血圧センサシステム及びその血圧計測方法
【課題】血圧計測は、加齢及び疾患等による血管の硬化がヤング率を上げ、血管径の変化から求めた血圧値に影響を及ぼしている。
【解決手段】血管径を計測する少なくとも2つの血圧センサを1本の血管上で離間した位置に貼り付けて、血管径及び血管内の脈波伝播速度(PWV)を計測し、血圧と血管の剛性を算出することによって、長期間にわたって安定的に血圧をモニタリング可能で、血管の硬さ変化に依存しない血圧計測システムである。
【解決手段】血管径を計測する少なくとも2つの血圧センサを1本の血管上で離間した位置に貼り付けて、血管径及び血管内の脈波伝播速度(PWV)を計測し、血圧と血管の剛性を算出することによって、長期間にわたって安定的に血圧をモニタリング可能で、血管の硬さ変化に依存しない血圧計測システムである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管の剛性を計測して、血圧値を取得する血圧センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から体内埋め込み型の血圧センサとして、血管の脈動に伴う血管径の変化を直接計測して血圧値を求める方式が提案されている。一般的に、血管の硬さが変化すると、血圧と血管径の関係が変化することが知られている。体内における長期的な血圧の計測を考えた場合には、加齢や疾患などによって血管の硬さが変化することを考慮しなくてはならない。このため、単に血管径を計測する圧力センサを用いる血圧センサは、血管の変質に対応させるために、定期的なキャリブレーションが必要となる。このため、体内における長期継続的な血圧モニタリングに適したものではなかった。
【0003】
このような血圧センサに対して、特許文献1には、超音波を利用して、血圧を計測するシステムが提案されている。文献1においては、リニアプローブによって、血管を含む領域に超音波ビームの走査が行われ、血管の内腔の中心から血管壁にかけて内部構造を反映したピーク検索が行われる。これらの固有ピークを利用して血管変位等を計測している。
また、特許文献2には、血管上の2点を計測点として、血管への阻血圧や阻血時間を血圧測定や生体インピーダンス測定から算出される脈波伝搬速度により制御し、これらの変化や速度から血管内皮機能を評価する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−271117号公報
【特許文献2】特開2009−000388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したような血圧計測は、加齢及び疾患等による血管の硬化がヤング率を上げ、血管径の変化から求めた血圧値に影響を及ぼしている。この影響を排除するために必要なキャリブレーションは、体内では実施できないため、体外に取り出して行うこととなり、被計測者に身体的な負担を強いることとなり、長期的な血圧計測に好適するとはいえない。
【0006】
また、特許文献1及び特許文献2において提案されている技術は、血圧測定を実施することは可能であるが、共にシステムが大掛かりとなり、簡易に携帯できるシステムではなく、被計測者に対して、行動の制限を強いることとなる。また、特許文献2においては、センサ自体が体内に埋め込めるサイズではなく、体内において長期継続的な血圧モニタリングを実現するという点においては、現実的ではない。
また、体内で血管に装着する血圧センサに、弾性体材料に内包したCNT(カーボン・ナノチューブ:carbon nanotube)を適用しようとすると、CNTの生成温度が800℃程度の高温が想定されるため、公知な弾性体を基板として、直接生成することは困難である。
【0007】
そこで本発明は、小型軽量且つ簡易な構成の血圧センサを実現し、体内埋め込みにおける長期継続的な血圧モニタリングを実現する血圧センサシステム及びその血圧計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に従う実施形態は、体内にて血管径を計測する複数の血圧センサと、血管軸方向に予め定めた離間距離を空けた少なくとも2箇所に前記血圧センサを配置し、脈動する血管の径方向の周囲を環囲し、該径方向に弾性を有する装着治具と、前記血圧センサが出力した血管径と、前記2箇所に配置された前記血圧センサの脈波に対する応答時間差から脈派伝搬速度PWVを算出して前記血管の剛性を求め、前記血圧センサにより計測された血管径から算出された血圧値に対して、前記剛性に基づく補正が行われた血圧値を算出する制御部と、を具備する血圧計測システムを提供する。
【0009】
さらに、電極及び外部と電気的に接続するための配線パターンが形成され、弾性を有する基板と、予め定めた間隔を空けて、電極と接続するように前記基板上に設けられる少なくとも一対の導電性を有する支持部材と、前記支持部材間を橋渡しで連結する架橋型カーボン・ナノチューブと、を具備し、外力による前記基板の伸縮に伴い、電圧が印加されている前記支持部材間の前記間隔が変化した際に、前記カーボン・ナノチューブの伸縮により、前記支持部材間における電気的特性が変化する架橋構造センサを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、小型軽量且つ簡易な構成の血圧センサを実現し、体内埋め込みにおける長期継続的な血圧モニタリングを実現する血圧センサシステム及びその血圧計測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施形態が採用する2つの血圧センサによる血圧計測の計測原理について説明するための図である。
【図2】図2(a)は、本実施形態の血圧計測システムに用いるセンサ部の概念的な構成を示す図、図2(b)は、センサ部の断面構成を示す図である。
【図3】図3は、センサ部に用いられているセンサ素子であるカンチレバーの断面構成を示す図である。
【図4】図4は、センサ部の出力信号を示す図である。
【図5】図5は、血圧計測システムの構成を示すブロック図である。
【図6】図6(a)は、第1の変形例のセンサユニットにおける外観構成を示す図、図6(b)は、このセンサユニットにおける断面構成を示す図である。
【図7】図7(a)は、本実施形態における一対のセンサユニットの外観構成を示す図、図7(b)は、センサユニット11の断面構成を示している。
【図8】図8(a)は、せん断力が生じていない時にセンサの状態を示す図、図8(b)は、せん断力が生じた時のCNTが延伸したセンサの状態を示す図である。
【図9】図9は、2つのセンサが検出した応答時間差を有する検出信号A,Bを示す図である。
【図10】図10(a)乃至(d)を参照して、シリコン基板上に形成した架橋構造CNTを柔軟基板に移設する手順について説明する。
【図11】図11(a)乃至(c)は、架橋構造部を横方向から見た構造を示す図である。
【図12】図12(a),(b)は、CNTの生成形態について説明するための図である。
【図13】図13は、シリコン支持部材間を架橋CNTで連結する架橋構造部を斜め上から見た外観構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
まず、本発明の血圧計測システムによる血圧計測の概念について説明する。
以下に説明する本発明の従う実施形態は、血管径を計測する少なくとも2つの血圧センサを1本の血管上で離間した位置に貼り付けて、血管径及び血管内の脈波伝播速度(PWV)を計測し、血圧と血管の剛性を算出することによって、長期間にわたって安定的に血圧をモニタリング可能で、血管の硬さ変化に依存しない血圧計測システムである。尚、以下の説明では、計測対象物として、血管を例としているが、限定されるものではなく、膨張と萎縮による脈動する物であれば、その圧力を計測することができる。
【0013】
図1は、本発明の実施形態が採用する2つの血圧センサによる血圧計測の計測原理について説明するための図である。
図1に示すように、体内の血管3上において、離間距離Lで離間した2箇所の位置に血管径を計測するセンサユニット2(2a,2b)を配置する。これらのセンサユニットの各センサは、一定の離間距離Lを保つ状態で血管径及び脈派伝搬速度PWVを計測する。これらの計測結果を用いて、血管の剛性が変化するような長期間にわたってキャリブレーション不要で血圧の計測を可能とする。以下の説明において、従来と本願発明による計算原理の違いについて対比させて説明する。
【0014】
まず、従来の計測原理としては、Moens-Korteweg 式とBramwell-Hill 式に基づいている。Moens-Korteweg 式は以下のように表される。
【数1】
ここで、PWVは脈派伝搬速度、Eは血管のヤング率、hは血管の厚さ、Dは血管径及び、ρは血液の密度である。また、Bramwell-Hill 式は、以下のように表される。
【数2】
ここで、ΔDは膨張による血管径の変化、Pは血圧である。
【0015】
式(1)及び式(2)より、血圧差ΔPは、
【数3】
と表される。そのため、従来の血管径の変化を用いた血圧計測は、
【数4】
をキャリブレーションにより求めることで、血圧計測を行っている。
【0016】
前述したように、この従来方式に用いられている血管のヤング率Eは加齢や疾患により長期的には変化する値である。そのため、従来の方式では、長期的な計測には、定期的に体外に取り出して実施するキャリブレーションが必要となる。
【0017】
これに対して、埋め込み型センサを用いた血液計測を実現する場合には、定期的なキャリブレーション無しの血圧計測を可能にしなければならない。そこで、以下のように考える。PWVは、計測によって求めることができる。
【0018】
つまり、図1(a),(b)示す離間距離Lと、時間差ΔTとすると、脈派伝搬速度PWVは、PWV=L/ΔT で求めることができる。この脈派伝搬速度PWVを式(2) に代入すると、
【数5】
となり、式の項からヤング率Eを削除することができる。
【0019】
従って、計測された血圧に対して、血圧差ΔPの補正を行うことで、正確な血圧値を取得することができる。以下に説明する本発明の実施形態では、計測したPWVを利用して血管の剛性を算出することにより、定期的なキャリブレーションを必要とせず、血圧を計測する。尚、埋め込み型センサは、血管径を検出し、PWVからは血管の剛性が求められ、血管径と血管の剛性から血圧差ΔPが求められている。また、製造時の初期値を設定するための初期設定においては、調整時に1度のみのキャリブレーションが実施されている。この時のキャリブレーションによる血圧P0は、基準値としてメモリ等に設定される。従って、現在の血圧PはP0+ΔPから算出される。
【0020】
次に、第1の実施形態について説明する。
図2(a)は、本実施形態の血圧計測システム1に用いるセンサ部の概念的な構成を示す図、図2(b)は、センサ部A−A’の断面構成を示す図である。図3は、センサ部に用いられているセンサ素子であるカンチレバーの断面構成を示す図である。図4は、センサ部の出力信号を示す図である。図5は、血圧計測システムの構成を示すブロック図である。
【0021】
まず、血圧計測システム1に用いるセンサ部について説明する。
図2(a),(b)に示すように、血管3上の離間した2箇所で、血管径を計測するために、血管周囲に挟着するように一対のセンサユニット2a,2bが装着される。各センサユニット(センサ)間の離間距離は、図1(b)に示した2つのセンサに流れる検出信号A,Bの時間差が検出可能な距離であれば、特に限定されるものではない。しかし、体内にセンサを埋め込むことを考慮すれば、短い距離の方が装着箇所への影響を少なくすることができる。例えば、離間距離は、5mm−50mmの範囲内で好ましくは、30mm−40mm程度とする。勿論、センサの高性能化及び処理回路の処理能力(処理速度等)の高性能化が実現することにより、さらに離間距離を短くすることは可能である。
【0022】
センサユニット2aは、血管周囲を取り囲むように装着する装着治具である2分割されたベルト部材6(6a,6b)と、ベルト部材6a,6bのそれぞれの両端を挟持する対のコの字形状の固定枠部5(5a,5b)と、挟持されるベルト部材6a,6bと固定枠部5a,5bの接合箇所の両面に密着するように配置されるセンサ7と、で構成される。この構成においては、少なくとも一方の接合箇所に1個のセンサ7を設ければよい。但し、1個のセンサに限定されるものではなく、両側の接合箇所のそれぞれに各1個のセンサ7を設ける等、複数個のセンサ7を設けてもよい。
【0023】
本実施形態では、ベルト部材6は、2分割された形状として説明しているが、この形態に限定されるものではなく、センサ7が搭載される側のベルト部材6bが弾性部材により形成されればよく、他方は、硬質な樹脂又は、金属等の剛体部材であってもよい。また、ベルト部材は、2分割に限定されるものではなく、センサユニット2aによる正確な計測が維持できるのであれば、もっと多くの複数に分割されて連結される構成であってもよいし、または、装着を行うために一箇所が切断された環形状の一体的な構成であってもよい。
【0024】
図2(a)に示した固定枠部5は、組み上がった形状が四角の枠形状となるが、他の形状、例えば環形状であってもよい。但し、固定枠部5は血管が脈動により最大に膨張した際に内面に接触しないようにスペースを空けた内径が必要である。また、正確な脈派伝搬速度PWVを取得するためには、前述したように、それぞれのセンサユニット(センサ)2a,2bが常に予め定めた距離を一定に保つことが重要である。本実施形態では、これらの2つの固定枠部5は、枠どうしが剛性の高い複数の支持体8で接続される。これらの固定枠部5及び支持体8は、生体親和性の高い材料(例えば、チタン)等が適用される。
【0025】
ベルト部材6a,6bは、弾性体薄膜例えば、シリコーンゴム薄膜により形成される。勿論、シリコーンゴムに限定されるものではなく、他の弾性を有する樹脂材料による薄膜であってもよい。尚、ベルト部材6は、通常時(膨張も縮小していない状態)の血管径を圧迫せずに当接する程度に密着するように装着されていることが望ましい。
【0026】
センサ7は、図3(a)に示すように、ピエゾ抵抗付き直立型カンチレバー構造である。この構造は、シリコン基板等のベース部にピエゾ抵抗層が積層形成された片持ち梁構造であり、脚部が水平位置から屈曲して垂直方向に立ち上がったカンチレバーを構成している。このカンチレバーを覆うように、シリコーンゴム等の可撓性又は弾性を有する樹脂材料又はゴム材料からなる血管形状伝達部材4により、カンチレバーの底部を露呈し、周囲を矩形形状になるように内包されている。尚、図3(a)においては、代表的に1つのセンサを記載しているが、勿論、複数個のセンサを組み込んでもよく、さらには、マトリックスアレイ状に配置されていてもよい。
【0027】
センサ7は、固定枠部5a,5bの端部に固定され、脈波伝達部材4がベルト部材6a,6bの端点に密着するように配置される。図3(b)に示すように、脈動に伴う血管膨張力F1による血管径の変化で発生するベルト部材6a,6bの伸縮によりセンサ7は、半径方向で内側に引っ張られて傾斜し、この力をせん断力F2として計測する。つまり、センサ7により、血圧変化に伴う血管の微小変形を計測し、血管径を求める。
【0028】
また、離間されて設けられたセンサユニット2a,2bにより、図4に示すような検出されたセンサの脈波に対する応答時間差を算出して、前述したように脈派伝搬速度PWVを取得する。
以上のように構成されたセンサユニット2a,2bの計測結果により取得された脈派伝搬速度PWVの結果に基づき、血管の剛性を算出する。算出された血管の剛性と、各血管径を計測するセンサ7による計測した血管径から血圧値を算出することができる。
【0029】
次に図5に示すように、血圧計測システムは、それぞれに別体となる、血圧センサ部41とシステム本体51とで構成される。血圧センサ部41とシステム本体51と間のデータの送受は、電磁誘導通信又は無線通信を使用する。本実施形態では、血圧センサ部41への電力供給は、光又は電磁波(無線)又は音波(振動)を用いることを想定している。勿論、計測期間を賄う寿命を有する電池であれば、電源として、血液センサ部に搭載することは可能である。
【0030】
血圧センサ部41は、体内に埋め込まれる前述したセンサユニット2と、センサ制御部42と、データ送信用アンテナ43と、データ送信部44と、センサ電源部46と、駆動電力を受電する受電部45とで構成される。
【0031】
センサ制御部42は、それぞれのセンサ7がせん断力の作用により発生した検出信号を取り込み、まず、センサの脈波に対する検出信号間の応答時間差に基づく脈派伝搬速度PWVと、検出信号の変位から血管径を算出する。さらに、センサ制御部42は、脈派伝搬速度PWVによる血管の剛性による補正を施した血圧値及びそれに関係する情報を生成する。これらの血圧値及び関係情報は、データ信号に変換されて、データ送信部44に送出される。
【0032】
データ送信部44は、データ信号を通信信号に変換して、データ送信用アンテナ43から発信する。受電部45は、外部から受け取ったエネルギー(光又は電磁波(無線)又は音波(振動))から電源を生成する。生成された電源は、センサ電源部46に蓄電される。センサ電源は、データ送信部44及びセンサ制御部42に駆動用電源として供給する。
【0033】
本実施形態の血圧センサ部41は、センサユニット2を除く各構成部が1チップ上に集積形成された場合には、センサユニット2と一体化して体内に埋め込んでもよい。この場合には、通信手段として、例えば電磁誘導通信を採用し、その通信周波数は、生体透過性と大きさを考慮し、一例として、433[MHz]付近の周波数を用いればよい。
【0034】
また、システム本体51は、データ受信アンテナ52と、データ受信部53と、受信制御部54と、データ表示部57と、送信部55と、電源部56とで構成される。
この構成において、データ受信アンテナ52は、データ送信部44から送信されたデータを受信する。この受信されたデータは、データ受信部53により通信信号から復調され、受信制御部54における処理(画像信号処理等)によって、応答時間差及び血圧値及びそれに関する情報として再生される。データ表示部57は、モニタ画面を有し、再生された血圧値及び関係情報を表示する。また、電源部56は、電池等のバッテリからなり、送電部55に電源供給する。送電部55は、電源を前述したエネルギーに変換して、血圧センサ部41に発信する。
【0035】
尚、本実施形態では、血圧センサ部41内のセンサ制御部42が脈派伝搬速度PWV及び血圧値に関する演算等の処理を行ったが、これらの処理をシステム本体51側の受信制御部54で行ってもよい。受信制御部54側で処理を行うことにより、センサ制御部42の処理演算の負担を軽減し、簡易なタイプを採用して、構造の簡素化及び消費電力の軽減を図ってもよい。
【0036】
また、本実施形態をシミュレーションするために、実際にセンサユニットを構築し、確認を実施した。その構成として、血管の代わりとして、直径7mmのゴムチューブを利用し、5mm間隔で配置した2つのセンサユニットを固定枠5となるアクリル板にて固定した構造を用いて基礎原理を確認した。この構造を用いることで、ゴムチューブの11%の伸びが計測された。検出した信号から、2つのセンサ間に14msecの応答時間差が求められた。これらの結果から、図2(a)に示す構造を用いてチューブ径(血管径)及び脈派伝搬速度PWVの計測が実証された。
【0037】
さらに、システム本体51に、ネットワーク(インターネットやLAN等)の通信回線を介して、外部機器(パソコンや携帯電話機)へ通信する機能(図示せず)を備えることにより、診察を行う者が遠隔地に所在していた場合でも、現在の血圧値を取得して、診断することができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態によれば、センサを体内に埋め込み、キャリブレーションを必要とせずに長期間に亘り、安定して正確な血圧を計測することができる。また、センサにより検出された血圧値に対して、脈派伝搬速度PWV情報を元に算出した血管の剛性により加齢・疾患等による血管の硬さの変化を考慮した補正を施した血圧計測を実現する。
【0039】
次に、第1の実施形態における変形例について説明する。
図6(a)は、第1の変形例のセンサユニットにおける外観構成を示し、図6(b)は、このセンサユニットにおける断面構成を示す図である。
前述した第1の実施形態では、2つのセンサユニット間の離間距離を高い剛性の支持体8を用いて保持する構成であった。
【0040】
本変形例では、前述したベルト部材6と支持体8に代わって同じ機能を果たす、異方変形性の高い材料、例えば、ePTFE(延伸多孔質PTFE)による膜部材10(10a,10b)を用いる。この膜部材10は、血管径方向への変形に対しては弾性変形性を有し、X軸方向即ち、血管軸方向の変形に対して高い剛性を有する(即ち、延びない)という特徴がある。さらに、2つのセンサ7a,7bの離間距離Xを固定するために2つの切欠部(収容エリア)が形成される。
【0041】
図6(a),(b)に示すように、2つの膜部材10a,10bは、血管3を包むように挟み、それらの両端間に介在するように、センサ7a,7bが接着して配置される。この構成において、脈動に伴う血管膨張力による血管径の変化で発生する膜部材10a,10bの伸縮によりセンサ7a,7bは、半径方向で内側に引っ張られて傾斜し、この力をせん断力として計測する。よって、センサ7a,7bにより、血圧変化に伴う血管の微小変形を計測し、血管径を求める。また、膜部材10としては、シリコーンゴムに異方変形性を付与してもよい。
本変形例においても前述した第1の実施形態と同様な効果を奏している。さらに、第1の実施形態で用いた支持体8及び固定枠5が不要となり、構成が簡素化され、且つ小型化される。
【0042】
次に第2の実施形態の血圧センサシステムについて説明する。
本実施形態は、システム構成が第1実施形態(図5)と同等であるが、センサユニットの構成が異なっている。本センサユニットが採用するセンサは、血管の直径変化を、弾性体材料に埋め込んだCNT(カーボン・ナノチューブ:carbon nanotube)のピエゾ抵抗効果を利用して計測する構成である。
【0043】
図7(a)は、本実施形態における一対のセンサユニット11(11a,11b)の外観構成を示し、図7(b)は、センサユニット11のB−B’の断面構成を示している。図8(a)は、せん断力が生じていない時にセンサ12の状態を示し、図8(b)は、せん断力が生じた時のCNT16が延伸したセンサ12の状態を示す図である。図9は、2つのセンサユニット11a,11bが検出したセンサの脈波に対する応答時間差を有する検出信号A,Bを示す図である。
【0044】
センサユニット11は、少なくとも1つのセンサ12を内包する弾性体材料からなる2分割されたベルト部材13(13a,13b)と、離間して血管周囲に挟着する2つのベルト部材13a,13bの両端を固着する固定部材14とで構成される。
【0045】
図8に示すようにセンサ12は、架橋CNTによる架橋構造センサである。図10に示すように、導電性を有し、橋脚部となる2つのシリコン支持部材15a,15bとこれらの間を橋渡しで連結する架橋CNT16とで構成される。センサ12は、引きによる外力(例えば、せん断力)により、CNT16が伸長することでシリコン支持部材15(15a,15b)間の抵抗値が変化するため、この特性をセンサとして利用する。
【0046】
本実施形態は、前述した第1の実施形態と同様に、センサユニット11a,11bが既知の離間距離を空けて血管3に装着する。各センサユニット(センサ)間の離間距離は、図9に示した2つのセンサに流れる検出信号A,Bの時間差が検出可能な距離であれば、特に限定されるものではない。
【0047】
計測に際して、シリコン支持部材15a,15b間に定電圧を印加しておき、脈動による血管膨張力による血管径の変化が発生によるベルト部材13の延伸により、センサ12が引っ張られて、図8(b)に示すようにCNT16が伸長により抵抗が変化し、図9に示すように、1つの脈動においてシリコン支持部材15a,15b間の検出信号の出力電圧が変化する。CNTの電気抵抗は、カイラリティ(カイラル指数)に依存して変化する。センサユニット11a,11bのそれぞれの出力A,Bは、同じ血管上で離間しているため、応答時間差が生じる。
【0048】
このように、血管の周囲に装着されるベルト部材13を弾性体で形成し、その内部に内包するようにCNT構造を利用するセンサを実装しているため、脈動による血管の膨張する力を弾性体に対するせん断力として検出信号を検出する。
【0049】
従って、第1の実施形態と同様に、検出信号間のセンサの脈波に対する応答時間差に基づく脈派伝搬速度PWVと、検出信号の変位から血管径を算出する。さらに、脈派伝搬速度PWVによる血管の剛性による補正を施した血圧値及びそれに関係する情報を生成する。CNTは、一般的な金属やシリコンに比べて、ゲージ率が高く、センサ感度の向上が見込める。
【0050】
従って、本実施形態によれば、センサを体内に埋め込み、キャリブレーションを必要とせずに長期間に亘り、安定して正確な血圧を計測することができる。また、センサにより検出された血圧値に対して、脈派伝搬速度PWV情報を元に算出した血管の剛性により加齢・疾患等による血管の硬さの変化を考慮した補正を施した血圧計測を実現する。
【0051】
次に、第2の実施形態に用いたセンサの構造と製造工程について説明する。
このセンサは、前述したように、橋脚部分となる角柱形状の2つのシリコン支持部材15a,15bとこれらの間を連結するCNT16とでブリッジ架橋構造に構成されている。この本実施形態において、このセンサは、弾性部材に内包されている。
【0052】
このセンサの製造において、一般的にCNTは、生成温度が800℃以上の高温であり、シリコーンゴム等の弾性体を基板として、直接生成することが困難である。そこで、本実施形態では、シリコン基板上で作製されたCNTを含むセンサをシリコーンゴム等の弾性体基板上に実装する。以下に製造方法について説明する。
【0053】
まず、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて、シリコン基板上にシリコン支持部材15a,15bとなる凸部からなる多数のシリコン支持構造をアレイ状に形成する。尚、このシリコン支持構造において、後述する実装工程において、シリコン支持部材15a,15bをシリコン基板から剥離して移設(転写)させるため、剥離しやすいように、SOI(Silicon on Insulator)基板等を用いてもよい。
【0054】
例えば、図11(a)に示すように、SOI基板21の上部のシリコン層にフォトリソマスクを用いたREI等の異方性エッチングにより削り出し、シリコン支持構造17aを形成する。さらにシリコン支持構造17aの下のガラス層をウェットエッチング等による等方性エッチングによりテーパー形状又は柱状の細いガラスの柱24でシリコン支持部材を支えた構造を形成する。この時、シリコン支持構造17aの裏面(柱24側の面)におけるガラス層は、少なくとも電極23に移設された際に、シリコン支持構造17aと電極23とが適正に電気的接続が出来る程度に除去されていなければならないものとする。
【0055】
次に、CVD(化学気相成長法:Chemical Vapor Deposition)法を用いて、CNTをシリコンの構造の間隙を橋渡しするように生成する。このCVD法は、CNTをシリコン基板上で生成可能であり、且つエタノール蒸気圧、金属触媒のナノ粒子、プロセス温度及びプロセス時間等によるパラメータを調整することで制御が容易であり、SWNT(シングルウォールナノチューブ)、DWNT(ダブルウォールナノチューブ)、MWNT(マルチウォールナノチューブ)を選択的に生成することができる。例えば、メタン、アセチレン、一酸化炭素などの炭素含有ガスを熱分解して、Fe、Ni又はFe−Mo等の触媒の粒子により、CNTを生成する。
【0056】
CNT成長の温度範囲は、適用する炭素源ガスによって設定されるが、略600〜900℃の範囲である。CNTの気相成長は、金属触媒の密度に応じて異なることが知られている。平面状の金属触媒の密度が薄い場合、生成されたSWNTがシリコン基板に対して、図12(a),(b)に示すように、シリコン基板21上に設けた支持部材に対して水平方向に配向して隣同士と連結する。
【0057】
本実施形態では、金属触媒溶液の濃度を薄くすることで、CNT16を基板21に対して水平方向に成長させる。即ち、数ミクロン程度の間隙で複数のシリコン支持部材15を設けて、金属触媒密度を低くした状態で気相成長させることで、図12に示すような、シリコン支持部材15間を架橋CNT16で連結する架橋構造部17(センサ12)を形成する。
【0058】
次に、図10(a)乃至(d)を参照して、シリコン基板21上に形成した架橋構造CNT16を弾性体基板22(ベルト部材13)に移設する手順について説明する。
図10(a)に示すように、シリコン基板21上に形成された多数の架橋構造部17に対して、近赤外蛍光分光法を用いて、それぞれの架橋CNT16のカイラリティ(カイラル指数)を取得する。図10(b)に示すように、取得したカイラリティの中で、所望するカイラリティの架橋CNT16とその本数を持つ架橋構造部17aを特定する。通常、CNTにおける電気抵抗は、カイラリティに依存する。
【0059】
次に、図10(c)に示すように、その架橋構造部17aは、樹脂製スタンプ例えば、シリコーンゴムスタンプ18により、基板21と分離してピックアップする。具体的には、架橋構造部17aのシリコン支持部材15a,15bは、前述した図11(a)に示したように、ガラスの柱24を支えた構造である。シリコーンゴムスタンプ18がシリコン支持部材15a,15bにピックアップするために当接した際に、図11(b)に示すように、柱24を破壊して、分離させる。その後、図10(c)及び図11(c)に示すように、シリコーンゴムスタンプ18を引き上げると共に、架橋構造部17aが基板21から分離される。
【0060】
さらに、図10(d)示すように、金属配線(及び電極パッド)23が形成された弾性体基板22上に実装され、センサ12が作製される。その実装の際に、シリコン支持部材15a,15bは、それぞれのパッドに電気的に導通するように固着、所謂、ダイボンドする。
その後、弾性体基板22上の架橋構造部17a、即ちセンサ12(図示せず)が内包されるように、弾性体基板22と同じ材料のシリコーンゴムで密に覆って封止を行い、ベルト部材13を形成する。
【0061】
通常、CNTはボトムアップ的に合成され、MEMSトップダウン構造との統合が難しかった。さらに、従来において、予め別の箇所でCNTを作製しておき、所望する基板に転写(統合)する技術として、マニピュレータで転写する方法、電気泳動を用いた方法、液体材料を溶媒として塗布する方法等が検討されていたが、これらの方法は、形成するCNTの本数やカイラリティを制御することができなかった。
【0062】
そこで、本実施形態では、シリコン基板上に形成したシリコン支持構造を用いて橋渡しするようにCNTを合成し、スタンピング転写法を用いて、他の基板(弾性基板)に転写する、2段階からなる製造方法を適用している。
つまり、CVD法を用いて、複数設けられたシリコン支持構造間に、CNTを一括して生成した後に、各CNTのカイラリティを調べて、架橋構造部17a、即ちセンサ12をスタンピング転写により選択的にピックアップし、弾性部材からなる別の基板に転写する。
以上のことから、本実施形態によれば、シリコン基板上に形成した多数のCNTの中から所望のカイラリティを有するセンサを選択することができ、センサの製造ばらつきを無くし、性能の均一化を図ることができる。
【0063】
さらに、シリコン支持構造が目印となるため、光学顕微鏡下でアライメントして転写することが可能である。この方法を用いることで、CNTの機能を様々な材料の上で展開することが可能となる。従って、本実施形態によれば、電気的・機械的に優れているCNTをセンサとして用いることができ、小型・高感度が要求される体内埋め込み型血圧センサを実現する上で、非常に有用である。
【0064】
前述した本発明の実施形態によれば、以下の発明の要旨を有している。
(1) 体内にて血管径ならびに脈波伝播速度(PWV)を計測する埋め込み型血圧センサであり、1本の血管の異なる位置に配置可能な2つの血管径を計測するセンサを有した構造を特徴とする。血圧変化に伴う血管径の変化および2箇所に配置されたセンサの脈波に対する応答時間の差からPWVを計測し、血管の剛性および血圧を求めることを特徴とする血圧計測方法。
【0065】
(2)上記方法を用いることにより、血圧測定を行うことを特徴とする植え込み型血圧センサであり、前記血管径を計測するセンサとして、弾性体の薄膜にて血管を包み、そのせん断方向への引っ張りを計測することで、血管の大変形を直接計測することを特徴とする前記(1)項に記載の埋め込み型血圧センサ。
(3)人の動きに伴う体内のセンサ間距離のズレを血管に付加を与えずに防ぐため、2つの前記血管径を計測するセンサ間を剛体の高い構造体で接続したことを特徴とする前記(2)項に記載の植え込み型血圧センサ。
(4)前記弾性体の薄膜が異方性変形の性質を持ち、血管軸方向の変形を抑止することにより、センサ間距離のズレを血管に付加しないことを特徴とする前記(2)項に記載の埋め込み型血圧センサ。
【0066】
(5)前記せん断方向への引っ張りの計測に、ピエゾ抵抗付き直立型カンチレバー構造を利用したことを特徴とする前記(2)、(3)及び(4)項のうちのいずれか1項に記載の埋め込み型血圧センサ。
(6)前記せん断方向への引っ張りの計測に於いて、それに用いられるセンサの作製方法として、CNT生成基板上の複数の搬送用微小ブロック間にCNTを生成した後、任意の前記ブロックごと統合基板へ搬送することで、所望のCNTを所定の位置に配置する手法。
【符号の説明】
【0067】
1…血圧計測システム、2,2a,2b…センサユニット、3…血管、4…脈波伝達部、5,5a,5b…固定枠部、6,6a,6b…ベルト部材(装着治具)、7,7a,7b…センサ、8…支持体、10,10a,10b…膜部材、11,11a,11b…センサユニット、12…センサ、13,13a,13b…ベルト部材、14…固定部材、15,15a,15b…シリコン支持部材、16…CNT(架橋CNT)、17,17a…架橋構造部、21…シリコン基板、22…弾性体基板、41…血圧センサ部、42…センサ制御部、43…データ送信用アンテナ、44…データ送信部、45…受電部、46…センサ電源部、51…システム本体、52…データ受信アンテナ、53…データ受信部、54…受信制御部、55…送電部、56…電源部、57…データ表示部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管の剛性を計測して、血圧値を取得する血圧センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から体内埋め込み型の血圧センサとして、血管の脈動に伴う血管径の変化を直接計測して血圧値を求める方式が提案されている。一般的に、血管の硬さが変化すると、血圧と血管径の関係が変化することが知られている。体内における長期的な血圧の計測を考えた場合には、加齢や疾患などによって血管の硬さが変化することを考慮しなくてはならない。このため、単に血管径を計測する圧力センサを用いる血圧センサは、血管の変質に対応させるために、定期的なキャリブレーションが必要となる。このため、体内における長期継続的な血圧モニタリングに適したものではなかった。
【0003】
このような血圧センサに対して、特許文献1には、超音波を利用して、血圧を計測するシステムが提案されている。文献1においては、リニアプローブによって、血管を含む領域に超音波ビームの走査が行われ、血管の内腔の中心から血管壁にかけて内部構造を反映したピーク検索が行われる。これらの固有ピークを利用して血管変位等を計測している。
また、特許文献2には、血管上の2点を計測点として、血管への阻血圧や阻血時間を血圧測定や生体インピーダンス測定から算出される脈波伝搬速度により制御し、これらの変化や速度から血管内皮機能を評価する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−271117号公報
【特許文献2】特開2009−000388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したような血圧計測は、加齢及び疾患等による血管の硬化がヤング率を上げ、血管径の変化から求めた血圧値に影響を及ぼしている。この影響を排除するために必要なキャリブレーションは、体内では実施できないため、体外に取り出して行うこととなり、被計測者に身体的な負担を強いることとなり、長期的な血圧計測に好適するとはいえない。
【0006】
また、特許文献1及び特許文献2において提案されている技術は、血圧測定を実施することは可能であるが、共にシステムが大掛かりとなり、簡易に携帯できるシステムではなく、被計測者に対して、行動の制限を強いることとなる。また、特許文献2においては、センサ自体が体内に埋め込めるサイズではなく、体内において長期継続的な血圧モニタリングを実現するという点においては、現実的ではない。
また、体内で血管に装着する血圧センサに、弾性体材料に内包したCNT(カーボン・ナノチューブ:carbon nanotube)を適用しようとすると、CNTの生成温度が800℃程度の高温が想定されるため、公知な弾性体を基板として、直接生成することは困難である。
【0007】
そこで本発明は、小型軽量且つ簡易な構成の血圧センサを実現し、体内埋め込みにおける長期継続的な血圧モニタリングを実現する血圧センサシステム及びその血圧計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に従う実施形態は、体内にて血管径を計測する複数の血圧センサと、血管軸方向に予め定めた離間距離を空けた少なくとも2箇所に前記血圧センサを配置し、脈動する血管の径方向の周囲を環囲し、該径方向に弾性を有する装着治具と、前記血圧センサが出力した血管径と、前記2箇所に配置された前記血圧センサの脈波に対する応答時間差から脈派伝搬速度PWVを算出して前記血管の剛性を求め、前記血圧センサにより計測された血管径から算出された血圧値に対して、前記剛性に基づく補正が行われた血圧値を算出する制御部と、を具備する血圧計測システムを提供する。
【0009】
さらに、電極及び外部と電気的に接続するための配線パターンが形成され、弾性を有する基板と、予め定めた間隔を空けて、電極と接続するように前記基板上に設けられる少なくとも一対の導電性を有する支持部材と、前記支持部材間を橋渡しで連結する架橋型カーボン・ナノチューブと、を具備し、外力による前記基板の伸縮に伴い、電圧が印加されている前記支持部材間の前記間隔が変化した際に、前記カーボン・ナノチューブの伸縮により、前記支持部材間における電気的特性が変化する架橋構造センサを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、小型軽量且つ簡易な構成の血圧センサを実現し、体内埋め込みにおける長期継続的な血圧モニタリングを実現する血圧センサシステム及びその血圧計測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施形態が採用する2つの血圧センサによる血圧計測の計測原理について説明するための図である。
【図2】図2(a)は、本実施形態の血圧計測システムに用いるセンサ部の概念的な構成を示す図、図2(b)は、センサ部の断面構成を示す図である。
【図3】図3は、センサ部に用いられているセンサ素子であるカンチレバーの断面構成を示す図である。
【図4】図4は、センサ部の出力信号を示す図である。
【図5】図5は、血圧計測システムの構成を示すブロック図である。
【図6】図6(a)は、第1の変形例のセンサユニットにおける外観構成を示す図、図6(b)は、このセンサユニットにおける断面構成を示す図である。
【図7】図7(a)は、本実施形態における一対のセンサユニットの外観構成を示す図、図7(b)は、センサユニット11の断面構成を示している。
【図8】図8(a)は、せん断力が生じていない時にセンサの状態を示す図、図8(b)は、せん断力が生じた時のCNTが延伸したセンサの状態を示す図である。
【図9】図9は、2つのセンサが検出した応答時間差を有する検出信号A,Bを示す図である。
【図10】図10(a)乃至(d)を参照して、シリコン基板上に形成した架橋構造CNTを柔軟基板に移設する手順について説明する。
【図11】図11(a)乃至(c)は、架橋構造部を横方向から見た構造を示す図である。
【図12】図12(a),(b)は、CNTの生成形態について説明するための図である。
【図13】図13は、シリコン支持部材間を架橋CNTで連結する架橋構造部を斜め上から見た外観構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
まず、本発明の血圧計測システムによる血圧計測の概念について説明する。
以下に説明する本発明の従う実施形態は、血管径を計測する少なくとも2つの血圧センサを1本の血管上で離間した位置に貼り付けて、血管径及び血管内の脈波伝播速度(PWV)を計測し、血圧と血管の剛性を算出することによって、長期間にわたって安定的に血圧をモニタリング可能で、血管の硬さ変化に依存しない血圧計測システムである。尚、以下の説明では、計測対象物として、血管を例としているが、限定されるものではなく、膨張と萎縮による脈動する物であれば、その圧力を計測することができる。
【0013】
図1は、本発明の実施形態が採用する2つの血圧センサによる血圧計測の計測原理について説明するための図である。
図1に示すように、体内の血管3上において、離間距離Lで離間した2箇所の位置に血管径を計測するセンサユニット2(2a,2b)を配置する。これらのセンサユニットの各センサは、一定の離間距離Lを保つ状態で血管径及び脈派伝搬速度PWVを計測する。これらの計測結果を用いて、血管の剛性が変化するような長期間にわたってキャリブレーション不要で血圧の計測を可能とする。以下の説明において、従来と本願発明による計算原理の違いについて対比させて説明する。
【0014】
まず、従来の計測原理としては、Moens-Korteweg 式とBramwell-Hill 式に基づいている。Moens-Korteweg 式は以下のように表される。
【数1】
ここで、PWVは脈派伝搬速度、Eは血管のヤング率、hは血管の厚さ、Dは血管径及び、ρは血液の密度である。また、Bramwell-Hill 式は、以下のように表される。
【数2】
ここで、ΔDは膨張による血管径の変化、Pは血圧である。
【0015】
式(1)及び式(2)より、血圧差ΔPは、
【数3】
と表される。そのため、従来の血管径の変化を用いた血圧計測は、
【数4】
をキャリブレーションにより求めることで、血圧計測を行っている。
【0016】
前述したように、この従来方式に用いられている血管のヤング率Eは加齢や疾患により長期的には変化する値である。そのため、従来の方式では、長期的な計測には、定期的に体外に取り出して実施するキャリブレーションが必要となる。
【0017】
これに対して、埋め込み型センサを用いた血液計測を実現する場合には、定期的なキャリブレーション無しの血圧計測を可能にしなければならない。そこで、以下のように考える。PWVは、計測によって求めることができる。
【0018】
つまり、図1(a),(b)示す離間距離Lと、時間差ΔTとすると、脈派伝搬速度PWVは、PWV=L/ΔT で求めることができる。この脈派伝搬速度PWVを式(2) に代入すると、
【数5】
となり、式の項からヤング率Eを削除することができる。
【0019】
従って、計測された血圧に対して、血圧差ΔPの補正を行うことで、正確な血圧値を取得することができる。以下に説明する本発明の実施形態では、計測したPWVを利用して血管の剛性を算出することにより、定期的なキャリブレーションを必要とせず、血圧を計測する。尚、埋め込み型センサは、血管径を検出し、PWVからは血管の剛性が求められ、血管径と血管の剛性から血圧差ΔPが求められている。また、製造時の初期値を設定するための初期設定においては、調整時に1度のみのキャリブレーションが実施されている。この時のキャリブレーションによる血圧P0は、基準値としてメモリ等に設定される。従って、現在の血圧PはP0+ΔPから算出される。
【0020】
次に、第1の実施形態について説明する。
図2(a)は、本実施形態の血圧計測システム1に用いるセンサ部の概念的な構成を示す図、図2(b)は、センサ部A−A’の断面構成を示す図である。図3は、センサ部に用いられているセンサ素子であるカンチレバーの断面構成を示す図である。図4は、センサ部の出力信号を示す図である。図5は、血圧計測システムの構成を示すブロック図である。
【0021】
まず、血圧計測システム1に用いるセンサ部について説明する。
図2(a),(b)に示すように、血管3上の離間した2箇所で、血管径を計測するために、血管周囲に挟着するように一対のセンサユニット2a,2bが装着される。各センサユニット(センサ)間の離間距離は、図1(b)に示した2つのセンサに流れる検出信号A,Bの時間差が検出可能な距離であれば、特に限定されるものではない。しかし、体内にセンサを埋め込むことを考慮すれば、短い距離の方が装着箇所への影響を少なくすることができる。例えば、離間距離は、5mm−50mmの範囲内で好ましくは、30mm−40mm程度とする。勿論、センサの高性能化及び処理回路の処理能力(処理速度等)の高性能化が実現することにより、さらに離間距離を短くすることは可能である。
【0022】
センサユニット2aは、血管周囲を取り囲むように装着する装着治具である2分割されたベルト部材6(6a,6b)と、ベルト部材6a,6bのそれぞれの両端を挟持する対のコの字形状の固定枠部5(5a,5b)と、挟持されるベルト部材6a,6bと固定枠部5a,5bの接合箇所の両面に密着するように配置されるセンサ7と、で構成される。この構成においては、少なくとも一方の接合箇所に1個のセンサ7を設ければよい。但し、1個のセンサに限定されるものではなく、両側の接合箇所のそれぞれに各1個のセンサ7を設ける等、複数個のセンサ7を設けてもよい。
【0023】
本実施形態では、ベルト部材6は、2分割された形状として説明しているが、この形態に限定されるものではなく、センサ7が搭載される側のベルト部材6bが弾性部材により形成されればよく、他方は、硬質な樹脂又は、金属等の剛体部材であってもよい。また、ベルト部材は、2分割に限定されるものではなく、センサユニット2aによる正確な計測が維持できるのであれば、もっと多くの複数に分割されて連結される構成であってもよいし、または、装着を行うために一箇所が切断された環形状の一体的な構成であってもよい。
【0024】
図2(a)に示した固定枠部5は、組み上がった形状が四角の枠形状となるが、他の形状、例えば環形状であってもよい。但し、固定枠部5は血管が脈動により最大に膨張した際に内面に接触しないようにスペースを空けた内径が必要である。また、正確な脈派伝搬速度PWVを取得するためには、前述したように、それぞれのセンサユニット(センサ)2a,2bが常に予め定めた距離を一定に保つことが重要である。本実施形態では、これらの2つの固定枠部5は、枠どうしが剛性の高い複数の支持体8で接続される。これらの固定枠部5及び支持体8は、生体親和性の高い材料(例えば、チタン)等が適用される。
【0025】
ベルト部材6a,6bは、弾性体薄膜例えば、シリコーンゴム薄膜により形成される。勿論、シリコーンゴムに限定されるものではなく、他の弾性を有する樹脂材料による薄膜であってもよい。尚、ベルト部材6は、通常時(膨張も縮小していない状態)の血管径を圧迫せずに当接する程度に密着するように装着されていることが望ましい。
【0026】
センサ7は、図3(a)に示すように、ピエゾ抵抗付き直立型カンチレバー構造である。この構造は、シリコン基板等のベース部にピエゾ抵抗層が積層形成された片持ち梁構造であり、脚部が水平位置から屈曲して垂直方向に立ち上がったカンチレバーを構成している。このカンチレバーを覆うように、シリコーンゴム等の可撓性又は弾性を有する樹脂材料又はゴム材料からなる血管形状伝達部材4により、カンチレバーの底部を露呈し、周囲を矩形形状になるように内包されている。尚、図3(a)においては、代表的に1つのセンサを記載しているが、勿論、複数個のセンサを組み込んでもよく、さらには、マトリックスアレイ状に配置されていてもよい。
【0027】
センサ7は、固定枠部5a,5bの端部に固定され、脈波伝達部材4がベルト部材6a,6bの端点に密着するように配置される。図3(b)に示すように、脈動に伴う血管膨張力F1による血管径の変化で発生するベルト部材6a,6bの伸縮によりセンサ7は、半径方向で内側に引っ張られて傾斜し、この力をせん断力F2として計測する。つまり、センサ7により、血圧変化に伴う血管の微小変形を計測し、血管径を求める。
【0028】
また、離間されて設けられたセンサユニット2a,2bにより、図4に示すような検出されたセンサの脈波に対する応答時間差を算出して、前述したように脈派伝搬速度PWVを取得する。
以上のように構成されたセンサユニット2a,2bの計測結果により取得された脈派伝搬速度PWVの結果に基づき、血管の剛性を算出する。算出された血管の剛性と、各血管径を計測するセンサ7による計測した血管径から血圧値を算出することができる。
【0029】
次に図5に示すように、血圧計測システムは、それぞれに別体となる、血圧センサ部41とシステム本体51とで構成される。血圧センサ部41とシステム本体51と間のデータの送受は、電磁誘導通信又は無線通信を使用する。本実施形態では、血圧センサ部41への電力供給は、光又は電磁波(無線)又は音波(振動)を用いることを想定している。勿論、計測期間を賄う寿命を有する電池であれば、電源として、血液センサ部に搭載することは可能である。
【0030】
血圧センサ部41は、体内に埋め込まれる前述したセンサユニット2と、センサ制御部42と、データ送信用アンテナ43と、データ送信部44と、センサ電源部46と、駆動電力を受電する受電部45とで構成される。
【0031】
センサ制御部42は、それぞれのセンサ7がせん断力の作用により発生した検出信号を取り込み、まず、センサの脈波に対する検出信号間の応答時間差に基づく脈派伝搬速度PWVと、検出信号の変位から血管径を算出する。さらに、センサ制御部42は、脈派伝搬速度PWVによる血管の剛性による補正を施した血圧値及びそれに関係する情報を生成する。これらの血圧値及び関係情報は、データ信号に変換されて、データ送信部44に送出される。
【0032】
データ送信部44は、データ信号を通信信号に変換して、データ送信用アンテナ43から発信する。受電部45は、外部から受け取ったエネルギー(光又は電磁波(無線)又は音波(振動))から電源を生成する。生成された電源は、センサ電源部46に蓄電される。センサ電源は、データ送信部44及びセンサ制御部42に駆動用電源として供給する。
【0033】
本実施形態の血圧センサ部41は、センサユニット2を除く各構成部が1チップ上に集積形成された場合には、センサユニット2と一体化して体内に埋め込んでもよい。この場合には、通信手段として、例えば電磁誘導通信を採用し、その通信周波数は、生体透過性と大きさを考慮し、一例として、433[MHz]付近の周波数を用いればよい。
【0034】
また、システム本体51は、データ受信アンテナ52と、データ受信部53と、受信制御部54と、データ表示部57と、送信部55と、電源部56とで構成される。
この構成において、データ受信アンテナ52は、データ送信部44から送信されたデータを受信する。この受信されたデータは、データ受信部53により通信信号から復調され、受信制御部54における処理(画像信号処理等)によって、応答時間差及び血圧値及びそれに関する情報として再生される。データ表示部57は、モニタ画面を有し、再生された血圧値及び関係情報を表示する。また、電源部56は、電池等のバッテリからなり、送電部55に電源供給する。送電部55は、電源を前述したエネルギーに変換して、血圧センサ部41に発信する。
【0035】
尚、本実施形態では、血圧センサ部41内のセンサ制御部42が脈派伝搬速度PWV及び血圧値に関する演算等の処理を行ったが、これらの処理をシステム本体51側の受信制御部54で行ってもよい。受信制御部54側で処理を行うことにより、センサ制御部42の処理演算の負担を軽減し、簡易なタイプを採用して、構造の簡素化及び消費電力の軽減を図ってもよい。
【0036】
また、本実施形態をシミュレーションするために、実際にセンサユニットを構築し、確認を実施した。その構成として、血管の代わりとして、直径7mmのゴムチューブを利用し、5mm間隔で配置した2つのセンサユニットを固定枠5となるアクリル板にて固定した構造を用いて基礎原理を確認した。この構造を用いることで、ゴムチューブの11%の伸びが計測された。検出した信号から、2つのセンサ間に14msecの応答時間差が求められた。これらの結果から、図2(a)に示す構造を用いてチューブ径(血管径)及び脈派伝搬速度PWVの計測が実証された。
【0037】
さらに、システム本体51に、ネットワーク(インターネットやLAN等)の通信回線を介して、外部機器(パソコンや携帯電話機)へ通信する機能(図示せず)を備えることにより、診察を行う者が遠隔地に所在していた場合でも、現在の血圧値を取得して、診断することができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態によれば、センサを体内に埋め込み、キャリブレーションを必要とせずに長期間に亘り、安定して正確な血圧を計測することができる。また、センサにより検出された血圧値に対して、脈派伝搬速度PWV情報を元に算出した血管の剛性により加齢・疾患等による血管の硬さの変化を考慮した補正を施した血圧計測を実現する。
【0039】
次に、第1の実施形態における変形例について説明する。
図6(a)は、第1の変形例のセンサユニットにおける外観構成を示し、図6(b)は、このセンサユニットにおける断面構成を示す図である。
前述した第1の実施形態では、2つのセンサユニット間の離間距離を高い剛性の支持体8を用いて保持する構成であった。
【0040】
本変形例では、前述したベルト部材6と支持体8に代わって同じ機能を果たす、異方変形性の高い材料、例えば、ePTFE(延伸多孔質PTFE)による膜部材10(10a,10b)を用いる。この膜部材10は、血管径方向への変形に対しては弾性変形性を有し、X軸方向即ち、血管軸方向の変形に対して高い剛性を有する(即ち、延びない)という特徴がある。さらに、2つのセンサ7a,7bの離間距離Xを固定するために2つの切欠部(収容エリア)が形成される。
【0041】
図6(a),(b)に示すように、2つの膜部材10a,10bは、血管3を包むように挟み、それらの両端間に介在するように、センサ7a,7bが接着して配置される。この構成において、脈動に伴う血管膨張力による血管径の変化で発生する膜部材10a,10bの伸縮によりセンサ7a,7bは、半径方向で内側に引っ張られて傾斜し、この力をせん断力として計測する。よって、センサ7a,7bにより、血圧変化に伴う血管の微小変形を計測し、血管径を求める。また、膜部材10としては、シリコーンゴムに異方変形性を付与してもよい。
本変形例においても前述した第1の実施形態と同様な効果を奏している。さらに、第1の実施形態で用いた支持体8及び固定枠5が不要となり、構成が簡素化され、且つ小型化される。
【0042】
次に第2の実施形態の血圧センサシステムについて説明する。
本実施形態は、システム構成が第1実施形態(図5)と同等であるが、センサユニットの構成が異なっている。本センサユニットが採用するセンサは、血管の直径変化を、弾性体材料に埋め込んだCNT(カーボン・ナノチューブ:carbon nanotube)のピエゾ抵抗効果を利用して計測する構成である。
【0043】
図7(a)は、本実施形態における一対のセンサユニット11(11a,11b)の外観構成を示し、図7(b)は、センサユニット11のB−B’の断面構成を示している。図8(a)は、せん断力が生じていない時にセンサ12の状態を示し、図8(b)は、せん断力が生じた時のCNT16が延伸したセンサ12の状態を示す図である。図9は、2つのセンサユニット11a,11bが検出したセンサの脈波に対する応答時間差を有する検出信号A,Bを示す図である。
【0044】
センサユニット11は、少なくとも1つのセンサ12を内包する弾性体材料からなる2分割されたベルト部材13(13a,13b)と、離間して血管周囲に挟着する2つのベルト部材13a,13bの両端を固着する固定部材14とで構成される。
【0045】
図8に示すようにセンサ12は、架橋CNTによる架橋構造センサである。図10に示すように、導電性を有し、橋脚部となる2つのシリコン支持部材15a,15bとこれらの間を橋渡しで連結する架橋CNT16とで構成される。センサ12は、引きによる外力(例えば、せん断力)により、CNT16が伸長することでシリコン支持部材15(15a,15b)間の抵抗値が変化するため、この特性をセンサとして利用する。
【0046】
本実施形態は、前述した第1の実施形態と同様に、センサユニット11a,11bが既知の離間距離を空けて血管3に装着する。各センサユニット(センサ)間の離間距離は、図9に示した2つのセンサに流れる検出信号A,Bの時間差が検出可能な距離であれば、特に限定されるものではない。
【0047】
計測に際して、シリコン支持部材15a,15b間に定電圧を印加しておき、脈動による血管膨張力による血管径の変化が発生によるベルト部材13の延伸により、センサ12が引っ張られて、図8(b)に示すようにCNT16が伸長により抵抗が変化し、図9に示すように、1つの脈動においてシリコン支持部材15a,15b間の検出信号の出力電圧が変化する。CNTの電気抵抗は、カイラリティ(カイラル指数)に依存して変化する。センサユニット11a,11bのそれぞれの出力A,Bは、同じ血管上で離間しているため、応答時間差が生じる。
【0048】
このように、血管の周囲に装着されるベルト部材13を弾性体で形成し、その内部に内包するようにCNT構造を利用するセンサを実装しているため、脈動による血管の膨張する力を弾性体に対するせん断力として検出信号を検出する。
【0049】
従って、第1の実施形態と同様に、検出信号間のセンサの脈波に対する応答時間差に基づく脈派伝搬速度PWVと、検出信号の変位から血管径を算出する。さらに、脈派伝搬速度PWVによる血管の剛性による補正を施した血圧値及びそれに関係する情報を生成する。CNTは、一般的な金属やシリコンに比べて、ゲージ率が高く、センサ感度の向上が見込める。
【0050】
従って、本実施形態によれば、センサを体内に埋め込み、キャリブレーションを必要とせずに長期間に亘り、安定して正確な血圧を計測することができる。また、センサにより検出された血圧値に対して、脈派伝搬速度PWV情報を元に算出した血管の剛性により加齢・疾患等による血管の硬さの変化を考慮した補正を施した血圧計測を実現する。
【0051】
次に、第2の実施形態に用いたセンサの構造と製造工程について説明する。
このセンサは、前述したように、橋脚部分となる角柱形状の2つのシリコン支持部材15a,15bとこれらの間を連結するCNT16とでブリッジ架橋構造に構成されている。この本実施形態において、このセンサは、弾性部材に内包されている。
【0052】
このセンサの製造において、一般的にCNTは、生成温度が800℃以上の高温であり、シリコーンゴム等の弾性体を基板として、直接生成することが困難である。そこで、本実施形態では、シリコン基板上で作製されたCNTを含むセンサをシリコーンゴム等の弾性体基板上に実装する。以下に製造方法について説明する。
【0053】
まず、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて、シリコン基板上にシリコン支持部材15a,15bとなる凸部からなる多数のシリコン支持構造をアレイ状に形成する。尚、このシリコン支持構造において、後述する実装工程において、シリコン支持部材15a,15bをシリコン基板から剥離して移設(転写)させるため、剥離しやすいように、SOI(Silicon on Insulator)基板等を用いてもよい。
【0054】
例えば、図11(a)に示すように、SOI基板21の上部のシリコン層にフォトリソマスクを用いたREI等の異方性エッチングにより削り出し、シリコン支持構造17aを形成する。さらにシリコン支持構造17aの下のガラス層をウェットエッチング等による等方性エッチングによりテーパー形状又は柱状の細いガラスの柱24でシリコン支持部材を支えた構造を形成する。この時、シリコン支持構造17aの裏面(柱24側の面)におけるガラス層は、少なくとも電極23に移設された際に、シリコン支持構造17aと電極23とが適正に電気的接続が出来る程度に除去されていなければならないものとする。
【0055】
次に、CVD(化学気相成長法:Chemical Vapor Deposition)法を用いて、CNTをシリコンの構造の間隙を橋渡しするように生成する。このCVD法は、CNTをシリコン基板上で生成可能であり、且つエタノール蒸気圧、金属触媒のナノ粒子、プロセス温度及びプロセス時間等によるパラメータを調整することで制御が容易であり、SWNT(シングルウォールナノチューブ)、DWNT(ダブルウォールナノチューブ)、MWNT(マルチウォールナノチューブ)を選択的に生成することができる。例えば、メタン、アセチレン、一酸化炭素などの炭素含有ガスを熱分解して、Fe、Ni又はFe−Mo等の触媒の粒子により、CNTを生成する。
【0056】
CNT成長の温度範囲は、適用する炭素源ガスによって設定されるが、略600〜900℃の範囲である。CNTの気相成長は、金属触媒の密度に応じて異なることが知られている。平面状の金属触媒の密度が薄い場合、生成されたSWNTがシリコン基板に対して、図12(a),(b)に示すように、シリコン基板21上に設けた支持部材に対して水平方向に配向して隣同士と連結する。
【0057】
本実施形態では、金属触媒溶液の濃度を薄くすることで、CNT16を基板21に対して水平方向に成長させる。即ち、数ミクロン程度の間隙で複数のシリコン支持部材15を設けて、金属触媒密度を低くした状態で気相成長させることで、図12に示すような、シリコン支持部材15間を架橋CNT16で連結する架橋構造部17(センサ12)を形成する。
【0058】
次に、図10(a)乃至(d)を参照して、シリコン基板21上に形成した架橋構造CNT16を弾性体基板22(ベルト部材13)に移設する手順について説明する。
図10(a)に示すように、シリコン基板21上に形成された多数の架橋構造部17に対して、近赤外蛍光分光法を用いて、それぞれの架橋CNT16のカイラリティ(カイラル指数)を取得する。図10(b)に示すように、取得したカイラリティの中で、所望するカイラリティの架橋CNT16とその本数を持つ架橋構造部17aを特定する。通常、CNTにおける電気抵抗は、カイラリティに依存する。
【0059】
次に、図10(c)に示すように、その架橋構造部17aは、樹脂製スタンプ例えば、シリコーンゴムスタンプ18により、基板21と分離してピックアップする。具体的には、架橋構造部17aのシリコン支持部材15a,15bは、前述した図11(a)に示したように、ガラスの柱24を支えた構造である。シリコーンゴムスタンプ18がシリコン支持部材15a,15bにピックアップするために当接した際に、図11(b)に示すように、柱24を破壊して、分離させる。その後、図10(c)及び図11(c)に示すように、シリコーンゴムスタンプ18を引き上げると共に、架橋構造部17aが基板21から分離される。
【0060】
さらに、図10(d)示すように、金属配線(及び電極パッド)23が形成された弾性体基板22上に実装され、センサ12が作製される。その実装の際に、シリコン支持部材15a,15bは、それぞれのパッドに電気的に導通するように固着、所謂、ダイボンドする。
その後、弾性体基板22上の架橋構造部17a、即ちセンサ12(図示せず)が内包されるように、弾性体基板22と同じ材料のシリコーンゴムで密に覆って封止を行い、ベルト部材13を形成する。
【0061】
通常、CNTはボトムアップ的に合成され、MEMSトップダウン構造との統合が難しかった。さらに、従来において、予め別の箇所でCNTを作製しておき、所望する基板に転写(統合)する技術として、マニピュレータで転写する方法、電気泳動を用いた方法、液体材料を溶媒として塗布する方法等が検討されていたが、これらの方法は、形成するCNTの本数やカイラリティを制御することができなかった。
【0062】
そこで、本実施形態では、シリコン基板上に形成したシリコン支持構造を用いて橋渡しするようにCNTを合成し、スタンピング転写法を用いて、他の基板(弾性基板)に転写する、2段階からなる製造方法を適用している。
つまり、CVD法を用いて、複数設けられたシリコン支持構造間に、CNTを一括して生成した後に、各CNTのカイラリティを調べて、架橋構造部17a、即ちセンサ12をスタンピング転写により選択的にピックアップし、弾性部材からなる別の基板に転写する。
以上のことから、本実施形態によれば、シリコン基板上に形成した多数のCNTの中から所望のカイラリティを有するセンサを選択することができ、センサの製造ばらつきを無くし、性能の均一化を図ることができる。
【0063】
さらに、シリコン支持構造が目印となるため、光学顕微鏡下でアライメントして転写することが可能である。この方法を用いることで、CNTの機能を様々な材料の上で展開することが可能となる。従って、本実施形態によれば、電気的・機械的に優れているCNTをセンサとして用いることができ、小型・高感度が要求される体内埋め込み型血圧センサを実現する上で、非常に有用である。
【0064】
前述した本発明の実施形態によれば、以下の発明の要旨を有している。
(1) 体内にて血管径ならびに脈波伝播速度(PWV)を計測する埋め込み型血圧センサであり、1本の血管の異なる位置に配置可能な2つの血管径を計測するセンサを有した構造を特徴とする。血圧変化に伴う血管径の変化および2箇所に配置されたセンサの脈波に対する応答時間の差からPWVを計測し、血管の剛性および血圧を求めることを特徴とする血圧計測方法。
【0065】
(2)上記方法を用いることにより、血圧測定を行うことを特徴とする植え込み型血圧センサであり、前記血管径を計測するセンサとして、弾性体の薄膜にて血管を包み、そのせん断方向への引っ張りを計測することで、血管の大変形を直接計測することを特徴とする前記(1)項に記載の埋め込み型血圧センサ。
(3)人の動きに伴う体内のセンサ間距離のズレを血管に付加を与えずに防ぐため、2つの前記血管径を計測するセンサ間を剛体の高い構造体で接続したことを特徴とする前記(2)項に記載の植え込み型血圧センサ。
(4)前記弾性体の薄膜が異方性変形の性質を持ち、血管軸方向の変形を抑止することにより、センサ間距離のズレを血管に付加しないことを特徴とする前記(2)項に記載の埋め込み型血圧センサ。
【0066】
(5)前記せん断方向への引っ張りの計測に、ピエゾ抵抗付き直立型カンチレバー構造を利用したことを特徴とする前記(2)、(3)及び(4)項のうちのいずれか1項に記載の埋め込み型血圧センサ。
(6)前記せん断方向への引っ張りの計測に於いて、それに用いられるセンサの作製方法として、CNT生成基板上の複数の搬送用微小ブロック間にCNTを生成した後、任意の前記ブロックごと統合基板へ搬送することで、所望のCNTを所定の位置に配置する手法。
【符号の説明】
【0067】
1…血圧計測システム、2,2a,2b…センサユニット、3…血管、4…脈波伝達部、5,5a,5b…固定枠部、6,6a,6b…ベルト部材(装着治具)、7,7a,7b…センサ、8…支持体、10,10a,10b…膜部材、11,11a,11b…センサユニット、12…センサ、13,13a,13b…ベルト部材、14…固定部材、15,15a,15b…シリコン支持部材、16…CNT(架橋CNT)、17,17a…架橋構造部、21…シリコン基板、22…弾性体基板、41…血圧センサ部、42…センサ制御部、43…データ送信用アンテナ、44…データ送信部、45…受電部、46…センサ電源部、51…システム本体、52…データ受信アンテナ、53…データ受信部、54…受信制御部、55…送電部、56…電源部、57…データ表示部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内にて血管径を計測する複数の血圧センサと、
血管軸方向に予め定めた離間距離を空けた少なくとも2箇所に前記血圧センサを配置し、脈動する血管の径方向の周囲を環囲し、該径方向に弾性を有する装着治具と、
前記血圧センサが出力した脈動に伴う血圧変化から血管径と、前記2箇所に配置された前記血圧センサの脈波に対する応答時間差から脈派伝搬速度PWVを算出して前記血管の剛性を求め、前記血圧センサにより計測された血管径から算出された血圧値に対して、前記剛性に基づく補正が行われた血圧を算出する制御部と、
を具備することを特徴とする血圧計測システム。
【請求項2】
前記装着治具は、少なくとも一部がベルト形状を成し、
前記血圧センサは、可撓性又は弾性を有する脈波伝達部材に内包される、ピエゾ抵抗層が積層形成された片持ち梁構造を成すピエゾ抵抗付き直立型カンチレバーであり、前記装着治具の接合部に、前記血圧センサの前記片持ち梁が立ち上がり方向で接するように配置され、血管膨張または血管収縮に伴う前記装着治具のせん断方向への生じる力を計測することを特徴とする請求項1に記載の血圧計測システム。
【請求項3】
ベルト形状に分割された前記装着治具は、前記接合部が前記離間距離を保持する枠部材により固定されることを特徴とする請求項2に記載の血圧計測システム。
【請求項4】
前記装着治具は、
前記血管径方向への変形に対して弾性変形性を有し、前記血管軸方向の変形に対して不変形な剛性を有する異方性変形性の弾性体により形成され、前記離間距離を空けた少なくとも2箇所に前記血圧センサの収容エリアが設けられて、
前記血圧センサを、前記離間距離を保持して血管に装着することを特徴とする請求項1に記載の血圧計測システム。
【請求項5】
血管の血管軸方向に予め定めた離間距離Lを空けた少なくとも2箇所に装着された血圧センサから出力した脈動に伴う血圧変化から血管径Dと、前記2箇所に配置されたセンサの脈波に対する応答時間差ΔTから、L/ΔT =脈派伝搬速度PWVを算出し、
【数6】
ここで、P:血圧、h:血管の厚さ、ΔD:血管径の変化及び、ρ:血液の密度として、初期設定で予め定めた血圧からの血圧差ΔPは、
【数7】
で求めて、血圧を取得することを特徴とする血圧計測方法。
【請求項6】
予め定めた離間間隔を空けて前記基板に設けられる少なくとも一対の導電性を有する支持部材と、該支持部材間を橋渡しで連結する架橋型カーボン・ナノチューブ(carbon nanotube)と、前記支持部材と電気的に接続する電極及び外部と電気的に接続するための配線パターンが形成され、弾性を有する基板と、を備え、体内で血管に装着される架橋構造センサ部と、
血管軸方向に予め定めた離間距離を空けた少なくとも2箇所に前記架橋構造センサを配置し、脈動する血管の径方向の周囲を環囲し、該径方向に弾性を有する装着治具と、
前記架橋構造センサが出力した脈動に伴う血圧変化から血管径と、前記2箇所に配置された架橋構造センサの脈波に対する応答時間差から脈派伝搬速度PWVを算出して前記血管の剛性を求め、前記架橋構造センサにより計測された血圧値に対して、前記剛性に基づく補正が行われた血圧を算出する制御部と、
を具備することを特徴とする血圧計測システム。
【請求項7】
電極及び外部と電気的に接続するための配線パターンが形成され、弾性を有する基板と、
予め定めた間隔を空けて、電極と接続するように前記基板上に設けられる少なくとも一対の導電性を有する支持部材と、
前記支持部材間を橋渡しで連結する架橋型カーボン・ナノチューブ(carbon nanotube)と、
を具備し、
外力による前記基板の伸縮に伴い、電圧が印加されている前記支持部材間の前記間隔が変化した際に、前記カーボン・ナノチューブの伸縮により、前記支持部材間における電気的特性が変化することを特徴とする架橋構造センサ。
【請求項8】
前記弾性体基板に実装された架橋構造部を、前記弾性体基板と同じ弾性体部材又は同じ弾性率を有する弾性部材で封止することを特徴とする請求項7に記載の架橋構造センサの製造方法。
【請求項9】
導電性基板上にアレイ状に複数の橋脚部となる突起部を形成し、
熱分解された炭素含有ガスの雰囲気下で金属触媒のナノ粒子を導入して、プロセス温度及びプロセス時間の制御により、複数の突起部間で互いに橋渡しする架橋型カーボン・ナノチューブを生成して前記突起部を含む架橋構造部を形成し、
形成されたカーボン・ナノチューブにおける各カイラリティを取得し、
取得された中から所望するカイラリティのカーボン・ナノチューブとその本数を有する架橋構造部を樹脂製スタンプにより前記基板から分離して弾性体基板に転写して実装することを特徴とする架橋構造センサの製造方法。
【請求項1】
体内にて血管径を計測する複数の血圧センサと、
血管軸方向に予め定めた離間距離を空けた少なくとも2箇所に前記血圧センサを配置し、脈動する血管の径方向の周囲を環囲し、該径方向に弾性を有する装着治具と、
前記血圧センサが出力した脈動に伴う血圧変化から血管径と、前記2箇所に配置された前記血圧センサの脈波に対する応答時間差から脈派伝搬速度PWVを算出して前記血管の剛性を求め、前記血圧センサにより計測された血管径から算出された血圧値に対して、前記剛性に基づく補正が行われた血圧を算出する制御部と、
を具備することを特徴とする血圧計測システム。
【請求項2】
前記装着治具は、少なくとも一部がベルト形状を成し、
前記血圧センサは、可撓性又は弾性を有する脈波伝達部材に内包される、ピエゾ抵抗層が積層形成された片持ち梁構造を成すピエゾ抵抗付き直立型カンチレバーであり、前記装着治具の接合部に、前記血圧センサの前記片持ち梁が立ち上がり方向で接するように配置され、血管膨張または血管収縮に伴う前記装着治具のせん断方向への生じる力を計測することを特徴とする請求項1に記載の血圧計測システム。
【請求項3】
ベルト形状に分割された前記装着治具は、前記接合部が前記離間距離を保持する枠部材により固定されることを特徴とする請求項2に記載の血圧計測システム。
【請求項4】
前記装着治具は、
前記血管径方向への変形に対して弾性変形性を有し、前記血管軸方向の変形に対して不変形な剛性を有する異方性変形性の弾性体により形成され、前記離間距離を空けた少なくとも2箇所に前記血圧センサの収容エリアが設けられて、
前記血圧センサを、前記離間距離を保持して血管に装着することを特徴とする請求項1に記載の血圧計測システム。
【請求項5】
血管の血管軸方向に予め定めた離間距離Lを空けた少なくとも2箇所に装着された血圧センサから出力した脈動に伴う血圧変化から血管径Dと、前記2箇所に配置されたセンサの脈波に対する応答時間差ΔTから、L/ΔT =脈派伝搬速度PWVを算出し、
【数6】
ここで、P:血圧、h:血管の厚さ、ΔD:血管径の変化及び、ρ:血液の密度として、初期設定で予め定めた血圧からの血圧差ΔPは、
【数7】
で求めて、血圧を取得することを特徴とする血圧計測方法。
【請求項6】
予め定めた離間間隔を空けて前記基板に設けられる少なくとも一対の導電性を有する支持部材と、該支持部材間を橋渡しで連結する架橋型カーボン・ナノチューブ(carbon nanotube)と、前記支持部材と電気的に接続する電極及び外部と電気的に接続するための配線パターンが形成され、弾性を有する基板と、を備え、体内で血管に装着される架橋構造センサ部と、
血管軸方向に予め定めた離間距離を空けた少なくとも2箇所に前記架橋構造センサを配置し、脈動する血管の径方向の周囲を環囲し、該径方向に弾性を有する装着治具と、
前記架橋構造センサが出力した脈動に伴う血圧変化から血管径と、前記2箇所に配置された架橋構造センサの脈波に対する応答時間差から脈派伝搬速度PWVを算出して前記血管の剛性を求め、前記架橋構造センサにより計測された血圧値に対して、前記剛性に基づく補正が行われた血圧を算出する制御部と、
を具備することを特徴とする血圧計測システム。
【請求項7】
電極及び外部と電気的に接続するための配線パターンが形成され、弾性を有する基板と、
予め定めた間隔を空けて、電極と接続するように前記基板上に設けられる少なくとも一対の導電性を有する支持部材と、
前記支持部材間を橋渡しで連結する架橋型カーボン・ナノチューブ(carbon nanotube)と、
を具備し、
外力による前記基板の伸縮に伴い、電圧が印加されている前記支持部材間の前記間隔が変化した際に、前記カーボン・ナノチューブの伸縮により、前記支持部材間における電気的特性が変化することを特徴とする架橋構造センサ。
【請求項8】
前記弾性体基板に実装された架橋構造部を、前記弾性体基板と同じ弾性体部材又は同じ弾性率を有する弾性部材で封止することを特徴とする請求項7に記載の架橋構造センサの製造方法。
【請求項9】
導電性基板上にアレイ状に複数の橋脚部となる突起部を形成し、
熱分解された炭素含有ガスの雰囲気下で金属触媒のナノ粒子を導入して、プロセス温度及びプロセス時間の制御により、複数の突起部間で互いに橋渡しする架橋型カーボン・ナノチューブを生成して前記突起部を含む架橋構造部を形成し、
形成されたカーボン・ナノチューブにおける各カイラリティを取得し、
取得された中から所望するカイラリティのカーボン・ナノチューブとその本数を有する架橋構造部を樹脂製スタンプにより前記基板から分離して弾性体基板に転写して実装することを特徴とする架橋構造センサの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−234884(P2011−234884A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108746(P2010−108746)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
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