説明

血液分析装置

【課題】血液を採取して分析操作を行う血液分析装置においては、筺体と測定結果を表示する表示パネルとの間に、成形バラツキや製造工程における実装の過程で隙間が生じる。従来、この隙間から誤って付着した血液が筺体内部に流入し、液晶などの表示部や電気回路基板に付着し、動作不良を起こすという課題があった。
【解決手段】筐体内に、採取した血液成分を測定するための電気回路基板107と、測定された結果を表示するための表示部108とを備え、さらに表示部108を覆って、表示部を保護するよう、筺体102の周縁部203上に接合された表示パネル104を備えた血液分析装置において、表示パネル104の底面を支持する周縁部203の上面には、表示パネルとの間に空間を形成する凹部201を設けた。この凹部201内に、流入した血液を溜めるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体から採取した血液を用いてその血液成分を測定する血液分析装置に関するものであり、POCT(ポイント・オブ・ケア・テスティング)に好適な小型で携帯が可能な機器、例えば簡易血糖値測定器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
糖尿病患者が自己血糖の管理のために、皮膚から血液を採取し、血糖値を測定する血液分析装置が広く普及している。このような血液分析装置は、使い捨ての測定用センサが着脱自在に装着され、この装着された測定用センサに皮膚からの血液を点着した後、このセンサ内で生じる反応を、分析装置内に設けた測定回路で分析し、血糖値などをその表示部に表示するものである。
【0003】
このような血液分析装置は、一般的には、筐体に、測定用センサが着脱されるコネクタと、筺体に設けた開口から露出するよう配置された、測定結果を表示するための液晶パネルなどの表示部と、この表示部を保護するよう表示部の上面に取り付けられた、透明部材よりなる表示パネルとを備えている。また筺体の内部には、測定用センサが接続されたコネクタおよび表示部と電気的に繋がる電気回路基板が配置されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、従来の表示パネルの取り付け構造について説明する。表示パネルを設ける目的は、測定結果を表示する液晶などの表示部を外部からの埃、異物、傷及び衝撃等から保護するためである。
【0005】
図7(a)は従来の血液分析装置101を示す正面図であり、図7(b)は図7(a)の断面F−F‘における断面図を示す。表示部108は、筺体102に設けた開口から露出するよう筺体102の内部に配置されている。表示パネル104は、筺体102にも受けた開口の周縁部203の上面に、表示パネル104の底面が支持されるように接合されている。
【特許文献1】特表2006−522923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような血液分析装置においては、皮膚をランセットなどの穿刺器具で穿刺して血液を滲出させた状態で、測定用センサに点着させるなどの測定操作をするため、どうしても、筐体表面、表示パネル表面、コネクタ近傍などに血液が付着しやすい。とりわけ表示パネルと筺体との間に血液が付着した場合には、表示パネルと筺体の隙間から血液が筺体内部に流れ込む恐れがある。
【0007】
ところで表示パネルの取り付けは、表示パネル104の底面を筐体の開口の周縁部203に固定するのだが、表示パネルおよび筐体の寸法バラツキがあり、また製造工程において複数の部品を組立てていくために、表示パネルと前記筐体との間に必ず隙間が生じてしまう。
【0008】
このため表示パネル104と筐体102に存在する隙間202から血液が侵入すると、図7(b)に示すように矢印の方向に液体が流れ、接合面203を伝って内部の表示部108および電気回路基板107に達してしまうことになる。これによって表示部108の表示不良、配線の短絡による破壊及び測定不能等の問題を引き起こすという課題を有していた。
【0009】
また、測定用センサを装着するコネクタ105においても、ネクタの実装精度、コネクタの寸法、筐体の寸法にバラツキ、または製造工程において複数の部品を組立てていくために、隙間が生じる。このため上記と同様、血液がコネクタ周辺に付着した場合に筐体との間の隙間から侵入し、電気回路基板などに達する可能性がある。このような場合、配線の短絡による破壊及び測定不能等の問題を引き起こし易いという課題も有していた。
【0010】
本発明は、表示パネルと筐体との間の隙間や、コネクタと筐体との隙間から侵入した血液が筺体内部に侵入しても、電気回路基板などに達しない構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の血液分析装置は、筐体内に、採取した血液成分を測定するための電気回路基板と、前記電気回路基板上に配置されるとともに、前記筐体に形成された開口より露出して、前記電気回路基板により測定された結果を表示するための表示部とを備え、さらに、前記開口より露出する表示部を覆って、前記表示部を保護するよう、前記開口を構成する筺体の周縁部上に接合された表示パネルを備えた血液分析装置であって、前記表示パネルの底面を支持する前記周縁部の上面には、前記表示パネルとの間に空間を形成する第1の凹部を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の血液分析装置は、筐体内に、採取した血液成分を測定するための電気回路基板と、前記電気回路基板上に配置されるとともに、前記筐体に形成された開口より露出して、前記電気回路基板により測定された結果を表示するための表示部とを備え、さらに、前記開口より露出する表示部を覆って、前記表示部を保護するよう、前記開口の周縁部を構成する筐体上に接合された表示パネルを備えた血液分析装置であって、前記表示パネルを支持する開口の周縁部には、貫通孔を設けてあり、前記貫通孔と連通する筐体内部の空間は、前記電気回路基板と表示部を設けた空間とは、隔離してあることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の血液分析装置は、血液を採取する測定用センサが装着されるコネクタを備えた筐体と、前記筐体内に、前記コネクタに装着された測定用センサと電気的に接続され、前記測定用センサに採取された血液の成分を測定するための電気回路基板と、前記電気回路基板により測定された血液成分を表示するための表示部とを備えた血液分析装置であって、前記コネクタと筐体との間に、前記表示部や電気回路基板を設けた筺体内部の空間とは分離された第2の凹部を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
上記構成の血液分析装置によれば、表示パネルと筐体との間の隙間や、コネクタと筐体との隙間から侵入した血液は、表示部や電気回路基板に達することはなく、動作不良を起こすようなことはなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施の形態1)
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1Aは、本実施の形態に係る血液分析装置101を示す斜視図であり、図1Bは血液分析装置101から上筐体102と下筐体103とを分解し、血液分析装置101の内部を示した分解斜視図である。血液分析装置内部には表示部108および電気回路基板107が存在し、基板上には制御部をはじめ、血液分析装置の根幹を成す電気回路が存在する。なお104は表示パネル、105は測定用センサが装着されるコネクタ、106は操作ボタンをそれぞれ示す。
【0016】
図2(a)は図1の血液分析装置101から表示パネル104を取り除いた上体を示す図であり、図2(b)は図2(a)のA−A‘で切断した斜視図を、図2(c)は図2(a)のA−A’断面の要部を示す(隙間202を明示するために表示パネル104を図示している)を示すものである。
【0017】
ここで、表示パネル104と上筐体102とには成形バラツキがあったり、また製造工程において複数の部品を組立てたりするために、表示パネル104と上筐体102との間に、図2(c)に示すような隙間202が必ず発生する。
【0018】
ここで表示パネル104と上筺体102との間の上部に血液が付着した場合には、図2(c)に示す矢印に沿って、隙間202から侵入した液体は流れ、最終的には表示部108もしくは基板107に到達する可能性がある。
【0019】
そこで本実施の形態では、上筐体102と表示パネル104との接合部となる部分に第1の凹部を形成している。具体的には、表示部108を露出させるよう、上筺体102に開口を形成しており、この開口の周縁部203にて表示パネル104の底面を支持するよう構成しているが、この周縁部203の上面に凹部201を設けている。
【0020】
図2(c)に示す矢印のように、表示パネル104と上筐体102との間の隙間202から侵入した液体は周縁部203に達するが、血液は凹部201に導入され、血液分析装置内部の表示部108もしくは電気回路基板107などに到達することはない。このため表示部108や電気回路基板107が血液の付着により動作不良を起こすことを防止することができる。
【0021】
(実施の形態2)
図3に本発明の実施の形態2を示す。図3(a)は図1の血液分析装置本体101から表示パネル104を取り除いた図であり、図3(b)は図3(a)をB−B‘で切断した斜視図を、図3(c)は図3(a)のB−B’断面図(隙間202を明示するために表示パネル104を図示している)を示している。
【0022】
ここで、表示パネル104と上筐体102とは成形バラツキがあったり、製造工程において複数の部品を組立てたりするため、表示パネル104と上筐体102との間に図3(c)に示すように隙間202が必ず発生する。図3(c)に示す矢印に沿って隙間202から侵入した血液は流れ、最終的には内部の表示部108もしくは電気回路基板107に到達する可能性がある。
【0023】
そこで本実施の形態2では、表示パネル104を支持する上筺体102の周縁部203に、外周方向に向かって次第に傾斜する傾斜部302を設け、さらに傾斜部302の下端、すなわち周縁部203の最外周に凹部301を設けている。
【0024】
図3(c)に示す矢印のように、表示パネル104と上筐体102との間の隙間202から侵入した液体は傾斜部302に達するが、傾斜部302は傾斜しているため液体は外周の凹部301に導入され、血液分析装置内部の表示部108や電気回路基板107などに到達することはない。このため表示部108や電気回路基板107が血液の付着により動作不良を起こすことを防止することができる。
【0025】
(実施の形態3)
図4に本発明の実施の形態3を示す。図4(a)は図1の血液分析装置101から表示パネル104を取り除いた図であり、図4(b)は図4(a)をC−C‘で切断した斜視図を、図4(c)は図4(a)のC−C’断面図(隙間202を明示するために表示パネル104を図示している)を示している。
【0026】
ここで、表示パネル104と上筐体102とは成形バラツキがあり、また製造工程において複数の部品を組立てたりするために、表示パネル102と上筐体102との間に図4(c)に示すように隙間202が必ず発生する。このため図4(c)に示す矢印に沿って隙間202から侵入した血液は流れ、最終的に血液分析装置内部の表示部108や電気回路基板107に到達する可能性がある。
【0027】
そこで本実施の形態では、上筐体102のうち、表示パネル104を支持する周縁部203に、外周に向かって次第に傾斜する傾斜部302を設け、さらに傾斜部302の下端、すなわち周縁部203の最外周に貫通孔401を設けている。貫通孔401は電気回路基板107および表示部108とは、筺体内部の隔壁により隔離した構造である。貫通孔401に達した血液は、図4(b)に示す矢印のように最終的には下筐体103の空間に留まる。故に隙間202から侵入した液体は内部の表示部108もしくは電気回路の基板107などに到達することはない。このため表示部108や電気回路基板107が血液の付着により動作不良を起こすことを防止することができる。
【0028】
(実施の形態4)
図5および図6に本発明の実施の形態4を示す。図5(a)は図1の血液分析装置101から表示パネル104を取り除いた図であり、図5(b)は図5(a)のD−D‘で切断した状態の斜視図を、図5(c)は図5(a)のD−D’断面図を示している。
【0029】
また図6(a)は図1の血液分析装置101から表示パネル104を取り除いた図であり、図6(b)は図6(a)のE−E‘で切断した状態の斜視図を、図6(c)は図6(a)のE−E’断面図を示している。
【0030】
ここで、測定用センサが装着されるコネクタ105と上筐体102とは成形バラツキがあり、また実装工程における実装ズレ、さらに製造工程において複数部品の組立てていくために、コネクタ105と上筐体102との間には図5(c)および図6(c)に示すように隙間501ができてしまう。隙間501は図5に示すようにコネクタ105の正面だけでなく、図6に示すようにコネクタ105の両側面にも存在する。
【0031】
このためセンサ挿入口の隙間501から侵入した血液は、図5(c)の矢印に示すように下筐体103に流れたり、図6(c)の矢印に示すように下筐体103に流れたりしてしまう。
【0032】
そこで本実施の形態では、下筺体に流れた血液が、表示部108や電気回路基板107に到達しないように隔壁502を設け、上記の隙間501を開口とする第2の凹部となる収納部503を形成している。流れた血液はこの収納部503に溜まるように構成している。故に隙間501から侵入した液体は血液分析装置内部の表示部108や電気回路基板107に到達することはなく動作不良を起こすことはない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る医療用血液分析装置は、血糖値や乳酸値、ヘモグロビンなどに限らず、血液を採取して分析操作をおこなう、小型で携帯可能な血液分析装置に広く適用でき有用である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1A】本実施の形態に係る血液分析装置の斜視図
【図1B】同血液分析装置の分解斜視図
【図2】本実施の形態1に係る血液分析装置を示す正面図、要部を切断して示す斜視図、及び要部断面図
【図3】本実施の形態2に係る血液分析装置を示す正面図、要部を切断して示す斜視図、及び要部断面図
【図4】本実施の形態3に係る血液分析装置を示す正面図、要部を切断して示す斜視図、及び要部断面図
【図5】本実施の形態4に係る血液分析装置を示す正面図、要部を切断して示す斜視図、及び要部断面図
【図6】同実施の形態における他の血液分析装置の構成例における正面図、要部を切断して示す斜視図、及び要部断面図
【図7】従来の血液分析装置の正面図および要部断面図
【符号の説明】
【0035】
101 血液分析装置
102 上筐体
103 下筐体
104 表示パネル
105 コネクタ
106 操作ボタン
107 電気回路基板
108 表示部
201,301 凹部
202,501 隙間
203 周縁部
302,402 傾斜部
401 貫通孔
502 隔壁
503 収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に、採取した血液成分を測定するための電気回路基板と、前記電気回路基板上に配置されるとともに、前記筐体に形成された開口より露出して、前記電気回路基板により測定された結果を表示するための表示部とを備え、さらに、前記開口より露出する表示部を覆って、前記表示部を保護するよう、前記開口を構成する筺体の周縁部上に接合された表示パネルを備えた血液分析装置であって、
前記表示パネルの底面を支持する前記周縁部の上面には、前記表示パネルとの間に空間を形成する第1の凹部を設けたことを特徴とする血液分析装置。
【請求項2】
前記第1の凹部が、前記周縁部の一部または全周に設けられた請求項1に記載の血液分析装置。
【請求項3】
前記周縁部は、その一部または全部の領域に、前記第1の凹部に続く傾斜面を備えた請求項1に記載の血液分析装置。
【請求項4】
前記傾斜面は、第1の凹部よりも筐体の内周側に形成され、筐体の外周方向に向かって深くなり、第1の凹部に続くことを特徴とする請求項3に記載の血液分析装置。
【請求項5】
筐体内に、採取した血液成分を測定するための電気回路基板と、前記電気回路基板上に配置されるとともに、前記筐体に形成された開口より露出して、前記電気回路基板により測定された結果を表示するための表示部とを備え、さらに、前記開口より露出する表示部を覆って、前記表示部を保護するよう、前記開口の周縁部を構成する筐体上に接合された表示パネルを備えた血液分析装置であって、
前記表示パネルを支持する開口の周縁部には、貫通孔を設けてあり、前記貫通孔と連通する筐体内部の空間は、前記電気回路基板と表示部を設けた空間とは、隔離してあることを特徴とする血液分析装置。
【請求項6】
前記周縁部には、その一部または全部の領域に、前記貫通孔に続く傾斜面を備えた請求項5に記載の血液分析装置。
【請求項7】
前記傾斜面は、貫通孔よりも筐体の内周側に形成され、筐体の外周方向に向かって深くなり、前記貫通孔に続くことを特徴とする請求項6に記載の血液分析装置。
【請求項8】
血液を採取する測定用センサが装着されるコネクタを備えた筐体と、前記筐体内に、前記コネクタに装着された測定用センサと電気的に接続され、前記測定用センサに採取された血液の成分を測定するための電気回路基板と、前記電気回路基板により測定された血液成分を表示するための表示部とを備えた血液分析装置であって、
前記コネクタと筐体との間に、前記表示部や電気回路基板を設けた筺体内部の空間とは分離された第2の凹部を設けたことを特徴とする血液分析装置。
【請求項9】
前記コネクタの底面と筺体との間に開口を有する前記第2の凹部を設けたことを特徴とする請求項8に記載の血液分析装置。
【請求項10】
前記コネクタの側面と筺体との間に開口を有する第2の凹部を形成したことを特徴とする請求項8に記載の血液分析装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−229356(P2009−229356A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77333(P2008−77333)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】