螺旋管の補強用部材
【課題】ストリップを螺旋状に巻回しても、補強材の長手方向の端部がストリップから外れてしまうことがなく、ストリップに適切に取り付けることができる螺旋管の補強用部材を提供する。
【解決手段】螺旋管の補強用部材10は、老朽化した下水管200を更生する螺旋管100を補強し、螺旋状に巻回される帯状のストリップ12に取付けられる。補強用部材は、補強材52と接続部材54とを備え、互いに隣接する補強材どうしは、それぞれの長手方向の端部に挿入される接続部材によって接続される。補強材の長手方向の端部の向きが接続部材によって規制されて、この端部が隣接している補強材の方向へ向くように曲げ変形される。補強材の端部を曲げ変形させたときに生じる位置ずれが、補強材と接続部材との挿入代に吸収されるため、補強材から接続部材が抜け出てしまうこともない。補強材の長手方向の端部をストリップの曲線部に沿って滑らかに曲げることができる。
【解決手段】螺旋管の補強用部材10は、老朽化した下水管200を更生する螺旋管100を補強し、螺旋状に巻回される帯状のストリップ12に取付けられる。補強用部材は、補強材52と接続部材54とを備え、互いに隣接する補強材どうしは、それぞれの長手方向の端部に挿入される接続部材によって接続される。補強材の長手方向の端部の向きが接続部材によって規制されて、この端部が隣接している補強材の方向へ向くように曲げ変形される。補強材の端部を曲げ変形させたときに生じる位置ずれが、補強材と接続部材との挿入代に吸収されるため、補強材から接続部材が抜け出てしまうこともない。補強材の長手方向の端部をストリップの曲線部に沿って滑らかに曲げることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、螺旋管の補強用部材に関し、特にたとえば、帯状のストリップを管の内面に沿って螺旋状に巻回して形成する螺旋管を補強するために用いる、螺旋管の補強用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、帯状のストリップを下水管の内面に沿って螺旋状に巻回することによって、螺旋管を形成する技術が公知である。このような螺旋管では、螺旋管の天井部分の垂れ下がり等が生じる場合があるので、必要に応じて螺旋管の剛性を高めることがある。
【0003】
たとえば、特許文献1のチューブ(螺旋管)では、ストリップに直立リブが形成されており、たとえばリブどうしの間に補強部材が取り付けられる。そして、この補強部材によって、チューブの剛性が高められる。
【特許文献1】特公平7−80238号[B29C 53/78]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、長尺のストリップに取り付ける補強用部材は、その剛性を確保するために、2〜2.5mの長さの鋼材を連続的に並べることによって用いられる。しかしながら、螺旋状に巻回されるストリップの曲げに対して鋼材の剛性が作用するため、鋼材と鋼材との継目の部分において、鋼材の端部をストリップの曲線部に沿って曲げることが困難である。この問題は、特許文献1に開示された螺旋管においても例外ではない。特許文献1の技術では、補強部材の端部がストリップの曲線部に沿って曲がらずに、この端部が部分的にストリップから外れてしまうということがあった。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、螺旋管の補強用部材を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、ストリップに適切に取り付けることができる、螺旋管の補強用部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0008】
第1の発明は、帯状のストリップを管の内面に沿って螺旋状に巻回して形成する螺旋管の補強用部材において、ストリップに取り付けられる補強材を含み、互いに隣接する補強材の長手方向の端部のそれぞれに接続部材を挿入することによって補強材どうしを接続したことを特徴とする、螺旋管の補強用部材である。
【0009】
第1の発明では、螺旋管の補強用部材(10)は、たとえば老朽化した下水管(200)を更生する螺旋管(100)を補強するためのものであり、下水管の内面(200a)に沿って螺旋状に巻回される帯状のストリップ(12)に取り付けられる。螺旋管の補強用部材は、補強材(52)と接続部材(54)とを備えており、互いに隣接する補強材どうしは、それぞれの長手方向の端部に挿入される接続部材によって接続される。このため、補強材の長手方向の端部の向きが接続部材によって規制されて、この端部が隣接している補強材の方向へ向くように曲げ変形される。また、補強材の端部を曲げ変形させたときに生じる位置ずれが、補強材と接続部材との挿入しろに吸収されるため、補強材から接続部材が抜け出てしまうこともない。
【0010】
第1の発明によれば、ストリップを螺旋状に巻回しても、補強材の長手方向の端部をストリップの曲線部に沿って滑らかに曲げることができる。したがって、補強材の長手方向の端部がストリップから外れてしまうことがなく、螺旋管の補強用部材をストリップに適切に取り付けることができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明に従属し、補強材および接続部材の少なくともいずれか一方に形成される易変曲部を備える。
【0012】
第2の発明では、たとえば、補強用部材(10)の補強材(52)ないし接続部材(54)には、易変曲部(62,64,74)が形成される。
【0013】
第2の発明によれば、補強用部材を一定以上の強度に保ったまま、簡単に曲げ変形させることができる。
【0014】
第3の発明は、第2の発明に従属し、易変曲部は、補強材に接続部材が挿入されたときに補強材と接続部材とが重なり合う範囲に形成される。
【0015】
第3の発明では、易変曲部(62,64,74)は、補強材(52)に接続部材(54)が挿入されたときに補強材と接続部材とが重なり合う範囲に形成される。たとえば、補強材の長手方向の端部では、補強材の底板部(56)と当該補強材に挿入された接続部材の底板部(66)とが重なり合うとともに、補強材の側板部(58)と接続部材の側板部(68)とが重なり合うため、その分だけストリップ(12)の曲げの力に対する剛性が高くなり、ストリップの曲線部に沿って曲げることが困難となるが、補強材と接続部材とが重なり合う範囲に易変曲部を形成することで、補強材の長手方向の端部をより簡単に曲げ変形させることができる。
【0016】
第4の発明は、第2または3の発明に従属し、易変曲部は、スリットである。
【0017】
第4の発明では、易変曲部は、スリット(62,64,74)である。実施例では、補強材(52)の端部の天板部(60)にスリット(62)形成されるとともに、補強材の端部の側板部(58)にスリット(64)が形成される。また、他の実施例では、接続部材(54)の端部の側板部(68)にスリット(74)が形成される。
【0018】
第5の発明は、第4の発明に従属し、スリットの占める開口率が補強材および接続部材のいずれか一方の端部側へ向かうにつれて大きく設定される。
【0019】
第5の発明では、スリット(62,64,74)の占める開口率が補強材(52)ないし接続部材(54)の端部側へ向かうにつれて大きく設定される。実施例では、補強材の側板部(58)には、所定の間隔を隔てて3つのスリット(64)が形成されており、この3つのスリットの面積が、補強材の端部側に向かうにつれて順々に大きく設定される。
【0020】
第5の発明によれば、補強用部材(10)の剛性が不連続になってしまうのを防止することができる。
【0021】
第6の発明は、第1ないし5の発明に従属し、補強材に対する接続部材の動きを規制する突出部を備える。
【0022】
第6の発明では、補強材(52)ないし接続部材(54)には、突出部(70,72)が設けられる。実施例では、接続部材の底板部(66)の一部分を窪み状に下向きに曲げ加工することによって突出部(70)が形成される。また、他の実施例では、補強材の底板部(56)の一部分を突起状に上向きに曲げ加工することによって突出部(72)が形成される。このため、たとえば補強材に挿入した接続部材がさらに挿入方向に移動しても、補強材の長手方向の端部と接続部材の突出部とが衝突することによって、補強材に対する接続部材の動きが規制される。
【0023】
第6の発明によれば、接続部材が補強材の内部に完全にはいってしまうこともなく、作業性が向上する。
【0024】
第7の発明は、帯状のストリップを螺旋状に巻回して形成する螺旋管の補強用部材において、ストリップに取り付けられる補強材、および補強材の一方端部に形成されるかつ当該補強材の他方端部に挿入可能な差口形状を有する接続部を含み、隣接する一方の補強材の接続部を他方の補強材の他方端部に挿入することによって補強材どうしを接続したことを特徴とする、螺旋管の補強用部材である。
【0025】
第7の発明では、補強材(52)の一方端部には、当該補強材の他方端部に挿入可能な差口形状を有する接続部が形成される。そして、互いに隣接する補強材どうしは、一方の補強材の接続部を他方の補強材の他方端部に挿入することによって接続される。このため、一方の補強材の接続部が隣接している他方の補強材の他方端部の方向へ向くように曲げ変形される。また、補強材の端部を曲げ変形させたときに生じる位置ずれが、一方の補強材と他方の補強材との挿入しろに吸収されるため、隣接している補強材どうしが抜け出してしまうこともない。
【0026】
第7の発明によれば、第1の発明と同様の効果を奏する。
【0027】
第8の発明は、第7の発明に従属し、接続部および補強材の他方端部の少なくともいずれか一方に形成される易変曲部を備える。
【0028】
第8の発明では、補強材(52)の端部には、易変曲部が形成される。つまり、補強材の一方端部すなわち接続部や、当該接続部が挿入される補強材の他方端部に、易変曲部が形成される。
【0029】
第8の発明によれば、第2の発明と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、補強材の長手方向の端部が隣接している補強材の方向へ向くように曲げ変形されるため、補強用部材をストリップの全長に亘って適切に取り付けることができる。
【0031】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の一実施例の螺旋管の補強用部材の使用状態を示す断面図である。
【図2】図1のストリップを示す断面図である。
【図3】図1のジョイナを示す断面図である。
【図4】図1のストリップとジョイナとを使用して下水管の内面に螺旋管を形成した状態を示す図解図である。
【図5】図1のストリップに螺旋管の補強用部材を取り付けた状態を示す断面図である。
【図6】図1の螺旋管の補強用部材を示す図解図である。
【図7】図6の補強材を示す平面図である。
【図8】図6の補強材の長手方向の端部を示す斜視図である。
【図9】図6の接続部材を示す平面図である。
【図10】図1の螺旋管の補強用部材において、補強材の長手方向の端部に接続部材を挿入した状態を示す図解図である。
【図11】この発明の他の一実施例の螺旋管の補強用部材の接続部材を示す斜視図である。
【図12】図11の螺旋管の補強用部材を示す図解図である。
【図13】この発明のさらに他の一実施例の螺旋管の補強用部材を示す図解図である。
【図14】この発明のさらに他の一実施例の螺旋管の補強用部材において、補強材の長手方向の端部に接続部材を挿入した状態を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1を参照して、この発明の一実施例である螺旋管の補強用部材(以下、単に「補強用部材」という。)10は、たとえば老朽化した下水管200を更生する螺旋管(内管)100を補強するためのものであり、下水管200の内面200aに沿って螺旋状に巻回される帯状のストリップ12に取り付けられる。
【0034】
なお、この実施例では、下水管200はヒューム管であるが、これに限定される必要はなく、ヒューム管以外のたとえば合成樹脂製管や金属製管の下水管にも適用することができる。
【0035】
先ず、螺旋管100について、後述するこの発明の理解に必要な範囲で、簡単に説明する。
【0036】
図1に示すように、螺旋管100は、下水管200の内面200aに沿って螺旋状に巻回したストリップ12の幅方向側縁どうしをジョイナ14で接合することによって形成される。
【0037】
図2に示すように、ストリップ12は、たとえば硬質塩化ビニル等のような合成樹脂の押出成形によって連続的に形成されるものであり、帯状の本体(ストリップ本体)16を含む。
【0038】
本体16の一方の面には、下水管200の内面200aに向かって突出する帯状のリブ18が形成されている。リブ18は、本体16の長手方向に沿ってその全長に亘って形成され、複数、この実施例では、3つのリブ18が、本体16の幅方向に所定の間隔を隔てて形成されている。後で詳細に説明するように、互いに隣接するリブ18の間には、補強用部材10が取り付けられる。
【0039】
リブ18の先端部には、アンカ部20,22が形成されている。アンカ部20,22は、第1アンカ部20と第2アンカ部22とを含み、この第1アンカ部20と第2アンカ部22とがリブ18の高さ方向に並んで形成されている。
【0040】
たとえば、第1アンカ部20は、リブ18の先端に形成され、下水管200に螺旋管100を形成した状態で下水管200の内面200aと接触する。第1アンカ部20は、リブ18の先端側で幅が大きく本体16側(始端側)で幅が小さい略台形状に形成され、その先端側の面の幅は、たとえば6mmである。
【0041】
また、たとえば、第2アンカ部22は、第1アンカ部20よりも始端側に形成され、その中央部がリブ18と結合している。第2アンカ部22は、断面略長方形状を有しており、その幅は、たとえば9mmである。
【0042】
アンカ部20,22は、全体として、リブ18の先端側へ向かうにつれて徐々に幅方向の長さが小さくなるテーパ状に形成されている。この理由は、たとえばリブ18とリブ18との間に補強用部材10を押し込む際に、リブ18をスムーズに左右に押し拡げることができるようにし、それによって、ストリップ12に補強用部材10を容易に取り付けるためである。
【0043】
ただし、この実施例における「内側」とは、ストリップ12(本体)中央側を意味し、「外側」とは、その反対側を意味する。
【0044】
本体16の幅方向の両側縁には、条溝24が形成されている。各条溝24は、本体16の長手方向に沿ってその全長に亘って形成され、本体16に近い第1壁26と本体16から遠い第2壁28とを備えている。
【0045】
第1壁26には、受部30が形成されている。受部30は、第1壁26から内側に向かう窪みであり、ストリップ12の第1係合部34とジョイナ14の第2係合部44とが係合した状態では、この受部30にジョイナ14の幅方向側縁が嵌め合わされる(図1参照)。
【0046】
また、第1壁26の内側面には、補強部32が形成されている。補強部32は、第1壁26および第2壁28の形状を安定させるためのものであり、たとえば、第1壁26の先端から内側へ延びて、第1壁26とこの第1壁26と最も近い(直近の)リブ18とを連結する。
【0047】
第2壁28の外側面には、第1係合部34が形成されている。第1係合部34は、後述するジョイナ14の第2係合部44と係合する部位であり、第2壁28の先端側へ向かうにつれて徐々に外側に突出するテーパ状に形成される。
【0048】
さらに、第2壁28の外側面には、当たり部36が形成されている。当たり部36は、第2壁28から外側に向けて突出し、ストリップ12の第1係合部34とジョイナ14の第2係合部44とが係合した状態では、この当たり部36とジョイナ14の第2突条42とが当接する(図1参照)。
【0049】
図3に示すように、ジョイナ10は、たとえば硬質塩化ビニル等のような合成樹脂の押出成形によって連続的に形成されるものであり、帯状の本体(ジョイナ本体)38を含む。
【0050】
本体38の幅方向の両側縁には、本体38の長手方向に沿ってその全長に亘って、第1突条40、および第2突条42が形成されている。第1突条40は、本体38に対して垂直に形成され、下水管200の内面に向かって突出する。第1突条40は、ストリップ12の条溝24に相当する大きさを有しており、ストリップ12とジョイナ14とを接合させるときには、ストリップ12の条溝24に嵌め合わされる(図1参照)。
【0051】
第2突条42は、第1突条40よりも内側に形成され、第1突条40と協働してストリップ12の第2壁28を挟持する。第2突条42の先端は、内側に向けて屈曲しており、ストリップ12のアンカ部20,22と同様に、下水管200とストリップ12との間に充填される充填材102に係止する。
【0052】
第2突条42の外側面には、第2係合部44が形成されている。第2係合部44は、ストリップ12の第1係合部34と係合する部位であり、第2突条42の始端側(本体38の側)へ向かうにつれて徐々に外側に突出するテーパ状に形成される。
【0053】
また、本体38の、第1突条40と第2突条42との間の位置には、エラストマなどの止水材46が設けられている。止水材46は、本体38の長手方向に沿ってその全長に亘って連続して設けられており、ストリップ12の第2壁28をジョイナ14の第1突条40と第2突条42との間に嵌め込んだときに、ストリップ12の第2壁28の始端側と接触して、これらの間を止水する。
【0054】
さらに、本体38の一方の面の、略中央部には、フレキシブル部48が形成されている。フレキシブル部48は、材質がたとえば合成ゴム,軟質合成樹脂またはエラストマ等であって、本体38の長手方向に沿ってその全長に亘って連続して形成されている。図3に示すように、このフレキシブル部48は、幅方向の各側縁48a,48aが互いに間隔を隔てた状態で、ジョイナ14の本体38の長手方向に沿って本体38の外面に固着されている。
【0055】
また、本体38の、フレキシブル部48の側縁48aと側縁48aとの間の位置には、屈曲部50が形成されている。屈曲部50は、断面形状がほぼ逆U字状であり、本体38の幅方向の略中央部を屈曲して形成されたものである。屈曲部50は、本体38の長手方向の全体に亘って連続して形成されており、本体38の外面側(下水管200の内面200aの側)に突出している。
【0056】
以上で、螺旋管100を構成するストリップ12とジョイナ14とを説明した。上述したように、このようなストリップ12を下水管200の内面200aに沿って螺旋状に巻回して、互いに隣接するストリップ12の幅方向側縁どうしをジョイナ14で接合することによって、図4に示すように、螺旋管100が形成されることとなる。
【0057】
以下に、このような螺旋管100を前提にして、必要に応じてそれらを援用しながら、本発明の補強用部材10の実施例または実施形態について説明する。
【0058】
図5に示すように、補強用部材10は、螺旋管100のストリップ12に取り付けて使用するものである。
【0059】
補強用部材10は、補強材52と接続部材54とを備えており、図6に示すように、互いに隣接する補強材52どうしは、それぞれの長手方向の端部に挿入される接続部材54によって接続される。
【0060】
補強材52は、材質がたとえば鋼等の金属製、または硬質塩化ビニル等の合成樹脂製であり、所定の幅および厚みで形成され、その長手方向の長さは、たとえば2000mmである。補強材52は、図7に示すように、水平方向に延びる底板部56と、この底板部56の幅方向両側を上方向に屈曲して形成された左右の側壁部58と、各側壁部58の上端縁を少し内側に屈曲して形成された左右の天板部60とを有しており、断面略台形状に形成される。
【0061】
なお、説明の便宜上、下水管200の内面200aの側を「上方向」とし、その反対側を「下方向」としていることに留意されたい。
【0062】
側壁部58は、底板部56から外側に向かって傾斜するテーパ状に形成されている。この理由は、ストリップ12のリブ18とリブと18の間に押し込んだ補強材52がリブ18をスムーズに左右に押し拡げることができるようにし、それによって、ストリップ12に補強用部材10を容易に取り付けるためである。
【0063】
一方の側壁部58の上端縁と他方の側壁部58の上端縁との水平距離、すなわち、補強材52の幅方向の最大長さ(最大幅)は、互いに隣接するリブ18どうしの間隔と略等しい寸法に設定されており、たとえば27mmである。つまり、補強用部材10をストリップ12へ取り付けた状態では、互いに隣接するリブ18のそれぞれに補強材52の側壁部58の上端縁が当接することとなる(図5参照)。
【0064】
また、側壁部58の上端縁と下端縁との垂直距離、すなわち、補強材52の高さ方向の長さ(高さ)は、ストリップ12における本体16と第2アンカ部22との垂直距離よりも少し小さい寸法に設定されており、たとえば14mmである。さらに、補強材52の最大幅は、互いに隣接する第2アンカ部22の内側端どうしの間隔よりも大きい寸法に設定されている。つまり、ストリップ12へ取り付けられた補強用部材10は、この第2アンカ部22と本体16との間の空間部分に保持されることとなる(図5参照)。
【0065】
図8に示すように、補強材52の長手方向の端部には、易変曲部が形成されている。この実施例では、易変曲部は、スリット62,64であり、補強材52の長手方向の両端部にスリット62,64がそれぞれ形成されている。たとえば、補強材52の長手方向の両端部の天板部60がそれぞれ取り除かれており、これがスリット62となる。また、補強材52の側板部58には、補強材52の長手方向に所定の間隔を隔てて3つのスリット64が形成されている。スリット64は、側板部58をその上端縁から下方に切り欠いたような形状をしており、補強材52の端部に向かうにしたがってその面積が大きく設定されている。つまり、スリット64の占める開口率が、補強材52の端部側へ向かうにつれて大きく設定されている。
【0066】
接続部材54は、材質がたとえば鋼等の金属製、または硬質塩化ビニル等の合成樹脂製であり、所定の幅および厚みで形成され、その長手方向の長さは、たとえば150mmである。接続部材54は、図9に示すように、水平方向に延びる底板部66と、この底板部66の幅方向両側を上方向に屈曲して形成された左右の側壁部68とを有しており、その形状・寸法は、補強材52の内側に収容可能に適宜に設定されている。
【0067】
側壁部68は、底板部66から外側に向かって傾斜するテーパ状に形成され、接続部材54を補強材52の長手方向の端部に挿入した状態では、補強材52の左右の側板部58のそれぞれに接続部材54の左右の側板部68のそれぞれが沿うこととなる。一方の側壁部68の上端縁と他方の側壁部68の上端縁との水平距離、すなわち、接続部材54の幅方向の最大長さ(最大幅)は、たとえば24mmである。
【0068】
また、側壁部68の上端縁と下端縁との垂直距離、すなわち、接続部材54の高さ方向の長さ(高さ)は、補強材52の高さよりも少し小さい寸法に設定されており、たとえば11.5mmである。
【0069】
このような補強用部材10によって補強した螺旋管100を下水管200の内面200aに形成する方法を以下に示す。
【0070】
先ず、図10に示すように、補強材52の長手方向の端部に接続部材54を挿入して、補強材52と接続部材54とを組み合わせた単位部材を構成する。具体的には、補強材52の長手方向の端部に接続部材54の一方端部を挿入した後、重なり合う補強材52の底板部56と接続部材54の底板部66とを部分的にスポット溶接する。
【0071】
そして、補強材52と接続部材54とを組み合わせた単位部材どうしを接続して、所望の長さの補強用部材10を形成する。具体的には、その一方端部を補強材52の端部に挿入している接続部材54の他方端部を、別の単位部材の補強材52の端部に挿入する。これによって、補強材52の長手方向の端部どうしが接続部材54によって接続されることとなる。そして、その単位部材どうしを接続したものに、同じように、別の単位部材を接続する。これを、所望の長さの補強用部材10を形成するまで繰り返す。
【0072】
次に、補強用部材10をストリップ12に取り付ける。具体的には、ストリップ12のリブ18を少し左右に押し拡げて、たとえば天板部56がストリップ12の本体16に当接するまで補強用部材10を押し込み、ストリップ12の本体16と第2アンカ部22との間に補強用部材10を収容する。ただし、ストリップ12の製造段階でストリップ12に補強用部材10を取り付けておくこともできる。
【0073】
そして、補強用部材10を取り付けたストリップ12を下水管200の内面200aに沿って螺旋状に巻回するとともに、隣接するストリップ12の幅方向側縁どうしをジョイナ14で接合して、螺旋管100を形成する。
【0074】
最後に、下水管200の内面200aと螺旋管100との間に裏込材102を充填して、この裏込材102が硬化すると、作業を終了する。
【0075】
このように、この実施例では、互いに隣接する補強材52どうしが、それぞれの長手方向の端部に挿入される接続部材54によって接続される。このため、補強材52の長手方向の端部の向きが接続部材54によって規制されて、この端部が隣接している補強材52の方向へ向くように曲げ変形される。また、補強材52の端部を曲げ変形させたときに生じる位置ずれが、補強材52と接続部材54との挿入しろに吸収されるため、補強材52から接続部材54が抜け出てしまうこともない。すなわち、この実施例によれば、補強材52の長手方向の端部をストリップ12の曲線部に沿って滑らかに曲げることができる。したがって、ストリップ12を螺旋状に巻回しても、補強材52の長手方向の端部がストリップ12から外れてしまうこともなく、補強用部材10をストリップ12に適切に取り付けることができる。
【0076】
その上、この実施例によれば、ストリップ12の線膨張率と補強用部材10の線膨張との違いに起因するストリップ12と補強用部材10との伸び縮みの差異も、補強材52と接続部材54との挿入しろに吸収させることができる。したがって、たとえ温度変化があっても、補強用部材10に無理な力がかかることがない。
【0077】
さらに、この実施例では、補強材52に易変曲部としてスリット62,64が形成される。このため、補強用部材10を一定以上の強度に保ったまま、簡単に曲げ変形させることができる。
【0078】
さらにまた、この実施例では、補強材52に接続部材54が挿入されたときに、補強材52と接続部材54とが重なり合う範囲に易変曲部62,64形成される。たとえば、補強材52の長手方向の端部では、補強材52の底板部56と当該補強材52に挿入された接続部材54の底板部66とが重なり合うとともに、補強材52の側板部58と当該補強材52に挿入された接続部材54の側板部68とが重なり合うため、その分だけストリップの曲げの力に対する剛性が高くなり、ストリップ12の曲線に沿って曲げることが困難となる。しかしながら、この実施例によれば、補強材52と接続部材54とが重なり合う範囲に易変曲部62,64が形成されることで、補強材52の長手方向の端部をより簡単に曲げ変形させることができる。
【0079】
また、この実施例では、補強材52の側板部58には、所定の間隔を隔てて3つのスリット64が形成されており、この3つのスリット64は、補強材52の端部に向かうにしたがって順々にその面積が大きく設定される。ここで、上述したように、補強材52の長手方向の端部では、局部的にストリップの曲げの力に対する剛性が高くなってしまうが、この実施例によれば、スリット64の占める開口率が補強材52の端部側へ向かうにつれて大きく設定されるため、補強用部材10の剛性が不連続となることない。
【0080】
なお、上述の実施例では、補強用部材10は、老朽化した下水管200を更生する螺旋管100を補強するために用いられたが、これに限定される必要はない。たとえば、補強用部材10は、新設の下水管200の内面200aを保護する螺旋管100を補強するために用いることもできる。
【0081】
また、上述の実施例では、ストリップ12は、下水管200の内面200aに沿って螺旋状に巻回され、その幅方向側縁どうしをジョイナ14に接合されることによって螺旋管100を形成したが、これに限定される必要はない。たとえば、ストリップ12の一方側縁に条溝24を形成するとともに、ストリップ12の他方側縁に条溝24と嵌合可能な突条を形成し、互いに隣接するストリップ12の条溝24と突条とを嵌合させてそれらを接合することによって、螺旋管100を形成してもよい。
【0082】
さらに、上述の実施例では、ストリップ12に3つのリブ18が形成され、その3つのリブ18のそれぞれの間に補強用部材10が取り付けられたが、これに限定される必要はなく、螺旋管100の直径およびストリップ12自体の強度に応じて、螺旋管100を適切に補強できるように、適切な数の補強用部材10を使用すればよい。
【0083】
さらにまた、上述の実施例では、補強用部材10は、ストリップ12のリブ18とリブ18との間に取り付けられたが、これに限定される必要はなく、ストリップ12の適宜の位置に取り付けることができる。
【0084】
さらに、上述の実施例では、底板部56と側板部58と天板部60とを有する補強材52の長手方向の端部に、底板部66と側板部68とを有する接続部材54が挿入された。しかしながら、これらは、あくまで補強材52の長手方向の端部をストリップ12の曲線部に沿って滑らかに曲げるためのものであり、要は、補強材52の長手方向の端部に接続部材54を挿入することで、その端部を隣接している補強材52の方向へ向くように曲げることができるのであれば、補強材52や接続部材54の形状は特に限定されるものではない。
【0085】
また、上述の実施例では、螺旋管100を補強用部材10によって補強するときに、先ず、補強材52と接続部材54とを組み合わせた単位部材を構成し、その単位部材どうしを接続することによって、所望の長さの補強用部材10を形成したが、これに限定される必要はない。
【0086】
たとえば、先ず、接続部材54の一方端部を補強材52の端部に挿入するとともに、接続部材54の他方端部を別の補強材52の端部に挿入して、2つの補強材52を接続し、その接続された2つの補強材52の端部と別の補強材52の端部とを同じように接続部材54によって接続し、これを、所望の長さの補強用部材10を形成するまで繰り返すことによって、所望の長さの補強用部材10を形成してもよい。
【0087】
図11および図12を参照して、この発明の他の実施例である補強用部材10では、接続部材54に突出部70が設けられる。なお、図1に示す補強用部材10と共通する部分については同じ番号を付し、重複する説明は省略する。
【0088】
図11に示すように、接続部材54の底板部66には、突出部70が形成される。突出部70は、底板部66から下方向に突出する突起であり、たとえば底板部66の一部分を窪み状に下向きに曲げ加工することによって形成される。
【0089】
図12に示すように、突出部70は、底板部66の長手方向の略中央部に設けられており、補強材52の長手方向の端部どうしを接続部材54によって接続したときには、それらの補強材52と補強材52との間に配置されることとなる。
【0090】
このため、たとえば補強材52に挿入した接続部材54がさらに挿入方向に移動しても、補強材52の端部と接続部材54の突出部70とが衝突することによって、補強材52に対する接続部材54の動きが規制される。したがって、接続部材54が補強材52の内部に完全にはいってしまうこともなく、作業性が向上する。
【0091】
なお、図13に示すように、補強材52の底板部56に突出部72を設けてもよい。突出部72は、底板部56から上方向に突出する突起であり、たとえば底板部56の一部分を突起状に上向きに曲げ加工することによって形成される。突出部70は、補強材52の長手方向の両側のそれぞれに設けられており、補強材52の長手方向の端部どうしを接続部材54によって接続したときには、この端部に挿入されている接続部材54よりも少し内側に配置されることとなる。このため、たとえば補強材52に挿入した接続部材54がさらに挿入方向に移動しても、接続部材54の端部と補強材52の突出部72とが衝突することによって、補強材52に対する接続部材54の動きが規制される。
【0092】
また、接続部材54の底板部66の一部分を窪み状に下向きに曲げ加工することによって突出部70が形成され、補強材52の底板部56の一部分を突起状に上向きに曲げ加工することによって突出部72が形成されたが、これに限定される必要はない。補強材52に対する接続部材54の動きを規制することができるのであれば、突出部70,72の形状や配置位置は適宜変更され得る。
【0093】
さらにまた、上述の各実施例ではいずれも、補強材52の側板部58には、所定の間隔を隔てて3つのスリット(易変曲部)64が形成されており、この3つのスリット64は、補強材52の端部側へ向かうにつれて順々にその面積が大きく設定されたが、これに限定される必要はない。これは、あくまで補強用部材10の剛性が不連続となるのを防止するためのものであり、要は、スリット64の占める開口率が補強材52の端部側へ向かうにつれて大きく設定されていればよい。つまり、図示は省略するが、補強材52の側板部58に、補強材52の端部側へ向かうにつれて拡大する略台形状ないし略三角形状を有する1つのスリットを形成してもよい。
【0094】
さらに、補強材52の長手方向の端部に易変曲部が形成されたが、これに限定される必要もなく、たとえば、図14に示すように、接続部材54の長手方向の端部に易変曲部を形成してもよい。たとえば、易変曲部は、側板部68をその上端縁から下方に切り欠いたスリット74であり、接続部材54の長手方向の両端部のそれぞれに3つのスリットが形成され、この3つのスリット74は、接続部材54の端部側へ向かうにつれて順々にその面積が大きく設定される。
【0095】
さらに、上述の各実施例ではいずれも、易変曲部は、補強材52ないし接続部材54の一部を取り除いたスリット62,64,74であったが、これに限定される必要もなく、易変曲部62,64,74は、他の形態により構成されてもよい。たとえば、易変曲部としては、補強材52ないし接続部材54の一部を肉薄にするための凹溝等が考えられる。
【0096】
また、上述の各実施例ではいずれも、隣接する補強材52の長手方向の端部のそれぞれに接続部材54を挿入することによって補強材52どうしを接続したが、これに限定される必要はない。たとえば、図示は省略するが、補強材52の一方端部に、当該補強材52の他方端部に挿入可能な差口形状を有する接続部を形成し、隣接する一方の補強材52の接続部を他方の補強材52の他方端部に挿入することによって補強材52どうしを接続することもできる。この場合には、先ず、一方の補強材52の一方端部(接続部)を他方の補強材52の他方端部に挿入することによって、補強材52どうしが接続される。そして、その他方の補強材52の接続部をさらに別の補強材52の他方端部に挿入し、これを繰り返すことによって、所望の長さの補強用部材10を形成する。
【0097】
勿論、このように補強材52どうしが直接接続された補強用部材10においても、上述した、隣接する補強材52の長手方向の端部のそれぞれに接続部材54を挿入することによって補強材52どうしが接続される補強用部材10と同じように、易変曲部を形成してもよく、突出部を形成してもよい。たとえば、図示は省略するが、易変曲部は、補強材52の一方端部すなわち接続部や、当該接続部が挿入される補強材52の他方端部に形成される。また、図示は省略するが、突出部は、補強材52の底板部56の一部分を窪み状に下向きに曲げ加工または突起状に上向きに曲げ加工することによって形成され、一方の補強材52に対する他方の補強材54の動きを規制する。
【0098】
なお、上述した径や高さ等の具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0099】
10 …螺旋管の補強用部材
12 …ストリップ
14 …ジョイナ
18 …リブ
20,22 …アンカ部
52 …補強材
54 …接続部材
62,64,74 …易変曲部
70,72 …突出部
100 …螺旋管
200 …下水管
【技術分野】
【0001】
この発明は、螺旋管の補強用部材に関し、特にたとえば、帯状のストリップを管の内面に沿って螺旋状に巻回して形成する螺旋管を補強するために用いる、螺旋管の補強用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、帯状のストリップを下水管の内面に沿って螺旋状に巻回することによって、螺旋管を形成する技術が公知である。このような螺旋管では、螺旋管の天井部分の垂れ下がり等が生じる場合があるので、必要に応じて螺旋管の剛性を高めることがある。
【0003】
たとえば、特許文献1のチューブ(螺旋管)では、ストリップに直立リブが形成されており、たとえばリブどうしの間に補強部材が取り付けられる。そして、この補強部材によって、チューブの剛性が高められる。
【特許文献1】特公平7−80238号[B29C 53/78]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、長尺のストリップに取り付ける補強用部材は、その剛性を確保するために、2〜2.5mの長さの鋼材を連続的に並べることによって用いられる。しかしながら、螺旋状に巻回されるストリップの曲げに対して鋼材の剛性が作用するため、鋼材と鋼材との継目の部分において、鋼材の端部をストリップの曲線部に沿って曲げることが困難である。この問題は、特許文献1に開示された螺旋管においても例外ではない。特許文献1の技術では、補強部材の端部がストリップの曲線部に沿って曲がらずに、この端部が部分的にストリップから外れてしまうということがあった。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、螺旋管の補強用部材を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、ストリップに適切に取り付けることができる、螺旋管の補強用部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0008】
第1の発明は、帯状のストリップを管の内面に沿って螺旋状に巻回して形成する螺旋管の補強用部材において、ストリップに取り付けられる補強材を含み、互いに隣接する補強材の長手方向の端部のそれぞれに接続部材を挿入することによって補強材どうしを接続したことを特徴とする、螺旋管の補強用部材である。
【0009】
第1の発明では、螺旋管の補強用部材(10)は、たとえば老朽化した下水管(200)を更生する螺旋管(100)を補強するためのものであり、下水管の内面(200a)に沿って螺旋状に巻回される帯状のストリップ(12)に取り付けられる。螺旋管の補強用部材は、補強材(52)と接続部材(54)とを備えており、互いに隣接する補強材どうしは、それぞれの長手方向の端部に挿入される接続部材によって接続される。このため、補強材の長手方向の端部の向きが接続部材によって規制されて、この端部が隣接している補強材の方向へ向くように曲げ変形される。また、補強材の端部を曲げ変形させたときに生じる位置ずれが、補強材と接続部材との挿入しろに吸収されるため、補強材から接続部材が抜け出てしまうこともない。
【0010】
第1の発明によれば、ストリップを螺旋状に巻回しても、補強材の長手方向の端部をストリップの曲線部に沿って滑らかに曲げることができる。したがって、補強材の長手方向の端部がストリップから外れてしまうことがなく、螺旋管の補強用部材をストリップに適切に取り付けることができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明に従属し、補強材および接続部材の少なくともいずれか一方に形成される易変曲部を備える。
【0012】
第2の発明では、たとえば、補強用部材(10)の補強材(52)ないし接続部材(54)には、易変曲部(62,64,74)が形成される。
【0013】
第2の発明によれば、補強用部材を一定以上の強度に保ったまま、簡単に曲げ変形させることができる。
【0014】
第3の発明は、第2の発明に従属し、易変曲部は、補強材に接続部材が挿入されたときに補強材と接続部材とが重なり合う範囲に形成される。
【0015】
第3の発明では、易変曲部(62,64,74)は、補強材(52)に接続部材(54)が挿入されたときに補強材と接続部材とが重なり合う範囲に形成される。たとえば、補強材の長手方向の端部では、補強材の底板部(56)と当該補強材に挿入された接続部材の底板部(66)とが重なり合うとともに、補強材の側板部(58)と接続部材の側板部(68)とが重なり合うため、その分だけストリップ(12)の曲げの力に対する剛性が高くなり、ストリップの曲線部に沿って曲げることが困難となるが、補強材と接続部材とが重なり合う範囲に易変曲部を形成することで、補強材の長手方向の端部をより簡単に曲げ変形させることができる。
【0016】
第4の発明は、第2または3の発明に従属し、易変曲部は、スリットである。
【0017】
第4の発明では、易変曲部は、スリット(62,64,74)である。実施例では、補強材(52)の端部の天板部(60)にスリット(62)形成されるとともに、補強材の端部の側板部(58)にスリット(64)が形成される。また、他の実施例では、接続部材(54)の端部の側板部(68)にスリット(74)が形成される。
【0018】
第5の発明は、第4の発明に従属し、スリットの占める開口率が補強材および接続部材のいずれか一方の端部側へ向かうにつれて大きく設定される。
【0019】
第5の発明では、スリット(62,64,74)の占める開口率が補強材(52)ないし接続部材(54)の端部側へ向かうにつれて大きく設定される。実施例では、補強材の側板部(58)には、所定の間隔を隔てて3つのスリット(64)が形成されており、この3つのスリットの面積が、補強材の端部側に向かうにつれて順々に大きく設定される。
【0020】
第5の発明によれば、補強用部材(10)の剛性が不連続になってしまうのを防止することができる。
【0021】
第6の発明は、第1ないし5の発明に従属し、補強材に対する接続部材の動きを規制する突出部を備える。
【0022】
第6の発明では、補強材(52)ないし接続部材(54)には、突出部(70,72)が設けられる。実施例では、接続部材の底板部(66)の一部分を窪み状に下向きに曲げ加工することによって突出部(70)が形成される。また、他の実施例では、補強材の底板部(56)の一部分を突起状に上向きに曲げ加工することによって突出部(72)が形成される。このため、たとえば補強材に挿入した接続部材がさらに挿入方向に移動しても、補強材の長手方向の端部と接続部材の突出部とが衝突することによって、補強材に対する接続部材の動きが規制される。
【0023】
第6の発明によれば、接続部材が補強材の内部に完全にはいってしまうこともなく、作業性が向上する。
【0024】
第7の発明は、帯状のストリップを螺旋状に巻回して形成する螺旋管の補強用部材において、ストリップに取り付けられる補強材、および補強材の一方端部に形成されるかつ当該補強材の他方端部に挿入可能な差口形状を有する接続部を含み、隣接する一方の補強材の接続部を他方の補強材の他方端部に挿入することによって補強材どうしを接続したことを特徴とする、螺旋管の補強用部材である。
【0025】
第7の発明では、補強材(52)の一方端部には、当該補強材の他方端部に挿入可能な差口形状を有する接続部が形成される。そして、互いに隣接する補強材どうしは、一方の補強材の接続部を他方の補強材の他方端部に挿入することによって接続される。このため、一方の補強材の接続部が隣接している他方の補強材の他方端部の方向へ向くように曲げ変形される。また、補強材の端部を曲げ変形させたときに生じる位置ずれが、一方の補強材と他方の補強材との挿入しろに吸収されるため、隣接している補強材どうしが抜け出してしまうこともない。
【0026】
第7の発明によれば、第1の発明と同様の効果を奏する。
【0027】
第8の発明は、第7の発明に従属し、接続部および補強材の他方端部の少なくともいずれか一方に形成される易変曲部を備える。
【0028】
第8の発明では、補強材(52)の端部には、易変曲部が形成される。つまり、補強材の一方端部すなわち接続部や、当該接続部が挿入される補強材の他方端部に、易変曲部が形成される。
【0029】
第8の発明によれば、第2の発明と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、補強材の長手方向の端部が隣接している補強材の方向へ向くように曲げ変形されるため、補強用部材をストリップの全長に亘って適切に取り付けることができる。
【0031】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の一実施例の螺旋管の補強用部材の使用状態を示す断面図である。
【図2】図1のストリップを示す断面図である。
【図3】図1のジョイナを示す断面図である。
【図4】図1のストリップとジョイナとを使用して下水管の内面に螺旋管を形成した状態を示す図解図である。
【図5】図1のストリップに螺旋管の補強用部材を取り付けた状態を示す断面図である。
【図6】図1の螺旋管の補強用部材を示す図解図である。
【図7】図6の補強材を示す平面図である。
【図8】図6の補強材の長手方向の端部を示す斜視図である。
【図9】図6の接続部材を示す平面図である。
【図10】図1の螺旋管の補強用部材において、補強材の長手方向の端部に接続部材を挿入した状態を示す図解図である。
【図11】この発明の他の一実施例の螺旋管の補強用部材の接続部材を示す斜視図である。
【図12】図11の螺旋管の補強用部材を示す図解図である。
【図13】この発明のさらに他の一実施例の螺旋管の補強用部材を示す図解図である。
【図14】この発明のさらに他の一実施例の螺旋管の補強用部材において、補強材の長手方向の端部に接続部材を挿入した状態を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1を参照して、この発明の一実施例である螺旋管の補強用部材(以下、単に「補強用部材」という。)10は、たとえば老朽化した下水管200を更生する螺旋管(内管)100を補強するためのものであり、下水管200の内面200aに沿って螺旋状に巻回される帯状のストリップ12に取り付けられる。
【0034】
なお、この実施例では、下水管200はヒューム管であるが、これに限定される必要はなく、ヒューム管以外のたとえば合成樹脂製管や金属製管の下水管にも適用することができる。
【0035】
先ず、螺旋管100について、後述するこの発明の理解に必要な範囲で、簡単に説明する。
【0036】
図1に示すように、螺旋管100は、下水管200の内面200aに沿って螺旋状に巻回したストリップ12の幅方向側縁どうしをジョイナ14で接合することによって形成される。
【0037】
図2に示すように、ストリップ12は、たとえば硬質塩化ビニル等のような合成樹脂の押出成形によって連続的に形成されるものであり、帯状の本体(ストリップ本体)16を含む。
【0038】
本体16の一方の面には、下水管200の内面200aに向かって突出する帯状のリブ18が形成されている。リブ18は、本体16の長手方向に沿ってその全長に亘って形成され、複数、この実施例では、3つのリブ18が、本体16の幅方向に所定の間隔を隔てて形成されている。後で詳細に説明するように、互いに隣接するリブ18の間には、補強用部材10が取り付けられる。
【0039】
リブ18の先端部には、アンカ部20,22が形成されている。アンカ部20,22は、第1アンカ部20と第2アンカ部22とを含み、この第1アンカ部20と第2アンカ部22とがリブ18の高さ方向に並んで形成されている。
【0040】
たとえば、第1アンカ部20は、リブ18の先端に形成され、下水管200に螺旋管100を形成した状態で下水管200の内面200aと接触する。第1アンカ部20は、リブ18の先端側で幅が大きく本体16側(始端側)で幅が小さい略台形状に形成され、その先端側の面の幅は、たとえば6mmである。
【0041】
また、たとえば、第2アンカ部22は、第1アンカ部20よりも始端側に形成され、その中央部がリブ18と結合している。第2アンカ部22は、断面略長方形状を有しており、その幅は、たとえば9mmである。
【0042】
アンカ部20,22は、全体として、リブ18の先端側へ向かうにつれて徐々に幅方向の長さが小さくなるテーパ状に形成されている。この理由は、たとえばリブ18とリブ18との間に補強用部材10を押し込む際に、リブ18をスムーズに左右に押し拡げることができるようにし、それによって、ストリップ12に補強用部材10を容易に取り付けるためである。
【0043】
ただし、この実施例における「内側」とは、ストリップ12(本体)中央側を意味し、「外側」とは、その反対側を意味する。
【0044】
本体16の幅方向の両側縁には、条溝24が形成されている。各条溝24は、本体16の長手方向に沿ってその全長に亘って形成され、本体16に近い第1壁26と本体16から遠い第2壁28とを備えている。
【0045】
第1壁26には、受部30が形成されている。受部30は、第1壁26から内側に向かう窪みであり、ストリップ12の第1係合部34とジョイナ14の第2係合部44とが係合した状態では、この受部30にジョイナ14の幅方向側縁が嵌め合わされる(図1参照)。
【0046】
また、第1壁26の内側面には、補強部32が形成されている。補強部32は、第1壁26および第2壁28の形状を安定させるためのものであり、たとえば、第1壁26の先端から内側へ延びて、第1壁26とこの第1壁26と最も近い(直近の)リブ18とを連結する。
【0047】
第2壁28の外側面には、第1係合部34が形成されている。第1係合部34は、後述するジョイナ14の第2係合部44と係合する部位であり、第2壁28の先端側へ向かうにつれて徐々に外側に突出するテーパ状に形成される。
【0048】
さらに、第2壁28の外側面には、当たり部36が形成されている。当たり部36は、第2壁28から外側に向けて突出し、ストリップ12の第1係合部34とジョイナ14の第2係合部44とが係合した状態では、この当たり部36とジョイナ14の第2突条42とが当接する(図1参照)。
【0049】
図3に示すように、ジョイナ10は、たとえば硬質塩化ビニル等のような合成樹脂の押出成形によって連続的に形成されるものであり、帯状の本体(ジョイナ本体)38を含む。
【0050】
本体38の幅方向の両側縁には、本体38の長手方向に沿ってその全長に亘って、第1突条40、および第2突条42が形成されている。第1突条40は、本体38に対して垂直に形成され、下水管200の内面に向かって突出する。第1突条40は、ストリップ12の条溝24に相当する大きさを有しており、ストリップ12とジョイナ14とを接合させるときには、ストリップ12の条溝24に嵌め合わされる(図1参照)。
【0051】
第2突条42は、第1突条40よりも内側に形成され、第1突条40と協働してストリップ12の第2壁28を挟持する。第2突条42の先端は、内側に向けて屈曲しており、ストリップ12のアンカ部20,22と同様に、下水管200とストリップ12との間に充填される充填材102に係止する。
【0052】
第2突条42の外側面には、第2係合部44が形成されている。第2係合部44は、ストリップ12の第1係合部34と係合する部位であり、第2突条42の始端側(本体38の側)へ向かうにつれて徐々に外側に突出するテーパ状に形成される。
【0053】
また、本体38の、第1突条40と第2突条42との間の位置には、エラストマなどの止水材46が設けられている。止水材46は、本体38の長手方向に沿ってその全長に亘って連続して設けられており、ストリップ12の第2壁28をジョイナ14の第1突条40と第2突条42との間に嵌め込んだときに、ストリップ12の第2壁28の始端側と接触して、これらの間を止水する。
【0054】
さらに、本体38の一方の面の、略中央部には、フレキシブル部48が形成されている。フレキシブル部48は、材質がたとえば合成ゴム,軟質合成樹脂またはエラストマ等であって、本体38の長手方向に沿ってその全長に亘って連続して形成されている。図3に示すように、このフレキシブル部48は、幅方向の各側縁48a,48aが互いに間隔を隔てた状態で、ジョイナ14の本体38の長手方向に沿って本体38の外面に固着されている。
【0055】
また、本体38の、フレキシブル部48の側縁48aと側縁48aとの間の位置には、屈曲部50が形成されている。屈曲部50は、断面形状がほぼ逆U字状であり、本体38の幅方向の略中央部を屈曲して形成されたものである。屈曲部50は、本体38の長手方向の全体に亘って連続して形成されており、本体38の外面側(下水管200の内面200aの側)に突出している。
【0056】
以上で、螺旋管100を構成するストリップ12とジョイナ14とを説明した。上述したように、このようなストリップ12を下水管200の内面200aに沿って螺旋状に巻回して、互いに隣接するストリップ12の幅方向側縁どうしをジョイナ14で接合することによって、図4に示すように、螺旋管100が形成されることとなる。
【0057】
以下に、このような螺旋管100を前提にして、必要に応じてそれらを援用しながら、本発明の補強用部材10の実施例または実施形態について説明する。
【0058】
図5に示すように、補強用部材10は、螺旋管100のストリップ12に取り付けて使用するものである。
【0059】
補強用部材10は、補強材52と接続部材54とを備えており、図6に示すように、互いに隣接する補強材52どうしは、それぞれの長手方向の端部に挿入される接続部材54によって接続される。
【0060】
補強材52は、材質がたとえば鋼等の金属製、または硬質塩化ビニル等の合成樹脂製であり、所定の幅および厚みで形成され、その長手方向の長さは、たとえば2000mmである。補強材52は、図7に示すように、水平方向に延びる底板部56と、この底板部56の幅方向両側を上方向に屈曲して形成された左右の側壁部58と、各側壁部58の上端縁を少し内側に屈曲して形成された左右の天板部60とを有しており、断面略台形状に形成される。
【0061】
なお、説明の便宜上、下水管200の内面200aの側を「上方向」とし、その反対側を「下方向」としていることに留意されたい。
【0062】
側壁部58は、底板部56から外側に向かって傾斜するテーパ状に形成されている。この理由は、ストリップ12のリブ18とリブと18の間に押し込んだ補強材52がリブ18をスムーズに左右に押し拡げることができるようにし、それによって、ストリップ12に補強用部材10を容易に取り付けるためである。
【0063】
一方の側壁部58の上端縁と他方の側壁部58の上端縁との水平距離、すなわち、補強材52の幅方向の最大長さ(最大幅)は、互いに隣接するリブ18どうしの間隔と略等しい寸法に設定されており、たとえば27mmである。つまり、補強用部材10をストリップ12へ取り付けた状態では、互いに隣接するリブ18のそれぞれに補強材52の側壁部58の上端縁が当接することとなる(図5参照)。
【0064】
また、側壁部58の上端縁と下端縁との垂直距離、すなわち、補強材52の高さ方向の長さ(高さ)は、ストリップ12における本体16と第2アンカ部22との垂直距離よりも少し小さい寸法に設定されており、たとえば14mmである。さらに、補強材52の最大幅は、互いに隣接する第2アンカ部22の内側端どうしの間隔よりも大きい寸法に設定されている。つまり、ストリップ12へ取り付けられた補強用部材10は、この第2アンカ部22と本体16との間の空間部分に保持されることとなる(図5参照)。
【0065】
図8に示すように、補強材52の長手方向の端部には、易変曲部が形成されている。この実施例では、易変曲部は、スリット62,64であり、補強材52の長手方向の両端部にスリット62,64がそれぞれ形成されている。たとえば、補強材52の長手方向の両端部の天板部60がそれぞれ取り除かれており、これがスリット62となる。また、補強材52の側板部58には、補強材52の長手方向に所定の間隔を隔てて3つのスリット64が形成されている。スリット64は、側板部58をその上端縁から下方に切り欠いたような形状をしており、補強材52の端部に向かうにしたがってその面積が大きく設定されている。つまり、スリット64の占める開口率が、補強材52の端部側へ向かうにつれて大きく設定されている。
【0066】
接続部材54は、材質がたとえば鋼等の金属製、または硬質塩化ビニル等の合成樹脂製であり、所定の幅および厚みで形成され、その長手方向の長さは、たとえば150mmである。接続部材54は、図9に示すように、水平方向に延びる底板部66と、この底板部66の幅方向両側を上方向に屈曲して形成された左右の側壁部68とを有しており、その形状・寸法は、補強材52の内側に収容可能に適宜に設定されている。
【0067】
側壁部68は、底板部66から外側に向かって傾斜するテーパ状に形成され、接続部材54を補強材52の長手方向の端部に挿入した状態では、補強材52の左右の側板部58のそれぞれに接続部材54の左右の側板部68のそれぞれが沿うこととなる。一方の側壁部68の上端縁と他方の側壁部68の上端縁との水平距離、すなわち、接続部材54の幅方向の最大長さ(最大幅)は、たとえば24mmである。
【0068】
また、側壁部68の上端縁と下端縁との垂直距離、すなわち、接続部材54の高さ方向の長さ(高さ)は、補強材52の高さよりも少し小さい寸法に設定されており、たとえば11.5mmである。
【0069】
このような補強用部材10によって補強した螺旋管100を下水管200の内面200aに形成する方法を以下に示す。
【0070】
先ず、図10に示すように、補強材52の長手方向の端部に接続部材54を挿入して、補強材52と接続部材54とを組み合わせた単位部材を構成する。具体的には、補強材52の長手方向の端部に接続部材54の一方端部を挿入した後、重なり合う補強材52の底板部56と接続部材54の底板部66とを部分的にスポット溶接する。
【0071】
そして、補強材52と接続部材54とを組み合わせた単位部材どうしを接続して、所望の長さの補強用部材10を形成する。具体的には、その一方端部を補強材52の端部に挿入している接続部材54の他方端部を、別の単位部材の補強材52の端部に挿入する。これによって、補強材52の長手方向の端部どうしが接続部材54によって接続されることとなる。そして、その単位部材どうしを接続したものに、同じように、別の単位部材を接続する。これを、所望の長さの補強用部材10を形成するまで繰り返す。
【0072】
次に、補強用部材10をストリップ12に取り付ける。具体的には、ストリップ12のリブ18を少し左右に押し拡げて、たとえば天板部56がストリップ12の本体16に当接するまで補強用部材10を押し込み、ストリップ12の本体16と第2アンカ部22との間に補強用部材10を収容する。ただし、ストリップ12の製造段階でストリップ12に補強用部材10を取り付けておくこともできる。
【0073】
そして、補強用部材10を取り付けたストリップ12を下水管200の内面200aに沿って螺旋状に巻回するとともに、隣接するストリップ12の幅方向側縁どうしをジョイナ14で接合して、螺旋管100を形成する。
【0074】
最後に、下水管200の内面200aと螺旋管100との間に裏込材102を充填して、この裏込材102が硬化すると、作業を終了する。
【0075】
このように、この実施例では、互いに隣接する補強材52どうしが、それぞれの長手方向の端部に挿入される接続部材54によって接続される。このため、補強材52の長手方向の端部の向きが接続部材54によって規制されて、この端部が隣接している補強材52の方向へ向くように曲げ変形される。また、補強材52の端部を曲げ変形させたときに生じる位置ずれが、補強材52と接続部材54との挿入しろに吸収されるため、補強材52から接続部材54が抜け出てしまうこともない。すなわち、この実施例によれば、補強材52の長手方向の端部をストリップ12の曲線部に沿って滑らかに曲げることができる。したがって、ストリップ12を螺旋状に巻回しても、補強材52の長手方向の端部がストリップ12から外れてしまうこともなく、補強用部材10をストリップ12に適切に取り付けることができる。
【0076】
その上、この実施例によれば、ストリップ12の線膨張率と補強用部材10の線膨張との違いに起因するストリップ12と補強用部材10との伸び縮みの差異も、補強材52と接続部材54との挿入しろに吸収させることができる。したがって、たとえ温度変化があっても、補強用部材10に無理な力がかかることがない。
【0077】
さらに、この実施例では、補強材52に易変曲部としてスリット62,64が形成される。このため、補強用部材10を一定以上の強度に保ったまま、簡単に曲げ変形させることができる。
【0078】
さらにまた、この実施例では、補強材52に接続部材54が挿入されたときに、補強材52と接続部材54とが重なり合う範囲に易変曲部62,64形成される。たとえば、補強材52の長手方向の端部では、補強材52の底板部56と当該補強材52に挿入された接続部材54の底板部66とが重なり合うとともに、補強材52の側板部58と当該補強材52に挿入された接続部材54の側板部68とが重なり合うため、その分だけストリップの曲げの力に対する剛性が高くなり、ストリップ12の曲線に沿って曲げることが困難となる。しかしながら、この実施例によれば、補強材52と接続部材54とが重なり合う範囲に易変曲部62,64が形成されることで、補強材52の長手方向の端部をより簡単に曲げ変形させることができる。
【0079】
また、この実施例では、補強材52の側板部58には、所定の間隔を隔てて3つのスリット64が形成されており、この3つのスリット64は、補強材52の端部に向かうにしたがって順々にその面積が大きく設定される。ここで、上述したように、補強材52の長手方向の端部では、局部的にストリップの曲げの力に対する剛性が高くなってしまうが、この実施例によれば、スリット64の占める開口率が補強材52の端部側へ向かうにつれて大きく設定されるため、補強用部材10の剛性が不連続となることない。
【0080】
なお、上述の実施例では、補強用部材10は、老朽化した下水管200を更生する螺旋管100を補強するために用いられたが、これに限定される必要はない。たとえば、補強用部材10は、新設の下水管200の内面200aを保護する螺旋管100を補強するために用いることもできる。
【0081】
また、上述の実施例では、ストリップ12は、下水管200の内面200aに沿って螺旋状に巻回され、その幅方向側縁どうしをジョイナ14に接合されることによって螺旋管100を形成したが、これに限定される必要はない。たとえば、ストリップ12の一方側縁に条溝24を形成するとともに、ストリップ12の他方側縁に条溝24と嵌合可能な突条を形成し、互いに隣接するストリップ12の条溝24と突条とを嵌合させてそれらを接合することによって、螺旋管100を形成してもよい。
【0082】
さらに、上述の実施例では、ストリップ12に3つのリブ18が形成され、その3つのリブ18のそれぞれの間に補強用部材10が取り付けられたが、これに限定される必要はなく、螺旋管100の直径およびストリップ12自体の強度に応じて、螺旋管100を適切に補強できるように、適切な数の補強用部材10を使用すればよい。
【0083】
さらにまた、上述の実施例では、補強用部材10は、ストリップ12のリブ18とリブ18との間に取り付けられたが、これに限定される必要はなく、ストリップ12の適宜の位置に取り付けることができる。
【0084】
さらに、上述の実施例では、底板部56と側板部58と天板部60とを有する補強材52の長手方向の端部に、底板部66と側板部68とを有する接続部材54が挿入された。しかしながら、これらは、あくまで補強材52の長手方向の端部をストリップ12の曲線部に沿って滑らかに曲げるためのものであり、要は、補強材52の長手方向の端部に接続部材54を挿入することで、その端部を隣接している補強材52の方向へ向くように曲げることができるのであれば、補強材52や接続部材54の形状は特に限定されるものではない。
【0085】
また、上述の実施例では、螺旋管100を補強用部材10によって補強するときに、先ず、補強材52と接続部材54とを組み合わせた単位部材を構成し、その単位部材どうしを接続することによって、所望の長さの補強用部材10を形成したが、これに限定される必要はない。
【0086】
たとえば、先ず、接続部材54の一方端部を補強材52の端部に挿入するとともに、接続部材54の他方端部を別の補強材52の端部に挿入して、2つの補強材52を接続し、その接続された2つの補強材52の端部と別の補強材52の端部とを同じように接続部材54によって接続し、これを、所望の長さの補強用部材10を形成するまで繰り返すことによって、所望の長さの補強用部材10を形成してもよい。
【0087】
図11および図12を参照して、この発明の他の実施例である補強用部材10では、接続部材54に突出部70が設けられる。なお、図1に示す補強用部材10と共通する部分については同じ番号を付し、重複する説明は省略する。
【0088】
図11に示すように、接続部材54の底板部66には、突出部70が形成される。突出部70は、底板部66から下方向に突出する突起であり、たとえば底板部66の一部分を窪み状に下向きに曲げ加工することによって形成される。
【0089】
図12に示すように、突出部70は、底板部66の長手方向の略中央部に設けられており、補強材52の長手方向の端部どうしを接続部材54によって接続したときには、それらの補強材52と補強材52との間に配置されることとなる。
【0090】
このため、たとえば補強材52に挿入した接続部材54がさらに挿入方向に移動しても、補強材52の端部と接続部材54の突出部70とが衝突することによって、補強材52に対する接続部材54の動きが規制される。したがって、接続部材54が補強材52の内部に完全にはいってしまうこともなく、作業性が向上する。
【0091】
なお、図13に示すように、補強材52の底板部56に突出部72を設けてもよい。突出部72は、底板部56から上方向に突出する突起であり、たとえば底板部56の一部分を突起状に上向きに曲げ加工することによって形成される。突出部70は、補強材52の長手方向の両側のそれぞれに設けられており、補強材52の長手方向の端部どうしを接続部材54によって接続したときには、この端部に挿入されている接続部材54よりも少し内側に配置されることとなる。このため、たとえば補強材52に挿入した接続部材54がさらに挿入方向に移動しても、接続部材54の端部と補強材52の突出部72とが衝突することによって、補強材52に対する接続部材54の動きが規制される。
【0092】
また、接続部材54の底板部66の一部分を窪み状に下向きに曲げ加工することによって突出部70が形成され、補強材52の底板部56の一部分を突起状に上向きに曲げ加工することによって突出部72が形成されたが、これに限定される必要はない。補強材52に対する接続部材54の動きを規制することができるのであれば、突出部70,72の形状や配置位置は適宜変更され得る。
【0093】
さらにまた、上述の各実施例ではいずれも、補強材52の側板部58には、所定の間隔を隔てて3つのスリット(易変曲部)64が形成されており、この3つのスリット64は、補強材52の端部側へ向かうにつれて順々にその面積が大きく設定されたが、これに限定される必要はない。これは、あくまで補強用部材10の剛性が不連続となるのを防止するためのものであり、要は、スリット64の占める開口率が補強材52の端部側へ向かうにつれて大きく設定されていればよい。つまり、図示は省略するが、補強材52の側板部58に、補強材52の端部側へ向かうにつれて拡大する略台形状ないし略三角形状を有する1つのスリットを形成してもよい。
【0094】
さらに、補強材52の長手方向の端部に易変曲部が形成されたが、これに限定される必要もなく、たとえば、図14に示すように、接続部材54の長手方向の端部に易変曲部を形成してもよい。たとえば、易変曲部は、側板部68をその上端縁から下方に切り欠いたスリット74であり、接続部材54の長手方向の両端部のそれぞれに3つのスリットが形成され、この3つのスリット74は、接続部材54の端部側へ向かうにつれて順々にその面積が大きく設定される。
【0095】
さらに、上述の各実施例ではいずれも、易変曲部は、補強材52ないし接続部材54の一部を取り除いたスリット62,64,74であったが、これに限定される必要もなく、易変曲部62,64,74は、他の形態により構成されてもよい。たとえば、易変曲部としては、補強材52ないし接続部材54の一部を肉薄にするための凹溝等が考えられる。
【0096】
また、上述の各実施例ではいずれも、隣接する補強材52の長手方向の端部のそれぞれに接続部材54を挿入することによって補強材52どうしを接続したが、これに限定される必要はない。たとえば、図示は省略するが、補強材52の一方端部に、当該補強材52の他方端部に挿入可能な差口形状を有する接続部を形成し、隣接する一方の補強材52の接続部を他方の補強材52の他方端部に挿入することによって補強材52どうしを接続することもできる。この場合には、先ず、一方の補強材52の一方端部(接続部)を他方の補強材52の他方端部に挿入することによって、補強材52どうしが接続される。そして、その他方の補強材52の接続部をさらに別の補強材52の他方端部に挿入し、これを繰り返すことによって、所望の長さの補強用部材10を形成する。
【0097】
勿論、このように補強材52どうしが直接接続された補強用部材10においても、上述した、隣接する補強材52の長手方向の端部のそれぞれに接続部材54を挿入することによって補強材52どうしが接続される補強用部材10と同じように、易変曲部を形成してもよく、突出部を形成してもよい。たとえば、図示は省略するが、易変曲部は、補強材52の一方端部すなわち接続部や、当該接続部が挿入される補強材52の他方端部に形成される。また、図示は省略するが、突出部は、補強材52の底板部56の一部分を窪み状に下向きに曲げ加工または突起状に上向きに曲げ加工することによって形成され、一方の補強材52に対する他方の補強材54の動きを規制する。
【0098】
なお、上述した径や高さ等の具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0099】
10 …螺旋管の補強用部材
12 …ストリップ
14 …ジョイナ
18 …リブ
20,22 …アンカ部
52 …補強材
54 …接続部材
62,64,74 …易変曲部
70,72 …突出部
100 …螺旋管
200 …下水管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のストリップを螺旋状に巻回して形成する螺旋管の補強用部材において、
前記ストリップに取り付けられる補強材を含み、
隣接する補強材の長手方向の端部のそれぞれに接続部材を挿入することによって前記補強材どうしを接続したことを特徴とする、螺旋管の補強用部材。
【請求項2】
前記補強材および前記接続部材の少なくともいずれか一方に形成される易変曲部を備える、請求項1記載の螺旋管の補強用部材。
【請求項3】
前記易変曲部は、前記補強材に前記接続部材が挿入されたときに前記補強材と前記接続部材とが重なり合う範囲に形成される、請求項2記載の螺旋管の補強用部材。
【請求項4】
前記易変曲部は、スリットである、請求項2または3記載の螺旋管の補強用部材。
【請求項5】
前記スリットの占める開口率が前記補強材および前記接続部材のいずれか一方の端部側へ向かうにつれて大きく設定される、請求項4記載の螺旋管の補強用部材。
【請求項6】
前記補強材に対する前記接続部材の動きを規制する突出部を備える、請求項1ないし5のいずれかに記載の螺旋管の補強用部材。
【請求項7】
帯状のストリップを螺旋状に巻回して形成する螺旋管の補強用部材において、
前記ストリップに取り付けられる補強材、および
前記補強材の一方端部に形成されるかつ当該補強材の他方端部に挿入可能な差口形状を有する接続部を含み、
隣接する一方の補強材の接続部を他方の補強材の他方端部に挿入することによって前記補強材どうしを接続したことを特徴とする、螺旋管の補強用部材。
【請求項8】
前記接続部および前記補強材の前記他方端部の少なくともいずれか一方に形成される易変曲部を備える、請求項7記載の螺旋管の補強用部材。
【請求項1】
帯状のストリップを螺旋状に巻回して形成する螺旋管の補強用部材において、
前記ストリップに取り付けられる補強材を含み、
隣接する補強材の長手方向の端部のそれぞれに接続部材を挿入することによって前記補強材どうしを接続したことを特徴とする、螺旋管の補強用部材。
【請求項2】
前記補強材および前記接続部材の少なくともいずれか一方に形成される易変曲部を備える、請求項1記載の螺旋管の補強用部材。
【請求項3】
前記易変曲部は、前記補強材に前記接続部材が挿入されたときに前記補強材と前記接続部材とが重なり合う範囲に形成される、請求項2記載の螺旋管の補強用部材。
【請求項4】
前記易変曲部は、スリットである、請求項2または3記載の螺旋管の補強用部材。
【請求項5】
前記スリットの占める開口率が前記補強材および前記接続部材のいずれか一方の端部側へ向かうにつれて大きく設定される、請求項4記載の螺旋管の補強用部材。
【請求項6】
前記補強材に対する前記接続部材の動きを規制する突出部を備える、請求項1ないし5のいずれかに記載の螺旋管の補強用部材。
【請求項7】
帯状のストリップを螺旋状に巻回して形成する螺旋管の補強用部材において、
前記ストリップに取り付けられる補強材、および
前記補強材の一方端部に形成されるかつ当該補強材の他方端部に挿入可能な差口形状を有する接続部を含み、
隣接する一方の補強材の接続部を他方の補強材の他方端部に挿入することによって前記補強材どうしを接続したことを特徴とする、螺旋管の補強用部材。
【請求項8】
前記接続部および前記補強材の前記他方端部の少なくともいずれか一方に形成される易変曲部を備える、請求項7記載の螺旋管の補強用部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−94670(P2011−94670A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247660(P2009−247660)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【出願人】(000149206)株式会社大阪防水建設社 (44)
【出願人】(507157676)株式会社クボタ工建 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【出願人】(000149206)株式会社大阪防水建設社 (44)
【出願人】(507157676)株式会社クボタ工建 (8)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]