説明

血圧計用腕帯

【課題】血圧計用腕帯において、手先から通すことが困難な状況においても使用することができるものとする。
【解決手段】帯状の可撓性腕帯10を筒状に丸めて、その外周面に沿って巻き掛けられた締付けベルト20のラック(23)に噛み合うピニオンギヤ(31)を有する締付機構30と可撓性腕帯10とを、被接合部61と接合部50(51,52,53)とにより着脱可能として、締付機構30を可撓性腕帯10から外して両端が開いた帯状に戻し、この状態で腕に巻き付けて、締付機構を可撓性腕帯10に接合し直すものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血圧計用腕帯に関し、詳細には、ダイヤルを回して締付けベルトを送ることにより、その径が拡縮される血圧計用腕帯に関する。
【背景技術】
【0002】
矩形帯状の可撓性腕帯を筒状に丸め、その筒状に形成された腕帯の周囲に、ラックが形成された締付けベルトを巻き付け、締付けベルトのラックと噛み合うピニオンギヤの付いたダイヤル(短円筒状のつまみ)を回して、この締付けベルトを腕帯の周方向に送ることで、筒状に丸められた腕帯の径を縮小させ、また、締付けベルトの送り量(ダイヤルの回転量)を加減することで、径の縮小量を調整し、これにより、腕帯の径を被検者の腕の太さに適合させるように構成されたダイヤル式の血圧計用腕帯が提案されている(特許文献1)。
【0003】
上記特許文献1に示された血圧計用腕帯によれば、径が拡げられた状態の腕帯に腕を通してダイヤルを回すだけの操作で、腕帯の径を腕の太さに適したものとすることができるため、装着の操作性を容易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−260293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した血圧計用腕帯は、不特定の被検者に使用されることが想定されているが、例えば、手首や前腕部にギブスをしていたり、吊っていたり、あるいは他の理由で肘を真っ直ぐに伸ばせない状態にある被検者に対しては、筒状の腕帯を被検者の上腕部まで通すことが困難であり、そのような被検者には実質的に使用することができない、という問題がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、手首や前腕部にギブスをしていたり、肘を真っ直ぐに伸ばせない被検者など、手先から通すことが困難な状況においても使用することができる血圧計用腕帯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る血圧計用腕帯は、帯状の可撓性腕帯を筒状に丸めて、その外周面に沿って巻き掛けられた締付けベルトを送る締付機構に設けられた被接合部を、可撓性腕帯に設けられた接合部に対して着脱可能としたことにより、筒状に丸められた可撓性腕帯を両端が開いた帯状に戻し、この状態で腕に巻き付けて、その状態で接合部と被接合部とを再度接合することで、手首や前腕部にギブスをしていたり、肘を真っ直ぐに伸ばせない被検者に対しても、手先から通すことなく使用可能としたものである。
【0008】
すなわち、本発明に係る血圧計用腕帯は、帯状の可撓性腕帯を筒状に丸め、その筒状に形成された可撓性腕帯の周囲に、一端が前記可撓性腕帯の外周面に固定されて前記外周面に沿って巻き掛けられた締付けベルトと、前記可撓性腕帯の一部に接合され、前記締付ベルトを送ることで前記可撓性腕帯を締め付ける締付機構とを備え、前記可撓性腕帯の周方向の所定の位置に接合部が設けられているとともに、前記締付機構に被接合部が設けられ、前記接合部と前記被接合部とは互いに着脱可能に形成されていることを特徴とする。
【0009】
このように構成された本発明に係る血圧計用腕帯によれば、締付機構により締付ベルトは送られるが、締付ベルトの一端は腕帯に固定され、かつ締付機構は腕帯に接合されているため、締付ベルトが送られることによって、締付機構に対して締付ベルトの一端が近づいて筒状の周長が短くなり、これにより、可撓性腕帯の径を縮小することが可能となる。
【0010】
ここで、可撓性腕帯の周方向の所定位置に設けられた接合部と、締付機構の被接合部とは、互いに着脱可能であるため、被接合部を接合部と接合することで、上述した帯状の可撓性腕帯を筒状に丸めた状態とすることができ、一方、被接合部を接合部から外して接合部に接合しない状態としたときは、可撓性腕帯は、閉じた筒状に維持されることがないため、筒状に形成される以前の、両端が開いた帯状に戻すことができる。
【0011】
これにより、筒状のままで手先から腕に通すことが困難な状況(例えば、手首や前腕部にギブスをしていたり、肘を真っ直ぐに伸ばせない状態等)でも、血圧測定に供することができる。
【0012】
本発明に係る血圧計用腕帯においては、前記接合部は、前記可撓性腕帯の周方向の互いに異なる位置に複数設けられていることが好ましい。
【0013】
このように好ましい構成の血圧計用腕帯によれば、可撓性腕帯の周方向の互いに異なる位置にそれぞれ設けられた接合部と、締付機構の被接合部とは、互いに着脱可能であり、被接合部は、複数の接合部のうちいずれとも接合することが可能であるため、被接合部を複数の接合部のうちいずれか一つと接合することで、上述した帯状の可撓性腕帯を筒状に丸めた状態とすることができ、一方、被接合部を接合部から外して、いずれの接合部にも接合しない状態としたときは、可撓性腕帯は閉じた筒状に維持されることがないため、筒状に形成される以前の、両端が開いた帯状に戻すことができる。
【0014】
また、接合部は、可撓性腕帯の周方向の互いに異なる位置に設けられているため、被接合部が選択的に接合される接合部に応じて、可撓性腕帯の周方向における締付機構の接合位置が変化し、これによって、締付機構の位置と締付ベルトの固定された一端との間の距離が段階的に変化する。
【0015】
すなわち、被接合部が選択的に接合される接合部に応じて、筒状の可撓性腕帯の初期的な径が段階的に変化する。
【0016】
したがって、初期的な径からの締付機構に対する操作量が同じであっても、操作後の腕帯の径は異なるものとなる。
【0017】
よって、腕の太さの違いに応じて、被接合部を接合する接合部を選択することで、初期的な径からの、締付機構に対する操作量を少なくしても、腕の太さの違いに適切に適合させることができる。
【0018】
つまり、血圧計用腕帯は不特定の被検者に使用されることが想定されているが、被検者の腕の太さは様々であるから、締付けベルトの送り量(ラックとピニオンギヤとのかみ合わせで送る形態のものにあっては、ラックの長さ)も、その腕の太さの違いを考慮して、比較的長く設定しておく必要がある。
【0019】
一方、血圧の測定が完了した後の腕帯は、この腕帯を腕から簡単に取り外せるように、例えばリリースレバー(保持・解除機構)を設けたもののように、そのリリースレバーを押すだけの簡単な操作で締付けベルトが初期状態まで戻るように構成されていると、次に使用する被検者の腕が細い場合は、その腕の径に適合させるための締付けベルトの必要な送り量が長くなり、それだけ長い送り量を得るための締付機構に対する操作量も多くする必要があり、操作する使用者に煩わしさを感じさせることがある。
【0020】
特に、この腕帯を使用する被検者が特定の人に限られているような家庭内での使用の場合は、使用の都度、締付機構の操作量が多いと、使用者に強いる負担が大きい。
【0021】
また、医療現場においても、腕の細い被検者が連続する場合は、家庭内での使用の場合と同様のことが起こり得る。
【0022】
しかし、本発明の好ましい血圧計用腕帯によれば、腕の太さの如何に拘わらず締付のための操作量を減らすことができる。
【0023】
本発明に係る血圧計用腕帯においては、前記接合部と前記被接合部とは、互いに接合された状態で相対的に回動可能であることが好ましい。
【0024】
このように好ましい構成の血圧計用腕帯によれば、その接合部と被接合部とが相対的に回動することで、腕帯が、その中心軸に沿ったいずれの位置における断面の面積も略等しい筒状だけではなく、その中心軸に沿った位置における断面の面積がその切断位置に応じて変化するような、円錐台状の筒状にも形作られ、したがって、被検部である上腕部等の肩側と前腕部側とで、その径が異なるような被検体に対しても、その筒状の形態を適正なものとすることができる。
【0025】
なお、接合部と被接合部とが互いに接合された状態で相対的に回動可能な構成としては、接合状態の両者が、可撓性腕体の面内で回動可能な構造(構成)であればよく、例えば、一方が可撓性腕体の面から突出した突部であり、他方がこの突部に緩く(両者間の摩擦力が、互いに回動し得る程度に低減されている緩さを意味する)引っ掛けられる環状や半円の環状に形成された引掛け部などとからなる構造(構成)など、これに類する種々の構造(構成)を適用することができる。
【0026】
本発明に係る血圧計用腕帯においては、前記接合部は、前記筒状に丸められた可撓性腕帯のうち、前記可撓性腕帯の径を縮小させた状態において前記筒状の内周面側に重なり合う外周面の領域に設けられ、前記締付機構は、その締付機構の本体を前記筒状の外周面側に配置し、前記被接合部を前記筒状の内周面側に配置する、前記筒状の可撓性腕帯のうち前記筒状の外周面側の部分を跨ぐ形状の支持部材を備えたものであることが好ましい。
【0027】
このように好ましい構成の血圧計用腕帯によれば、使用者の操作に供される部分である締付機構を、操作が行い易い外方に配置することができるとともに、筒状の内周側に配置された接合部に被接合部を確実に接合し、あるいは接合の解除を確実に行うことができる。
【0028】
本発明に係る血圧計用腕帯においては、前記各接合部は、前記筒状の周方向に沿って前記筒状の巻きの内周から外周に向かう向きに突出した折返し部が形成され、前記被接合部は、前記折返し部に引っ掛けられる引掛け部が形成されていることが好ましい。
【0029】
このように好ましい構成の血圧計用腕帯によれば、血圧測定に供する際に、腕帯の径を小さくする方向に締付ベルトを送るときは、折返し部と引掛け部とが係合して、接合部と被接合部とを接合した状態とすることができる一方、血圧測定が完了して、腕帯の径を大きくする方向に締付ベルトを送るときは、折返し部と引掛け部との係合が外れ易くなり、接合部と被接合部との接合を解除し易くすることができ、次の血圧測定操作への準備に供し易い。
【0030】
本発明に係る血圧計用腕帯においては、前記締付ベルトは、前記筒状の周方向に沿ったラックと、前記周方向に直交する方向に延び、かつ前記周方向に沿って配列された複数の突条とが形成されているとともに、外方に露出する表面が平滑に形成され、前記可撓性腕帯に対向する裏面のうち前記締付ベルトの縁部に前記ラックが形成され、前記可撓性腕帯に対向する裏面のうち前記締付ベルトの縁部よりも幅方向の内側部分に、前記ラックに連なって延びるように、前記突条が形成されていることが好ましい。
【0031】
このように好ましい構成の血圧計用腕帯によれば、締付ベルトのラックと突条とが、締付ベルトの幅方向に沿って連なるように形成されているため、締付ベルトの突条間およびラック間にそれぞれ形成された薄肉部が締付ベルトの幅方向に沿って一直線上に形成され、この薄肉部はラックや突条よりも剛性が低いため、締付ベルトをその長手方向(幅方向に対して略直交する方向)について巻いたとき、小さな径に丸めることができ、その占有スペースを小さくすることができる。
【0032】
また、外方に露出する表面が平滑に形成されているため、外方から付着する汚れが、その平滑な表面に残留したり堆積しにくいため清潔を維持しやすいとともに、平滑な表面は拭き取りも行い易いため、表面に汚れ等が付着した場合であっても、表面に凹凸が有るものに比べて、拭き取り清掃の労力を少なくすることができる。
【0033】
本発明に係る血圧計用腕帯においては、前記突条に係合する係合位置と前記突条から離れた解除位置との間を移動可能とされ前記係合位置に付勢された係合部を有する係合・解除機構を備え、前記締付機構は前記ラックに噛み合うピニオンギヤを有するものであることが好ましい。
【0034】
このように好ましい構成の血圧計用腕帯によれば、締付ベルトの突条には、係合位置(突条に係合する位置)に付勢された係合部が係合することで、係合部が付勢力に抗して突条から離れた解除位置に移動されるまでは、可撓性腕帯の径を縮小した状態で保持することができるため、血圧の測定時に、腕体に空気が供給されて腕体が膨らみ、筒状の周方向に沿って、径が拡がる方向の荷重が作用しても、腕体の径を維持して適切な血圧測定を行うことができる。
【0035】
一方、不勢力に抗して係合部を解除位置に移動させることで、腕体自体の弾性復元力などにより、筒状の径が拡げられ、これによって腕等の被検部に対する締付けを解除し、被検部を腕体から容易に離脱させることができる。
【0036】
なお、本発明に係る血圧計用腕帯においては、前記係合・解除機構は、前記締付機構とともに前記筒状の外周面側に配置されるように、前記支持部材に支持されているものであってもよい。
【0037】
このように構成された血圧計用腕帯によれば、係合・解除機構と締付機構とを支持部材を介して間接的に一体的に構成することができるため、締付の操作が入力される部分と締付けを解除する操作が入力される部分とを近接して配置することができ、操作部分を一ヶ所に集中させた構造とすることができる。
【0038】
また、本発明に係る血圧計用腕帯においては、前記係合・解除機構は、前記締付機構と一体的に設けられているものであってもよい。
【0039】
このように構成された血圧計用腕帯によれば、係合・解除機構と締付機構とを直接的に一体化することができるため、係合・解除機構と締付機構とを直接的に一体化して、部品点数を削減することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係る血圧計用腕帯によれば、筒状のままで手先から腕に通すことが困難な状況(例えば、手首や前腕部にギブスをしていたり、肘を真っ直ぐに伸ばせない状態等)でも、血圧測定に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態としての血圧計用腕帯を示す斜視図(展開状態)である。
【図2】図1に示した血圧計用腕帯を筒状に丸めた状態の斜視図である。
【図3】締付ベルトを示す図であり、(a)は外方に向いた表(おもて)面、(b)は腕帯に向いた裏面、(c)は(a)の矢視Cによる側面、(d)は丸めた状態での(c)相当の側面、をそれぞれ示す。
【図4】締付機構の詳細を、腕帯に向いた面側から視た図である。
【図5】図2の矢視Bによる図であり、(a)は接合部と被接合部との接合前の状態、(b)は接合部と被接合部との接合後の状態、をそれぞれ示す。
【図6】図5相当の図であり、実線はダイヤル撮みを操作して筒状の径を縮めた状態、二点鎖線はリリースレバーを操作して筒状の径を拡大した状態(径を縮める前の状態)、をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の血圧計用腕帯に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
【0043】
図1,2は、本発明の一実施形態にかかる血圧計用腕帯100を示す図であり、図1は略矩形帯状の血圧計用腕帯100の展開した状態を示す図、図2は図1に示した血圧計用腕帯100を筒状に丸めた状態を示す図である。
【0044】
図示の血圧計用腕帯100は、略矩形帯状に形成された可撓性の腕帯(以下、単に腕帯という。)10と、この腕帯10の長手方向Lに沿って配設された締付ベルト20と、この締付ベルト20の長手方向(腕帯10の長手方向Lと一致)に沿って移動可能とされた締付機構30と、締付ベルト20と締付機構30との相対的な位置関係の保持または保持の解除を切り替える係合・解除機構40と、締付機構30を腕帯10に着脱可能に接合させる接合部50とを備えている。
【0045】
ここで、腕帯10は、内部に芯材として樹脂等の可撓性材料により略矩形帯状に形成された薄平板13と、この薄平板13に重ねられた、エアホース接続部19から空気が供給されることによって膨らむ空気袋14とを織布15で包み込んでなるものであり、図2に示すように、腕帯10の長手方向Lの一方の端部11が内周側に、他方の端部12が外周側となるように、この腕帯10を丸めて筒状に形成し、その内周と外周との重なり範囲の長さを調整することで、筒状の径Dを調整することができるものとなっている。つまり、重なり範囲の長さを長くするにしたがって径Dを小さくすることができる。
【0046】
なお、筒状に形成された腕帯10は、展開状態における長手方向Lが筒状の周方向に一致するので、以下、周方向についても符号Lを付して説明する。
【0047】
締付ベルト20は、その長手方向の両端部21,22が腕帯10の外周面に固定され、この両端部21,22以外の中間部分は、腕帯10の外周面には固定されていない浮いた状態で設けられている。
【0048】
この両端部21,22のうち、一方の端部22は、腕帯10の端部12の近傍に固定されており、他方の端部21は、腕帯10の長手方向Lの中央部付近に固定されている。
【0049】
なお、締付ベルト20は、腕帯10の長手方向Lの中央寄りの端部21のみが腕帯10に固定されていれば、腕帯10の端部12近傍の端部22は必ずしも腕帯10に固定されていなくてもよいが、この端部22が固定されていないものでは、腕帯10が筒状に形成されて締付ベルト20がこの腕帯10の外周面に沿って巻き掛けられた状態において、締付ベルト20の姿勢が安定せず、固定された側の端部21に過度の負担が掛かって耐久性が低下するため、両端部21,22ともに腕帯10に固定されていることが好ましい。
【0050】
また、この締付ベルト20は、図3(a)に示すように、外方に露出する表(おもて)面20aが平滑に形成され、同図(b)に示すように、腕帯10に対向する面である裏(うら)面20bのうち締付ベルト20の長手方向Lに沿った縁部に長手方向Lに沿ってラック23が形成され、裏面20bのうちラック23が形成された縁部よりも幅方向Wの内側部分に、周方向Lに略直交する方向(幅方向W)に延び、かつその周方向Lに沿って配列された複数の突条24が形成されている。
【0051】
そして、各突条24は幅方向Wに沿って各ラック23に連なるように延びている。
【0052】
締付機構30は、図4に示すように、締付ベルト20の裏面20bの縁部に形成されたラック23に対して締付ベルト20の縁部外側から噛み合うピニオンギヤ31と、このピニオンギヤ31を回転させる、ピニオンギヤ31と同軸に設けられた短円柱状のダイヤル撮み32と、ピニオンギヤ31を図4の反時計回りに回転させたとき、その回転角度に応じた、図示時計回り方向への弾性復元力を発生させる弦巻バネ34とを備えた構成であり、ダイヤル撮み32を方向Rに回転させることでピニオンギヤ31を回転させると、ラック23とピニオンギヤ31との噛み合いにより、締付機構30が締付ベルト20に対して相対的に、締付ベルト20の長手方向Lに沿って直線変位するとともに、その変位した位置においては、弦巻バネ34による弾性復元力が作用する。
【0053】
そして、締付機構30が締付ベルト20に対して相対的に、締付ベルト20の長手方向Lに沿って直線変位することにより、腕帯10の内周と外周との重なり範囲の長さが調整され、これにより腕帯10の筒状の径Dが調整される。
【0054】
また、締付機構30は、締付ベルト20の裏面20b側を通って締付ベルト20の幅方向Wの動きを規制するとともにピニオンギヤ31を回転自在に軸支する基台33と、この基台33に固定されて、腕帯10がその内側空間を通過可能の略矩形環状に形成された支持部材60とを備えている。
【0055】
ここで、基台33は締付ベルト20の裏面20b側に渡されていて、ダイヤル撮み32は締付ベルト20の表面20aを外方から覆うように設けられているため、締付機構30は、腕帯10に両端部21,22が固定された締付ベルト20から外れることはなく、したがって、腕帯10から脱落することもない。
【0056】
支持部材60は、筒状とされた腕帯10の外周面となる表面側を通過する部分で基台33を保持し、この腕帯10の表面側から裏面側へ腕帯10を跨ぎ、腕帯10の内周面となる裏面側を通過する部分には、腕帯10に備えられた3つの接合部50(第1接合部51、第2接合部52および第3接合部53)のそれぞれと接合可能の、略U字形状の被接合部61が形成されている。
【0057】
この被接合部61の略U字形状は、腕帯10の端部12側に突出する形態を呈している。そして、この被接合部61が、後に詳述する接合部51,52,53のうちいずれか1つに接合されることにより、締付機構30は腕帯10に接合された状態となる。
【0058】
係合・解除機構40は、締付ベルト20の裏面20bに形成された突条24に腕帯10の側から係合する係合位置と、突条24から腕帯10の側に離れた解除位置との間を移動可能とされ、弦巻バネ43の弾性力により係合位置に付勢された係合爪42(係合部)と、弦巻バネ43の弾性力に抗して係合爪42を解除位置に変位させるリリースレバー41とを有し、弦巻バネ43係合爪42およびリリースレバー41は、締付機構30の基台33に軸支された軸44を介して、基台33に取り付けられており、係合・解除機構40と締付機構30とは直接的に一体化されている。
【0059】
なお、図示は略したが、図4において突条24の右側壁面(端部22に近い側の壁面)は斜めに傾斜した面に形成され、一方、突条24の左側壁面(端部21に近い側の壁面)は略垂直に立ち上がった面に形成されている。
【0060】
そして、係合・解除機構40の係合爪42は、この係合爪42よりも端部21に近い側に配置されている軸44周りに回動するため、締付機構30が締付ベルト20に対して図4の左方向に直線変位する際は、係合爪42が突条24の右側壁面である斜面に乗り上げるが、この斜面からの反力が弦巻バネ43の弾性力に抗して、係合爪42を、突条24を乗り越えさせるように作用し、この結果、リリースレバー41を操作しなくても、係合爪42が阻害することなく、締付機構30は締付ベルト20に対して図4の左方向に直線変位する。
【0061】
一方、締付機構30が締付ベルト20に対して図4の右方向に直線変位する際は、係合爪42が突条24の左側壁面である略垂直に突き当たるため、リリースレバー41を操作して係合爪42を解除位置に移動させた状態としない限り、締付機構30は締付ベルト20に対して図4の右方向に変位することはない。
【0062】
したがって、締付機構30のダイヤル撮み32を回転させて変位した位置、すなわち締付機構30が締付ベルト20に対して図4の左方向に直線変位した位置において、ピニオンギヤ31およびダイヤル撮み32が、ダイヤル撮み32を回転させる以前の位置まで戻そうとする締付機構30の弦巻バネ34の弾性復元力に対して、係合・解除機構40の係合爪42と締付ベルト20の突条24との間に作用する係合力が釣り合って、締付機構30は、リリースレバー41が操作されない限り、図4の左方向に直線変位した位置に保持される。
【0063】
3つの接合部50はそれぞれ、腕帯10の外周面における、周方向の互いに異なる所定位置に設けられており、この3つの接合部50のうち第1接合部51は、3つの接合部50のうち腕帯10の端部11に最も近い位置(締付機構30から最も遠い位置)L1に設けられ、第3接合部53は、3つの接合部50のうち腕帯10の端部11から最も遠い位置(締付機構30に最も近い位置)L3に設けられ、第2接合部52は、第1接合部51と第3接合部53との間の位置L2に設けられている。
【0064】
また、各接合部51,52,53は、腕帯10の長手方向Lの一方の端部11を内周側に、他方の端部12を外周側とするように、この腕帯10を丸めて筒状に形成した状態(図2および図5(b)参照)において、この筒状の周方向Lであって筒状の巻きの内周から外周に向かう向きに突出した折返し部51a,52a,53aが形成され、これら各折返し部51a,52a,53aに、支持部材60の略U字形状を呈した被接合部61が引っ掛けられて、いずれかの接合部51,52,53と被接合部61とが接合され、これによって腕帯10と締付機構30とが接合される。
【0065】
なお、略U字形状の被接合部61は、接合部51,52,53の折返し部51a,52a,53aに引っ掛けられる引掛け部を構成している。
【0066】
また、これら各接合部51,52,53と被接合部61とは、それぞれ着脱可能であり、いずれかの接合部51乃至53と被接合部61とが一旦接合された後も、引掛け部である被接合部61を、引っ掛けられている接合部51乃至53の折返し部51a乃至53aの開放先端側に移動させた後、半径方向の外側に変位させることで、被接合部61を接合部51乃至53から取り外すことができる。
【0067】
さらに、これら各接合部51,52,53と被接合部61とは、いずれかの接合部51,52,53と被接合部61とが一旦接合されると、その接合されたいずれかの接合部51,52,53と被接合部61とは、腕体10の面内で相対的に回動可能となっている。
【0068】
そして、各接合部51,52,53と被接合部61とが相対的に回動可能であることにより、腕帯10を被検部である上腕に装着して締め付けたときに、腕体10を、円錐台状の形状を呈した上腕部に沿った状態で装着することができる。
【0069】
すなわち、被検者である人の上腕部は、茶筒のような、その中心軸に沿ったいずれの位置における断面の面積も略等しい筒状ではなく、肩側に位置する腕の付け根部分から前腕部側の先端に向かって細くなる円錐台のような形状となっている。
【0070】
一方、腕帯10が、上述したような茶筒のような単なる筒状のままで、径が拡縮するものであると仮定すると、締付ベルト20の送り量をどのように調整しても、その腕帯10は上腕部10のわずかな一部にしか接触するに過ぎず、この状態のままで血圧の測定に供しても、腕帯10が上腕部の形状に沿って適切に密着することができないため、空気を供給しても腕帯10が上腕部を適切に圧迫することができ、血圧の測定精度を高めることができない。
【0071】
しかし、本実施形態の血圧計用腕帯100は、接合部51,52,53と被接合部61とは、腕体10の面内で相対的に回動可能となるため、腕体10が、円錐台状の形状を呈した上腕部に沿った状態で適切に密着して装着されるため、空気が供給された腕帯10が上腕部を適切に圧迫することができ、血圧の測定精度を向上させることができる。
【0072】
なお、各接合部51,52,53と被接合部61とが互いに接合された状態で相対的に回動可能な構成としては、上述した構成のもの(一方が腕体10の面から突出した突部であり、他方がこの突部に緩く(両者間の摩擦力が、互いに回動し得る程度に低減されている緩さを意味する)引っ掛けられる環状や半円の環状に形成された引掛け部などとからなる構造(構成)など)に限定されるものではなく、接合状態の両者(各接合部51,52,53、被接合部61)が、腕体10の面内で回動可能な構造(構成)であれば、上述した実施形態の構成のものに類する種々の構造(構成)を適用することができる。
【0073】
次に、本実施形態の血圧計用腕帯100の作用、効果について説明する。
【0074】
まず、この血圧計用腕帯100は、図1に示すように、腕帯10が展開状態とされているとともに、締付機構30は締付ベルト20の一方の端部22の側(締付機構30の弦巻バネ34の弾性復元力が小さい側(プレロードが作用している側))に寄せられていて、この状態で、被検者の上腕部に巻き付けられる。
【0075】
この被検者の上腕部に腕帯を巻き付ける際の腕帯10は、図5(a)に示すように展開状態であるため、手先側から前腕部を通って上腕部に至らせる必要がなく、したがって、手首や前腕部を太いギブスで固定していたり、前腕部に点滴のチューブやギブスを吊る紐などが取り付けられているなどして、あらかじめ筒状に形成された腕帯では上腕部にセットできない状況にあっても、本実施形態の血圧計用腕帯100によれば、被検者の上腕部にセットすることができる。
【0076】
被検者の上腕部に腕帯10が巻き付けられる際は、この腕帯10は、図2に示すように、腕帯10の一方の端部11(接合部50が設けられている側の端部)が他方の端部12(締付機構30が設けられている側の端部)よりも内周側に位置するように、被検者の上腕部の太さに応じた径Dの筒状に丸められる。
【0077】
そして、腕帯10の一方の端部12の内周面側に重なり合う他方の端部11の側の外周面の領域に設けられた3つの接合部51,52,53のうちいずれかと、締付機構30の支持部材60のうち腕帯10の内周面側に配置された略U字形状の引掛け部である被接合部61とが接合されて、この腕帯10は筒状に形成される。
【0078】
ここで、被接合部61が接合される相手の接合部51,52,53は、3つの接合部51,52,53のうち、それに対向する被接合部61に最も近い1つ、または被接合部61に近い2つの接合部51,52のうち端部11に近い側の接合部51若しくは被接合部61に近い2つの接合部52,53のうち端部11に近い側の接合部52が選択される。
【0079】
なお、このようにいずれかの接合部51,52,53と被接合部61とを接合させた後に、締付機構30を操作して腕帯10の径を縮小させることになるため、この径Dを縮小させるための移動代を確保するために、被接合部61に接合されるいずれかの接合部51,52,53を選択するに際しては、腕帯10の径Dが小さくなる側の接合部50を選択するのではなく、腕帯10の径Dが大きくなる側の接合部50を選択する必要がある。
【0080】
例えば、図2においては、最も太い径Dに対応して、端部11に最も近い側の接合部51が選択されて、この接合部51に被接合部61が接合された状態とされ、図5(b)においては、中間の径Dに対応して、端部11に最も近い側の接合部51と端部11に最も遠い側の接合部53との間に設けられた接合部52が選択されて、この接合部52に被接合部61が接合された状態とされている。
【0081】
また、最も細い径Dに対応するときは、端部11に最も遠い側の接合部53が選択されて、この接合部53に被接合部61が接合されればよい。
【0082】
このように、被接合部61といずれかの接合部51,52,53とが接合されることで締付機構30が腕帯10に接合されて腕帯10は筒状に形成され、この状態で、被検者自身が、または看護師等の操作者が、締付機構30のダイヤル撮み32を、図2において時計回り(図4において反時計回り)に回して、同軸のピニオンギヤ31を回転させると、このピニオンギヤ31に噛み合ったラック23がピニオンギヤ31に対して矢印La方向(図2、図4、図5(b)参照)に相対的に送られるが、締付ベルト20の一端部21が腕帯10に固定され、かつ締付機構30は腕帯10に接合されているため、ラック23が相対的に矢印La方向に送られることによって、図6の実線で示すように、締付機構30に対して締付ベルト20の一端部21が近づいてくるため、筒状の周長が短くなり(腕帯10の内周側と外周側との重なり範囲が長くなり)、これにより、腕帯10の径Dが縮小される。
【0083】
また、締付ベルト20の突条24には、弦巻バネ43による付勢力により係合位置(突条24に係合する位置)に付勢された係合爪42が係合するため、ラック23を所定長送って腕帯10の径Dを所定量縮小した任意の状態で保持することができる。
【0084】
そして、径Dを所定量まで縮小した後に、図示しないエアホースを介してエアホース接続部19(図1参照)から腕帯10の空気袋14に空気が供給されることによって、この腕帯10が巻き付けられた被検者の上腕部を圧迫し、血圧測定に供することが可能となる。
【0085】
また、血圧測定の操作が終了した後は、空気袋14内の空気が排出され、その後、操作者が、係合・解除機構40の弦巻バネ43の弾性力に抗してリリースレバー41を押し下げる荷重を付与することで、リリースレバー41と一体的に形成された係合爪42が解除位置に移動し、これによって、締付ベルト20と締付機構30との相対的な位置関係の保持が解除される。
【0086】
すると、ピニオンギヤ31の所定量の回転によって締付機構30の弦巻バネ34に蓄えられた弾性エネルギが弾性復元力として解放され、これによって、ピニオンギヤ31は、ダイヤル撮み32を回転させる以前の位置、すなわち、図6の二点鎖線に示すように、締付機構30が締付ベルト20の一方の端部22の側(締付機構30の弦巻バネ34の弾性復元力が小さい側(プレロードが作用している側))まで戻され(ラック23(締付ベルト20)が相対的に矢印Lb方向に戻され)、腕帯10の径Dが拡大した状態とされる。
【0087】
そして、上腕部の被検部から手先まで、筒状のままで腕帯10を引き抜くことができる場合は、そのように手先から引き抜かれ、一方、手先から引き抜くことができない状況(例えば、手首や前腕部にギブスをしていたり、肘を真っ直ぐに伸ばせない状態等)では、図5(a)に示すように、被接合部61と接合部50との接合を解除する(被接合部61を接合部50から取り外す)ことにより、腕帯10を上腕部等の被検部分から取り外される。
【0088】
以上のように、本実施形態の血圧計用腕帯100によれば、腕帯10の周方向Lの所定位置(L1,L2,L3)にそれぞれ設けられた接合部51,52,53のいずれかと、締付機構30の被接合部61とは互いに着脱可能であり、被接合部61をいずれかの接合部51,52,53と接合することで、上述した帯状の腕帯10を筒状に丸めた状態とすることができ、一方、被接合部61を接合部51,52,53から外して接合部51,52,53に接合しない状態としたときは、腕帯10は、閉じた筒状に維持されることがないため、筒状に形成される以前の、両端部11,12が開いた帯状に戻すことができる。
【0089】
これにより、本実施形態1の血圧計用腕帯100を、筒状のままで手先から腕に通すことが困難な状況(例えば、手首や前腕部にギブスをしていたり、肘を真っ直ぐに伸ばせない状態等)でも、血圧測定に供することができる。
【0090】
また、本実施形態の血圧計用腕帯100は、接合部50として、腕帯10の周方向Lの互いに異なる3つの位置(L1,L2,L3)に設けられていて、それぞれの接合部50と、締付機構30の被接合部61とは互いに着脱可能であり、被接合部61は、各接合部50のうちいずれとも接合することが可能であるため、被接合部61を、接合部50のうちいずれか一つと接合することで、上述した帯状の腕帯10を筒状に丸めた状態とすることができ、一方、被接合部61を接合部50から外して、いずれの接合部50にも接合しない状態としたときは、腕帯10は閉じた筒状に維持されることがないため、筒状に形成される以前の、両端部11,12が開いた帯状に戻すことができる。
【0091】
しかも、接合部50は、腕帯10の周方向Lの互いに異なる位置(L1,L2,L3)に設けられているため、被接合部61が選択的に接合される接合部50に応じて、腕帯10の周方向Lにおける締付機構30の接合位置が変化し、これによって、締付機構30の位置と締付ベルト20の固定された一端部21との間の距離(周方向Lに沿った距離)が段階的に変化する。
【0092】
すなわち、被接合部61が選択的に接合される接合部50に応じて、筒状の腕帯10の初期的な径Dが段階的に変化する。
【0093】
したがって、初期的な径Dからの締付機構30に対する操作量(ダイヤル撮み32の回転量)が同じであっても、操作後の腕帯10の径Dは異なるものとなる。
【0094】
よって、被検者の腕の太さの違いに応じて、被接合部61を接合する接合部50を選択することで、初期的な径Dからの、締付機構30に対する操作量を少なくしても、腕の太さの違いに適切に適合させることができる。
【0095】
つまり、本実施形態の血圧計用腕帯100は不特定の被検者に使用されることが想定されているが、被検者の腕の太さは様々であるから、締付けベルト20のラック23の長さ(締付けベルト20の送り量)も、その腕の太さの違いを考慮して、比較的長く設定しておく必要がある。
【0096】
一方、血圧の測定が完了した後の腕帯10は、この腕帯10を腕から簡単に取り外せるように、リリースレバー41を押すだけの簡単な操作で、締付けベルト20が初期状態まで戻るように構成されているが、次に使用する被検者の腕が細い場合は、その腕の径Dに適合させるための締付けベルト20の必要な送り量が長くなり、それだけ長い送り量を得るための締付機構30に対する操作量も多くする必要があり、操作する使用者に煩わしさを感じさせることがある。
【0097】
特に、この血圧計用腕帯100を使用する被検者が特定の人に限られているような家庭内での使用の場合は、使用の都度、締付機構30の操作量が多いと、使用者に強いる負担が大きい。
【0098】
また、医療現場においても、腕の細い被検者が連続する場合は、家庭内での使用の場合と同様のことが起こり得る。
【0099】
しかし、本実施形態の血圧計用腕帯100によれば、腕の太さの如何に拘わらず締付のための操作量を減らすことができる。
【0100】
また、本実施形態の血圧計用腕帯100は、接合部50が、筒状に丸められた腕帯10のうち、腕帯10の径Dを縮小させた状態において筒状の内周面側に重なり合う外周面の領域に設けられ、締付機構30が、その締付機構30の本体(ピニオンギヤ31、ダイヤル撮み32を含む部分)を筒状の外周面側に配置し、被接合部61を筒状の内周面側に配置する、筒状の腕帯10のうち筒状の外周面側の部分を跨ぐ形状の支持部材60を備えているため、使用者の操作に供される部分であるダイヤル撮み32を、操作が行い易い外方に配置することができるとともに、筒状の内周側に配置された接合部50に被接合部61を確実に接合し、あるいは接合の解除を行うことができる。
【0101】
本実施形態に係る血圧計用腕帯100においては、係合・解除機構40は、締付機構30とともに筒状の外周面側に配置されるように、支持部材60に支持されているため、締付の操作が入力される部分(ダイヤル撮み32)と締付けを解除する操作が入力される部分(リリースレバー41)とを近接して配置することができ、操作部分を一カ所に集中させた構造とすることができる。
【0102】
本実施形態の血圧計用腕帯100においては、各接合部51,52,53は、筒状の周方向Lであって筒状の巻きの内周から外周に向かう向きに折返し部51a,52a,53aが形成され、被接合部61は、これら各折返し部51a,52a,53aに引っ掛けられる引掛け部(略U字状の部分)が形成されているため、血圧測定に供する際に、腕帯10の径Dを小さくする方向に締付ベルト20を送るときは、折返し部51a,52a,53aと引掛け部(被接合部61)とが係合して、接合部50と被接合部61とを接合した状態とすることができる一方、血圧測定が完了して、腕帯の径Dを大きくする方向に締付ベルト20を送るときは、折返し部51a,52a,53aと引掛け部(被接合部61)との係合が外れ易くなり、接合部50と被接合部61との接合を解除し易くすることができ、次の血圧測定操作への準備に供し易い。
【0103】
本実施形態に係る血圧計用腕帯100においては、係合・解除機構40は、締付機構30と、基台33を介して一体的に設けられているため、係合・解除機構40と締付機構30とを直接的に一体化して、部品点数を削減することができる。
【0104】
本実施形態に係る血圧計用腕帯100においては、締付ベルト20は、外方に露出する表面20aが平滑に形成されているため、表面に凹凸が露出しているものに比べて、表面に汚れなどが付着しにくく、清潔な状態を維持し易いものとすることができる。
【0105】
また、腕帯10に対向する裏面20bのうち締付ベルト20の縁部にラック23が形成され、腕帯10に対向する裏面20bのうち締付ベルト20の縁部よりも幅方向Wの内側部分に、ラック23に連なるように突条24が形成されているため、締付ベルト20の突条24間およびラック23間にそれぞれ形成された薄肉部25(図3(b)参照)が締付ベルト20の幅方向Wに沿って一直線上に形成され、この薄肉部25はラック23や突条24よりも剛性が低いため、図3(d)に示すように、締付ベルト20をその長手方向L(幅方向Wに対して略直交する方向)について巻いたとき、小さな径で丸めることができるため、血圧計用腕帯100の全体の占有スペースを小さくすることができる。
【符号の説明】
【0106】
10 可撓性腕帯
20 締付ベルト
23 ラック
30 締付機構
31 ピニオンギヤ
40 係合・解除機構
50,51,52,53 接合部
61 被接合部
100 血圧計用腕帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の可撓性腕帯を筒状に丸め、その筒状に形成された可撓性腕帯の周囲に、一端が前記可撓性腕帯の外周面に固定されて前記外周面に沿って巻き掛けられた締付けベルトと、
前記可撓性腕帯の一部に接合され、前記締付ベルトを送ることで前記可撓性腕帯を締め付ける締付機構とを備え、
前記可撓性腕帯の周方向の所定の位置に接合部が設けられているとともに、前記締付機構に被接合部が設けられ、
前記接合部と前記被接合部とは互いに着脱可能に形成されていることを特徴とする血圧計用腕帯。
【請求項2】
前記接合部は、前記可撓性腕帯の周方向の互いに異なる位置に複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の血圧計用腕帯。
【請求項3】
前記接合部と前記被接合部とは、互いに接合された状態で相対的に回動可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の血圧計用腕帯。
【請求項4】
前記接合部は、前記筒状に丸められた可撓性腕帯のうち、前記可撓性腕帯の径を縮小させた状態において前記筒状の内周面側に重なり合う外周面の領域に設けられ、
前記締付機構は、その締付機構の本体を前記筒状の外周面側に配置し、前記被接合部を前記筒状の内周面側に配置する、前記筒状の可撓性腕帯のうち前記筒状の外周面側の部分を跨ぐ形状の支持部材を備えたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載の血圧計用腕帯。
【請求項5】
前記各接合部は、前記筒状の周方向に沿って前記筒状の巻きの内周から外周に向かう向きに突出した折返し部が形成され、
前記被接合部は、前記折返し部に引っ掛けられる引掛け部が形成されていることを特徴とする請求項2から4のうちいずれか1項に記載の血圧計用腕帯。
【請求項6】
前記締付ベルトは、前記筒状の周方向に沿ったラックと、前記周方向に直交する方向に延び、かつ前記周方向に沿って配列された複数の突条とが形成されているとともに、外方に露出する表面が平滑に形成され、前記可撓性腕帯に対向する裏面のうち前記締付ベルトの縁部に前記ラックが形成され、前記可撓性腕帯に対向する裏面のうち前記締付ベルトの縁部よりも幅方向の内側部分に、前記ラックに連なって延びるように、前記突条が形成されていることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項に記載の血圧計用腕帯。
【請求項7】
前記突条に係合する係合位置と前記突条から離れた解除位置との間を移動可能とされ前記係合位置に付勢された係合部を有する係合・解除機構を備え、
前記締付機構は前記ラックに噛み合うピニオンギヤを有することを特徴とする請求項6に記載の血圧計用腕帯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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