説明

蛍光表示管駆動装置

【課題】安価な構成で巻線トランスの二次側において短絡が発生したときの異常な温度上昇を抑制することができるようにする。
【解決手段】蛍光表示管駆動装置20は、商用電源13からの入力電圧を降圧して蛍光表示管5のフィラメントFに与える巻線トランス14、巻線トランス14の一次巻線の一端と商用電源13との間に設けられたリレー17を備えて構成されている。リレー17は、制御マイコン18からの出力信号によりコイル17aに電流が流れ、接点17bがオンするようになっている。前記リレー17のコイル17aにはスイッチングトランス16の二次巻線から14Vの駆動電圧が供給されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫などの操作パネルに用いられる蛍光表示管駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光表示管(Vacuum Fluorescent Display,VFD)は、真空排気された容器内にフィラメント(陰極)、蛍光体が塗布されたアノード(陽極)、フィラメントとアノードとの間に配置されフィラメントから放出される電子を制御するグリッドとを備えて構成されている。蛍光表示管は、フィラメントから放出される電子が蛍光体に衝突して発光する作用を利用した自発光型の表示素子であり、家電製品や自動車部品、計測機器など様々な分野の表示装置に用いられている。このような蛍光表示管の駆動装置は、例えば商用電源等の入力電圧を降圧してフィラメントに与える巻線トランスを備えて構成されている。
【0003】
一般的に、巻線トランスは二次側で短絡が発生すると一次巻線が異常に温度上昇し、寿命低下や半田付け部の破損を招く。そのため、巻線トランスの一次巻線に温度ヒューズを設けたり、巻線トランスの二次側で発生する放電を検出することに基づき一次側の電流を遮断する保護装置を設けたりして、異常な温度上昇を抑制している(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−38062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、温度ヒューズがいったん切断されると、巻線トランスの一次巻線を交換しなければならない。また、二次側の放電を検出する検出回路を設けると、その分、蛍光表示管駆動装置の製造コストが上昇する。
そこで、本発明の目的は、安価な構成で巻線トランスの二次側において短絡が発生したときの異常な温度上昇を抑制することができる蛍光表示管駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の蛍光表示管駆動装置は、電源と、前記電源に一次側が接続された巻線トランスと、前記巻線トランスの二次側に接続され、当該巻線トランスの出力電圧が供給される蛍光表示管と、制御手段と、前記制御手段の出力信号に基づき前記電源から前記巻線トランスの一次側への電圧の供給をオン・オフするスイッチ手段とを備え、前記制御手段は、前記スイッチ手段をオンしてから所定時間が経過すると前記スイッチ手段をオフすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、巻線トランスの一次側に対する電圧供給時間が所定時間に制限されるため、巻線トランスの二次側が短絡状態になっている場合に巻線が異常に温度上昇することを防止できる。また、巻線トランスの二次側で短絡が発生した場合でもスイッチ手段や巻線は破損しないため、短絡発生時の交換部品を少なくすることができる。更に、短絡の発生を検出する検出回路を設けていた従来構成に比べて製造コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を冷蔵庫の操作パネルに適用したいくつかの実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1ないし図3は本発明の第1の実施形態を示している。図3は、本実施形態に係る冷蔵庫を概略的に示したものであり、冷蔵庫本体1の前面には、上下に並んだ3個の貯蔵室(図示せず)の前面開口をそれぞれ開閉する3個の扉2〜4が設けられている。最上部に位置する扉2の前面上部には蛍光表示管5(図1に「VFD」と示す)からなる表示装置6や複数の操作ボタン7を有する操作パネル8が設けられている。
操作パネル8の後面に位置する扉2の内部には、当該操作パネル8を制御するためのマイクロコンピュータ等を搭載した操作基板組立9が配設されており、冷蔵庫本体1の下部の右後部には電源基板組立10が配設されている。
【0008】
次に、操作基板組立9及び電源基板組立10の構成について図1及び図2を参照しながら説明する。図1に示すように、操作基板組立9は、操作パネル8用のマイクロコンピュータ(以下、操作マイコンという)11、操作パネル8駆動用の電源(以下、操作電源という)12、蛍光表示管5、操作ボタン7等が搭載されている。操作マイコン11には操作電源12から電源が供給される。操作マイコン11の出力信号は、蛍光表示管5のアノード/グリッドA/Gに入力される。
【0009】
また、電源基板組立10は、商用電源13からの入力電圧を降圧して蛍光表示管5のフィラメントFに与える巻線トランス14、商用電源15に接続され前記操作電源12に5Vの電源を供給するスイッチングトランス16が搭載されている。
巻線トランス14の一次巻線の一端と商用電源13との間にはリレー17(スイッチ手段に相当)が設けられている。リレー17は、制御手段としての制御用マイクロコンピュータ(以下、制御マイコンという)18からの出力信号によりコイル17aに電流が流れ、接点17bがオンするようになっている。前記リレー17のコイル17aにはスイッチングトランス16の二次巻線から14Vの駆動電圧が供給されるようになっている。
【0010】
商用電源13、巻線トランス14、蛍光表示管5、制御マイコン18、リレー17から蛍光表示管駆動装置20が構成される。
尚、図1では省略するが、スイッチングトランス16と操作電源12との間にはトランジスタ19が設けられている(図2参照)。トランジスタ19のベースには、制御マイコン18の操作電源出力ポートOUTが接続されており、制御マイコン18からの出力信号によりトランジスタ19がオンして操作電源12に5Vが供給されるようになっている。上記構成においては、次のようにしてトランジスタ19の保護制御を行っている。
【0011】
即ち、制御マイコン18は常時、操作マイコン11と双方向通信を行っている。操作電源12に対して正常に5V電源が供給され、操作電源12から操作マイコン11に駆動電圧が供給されているときは、制御マイコン18の通信入出力ポートI/Oに対して操作マイコン11から正常信号が入力される。このような場合は、トランジスタ19に対して制御マイコン18から出力信号が与えられるため、トランジスタ19はオンし、正常に動作する。
【0012】
これに対して、操作電源12に短絡などの異常が発生すると、操作マイコン11からの出力信号が制御マイコン18の通信入出力ポートI/Oに入力されなくなる(入力信号のレベルがLOW(0V)レベルとなる)。このような状態が所定時間継続すると、制御マイコン18は操作電源出力ポートOUTからの信号出力を停止し、この結果、トランジスタ19はオフする。このため、操作電源12が短絡してもトランジスタ19が異常に温度上昇することを抑制することができる。
【0013】
次に、上記構成の動作について説明する。
使用者により操作ボタン7が押されると、制御マイコン18から出力信号が出力され、これによりリレー17のコイル17aに電流が流れて接点17bがオンし、巻線トランス14の一次側に電源電圧が印加される。この結果、巻線トランス14の二次側に接続されている蛍光表示管5のフィラメントFに電圧が供給される。また、これと同時に操作マイコン11からの出力信号が蛍光表示管5のアノード及びグリッドA/Gに入力される。この結果、蛍光表示管5が点灯する。
【0014】
制御マイコン18は、出力信号を出力してから所定時間(例えば1分間)が経過すると、信号出力を停止する。これにより、リレー17がオフし、巻線トランス14の一次側に対して電源電圧が供給されなくなる。この結果、フィラメントFに対する電源の供給が断たれ、蛍光表示管5が消灯する。
【0015】
上記した通常動作において、何らかの故障により巻線トランス14の二次側が短絡状態となった場合、リレー17の接点17bがオンすることにより巻線トランス14の巻線温度が上昇する。ところが、制御マイコン18は、一定時間しか出力信号を出力しないため、巻線温度が異常に上昇する前にリレー17の接点17bがオフされる。
【0016】
このように、本実施形態においては、巻線トランス14の一次側にリレー17を設け、操作ボタン7が押圧されてリレー17の接点17bがオンされてから所定時間が経過すると、前記接点17bがオフされるように構成した。従って、巻線トランス14の一次側に対する電源電圧の供給は常に一定時間に制限される。このため、巻線トランス14の二次側が短絡状態になっている場合でも、巻線トランス14の巻線が異常に温度上昇することを防止できる。
【0017】
また、上記構成においては、巻線トランス14の二次側が短絡状態となってもリレー17が破損することはない。従って、温度ヒューズにより巻線トランスを保護していた従来と異なり、巻線トランス14の二次側の短絡部分を修理したり交換したりするだけで、短絡状態を解消することができる。
【0018】
更に、蛍光表示管5の寿命は一般的には3万時間程度とされているが、オンされたときの蛍光表示管5の点灯時間を1分間に設定したことにより、蛍光表示管5の寿命を延ばすことができる。家庭用冷蔵庫の寿命は10万時間程度であるといわれていることから、上記構成によれば、家庭用冷蔵庫の寿命が尽きる前に蛍光表示管5の寿命が尽きることを防止できる。
【0019】
図4は本発明の第2の実施形態を示すものであり、第1の実施形態と異なるところを説明する。第2の実施形態では、リレー17に代えてフォトカプラ21を用いている。フォトカプラ21は発光ダイオード21aとダイアック21bとから構成されている。
上記構成においては、制御マイコン18から出力信号が出力されると発光ダイオード21aが点灯し、巻線トランス14の一次側に電源電圧が印加される。この結果、上記した第1の実施形態と同様に、巻線トランス14の二次側に接続されている蛍光表示管5のフィラメントFに電圧が供給される。また、これと同時に操作マイコン11からの出力信号が蛍光表示管5のアノード及びグリッドA/Gに入力される。この結果、蛍光表示管5が点灯する。
【0020】
また、制御マイコン18は、出力信号を出力してから所定時間が経過すると、信号出力を停止する。この結果、巻線トランス14の一次側に対して電源電圧が供給されなくなり、フィラメントFに対する電源の供給が断たれて蛍光表示管5が消灯する。
従って、本実施形態においても、第1の実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
【0021】
尚、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変更したり拡張したりすることができる。
リレーやフォトカプラは、制御マイコンから出力信号が出力されるとオン動作するように構成したが、出力信号が出力されるとオフ動作するように構成しても良い。
本発明は、蛍光表示管のアノードやグリッドに電圧を供給する電源回路に巻線トランスを用いた構成にも適用できる。
本発明は冷蔵庫の操作パネルの他、自動車のカーオーディオや情報機器等、種々の表示装置に用いられる蛍光表示管の駆動装置に適用可能である。また、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すものであり、蛍光表示管駆動装置の全体構成を概略的に示すブロック回路図
【図2】蛍光表示管駆動装置のうち操作電源に対して電圧を供給するトランジスタの周辺部分を詳細に示すブロック回路図
【図3】冷蔵庫の概略的な正面図
【図4】本発明の第2の実施形態を示す図1相当図
【符号の説明】
【0023】
図面中、5は蛍光表示管、13は商用電源、14は巻線トランス、17はリレー(スイッチ手段)、18は制御マイコン(制御手段)、21はフォトカプラ(スイッチ手段)、20は蛍光表示管駆動装置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、
前記電源に一次側が接続された巻線トランスと、
前記巻線トランスの二次側に接続され、当該巻線トランスの出力電圧が供給される蛍光表示管と、
制御手段と、
前記制御手段の出力信号に基づき前記電源から前記巻線トランスの一次側への電圧の供給をオン・オフするスイッチ手段とを備え、
前記制御手段は、前記スイッチ手段をオンしてから所定時間が経過すると前記スイッチ手段をオフすることを特徴とする蛍光表示管駆動装置。
【請求項2】
スイッチ手段はリレーから構成されていることを特徴とする請求項1記載の蛍光表示管駆動装置。
【請求項3】
スイッチ手段はフォトカプラから構成されていることを特徴とする請求項1記載の蛍光表示管駆動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−58632(P2008−58632A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235736(P2006−235736)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューママーケティング株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝家電製造株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】