説明

血中グルコース濃度測定装置

【課題】携帯型の血中グルコース濃度測定装置において、被測定者が摂取した飲食物と血糖値との関係を事後的に確認可能な手段を提供する。
【解決手段】携帯型の血中グルコース濃度測定装置10は、血液中のグルコース濃度を示す信号を生成して出力する測定部21と、撮影された被写体の画像信号を生成して出力するカメラ部15と、グルコース濃度を示す信号及び画像信号を記憶する記憶部24と、記憶部24が記憶したグルコース濃度及び画像を示す信号に基づいてグルコース濃度及び画像を表示するディスプレイ12と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定されたグルコース濃度と画像とが関連されて記憶される携帯型の血中グルコース濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、糖尿病の患者が各国において増加している。糖尿病の治療の一例として、インスリン療法がある。インスリンは、血糖値をコントロールする薬物として知られており、糖尿病の治療薬として糖尿病患者に投与されている。インスリンを投与する必要性は、糖尿病患者の血糖値に基づいて判断される。このため、血糖値の把握が糖尿病患者にとって重要である。血糖値とは、血液中のグルコース濃度である。糖尿病患者自らが自分の血糖値を簡易に測定できることを目的として、簡易な血糖測定装置が開発されている。
【0003】
血糖測定装置は、測定された血糖値を記憶する不揮発性の半導体メモリを備えている。記憶された血糖値は、本体に設けられた液晶パネル等に表示されうる。これにより、患者自らが測定した血糖値を、医師が事後的に確認することができる。
【0004】
また、前述されたような血糖値を記憶可能な血糖測定装置には、蓄積された血糖値が上昇傾向にあるのか下降傾向にあるのかを判断する診断機能を備えたものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−79994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
食事における咀嚼中や、食物が口から胃へ移動する際、胃において食物が消化される際に、食物中の澱粉やグリコーゲンが消化酵素によってぶどう糖へ分解される。食事開始から5〜10分後に、ブドウ糖が小腸において吸収され始める。吸収されたブドウ糖は、血液へ入り、その結果、血糖値が上昇し始める。ヒトにおける血糖調節システムは、血糖値の上昇から少し遅れて対応するので、健常者であっても、食事後には血糖値が多少上昇する。
【0007】
血糖値の上昇を確認する手段として75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)が公知である。この試験は、10時間以上絶食した後の早朝空腹時に、75gのブドウ糖を摂取し、その後の血糖値の変化を調べるものである。糖尿病は主に血糖値で診断される。血糖値の数値によって、病型が「糖尿病型」、「正常型」、「境界型」のいずれかに判定される。早朝空腹時血糖値が110mg/dl未満、かつ75gOGTT2時間での血糖値が140mg/dl未満の場合は「正常型」と判定され、早朝空腹時血糖値が126mg/dl未満、かつ75gOGTT2時間での血糖値が200mg/dl未満の場合は「糖尿病型」と判定され、どちらにも属さない場合は「境界型」と判定される。
【0008】
血糖値上昇に対するインスリンの追加分泌の不足やそのタイミングの遅れ、肝臓が糖新生を抑える働きの不全等により、「糖尿病型」や「境界型」の患者は、食後高血糖を起こすことが多い。そのため、「糖尿病型」や「境界型」の患者には、食後血糖値のコントロールが重要である。
【0009】
また、近年、「隠れ糖尿病」が注目されている。隠れ糖尿病は、空腹時の血糖値が「正常型」あるいは「境界型」であるにもかかわらず、75gOGTT2時間では血糖値が200mg/dlを超える。隠れ糖尿病患者は、空腹時血糖値が正常値なので、適切な診断には食後の血糖値に関する情報が必要である。しかし、隠れ糖尿病患者が血糖値を自己測定すると、数日経過した後には、自ら摂取した食事を忘れることも多く、医師が隠れ糖尿病患者の経過観察を的確に行えないことが多い。
【0010】
本発明は前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、携帯型の血中グルコース濃度測定装置において、被測定者が摂取した飲食物と血糖値との関係を事後的に確認可能な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 本発明に係る携帯型の血中グルコース濃度測定装置は、血液中のグルコース濃度を示す信号を生成して出力する測定部と、撮影された被写体の画像信号を生成して出力するカメラ部と、上記グルコース濃度を示す信号及び画像信号を記憶する記憶手段と、上記記憶手段が記憶したグルコース濃度を示す信号に基づいてグルコース濃度を表示する第一表示手段と、上記記憶手段が記憶した画像信号に基づいて画像を表示する第二表示手段と、を備える。
【0012】
ここで画像信号とは、被写体から反射した光に応じてCMOSセンサーなどが発生させる電気信号である。この画像信号には、最適な形で整形・AD変換・符号化されたものが含まれる。
【0013】
測定されたグルコース濃度及び撮影された被写体の画像は、記憶手段に記憶される。そして、記憶手段に記憶されたグルコース濃度及び画像は、第一表示手段又は第二表示手段に表示される。この第一表示手段と第二表示手段とは、同一のものであってもよい。これにより、例えば、被測定者が飲食の際に撮影した飲食物の画像及び血中グルコース濃度が表示される血中グルコース濃度測定装置が実現される。
【0014】
(2) 上記測定部は、血液中のグルコース濃度を示す信号を生成し、日時信号と共に第一信号として出力するものであり、上記カメラ部は、撮影された被写体の画像信号を生成し、日時信号と共に第二信号として出力するものであり、上記記憶手段は、上記第一信号及び第二信号をそれぞれ第一データ及び第二データとして記憶するものであってもよい。上記血中グルコース濃度測定装置は、上記第一表示手段が表示した上記グルコース濃度の中から操作者が任意の一つを選択するための入力を行うことを可能とし、当該入力された一つを示す信号を出力する第一入力手段と、上記第一入力手段が出力した信号が示す上記グルコース濃度と対応する測定日時、及び上記記憶手段に予め記憶された第三データ中の画像表示基準に基づいて、上記撮影日時が特定の条件を満たす上記第二データを選別する選別手段と、を更に具備する。上記第二表示手段は、上記選別された第二データが示す撮影日時及びそれと対応する上記被写体の画像のうち、少なくとも上記被写体の画像の少なくとも一つを表示する。
【0015】
ここで、日時信号とは日時情報を含んだ電気信号である。この日時信号は、数値表現されたデジタル信号を含む。
【0016】
撮影された上記被写体の画像、及び測定された上記グルコース濃度は、日時信号と共に上記記憶手段に記憶される。表示の際には、まず、記憶された上記グルコース濃度が表示される。続いて、その中から選択された上記グルコース濃度の測定日時、及び予め記憶された画像表示基準に基づいて、上記撮影日時が特定の条件を満たす上記被写体の画像が表示される。
【0017】
例えば、上記被写体の画像として、被測定者が飲食の際に撮影した飲食物画像を用いることができる。これにより、飲食の日時が、血中グルコース濃度の測定日時と特定の関係にある飲食物画像が表示される。
【0018】
(3) 上記測定部は、採取された血液試料に対して電気的測定手段を用いることにより、上記グルコース濃度を示す電気信号を生じさせるように構成されてもよい。ここで、血液試料とは、被測定者から採取された血液や血清、血漿などを含む概念である。また、電気的測定手段とは、上記血液試料におけるグルコースとの電気化学的な反応によって、グルコース濃度に対応した電気量を有する電気信号によって、血液資料中のグルコース濃度を測定可能な手段をいう。
【0019】
電気的測定手段において、上記測定部が持つセンサーは簡単な構成で実現されることができる。このため、電気的測定手段を用いた血中グルコース濃度測定装置は容易に小型化されることができる。
【0020】
(4) 本発明に係る血中グルコース濃度測定装置は、上記記憶された第一データを上記測定日時の降順又は昇順にソートして第一線形リストのデータ列を生成する第一線形リスト生成手段と、上記操作者の操作に基づき上記第一線形リストを上流又は下流方向に参照し、取得したデータに基づき上記第一表示手段の表示を更新させる第一表示更新手段と、を更に備えたものであってもよい。上記第一表示手段は、上記第一線形リスト内の上記測定日時及び上記グルコース濃度のうち少なくとも上記グルコース濃度の少なくとも一部を当該第一線形リストの並びに従い表示する。
【0021】
表示の際には、記憶された上記グルコース濃度の少なくとも一部が、上記測定日時の降順又は昇順の並びに従って表示される。また、表示される上記グルコース濃度は、操作者の操作により未来又は過去のものに更新されることができる。従って、操作者は、時系列に沿った上記グルコース濃度の変化を一見して理解することができる。
【0022】
(5) 本発明に係る血中グルコース濃度測定装置は、上記操作者が時間範囲を入力することを可能にし、当該入力された時間範囲を示す画像表示基準を第三信号として出力する第二入力手段を更に備えたものであってもよい。上記記憶手段は、上記画像表示基準を上記第三データとして内部に保存するように構成されてもよい。
【0023】
これにより、操作者は事前に任意の上記画像表示基準を入力することができる。
【0024】
(6) 上記選別手段は、上記第一入力手段の出力信号が示す上記グルコース濃度と対応する測定日時、および上記画像表示基準が示す時間範囲に基づき、上記記憶された第二データ中の上記撮影日時から当該測定日時に掛けての時間間隔が当該時間範囲に収まる第二データを選別し、一覧のデータ列を生成し、上記第二表示手段は、当該一覧中の少なくとも一つの上記第二データが示す上記被写体の画像及び撮影日時のうち少なくとも上記被写体の画像を表示するように構成されてもよい。
【0025】
上記グルコース濃度が選択された際、上記測定日時から遡って一定期間内に撮影された上記被写体の画像が表示される。従って、上記被写体の画像として、被測定者が撮影した飲食物画像を用いることで、操作者は、上記グルコース濃度の測定前一定期間内に飲食されたものを知ることができる。
【0026】
(7) 本発明に係る血中グルコース濃度測定装置は、上記一覧中の上記第二データを上記撮影日時の降順又は昇順にソートし、第二線形リストのデータ列を生成する第二線形リスト生成手段と、上記第二線形リスト内の上記撮影日時の少なくとも一部を当該第二線形リストの並びに従い表示する第三表示手段と、上記操作者の操作に基づき上記第二線形リストを上流又は下流方向に参照し、取得したデータに基づき上記第三表示手段の表示を更新させる第二表示更新手段と、上記第三表示手段が表示した撮影日時の中から操作者が任意の一つを選択するための入力を行うことを可能とし、当該入力された一つを示す信号を出力する第三入力手段と、を更に備えたものであってもよい。上記第二表示手段は、上記第三入力手段の出力信号が示す上記撮影日時及びそれと対応する上記被写体の画像のうち少なくとも上記被写体の画像を表示するように構成されてもよい。
【0027】
上記グルコース濃度が選択された際、まずは、上記測定日時から遡って一定期間内に撮影された上記被写体の画像の撮影日時が時系列に沿って一覧表示される。続いて、その中から選択された上記被写体の画像が表示される。従って、操作者は、表示したい画像の撮影日時を表示前に確認することができる。
【0028】
(8) 本発明に係る血中グルコース濃度測定装置は、上記一覧中の上記第二データが示す上記被写体の画像を元に、当該被写体の画像よりも低解像度のサムネイル画像のデータを生成するサムネイル画像生成手段と、上記サムネイル画像を一覧表示する第四表示手段と、上記表示されたサムネイル画像から操作者が一つを選択するための入力を行うことを可能とし、当該入力された一つを示す信号を出力する第四入力手段と、を更に備えたものであってもよい。上記第二表示手段は、上記第四入力手段の出力信号が示すサムネイル画像に対応する原画像を表示する様に構成されてもよい。
【0029】
上記グルコース濃度が選択された際、まずは、上記測定日時から遡って一定期間内に撮影された上記被写体の画像のサムネイル画像が一覧表示される。続いて、その中から選択された上記被写体の画像が表示される。従って、操作者は表示したい画像のサムネイル画像を表示前に確認することができる。
【0030】
(9) 本発明に係る血中グルコース濃度測定装置は、上記第二表示手段により表示される上記被写体の画像と対応する上記撮影日時から、上記第一入力手段により出力された信号が示す上記グルコース濃度と対応する上記測定日時にかけての時間間隔を計算する撮影−測定間隔計算手段を更に備えてもよい。上記第二表示手段は、上記被写体の画像と共に上記時間間隔を表示するように構成されてもよい。
【0031】
従って、上記被写体の画像として、被測定者が撮影した飲食物画像を用いることで、操作者は、表示されている上記飲食物画像が、測定の何分前に飲食されたものであるかを確認することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、グルコース濃度及び被写体の画像を表示できる携帯型の血中グルコース濃度測定装置が実現される。従って、被測定者の飲食物の画像が表示されることにより、グルコース濃度の測定値と関連の深い飲食物を操作者が知ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る血中グルコース濃度測定装置10の外観を示しす斜視図である。
【図2】図2は、制御部27の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図3は、記憶部24に蓄積されるデータを示す概念図である。
【図4】図4は、血糖値が表示される際に、制御部27が行う処理を示したフローチャートである。
【図5】図5は、血糖値が表示される際の、表示画面の一例を示す図である。
【図6】図6は、選択された血糖値に関連する飲食物画像の候補が選別される際に制御部27が行う処理を示すフローチャートである。
【図7】図7は、飲食物画像が表示される際の、表示画面の一例を示す図である。
【図8】図8は、変形例1に係る第三データの入力画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、適宜図面が参照されて、本発明の好ましい実施形態が説明される。なお、以下に説明される各実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態が適宜変更できることは言うまでもない。
【0035】
[血中グルコース濃度測定装置10の概略構成]
図1に示されるように、血中グルコース濃度測定装置10は、本体11に対してセンサー16が着脱自在に構成されたものである。本体11は、薄平な箱形状である。本体11の表側には、ディスプレイ12及び3つの操作ボタン13a,13b,13cが設けられている。ディスプレイ12は、後述される表示部25の一部をなすものであり、血糖値や画像などが表示され得る。操作ボタン13a,13b,13cは、後述される操作部26の一部をなすものであり、ユーザに押下されることによって、所定の入力信号を発生させる。なお、操作ボタン13a,13b,13cの数などは適宜設計されるものである。
【0036】
本体11の側面にはセンサー挿入口14が設けられている。センサー挿入口14は、センサー16が挿入されて保持されるためのものである。同図には現れていないが、センサー挿入口14の奥には電極が設けられており、その電極を通じて本体11の制御部27とセンサー16とが電気信号を伝達可能に連結される。センサー16は、測定試料である血液が導入され、その血液中のグルコースと電気化学的な反応を生じさせるものである。このようなセンサー16は、いわゆるバイオセンサーとして公知である。センサー16において、血中のグルコースと電気化学的な反応が生じ、その反応において生じた電流を制御部27が受信する。このセンサー16やセンサー挿入口14の電極などが測定部21を構成する。
【0037】
本体11の裏側にはレンズ15が設けられている。このレンズ15は、後述されるカメラ部22の一部をなすものである。レンズ15を介して、被写体の反射光がカメラ部22に入射され、その入射光がCMOSセンサなどによって電気信号に変換される。
【0038】
[本体11の内部構成]
図2に示されるように、本体11には、制御部27が設けられている。制御部27は、各種演算を行うためのCPU、各種プログラムが格納されるROM、各種演算のためのデータを一時保存するRAM、データを電送するバスなどによって構成される演算装置である。この制御部27に対して、測定部21、カメラ部22、時計部23、記憶部24、表示部25及び操作部26が、電気信号を送受信可能に接続されている。
【0039】
制御部27には、センサー16に流れる電流に基づいてグルコース濃度を演算するプログラム、選択されたグルコース濃度に対して所定の条件を満たす画像データを選別するためのプログラム、蓄積されたグルコース濃度をソートしてデータ列を生成するプログラム、蓄積された画像データのサムネイル画像を生成するプログラム、所定のグルコース濃度の測定日時と所定の画像データの撮影日時との時間間隔を計算するプログラムなどが格納されている。これらプログラムに基づいて、制御部27が、本発明における選別手段、第一線形リスト生成手段、第一表示更新手段、第二線形リスト生成手段、第二表示更新手段、サムネイル画像生成手段、及び撮影−測定間隔計算手段として機能する。
【0040】
測定部21は、試料としてセンサー16に導入された血中のグルコースと電気化学反応を発生させて、グルコース濃度に応じた電気信号を発生させるものである。センサー16には、作用極と対極とが設けられており、作用極には、グルコースデヒドロゲナーゼ又はグルコースオキシダーゼとメディエータが固定されている。例えば、作用極に固定されたグルコースオキシダーゼによって、血中のグルコースがグルコン酸及び過酸化水素に分解され、その過酸化水素が水及び電子に分解される。このようにして発生した電子が作用極に伝達される。一方、対極からは血液中に電子が供給される。このようにして、グルコースオキシダーゼとグルコースとの反応によって、作用極と対極との間に電流が流れる。そして、流れた電流値に基づいて、血液中のグルコース濃度、つまり血糖値が算出される。このような反応が本明細書において電気化学的反応と称される。なお、測定部21には、センサー16からの電気信号を整形したり、数値表現されたデジタル信号に変換したりするための専用回路が備えてられていてもよい。
【0041】
カメラ部22は、被写体が反射した光が入射されるレンズ15と、レンズ15に入射した光を電気信号に変換するCMOSセンサーと、CMOSセンサーが生成した画像信号をデジタルデータに変換するAD変換回路と、画像データを保存用の適切なサイズに圧縮する画像圧縮アルゴリズムを備えた回路とを備える。
【0042】
時計部23は、血糖値測定、及び飲食物画像撮影の際に、制御部27が時刻信号を取得するための本体内蔵の時計である。時計部23は、時刻信号を制御するための水晶振動子を有する。また、時計部23は、地上波時刻情報とリンクし、時刻を自動で調整するための受信器及び専用回路を備えていてもよい。
【0043】
記憶部24は、記憶部24は、不揮発性の半導体メモリである。また、規格化されたフラッシュメモリの専用スロットが本体11に設けられて、記憶部24が着脱可能な外部メディアとして構成されていてもよい。記憶部24が、制御部27に基づいて内部にデータを記憶することによって、本発明における記憶手段として機能する。
【0044】
表示部25は、ディスプレイ12と、ディスプレイ12を制御する回路とを有する。ディスプレイ12には、文字や画像が表示され得る。ディスプレイ12としては、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイが挙げられる。表示部25が、制御部27に基づいて各種情報を表示することによって、本発明における第一表示手段、第二表示手段、第三表示手段及び第四表示手段として機能する。
【0045】
操作部26は、本体11に設けられた操作ボタン13a,13b,13cと、各操作ボタン13a,13b,13cの押下に対応した所定の入力信号を発生させる回路とを有する。例えば、操作ボタン13aがモード選択のための入力を受け付け、操作ボタン13bがデータ選択のための入力を受け付け、操作ボタン13cが決定のための入力を受け付ける。操作部26が生成する入力信号を受けて、制御部27が各種動作を実行する。なお、操作部26は、必ずしも測定部21やカメラ部22、表示部25から独立して設けられている必要はなく、例えば、感圧式のタッチパネルセンサーがディスプレイ12に設けられており、そのタッチパネルセンサーが操作部26として機能してもよい。操作部26が、本発明における第一入力手段、第二入力手段及び第三入力手段として機能する。
【0046】
[血中グルコース濃度測定装置10の動作]
次に、血中グルコース濃度測定装置10が備える機能について解説する。血中グルコース濃度測定装置10が備える主要な機能は、血中グルコース濃度(血糖値)を測定するための機能、飲食物を撮影するための機能、蓄積されたデータを参照するための機能である。また、血中グルコース濃度測定装置10は、蓄積されたデータを参照するための機能に付随する機能として、画像表示基準を設定するための機能を備える。また、血中グルコース濃度測定装置10は、記憶部24内の不要なデータを削除する機能、時計部23の日時を合わせる機能等も持つが、それらは当業者が最適な形で適宜設計することができる。以下、主要な機能が順に説明される。
【0047】
[血中グルコース濃度を測定するための機能]
被測定者は、本体11の操作ボタン13aを押下して、本体11を血中グルコース濃度を測定するモードにする。また、本体11にセンサー16をセットする。血中グルコース濃度の測定に際して、被測定者の血液が採取される。この血液の採取は、例えばランセットを用いて、被測定者自らが行うことができる。この血液が、本発明における、血液試料に相当する。採取された血液は試料としてセンサー16に導入される。各図には詳細に示されていないが、センサー16には血液を導入するための開口が形成されており、その開口に血液を付着させると、毛管作用によってセンサー16内に血液が導入される。導入された血液は、作用極と対極との間に保持されて、前述されたような電気化学的反応を起こす。この電気化学的反応によりセンサー16の作用極と対極との間に血中グルコース濃度に対応する電気量の電流が発生する。この電流が、本発明における、血液中のグルコース濃度を示す信号に相当する。また、血液から電流を生じさせる一連の方法が、本発明における、電気的測定手段に相当する。
【0048】
電流は、制御部27がセンサー16において流れた電流を増幅や、整形、AD変換等を行うことによって、血中グルコース濃度を示す数値データに変換される。その数値データは、記憶部24に記憶される。これらの整形・AD変換処理は、制御部27の回路や制御部27がROM内にもつプログラムを用いて行われる。あるいは、これらの整形・AD変換処理は、信号が制御部11に渡されるよりも前に、測定部21が持つ専用回路により行われていてもよい。なお、このような血中グルコース濃度の測定は、センサー16に血液が導入されることによって自動的に行われるようにプログラムされていてもよい。
【0049】
測定の際、測定部21は、時計部23から日時信号を取得し、血液中のグルコース濃度を示す信号と共にそれを出力する。この血液中のグルコース濃度を示す信号と日時信号のセットが、本発明における第一信号に相当する。制御部27は、その日時信号を測定値データと対応付けた状態で記憶部24に記憶させる。例えば、この対応付けは、記憶部24内に専用領域を設けることで実現されてもよい。あるいは、この対応付けは、日時を測定値データのヘッダ情報として記憶することにより実現されてもよい。この測定値データと日時データのセットが、本発明における第一データに相当する。
【0050】
[飲食物の撮影]
被測定者は、食事を行う前に、食事対象である飲食物の撮影を行う。具体的には、操作ボタン13aを押下して本体11を撮影モードにする。被測定者は、レンズ15を食事対象である飲食物に向け、操作ボタン13cを押下してシャッターを切る。飲食物からの反射光は、レンズ15を通じてCMOSセンサーにより感知され、シャッターが切られたタイミングにおいて電気信号に変換される。この電気信号は画像情報を含むものである。この電気信号が、本発明における被写体の画像信号に相当する。制御部27は、カメラ部22から電気信号を受信し、その電気信号に対して整形・AD変換・圧縮等の処理を行ってデジタル画像データに変換する。このデジタル画像データは、記憶部24に記憶される。これらの整形・AD変換・圧縮等の処理は制御部27の回路や制御部27がROM内にもつプログラムを用いて行われる。あるいは、これらの整形・AD変換・圧縮等の処理は、信号が制御部27に渡されるよりも前にカメラ部22が持つ専用回路により行われてもよい。あるいは、それらのうちの一部の処理はCMOSセンサー内部で行われてもよい。また、画像データの縦横サイズや圧縮のアルゴリズムは、ディスプレイ12の解像度や記憶部24の容量に応じて、当業者が最適なものを選択することができる。
【0051】
撮影の際、カメラ部22は、時計部23から日時信号を取得し、画像信号と共にそれを出力する。この画像信号と日時信号のセットが、本発明における第二信号に相当する。制御部27は、その日時信号を画像データと対応付けた状態で記憶部24に記憶させる。この取得及び対応付けの手順は血糖値測定の際と同様の方法で行うことができる。この画像データと日時データのセットが、本発明における第二データに相当する。図3には、記憶部24内に保持されるデータの概要が示されている。図中の第三データについて、以下に解説される。
【0052】
第三データは画像表示基準を示すものである。画像表示基準は、後述される飲食物画像を表示するステップにおいて、表示される画像を選別するための基準として、制御部24が用いるものである。本実施形態では、画像表示基準は、飲食物画像の撮影日時から血糖値の測定日時までの時間間隔の上限を示すものとして設定されている。
【0053】
[画像表示基準の設定]
画像表示基準は、工場出荷時に予め「120分」が設定されている。この値は操作者が変更することができる。その際、操作者は操作ボタン13aの押下により、画像表示基準を入力するための入力画面をディスプレイ12に表示させる。入力画面には、15分刻みで、15分から300分までの時間間隔を選択可能なプルダウンメニューが表示される。操作者は、操作ボタン13bの押下により、そのうちの一つを選択し、操作ボタン13c
の押下により、選択した時間間隔を決定する操作を行うことができる。その際、各操作ボタンは、制御部27の制御により、本発明における第二入力手段として機能している。各操作ボタンにより出力され信号が示す画像表示基準は、制御部27により適切なデータ形式に変換される。そして、画像表示基準は、第三データとして記憶部24に記憶される。
【0054】
[血中グルコース濃度及び飲食物画像の参照]
記憶部24に記憶された血中グルコース濃度及び飲食物画像は、表示部25に表示され得る。この表示は、血中グルコース濃度を表示するステップと、それに基づく飲食物画像を表示するステップに大別される。
【0055】
以下、血中グルコース濃度を表示するステップが説明される。被測定者又は医師の操作により、制御部27は記憶部24に記憶されている第一データ、すなわち測定データと日時データのセットを参照する。血中グルコース濃度は、その測定日時の順で表示される。図4に示されるように、制御部27は、記憶部24に記憶された測定日時を順に読み込む。そして、制御部27は、適切なソートアルゴリズムにより、記録部24に記憶された測定データと日時データのセットに対して、測定日時の順に並べた線形リスト(第一線形リスト)を生成する。制御部27は、このソートされた線形リストの順に、各測定日時、及び対応する血糖値の一部をディスプレイ12に並べて表示させる。これにより、血中グルコース濃度が測定日時の順で表示される。この際、制御部が第一線形リストを生成する一連の処理が、本発明における第一線形リスト生成手段に相当する。また、ディスプレイ12は制御部27の制御により、本発明における第一表示手段として機能している。図5は、その表示画面の一例である。
【0056】
血中グルコース濃度を表示するステップのフローチャートが図4に示される。S11はループ1の開始であり、S13がその終端である。ループ中のS12の処理において、記憶部24に記憶されている第一データ、すなわち測定データと日時データのセットの一つが制御部27により読み込まれ、RAMにロードされる。また、S11においてループの終了条件が指定されており、記憶部24内の全ての第一データが参照された際にループは終了する。従って、ループの中で、記憶部24中の第一データが一つずつRAMにロードされ、全てがRAMにロードされた時点でループ1は終了する。続けて、S14の処理において、ロードされた第一データのソートが行われる。制御部27は、第一データを、その日時データが示す日時の降順にソートする。このソートは、ROMに記憶された適切なソートアルゴリズムを備えたプログラムを用いて行われる。制御部27は、ソート結果に基づき、第一データの線形リストを生成する。続けて、S15において、グルコース濃度の表示が行われる。制御部27は、線形リストの先頭のノード(最後に測定されたデータ)から順に第一データを参照する。ディスプレイ12に同時に表示可能な個数の第一データ(本実施形態では5つ)を参照した後、制御部27は、画面上部が過去のデータとなるように、第一データが示すグルコース濃度及び測定日時を、ディスプレイ12に縦に並べて表示させる。
【0057】
前述された表示は、被測定者や医師の操作により、過去又は未来のものに更新され得る。制御部27は、操作ボタン13bの押下により、線形リストを上流または下流に辿る。そして、制御部27は、新たに取得したデータに基づき、ディスプレイ12の表示を更新させる。これにより、表示される対象は、測定日時が過去側へまたは未来側へとスライドされ得る。例えば、図5に示される状態から、過去側のデータを参照する操作がなされた場合、制御部27は、線形リストを下流に辿り、2009年10月1日19時35分のデータよりも一つ過去のデータを取得する。そして、新たに取得したデータをディスプレイ12の一番上に表示する。他のデータは、1データ分画面下にスライドされる。そして、2009年10月3日9時12分のデータは画面から消去される。このように、制御部27が、ディスプレイ12の表示を更新させる一連の処理が、本発明における第一表示更新手段に相当する。
【0058】
[飲食物画像の表示]
以下、飲食物画像の表示が説明される。飲食物画像を表示するステップは、血中グルコース濃度を表示するステップから連続して行われる。被測定者又は医師は、操作ボタン13bを押下して、ディスプレイ12に表示された複数の血中グルコース濃度の中から一つを選択し、操作ボタン13cを押下して、選択した血中グルコース濃度を決定する操作を行う。その際、各操作ボタンは、制御部27の制御により、本発明における第一入力手段として機能している。制御部27は、各操作ボタンにより出力された信号が示す血中グルコース濃度と対応する測定日時を記憶部24から取得する。また、制御部27は、記憶部24に記憶されている画像表示基準を取得する。
【0059】
次に、制御部27は記憶部24に記憶されている第二データ、すなわち画像データ及び日時データのセットを参照し、その中の日時データから、選択された血中グルコース濃度の測定日時との時間間隔が、画像表示基準が示す上限を超えないものを選別する。制御部27は、選別した画像データ及び日時データから表示候補の一覧を生成する。図6に示されるように、血中グルコース濃度の選択、画像表示基準の取得の後、第二データが順に読み込まれている。そして、それぞれが上記の条件に適うかどうかが判断されている。条件に適う第二データは表示候補の一覧に追加されている。この際、制御部が一覧を生成する一連の処理が、本発明における選別手段に相当する。
【0060】
表示候補の一覧を生成する一連の処理のフローチャートが図6に示される。S21は、操作者がグルコース濃度を選択するための処理である。上述された方法で操作者が選択したグルコース濃度に基づき、制御部27は、そのグルコース濃度に対応する測定日時を記憶部24から取得し、RAMにロードさせる。S22は、制御部が画像表示基準を読み込む処理である。制御部27は、記憶部24に記憶されている画像表示基準を取得し、RAMにロードさせる。S23はループ1の開始であり、S27がその終端である。このループでは、記憶部24に記憶されている第二データを元に、表示候補の一覧が生成される。まず、S24では、第二データ、すなわち画像データ及び日時データのセットの一つが読み込まれ、RAMにロードされる。S25では、読み込まれた第二データが、表示候補の一覧に追加されるべきかどうかが判定される。制御部27は、第二データ中の撮影日時から、S21で読み込まれた測定日時に掛けての時間間隔を計算する。ここで、測定日時よりも撮影日時が遅い日時であった場合は、時間間隔はマイナスの値として算出される。続けて、算出された時間間隔と、S22で読み込まれた画像表示基準が示す時間間隔と、を比較する。算出された時間間隔が、正の値であり、かつ画像表示基準が示す時間間隔以下であった場合、処理を「YES」のルートへと分岐させる。そうでない場合は、処理を「NO」のルートへと分岐させる。処理が「NO」のルートへと分岐された場合は、そこがループ終端となるが、処理が「YES」のルートへと分岐された場合は、S26の処理が実行される。S26の処理では、第二データが、表示候補の一覧に追加される。この一覧は、複数の第二データを保持することが可能なデータ構造であり、制御部によりRAM内に生成される。また、S23において、ループの終了条件が指定されており、記憶部24内の全ての第二データが参照された際にループは終了する。従って、記憶部24の全ての第二データに対して、それが表示候補の一覧に追加されるかどうかの判定が行われ、一覧が生成された後に、ループ1は終了することとなる。
【0061】
一覧中の撮影日時の少なくとも一部は、時系列に沿ってディスプレイ12に表示される。その表示の手順は、前述された血糖値の表示と同様の方法で行われることができる。即ち、制御部27は、一覧中の撮影日時を参照する。そして、一覧中の第二データを、撮影日時の昇順又は降順に並べた線形リスト(第二線形リスト)を生成する。制御部27は、撮影日時を、線形リストの並びに従い、ディスプレイ12に表示させる。また、撮影日時の一覧と共に、ディスプレイ12の上部には、選択された血糖値と、一覧表示されている撮影日時が測定前120分以内のものである旨が表示される。この際、制御部が第二線形リストを生成する一連の処理が、本発明における第二線形リスト生成手段に相当する。また、ディスプレイ12は制御部27の制御により、本発明における第三表示手段として機能している。その表示画面の一例が図7中の表示例(第三表示手段)に示される。
【0062】
前述された表示は、被測定者や医師の操作により、過去又は未来のものに更新され得る。その方法は、前述された血糖値の表示の更新と同様の方法で行われることができる。この際、制御部が表示の更新を行う一連の処理が、本発明における第二表示更新手段に相当する。
【0063】
操作者は操作ボタン13bの押下により、表示された撮影日時から一つを選択し、操作ボタン13cの押下により、選択した撮影日時を決定する操作を行うことができる。その際、各操作ボタンは、制御部27の制御により、本発明における第三入力手段として機能している。制御部27は、各操作ボタンが出力した信号が示す撮影日時と対応する飲食物画像を一覧中の第二データから取得し、ディスプレイ12に表示させる。
【0064】
また、飲食物画像と共に、その飲食日時と、それが血糖値の測定何分前の飲食であるかが表示される。制御部27は飲食物画像に対応する撮影日時を飲食日時として表示させると共に、当該撮影日時から、選択されたグルコース濃度の測定日時までの時間間隔を計算し、それをディスプレイ12に表示させる。この際、制御部が当該時間間隔を計算する一連の処理が、本発明における撮影−測定間隔計算手段に相当する。また、ディスプレイ12は制御部27の制御により、本発明における第二表示手段として機能している。その表示画面の一例が図7中の表示例(第二表示手段)に示される。
【0065】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態に係る携帯型の血中グルコース濃度測定装置によると、撮影された飲食物画像、及び測定された血中グルコース濃度(血糖値)は、日時信号と共に記憶部24に記憶される。表示の際には、まず、記憶されたグルコース濃度が表示される。続いて、その中から選択されたグルコース濃度の測定日時、及び予め記憶された画像表示基準に基づいて、撮影日時が特定の条件を満たす飲食物画像が表示される。従って、操作者は、グルコース濃度の測定値と食事との関係を容易に理解することができる。
【0066】
また、測定部21には電気的測定手段が用いられているため、センサー16は簡単な構成で実現されることができる。これにより、本実施形態に係る血中グルコース濃度測定装置は容易に小型化されることができる。従って、日常的な測定を必要とする患者が、機器を携帯する負担を軽減することができる。また、電気的測定手段が用いられることで、短時間での測定が可能となる。従って、患者の負担はさらに軽減されることができる。
【0067】
また、表示の際には、記憶されたグルコース濃度の少なくとも一部が、測定日時の降順又は昇順の並びに従って表示され、表示されるグルコース濃度は、操作者の操作により未来又は過去のものに更新されるため、ディスプレイ12のサイズに関わらず、必要な測定値は順にディスプレイ12に表示されることができる。従って、操作者は、時系列に沿った上記グルコース濃度の変化を一見して理解することができる。
【0068】
また、事前に任意の画像表示基準を入力することができるため、患者に合わせた画像表示基準を医師が設定することができる。
【0069】
また、グルコース濃度が選択された際、測定日時から遡って一定期間内に撮影された飲食物画像が表示されるため、操作者は、グルコース濃度の測定前一定期間内に飲食されたものを知ることができる。
【0070】
また、グルコース濃度が選択された際、まずは、測定日時から遡って一定期間内に撮影された飲食物画像の撮影日時が時系列に沿って一覧表示され、その中から選択された飲食物画像が表示されるため、操作者は、表示したい画像の撮影日時を表示前に確認することができる。また、測定のどの程度前に飲食がされたのかを一見して理解することができる。
【0071】
また、ディスプレイ12に表示される飲食物画像の撮影日時から、選択されたグルコース濃度の測定日時にかけての時間間隔を計算する手段を備えているため、操作者は、表示されている飲食物画像が、測定の何分前に飲食されたものであるかを確認することができる。このため、医師は、限られた診察時間の中で、即座にグルコース濃度と飲食物との関連の大きさを判断することができる。
【0072】
総括として、本実施形態に係る携帯型の血中グルコース濃度測定装置により、飲食物と血糖値との関連を容易に記憶及び参照することができる。これにより、医師が、患者の経過観察を適切に行うことが可能となる。また、当業者は上記の他に適宜必要な機能を追加することができる。例えば、記憶部24に蓄積された血糖値データ及び飲食物画像を外部のコンピュータと送受信するための入出力インターフェイスを付加的に備えることができる。これにより、転送したデータをデータベース化したり、あるいは別途開発された専用のソフトウェアを用いて血糖値の変動に関する分析を行う等の応用が可能である。
【0073】
[変形例1]
以下、前述された実施形態の一つめの変形例が説明される。この変形例では、飲食物画像の表示の際に、表示対象となる飲食物画像が存在しない場合は、撮影日時が、選択されたグルコース濃度の測定日時よりも過去のものであり、かつ当該測定日時と最も近い画像が強制表示されるように設定を行うことができる。
【0074】
本変形例において、画像表示基準は、時間間隔を示す数値の他に、追加で強制表示フラグを含む。この強制表示フラグは上述の設定が為されているかどうかを示すものである。
【0075】
[画像表示基準の設定]
本変形例に係る画像表示基準の設定画面は、時間間隔を選択可能なプルダウンメニューの他に、上述の設定を行うかどうかを選択するためのチェックボックスを追加で備える。その入力画面の一例が図8に示される。操作者は、操作ボタン13aの押下により、設定対象として、プルダウンメニューとチェックボックスとを切り換える操作を行うができる。プルダウンメニューの設定の手順は、上述された実施形態の通りであるため、詳細は省略される。設定対象として、チェックボックスが選択された際、操作者は、操作ボタン13bの押下により、チェックボックスにチェックが入るかどうかを切り換え、13cの押下により、チェック状態を決定する操作を行うことができる。図8の例では、記憶される画像表示基準は、時間間隔の上限としての「120」と、強制表示フラグの「1」となる。仮に、強制表示を行わない設定がされた場合は、強制表示フラグは、それを示す「0」となる。
【0076】
本変形例おいて、表示候補の一覧を生成する際に、制御部は、表示対象が存在するか否かを示す表示判定フラグをRAM内に生成する。表示判定フラグの初期値として、表示対象が存在しないことを示す「0」が設定されている。図6に示されるフローチャートの中で、S26は、上述された処理に加え、表示判定フラグを「1」に更新する処理を行う。即ち、一覧に追加された第二データが一件でも存在した場合は、表示判定フラグは「1」に更新されることとなる。
【0077】
図6に示されるフローチャートが終了した際、制御部27は、強制表示フラグ、及び表示判定フラグを確認する。
【0078】
強制表示フラグが「1」、かつ表示判定フラグが「0」である場合、制御部27は、記憶部24中の第二データを順に参照する。そして、各第二データ中の撮影日時から、選択されたグルコース濃度の測定日時までの時間間隔をそれぞれ計算する。制御部は、ROM内に記憶された選択アルゴリズムを備えたプログラムを併用することで、当該時間間隔が正であり、かつ最小のものを選別し、対応する画像をディスプレイ12に表示させる。即ち、撮影日時が、選択されたグルコース濃度の測定日時よりも過去のものであり、かつ当該測定日時と最も近い日時に撮影された画像がディスプレイ12に表示される。飲食物画像と共に、その飲食日時と、それが血糖値の測定何分前の飲食であるかが表示される点は前述された実施形態と同様である。
【0079】
また、強制表示フラグが「0」、あるいは表示判定フラグが「1」である場合、上述された実施形態と同様の処理が継続される。
【0080】
このような変形例によると、操作者が画像表示基準として設定した時間範囲内に表示対象となる飲食物画像が存在しなかった場合も、一件の飲食物画像が必ず表示される設定を行うことができるため、操作者が、時間範囲を拡張して再表示を繰り返す手間を省略することができる。
【0081】
[変形例2]
以下、前述された実施形態の二つめの変形例が説明される。この変形例では、飲食物画像を表示するステップにおいて、一覧中の撮影日時に代えて、飲食物画像のサムネイル画像がディスプレイ12に一覧表示される。
【0082】
制御部27は、一覧中の表示対象画像から、低解像度のサムネイル画像のデータを生成し、生成されたサムネイル画像をディスプレイ12に一覧表示させる。サムネイル画像のデータは、制御部27のROM内に記憶された、画像処理アルゴリズムを備えたプログラムによって生成されることができる。この際、制御部がサムネイル画像のデータを生成する一連の処理が、本発明におけるサムネイル画像生成手段に相当する。また、ディスプレイ12は制御部27の制御により、本発明における第四表示手段として機能している。その表示画面の一例が図7中の表示例(第四表示手段)に示される。
【0083】
操作者は操作ボタン13bを押下することで、表示されたサムネイル画像から一つを選択し、操作ボタン13cを押下することで、サムネイル画像を決定する操作を行うことができる。その際、各操作ボタンは、制御部27の制御により、本発明における第四入力手段として機能している。制御部27は、各操作ボタンが出力した信号が示すサムネイル画像の原画像を一覧中の第二データから取得し、表示画面12に表示させる。また、飲食物画像と共に、その飲食日時と、それが血糖値の測定何分前の飲食であるかが表示される点は前述された実施形態と同様である。
【0084】
このような変形例によると、表示対象となるサムネイル画像の一覧が予め表示され、その後、選択されたサムネイル画像の原画像が表示されるため、操作者は、血糖値と関連の深そうな飲食物を、サムネイル画像により絞り込むことができる。そして、原画像を確認することで、その飲食物に含まれる食材等をより詳しく知ることができる。
【符号の説明】
【0085】
11・・・本体
12・・・ディスプレイ(第一表示手段、第二表示手段、第三表示手段、第四表示手段)
13a・・・操作ボタン
13b・・・操作ボタン(第一入力手段、第二入力手段、第三入力手段、第四入力手段)
13c・・・操作ボタン(第一入力手段、第二入力手段、第三入力手段、第四入力手段)
14・・・センサー挿入口(測定部)
15・・・レンズ(カメラ部)
16・・・センサー(測定部)
21・・・測定部(測定部)
22・・・カメラ部(カメラ部)
23・・・時計部
24・・・記憶部(記憶手段)
25・・・表示部(第一表示手段、第二表示手段、第三表示手段、第四表示手段)
26・・・操作部(第一入力手段、第二入力手段、第三入力手段、第四入力手段)
27・・・制御部(選別手段、第一線形リスト生成手段、第一表示更新手段、第二線形リスト生成手段、第二表示更新手段、サムネイル画像生成手段、撮影−測定間隔計算手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液中のグルコース濃度を示す信号を生成して出力する測定部と、
撮影された被写体の画像信号を生成して出力するカメラ部と、
上記グルコース濃度を示す信号及び画像信号を記憶する記憶手段と、
上記記憶手段が記憶したグルコース濃度を示す信号に基づいてグルコース濃度を表示する第一表示手段と、
上記記憶手段が記憶した画像信号に基づいて画像を表示する第二表示手段と、を備える携帯型の血中グルコース濃度測定装置。
【請求項2】
上記測定部は、血液中のグルコース濃度を示す信号を生成し、日時信号と共に第一信号として出力するものであり、
上記カメラ部は、撮影された被写体の画像信号を生成し、日時信号と共に第二信号として出力するものであり、
上記記憶手段は、上記第一信号及び第二信号をそれぞれ第一データ及び第二データとして記憶するものであり、
上記第一表示手段が表示した上記グルコース濃度の中から操作者が任意の一つを選択するための入力を行うことを可能とし、当該入力された一つを示す信号を出力する第一入力手段と、
上記第一入力手段が出力した信号が示す上記グルコース濃度と対応する測定日時、及び上記記憶手段に予め記憶された第三データ中の画像表示基準に基づいて、上記撮影日時が特定の条件を満たす上記第二データを選別する選別手段と、を更に具備し、
上記第二表示手段は、上記選別された第二データが示す撮影日時及びそれと対応する上記被写体の画像のうち、少なくとも上記被写体の画像の少なくとも一つを表示するものである請求項1に記載の携帯型の血中グルコース濃度測定装置。
【請求項3】
上記測定部は、採取された血液試料に対して電気的測定手段を用いることにより、上記グルコース濃度を示す電気信号を生じさせる請求項1又は2に記載の携帯型の血中グルコース濃度測定装置。
【請求項4】
上記記憶された第一データを上記測定日時の降順又は昇順にソートして第一線形リストのデータ列を生成する第一線形リスト生成手段と、
上記操作者の操作に基づき、上記第一線形リストを上流又は下流方向に参照し、取得したデータに基づき上記第一表示手段の表示を更新させる第一表示更新手段と、を更に備え、
上記第一表示手段は、上記第一線形リスト内の上記測定日時及び上記グルコース濃度のうち少なくとも上記グルコース濃度の少なくとも一部を当該第一線形リストの並びに従い表示する請求項2又は3に記載の携帯型の血中グルコース濃度測定装置。
【請求項5】
上記操作者が時間範囲を入力することを可能にし、当該入力された時間範囲を示す画像表示基準を第三信号として出力する第二入力手段を更に備え、
上記記憶手段は、上記画像表示基準を上記第三データとして内部に記憶する請求項2から4の何れかに記載の携帯型の血中グルコース濃度測定装置。
【請求項6】
上記選別手段は、上記第一入力手段の出力信号が示す上記グルコース濃度と対応する測定日時、および上記画像表示基準が示す時間範囲に基づき、上記記憶された第二データ中の上記撮影日時から当該測定日時に掛けての時間間隔が当該時間範囲に収まる第二データを選別し、一覧のデータ列を生成し、上記第二表示手段は、当該一覧中の少なくとも一つの上記第二データが示す上記被写体の画像及び撮影日時のうち少なくとも上記被写体の画像を表示する請求項5に記載の携帯型の血中グルコース濃度測定装置。
【請求項7】
上記一覧中の上記第二データを上記撮影日時の降順又は昇順にソートし、第二線形リストのデータ列を生成する第二線形リスト生成手段と、
上記第二線形リスト内の上記撮影日時の少なくとも一部を当該第二線形リストの並びに従い表示する第三表示手段と、
上記操作者の操作に基づき、上記第二線形リストを上流又は下流方向に参照し、取得したデータに基づき上記第三表示手段の表示を更新させる第二表示更新手段と、
上記第三表示手段が表示した撮影日時の中から操作者が任意の一つを選択するための入力を行うことを可能とし、当該入力された一つを示す信号を出力する第三入力手段と、を更に備え、
上記第二表示手段は、上記第三入力手段の出力信号が示す上記撮影日時及びそれと対応する上記被写体の画像のうち少なくとも上記被写体の画像を表示する請求項6に記載の携帯型の血中グルコース濃度測定装置。
【請求項8】
上記一覧中の上記第二データが示す上記被写体の画像を元に、当該被写体の画像よりも低解像度のサムネイル画像のデータを生成するサムネイル画像生成手段と、
上記サムネイル画像を一覧表示する第四表示手段と、
上記表示されたサムネイル画像から操作者が一つを選択するための入力を行うことを可能とし、当該入力された一つを示す信号を出力する第四入力手段と、を更に備え、
上記第二表示手段は、上記第四入力手段の出力信号が示すサムネイル画像に対応する原画像を表示する請求項6に記載の携帯型の血中グルコース濃度測定装置。
【請求項9】
上記第二表示手段により表示される上記被写体の画像と対応する上記撮影日時から、上記第一入力手段により出力された信号が示す上記グルコース濃度と対応する上記測定日時にかけての時間間隔を計算する撮影−測定間隔計算手段を更に備え、
上記第二表示手段は、上記被写体の画像と共に上記時間間隔を表示する請求項2から8の何れかに記載の携帯型の血中グルコース濃度測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−117911(P2011−117911A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277967(P2009−277967)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)