説明

血液を解毒するための血液濾過材

本発明は、細菌毒素(リポ多糖類)の血液からの除去のために血液濾過材を使用することに関し、前記血液濾過材は、シクロデキストリンが共有結合的に結合された固体担体を具備している。この固体担体は、織物又は不織布、又は、適切な架橋剤、例えばエピクロルヒドリン、でのシクロデキストリンの架橋によって得られるポリマー樹脂であり得る。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、血液を解毒するための担持されたシクロデキストリンの使用に関する。
【0002】
敗血症症候群は、グラム陰性菌による感染の重大な合併症である。
【0003】
度々、この症候群は、全ての臓器及び器官に影響を与え、人工的補助器具(自動呼吸器、人工腎、心臓刺激装置)の適用を必要とする多臓器不全を引き起こす。敗血症の特に懸念され広く広まっている合併症の1つは、敗血症ショックであり、これは死をもたらし得る。
【0004】
敗血症は、細菌のきょう膜(outer capsule)からの外毒素及び内毒素の遊離により引き起こされる。これらの物質はリポ多糖類であり、血液循環に入ると、それの体液成分及び細胞成分における免疫系に影響を与える一連の反応を引き起こす。この疾病に関して最も危険な状況としては、重い外傷、腸の穿孔、上腹部の外科手術、特には糖尿病患者又は免疫が低下した高齢の患者の手術が挙げられる。
【0005】
内毒素に対する臓器の反応は、度々、臓器の微小循環に影響を与える一連の応答を引き起こす(敗血症カスケード)。
【0006】
このような反応は、細菌侵入時の臓器の防衛と考えられるが、しばしば異常であり、応答の自己増幅プロセスの原因となる多くの炎症メディエータ(サイトカイン及び他のミクロプロテイン)の生成を誘発させ、臓器及び器官に対する重大な障害をもたらす。
【0007】
抗生物質治療及び障害を受けた臓器の人工的補助器具による置換によって、常に敗血症カスケードを食い止められるというわけではない。
【0008】
それゆえに、敗血症の最も効果的な治療は、菌体毒素の臓器への侵入を、これらが敗血症カスケードを誘発させる前に防止することである。
【0009】
リポ多糖類(LPS)は、グラム陰性菌の細胞膜の特徴的な成分であり、それらはグラム陽性菌には存在しない。
【0010】
これらは、毒性の原因となる疎水性の脂質鎖と、中心にある親水性の多糖鎖と、各菌体株に特異的な親水性のO−多糖側鎖(O-polysaccharide side chain)とで構成さている。
【0011】
リポ多糖類は、様々な寸法の凝集塊、特には約1,000KDaの重さのミセルを水性溶媒中に形成する傾向にある。その結果、これらは、膜の細孔を通り抜けないので、限外濾過によっては血液から分離可能ではない。
【0012】
長年に亘って、多くの血液解毒技術が開発されてきたが、これらは、あまり有効ではなく、特には、用いられる材料のせいで非常に高額の費用を必要とするという欠点を有している。例えば、血液の解毒が可能な抗生物質を含んだ血液濾過材は、入手可能である。しかしながら、このような濾過材は、巨額の費用がかかる。
【0013】
上述の問題は、添付の特許請求の範囲に要旨が記載された血液濾過材の使用により解決される。
【0014】
本発明を、以下の図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0015】
第1の側面では、本発明は、固体担体を具備した血液濾過材であって、この固体担体にシクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体が共有結合的に結合された血液濾過材の使用に関する。
【0016】
本発明において用いられる固体担体は、シクロデキストリンと、適切な架橋剤、例えば、エピクロルヒドリン、イソシアネート、ポリアミン、アクリレート、カーボネートとの架橋反応によって得られるポリマー樹脂であり得るか、又は、シクロデキストリンが化学的又は物理的処理、例えば電子ビームによって結合された、例えばセルロースの繊維若しくは織物の担体、又は、例えばポリプロピレンの不織繊維であり得る。これらの中で、天然セルロース担体が好ましい。好ましく用いられる他の担体は、シクロデキストリンで誘導体化された(derivatised)ポリエチレンイミンにより被覆されたシリカである。
【0017】
シクロデキストリン(CD)は、シクロアミロース、シクログルカン、シクロマルトサイドとも呼ばれ、環状のオリゴ糖であり、α(1,4)結合した6個乃至12個のグルコース単位からなる結合により構成されている。用語CDの前付されるギリシャ文字は、環の中に存在するグルコース単位の数を示している(αは6個の単位に対応し、βは7個の単位に対応する、など)。
【0018】
シクロデキストリンは、様々な細菌(例えば、Bacillus Macerans、 Klebsiella Pneumonite、Bacillua Stearothermophilus、Bacillus Megateriumなど)によって生成される糖転移酵素(CGTase)による、アミドの酵素分解の生成物である。
【0019】
CGtase酵素は、アミドの螺旋構造を破壊し、グルコース分子間にα(1,4)結合を同時形成させ、環状のオリゴ糖類の獲得をもたらす。
【0020】
シクロデキストリンは、図1及び2に示すように、構造の外側に向いた水酸基、並びに、構造の内側に向いた炭素原子、水素原子及びヘテロ酸化物結合(hetero-oxide bond)を持つ切頭円錐構造を有している。更に、一級水酸基が切頭円錐のより小さな径の領域に位置しており、二級水酸基が切頭円錐のより大きな径の領域に位置している。
【0021】
この構造は、特別な性質をCDに与える。グリコシド結合の酸素によってもたらされる高い電子密度は、疎水性分子の空洞を無極性にし、親水特性をその外側に与える。
【0022】
それゆえ、本発明の基礎をなす原理は、水溶性のシクロデキストリンを固体担体に結合させることである。血液、特には血漿が前記担体上に通される。シクロデキストリンの疎水性の内部空洞は、菌体内毒素を捕捉して血液の解毒を可能にし、この血液は、その後、清浄に循環中へと再挿入される。
【0023】
この解毒が可能なのは、内毒素又はリポ多糖類が疎水性分子であり、そのために、これらが、包接錯体と呼ばれる、シクロデキストリンの疎水性内部空洞を有する安定で可逆な錯体を形成するからである。
【0024】
殆どの場合、CDとホスト分子との比は1:1であり且つ共有結合が無い一方で、主に包接される分子とCDの水酸基との間のファンデルワールス相互作用及び水素結合のおかげで、会合−解離型の平衡が成り立っている。
【0025】
本発明の目的のために、好ましく使用されるシクロデキストリンは、アルファ、ベータ、ガンマデキストリン、並びに、ヒドロキシプロピル、サルフェート及びエチルスルホナートなどのそれらの誘導体である。最も好ましいシクロデキストリンは、アルファシクロデキストリンである。
【0026】
固体ポリマー担体の合成は、シクロデキストリンを適切な架橋剤と反応させることによって行われる。前記架橋剤は、有利には、シクロデキストリンの一級及び二級水酸基と反応可能な官能基を2つの端に有する二官能性分子である(例えば、エポキシド及びハライド)。
【0027】
架橋剤の例は、エピクロルヒドリン、イソシアネート、ポリアミン、アクリレート及びカーボネートであり、好ましくはエピクロルヒドリンが使用される。合成法は、文献、例えば、以下の論文により知られている;E. Renard、G. Barnathan、A. Deratani及びB. Sebille、“Characterization and structure of cyclodextrin-epichlorohydrin polymers-effects of synthesis parameters" (1996)、Proceeding of the Eighth International Symposium on Cyclodextrins。
【0028】
合成されたポリマーは、粒状であり、水及び殆どの有機溶媒(アルコール、クロロホルム、アセトン、DMF、DMSO等)に不溶である。
【0029】
本発明の目的のために好ましく使用されるポリマーは、エピクロロヒドリンを用いたシクロデキストリンの架橋によって得られるポリマーであり、200−900μmol/g、好ましくは600−800μmol/gの範囲内にあるシクロデキストリン含量を有する。
【0030】
シクロデキストリンの、例えばセルロースのヤーン若しくは織物上への、又は、例えばセルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリエチレン、若しくはポリエステルなどのポリマー材料の不織布上へのグラフトは、リンカーモノマーを支持体とシクロデキストリンとの間に介在させることにより行われる。
【0031】
様々なモノマー、例えば、グリシジルメタクリレート(GMA)、アクリル酸、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド及びビニルアセテートが、グラフト重合反応において用いられ得る。好ましくは、使用されるモノマーは、グリシジルメタクリレートである。
【0032】
GMAモノマーは、エポキシドなどの極めて反応性の高い基が存在するおかげで、特に興味の対象となっている。
【0033】
モノマーを支持体上へとグラフトするために用いられる方法は、文献、例えば、以下の論文により知られている;P. Le Thuaut、G. Crini、M. Morcellet、A. Naggi、U. Maschke、C. Vecchi、X. Coqueret、G. Torri及びB. Martel、J. Appl. Polym. Sci. (1997年);P. Le Thuaut、Macromolecular and Organic Chemistry Doctoral thesis、University of Science and Technology of Lille、Macromolecular and Chemistry Laboratory、“Fonctionnalisation de supports textiles pour l’elaboration de filtres adsorbeurs de polluants organiques” (2000年)。この合成は、典型的には、以下の工程を含む:
・化学的又は物理的処理による、例えば電子ビームなどを用いた固体支持体の活性化。好ましい技術は、電子ビームの照射である;
・支持体の誘導体化とモノマーの重合とを両方もたらし、様々な長さのスペーサを生成させるモノマーのラジカルグラフト反応。
【0034】
スペーサが支持体上にグラフトされると、後者はシクロデキストリンで機能付与される。本発明において用いられる織物へのCDでの機能付与方法は、文献、例えば以下の論文において説明されている:K. Poulakis、H.J. Buschmann及びE. Schollmeyer、独国特許第40 35378号(1992年);H. Reuscher及びR. Hirsenkorn、欧州特許第697 415号(1995年);H. Reuscher及びR. Hirsenkorn、独国特許第19 520 967号(1995);P. Le Thuaut、G. Crini、M. Morcellet、A. Naggi、U. Maschke、C. Vecchi、X. Coqueret、G. Torri及びB. Martel、J. Appl. Polym. Sci. (1997年)。
【0035】
第2の側面では、本発明は、血液の解毒方法であって、以下の工程:
a)血液を敗血病のおそれのある患者から取り出す工程と、
b)体外循環の動脈系統上に、ポリスルフォン又はそれの誘導体、例えばポリエーテルスルフォンからなる血漿濾過材を挿入して、血漿を前記血液の残りの部分から分離する工程と、
c)前記血漿を、本発明に従う血液濾過材上で濾過する工程と、
d)濾過された前記血漿を、先に分離した血液の前記部分と再び合わせる工程と
を含んだ方法に関する。
【0036】
工程d)が終了したら、このようにして解毒された血液が、直ちに、患者に戻され得る。
【0037】
第3の側面では、本発明は、数種類の薬剤、例えばバルビツール剤、又は他の毒性物質の不適切な摂取により引き起こされる血液中毒の場合における、上で説明した血液濾過材の使用及び血液の解毒方法に関する。これら物質は、リポ多糖類と同様に、担持されたシクロデキストリンと共に錯体を形成し、それにより血液から除去される。
【0038】
実験データ
ポリマー担体材料の合成
シクロデキストリンは、水酸基の1つを2官能性分子であるエピクロルヒドリンと反応させることによって重合され得る。塩基性環境において、エピクロルヒドリンは、反応ダイアグラム1に示すように、CDと(架橋反応)及び/又はそれ自身と(ホモ重合)反応し得、ダイアグラム2に示されたポリマーの合成をもたらす。
【化1】

【化2】

【0039】
恒温リアクタ中で、機械攪拌子が、水溶液中で互いに異なる割合にあるシクロデキストリン(Wacker)とNaOH(Carlo Erba)とを混ぜ合わせる。1時間の攪拌後、所望量のエピクロルヒドリン(Fluka)がゆっくりと滴下されて、高粘度の白みがかったペーストの形成が即座に観察され、これが、表1に記載された様々な時間に亘り激しく攪拌される。次に、アセトン(Acros)が添加され、生成物がグーチ濾過材のために回収される。過剰の未反応エピクロルヒドリン及びシクロデキストリンは、ソックスレーにおけるポリマーの熱水及びエタノール(Girelli)での洗浄により取り除かれる。最後に、回収された生成物が凍結乾燥によって乾燥される。
【0040】
合成生成物に存在するCDの測定のために、ポリマー全体の加水分解によって得られるグルコースが、比色測定(フェノールを用いる)により定量される。
【0041】
この目的のために、20mgのポリマーが5mlの1Mトリフルオロ酢酸(Fluka)中に懸濁されて、この懸濁液が、激しい攪拌下で、120℃で8時間に亘り加熱される。その後、トリフルオロ酢酸を取り除くために、溶液が蒸発される。生成物は、10mlの蒸留水中に回収される。グルコース含量は、フェノールと硫酸とを用いる比色測定により測定される。この方法は、検量線を必要とする;そのために、1重量%のグルコースの母液を用いて、表に示される様々なグルコース(Fluka)濃度の溶液が調製される。
【表1】

【0042】
同じ手順が、加水分解されたポリマーの溶液について繰り返される。もっとはっきり言えば、様々な量が10mlの中性溶液から取り出され、表で報告されるように、様々な量の水で希釈される。
【表2】

【0043】
試験管中に入れられたこれら溶液に、0.5mlの5重量%フェノール水溶液(Carlo Erba)が添加される。10分後、2.5mlの98%H2SO4(Carlo Erba)が添加され、激しく攪拌される。この添加の後の更に10分後、480nmの波長での吸光度が読み取られる。ランバート−ベールの法則を使用して、検量線をつくること及びそれにより加水分解されたポリマー中のグルコース含量を測定することができる。この方法によって、1gの材料当たりのμmol又はμgで表されたシクロデキストリン含量が得られる。
【0044】
合成されたポリマー中のシクロデキストリン含量の計算は、材料を2つの群:低い(〜300μmol/g)CD含量を有するものと高い(〜600/800μmol/g)CD含量を有するものとに分けることを可能にした。
【0045】
様々な実験条件と得られたCD値とが、表1に報告されている。
【表3】

【0046】
この表でベータ−20と示された材料は、文献(E. Renard、G. Barnathan、A. Deratani及びB. Sebille,“Characterization and structure of cyclodextrin-epichlorohydrin polymers-effects of synthesis parameters”、(1996年)、Proceeding of the Eighth International Symposium on Cyclodextrins)で知られた方法を用いて合成された。
【0047】
錯体生成能の性質決定及び計算の検討の両方の間中、この材料が参照された。
【0048】
合成のために用いられた実験条件の分析から、高シクロデキストリン含量の材料を得るための基本的なパラメータは反応混合物中に存在する溶媒の量であることが結論付けられた。
【0049】
織物及び不織布の固体担体の合成
織物は、“Grafting of cyclodextrins onto polypropylene nonwoven fabrics for the manufacture of reactive filters. II Characterization”、B. Martel、P.Le Thuaut、G. Crini、M. Morcellet、A. Naggi、U. Maschke、S. Bertini、C. Vecchi、X. Coqueret及びG. Torri、J. Appl. Polym. Sci.、78: 2166-2173、(2000年)に記載された方法に従い、図3に記載されたダイアグラムに従って準備される。
不織布は、50KGy(5Mrad)の電子線によって基本活性線量を提供する装置を用い、5〜30Mradを使用して物理的に活性化され、より大きな線量を得るために、照射が繰り返される。グリシジルメタクリレートのグラフト反応は、活性化された織物を、モノマーを1−70%の濃度で含んだ水溶液浴中に浸漬させ、不活性雰囲気において70℃で20−200分の様々な時間に亘って加熱することによって行われる。結合されたGMAの量は、長時間の洗浄及び乾燥後の織物の重量の増加から算出される。シクロデキストリンでの誘導体化は、機能付与された織物をシクロデキストリンのDMF/H2O溶液に浸漬させ、80℃で8〜24時間に亘って加熱することによって行われる。導入されたシクロデキストリンの量は、長時間の洗浄及び乾燥後の織物の重量の増加から算出される。
【化3】

【0050】
本発明の担持されたシクロデキストリンの生物活性の例
例1.水溶液からのバッチ吸収
以下のタイプの材料が試験された:エピクロルヒドリンで架橋されたシクロデキストリン(P1776:GelベータCD;P1780:GelガンマCD;P1793:GelアルファCD)、CDで誘導体化されたポリエチレンイミンで被覆されたシリカ(SiPEICD)、ベータシクロデキストリンで誘導体化されたポリプロピレン担体(P1708)。
【0051】
再水和され洗浄されたCDを含んだ100mgの各々の材料が、5mlの(10mg/Lの)LPSの蒸留水溶液と共に2時間に亘って攪拌される。222mgのP1708は、2時間に亘って、3mlの溶液と共に攪拌される。
【0052】
溶液は、5000rpmでの5分間に亘る遠心分離によって回収される。上澄みから、1.6μcのガラス繊維フィルタ上で濾過されて、別々の部分標本が取り出される。第1(0.5ml)はフェノール/硫酸法で分析され、第2(5ml)は、凍結乾燥され、1.6ml中に取り入れられた後に、カルボシアニン色素アッセイ法(Carbocyanine Dye Assay method)に従う測定に供される。
【0053】
フェノール/硫酸法
サンプル部分標本(500μl)に、500μlの5%フェノール水溶液が添加され、2mlの濃硫酸が添加され、20分放置後、ゆっくりと攪拌しながら、480nmの波長での吸収が読み取られる。
【0054】
カルボシアニン色素アッセイ法
試薬:
1)カルボシアニン色素
2)pH4の0.03M Na−アセテート緩衝液
3)1,4−ジオキサン:pH4の0.03M Na−アセテート緩衝液(1:1体積/体積)
4)0.01Mアスコルビン酸。
【0055】
色素溶液を調製するために、試薬1を試薬3に1:2の比(重量/体積)で添加され、完全に可溶化したとき、試薬2が1:4の比(体積/体積)で添加され、最後に、試薬4が1:0.01(体積/体積)の比で添加される。
【0056】
アッセイのために、凍結乾燥された部分標本が0.4mlの試薬2中に取り入れられ、体積が1mlになるまで水が添加される。
【0057】
攪拌後、0.6mlの色素溶液が添加され、それは室温で5分間に亘ってインキュベートされる。460nmの波長での吸収の読み取りが行われる(BeMiller J.N. Whistler R.L. Shaw D.H.によって編集された“Methods in carbohydrate chemistry”の中の、Johnson K.G. “Isolation and purification of lipopolysaccharides”)。
【0058】
比較として、シクロデキストリンでの誘導体化がない以外は、類似の条件で得られた材料のサンプルを同じ条件で試験する(P1458;SiPEI;)。表2に、残留LPSデータが報告されている。
【表4】

【0059】
例2. 0.15M NaCl溶液によるバッチ吸収
得られた結果に基づいて、樹脂P1776、P1780、P1793及びP1708が、LPS水溶液中及び0.15M NaCl溶液中で再試験された。この場合、200mgのP1793が処理され、5mlの(10mg/Lの)LPS蒸留水溶液と共に2時間に亘って攪拌された100mgのP1776及びP1780と比較された。
【0060】
P1708に関しては、228mgが秤量され、0.15M NaCl中で3mlの50μg/ml LPSと共に2時間に亘って攪拌された。
【0061】
この場合においても、溶液は、5000rpmでの5分間に亘る遠心分離によって回収された。2つの部分標本(500μm)は、各々、例1において説明されたフェノール/硫酸法を用いた測定に供された。
【表5】

【0062】
エピクロルヒドリンで架橋されたシクロデキストリンに基づいた材料は良好な吸収値を示し、架橋された白色のCMC(P1458)によって示された吸収度の欠如を考察すると、架橋剤の架橋による寄与はないと考えても良いかもしれない。以下の吸収度スケールが観察された:ベータ<ガンマ<アルファ。ここで、材料中のCD量は等しい。類似の結果がイオン力の存在下で観察された。
【0063】
例4. 低圧カラムでの吸収
200mgの樹脂P1793が、終夜に亘って放置されて再水和され、次に、カラムにおいて、300mlのH2Oで洗浄された。20mlの10μg/ml LPS溶液が樹脂に通され、3ml(実験I)及び1ml(実験II)部分が集められた。各々の部分が凍結乾燥され、例1において説明されたように、カルボシアニンの存在下の測定に供された。表4及び5に、各々の部分中のLPSのμg/mlでの濃度が、それぞれ、第1及び第2実験について報告されている。カラムの初期効果及び段階的飽和が記録されている。
【表6】

【表7】

【0064】
例5.高圧での吸収
790mgのP1780樹脂がHPLCカラムに詰められ、5時間に亘って、蒸留されたH2Oで洗浄され且つ水和された。5mlの20μg/ml LPS溶液が、30分間に亘る連続的な循環の中で樹脂に通され、次に、部分標本(500μg/ml;溶液2)が、実験法1で説明されたフェノール/硫酸法を用いて、2倍量での測定に供された。比較のために、再循環前のLPS溶液(溶液1)の部分標本も測定に供された。表6に、測定されたLPS濃度が、μg/mlで報告されている。LPSの60%の吸収が見受けられた。
【表8】

【0065】
同じ溶液が、LAL試験法(CAMBREX)を用いて試験された。0.125EU/mlと予想されるこの方法の感度閾値を利用するために、「最適な」希釈溶液が調製された。結果は表7に報告されている。
【表9】

【0066】
所見:2つの調製間の比較は、2つの対応する希釈溶液に対する試験について異なる陽性結果を示しており、それゆえに、ガンマCDで処理された試料では、約60%に等しいLPSが除去されたという仮説が立てられるかもしれない。
【0067】
利点
血液からのリポ多糖類の選択的除去のための血液濾過材を製造するための担持されたシクロデキストリンの使用は、敗血病に冒された人の健康に非常に有利に、1つの血液濾過材の費用を相当削減することを可能にする:シクロデキストリンは、容易に且つそれにより経済的に供給され得る化合物である。
【0068】
更に、血液の解毒の効果は、他の現在入手可能な濾過材の効果よりも非常に高い。
【0069】
担持されたシクロデキストリンの使用は、血漿のただ1回の濾過を行うことで内毒素の完全な除去を達成することを可能にし、これは、同じ結果に達するために繰り返しの適用を必要とする従来の解毒システムとは異なる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】シクロデキストリンの切頭円錐構造を示す図。
【図2】β−シクロデキストリンの構造の1つの例を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体担体に担持されたシクロデキストリンの使用であって、血液中のリポ多糖類の除去用の血液濾過材を調製するための使用。
【請求項2】
請求項1記載の使用であって、前記固体担体がポリマー樹脂である使用。
【請求項3】
請求項2記載の使用であって、前記ポリマー樹脂が、エピクロロヒドリン、イソシアネート、ポリアミン、アクリレート、カーボネートの中から選択される架橋剤で架橋されたシクロデキストリンである使用。
【請求項4】
請求項2又は3記載の使用であって、前記ポリマー樹脂が、エピクロロヒドリンで架橋されており且つ200〜900μmol/gの範囲内にあるシクロデキストリン含量を有したシクロデキストリンである使用。
【請求項5】
請求項4記載の使用であって、前記シクロデキストリン含量が600〜800μmol/gの範囲内にある使用。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項記載の使用であって、前記固体担体が、ポリエチレンイミンで被覆されたシリカである使用。
【請求項7】
請求項1記載の使用であって、前記固体担体が、ヤーン又は織物又は不織布である使用。
【請求項8】
請求項7記載の使用であって、前記織物がセルロースであり、前記不織布がポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、セルロースアセテートである使用。
【請求項9】
請求項7又は8記載の使用であって、前記不織布がポリプロピレンである使用。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項記載の使用であって、前記シクロデキストリンが、前記ヤーン又は織物又は不織布に、リンカーモノマーによって結合されている使用。
【請求項11】
請求項10記載の使用であって、前記リンカーモノマーが、グリシジルメタクリレート(GMA)、アクリル酸、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド及びビニルアセテートの中から選択される使用。
【請求項12】
請求項11記載の使用であって、前記リンカーモノマーが、グリシジルメタクリレート(GMA)である使用。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか1項記載の使用であって、前記シクロデキストリンが、アルファシクロデキストリン、ベータシクロデキストリン及びガンマシクロデキストリンの中から選択され、好ましくはアルファシクロデキストリンである使用。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか1項記載の使用であって、毒性物質及び/又は薬剤の不適切な摂取によって引き起こされた中毒の場合における使用。
【請求項15】
血液の解毒方法であって、
a.血液を敗血症のおそれのある患者から取り出す工程と、
b.血漿を前記血液の残りの部分から分離する工程と、
c.前記血漿を、請求項1乃至14の何れか1項記載の担持されたシクロデキストリンを用いて濾過する工程と、
d.濾過された前記血漿を、先に分離した血液の前記部分と再び合わせる工程と
を含んだ方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法であって、工程d)後に、前記精製された血液を前記患者に戻す工程を含んだ方法。
【請求項17】
請求項15又は16記載の方法であって、菌体内毒素及び外毒素が前記血液から除去される方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法であって、前記菌体内毒素及び外毒素が、グラム陰性菌のリポ多糖類である方法。
【請求項19】
請求項15乃至18の何れか1項記載の方法であって、敗血症症候群の予防のための方法。
【請求項20】
請求項15乃至19の何れか1項記載の方法であって、前記血液からの、バルビツールなどの毒性物質及び/又は薬剤の除去のための方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−502905(P2009−502905A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523549(P2008−523549)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際出願番号】PCT/IT2006/000583
【国際公開番号】WO2007/013122
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(504312771)ヒューマニタス・ミラソーレ・エス.ピー.エー. (8)
【出願人】(508028531)
【氏名又は名称原語表記】Istituto di Ricerche Chimiche e Biochimiche Giuliana Ronzoni
【住所又は居所原語表記】Via G. Colombo,81,I−20133 MILANO, Italy
【Fターム(参考)】