説明

血液処理装置のための安全装置および血液処理装置の安全性を高めるための方法

【課題】 限外濾過率を血液量に応じて調節することを可能にする体外の血液処
理装置のための安全装置、および血液量調節を有する体外の血液処理装置の安全
性を高めるための方法を提供する。
【解決手段】 患者の血液量に応じて限外濾過率を調節するこのとできる体外の
血液処理装置の安全性を高めるために、処理中に安全装置28で限外濾過率UF
R(t)を監視する。安全装置28は、所定の全限外濾液量UFVgesおよび所
定の処理時間UFTから限外濾過率に対する上限値UFRlimを規定するための
計算ユニット29を有している。さらに安全装置は、限外濾過率を計算ユニット
によって規定された上限値に制限する監視ユニットを有しているので、血液調節
不良の場合にも患者を危険にさらすことが回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外の血液処理装置、特に血液透析装置、血液濾過装置または血液
透析濾過装置のための安全装置および体外の血液処理装置の安全性を高めるため
の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性腎不全においては、尿に移行すべき物質の除去および液体の分離のために
、手術的な血液浄化もしくは血液処理のための種々異なる方法が用いられる。血
液透析(HD)においては拡散的物質輸送が主として行われるのに対し、血液濾
過(HF)では膜を介して対流的な物質輸送が行われる。2つの方法の組み合わ
せが血液透析濾過(HDF)である。
【0003】
過剰な体液を限外濾過によって分離することが透析療法の重要な構成部分であ
る。この作業はたいていの場合に患者の血液量の減少を招く。血液量が過度に減
少すると、症候性低血圧が生じ、これは透析療法で頻繁に生じる付随現象である
。血液減少に対する患者の許容度には非常に個人差がある。臨界的な患者群、た
とえば糖尿病患者や動脈硬化症患者などにおいては、血圧低下は著しく頻繁に生
じる。
【0004】
今日の標準療法では、固定の限外濾過率UFRあるいはまた限外濾過率の固定
の時間的経過(UFプロフィル)が指定される。血液量減少の測定は行われず、
問題が発生した後に初めて、限外濾過率を用手により減らし、場合によっては輸
液によって血液量の代替を行う。体外の血液処理中に患者の血液量を監視し、患
者の循環安定度の点で許容できない血液量の減少が回避されるように、限外濾過
率を調整することが提案された。この方法のための技術的前提は、血液量を測定
するための十分正確なセンサ装置である。
【0005】
処理中に限外濾過される血液量、すなわち全限外濾液量UFVgesおよび限外
濾過率UFRは、上述したように体液区分および循環調節に影響をもたらす。そ
れゆえ、限外濾過の過程、したがってまた血液量調節は安全性にとって問題があ
る。たとえば、監視されない数l/hの液体分離においては早くも数分後に循環
調節にとって危険な血液量に達して、重度の血圧低下が引き起こされることがあ
り、有効な医療措置が必要となる。
従来は、血液量調節のセンサ装置および調節アルゴリズムの機能不良の場合で
も、標準療法で存在するリスクより大きいリスクが患者にとって生じないという
ことを確保できなかった。標準療法では、選択された限外濾過率または限外濾過
プロフィルに対して医師が責任を負う。それゆえ、従来市販されている装置では
、限外濾過率を患者の血液量に応じて調節することは考慮されなかったのである

【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、患者にとってのリスクを高めることなく限外濾過率を血液量
に応じて調節することを可能にする、体外の血液処理装置のための安全装置を提
供することである。この課題の解決は本発明により特許請求の範囲第1項に記載
された特徴によって行われる。さらに、本発明の課題は、血液量調節によって体
外血液処理装置の安全性を高めるための方法を提供することである。この課題は
本発明により特許請求の範囲第8項に記載された特徴により解決される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために本発明では、当該安全装置が、所定の全限外濾液
量および所定の処理時間から限外濾過率に対する上限値を規定するための計算ユ
ニットと、計算ユニットによって指定された限外濾過率が上限値に達する場合に
は、調節ユニットによって指定された限外濾過率を上限値に制限するための監視
ユニットとを有するようにした。
【0008】
さらに、上記の課題を解決するために本発明の方法では、所定の全限外濾液量
および所定の処理時間から限外濾過率に対する上限値を規定し、計算ユニットに
よって指定された限外濾過率が上限値に達する場合には、調節ユニットによって
指定された限外濾過率を上限値に制限するようにした。
【発明の効果】
【0009】
体外の血液処理装置の調節ユニットによって血液量に応じて指定された限外濾
過率を、所定の全限外濾液量UFVgesと所定の処理時間UFTとから規定され
る上限値FRlimに制限することによって、患者の安全性が高められる。上限値
を限外濾過率および処理時間に準拠させることにより、限外濾過率を変更できる
範囲が過度に制限されることなく、患者にとって高い安全性が提供される。
【0010】
好ましい構成形態において、所定の全限外濾液量UFVgesと所定の処理時間
UFTとの商を形成することによって、処理時間UFT内で所定の全限外濾液量
UFVgesを分離するために必要な平均限外濾過率UFRMが規定される。次に
、この平均限外濾過率UFRMに係数αを乗じることによって限外濾過率UFR
に対する上限値UFRlimが規定される。係数αは1.5より大きく、2.3よ
り小さいと好都合である。
【0011】
別の好ましい実施形態では、許容限外濾過率の範囲を処理終了時に向かって次
第に縮小するようにした。処理時間が増すにつれて限外濾過率に対する上限値が
減少することは、処理開始時に血液量に応じて傾向的に処理終了時より大きい限
外濾過率を指定する調節アルゴリズムが用いられる場合に特に有利である。なぜ
ならば、経験によると限外濾過許容度は処理開始時には処理終了時におけるより
大きいからである。限外濾過率に対する上限値の減少は、経過した処理時間また
はすでに限外濾過された液体量の明確な関数であることができる。
【0012】
好ましい実施形態において、処理時間中の限外濾過率に対する上限値は、平均
限外濾過率に係数αを乗じることによって規定される値から、平均限外濾過率へ
と低下する。この場合、係数αは1.5〜2.3であることが有利である。
【0013】
別の好ましい構成において、限外濾過率に対する上限値UFRlimは、わずか
な残余量しか分離しない場合には、これより大きい限外濾過率を許容すべきでは
ないということに準拠している。この目的のために、特定の時点で処理時間UF
Tのなおも利用できる時間内に、限外濾液量を分離できる残余限外濾過率UFR
R(t)が規される。次に、この残余限外濾過率に、好ましくは1.5〜2.3
である係数αを乗じることによって、この時点tにおける上限値UFRlim(t
)が規定される。限外濾過率に対する上限値を残余限外濾過率に準拠させると、
残余量の分離のために必要な場合にのみ、これより大きい率が許容されることに
なる。この制限は、限外濾過率に対する上限値の直線的な下降と比較すると、特
にすでに大部分の量が分離されている場合、つまり乾燥重量に接近する危険な段
階で作用する。この場合には、許容最大率の付加的な減少が惹起される。
【0014】
血液処理装置の調節ユニットによって指定された限外濾過率の監視の目的は、
患者を非生理的に高い限外濾過率から保護することだけでなく、患者が所期の乾
燥重量を達成できるように配慮することでもある。限外濾過率が上限値に制限さ
れると、所定の処理時間内で濾過されるべき量が分離され得ない可能性がある。
【0015】
それゆえ、別の好ましい実施形態では、残余限外濾過率UFRR(t)を上限
値UFRlimおよび/または平均限外濾過率UFRMと比較するための比較装置
を有する警報装置が設けられている。平均限外濾過率UFRMおよび/または上
限値UFRlimを超えると、警報装置が警報を出し、患者の所期の乾燥重量を達
成するには困難があることを看護人に知らせる。その使用者は、処理時間を伸ば
しおよび/または目標量を減らし、または最初に計画された血液量より少ない血
液量を許容し、または血液量調節なしに依然として平均限外濾過率によって処理
を終了させることができる。
【0016】
限外濾過率に対する制限は下限値を超える場合にのみ行うべきであるので、安
全装置の監視ユニットが、調節ユニットによって指定された限外濾過率を下限値
と比較するための比較装置を有していると好都合である。次に監視装置は、限外
濾過率が下限値より大きい場合にのみ、限外濾過率を上限値UFRlimに制限す
る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】安全装置を備えた血液透析濾過装置の概略図である。
【図2】安全装置の監視ユニットの作業を規定するプログラムチャートである。
【図3】処理終了時に向かって上限値が下降する安全装置の実施形態において限外濾過率に対する上限値UFRlimと処理時間との関係を表すグラフである。
【図4】図3に従う実施形態による限外濾過率制限のもとで最も不利な不良例において限外濾液量UFVと処理時間との関係を表すグラフである。
【図5】安全装置の別の実施形態における最も不利な不良例において限外濾液量UFVと処理時間との関係を表すグラフである。
【図6】限外濾過率UFR、平均限外濾過率UFRMおよび残余限外濾過率UFRRと処理時間tとの関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、安全装置を備えた血液透析濾過装置の主要な構成要素を概略的な表現
で示している。安全装置は血液透析濾過装置の構成部分または既存の血液透析濾
過装置に接続される独立のユニットであることができる。
【0019】
血液透析濾過装置は透析器1を有しており、この透析器1は半透膜2によって
血液室3と透析液室4とに分割されている。血液室3は体外の血液循環5に接続
され、透析液室4は透析液循環6に接続されている。患者から血液供給管路7が
透析器1の血液室3の入口に続いており、血液室の出口からは血液排出管路8が
患者に戻っている。血液供給管路7には血液ポンプ9が接続されている。
【0020】
透析液源10から透析液供給管路11が平衡ユニット13の第1の平衡室12
の入口に続いており、平衡室12の出口からは透析器1の透析液室4の入口に続
いている。
【0021】
透析液排出管路15は透析液室の出口から平衡ユニット13の第2の平衡室1
6に続いており、平衡室16の出口からは排出部17に続いている。透析液排出
管路15には、平衡ユニット13の上流側で透析液ポンプ14が接続されている

【0022】
平衡ユニット13の第2の平衡室16の上流側では、透析液排出管路15から
限外濾過管路18が分岐しており、この限外濾過管路18は限外濾液容器19に
続いている。限外濾液を抜き取るために、限外濾液管路18には限外濾液ポンプ
20が接続されている。
【0023】
限外濾液ポンプ20が停止している間は、平衡ユニット13は一次循環5と二
次循環6との間の液体の実質交換を阻止する。この状況下では限外濾過は行われ
ない。限外濾過は限外濾液ポンプを投入することによって初めて開始され、この
濾液ポンプが透析器1の透析液室4から液体を分離する(限外濾過)。
【0024】
血液処理装置は血液透析濾過中に患者Pの血液量BVを規定するための測定ユ
ニット21を有している。測定ユニット21はデータ導線22を介して調節ユニ
ット23と接続されており、この調節ユニット23はデータ導線24を介して限
外濾液ポンプ20と接続されている。本発明による安全装置のためには、もしく
は本発明による方法を実施するためには、測定ユニット21が患者Pの血液量に
関する相対的なデータ、たとえば管路7内における患者の体外の血液中の水分比
に関するデータを提供すれば、一般に十分である。相対的血液量と相関する他の
測定値、たとえばヘモグロビン濃度やタンパク質濃度も測定できる。この目的の
ために、超音波センサを用いることができる。
【0025】
全処理時間中に分離される全限外濾液量UFVges、処理時間UFT、および
場合によってはその他の患者特有のパラメータを入力するために、入力ユニット
25が設けられている。この入力ユニット25はデータ導線26を介して調節ユ
ニット23と接続されている。調節ユニット23は、測定ユニット21で測定さ
れた患者Pの血液量BVに応じて、所定の処理時間UFT中に、所定の全限外濾
液量UFVgesが分離されるように、限外濾液ポンプ20の限外濾過率UFR(
t)を調節する(血液量調節)。この目的のために、調節ユニットは適当な調節
アルゴリズムを有している。
【0026】
スイッチ27を操作することにより、調節ユニット23の作動を停止させて、
限外濾過率の手動調節に移行することができる。
【0027】
安全装置28は血液量調節不良の場合に患者を危険にさらすことを防止する。
その安全装置は計算ユニット29と監視ユニット30とを有しており、これらの
ユニットはデータ導線31によって互いに接続されている。監視ユニットはデー
タ導線32によって調節ユニット23と接続されている。
【0028】
安全装置28の計算ユニット29は所定の限外濾液量UFVgesと所定の処理
時間UFTとから限外濾過率の上限値UFRlimを規定する。
【0029】
スイッチ33を操作することによって、使用者は安全装置28の作動を停止で
きる。このことは、たとえば生理的に重要なパラメータを測定するために、限外
濾過率を一時的に高める必要がある場合には、特に有意味である(限外濾過ボー
ラス)。安全性をさらに高めるために、このボーラス量もまた監視ユニットによ
って指定される上限値に制限することができる。
【0030】
図2は、安全装置28の監視ユニット30の作業を規定するプログラムチャー
トである。
【0031】
処理開始時には、血液透析濾過装置の入力ユニット25を介して、全限外濾液
量UFVges、処理時間UFTおよび最小限外濾過率UFRminが入力される。こ
の目的のために、監視ユニットは固有の入力ユニットも有することができる。患
者特有のパラメータUFVges、UFTおよびUFRmin、ならびに調節ユニット
23によって指定された限外濾過率UFR(t)が、監視ユニット30に伝達さ
れる。
【0032】
監視ユニット30は、調節ユニット23によって指定された限外濾過率UFR
(t)を限外濾過率の下限値と比較する比較装置を有している。UFR(t)が
UFRminより小さい場合には、限外濾過率の制限は行われない。UFR(t)
がUFRminより大きい場合には、監視ユニットは限外濾過率の制限が使用者に
よって作動停止させられたかチェックする。制限が作動している場合には、計算
ユニット29は限外濾過率UFRlimに対する上限値を規定し、この上限値が監
視ユニットにおいて調節ユニットによって指定された限外濾過率UFR(t)と
比較される。UFR(t)がUFRlimより大きい場合には、監視ユニットは限
外濾過率UFR(t)として上限値UFRlimを指定する。調節ユニットによっ
て指定された限外濾過率が上限値以下に下降すると初めて、監視ユニット30は
調節ユニット23への干渉をやめる。
【0033】
以下に、限外濾過率UFRlimに対する上限値の規定を詳細に説明する。
安全装置28の計算ユニット29は所定の全限外濾液量UFVgesと所定の処
理時間UFTとから、次の方程式に従って平均限外濾過率UFRMを計算する。
【数1】

【0034】
好ましい構成形態において、計算ユニットは平均限外濾過率UFRMから上限
値UFRlimを次のように計算する。
【数2】

この場合、1.5<α<2.3である。
この限界値は処理時間中、一定である。しかしまた処理時間中に上限値UFR
limは平均限外濾過率UFRMに下降することがある。
【0035】
別の好ましい実施形態において、計算ユニットは次の方程式に従って上限値U
FRlimを計算する。
【数3】

この場合、t<0に対してΦ(t)=0、t≧0に対してΦ(t)=1である

【0036】
図3は、限外濾過率の上限値UFRlim(t,α)と処理時間tとの関係を表
すグラフである。この場合、縦座標値は平均限外濾過率UFRMを基準とし、横
座標値は処理時間UFTを基準としている。3つの曲線はパラメータα=UFR
lim(0,α)/UFRMによって区別される。処理開始時には比較的高い限外
濾過率が許容され(2〜2.5UFRM)、処理終了時に向かってはせいぜい平
均限外濾過率UFRMが許容される。適当なパラメータαの選択は、調節ユニッ
ト23が働くための調節アルゴリズムが必要とする限外濾過率に対する変化領域
によって規定される。
【0037】
最も不利な不良例において血液量調節は、常に図3に従う最大許容直線目標値
を指定し、その基礎にある不良原因は検知されない。この場合、限外濾過された
量の次の経過が時間の関数として生じる。
【数4】

【0038】
図4に示す曲線Iは、一定の限外濾過率(UFR=UFRM)で限外濾過され
た量を示している。この場合、縦座標値は全限外濾液量UFVgesによる目盛で
あり、横座標値は処理時間UFTに基づいた目盛である。最も不利な不良例では
、限外濾液量UFV(t,α)は曲線II、III、IVのいずれかに従い(α
に応じて)ほぼ半分の時間で最終値1に上昇している。別の好ましい実施形態に
おいては、限外濾過率に対する上限値UFRlimは残余限外濾過率UFRR(t
)に準拠しており、この残余限外濾過率UFRR(t)は計算ユニット中で次の
方程式に従って計算される。
【数5】

【0039】
この残余限外濾過率UFRR(t)に基づき、計算ユニットは上限値を次のよ
うに計算する。
【数6】

この場合、1<α<2.3である。
【0040】
図5は、限外濾液量UFV(t,α)を処理時間tの関数として示している。
この場合、縦座標値は全限外濾液量UFVgesによる目盛であり、横座標値は処
理時間UFTによる目盛である。図5には、図4と比較すると明らかに平坦な限
外濾液量UFV(t,α)の上昇が見られ、このような上昇は、極めて不利な条
件下で、たとえば処理開始時に血液量調節の停止が発見されない場合において、
限外濾過率の制限が監視ユニットによって行われるときに生じる。
【0041】
安全装置は上記の構成要素のほかに、さらに警報装置34を有し、この警報装
置34は、データ導線35を介して監視ユニット30と接続されていて、2つの
聴覚的警報および/または視覚的警報を出すことができる。
【0042】
警報装置は、残余限外濾過率UFRR(t)と平均限外濾過率UFRMとを比
較する比較装置を有している。平均限外濾過率UFRMを超えると、警報装置が
聴覚的警報および/または視覚的警報を出して、場合によっては処理時間UFT
内に所定の全限外濾液量UFVgesを分離できず、乾燥重量が場合によっては達
成できないことを使用者に知らせる。
【0043】
調節ユニット23は、UFR(t)が平均限外濾過率UFRMより大きくなる
ように限外濾過率UFR(t)を調節する。この場合、正常な条件下では残余限
外濾過率UFRR(t)は全処理時間にわたってUFRMを下回る。この警報は
、平均濾過率UFRMを超えた直後か、所定の時間、たとえば5分間を経過した
後か、規定の許容限界UFRM+ΔUFRを超えた後か、規定の積分限外濾過量
を超えた後に出される。
【0044】
警報装置34の比較装置は、残余濾過率UFRR(t)を、限外濾過率の上限
値UFRlimとも比較する。残余限外濾過率UFRR(t)が上限値UFRlim
り大きい場合には、警報装置は別の聴覚的警報および/または視覚的警報を出し
て、監視ユニットの作動下では乾燥重量をもはや達成できないことを使用者に知
らせる。
【0045】
図6は、調節ユニットが、たとえば処理中の不良(網掛けした範囲)に基づい
て非常に低い限外濾過率UFRを指定したケースを示している(曲線I)。この
場合、残りの処理時間内でなおも残っている量を分離するために必要な残余限外
濾過率UFRRが上昇する(曲線II)。残余濾過率UFRRと平均限外濾過率
UFRM(曲線III)との交点が、図6にSで示されている。
【符号の説明】
【0046】
1 透析器
2 半透膜
3 血液室
4 透析液室
5 体外の血液循環
6 透析液循環
7 血液供給管路
8 血液排出管路
9 血液ポンプ
10 透析液源
11 透析液供給管路
12 平衡室
13 平衡ユニット
14 透析液ポンプ
15 透析液排出管路
16 平衡室
17 排出部
18 限外濾液管路
19 限外濾液容器
20 限外濾液ポンプ
21 測定ユニット
22 データ導線
23 調節ユニット
24 データ導線
25 入力ユニット
26 データ導線
27 スイッチ
28 安全装置
29 計算ユニット
30 監視ユニット
31 データ導線
32 データ導線
34 警報装置
35 データ導線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者から半透膜(2)によって第1の室(3)と第2の室(
4)とに分割された透析器(1)の第1の室(3)の入口に続いている血液供給
管路(7)と、
第1の室の出口から患者に続いている血液排出管路(8)と、
所定の処理時間UFTの間に透析器の第2の室から限外濾過率UFR(t)で
所定の全限外濾液量UFVgesを分離するための限外濾過装置(18、19、2
0)と、
血液量BVまたは血液量と相関する患者の測定値を規定するための測定ユニッ
ト(21)と、
限外濾過率UFR(t)を血液量BVに応じて指定するための調節ユニット(
23)とを有する、体外の血液処理装置のための安全装置において、
当該安全装置(28)が、所定の全限外濾液量UFVgesおよび所定の処理時
間UFTから限外濾過率UFR(t)に対する上限値を規定するための計算ユニ
ット(29)と、この計算ユニットによって指定された限外濾過率UFR(t)
が上限値UFRlimに達する場合に、調節ユニット(23)によって指定された
限外濾過率UFR(t)を上限値UFRlimに制限するための監視ユニット(3
0)とを有することを特徴とする、血液処理装置のための安全装置。
【請求項2】
所定の全限外濾液量UFVgesと所定の処理時間UFTとの
商を形成することによって、処理時間UFT内で所定の全限外濾液量UFVges
を分離するために必要な平均限外濾過率UFRMが規定可能であり、さらに平均
限外濾過率UFRMに係数αを乗じることによって上限値UFRlimが規定可能
であるように、計算ユニット(29)が形成されている、請求項1記載の安全装
置。
【請求項3】
処理時間が増すにつれて減少する、限外濾過率に対する上限
値UFRlim(t)が規定可能であるように、計算ユニット(29)が形成され
ている、請求項1記載の安全装置。
【請求項4】
限外濾液量UFVが増すにつれて減少する、限外濾過率に対
する上限値UFRlim(t)が規定可能であるように、計算ユニット(29)が
形成されている、請求項1記載の安全装置。
【請求項5】
所定の全限外濾液量UFVgesと所定の処理時間UFTとの
商を形成することによって、処理時間UFT内で所定の全限外濾液量UFVges
を分離するために必要な平均限外濾過率UFRMが規定可能であり、さらに次の
方程式
【数1】

(この式で、t<0に対してΦ(t)=0、t≧0に対してΦ(t)=1)
に従って特定の時点tにおける上限値UFRlim(t,α)が規定可能であるよ
うに、計算ユニット(29)が形成されている、請求項3または4記載の安全装
置。
【請求項6】
所定の全限外濾液量UFVgesと所定の処理時間UFTとか
ら次の方程式
【数2】

に従い、特定の時点で処理時間UFTのなおも利用できる時間内に、限外濾液量
UFVを分離させることのできる残余限外濾過率UFRR(t)が規定可能であ
り、さらにこの残余限外濾過率UFRR(t)に係数αを乗じることによってこ
の時点tにおける上限値UFRlim(t,α)が規定可能であるように、計算ユ
ニット(29)が形成されている、請求項1記載の安全装置。
【請求項7】
残余限外濾過率UFRR(t)を平均限外濾過率UFRMと
比較するための比較装置を有する警報装置(34)が設けられており、さらに平
均限外濾過率UFRMを超えると警報が出されるように、警報装置(34)が形
成されている、請求項6記載の安全装置。
【請求項8】
残余限外濾過率UFRR(t)を限外濾過率に対する上限値
UFRlimと比較するための比較装置を有する警報装置(34)が設けられてお
り、さらに上限値UFRlimを超えると警報が出されるように、警報装置(34
)が形成されている、請求項6記載の安全装置。
【請求項9】
監視ユニット(30)が、調節ユニットによって指定された
限外濾過率UFR(t)を限外濾過率に対する下限値と比較するための比較装置
を有しており、さらに限外濾過率UFRが下限値より大きい場合にのみ、限外濾
過率UFR(t)が上限値UFRlimに制限されるように、監視ユニット(30
)が形成されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の安全装置。
【請求項10】
体外の血液処理装置の安全性を高めるための方法であって
、患者から、半透膜によって第1の室と第2の室とに分割された透析器の第1の
室の入口に続いている血液供給管路と、
第1の室の出口から患者に続いている血液排出管路と、
所定の処理時間UFTの間に透析器の第2の室から限外濾過率UFR(t)で
所定の全限外濾液量UFVgesを分離するための限外濾過装置と、
血液量BVまたは血液量と相関する患者の測定値を規定するための測定ユニッ
トと、
限外濾過率UFR(t)を血液量BVに応じて指定するための調節ユニットと
を有する形式の方法において、
次の方法段階、すなわち、所定の全限外濾液量UFVgesおよび所定の処理時
間UFTから限外濾過率UFR(t)に対する上限値を規定し、計算ユニットに
よって指定された限外濾過率UFR(t)が上限値UFRlimに達する場合には
、調節ユニットによって指定された限外濾過率UFR(t)を上限値UFRlim
に制限する、ことを特徴とする、体外の血液処理装置の安全性を高めるための方
法。
【請求項11】
所定の全限外濾液量UFVgesと所定の処理時間UFTと
の商を形成することによって、処理時間UFT内で所定の全限外濾液量UFVge
sを分離するために必要な平均限外濾過率UFRMを規定し、さらに平均限外濾
過率UFRMに係数αを乗じることによって上限値UFRlimを規定する、請求
項10記載の方法。
【請求項12】
処理時間が増すにつれて限外濾過率に対する上限値UFR
lim(t)が減少する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
限外濾液量UFVが増すにつれて限外濾過率に対する上限
値UFRlim(t)が減少する、請求項11記載の方法。
【請求項14】
所定の全限外濾液量UFVgesと所定の処理時間UFTと
の商を形成することによって、処理時間UFT内で所定の全限外濾液量UFVge
sを分離するために必要な平均限外濾過率UFRMを規定し、さらに次の方程式
【数3】

(この式で、t<0に対してΦ(t)=0、t≧0に対してΦ(t)=1)
に従って特定の時点tにおける上限値UFRlim(t,α)を規定する、請求
項12または13記載の方法。
【請求項15】
所定の全限外濾液量UFVgesと所定の処理時間UFTと
から次の方程式
【数4】

に従い、特定の時点で処理時間UFTのなおも利用できる時間内に、限外濾液量
UFVを分離させることのできる残余限外濾過率UFRR(t)を規定し、さら
にこの残余限外濾過率UFRR(t)に係数αを乗じることによってこの時点t
における上限値UFRlim(t,α)を規定する、請求項10記載の方法。
【請求項16】
残余限外濾過率UFRR(t)を平均限外濾過率UFRM
と比較し、さらに平均限外濾過率UFRMを超えると警報が出される、請求項1
5記載の方法。
【請求項17】
残余限外濾過率UFRR(t)を限外濾過率に対する上限
値UFRlimと比較し、上限値UFRlimを超えると警報が出される、請求項15
記載の方法。
【請求項18】
所定の限外濾過率UFR(t)を限外濾過率に対する下限
値と比較し、さらに限外濾過率UFRが下限値より大きい場合にのみ、限外濾過
率UFR(t)が上限値UFRlimに制限される、請求項10から17までのい
ずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−45767(P2011−45767A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271094(P2010−271094)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【分割の表示】特願平11−149381の分割
【原出願日】平成11年5月28日(1999.5.28)
【出願人】(597175086)フレセニウス・メディカル・ケア・ドイッチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (1)
【Fターム(参考)】