説明

血液凝固時間測定装置

【課題】構造が簡単で、少量の測定血液で精度良く測定できる血液凝固時間測定装置を提供する。
【解決手段】測定用カートリッジ14に、測定血液が投入される横方向の細管部14cを設け、その中に両端部がS極とN極の棒状磁石22を所定範囲で往復動自在に配設する。測定装置本体に設けた測定部24に、所定時間の間隔で通電極性を交互に切り換えて磁力吸引で棒状磁石22を往復動させる電磁コイル28と、棒状磁石22が一端側に偏寄した状態を検出する受光センサー32と、電磁コイル28により移動すべき棒状磁石22の位置と受光センサー32で検出した棒状磁石22の位置が適正な対応か否かを判別する判別手段と、電磁コイル28による棒状磁石22の往復動の開始から判別手段により棒状磁石22の位置が対応しないことを判別するまでの時間を測定する時間測定手段と、測定された時間を測定血液の血液凝固時間として表示する表示手段とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液が凝固するまでの時間を測定するための血液凝固時間測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
体外に取り出された血液の凝固時間を測定する技術の一例としては、以下のような技術がある。まず、昇降装置により繰り返して上下動させ得る試験管の内部に鋼球を挿入し、この試験管の外部に配した磁石により磁力で吸引させて鋼球を一定高さに浮かせる。この一定の高さに浮かんでいる鋼球を挟んで光源と受光センサーを設ける。試験管内に適量の測定血液を投入して試験管を繰り返し上下動させる。測定血液が凝固していない状態では、鋼球は磁石の吸引により一定の高さを維持する。しかし、測定血液が凝固すると磁石の磁力による吸引力より血液による抵抗力が勝り、鋼球は血液とともに上下動して一定の高さに浮かんだ状態を維持し得ない。この鋼球が一定の高さを維持し得ない状態となったことを受光センサーで検出し、それまでに経過した時間から、測定血液の凝固時間を測定する。かかる技術は、特許第3461618号公報に、従来技術として示されている。
【特許文献1】特許第3461618号公報
【0003】
また、米国特許第5372946号公報には、測定装置と測定容器からなり、測定容器に設けた測定用毛細管に測定血液を投入してこれを測定装置に挿入し、測定装置に設けた空気ポンプのポンプ圧の増減で測定用毛細管内の測定血液を往復移動させ、この往復移動に要する時間の変化から血液の凝固時間を測定する技術が示されている。
【特許文献2】米国特許第5372946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に記載された技術にあっては、試験管を繰り返して上下動させるための昇降装置が必要であり、その構造が複雑なものであった。そして、試験管の管壁の厚さと鋼球の直径などの寸法精度が、血液凝固時間の測定精度に大きな影響を与えるので、精度の高いものが必要であり、それだけ高価なものとなるという不具合があった。さらに、凝固時間を測定するために一定の高さに浮かぶ鋼球が水没するだけの量の測定血液が必要であり、少量の血液では測定ができないという不具合もあった。
【0005】
また、特許文献2に記載された技術にあっては、測定装置に設けられた空気ポンプと、測定装置に挿入された測定容器の測定用毛細管が、気密構造で連結される必要がある。何故ならば、仮に気密構造で連結されずに空気が漏れたとすると、所定のポンプ圧の増減が得られず、当然に測定血液の往復移動に要する時間が相違したものとなる。この測定装置に単に測定容器を挿入するだけで、空気ポンプと測定用毛細管を気密構造で連結させる構造は、測定装置および測定容器のいずれにもその形状に高い寸法精度が不可欠である。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の事情に鑑みてなされたもので、構造が簡単な血液凝固時間測定装置を提供することを目的とする。また、少量の測定血液でも血液凝固時間を精度良く測定できる血液凝固時間測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明の血液凝固時間測定装置は、横方向に向けて設けられたカートリッジ挿入孔を有する測定装置本体と前記カートリッジ挿入孔に挿入し得る測定用カートリッジからなり、前記測定用カートリッジには、測定血液が投入される上方が開口した測定血液投入口とそれに連通して挿入方向の横方向に伸びる細管部が設けられ、前記細管部内に両端部がS極とN極の棒状磁石を挿入方向に所定範囲で往復移動自在に配設し、前記測定装置本体には、前記カートリッジ挿入孔に挿入された前記測定用カートリッジの前記棒状磁石を所定の時間間隔で磁力による吸引で前記挿入方向で往復移動させる磁石往復動手段を設け、前記棒状磁石が往復移動の一端側に偏寄された状態を検出する磁石位置検出手段を設け、前記磁石往復動手段により移動されるべき前記棒状磁石の位置と前記磁石位置検出手段で検出される前記棒状磁石の位置が対応しているか否かを判別する判別手段を設け、前記磁石往復動手段による前記棒状磁石の往復移動の開始から前記判別手段により前記棒状磁石の位置が対応していないことを判別するまでの時間を測定する時間測定手段を設け、前記時間測定手段で測定された時間を前記測定血液の血液凝固時間として表示する表示手段を設けて構成されている。
【0008】
また、横方向に向けて設けられたカートリッジ挿入孔を有する測定装置本体と前記カートリッジ挿入孔に挿入し得る測定用カートリッジからなり、前記測定用カートリッジには、測定血液が投入される上方が開口した測定血液投入口とそれに連通して挿入方向の横方向に伸びる細管部が設けられ、前記細管部内に両端部がS極とN極の棒状磁石を挿入方向に所定範囲で往復移動自在に配設し、前記測定装置本体には、前記カートリッジ挿入孔に挿入された前記測定用カートリッジの前記棒状磁石を所定の時間間隔で磁力による吸引で前記挿入方向で往復移動させる磁石往復動手段を設け、前記棒状磁石が往復移動の一端側に偏寄された状態を検出する磁石位置検出手段を設け、前記磁石往復動手段により移動されるべき前記棒状磁石の位置と前記磁石位置検出手段で検出される前記棒状磁石の位置が対応しているか否かを判別する判別手段を設け、前記磁石往復動手段による前記棒状磁石の往復移動が開始されて前記判別手段で前記棒状磁石の位置が対応していることが判別されてから前記判別手段により前記棒状磁石の位置が対応していないことを判別するまでの時間を測定する時間測定手段を設け、前記時間測定手段で測定された時間を前記測定血液の血液凝固時間として表示する表示手段を設けて構成しても良い。
【0009】
そして、前記測定用カートリッジが前記カートリッジ挿入孔の所定位置まで挿入されたことを検出する挿入検出手段を設け、この挿入検出手段で前記測定用カートリッジの挿入が検出されると、前記磁石往復動手段による前記棒状磁石の往復移動を開始するように構成しても良い。
【0010】
さらに、前記時間測定手段は、タイマーを備え、前記磁石往復動手段による前記棒状磁石の往復移動の開始にともない前記タイマーにより計時動作を開始し、前記判別手段により前記棒状磁石の位置が対応していないことを判別すると前記計時動作を停止するように構成しても良い。
【0011】
また、前記磁石往復動手段を、前記カートリッジ挿入孔に挿入された前記測定用カートリッジが遊嵌する電磁コイルと、この電磁コイルに流れる電流の向きを所定の時間間隔で切り換える電磁コイル電流制御手段とで構成しても良い。
【0012】
また、前記測定用カートリッジを少なくとも前記棒状磁石が往復移動の一端側に偏寄された状態を検出する部分を透明に形成し、前記棒状磁石を不透明に形成し、前記磁石位置検出手段を、記前記棒状磁石が往復移動する一端側に偏寄された状態を検出する部分に臨んでこれを挟んで配設された光源と受光センサーおよび前記受光センサーの信号が与えれれる受光検出手段とで構成しても良い。
【0013】
そして、前記カートリッジ挿入孔の開口部近くに前記棒状磁石を吸引する位置設定用磁石を設け、前記測定用カートリッジが前記カートリッジ挿入孔に挿入される際に、前記棒状磁石が前記細管部内で前記測定血液投入口側に位置するように構成しても良い。
【0014】
そしてまた、前記測定用カートリッジが前記カートリッジ挿入孔の所定位置まで挿入された状態を保持する第1クリック手段と、前記測定用カートリッジが前記カートリッジ挿入孔に半分ほど挿入された状態を保持する第2クリック手段を設け、この第2クリック手段で保持された状態で前記位置設定用磁石により前記棒状磁石が前記測定血液投入口側に位置するようにし、前記第2クリック手段で保持された状態で前記測定血液投入口に前記測定血液を投入し得るように構成することもできる。
【0015】
そしてさらに、前記カートリッジ挿入孔に前記測定用カートリッジが挿入される際に、前記電磁コイル電流制御手段で前記電磁コイルに前記棒状磁石を前記細管部内で前記測定血液投入口側に位置するように電流を流すように構成することもできる。
【0016】
また、本発明の血液凝固時間測定装置は、横方向に向けて設けられたカートリッジ挿入孔を有する測定装置本体と前記カートリッジ挿入孔に挿入し得る測定用カートリッジからなり、前記測定用カートリッジには、測定血液が投入される上方が開口した測定血液投入口とそれに連通して挿入方向の横方向に伸びる細管部が設けられ、前記細管部内に鋼球または棒状の鋼体を挿入方向に所定範囲で往復移動自在に配設し、前記測定装置本体には、前記カートリッジ挿入孔に挿入された前記測定用カートリッジの前記鋼球または棒状の鋼体の往復移動の両端側にそれぞれ第1電磁コイルと第2電磁コイルを配設して、前記第1電磁コイルと前記第2電磁コイルに所定の時間間隔で交互に電流を流して磁力による吸引で前記鋼球または棒状の鋼体を所定の時間間隔で前記挿入方向で往復移動させる鋼体往復動手段を設け、前記鋼球または棒状の鋼体が往復移動の一端側に偏寄された状態を検出する鋼体位置検出手段を設け、前記鋼体往復動手段により移動されるべき前記鋼球または棒状の鋼体の位置と前記鋼体位置検出手段で検出される前記鋼球または棒状の鋼体の位置が対応しているか否かを判別する判別手段を設け、前記鋼体往復動手段による前記鋼球または棒状の鋼体の往復移動の開始から前記判別手段により前記鋼球または棒状の鋼体の位置が対応していないことを判別するまでの時間を測定する時間測定手段を設け、前記時間測定手段で測定された時間を前記測定血液の血液凝固時間として表示する表示手段を設けて構成することも可能である。
【0017】
また、横方向に向けて設けられたカートリッジ挿入孔を有する測定装置本体と前記カートリッジ挿入孔に挿入し得る測定用カートリッジからなり、前記測定用カートリッジには、測定血液が投入される上方が開口した測定血液投入口とそれに連通して挿入方向の横方向に伸びる細管部が設けられ、前記細管部内に鋼球または棒状の鋼体を挿入方向に所定範囲で往復移動自在に配設し、前記測定装置本体には、前記カートリッジ挿入孔に挿入された前記測定用カートリッジの前記鋼球または棒状の鋼体の往復移動の両端側にそれぞれ第1電磁コイルと第2電磁コイルを配設して、前記第1電磁コイルと前記第2電磁コイルに所定の時間間隔で交互に電流を流して磁力による吸引で前記鋼球または棒状の鋼体を所定の時間間隔で前記挿入方向で往復移動させる鋼体往復動手段を設け、前記鋼球または棒状の鋼体が往復移動の一端側に偏寄された状態を検出する鋼体位置検出手段を設け、前記鋼体往復動手段により移動されるべき前記鋼球または棒状の鋼体の位置と前記鋼体位置検出手段で検出される前記鋼球または棒状の鋼体の位置が対応しているか否かを判別する判別手段を設け、前記鋼体往復動手段による前記鋼球または棒状の鋼体の往復移動が開始されて前記判別手段で前記鋼球または棒状の鋼体の位置が対応していることが判別されてから前記判別手段により前記鋼球または棒状の鋼体の位置が対応していないことを判別するまでの時間を測定する時間測定手段を設け、前記時間測定手段で測定された時間を前記被測定血液の血液凝固時間として表示する表示手段を設けて構成することも可能である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1または2記載の血液凝固時間測定装置はいずれも、測定装置本体に挿入された測定用カートリッジの細管部内に往復移動自在の配設された棒状磁石を、測定装置本体に設けた磁石往復動手段により、所定の時間間隔で磁力による吸引で往復移動させるようにしたので、特許文献1の昇降装置のごとき複雑な機械的な装置を必要としない。また、特許文献2の測定装置と測定容器を気密構造に連結するごとき高い寸法精度を必要としない。もって、本発明の血液凝固時間測定装置にあっては、構造が簡単であって、全体として安価に構成できるとともに、特に測定用カートリッジを樹脂材料等で量産すれば極めて安価に製造することが可能である。そして、測定に必要な血液の量は、測定用カートリッジの細管部内に投入されるだけの少量で足りる。
【0019】
請求項3記載の血液凝固時間測定装置にあっては、測定装置本体に血液が投入された測定用カートリッジを所定位置まで挿入すると、これが挿入検出手段で検出されて、磁石往復動手段により棒状磁石の往復移動が開始されるとともに時間測定手段で時間の計測が開始されるので、測定用カートリッジの挿入で自動的に測定が開始され、測定作業が容易である。
【0020】
請求項4記載の血液凝固時間測定装置にあっては、タイマーにより、磁石往復動手段による棒状磁石の往復移動の開始によりタイマーの計時動作を開始させ、判別手段による棒状磁石の位置が対応していないことを判別するとタイマーの計時動作を停止させるようにしたので、時間の計測が容易である。
【0021】
請求項5記載の血液凝固時間測定装置にあっては、挿入された測定用カートリッジが遊嵌する電磁コイルと、この電磁コイルに流れる電流の向きを所定の時間間隔で切り換える電磁コイル電流制御手段とで、磁石往復動手段を構成しているので、棒状磁石を往復移動させる構造が簡単であるとともに、その往復移動を電流制御により容易に制御することが可能である。
【0022】
請求項6記載の血液凝固時間測定装置にあっては、往復移動する棒状磁石が一端側に偏寄された状態を、光源と受光センサーで検出するので、棒状磁石が偏寄しているか否かを簡単な構造で検出し得る。
【0023】
請求項7記載の血液凝固時間測定装置にあっては、カートリッジ挿入孔の開口部近くに棒状磁石を吸引する位置設定用磁石を設けているので、測定用カートリッジがカートリッジ挿入孔に挿入される際に、棒状磁石が細管部内で測定血液投入口側に位置していて、細管部内に投入され得る測定血液の量が少量で一定している。また、棒状磁石の往復移動の開始により、細管部内から測定血液が測定血液投入口側に溢れるようなことがない。
【0024】
請求項8記載の血液凝固時間測定装置にあっては、測定用カートリッジがカートリッジ挿入孔の所定位置まで挿入された状態を保持する第1クリック手段と、測定用カートリッジがカートリッジ挿入孔に半分ほど挿入された状態を保持する第2クリック手段を設けたので、第2クリック手段で保持された状態で測定用カートリッジに被測定血液を投入でき、また所定位置まで挿入された状態を第1クリック手段で確実に保持することができる。
【0025】
請求項9記載の血液凝固時間測定装置にあっては、カートリッジ挿入孔に測定用カートリッジが挿入される際に、電磁コイル電流制御手段で電磁コイルに棒状磁石を細管部内で測定血液投入口側に位置するように電流を流すようにしたので、請求項6のごとき位置設定用磁石を必要とせず、それだけ安価に構成できる。
【0026】
請求項10または11記載の血液凝固時間測定装置のいずれにあっても、測定用カートリッジの細管部内に鋼球または棒状の鋼体を挿入方向に所定範囲で往復移動自在に配設し、測定装置本体に、測定用カートリッジの鋼球または棒状の鋼体の往復移動の両端側にそれぞれ第1電磁コイルと第2電磁コイルを配設し、この第1電磁コイルと第2電磁コイルに所定の時間間隔で交互に電流を流して磁力による吸引で鋼球または棒状の鋼体を所定の時間間隔で挿入方向で往復移動させる鋼体往復動手段を設けたので、請求項1のごとき棒状磁石を必要とせず、この棒状磁石より鋼球または棒状の鋼体は安価であり、測定用カートリッジをより安価に製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の血液凝固時間測定装置の第1実施例につき、図1ないし図9を参照して説明する。図1は、本発明の血液凝固時間測定装置の第1実施例の外観斜視図であり、(a)は測定装置本体に測定用カートリッジを挿入する前の状態を示し、(b)は測定装置本体に測定用カートリッジをほぼ半分ほど挿入した状態を示し、(c)は測定装置本体に測定用カートリッジを完全に挿入した状態を示す。図2は、測定用カートリッジの構造図であり、(a)は平面図であり、(b)は左側面図であり、(c)は正面図であり、(d)は(a)のA−A断面矢視図である。図3は、測定装置本体に内蔵される測定部の構造図であり、(a)は平面図であり、(b)は右側面図であり、(c)は(a)のB−B断面矢視図であり、(d)は(b)のC−C断面矢視図である。図4は、測定装置本体の測定部に測定用カートリッジを挿入した切り欠き平面図であり、(a)は測定用カートリッジをほぼ半分ほど挿入した状態の図であり、(b)は測定用カートリッジを完全に挿入した状態の図である。図5は、測定用カートリッジに測定血液を投入する状態を示す図であり、(a)は測定血液を投入する直前の状態を示し、(b)は測定血液が投入された状態を示す。図6は、機能ブロック図である。図7は、フローチャートである。図8は、血液凝固時間が一例として40秒の場合のタイムチャートである。図9は、血液凝固時間が他の一例として50秒の場合のタイムチャートである。
【0028】
第1実施例において、本発明の血液凝固時間測定装置は、図1に示すように横方向に向けて設けられたカートリッジ挿入孔12を有する測定装置本体10と、カートリッジ挿入孔12に挿入し得る測定用カートリッジ14とからなる。測定装置本体10には、装置本体の外面に設けられた電源スイッチ16とLED等からなる表示器18が設けられている。また、測定用カートリジ14には、カートリッジ内に測定血液を投入するための測定血液投入口20が設けられている。そして、測定用カートリッジ14を、図1(b)に示すごとく、測定装置本体10のカートリッジ挿入孔12にほぼ半分ほど挿入した状態で、測定血液投入口20に測定血液を適宜な量だけ投入する。さらに、測定用カートリッジ14を、図1(c)に示すように、測定装置本体10のカートリッジ挿入孔12に挿入が規制されるまで完全に挿入する。なお、測定装置本体10の寸法は、一例として、長さ150mm、幅80mm、高さ44mmであり、測定用カートリッジ14は、長さ65mm、幅20mm、厚さ6mmである。
【0029】
図2に示す測定用カートリッジ14は、先端側の外径が細い先端細径部14aと後端側の上下に薄く幅が広い偏平部14bとからなる。そして、偏平部14bのほぼ中央に上方が開口した測定血液投入口20が設けられ、この測定血液投入口20に連通して先端細径部14a内を挿入方向に横方向に伸びる細管部14cが設けられる。この細管部14cの途中および先端部に狭窄部14d、14dが設けられ、この細管部14cの先端は先端細径部14aの先端で開口されている。2つの狭窄部14d、14dの間に両端部がS極とN極にそれぞれ磁化されている棒状磁石22が細管部14c内を2つの狭窄部14d、14d間で往復移動自在に配設されている。なお、測定血液投入口20の周囲には、測定血液が周囲にこぼれないように偏平部14bの表面より若干上方向に高い周壁14eが設けられている。また、偏平部14bの後端側の上面と下面にそれぞれ球面状凹部14f、14fが設けられていて、測定装置本体10から測定用カートリッジ14をつまんで引き抜き易く構成されている。さらに、偏平部14bの片側の外壁に、クリック用の凹状溝14g、14gが設けられている。かかる構造の測定用カートリジ14は、一例として、透明樹脂で樹脂成形により形成されて上下2分割された部品を、棒状磁石22を挟んで張り合わせることで、安価に製造することが可能である。
【0030】
測定装置本体10には、図3に示す測定部24が内蔵されている。この測定部24には、配設された状態でカートリッジ挿入孔12に連通して、測定用カートリジ14の先端細径部14aと偏平部14bがともに挿入され得る挿入孔24aが設けられる。そして、測定用カートリッジ14が挿入された状態で、先端細径部14aの先端で押圧されるように挿入検出手段としてのリミットスイッチ26が設けられている。また、先端細径部14aが遊嵌されるように電磁コイル28が設けられ、さらに先端細径部14aの先端側を挟んで光源30と受光センサー32が配設されている。ここで、測定用カートリッジ14は、挿入状態で光源30と受光センサー32に臨む位置が、少なくとも透明であれば良く、棒状磁石22は不透明に構成されている。そして、測定部24には、ヒーター34と温度センサー36が設けられている。さらに、挿入孔24aの開口部に近い位置に位置設定用磁石38が設けられている。そしてさらに、測定用カートリッジ14が完全に挿入された状態で2つの凹状溝14g、14gにそれぞれ係合する位置にプランジャー40、40が配設されて、測定用カートリッジ14の挿入状態を保持する。2つの凹状溝14g、14gが設けられた間隔と、2つのプランジャー40、40が配設される間隔は、当然に同じである。そして、測定用カートリッジ14がほぼ半分ほど挿入された状態では、1つの凹状溝14gに1つのプランジャー40が係合して、このほぼ半分ほど挿入された状態が保持される。凹状溝14g、14gとプランジャー40、40で、クリック手段が構成されている。
【0031】
かかる構造の測定部24に測定用カートリッジ14を挿入すると、図4(a)に示すように、まず偏平部14bの先端細径部14b側に設けられた1つの凹状溝14gに挿入孔24a開口側の1つのプランジャー40が係合して、第2クリック手段としてはぼ半分ほど挿入した状態が保持される。このほぼ半分ほど挿入された状態で、挿入孔24aの開口側に設けた位置設定用磁石38による磁力で吸引されて細管部14c内の棒状磁石22は測定血液投入口22側の狭窄部14c側に偏寄された位置にある。そして、ほぼ半分ほど挿入された状態では、測定用カートリッジ14の測定血液投入口20は、測定装置本体10の外側にあり、図5(a)に示すごとく、測定血液投入口20に測定血液42を投入し得る。投入された測定血液42は、図5(b)に示すごとく、棒状磁石22で狭窄部14cが閉塞された状態にあるので、この狭窄部14cまで流入され、少量で足りる。
【0032】
そして、測定部24に測定用カートリッジ14を完全に挿入すると、図4(b)に示すように、偏平部14bに設けられた2つの凹状溝14g、14gに2つのプランジャー40、40がそれぞれに係合して、第1クリック手段として完全に挿入した状態が保持される。この完全に挿入された状態では、先端細径部14aが電磁コイル28内に挿通され、この電磁コイル28が細管部14cの2つの狭窄部14d、14dのほぼ中央に位置している。また、先端細径部14aの先端側を挟んで光源30と受光センサー32が位置するように配設されているので、細管部14c内の棒状磁石22が先端側の狭窄部14d側に偏寄した状態であると、光源30の光が棒状磁石22で遮られて受光センサー32は受光できない状態となるようになされる。しかも、測定用カートリッジ14を完全に挿入すると、先端細径部14aの先端でリミットスイッチ26を押圧して、測定用カートリッジ14が完全に挿入されたことが検出される。
【0033】
本発明のおける血液凝固測定装置にあっては、細管部14c内で棒状磁石22を電磁コイル28により往復動させ、測定血液42が凝固していない状態では棒状磁石22が細管部14c内で移動し、測定血液42が凝固すると棒状磁石22が細管部14c内で移動し得ないことから、棒状磁石22の位置を受光センサー32により検出して、測定血液42が凝固したか否かを測定するものである。かかる測定動作は、図6に示すように、マイクロコンピュータ44により制御される。マイクロコンピュータ44には、挿入検出手段としてのリミットスイッチ26の信号により測定カートリッジ14が完全に挿入されたことが検出されると、電磁コイル28に通電する電流を適宜に切り換え制御して棒状磁石22の往復動を開始させる電磁コイル電流制御手段46と、リミットスイッチ26の信号で計時動作を開始させるタイマー48を含む時間計測手段50が設けられている。また、受光センサー32からの信号を受けて、棒状磁石22の位置に応じた信号を出力する受光検出手段52が設けられている。そして、電磁コイル電流制御手段46により電磁コイル28に印加される電流の極性と、受光検出手段52で検出される棒状磁石22の位置が適正か否かを判別する判別手段54が設けられ、位置がずれていることが判別されると、その信号が時間測定手段50に与えられてタイマー48の計時動作が停止される。そして、時間測定手段50で測定された時間に応じた信号が表示手段56に与えられ、表示手段56はLED等の表示器18によりその測定時間を血液凝固時間として表示する。電磁コイル28と電磁コイル電流制御手段46により磁石往復動手段が構成されている。また、光源30と受光センサー32および受光検出手段52で、磁石位置検出手段が構成されている。
【0034】
電磁コイル電流制御手段46は、一例として10秒間隔で電磁コイル28に印可する電流の極性を切り換えることで、棒状磁石22を往復動させている。また、受光検出手段52は、受光センサー32が受光する状態では棒状磁石22が測定用カートリジ14の偏平部14b側にあり、受光できない遮光された状態では先端細径部14aの先端側にあると検出する。そして、判別手段54において、電磁コイル電流制御手段46で電磁コイル28に印可する電流の極性により位置すべき棒状磁石22の位置と、受光センサー32からの信号で受光検出手段52で検出された棒状磁石22の位置が対応していれば、測定血液42は未だ凝固しておらず、位置が対応していなければ測定血液42は凝固したと判別する。この判別において、電磁コイル電流制御手段46で電磁コイル28に印可する電流の極性を切り換えた際に、測定血液42が未だ凝固していない状態であっても、その粘性等により棒状磁石22は直ちに対応する位置に移動することはできない。そこで、棒状磁石22のかかる移動の遅れを考慮して、位置すべき棒状磁石22の位置と受光検出手段52の信号を判別する必要がある。その一例としては、電磁コイル28に印可する電流の極性を切り換えてから適宜な時間(例えば、2ないし4秒)が経過した後に判別するようにすれば良い。なお、表示手段56は、血液凝固時間を表示するだけでなく、温度センサー36から信号が与えられ、電源スイッチ16がONされてヒーター34が作動して測定部24が37°Cになると表示器18に「準備OK」の表示を行う。なお、ヒーター34は、温度センサー36から与えられる信号に基づき温度コントローラ58によりON/OFF制御されて、温度センサー36で常に37°Cが検出維持されるように動作する。また、光源30は、電源スイッチ16のONにより通電されて発光した状態となる。
【0035】
本発明の血液凝固時間測定装置の動作につき、図7を参照して説明する。まず電源スイッチ16をONにするとヒーター34に通電されて測定部24の加熱がなされる(ステップ1)。この加熱により測定部24が37°Cまで温度上昇したことが温度センサー36で検出されると(ステップ2)、その検出信号がマイクロコンピュータ44の表示手段56に与えられ、表示器18に「準備OK」と測定が可能であることを表示する(ステップ3)。測定部24の温度は、その後も温度センサー36により検出されて、その信号が温度コントローラ58に与えられて、37°C以下ではヒーター34への通電がONされ、37°Cおよび37°C以上ではヒーター34への通電がOFFされて、常に37°Cが維持される。そして、表示器18で「準備OK」と表示された後に、測定装置本体10に測定用カートリッジ14をほぼ半分ほど挿入して、測定血液42を測定血液投入口20に投入する。ここで、棒状磁石22は、偏平部14b側の狭窄部14dに偏寄されていて、測定血液42は、図5(b)に図示するように偏平部14b側の狭窄部14dまでしか流入しない。測定血液42を投入した後に、さらに測定用カートリッジ14を挿入して、リミットスイッチ26を押圧するまで完全に挿入すると、この挿入がリミットスイッチ26で検出され(ステップ4)、その信号がマイクロコンピュータ44の電磁コイル電流制御手段46と時間測定手段50に与えられ、電磁コイル電流制御手段46は電磁コイル28に先端細径部14aの先端側で受光センサー32が配設された側に棒状磁石22が磁力で吸引されるように+極性の電流を通電するとともに、タイマー48による計時動作を開始させる(ステップ5)。すると、電磁コイル28への+極性の通電で、棒状磁石22が吸引されて受光センサー32が配設された側に移動し、受光センサー32の受光が棒状磁石22により遮断されて、その信号を受光検出手段52に与えて棒状磁石22を検出する(ステップ6)。ここで、電磁コイル電流制御手段46が+極性の電流を通電している信号と受光検出手段52が棒状磁石22を検出した信号が、判別手段54に与えられ、通電により棒状磁石22があるべき位置と実際に検出された棒状磁石22の位置が一致しているか否かが判別される。このときに、一致していない場合は、判別手段54から信号が表示手段56に与えられ、表示手段56は表示器18にエラー表示を行う(ステップ7)。棒状磁石22が検出されない場合は、測定血液42が既に凝固している虞があり、正常に測定が為し得ないためである。なお、電磁コイル電流制御手段46が通電を開始し、また通電の極性を切り換えたときに、棒状磁石22の移動は測定血液42の粘性などにより遅れて移動する。そこで、電磁コイル電流制御手段46からの信号と受光検出手段52からの信号を、判別手段54は棒状磁石22の移動が遅れることを考慮して比較判別するように設定することは勿論である。
【0036】
ステップ6において、正常に棒状磁石22が検出されれば、通電により棒状磁石22があるべき位置と実際に検出された棒状磁石22の位置が一致しているとして、判別手段54は電磁コイル電流制御手段46に信号を与え、一例として10秒間待ち(ステップ8)、電磁コイル電流制御手段46は電磁コイル28に棒状磁石22が偏平部14b側に移動するように電流を切り換えて−極性の電流を通電する(ステップ9)。そして、測定血液42が未だ凝固していなければ棒状磁石22が移動し、受光センサー32は受光する。そこで、受光検出手段52は棒状磁石22を検出しないと判別し(ステップ10)、判別手段54は、通電の極性と棒状磁石22の位置が一致していると判別する。そこでさらに、10秒間待ち(ステップ11)、再度、電磁コイル電流制御手段46は電流を切り換えて電磁コイル28に+極性の電流を通電する(ステップ12)。この電流の切り換えに伴い、棒状磁石22が移動し、受光センサー32の受光が遮断されて棒状磁石22が検出されると(ステップ13)、ステップ8に戻り、ステップ10またはステップ13において、判別手段54が通電の極性と棒状磁石22の位置が一致していないと判別するまで繰り返される。そして、ステップ10またはステップ13で、通電の極性と棒状磁石22の位置が一致していないと判別されると、その信号が時間測定手段50に与えられてタイマー48の計時動作が停止される(ステップ14)。その計時した時間が、表示手段56に与えられて、表示器18で血液凝固時間として表示されて(ステップ15)、動作は終了する。
【0037】
かかる動作の一例を、図8に示すタイムチャートで説明する。まず電源スイッチ16をONすると、ヒーター34により測定装置本体10の測定部24の温度が室温から37°Cまで上昇され、測定が可能となる(a)。血液の凝固時間は温度に大きく影響させられることから、測定温度として、人間の体温に近い37°Cで測定がなされる。そして、測定用カートリッジ14がほぼ半分ほど挿入され、測定血液42が測定用カートリッジ14に投入され、さらに測定用カートリッジ14が完全に挿入されてリミットスイッチ26がONとなると(b)、電磁コイル28に電流が通電され、10秒毎にその極性が切り換えられる(c)。すると、この電磁コイル28に流れる電流の極性に応じて、棒状磁石22が測定用カートリッジ14の細管部14c内で先端細径部14aの先端側と偏平部14b側に10秒毎に移動させられる(d)。この棒状磁石22の移動位置により、受光センサー32は受光したり受光が遮断されたりして(e)、その信号が受光検出手段52に与えられて、棒状磁石22の位置を検出する。ここで、測定血液42が未だ凝固していない場合には、棒状磁石22は電磁コイル28に通電される電流の極性に応じて、細管部14c内で先端細径部14aの先端側と偏平部14b側に移動が可能であり、測定血液42が凝固した場合には、棒状磁石22は電磁コイル28に通電される電流の極性に応じて、細管部14c内で先端細径部14aの先端側と偏平部14b側に移動が不可能となる。そこで、リミットスイッチ26のONによる測定開始とともにタイマー48の計時動作を開始するとともに、電磁コイル28への通電と棒状磁石22の位置が対応しなくなると、タイマー48の計時動作を停止することで(f)、測定血液42の凝固時間を測定することができる。図8にあっては、測定開始より30秒が経過した後に測定血液42が凝固し、測定開始より40秒が経過した時点で電磁コイル28への通電の極性が切り換えられたにも関わらず棒状磁石22は移動がなし得ず、この位置のずれが受光センサー32により検出されたものである。よって、図8の動作にあっては、測定血液42は40秒で凝固したとの測定結果が得られている。なお、棒状磁石22を往復動させる間隔を10秒としたのは、血液の凝固は徐々に進行するので、あまり短い間隔で往復動させても測定精度が高いものとならず、実用的に必要とされる程度の精度で血液凝固時間を測定するために設定されている。したがって、棒状磁石22の往復移動は、10秒の間隔で行うことに限られるものでない。
【0038】
さらに本発明の動作の他の一例を、図9に示すタイムチャートで説明する。図9に示すタイムチャートにあっては、測定開始より40秒が経過した後に測定血液42が凝固し、測定開始より50秒が経過した時点で電磁コイル28への通電の極性が切り換えられたにもかかわらず棒状磁石22は移動がなし得ず、この位置のずれが受光センサー32により検出されたものである。よって、図9の動作にあっては、測定血液42は50秒で凝固したとの測定結果が得られている。
【0039】
次に、本発明の血液凝固時間測定装置の第2実施例につき、図10および図11を参照して説明する。図10は、本発明の血液凝固時間測定装置の第2実施例の機能ブロック図である。図11は、第2実施例のフローチャートである。図10および図11において、図1ないし図9に示す部材および動作と同じまたは均等な部材および動作には同じ符号を付けて、重複する説明を省略する。
【0040】
図10に示す第2実施例の機能ブロック図において、第1実施例と相違するところは、
リミットスイッチ26の信号により測定カートリッジ14が完全に挿入されたことが検出されると、電磁コイル電流制御手段46に信号が与えられて棒状磁石22の往復移動が開始され、この棒状磁石22の移動によりその位置が適正であることが判別手段54で判別されると、判別手段54から時間測定手段50に信号が与えられて、タイマー48により計時動作が開始されることにある。そこで、タイマー48は、リミットスイッチ26がONされて電磁コイル電流制御手段46により棒状磁石22が移動された後に判定手段54が棒状磁石22の位置が適正であると判別すると、その信号に応じて計時動作を開始し、判定手段46が棒状磁石22の位置が適正でないと判別すると、その信号に応じて計時動作を停止することとなる。この第2実施例にあっては、タイマー48が計時動作を開始する信号が、第1実施例と相違して、判定手段54からの信号で開始する。
【0041】
そこで、図11に示すフローチャートのごとく、リミットスイッチ26がONされると(ステップ4)、電磁コイル制御手段46は電磁コイルに+極性の電流を通電して(ステップ5−1)、棒状磁石22を測定用カートリッジ14の先端細径部14aの先端側に移動させ、棒状磁石22のこの位置が受光センサーの受光を遮断して検出されて棒状磁石22の位置が適正と判定手段54が判定すると(ステップ6)、判定手段54から時間測定手段50にその信号が与えられてタイマー48の計時動作が開始される(ステップ5−2)。ステップ6において、棒状磁石22の位置が適正でないと判別されると、判定手段54から表示手段56に信号が与えられて表示器18でエラー表示がなされる(ステップ7)ことは、第1実施例と同様である。また、ステップ5−2でタイマー48の計時動作が開始された後は、10秒間待ち(ステップ8)、第1実施例と同様な動作となる。
【0042】
さらに、図12および図13を参照して説明する。図12は、本発明の血液凝固時間測定装置の第3実施例のフローチャートである。図13は、第3実施例のタイムチャートである。図12および図13において、図1ないし図11に示す部材および動作と同じまたは均等な部材および動作には同じ符号を付けて、重複する説明を省略する。
【0043】
第1実施例にあっては、測定部24の挿入孔24aの開口近くに位置設定用磁石38を配設することで、測定装置本体10に挿入される測定用カートリッジ14の棒状磁石22の位置が、測定用カートリッジ14の偏平部14b側となるようにしている。これにより測定血液42は細管部14cの偏平部14b側の狭窄部14dまでしか流れ込まず、棒状磁石22が細管部14c内で先端細径部14aの先端側に移動されても測定血液42が測定血液投入口20からあふれ出るようなことがない。第3実施例にあっては、棒状磁石22を往復動作させる電磁コイル28により、測定装置本体10に挿入される測定用カートリッジ14の棒状磁石22の位置を偏平部14b側となるようにするものである。そこで、位置設定用磁石38が不要となる。第3実施例にあっては、図12のフローチャートに示すように、測定部24が37°Cまで温度上昇したことが温度センサー36で検出されると(ステップ2)、その検出信号がマイクロコンピュータ44の表示手段56に与えられ、表示器18で「準備OK」の表示をするとともに、電磁コイル電流制御手段46は電磁コイル28に棒状磁石22が偏平部14b側となるように−極性の電流を通電する(ステップ3−1)。この電磁コイル28への−極の通電が、図13(c)に示される。そこで、測定用カートリッジ14が挿入される際に、棒状磁石22は図13(d)のごとく偏平部14b側に位置する。したがって、第1実施例のごとき位置設定用磁石38が不要となる分だけ構造が簡単であるとともに安価に製造し得る。
【0044】
そしてさらに、本発明の血液凝固時間測定装置の第4実施例につき、図14ないし図16を参照して説明する。図14は、本発明の血液凝固時間測定装置の第4実施例の測定部の一部切り欠き断面図であり、(a)は一部切り欠き横断面図であり、(b)は一部切り欠き縦断面図である。図15は、第4実施例の機能ブロック図である。図16は、第4実施例のフローチャートである。図14ないし図16において、図1ないし図13に示す部材と同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて、重複する説明を省略する。
【0045】
図14に示すように、第4実施例の測定用カートリッジ60には、先端細径部14aの細管部14c内に強磁性体等からなる棒状の鋼体62が所定の範囲で往復移動自在に配設されている。なお、棒状の鋼体62に換えて鋼球であっても良く、強磁性体であれば良い。そして、第4実施例の測定部64には、測定用カートリッジ60が所定位置まで完全に挿入された状態で、棒状の鋼体62の往復動する範囲の両端部に臨んで第1電磁コイル66と第2電磁コイル68がそれぞれに配設されている。そこで、図15に示すように、マイクロコンピュータ44には、第1電磁コイル66と第2電磁コイル68に、10秒毎に交互に通電させる電磁コイル電流制御手段46が設けられ、通電された側の電磁コイルで棒状の鋼体62を磁力で吸引させて、第1実施例と同様に、棒状の鋼体62を往復動させることができる。第1電磁コイル66と第2電磁コイル68および電磁コイル電流制御手段46により、鋼体往復動手段が構成されている。第4実施例の動作は、図16に示すように、温度センサー36で37°Cが検出されると(ステップ2)、「準備OK」の表示とともに偏平部14b側の第1電磁コイル66に通電される(ステップ3−2)。そこで、測定用カートリッジ60が挿入される際に、第1電磁コイル66への通電により棒状の鋼体62を吸引して、棒状の鋼体62を偏平部14b側に位置させることができる。そして、リミットスイッチ26がONされると(ステップ4)、第2電磁コイル68に通電されるとともにタイマー48の開示動作が開始される(ステップ5−3)。ここで、棒状の鋼体62が検出されれば(ステップ6−1)、10秒間待ち(ステップ8)、再度、第1電磁コイル66に通電され(ステップ9−1)、棒状の鋼体62の検出がなされる。検出されなければ(ステップ10−1)、再度、10秒間待ち(ステップ11)、第2電磁コイル68に通電され(ステップ12−1)、棒状の鋼体62の検出がなされる。ここで棒状の鋼体62が検出されると(ステップ13−1)、ステップ8に戻る。ステップ10−1で棒状の鋼体62が検出され、またはステップ13−1で棒状の鋼体62が検出されなくなると、ステップ14に移行する。かかる構造の第4実施例にあっては、測定用カートリッジ60の部品として、安価な棒状の鋼体62を用いることで、測定用カートリッジ60をより安価に提供することが可能である。なお、第4実施例では、光源30と受光センサー32および受光検出手段52により、鋼体位置検出手段が構成されている。
【0046】
さらにまた、本発明の血液凝固時間測定装置の第5実施例につき、図17を参照して説明する。図17は、本発明の血液凝固時間測定装置の第5実施例の機能ブロック図である。図17において、図1ないし図16に示す部材と同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて、重複する説明を省略する。
【0047】
図17に示す第5実施例にあっては、測定用カートリッジ60および測定部64の構造は、第4実施例と同様である。第5実施例にあっては、図17に示すように、リミットスイッチ26のONで、電磁コイル電流制御手段46により所定時間の間隔で第1電磁コイル66と第2電磁コイル68に交互に通電が開始される。この交互の通電の開始により、棒状の鋼体62がまず偏平部14b側から先端側に移動されて、受光センサー32が遮光されて棒状の鋼体62が検出される。電磁コイル電流制御手段46により通電された電磁コイル側に棒状の鋼体62が移動し、その位置が受光センサー32で検出され、判定手段54は棒状の鋼体62が移動して適正に対応した位置にあるとして、時間測定手段50に信号を与えてタイマー48の計時動作を開始させる。第5実施例にあっては、タイマー48の計時動作を開始させる信号が判定手段54から与えられる点で、第4実施例と相違している。
【0048】
なお、上記第1実施例ないし第3実施例において、電磁コイル28への−極の通電で棒状磁石22が偏平部14b側に位置し、+極の通電で棒状磁石22が先端細径部14a側に位置するように説明したが、棒状磁石22の両端の極性を逆に磁化するならば、電磁コイル28への+極の通電で棒状磁石22が偏平部14b側に位置し、−極の通電で棒状磁石22が先端細径部14a側に位置することは、容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の血液凝固時間測定装置の第1実施例の外観斜視図であり、(a)は測定装置本体に測定用カートリッジを挿入する前の状態を示し、(b)は測定装置本体に測定用カートリッジを半分ほど挿入した状態を示し、(c)測定装置本体に測定用カートリッジを完全に挿入した状態を示す。
【図2】測定用カートリッジの構造図であり、(a)は平面図であり、(b)は左側面図であり、(c)は正面図であり、(d)は(a)のA−A断面矢視図である。
【図3】測定装置本体に内蔵される測定部の構造図であり、(a)は平面図であり、(b)は右側面図であり、(c)は(a)のB−B断面矢視図であり、(d)は(b)のC−C断面矢視図である。
【図4】測定装置本体の測定部に測定用カートリッジを挿入した切り欠き平面図であり、(a)は測定用カートリッジを半分ほど挿入した状態の図であり、(b)は測定用カートリッジを完全に挿入した状態の図である。
【図5】測定用カートリッジに測定血液を投入する状態を示す図であり、(a)は測定血液を投入する前の状態を示し、(b)は測定血液が投入された状態を示す。
【図6】第1実施例の機能ブロック図である。
【図7】第1実施例のフローチャートである。
【図8】血液凝固時間が一例として40秒の場合のタイムチャートである。
【図9】血液凝固時間が他の一例として50秒の場合のタイムチャートである。
【図10】本発明の血液凝固時間測定装置の第2実施例の機能ブロック図である。
【図11】第2実施例のフローチャートである。
【図12】本発明の血液凝固時間測定装置の第3実施例のフローチャートである。
【図13】図12のフローチャートで血液凝固時間が一例として40秒の場合のタイムチャートである。
【図14】本発明の血液凝固時間測定装置の第4実施例の測定部の一部切り欠き断面図であり、(a)は一部切り欠き横断面図であり、(b)は一部切り欠き縦断面図である。
【図15】第4実施例の機能ブロック図である。
【図16】第4実施例のフローチャートである。
【図17】本発明の血液凝固時間測定装置の第5実施例の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0050】
10 測定装置本体
12 カートリッジ挿入孔
14、60 測定用カートリッジ
14a 先端細径部
14b 偏平部
14c 細管部
14d 狭窄部
14e 周壁
14f 球面状凹部
14g 凹状溝
16 電源スイッチ
18 表示器
20 測定血液投入口
22 棒状磁石
24、64 測定部
24a 挿入孔
26 リミットスイッチ
28 電磁コイル
30 光源
32 受光センサー
34 ヒーター
36 温度センサー
38 位置設定用磁石
40 プランジャ
42 測定血液
44 マイクロコンピュータ
46 電磁コイル電流制御手段
48 タイマー
50 時間測定手段
52 受光検出手段
54 判別手段
56 表示手段
58 温度コントローラ
62 棒状の鋼体
66 第1電磁コイル
68 第2電磁コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に向けて設けられたカートリッジ挿入孔を有する測定装置本体と前記カートリッジ挿入孔に挿入し得る測定用カートリッジからなり、前記測定用カートリッジには、測定血液が投入される上方が開口した測定血液投入口とそれに連通して挿入方向の横方向に伸びる細管部が設けられ、前記細管部内に両端部がS極とN極の棒状磁石を挿入方向に所定範囲で往復移動自在に配設し、前記測定装置本体には、前記カートリッジ挿入孔に挿入された前記測定用カートリッジの前記棒状磁石を所定の時間間隔で磁力による吸引で前記挿入方向で往復移動させる磁石往復動手段を設け、前記棒状磁石が往復移動の一端側に偏寄された状態を検出する磁石位置検出手段を設け、前記磁石往復動手段により移動されるべき前記棒状磁石の位置と前記磁石位置検出手段で検出される前記棒状磁石の位置が対応しているか否かを判別する判別手段を設け、前記磁石往復動手段による前記棒状磁石の往復移動の開始から前記判別手段により前記棒状磁石の位置が対応していないことを判別するまでの時間を測定する時間測定手段を設け、前記時間測定手段で測定された時間を前記測定血液の血液凝固時間として表示する表示手段を設けて構成したことを特徴とする血液凝固時間測定装置。
【請求項2】
横方向に向けて設けられたカートリッジ挿入孔を有する測定装置本体と前記カートリッジ挿入孔に挿入し得る測定用カートリッジからなり、前記測定用カートリッジには、測定血液が投入される上方が開口した測定血液投入口とそれに連通して挿入方向の横方向に伸びる細管部が設けられ、前記細管部内に両端部がS極とN極の棒状磁石を挿入方向に所定範囲で往復移動自在に配設し、前記測定装置本体には、前記カートリッジ挿入孔に挿入された前記測定用カートリッジの前記棒状磁石を所定の時間間隔で磁力による吸引で前記挿入方向で往復移動させる磁石往復動手段を設け、前記棒状磁石が往復移動の一端側に偏寄された状態を検出する磁石位置検出手段を設け、前記磁石往復動手段により移動されるべき前記棒状磁石の位置と前記磁石位置検出手段で検出される前記棒状磁石の位置が対応しているか否かを判別する判別手段を設け、前記磁石往復動手段による前記棒状磁石の往復移動が開始されて前記判別手段で前記棒状磁石の位置が対応していることが判別されてから前記判別手段により前記棒状磁石の位置が対応していないことを判別するまでの時間を測定する時間測定手段を設け、前記時間測定手段で測定された時間を前記測定血液の血液凝固時間として表示する表示手段を設けて構成したことを特徴とする血液凝固時間測定装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の血液凝固時間測定装置において、前記測定用カートリッジが前記カートリッジ挿入孔の所定位置まで挿入されたことを検出する挿入検出手段を設け、この挿入検出手段で前記測定用カートリッジの挿入が検出されると、前記磁石往復動手段による前記棒状磁石の往復移動を開始するように構成したことを特徴とする血液凝固時間測定装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の血液凝固時間測定装置において、前記時間測定手段は、タイマーを備え、前記磁石往復動手段による前記棒状磁石の往復移動の開始にともない、または前記判別手段で前記棒状磁石の位置が対応していることが判別されて、前記タイマーにより計時動作を開始し、前記判別手段により前記棒状磁石の位置が対応していないことを判別すると前記計時動作を停止するように構成したことを特徴とする血液凝固時間測定装置。
【請求項5】
請求項1または2記載の血液凝固時間測定装置において、前記磁石往復動手段を、前記カートリッジ挿入孔に挿入された前記測定用カートリッジが遊嵌する電磁コイルと、この電磁コイルに流れる電流の向きを所定の時間間隔で切り換える電磁コイル電流制御手段とで構成したことを特徴とする血液凝固時間測定装置。
【請求項6】
請求項1または2記載の血液凝固時間測定装置において、前記測定用カートリッジを少なくとも前記棒状磁石が往復移動の一端側に偏寄された状態を検出する部分を透明に形成し、前記棒状磁石を不透明に形成し、前記磁石位置検出手段を、前記前記棒状磁石が往復移動する一端側に偏寄された状態を検出する部分に臨んでこれを挟んで配設された光源と受光センサーおよび前記受光センサーからの信号が与えられる受光検出手段とで構成したことを特徴とする血液凝固時間測定装置。
【請求項7】
請求項1または2記載の血液凝固時間測定装置において、前記カートリッジ挿入孔の開口部近くに前記棒状磁石を吸引する位置設定用磁石を設け、前記測定用カートリッジが前記カートリッジ挿入孔に挿入される際に、前記棒状磁石が前記細管部内で前記測定血液投入口側に位置するように構成したことを特徴とする血液凝固時間測定装置。
【請求項8】
請求項7記載の血液凝固時間測定装置において、前記測定用カートリッジが前記カートリッジ挿入孔の所定位置まで挿入された状態を保持する第1クリック手段と、前記測定用カートリッジが前記カートリッジ挿入孔に半分ほど挿入された状態を保持する第2クリック手段を設け、この第2クリック手段で保持された状態で前記位置設定用磁石により前記棒状磁石が前記測定血液投入口側に位置するようにし、前記第2クリック手段で保持された状態で前記測定血液投入口に前記測定血液を投入し得るように構成したことを特徴とする血液凝固時間測定装置。
【請求項9】
請求項5記載の血液凝固時間測定装置において、前記カートリッジ挿入孔に前記測定用カートリッジが挿入される際に、前記電磁コイル電流制御手段で前記電磁コイルに前記棒状磁石を前記細管部内で前記測定血液投入口側に位置するように電流を流すように構成したことを特徴とする血液凝固時間測定装置。
【請求項10】
横方向に向けて設けられたカートリッジ挿入孔を有する測定装置本体と前記カートリッジ挿入孔に挿入し得る測定用カートリッジからなり、前記測定用カートリッジには、測定血液が投入される上方が開口した測定血液投入口とそれに連通して挿入方向の横方向に伸びる細管部が設けられ、前記細管部内に鋼球または棒状の鋼体を挿入方向に所定範囲で往復移動自在に配設し、前記測定装置本体には、前記カートリッジ挿入孔に挿入された前記測定用カートリッジの前記鋼球または棒状の鋼体の往復移動の両端側にそれぞれ第1電磁コイルと第2電磁コイルを配設して、前記第1電磁コイルと前記第2電磁コイルに所定の時間間隔で交互に電流を流して磁力による吸引で前記鋼球または棒状の鋼体を所定の時間間隔で前記挿入方向で往復移動させる鋼体往復動手段を設け、前記鋼球または棒状の鋼体が往復移動の一端側に偏寄された状態を検出する鋼体位置検出手段を設け、前記鋼体往復動手段により移動されるべき前記鋼球または棒状の鋼体の位置と前記鋼体位置検出手段で検出される前記鋼球または棒状の鋼体の位置が対応しているか否かを判別する判別手段を設け、前記鋼体往復動手段による前記鋼球または棒状の鋼体の往復移動の開始から前記判別手段により前記鋼球または棒状の鋼体の位置が対応していないことを判別するまでの時間を測定する時間測定手段を設け、前記時間測定手段で測定された時間を前記測定血液の血液凝固時間として表示する表示手段を設けて構成したことを特徴とする血液凝固時間測定装置。
【請求項11】
横方向に向けて設けられたカートリッジ挿入孔を有する測定装置本体と前記カートリッジ挿入孔に挿入し得る測定用カートリッジからなり、前記測定用カートリッジには、測定血液が投入される上方が開口した測定血液投入口とそれに連通して挿入方向の横方向に伸びる細管部が設けられ、前記細管部内に鋼球または棒状の鋼体を挿入方向に所定範囲で往復移動自在に配設し、前記測定装置本体には、前記カートリッジ挿入孔に挿入された前記測定用カートリッジの前記鋼球または棒状の鋼体の往復移動の両端側にそれぞれ第1電磁コイルと第2電磁コイルを配設して、前記第1電磁コイルと前記第2電磁コイルに所定の時間間隔で交互に電流を流して磁力による吸引で前記鋼球または棒状の鋼体を所定の時間間隔で前記挿入方向で往復移動させる鋼体往復動手段を設け、前記鋼球または棒状の鋼体が往復移動の一端側に偏寄された状態を検出する鋼体位置検出手段を設け、前記鋼体往復動手段により移動されるべき前記鋼球または棒状の鋼体の位置と前記鋼体位置検出手段で検出される前記鋼球または棒状の鋼体の位置が対応しているか否かを判別する判別手段を設け、前記鋼体往復動手段による前記鋼球または棒状の鋼体の往復移動が開始されて前記判別手段で前記鋼球または棒状の鋼体の位置が対応していることが判別されてから前記判別手段により前記鋼球または棒状の鋼体の位置が対応していないことを判別するまでの時間を測定する時間測定手段を設け、前記時間測定手段で測定された時間を前記被測定血液の血液凝固時間として表示する表示手段を設けて構成したことを特徴とする血液凝固時間測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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