説明

血液の凝固を検出するためのデバイスと方法

体液サンプルの凝固判定のために読み取り機と共に使用されるデバイスに関する。このデバイスは、体液サンプルを保持する少なくとも一のチャンバー構造を備える。流体サンプルと反応可能な凝固試薬がデバイスに導入される。チャンバーは、磁場の影響により移動可能な複数の粒子か、磁場の影響により移動可能な一の粒子を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液サンプルの凝固を検出するための方法、デバイスおよびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、主として、血清、血漿、あるいは、血液全体についてのプロトロンビン時間(prothrombin time)の判定に関するが、これに限るものではない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の第1の態様として、凝固試薬(coagulation reagent)との相互作用により、体液サンプルの凝固状態を判定する方法を開示する。
以下の(a)から(c)のステップは、同時または任意の順序にて実行される。
この方法は、
(a)磁界の影響によって移動可能な粒子(particle)を保持するチャンバー(chamber:閉鎖された小部屋)を備えるデバイスに、体液サンプルを注入するステップ、
(b)第1および第2の磁界を連続的に発生させ、チャンバー内にて粒子を前後運動させるステップ、
(c)粒子の前後運動の変化を確かめるためにチャンバーを光学的に監視するステップ、
(d)粒子運動の変化と体液サンプルの凝固状態との相関関係を特定するステップ、
を備える。
【0004】
ステップ(a)の前に凝固試薬を入れておいてもよい。
【0005】
本発明の第2の態様として、体液サンプルの凝固を判定する読み取り機と共に使用されるデバイスを開示する。
この装置は、体液サンプルを保持するチャンバー構造を備える。体液サンプルと相互作用可能な凝固試薬がデバイスに入れられる。チャンバーは、磁界の影響によって移動可能な多くの粒子を含む。
【0006】
各粒子は、5μm以上の長さの主軸を備えることが好ましい。各粒子の主軸の長さは5μmから12μmの間であることがより好ましい。各粒子の主軸の長さは実質的に10μmであれば更によい。
【0007】
本発明の第3の態様として、体液サンプルの凝固を判定する読み取り機と共に使用される装置を開示する。
この装置は、体液サンプルを保持するチャンバーを1以上含む構造となっている。体液サンプルと相互作用可能な凝固試薬がデバイスに入れられる。少なくとも1つのチャンバーには、磁界の影響によって移動可能な一つの粒子が含まれる。
【0008】
粒子の主軸の長さは300μmから700μmの間であることが好ましい。粒子の主軸の長さは400μmから600μmの間であればより好ましい。粒子の主軸の長さは実質的に500μmであれば更によい。
【0009】
粒子の厚さは50μmから100μmの間であることが好ましい。粒子の厚さは実質的に70μmであれば更によい。
【0010】
粒子の形状は、円盤(disc)、球体(sphere)、円環体(torus)、楕円形(ellipsoid)、偏球形(oblate spheroid)のうちのいずれかであることが好ましい。
【0011】
本発明の実施例が目的とするところは、適当な磁界の影響により1以上の粒子がチャンバー内にて前後運動するデバイスを提供することにある。
【0012】
本発明の実施例は、体液サンプルの凝固状態を判定し、可動部を必要としない読み取り機との使用に適している。このような読み取り機は、光学センサによって少なくとも一の粒子の位置を監視する。体液が凝固すると、少なくとも一の粒子の動きが小さくなる。
【0013】
本発明の実施例の別態様は、チャンバーの寸法と粒子の寸法の比率に関する。必要な体液サンプルの量を小さくする上で、チャンバーはなるべく小さい方がよい。本実施例におけるチャンバーは、長さ1.6mm、幅1mm、高さ125μmとなる。
【0014】
本発明の実施例においては、チャンバー内で粒子が前後運動するときの運動軸は、粒子の長さ方向およびチャンバーの長さ方向となるように設定される。この実施例の場合、粒子の長さとチャンバーの長さの比は、0.1から0.5の間であることが望ましい。0.2から0.4の間であればなおよい。この実施例の場合、粒子の幅とチャンバーの幅の比は、0.1から0.75の間であることが望ましい。更に、この実施例の場合、粒子の高さとチャンバーの高さの比は、0.2から0.5の間であることが望ましい。
【0015】
本発明の実施例において、粒子の体積とチャンバーの容積の比は0.1から0.5の間であることが望ましい。この比が0.42であればなおよい。
【0016】
本実施例においては、体液サンプルの凝固を判定する読み取り機と共に使用されるデバイスが提供される。デバイスは、体液サンプルを保持するチャンバーを含む構造となっている。体液サンプルと相互作用可能な凝固試薬がデバイスに入れられる。チャンバーは、磁界の影響によって移動可能な粒子を含む。
本実施例においては、体液サンプルの凝固を検出するために、第2の態様のデバイスと共に使用する読み取り機を開示する。この読み取り機は、第1および第2の磁界を連続的に発生させることによりチャンバー内で粒子を前後運動させる磁界手段と、チャンバーに設置され粒子の前後運動の変化を検出する光学監視手段を備える。
【0017】
本発明の更に別の態様においては、体液サンプルの凝固を判定するシステムを開示する。このシステムは、磁界駆動手段とチャンバー構造を備え、チャンバーは磁界の影響により移動可能な粒子を含む。磁界駆動手段は、チャンバー内にて粒子を前後運動させるため、粒子に作用できるように設置される。デバイスは、粒子の位置によってその入力部分が遮蔽される1以上の光検出手段を備える。
【0018】
更に別の態様として、本発明はテストストリップ(test-strip)・デバイスの製造方法を開示する。
【0019】
更に別の態様として、本発明はソレノイド装置についても開示する。
【0020】
更に別の態様として、本発明は体液サンプルの凝固時間測定方法についても開示する。
【0021】
以下における「凝固」という単語は、プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time)、プロテインC活性時間(protein C activation time)、トロンビン時間(thrombin time)といった「かたまり」の形成に至る時間ベースの計測という意味を含む。本発明の特徴を実装するデバイスやシステムは、フィブリン形成(fibrin formation)や血小板凝集(platelet aggregation)による粘度変化を計測してもよい。
【0022】
凝固を引き起こす試薬のタイプは、試験の内容次第である。試薬は、蛇毒から生成される酵素や、トロンビン、その他の活性化プロテアーゼ(active proteases)などの酵素、ケイ酸塩(silicates)、フェノール派生物(phenol derivatives)などの界面活性物質、トロンビン、コラーゲン(collagen)、アドレナリン(adrenalin)、アデノシン酸(adenosin diphosphate)などの活性化血小板(activated blood platelets)や血小板活性化物質(blood platelet-activating substances)などから選択されればよく、また、緩衝物質(buffering substances)やカルシウム塩化物(calcium chloride)、リン脂質(phospholipids)などの凝固促進物質(coagulation-supporting substances)を追加してもよい。
【0023】
実施例における粒子は、微少残留磁気や保磁力のある永久磁石ではない。粒子は、各ソレノイドの2極間で往復運動可能である。
【0024】
実施例におけるデバイスでは、側壁によってつながれた外部の上面と下面により、流体の通路を形成する。テストストリップは、実装上、体液サンプルを導くサンプルエントリーポート(sample entry port)を備え、更に、1以上の流体導管、1以上の流体チャンバーを備えてもよい。サンプルエントリーポート、流体導管、サンプル・チャンバーは、サンプルエントリーポートから注入されたサンプルが、流体導管を流れて、流体チャンバーに至るような流路を形成する。更に、流体出口ポートの下流に毛細管中断部(キャピラリー・ブレイク:capillary break)のような体液サンプルの流れを食い止める手段を設け、流体導管をこの流体出口ポートに接続してもよい。このデバイスは、デバイス内のガスを排出して、デバイスを体液サンプルで満たすための排気口を備えてもよい。実施例における流体の体積は、毛管引力(capillary action)によって、デバイスを通って、あるいはデバイスの内部に流体を導くことができる大きさである。毛管現象だけで流体の流れを制御することにより、流体の流れがデバイスの向きや流路の向きに依存しなくなる。つまり、重力に対する依存性がなくなるという点で好ましい。あるいは、動電ポンプ、重力、重力と毛管引力の組合せのように、毛管引力以外の力を使って流体をデバイス内で移動させてもよい。ひとつの流体導管は、2つの流体チャンバーに流体を供給するために二股分岐したり、3つの流体チャンバーに流体を供給するために三股分岐するようなサンプルエントリーポートと接続されてもよい。あるいは、1以上の流体導管がサンプルエントリーポートと接続されてもよい。
【0025】
体液サンプルの凝固を促進したり抑制したりするために凝固試薬を使う試験では、凝固試薬をチャンバーに入れる。代わりに、あるいは、更に、流体チャンバーから上流のデバイス内の別の場所に凝固試薬を入れてもよい。たとえば、適切な凝固試薬を第1の試験用チャンバーに入れ、別の凝固試薬を第2の試験用チャンバーに入れれば、同一デバイス内にて別々の実験が可能となる。
【0026】
実施例において、テストストリップという流体装置は、流体領域自体を確定するハウジング(housing)を備える。テストストリップの材質は、ガラス、ポリカーボネート(polycarbonate)のようなプラスチック素材など、適切なものを選べばよい。実施例においては、光透過な材質が選ばれる。
【0027】
実施例において、読み取り機は、外部のハウジングだけでなく、磁界駆動手段、デバイスとかみ合わせたり受け止めるための手段、装置内に正確にデバイスを設置する位置手段、光源と光検出手段、光検出手段の検出信号を処理する処理手段、電源または電力取得手段、エラーメッセージなどのメッセージや処理手段の処理結果を表示してユーザに指示する表示手段、情報を保持する記憶手段を備える。読み取り機は、加熱手段を搭載してもよい。加熱手段は、体液サンプルを加熱し、計測中の温度を一定値に保つ。読み取り機は、国際標準化比(International Normalized Ratio)、すなわち、INRに基づいて結果を表示する。通常、デバイスは使い捨てであり、読み取り機は再利用可能である。デバイスと読み取り機は1回限りの使い捨て部品であってもよい。
【0028】
凝固時間は、粒子が移動しなくなったといえる時間、すなわち、粒子が移動停止したり、移動停止したといえる程度に移動速度が落ちたと読み取り機が判定する時間として定義されてもよい。読み取り機による粒子の移動停止判定では、粒子はチャンバー内でもはや往復運動を継続しておらず、実際には点の周りにつきまといつつ所定方向に動こうとしても、凝固中のサンプルによって阻まれているときに、移動停止と判定してもよい。凝固時間判定の別例として、凝固プロセス中に粒子の動きの変化またはその変化率を判定するためにデバイスを使用してもよい。サンプルが凝固したと判定すべき時間は、ある程度、磁界の強さ、ソレノイドのスイッチのタイミングによって決まる粒子の存在時間、粒子のモーメンタムを決定づける粒子形状、サイズ、質量などの要因によって決定される。粒子のモーメンタムが大きすぎる場合には、血液がかなり凝固してしまっても粒子は動き続ける。一方、粒子モーメンタムが小さすぎる場合には、わずかな線維状フィブリンや小さなかたまりでも粒子は停止することになる。このため、磁界の強さは計測期間中において一定である必要はなく、たとえば、粒子速度や試験時間に応じて変化させてもよい。
【0029】
実施例では、粒子の存在が検出されるか否かという観点から凝固開始を決定する上で、より絶対的なカットオフポイントを明確にするために、磁界の影響を受ける粒子を一つだけ使う。別の実施例においては1以上の粒子を使用する。1以上の粒子により、チャンバー内の体液サンプルにおける粒子が運動の軌跡を作ることができる。この場合、凝固時間の決定は絶対的なものとはならない。更に、適切なサイズの単一粒子は、多くの小さな粒子ではできないような大きなかき混ぜる点でも有利である。加えて、チャンバー内における粒子の前後運動により、2〜12μm程度の粒子サイズの多くの粒子が赤血球細胞を押しのける様子を観察できる。
【0030】
ただし、単一粒子には、潜在的に弱点がある。単一粒子は、流体サンプルの広範囲な部分における発生事象を明らかにしなければならない。製造過程において、チャンバーの同じ場所に粒子を置けば、粒子の存否を計測しやすくなる。実施例では、粒子は、絶対的なサイズという点でも、チャンバーの体積に対する粒子サイズの比率という点から見ても大きめのものを選択する。粒子の寸法範囲は、絶対値の面から、および/または、チャンバーの体積に対する粒子数の比率、体液の体積に対する粒子サイズの比率、流体チャンバーにおいて粒子が移動する実行横断面積に対する粒子の横断面積の比率などから決められてもよい。マイクロ流体(microfluidic)の観点から見ると、流体に対する粒子の横断面積の比率が1/9以下のとき、最適に近い流体の流れが生成される。
【0031】
粒子が一様形状でないときには、粒子の横断面積は、最大横断面積か粒子の任意の点における長さ方向についての縦横比により定義されてもよい。
【0032】
典型的実施例において使用される粒子の形状は、ほぼパンケーキ型であり、その直径は400〜600μm、厚さは70μmである。この実施例における流体・チャンバーは、高さ175μm、幅1000μm、長さ2000μmの350nl(ナノリットル)の体積となり、粒子の横断面積と粒子が移動する横断面積の比率はほぼ1:5となっている。上記した寸法のチャンバーを備えるデバイスを図8に示す。この場合においては、2つのチャンバーと300nl分の流体導管があるので、合計体積は1μlとなる。
【0033】
別の実施例においては、粒子は異なるサイズ、形状、密度をもつ。粒子のサイズは、チャンバーの体積や横断面積の縦横比、デバイス製造の容易さや粒子の存否を判定する目的からみた品質管理面といった実際的考慮などから決定される。粒子は、チャンバー内における粒子運動が流体の注入や排出によってじゃまされたり影響をうけたりしないようなサイズや形状であれば理想的である。たとえば、体液サンプルの中で粒子が再停止しやすくなるように粒子の外表面をカーブさせるなど、その他の形状を考慮してもよい。1以上の粒子を使うときには、各粒子のサイズや形状はさまざまであってもよく、たった一つの粒子を使うときのサイズと同じでなくてもよい。
【0034】
粒子の形状や性質が結果に影響することが確認された。形状によっては、液体中の粒子の動きは風変わりなものとなった。上記典型的な実施例では、球体を潰してパンケーキ形状にしている。
【0035】
粒子は、金属シートから、たとえば、パンチング、切断、レーザー、化学腐食、切断後の部分的な化学腐食などにより、円盤として形成されてもよい。残留磁気を減少させるといわれる珪土(silica:シリカ)を鉄粒子にまぜると、粒子の移動属性が変化する。
【0036】
粒子は、多孔性または非多孔性である。実施例によっては、凝固試薬が粒子自体に入り込むように多孔性の粒子を使う。あるいは、凝固試薬を粒子の表面にコーティングしてもよい。これにより、凝固試薬を別途チャンバーに入れる作業が不要となる利点がある。
【0037】
チャンバーの形状は任意・便宜的に選択すればよく、その体積は、通常、100nlから10μlである。デバイスに必要な容積はチャンバーの数による。2つのチャンバーを備えるデバイスの場合、必要な容積は、だいたい250nlから25μlである。
【0038】
1以上の流体チャンバーを持つテストトリップは、(チャンバーの内部に)磁界の影響を受ける単一の粒子を持つ。実際、磁界の影響により、粒子はチャンバー内を前後左右に移動する。磁界は、2以上のソレノイドを含むソレノイド・システムのような磁界駆動手段により発生する。ただし、磁界駆動手段は、1つのソレノイドと1つの永久磁石を備えてもよい。
【0039】
実施例において、テストストリップは、下位層、中位層、上位層の3薄層構成となっている。中位層は、流体の通路や流体チャンバーの幾何形状を確定し、上位層と下位層はそれぞれ流体チャンバーの上面と下面を確定する。実施例において、各流体チャンバーは、体液サンプルを流体チャンバーに導く入口流路と、チャンバーを適切に満たすための排出流路につながっている。
【0040】
実施例において、2セットの光学手段がテスト・デバイスのチャンバーごとに設置され、チャンバーの別々の位置を光学的に監視できるようになっている。これにより、各位置における磁気粒子の存否が検出される。別の実施例として、1セットの光学手段を、チャンバー中部などのチャンバー領域を光学的に監視できるように設置してもよい。
【0041】
チャンバーの入口ポートと出口ポートは正反対に位置する。気泡を避けるため、最初は粒子はチャンバーの入口側か出口側に置かれる。
【0042】
テストストリップの流路の幾何形状を定める中位層は、全体的または部分的に切断される。排出通路は部分的に切り出された通路であり、末端部ではより広く完全に切り出された通路となっている。こうして、キャピラリーブレイクを形成してテストストリップからの流出を防いでいる。
【0043】
上記実施例では、チャンバーごとに光学手段を2セット分設置する。光学手段は、粒子の移動態様を捉えられる向きに設置され、チャンバー端の粒子を検出する。これにより正確で安定した結果を得られる。光学手段を1セットだけ用いる場合、凝固開始時に粒子がうろうろと動いて光学検知領域を出入りすると、粒子運動がまだ継続しているかのような錯覚を生じさせかねない。2セットの光学手段を、たとえば、チャンバーの両端に設置すれば、粒子の存否をもっと高い確度にて特定できる。
【0044】
極端に流体チャンバーのサイズを小さくすると、チャンバーの近くに2つの光学検知器と2つのLEDを設置するのが難しくなる。このために光ファイバーを使ってもよい。すなわち、LEDなどの光源やフォトダイオードなどの光学検知器をチャンバーから離して設置した上で、光ファイバーと光学的に接続する。光源や検知器よりも小さな光ファイバーであればチャンバーの近くに設置できる。別例として、光ファイバー以外の光導管を使ってもよい。たとえば、流体導管自体を光導管として使ってもよい。別例として、十分にサイズの小さい光学手段を使ってもよい。光源と光検知器をチャンバーの同じ側に設置してもよい。これらの実施例の実際上においては、光源の光はチャンバーに導かれ、反射されて光検知器に向かう。別例として、光源と光検知器をチャンバーの対向面、または、別々の面に設置してもよい。更に別例として、プラスチックの光ファイバーから空気経路など、さまざまな光伝達部品をつかってもよい。更に別例として、注文設計による光学組立部品を乗せたダイ(die)を使ってもよい。
【0045】
光学手段は、チャンバーの流体特性の変化を判定することにより、チャンバー内における体液サンプルの存否を判断してもよい。光学手段は、チャンバーに体液が流入する時間や、チャンバーが満たされる時間を判定してもよい。この情報は、製造プロセス開始合図として使われる。
【0046】
実施例では、凝固反応制御のために2つのチャンバーを使う。一方のチャンバーには凝固試薬が含まれ、凝固時間の検出に使われる。他方のチャンバーは、血液サンプルにかかわらず凝固時間を固定化する制御用試薬を含む。制御試薬は、凝固反応を遅らせたり、抑止してもよい。
【0047】
チャンバーごとに2つずつ、計4つのソレノイドを使ってもよいが、高価で重くなる。
【0048】
本発明の別の態様は、体液サンプルの凝固を判定する光学読み取り機と共に使用されるデバイスに関する。このデバイスは、サンプルを保持するチャンバーと体液をチャンバーに入れるための通路とを備える。通路とチャンバーを合わせても3μl未満となる。
【0049】
デバイスの容積は1μl未満であってもよい。
【0050】
デバイスの容積は250nl未満であってもよい。
【0051】
デバイスの容積は、実質的に100nlであってもよい。皮膚を突き刺す手段を備えてもよい。この手段は、導管形状となっており、少なくとも流路の一部を形成する。
【0052】
本発明の別の態様として、読み取り機と共に使用するデバイスを開示する。デバイスは、移動可能な少なくとも一の粒子と、サンプルを含むチャンバーと、体液をチャンバーに導く流路とを備える。流路とチャンバーを合わせても3μl未満となる。読み取り機は光学式である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
本発明の典型的な実施例を、添付図面を参照しつつ以下に説明する。
【0054】
図1は、体液サンプルの凝固判定を行うシステム(100)の典型的実装例を示す。このシステム(100)は、テストストリップ(102)とソレノイド装置(108、110)を備える。図示のように、テストストリップは、通常、方形の2つのチャンバー(104、106)を備える。チャンバーは、血液や血液派生物などの体液を保持する。チャンバーにおいて凝固が計測される。本実施例においては、チャンバーごとに一つの磁気性の粒子(図示せず)を導入する。別例として、2〜10程度の少量の磁気性の粒子をチャンバーごとに導入してもよい。2つのソレノイド(108、110)はテストストリップ(102)の側方に置かれ、芯(図示せず)からチャンバー(104、106)の近くの末端部まで延びるアーム(108a、108b、110a、110b)を備えている。実際、いずれかのソレノイドに直流が供給されると、体液(図示せず)内にて停止していた磁気性粒子は、チャンバー内にてソレノイド方向に動き出す。他方のソレノイドを励磁されると、体液内にて粒子は反対方向に動く。凝固するするまでこのプロセスが繰り返される。
【0055】
チャンバーは都合のよい形状であればよく、その容積は、通常、100nlから10μlである。デバイスに必要な血液などの体液の体積はチャンバーの数次第である。2つのチャンバーを備えるデバイスの場合、必要体積は通常250nlから25μlである。
【0056】
チャンバー内を光学的に観測するために、検出用チャンバーの端の限定領域に対して光照射器(118a−d)による光照射と光検知器(116a−d)による光検知ができるように、検出用チャンバーは、それぞれ、4つの被膜していない直径0.5mmのプラスチック光ファイバと接続されている。上記実施例において光検知器(116)はフォトダイオードであり、光照射器はLED(118)である。光照射器はレーザダイオードであってもよい。
【0057】
磁気性粒子がチャンバー(104、106)内を通るとき、光検知器と光照射器の組み合わせは、チャンバー(104、106)下面からの光の反射によって、その光検知器・光照射器(116、118)によってカバーされているチャンバー(104、106)内領域に粒子が存在するか、どの時点で存在するかを判定する。
【0058】
上記した光検知器・光照射器によれば、ソレノイドの切換によって、いつ粒子がチャンバー内で移動停止したかを判定し、ひいては、いつ体液が凝固するかを判定できる。また、粒子の移動時間を検出することもできる。
【0059】
図2においては、テストストリップ(102)は、厚さ125μmのPET層(103)から形成される。この層は、(後述する)上下層により挟まれ、25平方グラムの圧力で接着される。薄層(103)は、上記した2つのチャンバー(104、106)部を形成するように切り取られる。薄層(103)は、サンプル導入ノッチ(V字型の切り込み)(2)を備え、体液は共通入口流路(3)を通って二股分岐点(4)に至る。二股分岐点(4)において、共通入口流路(3)は、2つのサンプル入口流路(5、6)に別れ、それぞれのチャンバー(104、106)に至る。本実施例の各チャンバーの大きさは2mm×1mmである。各チャンバーは、排気口(11、12)に至る排出通路(9、10)を備える。排出通路(9、10)は、部分的な切り出しにより形成され、終端では完全な切り出しにより径が広がる通路となっている。これによりキャピラリーブレイクを作って、テストストリップ(102)からの流出を阻止している。
【0060】
実施例におけるチャネルやノッチの容積は以下の通りである。
入口ノッチ2=0.66μl。血液で満たされる層1の開口部まで加えると、合計でおおよそ2.25μlとなる。
共通入口流路3=0.71μl
サンプル入口流路5=0.12μl
サンプル入口流路6=0.42μl
排出通路9=0.05μl
排出通路10=0.05μl
チャンバー104、106=それぞれ350nl
総内部容積は、およそ2.05μlとなる。
【0061】
この実施例においては、入口ノッチ(2)の容積はおおよそ2.25μlであり、デバイスの残り容積は2.05μlである。入口ノッチ(2)は、サンプル液により満たされ、貯蔵庫であるチャンバーに供給する。ユーザは、(たとえば、指先を刺した場所などの)供給源からサンプルをノッチ(2)に入れる。チャンバーが満たされるまで持ち続ける必要はない。
【0062】
対照的に、こういったノッチや、液体を注ぐための同等の手段がなければ、ユーザは取り扱いにくいデバイスを持ち続けなければならない。注ぐのを停止すると液体の注入も中断してしまうので、気泡ができてしまう可能性がある。このため、特に、震えや運動障害(motor disorder)があったり、高齢のユーザにとって有効である。
【0063】
通常、デバイスの残り容積よりもサンプルの注入される貯蔵庫が大きければ、貯蔵庫に向けて注入される液体はデバイスを満たすことができる。液体貯蔵庫の近くにある流体導管の毛細管現象が貯蔵庫の毛細管現象よりも大きければ、貯蔵庫を空にしようとして液体は自動的にデバイスに引き込まれる。
【0064】
テストストリップは、125μm厚のPETを切り取ることによって形成される。切り出し領域近くの材質の熱損を最小化するため、10WのCOレーザを70%の出力、125mm/sの速度にて、2回通過させる。ただし、
・排出通路(9と10)は、1回だけ切り出され、深さ方向にカットされる。デバイス内の血液量を最小化し、サンプルが排出口に至るところで深さを変化させることによりキャピラリーブレイクを形成する。
・共通入口流路(3)についてはレーザーを5回通過させ、その切断面積は、少なくとも、サンプル入力流路(5と6)の合計面積と等しくなる。このようなレーザカットパターンによれば、共通流路を対称的に分岐させやすくなる。
・第2サンプル入口流路(6)についてはレーザを3回通過させ、第1サンプル入口流路(5)に対して切断面積を拡大している。液体はこの幾何構造に沿って移動するため、液体薬品の量が少なくなり、反応用チャンバー(104)と反応用チャンバー(106)を満たすのに要する時間が実質的に同じくらいとなる。
【0065】
本発明の態様として、レーザによってマイクロ流体の特徴を発揮させる方法を示す。通常は、レーザーによって基層にパターンを刻み、基層の特定部を削り取ってチャンバーなどのマイクロ流体として特徴的な部分を作る。一方、流体導管のようなマイクロ流体に特徴的な部分は、レーザ自体の切断線によって形成される。上記設例では、COレーザを使った。比較的低出力であるため、COレーザはこのような特徴部分を形成するために基層を溶かす。好ましい変形例として、基層を蒸発させるエキシマレーザ(excimer laser)のような高出力レーザを使ってもよい。こちらの方がよい結果を得られるかもしれない。こういった方法によるマイクロ流体構造には、流体の通路、チャンバー、段差流体要素(stepped fluidic elements)なども含まれる。真ん中に素材を残して間隔をおいて部分的に基層をカットし、突き出し構造を形成することにより、規則形状、あるいは、不規則形状の柱形状を作ることができる。基層に対してレーザービームの角度を変えれば傾斜した壁を作ることもできる。流体の経路はまっすぐであってもよいし、カーブしてもよい。
【0066】
薄層(103)の切断面(3−3’)を図3に示す。剥離ライナー(release liners)(301と305)は、薄層(303)上の接着層(302と304)を被膜する。
【0067】
トロンボプラスチン(thromboplastin)凝固試薬は、アセトン・ドライド・ブレイン・パウダー(ADP:acetone dried brain powder)から作られる。37℃で30分間、0.85gのNaClと0.05gのデオキシコールエステル(deoxycholate)の100ml溶液に2.5gのADPと2.5gのセライト(Celite)を混ぜ合わせる。培養後、溶液を、20℃1000gにて15分間、遠心分離する。上澄みをデキャント(decant)すると、0.03%(v/v)フェノールとなる。得られた溶液を濾紙によって濾過すると、3%(w/v)サッカロース(sucrose)と1%(v/v)のフィコル(ficol)70となる。
【0068】
トロンボプラスチン溶液をエアブラシ容器に注ぎ、100μm厚の透明PETフィルム(403)に吹き付ける。このとき、針の位置を2.5に設定して、サンプル用のチャンバー(104、106)の底面となる領域に吹き付ける。
【0069】
XY圧盤上のPETフィルムを30mm/秒で動かしながら、トロンボプラスチン溶液をEFD流体ハンドリングシステムによって吹き付ける。吹き付けられたフィルムは、赤外ランプによって10分間、45℃に加熱することによって乾かされる。吹き付けられたトロンボプラスティン領域が反応チャンバーの下になるように、2層を重ねる。吹き付けられたフィルムを125μmのPETフィルムに揃え、125μmPETフィルムから剥離ライナー(301、305)を剥がした後に2つの層をプレスする。
【0070】
図4は、フィルム(403)に接着される薄層(103)について4−4’の切断面を示す。ここでは、上位層(図示せず)を接着してデバイスを被膜する前のレーザーで切り出されたチャンバー(104)を示している。チャンバー(104)は、チャンバー(104)内にトロンボプラスチン領域(404)を持つ。本発明の態様として、流路に試薬を効率的に提供する方法を示す。試薬をベース基層に注入したあと、別の基層またはベース基層の一部をベース基層の上に薄く延ばしたりたたみこむ。これにより、流体的特性や流体的特性に対する試薬の位置を決める。基層にトロンボプラスチンを堆積させれば、試薬投入手段の位置やその投入量や正確に決めなくてもすむので、試薬をチャンバー内に注入しやすくなる。別の層を組み立てて試薬・チャンバーを作る前にあらかじめ下位の基層に試薬を注入しておけば、たとえば、大きな下位基層に縞のバンドを作ることもできる。複数のテストストリップそれぞれを確定し、複数のマイクロ流体的特徴を有する上位層は、試薬を有する基層上に薄く引き延ばされる。試薬は下位基層上にあるので、上位層を設置すると、試薬はチャンバー内に位置することになる。チャンバーをはみ出た試薬はうまく2層間に挟まれてマイクロ流体経路の一部とはならないので、このようなテストデバイスの製造方法であれば、試薬を正確にポジショニングする必要がない。このようにして、各薄層部品を組み立てたあと、個々のテストストリップをレーザをつかって適宜切り出す。
【0071】
磁気性の粒子は、2枚の(強化)HSS鋼(high-speed steel)の間で30秒間1000psiの圧力をかけられることにより、0.05%〜5%のシリコンとリン酸塩面を含む(直径250〜280μmの)10mg鉄球から生成する。できあがった円盤は分別され、直径400〜600μmで正規形状のものが以降のステップで使用される。
【0072】
図5は、できあがった円盤(500)の模式図である。円盤は直径(501)が400〜600μm、厚さ(502)が70〜80μmである。
【0073】
剥離ライナー(301)を取り除いて、各反応チャンバー(104、106)の入口近くにひとつの円盤(500)を置く。
【0074】
次の図6において、100μmのPETフィルム(603)の断面は、本来的に親水性の面が反応チャンバー(104、106)の内部に向くように置かれる。3つのプラスチック層(103、403、603)が互いに接着するように、テストストリップをプレスする。
【0075】
ソレノイド・システムは、ソレノイドのアームと流体チャンバーを十分に近づけ、テストデバイスを小さくし、テストストリップを短く幅広にし、血液の体積が小さてすむような形状である。ソレノイドは、磁界を発生させる上での電力消費を最小化し、放熱による電力ロスを抑制するように設計される。上記実施例においては、ソレノイドのロスは50mW未満である。テストサンプルの温度を乱さないという面でも熱消費を抑制することが望ましい。
【0076】
各ソレノイド(700)は、単方向複数巻き(701)であり、単一芯(図示せず)と2つのアーム(702、703)を備える。これにより、2つのソレノイドだけで、各チャンバーにアームを近づけることができる(図8参照)。本実施例においては、アーム(702、703)の長さは互いに異なる。これによりテストストリップを短くできる。これにより流体の入口流路が短くなるので、血液量も少なくてすむ。変形例としては、アームの長さを同じ長さにしてもよい。
【0077】
図8に示す流体チャンバーの実装では、高さ175μm、幅1000μm、長さ2000μmの350nlの体積となり、粒子の横断面積と粒子の移動する横断面積の比は、おおよそ1:5となる。この場合、2つのチャンバーと300nl分の流体導管により、合計容積は1μlとなる。
【0078】
先述の実施例においては、各ソレノイドのアーム(702、703)は、末端部が二股に分岐しており、テストストリップは二股フォークに差し込まれるかたちとなる。ソレノイドのアームをチャンバーに近づけても、テストストリップに強さや弾性を付与できるので、幅の広いテストストリップを使うことができる。「二股分岐」により、5層構造のテストストリップの下側にもチャンバーを設けることが可能となり、2つのソレノイドで同時に4つのチャンバーを監視することもできる。実施例において、フォークは、テストストリップをテストデバイスに正しく設置するための位置手段として機能する。実施例において、ソレノイド全体の長さと幅がソレノイド本体自体の長さよりも大きくなるように、ソレノイドのアームがソレノイド本体から外に伸びている。ソレノイドのアームは、二股以上に分岐するフォークであってもよい。
【0079】
上記したアーム付きのソレノイドによれば、2つではなく1つのソレノイドですますこともできる。これは、読み取り機の全体としてのサイズや重さの抑制だけでなく、コスト抑制にも結びつく。
【0080】
図8に示すように、2つのソレノイド(801、802)は、テストストリップ(102)を囲むように設置される。
【0081】
磁界によってチャンバー(104、106)の粒子にかかる引力は、磁界の強さと磁界の傾きの積に比例する。ソレノイド・アームの幾何形状は、計測チャンバーにおいて粒子を引きつける磁界の形状を決定する。幾何形状とは、両ソレノイドの大きさと形状、計測チャンバー内の粒子の大きさと形状、計測チャンバーの相対的な位置関係の組み合わせである。各ソレノイドは、時間間隔をおいてオンされ、励磁されたソレノイドによる磁界の流れは、ソレノイド・アーム部品の間を横切る。粒子、アーム、非励磁状態のコイルの芯の比較的高い透磁率により、この流れを大きく引き寄せる。このようにして、磁界の形状はチャンバーを横切って粒子を引きつける形状となる。
【0082】
図9に示すように、時間間隔をおいて、ソレノイド駆動回路はソレノイドを駆動する。
【0083】
500msのタイミングサイクルにて2つのソレノイド(801、802)のスイッチが切り替わる。サイクルが開始する0ms時点(903)では、第1のソレノイド(802)が駆動される。5kHz周波数にてソレノイドを切り換えるバッテリー電圧によってコイルは駆動される。バッテリー電圧に応じてパルス幅は調整される。スイッチ電流は、コイルの抵抗とインダクタンスによって自己平滑化され、コイルには継続的に1.5V相当の直流電流が供給される。100msが経過すると(904)、第1のコイル(801)はオフされる。サイクルにおいて250msが経過すると(905)、第2のソレノイド(802)は、ソレノイド1と同じ駆動条件にて駆動される。サイクルにおいて350msが経過すると(906)、このソレノイドはオフされる。500msが経過すると、サイクルは繰り返す(907)。
【0084】
図10に示すタイミングにしたがって、駆動回路はLED(118)を照射させ、検出回路は、光検出器(116)からの信号を検出する。ソレノイドの駆動波形と同期する500msのタイミングサイクルにて、4つのLED(118)のスイッチが切り替わるようにサイクルを調整する。サイクルは、0ms時点(915)において既にスイッチオンとなっているチャンバー(106)の第1のLED(118a)から開始する。サイクルにおける100ms時点(916)にこのLEDがスイッチオフされる前に、光ファイバーを通して該当する光検出器(116a)の信号を測定する。100ms経過時点で、チャンバー(106)の第2のLED(118b)がスイッチオンされる。サイクルにおいて150msが経過し(917)、このLEDがスイッチオフされる前に、光ファイバーから該当する光検出器(116b)の信号を測定する。150ms経過時にチャンバー(104)のLED(118c)がスイッチオンされ、200ms経過時(918)にスイッチオフされる前に、光ファイバーを通して該当する光検出器(116c)の出力が計測される。200ms経過後(918)、チャンバー(104)の別のLED(118d)がスイッチオンとなる。250ms経過時(919)に光ファイバーを通して該当の光検出器(116d)の出力が計測される。このLEDは、サイクルにおける350ms経過時(920)まで照射され、スイッチオフされる前に、光検出器の出力が再計測される。サイクルにおける350ms経過時(920)、チャンバー(104)の別のLED(118c)が照射される。サイクルにおける400ms経過時(921)にスイッチオフされる前に、光ファイバーを通して該当する光検出器(116d)の出力が計測される。400ms経過時(921)、チャンバー(106)の第2のLED(118b)がスイッチオンされる。サイクルにおける450ms経過時(922)にスイッチオフされる前に、光ファイバーからの光検出器(116a)の出力が計測される。サイクルの450ms経過時においてチャンバー(106)の別の第1のLED(118a)が照射され、サイクルの終わりである500ms経過時(923)において光ファイバーから光検出器の出力が計測される。切換サイクルはこうして繰り返される。これらの出力が単一経路から出力されるように、各検出器は電気的に接続されている。単一の信号処理手段で全ての計測を実行できるように、光探知手段と磁界波形をずらして同期させている。これにより、電子部品の量を減らし、読み取り機のコストや全体サイズを減らすことができる。
【0085】
各検出チャンバーのまわりに2組の光ファイバを設置する便利である。チャンバーの一端から入ってくる血液は、1組目の光ファイバによって検出され、チャンバーを満たす血液は、チャンバー内における2組目の光ファイバーによって検出される。これにより、血液が入ったり、満ちたりするタイミングを特定できる。
【0086】
上記から理解されるように、1サイクル内において検出用の窓から2計測がなされている。一つは、検出用の窓の中に粒子が存在しない(すべきでない)ときであり、もう一つは検出ウィンドウ内に粒子が存在する(すべき)ときである。このデータを使えば、チャンバー内における粒子の位置を特定できる。一つのチャンバーにつき2組の光ファイバを使うことによって、観察領域の一端において粒子が停止したり、移動を妨げられる様子を検出できる。このようにして、粒子運動にともなう光信号の変化を検出できる。
【0087】
チャンバーを探査する光学部品と共にソレノイド間に挟まれるテストストリップは、血液全体におけるかたまりの発生を検出する。指から採血した血液サンプルは、デバイスの一端に注入される。4つそれぞれのLEDが照射されるときの信号出力を図11に示す。血液が、第1のチャンバーへ流入するとき(1001)と第1のチャンバーを満たすとき(1002)、第2のチャンバーへ流入するとき(1003)と第2のチャンバーを満たすとき(1004)を観察できる。血液のかたまりは、どちらのチャンバーでも見ることができる(1005、1006)。
【0088】
実施例に示すデバイスは、チャンバーに流路を合わせても合計容積が3μl未満ですむ。容積2μlのデバイスは、図1に関連して説明した例から実現可能である。図1の例と図8の例のサイズを組み合わせると、1.5μl、1μl、350nlといった容積も可能である。特に容積を小さくして250nlからさらには100nlまで落とす場合には、特別な計測が必要となるかもしれない。そのような小容積デバイスでは、テストストリップに皮膚を刺すための針をつける。これにより持ち運び時の紛失を減らすことができる。自動的に血液をチャンバーに導くことができるように、針やランセットはマイクロ流体導管を備えてもよい。
【0089】
以上、本発明の実施例を説明した。発明自体は、記述された特徴部分に限定されるのではなく、添付の請求の範囲の全域にまで拡張される。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の特徴を実装するデバイスの模式図である。
【図2】図1のテスト・ストリップの一薄層についての平面図である。
【図3】図2の<3>−<3’>による部分的な断面図である。
【図4】下位層と図2の<4>−<4’>による断面図である。
【図5】本発明にて使用する典型的な磁気性粒子の模式図である。
【図6】図2の<3>−<3’>による断面図である。
【図7】本発明において典型的なソレノイドの斜視図である。
【図8】2つのソレノイドと組み立あわされたテストストリップの斜視図である。
【図9】ソレノイド操作のタイミングチャートである。
【図10】光照射と光検知のタイミングチャートである。
【図11】かたまりの発生を検知したときのグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液サンプルを保持するチャンバー(chamber)構造を備え、
体液サンプルと相互作用可能な凝固試薬(coagulation reagent)が自デバイス内に注入されており、
前記チャンバーは、磁場の影響により移動可能な複数の粒子(particle)を含むことを特徴とする、体液サンプルの凝固を判定するための読み取り機(reader)と共に使用されるデバイス。
【請求項2】
各粒子の主軸は5μmよりも長く、特には5μmから12μmの長さであり、特には、実質的に10μmであることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
体液サンプルを保持する少なくとも一のチャンバー構造を備え、
体液サンプルと相互作用可能な凝固試薬が自デバイス内に注入されており、
前記少なくとも一のチャンバーは、磁場の影響により移動可能な一の粒子を含むことを特徴とする、体液サンプルの凝固を判定するための読み取り機と共に使用されるデバイス。
【請求項4】
粒子の主軸は300μmから700μmの間の長さであり、特には400μmから600μmの間の長さであり、特には実質的に500μmの長さであって、特には粒子の厚さは50μmから100μmの間であり、特には実質的に70μmであることを特徴とする請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
粒子の形状は、円盤(disc)、球体(sphere)、円環体(torus)、楕円形(ellipsoid)、偏球形(oblate spheroid)のうちのいずれかであることを特徴とする請求項3または4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記チャンバーは、2個から10個の粒子を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項7】
粒子は、入口ポートまたは出口ポート側に初期設置されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のデバイス。
【請求項8】
粒子の形状は、円盤形状であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のデバイス。
【請求項9】
前記構造は複数の薄層により形成されることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のデバイス。
【請求項10】
前記薄層の一つにより前記チャンバーの幾何形状を確定することを特徴とする請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記体液をチャンバーに導くための流路、を備えることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のデバイス。
【請求項12】
2つのチャンバーを備えることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のデバイス。
【請求項13】
前記チャンバー内において前記粒子を前後運動させるために第1および第2の磁界を連続的に発生させる磁界手段と、
前記チャンバーに設置され、前記粒子の前後運動の変化を特定する光監視手段と、
を備え、
請求項1から12のいずれかに記載のデバイスと共に使用され、体液サンプルの凝固を判定する読み取り機。
【請求項14】
前記光監視手段は、1組以上の光照射器・光検出器のペアを含むことを特徴とする請求項13に記載の読み取り機。
【請求項15】
前記光監視手段は、前記チャンバーの端部を監視するように設置されることを特徴とする請求項13または14に記載の読み取り機。
【請求項16】
前記光照射器と前記光検出器は、光導波管により前記チャンバーと光学的に接続されることを特徴とする請求項13または14に記載の読み取り機。
【請求項17】
前記磁界手段は、巻き、芯、芯から伸びる2本のアームを備える少なくとも一のソレノイドを備え、磁気回路(magnetic circuit)の一部を形成することを特徴とする請求項13から16のいずれかに記載の読み取り機。
【請求項18】
前記2本のアームは互いに長さが異なることを特徴とする請求項17に記載の読み取り機。
【請求項19】
磁界の影響により移動可能な粒子を含むチャンバー構造と、
粒子に作用できるように設置され、チャンバー内において粒子を前後運動させる磁界駆動手段と、
前記粒子によって選択的に入力部分が遮蔽される少なくとも一の光検出手段と、
を備える体液サンプルの凝固を判定するためのシステム。
【請求項20】
(a)磁界の影響によって移動可能な粒子を保持するチャンバーを備えるデバイスに、体液サンプルを注入するステップ、
(b)第1および第2の磁界を連続的に発生させ、チャンバー内にて粒子を前後運動させるステップ、
(c)粒子の前後運動の変化を確かめるためにチャンバーを光学的に監視するステップ、 (d)粒子運動の変化と体液サンプルの凝固状態との相関関係を特定するステップ、
の(a)〜(c)のステップを、同時または任意の順序にて実行し、凝固試薬との相互作用による体液サンプルの凝固状態を判定するための方法。
【請求項21】
凝固試薬は、(a)のステップの前にデバイスに注入されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
鉄球をプレスするステップを含み、
請求項1から19のいずれかに記載のデバイスのために円盤状の粒子を生成する方法。
【請求項23】
前記鉄球はシリカ(silica)を含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
体液サンプルを保持するチャンバーと、
体液サンプルをチャンバーに注ぐ流路(channel)と、を備え、
前記流路とチャンバーをあわせた容積は3μl(マイクロリットル)未満であることを特徴とする、体液サンプルの凝固を判定するための読み取り機と共に使用されるデバイス。
【請求項25】
前記容積は1μl未満であることを特徴とする請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
前記容積は250nl未満であることを特徴とする請求項24に記載のデバイス。
【請求項27】
前記容積は実質的に100nlであることを特徴とする請求項24に記載のデバイス。
【請求項28】
前記チャネルの少なくとも一部となる導管を形成する皮膚を貫通するための手段を備えることを特徴とする請求項26または27に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−538248(P2007−538248A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517434(P2007−517434)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002017
【国際公開番号】WO2005/114140
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(302044591)インバーネス・メデイカル・スウイツツアーランド・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (38)
【Fターム(参考)】