶液を、水酸化ナトリウム希釈液でpHを4〜6に保ち0℃〜5℃で加える。添加が完了すると〜10℃まで温度を上昇させながら、反応混合物をさらに一時間攪拌した。次にアニリンを加え、そして水酸化ナトリウム希釈溶液の追加によりpHを6〜8に保ちながら、反応混合物をゆっくりと60℃まで加熱する。次に反応物を80℃でさらに1時間攪拌し、そしてモノエタノールアミンおよびアクリルアミドの追加生成物を加える。反応混合物を還流するまで加熱し、そして水酸化ナトリウム希釈溶液を追加することによって、8〜9のpHに保つ。反応が完了すると、混合物を80℃〜90℃まで冷却し、そして攪拌機を停止する。底にある有機油性層を、充分な量の冷水中に攪拌しながら加えて、20〜40%の活性量を与える。混合物を攪拌し、そして周囲温度まで冷却し、そして0.5%のあらかじめ調製した分散体を種とする。生成物は厚みのある分散体として結晶化する。この分散体を5〜12時間攪拌し、そして冷水を加えることによって必要な活性量まで希釈する。攪拌をさらに一時間続け、そして蛍光増白剤の分散体を容器内に梱包する。
【0015】
例1
反応(51%活性物で500g)の最終ステージからの熱い油を、411mlの冷水に攪拌しながら加える。UV強度によって測定される量で28%活性OBAを含有する溶液を生成させる。この溶液を攪拌しながら周囲温度(20〜25℃)まで冷却し、そして50gのあらかじめ調製した分散体を種結晶とする。冷却期間中に OBAが析出し、そして混合物は厚みが増す。攪拌を5時間続け、そして次に厚みのある懸濁液をさらに390mlの冷水で希釈して、そしてさらに一時間攪拌を続ける。これは20%の活性量を有する分散体を与える。少量の沈降が何週間かにわたって発生するが、分散体は黄白色であり、そして分散体は少量の攪拌で容易に回復する。
【0016】
例2
例1を繰り返すが、今度は1.14gの消泡剤(ブラックバーンケミカルズ社のディスプレアー(Dispelair CF531)を1.14gの殺生剤(Nipacide CFB)と伴に加えた。
【0017】
例3:貯蔵への応用
方法A
200gのパルプの懸濁液(漂白した軟質材および約20°SRの自由度まで叩いた硬質材パルプの50%混合物の2.5%水性の懸濁液)(SRはショッパーリエグラー(Schopper Riegler)を意味し、紙産業における測定基準であり、そしてパルプから水が垂れる困難度を測定する)をビーカーに計量して入れ、そして攪拌する。懸濁液を一分間攪拌し、そしてp %(p =0,0.1、0.2,0.4,0.8,1,1.4,1.8および2; p =0は無いことを示す)の例1の生成物を加える。混合物を加えた後さらに一分間攪拌する。混合物を次に1リットルまで希釈して、そして紙シートを実験室シート形成機上で形成する(これは、基本的に底に細目金網を伴うシリンダーであり、シリンダーは部分的に水で満たされている、パルプの懸濁液を加え、次に空気を吹き込んでパルプを充分に分散し、次に真空を適用し、そしてパルプスラリーをワイヤーを通して牽引して紙シートを与え、このシートをワイヤーから取り除き、そして圧縮しかつ乾燥させる)。シートを湿度キャビネット中に放置し、平衡状態に到達させ、そして次にミノルタCM−700d分光光度計使用して白色度を測定する。測定値は驚いたことに高い白色度および収率を示す。
【0018】
表1:貯蔵への応用(方法A)の結果
【表1】

【0019】
例4:コーティングの適用
コーティング組成物を3000部のチョーク(ISO787/10により2.7の密度を有する微粒、白色、高純度炭酸カルシウム、OMYA社からハイドロカーブ(HYDROCARB)90の商標名で商業的に入手可能)、1932部の水、18部の(BASF社からのポリサルツ(Polysaltz)S等の)アニオン性分散剤、および600部のラテックス(ダウケミカルズ社からラテックスXZ95085.01商標名で商業的に入手可能)を含めて調製する。あらかじめ決められた量の例2の生成物、(蛍光増白剤に対して0,0.313,0.625,0.938,1.25および1.875mmol/kg)を攪拌しながらコーティング組成物に加え、そして水の追加によって固形量を55重量%に調整する。このように調製されたコーティング組成物を、次に商用の75g/mの(従来のアルキルケトンダイマーで)中性サイズの、漂白した紙ベースシートに、自動ワイヤー巻きつけたバーアプリケーター使用して、基準速度設定およびバーへの基準荷重で適用する。コートされた紙を、5分間70℃で熱風により乾燥させる。乾燥紙を調整して、次に較正されたミノルタCM−700d分光光度計で上のCIE白色度を測定する。測定値は、驚いたことに高い白色度および収率を示す。
【0020】
表2:例2のためのコーティング適用の結果
【表2】

即時分散体は、素晴しい白色特性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性物質として式(I)の1種または2種以上の蛍光増白剤を含有する水性分散体。
【化1】

(上式中、Rは、式(II)、(III)または(IV)のラジカルであり、
【化2】

そして両者のラジカル基Rは同一または異なってもよく、Mは、アルカリ金属カチオン、または非置換もしくはC〜Cアルキルもしくはヒドロキシアルキル基で置換されたアンモニウムカチオンである。)
【請求項2】
Mが、Na、Li、K、またはC〜Cアルキルもしくはヒドロキシアルキル基で置換されたアンモニウムカチオンである請求項1に記載の分散体。
【請求項3】
異なるRを有する式(I)の、2〜4種の蛍光増白剤の混合物を含む請求項1または2に記載の分散体。
【請求項4】
10〜40重量%の活性物質を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の分散体。
【請求項5】
14〜26重量%の活性物質を含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の分散体。
【請求項6】
0.01%〜0.5重量%の消泡剤、0.01%〜0.5重量%の殺生剤または0.01%〜0.5重量%の両者の化合物を、さらに含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の分散体。
【請求項7】
追加の分散剤または安定剤が含まれていないことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の分散体。
【請求項8】
蛍光増白剤の合成から生じる熱い有機油性相を、冷水中に攪拌しながら注入し、攪拌を続けながら周囲温度まで冷却し、0.1% 〜1重量%の予め調製された分散体の種結晶を入れ、さらに最終的に所定の強度まで希釈することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の分散体の調製のための工程。
【請求項9】
紙または他のセルロース系基材の蛍光増白のための請求項1〜7のいずれか一項に記載の分散体の使用。
【請求項10】
パルプ懸濁液を用意すること、
乾燥繊維に基づく0.1〜5重量%の請求項1〜7のいずれか一項に記載の分散体を加えること、
該パルプの懸濁液から紙シートを生成すること、
該シートをプレスし、そして乾燥させること
の主ステップを含む、紙を白色化する方法。
【請求項11】
チョークまたは他の白色顔料、1種または2種以上の分散剤、第1ラテックスバインダーそして次いで第2バインダー、そして次いで他の添加物を一緒に混合することによって、水性コーティング組成物を調製すること、
乾燥繊維に基づく0.1〜5重量%の請求項1〜7のいずれか一項に記載の分散体を加えること、
該コーティング組成物を紙シートに適用すること、
該コートされた紙シートを乾燥させること
の主ステップを含む、紙を白色化する方法。

【公表番号】特表2008−523185(P2008−523185A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544909(P2007−544909)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056560
【国際公開番号】WO2006/061399
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(596033657)クラリアント インターナショナル リミティド (48)
【Fターム(参考)】