説明

血圧センサ

【課題】 本発明によれば、高感度で連続的に血圧測定を行うことができる血圧センサを
提供することができる。
【解決手段】 被測定者の血圧測定部位に装着され、撓むことで少なくとも一方向に引っ
張り応力が生じる基板と、前記基板上に設けられた第1の電極と、前記第1の電極上に設
けられ磁化が一方向に向いている磁化固着層と、前記磁化固着層上に設けられた非磁性層
と、前記非磁性層上に設けられ磁化が可変の磁化自由層と、前記磁化自由層上に設けられ
た第2の電極と、を備え、前記磁化自由層の磁化が前記引っ張り応力の生じる第1の方向
と異なる方向及び前記第1の方向に対して垂直な方向と異なる方向を向いていることを特
徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、血圧センサに関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活をしながら連続的な血圧測定を負荷なく行うことが未病医療の分野で求められて
いる。これを可能にするためには、絆創膏型のような小型サイズで、十分な測定精度を有
する血圧測定の実現が必要である。
【0003】
血圧測定としてカフ型が知られている。カフ型では、腕・指などに強い圧力を加えること
で血流を一旦止めて血圧測定を行う。このために、連続的な測定が難しい。また、強い圧
力を加える機構が必要であるために小型化することが難しい。
【0004】
連続的な測定が可能な血圧測定としてトノメトリ方式が知られている。トノメトリ方式は
、人体にセンサを接触させて動脈内圧による皮膚の歪みを感知することで血圧測定を行う

【0005】
トノメトリ方式としてMEMS(Micro Electro Mechanical
System)圧力センサを利用したデバイスが製品化されている。この製品は、Si基
板に厚さが薄い部分を設けて、動脈内圧の変動により厚さが薄い部分を歪ませる。この歪
みによる電気抵抗の変化を用いて血圧測定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−148132号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】G. Pressman, P. Newgard: “A transducer for continuous external measurement of arterial blood pressure”, IEEE Trans Biomed Electro 10 73 (1963).
【非特許文献2】M. Lohndorf et al., ”Highly sensitive strain sensors based on magnetic tunneling junctions”J. Magn. Magn. Mater. 316, e223 (2007)
【非特許文献3】D. Meyners et al., ”Characterization of magnetostrictive TMR pressure sensors by MOKE”, J. Appl. Phys. 105, 07C914 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、トノメトリ方式では、センサが人体と広い範囲で理想的に接触していなけ
れば、歪みの感度が低下してしまう。このような場合、日常生活をしながら連続的に血圧
測定を行うことは難しい。
【0009】
そこで本発明は、高感度で連続的に血圧測定を行うことができる血圧センサを提供するこ
とを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る血圧センサは被測定者の血圧測定部位に装着され、撓むことで第1
の方向に引っ張り応力が生じる基板と、前記基板上に設けられた第1の電極と、前記第1
の電極上に設けられ、磁化が一方向に向いている磁化固着層と、前記磁化固着層上に設け
られた非磁性層と、前記非磁性層上に設けられ前記第1の方向及び前記第1の方向に垂直
な第2の方向とは何れとも異なる方向を向いている可変の磁化を有する第1の磁化自由層
と、前記第1の磁化自由層上に設けられ前記第1の方向及び前記第2の方向とは何れとも
異なる方向を向いている可変の磁化を有する第2の磁化自由層と、前記第2の磁化自由層
上に設けられた第2の電極とを備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る血圧センサを用いた図。
【図2】第1の実施形態に係る血圧センサを示す図。
【図3(A)】第1の実施形態に係る血圧センサを示す図。
【図3(B)】第1の実施形態に係る血圧センサを示す図。
【図3(C)】第1の実施形態に係る血圧センサを示す図。
【図3(D)】第1の実施形態に係る血圧センサを示す図。
【図3(E)】第1の実施形態に係る血圧センサを示す図。
【図4】最高血圧と最低血圧を説明する図。
【図5】磁化自由層の磁化の向きと血流方向を示す図。
【図6】MR素子の変形例を示す図。
【図7】MR素子の変形例を示す図。
【図8】MR素子の変形例を示す図。
【図9】MR素子の変形例を示す図。
【図10】MR素子の変形例を示す図。
【図11】MR素子の変形例を示す図。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る血圧センサを示す図。
【図13】第2の実施形態に係る血圧センサの動作原理を説明するための図。
【図14】第2の実施形態に係る血圧センサの変形例を示す図。
【図15】第2の実施形態に係る血圧センサの変形例を示す図。
【図16】第2の実施形態に係る血圧センサの変形例を示す図。
【図17】第2の実施形態に係る血圧センサの変形例を示す図。
【図18】第2の実施形態に係る血圧センサの変形例を示す図。
【図19】第2の実施形態に係る血圧センサの変形例を示す図。
【図20】第2の実施形態に係る血圧センサの変形例を示す図。
【図21】第2の実施形態に係る血圧センサの変形例を示す図。
【図22】本発明の第3の実施形態に係る血圧センサを示す図。
【図23】第3の実施形態に係る血圧センサの変形例を示す図。
【図24】本発明の第4の実施形態に係る血圧センサを示す図。
【図25】MR素子の外部磁場に対する電気抵抗の測定結果を示す図。
【図26】MR素子の歪みに対する電気抵抗の測定結果を示す図。
【図27】歪みの印加方向を説明する図。
【図28】本発明の第5の実施形態に係る血圧測定システムを説明する図。
【図29】第5の実施形態に係る血圧測定システムを説明する図。
【図30】第5の実施形態に係る血圧測定システムを説明する図。
【図31】第5の実施形態に係る血圧測定システムを説明する図。
【図32】第5の実施形態に係る血圧測定システムを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面を参照して、本発明の各実施形態を説明する。同じ符号が付されているものは同
様のものを示す。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との
関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、
同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比係数が異なって表される場合
もある。
(第1の実施形態)
【0013】
図1は、第1の実施形態に係る血圧センサ10を用いた図である。
【0014】
血圧センサ10は、血圧測定部位に設けられ、皮膚表面に接着するために絆創膏のような
形状の一部に設けられている。すなわち、皮膚上に接するように、血圧センサ10が配置
されている。血圧センサ10は、動脈血管が存在しているような皮膚の直下に配置される
。紙面に垂直方向が血流方向である。血流方向とは、血管が延在する方向を示す。皮膚表
面の近傍に動脈血管が存在しなければ、血圧測定が難しくなる。体表から脈動を検知でき
る部位(および体表下にある動脈)は、以下の通りである。
【0015】
内側上腕二頭筋溝(上腕動脈)、前腕外側下端で橈側手根屈筋腱と腕橈骨筋腱との間(橈
骨動脈)、前腕内側下端で尺側手根屈筋腱と浅指屈筋腱との間(尺骨動脈)、長母指伸筋
腱の尺側(第1背側中手動脈)、腋窩(腋窩動脈)、大腿三角部(大腿動脈)、下腿前面
の下部で前脛骨筋腱の外側(前脛骨動脈)、内果の後下部(後脛骨動脈)、長母指伸筋腱
の外側(足背動脈)、頚動脈三角(総頚動脈)、咬筋停止部の前(顔面動脈)、胸鎖乳突
筋停止部の後ろで僧帽筋起始部との間(後頭動脈)、外耳孔の前(浅側頭動脈)。よって
、血圧センサ10を配置する箇所は、上記の部位となる。すなわち、これらが血圧測定部
位に相当する。血圧センサ10はこれらの箇所の皮膚表面に貼り付ける。
【0016】
図1に示すように、血管が径方向に対して拡張すると、皮膚が押し上げられ血圧として働
く。このとき、血圧が働く方向に対して垂直方向に皮膚は、引っ張り応力を受ける。それ
と同時に血圧センサ10にも引っ張り応力がある一方向(第1の方向)に働く。
【0017】
図2は、血圧センサ10を示す図である。
【0018】
血圧センサ10は、基板20上に電極30が設けられ、電極30上に磁化が一方向に向い
ている磁化固着層40が設けられている。磁化固着層40上には非磁性層50が設けられ
、非磁性層50上には磁化の向きが可変な磁化自由層60が設けられている。磁化自由層
60上には電極70が設けられている。磁化固着層40と磁化自由層60との配置が入れ
替わっても良い。磁化固着層40と磁化自由層60は強磁性体である。電極30、磁化固
着層40、非磁性層50、磁化自由層60、電極70を含む構成を磁気抵抗効果素子(以
下、MR素子と称する)15という。MR素子から、電極30、70を除いたものをMR
膜という。基板20と電極30との間にアルミ酸化物等の絶縁層を設けてもよい。
【0019】
基板20には、絶縁体又は半導体等の材料を用いることができる。絶縁体の材料としては
、例えば、プラスチック材料であるポリイミド等を用いることができる。半導体の材料と
しては、例えばシリコン等を用いることができる。
【0020】
磁化固着層40は、強磁性体である。磁化固着層40の材料としては、例えばFeCo合
金、CoFeB合金、NiFe合金等を用いることができる。磁化固着層40の膜厚は、
例えば2nm〜6nmである。
【0021】
非磁性層50は、金属又は絶縁体を用いることができる。金属としては、例えば、Cu、
Au、Ag等を用いることができる。金属の場合、非磁性層50の膜厚は、例えば1nm
〜7nmである。絶縁体としては、例えば、マグネシウム酸化物(MgO等)、アルミ酸
化物(Al等)、チタン酸化物(TiO等)、亜鉛酸化物(ZnO等)を用いるこ
とができる。絶縁体の場合、非磁性層50の膜厚は、例えば0.6nm〜2.5nmであ
る。
【0022】
磁化自由層60は、強磁性体である。磁化自由層60の材料としては、例えばFeCo合
金、NiFe合金等を用いることができる。他にも、Fe−Co−Si−B合金、λs>
100ppmを示すTb−M−Fe合金(Mは、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er)
、Tb−M1−Fe−M2合金(M1は、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、M2は
、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,Ta)、Fe−M3−M4−B合金
(M3は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,Ta、M4は、Ce,Pr
,Nd,Sm,Tb,Dy,Er)、Ni、Al−Feやフェライト(Fe、(F
eCo))など)等を用いることができる。磁化自由層60の膜厚は、例えば2n
m以上である。
【0023】
磁化自由層60は、2層構造としてもよい。この場合、FeCo合金を積層して、次にF
e−Co−Si−B合金、λs>100ppmを示すTb−M−Fe合金(Mは、Sm、
Eu、Gd、Dy、Ho、Er)、Tb−M1−Fe−M2合金(M1は、Sm、Eu、
Gd、Dy、Ho、Er、M2は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,T
a)、Fe−M3−M4−B合金(M3は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo
,W,Ta、M4は、Ce,Pr,Nd,Sm,Tb,Dy,Er)、Ni、Al−Fe
やフェライト(Fe、(FeCo))など)等から選択される材料を積層す
る。
【0024】
電極30、70には、例えば非磁性体であるAu、Cu、Ta、Al等を用いることがで
きる。他にも、電極30、70に軟磁性体の材料を用いることで、MR素子15に影響を
及ぼす外部からの磁気ノイズを低減することができる。軟磁性体の材料としては、例えば
パーマロイ(NiFe合金)や珪素鋼(FeSi合金)を用いることができる。MR素子
15は、電極30、70が電気的に短絡せぬようアルミ酸化物(例えばAl)やシ
リコン酸化物(例えばSiO)等の絶縁体で覆われている(図示せず)。
【0025】
次に、血圧センサ10の動作原理について説明する。
【0026】
血圧センサ10は、強磁性体が有する「逆磁歪効果」と、磁化固着層40、非磁性層50
、及び磁化自由層60の積層膜で発現する「MR効果」を応用したものである。
【0027】
血圧センサ10の一部を用いた「逆磁歪効果」及び「MR効果」について説明する。「M
R効果」は、磁化の向きの相対角度の変化を電極30及び電極70を用いて磁化固着層4
0、非磁性層50、磁化自由層60の積層方向に通電することで電気抵抗変化として読取
ることで発現する。すなわち、磁化自由層60の磁化の向きと引っ張り応力の方向とが異
なる方向であれば、逆磁歪効果によりMR効果を発現することができる。なお、MR効果
によって変化する電気抵抗量を「MR変化量」といい、MR変化量を電気抵抗値で除した
ものを「MR変化率」という。
【0028】
図3は、磁化固着層40及び磁化自由層60の磁化の方向と引っ張り応力の方向との関係
を示す図である。図3では、磁化固着層40、非磁性層50、及び磁化自由層60が示さ
れている。
【0029】
図3(A)は、引っ張り応力が印加されていない状態を示す。磁化固着層40の磁化の向
きと磁化自由層60の磁化の向きは同一方向を向いている。
【0030】
図3(B)は、引っ張り応力が印加された状態を示す。併せて血流方向を示す。血流方向
と引っ張り応力が働く方向は直交している。引っ張り応力は磁化固着層40及び磁化自由
層60の磁化の向きに対して直交方向に印加されている。このとき、引っ張り応力が印加
された方向と同一方向になるように磁化自由層60の磁化は回転する。これを「逆磁歪効
果」という。さらに、磁化固着層40の磁化は一方向に固着されている。よって、磁化自
由層60の磁化が回転することで、磁化固着層40の磁化の向きと磁化自由層60の磁化
の向きとの相対角度が変化する。磁化固着層40の磁化の方向は一例として記載してあり
、必ずしも図と同じ方向でなくてもよい。
【0031】
逆磁歪効果は、強磁性体の磁歪定数の符号によって磁化の容易軸が変化する。大きな逆磁
歪効果を示す多くの材料は磁歪定数が正の符号を持つ。磁歪定数が正の符号である場合に
は、上述のように引っ張り応力が働く方向が磁化容易軸となる。つまり、磁化自由層60
の磁化が磁化容易軸の方向に回転することになる。
【0032】
したがって、磁化自由層60の磁歪定数が正の符号の場合には、磁化自由層60の磁化の
方向を引っ張り応力が働く方向とは異なる方向に向けておく必要がある。
【0033】
磁歪定数が負の符号の場合には、引っ張り応力が働く方向に垂直な方向が磁化容易軸とな
る。これを図3(C)に示す。磁歪定数が負の符号の場合には、磁化自由層60の磁化の
方向を引っ張り応力が働く方向に対して垂直な方向と異なる方向に向けておく必要がある
。磁化固着層40の磁化の方向は一例として記載してあり、必ずしも図と同じ方向でなく
てもよい。
【0034】
図3(D)は、磁歪定数の符号が正と負の場合を併せて示した図である。血流方向に対し
、同一な方向又は直交する方向が磁化容易軸と一致する。
【0035】
図3(E)は、磁化自由層60の磁化の方向と血管の血流方向とのなす角度と逆磁歪効果
に基づくエネルギーの大小を示す図である。磁化自由層60の磁化の方向と血流方向との
なす角度をθ(deg。degは「°」に相当)としている。縦軸がエネルギー、横軸が
θである。エネルギーが最小となる角度θが磁化容易軸に相当する。エネルギーが最大と
なる角度θが磁化困難軸である。磁化困難軸とは、磁化自由層60の磁化が向きにくい軸
のことをいう。
【0036】
磁化固着層40の磁化の方向と磁化自由層60の磁化の方向とがなす角度の相対変化量を
MR変化量という。
【0037】
MR変化量は、磁化固着層40の磁化の方向と磁化自由層60の磁化の方向とがなす角度
が大きいほど大きい。したがって、引っ張り応力が印加されていない状態で磁化自由層6
0の磁化が磁化困難軸を向くとMR変化量が最大になる。
【0038】
磁化自由層60の磁化は左右どちらかに回転する。左回り回転をする確率と右回り回転す
る確率は同程度と考えられる。この場合、実質的にはMR変化量は2つの値をとることに
なる。このため、磁化自由層60の磁化は、磁化困難軸から少し傾けておく。すなわち、
磁化自由層60の磁歪定数が正の符号の場合には、磁化自由層60の磁化の向きを血流方
向と平行な方向とならないようにする。磁化自由層60の磁歪定数が負の符号の場合には
、磁化自由層60の磁化の方向を血流方向に対して垂直な方向とならないようにする。
【0039】
つまり、引っ張り応力が印加されていない状態では、磁化自由層60の磁化の方向を磁化
容易軸及び磁化困難軸と平行にならないようにする。したがって、磁化自由層60の磁歪
定数の符号によらず、血流方向に対して垂直又は平行とならないように磁化自由層60の
磁化を弱く固着しておくことが必要である。
【0040】
磁化自由層60の磁歪定数が正の符号の場合には、図3(E)におけるθを10°から4
5°、135°から170°、190°から225°、315°から350°にすると、
磁化回転量を多くしMR変化量を大きくすることが出来る。磁化自由層60の磁歪定数が
負の符号の場合には、図3(E)におけるθを45°から80°、100°から135°
、225°から260°、280°から315°にすると、磁化回転量を多くしMR変化
量を大きくすることが出来る。
【0041】
血圧センサー10で血圧を測定する場合、血圧センサー10が血管から受ける圧力は、脈
の動きに合わせて最高血圧時と最低血圧時のそれぞれの状態によって変わる。最高血圧の
ときには、皮膚表面に対して引っ張り応力が強く働く。最低血圧のときには、皮膚表面に
対して引っ張り応力が弱く働く。この引っ張り応力の強弱が脈の周期振動に相当する。
【0042】
血圧センサ10が血圧を測定できているかどうかは、脈の周期振動に伴う血圧の高低の変
化によって判断できる。そのうえで、血圧センサ10又はそれに付属の制御部が最高血圧
と最低血圧の値を算出する。
【0043】
図4は、最高血圧時と最低血圧時を説明する図である。図4は、手首に血圧センサ10を
貼り付けた場合の例を示している。図4の(1)に示すように、動脈血管上に重なるよう
に、基板上に形成された血圧センサ10を配置する。
【0044】
図4の(2)は、基板(図4ではフレキシブル基板を想定している)上にMR素子が配置
されている様子を示す。動脈血管の外径に沿うように基板が曲がっている。引っ張り応力
は、血流方向に対して略垂直方向に働く。
【0045】
図4の(3)は、最高血圧状態と最低血圧状態において、血流方向から基板と動脈血管を
眺めた図である。最高血圧状態では、動脈血管が最大に膨張した状態となるので基板に働
く引っ張り応力の大きさが大きくなる。最低血圧状態では、動脈血管の膨張が抑えられた
状態となるので基板に働く引っ張り応力の大きさは小さくなる。
【0046】
図4の(4)は、最高血圧状態と最低血圧状態を検知する場合のMR素子の配置を示す図
である。磁歪定数が正の符号である場合について説明する。血圧が印加されていないとき
には、磁化自由層60の磁化は、引っ張り応力がかかる方向以外の方向に向けられている
。最高血圧が印加されると、基板は大きく歪み、磁化自由層の磁化は大きく回転する。最
低血圧が印加されると、基板は最高血圧時よりも小さく歪み、磁化自由層の磁化は、初期
状態と最高血圧状態の中間の角度を取る。
【0047】
血管が明瞭でない場合がある。一例として後頭動脈などで血圧測定を行う場合であるが、
手首の橈骨動脈などでも完全な血管を見つけるのは難しい。これに対し、血圧センサのフ
レキシブル基板が、歪異方性を有していれば、問題がない。具体的には、皮膚に引っ張り
応力が印加された場合、基板が必ず指定した方向に引っ張られるという特性を付与し、そ
の方向と磁化自由層60の磁化の向きを設定する。概念図を図5(A)に示す。これの具
体的な歪異方性の付与方法は、フレキシブル基板を長方形や楕円など、長軸と短軸を有す
る形状とすればよい。概念図を図5(B)に示す。基板の形状が楕円形状の場合は、長軸
方向が長手方向に相当する。基板の形状が長方形の場合は長辺方向が長手方向に相当する
。長手方向は血流方向と交わることが好ましい。
【0048】
非磁性層50が金属の場合は、GMR(Giant magnetoresistanc
e)効果が発現し、絶縁体の場合はTMR(Tunnel magnetoresist
ance)効果が発現する。本実施形態及び以下説明する第2の実施形態では、積層膜の
積層方向に対して通電するCPP(Current perpendicular to
plane)−GMR効果を用いる。通電は、電極30と電極70間で行われる。TM
R効果を用いる場合でも、同様に積層膜の積層方向に対して通電する。
【0049】
血圧を測定するには、例えば予め被測定者から血圧を測定することで蓄積されたデータと
そのときのMR変化率との相関を用いることで血圧変動を把握することができる。このこ
とについては後で説明する。
(変形例1)
【0050】
図6は、第1の実施形態に係るMR素子15の変形例を示す図である。電極は省略してい
る。第1の実施形態で説明したのと同様の構成についての説明は省略する。
【0051】
図6(A)に示すMR素子15は、下地層80上に、反強磁性層90、磁化固着層40、
非磁性層50、磁化自由層60、保護層100が順に設けられている。この構造は、ボト
ム型スピンバルブ膜と呼ばれる。
【0052】
下地層80は、下地層80上に積層される膜の結晶配向性を高めるものである。下地層8
0の材料としては、例えば、基板との馴染み易いアモルファスのTaや、その上の層の結
晶配向性を向上させる結晶質Ru、NiFe、Cu等を用いることができる。アモルファ
スTaと、結晶質Ru、NiFe、Cu等の積層とするとぬれ性と結晶配向性を両立でき
る。下地層80の膜厚は、例えば0.5nm〜5nmである。
【0053】
保護層100は、MR素子15を製造する際のダメージからMR素子15を保護する。保
護膜100の材料としては、例えば、Cu、Ta、Ru等を用いることができる。保護膜
100の膜厚は、例えば1nm〜20nmである。
【0054】
図6(B)に示すMR素子15は、下地層80上に、反強磁性層90、磁化固着層110
、反平行結合層120、磁化固着層40、非磁性層50、磁化自由層60、保護層100
が順に設けられている。この構造は、ボトム型シンセティックバルブ膜と呼ばれ、磁化固
着層40の磁化の固着力を強めることができる。
【0055】
磁化固着層110は、反強磁性層90からの交換結合によって磁化が一方向に固着される
。磁化固着層110に用いる材料は、磁化固着層40と同様である。磁化固着層110の
膜厚は、磁化固着層40の磁気膜厚(飽和磁化Bsと膜厚tの積、Bst)と概ね同じに
なるように作製する。例えば2nm〜6nmである。
【0056】
反平行結合層120は、磁化固着層40の磁化と磁化固着層110の磁化とを反平行に結
合させる。よって、反強磁性層90からの交換結合エネルギーが一定でも、磁化固着層4
0の磁化の固着磁場を強めることができる。したがって、電子機器から生じる磁気ノイズ
に対する影響を低減できる。反平行結合層120の材料としては、例えばRu、Ir等を
用いることができる。反平行結合層120の膜厚は、例えば0.8nm〜1nmである。
【0057】
本変形例のMR素子15は、図7(A)に示すように、下地層80上に、磁化自由層60
、非磁性層50、磁化固着層40、反強磁性層90、保護層100を順に積層したトップ
型スピンバルブ膜とすることもできる。
【0058】
本変形例のMR素子15は、図7(B)に示すように、下地層80上に磁化自由層60、
非磁性層50、磁化固着層40、反平行結合層120、磁化固着層110、反強磁性層9
0、保護層100を順に積層したトップ型シンセティックスピンバルブ膜とすることもで
きる。トップ型スピンバルブ膜及びトップ型シンセティックスピンバルブ膜を構成する層
は、ボトム型スピンバルブ膜及びボトム型シンセティックスピンバルブ膜と同様であるの
で説明は省略する。
【0059】
磁化自由層60の磁化を引っ張り応力と異なる方向に向けておく方法として、磁化固着層
40の磁化との層間結合を用いる方法がある。非磁性層50が金属の場合には3nm以下
、絶縁体の場合は1.5nm以下で、両者の磁化は平行に揃うように層間結合が働く。し
たがって、磁化固着層40の磁化を引っ張り応力と異なる方向に固着することによって、
磁化自由層60の磁化を弱いエネルギーで同じ方向に向けることが出来る。
【0060】
また、磁化自由層60をスパッタ装置で成膜する際に、磁場を印加することによっても磁
化自由層60の磁化を一方向に向けておくことが出来る。成膜時の磁場の方向に磁化が向
きやすくなるので、引っ張り応力と異なる方向に磁場を印加しながらスパッタ法で成膜す
ることが好ましい。
(変形例2)
【0061】
図8は、第1の実施形態に係るMR素子15の変形例を示す図である。電極は省略してい
る。第1の実施形態で説明したのと同様の構成についての説明は省略する。
【0062】
図8(A)は、MR素子15の上面図であって、磁化自由層60が示されている。図8(
B)は、MR素子15の断面図であって、磁化固着層40、非磁性層50、磁化自由層6
0が示されている。
【0063】
図8(A)に示すように、MR素子15は、積層方向に対して垂直な方向(面内方向)に
おいて、長手方向を有する長手形状である。図8(A)に示すように、磁化自由層60を
上面から眺めた形状が矩形状である場合の一辺の長さをそれぞれX、Yとする。このとき
Yの方がXよりも長い。
【0064】
このように、磁化自由層60を長手方向を有する形状とすることで、形状磁気異方性によ
って磁化自由層60の磁化が長手方向に向く。これは、その方が静磁エネルギーが小さく
なるためである。
【0065】
MR素子15は、図8(C)のように、上面から眺めた形状が長軸・短軸を有する楕円形
状であってもよい。この場合も、上記したように、磁化自由層60の磁化が長軸方向(長
手方向)に対して向く。図8(D)は、MR素子15の断面図を示している。
【0066】
このようにすることで、磁化自由層60の磁化を一方向に弱く固着することができる。よ
って、磁化自由層60の磁化の向きMR素子15に印加される引っ張り応力の向きを異な
る方向にすることができる。
【0067】
図8では長方形と楕円形を例示したが、長手方向を有する長手形状であれば、同様に磁化
自由層60の磁化の向きを引っ張り応力と異なる方向に向けることができる。
【0068】
次に、本変形例に係るMR素子15を用いた血圧センサ10の製造方法について説明する

【0069】
基板20は、Siやガラスからなる基板、フレキシブルなプラスチック材料からなる基板
、金属である軟磁性体からなる基板などが挙げられる。基板20に高い弾性率を持たせる
ことで撓みやすく出来、低い剛性率を持たせることで壊れにくく出来る。これにより撓み
やすい基板を得、圧力に対して歪を大きく得る。
【0070】
Siやガラス、金属である軟磁性体からなる基板の場合、MR素子15の配置される部分
を薄膜化することで、撓みやすくすることが出来る。Si基板の薄膜化は、後に説明する
MR素子作成の後、RIE(Reactive Ion Etching)による選択性
エッチングなどで行う。
【0071】
フレキシブルなプラスチック材料からなる基板は、Siやガラスなどの固い基板の上にこ
れらを塗布や成膜・合成によって形成する。その上にMR素子を作成し、その後Siやガ
ラスからなる固い基板から剥離する。剥離の前に固定支持部を設けることで、フレキシブ
ルなプラスチック材料からなる基板を後の工程でハンドリングしやすくなる。また、フレ
キシブルなプラスチック材料からなる基板を撓まない厚さで作成し、後でMR素子15の
配置された部分を撓む厚さまで薄膜化することで形成しても良い。
【0072】
フレキシブルなプラスチック基板に要求される特性を、以下に説明する。一つ目は、給水
率・透湿率である。プラスチック基板は、Siやガラス基板ではほぼゼロであった給水率
・透湿率が、MR素子作成上無視できない値を持つ。無視できない一つ目の理由は、真空
装置内での放出ガスの問題である。基板は、MR素子作成中、電極、MR膜、などを成膜
する度に成膜装置の真空チャンバーに入れる。MR膜の成膜装置では、真空度が10−9
Torr台以下であるため、フレキシブルなプラスチック基板からの放出ガス量を抑制す
ることが必要となる。成膜装置に入れる前に事前焼きだしを行うこと、あるいはマルチチ
ャンバーの成膜装置の準備室にヒーターを設けで、成膜室に入れる前に焼きだしを行うこ
と、が有効である。給水率・透湿率を無視できない二つ目の理由は、基板の変形である。
基板変形量が大きいと、微細なMR素子を形成することが出来ない。そこで、給水率・透
湿率の出来るだけ小さい材料を選ぶことが重要である。
【0073】
プラスチック基板に要求される二つ目の特性は、機械的強度である。血圧センサでは血管
の収縮・拡大に沿うように、基板が柔軟に撓む。このことから、弾性率が高いもの、たと
えば2から15000MPa、好ましくは50MPa以上が望まれる。さらに、使用時に壊れ
ない強度の指標として、引っ張り強度、破断伸び係数がある。引っ張り強度は10から数
百MPaがよい。破断伸び係数は、1%から1000%、好ましくは400MPa以下が
よい。
【0074】
プラスチック基板に要求される三つ目の特性は、耐熱性である。MR膜は、磁化固着層の
磁化を一方向に固着するために、磁場中熱処理が必要である。この温度に耐えうるプラス
チック材料が必要となる。この指標は、線膨張係数であり、これが小さいほど熱で基板に
掛かる応力を小さくすることが出来る。MR素子作成工程では、300℃程度の熱処理が必
要となる。300℃でも線膨張係数が十分小さい基板が必要である。
【0075】
以上で述べた要求特性を鑑みると、フレキシブルなプラスチック基板として、ポリイミド
基板、パリレン基板、などが良い。
【0076】
基板20上にスパッタ法により約500nmのアルミ酸化物を積層することで絶縁層を形
成する。
【0077】
絶縁層上にレジストをスピンコート法で塗布し、フォトリソグラフィーによりレジストを
パターンニングし、レジストの一部を除去する。
【0078】
RIE(Reactive Ion Etching)により、レジストが除去された部
分の絶縁層を除去することで、基板20の一部を露出させる。
【0079】
基板20が絶縁層から露出した部分にマスクを用いてスパッタ法によりTa(5nm)/
Cu(400nm)/Ta(20nm)を積層することで電極30を形成する。なお、括
弧書きは膜厚を示す。‘/’は積層を示し、A/B/Cと記載された場合、A層上に、B
層、C層が積層されていることを示す。
【0080】
CMP(Chemical Mechanical Polishing)を行って絶縁
層の表面を平坦化することで、電極30の表面を絶縁層から露出させる。
【0081】
絶縁層から露出した電極30上にマスクを用いてスパッタ法によりMR膜を約40nm積
層する。
【0082】
マスクを用いてMR膜を幅が2μmから5μmの複数の線状の溝を形成する。
【0083】
絶縁層、MR膜上にシリコン酸化物層をスパッタ法により約200nm積層する。
【0084】
シリコン酸化物層上にレジストをスピンコート法で塗布し、MR膜の溝が形成された方向
に対して垂直方向においてMR膜の上面上のレジストを1.5μmから5μmの範囲で除
去することでMR膜の形状を規定する。
【0085】
RIEとイオンミリングにより、レジストが除去された部分のシリコン酸化物層を除去す
ることで、MR膜の上面を露出させる。
【0086】
磁化固着層40の磁化を一方向に向けるための磁場中熱処理は、MR素子作製後でも、M
R膜成膜直後であっても良い。反強磁性層がIrMnの場合、7kOeの磁場中において
、280℃、4時間の熱処理を行った。
【0087】
シリコン酸化物層から露出したMR膜の上面にマスクを用いてAuを約100nm積層し
て電極70を形成して血圧センサ10を製造する。その後、電極70上にAuパット等を
形成する。
(変形例3)
【0088】
図9は、第1の実施形態に係るMR素子15の変形例を示す図である。電極は省略してい
る。第1の実施形態で説明したのと同様の構成についての説明は省略する。
【0089】
MR素子15の積層方向に垂直な方向において、磁化固着層40、非磁性層50、及び磁
化自由層60を挟むように硬磁性層130が設けられている。
【0090】
硬磁性層130中の磁化は、例えば5kOe程度の磁場中で200℃以上250℃以下で
アニールすることによって磁化が一方向に向けられている。硬磁性層130からの磁場に
よって、磁化自由層60の磁化が硬磁性層130の磁場方向と同一方向を向く。硬磁性層
130は、例えばCoPt、FePt等を用いることができる。硬磁性層130の膜厚は
、例えば5nm〜20nmである。
【0091】
次に、本変形例に係るMR素子15を用いた血圧センサ10の製造方法について説明する

【0092】
基板20上にスパッタ法により約500nmのアルミ酸化物を積層することで絶縁層を形
成する。
【0093】
絶縁層上にレジストをスピンコート法で塗布し、フォトリソグラフィーによりレジストを
パターンニングし、レジストの一部を除去する。
【0094】
RIEにより、レジストが除去された部分の絶縁層を除去することで、基板20の一部を
露出させる。
【0095】
基板20が絶縁層から露出した部分にマスクを用いてスパッタ法によりTa(5nm)/
Cu(400nm)/Ta(20nm)を積層することで電極30を形成する。
【0096】
CMPを行って絶縁層の表面を平坦化することで、電極30の表面を絶縁層から露出させ
る。
【0097】
絶縁層から露出した電極30上にマスクを用いてスパッタ法によりMR膜を約40nm積
層する。
【0098】
MR膜の側面であって絶縁層上にマスクを用いてスパッタ法により硬磁性層130を約3
0nm積層する。
【0099】
次に、絶縁層、MR膜、硬磁性層上にシリコン酸化物層をスパッタ法により約200nm
積層する。
【0100】
シリコン酸化物層上にレジストをスピンコート法で塗布し、MR膜の上面であってシリコ
ン酸化物層上のレジストを除去する。
【0101】
RIEとイオンミリングにより、レジストが除去された部分のシリコン酸化物層を除去す
ることで、MR膜の上面を露出させる。
【0102】
シリコン酸化物層から露出したMR膜の上面にマスクを用いてTa(5nm)/Cu(4
00nm)/Ta(5nm)を積層して電極70を形成して血圧センサ10を製造する。
その後、電極70上にAuパット等を形成する。
【0103】
磁化固着層40の磁化を一方向に向けるための磁場中熱処理は、MR素子作製後でも、M
R膜成膜直後であっても良い。反強磁性層がIrMnの場合、7kOeの磁場中において
、280℃、4時間の熱処理を行った。
(変形例4)
【0104】
図10は、第1の実施形態に係るMR素子15の変形例を示す図である。電極は省略して
いる。第1の実施形態で説明したのと同様の構成についての説明は省略する。
【0105】
磁化自由層60上に反強磁性層90が設けられている。図10(A)に示すように磁化自
由層60の上面に反強磁性層90を設ける場合には、材料としてはIrMn等で、厚さが
1nm以上5nm以下の薄膜の反強磁性層90を設ける。このようにすることで、反強磁
性層90と磁化自由層60が弱く交換結合をするために、磁化自由層60の磁化が弱く固
着される。
【0106】
図10(B)に示すように、磁化自由層60上に2つ反強磁性層90を離間して設けても
よい。反強磁性層90の材料はたとえばIrMn等で、厚さはたとえば5nm〜7nmと
する。磁化自由層60の反強磁性層90が設けられている場所では、磁化自由層60と反
強磁性層90が強く交換結合をする。その結果、反強磁性層90が設けられている磁化自
由層60において、磁化自由層60の磁化が一方向に固着される。図10(B)の場合、
磁化自由層60の2箇所において磁化自由層60の磁化が反強磁性層90によって一方向
に固着されている。従って反強磁性層90の設けられていない磁化自由層60も、つられ
て磁化の向きが一方向に揃う。
【0107】
図11(A)や図11(B)に示すように、積層順を反強磁性層90、磁化自由層60、
非磁性層50、磁化固着層40としてもよい。
【0108】
本変形例によれば、磁化自由層60の磁化を比較的小さなエネルギーで一方向に向けてお
くことが可能となる。
(第2の実施形態)
【0109】
図12は、第2の実施形態に係る血圧センサ190を示図である。第1の実施形態で説明
したのと同様の構成についての説明は省略する。血圧センサ190は、MR素子15を複
数用いている。
【0110】
配線(ビット線ともいう)35が列方向に複数並べられ、配線(ワード線ともいう)75
が行方向に複数並べられている。配線35と配線75が交わる位置において、配線35と
配線75との間にMR素子15が設けられている。複数のMR素子15を挟んでいる配線
35及び配線75は絶縁層200、210で挟まれている。絶縁層200、210は更に
基板220、230に挟まれている。
【0111】
配線35、75の材料は電極30、70と同様である。MR素子15には電極30、70
がなくてもよい。
【0112】
基板200、210は基板20の材料と同様である。
【0113】
絶縁層200、210は、例えばアルミ酸化物(例えば、Al)やシリコン酸化物
(例えば、SiO)等を用いることができる。
【0114】
基板200、220が絶縁体である場合、絶縁層200、210を用いなくても良い。絶
縁層200と基板220との間又は絶縁層210と基板230との間に軟磁性体の材料か
らなる層(軟磁性層)を挿入してもよい。軟磁性層を絶縁層と基板との間に挿入すること
で、MR素子15に対する磁気ノイズを低減できる。基板200、210に軟磁性体を用
いて磁気ノイズに対する影響を低減させてもよい。
【0115】
次に、血圧センサ190の動作原理について説明する。
【0116】
図13は、血圧センサ190の動作原理を説明するための図である。
【0117】
配線35と配線75に制御部240、250、260、270が設けられている。絶縁層
200、210、基板220、230は省略している。配線35が3本図示されており、
それぞれをBL1、BL2、BL3とする。配線75は4本図示されており、それぞれを
WL1、WL2、WL3、WL4とする。配線35、75の本数はこれに限られない。血
圧センサ190には引っ張り応力が働いているものとする。
【0118】
制御部240、250で複数のBL1〜BL3のうちBL1を選択して通電する。BL1
に通電した状態で、制御部260、270でWL1からWL4に順に通電してBL1に沿
って設けられた複数のMR素子15のMR変化率を順に測定していく。WL4まで通電し
終わったら、BL2を選択して通電する。BL2に通電した状態で、再びWL1からWL
4に順に通電してBL2に沿って設けられた複数のMR素子15のMR変化率を順に測定
していく。このようにして、配線35と配線75との間に挟まれた全てのMR素子15の
MR変化率を測定して、制御部に接続されたCPU((Central Process
ing Unit)図示せず)でMR変化率が最も大きいMR素子15を特定する。MR
変化率が最も大きいMR素子15を特定できたら、そのMR変化率が最も大きいMR素子
15で血圧測定を行う。
【0119】
以上のような動作は例えば分単位、又は時間単位で一定の時間を空けて繰り返してもよい
。また、逐次血圧センサ190で測定したデータを血圧センサ190に接続されたデータ
ベースに蓄積等を行ってもよい。
(変形例5)
【0120】
図14は、第2の実施形態に係る血圧センサ190の変形例を示す図である。第2の実施
形態で説明したのと同様の構成についての説明は省略する。
【0121】
血圧センサ190の基板220、230の両端面を支持体280、290で挟んでいる。
支持体280と支持体290は対向している。これらの支持体280、290が引っ張り
応力を受けて歪む基板220、230の歪みの基準点となる。すなわち、支持体280、
290が固定端として働く。このため、より定量的な血圧測定を行うことができる。基板
220又は基板230の配線35、75等が設けられている面に対して垂直方向から眺め
ると図15(A)のようになる。
【0122】
支持体280、290は、例えば、シリコン等の材料を用いることができる。支持体28
0、290は例えば板状の形状が好ましい。その厚さは、例えば1μm程度である。
【0123】
図15(B)のように、基板220と基板230の端面を取り囲むように支持体を設けて
もよい。
【0124】
複数の血圧センサ190を設ける場合には、例えば、図16のように、引っ張り応力が働
く方向において、複数の支持体の間に血圧センサ190を設けてもよい。図17(A)は
図16の基板220又は基板230の配線35、75等が設けられている面に対して垂直
方向から眺めた図である。
【0125】
図17(B)のように基板220と基板230の端面を取り囲むように支持体を設けても
よい。図17(C)のように2次元平面上に渡って複数の血圧センサ190を設ける場合
、基板220、230の端面を取り囲むように支持体を設けてもよい。
(変形例6)
【0126】
図18は、第2の実施形態に係る血圧センサ190の変形例を示す図である。第2の実施
形態で説明したのと同様の構成についての説明は省略する。
【0127】
変形例5で説明した支持体280、290に加えて、支持体280、290の端面上にも
う一つ支持体300が設けられている。このように支持体300を設けることで、支持体
280、290をより強固に固定することができる。よって、より定量的な血圧測定を行
うことができる。
【0128】
複数の血圧センサ190を設ける場合には、例えば、図19のように引っ張り応力が働く
方向において、複数の支持体の間に血圧センサ190を設ける。
(変形例7)
【0129】
図20は、第2の実施形態に係る血圧センサ190の変形例を示す図である。第2の実施
形態で説明したのと同様の構成についての説明は省略する。
【0130】
圧力センサ190を構成する基板230上に加圧機構310を設けている。予め被測定者
の血圧P1と釣り合う範囲で、加圧機構310の圧力P2を一定に保持することで、より
定量的な血圧測定を行うことができる。この場合、測定中に血圧の絶対値を得るために、
予め血圧センサの圧力と電気抵抗の相関データを蓄積しておく。具体的には、圧力を制御
する圧力発生器により圧力P1を変化させながら印加し、それに応じた電気抵抗Rを取る
。この圧力P1と電気抵抗Rの相関データを血圧センサのゲージとする。そして、実際に
血圧を測定する際は、データとして得られる電気抵抗Rから蓄積済のゲージを参照し、血
圧P1を得る。加圧機構310を用いることで、MR変化率と血圧の相関関係を測定する
ことができる。
【0131】
加圧機構310は図20で示す破線に相当する。加圧機構310は、圧力を一定に保持す
ることが出来る。加圧機構は支持体で取り囲むようにして構成してもよいし、基板230
上に密閉された筐体を設けることで構成してもよい。
【0132】
また、図21に示すように、加圧機構310内にバネ320を設けることで加圧機構31
0の圧力を一定にしてもよい。バネ320は、例えば直径800μmの精密マイクロバネ
を用いることができる。なお、バネ320は複数設けてもよい。
【0133】
なお、図19で説明したように血圧センサ190を複数設けてもよい。この場合、例えば
様々なバネ定数を有するバネを設けることで様々な被測定者に対応した血圧を測定するこ
とができる。
【0134】
また、加圧機構310は外部から電子制御することで圧力を調整してもよい。例えば、密
閉された筐体を用いる場合は外部から空気の出し入れを電子制御する。
(第3の実施形態)
【0135】
図22(A)は、第3の実施形態に係る血圧センサ400を示す図である。第1の実施形
態及び第2の実施形態とは、CIP(Current in plane)―GMR効果
を用いている点が異なる。すなわち、MR素子の積層膜の面内方向(積層方向に対して垂
直な方向)に通電することでMR変化率を検出する。
【0136】
血圧センサ400は、基板20上に絶縁層200が設けられ、MR膜410の積層方向に
対して垂直な方向にMR膜410を挟むように一対の電極30、70とが設けられている
。基板20が絶縁体である場合には絶縁層200は設けなくてもよい。
【0137】
MR膜410は、MR素子15から電極30、70を除いたものであるので、説明は省略
する。
【0138】
図22(B)のように、電極30、70とMR膜410との間に硬磁性層130を設けて
もよい。
(変形例8)
【0139】
図23は、第3の実施形態に係る血圧センサ400の変形例を示す図である。図23は血
圧センサ400を用いた回路を示している。基板20等は省略している。また、第3の実
施形態と同様の構成についての説明は省略する。
【0140】
図23(A)に示すように、列方向に配線35が複数設けられ、行方向に配線75が複数
設けられている。配線35と配線75とが交わっている位置において、配線35と配線7
5との間にMR膜410が設けられている。動作原理は、
図13を用いて説明したのと同様であるので説明は省略する。
【0141】
図23(B)は、行方向から血圧センサ400の回路を眺めた図である。配線35にMR
膜410が挟まれている。
【0142】
図23(C)は、列方向から血圧センサ400の回路を眺めた図である。配線75にMR
膜410が挟まれている。
【0143】
なお、以上のような構成は、第2の実施形態とは通電方向が異なるだけであるので、変形
例5〜7で説明した形態に用いることができる。
(第4の実施形態)
【0144】
図24は、血圧センサの第4の実施形態を示す図である。図24は血圧センサを用いて被
測定者を測定する様子を示す。図24は、血圧測定部位に血圧センサを貼り付けた場合の
、給電方法、データ蓄積方法の一例を示したものである。血圧センサには、第1、第2、
及び第3の実施形態で説明した血圧センサ10、190、400を用いることができる。
【0145】
給電方法として、小型の電池を用いることもできるし、無線給電を採用することも可能で
ある。データ蓄積方法には、例えば無線送信で携帯電話やパーソナルコンピュータ、腕時
計等に蓄積する方法をとる。
(実施例)
【0146】
シリコン基板上に、Al(20nm)/Cu(400nm(電極に相当))/Ir
Mn(7nm)/CoFe(3.4nm)/Ru(0.8nm)/FeCo(3nm(磁
化固着層に相当))/Al(1nm(非磁性層に相当))/FeCo(4nm(磁
化自由層に相当))/Cu(400nm(電極に相当))/Ta((3nm)保護層に相
当)をスパッタ法により積層し、MR素子を作製した。MR素子をその後8μm四方の正
方形に加工した。なお、作製したMR素子はTMR素子として用いた。
【0147】
図25は、作製したMR素子に外部磁場を−4000Oeから4000Oeの範囲で掃引
することで、MR素子の電気抵抗を測定した結果を示す図である。縦軸はMR素子の電気
抵抗値R(Ω)を示し、横軸は磁場H(Oe)を示す。
【0148】
図25に示すように、外部磁場を増加させると電気抵抗値が急激に増加・減少しているこ
とがわかる。電気抵抗値が最も小さい場合は、磁化自由層の磁化の向きと磁化固着層の磁
化の向きとが平行であることを示す。電気抵抗値が最も大きい場合は、磁化自由層の磁化
の向きと磁化固着層の磁化の向きとが反平行であることを示す。このときのMR変化率は
36%であり、面積抵抗は5kΩμmであり、磁化自由層の磁歪定数は56ppmであ
った。面積抵抗とは、MR素子の積層膜の積層方向に対して垂直な断面積とMR素子の積
層膜の膜面に垂直に電流を流したときに一対の電極から得られる抵抗との積を示す。MR
変化率は、電気抵抗値の変化量を電気抵抗値で割った値を示す。磁歪定数λsとは、外部
磁場を強磁性層の面内方向に印加することによって、強磁性層が面内に延びる量の大きさ
を示す。外部磁場がない状態で長さlだったものが、Δlだけ延びたとすると、磁歪定数λ
sは下式で表される。
【0149】
λs=Δl/l
【0150】
この現象は磁歪効果と呼ばれる。強磁性層をΔlだけ延ばすと、磁化が延ばした方向に向
く現象を逆磁歪効果と呼ぶ。上記したように血圧センサでは、歪みを印加して引っ張り応
力を与え、磁化自由層60が延びることで逆磁歪効果が得られる。なお、磁歪定数が負の
場合には、外部磁場を印加するとその方向に磁性層は圧縮される。
【0151】
以上から作製したMR素子が歪みに対して良好なMR変化率を示すことがわかった。
【0152】
図26は、作製したMR素子に対して引っ張り応力を加え、MR素子の電気抵抗を測定し
た結果を示す図である。縦軸が電気抵抗値R(Ω)を示し、横軸がシリコン基板に印加し
た歪み(印加歪ε(千分率:‰))を示す。歪みは、図27に示すように、基板の3点を
固定して印加した。両端が固定端で、その中間点を押圧することによって歪を印加する。
このとき、歪みは下式で表される。
【0153】
ε=6hT/l
【0154】
ここで、hは基板垂直方向への変位、Tは基板の厚さ、lは基板の固定端間距離である。
【0155】
歪のない状態では、磁化自由層と磁化固着層の磁気層間結合により、磁化自由層の磁化は
磁化固着層の磁化と同じ方向を向いている。さらに、磁化固着層の磁化は、MR膜を成膜
した後、7kOeの磁場中で280℃4時間の熱処理を行うことで、決定した。磁場の方
向は、基板オリフラに対して平行とした。したがって、磁化自由層の磁化も、基板オリフ
ラ方向を向いている。これを記憶し、歪はこれに垂直な方向に印加しながら測定を行った
。ここでは外部磁場を磁化固着層40の磁化の方向と平行に、外部から磁場を6[Oe]
印加した状態で測定した。実際の血圧センサでは外部からMR素子に磁場を印加するため
に硬磁性層を側壁に配置したり、反強磁性層を磁化自由層に接触させたりする。この磁化
自由層の磁化の向きに対して直交方向に引っ張り応力が働くようにシリコン基板を撓ませ
ることでMR素子に対して引っ張り歪みを加えた。印加歪εの値を、0‰、0.35‰、
0.55‰、0.78‰、0.99‰としてMR素子の電気抵抗を測定した。
【0156】
図26から、印加歪の変化に応じて電気抵抗値が変化していることから、作製したMR素
子が歪みに対して良好なMR変化率を示すことがわかった。また、印加歪の値が増加する
につれて電気抵抗値が減少していることがわかる。これは、初めは磁化固着層の磁化の向
きと磁化自由層の磁化の向きとが反平行であり、磁化自由層の磁化が回転することで磁化
固着層の磁化の向きに対して平行に近づいたためである。
【0157】
一般的に、歪みに対して良好な応答を示すかどうかの指標としてゲージファクターが用い
られている。ゲージファクターは、MR変化率を歪み量εで割った値で定義される。ゲー
ジファクターの値は大きければ大きいほど歪みに対して良好な感度を示すといえる。これ
は、歪み量εを固定した場合に、MR変化率が大きくなればゲージファクターの値が大き
くなることからも理解できる。
【0158】
作製したMR素子のゲージファクターの値は270であった。これは、Siを用いたME
MS圧力センサのゲージファクターが約140ということが知られており、それと比較す
るとはるかに大きいな値である。
【0159】
他にも、シリコン基板上に、Al(20nm)/Cu(400nm(電極に相当)
)/IrMn(7nm)/CoFe(3.4nm)/Ru(0.8nm)/FeCoB(
3nm(磁化固着層に相当))/MgO(1nm(非磁性層に相当))/FeCo(1n
m(磁化自由層に相当))/FeCoB(4nm(磁化自由層に相当))/Cu(400
nm(電極に相当))/Ta((3nm)保護層に相当)としてスパッタ法により作製し
、8μm四方の正方形に加工したMR素子では、MR変化率は200%であり、ゲージフ
ァクターは1000であった。このように、MR素子を用いることでゲージファクターの
値を増加させることが可能となる。
(第5の実施形態)
【0160】
図28は、血圧センサ500を用いた血圧測定システムを示す図である。血圧センサ50
0は、血圧センサ190、400と同様の構成である。血圧センサ500は、被測定者の
血圧測定部位に装着されている。ここでは、血圧測定部位を手首として図示している。本
実施形態に係る血圧測定システムは、血圧センサ500と電子機器510を備えているこ
とを想定している。電子機器510とは、例えばテレビ、携帯電話機、医療用のデータベ
ース、パーソナルコンピュータ等を示す。
【0161】
血圧センサ500は、内部に処理部520を備えている。
【0162】
処理部520は、血圧センサ500を制御する第1の制御部530と、第1の制御部53
0からの情報を外部に送信する送信部540と、外部からの情報を受信して第1の制御部
520に送る第2の受信部550とを備える。
【0163】
なお、情報とは例えば、血圧値のデータ、電気抵抗変化率のデータ、電気抵抗値のデータ
をいう。
【0164】
電子機器510は、受信部560と、第2の制御部570と、計算部580と、送信部5
90と、データベース(以下、DB1という)とを備える。
【0165】
受信部560は、送信部540から送信された情報を受信して第2の制御部570に送信
する。
【0166】
第2の制御部570は、受信部560から受信した情報を計算部580に送信、送信部5
90に送信、又はDB1に情報をデータとして格納する。
【0167】
計算部580は、第2の制御部570から送られてきた情報を計算する。計算方法は後述
する。
【0168】
なお、送信部540と受信部560間での情報のやりとり、及び送信部590と受信部5
50間での情報のやりとりは無線通信又は有線通信である。
【0169】
図29は、血圧センサを用いて血圧測定システムの動作を説明するフローチャート図であ
る。
【0170】
ステップS10では第1の制御部530が、血圧センサ500に血圧測定部位における電
気抵抗変化量を測定するように指示する。このとき、血圧センサ500に設けられた全て
のMR素子における電気抵抗変化量を測定する。血圧センサ500が測定した電気抵抗変
化量はデータとして、第1の制御部530を介して送信部540により電子機器510の
受信部560に送信される。受信部560で受信した電気抵抗変化量のデータは第2の制
御部570を介して計算部580に送信される。計算部580は、電気抵抗変化量のデー
タを電気抵抗変化量絶対に変換する計算をする。
【0171】
図30は、血圧センサ500の電気抵抗変化量の測定方法を説明する図である。ワード線
とビット線が交差する位置に設けられた各MR素子を、ワード線とビット線で指定する。
たとえば、ワード線WL1とビット線BL1の交差する位置にあるMR素子は、MR素子
のラベルを11とし、そこで得られる電気抵抗はR11と呼ぶこととする。
【0172】
配置されたMR素子の個々に対し、電流を通電する。たとえば、ワード線の本数がN本、
ビット線の本数がM本ある場合、WL1に通電したままビット線の通電箇所をBL1から
BLMまで通電し、随時WL2に通電したままBL1からBLMまで通電し、WLNまで
同じことを繰り返す。さらにこれを血管収縮時と血管拡張時に同様のことを繰り返す。血
管収縮時の電気抵抗をRcoarctation、血管拡張時の電気抵抗をRdilationとし、MR素子
のラベルと合わせて、血管収縮時のMR素子11の電気抵抗をRcoarctation11、血管拡
張時の電気抵抗をRdilation11とする。次に、それぞれのMR素子における、血管収縮
時と血管拡張時の電気抵抗変化量絶対値を求める。すなわち、MR素子XYにおいて、Δ
RXY=|RcoarctationXY−RdilationXY|を演算により算出する。
【0173】
ステップS20では、計算部580がさらに、電気抵抗変化量絶対値をもとに血管の収縮
・拡大を最大限に検知できる位置に配置されたMR素子を把握する。
【0174】
図31は、血管収縮時と血管拡張時の電気抵抗変化量絶対値が最大となるMR素子の選択
方法を説明する図である。すなわち、MR素子11の電気抵抗変化量ΔR11とMR素子
12の電気抵抗変化量ΔR12を比べ、値の大きい方を記録する。次いで記録した値とΔ
R13を比べ、値の大きい方を記録する。最後のMR素子MNまで比較と記録を繰り返す
ことで、血管収縮時と血管拡張時の電気抵抗変化量が最大であったMR素子を把握できる
。電気抵抗変化量が最大であったMR素子を把握できたら、第2の制御部570が、その
MR素子を選択するように送信部590を介して受信部550に送信する。受信部550
は、その指示情報を第1の制御部530に送信し、第1の制御部530が電気抵抗変化量
が最大であったMR素子を選択する。
【0175】
ステップS30では、第1の制御部530が、ステップS20で選択したMR素子の電気
抵抗値を血圧センサ500で連続的に取得するように指示する。一定期間測定することで
、最高血圧と最低血圧と血圧波形を得る。一定期間とは、秒単位、分単位を示し、例えば
30秒、2分等である。
【0176】
ステップS40では、ステップS30の測定で取得した電気抵抗値をデータとしてDB1
に格納する。
【0177】
ステップS50では、予め取得してある血圧と電気抵抗の相関データベースを用い、演算
により連続測定した電気抵抗値を血圧に変換する。データベース作成時は、血圧を正確に
制御できる圧力制御装置を用い、血圧センサに圧力を印加する。圧力範囲は血圧を網羅す
るように少なくとも50mmHgから300mmHgまでを含み、、精度よく測定するた
めに少なくとも1mmHg刻み、出来れば0.01mmHg刻みで取得する。このような
血圧に対応する電気抵抗値のデータを取得し、データベースとする。このデータベースは
、たとえば図32の上図のような相関グラフが得られる。図32の下図のように、血圧の
血圧測定時は、逆に電気抵抗値のデータをデータベースに対応して血圧に変換する。
【符号の説明】
【0178】
10 … 血圧センサ、15 … 磁気抵抗効果素子(MR素子)、20 … 基板、3
0、70 … 電極、40 … 磁化固着層、50 … 非磁性層、60 …磁化自由層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の血圧測定部位に装着され、撓むことで第1の方向に引っ張り応力が生じる基
板と、
前記基板上に設けられた第1の電極と、
前記第1の電極上に設けられ、磁化が一方向に向いている磁化固着層と、
前記磁化固着層上に設けられた非磁性層と、
前記非磁性層上に設けられ前記第1の方向及び前記第1の方向に垂直な第2の方向とは
何れとも異なる方向を向いている可変の磁化を有する第1の磁化自由層と、
前記第1の磁化自由層上に設けられ前記第1の方向及び前記第2の方向とは何れとも異
なる方向を向いている可変の磁化を有する第2の磁化自由層と、
前記第2の磁化自由層上に設けられた第2の電極とを備える血圧センサ。
【請求項2】
被測定者の血圧測定部位に装着され、撓むことで第1の方向に引っ張り応力が生じる基
板と、
前記基板上に設けられた第1の電極と、
前記第1の電極上に設けられ前記第1の方向及び前記第1の方向に垂直な第2の方向と
は何れとも異なる方向を向いている可変の磁化を有する第1の磁化自由層と、
前記第1の磁化自由層上に設けられ前記第1の方向及び前記第2の方向とは何れとも異
なる方向を向いている可変の磁化を有する第2の磁化自由層と、
前記第2の磁化自由層上に設けられた非磁性層と、
前記非磁性層上に設けられ磁化が一方向に向いている磁化固着層と、
前記磁化固着層上に設けられた第2の電極とを備える血圧センサ。
【請求項3】
前記第1の磁化自由層はFeCo合金を含み、前記第2の磁化自由層はFe−Co−S
i−B合金、Tb−M−Fe合金(Mは,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er)、Tb
−M1−Fe−M2合金(M1は、Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er、M2は、Ti
,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,Ta)、Fe−M3−M4−B合金(M3
は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,Ta、M4は、Ce,Pr,Nd
,Sm,Tb,Dy,Er)、Ni、Al−Fe合金、又はフェライトを含む請求項1に
記載の血圧センサ。
【請求項4】
前記第1の磁化自由層はFe−Co−Si−B合金、Tb−M−Fe合金(Mは,Sm
,Eu,Gd,Dy,Ho,Er)、Tb−M1−Fe−M2合金(M1は、Sm,Eu
,Gd,Dy,Ho,Er、M2は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,
Ta)、Fe−M3−M4−B合金(M3は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,M
o,W,Ta、M4は、Ce,Pr,Nd,Sm,Tb,Dy,Er)、Ni、Al−F
e合金、又はフェライトを含み、前記第2の磁化自由層はFeCo合金を含む請求項2に
記載の血圧センサ。
【請求項5】
前記基板は、長手方向を有する形状である請求項1又は請求項2に記載の血圧センサ。
【請求項6】
前記第1の磁化自由層及び前記第2の磁化自由層は、積層方向に対して垂直な方向に長
手方向を有する長手形状である請求項1又は請求項2に記載の血圧センサ。
【請求項7】
前記磁化固着層、前記非磁性層、前記第1の磁化自由層、及び前記第2の磁化自由層の
積層方向に対して垂直方向であって、前記磁化固着層、前記非磁性層、前記第1の磁化自
由層、及び前記第2の磁化自由層を挟むように設けられた一対の硬磁性層と、
を更に備える請求項1又は請求項2に記載の血圧センサ。
【請求項8】
前記第2の磁化自由層と前記第2の電極との間に設けられた絶縁層と、
前記第2の電極と前記絶縁層との間に設けられた反強磁性層と、
を更に備える請求項1に記載の血圧センサ。
【請求項9】
前記磁化固着層と前記第2の電極との間に設けられた絶縁層と、
前記第2の電極と前記絶縁層との間に設けられた反強磁性層と、
を更に備える請求項2に記載の血圧センサ。
【請求項10】
前記反強磁性層は、前記絶縁層上で離間して設けられている請求項8又は請求項9に記
載の血圧センサ。
【請求項11】
前記基板がポリイミドあるいはパリレンを含む請求項1又は請求項2に記載の血圧センサ

【請求項12】
前記基板が軟磁性体である請求項1又は請求項2に記載の血圧センサ。
【請求項13】
前記第1の電極と前記基板との間に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜と前記基板との間に設けられた第1の軟磁性層と、
前記第2の電極上に設けられた第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜上に設けられた第2の軟磁性層と、
を更に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の血圧センサ。
【請求項14】
被測定者の血圧測定部位に装着され、撓むことで第1の方向に引っ張り応力が生じる基
板と、
前記基板上であって列方向に複数設けられた第1の配線と、
前記第1の配線上に複数設けられた第1の電極と、前記第1の電極上に設けられ磁化が
一方向に向いている磁化固着層と、前記磁化固着層上に設けられた非磁性層と、前記非磁
性層上に設けられ前記第1の方向及び前記第1の方向に垂直な第2の方向とは何れとも異
なる方向を向いている可変の磁化を有する第1の磁化自由層と、前記第1の磁化自由層上
に設けられ前記第1の方向及び前記第2の方向とは何れとも異なる方向を向いている可変
の磁化を有する第2の磁化自由層と、前記第2の磁化自由層上に設けられた第2の電極と
を備えた磁気抵抗効果素子と、
前記磁気抵抗効果素子上であって、前記磁気抵抗効果素子を挟むように行方向に複数設
けられた第2の配線と、
を備える血圧センサ。
【請求項15】
被測定者の血圧測定部位に装着され、撓むことで第1の方向に引っ張り応力が生じる基
板と、
前記基板上であって列方向に複数設けられた第1の配線と、
前記第1の配線上に複数設けられた第1の電極と、前記第1の電極上に設けられ前記第
1の方向及び前記第1の方向に垂直な第2の方向とは何れとも異なる方向を向いている可
変の磁化を有する第1の磁化自由層と、前記第1の磁化自由層上に設けられ前記第1の方
向及び前記第2の方向とは何れとも異なる方向を向いている可変の磁化を有する第2の磁
化自由層と、前記第2の磁化自由層上に設けられた非磁性層と、前記非磁性層上に設けら
れ磁化が一方向に向いている磁化固着層と、前記磁化固着層上に設けられた第2の電極と
を備えた磁気抵抗効果素子と、
前記磁気抵抗効果素子上であって、前記磁気抵抗効果素子を挟むように行方向に複数設
けられた第2の配線と、
を備える血圧センサ。
【請求項16】
前記第1の磁化自由層はFeCo合金を含み、前記第2の磁化自由層はFe−Co−S
i−B合金、Tb−M−Fe合金(Mは,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er)、Tb
−M1−Fe−M2合金(M1は、Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er、M2は、Ti
,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,Ta)、Fe−M3−M4−B合金(M3
は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,Ta、M4は、Ce,Pr,Nd
,Sm,Tb,Dy,Er)、Ni、Al−Fe合金、又はフェライトを含む請求項14
に記載の血圧センサ。
【請求項17】
前記第1の磁化自由層はFe−Co−Si−B合金、Tb−M−Fe合金(Mは,Sm
,Eu,Gd,Dy,Ho,Er)、Tb−M1−Fe−M2合金(M1は、Sm,Eu
,Gd,Dy,Ho,Er、M2は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,
Ta)、Fe−M3−M4−B合金(M3は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,M
o,W,Ta、M4は、Ce,Pr,Nd,Sm,Tb,Dy,Er)、Ni、Al−F
e合金、又はフェライトを含み、前記第2の磁化自由層はFeCo合金を含む請求項15
に記載の血圧センサ。

【図1】
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【図3(D)】
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【図3(E)】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図15】
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【図17】
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【図27】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図2】
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【図3(A)】
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【図3(B)】
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【図3(C)】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−176294(P2012−176294A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−138181(P2012−138181)
【出願日】平成24年6月19日(2012.6.19)
【分割の表示】特願2010−119568(P2010−119568)の分割
【原出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】