説明

融解物で被覆された医薬形態

本発明は、活性薬剤含有コーティングを有している担体粒子を含む水に難溶性の活性薬剤の調製物に関し、ここで、水に難溶性の該活性薬剤は両親媒性コポリマーを含むコーティングの中に埋め込まれており、及び、該コーティングは溶媒を含まない融解物の形態で塗布されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分含有コーティングで被覆された担体粒子に関し、ここで、水に難溶性の該活性成分はポリエーテルの存在下で酢酸ビニルとN-ビニルラクタムを重合させることによって得られる両親媒性コポリマーを含むコーティングの中に埋め込まれており、及び、該コーティングは融解物の形態で適用される。本発明は、さらに、そのような被覆された担体粒子及びそのような粒子の凝集体を製造する方法、並びに、医薬投与形態中におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子を活性成分含有コーティングで被覆することは、典型的には、コーティング材料の溶液を噴霧塗布(spray application)することによって達成される。
【0003】
溶液から加工することの不利点は、有機溶媒の取扱いが複雑なことであり、有機溶媒は環境及び設備に大きな要求を突きつける。さらに、難溶性活性成分に適した有機溶媒を見いだすことは、多くの場合、困難である。
【0004】
WO 2005/034908には、フィブラート類とスタチン類の組合せを活性成分として含む融解物又は分散液を流動床造粒機の中で担体粒子に塗布することが開示されている。該活性成分の組合せは、親水性ポリマー又は疎水性ポリマー又はpH依存性可溶性ポリマーの中の活性成分の固溶体又は固体分散体の形態にある。かくして、得られた顆粒は、圧縮して錠剤とすることができる。
【0005】
酢酸ビニルとN-ビニルラクタムをポリエーテルの存在下でフリーラジカル重合に付すことによって得られるグラフトポリマーなどの両親媒性コポリマーは、それ自体知られている。
【0006】
WO 2007/051743には、医薬用途、化粧品用途、栄養学的用途、農薬用途又は別の工業的用途のための可溶化剤として、N-ビニルラクタムと酢酸ビニルとポリエーテルの水溶性コポリマー又は水分散性コポリマーを使用することが開示されている。WO 2007/051743においては、対応するグラフトポリマーを融解物中の活性成分を用いて加工することも可能であるということについて、極めて一般的に示されている。
【0007】
WO 2009/013202には、N-ビニルラクタムと酢酸ビニルとポリエーテルのそのようなグラフトポリマーを押出機内で溶融させて粉末状又は液状の活性成分と混合させ、そして、加工して錠剤とすることができるということが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO 2005/034908
【特許文献2】WO 2007/051743
【特許文献3】WO 2009/013202
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、担体粒子を被覆し凝集させるための改善された方法を見いだすことであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、担体粒子を活性成分含有コーティングで被覆するための方法が開発され、ここで、水に難溶性の該活性成分がポリエーテルの存在下で酢酸ビニルとN-ビニルラクタムを重合させることによって得られる両親媒性コポリマーを含むコーティングの中に埋め込まれており、及び、該コーティングは融解物の形態で適用される。
【0011】
該融解物は、溶媒を含まない。本発明に関連して、「溶媒を含まない(solvent-free)」は、溶媒が5000ppm未満存在することを意味する。
【0012】
さらに、対応するように被覆された担体粒子も見いだされた。
【発明を実施するための形態】
【0013】
水溶性活性成分を埋め込むための適切な両親媒性コポリマー及び溶融押出によるその加工性については、例えば、WO 2007/051743から知られている。
【0014】
対応するコポリマーは、
(i) 30〜80重量%のN-ビニルラクタム;
(ii) 10〜50重量%の酢酸ビニル;及び、
(iii) 10〜50重量%のポリエーテル;
の混合物(但し、(i)、(ii)及び(iii)の合計は100重量%である)のフリーラジカル的に開始される重合によって得られる。
【0015】
本発明の一実施形態では、
(i) 30〜70重量%のN-ビニルラクタム;
(ii) 15〜35重量%の酢酸ビニル;及び、
(iii) 10〜35重量%のポリエーテル;
から得られる好ましいコポリマーが使用される。
【0016】
使用されるコポリマーは、特に好ましくは、
(i) 40〜60重量%のN-ビニルラクタム;
(ii) 15〜35重量%の酢酸ビニル;及び、
(iii) 10〜30重量%のポリエーテル;
から得ることができる。
【0017】
使用されるコポリマーは、極めて特に好ましくは、
(i) 50〜60重量%のN-ビニルラクタム;
(ii) 25〜35重量%の酢酸ビニル;及び、
(iii) 10〜20重量%のポリエーテル;
から得ることができる。
【0018】
好ましい組成及び特に好ましい組成に対しても、但し書き「(i)、(ii)及び(iii)の合計は100重量%である」が適用される。
【0019】
有用なN-ビニルラクタムは、N-ビニルカプロラクタム又はN-ビニルピロリドン又はそれらの混合物である。好ましくは、N-ビニルカプロラクタムを使用する。
【0020】
従って、N-ビニルカプロラクタムと酢酸ビニルとポリエーテルから形成される両親媒性コポリマーが特に好ましい。
【0021】
使用されるグラフトベースは、ポリエーテルである。有用なポリエーテルは、好ましくは、ポリアルキレングリコールである。該ポリアルキレングリコールは、1000〜100000Da[ダルトン]、好ましくは、1500〜35000Da、さらに好ましくは、1500〜10000Daの分子量を有し得る。該分子量は、DIN 53240に従って測定されたOH数に基づいて決定される。
【0022】
特に好ましいポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコールである。さらに、2-エチルオキシラン又は2,3-ジメチルオキシランから得られるポリブチレングリコール、ポリテトラヒドロフラン又はポリプロピレングリコールも適している。
【0023】
適切なポリエーテルは、さらにまた、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドから得られるポリアルキレングリコールのランダムコポリマー又はブロックコポリマー(例えば、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールブロックコポリマー)である。該ブロックコポリマーは、AB型のものであり得るか、又は、ABA型のものであり得る。
【0024】
好ましいポリアルキレングリコールには、さらにまた、一方のOH末端基又は両方のOH末端基でアルキル化されているものも包含される。有用なアルキル基としては、分枝鎖又は非分枝鎖のC1-C22-アルキル基、好ましくは、C1-C18-アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基又はオクタデシル基などを挙げることができる。
【0025】
本発明に従って使用されるコポリマーを調製するための一般的な方法は、それ自体知られている。該調製は、フリーラジカル的に開始される重合によって、好ましくは、非水性有機溶媒又は混合非水性/水性溶媒の中の溶液状態でのフリーラジカル的に開始される重合によって、達成される。適切な調製方法は、例えば、WO 2007/051743及びWO 2009/013202などに記載されており、充分な説明については、調製方法に関するそれらの開示を参照する。
【0026】
使用される両親媒性コポリマーは、特に、ポリエーテルの存在下で酢酸ビニルとN-ビニルラクタムを重合することによって得られるポリマーである。当該コーティングの中にさらなるポリマー又は低分子量物質を組み入れることも可能である。
【0027】
本発明による方法は、担体粒子が融解物で被覆されている点で注目すべきである。該融解物は、難溶性活性成分と可溶化ポリマー(solubilizing polymer)及び場合によりさらなる添加剤を含む。該融解物の冷却及び固化によって、活性成分を溶解された形態で含むコーティングが生じる。
【0028】
担体粒子の融解物による被覆は、慣習的な流動床ユニットで達成することができる。この場合、担体粒子を含む流動床に該融解物を噴霧する。
【0029】
該融解物は、有利には、実際の噴霧に先立って、既に、温度制御されたリザーバ容器に入れて提供されている。本発明の一実施形態では、ポリマーと活性成分及び場合によりさらなる添加剤からなる該融解物は、同様に温度制御可能な融解物ポンプを使用するノズルを用いて噴霧することができる。使用されるノズルは、一物質ノズル(one-substance nozzle)又は多物質ノズル(multisubstance nozzle)であり得る。適切な多物質ノズルは、特に、二物質ノズル(two-substance nozzle)である。
【0030】
流動床ユニットに加えて、該担体粒子がその中でタンクの回転又は入ってくる空気によって動かされる別の装置、例えば、コーティングタンク、インテンシブミクサー、水平ドラムコーター、クーゲルコーター(Kugelcoater)、イノジェットユニット(Innojet unit)などを使用することも可能である。記載されている製剤を適用するのに、ジェット流動床(Procell technology)として知られているものも適している。
【0031】
給気温度は、典型的には、30〜200℃であり、好ましくは、40〜120℃である。生成物の温度は、一般に、20〜100℃であり、好ましくは、30〜80℃である。
【0032】
本発明のさらなる実施形態では、該融解物は、噴霧することなく、例えば、細流での注入(pouring on)によって適用することも可能である。
【0033】
既に記載されているように、該融解物は、溶媒を含まない。当該目的に典型的に使用される溶媒(例えば、アルカノール、例えば、エタノール、メタノール又はイソプロパノール、並びに、さらに、アセトン、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド及び/又はメチルエチルケトンなど)の総量は、5000ppm未満であるべきである。アルカノール類の含有量は、好ましくは、10ppm未満であるべきである。
【0034】
適切な担体粒子は、特に、「ノンパレイル(nonpareils)」として知られている、球状又は少なくともほぼ球状の粒子である。本発明の一実施形態では、該ノンパレイルは、完全に医薬品用賦形剤からなる(即ち、100重量%までの医薬品用賦形剤からなる)。該ノンパレイルは、慣習的な医薬品用賦形剤、例えば、カラギーナン、澱粉又は微結晶性セルロースなどからなり得る。それらは、種々の寸法(100〜2000μm)で入手可能である。それらの粒径は、典型的には、700〜1000μmである。
【0035】
使用される担体粒子は、錠剤又は顆粒であってもよい。
【0036】
典型的には、該コーティング中の活性成分と両親媒性ポリマーの重量比は、1:99〜80:20、好ましくは、10:90〜60:40である。これにより、該の最終的な固化ポリマーコーティングの中で、活性成分の濃度は全質量に基づいて、1〜80重量%となる。
【0037】
担体粒子としての顆粒又は微粉を被覆することも可能であるが、後者の場合、担体粒子を凝集させることも可能である。本発明の一実施形態では、そのような顆粒又は微粉も、1種類以上の活性成分を含み得る。
【0038】
両親媒性コポリマーの活性成分含有コーティングの層厚さは、5〜1000μmであり、好ましくは、10〜700μmである。
【0039】
本発明によれば、用語「難溶性(sparingly water-soluble)」は、実質的に不溶性である物質も包含し、そして、それは、該物質の20℃における水溶液を得るためには該物質1g当たり少なくとも30〜100gの水が必要であるということを意味する。実質的に不溶性である物質の場合、その物質1g当たり、少なくとも10000gの水が必要である。
【0040】
本発明に関連して、難溶性物質は、好ましくは、生物学的活性物質、例えば、ヒト及び動物のための医薬活性成分、化粧品活性成分若しくは農薬活性成分、又は、食品サプリメント若しくは栄養活性成分を意味するものと理解される。
【0041】
さらに、可溶化すべき有用な難溶性物質としては、有機顔料又は無機顔料などの色素も挙げることができる。
【0042】
本発明によれば、有用な生物学的活性物質には、原則として、該コーティング混合物の溶融条件下における分解点よりも融点が低い全ての固体活性成分が包含される。該コポリマーは、一般に、260℃以下の温度で加工され得る。下限温度は、いずれ場合にも、溶融対象の混合物の組成及び加工対象の難溶性物質に左右される。該下限温度は、30℃であり得る。
【0043】
該下限温度(lower temperature)は、融解物の粘度に依存し、そして、それは、噴霧できるほどに充分に低くなければならない。さらに、ノズルの形状及び直径は、溶融粘度に関して重要であり、ここで、該溶融粘度は、温度によって確立される。
【0044】
使用される医薬活性成分は、水溶解性が不溶性から難溶性の範囲内にある物質である。DAB 9(Deutsches Arzneimittelbuch, German Pharmacopeia)によれば、医薬活性成分の溶解性は、以下のように分類される:難溶性(30〜100部の溶媒に溶解する);僅かに溶解性(100〜1000部の溶媒に溶解する);実質的に不溶性(10000部を超える溶媒に溶解する)。該活性成分は、任意の適応症部門(indication sector)の活性成分であり得る。
【0045】
ここで、例として、以下のものを挙げることができる:ベンゾジアゼピン類、抗高血圧薬、ビタミン類、細胞増殖抑制剤、特に、タキソール、麻酔薬、神経遮断薬、抗鬱薬、抗ウイルス薬、例えば、抗HIV薬、抗生物質、抗真菌薬、抗痴呆薬(antidementives)、殺菌剤、化学療法薬、泌尿器科関連薬(urologics)、血小板凝集阻害薬、スルホンアミド類、鎮痙薬、ホルモン類、免疫グロブリン、血清、甲状腺治療薬(therapeutics)、向精神薬、パーキンソン病薬及び別の抗運動亢進薬(antihyperkinetics)、眼病薬、神経障害薬(neuropathy preparations)、カルシウム代謝調節薬、筋肉弛緩薬、麻酔薬、脂質降下薬、肝臓治療薬、冠動脈薬、心臓病薬(cardiac drug)、免疫療法薬(immunotherapeutics)、調節ペプチド類及びその阻害薬、催眠薬、鎮静薬、婦人科関連薬(gynaecologicals)、痛風治療薬、線維素溶解薬、酵素製剤(enzyme preparation)及び輸送タンパク質、酵素阻害薬、催吐薬、血流刺激薬(blood-flow stimulator)、利尿薬、診断薬、コルチコイド類、コリン作動薬、胆管治療薬、抗喘息薬、気管支拡張薬、ベータ受容体遮断薬s、カルシウム拮抗薬s、ACE阻害薬、動脈硬化症用薬、抗炎症薬、抗凝血薬、抗低血圧薬、低血糖症薬、抗高血圧薬、抗線維素溶解薬、抗癲癇薬、制吐薬、解毒薬、抗糖尿病薬、抗不整脈薬、抗貧血薬、抗アレルギー薬、駆虫薬、鎮痛薬、興奮薬、アルドステロン拮抗薬、痩せ薬。
【0046】
難溶性活性成分を伝統的な漢方薬から加工することも可能である。
【0047】
医薬製剤中の本発明の可溶化剤の含有量は、その活性成分に応じて、20〜99重量%の範囲内にある。
【0048】
本発明の製剤に、慣習的なさらなる医薬品用賦形剤、例えば、さらなる可溶化剤、ポリマー、色素、無機担体、崩壊剤、ゲル形成剤(gel former)、遅延剤、酸化防止剤、芳香薬(aroma)、可塑剤、緩衝物質などを添加することも、もちろん可能である。胃液抵抗性ポリマー又は遅延性ポリマー(retarding polymer)を組み入れることで、活性成分の放出を制御することができる。
【0049】
結晶化阻害物質(例えば、Kollidon 30)を添加することで、固溶体の安定性を向上させることができる。
【0050】
適切な可塑剤の例としては、トリアセチン、クエン酸トリエチル、モノステアリン酸グリセリル、ポリエチレングリコール又はポロキサマーなどを挙げることができる。
【0051】
適切な付加的な可溶化剤は、HLB(親水性親油性比)値が11より大きい界面活性物質、例えば、40エチレンオキシド単位でエトキシル化されている硬化ヒマシ油(Cremophor(登録商標)RH 40)、35エチレンオキシド単位でエトキシル化されているヒマシ油(Cremophor EL)、ポリソルベート 80、ポロキサマー又はラウリル硫酸ナトリウムである。
【0052】
色素は、投与形態、乳白剤、例えば、二酸化チタン又はタルクを着色するための、透明性を増加するための、及び、色素を保護するための、例えば、酸化鉄、二酸化チタン、トリフェニルメタン染料、アゾ染料、キノリン染料、インジゴチン染料、カロテノイド類である。
【0053】
化粧品及び製薬における使用に加えて、本発明に従って製造された製剤は、例えば水難溶性又は水不溶性の栄養素、助剤又は添加剤(例えば、脂溶性のビタミン又はカロテノイド)を組み入れるために、食品部門で使用するのにも適している。
【0054】
本発明に従って得られた製剤の農芸化学における使用は、とりわけ、殺害虫剤、除草剤、殺菌剤又は殺虫剤を含む製剤、及び、さらに、特に、噴霧又は灌水のための製剤として使用される作物保護剤の製剤を含み得る。
本発明に従って得られた被覆されている担体粒子は、カプセル充填材として使用し得るか、又は、サッシェ中で使用し得る。
【0055】
ペレット又は顆粒の形態にある被覆されている担体粒子も、圧縮して錠剤とすることができる。慣習的なさらなる錠剤化助剤(例えば、増量剤、結合剤、崩壊剤)、並びに、さらに、流動助剤及び分離助剤を使用することも可能である。
【0056】
本発明による方法を用いて、担体粒子の表面上の難溶性物質を含むいわゆる固溶体としての活性成分含有コーティングを得ることが可能である。固溶体は、本発明に従えば、その中に難溶性物質の結晶質成分が観察されない系を意味する。
【0057】
本発明の方法によって得られた製剤は、上記のように、アモルファス形態(これは、当該生物学的活性物質の結晶質成分が5重量%未満であることを意味する)で存在している。そのようなアモルファス状態は、好ましくは、DSC又はXRDを用いて確認する。そのようなアモルファス状態は、X線アモルファス状態とも称され得る。
【0058】
本発明による方法は、多くの活性成分が含有されていて且つ難溶性物質のアモルファス状態に関して良好な安定性を有する安定な製剤の製造を可能とする。
【0059】
この方法の特有の特徴は、両親媒性ポリマーが難溶性活性成分と一緒に溶媒非含有融解物の形態で使用されることである。該両親媒性ポリマーは、該活性成分を、その融点未満であっても、溶融又は溶解させることができる。かくして、該コーティングは、ペレット又は錠剤の慣習的なコーティングではなく、むしろ、難溶性活性成分を溶解された形態で維持するコーティングである。形成された固溶体は、担体粒子間の結合剤架橋(binder bridge)としての役割も果たすことができ、従って、造粒助剤としての役割も果たすことができる。固溶体の有利な点は、難溶性活性成分の生物学的利用能がそれによって改善され得ることである。該活性成分は、コーティング層又は結合剤層の中に、モルファス形態で存在し得るか、又は、分子的に溶解された形態で存在し得る。
【0060】
両親媒性ポリマーの構造によって、該ポリマーは、固溶体のためのベースとして極めて適している。固体の溶解は、既に記載されているように、溶融押出方法を用いて達成することができる。エレガントな代替方法は、固溶体を固体投与形態(例えば、ペレット剤、顆粒剤、粉末剤又は錠剤)上のコーティングとして形成させることである。通常の流動床システムを使用することで、上記方法はさらに一層興味深いものとなる。さらに、融解物の中に溶媒が存在していないことは、当該コーティングの特性に対して好ましい効果を有する。それらは、孔がより少ないが、より滑らかであり且つより均質である。
【0061】
該加工方法のさらなる有利点は、難溶性活性成分の固溶体が多粒子固体薬物形態に加工され得るということである。これらの多粒子薬物形態は、例えば、ハードゼラチンカプセルの中に充填することが可能であるか、又は、圧縮して錠剤とすることさえ可能である。
【実施例】
【0062】
使用した両親媒性コポリマーは、13重量%のポリエチレングリコール(MW 6000)と57重量%のN-ビニルカプロラクタムと30重量%の酢酸ビニルから形成された、44000ダルトンの平均モル質量を有するグラフトポリマーであった。
【0063】
加工は、Glatt 流動床造粒機(GPCG 3.1)で実施した。噴霧は、二物質ノズル(直径 4mm)を用いて実施した。
【0064】
コーティング成分を70℃に加熱し、そして、それらを、スクロース(710-850μm(スクリーン画分)の粒径を有するペレット)又はGranulac 200 (ラクトース、Meggle社製、(d50)=30μm、嵩密度 535g/L)で構成される担体粒子に適用することによって、融解物を得た。
【0065】
流動床造粒機における加工に関する方法パラメータは、個々の実施例に対して特定されている。
【0066】
製造されたコーティングは、結晶化度又はアモルファス化度(amorphicity)に関して、以下の機器及び条件を用いてXRD及びDSCによって分析した。
【0067】
XRD(X線ディフラクトグラム)
機器: 試料交換器の位置が9個所ある D 8 Advance 回折計 (Bruker/AXS社製);
測定方法: 反射におけるθ-θ配置;
角度範囲 2シータ: 2-80°;
ステップ幅: 0.02°;
角度ステップ当たりの測定時間: 4.8秒;
発散スリット(divergence slit): Gobel 鏡 (挿入開口 0.4mm);
散乱線除去スリット(antiscattering slit):Soller スリット;
検出器: Sol-X 検出器;
温度: 室温;
発生器: 40kV/50mA;
下記実施例において、種々の担体粒子に活性成分含有コーティングを施した。
【0068】
実施例1
【表1】

【表2】

【0069】
XRD分析は、結晶質活性成分画分を全く示さなかった。
【0070】
400mgのペレット剤からの活性成分の放出は、700mLの0.1規定HClの中でUSP装置2で実施した。60分経過した後、活性成分の90%が放出された。
【0071】
実施例2
【表3】

【表4】

【0072】
XRD分析は、結晶質活性成分画分を全く示さなかった。
【0073】
0.6gのペレット剤からの活性成分の放出は、700mLの0.1規定HClの中でUSP装置2で実施した。60分経過した後、活性成分の70%が放出された。
【0074】
実施例3
【表5】

【表6】

【0075】
XRD分析は、結晶質活性成分画分を全く示さなかった。
【0076】
400mgのペレット剤からの活性成分の放出は、700mLの0.1規定HClの中でUSP装置2で実施した。40分経過した後、活性成分の100%が放出された。
【0077】
実施例4
【表7】

【表8】

【0078】
XRD分析は、結晶質活性成分画分を全く示さなかった。
【0079】
515mgのペレット剤からの活性成分の放出は、700mLの0.1規定HClの中でUSP装置2で実施した。30分経過した後、活性成分の100%が放出された。
【0080】
実施例5
【表9】

【表10】

【0081】
XRD分析は、結晶質活性成分画分を全く示さなかった。
【0082】
300mgのペレット剤からの活性成分の放出は、700mLの0.1規定HClの中でUSP装置2で実施した。30分経過した後、活性成分の100%が放出された。
【0083】
実施例6
【表11】

【表12】

【0084】
XRD分析は、結晶質活性成分画分を全く示さなかった。
【0085】
420mgのペレット剤からの活性成分の放出は、700mLの0.1規定HClの中でUSP装置2で実施した。60分経過した後、活性成分の100%が放出された。
【0086】
実施例7
【表13】

【表14】

【0087】
XRD分析は、結晶質活性成分画分を全く示さなかった。
【0088】
600mgのペレット剤からの活性成分の放出は、700mLの0.1規定HClの中でUSP装置2で実施した。60分経過した後、活性成分の100%が放出された。
【0089】
実施例8
【表15】

【表16】

【0090】
XRD分析は、結晶質活性成分画分を全く示さなかった。
【0091】
600mgの顆粒剤からの活性成分の放出は、700mLの0.1規定HClの中でUSP装置2で実施した。60分経過した後、活性成分の100%が放出された。
【0092】
実施例9
【表17】

【表18】

【0093】
XRD分析は、結晶質活性成分画分を全く示さなかった。
【0094】
400mgの顆粒剤からの活性成分の放出は、700mLの0.1規定HClの中でUSP装置2で実施した。60分経過した後、活性成分の85%が放出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に難溶性の活性成分の製剤であって、活性成分含有コーティングが施されている担体粒子を含み、該難溶性活性成分が両親媒性コポリマーを含むコーティングの中に埋め込まれており、及び、該コーティングが溶媒を含まない融解物の形態で適用されている、前記製剤。
【請求項2】
(i) 30〜80重量%のN-ビニルラクタム;
(ii) 10〜50重量%の酢酸ビニル;及び、
(iii) 10〜50重量%のポリエーテル;
の混合物(但し、(i)、(ii)及び(iii)の合計は100重量%である)のフリーラジカル的に開始される重合によって得られる両親媒性コポリマーを使用する、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記コポリマーが、
(i) 30〜70重量%のN-ビニルラクタム;
(ii) 15〜35重量%の酢酸ビニル;及び、
(iii) 10〜35重量%のポリエーテル;
から得られる、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項4】
前記コポリマーが、
(i) 40〜60重量%のN-ビニルラクタム;
(ii) 15〜35重量%の酢酸ビニル;及び、
(iii) 10〜30重量%のポリエーテル;
から得られる、請求項1〜3のいずれかに記載の製剤。
【請求項5】
前記コポリマーが、
(i) 50〜60重量%のN-ビニルラクタム;
(ii) 25〜35重量%の酢酸ビニル;及び、
(iii) 10〜20重量%のポリエーテル;
から得られる、請求項1〜4のいずれかに記載の製剤。
【請求項6】
使用される前記担体粒子が、医薬品用賦形剤を含むペレットである、請求項1〜5のいずれかに記載の製剤。
【請求項7】
前記担体粒子が、スクロース、カラギーナン、澱粉、ラクトース又は微結晶性セルロースを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の製剤。
【請求項8】
前記担体粒子が、100〜2000μmの粒径を有している、請求項1〜7のいずれかに記載の製剤。
【請求項9】
使用される前記担体粒子が、活性成分と両親媒性ポリマーからなる粒子である、請求項1〜5のいずれかに記載の製剤。
【請求項10】
前記コーティングが、さらに、医薬品用賦形剤を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の製剤。
【請求項11】
前記コーティングが、20〜99重量%の両親媒性ポリマーを含む、請求項1〜10のいずれかに記載の製剤。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の製剤を製造する方法であって、1種類以上の活性成分と両親媒性コポリマーを含む融解物を担体粒子を含む流動床の上に適用することによって前記製剤を製造することを含む、前記方法。
【請求項13】
前記融解物を、噴霧によって適用する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記融解物が、30〜260℃の温度で得られる、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記融解物が、溶媒を含まない、請求項12〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記融解物の溶媒の含有量が、5000ppm未満である、請求項12〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜11のいずれかに記載の製剤を含む、投与形態。
【請求項18】
錠剤、カプセル剤又はサッシェ剤の形態にある、請求項17に記載の投与形態。

【公表番号】特表2013−521249(P2013−521249A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555398(P2012−555398)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【国際出願番号】PCT/EP2011/053012
【国際公開番号】WO2011/107466
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】