説明

融雪装置および融雪方法

【課題】 地下水を利用して効率良く融雪を行うことができ、構造が簡易な、融雪装置および融雪方法を提供する。
【解決手段】 揚水ポンプ13等と接続される配管16は、融雪槽5の下方に設けられたタンク23に接続される。タンク23の上面には複数の散水管25が接続される。散水管25は、内部に地下水等の水が流れ、融雪槽内に散水するための管状部材であり、例えば鋼管の上端が閉じられた形状である。したがって、揚水ポンプ13からの地下水等はタンク23へ送水され、タンク23から各散水管25へ流れる。散水管25は上方に向けて起立している。また、散水管25には複数のノズル29が設けられる。ノズル29は、例えば散水管25に設けられた孔であり、散水管25から水が散水される部位である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下水を雪に散水して雪を溶かす、融雪装置および融雪方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、豪雪地帯等においては、積雪時に除雪車によって道路が除雪される。道路脇等に除雪された雪は、地域に設置された所定の雪堆積場にトラック等により運搬され、集められる。
【0003】
しかし、早朝に降雪があった場合には、除雪車が通勤ラッシュとぶつかるため、除雪作業が進まない。また、主要幹線道路の除雪が優先されるため、住宅街の除雪は後回しとなり、住宅街の除雪が進まないという問題があった。
【0004】
また、雪堆積場の設置には限界があり、郊外に設けられた雪堆積場までの雪の運搬には、コストがかかり、また、輸送時の排気ガス等による環境汚染や交通渋滞等の問題がある。
【0005】
また、道路脇に除雪された雪が残されたまま、トラック等による排雪がなされない状態では、道路の見通しが悪く、交通事故などの招く恐れがある。
【0006】
したがって、除雪された雪は、除雪された場所からできるだけ近い位置で、確実に融雪されることが望ましい。
【0007】
このような除雪された雪を融雪する装置としては、地下水をくみ上げて、地下に埋設された融雪槽内の雪上に散水して融雪する融雪装置がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−339904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に記載の地下埋設式融雪装置は、地下水を利用するため、熱源などは必要なく、構造は簡易であるが、上方からシャワーを散水するのみであるので融雪効率はそれほど高くない。また、雪を細かくしたり雪を一度受け止めるための金網や、格子状の中蓋などは、一度に多くの雪を投入した際には雪が堆積するため、投入した雪が溶けるまで次の雪の投入を待つ必要があるという問題がある。
【0010】
また、除雪された雪は、通常押し固められた状態である場合が多く、格子状の中蓋上へ投入した場合には、雪が中蓋によっては簡単には分断されないという問題がある。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、地下水を利用して効率良く融雪を行うことができ、構造が簡易な、融雪装置および融雪方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、地下水によって雪を溶かす融雪装置であって、地下水をくみ上げる第1のポンプと、前記第1のポンプによって揚水された地下水を散水して雪を溶かす融雪槽と、前記融雪槽から流出した水を地下に浸透させる浸透槽と、を具備し、前記融雪槽の内部には、前記第1のポンプと接続されて上方に起立する複数の散水管が設けられ、前記散水管から前記地下水を散水することを特徴とする融雪装置である。
【0013】
前記融雪槽と前記浸透槽との間には、蓄熱槽が設けられ、前記蓄熱槽は、前記融雪槽からの水を所定水位まで貯留可能であり、前記蓄熱槽で貯留された水の一部を汲みだすことが可能な第2のポンプが設けられ、前記第2のポンプによって汲みだされた水は、前記地下水ととともに前記散水管に送水可能であることが望ましい。
【0014】
前記蓄熱槽で貯留された水の一部を汲みだすことが可能な第3のポンプが更に設けられ、前記第3のポンプによって汲みだされた水は、中水として利用しても良いが、排水溝に排出することもできる。このようにすることにより、雪を融解した水を有効利用することもできるし、融解速度が浸透速度を超え、蓄熱槽のバッファ効果でも融解した水の増加を抑えることができない場合には、融解した水を排水溝に排出することにより、融雪装置の融解速度と浸透速度のバランスが崩れた部分を補償することができる。ここで、第3のポンプは、蓄熱槽に設置されるものとしたが、浸透槽に設けて、浸透槽に同様の機能を持たせても良い。また、第3のポンプによる水を利用して前記散水管を振動させることが可能な振動手段が設けられてもよい。
【0015】
前記散水管の外面には、前記散水管の外方に向けて羽が設けられてもよく、または、前記散水管の外面には、前記散水管の軸方向に螺旋状の羽が設けられてもよい。複数の前記散水管の内、少なくとも一部が回転可能な回転手段を有してもよい。
【0016】
第1の発明によれば、融雪槽内に上方に起立する複数の散水管が設けられるため、融雪槽に投入された雪は、散水管によって一部が砕雪(分断)され、また、一部は散水管に突き刺さるような状態となる。このため、散水される水と投入された雪との接触面積が増大し、効率良く融雪することができる。
【0017】
また、散水管内には融雪可能な温度の水が流れているため、散水管表面温度が上昇し、これと接触する雪は容易に融雪されるため、投入された雪が仮に散水管に突き刺さった状態で留まっても、直ちに散水管との接触部が融解し、雪は融雪槽内の下方まで到達する。また、散水管が上方に向いているため、雪が大量に投入された場合であっても、その重量によって、雪塊は散水管で砕雪等されながら融雪槽下方に送り込まれる。したがって、融雪槽の上方で雪が堆積することがない。
【0018】
また、蓄熱槽が設けられれば、融雪槽から流出したシャーベット状の雪を含む水が一旦貯留される。一方、融雪槽から流出した水は、雪を溶かすことが可能な水温を有している。このため、蓄熱槽内で確実に溶け残った雪を溶かすことができる。
【0019】
また、蓄熱槽に貯留された水の一部をポンプによって散水管に送水することで、地下水の揚水量を抑えることができるとともに、融雪可能な水温である水を循環させることで、効率良く融雪を行うことができる。
【0020】
なお、蓄熱槽に貯留された水の一部を汲みだすとは、直接蓄熱槽内の水を汲みだす場合のみではなく、蓄熱槽と隣接し、蓄熱槽内と略同一の水位を有する例えばピット内の水を汲みだす場合も含む。この場合、ピットと蓄熱槽とは別の槽ではあるが、蓄熱槽とピットとが直接つながっており、ピット内の水をくみ上げることで、実質的に蓄熱槽内の水を汲みだすのと同じ効果を得ることができる
【0021】
また、蓄熱槽で貯留された水の一部を中水として利用すれば、より有効に水を活用することができる。
【0022】
また、散水管を振動させれば、融雪槽に投入された雪塊をより効率良く砕雪することができる。また、散水管の外周に羽を設けることで、砕雪効果を更に高めることができ、また、散水管の外周に螺旋状の羽を設け、さらに当該散水管を回転させることで、より高い砕雪効果および雪を融雪槽下方に送り込む効果を得ることができる。
【0023】
第2の発明は、地下水によって雪を溶かす融雪方法であって、第1のポンプと、前記第1のポンプと接続された融雪槽と、前記融雪槽と接続された蓄熱槽と、前記蓄熱槽で貯留された水の一部を汲みだし可能な第2のポンプと、前記蓄熱槽から流出した水が流入する浸透槽と、を具備する融雪装置を用い、前記第1のポンプにより地下水を揚水するとともに、前記第2のポンプで蓄熱槽に貯留された水の一部を汲み上げ、前記第1および第2のポンプにより、前記融雪槽内で上方に起立する複数の散水管から雪に散水して、前記融雪槽内の雪を溶かし、前記融雪槽から流出した水および雪の一部を前記蓄熱槽で貯留して完全に雪を溶かし、前記蓄熱槽から流出した水を前記浸透槽で地下に浸透させることを特徴とする融雪方法である。
【0024】
第2の発明によれば、融雪槽内に上方に起立する複数の散水管が設けられるため、融雪槽に投入された雪は、散水管によって一部が砕雪され、また、一部は散水管に突き刺さるような状態となり効率良く融雪することができる。
【0025】
また、蓄熱槽が設けられるため、融雪槽から流出したシャーベット状の雪を完全に溶かすことができる。また、蓄熱槽に貯留された水の一部をポンプによって散水管に送水することで、地下水の揚水量を抑えることができるとともに、融雪可能な水温である水を循環させることで、効率良く融雪を行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、地下水を利用して効率良く融雪を行うことができ、構造が簡易な、融雪装置および融雪方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】融雪装置1の構成を示す概略図。
【図2】融雪槽5を示す図で、(a)は平面図、(b)は散水管25拡大図。
【図3】融雪槽5に雪を投入した状態を示す図。
【図4】蓄熱槽7およびピット9を示す図で、(a)は立面図、(b)は(a)のK部拡大図。
【図5】浸透槽11を示す図。
【図6】散水管51、散水管55を示す図。
【図7】起振器59が設けられた融雪槽5を示す図。
【図8】融雪装置70を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる融雪装置1を示す図である。
【0029】
融雪装置1は、主に融雪槽5、蓄熱槽7、ピット9、浸透槽11、揚水ポンプ13等から構成される。融雪槽5、蓄熱槽7、ピット9、浸透槽11等はそれぞれ地面21下の地下に設置される。
【0030】
揚水部3は、地下水をくみ上げるための例えば井戸であり、揚水ポンプ13が設置される。揚水ポンプ13は一般の水中ポンプで良い。揚水部(揚水ポンプ13)の深さは、地下水位よりも深く、かつ、地上の気温等に影響を大きく受けない地下水深さであることが望ましい。
【0031】
揚水ポンプ13の深さが浅すぎると、地下水位よりも揚水ポンプ13が上方に位置して地下水を揚水できず、また、地下水以下であっても、地上の外気の影響が大きいと、水温が低く、融雪効率が低下する。一方、揚水ポンプ13の深さが深すぎると、過剰なポンプ能力が必要となり、施工コストも大きくなる。望ましい揚水ポンプ13深さは、例えば50m〜200m程度が望ましい。この場合、例えば地下水温度は17℃程度であることが多い。
【0032】
融雪槽5は、雪を溶かすための槽である。揚水ポンプによって汲みあげられた地下水等は、融雪槽5内の散水管25によって散水され、融雪槽内の雪が溶かされる。融雪槽5の詳細は後述する。
【0033】
蓄熱槽7は、雪が溶けた後の水、融雪槽5内に散水された地下水、溶け残った一部の雪等を一旦貯留するための槽である。通常、融雪槽5内で散水された水は、完全に融雪に作用するわけではなく、その一部は比較的温度が高い状態で蓄熱槽7へ流出する。例えば、蓄熱槽7内の水温は平均的に3℃程度となる。したがって、蓄熱槽7は、溶け残った雪等を、蓄熱槽7内で貯留される間に、融雪槽5から流入した水によって完全に溶かすことができる。なお、蓄熱槽7の詳細は後述する。
【0034】
ピット9は、蓄熱槽7で貯留されている水の一部を汲みだすためのものである。前述の通り、蓄熱槽7内の水は、まだ十分に雪を溶かすことができる程度の温度を有する。また、溶かされた水や地下水は、中水等(浄化された上水ではなく、また、生活排水等の下水でもない水)として使用できる場合もある。したがって、ピット9内の循環ポンプ15や中水ポンプ17によって、ピット9内の水を活用することができる。
【0035】
たとえば、循環ポンプ15によって、ピット9内の水の一部を配管19を介して配管16内を流れる地下水と混合させることで、融雪槽5内に散水される水の一部として使用することができる。なお、ピット9は蓄熱槽7と一体化されてもよく、循環ポンプ15や中水ポンプ17を蓄熱槽7内に設置できれば、ピット9はなくても良い。
【0036】
浸透槽11は、不要な水を地下に浸透させるための槽である。ピット9(蓄熱槽7)から流出した水は浸透槽11に流入する。浸透槽11に流入した水は、浸透槽の下面などから地面へ浸透する。
【0037】
次に、図1を用いて、水の流れを説明する。揚水ポンプ13で汲みあげられた水は(図中矢印A方向)、配管16を通り、融雪槽5に送られる(図中矢印B方向)。この際、必要に応じてピット9から循環ポンプ15で汲みあげられた水が配管19を通り(図中矢印G方向)配管16で合流し、地下水とともに融雪槽5に送られる(図中矢印B方向)。
【0038】
融雪槽5内で散水管25によって散水された水は、融雪された水等とともに蓄熱槽7に流れ込む(図中矢印C方向)。蓄熱槽7内の水は隣接するピット9に流れ込む(図中矢印D方向)。ピット9内の水は、一部は前述のように循環ポンプ15で汲みだされ、また、一部は中水ポンプ17により地上にくみ上げられ(図中矢印H方向)、中水として利用される。ピット9より浸透槽11に流入した水は(図中矢印E方向)、浸透槽11内で地面に浸透する(図中矢印F方向)。以上により、融雪および融雪後の水が処理される。
【0039】
次に、各槽の詳細を説明する。図2は融雪槽5を示す図であり、図2(a)は、融雪槽5の平面概略図、図2(b)は散水管25を示す図である。なお、図2(a)においては、後述するシュータ35の図示を省略する。
【0040】
揚水ポンプ13等と接続される配管16は、融雪槽5の下方に設けられたタンク23に接続される。タンク23の上面には複数の散水管25が接続される。散水管25は、内部に地下水等の水が流れ、融雪槽5内に散水するための管状部材であり、例えば鋼管の上端が閉じられた形状である。したがって、揚水ポンプ13からの地下水等はタンク23へ送水され、タンク23から各散水管25へ流れる。
【0041】
図1に示すように、散水管25は上方に向けて起立している。また、図2(b)に示すように、散水管25には複数のノズル29が設けられる。ノズル29は、例えば散水管25に設けられた孔であり、散水管25から水が散水される部位である。
【0042】
ノズル29は、散水管25に所定の間隔をあけて複数設けられる。また、ノズル29の向きは、1方向だけでなく、複数方向であってもよい。また、ノズル29の向きや配置を散水管25毎に変えてもよい。なお、ノズル29は、散水管25の上方(例えば散水管25の上半分位置)に設けることが望ましい。
【0043】
図3は、融雪槽5に雪を投入した際の状態を示す図である。図3(a)に示すように、融雪槽5の上方は、通常、蓋33で閉じられている。雪31を投入する際には、まず蓋33が開けられる。
【0044】
次いで、図3(b)に示すように、雪31が融雪槽5内に落とされる。通常、除雪後の雪は固められており、塊状の雪となっている場合が多い。しかし、上方に起立した複数の散水管25上へ落とされた雪31は、散水管25によって一部は砕かれて細かく分断される。また、完全に分断されない雪31も散水管25に突き刺さるように融雪槽5内を落下する。
【0045】
なお、図3(b)では、雪31が散水管25に突き刺さり、雪31が散水管25の途中で止まっている状態であるが、通常は、散水管25内を流れる地下水等の温度で、散水管25との接触部の雪31は即座に溶かされ、また、散水管25からの散水された水の一部が散水管25を伝って雪31を溶かし、雪31は速やかに融雪槽5の下方に落ちる。さらに下方に落ちた雪の上方から、散水管25に設けられたノズルによって散水され、融雪槽5内の融雪が進行する。
【0046】
融雪槽5の下方には、隣接する蓄熱槽7へ接続する配管27が設けられる。また、配管27方向へ傾斜するシュータ35が設けられる。シュータ35は、融雪後の水や、散水された水、さらにシャーベット状または小片状の雪などを、配管27を介して隣接する蓄熱槽7へスムーズに流すための板状部材である。したがって、散水管25はシュータ35を貫通するように設けられる。
【0047】
以上のようにして、融雪槽5内に投入された雪31が溶かされて、溶けた水や溶け残った雪等が次工程である蓄熱槽7へ送られる。なお、融雪槽5の外面には、図示を省略した断熱層が設けられることが望ましい。
【0048】
次に蓄熱槽7について説明する。図4は蓄熱槽7およびピット9を示す図であり、図4(a)は立面図、図4(b)は図4(a)のK部拡大図である。蓄熱槽7には、融雪槽5からの水等が流れる配管27が設けられる。また、蓄熱槽7内には、複数の樹脂ブロック37が上方まで積み上げられて設けられる。なお、図においては、下方2段および最上段のみの樹脂ブロック37を記載し、他段の樹脂ブロック37は図示を省略する。樹脂ブロック37は水が流れる空間を確保する。蓄熱槽内に貯留される水は、蓄熱槽7内の樹脂ブロック37により形成された貯留空間をゆっくりと流れ、この際に温度等が均一化される。また、融雪槽5から流入した水に含まれる雪は、樹脂製ブロック37の間を流れながら完全に融解される。ここで、樹脂ブロック37は、蓄熱槽7の側壁の周りの土砂の圧力(土圧)や蓄熱槽上面に被覆される土砂やアスファルト等の舗装面の圧力に耐えるように構成するのが望ましい。また、図4(b)に示すように、蓄熱槽7の上面は断熱のため、地面に露出するのではなく、上蓋38上を土砂44で被覆することが望ましい。この場合、蓄熱槽7内の点検を行うための点検口40を設けておくことが望ましい。点検口40は、定期的な槽内の点検等を行うための作業用ピットである。点検口40を設ける場合、点検口40に該当する部位には、上下方向に連通するように樹脂ブロック37が配置されておらず、点検口40と樹脂ブロック37との仕切りには、着脱式の仕切り板や透明な仕切り板などによる仕切り壁46が設けられる。上蓋38には、点検口40に該当する位置に孔が設けられ、孔の上方には開閉可能な蓋42が設けられる。蓋42は土砂44と略同厚みであり、土砂44の上面は平になる。また、必要に応じて、蓄熱槽7の上面と土砂などで形成される被覆層の間または蓄熱槽7側面の外周には、例えば樹脂製の断熱材などを敷き詰めることができるが、このようにすれば、さらに断熱性が向上する。
【0049】
蓄熱槽7の下方には、隣接するピット9と接続するための配管39が設けられる。ピット9には、さらに隣接する浸透槽11と接続するための配管43が設けられる。配管27と配管43は、所定高さ位置に設けられる。一方、配管39は配管27、配管43よりも低い位置に設けられる。したがって、例えば配管27と配管43とが同じ高さであれば、配管27、配管43の高さまで水が貯留される。
【0050】
ピット9は配管39よりも深い。したがって、ピット9内には常に水が貯留されており、循環ポンプ15、中水ポンプ17は、ピット9内の水を必要に応じて汲みだすことができる。たとえば、蓄熱槽7の水温が所定温度以上の場合や、融雪槽5内の雪量に応じて循環ポンプ15を運転することもできる。
【0051】
なお、前述の通り、ピット9を蓄熱槽7と一体化することもでき、蓄熱槽7内にポンプを配置することもできる。この場合、配管27および蓄熱槽7から流出するための配管(配管39)の高さを、蓄熱槽7の貯留水位に対応する高さとすればよい。
【0052】
なお、蓄熱槽7の外周は図示を省略した断熱材が設けられる。断熱材としては、例えばポリスチレンの発泡体などが使用できる。
【0053】
次に、浸透槽11について説明する。図5は蓄熱槽11を示す図である。ピット9(蓄熱槽7)の水位が配管43よりも高くなると、ピット9内の水がオーバーフローし、配管43から浸透槽11内へ流入する。浸透槽11内には、複数の樹脂ブロック45が設けられる。樹脂ブロック45は水が流れる空間を確保する。
ここで、樹脂ブロック45は、浸透槽11の側壁の周りの土砂の圧力(土圧)や蓄熱槽11上面に被覆される土砂やアスファルト等の舗装面の圧力に耐えるように構成するのが望ましい。また、蓄熱槽7と同様に、浸透槽11の上面は断熱のため、地面に露出するのではなく、土砂で被覆することができる。この場合、蓄熱槽7と同様に、仕切り壁48等により点検口49を設けることが望ましい。また、必要に応じて、浸透槽11の上面と土砂などで形成される被覆層の間または浸透槽11側面の外周には、例えば樹脂製の断熱材などを敷き詰めることができるが、このようにすれば、さらに断熱性が向上する。
【0054】
浸透槽11の下方は透水シートが設けられる。したがって、浸透槽11からは水が地面に浸透する。
【0055】
以上説明したように、本発明の実施形態にかかる融雪装置1によれば、融雪槽5内に上方に起立する複数の散水管25が設けられるため、融雪槽5に投入された雪を、散水管25によって分断することができる。また、散水管25に突き刺さるような状態となった雪に対しても、効率良く雪を溶かすことができる。さらに、散水管25との接触部の雪は速やかに融解されるため、雪が融雪槽5内の上方に堆積することもなく速やかに下方に落とすことができる。
【0056】
また、蓄熱槽7が設けられるため、融雪槽5から流出した溶け残った雪が蓄熱槽7内で貯留され、その際に蓄熱槽7内の水と十分に接触する時間が確保されるため、確実に雪を溶かすことができる。
【0057】
また、ピット9(蓄熱槽7)に貯留された水の一部をポンプによって散水管25に送水し、地下水と混合して使用できるため、地下水の揚水量を抑えることができる。このため、十分な水量を確保でき、効率良く融雪を行うことができる。
【0058】
また、ピット9(蓄熱槽7)で貯留された水の一部を中水として利用するか排水として排水溝に流すことができるため、より有効に水を活用したりすることができる。このような融雪装置1を地域の所定箇所に複数設けることで、除雪された雪の運搬等の問題を解消することができる。
【0059】
次に、その他の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態において、図1〜図5に示す融雪装置1等と同一の機能を果たす構成要素には、図1〜図5と同一番号を付し、重複した説明を避ける。
【0060】
図6は、散水管の別の実施形態を示す図である。融雪装置1に設けられる散水管25に代えて、図6に示すような散水管51、55を使用することもできる。
【0061】
図6(a)に示すように、散水管51は散水管25に対して、外方に羽53が設けられる点で異なる。羽53は、散水管51の外面から外方に向けて複数設けられる。なお、図6(a)に示す例では4枚の羽が散水管51を中心に放射状に設けられるが、羽53の枚数はこれに限られない。また、羽53は、散水管51の長手方向全長に亘って設けられてもよいが、例えば散水管51の上方のみなど部分的に設けてもよい。
【0062】
羽53は例えば鋼製であり、散水管51には溶接等で接合される。羽53は、上方から投入された雪を効率良く分断するための刃としての機能と、散水管51が雪の重み等で湾曲しないようにするための補強としての機能を有する。
【0063】
図6(b)に示す散水管55は、散水管55の外周に散水管55の軸方向に対して螺旋状に螺旋羽57が設けられる。螺旋羽57は例えば鋼製であり、散水管55には溶接等で接合される。螺旋羽57も羽53と同様に上方から投入された雪を分断する際ための刃としての機能と、雪の重み等で散水管55が湾曲しないようにするための補強としての機能を有する。
【0064】
散水管51、55は、さらに、回転させることもできる。例えば、タンク23との接合部に回転部を設け、散水管55を螺旋羽57とともに回転させれば、雪を強制的に下方に押し込む効果が得られる。
【0065】
なお、融雪槽5内の散水管25を必ずしも全て散水管51、55等へ置き換える必要はない。例えば、融雪槽5内の中心の散水管のみを散水管55として、他の散水管は通常の散水管25等とすることもできる。この場合、中央の散水管55のみ他の散水管に対してやや太径として、さらに、散水管55のみを回転させることもできる。
【0066】
図7は、別の実施形態にかかる融雪槽5を示す図である。本実施形態における融雪槽5内に設けられるタンク23には、起振器59が設けられる。起振器59は、タンク23に対して、例えば水平方向に振動を与えることができる。タンク23に伝達された振動は、タンク23と接合される散水管25に伝達され、散水管25は所定の周波数で振動する。このため、散水管25による雪の分断能力を増加することができる。
【0067】
なお、散水管25に加えられる振動の周波数は特定されない。また、非常に低い周波数(振動というよりも揺れ)であってもよい。この場合、起振器59ではなく、その他の機械的手段等を用いて散水管25を揺らして、雪の分断等の促進を行うこともでき、振動付与手段としてはいかなるものも用いることができる。なお、例えば、散水管25を振動させる場合には、シュータ35を貫通する散水管25とシュータ35との隙間には、散水管25の振動(変位)を許容するだけのゴムなどの弾性体のシール等を設けておけばよいが、散水管25とシュータ35との隙間のシール機構は、散水管の振動を妨げない限り、どのような構成としても良い。
【0068】
図8は、さらに別の実施形態にかかる融雪装置70を示す図である。融雪装置70は、融雪装置1と略同一の構成であるが、配管等の構成が異なる。
【0069】
融雪装置70は融雪装置1に対して、さらに配管71、73が設けられる。配管71は、配管16及び蓄熱槽7を接続し、蓄熱槽7に送水するための配管である(図中矢印J方向)。前述の通り、蓄熱槽7内の水温がある程度ないと、溶け残った雪等がなかなか解けず、蓄熱槽7等に雪が堆積する恐れがある。したがって、必要に応じて水温の高い地下水を蓄熱槽7に追加し、蓄熱槽7内の水温が低くなり過ぎないようにすることができる。
【0070】
配管73は、配管16と融雪槽5とを接続し、融雪槽5内のシュータ35の上端近傍に散水するためのものである。融雪槽5内に投入された雪は、散水管25等により砕かれて、融雪槽5の下方に設けられたシュータ35上に達する。したがって、シュータ35上に堆積する雪を速やかに融解して、蓄熱槽7へ送り込む必要がある。このため、シュータ35の上方より水を流し、シュータ35上の雪を溶かしつつ蓄熱槽7側へ水を送りこむ。
【0071】
なお、配管71、73は配管16と接続したが、配管19と接続してもよい。また、各配管に弁を設け、各配管を流れる水の流れを制御してもよい。
【0072】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0073】
例えば、一つの融雪槽5に対して、複数の蓄熱槽を併設することもできる。この場合、中水ポンプ17と循環ポンプ15とを別々に設置することもできる。また、融雪槽5が十分な融雪能力を有するのであれば、融雪槽5と浸透槽11とを直接接続することもできる。
【符号の説明】
【0074】
1、70………融雪装置
3………揚水部
5………融雪槽
7………蓄熱槽
9………ピット
11………浸透槽
13………揚水ポンプ
15………循環ポンプ
16………配管
17………中水ポンプ
19………配管
21………図面
23………タンク
25………散水管
27………配管
29………ノズル
31………雪
33………蓋
35………シュータ
37、45………樹脂ブロック
38………上蓋
39、41、43………配管
40、49………点検口
42………蓋
44………土砂
46、48………仕切り壁
51、55………散水管
53………羽
57………螺旋羽
59………起振器
71、73………配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下水によって雪を溶かす融雪装置であって、
地下水をくみ上げる第1のポンプと、
前記第1のポンプによって揚水された地下水を散水して雪を溶かす融雪槽と、
前記融雪槽から流出した水を地下に浸透させる浸透槽と、
を具備し、
前記融雪槽の内部には、前記第1のポンプと接続されて上方に起立する複数の散水管が設けられ、前記散水管から前記地下水を散水することを特徴とする融雪装置。
【請求項2】
前記融雪槽と前記浸透槽との間には、蓄熱槽が設けられ、
前記蓄熱槽は、前記融雪槽からの水を所定水位まで貯留可能であり、
前記蓄熱槽で貯留された水の一部を汲みだすことが可能な第2のポンプが設けられ、前記第2のポンプによって汲みだされた水は、前記地下水ととともに前記散水管に送水可能であることを特徴とする請求項1記載の融雪装置。
【請求項3】
前記蓄熱槽で貯留された水の一部を汲みだすことが可能な第3のポンプが更に設けられ、
前記第3のポンプによって汲みだされた水は、排水溝に流すか、或いは中水として利用することを特徴とする請求項2記載の融雪装置。
【請求項4】
前記散水管を振動させることが可能な振動手段が設けられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の融雪装置。
【請求項5】
前記散水管の外面には、前記散水管の外方に向けて羽が設けられることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の融雪装置。
【請求項6】
前記散水管の外面には、前記散水管の軸方向に螺旋状の羽が設けられることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の融雪装置。
【請求項7】
複数の前記散水管の内、少なくとも一部が回転可能な回転手段を有することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の融雪装置。
【請求項8】
地下水によって雪を溶かす融雪方法であって、
第1のポンプと、前記第1のポンプと接続された融雪槽と、前記融雪槽と接続された蓄熱槽と、前記蓄熱槽で貯留された水の一部を汲みだし可能な第2のポンプと、前記蓄熱槽から流出した水が流入する浸透槽と、を具備する融雪装置を用い、
前記第1のポンプにより地下水を揚水するとともに、前記第2のポンプで蓄熱槽に貯留された水の一部を汲み上げ、
前記第1および第2のポンプにより、前記融雪槽内で上方に起立する複数の散水管から雪に散水して、前記融雪槽内の雪を溶かし、
前記融雪槽から流出した水および雪の一部を前記蓄熱槽で貯留して完全に雪を溶かし、
前記蓄熱槽から流出した水を前記浸透槽で地下に浸透させることを特徴とする融雪方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−159574(P2010−159574A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2190(P2009−2190)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(394022794)古河総合設備株式会社 (8)
【Fターム(参考)】