説明

血液凝固を測定するための方法および装置

本発明は、血液サンプルが凝固するために必要な時間を測定するための検定を行うための装置および方法を提供する。装置は、1つ以上の凝固剤で被覆される反応チャンバを備える。一滴の血液または同等物は、サンプル適用ポートに配置され、希釈され、反応チャンバの中で凝固剤に接触させられる。希釈血液サンプルは、血液が凝固するまで、反応チャンバを通して前後に移動させることができる。血液凝固過程は、反応チャンバ中の血液サンプルの流動を防ぐフィブリンスタンドを形成する。凝固時間は、サンプルが反応チャンバに進入する時点から、反応チャンバ中の波形が変化するか、またはサンプルの運動または流動が停止する時点までの総時間であり、濁度によって測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、米国特許法§119(e)の下、2007年6月20日に出願された米国仮特許出願第60/945,290号(これは、その全体が、参考として本明細書に援用される)の利益、およびそれへの優先権を主張する。
【0002】
本発明は、サンプル内における1つ以上の選択された被分析物の存在を判定するため、特に、血液凝固を測定するための検定を行うためのマイクロ流体システムに関する。
【背景技術】
【0003】
血液凝固は、相互作用要素である血管、血液凝固因子、および血小板の3つの相互作用要素に関与する複雑な過程である。2つのよく認識された凝固経路が存在し、それらは、外因性またはトロンボプラスチン制御された凝固経路、および内因性またはプロトロンビン/フィブリノゲン制御された凝固経路である。外因性および内因性経路は両方とも、フィブリノゲンのフィブリンへの変換を触媒するタンパク質分解酵素である、トロンビンの産生を引き起こす。可溶性血漿タンパク質であるフィブリノゲンは、酵素トロンビンの作用によって可溶性フィブリンに変換され、試験サンプルを液体から凝固形態に変化させる。
【0004】
臨床検定においては、血液凝固検定は、フィブリン塊の形成に必要な時間を測定する。多くの種類の凝固検定が存在する。それらとしては、プロトロンビン時間(PT)、部分トロンボプラスチン時間(PTT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、フィブリノゲン検定、トロンビン凝固時間(TCT)、活性化凝固時間(ACT)、その他を含む。2つの最も一般的な凝固試験は、PTおよびAPTT検定である。両試験は、患者のベースライン止血状態を評価するように、または抗凝固療法に対する反応、ならびに凝血系の総合的機能および状態を監視するように凝固時間を測定する。
【0005】
PT試験は、外因性および一般的な経路凝固系を評価し、長期抗凝固療法を監視するために使用する。長期抗凝固療法のための一般的な薬物は、BristolMyersSquibbによって販売されるCOUMADIN(登録商標)の商標で一般的に周知のナトリウムワルファリンイソプロパノールクラスレートである。ワルファリンおよびその類似体は、ビタミンK依存性凝固因子の生合成を効果的に遮断することによって抗凝固を誘導する。PT試験は、凝固時間を測定するため、血液における凝固剤の有効量を測定することができる。
【0006】
第2の日常的に使用される検定であるAPTT試験は、内因性および一般的な凝固系に含まれる凝固因子の欠陥をスクリーニングするためのヘパリン療法を監視するために広く使用される。ヘパリンは、抗トロンビンIIIと称される血漿補因子を有する複合体に結合するか、またはそれを形成することによってその抗凝固効果を発揮する。
【0007】
上記に加えて、FDAは、抗原性、発色/アミド分解、および凝固の3つのカテゴリに大きく分けることができる臨床用途のためのいくつかのタンパク質C検定を承認している。抗原性検定は、ELISA、EIA、およびRIA型試験を含む。抗体は、機能活性に関連するエピトープを対象としないため、これらの検定は、タンパク質が機能的であるかどうかを判定しない。
【0008】
発色/アミド分解検定は、酵素の活性部位の、強い色調の生成物を放出する小さい合成基材を開劣する能力に依存する。合成基材と天然生体基材に対する活性化タンパク質Cの活性との間に相違が存在する可能性がある。さらに、酵素の他の機能特性(すなわち、補因子相互作用)は、合成基材によって試験されない。
【0009】
凝固検定は、サンプル分析の前に標準曲線の作成を必要とする。サンプルは、初期希釈、タンパク質Cの活性化のための培養、その後、凝固カスケードの開始を必要とする。凝固時間とタンパク質C活性との間の標準曲線を使用して、不明のサンプルのタンパク質C活性を補間する。検査法における相違が存在するが、試薬の新規ロットが開封されるか、または対照がその所定の範囲に該当しない場合、標準曲線は、試験した患者のサンプルの各群で規定通りに繰り返される。
【0010】
これらの方法の使用において多くの短所が存在する。例えば、試薬は、熱的に敏感であり、使用前に冷却しなければならない。乾燥試薬が再構成されると、数時間内に使用するか、そうでなければ廃棄しなければならない。また、実験器具は、使用する複雑な技術のために比較的大きく、高価であり、検出方法の複雑性のために訓練を受けた人材による使用のために設計される。さらに、大型血液サンプルも、通常、必要とされる。したがって、正確、便利、かつ安価な、血液凝固の時間を検出し測定するための定量法の必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、血液サンプルが凝固するために必要な時間を測定するための検定を行うための装置および方法を提供する。装置は、1つ以上の凝固剤で被覆される反応チャンバを備える。一滴の血液または同等物は、サンプル適用ポートに配置され、反応チャンバの中で凝固剤に接触させられる。任意で、サンプルは、希釈することができる。接触は、例えば、x、y、およびz軸に沿ってカートリッジを傾けること等による任意の手段によって行うことができる。希釈血液サンプルは、血液が凝固するまで、反応チャンバを通して前後に移動させることができる。血液凝固過程は、血液サンプルの流動を防ぐフィブリンスタンドを形成する。凝固時間は、サンプルが反応チャンバに進入する時点から、サンプルの運動または流動が停止する時点、または毛細内で生成される波の増幅が初期の非凝固状態のものから変化する時点までの総時間である。
【0012】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の詳細な説明を参照して明らかになる。さらに、ある手順または組成物をより詳細に記載する様々な参考文献が本明細書において説明されるため、それらの内容は、参照することにより、それらの全体として組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】1セットの相互接続した反応チャンバを有する使い捨ての片、およびチャンバのうちの1つの中にある可動部材の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記または以下にかかわらず、本明細書に挙げられるすべての出版物、特許、および特許出願は、参照することにより、それらの全体として本明細書に組み込まれる。
【0015】
特に明記しない限り、本明細書および請求項を含む、本出願において使用される以下の用語は、以下の通りの定義を有する。本明細書および添付の請求項において使用されるように、「ある」、「1つの」、および「その」という単数形は、内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むことを留意しなければならない。
【0016】
本明細書において使用されるように、「対象」という用語は、哺乳類および非哺乳類を包含する。哺乳類の例としては、これらに限定されないが、哺乳類クラスの以下の任意のメンバを含む:ヒト、チンパンジー等のヒト以外の霊長類、ならびに他の類人猿およびサル種、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ等の家畜動物、ウサギ、イヌおよびネコ等の家庭動物、ラット、マウスおよびモルモット等のげっ歯類を含む実験動物。非哺乳類の例としては、これらに限定されないが、鳥、魚等を含む。用語は、特定の年齢または性別を意味しない。
【0017】
本明細書において使用されるように、「固相担体」という用語は、プラスチック板、電磁ビーズ、ラテックスビーズ、マイクロタイタープレートウェル、ガラス板、ナイロン、アガロース、アクリルアミド等の固体表面を指す。
【0018】
本発明は、血液凝固時間を測定するための方法およびマイクロ流体装置に関する。典型的なマイクロ流体装置を図1に示す。装置は、組織因子または他の凝固剤等の1つ以上の凝固剤で被覆される反応チャンバ110および120を有するカートリッジ100を備える。反応チャンバ110および120は、血液リザーバ130、非凝固参照ポート140、およびサンプル適用ポート150と、1つ以上の毛細管チャネルを介して流体連通することができる。一滴の血液または同等物は、サンプル適用ポート150に配置される。任意で、希釈剤を、リザーバ150の中に配置することができ、それによって、血液サンプルおよび希釈剤の混合は、任意で、希釈血液サンプルを提供することができる。その後、血液サンプルは、反応チャンバ110および/または120の中で凝固剤に接触することができる。接触は、例えば、毛細複合体中のサンプルが、ダイアフラム作動装置と同期して既定の振動数および振幅で変位することができるように、リザーバ130のダイアフラムを機械的に移動させるか、またはx、y、およびz軸に沿ってカートリッジを傾けること等による任意の手段によって行うことができる。血液サンプルは、血液が凝固するまで、反応チャンバ110および120を通して前後に移動させることができる。血液凝固過程は、血液サンプルに流動を防ぐフィブリンスタンドを形成し、また、ダイアフラム作動から生じる波形の振幅を変化させる。凝固時間は、サンプルが反応チャンバ110および120に進入する時点から、波形の振幅が変化するか、またはサンプルの運動もしくは流動が停止する時点までの総時間である。
【0019】
カートリッジ100は、長方形、円形、楕円形、または任意の形状であり得、良好な熱伝導性、光の透過の明瞭度、容易な溶接に対する機械的特性、試薬の均一な被覆および安定性を可能にする表面特性、および検定への干渉を防ぐ液体培地に対する中性等のその特性に対して選択される適切な材料から作製することができる。この目的のために、適切なプラスチックとしては、特に、PETG、ポリエステル(Mylar(登録商標))、ポリカーボネート(Lexan(登録商標))、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、SAN、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、特に、Cycolacという商標名でBorg Warnerによって供給されるABSを含む、高自由表面エネルギーおよび低水分収着を有するものを含む。代替および同等物として、市販の成形カートリッジを本発明の実施において使用することができる。
【0020】
カートリッジ100は、組織因子等の1つ以上の凝固剤で被覆される反応チャンバ110および120を有することができる。各反応チャンバは、好ましくは、大気に暴露することができる。本発明の一態様においては、反応チャンバ110および120は、全体に分布される妨害物128を含むことができる。妨害物128は、血液サンプルが、凝固するまで、前後に流動することができるようにする空の間隙を間に有する円筒または支柱等の任意の形状であり得る。本発明の別の態様においては、反応チャンバ110および120は、妨害物128を有さない。
【0021】
血液サンプルは、静脈穿刺または指刺等の従来の手法によって患者から得ることができる。サンプルは、カートリッジ100上へサンプル適用ポート150を介して適用することができる。本発明の一態様においては、患者から得られた血液のサンプルは、本発明の方法および装置において、付加的な操作をせずに使用することができる。代替として、患者から得られた血液のサンプルは、赤血球を完全または部分的のいずれかで除去するように処理することができる。赤血球は、任意の周知の方法、例えば、遠心分離、サンプルを赤血球接着剤と反応させることによってか、または赤血球フィルタを使用することによって除去することができる。方法を行う際の血漿の使用は、例えば、画像システムが、フィブリノゲンのフィブリンへの物理的重合等の血液中で行われている物理的変化をより良く監視できるようにすることによって、より高い正確度および精度を提供することができる。
【0022】
血液または血漿は、任意で、凝固前に希釈剤で希釈することができる。希釈剤は、単に水溶液であり得るか、または非水溶液であり得、任意で、例えば、塩、タンパク質、糖類、単糖類、カルシウム、マグネシウム、ランタニド等の金属イオン等の様々な添加剤を含むことができる。希釈剤のある製剤は、ゼラチン含有組成物および乳液を含むことができる。通常、希釈剤は、クエン酸塩緩衝剤等の緩衝液である。希釈剤は、リザーバ130、サンプル適用ポート150、または非凝固ウェル140に配置することができる。
【0023】
その後、非希釈サンプルまたは希釈サンプルは、凝固検定を行うために、反応チャンバ110および120へ移動させることができる。本発明の一態様においては、サンプルは、圧力を使用して移動させることができる。リザーバ130は、例えば、ダイアフラム、または柔軟、圧縮性、収縮性、膨張性、もしくは圧力可動性の層、または要素と組み合わされる曲がり部材であり得る。ダイアフラムは、ダイアフラムの1つの表面が、環境に暴露され、ダイアフラムの第2の表面が、リザーバ130の内部空洞の一部を画定するように配置することができ、ダイアフラムの動作は、内部空洞内の圧力の変化を引き起こす。圧力の変化は、反応チャンバ110および120の内外、ならびに非凝固参照ポート140およびサンプル適用ポート150の内外への血液サンプルの動作を引き起こす。好ましくは、リザーバ130のダイアフラムは、毛細複合体の血液サンプルが、既定の振動数および振幅で変位するように、機械的に移動させることができる。
【0024】
本発明の凝固検定は、当技術分野に記載されるこれらの各試験のための試薬による、プロトロンビン時間(PT)、部分トロンボプラスチン時間(PTT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、トロンビン凝固時間(TCT)、フィブリノゲン、ヘパリン管理試験(HMT)、プロタミン応答時間(PRT)、ヘパリン応答時間(HRT)、低分子量ヘパリン(LMWH)、低範囲ヘパリン管理試験(LHMT)、およびエカリン凝固時間(ECT)を含む。検定のうちの1つ以上に対する試薬は、反応チャンバ110および120のうちの1つまたは両方に配置することができる。試薬は、反応チャンバの全ての表面または妨害物128のみに適用することができる。検定用試薬は、反応チャンバ110および120のうちの1つに配置し、1つの反応チャンバは、実対照として作用し、反応チャンバ140は、凝固がそのチャンバで生じるべきではないため、非凝固対照として作用する。代替として、反応チャンバ110および120のそれぞれは、凝固検定用の異なる試薬を有することができる。例えば、反応チャンバ110は、PT検定用試薬を有することができるが、反応チャンバ120は、HRT検定用試薬を有することができる。
【0025】
例えば、凝固検定がPTである場合、トロンボプラスチンの任意の供給源を使用することができる。例えば、トロンボプラスチンは、商業的供給源から購入することができるか、ヒト胎盤、ラビット脳、ウシ脳、雄牛脳、およびヒト脳から抽出することができる。組み換えDNA技術によって生成させるトロンボプラスチンも使用することができる。通常、供給源は、ラビット脳である。ラビット脳粉末は市販され、例えば、ニュージーランド白ウサギから付着している血管を除去した全脳を取り出し、スラリーを生成するためのワーリングブレンダーで過剰なアセトン中のラビット全脳を均質にし、−20℃の真空下で保存される場合に安定するラビット脳粉末を生成するために、真空下でスラリー乾燥させることによる標準的方法に従って単離することができる。粉末ウシ脳、粉末雄牛脳粉末ヒト脳、組み換えDNA技術によって生成される粉末トロンボプラスチン、および粉末ヒト胎盤は、同様の方法、または該技術分野で周知の方法によって調製することができる。
【0026】
その後、ラビット脳粉末またはヒト胎盤粉末等の粉末トロンボプラスチン源は、トロンボプラスチン抽出物を調製するために水溶液中で抽出することができる。水溶液は、任意で金属イオンキレート剤を含有する温食塩水であり得る。金属イオンキレート剤は、クエン酸塩、クエン酸塩の塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンビス(オキシエチレンニトリロ)四酢酸(EGTA)、およびそれらの塩であり得る。粉末脳材料は、水溶液で抽出され、トロンボプラスチンは、上清へ分離する。上清は、トロンボプラスチンを単離するために遠心分離機にかけることができ、その後、単離トロンボプラスチンは、凍結乾燥することができる。
【0027】
その後、トロンボプラスチン試薬は、上記の過程によって調製されるトロンボプラスチン抽出物をカルシウムイオンと混合することによって調製することができる。この過程によって調製されるトロンボプラスチン試薬は、必要ではないが、最終試薬に金属イオンキレート剤を含む場合がある。例えば、塩化カルシウム、酒石酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、カルシウムクエン酸塩、または乳酸カルシウム等のカルシウムイオンの任意の供給源を使用することができる。したがって、商業的供給源から調製または得られるトロンボプラスチン試薬は、反応チャンバ110および120に配置することができる。
【0028】
別の例においては、凝固検定は、タンパク質C活性検定であり、本発明の方法および装置は、タンパク質C賦活検定を使用して示される。この検定は、内因性凝固経路またはX因子の開始剤、タンパク質C活性剤(トロンボモジュリン、Proac(登録商標)、他の触媒または化学量論活性剤等)、カルシウムイオン、凝固カスケードにおけるカルシウム結合部位と相互作用する1つ以上の金属化合物、好ましくは、1つ以上のランタニド化合物、および任意でバルカーおよび/または安定剤を含む試薬を使用する。
【0029】
タンパク質Cの濃度は、凝固時間、血塊形成の速度、最終的な塊の完全性(すなわち、凝固力)、またはその任意の組み合わせに相関し得る。検定は、測定されたシグナルとタンパク質C濃度との間の関係を確立するために、標準対照血漿に対して調整することができる。標準対照曲線は、必要に応じて、サンプル測定の直前に作成することができるか、または紙面または電子的に保管された標準対照曲線であり得る。
【0030】
上述の全血または血漿サンプルは、そのまま使用することができるか、または干渉物質の濃度を低下させ、遺伝的または臨床的状態のために欠損している可能性がある任意の凝固因子を補充するために、好ましくは、欠失血漿5に対してサンプル1で、タンパク質C欠失血漿中で希釈することができる。また、必要に応じて、ポリブレンまたは別のヘパリン拮抗薬を希釈サンプルに添加することができる。
【0031】
本発明のタンパク質C検定においては、サンプルは、タンパク質C検定試薬を含有する反応チャンバ110および120へ配置される。本タンパク質C検定試薬は、タンパク質C活性剤、内因性凝固経路またはX因子の開始剤、カルシウムイオン、および任意で1つ以上のランタニド化合物を含む。
【0032】
タンパク質C検定においては、反応は、トロンボモジュリンがトロンビンを捕捉し、タンパク質Cを活性化し、サンプルの凝固が、少なくとも約200秒後、好ましくは、少なくとも約250秒、より好ましくは、少なくとも約300秒後に開始すると考えられる、初期遅延時間と共に進む。初期遅延時間は、数秒から約5〜7分と異なり得る。
【0033】
本発明のタンパク質C検定においては、内因性凝固経路またはX因子の開始剤は、Pacific Hemostasis of Huntersville、N.C.から市販されるThromboScreen(登録商標)、Kontact(登録商標)等、凝固カスケードを誘引することが可能な任意の物質であり得る。精製成分から再構成される試薬を含む、X因子の他の凝固開始剤、プロトロンビン時間(PT)、および活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)も使用することができる。タンパク質C活性剤は、好ましくは、上述のように調製されるか、または商業的供給源から得られるトロンボモジュリンである。
【0034】
別の態様においては、本発明の装置および方法は、細菌内毒素に対する凝固および/または発色試験のために使用することができる。細菌内毒素は、主に、グラム陰性菌の細胞膜に由来するリポ多糖類成分である。これらの試験の大多数は、カブトガニであるカブトガニポリフェムスからのカブトガニ変形細胞溶解物(LAL)を使用する。LALの細菌内毒素またはグルカンへの暴露は、哺乳類血漿凝固検定と同様に、初期の凝固系を誘引し、液状LALの固化ゲル塊への変換をもたらす。代替の生体系(すなわち、カブトガニ属の変形細胞溶解物)を使用する任意の修飾と同様に、この試験においては、これらの体系の精製成分、単独または他の凝固系の成分と組み合わせた組み換えタンパク質、構造タンパク質、プロテアーゼ阻害剤、または活性剤が、本発明の装置および方法における使用によく適応する。この試験制度のための使用は、これらに限定されないが、非経口医薬品、洗浄液、透析液、WFI、および医療装置ならびにIVD製品および加工材料における内毒素レベルを定量化することを含む。本発明の装置および方法を使用する、細菌内毒素に対する凝固および/または発色試験は、内毒素血症または敗血症を有する患者の監視においても使用される。
【0035】
本発明の一態様においては、反応チャンバ110および120、ならびに非凝固参照ポート140におけるサンプル変位の振動数および/または振幅は、時間関数として測定することができる。凝固剤が反応チャンバ110および/または120のみに配置されるため、参照ポート140中のサンプルは凝固しない。反応チャンバ110および120におけるサンプル変位の振動数および/または振幅は、非凝固参照ポート140中のサンプルの振動数および/または振幅と比較することができる。非凝固参照ポート140と比較した、反応チャンバ110および120におけるサンプル変位の振動数および/または振幅の変化は、凝固点でのサンプルの液状から線維性ゲルへの遷移を示す。通常、非凝固参照ポート140は、凝固反応ウェルに向けられる力を中和するために大気に対して解放したままであり得、それによって、形成直後に血塊の検出を可能にする。付加的力を吸収する非凝固チャネルがない場合、弱い閉じ込められた塊は、ポストから破裂するか、またはその検出の遅延を引き起こす場合がある。
【0036】
凝固時間は、血液凝固試薬との接触後に変化する液状サンプルの物理的変化の程度を検出することによって測定することができる。物理的変化は、例えば、濁度(吸光度を含む)、粘性、誘電率等の任意の変化であり得る。好ましくは、物理的変化は、波の運動および/または特性を測定または光学的に検出することによってか、または濁度(もしくは吸光度)によって検出される。
【0037】
通常、リザーバ130の膜またはダイアフラムは、既定の振動数で振動的に作動させることができる。ダイアフラムの動作は、視覚路(毛細の長さに沿って)全体にわたって血液サンプルを全体的に移動させ、正弦波は、光学的に観察することができる。ゲル形態(凝固点で)の場合、塊中のフィブリンメッシュは、ポストを包み込み、特定の反応ウェル中の運動は停止する。しかしながら、参照ポート140中の運動は継続し、視覚は、参照ポート140中の波動を反応チャンバ110および120と照合する。別の態様においては、反応チャンバ110は、一定の凝固時間を有する対照として作用することができるが、反応チャンバ120は、変化する患者サンプルに対する試験帯として作用することができる。
【0038】
反応ウェルは、波形の大きさを増加させるように毛管系の残りに対して深くすることができる。
【0039】
視覚以外の他の方法を、凝固血液サンプルを検出するために使用することができる。例えば、液状サンプルの濁度(または吸光度)は、容易に光学的に監視することができ、濁度変化の程度の検出は、STAT IMUNO SYSTEM Quick Turbo II(A&T Corp.製造)、自動分析計Multiple Chemistry Unit 502X(A&T Corp.製造)、自動分析計Automatic Analyzer7070(Hitachi Ltd.製造)等の市販の装置を使用して容易に行うことができる。
【0040】
例えば、濁度測定は、340と795nmとの間の2つの波長が、測定のための波長として選択することができる自動分析計Multiple Chemistry Unit 502Xを使用して行うことができる。選択された2つの波長は、数秒で行われる間欠測定によって同時に測定することができる。
【0041】
好ましい実施形態および様々な代替の実施形態を参照して、本発明を、特に示し、説明したが、当業者にとって当然のことながら、形態および詳細における様々な変更は、本発明の精神および範囲を逸脱することなくそこにおいて行うことができる。本出願において言及される全ての印刷特許および出版物は、本参照により、それらの全体として本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの反応チャンバと、血液リザーバと、参照ポートと、サンプル適用ポートと、を備える、カートリッジであって、該2つの反応チャンバは、毛細管チャネルを介して該血液リザーバと流体連通し、該血液リザーバは、毛細管チャネルを介して該参照ポートと流体連通し、該参照ポートは、毛細管チャネルを介して該サンプル適用ポートと流体連通し、該リザーバは、該毛細管チャネル内で該サンプルを移動させるためのダイアフラムを備える、カートリッジ。
【請求項2】
基材は、プラスチック、ガラス、ナイロン、金属、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記基材は、プラスチックである、請求項2に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記反応チャンバは、凝固剤を備える、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項5】
前記凝固剤は、プロトロンビン時間(PT)、部分トロンボプラスチン時間(PTT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、トロンビン凝固時間(TCT)、フィブリノゲン、ヘパリン管理試験(HMT)、プロタミン応答時間(PRT)、ヘパリン応答時間(HRT)、低分子量ヘパリン(LMWH)、低範囲ヘパリン管理試験(LHMT)、エカリン凝固時間(ECT)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される検定用である、請求項4に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記検定は、PTである、請求項5に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記検定は、APTTである、請求項5に記載のカートリッジ。
【請求項8】
血液凝固時間を測定するための方法であって、
2つの反応チャンバと、血液リザーバと、参照ポートと、サンプル適用ポートとを備える、カートリッジを提供するステップであって、該2つの反応チャンバは、毛細管チャネルを介して該血液リザーバと流体連通し、該血液リザーバは、毛細管チャネルを介して該参照ポートと流体連通し、該参照ポートは、毛細管チャネルを介して該サンプル適用ポートと流体連通する、ステップと、
サンプルを該サンプル適用ポートに配置するステップと、
検定のための凝固剤を該反応チャンバのうちの少なくとも1つに配置するステップと、
該サンプル適用ポートを介して希釈剤を混合ウェルの中へ移動させ、希釈サンプルを提供するように該サンプルおよび該希釈剤を混合するステップと、
該サンプルを該反応チャンバの中へ移動させるステップと、
該サンプルが凝固する時間を測定するステップと、
を含む、方法。
【請求項9】
基材は、プラスチック、ガラス、ナイロン、金属、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記基材は、プラスチックである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記サンプルは、血液または血漿である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記反応チャンバは、凝固剤を備える、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記凝固剤は、プロトロンビン時間(PT)、部分トロンボプラスチン時間(PTT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、トロンビン凝固時間(TCT)、フィブリノゲン、ヘパリン管理試験(HMT)、プロタミン応答時間(PRT)、ヘパリン応答時間(HRT)、低分子量ヘパリン(LMWH)、低範囲ヘパリン管理試験(LHMT)、エカリン凝固時間(ECT)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される検定用である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記検定は、PTである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記検定はAPTTである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプルが凝固する時間は、光学的手段によって測定される、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記サンプルが凝固する時間は、濁度測定によって測定される、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記リザーバは、前記毛細管チャネル内で前記サンプルを移動させるためのダイアフラムを備える、請求項8に記載の方法。
【請求項19】
希釈剤を前記リザーバに配置するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−530979(P2010−530979A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513462(P2010−513462)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/067750
【国際公開番号】WO2008/157795
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(509339245)エムイーシー ダイナミクス コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】