説明

血小板バイオマーカーの正規化方法

血小板中の任意のバイオマーカーを正規化するために有用な方法を本明細書に記載する。この方法は、例えば関心対象のバイオマーカーに関連する診断または予後予測方法のために、バイオマーカーレベルを確認または比較することが望まれる任意の方法における用途を有する。このようなアプローチを使用することにより、正規化されていないまたは総タンパク質レベルに対して正規化された発現値よりも少ない誤差で、個体の疾患状態(例えば、血管新生状態)の評価を実施することができる。サンプル中、例えば血小板サンプル中のバイオマーカーを正規化するための正規化タンパク質を選択する方法も提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この国際出願は、35 U.S.C. §119(e)に基づき、2009年11月23日出願の米国仮出願第61/263,686号の優先権の恩典を主張し、その内容全体を参照により本明細書に組み入れる。
【0002】
発明の分野
本発明の分野は、血小板数、血小板濃度または血小板容積の代理マーカーの同定および使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
血小板は、止血、血管損傷修復および創傷治癒において必須の役割を果たす小さな無核の細胞フラグメントである(Folkman, J. Ann. Rev. Med. 57 (2006) 1-18(非特許文献1))。Judah Folkman博士らは、内因性の血管新生調節タンパク質が血小板内部に存在するかまたは血小板に付随しているという現象を発表した(Folkman, J., et al. Thromb Haemost 86 (2001) 23-33(非特許文献2))。その後の様々な研究は、マウスにおける循環血小板が、マウスに微小腫瘍が存在する場合、血管新生調節タンパク質を取り込み、隔離(sequester)することを報告した(Klement, G. et al., Blood (ASH Annual Meeting Abstracts), 104 (2004) 839(非特許文献3); Naumov, G. N. et al., J. Natl. Cancer Inst. 98 (2006) 316-325(非特許文献4); Almog, N. et al., FASEB J. 20 (2006) 947-949(非特許文献5))。
【0004】
血管新生は、発達、再生および修復において必須の新血管成長プロセスである。しかし、腫瘍形成および多くの新生物疾患においては、病的な血管新生が発生する(Folkman, J. Ann. Rev. Med. 57 (2006) 1-18(非特許文献1))。腫瘍細胞は、血管新生タンパク質を放出しまたはその放出を誘導し、それにより毛細管内皮細胞の増殖、動員および管形成を刺激する(Hanahan, D., and Folkman, J. Cell 86 (1996) 353-354(非特許文献6))。
【0005】
一連の研究を通じて、血管新生調節タンパク質は、血小板の接着・凝集部位で局所的に受け渡しされるということが提唱されている(Klement, GL., et al., Blood, (2008) doi: 10.1182/ blood-2008-06-159541(非特許文献7))。
【0006】
血清および血漿中の血管新生タンパク質、例えばVEGF、bFGFまたはPF-4のレベルは、疾患の早期検出のための潜在的診断マーカー(バイオマーカー)として評価される。これらのバイオマーカーの一部は循環中での濃度が低いかまたは半減期が短いため、これらのアプローチは技術的に困難であると考えられる。血清または血漿中の一部の血管新生タンパク質は、大腫瘍量存在下で有意に増加することが記載されている。
【0007】
対応のある血清および血漿サンプルの研究において、VEGFレベルは、116名の結腸直腸癌患者では血小板数と相関したが、対照ではしなかった。これらの相関性は、疾患の進行と共に増大した血清・血漿間の差を決定することにより間接的に計算された。さらに、癌患者におけるVEGFの高い血清レベルは、腫瘍負荷ではなく血小板数を反映しているにすぎないことが示唆された。
【0008】
したがって、血清の測定は、血小板中で見出される分析物のすべてを含むものとみなすことができない。例えば、一部の血小板に付随するVEGFおよびbFGFは、血清塊形成時に遭遇するアゴニスト(トロンビン)の刺激により血清中に放出され得るが、有意レベルは血小板に付随したままであり、それらはおそらくヘマトクリットと共に失われていると考えられる(Akerblom, B., et al., Upsala J Med Sci. 107 (3) (2002) (165-171)(非特許文献8); Salgado, R., et al., Brit. J of Cancer; 80 (5/6) (1999) 892-897(非特許文献9))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Folkman, J. Ann. Rev. Med. 57 (2006) 1-18
【非特許文献2】Folkman, J., et al. Thromb Haemost 86 (2001) 23-33
【非特許文献3】Klement, G. et al., Blood (ASH Annual Meeting Abstracts), 104 (2004) 839
【非特許文献4】Naumov, G. N. et al., J. Natl. Cancer Inst. 98 (2006) 316-325
【非特許文献5】Almog, N. et al., FASEB J. 20 (2006) 947-949
【非特許文献6】Hanahan, D., and Folkman, J. Cell 86 (1996) 353-354
【非特許文献7】Klement, GL., et al., Blood, (2008) doi: 10.1182/ blood-2008-06-159541
【非特許文献8】Akerblom, B., et al., Upsala J Med Sci. 107 (3) (2002) (165-171)
【非特許文献9】Salgado, R., et al., Brit. J of Cancer; 80 (5/6) (1999) 892-897
【発明の概要】
【0010】
本明細書に記載される方法は、一部、血小板が能動的にバイオマーカー、例えば血管新生調節因子を隔離し、そのバイオマーカーレベルの変化が、疾患、例えば血管新生疾患または障害、特に癌を含む疾患の早期かつ高感度の指標を提供するという認識に基づいている。本明細書に記載される方法はまた、一部、血小板中で測定されたバイオマーカー(例えば血管新生レギュレーター)に関する正規化された値が、血小板濃度を反映するにすぎないと考えられる非正規化値よりも良好な疾患および/または血管新生状態の予測因子となるという観察に基づいている。血小板数と正規化手順の間の相関が近いほど、診断およびモニタリング、例えば血管新生疾患の診断およびモニタリングのためのサンプル間のレベルの比較能力が良くなる。
【0011】
本明細書に記載される方法は、正規化因子(例えばアクチン)から決定される、血小板数、血小板濃度または血小板容積を基準とする個体由来のサンプルまたはサンプル群中のバイオマーカーのレベルまたはレベルの変化の評価に関する。
【0012】
一つの局面において、例えば、血小板調製物のバイオマーカーレベルを評価する方法が記載され、該方法は、(a)血小板調製サンプル中の代理マーカーレベルを決定する工程であって、代理マーカーが血小板数、血小板濃度または血小板容積に対応する、工程;(b)サンプル中のバイオマーカーレベルを決定する工程、(c)サンプル中のバイオマーカーレベルを代理マーカーレベルに基づき正規化する工程であって、それによってそのサンプルの正規化バイオマーカーレベルを決定する、工程、を包含する。
【0013】
一つの態様において、正規化工程は、サンプル中のバイオマーカーレベルに関して得られた値を代理マーカーレベルに関して得られた値で割る工程を包含する。
【0014】
この局面の別の態様において、代理マーカーは、アクチン重合体またはアクチン単量体である。別の態様において、サンプルは、サンプル中のアクチンが実質的に重合するアクチン重合誘導条件下に置かれる。
【0015】
この局面および本明細書に記載される他のすべての局面の別の態様において、高濃度の塩によりアクチン重合が促進される。
【0016】
この方法は任意のバイオマーカーの試験に用いることができるが、一つの態様において、バイオマーカーは、血管新生レギュレーターである。
【0017】
別の態様において、バイオマーカーレベルの変化は、疾患状態(例えば、血管新生状態または血管新生性障害)を示すものである。
【0018】
また、本明細書には、血小板数、血小板濃度または血小板容積の代理マーカーを同定する方法も記載され、該方法は、(a)サンプリング因子に従い単一の血小板調製物から調製したサンプル集の各サンプルにおいて複数の候補マーカーの量をアッセイする工程;(b)各サンプル中の各候補マーカーの量をサンプリング因子に従い予測される候補マーカーの量と比較する工程であって、該比較する工程により、工程(a)でアッセイされた複数の中から、予測される候補マーカー量と測定された候補マーカー量の間の相関が最も近い候補マーカーが同定され、それによって該候補マーカーが、血小板数、血小板濃度または血小板容積の代理マーカーとして同定される、工程、を包含する。
【0019】
この局面の一つの態様において、血小板調製物は、血小板溶解物を含む。
【0020】
この局面の別の態様において、この方法はさらに、同定された代理マーカーを異なる生理学的条件下でのばらつきに関して試験する工程を包含する。
【0021】
別の局面において、サンプル中のバイオマーカー量を正規化する方法が本明細書に記載され、該方法は、(a)サンプリング因子に従い単一の血小板調製物から調製したサンプル集の各サンプルにおいて複数の候補マーカーの量をアッセイする工程;(b)各サンプル中の各候補マーカーの量をサンプリング因子に従い予測される候補マーカーの量と比較する工程であって、該比較する工程により、工程(a)でアッセイされた複数の中から、予測された候補マーカー量と測定された候補マーカー量の間の相関が最も近い候補マーカーが同定され、それによって該候補マーカーが、血小板数、血小板濃度または血小板容積の代理マーカーとして同定される、工程、を包含する方法を用いて同定された代理マーカーを基準として、血小板調製物中で測定されたバイオマーカー量を正規化する工程を包含する。
【0022】
この局面の一つの態様において、バイオマーカーは、血管新生タンパク質である。
【0023】
この局面の別の態様において、血小板調製物は、患者サンプルから得られる。一つの態様において、この方法はさらに、正規化されたバイオマーカーレベルと参照レベルを比較し、患者サンプル中のバイオマーカーレベルの変化を検出する工程を包含する。
【0024】
また、血小板調製物のバイオマーカーレベルを評価する方法も本明細書に記載され、該方法は、(a)個体から得られた単離された血小板のサンプルを、サンプル中のアクチンが実質的に重合するアクチン重合誘導条件下に置く工程;(b)サンプルを、アクチン重合体に選択的に結合する薬剤と接触させ、かつ薬剤とアクチン重合体の間の複合体の形成を検出する工程であって、それによってサンプル中のアクチンレベルを測定する、工程;(c)サンプル中のバイオマーカーレベルを測定する工程;(d)サンプル中のバイオマーカーレベルをサンプル中のアクチン重合体の測定レベルに基づき正規化する工程であって、それによって該サンプルに関する正規化バイオマーカーを決定する、工程、を包含する。
【0025】
また、サンプルのバイオマーカーレベルの変化を評価する方法も本明細書に記載され、該方法は、(a)個体から得られた単離された血小板のサンプルを、サンプル中のアクチンが実質的に重合するアクチン重合誘導条件下に置く工程;(b)サンプルを、アクチン重合体に選択的に結合する薬剤と接触させ、かつ薬剤とアクチン重合体の間の複合体の形成を検出する工程であって、それによってサンプル中のアクチンレベルを測定する、工程;(c)サンプル中のバイオマーカーレベルを測定する工程;(d)サンプル中のバイオマーカーレベルをサンプル中のアクチン重合体の測定レベルに基づき正規化する工程、(e)サンプル中のバイオマーカーの正規化レベルを参照と比較する工程であって、バイオマーカーの正規化レベルと参照との差が、個体のバイオマーカーレベルの変化を示す、工程、を包含する。
【0026】
一つの態様において、アクチン重合体に選択的に結合する薬剤は、抗体を含む。
【0027】
この局面の一つの態様において、アクチン重合誘導条件は、高濃度の塩を含む。
【0028】
この局面の別の態様において、バイオマーカーは、血管新生レギュレーターである。
【0029】
この局面の別の態様において、血管新生レギュレーターレベルの変化は、血管新生状態の変化および/または血管新生性障害の存在を示すものである。
【0030】
この局面の別の態様において、血管新生性障害は、腫瘍関連疾患の存在である。
【0031】
この局面の別の態様において、参照は、個体集団から得られた生物学的サンプルから得られる。一つの態様において、該集団の各個体は、(実質的に)血管新生性障害を有さない。
【0032】
この局面の別の態様において、参照は、より早い時点で個体から得られた単離された血小板から得られる。
【0033】
また、血小板中の少なくとも一つのバイオマーカーの正規化レベルを検出するためのキットも本明細書に提供され、該キットは、(a)血小板正規化因子に選択的に結合する少なくとも一つの薬剤、(b)血小板中に隔離されるバイオマーカーに選択的に結合する少なくとも一つの薬剤、ならびに(c)包装材および少なくとも一つのバイオマーカーのレベルを正規化因子レベルに基づき正規化するための説明書、を含む。
【0034】
また、血小板中の少なくとも一つのバイオマーカーの正規化レベルを検出するためのキットも本明細書に提供され、該キットは、(a)単離された血小板サンプルと接触させた場合にアクチン重合または脱重合を誘導する少なくとも一つの試薬;および(b)(i)工程(a)の試薬がアクチン重合を誘導する場合は、アクチン重合体に、または(ii)工程(a)の試薬がアクチン脱重合を誘導する場合は、アクチン単量体に、のいずれかに選択的に結合する薬剤;(c)バイオマーカーに結合する薬剤;ならびに(d)包装材および少なくとも一つのバイオマーカーのレベルをアクチン重合体またはアクチン単量体のレベルに基づき正規化するための説明書、を含む。
【0035】
一つの態様において、キットはさらに、固体支持体または検出可能なシグナルを生成する試薬を含む。別の態様において、キットはさらに、アクチン重合体陽性対照を含む。別の態様において、キットはさらに、少なくとも一つの他のバイオマーカーに結合する薬剤を含む。
【0036】
上記のキットはさらに、以下の任意の一つまたは複数を含み得る:固体支持体、反応容器、検出システムで使用するソフトウェア、サンプルホルダー等。
【0037】
また、血小板サンプル中のバイオマーカーレベルを評価する方法をコンピューター上で実行するためのソフトウェアモジュールを定義するコンピューター読み取り可能な指令が記録されているコンピューター読み取り可能な保存メディアが本明細書に提供され、該コンピューター読み取り可能な保存メディアは、(a)少なくとも一の個体から得られた単離された血小板のサンプルにおいて決定されたバイオマーカーレベルおよび代理マーカーレベルを表すデータを保存しこれにアクセスするための指令;(b)正規化モジュールを通じてバイオマーカーレベルを代理マーカーレベルに基づき正規化するための指令であって、それによって該バイオマーカーの正規化レベルが生成される、指令、(c)呼び出されたコンテンツをユーザーに表示するための指令であって、呼び出されたコンテンツが正規化バイオマーカーレベルを含む、指令、を含む。
【0038】
一つの態様において、コンピューター読み取り可能な保存メディアはさらに、バイオマーカーの正規化レベルと保存デバイスに保存されている参照データを比較モジュールを用いて比較し、それによってバイオマーカーレベルの変化を決定するための指令を含む。
【0039】
別の態様において、代理マーカーは、アクチン重合体またはアクチン単量体である。
【0040】
また、少なくとも一の個体から得られた単離された血小板のサンプルからデータを取得するためのコンピューターシステムが本明細書に記載され、該システムは、(a)サンプルを保持するための試料コンテナ;(b)読み出し情報を決定するよう構成された決定モジュールであって、読み出し情報は、1)血小板数、血小板濃度または血小板容積の代理マーカーの量を表す情報および2)サンプル中で測定されたバイオマーカーの量を表す情報を含む、モジュール、(c)決定モジュールから出力されたデータを保存するよう構成された保存デバイス;(d)バイオマーカーレベルを表す情報を、代理マーカー量を表す情報に基づき正規化するよう構成された正規化モジュール;(e)呼び出されたコンテンツをユーザーに表示するための表示モジュールであって、呼び出されたコンテンツが正規化バイオマーカーレベルを含む、モジュール、を含む。
【0041】
一つの態様において、コンピューターシステムはさらに、正規化モジュールから得られたデータを保存デバイス上の参照データと比較し、それによってバイオマーカーレベルの変化を決定するよう適合された比較モジュールを含む。
【0042】
別の態様において、代理マーカーは、アクチン重合体またはアクチン単量体である。
【0043】
別の局面において、本明細書に記載される方法は、血小板調製物中のバイオマーカーレベルの変化の評価に関し、該方法は、(a)血小板サンプルを、正規化タンパク質に選択的に結合する薬剤と接触させ、かつ薬剤と正規化タンパク質の複合体の形成を検出する工程であって、それによってサンプル中の正規化タンパク質レベルを測定する、工程;(b)血小板サンプル中のバイオマーカーレベルを測定する工程;(c)サンプル中のバイオマーカーレベルを、サンプル中の正規化タンパク質レベルに基づき正規化する工程、および(d)サンプル中のバイオマーカーの正規化レベルを参照と比較する工程であって、バイオマーカーの正規化レベルと参照との差がバイオマーカーレベルの変化を示す、工程、を包含する。この局面および本明細書に記載されるその他の局面において、バイオマーカーおよび正規化因子を検出するのに使用される血小板サンプルは、同じ採血液の希釈物から得られるのが好ましいが、それは絶対に必要というものではない。
【0044】
一つの態様において、薬剤は抗体を含む。
【0045】
本明細書に記載される別の局面は、個体の血管新生状態の変化を評価する方法に関し、該方法は、(a)個体から得られた単離された血小板のサンプルを、サンプル中のアクチンが実質的に重合するアクチン重合誘導条件下に置く工程;(b)サンプルを、アクチン重合体に選択的に結合する薬剤と接触させ、かつ薬剤とアクチン重合体の間の複合体の形成を検出する工程であって、それによってサンプル中のアクチンレベルを測定する、工程;(c)サンプル中の血管新生レギュレーターレベルを測定する工程;(d)サンプル中の血管新生レギュレーターレベルをサンプル中のアクチン重合体レベルに基づき正規化する工程、(e)サンプル中の血管新生レギュレーターの正規化レベルを参照と比較する工程であって、血管新生レギュレーターの正規化レベルと参照との差が、個体の血管新生状態の変化を示す、工程、を包含する。
【0046】
この局面および本明細書に記載されるその他のすべての局面の一つの態様において、血管新生状態の変化は、血管新生性障害を示す。
【0047】
この局面および本明細書に記載されるその他のすべての局面の別の態様において、血管新生性障害は、腫瘍関連疾患の存在である。
【0048】
この局面の別の態様において、該方法はさらに、血管新生モジュレーターを個体に投与する工程を包含する。
【0049】
この局面および本明細書に記載されるその他のすべての局面の別の態様において、参照は、個体集団から得られた生物学的サンプルから得られる。この局面の一つの態様において、該集団の各個体は、血管新生性障害を有さない。
【0050】
この局面および本明細書に記載されるその他のすべての局面の別の態様において、参照は、より早い時点で個体から得られた単離された血小板から得られる。
【0051】
この局面および本明細書に記載されるその他のすべての局面の別の態様において、アクチン重合誘導条件は、高濃度の塩を含む。
【0052】
また、個体の血管新生性障害を処置する方法も本明細書に記載され、該方法は、(a)個体から得られた単離された血小板のサンプルを、サンプル中のアクチンが実質的に重合するアクチン重合誘導条件下に置く工程;(b)サンプルを、アクチン重合体に選択的に結合する薬剤と接触させ、かつアクチン重合体との複合体の形成を検出する工程であって、それによってサンプル中のアクチンレベルを測定する、工程;(c)サンプル中の血管新生レギュレーターレベルを測定する工程;(d)サンプル中の血管新生レギュレーターレベルをサンプル中のアクチン重合体レベルに基づき正規化する工程、(e)サンプル中の血管新生レギュレーターの正規化レベルを参照と比較する工程であって、血管新生レギュレーターの正規化レベルと参照との差が決定され、それにより血管新生性障害の存在が示される、工程;および(f)血管新生モジュレーターを個体に投与する工程であって、それにより血管新生性障害が処置される、工程、を包含する。
【0053】
この局面および本明細書に記載されるその他のすべての局面の一つの態様において、血管新生性障害は、腫瘍関連疾患の存在である。この局面および本明細書に記載されるその他のすべての局面の別の態様において、血管新生性障害は、前血管新生性腫瘍(pre-angiogenic tumor)を含む。
【0054】
この局面および本明細書に記載されるその他のすべての局面の別の態様において、参照は、個体集団から得られた生物学的サンプルから得られる。この局面の一つの態様において、該集団の各個体は、血管新生性障害を有さない。
【0055】
この局面および本明細書に記載されるその他のすべての局面の別の態様において、参照は、より早い時点の個体から得られた単離された血小板から得られる。
【0056】
この局面および本明細書に記載されるその他のすべての局面の別の態様において、アクチン重合誘導条件は、高濃度の塩を含む。
【0057】
また、個体の血管新生状態の変化を評価する方法も本明細書に記載され、該方法は、(a)個体から得られた単離された血小板のサンプルを、サンプル中のアクチンが実質的に単量体となるアクチン脱重合誘導条件下に置く工程;(b)サンプルを、アクチン単量体に選択的に結合する薬剤と接触させ、かつ薬剤とアクチン単量体の間の複合体の形成を検出する工程であって、それによってサンプル中のアクチンレベルを測定する、工程;(c)サンプル中の血管新生レギュレーターレベルを測定する工程;(d)サンプル中の血管新生レギュレーターレベルをサンプル中のアクチン単量体レベルに基づき正規化する工程、(e)サンプル中の血管新生レギュレーターの正規化レベルを参照と比較する工程であって、血管新生レギュレーターの正規化レベルと参照との差が、個体の血管新生状態の変化を示す、工程、を包含する。
【0058】
この局面および本明細書に記載されるその他のすべての局面の一つの態様において、アクチン脱重合誘導条件は、低濃度の塩を含む。
【0059】
また、個体の血管新生性障害を処置する方法も本明細書に記載され、該方法は、(a)個体から得られた単離された血小板のサンプルを、サンプル中のアクチンが実質的に単量体となるアクチン脱重合誘導条件下に置く工程;(b)サンプルを、アクチン単量体に選択的に結合する薬剤と接触させ、かつ薬剤とアクチン単量体の間の複合体の形成を検出する工程であって、それによってサンプル中のアクチンレベルを測定する、工程;(c)サンプル中の血管新生レギュレーターレベルを測定する工程;(d)サンプル中の血管新生レギュレーターレベルをサンプル中のアクチン単量体レベルに基づき正規化する工程、(e)サンプル中の血管新生レギュレーターの正規化レベルを参照と比較する工程であって、血管新生レギュレーターの正規化レベルと参照との差が決定され、それにより血管新生性障害の存在が示される、工程;(f)血管新生モジュレーターを個体に投与する工程であって、それにより血管新生性障害が処置される、工程、を包含する。
【0060】
この局面および本明細書に記載されるその他のすべての局面の一つの態様において、アクチン脱重合誘導条件は、低濃度の塩を含む。
【0061】
定義
本明細書で使用される場合、「アクチン重合誘導条件」というフレーズは、血小板サンプル中のアクチンが実質的に重合する条件または条件セット(例えば、温度、pH、イオン強度、緩衝剤の存在等)を表す。アクチン重合促進条件には、例えば、加熱、高イオン強度が含まれる。逆に、「脱重合誘導条件」というフレーズは、血小板サンプル中のアクチンが実質的に単量体形態となる条件または条件セットを表す。そのような条件には、例えば、低イオン強度、低温またはアクチン結合タンパク質もしくは毒素の存在が含まれる。
【0062】
本明細書で使用される場合、「実質的に重合する」という用語は、サンプル中に存在するアクチンの少なくとも75%が重合体形態で存在する条件を表し;好ましくはサンプル中に存在するアクチンの少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも99%さらには100%(すなわち、全アクチンが重合する)が重合体形態となる条件を表す。
【0063】
本明細書で使用される場合、「実質的に単量体となる」という用語は、サンプル中に存在するアクチンの少なくとも75%が単量体形態で存在する条件を表し;好ましくはサンプル中に存在するアクチンの少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも99%さらには100%(すなわち、全アクチンが脱重合する)が単量体形態となる条件を表す。
【0064】
本明細書で使用される場合、「薬剤」という用語は、サンプル中の正規化タンパク質(例えば、アクチン)のレベルまたは発現レベルの検出および/または定量を可能にするタンパク質結合剤を表す。そのような薬剤には、抗体、組み換え抗体、キメラ抗体、トリボディ(tribody)、ミディボディ(midibody)、タンパク質結合剤、低分子、組み換えタンパク質、ペプチド、アプタマー、アビマー(avimer)およびそれらのタンパク質結合誘導体またはフラグメントが含まれるがこれらに限定されない。
【0065】
本明細書で使用される場合、「選択的に結合する」という用語は、薬剤が、重合体形態のアクチンとの結合および/または複合体形成に関して、薬剤と単量体形態のアクチンの複合体の量が、形成される複合体全体の30%未満、好ましくは20%未満、10%未満、5%未満、2%未満、1%未満さらにはゼロ結合(すなわち、アクチン単量体に対する検出可能な結合が存在しない)となる程度に選択的であることを意味する。同様に、単量体形態のアクチンに「選択的に結合する」薬剤は、形成される複合体全体の30%未満の比率で、アクチン重合体と複合体を形成し;好ましくは20%未満、10%未満、5%未満、2%未満、1%未満さらにはゼロ結合(すなわち、アクチン重合体に対する検出可能な結合が存在しない)である。当業者は、例えば特にELISAおよびウェスタンブロットを含む標準的な免疫アッセイを使用することで、薬剤の選択性を容易に決定することができる。
【0066】
本明細書で使用される場合、「サンプリング因子」という用語は、サンプルとサンプルが採取された調製物の既知の定量的関係を表す。例えば、希釈系列において使用される希釈因子は、サンプリング因子の一つの非限定的な例である。サンプリング因子の別の非限定的な例は、既知数のアリコートを有するサンプル系列、例えば、1μlの調製物の第1サンプル、2μlの調製物の第2サンプル、3μlの調製物の第3サンプル等、を調製するための所定容積のアリコートの反復単位である。これらの手法のいずれかにより用意されたサンプル系は、予測可能な量の所定タンパク質を有し、予測は、初期サンプルにおけるタンパク質の測定およびサンプリング因子に基づく。
【0067】
本明細書で使用される場合、「正規化レベルの差」というフレーズは、バイオマーカー、例えば血管新生レギュレーターのレベルが参照値と比較して少なくとも10%増減することを表す。一つの態様において、血管新生レギュレーターレベルの増大は、参照レベルよりも少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも1倍、少なくとも10倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍またはそれ以上高いことが好ましい。別の態様において、バイオマーカーレベル、例えば血管新生レギュレーターレベルの減少は、参照レベルと比較して少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%さらには100%(すなわち非存在)であることが好ましい。他の態様において、「正規化レベルの差」は、参照レベルとの比較におけるバイオマーカーレベル、例えば血管新生レギュレーターレベルの統計的に有意な変化(増減のいずれか)を表す。
【0068】
本明細書で使用される場合、「バイオマーカー」という用語は、個体において内因的に発現され、かつ血小板中に見出されるまたは隔離されるポリペプチドを表す。一つの態様において、バイオマーカーは、「血管新生レギュレーター」である。「血管新生レギュレーター」という用語は、本明細書を通して、本明細書に記載される方法において有用なバイオマーカーのタイプの例として使用される。同様に、血管新生疾患または障害は、本明細書で使用される「バイオマーカー」に関連する状態の一つの例にすぎない。「バイオマーカー」という用語は、本明細書で使用されている用語である「代理マーカー」または「正規化因子」を包含しない。
【0069】
本明細書で使用される場合、「バイオマーカーレベルを正規化する」または「血管新生レギュレーターレベルを正規化する」というフレーズは、サンプル中のバイオマーカー(例えば、血管新生レギュレーター)レベルを表すデータ値をサンプル中の正規化タンパク質(例えば、アクチン)レベルを表す発現データ値で割ることにより、複数のサンプル間での正規化バイオマーカー値の比較または参照に対する比較を可能にする、そのような変換を表す。
【0070】
本明細書で使用される場合、「正規化タンパク質」、「正規化因子」および「代理マーカー」という用語は、本明細書中で置換可能に使用され、これらは、異なる生物学的サンプル中の関心対象のタンパク質量の比較を可能にするよう関心対象のタンパク質量を正規化するためのタンパク質を表す。正規化タンパク質は、概ね、構成的に発現され、かつ、サンプルにより分析する少なくとも2つの生理学的状態または状況の間で、例えばある疾患状態と非疾患状態の間で示差的に調節されないものである。したがって、例えば、正規化タンパク質は、通常の健常集団において見出される範囲外まで(例えば、<30%、<25%、<20%、<15%、好ましくは<10%、<7%、<5%、<4%、<3%、<2%、<1%またはそれ未満)または、例えば、血管新生疾患の存在下と非存在下で、実質的に変化しない。一つの態様において、正規化タンパク質は、サンプル希釈系列の予測される関係(例えば、線形回帰による予測)に対する同希釈系列で測定される同タンパク質の相関度(例えば、複製物間の最小量の分散または最小の標準偏差)に基づき選択される。この態様において、正規化タンパク質は、希釈系列における評価において、予測されるタンパク質レベルと測定されるタンパク質レベルの間の相関度が最も近い(例えば、同一の測定に供されたタンパク質サンプル中の別のタンパク質と比較して)ものが選択される。「相関度が最も近い」という用語は、希釈系列における予測される関係に対する同希釈系列におけるタンパク質測定(例えば、反復測定)の標準偏差が、2未満であることを表すと言うことができ;好ましくは標準偏差は、1.5未満、1未満、0.5未満、0.1未満、0.01未満、0.001未満またはそれ以下であり、標準偏差ゼロ(例えば、測定値と予測値が同一)を含む。あるいは、「相関度が最も近い」は、当業者に公知の信頼区間(例えば、90% CI、95% CI、99% CI等)を用いて評価することができる。
【0071】
本明細書で使用される場合、「ハウスキーピング遺伝子」という用語は、構成的に発現されかつ生命維持(basic maintenance)および必須の細胞機能に必要とされるタンパク質をコードする遺伝子を表す。ハウスキーピング遺伝子は、概ね、細胞または組織依存的な様式では発現されず、ほとんど場合特定の生物中の全細胞により発現される。ハウスキーピングタンパク質のいくつかの例には、特に、例えば、アクチン、チューブリン、GAPDHが含まれる。一つの態様において、ハウスキーピング遺伝子は、正規化タンパク質または血小板数、血小板濃度もしくは血小板容積の代理マーカーとして使用される。
【0072】
本明細書で使用される場合、「高濃度の塩」というフレーズは、少なくとも50 mMの塩(例えば、50 mM NaClまたは50 mM KCl)を含む溶液を表す。
【0073】
本明細書で使用される場合、「低濃度の塩」というフレーズは、40 mM未満の塩;好ましくは30 mM未満、20 mM未満、10 mM未満、1 mM未満、100μM未満、10μM未満、1μM未満さらには0 mM(すなわち、塩なし)を含む溶液を表す。
【0074】
本明細書で使用される場合、「血管新生モジュレーター」という用語は、その血管新生モジュレーターで処置した個体の血管新生を、未処置の個体の血管新生レベルと比較して少なくとも10%変化させる薬剤を表す。血管新生モジュレーターは、血管新生インヒビターまたは血管新生アクチベーターであり得る。この文脈で、血管新生レギュレーターは、最低限、当技術分野で公知の角膜マイクロポケットアッセイにおいて血管新生に対する効果を有するものであろう。一つの態様において、血管新生は、血管新生モジュレーターで処置した個体において、未処置の個体と比較して少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%さらには100%(すなわち、非存在)阻害される。他の態様において、血管新生は、血管新生モジュレーターで処置した個体において、未処置の個体における血管新生レベルと比較して少なくとも10%増大し、好ましくは、血管新生は、血管新生アクチベーターで処置した個体において、未処置の個体と比較して少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍、少なくとも10000倍またはそれ以上増大する。
【0075】
本明細書で使用される場合、「読み出し情報」という用語は、薬剤の正規化タンパク質(例えばアクチン重合体)に対する結合または正規化タンパク質との複合体形成を示すシグナルから得られたデータを表し;シグナルは、例えば、薬剤の正規化タンパク質に対する結合を示す光、蛍光、呈色またはその他の検出可能シグナルを含み得る。
【0076】
本明細書で使用される場合、「少なくとも一つの血管新生レギュレーターに結合する薬剤」という用語は、血管新生レギュレーターのレベルまたは発現レベルの検出および/または定量を可能にするタンパク質結合剤を表す。そのような薬剤には、抗体、組み換え抗体、キメラ抗体、トリボディ、ミディボディ、タンパク質結合剤、低分子、組み換えタンパク質、ペプチド、アプタマー、アビマーおよびそれらのタンパク質結合誘導体またはフラグメントが含まれるがこれらに限定されない。
【0077】
本明細書で使用される場合、「含む」、「包含する」という用語は、本発明に必須の組成物、方法およびそれらの各要素が、特定されていない要素の追加に対して、それが必須であるかそうでないかに関わらず、開放的であることを表すのに使用される。
【0078】
本明細書で使用される場合、「本質的に〜からなる」という用語は、その態様に必要とされる要素を表す。この用語は、その発明の態様の基本的かつ新規または機能的な特徴に実質的に影響しない要素の存在を許容する。
【0079】
「からなる」という用語は、本明細書に記載の組成物、方法およびそれらの各要素が、その態様に関する記述の中で言及されていないあらゆる要素に対して排他的であることを表す。
【0080】
この明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形("a"、"an"および"the")は、文脈がそうでないことを明確に示していない限り、複数の参照を包含する。したがって、例えば、「方法」に対する参照は、本明細書中に記載されているおよび/またはこの開示に接した当業者に明らかとなる等の類型の一つもしくはそれ以上の方法および/または工程を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1Aおよび1Bは、血小板数に対するアクチンの相関性を示すグラフ集である。
【図2】図2は、血小板レベルが異なるサンプル中の非正規化PDGFレベルを示すグラフである。
【図3】図3は、血小板レベルが異なるサンプル中の正規化PDGFレベルを示すグラフである。
【図4】図4は、血小板容積(μL)に対するアクチンタンパク質(μg)の相関性を示すグラフである。
【図5】図5は、アクチン(A)、チューブリン(B)および総タンパク質(C)に対する血小板数の相関の結果を示すグラフ集である。
【図6】図6は、例示の正規化タンパク質としてアクチンを使用して個体のバイオマーカーレベルを評価するためのシステムを示すブロック図である。
【図7】図7は、正規化タンパク質としてアクチンを使用して個体のバイオマーカーレベルを評価するためのコンピューター読み取り可能なメディア上の例示的な指令を示すブロック図であり、これは、例えば、血管新生状態の評価に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0082】
詳細な説明
本明細書には、血小板中の任意のバイオマーカーを正規化するのに有用な方法が記載されている。これは、バイオマーカーレベルの解明または比較、例えば、関心対象のバイオマーカーに関連する診断または予後予測方法におけるバイオマーカーレベルの解明または比較が望まれるあらゆる方法に適用される。このようなアプローチを用いることで、個体の疾患状態(例えば、血管新生状態)の評価を、正規化されていない発現値よりも小さい誤差で実現することができる。さらに、本明細書に記載される正規化タンパク質に基づくバイオマーカー(例えば、血管新生レギュレーター)の発現またはレベルの正規化は、血小板サンプル中の総タンパク質レベルに基づく正規化よりも、疾患状態(例えば、血管新生状態)の予測性が高い。本明細書に記載される方法はさらに、サンプル中、例えば血小板サンプル中のバイオマーカー、例えば血管新生レギュレーターを正規化するために正規化タンパク質を選択する方法に関する。疾患状態下で血小板に捕捉されるまたは堆積する血管新生調節タンパク質の測定のための正規化の非限定的な例が、本明細書に提供されている。
【0083】
バイオマーカー
本明細書に記載される方法は、生物学的サンプル中、例えば血小板調製物中に存在する任意のバイオマーカーの量を正規化するのに有用である。一つの態様において、生物学的サンプルは、アクチンを含有する細胞成分を含む。一つの態様において、バイオマーカーは、血管新生レギュレーターである。本明細書は、血管新生レギュレーターに着目して本方法を記述しているが、同法は、生物学的サンプル中、例えば血小板サンプル中に存在する任意のバイオマーカーに対して適用可能である。
【0084】
血管新生レギュレーターの非限定的な例は、米国特許出願第20060134605号および同第20060204951号に記載されており、これらはそのような血管新生レギュレーターを詳述する他の公開文献の例であり、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0085】
正規化タンパク質または正規化因子
本質的には、そのタンパク質が構成的に発現されかつ疾患状態(例えば、血管新生疾患状態)または関心対象の疾患状態において示差的に発現されない限り、任意のタンパク質を正規化タンパク質として使用することができる。当業者は、あるタンパク質が正規化タンパク質として使用できるかどうかを、一の個体から異なる時点で採取したサンプル中のタンパク質発現レベルまたは疾患(例えば、癌)集団および対照集団から採取した複数のサンプル間のタンパク質発現レベルを比較することによって容易に決定することができる。適当な正規化タンパク質は、時点間または疾患集団間で大きく変動しない(例えば、30%未満)ものであろう。
【0086】
一つの態様において、正規化タンパク質は、血小板サンプル希釈系列において評価される、その正規化タンパク質測定に関して決定された相関度に基づき選択される。この態様において、既知の血小板数を有する血小板サンプルは、希釈またはサンプリング因子を用いてサンプル系列(例えば、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)に希釈される。希釈系列は、例えば、線形、指数関数または対数的関係を示し得る。各希釈血小板サンプルにおいて候補正規化タンパク質または複数(例えば、少なくとも2つ)の候補タンパク質が測定され、各サンプル中の各候補タンパク質量が記録される。データは、例えば、各血小板カウントで測定されたタンパク質量を示すグラフにプロットされ、および/またはコンピューターに保存される。希釈系列が線形的関係を示す態様においては、線形回帰分析が行われる。各血小板希釈物において測定されたタンパク質量は、希釈因子に基づく予測量と比較され、各タンパク質の相関度が決定される。非線形系列では、サンプリングまたは希釈因子に基づき適当な予測曲線が決定され、データが予測曲線と比較される。一つの態様において、同じ様に分散について分析された複数の他のタンパク質と比較して分散が小さい、好ましくは分散が最も小さい正規化タンパク質が、本明細書に記載される方法において使用するために選択される。別の態様において、同じ様に分析された複数の他のタンパク質と比較して予測レベルと測定レベルの間の相関が近い、好ましくは相関が最も近い正規化タンパク質が、本明細書に記載される方法において使用するために選択される。
【0087】
潜在的に有用な正規化タンパク質のいくつかの例には、ハウスキーピング遺伝子(例えば、アクチン、チューブリン等)が含まれる。ミオシンの血小板イソ型であるミオシンIIAは、正規化に使用する別の候補である。細胞表面アクチン関連タンパク質であるスペクトリンおよび他の細胞骨格関連タンパク質もまた、本明細書に記載される方法における使用が想定されている。血小板出芽に作用するタンパク質は、本明細書に記載される方法における使用のための別カテゴリーの正規化候補物質である。血小板出芽に作用するタンパク質は、巨核球からの血小板形成に関与するタンパク質を表す。血小板出芽に関与する例示的なタンパク質には、血小板由来成長因子(PDGF)が含まれるがこれに限定されない。F-アクチン(本明細書では「アクチン重合体」とも称される)は、使用する抗体と干渉するおよび/または他の干渉源の影響を受ける競合結合因子を有するいくつかの他のタンパク質よりも、測定に適している。本質的には、本明細書に記載される正規化手順において血小板数を反映する任意のタンパク質が使用され得る。一つの態様において、正規化タンパク質は、アクチンである。
【0088】
P-セレクチンは、正規化に使用することができない。これは血小板における小胞のマーカーであるが、血小板活性化の際に上方制御され、かつ実質的に細胞表面に存在しない。チューブリンおよび総タンパク質の測定は、正規化の潜在的標的として検討されていた。しかし、驚くべきことに、直接的測定においては、アクチンが優れた相関性を有することが見出された。
【0089】
タンパク質に加えて、他の因子、例えば核酸種が、バイオマーカーを正規化するのに使用することができる。血小板は核を有さないが、様々なRNA種を保持している。本明細書に記載される方法はまた、正規化における使用のためのそのような核酸のレベルの検出を想定している。同様の考慮が、正規化における使用のための炭水化物ベースの因子のレベルの検出に対してもなされる。
【0090】
正規化タンパク質レベルを決定した後に発現レベルデータを正規化する方法および計算は、当業者に公知であり、かつ/または本明細書の実施例に記載されている。
【0091】
アクチン重合/脱重合の誘導
一つの態様において、本明細書に記載される方法において使用される正規化タンパク質は、アクチンを含む。アクチンまたはその他の正規化タンパク質は、血小板中に存在する必要があるであろう。
【0092】
一つの態様において、タンパク質または血小板サンプルは、アクチン重合誘導条件下に置かれる。そのような条件には、高イオン強度/高塩濃度、加熱等が含まれるがこれらに限定されない。当業者は、条件のセット(例えば、pH、温度、塩濃度等)がアクチン重合を誘導するかどうかを、アクチン重合体に優先的に結合するアクチンタンパク質結合剤とサンプルを接触させ、結合を測定する、例えば本明細書の実施例の節に記載されるアクチンELISAを用いて測定することによって容易に決定することができる。
【0093】
アクチンは、サンプル中に存在するアクチンの少なくとも75%が重合体形態で存在する場合、「実質的に重合」しているとみなされ;好ましくは、サンプル中に存在するアクチンの少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも99%さらには100%(すなわち、全アクチンが重合する)が重合体形態で存在する。
【0094】
本発明では、非重合体形態のアクチン(すなわち、単量体形態のアクチン)に基づく正規化を、アクチン単量体に選択的に結合する薬剤を測定に用いることで実施できることも想定されている。このシナリオの下で、アクチンは、試験前に、単量体形態への脱重合に有利な条件下に置かれるであろう。この態様において、タンパク質または血小板サンプルは、アクチン脱重合誘導条件(例えば、低塩溶液)下に置かれる。たいていのアクチン抗体は重合体形態に選択的であり、単量体形態のアクチンを検出するためには、アクチン単量体に対するモノクローナル抗体を惹起する必要がある。学説による束縛を望まないが、これは、注射および生理学的塩条件(すなわち、高塩)との接触によりアクチンポリマーが形成され、そのためアクチン重合体に対する抗体が惹起されることによると考えられる。アクチン単量体に対する抗体の惹起は、例えば、重合反応に対して化学的に保護されているアクチン単量体でマウスを免疫処理することによって達成され得る。モノクローナル抗体は、従来方法および、例えば、低塩溶液中でのアクチン単量体によるスクリーニングにより生成され得る。
【0095】
アクチンは、サンプル中に存在するアクチンの少なくとも75%が単量体形態で存在する場合、「実質的に単量体」であるとみなされ;好ましくは、サンプル中に存在するアクチンの少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも99%さらには100%(すなわち、全アクチンが脱重合する)が単量体形態である。
【0096】
血管新生関連障害
本明細書に記載される方法は、一つの例として、血管新生疾患または障害の早期検出、診断および治療的処置におけるばらつきを減らし、精度を改善するのに有用である。
【0097】
血管新生が重要となる疾患または障害は様々存在する。これらの疾患は、本明細書中で、血管新生疾患または血管新生関連疾患と称される。本明細書で使用される場合、「血管新生疾患または障害」という用語は、異常なまたは望ましくない、例えば、刺激または抑制された、血管の形成により特徴付けられる(により引き起こされる)状態を表す。異常なまたは望ましくない血管新生は、特定の疾患の直接の原因となるかまたは既存の病理学的状態を悪化させるかのいずれかであり得る。血管新生疾患の例には、眼障害、例えば糖尿病性網膜症、黄斑変性、新生血管緑内障、未熟児網膜症、角膜移植拒絶反応、水晶体後方線維増殖症、ルベオーシス、インターベンションに起因する網膜新生血管形成、眼腫瘍およびトラコーマ、ならびにその他の眼の異常な新生血管形成状態、例えば、新生血管形成により失明を引き起こし得る角膜新生血管形成が含まれる。
【0098】
血小板因子の差の測定により検出することができるその他の血管新生疾患または障害には、新生物疾患、例えば膀胱、脳、乳房、頸部、結腸、直腸、腎臓、肺、卵巣、膵臓、前立腺、胃および子宮を含む腫瘍、腫瘍転移、良性腫瘍、例えば血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマおよび発熱性肉芽腫、肥大、例えば心臓肥大、炎症障害、例えば免疫性および非免疫性炎症、慢性関節リウマチおよび乾癬、不適当または不適期の血管浸潤に関連する障害、例えば再狭窄、アテローム斑における毛細管増殖、ならびに骨粗しょう症が含まれるがこれらに限定されない。
【0099】
血管新生は、固形腫瘍および血液感染性腫瘍を含む多くの異なるタイプの癌に関連する。血管新生と関連する固形腫瘍には、特に、前立腺、肺、乳房、脳、卵巣、胃、膵臓、喉頭、食道、精巣、肝臓、耳下線、胆管、結腸、直腸、頸部、子宮、子宮内膜、腎臓、膀胱および甲状腺の癌;ならびに横紋筋肉腫、網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、神経芽細胞腫および骨肉腫が含まれるがこれらに限定されない。血管新生が重要となる腫瘍には、良性腫瘍、例えば、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマおよび発熱性肉芽腫、が含まれる。血管新生の防止は、これらの腫瘍の成長および腫瘍の存在に起因して生じる動物への被害を止める。血管新生はまた、血液感染性腫瘍、例えば、白血球の無制限増殖を引き起し、通常は貧血、血液凝固能低下ならびにリンパ節、肝臓および脾臓の拡大を伴う、骨髄の様々な急性または慢性の新生物疾患のいずれかの白血病、とも関連する。血管新生は、リンパ腫、骨髄異形成症候群および多発性骨髄腫を引き起こす骨髄およびリンパ節の異常において役割を果たしていると考えられている。
【0100】
血管新生の刺激は、血管の閉塞または狭窄があった副行循環に関係する障害に対して有益であり得る(例えば、動脈、静脈または毛細血管系の閉塞を迂回する「バイパス」を形成する)。そのような状態または疾患の具体例には、冠動脈閉塞疾患、頸動脈閉塞疾患、動脈閉塞疾患、末梢動脈疾患、アテローム性動脈硬化、筋内膜過形成(例えば、血管手術またはバルーン血管形成または血管ステントに起因するもの)、血栓血管炎、血栓障害、血管炎等が含まれるが必ずしもこれらに限定されない。
【0101】
本明細書に記載される方法により検出および/または処置もしくは予防することができるその他の状態または疾患には、心臓発作(心筋梗塞)または血流低下に関連するその他の血管死、発作、死もしくは四肢喪失等が含まれるが必ずしもこれらに限定されない。さらに、本明細書に記載される方法は、創傷または潰瘍の治癒を促進するために;移植皮膚または再付着四肢における血管形成を改善しそれらの機能および生存性を保持するために;外科的吻合部の(例えば、胃腸管手術後の腸の再接続部分における)治癒を改善するために;および皮膚または毛の成長を改善するために、使用することができる。
【0102】
血管新生モジュレーター
記載されている正規化方法を適用できる治療アプローチの例としての、本明細書に記載される血管新生疾患の処置方法では、本質的に、血管新生を調節する任意の薬剤を使用することができる。薬剤は特に、低分子、抗体、受容体、タンパク質、ペプチド、核酸、例えば、アプタマーもしくはsiRNA、または内因性分子であり得る。本明細書に記載の方法を用いて試験および正規化される血管新生レギュレーターと、疾患の処置のために投与され得る血管新生モジュレーターの間には、明らかな重複がある。しかし、分かりやすくするために、「血管新生レギュレーター」は、個体において内因的に発現されかつ血小板中に見出されるまたは隔離されるポリペプチドとする。「血管新生モジュレーター」は、体外から投与することで、血管新生に対する正または負の効果を生じる薬剤である。
【0103】
血管新生モジュレーターのいくつかの非限定的な例には、特に、例えば、VEGFインヒビター、例えば、VEGFに対する抗体(例えば、抗VEGF)またはそれらの抗原性エピトープ、ならびに可溶性VEGF受容体、例えばFlt-1、Flk-1/KDR、Flt-4、ニューロピリン-1および-2;VEGF受容体インヒビターまたはそのような受容体に対する抗体、例えば、DC101[ImClone Systems, Inc., NY];チロシンキナーゼインヒビター;プロラクチン;アンギオスタチン;エンドスタチン;ソマトスタチン;プロタミン;インターロイキン-12;トロポニン-1;血小板因子4;トロンボスポンジン-1;インターフェロンアルファ;塩基性線維芽細胞由来成長因子(bFGF)インヒビター、例えば、可溶性bFGF受容体;トランスフォーミング成長因子ベータ;上皮由来成長因子インヒビター;血小板由来成長因子インヒビター;インテグリンブロッカー;メタロプロテアーゼの組織インヒビター、例えばTIMP1およびTIMP2;インターフェロン誘導タンパク質10ならびにインターフェロン誘導タンパク質10のフラグメントおよびアナログ;網膜色素上皮細胞由来ペプチド;ヘパリン八糖;メチオニンアミノペプチダーゼインヒビター;ならびに組織因子経路インヒビター;バソスタチン;カルレチキュリン;IFN-α、-βおよび-γ;CXCL10;IL-4、-12および-18;オステオポンチン;レスチン(restin);ベバシズマブ;カルボキシアミドトリアゾール;TMP-470;スラミン;SU5416;VEGF121;VEGFgs;VEGF65;VEGF89;bFGF;PDGF;アンギオポイエチン;FGF-1;Ang-1;エフリン;プラスミノゲンアクチベーター、マトリクスメタロプロテイナーゼ;Dll-4;ならびにサリドマイドが含まれる。
【0104】
血管新生アッセイ
血管新生モジュレーターは、血管新生アッセイを使用して効果について試験され得る。血管新生に対するその薬剤の影響を評価する際、当業者は、疑念を避けるために、任意の多くのインビトロまたはインビボ血管新生アッセイを使用することができる。組成物または処方物が血管新生性障害に関連する疾患を処置または予防することができるかどうかは、マウスモデルにおけるその効果により決定され得る。しかし、本明細書に記載される血管新生モジュレーターは、最低限、HUVEC細胞遊走アッセイにおいて抗血管新生活性を有するものであろう。本明細書に開示される組成物および処方物が抗血管新生活性を有するかどうかを決定するための別の有用なアッセイは、CAMアッセイであり、これは、比較的簡単でありかつ比較的迅速に結果を提供することから、血管新生調節因子の効果を評価するのに使用されることが多い。本明細書に記載される方法および組成物において有用な血管新生調節因子は、Iruela-Arispe et al., 1999, Circulation 100: 1423-1431により記載される改良版CAMアッセイにおいて微小血管数を変化させるであろう。この方法は、CAM上に配置されたコラーゲンゲルペレットへの新しい毛細血管の垂直方向の成長に基づく。Iruela-Arispe et al.により記載されるアッセイにおいて、コラーゲンゲルには、試験薬剤の存在下または非存在下で、血管新生因子、例えばFGF-2(50 ng/ゲル)またはVEGF(250 ng/ゲル)が補充される。血管新生反応の程度は、FITC-デキストラン(50μg/mL)(Sigma)をCAMの循環に注射することによって測定される。蛍光強度の程度は毛細血管密度のばらつきに対応し;この相関性の直線性は、5〜540の間の毛細血管範囲で観察され得る。形態的分析は、例えば、CCDカメラによる画像撮影により実施される。その後画像は分析され、分析パッケージ、例えばNHImage 1.59に読み込まれ、蛍光強度測定値がポジティブピクセルとして取得される。各データ点は、同じCAMに存在する独自の陽性および陰性対照と比較され、陽性対照を100%(VEGFまたはFGF-2のみ)とし、陰性対照(媒体のみ)を0%とする阻害のパーセンテージとして解釈される。グループがランダムと有意に異なるかどうかを検査するために、例えば、イエーツ補正を行う偶然性の分析により、データの統計的評価が実施される。
【0105】
さらなる血管新生アッセイも当技術分野で公知であり、本明細書に記載される方法において使用するための血管新生モジュレーターを試験するのに使用することができる。これらの方法には、例えば、角膜マイクロポケットアッセイ、ハムスター頬袋アッセイ、マトリゲルアッセイおよびそれらの改良法、ならびに共培養アッセイが含まれる。
【0106】
Donovan et al.は、血管新生レギュレーターをヒトバックグラウンドで評価するために開発された3つの異なるインビトロアッセイの比較について記載している(参照により本明細書に組み入れられるDonovan et al., 2001, Angiogenesis 4: 113-121)。簡潔に言うと、試験されたアッセイには、1)血管新生レギュレーターを含むまたは含まないマトリゲル(Becton Dickinson, Cedex, France)をコートしたウェル上に低継代数のヒト内皮細胞(ヒト臍帯静脈内皮細胞、HUVEC)をプレートする基本マトリゲルアッセイ;2)「成長因子減」またはGFRマトリゲルを用いる類似のマトリゲルアッセイ;ならびに3)初代ヒト線維芽細胞およびHUVECを、追加の血管新生レギュレーターと共にまたはそれなしで共培養し、HUVECの分化および細管形成を補助する細胞外マトリクスおよびその他の因子を線維芽細胞から供給させる共培養アッセイ、が含まれる。Donovan et al.の文献においては、共培養アッセイが、インビボの微小血管網と最も類似する微小血管網を提供した。しかし、当業者は、基本マトリゲルアッセイおよびGFRマトリゲルアッセイも、その血管新生モジュレーターが本明細書に記載される方法において必要とされる血管新生阻害剤であるかどうかを評価するのに使用することができる。
【0107】
最後に、インビトロ血管新生アッセイキットは、Chemicon(Millipore)から販売されている。フィブリンゲルインビトロ血管新生アッセイキットはChemiconカタログ番号ECM630である。他の血管新生アッセイは、国際出願第WO2003/086178号および米国特許出願第US2005/0203013号および同第US2005/0112063号に開示されており、これは、透過性基材(例えば、「トランスウェル」のコラーゲンコートインサート)上で内皮細胞をアッセイし、アッセイ物を試験化合物(例えば、フマギロール誘導体ブロックコポリマーコンジュゲート)と接触させ、マーカー(例えば、FITCラベル)および透過誘導剤(例えば、特に、血管内皮成長因子(VEGF)および血小板活性化因子(PAP))を用いてアッセイ物を処理し、そしてマーカーの拡散率を測定し対照と比較することによるものである。
【0108】
用量および投与
一つの局面において、本明細書に記載される方法は、対象における血管新生関連疾患を処置する方法を提供する。一つの態様において、対象は、哺乳動物であり得る。このアプローチはすべての哺乳動物に対して有効であるが、別の態様において、哺乳動物は、ヒトであり得る。本法は、薬学的に許容できる担体中に血管新生モジュレーターを含む有効量の薬学的組成物を対象に投与する工程を包含する。
【0109】
薬剤の用量範囲はその効能に依存し、望ましい効果、例えば腫瘍部位またはその他の部位における新生血管形成の減少、を生じさせるのに十分大きな量を含む。用量は、許容できない副作用を引き起こすほど多量にすべきでない。一般に、用量は、使用する血管新生モジュレーターのタイプ(例えば、抗体またはフラグメント、低分子、siRNA等)および患者の年齢、状態および性別により変化するであろう。用量は、当業者が決定することができ、かつ、合併症がある場合は、個々の担当医が調整することもできる。典型的には、用量は、0.001 mg/kg体重〜5 g/kg体重の範囲である。いくつかの態様において、用量範囲は、0.001 mg/kg体重〜1 g/kg体重、0.001 mg/kg体重〜0.5 g/kg体重、0.001 mg/kg体重〜0.1 g/kg体重、0.001 mg/kg体重〜50 mg/kg体重、0.001 mg/kg体重〜25 mg/kg体重、0.001 mg/kg体重〜10 mg/kg体重、0.001 mg/kg体重〜5 mg/kg体重、0.001 mg/kg体重〜1 mg/kg体重、0.001 mg/kg体重〜0.1 mg/kg体重、0.001 mg/kg体重〜0.005 mg/kg体重である。あるいは、いくつかの態様において、用量範囲は、0.1 g/kg体重〜5 g/kg体重、0.5 g/kg体重〜5 g/kg体重、1 g/kg体重〜5 g/kg体重、1.5 g/kg体重〜5 g/kg体重、2 g/kg体重〜5 g/kg体重、2.5 g/kg体重〜5 g/kg体重、3 g/kg体重〜5 g/kg体重、3.5 g/kg体重〜5 g/kg体重、4 g/kg体重〜5 g/kg体重、4.5 g/kg体重〜5 g/kg体重、4.8 g/kg体重〜5 g/kg体重である。一つの態様において、用量範囲は、5μg/kg体重〜30μg/kg体重である。あるいは、用量範囲は、5μg/mL〜30μg/mLの間の血清レベルを維持するよう滴定される。
【0110】
上記の用量の投与は、一定期間繰り返すことができる。いくつかの態様において、用量は、一日一回、または一日複数回、例えば、これに限定されるわけではないが一日三回、与えられる。好ましい態様において、上記の用量は、数週間または数ヶ月間、毎日投与される。処置期間は、対象の臨床的進展および治療に対する反応に依存する。継続的な、比較的少量のメンテナンス用量が、最初の多量の治療用量の後に想定される。
【0111】
治療有効量は、新血管の形成、血管数等における統計的に有意で測定可能な変化をもたらすのに十分な薬剤の量である(以下の「効果の測定」を参照のこと)。このような有効量は、その血管新生モジュレーターに関する臨床試験および動物研究において判断され得る。
【0112】
本明細書に記載される方法および組成物において有用な薬剤は、局所的に、静脈内に(ボーラスまたは連続注入により)、経口的に、吸入により、腹腔内に、筋内に、皮下に、腔内に投与され得、かつ、望まれる場合は、蠕動的手段により、または当業者に公知の他の手段により送達され得る。腫瘍の処置においては、薬剤は、全身的に投与され得るか、あるいは、腫瘍に直接的に、例えば、腫瘍内注射によりまたは腫瘍への主たる血液供給元への注射により投与され得る。
【0113】
少なくとも一つの薬剤を含有する治療用組成物は、従来通り単位用量で投与され得る。治療用組成物を参照して使用される場合、「単位用量」という用語は、対象への単回の投与に適した物理的に独立した単位を表し、各単位は、所望の治療効果を生ずるよう計算された既定量の活性物質を、必要とされる生理学的に許容できる希釈剤、すなわち担体または媒体と共に含有する。
【0114】
組成物は、その投薬用処方物に適合する様式で、かつ治療有効量で、投与される。投与される量およびタイミングは、処置される対象、活性成分を利用する対象の系の能力および望まれる治療効果の程度に依存する。薬剤は、標的化部分、例えば抗体または標的化リポソーム技術により標的化することができる。いくつかの態様において、血管新生モジュレーターは、例えば、抗リガンド抗体(Ab)と特異的標的に対するAbの化学的連結により生成される二特異性抗体を用いることにより、組織特異的または腫瘍特異的な標的に対して標的化させることができる。化学的コンジュゲートの制約を回避するため、抗体の分子コンジュゲートを、細胞表面分子上でのリガンドおよび/またはキメラインヒビターに対する組み換え二特異性単鎖Abの生成に使用することができる。血管新生モジュレーターへの抗体の付加は、結合させた薬剤を所望の標的部位に累積的に蓄積させることを可能にする。抗体ベースまたは非抗体ベースの標的化部分が、リガンドまたはインヒビターを標的部位に送達するのに使用され得る。好ましくは、非調節性の抗原または疾患関連の抗原に対する天然の結合因子が、この目的で使用される。
【0115】
投与する必要のある活性成分の正確な量は、実施者の判断に依存し、それらは各個体に特有のものである。しかし、本明細書には全身的適用に適した用量範囲が開示されており、それは投与経路に依存するものである。適当な投与計画も様々であるが、それは初期投与とその後の注射または他の投与による一または複数の間隔をおく反復投与に代表される。あるいは、インビボ治療のために指定された範囲の血中濃度を維持するのに十分な継続的静脈内注入も想定される。
【0116】
薬剤は、超音波等の補助的技術を用いるまたは用いない直接的な機械的インターベンションを用いる送達のために、コーティングバルーン、遅延放出薬物溶出ステントもしくはその他の薬物溶出フォーマット、マイクロカプセル化PEGリポソーム、またはナノビーズを含むカテーテルベースの送達システムに適合され得る。
【0117】
いくつかの態様において、血管新生モジュレーターは、血管新生関連疾患の処置のための一つまたは複数の薬剤、例えば、化学療法剤または抗血管新生剤と組み合わされ得る。
【0118】
薬学的組成物
本明細書に記載される方法は、血管新生関連疾患を有する個体を処置するのに有用な治療用組成物を利用する。治療用組成物は、生理学的に耐容され得る担体と共に、活性成分としてその中に溶解または分散されている本明細書に記載される活性薬剤を含有する。好ましい態様において、治療用組成物は、治療目的で哺乳動物またはヒト患者に投与された場合にも免疫原性を示さない。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容できる」、「生理学的に耐容され得る」という用語およびそれらの文法上のバリエーションは、それらが組成物、担体、希釈剤および試薬を参照している場合、置換可能に使用され、その物質が、望ましくない生理学的作用、例えば、吐き気、目まい、急性胃蠕動等を生じさせずに哺乳動物に投与できることを表す。薬学的に許容できる担体は、それが望まれない限り、それと混合されている薬剤に対する免疫反応の惹起を促進しないものであろう。活性成分が溶解または分散された薬理学的組成物の調製については当技術分野で十分に理解されており、処方に基づく限定は必要ない。典型的には、そのような組成物は、液体溶液または懸濁物のいずれかとして注射可能なように調製されるが、使用前に液体で溶液または懸濁物状するのに適した固体形態のものも調製され得る。調製物はまた、乳化されるかまたはリポソーム組成物として提供され得る。活性成分は、薬学的に許容できかつ活性成分と適合性でありかつ本明細書に記載される治療方法における使用に適した量の賦形剤と混合され得る。また、送達用調製物中に活性RNAi成分を含有する薬学的組成物、または本明細書で引用されその節に組み入れられている参考文献中の薬学的組成物も想定されている。適当な賦形剤には、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等およびそれらの組み合わせが含まれる。さらに、望まれる場合、組成物は、活性成分の効果を増強する微量の補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤等を含有し得る。本明細書に記載される方法において有用な治療用組成物は、その成分の薬学的に許容できる塩を含み得る。薬学的に許容できる塩には、無機酸、例えば、塩酸もしくはリン酸、または有機酸、例えば、酢酸、酒石酸、マンデル酸等により形成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基により形成される)が含まれる。また、遊離カルボキシル基により形成される塩を、無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは第二鉄、および有機塩基、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等から得ることができる。
【0119】
生理学的に耐容され得る担体は、当技術分野で周知である。例示的な液体担体は、活性成分および水の他に物質を含有しないか、または緩衝剤、例えば生理学的pH値のリン酸ナトリウム、生理学的食塩水もしくはその両方、例えばリン酸緩衝生理食塩水を含有する無菌水性溶液である。さらに、水性担体は、一より多い緩衝塩、ならびに塩化ナトリウムおよびカリウム等の塩、デキストロース、ポリエチレングリコールおよびその他の溶質を含有し得る。液体組成物はまた、水に加えておよび水に代えて液体相を含有し得る。そのような追加の液体相の例は、グリセリン、植物油、例えば綿実油、および水油乳化物である。本明細書に記載される方法において使用される、特定の障害または状態の処置に有効であろう活性剤の量は、その障害または状態の性質に依存するであろうし、それは標準的な臨床技術により決定され得るものである。
【0120】
効果の測定
血管新生関連疾患に対するその処置の効果は、熟練の臨床医により決定され得る。しかし、処置は、この用語が本明細書で使用される場合、兆候または症状、一例にすぎないが、眼内新生血管形成疾患または腫瘍血管形成の兆候または症状の任意の一つまたはすべてが有益な方向に変化し、他の臨床的に認識されている疾患の症状またはマーカーが改善さらには好転する、例えば血管新生モジュレーターによる処置後に少なくとも10%好転する場合には、「有効な処置」とみなされる。効果はまた、入院または医療的インターベンションの必要性により評価されるような悪化が個体においてみられない(すなわち、疾患の進行が停止または少なくとも遅延する)ことにより測定され得る。これらの指標を測定する方法は、当業者に公知であり、かつ/または本明細書に記載されている。処置には、個体または動物(いくつかの非限定的な例には、ヒトまたは哺乳動物が含まれる)における疾患の任意の処置が含まれ、これには、(1)疾患の阻害、例えば、新血管の病的成長の阻止もしくは遅延;または(2)疾患の緩和、例えば、症状の後退の誘導、血管新生を伴う病理を示す組織(例えば、眼もしくは腫瘍部位)における新血管数の減少;ならびに(3)新生血管形成疾患(例えば、腫瘍)の発展可能性の予防もしくは減少、が含まれる。
【0121】
疾患の処置のための有効量は、それを必要とする哺乳動物に投与された場合に、その疾患に対する、本明細書で定義される意味での有効な処置をもたらすのに十分な量を意味する。薬剤の効果は、物理的指標、例えば癌または眼内新生血管形成疾患の物理的指標、例えば視力の問題、新血管の侵襲、血管成長率、血管新生、腫瘍成長率等、または腫瘍血管形成を評価することにより決定され得る。
【0122】
システム
本発明の態様は、また、バイオマーカー(例えば、血管新生レギュレーター)の発現値を正規化する方法を実施するためのシステム(およびコンピューターシステム構築のためのコンピューター読み取り可能なメディア)を提供する。
【0123】
本発明の態様は、コンピューター読み取り可能なメディアに記録されたコンピューター実行可能な指令により定義され、それを実行することでコンピューターに方法の工程を実施させる機能モジュールを通じて表現され得る。モジュールは、分かりやすくするために機能により分類する。しかし、モジュール/システムは、コードのディスクリートブロックに対応させる必要はなく、記載される機能は、様々なメディアに保存されている様々なコード部分の実行により実施され得、かつ様々な時点で実行され得ることが理解されるべきである。さらに、モジュールは他の機能を発揮する場合がある、したがって、モジュールは任意の特定機能または機能セットを有するものに限定されないことが理解されるべきである。
【0124】
コンピューター読み取り可能な保存メディアは、コンピューターによるアクセスが可能な任意の入手可能な有形のメディアであり得る。コンピューター読み取り可能な保存メディアには、コンピューター読み取り可能な指令、データ構造、プログラムモジュールまたはその他のデータ等の情報の保存に関する任意の方法または技術により実現される、揮発性および不揮発性、取り外し対応および取り外し非対応の有形のメディアが含まれる。コンピューター読み取り可能な保存メディアには、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリーメモリ)、EPROM(消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ)、EEPROM(電気消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ)、フラッシュメモリまたはその他のメモリ技術、CD-ROM(コンパクトディスクリードオンリーメモリ)、DVD(デジタル多用途ディスク)またはその他の光学保存メディア、磁気カセット、磁気テープ、磁気保存ディスクまたはその他の磁気保存メディア、他のタイプの揮発性および不揮発性メモリ、および所望の情報を保存するのに使用することができかつコンピューターによるアクセスが可能な任意のその他の有形のメディア、ならびに上記の任意の適当な組み合わせが含まれるがこれらに限定されない。
【0125】
一つまたは複数のコンピューター読み取り可能なメディアに埋め込まれたコンピューター読み取り可能なデータは、コンピューターにより実行される結果として、コンピューターに、本明細書に記載される機能の一つもしくはそれ以上ならびに/またはそれらの様々な態様、バリエーションおよび組み合わせを実施するよう指示する指令、例えば、一つまたは複数のプログラムの一部としての指令を定義するものであり得る。そのような指令は、多くのプログラム言語のいずれか、例えば、Java、J#、Visual Basic、C、C#、C++、Fortran、Pascal、Eiffel、Basic、COBOLアセンブリ言語等、またはそれらの様々な組み合わせのいずれかにより記述され得る。そのような指令が埋め込まれたコンピューター読み取り可能なメディアは、システムの要素の一つもしくはそれ以上に備え付けられ得るし、または、本明細書に記載されるコンピューター読み取り可能な保存メディアは、そのような要素の一つもしくはそれ以上に分散され得る。
【0126】
コンピューター読み取り可能なメディアは、本明細書で考察されている本発明の局面を実行するために任意のコンピューターリソース上で保存されている指令をロードできるよう、可搬型であり得る。さらに、上記のコンピューター読み取り可能なメディアに保存されている指令は、ホストコンピューター上で実行されるアプリケーションプログラムの一部として埋め込まれている指令に限定されないことが理解されるべきである。そうではなく、指令は、本発明の局面を実行するようコンピューターをプログラムするのに使用できる任意のタイプのコンピューターコード(例えば、ソフトウェアまたはマイクロコード)として埋め込まれ得る。コンピューター実行可能な指令は、適当なコンピューター言語またはいくつかの言語の組み合わせにより記述され得る。基本的なコンピューター生物学法は当業者に公知であり、例えば、Setubal and Meidanis et al., Introduction to Computational Biology Methods (PWS Publishing Company, Boston, 1997); Salzberg, Searles, Kasif, (Ed.), Computational Methods in Molecular Biology, (Elsevier, Amsterdam, 1998); Rashidi and Buehler, Bioinformatics Basics: Application in Biological Science and Medicine (CRC Press, London, 2000)およびOuelette and Bzevanis Bioinformatics: A Practical Guide for Analysis of Gene and Proteins (Wiley & Sons, Inc., 2nd ed., 2001)に記載されている。
【0127】
本明細書に記載される正規化システムは、一つの局面において、正規化モジュール(10)を含み、正規化モジュールは:サンプルからの検出可能な(血小板)参照シグナルの入力、例えば、アクチン重合体に結合する薬剤からの蛍光シグナル、を読み取るまたは受け取るためのコンピューター実行可能な指令、(血小板)バイオマーカーに関する検出可能なシグナルの入力を読み取るまたは受け取るためのコンピューター実行可能な指令、および読み取ったまたは受け取ったシグナル値(40)を比較モジュールに出力するためのコンピューター実行可能な指令、を有する決定システムモジュール(20);決定システムから(または、中間保存デバイス(30)から)データを受け取るためのコンピューター実行可能な指令、バイオマーカーシグナルを参照マーカーシグナル(例えば、アクチン重合体に関するもの)と比較し、正規化バイオマーカー値を生成するためのコンピューター実行可能な指令、および正規化バイオマーカー値を表示モジュールに出力するためのコンピューター実行可能な指令、を有する比較モジュール(80);ならびに比較モジュール(80)から正規化バイオマーカー値を受け取るためおよび正規化値(100)を表示デバイス(120)に表示するまたはその他の方法で出力する(130;例えば、プリンター、ネットワークインターフェースへの出力等)ためのコンピューター実行可能な指令を有する表示モジュール(110)を含む。比較モジュール(80)はまた、比較結果を保存デバイスまたはネットワークインターフェースに出力するためのコンピューター実行可能な指令を含み得る。
【0128】
決定システム(20)は、シグナルを検出するためのハードウェア(50)、例えば、蛍光シグナル検出装置、吸光度または伝送シグナル検出装置(例えば、UV、IRまたはその他の光シグナル検出装置)、放射性同位体シグナル検出装置、フローサイトメトリーシグナル、FACSシグナル、蛍光顕微鏡シグナル、ELISAシグナル、ウェスタンブロットシグナル等、を含み得る。一つの態様において、ハードウェア(50)は、マイクロタイタープレートリーダーを含み、これはマイクロプレートリーダーとも呼ばれる。決定システムは、コンピューター読み取り可能な指令、例えば、マイクロプレートリーダー(50)からの蛍光情報をコンピューター読み取り可能な形式で提供するためのコンピューター読み取り可能な指令を有する。
【0129】
比較モジュール(80)もまた、一つの正規化バイオマーカー値を受け取り、これを(同じ参照マーカーに基づき正規化された)別の値と比較し、測定された2つの異なるサンプル間の正規化血小板バイオマーカー値の差を示す結果を生成するための指令を有するさらなる比較サブモジュールを含み得る。比較サブモジュールはさらに、測定された2つのサンプル間の正規化血小板バイオマーカー値の差を表示モジュール(110)または保存デバイス(30)に出力するための指令を含み得る。
【0130】
機能モジュールは、一つもしくは複数のコンピューター(90)上でまたは一つもしくは複数のコンピューターネットワークを用いて実行され得る。
【0131】
一つの態様において(概略については図6を参照のこと)、対象から得られた血小板サンプルは、例えばサンプル容器、例えば試験管またはマイクロタイタープレートのウェルにおいて、インビトロで、アクチン重合を誘導するサンプル条件下に置かれる。この態様において、実質的に重合されたアクチンを有するサンプルは、アクチン重合体に選択的に結合する薬剤、例えば抗体と接触させられる。次に、サンプルは、薬剤と共に、正規化参照値を提供するための本明細書上記の正規化モジュールの制御下で決定システムに投入されるまたは供される。サンプル、同じ対象由来のパラレルなサンプルまたは同じサンプルのアリコートも、別の関心対象のバイオマーカー、例えば、血管新生バイオマーカーに関するシグナルの決定に供される。正規化および比較モジュールは、そのサンプルの参照バイオマーカー、例えばアクチン重合体に基づき正規化された、サンプル中のバイオマーカーに関する値を生成する。比較サブモジュールは、参照バイオマーカーにより正規化された関心対象のバイオマーカーの値を2つの異なるサンプル間で比較し、2つまたはそれ以上のサンプル間の正規化バイオマーカーレベルの差の出力を提供する。
【0132】
図7は、一つまたは複数の関心対象の血小板バイオマーカーを測定し、参照に基づき正規化し、そして別のサンプルにおける正規化バイオマーカーレベルと比較してサンプル間の相対的バイオマーカーレベル(または関心対象のバイオマーカーレベルの変化)の指標を生成する、本明細書に記載されるシステムまたはルーチンの一つの態様の概略フローチャートを示す。このルーチンは、単離された血小板をアクチン重合誘導条件下に置く工程(240);サンプルをアクチン重合体に選択的に結合する薬剤と接触させる工程(250);アクチン重合体および別の関心対象のバイオマーカーの発現レベルを決定する工程(260);工程(100)では、決定システムからデータが出力され、保存モジュールを通じて保存され得(270);アクチン重合体に関して測定された発現レベルデータに基づき関心対象のバイオマーカーに関する発現レベルデータを正規化する計算を行う工程(280);正規化発現レベルデータと参照データ(例えば、別サンプルまたは標準由来のデータ)を比較する工程(290)を包含する。比較モジュールからの出力または表示ルーチンは、関心対象のバイオマーカーの発現レベルが変化しているかどうかを決定する(300)。イエスの場合、このルーチンは、関心対象のバイオマーカーの発現レベルが正常範囲よりも高いかどうかを決定する。イエスの場合、表示モジュール(ルーチン要素(350))は、関心対象のバイオマーカーが増大していることを示し、場合によりこの情報をさらに(ルーチン要素380を通じて)ユーザー、例えば医師または患者に伝達する。関心対象のバイオマーカーの発現レベルが変化しており、かつそのレベルが正常範囲よりも低い場合、表示ルーチン(ルーチン要素(340))は関心対象のバイオマーカーが減少していることを示し、場合によりこの情報をさらに(ルーチン要素(380)を通じて)ユーザーに伝達する。関心対象のバイオマーカーが変化していない場合、表示モジュールは、(ルーチン要素(330)を通じて)バイオマーカーの状態に変化がないことを示し、場合によりこの情報をさらに(ルーチン要素(380)を通じて)ユーザーに伝達する。
【0133】
決定システム(20)は、タンパク質結合剤からのシグナルを検出する任意のシステムを含み得る。そのようなシステムには、フローサイトメトリーシステム、蛍光アシスト細胞分別システム、蛍光顕微鏡システム(例えば、蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡)、任意のELISA検出システムおよび/またはウェスタンブロット検出システムが含まれ得る。
【0134】
決定システムにおいて決定された情報は、保存デバイス(30)により読み取られ得る。本明細書で使用される場合、「保存デバイス」は、データまたは情報を保存するよう構成または適合された任意の適当なコンピューターまたは処理装置またはその他のデバイスを包含することが意図されている。本発明において使用するのに適した電子的装置の例には、スタンドアローン型のコンピューター装置、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、インターネット、イントラネットおよびエクストラネットを含むデータ通信ネットワーク、ならびにローカル型および分散型コンピューター処理システムが含まれる。保存デバイスには、磁気保存メディア、例えばフロッピーディスク、ハードディスク保存メディア、磁気テープ、光学保存メディア、例えばCD-ROM、DVD、電子保存メディア、例えばRAM、ROM、EPROM、EEPROM等、汎用ハードディスクおよびこれらのカテゴリーのハイブリッド装置、例えば磁気/光学保存メディアも含まれるがこれらに限定されない。保存デバイスは、発現レベルまたはタンパク質レベルの情報を内部に記録するよう適合または構成されている。そのような情報は、電子的に、例えばインターネットを通じて、ディスケット上で、USB(ユニバーサルシリアルバス)を通じてまたは任意のその他の適当なコミュニケーション方式を通じて伝送および読み取りができるデジタル形式で提供され得る。
【0135】
本明細書で使用される場合、「保存」は、情報を保存デバイス上にエンコードするプロセスを表す。当業者は、発現レベル情報を含む製品を生産するために、公知のメディアに情報を記録する現時点で公知となっている方法のいずれかを容易に採用することができる。
【0136】
一つの態様において、比較モジュールによって読み取られる、保存デバイスに保存されている参照データは、ELISA決定システムから得られた呈色データまたは蛍光発光データである。
【0137】
「比較モジュール」およびそのコンピューター読み取り可能な指令は、決定システムにおいて決定された蛍光データと参照サンプルおよび/または保存されている参照データを比較するよう動作する比較のために様々な入手可能なソフトウェアプログラムおよびフォーマットを使用することができる。一つの態様において、比較モジュールは、一つまたは複数のエントリーからの情報と一つまたは複数の参照データパターンを比較するためにパターン認識技術を使用するよう構成されている。比較モジュールは、既存の商業的に入手可能または無料で入手可能なパターン比較ソフトウェアを用いて構成され得、かつ、実行される特定のデータ比較に最適化され得る。比較モジュールは、血管新生レギュレーターの正規化発現レベル、個体の血管新生状態、個体における処置の効果および/または個体の処置方法に関連するコンピューター読み取り可能な情報を提供する。
【0138】
比較モジュールまたは本発明の任意のその他のモジュールは、オペレーティングシステム(例えば、UNIX)を含み、その上でリレーショナルデータベース管理システム、ワールドワイドウェブアプリケーションおよびワールドワイドウェブサーバが運用され得る。ワールドワイドウェブアプリケーションは、データベース言語ステートメント(例えば、構造化照会言語(SQL)ステートメント)の作成に必要な実行コードを含む。一般に、実行ファイル(executables)は、埋め込みSQLステートメントを含むであろう。さらに、ワールドワイドウェブアプリケーションは、ポインタならびユーザーリクエストに応えるためにアクセスしなければならないサーバや様々な外部および内部データベースを含む様々なソフトウェア実体へのアドレスを含む構成ファイルを含み得る。構成ファイルはまた、サーバリソースに関するリクエストを適当なハードウェアに送信し -- これはサーバが2つまたはそれ以上の別個のコンピューターに分散されている場合に必要となり得る。一つの態様において、ワールドワイドウェブサーバは、TCP/IPプロトコルをサポートする。このようなローカルネットワークは、しばしば、「イントラネット」と呼ばれる。このようなイントラネットの利点は、ワールドワイドウェブ上に存在するパブリックドメインデータベース(例えば、GenBankまたはSwiss Proのワールドワイドウェブサイト)とのコミュニケーションが容易になることである。したがって、本発明の特に好ましい態様において、ユーザーは、ウェブブラウザおよびウェブサーバにより提供されるHTMLインターフェースを用いて、インターネットデータベース上に存在するデータに(例えば、ハイパーテキストリンクを通じて)直接アクセスすることができる。
【0139】
比較モジュールは、コンピューター読み取り可能な比較結果を提供し、その比較結果は、当該比較結果に一部基づくコンテンツを提供するよう、既定の基準またはユーザーにより定義される基準によりコンピューター読み取り可能な形式で処理され得、そのコンテンツは、保存され得、かつユーザーからのリクエストに応じて表示モジュールを使用して出力され得る。
【0140】
比較結果に基づくコンテンツは、個体の血管新生状態を示す、参照に対して正規化された発現値であり得る。
【0141】
本発明の一つの態様において、比較結果に基づくコンテンツは、コンピューターモニター上に表示される。本発明の一つの態様において、比較結果に基づくコンテンツは、印刷可能なメディアを通じて表示される。表示モジュールは、コンピューター読み取り可能な情報をコンピューターから受け取りユーザーに表示するよう構成された任意の適当なデバイスであり得る。非限定的な例には、例えば、汎用コンピューター、例えば、Intel PENTIUM型プロセッサ、Motorola PowerPC、Sun UltraSPARC、Hewlett-Packard PA-RISCプロセッサ、カリフォルニア州サニーベールのAdvanced Micro Devices(AMD)から入手できる様々なプロセッサのいずれかまたは任意のその他のタイプのプロセッサ、視覚的表示デバイス、例えば、フラットパネルディスプレイ、陰極線管等、および様々なタイプのコンピュータープリンターが含まれる。
【0142】
一つの態様において、ワールドワイドウェブブラウザが、比較結果に基づくコンテンツの表示のためのユーザーインターフェースを提供するために使用される。本発明の他のモジュールは、ウェブブラウザインターフェースを有するよう適合され得ることが理解されるべきである。ウェブブラウザを通じて、ユーザーは、比較モジュールからデータを呼び出すリクエストを作成し得る。したがって、ユーザーは、典型的には、ユーザーインターフェース要素、例えばボタン、プルダウンメニュー、スクロールバーおよびそのようなグラフィカルユーザーインターフェースにおいて従来から採用されている要素を指示し、クリックすることになるであろう。
【0143】
したがって本発明は、個体の血管新生状態を評価する方法を実施するためのシステム(およびコンピューターシステムを構築するコンピューター読み取り可能なメディア)を提供する。
【0144】
本明細書に記載されるシステムおよびコンピューター読み取り可能なメディアは、本発明の、個体における血管新生状態を評価する方法を実施する態様の一例にすぎず、それにより本発明の範囲を限定することは意図されていない。本明細書に記載されるシステムおよびコンピューター読み取り可能なメディアにはバリエーションが存在し、これらも本発明の範囲に包含されることが意図されている。
【0145】
機械のモジュールまたはコンピューター読み取り可能なメディアにおいて使用されるそれらは、多数の構成が想定され得る。例えば、機能は、単一の機械により提供される場合もあるし、複数の機械に分散される場合もある。
【0146】
上述の詳細な説明および後述の実施例は例示のみを目的とするものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示される態様に対する様々な変更および修正がなされ得、それらは当業者に明らかであろう。さらに、特定されているすべての特許、特許出願および刊行物は、解説および開示の目的で、例えば、本発明に関連して使用され得るそれらの刊行物に記載の方法論を解説および開示する目的で、参照により本明細書に組み入れられる。これらの刊行物は、本特許出願の出願日以前の開示物としてのみ提供される。これに関連するいかなる事情も、本発明者らが先行発明が存在するためまたは任意の他の理由でそのような開示よりも前の日付を主張する資格を有さないことの承認であるとみなされるべきではない。これらの文献の日付に関する言及または内容に関する表示はすべて、出願人が入手し得た情報に基づいており、これらの文献の日付または内容の正確性に関する承認を構成するものではない。
【実施例】
【0147】
血小板タンパク質レベルを測定および正規化するのに有用な材料および方法
アクチンELISAの材料および固相コーティング:
検出抗体:(Millipore/Chemicon)マウスモノクローナルMAB1501R、Ortho Clinical Diagnosticsにてビオチン結合されたものをRD中800 ng/mLの試験強度に希釈した。この抗体を標準的な方法を用いてビオチニル化した。これについては後述する。
【0148】
捕捉抗体(Millipore/Chemicon)MAB1501R、マウスモノクローナル、100μg/バイアル。高結合性マイクロウェルプレート(CoStar cat#2592)を、BuPH緩衝剤pH 7.2(Pierce 28372)中に2μg/mLの抗体を含有する100μlのコーティング抗体溶液でコーティングし、多湿下で一晩インキュベートし、ウェルあたり400μLの(以下に記載される)洗浄緩衝剤で3回洗浄した。次に、このプレートを、各ウェルに対して150μL/ウェルのスターティングブロック(Pierce 37542)で後処理コーティングし、加湿ボックス中、室温で最低2時間インキュベートし、2秒間の吸引を1回行い(洗浄ではない)、湿度制御インキュベーター内で乾燥させ、乾燥剤入りの密閉袋に入れて、使用するまで2〜8℃で保存した。
【0149】
ビオチニル化
簡潔に言うと、抗体を、ジメチルホルムアミド(Sigma)中に1:10(抗体:ビオチン)の比率で溶解させたビオチン-LC-LC-NHS(Pierce)と、20℃で2時間混合した。この抗体/ビオチン混合物に、グリシンを、200:1(グリシン:ビオチン)の比率で添加し、20℃で15分間混合した。この抗体・ビオチンコンジュゲートを、Nap-5カラム(GE Healthcare)を用いて0.1 Mリン酸、0.3 M NaCl pH6.0緩衝剤に交換した。この抗体・ビオチンコンジュゲートを、試薬希釈液で試験強度まで希釈し、4℃で保存した。
【0150】
アクチンELISAキャリブレーター
ヒト血小板から精製された非筋肉アクチン(Cytoskeleton, INC パートAPHL95)1 mgバイアルを1 mLの水で再構成させ、使い捨てバイアルに小分けし、使用するまで-70で凍結保存した。キャリブレーターレベルは、アクチンを重合緩衝剤(10 mM Tris、pH 7.5、2 mM MgCl2および50 mM KCl)で希釈し;次に1000 ng/mLまで希釈し、次に6つのキャリブレーターレベルおよびレベル0(重合緩衝剤、希釈液)となるよう、重合緩衝剤で31 ng/mLまで連続希釈することによって準備した。
【0151】
その他のELISA試験および/または検出用試薬
・ストレプトアビジン-HRP(R&D Systems DuoSet汎用試薬 パート890803)、試薬希釈液で1:200希釈
・20X 洗浄緩衝剤濃縮液(Ortho Clinical Diagnostics パート933730)、脱イオン水で希釈
・ELISA用TMBペルオキシド基質(Moss, Inc パート#TMBE-1000)、未希釈で使用
・4N硫酸(Ortho Clinical Diagnostics パート933040)
・アクチン重合生化学キット(Cytoskeleton, INC、カタログ#BK003)
【0152】
機器
・Autowash 95マイクロプレートウォッシャー(Ortho Clinical Diagnostics)、使用前および使用中に較正および容積検証
・シェーカーインキュベーター(Ortho Clinical Diagnostics、Chelseaタイプ)、600 rpmで1 mm回転の加熱オービタルシェーカー
・Raininマニュアルピペッター、すべて使用前および使用中に較正および容積検証:単チャネル:L20、L200、L300、L1000、L5000;多チャネル L300
・Sunriseマイクロプレートリーダー(Tecan)、450および620 nmフィルター使用
・Magellanマイクロプレートリーダーソフトウェア(Tecan、バージョン5)
・Sorvall Legend RT遠心分離機
・CBC血小板カウント用Beckman Coulter LH755アナライザー
・Beckman Airfuge(超遠心分離機)
・BioTek Synergy 2蛍光分光計:Ex(360/40)/Em(420/50)
【0153】
ヒト血小板および血漿(乏血小板)調製物
健常者対照。Mayo Clinic, Rochester, MNの結腸内視鏡スクリーニング患者およびChildren's Hospital Bostonの従業員から予め得ておいたサンプルで構成される、64名の推定健常ボランティア由来の静脈血サンプルを収集した。すべての収集作業は、制度化された実務および手引きに従いインフォームドコンセントを得た後に行った。
【0154】
患者。末梢静脈血サンプルを、Dana Farber Cancer InstituteのMassachusetts General Hospitalに入院中の組織学的に癌と診断された患者から収集した。すべての収集作業は、制度化された実務および手引きに従いインフォームドコンセントを得た後に行った。
【0155】
サンプルを、標準的な血小板収集法にしたがい処理した。簡潔に言うと、全血を、静脈穿刺により、105 mMクエン酸(pH 5)抗凝固剤を含有する真空管の中に、緩衝剤対血液が1:9(vol/vol)の比率になるよう抜き取った。この試験管を、血液と抗凝固剤が混合されるよう倒立させ、処理を通じて周囲温度で維持した。これは、冷凍保存した場合に血小板が活性化し内容物を消失するのを回避するために行った。血液サンプルを、Sorvalスイングバケットローターを用いて150 x gで20分間遠心分離した。1回目の遠心分離の後、1 mLの上相(多血小板血漿すなわちPRP)を必要数(典型的には2本)のエッペンドルフ管の各々に移し、900 x gで10分間遠心分離した。乏血小板血漿(すなわちPPP)で構成される上清を別の試験管に移し、血小板ペレットを含有する残りの血漿を試験管の内壁から拭い取った。その後、血小板および血漿サンプルを、分析まで-80℃で保存した。
【0156】
血小板の溶解
血小板サンプルを解凍し、PBS緩衝剤pH 7.2(Pierce)中に0.5% Triton X-100(Fluka)およびプロテアーゼインヒビターカクテル(Sigma P8340)を含有する100μlの溶解緩衝剤を各血小板ペレットに添加した。血小板ペレット膜を溶解させ、ほぼ透明になるまでピペットで上下させボルテックスし;次に1.5 mlのPBS緩衝剤を各溶解血小板サンプルに添加して16x血小板溶解溶液を作成し、これを分析のために以下に記載されるように希釈した。
【0157】
プロテアーゼインヒビターカクテル(Sigmaアイテム# P8340)は、1:100希釈が必要な濃縮液として提供されており、以下のインヒビターを含有するものであった:セリンプロテアーゼに対する104 mMのAEBSF[4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩];セリンプロテアーゼに対する0.085 mMのアプロチニン;アミノペプチダーゼに対する4 mMのベスタチン塩酸塩;システインプロテアーゼに対する1.4 mMのE-64、[N-(トランス-エポキシスクシニル)-L-ロイシン-4-グアニジノブチルアミド];セリンおよびシステインプロテアーゼに対する2 mMのロイペプチンヘミ硫酸塩;酸性プロテアーゼに対する1.5 mMのペプスタインA。
【0158】
血小板溶解物の希釈因子
16X血小板溶解物の希釈因子は、重合緩衝剤中32倍とした。
【0159】
実施例1
血清の測定は、血小板中で見出される分析物のすべてを含むものとみなすことができない。例えば、一部の血小板に付随するVEGFおよびbFGFは、血清塊形成時に遭遇するアゴニスト(トロンビン)の刺激により血清中に放出され得るが、有意レベルは血小板に付随したままであり、それらはおそらくヘマトクリットと共に失われていると考えられる(Akerblom, B., et al., Upsala J Med Sci. 107 (3) (2002) (165-171); Salgado, R., et al., Brit. J of Cancer; 80 (5/6) (1999) 892-897)。
【0160】
これをふまえて、血小板が血管新生調節タンパク質を選択的に捕集(scavenge)する、例えば腫瘍から捕集するかどうかを決定するために、第一に、血小板の活性化および内部物質の流出なく血小板を全血から単離することが重要である。第二に、測定されたタンパク質レベルを血小板数に基づき正規化するためには、血小板数を単に反映している結果よりも、その分析サンプル中の血小板数を計数できることが重要である。本明細書に記載される正規化方法は、血小板数を決定する必要のない正規化を提供する。
【0161】
直接CBC(完全血球カウント)法は、血小板を計数しそれらの容積を決定するために一般的に利用されている。しかし、CBC測定は、最も好ましい血小板単離法である血小板ペレットサンプルに対しては行うことができない。本明細書に示されるように、全血CBC血小板カウントと保存された血小板サンプル中で見出されるレベルとの間には乏しい相関性しか存在しない。CBC法は、誤結果を招きやすく、事実、機器によって大きく食い違うことがある点に留意されるべきである(Pieter, F. et al., Transfusion, 49 (2009) 81-90)。ペレットサンプル中の血小板を計数するために、血小板計数の代理マーカーを測定および同定する方法を開発した。現実に、アクチン等の因子を使用することで血小板カウントを必要とせずに血小板サンプルを正規化できることが実証されている。
【0162】
結果/考察:正規化
本明細書に記載されるように、血小板から得られる血管新生調節タンパク質の結果は、疾患組織からの「捕集」に起因して見出されるレベルかまたは単にそのサンプル中の血小板数のいずれかを反映するものである。この研究の目的は、癌を含む血管新生疾患を検出するための診断アプローチとして使用できる血小板中の特定タンパク質のレベルを決定することであることから、そのサンプル中の血小板数を計数する手段を開発するのが重要であった。
【0163】
インデックスCBCデータに基づく血小板数の推定
同一個体由来の異なる血漿サンプルを用いて臨床検査室で実施したCBC(完全血球カウント、フローサイトメトリー)により得られた血小板カウントに基づき血小板ペレットサンプル中の血小板数を推定できるかどうかを決定するため、一つの方法を試験した。
【0164】
この試験を行うため、全血サンプルを、26名の非疾患個体から、EDTAおよびクエン酸の両方の真空瀉血管に採取した。典型的なCBC試験はEDTA血漿を用いて実施し、血小板はクエン酸中で調製するので、これは、提案されたアプローチに最も近い擬似アプローチ(approximation)であると考えた。CBCアナライザーのゲーティングは、クエン酸処理した血漿PRP中の血小板数を過小評価する可能性があることが認められた。
【0165】
26名の個体グループは、19名の女性および7名の男性からなり、平均年齢は48歳 +/- 7歳(1SD)であり年齢範囲は33〜61歳であった。CBC血小板カウントは、EDTA全血、クエン酸処理した多血小板血漿(PRP)ならびに1mLのPRPの遠心分離および血小板ペレットの単離後に得られた乏血小板血漿(PPP)から得た(表1)。PRPとPPPの間の差を、ペレット中の血小板数とする計算を行った。全血から得られた血小板カウントは、典型的には、PRPから得られたそれよりも少なかった。学説による束縛を望まないが、この結果は、血小板が、ヘマトクリットの残りの部分よりも大きな浮力を有している傾向があることを反映していると考えられる。この方法により生じるであろう誤差の程度は、〜57,000の正バイアスで、95%信頼区間に基づき221,000〜542,000の範囲であろうことが見出された。
【0166】
(表1)26名の個体由来の全血およびサブフラクションから得られたCBC血小板カウント

【0167】
実施例2
アクチン測定による正規化
構成的に発現され、ほとんどの疾患状態において示差的に調節されない構造的血小板タンパク質を測定し、それが正規化において望ましいELISA標的であるかどうかを決定した。いくつかの候補標的を評価および試験し(データは示さず)、望ましい候補がアクチンであることを決定した。CBC計数した血小板調製物をアクチン、チューブリンおよび総タンパク質に関して直接測定し、本明細書の表2に示されるように、血小板数に対する相関性はアクチンが優れていることを見出した。
【0168】
血小板中のアクチンは、単量体・重合体の動的平衡下で存在し、これがその機能に関連している(Italiano J.E. et al., Platelets in Hematologic and Cardiovascular Disorders, Cambridge University Press, New York, 2008, pp. 1-20)。ELISAにおいては、この重合体/単量体平衡を理解し、それを(インビトロでの)正確な測定のために制御することが有用である。アクチンを変換できることおよび/またはアクチンの形態を単量体または重合体のいずれかで維持できることも有用である。
【0169】
(表2)血小板計数調製物の比較

【0170】
アクチン重合
アクチンは、物質的に、単量体形態と重合体形態の間の平衡の下で存在し、これがその生物学的機能に関連している。本明細書において、アクチン重合体は、本明細書中でF-アクチンとも呼ばれる。学説による束縛を望まないが、F-アクチンは、有効な隔離法を用いることで血小板を反映する存在となることから、本明細書に記載される方法においてこれを使用することができる。一方から他方への平衡を制御することによってアクチンのレベルを効果的かつ再現性をもって測定する方法を試験した。
【0171】
緩衝剤条件による重合レベルの誘導は、アクチン重合アッセイ(Cytoskeleton, Inc. BK003)を製造元の説明書にしたがい使用することにより実現した。大まかに言うと、重合により起こるピレンアクチンの堆積および相互作用は、重合体長と共に増大する蛍光により測定できる。蛍光データは、以下のフィルターを使用するBioTek Synergy 2蛍光分光計において収集した:励起(360/40)および発光(420/50)。上部プローブの垂直オフセット量(top probe vertical offset)を7 mmに設定し、光学位置(optics position)をTop 50%に設定し;BioTekにタングステン光源を装着し、サンプルを標準的な黒色96ウェルプレート上で調製および試験した。当業者に明らかなことであるが、別の候補のアッセイために別のアッセイおよび測定技術を使用する場合もある。これらの実証的実施例において使用される特定の技術は例示であり限定を意図するものではない。
【0172】
キットとして提供されるピレン標識筋アクチンおよび緩衝剤を製造元の説明書にしたがい調製した。簡潔に言うと、ピレンアクチンを解凍し、氷上でG緩衝剤(アクチンを単量体(球状)形態に誘導する低イオン強度緩衝剤)に入れ、これを各試験管に加えた(終濃度0.4 mg/mL)。このピレンアクチンを氷上、暗所で1時間インキュベートし、アクチンオリゴマーを脱重合させた。緩衝剤および添加物を、アクチン(脱)重合に対する効果に関して試験した。試験化合物/タンパク質を含む2ウェルと共に、以下の3つの対照のために各2ウェルを使用した:G緩衝剤のみ、ピレンアクチン含有G緩衝剤、ならびにピレンアクチン含有G緩衝剤および20μLの試験緩衝剤(すなわち、添加物含有緩衝剤)。ベースラインを読み取った後、20uLの対照(G)緩衝剤または20uLの試験緩衝剤のいずれかをピレンアクチン/G緩衝剤ウェルに添加し;その蛍光データ(Ex 360/Em 420)を20分間、毎分収集した。この初期読み取りの後、20uLの10xアクチン重合緩衝剤(Cytoskeleton提供)を全8ウェルに添加し、データをさらに40分間または蛍光シグナルがプラトーに達するまで毎分収集した。
【0173】
アクチンの単量体形態および重合体形態を促進する条件の特徴付けを行った。大まかに言うと、低イオン強度および低温がアクチンを単量体形態に誘導し、高イオン強度および加熱が重合体形態を促進する。
【0174】
アクチンELISA
一方または他方の形態の一貫性のある測定を実現する条件を特定するため、単量体および重合体形態で調製したアクチンを用いてELISAフォーマットを評価した。高イオン強度緩衝剤は、固相・コンジュゲート抗体対調製物のいくつかにおいてELISAシグナルを生じ、単量体形態のアクチン(低イオン強度)はいずれの抗体対においても検出されなかった。
【0175】
このアッセイで単量体形態ではなく重合体形態が検出されたことを確認するため、超遠心分離研究を実施した。
【0176】
水中に1 mg/mLになるよう再構成した精製アクチンの等量のアリコートを、10 mM Tris、pH 7.2(低イオン強度)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH 7.2、高イオン強度)のいずれか180 uLを含む微量遠心管(Beckman Airfuge)に加えて10X(20 uL)希釈にし、周囲温度で1時間平衡化させた。この遠心管を100,000 x gで1時間遠心分離した。アクチン単量体を含むかまたはアクチンを含まない(重合化しペレット中に存在)上清をPBSで5X希釈し、ELISA試験用に希釈した。理論的には一部は高イオン強度調製物中にペレットを含んでおりそれ以外は単量体が堆積しないためペレットを有さない遠心分離管中の残留アクチンをPBS中に再構成/溶解し、希釈し、ELISAにおいて試験した。この結果は、表3に要約されているように、高イオン強度緩衝剤はアクチンを92%重合体に誘導し、これはペレットから回収され、かつ上清に含まれるアクチンは8%単量体と計算されることを示している。他方、低イオン強度緩衝剤中で調製された上清アクチンは、高イオン強度緩衝剤で希釈した場合、およそ93%(単量体を示している)を占め、7%のみが再構成ペレット中で見出された。
【0177】
(表3)単量体形態および重合体形態のアクチンを生じる緩衝剤タイプの超遠心分離による特徴付け

【0178】
得られたELISAフォーマットを、本明細書で上述されているヒト血小板アクチンの検出および測定に使用した。較正は、ヒト血小板から精製されたネイティブアクチン(Cytoskeleton)を用いて行った。アクチンキャリブレーターを精製血小板アクチンを用いて調製した。精製アクチンを製造元の説明書にしたがい調製し、水中に1 mg/mlとなるよう希釈し、-80℃で保存した。キャリブレーターは、プレーティングの15〜60分前に新たに調製した。「重合緩衝剤」:10 mM Tris、pH 7.5(Sigma, MP Biomed.)、2 mM MgCl2(Sigma)および50 mM KCl(Sigma)を用いてアクチンの連続希釈物を調製した。ばらつきを抑制するため、試験前に重合緩衝剤の大ストックを調製し、0.2 umフィルターを通し、これを試験を通して使用した。アクチンキャリブレーターの濃度は、1000 ng/ml〜31 ng/mlの範囲であった。一つのアクチンキャリブレーターのセットを、試験の日丸一日使用した。
【0179】
ヒト血小板サンプルを、以前に記載されたように血小板溶解緩衝剤に溶解させた。16x血小板溶解物から、サンプルを標準的な2 mlエッペンドルフ管において2x希釈して最終32Xとし、短時間(1〜2秒)ボルテックスし、プレーティング前1〜2時間室温でインキュベートした。アクチン単量体:重合体比は、ボルテックス時間、インキュベーション時間/温度および緩衝剤組成に対して極めて感受的であり;アクチンELISAによる検出は単量体:多量体比に依存するため、全試験プロセスを通して反復可能な様式でアクチンサンプルを調製およびプレートするよう努めた。
【0180】
蛍光アクチン重合法(Cytoskeleton, Inc)および超遠心分離研究を使用することにより、単量体(低イオン強度、すなわち:10 mM Tris)または重合体(高イオン強度、例えば、0.1 Mリン酸ナトリウム、0.15 M NaCl、pH 7.4)のいずれかを促進する緩衝剤条件を特定した。データ示さず。
【0181】
固相および/またはビオチニル化検出試薬としてスクリーンした全ての抗体は、重合体形態のみを検出するものであることが判明した(データ示さず)。学説による束縛を望まないが、免疫原として使用されるアクチンは、生理学的イオン強度を有するマウスに注射された際に重合し、そのため、試験した市販の抗体はその重合形態のみを認識する傾向があったと考えられる。以降の全ての実験は、アクチン抗体がアクチン重合体に優先的に結合することを利用した。アクチンアッセイの前および/またはその最中に、アクチン重合体が大部分を占める条件を確立した。
【0182】
モデルPRP/血小板システムおよび正常対象から得られた血小板ペレットを用いる正規化
アクチンELISA法が血小板レベルの差を検出および補正する能力を評価するため、様々な容積の多血小板血漿(PRP)プールから血小板サンプルセットを調製し、その後これを遠心分離して血小板ペレットを調製した。次いで、血小板サンプルを溶解、希釈し、アクチンELISAアッセイにおいて試験した(図1)。血小板数に対するアクチンの極めて良好な相関性(R2 = 97%)が見出された。
【0183】
選択されたバイオマーカー(PDGF)を、血小板レベルが異なることが分かっている5名の個体由来の血小板において試験した。血小板数のばらつきに起因して、広範囲のPDGFが検出された(図2)。同じデータを、推定血小板数または実際のアクチン測定値を用いて補正した(例えば、それらで割り算し、正規化した)場合(図3)、血小板レベルの変動により導入された差は、因子ではなくなった。
【0184】
アクチン(ug/mL)と血小板数の間の臨床評価に有用な数学的関係を発明した。CBC血小板カウントを、平均血小板容積測定と共に、57名の個体のサンプルから採取したPRPサンプルにおいて実施した。血小板ペレットサンプルを上記のようにして調製し、そして、アクチンELISAを用いて、対象サンプルセットあたり1回、8回のアクチンアッセイを行った。57サンプル(平均23.11 +/- 6.53 ug/mL PRP)のアクチン結果は、正規分布を示した(p = 0.176)。対応する総血小板容積測定(CBC血小板カウント X CBC平均血小板容積、23.01 +/- 7.39 uL/mL PRP)もまた正規分布を示した(p = 0.100)。得られた式(式1)および図4に示される相関性0.757を用いて線形回帰関係を計算した。
【0185】
以下の線形回帰ベースの関係は、血小板容積とアクチンの関係を表している。
Y(血小板、uL) = 0.989(アクチン、ug) 式1
【0186】
血小板カウントの代理マーカーとしてのアクチンELISAの使用に関して特に注目すべきは、血小板計算に導入される誤差の程度である。表1は、CBCカウントに基づく特定の血小板ペレット調製物中の血小板カウントの推定値を表しており、これは、全血で299,000、誤差範囲221,000〜542,000、60,000血小板/uLバイアスおよび95%信頼区間に基づき全範囲321,000血小板/mLであった。
【0187】
CBCによるPRP中の血小板カウントと同じPRPから調製された血小板の血小板容積の直接比較では、結果が相互に類似している。
【0188】
表4は、19名の正常対象から得られたPRPを用いて実施した比較研究において得られた結果を示している。各対象由来のPRPをプールし、CBCカウント用の1 mLアリコートおよび血小板ペレットを得る遠心分離用の1 mLアリコートに分割した。血小板ペレットサンプルを溶解し、上記のアクチンELISAにおいて試験し、式1に示された関係により血小板カウントに変換した。
【0189】
(表4)アクチン法により決定された血小板数とCBCの比較

【0190】
示されるように、このCBCデータは、線形回帰式1を生成するのに使用したものであるため、平均は同じである。しかし、驚くべきことに、アクチン正規化法は、95% CI範囲が319であり、CBC法により得られた結果から計算された400との比較から分かるように、高い精度を有していることが見出された。
【0191】
CBCから得られた血小板数に相関するそのサンプル中の容積あたりの血小板数をアクチン値を使用して決定する別の関係を発見した。この関係は、式1および図4で使用したのと同じデータ(血小板容積に対するアクチンの相関性)を使用したが、容積要素(MPV)は使用しなかった。相関性(R2)は、図5に示されるように、0.695であった。
【0192】
アクチンに対する血小板数を表す線形回帰関係を構築した。
Y(血小板数/mL x 106) = 14.383(アクチン、ug/mL) 式2
【0193】
結果:非疾患対象(対照)
特定のサンプルにおいて見出された総血小板容積は、式1で表される線形回帰関係を用いて計算した。
【0194】
(表5)正常範囲 血小板数および血小板容積に対する血小板濃度(μLあたり)。血漿濃度は、血小板濃度との比較のためにmLあたりおよびμLあたりで示されている。X倍は、血小板濃度・血漿濃度間(同一単位)の比としての濃度差である。最小および最大は、95%経験的信頼区間(2.5番目〜97.5番目のパーセンタイル)により定義される。

全てのバイオマーカーをアクチンに基づき正規化し、これをμL血小板容積あたりまたは106血小板あたりで表している
*X倍 = 血小板濃度/血漿濃度、同一単位
*95%経験的信頼区間(2.5番目〜97.5番目のパーセンタイル)により定義される
【0195】
実施例3:アクチン測定値に対する血小板メトリクスの関係を引き出すのに使用したデータ
血小板容積に対するアクチンの線形回帰関係を引き出すのに使用した個々の血小板数、平均血小板容積およびアクチン値ならびに得られた血小板数および容積を以下の表6に提供する。
【0196】
(表6)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、血小板調製物のバイオマーカーレベルを評価する方法:
(a)血小板調製サンプル中の代理マーカーレベルを決定する工程であって、代理マーカーが、血小板数、血小板濃度、または血小板容積に対応する、工程;
(b)サンプル中のバイオマーカーレベルを決定する工程、
(c)代理マーカーレベルに対してサンプル中のバイオマーカーレベルを正規化する工程であって、それによってそのサンプルの正規化バイオマーカーを決定する、工程。
【請求項2】
正規化工程が、サンプル中のバイオマーカーレベルに関して得られた値を代理マーカーレベルに関して得られた値で割る工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
代理マーカーが、重合化アクチンまたは単量体アクチンである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
工程(a)が、個体から得られたサンプルを、サンプル中のアクチンが実質的に重合するアクチン重合誘導条件下に置く工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
高濃度の塩が、アクチン重合を促進する、請求項5記載の方法。
【請求項6】
バイオマーカーが、血管新生レギュレーターである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
以下の工程を含む、血小板数、血小板濃度、または血小板容積の代理マーカーを同定する方法:
(a)サンプリング因子に従い単一の血小板調製物から調製したサンプル集の各サンプルにおいて複数の候補マーカーの量をアッセイする工程;
(b)各サンプル中の各候補マーカーの量をサンプリング因子に従い予測される候補マーカーの量と比較する工程であって、該比較する工程により、工程(a)でアッセイされた複数の中から、予測される候補マーカー量と測定された候補マーカー量の間の相関が最も近い候補マーカーが同定され、それによって該候補マーカーが、血小板数、血小板濃度、または血小板容積の代理マーカーとして同定される、工程。
【請求項8】
血小板調製物が、溶解血小板を含む、請求項6記載の方法。
【請求項9】
同定された代理マーカーを異なる生理学的条件下でのばらつきに関して試験する工程をさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項10】
請求項6記載の方法を用いて同定された代理マーカーを基準として血小板調製物中で測定されたバイオマーカー量を正規化する工程を含む、サンプル中のバイオマーカー量を正規化する方法。
【請求項11】
バイオマーカーが、血管新生タンパク質である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
血小板調製物が、患者サンプルから得られる、請求項8記載の方法。
【請求項13】
患者サンプル中のバイオマーカーレベルの変化を検出するために、正規化されたバイオマーカーレベルと参照レベルを比較する工程をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
以下の工程を含む、血小板調製物のバイオマーカーレベルを評価する方法:
(a)個体から得られた単離された血小板のサンプルを、サンプル中のアクチンが実質的に重合するアクチン重合誘導条件下に置く工程;
(b)重合化アクチンに選択的に結合する薬剤とサンプルを接触させ、かつ該薬剤と重合化アクチンの間の複合体の形成を検出する工程であって、それによってサンプル中のアクチンレベルを測定する、工程;
(c)サンプル中のバイオマーカーレベルを測定する工程;
(d)サンプル中の重合化アクチンの測定レベルに対してサンプル中のバイオマーカーレベルを正規化する工程であって、それによって該サンプルに関する正規化バイオマーカーを決定する、工程。
【請求項15】
以下の工程を含む、個体のバイオマーカーレベルの変化を評価する方法:
(a)個体から得られた単離された血小板のサンプルを、サンプル中のアクチンが実質的に重合するアクチン重合誘導条件下に置く工程;
(b)重合化アクチンに選択的に結合する薬剤とサンプルを接触させ、かつ該薬剤と重合化アクチンとの間の複合体の形成を検出する工程であって、それによってサンプル中のアクチンレベルを測定する、工程;
(c)サンプル中のバイオマーカーレベルを測定する工程;
(d)サンプル中の重合化アクチンの測定レベルに対してサンプル中のバイオマーカーレベルを正規化する工程;
(e)サンプル中のバイオマーカーの正規化レベルを参照と比較する工程であって、参照と比べてバイオマーカーの正規化レベルの差が、個体のバイオマーカーレベルの変化を示す、工程。
【請求項16】
アクチン重合誘導条件が、高濃度の塩を含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
バイオマーカーが、血管新生レギュレーターである、請求項15記載の方法。
【請求項18】
血管新生レギュレーターレベルの変化が、血管新生状態の変化および/または血管新生性障害の存在を示す、請求項17記載の方法。
【請求項19】
血管新生性障害が、腫瘍関連疾患の存在である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
参照が、個体集団から得られた生物学的サンプルから得られる、請求項15記載の方法。
【請求項21】
前記集団の各個体が、血管新生性障害を有さない、請求項20記載の方法。
【請求項22】
参照が、より早い時点の前記個体から得られた単離された血小板から得られる、請求項12記載の方法。
【請求項23】
以下のものを含む、血小板中の少なくとも一つのバイオマーカーの正規化レベルを検出するためのキット:
(a)単離された血小板サンプルと接触させた場合にアクチン重合または脱重合を誘導する少なくとも一つの試薬;および
(b)工程(a)の試薬がアクチン重合を誘導する場合は重合化アクチンに、または工程(a)の試薬がアクチン脱重合を誘導する場合は単量体アクチンに、いずれかに選択的に結合する薬剤;
(c)バイオマーカーに結合する薬剤;ならびに
(d)包装材、および重合化アクチンまたは単量体アクチンのレベルに対して少なくとも一つのバイオマーカーのレベルを正規化するための説明書。
【請求項24】
固体支持体をさらに含む、請求項23記載のキット。
【請求項25】
検出可能なシグナルを生成する試薬をさらに含む、請求項23記載のキット。
【請求項26】
重合化アクチン陽性対照をさらに含む、請求項23記載のキット。
【請求項27】
少なくとも一つの他のバイオマーカーに結合する薬剤をさらに含む、請求項23記載のキット。
【請求項28】
血小板サンプル中のバイオマーカーレベルを評価する方法をコンピューター上で実行するためのソフトウェアモジュールを定義するコンピューター読み取り可能な指令が記録されているコンピューター読み取り可能な保存メディアであって:
(a)少なくとも一の個体から得られた単離された血小板のサンプルにおいて決定されたバイオマーカーレベルおよび代理マーカーレベルを表すデータを保存しこれにアクセスするための指令;
(b)正規化モジュールを通じてバイオマーカーレベルを代理マーカーレベルに対して正規化するための指令であって、それによって該バイオマーカーの正規化レベルが生成される、指令;
(c)呼び出されたコンテンツをユーザーに表示するための指令であって、呼び出されたコンテンツが正規化バイオマーカーレベルを含む、指令、
を含む、コンピューター読み取り可能な保存メディア。
【請求項29】
バイオマーカーの正規化レベルと保存デバイスに保存されている参照データを比較モジュールを用いて比較し、それによってバイオマーカーレベルの変化を決定するための指令をさらに含む、請求項27記載のコンピューター読み取り可能な保存メディア。
【請求項30】
代理マーカーが、重合化アクチンまたは単量体アクチンである、請求項28記載の方法。
【請求項31】
少なくとも一の個体から得られた単離された血小板のサンプルからデータを取得するためのコンピューターシステムであって:
(a)サンプルを保持するための試料コンテナ;
(b)読み出し情報を決定するよう構成された決定モジュールであって、読み出し情報が、
1)血小板数、血小板濃度、または血小板容積の代理マーカーの量を表す情報、および
2)サンプル中で測定されたバイオマーカーの量を表す情報、
を含む、モジュール;
(c)決定モジュールから出力されたデータを保存するよう構成された保存デバイス;
(d)バイオマーカーレベルを表す情報を、代理マーカー量を表す情報に対して正規化するよう構成された、正規化モジュール;
(e)呼び出されたコンテンツをユーザーに表示するための表示モジュールであって、呼び出されたコンテンツが正規化バイオマーカーレベルを含む、モジュール、
を含む、システム。
【請求項32】
正規化モジュールから得られたデータを保存デバイス上の参照データと比較し、それによってバイオマーカーレベルの変化を決定するよう適合された比較モジュールをさらに含む、請求項31記載のコンピューターシステム。
【請求項33】
代理マーカーが、重合化アクチンまたは単量体アクチンである、請求項32記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−511730(P2013−511730A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540148(P2012−540148)
【出願日】平成22年11月23日(2010.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/057786
【国際公開番号】WO2011/063389
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
2.フロッピー
3.UNIX
4.EEPROM
【出願人】(596115687)チルドレンズ メディカル センター コーポレーション (25)
【出願人】(501131014)オーソ−クリニカル・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド (30)
【氏名又は名称原語表記】Ortho−Clinical Diagnostics, Inc.
【住所又は居所原語表記】100 Indigo Creek Drive, Rochester, NY 14626−5101, U.S.A.
【出願人】(503146324)ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド (24)
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
【Fターム(参考)】