説明

蛍光検出装置および蛍光検出方法

【課題】従来に比べて導入管が汚れ難く、洗浄回数を抑制することができる蛍光検出装置および蛍光検出方法を提供する。
【解決手段】蛍光検出装置は、測定対象物を測定点で照射するためにレーザ光を出射するレーザ光源部と、前記測定対象物が前記レーザ光の照射を受けることで発する蛍光を受光する受光部と、前記受光した蛍光の信号を処理し、処理結果に基づいて、蛍光情報を求める処理部と、前記測定対象物が前記測定点を通過するように前記測定対象物の流路を形成したフローセル体と、前記測定対象物が圧力により前記測定点に移動するように前記測定対象物を前記フローセル体に導入させる導入管と、を有する。前記導入管の先端開口部を覆うように、前記先端開口部に金属製網が設けられ、前記金属製網に負電位が与えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光の照射を受けることにより、生体物質を含む測定対象物が発する蛍光を検出する蛍光検出装置および蛍光検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医療、生物分野では、フローサイトメータが広く用いられている。このフローサイトメータは、レーザ光を照射することにより測定対象物が発する蛍光を光電子増倍管やアバランシェフォトダイオード等の光電変換器を用いて受光して、細胞や遺伝子等の生体物質の種類や頻度、さらには、測定対象物の特性を分析する。
【0003】
具体的には、フローサイトメータは、細胞、DNA、RNA、酵素、蛋白等の生体物質等の分析対象物を蛍光試薬でラベル化して作った測定対象物を、圧力を与えて毎秒10m以内の速度で管路内を流れるシース液に流してラミナーシースフローを形成する。このフロー中の測定対象物にレーザ光を照射することにより、フローサイトメータは、分析対象物に付着した蛍光色素が発する蛍光を受光し、この蛍光を分析対象物のラベルとして識別することで分析対象物を特定する。
【0004】
フローサイトメータでは、例えば生体物質を含んだサンプル液を収容した試験管内に、フローサイトメータの導入管が挿入される。このとき、導入管の先端開口部は、サンプル液内に浸る。そして、サンプル液の接する気相を加圧することにより、生体物質等の測定対象物を含むサンプル液を導入管に移動させる。これにより、測定対象物は、導入管へ導入される。
この後、導入管の他方の先端から、高速で流れるシース液にサンプル液を流すことで、導入管に隣接して設けられたフローセル体において、測定対象物が1つずつ列状に並んで測定点を通過する。
【0005】
このとき、導入管には生体物質等の測定対象物が流れるので、生体物質等が凝集した塊りが導入管の内面に付着する可能性がある。また、導入管の先端開口部はサンプル液に浸されるので、導入管の先端開口部には生体物質やサンプル液中の不純物が付着し易い。このため、別の種類のサンプル液を用いて新たな計測をする場合、導入管に以前の生体物質や不純物質が付着していると、付着した生体物質がフローセル体に流れ込み、誤った計測結果を算出する場合もある。このため、正確な計測を行う前に導入管等の洗浄が行われている。
しかし、洗浄のために導入管をフローサイトメータから取り外す場合、導入管はフローセル体に隣接して設けられているので、レーザ光の光軸に正確に位置合わせをしたフローセル体の設定が微妙に変化し、正しい計測ができなくなる場合がある。
また、サンプル液は計測後シース液と混ざるので、絶対量の少ないサンプル液を何度でも計測対象として用いることはできず、正確な計測を1回で行わなければならず、再計測はできない。
【0006】
一方、群体を形成している微細な植物プランクトン等の生体を含む水に生体そのものが破壊されない程度の超音波を照射して生体を細胞単位にバラバラに分散し、この分散した細胞単位の生体の数をフローサイトメータで計測する方法が知られている(特許文献1)。この方法では、フローサイトメータで計測する際、フローセルの目詰まりを防ぐため目開き約50μmのメッシュで水をろ過する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−192450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述の方法のように、フローサイトメータに用いるサンプル液をメッシュでろ過しても、必ずしも導入管内表面や導入管開口部における生体物質や不純物の付着が防ぐことができず、導入管の洗浄が依然として必要であった。
【0009】
そこで、本発明は、従来に比べて導入管が汚れ難く、洗浄回数を抑制することができる蛍光検出装置および蛍光検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、レーザ光の照射を受けることにより、生体物質を含む測定対象物が発する蛍光を検出する蛍光検出装置である。当該装置は、
測定対象物を測定点で照射するためにレーザ光を出射するレーザ光源部と、
前記測定対象物が前記レーザ光の照射を受けることで発する蛍光を受光する受光部と、
前記受光した蛍光の信号を処理し、処理結果に基づいて、蛍光情報を求める処理部と、
前記測定対象物が前記測定点を通過するように前記測定対象物の流路を形成したフローセル体と、
前記測定対象物が圧力により前記測定点に移動するように前記測定対象物を前記フローセル体に導入させる導入管と、を有する。
前記導入管の先端開口部を覆うように、前記先端開口部に金属製網が設けられ、前記金属製網に負電位が与えられている。
【0011】
その際、前記導入管は、金属で形成され、前記導入管に負電位が与えられている、ことが好ましい。
【0012】
また、前記導入管は、前記測定対象物を収容する容器内に挿入されており、さらに、前記導入管の前記先端開口部と対向するように、前記容器の壁を介して設けられる前記容器を固定支持する金属製支持部材を有し、前記金属製支持部材は接地されている、ことが好ましい。
【0013】
さらに、前記導入管の外周を取り巻くように外管が設けられ、前記外管に負電位が与えられている。
【0014】
前記金属製網は、前記外管の先端開口部を覆う、ことが好ましい。
【0015】
さらに、前記金属製網は、前記導入管の先端開口部から着脱自在なキャップに設けられている、ことが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の他の態様は、レーザ光の照射を受けることにより、生体物質を含む測定対象物が発する蛍光を検出する蛍光検出方法である。当該方法は、
測定対象物を含む溶液を加圧することにより、測定対象物を、導入管の先端開口部を覆うように前記先端開口部に設けられた金属製網を通して前記導入管に導入させ、さらに、前記導入管からフローセル体内に測定対象物を流すステップと、
前記フローセル体の測定点を通過する測定対象物をレーザ光で照射するステップと、
前記測定対象物が前記レーザ光の照射を受けることで発する蛍光を受光するステップと、
前記受光した蛍光の信号を処理し、処理結果に基づいて蛍光情報を求めるステップと、を有する。
前記金属製網には、負電位が与えられている。
【発明の効果】
【0017】
上述の蛍光検出装置および蛍光検出方法では、従来に比べて導入管が汚れ難く、洗浄回数を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の蛍光検出装置の一実施形態であるフローサイトメータの概略構成図である。
【図2】本実施形態に用いるレーザ光源部の構成の一例を示す図である。
【図3】本実施形態の受光部の一例の概略構成図である。
【図4】(a)は、本実施形態のフローサイトメータの導入管および外管に装着されるキャップの外観を示す図であり、(b)は、導入管、外管およびキャップを詳細に説明する図である。
【0019】
以下、本発明の蛍光検出装置および蛍光検出方法について詳細に説明する。
【0020】
(蛍光検出装置)
図1は、本発明の蛍光検出装置の一実施形態であるフローサイトメータ10の概略構成図である。
フローサイトメータ10は、細胞、DNA、RNA、酵素、蛋白等の生体物質等を含んだ試験管内のサンプル液を導入管を用いてフローセル体に導き、フローセル体でレーザ光を照射することにより、測定対象物が発する蛍光を計測する装置である。
【0021】
フローサイトメータ10は、本体ユニット20と、制御・処理部(コンピュータ)80とを有する。本体ユニット20は、レーザ光の照射を受けることにより蛍光を発する生体物質を付着し、バッファー液に懸濁した測定対象物12にレーザ光を照射し、測定対象物12中の蛍光色素の発する蛍光の蛍光信号を検出して信号処理をする。さらに、制御・処理部80は、本体ユニット20で得られた処理結果から検出した蛍光の蛍光強度及び蛍光緩和時間を算出し、この算出結果を用いて測定対象物12の分析を行なう。
【0022】
本体ユニット20は、レーザ光源部22と、受光部24,26と、管路30と、金属製支持部材50と、を主に有する。
管路30は、試験管32内に収納されたサンプル液中に先端開口部が浸っている導入管34と、導入管34の周りを覆う外管36と、接続管37と、シース液導入部38と、フローセル体40と、フローセル上端部42と、回収管44と、を有する。導入管34、外管36、および金属製支持部材50については、後述する。
【0023】
接続管37は、試験管32と接続し、試験管32内の気相を加圧する空気を導入する空気導入口37aと、外管36と連通し、計測が終了して試験管32を接続管37から取り外すとき空気を吸引する空気吸引口37bを有する。空気導入口37aは、図示されない加圧空気供給源と接続されている。空気吸引口37bは、図示されない吸引ポンプと接続されている。外管36は、計測終了後、サンプル液が導入管34や外管36の表面に付着したサンプル液を吸引して液垂れを防止する。
シース液導入部38は、フローセル体40に測定対象物12を一列に流すためのフローを形成するために用いるシース液を管路30に導入する。具体的には、図示されないシース液供給源に接続された導入口38a,38bからシース液は導入される。
【0024】
フローセル体40は、シース液導入部38から供給されるシース液の流路を絞ってシース液を高速流にし、この高速流に測定対象物12を一列に順次流す。フローセル体40の流路の途中には、レーザ光が集束する測定点Mが設けられ、測定点Mを通過する測定対象物12をレーザ光が照射し、蛍光の計測に供される。
回収管44は、フローセル上端部42においてフローセル体40の流路を拡げてシース液およびサンプル液が混在した液を図示されない回収容器に誘導する。
【0025】
レーザ光源部22は、所定の波長のレーザ光、例えばλ=405nm等のレーザ光を出射する部分である。図2は、レーザ光源部22の構成の一例を示す図である。
レーザ光源部22は、強度変調したレーザ光を出射する。レーザ光源部22は、例えば、青色のレーザ光をCW(連続波)レーザ光として出射し、このCWレーザ光の強度を所定の周波数で変調する光源22aを有する。さらに、レーザ光源部22は、レンズ系22bと、レーザドライバ22cと、を有する。レンズ系22bは、レーザ光をフローセル体40中の測定点Mに集束させる。レーザドライバ22cは、光源22aを駆動する。レーザドライバ22cには、レーザ光を強度変調するための変調信号が制御・処理部80から供給される。
【0026】
これらのレーザ光を出射する光源として例えば半導体レーザが用いられる。レーザ光は、例えば5〜100mW程度の出力である。レーザ光源部22から出射されるレーザ光は変調信号に基づいて強度変調され、強度を変調する周波数(変調周波数)は、その周期が蛍光緩和時定数に比べてやや長い、例えば10〜50MHzである。
【0027】
光源22aは、レーザ光が蛍光色素を励起して特定の波長帯域の蛍光を発するように、予め定められた波長帯域で発振する。レーザ光によって励起される蛍光色素は測定しようとする生体物質に付着されており、蛍光色素と生体物質で構成された測定対象物がフローセル体40の測定点Mを通過する際、測定点Mでレーザ光の照射を受けて特定の波長で蛍光を発する。
【0028】
受光部24は、フローセル体40を挟んでレーザ光源部22と対向するように配置されており、光電変換器(例えば、フォトダイオード)を備える。光電変換器は、測定点Mを通過する測定対象物によってレーザ光が前方散乱することにより、測定対象物が測定点Mを通過する旨の検出信号を出力する。受光部24から出力される検出信号は、制御・処理部80に供給され、制御・処理部80において測定対象物がフローセル体40中の測定点Mを通過するタイミングを知らせるトリガ信号として用いられる。
【0029】
受光部26は、レーザ光源部22から出射されるレーザ光の出射方向に対して垂直方向であって、かつフローセル体40中の測定対象物の移動方向に対して垂直方向に配置されている。受光部26は、測定点Mにて照射された測定対象物が発する蛍光を受光する光電変換器を備える。図3は、受光部26の一例の概略構成図である。本実施形態では、受光部26は、蛍光を2つの波長に分離して2つの受光素子を用いて蛍光を受光するが、蛍光を受光する受光素子は1つであってもよい。
【0030】
図3に示す受光部26は、測定対象物12中の生体物質が発する蛍光を集束させるレンズ系26aと、ハーフミラー26bと、バンドパスフィルタ26c1,26c2と、光電子増倍管等の光電変換器27a,27bと、を有する。
レンズ系26aは、受光部26に入射したレーザ光あるいは蛍光を光電変換器27a、27bの受光面に集束させる。
ハーフミラー26bは、光の一部を反射させて、一部を透過させるミラーである。
【0031】
バンドパスフィルタ26c1,26c2は、各光電変換器27a,27bの受光面の前面に設けられ、所定の波長帯域の光のみが透過するフィルタである。透過する光の波長帯域は、蛍光色素の発する蛍光の波長帯域に対応して設定されている。バンドパスフィルタ26c1,26c2のフィルタリングにより、光電変換器27a,27bが所定の波長帯域の光を取り込めるように設定されている。
【0032】
光電変換器27a,27bは、例えば光電子増倍管を備えたセンサを備え、光電面で受光した光を電気信号に変換するセンサである。ここで、受光するレーザ光あるいは蛍光は位相差情報を持った光信号として受光されるので、出力される電気信号は位相差情報を持った受光信号となる。この受光信号は、増幅器で増幅されて、制御・処理部80に供給される。
【0033】
制御・処理部80は、フローサイトメータ10全体の動作を制御、管理する他、レーザ光の強度を所定の周波数で変調(振幅変調)するための変調信号を生成する。さらに、制御・処理部80は、光電変換器27a,27bから出力される蛍光信号を処理する。具体的には、制御・処理部80は、蛍光信号をアンプで増幅し、増幅した蛍光信号を生成した上記変調信号とミキシングし、その後、ミキシングで得られた信号をローパスフィルタ処理を行うことにより、蛍光信号の変調信号に対する位相遅れを算出し、この位相遅れに基づいて蛍光の蛍光寿命(蛍光緩和時間)を蛍光の情報として算出する。また、制御・処理部80は、蛍光信号を用いて蛍光強度を蛍光の情報として算出する。蛍光寿命および蛍光強度は、測定対象物12に識別用ラベルとして付けられている蛍光物質に応じて定まっているので、蛍光寿命および蛍光強度を求めることにより、どの測定対象物が測定点Mを通過したか、情報を得ることができる。
【0034】
図4(a)は、フローサイトメータ10の導入管34および外管36に装着されるキャップ46の外観を示す図である。図4(b)は、導入管34、外管36およびキャップ46を詳細に説明する図である。
キャップ46は、金属からなり、導入管34および外管35の先端開口部に着脱自在に設けられている。外管36の先端には、鍔が設けられ、この鍔が、キャップ46の内周面に設けられた凹部と嵌合する構成となって、キャップ46は外管36の先端開口部に装着される。
【0035】
キャップ46が設けられた導入管34は、測定対象物12を収容する試験管32内に挿入され、キャップ46および導入管34の先端はサンプル液内に浸っている。キャップ46には、開口が設けられ、この開口に金属製網48が設けられている。金属製網48は、導入管34の先端開口部および外管36の先端開口部を覆う。金属製網48は、メッシュ状に金属繊維が交差したものであり、複数の測定対象物12が凝集した塊りは通過しないが、測定対象物12単体は通過できるようなサイズの網が設けられている。例えば、測定対象物12が100μm程度の直径を有するのであれば、150〜200μm程度の間隔の網になっている。また、金属製網48は、電流が流れることにより、電気分解が生じるのを防ぐ目的で、サンプル液と接触する部分は絶縁体で被覆されている。外管36および導入管34は、いずれもキャップ46あるいは金属製網48と接触している。
また、接続管37には、図示されないDC電源の負極と接続された電極端子が設けられ、外管36は負の電位が与えられている。さらに、外管36は、キャップ46の金属製網48と接触しているので、キャップ46も、外管36と同様の負の電位が与えられている。さらに、導入管34は、キャップ46の金属製網48と接触しているので、導入管34も、外管36と同様の負の電位が与えられている。
【0036】
これに対して、導入管34の先端開口部と対向するように、試験管32の壁を介して設けられる試験管32を固定支持する金属製支持部材50は接地されている。すなわち、DC電源の正極は金属製支持部材50と接続され、この金属製支持部材50が接地されることにより、金属製支持部材50に対して、導入管34、外管36および金属製網48が負電位となっている。
【0037】
このように、導入管34、外管36および金属製網48に負の電位を与えるのは、生体物質等の測定対象物は負の電荷を帯びているものが多い。試験管32の気相の加圧によりサンプル液は、導入管34に流れ込み、上昇しようとするとき、元来負の電荷を帯びているサンプル液内の単体の測定対象物12は、網の隙間を通って導入管34内に導かれる。このとき、凝集した複数の測定対象物の塊りは、金属製網48を通過することはできない。したがって、導入管34内に、単体の測定対象物が移動する。
さらに、導入管34の表面は負の電位が与えられているので、負の電荷を有する測定対象物が導入管34の表面に付着することは少ない。しかも、導入管34内には、複数の測定対象物12が凝集した塊りは存在しないので、ファンデルワールス力等によって導入管34の表面に上記塊りが付着することも少ない。
したがって、本実施形態は、従来に比べて導入管34が汚れ難く、洗浄回数を抑制することができる。
【0038】
(蛍光検出方法)
このようなフローサイトメータ10は、測定対象物12を含むサンプル液の気相を加圧することにより、測定対象物12を導入管34の先端開口部を覆うように先端開口部に設けたキャップ46の金属製網48を通過させる。さらに、フローサイトメータ10は、測定対象物12を導入管34に導入させ、さらに、導入管34からフローセル体40内にシース液を用いて測定対象物12を流す。このとき、金属製網48には、負電位が与えられる。
【0039】
次に、レーザ光源部22は、フローセル体40の測定点Mを通過する測定対象物12を照射するために、レーザ光を出射する。このとき、受光部26は、測定対象物12がレーザ光の照射を受けることで発する蛍光を受光する。
この後、制御・処理部80は、受光した蛍光の信号を処理し、処理結果に基づいて、蛍光寿命および蛍光強度を含む蛍光情報を求める。
【0040】
このように、測定対象物12を含むサンプル液を導入管34に導入するとき、金属製網48を用いるので、凝集した測定対象物は導入管34内に進入できない。また、金属製網48には負電位が与えられているで、金属製膜48に付着することなく、気相の加圧によって単体の測定対象物12が導入管34に移動する。このとき、サンプル液に浸っている外管36、導入管34も負電位となっているので、測定対象物12が表面に付着することも少ない。
また、金属製網48を測定対象物12が通過するとき、負の電荷を持たない測定対象物12であっても、金属製網48の電位の影響を受けて負に帯電する。このため、導入管34内に導入された測定対象物12が凝集して、導入管34の表面に付着することは少なくなる。このため、導入管34の洗浄回数は少なくなる。
また、フローセル体40において単体の測定対象物12が測定点Mを通過するので、複数の測定対象物12が凝集した塊りを測定する可能性は低くなる。
【0041】
以上、本発明の蛍光検出装置および蛍光検出方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0042】
10 フローサイトメータ
20 本体ユニット
22 レーザ光源部
22a 光源
22b,26a レンズ系
22c レーザドライバ
24,26 受光部
26b ハーフミラー
26c,26c2 バンドパスフィルタ
27a,27b 光電変換器
30 管路
32 試験管
34 導入管
36 外管
37 接続管
37a 空気導入口
37b 空気吸引口
38 シース液導入部
38a,38b 導入口
40 フローセル体
42 フローセル上端部
44 回収管
46 キャップ
48 金属製網
50 金属製支持部材
80 制御・処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光の照射を受けることにより、生体物質を含む測定対象物が発する蛍光を検出する蛍光検出装置であって、
測定対象物を測定点で照射するためにレーザ光を出射するレーザ光源部と、
前記測定対象物が前記レーザ光の照射を受けることで発する蛍光を受光する受光部と、
前記受光した蛍光の信号を処理し、処理結果に基づいて、蛍光情報を求める処理部と、
前記測定対象物が前記測定点を通過するように前記測定対象物の流路を形成したフローセル体と、
前記測定対象物が圧力により前記測定点に移動するように前記測定対象物を前記フローセル体に導入させる導入管と、を有し、
前記導入管の先端開口部を覆うように、前記先端開口部に金属製網が設けられ、前記金属製網に負電位が与えられている、ことを特徴とする蛍光検出装置。
【請求項2】
前記導入管は、金属で形成され、前記導入管に負電位が与えられている、請求項1に記載の蛍光検出装置。
【請求項3】
前記導入管は、前記測定対象物を収容する容器内に挿入されており、
さらに、前記導入管の前記先端開口部と対向するように、前記容器の壁を介して設けられる前記容器を固定支持する金属製支持部材を有し、前記金属製支持部材は接地されている、請求項1または2に記載の蛍光検出装置。
【請求項4】
さらに、前記導入管の外周を取り巻くように外管が設けられ、前記外管に負電位が与えられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蛍光検出装置。
【請求項5】
前記金属製網は、前記外管の先端開口部を覆う、請求項4に記載の蛍光検出装置。
【請求項6】
前記金属製網は、前記導入管の先端開口部から着脱自在なキャップに設けられている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の蛍光検出装置。
【請求項7】
レーザ光の照射を受けることにより、生体物質を含む測定対象物が発する蛍光を検出する蛍光検出方法であって、
測定対象物を含む溶液を加圧することにより、測定対象物を、導入管の先端開口部を覆うように前記先端開口部に設けられた金属製網を通して前記導入管に導入させ、さらに、前記導入管からフローセル体内に測定対象物を流すステップと、
前記フローセル体の測定点を通過する測定対象物をレーザ光で照射するステップと、
前記測定対象物が前記レーザ光の照射を受けることで発する蛍光を受光するステップと、
前記受光した蛍光の信号を処理し、処理結果に基づいて、蛍光情報を求めるステップと、を有し、
前記金属製網には負電位が与えられている、ことを特徴とする蛍光検出方法。





【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−198169(P2012−198169A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63791(P2011−63791)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】