説明

蛍光染料を含有するプラスチックから成る成形体

本発明は、可溶性の蛍光染料と、プラスチック−マトリックスに対して+/−0.003〜0.2の屈折率差を有する散乱剤とを含有する透明なプラスチックから成るプラスチック−マトリックスから成る成形体において、付加的に、プラスチック−マトリックスに対して+0.4〜1.5の屈折率差を有する白色顔料が0.001〜0.1質量%の濃度で含有されていることを特徴とする成形体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光染料を含有するプラスチックから成る成形体に関する。
【0002】
背景技術
EP−A0553083号には、蛍光染料と0.1〜5質量%の濃度の白色顔料、例えばTiO又はBaSOとを含有するプラスチックから成る光源が記載されている。付加的に、他の顔料が含有されていてよい。
【0003】
課題及び解決法
成形体、殊に、EP−A0553083号の記載に従って蛍光染料と散乱剤としてのBaSOとを含有する注型ポリメチルメタクリレートから成るプラスチックシートは公知である。この公知技術から出発して、殊に成形体の明度が改善されるべきであった。
【0004】
上記課題は、
可溶性の蛍光染料と、プラスチック−マトリックスに対して+/−0.003〜0.2の屈折率差を有する散乱剤とを含有する透明なプラスチックから成るプラスチック−マトリックスから成る成形体において、付加的に、プラスチック−マトリックスに対して+0.4〜1.5の屈折率差を有する白色顔料が0.001〜0.1質量%の濃度で含有されていることを特徴とする成形体
により解決される。
【0005】
驚異的にも、白色顔料を慣用でない低濃度で添加することにより、明度の明らかな増加が生じる。本発明による成形体は、殊に、白色顔料なしの相応する成形体の場合よりも少なくとも10%高い、DIN 5036による分光光度計を用いて%で測定された反射率を有する。この場合、明度の増加は既に肉眼でも明らかに認めることができる。
【0006】
発明の実施態様
本発明は、
場合により他の着色剤(顔料、染料)と組み合わされた可溶性の蛍光染料と、プラスチック−マトリックスに対して+/−0.003〜0.2の屈折率差を有する散乱剤とを含有する透明なプラスチックから成るプラスチック−マトリックスから成る成形体において、付加的に、プラスチック−マトリックスに対して+0.4〜1.5の屈折率差を有する白色顔料が0.001〜0.1質量%の濃度で含有されていることを特徴とする成形体
に関する。
【0007】
蛍光染料
成形体は、自体公知の可溶性の蛍光染料、例えばペリレンの化学クラスをベースとする可溶性の蛍光染料を含有する。
【0008】
WO99/16847には、プラスチック、例えばポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン又はポリメチルメタクリレートとポリフッ化ビニリデンとからの混合物中で可溶性であり、かつ黄蛍光性の物品もしくは成形体に適する蛍光染料が記載されている。蛍光染料は、N,N’−二置換された3,4:9,10−ペリレンビス(ジカルボキシイミド)とCIE 1931標準表色系による所定の色座標領域及び5を上回る蛍光/ルミネセンス−ファクターを有する黄蛍光性の蛍光染料とからの混合物である。
【0009】
殊に、市販の蛍光染料であるLumogen(登録商標)F オレンジ240、Lumogen(登録商標)F イエロー083、Lumogen(登録商標)F レッド240(Lumogen(登録商標):BASF AG, Ludwigshafen, ドイツ在の商標)並びにHostasol(登録商標)イエロー 3Gは、本発明の目的のために適当である。
【0010】
他の着色剤
蛍光染料は他の着色剤と組み合わされて存在してよい。他の着色剤は、例えば顔料及び染料、殊に非蛍光染料である。他の着色剤は、例えば銅−フタロシアニングリーン、銅−フタロシアニンブルー、酸化鉄−赤、ウルトラマリンブルー、クロムチタンイエロー、アントラキノン系の染料である。蛍光染料と他の着色剤との組合せにより、より多くの色スペクトルを網羅することが可能となる。例えば、明るい蛍光緑色を生じさせるために、黄蛍光性の蛍光染料と緑色顔料、例えば銅−フタロシアニングリーンとの組合せを有効に使用することができる。他の着色剤は、例えば0.001〜1質量%、有利に0.01〜0.5質量%の量で含有されていてよい。
【0011】
散乱剤
散乱剤とは、マトリックス−プラスチック中に導入することのできる、微小なサイズの、例えば1μm〜1mmの範囲内の不溶性添加剤であると解釈すべきである。散乱剤は+/−0.003〜0.2の範囲内の屈折率差を有する。
【0012】
適当な散乱剤は、水酸化アルミニウム、アルミニウム−カリウム−シリケート(雲母)、ケイ酸アルミニウム(カオリン)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム(タルク)、ポリスチレン及び/又は架橋プラスチックからなる光散乱ビーズである。付加的に架橋されていてよいメチルメタクリレートとスチレン又はベンジルメタクリレートとからのコポリマーからの光散乱ビーズは、例えばDE3528165C2、EP570782B1又はEP656548A2の記載から公知である。
【0013】
白色顔料
白色顔料はプラスチック−マトリックスに対して+0.4〜1.5、有利に+0.5〜1.4、殊に有利に1.0〜1.3の屈折率差を有し、かつプラスチック−マトリックス中に0.001〜0.1質量%、有利に0.005〜0.01質量%の濃度で含有されている。
【0014】
有利な白色顔料は、例えば二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)又は硫化亜鉛(ZnS)である。
【0015】
成形体
本発明による成形体は、白色顔料なしの相応する成形体の場合よりも少なくとも10%、有利に少なくとも15%、殊に少なくとも20%高い、DIN 5036による分光測光計を用いて%で測定された反射率を有する。
【0016】
本発明による成形体は、蛍光染料及び場合により他の着色剤を相応するプラスチックないしプラスチック−マトリックス中に導入した後に、その重合の前又は後に得ることができる。導入は、方法に応じて、例えば混練機、撹拌ドラム、直接供給による撹拌導入により、又は重合性プラスチックシロップ中又は熱可塑性ポリマーのプラスチック溶融物中への高濃縮マスターバッチの添加により行うことができる。そのようにして着色されたプラスチック材料を、自体公知の方法で、例えば押出、射出成形、熱成形、機械加工等により後加工することができる。
【0017】
本発明による成形体は、実質的に任意の成形体であってよい。シート、管又はロッドの形状は有利である。
【0018】
プラスチック
プラスチック−マトリックスの透明なプラスチックは、少なくとも40%、有利に少なくとも50%、殊に有利に少なくとも70%、殊に少なくとも80%の可視領域における透過率(昼光(D65標準の光)に対する光透過率τD65、例えばDIN 67507を参照のこと)を有する。熱弾性又は熱可塑性プラスチックは有利である。
【0019】
プラスチック−マトリックスの透明なプラスチックは、押出ポリメチルメタクリレート−プラスチック、注型ポリメチルメタクリレート−プラスチック、耐衝撃性改良ポリメチルメタクリレート−プラスチック、ポリカーボネート−プラスチック、ポリスチレン−プラスチック、スチレン−アクリロニトリル−プラスチック、ポリエチレンテレフタレート−プラスチック、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート−プラスチック、ポリ塩化ビニル−プラスチック、透明なポリオレフィン−プラスチック、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)−プラスチック及び/又は上記プラスチックの混合物(ブレンド)であってよい。
【0020】
使用
本発明による成形体は、例えば車体、デザイナー家具、案内標識板又はその一部のために、又は照明技術のために、例えば照明広告設備のために使用されることができる。蛍光の励起のためには、通常は既に標準の昼光で十分である。同様に、活性な照明を、例えば蛍光灯又は場合によりLEDを用いて行うことができる。
【実施例】
【0021】
実施例
溶液:
プレポリマーメチルメタクリレート(粘度約1000cP)1000部中に、
2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部、及び
第1表に記載の着色剤を溶解させる。
【0022】
上記混合物中に、以下
可溶性のポリメチルメタクリレート樹脂 3質量部
硫酸ビスマス10質量部、及び試験に依り、第1表に記載された量(質量%)の二酸化チタンないし硫化亜鉛(メチルメタクリレート30質量部中に高速分散機(原則的にロータ/ステータ)を用いて分散されたもの)
から成るカラーペーストを添加する。
【0023】
上記混合物を強力に撹拌し、厚さ3mmのビーズをスペーサーとして用いてシリケートガラスセル中に充填し、水浴中で45℃で重合させる。最終の重合を115℃で温度制御炉中で行う。
【0024】
色空間(L、a、B)の測定をDIN 5033による分光光度計を用いて行う。
【0025】
第1表
【0026】
【表1】

【0027】
数値:質量%で
結果:
第2表 D65/10°の光源に関するCIELAB反射色数L、a、B
【0028】
【表2】

【0029】
色数から、かつ視覚的評価からも明らかなように、硫酸バリウム/二酸化チタン(硫化亜鉛)の組合せにより製造された生成物は、明らかにより明るい色調を有する。赤色はより高い赤数、黄色はより高い黄色数等を有する。視覚的にも改善を明らかに認めることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性の蛍光染料と、プラスチック−マトリックスに対して+/−0.003〜0.2の屈折率差を有する散乱剤とを含有する透明なプラスチックから成るプラスチック−マトリックスから成る成形体において、付加的に、プラスチック−マトリックスに対して+0.4〜1.5の屈折率差を有する白色顔料が0.001〜0.1質量%の濃度で含有されていることを特徴とする成形体。
【請求項2】
白色顔料として、二酸化チタン、酸化亜鉛又は硫化亜鉛が使用されている、請求項1記載の成形体。
【請求項3】
散乱剤として、水酸化アルミニウム、アルミニウム−カリウム−シリケート(雲母)、ケイ酸アルミニウム(カオリン)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム(タルク)、ポリスチレン及び/又は架橋プラスチックからなる光散乱ビーズが含有されている、請求項1又は2記載の成形体。
【請求項4】
反射率が白色顔料なしの相応する成形体の場合よりも少なくとも10%高い、請求項1から3までのいずれか1項記載の成形体。
【請求項5】
プラスチック−マトリックスの透明なプラスチックが、少なくとも40%の可視領域における透過率(昼光(D65標準の光)に対する光透過率τD65、例えばDIN 67507を参照のこと)を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の成形体。
【請求項6】
プラスチック−マトリックスの透明なプラスチックが、押出ポリメチルメタクリレート−プラスチック、注型ポリメチルメタクリレート−プラスチック、耐衝撃性改良ポリメチルメタクリレート−プラスチック、ポリカーボネート−プラスチック、ポリスチレン−プラスチック、スチレン−アクリロニトリル−プラスチック、ポリエチレンテレフタレート−プラスチック、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート−プラスチック、ポリ塩化ビニル−プラスチック、透明なポリオレフィン−プラスチック、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)−プラスチック及び/又は上記プラスチックの混合物(ブレンド)である、請求項1から5までのいずれか1項記載の成形体。
【請求項7】
蛍光染料が他の着色剤と組み合わされて存在する、請求項1から6までのいずれか1項記載の成形体。
【請求項8】
車体、デザイナー家具、案内標識板又はその一部のための、又は照明技術のための、例えば照明広告設備のための、請求項1から7までのいずれか1項記載の成形体の使用。

【公表番号】特表2006−500467(P2006−500467A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−542274(P2004−542274)
【出願日】平成15年7月25日(2003.7.25)
【国際出願番号】PCT/EP2003/008213
【国際公開番号】WO2004/033543
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(390009128)レーム ゲゼルシャフト ミツト ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (293)
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】