説明

血液の液体部分から血液の細胞成分を分離する装置および方法

【課題】全血サンプルを装置に適用すると、血液の液体部分に含まれる被検体の迅速で正確な検定のために、血液の液体部分から血液の細胞成分を分離して、所望の被検体の直接検定を可能とする。
【解決手段】血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する装置であって、第1の多孔性分離マトリックスと、第1の多孔性分離マトリックスに操作的に接触している、第2の多孔性マトリックスとを含む、第1の対向可能な構成部分(302)と、第1の対向可能な構成部分に取り付け可能な第2の対向可能な構成部分(304)とを含み、第2の対向可能な構成部分は、前記装置内の流体の流れを逆転するために使用するように配置された吸収体(306)を含み、血液の細胞成分からの血液の液体部分の分離が、有意な溶血なしに第1の対向可能な構成部分の第1および第2のマトリックスを通る流れにより起こる、血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に血液サンプルの特徴を決定することに関連する血液の液体部分から血液の細胞要素を分離するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体、特に生物学的に関心のもたれる被検体の検出および/または測定に使用される多くの分析システムには、クロマトグラフィー検定システムがある。
【0003】
そのようなクロマトグラフィーシステムは、迅速な診療室内診察のため並びに様々な状態および疾患の治療上のモニターのために医者および医学技術者によりしばしば使用される。そのようなクロマトグラフィーシステムは、また、そのような状態および疾患の家庭でのモニターのために患者自身により増々使用されてきている。
【0004】
そのようなシステムのうちで最も重要なものとして、溶剤が薄い平坦な吸着剤媒質を横断して移動する『薄層』システムがある。そのような薄層システムにより行われるテストのうちで最も重要なものとして、免疫検定があり、これは、抗原−抗体複合体を形成する抗原またはハプテンと対応する抗体との間の特異的相互作用に依存している。検出されるべき抗原は、たとえばH.ピロリ(H.pylori)−特異的抗体に対する血清学的検定でのようにそれ自体抗体となることができる。そのような場合、検出されるべき抗体も、特異的抗原に結合されることができる。別法として、検出されるべき抗原が、検出されるべき被検体に第1の抗体を結合する標識付けした第2の抗体を用いて間接的に検出される。臨床的に重要な分子の存在および/または量についてのテストの手段としてのこれらの免疫検定は、知られてからかなりたつものである。1956年には、J.M.Singerは、慢性関節リュウマチに関連する因子を検出する免疫に基づくラテックス凝集テストの使用を報告している(非特許文献1)。免疫検定は、クロマトグラフィー的な方法と装置とともに使用されており;この組み合わせは、免疫クロマトグラフィーとして知られている。
【非特許文献1】Singerら,Am. J. Med. 22:888−892(1956)
【0005】
免疫クロマトグラフィー検定は、検出されるべき抗原−抗体複合体の性質およびその複合体を生じるのに必要な一連の反応とに従って、2つの主要な種類『サンドイッチ』と『競合』に分けられる。
【0006】
テストストリップに行われるサンドイッチ免疫検定の例は、Grubbらの特許文献1およびTomらの特許文献2(両方ともここに参照してその記載を明細書の一部となす。)に記載されている。
【特許文献1】米国特許第4,168,146号明細書
【特許文献2】米国特許第4,366,241号明細書
【0007】
競合免疫検定では、顕示試薬(disclosing reagent)は、サンプル中に存在する標識付けされていない被検体と抗体による結合に対して競合する被検体または被検体類自体に典型的には結合する。競合免疫検定は、ハプテン(それぞれのハプテンは、一価であり、ただ1つの抗体分子を結合できる)のような被検体の検出に対して典型的に使用される。ハプテンの例には、治療薬たとえばテオフィリンおよびジゴキシン並びに乱用薬剤としてたとえばコカインおよびヘロインおよびこれらの代謝生成物がある。競合免疫検定装置の例は、Deutschらの特許文献3、Liottaの特許文献4およびBuechlerらの特許文献5(これらはここに参照してその記載を明細書の一部となす。)により開示されたものがある。
【特許文献3】米国特許第4,235,601号明細書
【特許文献4】米国特許第4,442,204号明細書
【特許文献5】米国特許第5,208,535号明細書
【0008】
テストストリップまたは同様な装置を用いる被検体について最もしばしば検定されるサンプルの1つは、血液である。最も典型的には、検定されるべき被検体は、血液の液体部分中の可溶性成分、すなわち血清または血漿である。この2つの成分は、凝血させた血液サンプルから得られる血清が、凝血過程の結果としてなくなったフィンブリノーゲンやある種のほかの凝血因子を欠く点を別として類似している。
【0009】
最も典型的には、臨床者あるいは技術者が、血液サンプル(しばしばかなり少量のサンプルである)を採集する。検定に全ての血液サンプルが使用できることが好ましく、血液サンプルからの血清または血漿のバルクの調製の必要を避けることが好ましい。しかしながら、ほとんどのテストストリップおよび同様の分析装置では、サンプルとしての全血液の使用、または細胞、特に赤血球を部分的に除いた血液サンプルの使用でさえ望ましくない。
【0010】
血液細胞、特に赤血球は、膜に沿う血清または血漿の流れを先ず遅くし、最終的には、膜の細孔を詰まらせて流れを止める。これは、無効なテストとなる。赤血球細胞またはほかの血液細胞の移動は、また、高いバックグランドを生じるか、または、検定装置により行われるテストの性能を妨害する。血液細胞は、微孔フィルターを通す濾過により除去されるが、そのようなフィルターの働きは、通常、遅過ぎて、細胞を含まない血液の効果的な検定を可能としない。
【0011】
さらには、血液細胞が効果的に除去されたとしても、それを行う方法は、しばしば溶血を起こす。溶血の発生は、血液の細胞を含まない部分への、酵素、ヘモグロビン、他の色素およびストロマの放出をもたらすので望ましくない。このことは、多くの臨床試験を妨害する。
【0012】
血液の液体部分から血液細胞を分離する様々な方法が、たとえば、Grubbらの特許文献6、Greenspanの特許文献7、Vogelらの特許文献8、Zukの特許文献9、Hillmanらの特許文献10、Vogelらの特許文献11、Aunetらの特許文献12、Traschらの特許文献13、Jengらの特許文献14、Roesinkらの特許文献15、Sandらの特許文献16、Tanakaらの特許文献17、Makinoらの特許文献18、Hillmanらの特許文献19、Forneyらの特許文献20、Maddoxらの特許文献21、Koenhenらの特許文献22、Wilkらの特許文献23、Kiserらの特許文献24、Oguraらの特許文献25およびKassらの特許文献26(これらはすべて、参照してその記載を明細書の一部となす。)に記載されている。
【特許文献6】米国特許第3,768,978号明細書
【特許文献7】米国特許第3,902,964号明細書
【特許文献8】米国特許第4,477,575号明細書
【特許文献9】米国特許第4,594,372号明細書
【特許文献10】米国特許第4,753,776号明細書
【特許文献11】米国特許第4,816,224号明細書
【特許文献12】米国特許第4,933,092号明細書
【特許文献13】米国特許第5,055,195号明細書
【特許文献14】米国特許第5,064,541号明細書
【特許文献15】米国特許第5,076,925号明細書
【特許文献16】米国特許第5,118,428号明細書
【特許文献17】米国特許第5,118,472号明細書
【特許文献18】米国特許第5,130,258号明細書
【特許文献19】米国特許第5,135,719号明細書
【特許文献20】米国特許第5,209,904号明細書
【特許文献21】米国特許第5,212,060号明細書
【特許文献22】米国特許第5,240,862号明細書
【特許文献23】米国特許第5,626,067号明細書
【特許文献24】米国特許第5,306,623号明細書
【特許文献25】米国特許第5,364,533号明細書
【特許文献26】米国特許第5,397,479号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、血液の液体部分に含まれる被検体の迅速で正確な検定について、血液の液体部分から血液の細胞成分を分離する改良された方法がなお必要とされている。特に、血液の液体部分に存在する被検体が単一の装置で容易に検定できるように、血液の細胞成分から血液の液体部分を分離するための検定の要素と手段とを組み入れた一体的装置が必要とされている。そのような改良された装置は、血清または血漿の予備的な抽出の必要を、血液分画の安全な廃棄の付随する必要とともに避けるであろう。このことは、肝炎やエイズのような血液に関連する疾患の大きな広がりに起因して重大な問題となっている。改良された装置は、全血サンプルを装置に適用すると、所望の被検体の直接検定を可能とするであろう。
【0014】
好ましくは、そのような装置は、サンドイッチ免疫検定および競合免疫検定の両者を含む広い範囲の免疫検定を行うことができるべきである。
【0015】
我々は、これらの要求に合致する血液の細胞成分から全血の液体部分を分離する装置および方法ならびにそれらの使用のための検定装置および方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
装置の1つの態様は、血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する装置であって、(1)血液の液体部分を透過するが血液の細胞成分を捕捉することができる多孔性物質製のパッド、(2)パッドを支持する基体、および(3)(i)パッド内の捕捉された血液の細胞成分の周りの間隙を介しておよび(ii)多孔性物質製のパッドから、血液の液体部分の流れを促進するための、パッドに取り付けられた手段を具備してなる装置である。
【0017】
血液の細胞成分からの血液の液体部分の分離は、有意な溶血なしにパッドを介する流れにより起こる。
【0018】
典型的には、多孔性物質製のパッドは、血液の細胞成分に対するバインダーを含む。バインダーが、抗血液細胞抗体であるなら、それは好ましくは抗赤血球抗体である。バインダーがレクチンであるなら、多数の種類のレクチン類が、使用に適する。
【0019】
別法として、パッドは、血液細胞を凝集できる炭水化物で含浸されてもよい。
【0020】
多数の炭水化物が、使用に適する。好ましくは、炭水化物は、マンニトールである。
【0021】
この装置の多孔性物質製のパッドは、(i)血液の液体部分と血液の細胞成分の両者を透過する第1のセクター、および(ii)血液の液体部分を透過するが血液の細胞成分を結合することができる第2のセクター、の2つのセクターを含むことができる。
【0022】
別法として、血液の液体部分を透過するが血液の細胞成分を捕捉することができる多孔性物質製のパッドは、第1の表面と第2の表面とを有する非対称な膜をその中に含んでいてもよく、この膜は、第1の表面から第2の表面にかけて細孔サイズが小さくなるように細孔サイズの勾配を有し、この非対称な膜は、その中に血液の細胞成分を捕捉することができかつ血液の液体成分を通過させる。
【0023】
前記血液の液体部分の流れを促進するための、パッドに取り付けられた手段は、典型的には、クロマトグラフィー的な分離のための膜をその中に含み、そのクロマトグラフィー的な分離のための膜は、特異的結合対のメンバーを結合するためにその上に捕捉ゾーンを典型的に有する。
【0024】
この装置および下記の他の類似の装置は、血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する方法で使用できる。クロマトグラフィー的な分離のための膜を含む場合、装置は、血液サンプルの液体部分の中の少なくとも1つの被検体を検出および/または測定するための検定を行う方法で使用される。
【0025】
本発明の1つの態様は、血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する装置であって、(1)血液の液体部分を透過するが血液の細胞成分を捕捉することができる第1の多孔性分離マトリックス、および(2)第2の多孔性マトリックスを介して毛管作用またはクロマトグラフィー的な分離により血液の液体部分が流れるのを可能とする第1の多孔性分離マトリックスと操作的に接触している第2の多孔性マトリックスを具備してなる装置である。
【0026】
血液の細胞成分からの血液の液体部分の分離は、有意な溶血なしに第1と第2のマトリックスを通じる流れにより起こる。
【0027】
本発明の装置のこの態様では、第2のマトリックスは、典型的には、クロマトグラフィー的な分離のための膜であり、それにより検定装置をつくる。典型的には、クロマトグラフィー的な分離のための膜は、特異的結合対のメンバーを結合するための捕捉ゾーンをその上に有する。
【0028】
第2のマトリックスが、クロマトグラフィー的な分離のための膜であるなら、血液サンプルの液体部分中の少なくとも1つの被検体を検出および/または測定するための検定を行う方法は、(1)血液のサンプルを装置の第1の多孔性分離マトリックスに適用する段階、(2)血液サンプルを第1の多孔性分離マトリックスを通して流し、血液サンプルの液体部分を血液サンプルの細胞成分から分離する段階、(3)第2のマトリックスの作用の結果として、捕捉された血液の細胞成分の周りの間隙を通じる血液の液体部分の流れを促進する段階、および(4)検定が第2のマトリックスで行われるように血液の液体部分が第2のマトリックスを流れるようにし、特異的結合対のメンバーを第2のマトリックスの捕捉ゾーンに結合させて前記少なくとも1つの被検体を検出および/または測定することにより検定が行われる段階の各段階を含むものとすることができる。
【0029】
第1の分離マトリックスは、第1の表面と第2の表面とを有する非対称の膜とすることができる。その膜は、第1の表面から第2の表面にかけて細孔サイズが小さくなるように細孔サイズの勾配を有し、その非対称な膜は、その中に血液の細胞成分を捕捉することができかつ血液の液体成分を通過させる。
【0030】
典型的には、装置は、さらに、第2のマトリックスが固着された不透過性の固体支持体を含んでなる。
【0031】
本発明のさらに別の態様は、3つのマトリックスを具備してなる血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する装置である。そのような装置は、(1)血液の液体部分を透過するが血液の細胞成分を捕捉することができる第1の多孔性分離マトリックス、(2)血液の液体部分を透過するが血液の細胞成分を捕捉することができる第1の多孔性分離マトリックスと操作的に接触している第2の多孔性分離マトリックス、および(3)第2の多孔性マトリックスを介して毛管作用またはクロマトグラフィー的な分離により血液の液体部分が流れるのを可能とする第2の多孔性分離マトリックスと操作的に接触している第3の多孔性マトリックスを具備するものとすることができる。
【0032】
血液の細胞成分からの血液の液体部分の分離は、有意な溶血なしに第1と第2の多孔性分離マトリックスを通じる流れにより起こる。
【0033】
本発明の装置のさらに別の実施態様は、多数の第2の多孔性マトリックスを有する。そのような装置は、(1)血液の液体部分を透過するが血液の細胞成分を捕捉することができる第1の多孔性分離マトリックス、および(2)それぞれの第2の多孔性マトリックスが第2の多孔性マトリックスを介して毛管作用またはクロマトグラフィー的な分離により血液の液体部分が流れるのを可能とする第1の多孔性分離マトリックスと操作的に接触している少なくとも2つの第2の多孔性マトリックスを具備してなる。
【0034】
本発明のさらに別の態様は、細胞成分から血液サンプルの液体部分を分離する2つの構成部分からなる装置である。この装置は、(1)(a)血液の液体部分を透過するが血液の細胞成分を捕捉することができる第1の多孔性分離マトリックス、および(b)第2の多孔性マトリックスを介して毛管作用またはクロマトグラフィー的な分離により血液の液体部分が流れるのを可能とする第1の多孔性分離マトリックスと操作的に接触している第2の多孔性マトリックスを含む第1の対向可能な構成部分、並びに(2)第1と第2の対向可能な構成部分を対向させて、対向可能な構成部分の一方から他方へ圧力により流体を移送させるような、第1の対向可能な構成部分に取り付け可能な第2の対向可能な構成部分を具備してなる。
【0035】
血液の細胞成分からの血液の液体部分の分離は、有意な溶血なしに第1の対向可能な構成部分の第1と第2のマトリックスを通じる流れにより起こる。
【0036】
第2の対向可能な構成部分は、サンプル調製ゾーンを含むものとすることができ、これは、サンプルの処理のための少なくとも1つの試薬または検出可能な標識で標識された特異的結合パートナーを含むことができ、特異的結合パートナーは、サンプル調製ゾーンへの水性サンプルの添加により再可溶化可能な形態である被検体に対する特異的結合パートナーおよび被検体から選択された少なくとも一つの成分に特異的な結合親和性を有する。
【0037】
二方向検定に特に適合する2つの構成部分からなる装置は、(1)(a)血液の液体部分を透過するが血液の細胞成分を捕捉することができる第1の多孔性分離マトリックス、および(b)第2の多孔性マトリックスを介して毛管作用またはクロマトグラフィー的な分離により第1の方向で血液の液体部分が流れるのを可能とする第1の多孔性分離マトリックスと操作的に接触しているクロマトグラフィー的な分離のための膜を含む第2の多孔性マトリックスを含む第1の対向可能な構成部分、並びに(2)第1と第2の対向可能な構成部分を対向させて、第2の対向可能な構成部分から第1の対向可能な構成部分へ圧力により試薬を移送させ、第1と第2の対向可能な構成部分を対向させることが、第2の対向可能な構成部分から第1の対向可能な構成部分へ移送された試薬を、第1の方向と反対の第2の方向で第2の多孔性マトリックスを通って移動させるような、第1の対向可能な構成部分に取り付け可能な第2の対向可能な構成部分を具備するものとすることができる。
【0038】
この態様では、血液の細胞成分からの血液の液体部分の分離は、有意な溶血なしに第1の対向可能な構成部分の第1と第2のマトリックスを通じる流れにより起こる。
【0039】
本発明の別の態様は、血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する方法であり、(1)レクチン、抗血液細胞抗体および血液細胞を凝集させることができる炭水化物からなる群から選択される架橋物質である血液の細胞成分に対する架橋物質を全血のサンプルに加える段階、(2)架橋物質と血液サンプルを混合して架橋物質と血液サンプルの混合物を形成させる段階、(3)血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する装置であって、(a)血液の液体部分を透過するが架橋物質と血液サンプルとの間の反応により凝集された血液の細胞成分を捕捉することができる多孔性物質製のパッド、(b)パッドを支持する基体、および(c)(i)捕捉された血液の細胞成分の周囲の間隙を介しておよび(ii)多孔性物質製のパッドから、血液の液体部分の流れを促進するための、パッドに取り付けられた手段を具備してなり、それにより血液の細胞成分からの血液の液体部分の分離が、有意な溶血なしにパッドを介する流れにより起こる装置に、架橋物質と血液サンプルの混合物を適用する段階、並びに(d)血液の液体部分をパッドを介して流れさせて、血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する段階を含んでなる方法である。
【0040】
好ましくは、前記方法は、さらに、抗凝血物質を架橋物質とともに加える段階を含む。典型的には、抗凝血物質は、ヘパリンまたはEDTAである。
【0041】
好ましくは、血液の実質的にすべての細胞要素を架橋するのに十分な架橋物質の濃度が使用される。
【0042】
血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する別の方法は、(1)上記の架橋物質で被覆した毛管に血液のサンプルを加える段階、(2)架橋物質を血液サンプルに溶解させて、架橋物質と血液サンプルの混合物を形成させる段階、(3)上記のように血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する装置に架橋物質と血液サンプルの混合物を適用する段階、および(4)血液の液体部分をパッドを介して流れさせて、血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する段階を含んでなる。
【0043】
好ましくは、毛管は、また、抗凝血物質で被覆されている。
【0044】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様および利点は、発明の詳細な説明、添付の請求の範囲および添付の図面を参照してよりよく理解されるであろう。
【0045】
定義
本開示については、次の用語は特に断らない限り以下に示すように定義される。特異的結合パートナー:関与する分子の三次元構造に依存する特異的な非共有相互作用により相互作用する分子の対のメンバー。特異的結合パートナーの典型的な対は、抗原−抗体、ハプテン−抗体、ホルモン−レセプター、核酸ストランド−相補的核酸ストランド、基質−酵素、基質類似体−酵素、インヒビター−酵素、炭水化物−レクチン、ビオチン−アビジンおよびウイルス−細胞レセプターを含む。
【0046】
操作的接触:2つの固体の構成部分は、毛管現象またはその他により水性液体が2つの構成部分の一方から他方へ実質的に中断することなく流れるように直接的にまたは間接的に接触する時に、操作的に接触している。『直接的に接触』とは、2つの要素が端部対端部または前部対後部のように物理的に接触していることを意味する。典型的には、2つの構成部分が直接的に接触するとき、それらは、約0.5mm〜約5mmの重なりで重なる。しかしながら、構成部分は、端部を接するように位置してもよい。『間接的に接触』とは、2つの要素が、物理的には接触していないが、1つ以上の伝導物(ガイド)により橋かけされていることを意味する。
【0047】
被検体:用語『被検体』は、検定されるべき実際の分子並びにその類似体および誘導体を含み、類似体と誘導体が被検体自体と実質的に等しい方法で検定に使用される別の分子を結合する時にそのような類似体および誘導体を含む。
【0048】
抗体:用語『抗体』は、適当な特異性のそのままの抗体分子および抗体フラグメント(Fab、F(ab’)およびF(ab’)2フラグメントを含む)の両者さらには化学的に修飾されたそのままの抗体分子および抗体フラグメントを含み、遺伝子工学によりつくられた単鎖抗体分子とサブユニットとの生体外の再会合により組み立てられたハイブリッド抗体を含むものとする。また、定義には、抗体の抗原−結合部位を特異的に結合する抗イディオタイプ抗体を含む。
【0049】
有意な溶血なしに:用語『有意な溶血なしに』とは、得られる血漿または血清が目視検査により白色バックグランドに対して明白な赤色を示さない程度に溶血がないことを意味する。
【0050】
支持された:用語『支持された』は、固体の基質により直接的に支持されたまたは1つ以上の介在要素を介して固体の基質により間接的に支持された、のように直接的または間接的に支持されたことを含む。
【0051】
架橋物質:用語『架橋物質』は、血液の細胞成分を架橋し、凝集(agglutinate)し、または凝集(aggregate)することができる物質を含むように通常ここでは使用される。具体的には、この用語は、レクチンおよび抗血液細胞抗体ならびに炭水化物を含み、これらは血液細胞を付着性として固まりとして凝集させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
本発明の方法と装置は、免疫クロマトグラフィーテストフォーマットにおいて使用するように、血液の液体部分(可溶性要素を含む血清または血漿)から血液の細胞要素(形成された要素)を分離させる2つの技術の1つを用いる。
【0053】
これらの技術の第1は、一般にオンボード処理と呼ばれる、テスト装置の一体的部分としてまたはその上での血液の液体部分からの血液の細胞要素の活性的な分離である。これらの技術の第2は、通常オフボード処理と呼ばれる、サンプルがテスト装置に加えられる前の血液サンプルの処理または分離である。
【0054】
I.オンボード処理の装置と方法
A.オンボード処理の一般的説明
本発明の1つの態様は、テスト装置上でまたは一体的部分として血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する装置である。血液の細胞成分は、赤血球(赤血球細胞)、白血球(白血球細胞)および血小板を含む。血液の液体部分は、血液の残りの部分を含み、血液が凝血し、血液細胞とフィブリンを含む血餅を形成する時、一般に血清として知られている。凝血していない血液から得られた場合は、血漿として一般的に知られている。血漿には存在していて血清には存在していない主要な成分はフィブリノーゲン、フィブリンの前駆体である。
【0055】
通常、そのような装置は、(1)血液の液体部分を透過するが血液の細胞成分を捕捉することができる多孔性物質製のパッド、(2)パッドを支持する基体、並びに(3)(i)捕捉された血液の細胞成分の周りの間隙を介しておよび(ii)多孔性物質製のパッドから、血液の液体部分の流れを促進するために、パッドに取り付けられた手段を具備してなる。
【0056】
通常、この装置を用いる血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する方法は、(a)血液のサンプルを装置の多孔性物質製のパッドへ適用する段階、(b)血液サンプルを多孔性物質製のパッドを通って流れさせて、血液サンプルの液体部分を血液サンプルの細胞成分から分離させる段階、および(c)捕捉された血液の細胞成分の周りの間隙を通りかつ多孔性物質製のパッドから血液の液体部分の流れを促進する段階を含んでいる。
【0057】
この装置の各種の配置および詳細な仕上げを以下にさらに説明するが、これらは本発明の精神の範囲内のものである。
【0058】
血液の細胞成分からの血液の液体部分の分離は、有意な溶血なしにパッドを介する流れにより起こる。
【0059】
典型的には、基質は、固体の、実質的に平坦な基質である。典型的には、パッドを通る流れは、実質的に平行にまたは基質に沿った方向で生ずる。
【0060】
血液の液体部分の流れを促進するために、パッドに取り付けられた手段は、クロマトグラフィー的な分離のための膜をその中に含むことができ、典型的には、その膜は、特異的結合対のメンバーを結合するための捕捉ゾーンをその上に有する。この配置では、装置は、血液サンプルの液体部分中の少なくとも1つの被検体を検出および/または測定する検定を行う方法で使用することができ、この方法は、(1)血液のサンプルを装置の多孔性物質製のパッドへ適用する段階、(2)血液サンプルを多孔性物質製のパッドを通って流れさせて、血液サンプルの液体部分を血液サンプルの細胞成分から分離させる段階、(3)前記パッドに取り付けられた手段の作用の結果として、捕捉された血液の細胞成分の周りの間隙を通り、血液の液体部分の流れを促進させる段階、および(4)血液の液体部分をクロマトグラフィー媒質を通って流れさせて、検定がクロマトグラフィー媒質中で行われるようにし、その検定は、特異的結合対のメンバーをクロマトグラフィー媒質の捕捉ゾーンに結合させて前記少なくとも1つの被検体を検出および/または測定することにより行われる段階を含んでなる。
【0061】
そのような検定の実施に最適な条件、たとえば、特異的結合対のメンバーの選択、緩衝剤または塩の使用、所望の時間および最適温度などは、本分野で周知であり、ここではさらに説明する必要はない。
【0062】
多孔性パッド(また、サンプルパッドとも呼ばれるが、その理由は、サンプルが、典型的にそれに適用されるからである)は、織布または不織布、紙、セルロース、ガラスファイバー、ポリエステル、他のポリマー、または血液の細胞成分を保持するこれらの材料の混合物であってよい。多孔性パッドは、典型的には、血液の細胞成分のためのバインダーをそれに包含する。
【0063】
血液の細胞成分のためのバインダーは、典型的には、レクチンまたは抗血液細胞抗体である。バインダーが、抗血液細胞抗体である場合、それは、典型的には、抗赤血球抗体である。そのような抗体は、本分野で周知であり、ここではさらに説明する必要はない。典型的には、それらは、赤血球細胞または赤血球細胞からのフラクションの異なる種への注入により得られる。所望の抗体が、抗ヒト赤血球細胞抗体であるなら、そのような抗体の生成のための適当な動物としては、山羊、うさぎ、馬および羊が挙げられる。ポリクロナールまたはモノクロナール抗体のいずれも使用できる。別法として、抗白血球または抗血小板抗体が、単独で使用でき、または抗赤血球細胞抗体に加えて用いることができるがそれはこれらの細胞成分の除去を確実にすることが望まれる場合である。
【0064】
血液の細胞成分のためのバインダーは、サンプルパッドに非共有結合的に結合される。別法として、それは、サンプルパッドに共有的に架橋されてもよく:タンパク質を固体の支持体、たとえばセルロース、紙または他の典型的なサンプルパッド材料へ架橋する技術は本分野で周知であり、ここではさらに説明する必要はない。抗体またはレクチンを含むサンプルパッドは、Vogelらの米国特許第4,816,224号(参照してその記載を明細書の一部となす。)などに記載されているように細胞要素を捕捉するためポリエステルバインダーでさらに処理されてもよい。他の種類のポリマーバインダーも使用される。
【0065】
バインダーがレクチンであるとき、典型的にはレクチンは、これに限定されるものではないが、次のもののうちの1つである:コンカナバリンA、アブリン、フィトヘマグルチニン、リムリン、並びに次の各種によって産生されるレクチン類の一つ:アガリカス・ビスポラス(Agaricus bisporus)、アングイラ・アングイラ(Anguilla anguilla)、アラチス・ヒポガエア(Arachis hvpogaea)、バンデイラエア・シムプリシフォリア(Bandeiraea simplicifolia)、バウヒニア・パープレア(Bauhinia purpurea)、カラガナ・アーボレスセンス(Caragana arborescens)、シサー・アリエチナム(Cicer arietinum)、コジアム・フラギエ(Codium fragile)、ダチュラ・ストラモニウム(Datura stramonium)、ドリコス・ビフロラス(Dolichos biflorus)、エリチリナ・コラロデンドロン(Ervthrina corallodendron)、エリスリナ・クリスタガリ(Erythrina cristagalli)、エウオニマス・ユーロパエアス(Euonymus europaeus)、グリシン・マックス(Glycine max)、ヘリックス・アスパーサ(Helix aspersa)、ヘリックス・ポマシア(Helix pomatia)、ラシラス・オドラタス(Lathyrus odoratus)、レンス・クリナリス(Lens culinaris)、リコパーシコン・エスクレンタム(Lycopersicon esculentum)、マクルラ・ポミフェラ(Maclura pomifera)、モモージカ・カランシア(Momordica charantia)、マイコプラスマ・ガリセプチカム(Mycoplasma gallisepticum)、ナジャ・モカムビーク(Naja mocambique)、ナジャ・カオウチア(Naja kaouthia)、パーセアウ・アメリカーナ(Perseau americana)、ファセオラス・コッシニュウス(Phaseolus coccineus)、ファセオラス・リメンシス(Phaseolus limensis)、ファセオラス・バルガリス(Phaseolus vulgaris)、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolacca americana)、ピスム・サチバム(Pisum sativum)、シュードモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)、プソフォカープス・テトラゴノロブス(Psophocarpus tetragonolobus)、プチロタ・プルモサ(Ptilota plumosa)、リシナス・コミュニス(Ricinus communis)、ロビニア・シュードアカシア(Robinia pseudoacacia)、サムバカス・ニグラ(Sambucus nigra)、ソラナム・ツベロサム(Solanum tuberosum)、ソフォラ・ジャポニカ(Sohora japonica)、テトラゴノロバス・パープレアス(Tetragonolobus purpureas)、トリチカム・バルガリス(Triticum vulgaris)、ウレックス・ユーロパエアス(Ulex europaeus)、ビシア・ファバ(Vicia faba)、ビシア・サチバ(Vicia sativa)、ビシア・ビロサ(Vicia villosa)、ビグナ・ラジアタ(Vigna radiata)、ビスカム・アルバム(Viscum album)、およびウイステリア・フルオリブンダ(Wisteria floribunda)。レクチン類は、血液細胞の表面に存在する糖基に特異的にかつ非共有的に結合するある種の動物および植物によりつくられるタンパク質である。
【0066】
好ましくは、レクチンは、赤血球および白血球の両者を結合することができ、また、血液細胞グループに特異的ではない。レクチン類の多くの他の例が、知られており、ここでさらに説明する必要はない。
【0067】
多孔性物質製のパッドは、別法として、Rapkinらの米国特許第4,678,575号(ここに参照してその記載を明細書の一部となす)に開示されている炭水化物などの血液細胞を凝集し得る炭水化物を含浸させてもよい。これらの炭水化物には、次のものがあるがこれらに限定されるものではない:マンニトール、ソルビトール、イノシトール、β−D−グルコース、α−D−グルコース、D(+)キシロース、D(+)マンノース、D(−)アラビノース、L(+)アラビノース、D(+)ガラクトース、L(−)キシロース、D−グルコヘプトース、L−リキソース、ラクトース、マルトースおよびスクロース。
【0068】
特に好ましい炭水化物は、マンニトールである。出願人は、この理論に束縛されることを意図するものではないが、これらの炭化水素は、赤血球の表面に非共有結合的に結合することにより作用して、赤血球を付着性として固まらせるか凝集させると考えられている。
【0069】
溶液中の炭水化物を20%(w/v)以下の濃度で透過性マトリックスたとえば不織布繊維(例えば、セルロース、ガラスまたはポリエステルなど)に適用して処理済マトリックスをつくる。溶液は、マトリックス中で所望の濃度を達成するように、各種の手段たとえば含浸、印刷またはスプレーにより適用される。炭水化物は、マトリックス中を自由に移動する周囲の液体から細胞を優先的に分離する保持剤、凝塊剤または凝集剤として作用する。
【0070】
分離された血液の量は、処理されたマトリックス、つまり捕捉された血液の細胞成分の周りの間隙を介してかつパッドから血液の液体部分の流れを促進するための、パッドに取り付けられた手段の吸収能、並びに処理されたマトリックスと血液の液体部分の流れを促進するための手段との間の付着の程度および面積の関数である。
【実施例1】
【0071】
B.オンボード処理装置の特定の実施態様
本発明のオンボード処理装置の一実施態様は、(1)血液の液体部分を透過するが血液の細胞成分を捕捉することができる第1の多孔性分離マトリックス、および(2)有意な溶血なしに第2の多孔性マトリックスを介して毛管作用またはクロマトグラフィー的な分離により血液の液体部分が流れるのを可能とする第1の多孔性分離マトリックスと操作的に接触している第2の多孔性マトリックスを具備してなる。
【0072】
この実施態様では、第2の多孔性マトリックスは、捕捉された血液の細胞成分の周りの間隙を介しておよび多孔性物質製のパッドから血液の液体部分の流れを促進するための、パッドに取り付けられた手段を含んでなる。第2の多孔性マトリックスは、膜であってもよく、たとえば、クロマトグラフィー的な分離に適する膜であってもよい。そのような膜の典型的な材料としては、これに限定されるものではないが、ニトロセルロース、セルロース、他のセルロース誘導体、ナイロン、レーヨン、紙、シリカ、ポリエステルおよびポリスルホンが挙げられる。
【0073】
そのような膜のための通常好ましい材料は、ニトロセルロースである。クロマトグラフィー媒質は、必要に応じて、前処理または改質されてもよい。
【0074】
第2の多孔性マトリックスは、抗原、ハプテン類または抗体などの特異的結合対のメンバーを結合する捕捉ゾーンをその上に有することができる。例えば、第2の多孔性マトリックスは、捕捉ゾーンで固定化され、被検体を結合するための第1の抗体を有することができ、これは次いでサンドイッチ反応において標識付け第2の抗体の手段により検出される。別法として、第2の多孔性マトリックスは、抗体を結合するための捕捉ゾーンで固定化された抗原を有することができる。1つよりも多い捕捉ゾーンが同一の第2の多孔性マトリックス上に存在してもよく、1つよりも多い捕捉ゾーンが存在する場合は、それらは、それに結合された特異的結合対の同じまたは異なる複数のメンバーを有することができる。1つよりも多い捕捉ゾーンが存在する場合、1つの捕捉ゾーンが、検定が適当に行われることを確実にする対照として用いられてもよい。多くの配置が本分野で周知であり、さらに記載する必要はない。第2の多孔性マトリックスは、したがって、クロマトグラフィー検定要素を含んでいてもよく、それは、免疫クロマトグラフィー検定の実施のために使用される。第2の多孔性マトリックスが、クロマトグラフィー検定要素であるなら、装置は、血液の液体部分から血液の細胞成分のオンボード分離および単一装置での血液の液体部分中の被検体についての検定を実施することができる。検定は、血液サンプルを第1の分離マトリックスに適用して次に結果を読み取ることにより実施される。
【0075】
典型的には、クロマトグラフィー検定要素は、それらのフォーマットが本分野で通常知られているように、競合免疫検定またはサンドイッチ免疫検定を行う。
【0076】
サンドイッチ免疫検定の場合、クロマトグラフィー媒質に結合した標識付けした成分は、典型的には、被検体に対する標識付けした抗体である。
【0077】
胃潰瘍の原因物質であると考えられる細菌ヘリコバター・ピロリ(Helicobacter pylori)に対するヒト血清中の抗体の検出のための検定の場合のように、被検体それ自体が抗体である場合は、標識付けされた成分は、種、綱または亜綱の特異性に基づき第1の抗体を結合する第2の抗体であり得る。
【0078】
綱特異性は、また、ヒト抗体のIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEなどのイソタイプ特異性として知られる。亜綱特異性は、IgGの亜綱であるIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4などの綱の内の抗原の差を指す。抗体被検体の検出に使用される標識付けした特異的結合パートナーが、妨害を防ぐように、抗体被検体の一定領域に結合することが大いに好ましい。
【0079】
ある用途では、間接的標識付けを用いることが望ましい。たとえば、ギアジア(Giardia)抗原のテストでは、直接標識付けすることが難しいであろうIgM抗体が使用される。その場合、可動性の第1の特異的結合パートナーに特異的な第2の特異的結合パートナーが、標識付けされる。典型的には、標識付けされた第2の特異的結合パートナーは、種、綱または亜綱の特異性に基づく第1の特異的結合パートナーである抗体に結合する。第1の特異的結合パートナーは、被検体に対する特異的な結合親和性を有する。第2の特異的結合パートナーの使用の別法としては、第1の特異的結合パートナーが、ビオチンに接合され、アビジン−接合標識が使用できる。
【0080】
競合免疫検定が行われるとき、標識は、典型的には、被検体または被検体類自体である。しかしながら、他の標識付けスキームが、本分野で知られており、これらの標識付けスキームのいくつかでは、標識は、第2の特異的結合パートナーまたは被検体への標識付けした抗体である。ある場合には、抗イディオタイプ抗体が、競合免疫検定に使用される。
【0081】
追加の一つまたは複数の要素が、第1の多孔性分離マトリックスと第2の多孔性マトリックスとの間に介在してもよい。これらの要素は、典型的には伝導性であり、第1の多孔性分離マトリックスと第2の多孔性マトリックス(すなわち、クロマトグラフィー検定要素)との間の橋として作用することができる。
【0082】
任意には、また、好ましくは、第2の多孔性マトリックスは、非透過性である固体の支持体に固着されている。第2の多孔性マトリックスは、支持体に積層されるかまたはその上に流延(キャスト)される。固体の支持体は、プラスチックまたは積層板紙などの材料からつくられることができる。
【0083】
そのような装置を図1に示した。装置10は、第1の多孔性分離マトリックス12、第1の多孔性分離マトリックス12と操作的に接触している第2の多孔性マトリックス14、および固体の支持体16を具備してなる。第1の多孔性分離マトリックス12は、第1の表面18と第2の表面20を有する。第2の多孔性マトリックス14は、クロマトグラフィー検定要素であってよい。
【0084】
使用に際し、血液サンプル22が第1の多孔性分離マトリックス12の第1の表面18に加えられ、細胞要素が第1の多孔性分離マトリックス12内に捕捉された後、第1の多孔性分離マトリックス12の第2の表面20と第2の多孔性マトリックス14との間の接触の結果として、血液サンプル22の液体部分は第2の多孔性マトリックス14中へ移動する。クロマトグラフィー検定が、第2の多孔性マトリックス14内で行われる。
【0085】
図2は、血液サンプルの液体部分が第2の多孔性マトリックス14中に移動した後の図1の装置を示す。図2中、交差させたハッチングで示した領域は、第1の多孔性マトリックス12と第2の多孔性マトリックス14を通る液体の流れの区域を示す。
【0086】
この実施態様の別の形態では、第1の分離マトリックスが、未処理の非対称の膜であってもよい。未処理の非対称の膜は、膜内で細孔サイズが減少する勾配を有するように構成されている。非対称の膜は、第1の表面と第2の表面とを有し、血液サンプルは、第1の表面に適用される。細孔サイズは、第1の表面から第2の表面へと減少する。非対称の膜は、その中に血液の細胞成分を捕捉することができて、血液の液体成分を通過させる。第1の分離マトリックスは、上記のように、第2のマトリックスとの接触を介して血液の液体部分を流れさせる。
【0087】
この装置も、図1および図2の模式図によって図示されていて、第1の多孔性分離マトリックス12としての非対称な膜の第1の表面18と第2の表面20とを有する。血液の流れは、非対称な膜の第1の表面18から第2の表面20へのものである。
【0088】
本発明のオンボード分離装置に使用するのに適する非対称な膜は、Koenhenらの米国特許第5,240,862号およびRoesinkらの米国特許第5,076,925号に開示されているように疎水性ポリマーと親水性ポリマーの組み合わせから調製することができる。疎水性ポリマーは、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミドまたはポリエーテルイミドであってもよく、親水性ポリマーは、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルまたはポリエチレングリコールであってよい。
【0089】
この実施態様のさらに別の他の形式では、第1のマトリックスは、パッドの一部だけが、血液の細胞成分を結合することができるように構成される。言い方を変えるなら、パッドが、2つのセクターに分割されていてもよく、第1のセクターは流れを可能とするが血液の細胞成分を結合することができず、また第2のセクターは血液の細胞成分を結合することができる。第2のセクターは、抗体、レクチンまたは炭化水素を上記のように含んでもよい。第1のセクターは、典型的には、血液が第1のセクターを通って流れる時、血液サンプル中にあらかじめ混ざり得る血液サンプルの前処理用の試薬を含む。
【実施例2】
【0090】
この装置の別の形式を図3に図示した。装置40は、第1の表面44と第2の表面46および2つのセクターを有する第1の分離マトリックス42を有していて、2つのセクターは、血液の細胞成分を結合することができない第1のセクター48および血液の細胞成分を結合することができる第2のセクター50である。装置は、また、第2の多孔性マトリックス52と固体の支持体54を有している。
【0091】
使用に際し、血液のサンプル56が第1の分離マトリックス42の第1の表面44に加えられ、血液のサンプルは第1のセクター48から第2のセクター50へと移動し、典型的には、第1のセクター48に存在する試薬を血液サンプル56にあらかじめ混合させて血液サンプル56の前処理がなされる。次に、血液サンプル56の液体部分が、第2のセクター50から第2の多孔性マトリックス52へと移動し、クロマトグラフィー検定が第2の多孔性マトリックス52中で行われる。
【0092】
この実施態様のさらに別の変形形式では、(1)血液の液体部分を透過するが血液の細胞成分を捕捉することができる第1の多孔性分離マトリックス、(2)血液の液体部分を透過するが血液の細胞部分を捕捉することができる第1の多孔性分離マトリックスと操作的に接触している第2の多孔性分離マトリックス、および(3)第2の多孔性マトリックスを介して毛管作用またはクロマトグラフィー的な分離により血液の液体部分の流れるのを可能とする第2の多孔性分離マトリックスと操作的に接触している第3の多孔性マトリックスの3つの要素が使用される。
【0093】
血液の細胞成分からの血液の液体部分の分離が、有意な溶血なしに第1と第2の多孔性分離マトリックスを通じる流れにより起こる。
【0094】
この変形形式では、第3のマトリックスが、(i)捕捉された血液の細胞成分の周りの間隙を通り、および(ii)第2のマトリックスからの、血液の液体部分の流れを促進するための手段を含んでいる。第3のマトリックスは、クロマトグラフィー検定要素を含んでもよい。
【0095】
任意には、また、好ましくは、第3のマトリックスは、上記のように、不透過性の固体の支持体に固着されている。
【0096】
第1と第2のマトリックスは、同様であってもまたは異なっていてもよく、上記セクションI(B)で述べた態様のいずれを含んでもよく、それらには、レクチンまたは抗血液細胞抗体などの血液の細胞成分に対するバインダーを含むマトリックス、血液細胞を凝集することができる炭化水素を含むマトリックス、および血液細胞を捕捉する非対称な膜を含むマトリックスが挙げられる。2つのセクターを有するマトリックスが使用できる。
【0097】
装置のこの別の態様に対し、血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する方法は、(1)血液のサンプルを装置の第1の多孔性分離マトリックスへ適用する段階、(2)血液サンプルを第1の多孔性分離マトリックスおよび第2の多孔性分離マトリックスを通って流れさせて、血液サンプルの液体部分を血液サンプルの細胞成分から分離させる段階、および(3)第3のマトリックスの作用の結果として、捕捉された血液の細胞成分の周りの間隙を通り、血液の液体部分の流れを促進させる段階を含んでなるものとすることができる。
【0098】
第3のマトリックスが、捕捉ゾーンを有するクロマトグラフィー的な分離のための膜を含む場合、血液サンプルの液体部分中の少なくとも1つの被検体を検出および/または測定する検定を行う方法は、(1)血液のサンプルを装置の第1の多孔性分離マトリックスへ適用する段階、(2)血液サンプルを第1の多孔性分離マトリックスおよび第2の多孔性分離マトリックスを通って流れさせて、血液サンプルの液体部分を血液サンプルの細胞成分から分離させる段階、(3)第3のマトリックスの作用の結果として、捕捉された血液の細胞成分の周りの間隙を通り、血液の液体部分の流れを促進させる段階、および(4)血液の液体部分を第3のマトリックスを通って流れさせて、検定が第2のマトリックス中で行われるようにし、検定が、特異的結合対のメンバーを第3のマトリックスの捕捉ゾーンに結合させて前記少なくとも1つの被検体を検出および/または測定することにより行われる段階を含むものとすることができる。
【0099】
装置のこの別の態様の変形を図4に示した。装置60は、第1のマトリックス62、第2のマトリックス64、第3のマトリックス66および固体の支持体68を有している。第1のマトリックス62に適用された血液サンプル70は、第1のマトリックス62および第2のマトリックス64を通って流れ、次に、血液サンプルの液体部分は、第3のマトリックス66中へと移動する。クロマトグラフィー検定が、第3のマトリックス66中で行われる。
【0100】
この実施態様のさらに別の態様の変形では、装置は、多数の第2の多孔性マトリックスを含んでもよく、それぞれの第2の多孔性マトリックスが第1の多孔性分離マトリックスと操作的に接触している。それぞれの第2の多孔性マトリックスは、上記のように、捕捉ゾーンを有するクロマトグラフィー検定要素を含んでもよい。第2の多孔性マトリックスが、捕捉ゾーンを有するクロマトグラフィー検定要素を含む場合、血液サンプルの液体部分中の少なくとも1つの被検体を検出および/または測定する検定を行う方法は、(1)血液のサンプルを装置の第1の多孔性分離マトリックスへ適用する段階、(2)血液サンプルを第1の多孔性分離マトリックスを通って流れさせて、血液サンプルの液体部分を血液サンプルの細胞成分から分離させる段階、(3)第2のマトリックスの作用の結果として、捕捉された血液の細胞成分の周りの間隙を通り、血液の液体部分の流れを促進させる段階、および(4)血液の液体部分を第2のマトリックスを通って流れさせて、検定が第2のマトリックスの少なくとも1つ内で行われるようにし、検定が、特異的結合対のメンバーを第2のマトリックスの少なくとも1つの捕捉ゾーンに結合させて前記少なくとも1つの被検体を検出および/または測定することにより行われる段階を含むものとすることができる。
【実施例3】
【0101】
図5に示す1つの配置では、装置は、2つの第2の多孔性マトリックスを含み、第1の多孔性マトリックスのそれぞれの端部に操作的に接触している。この配置では、血液は、第1の多孔性マトリックスの中央付近に適用されて、端部に向かって移動する。別法として、3つ以上の第2の多孔性マトリックスを用いることができ、それぞれを第1の多孔性マトリックスと操作的に接触させる。第2の多孔性マトリックスは、車輪のスポークのように第1の多孔性マトリックスの周りに配置してもよい。この態様では、第1の多孔性のマトリックスは、上記の第1の多孔性マトリックスのいずれでもよく、未処理の非対称な膜を含む。
【0102】
図5では、装置80が、第1の表面84と第2の表面86および第1と第2の端部88、90を有する第1の多孔性分離マトリックス82、並びに2つの第2のマトリックス92、94、加えて固体支持体96を具備してなる。2つの第2のマトリックス92、94は、第1の多孔性分離マトリックス82の端部88、90と接触している。血液サンプル98は、第1の多孔性分離マトリックス82の第1の表面84に添加され、第1の多孔性分離マトリックス82を通って移動し、血液サンプルの液体部分は2つの第2のマトリックス92、94中へと移動する。
【実施例4】
【0103】
C.2つの構成部分からなる検定装置
本発明の別の実施態様は第1と第2のマトリックスを組み入れた2つの構成部分からなる装置である。そのような装置は、通常、(1)(a)上記のような第1の多孔性分離マトリックス、および(b)上記のような第1の多孔性分離マトリックスと操作的に接触している第2の多孔性マトリックスを含む第1の対向可能な構成部分、並びに(2)第1と第2の対向可能な構成部分が対向させられて、対向可能な構成部分の一方から他方へ圧力により流体が移送させられるような、第1の対向可能な構成部分に取り付け可能な第2の対向可能な構成部分を具備してなる。
【0104】
2つの対向可能な構成部分を用いる多数の実施態様がある。いくつかの態様を図6および7で下記に図示した。これらの態様は、例示的なものであり、他を排除するものではなく、多数の形式の検定装置があり、例えば、同時係属米国特許出願番号第08/040,430号(ここに参照してその記載を明細書の一部となす。)に記載されている。
【0105】
例えば、第2の対向可能な構成部分は、サンプル調製ゾーンを含んでもよく、これは、サンプルの処理のための少なくとも1つの試薬を含んでもよい。この試薬は、血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する前にサンプルの処理のために使用される。
【0106】
別法として、サンプル調製ゾーンは、検出可能な標識で標識付けされた特異的結合パートナーを含んでもよい。特異的結合パートナーは、サンプル調製ゾーンへの水性サンプルの添加により再可溶化され得る形態の被検体に対する特異的結合パートナーおよび被検体から選択される少なくとも1つの成分に対して特異的な結合親和性を有することができる。言い換えるなら、標識付けられた特異的結合パートナーは、液体の形態でサンプル調製ゾーンへ適用され、再溶解されるように乾燥される。典型的には、装置は、サンドイッチ免疫検定に用いられるとき、検出可能な標識で標識付けされた特異的結合パートナーは、被検体に対する特異的な結合親和性を有する。
【0107】
別法として、第1の対向可能な構成部分は、サンプル調製ゾーンをさらに含み、このサンプル調製ゾーンは、再可溶化可能な形態の検出可能な標識で標識付けされた特異的結合パートナーを含んでもよい。以下に記すように、この場合、第1の対向可能な構成部分上のサンプル調製ゾーンは、第1および第2の対向可能な構成部分を対向位置とした時、第2の対向可能な構成部分上の要素により接触される。これは、サンプルの移動をもたらし:次いで、サンプルおよび再可溶化され標識付けされた特異的結合パートナーは、多孔性パッドに適用される。
【0108】
別法として、2つの構成部分からなる装置では、多孔性パッドは、クロマトグラフィー媒質から対向する構成部分上にあってもよい。この配置の例を下記図6に図示した。
【0109】
血液サンプルの液体部分中の少なくとも1つの被検体を検出および/または測定する検定を行う方法は、(1)血液のサンプルを2つの構成部分からなる検定装置の第1の対向可能な構成部分上の第1の多孔性分離マトリックスへ適用する段階、(2)血液サンプルを第1の多孔性分離マトリックスを通って流れさせて、血液サンプルの液体部分を血液サンプルの細胞成分から分離させる段階、(3)第2のマトリックスの作用の結果として、捕捉された血液の細胞成分の周りの間隙を通り、血液の液体部分の流れを促進させる段階、(4)第1と第2の対向可能な構成部分を対向させて流体を対向可能な構成部分の一方から他方へ圧力により移送させる段階、および(5)血液の液体部分を第2のマトリックスを通って流れさせて、検定が第2のマトリックス中で行われるようにし、検定が、特異的結合対のメンバーを第2のマトリックスの捕捉ゾーンに結合させて前記少なくとも1つの被検体を検出および/または測定することにより行われる段階を含むものとすることができる。
【0110】
2つの構成部分からなる検定装置のいくつかの例を示す。
【0111】
1つの一般的な配置を図6に図示した。検定装置200は、第1の対向可能な構成部分202および第2の対向可能な構成部分204を有する。第1の対向可能な構成部分202は、サンプルの適用のための多孔性パッド206を含む。第2の対向可能な構成部分204は、クロマトグラフィー媒質208を含む。多孔性物質から血液の液体部分を引き出すための手段は、第1と第2の対向可能な構成部分202と204とが対向させられた時、多孔性パッド206とクロマトグラフィー媒質208との間の重なりにより形成される。クロマトグラフィー媒質208は、検出ゾーン210と対照ゾーン212を含むことができる。第1の対向可能な構成部分202と第2の対向可能な構成部分204とは、ヒンジ214により連結されている。クロマトグラフィー媒質208は、ウェル216に支持されている。第1の対向可能な構成部分202は、検出ゾーン210および対照ゾーン212の領域を含め、クロマトグラフィー媒質208を見るための窓218を含むことができる。第1と第2の対向可能な構成部分202および204は、第1の対向可能な構成部分202上の面取りされた端部220および第2の対向可能な構成部分204上のアンダーカット端部222により形成されるもののような係合部分により一緒に保持されてもよい。他の形式の係合部分も用いることができる。装置は、第2の対向可能な構成部分204に形成された切欠き部224によりアクセスできる。
【実施例5】
【0112】
本発明の検定装置の別の実施態様は、二方向クロマトグラフィーを行うことができる装置を含む。この実施態様を図7に図示した。検定装置300は、第1の対向可能な構成部分302および第2の対向可能な構成部分304を有している。第1の対向可能な構成部分302は、吸収剤パッドであってもよい吸収体306およびアプリケーター308を含んでいる。第2の対向可能な構成部分304は、第1の端部312および第2の端部314を有するクロマトグラフィー媒質310を有していて、検出ゾーン316と対照ゾーン318がある。第2の対向可能な構成部分304は、また、クロマトグラフィー媒質310の第2の端部314と操作的に接触している伝導物320を有していて、伝導物320は、第1と第2の対向可能な構成部分302と304とを対向位置にした時、クロマトグラフィー媒質310へ、アプリケーター308の試薬を適用するのに用いられる。第2の対向可能な構成部分304は、また、上記のように血液の液体部分を透過するが血液の細胞成分を捕捉することができる多孔性物質製のパッド322を有している。多孔性物質製のパッド322は、クロマトグラフィー媒質310の第1の端部312と操作的に接触していて、この操作的な接触が、多孔性物質製のパッド322から血液の液体部分を引き出すための手段を形成する。第1と第2の対向可能な構成部分302と304は、ヒンジ324により連結されている。クロマトグラフィー媒質310と多孔性物質製のパッド322とは、ウェル326に支持されている。第1の対向可能な構成部分302は、検出ゾーン316と対照ゾーン318の領域を含めたクロマトグラフィー媒質310を見るための窓328を含むことができる。第1と第2の対向可能な構成部分302と304は、第1の対向可能な構成部分302上の面取り端部330および第2の対向可能な構成部分304上のアンダーカット端部332により形成されるもののような係合部分により一緒に保持されることができる。他の形式の係合部分も用いることができる。装置は、第2の対向可能な構成部分304に形成された切欠き部334によりアクセスできる。
【0113】
使用に際し、血液サンプルが血液の細胞成分を分離する多孔性パッド322に適用される。次いで、血液サンプルの液体部分がクロマトグラフィー媒質310を通って移動し、その時点で、第1と第2の対向可能な構成部分302と304とを対向させると、アプリケーター308の試薬がクロマトグラフィー媒質310に適用され、クロマトグラフィー媒質310を通る血液サンプルの液体部分の流れと反対の方向でクロマトグラフィー媒質310を通って移動し、流れが逆転される。流れの逆転は、吸収体306により押し進められる。
【0114】
この実施態様は、血液サンプル中の抗体を検出する血清学的検定の実施に特に適する。例えば、検出されるべき被検体が、胃潰瘍の原因であると考えられている細菌ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)に対するヒト抗体であるなら、抗体を含むことが疑われた血液サンプルを多孔性パッド322に適用することができ、血液の細胞成分を血液サンプルの液体部分から分離する。次いで、血液サンプルの液体部分が、多孔性パッド322からクロマトグラフィー媒質310に移動する。検出ゾーン316は、固定化されたH.ピロリ(H. pylori)抗原を含むことができるので、H.ピロリ抗原に特異的ないずれの抗体も検出ゾーンで結合する。アプリケーター308は、ヒトイムノグロブリンG抗体を結合する標識付けした抗体、例えば、金で標識付けしたヤギ抗ヒトイムノグロブリンG抗体を再可溶化可能な形態で含む。アプリケーター308の内容物は、アプリケーター308への水性液体の添加により再溶解される。第1と第2の対向可能な構成部分302および304を対向させると、アプリケーター308が、クロマトグラフィー媒質310と接触させられ、標識付けされた抗ヒトIgG抗体がクロマトグラフィー媒質310に適用される。次いで、吸収体306は、標識付けされた抗ヒトIgG抗体を、クロマトグラフィー媒質310を通る血液サンプルの液体部分の流れと反対の方向でクロマトグラフィー媒質310を通って移動するようにさせる。次いで、検出ゾーン316で結合されている抗H.ピロリ抗体が標識付けされる。金で標識付けされた抗体が使用されると、抗H.ピロリ抗体の存在が視覚的に検出される。吸収体306により押し進められるこの逆の流れは、H.ピロリ抗原に特異的でなくかつ検出ゾーン316に結合されていないが標識付けされた抗ヒトIgG抗体と反応しバックグランドを与えるであろうサンプル中に存在する他の抗体を除去する洗浄液として作用する。したがって、二方向の流れの使用は、バックグランドを減少し、テストの感度と信頼性とを増大する。
【0115】
これらの配置は、例示的なものであり、これらに限るものではなく、血液の細胞成分を結合する多孔性パッドを組み入れた本発明の一方向検定装置および二方向検定装置の他の配置もまた、本発明の範囲内に入る。これらの配置は、多数の要素を含むことができる。
【0116】
例えば、本発明の多数の装置では、吸収体は、クロマトグラフィー媒質の一端部、典型的には多孔性物質製のパッドと接触している端部とは反対の端部と、操作的に接触している。吸収体は、液体を十分に保持できる吸収性の材料からできていて、液体がクロマトグラフィー媒質を通って引かれて吸収体に蓄積される。
【0117】
吸収体の典型的な材料としては、フィルター紙が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0118】
さらに、装置は、1つ以上の伝導物を含んでもよい。伝導物は、多孔性物質製のパッドとクロマトグラフィー媒質との間の橋の役割を果たし、多孔性物質から血液の液体部分を引き出す手段を構成する。これらの伝導物は、実質的に液体を吸収せずに液体を通す親水性媒質から調製される。そのような物質は、本分野で周知である。セルロースおよびセルロース誘導体が用いられる。
【0119】
対向可能な構成部分を用いる本発明の装置では、対向可能な構成部分の本体は、好ましくは、装置により行われる検定の実施に関与する液体を含むため水分に対して十分に不透過性である積層厚紙からつくられる。他のセルロース・ベース材料、たとえば、板紙または固体の漂白された亜硫酸塩(SBS)も用いることができる。別法として、対向可能な構成部分の本体は、水分を通さないプラスチックからつくられてもよい。適当なプラスチックはLexan(商標)のようなポリカーボネートプラスチックである。
【0120】
対向可能な構成部分は、ヒンジにより、好ましくは、液体を通さない材料例えば、第1と第2の対向可能な構成部分の両方と連結できるプラスチック製のヒンジ、または第1と第2の対向可能な構成部分に使用された材料と同じプラスチック製のヒンジにより連結される。
【0121】
二方向検定の実施に特に適する形式は、(1)(a)血液の液体部分を透過するが血液の細胞成分を捕捉することができる第1の多孔性分離マトリックス、および(b)第2の多孔性マトリックスを介して毛管作用またはクロマトグラフィー的な分離により第1の方向で血液の液体部分が流れるのを可能とする第1の多孔性分離マトリックスと操作的に接触しているクロマトグラフィー的な分離のための膜を含む第2の多孔性マトリックスを含む第1の対向可能な構成部分、並びに(2)第1と第2の対向可能な構成部分を対向させて、第2の対向可能な構成部分から第1の対向可能な構成部分へ圧力により試薬を移送させ、第1と第2の対向可能な構成部分を対向させることが、第2の対向可能な構成部分から第1の対向可能な構成部分へ移送された試薬を、第1の方向と反対の第2の方向で第2の多孔性マトリックスを通って移行させるような、第1の対向可能な構成部分に取り付け可能な第2の対向可能な構成部分を含むものとすることができる。
【0122】
典型的には、この形式では、クロマトグラフィー的な分離のための膜が、被検体を結合する捕捉ゾーンをその中に含み、第2の対向可能な構成部分から第1の対向可能な構成部分に移送された試薬が、被検体のための標識付けした特異的結合パートナーである。
【0123】
この態様を用いる、血液サンプルの液体部分中の少なくとも1つの被検体を検出および/または測定するための検定を行う方法は、(1)血液のサンプルを装置の第1の対向可能な構成部分上の第1の多孔性分離マトリックスへ適用する段階、(2)血液サンプルを第1の多孔性分離マトリックスを通って流れさせて、血液サンプルの液体部分を血液サンプルの細胞成分から分離させる段階、(3)血液サンプルの液体部分を第1の方向でクロマトグラフィー的な分離のための膜を通って流れさせる段階、(4)第1と第2の対向可能な構成部分を対向させて、被検体のための標識付けされた特異的結合パートナーを圧力により第2の対向可能な構成部分から第1の対向可能な構成部分へ移動させる段階、および(5)被検体のための標識付けされた特異的結合パートナーを第2の方向でクロマトグラフィー分析のための膜を通って流れさせて、検定が第2のマトリックス中で行われるようにし、検定を、標識付けされた特異的結合パートナーを第2のマトリックスの捕捉ゾーンに結合させて前記少なくとも1つの被検体を検出および/または測定することにより行う段階を含むものとすることができる。
【0124】
上記の装置の説明は、一度に1つの検定を行う検定装置に関する。しかしながら、本発明の検定装置は、また、一度に多数の検定を行うようにも構成される。
【0125】
その複数の検定は、同一の被検体または異なる複数の被検体に対して行われる。
【0126】
このことは、多数の血液サンプルを1つの装置に適用して、多数の検定を行わせることを可能とする。
【実施例6】
【0127】
II.オフ−ボード処理のための装置と方法
本発明の別の態様は、全血のサンプルへ血液の細胞部分に対するバインダーを予め添加することを、その混合物が血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する装置に適用される前に行う、血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する方法である。
【0128】
1つのそのような方法は、(1)レクチン、抗血液細胞抗体および血液細胞を凝集させることができる炭水化物からなる群から選択される架橋物質である血液の細胞成分に対する架橋物質を全血のサンプルに加える段階、(2)架橋物質と血液サンプルを混合して架橋物質と血液サンプルの混合物を形成させ、または混合が起こる時間放置する段階、(3)血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する装置であって、(a)血液の液体部分を透過するが架橋物質と血液サンプルとの間の反応により凝集された血液の細胞成分を捕捉することができる多孔性物質製のパッド、(b)パッドを支持する基体、および(c)(i)捕捉された血液の細胞成分の周囲の間隙を介しておよび(ii)多孔性物質製のパッドから、血液の液体部分の流れを促進するための、パッドに取り付けられた、手段を具備する装置に、架橋物質と血液サンプルの混合物を適用する段階、並びに(4)血液の液体部分をパッドを介して流れさせて、血液の細胞成分からの血液の液体部分を分離する段階を含むものとすることができる。
【0129】
バインダーに結合した血液の細胞成分からの血液の液体部分の分離は、有意な溶血なしにパッドを介する流れにより起こる。この方法は、多孔性物質製のパッドが架橋物質例えば抗体またはレクチンを含む必要がなく、むしろ、パッドは、フィルターとして作用し、架橋物質に前もって結合することにより凝集した血液の細胞成分を除去し、サンプルがパッドに適用される前に結合が起こる点で、上記の方法とは異なる。
【0130】
好ましくは、抗凝血物質が、架橋物質とともに加えられる。典型的な抗凝血物質はEDTAまたはヘパリンであるが、他の抗凝血物質も本分野で公知である。
【0131】
好ましくは、架橋物質の濃度は、実質的にすべての血液の細胞要素を架橋するのに十分な濃度にして使用される。
【0132】
血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する装置は、上記セクションIで説明した態様のいずれでもよいが、多孔性物質製のパッドが、細胞成分を凝集または凝血させる手段を与えるのではなく、血液のすでに凝集したまたは凝血した細胞成分を除去するフィルターとして作用する点で異なる。
【0133】
血液の分離された液体部分は、次に、典型的には免疫クロマトグラフィー手順により、上記のように被検体に対して検定される。血液の細胞成分から血液の液体部分を分離するために使用される装置が、上記のようにクロマトグラフィー媒質を含むなら、検定を装置内で行うことができ、これが通常は好ましい。他の場合は、血液の分離された液体部分を、別の装置での検定のために取り出すことができる。これらの検定は、『対向可能な要素を有するクロマトグラフィー検定装置』なる名称のHoward M. Chandlerらによる同時係属米国特許出願第08/040,430号(ここに参照してその記載を明細書の一部となす。)に開示された装置のような検定装置により実施することができる。これらの装置は、二方向検定装置および一方向検定装置の両者を含む。
【実施例7】
【0134】
別法として、全血のサンプルに架橋物質を加える代わりに、血液のサンプルを、凝血物質と一緒にまたは抗凝血物質なしで、架橋物質で被覆した毛管に加えてもよい。架橋物質およびもしあれば抗凝血物質を次いで、血液サンプルに溶解させるようにする。架橋物質と抗凝血物質をその中に溶解した血液サンプルは、次いで、上記のように、血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する装置に適用される。この場合も、装置は、凝集させたまたは凝血させた血液細胞に対するフィルターとして作用する。検定は、上記のように行うことができる。
【0135】
この態様を図8に一般的に図示した。血液サンプル400は、毛管402に加えられ、混合後、毛管を分離装置404に適用する。
【0136】
発明の利点
本発明は、特異的な結合検定例えば免疫検定および他のテストを実施するための、血液の液体部分から血液細胞を分離する迅速で、効率的でかつ簡便な手段を提供する。特に、本発明は、血液の液体部分中に存在する被検体が迅速に検定されるように、検定要素、および血液の細胞成分から血液の液体部分を分離するための手段の両者を組み入れた一体的装置を提供する。このことは、血液分画の安全な処分の意図的な必然性を伴う血液からの血清または血漿の予備的抽出が必要であることを避ける。本発明の検定装置の使用は、使用済みテスト装置の便利で安全な処分を可能とする。加えて、この改良された装置は、全血サンプルを装置に適用する場合に、所望の被検体の直接的な検定を可能とする。
【0137】
本発明の検定装置は、サンドイッチ免疫検定および競合免疫検定の両方を含む広範囲な免疫検定を行うことができる。特に、本発明の検定装置は、抗原および抗体の両者の検出および/または測定に適する。
【0138】
本発明を、そのいくつかの好ましい形態についてかなり詳細に説明したが、他の形態および実施態様も可能である。これらの形態は、ここに説明した基本的原理により作動する2つの構成部分からなる装置の他の配置を含む。これらの形態は、様々な配置の競合免疫検定ならびにサンドイッチ免疫検定に適合する検定装置を含む。特に、本発明の装置は、むしろ直線的な流れではなく、クロマトグラフィー媒質を通る半径方向または円周方向の流れを使用するのに適合する。本発明の装置は、円形的に配置した、または車輪のスポークのように配置した、または他の配置をした多数の第2の多孔性マトリックスを用いて、多数の検定を同時に行うのにも適合できる。本発明の装置は、血液の細胞成分から血液の液体部分を分離することおよび血液の液体部分に関する検定を行うことに特に適しているが、本発明の装置は、血液細胞を含むかもしれない他の体液例えば脳脊髄液から血液細胞を除去するためにも使用でき、また、血液細胞の除去後のそのような体液の検定にも使用できる。本発明の装置は、また、他の検定例えば酵素検定および比色検定の実施にも適合できる。
【0139】
本発明は、装置の2つの構成部分が、永久的に固定された配置で保持されているのではなく分離できてかつ検定を行うために電気的力もしくは磁気的力またはホックと通し輪付きの布例えばベルクロ(Velcro、商標)などの取りはずし可能なファスナーにより一緒にされた形態をもさらに包含する。加えて、本発明は、折りたたみ配置を取った3つの構成部分を有する装置をも包含する。したがって、本発明の範囲は、添付される請求の範囲により定められる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】多孔性物質製のパッドを用いる、血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する装置の模式図。
【図2】装置を通る血液の移動を示す、図1の装置の別の模式図。
【図3】2つのセクターを有する多孔性パッドを用いる本発明の検定装置の別の実施態様の模式図。
【図4】3つのマトリックスを用いる血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する装置の別の実施態様の模式図。
【図5】検定要素を組み入れてもよい2つの第2のマトリックスを有する本発明の検定装置のさらに別の実施態様の模式図。
【図6】本発明の2つの構成部分からなる装置の実施態様の模式図。
【図7】本発明の2つの構成部分からなる装置の別の実施態様の模式図。
【図8】オフ−ボード分離を用いていて、血液は血液の細胞成分に対する架橋物質を含む毛管に加えられる、血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する本発明の方法の説明図。
【符号の説明】
【0141】
10、40、60、80 装置
12、82 第1の多孔性分離マトリックス
14、52 第2の多孔性マトリックス
16、54、68、96 固体の支持体
18、44、84 第1の表面
20、46、86 第2の表面
22、56、70、98、400 血液サンプル
42 第1の分離マトリックス
48 第1のセクター
50 第2のセクター
62 第1のマトリックス
64、92、94 第2のマトリックス
66 第3のマトリックス
88、312 第1の端部
90、314 第2の端部
200、300 検定装置
202、302 第1の対向可能な構成部分
204、304 第2の対向可能な構成部分
206 多孔性パッド
208、310 クロマトグラフィー媒質
210、316 検出ゾーン
212、318 対照ゾーン
214、324 ヒンジ
216、326 ウェル
218、328 窓
220 端部
222、332 アンダーカット端部
224、334 切欠き部
300 検定装置
306 吸収体
308 アプリケーター
320 伝導物
322 多孔性物質製のパッド
330 面取り端部
402 毛管
404 分離装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する装置であって、
(a)(i)血液の液体部分を透過するが血液の細胞成分を捕捉することができる、第1の多孔性分離マトリックスと、
(ii)第1の多孔性分離マトリックスに操作的に接触している、第2の多孔性マトリックスであって、第2の多孔性マトリックスを通して毛管作用またはクロマトグラフィー的な分離により血液の液体部分が流れることを可能にする第2の多孔性マトリックスとを含む、第1の対向可能な構成部分と、
(b)第2の対向可能な構成部分とを含み、
第2の対向可能な構成部分は、圧力により第2の対向可能な構成部分から第1の対向可能な構成部分へ流体を移送するために第1および第2の対向可能な構成部分を対向することができるように、第1の対向可能な構成部分に取り付け可能であり、第2の対向可能な構成部分は、前記装置内の流体の流れを逆転するために使用するように配置された吸収体を含み、
血液の細胞成分からの血液の液体部分の分離が、有意な溶血なしに第1の対向可能な構成部分の第1および第2のマトリックスを通る流れにより起こる、血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する装置。
【請求項2】
第2の対向可能な構成部分はサンプル調製ゾーンを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記サンプル調製ゾーンは、検出可能な標識で標識された特異的結合パートナーを含み、該特異的結合パートナーは、被検体と、該被検体に対する特異的結合パートナーとから選択される、少なくとも一つの成分に特異的な結合親和性を有し、
前記特異的結合パートナーは、前記サンプル調製ゾーンへの水性サンプルの添加により再可溶化可能な形態である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
第1および第2の対向可能な構成部分の少なくとも1つが、検出可能な標識で標識された特異的結合パートナーを含むサンプル調製ゾーンをさらに含み、前記特異的結合パートナーは、被検体と、該被検体に対する特異的結合パートナーとから選択される、少なくとも1つの成分に特異的な結合親和性を有し、
前記特異的結合パートナーは、サンプル調製ゾーンへの水性サンプルの添加により再可溶化可能な形態である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する装置であって、
(a)(i)血液の液体部分を透過するが血液の細胞成分を捕捉することができる、第1の多孔性分離マトリックスと、
(ii)クロマトグラフィー的な分離のための膜を含む、第2の多孔性マトリックスであって、第2の多孔性マトリックスは、第1の多孔性分離マトリックスに操作的に接触しており、毛管作用またはクロマトグラフィー的な分離により第2の多孔性マトリックスを通して第1の方向で血液の液体部分が流れることを可能にする、第2の多孔性マトリックスとを含む、第1の対向可能な構成部分と、
(b)第2の対向可能な構成部分とを含み、
第1および第2の対向可能な構成部分は、試薬を第2の対向可能な構成部分から第1の対向可能な構成部分へ圧力により移送するために対向させることが可能なように第1の対向可能な構成部分に取り付け可能であり第1および第2の対向可能な構成部分を対向させることは、第2の対向可能な構成部分から第1の対向可能な構成部分へ移送された試薬を、第2の多孔性マトリックスを通って第1の方向と反対の第2の方向に移動させることにつながり、
前記血液の細胞成分からの血液の液体部分の分離が、有意な溶血なしに第1の対向可能な構成部分の第1および第2のマトリックスを通じた流れにより起こる、血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する装置。
【請求項6】
前記クロマトグラフィー的な分離のための膜は被検体を結合する捕捉ゾーンを内部に含み、第2の対向可能な構成部分から第1の対向可能な構成部分へ移送された前記試薬は、前記被検体に対する標識された特異的結合パートナーである、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
第2の対向可能な構成部分は、前記装置内の流体の流れを逆転するために使用するように配置された吸収体を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
第1の多孔性分離マトリックスは血液の細胞成分に対するバインダーを含む、請求項1ないし6のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記バインダーは抗血液細胞抗体である、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記バインダーはレクチンである、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
前記レクチンは、コンカナバリンAと、アブリンと、フィトヘマグルチニンと、リムリンと、アガリカス・ビスポラスアングイラ・アングイラアラチス・ヒポガエアバンデイラエア・シムプリシフォリアバウヒニア・パープレアカラガナ・アーボレスセンスシサー・アリエチナムコジアム・フラギエダチュラ・ストラモニウムドリコス・ビフロラスエリチリナ・コラロデンドロンエリスリナ・クリスタガリエウオニマス・ユーロパエアスグリシン・マックスヘリックス・アスパーサヘリックス・ポマシアラシラス・オドラタスレンス・クリナリスリコパーシコン・エスクレンタムマクルラ・ポミフェラモモージカ・カランシアマイコプラスマ・ガリセプチカムナジャ・モカムビークナジャ・カオウチアパーセアウ・アメリカーナファセオラス・コッシニュウスファセオラス・リメンシスファセオラス・バルガリスフィトラッカ・アメリカーナピスム・サチバムシュードモナス・アエルギノサプソフォカープス・テトラゴノロブスプチロタ・プルモサリシナス・コミュニスロビニア・シュードアカシアサムバカス・ニグラソラナム・ツベロサムソフォラ・ジャポニカテトラゴノロバス・パープレアストリチカム・バルガリスウレックス・ユーロパエアスビシア・フバビシア・サチバビシア・ビロサビグナ・ラジアタビスカム・アルバムおよびウイステリア・フルオリブンダによって産生されるレクチン類とからなる群から選択される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
第1の多孔性分離マトリックスは血液細胞を凝集することができる炭水化物で含浸されている、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記炭水化物は、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、ベータ−D−グルコース、アルファ−D−グルコース、D(+)キシロース、D(+)マンノース、D(−)アラビノース、L(+)アラビノース、D(+)ガラクトース、L(−)キシロース、D−グルコヘプトース、L−リキソース、ラクトース、マルトースおよびスクロースからなる群から選択される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記炭水化物はマンニトールである、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
第2のマトリックスはクロマトグラフィー的な分離のための膜を含む、請求項1ないし13のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
前記クロマトグラフィー的な分離のための膜は、該膜の上に、特異的結合対のメンバーを結合する捕捉ゾーンを有する、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
第1の分離マトリックスは、第1の表面と第2の表面とを有する非対称な膜であり、該膜は、第1の表面から第2の表面にかけて細孔サイズが小さくなるような細孔サイズの勾配を有し、前記非対称な膜は、内部に血液の細胞成分を捕捉することができ、かつ、血液の液体成分を通過させる、請求項1ないし16のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
第1の分離マトリックスは、
(i)血液の液体部分と血液の細胞成分との両方を透過することができる第1のセクターと、
(ii)血液の液体部分を透過するが血液の細胞成分を結合することができる第2のセクターとの2つのセクターを含む、請求項1ないし17に記載の装置。
【請求項19】
請求項1−18に記載の装置を使用する、血液の細胞成分から血液の液体部分を分離する方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−177970(P2006−177970A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−4673(P2006−4673)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【分割の表示】特願2004−345633(P2004−345633)の分割
【原出願日】平成8年5月7日(1996.5.7)
【出願人】(591028256)ベックマン コールター インコーポレイテッド (24)
【氏名又は名称原語表記】BECKMAN COULTER,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】4300N.Harbor Boulevard Fullerton,California 92834−3100 U.S.A.
【Fターム(参考)】