血液採取カテーテル
【課題】異常マーカを識別することにより易損性プラークを識別する診断方法において、血管の長さに沿った濃度レベルのプロファイルを提供するように、血液試料を血管の長さに沿った複数の位置で採取可能な改良された診断手段を提供する。
【解決手段】血管に挿入されるカテーテル4であって、血管のある長さに沿った複数の位置で血液試料を採取するように構成された採取部6を有する。スリーブを引き抜くことにより採取部を露出し、真空ポケット24あるいはプランジャを引き抜くことによる吸引力で血液を複数箇所から採取する。
【解決手段】血管に挿入されるカテーテル4であって、血管のある長さに沿った複数の位置で血液試料を採取するように構成された採取部6を有する。スリーブを引き抜くことにより採取部を露出し、真空ポケット24あるいはプランジャを引き抜くことによる吸引力で血液を複数箇所から採取する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル、そのカテーテルと共に使用する装置、ならびに該カテーテルおよび該装置を含むシステムに関する。詳細には、血管に挿入して血液試料を採取可能なカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、米国公開第2004/0102686号から、病的部位により生じるC反応性タンパク質やpHの変化等の異常マーカを識別することにより易損性プラークを識別する診断方法を実施することが知られている。米国公開第2004/0102686号は、第1および第2の検出器が血管を通して送られ、各検出器が異常マーカを検出するように選択される構成について記載している。両検出器は軸方向に離間して配置され、検出器によって測定された異常マーカの濃度差によって、検出器の少なくとも一方に近接して異常部位が存在することを示すようになっている。このような検出器の使用は、限定的でかなりの費用がかかる。検査ごとに特定の検出器を設けなければならず、これらの検出器をカテーテルに合わせることは非常に難しい。また種々のカテーテルを設ける場合、それぞれ別々の規制認可を受ける必要がある。さらに、検出器は、どのような検出用マーカでも血液量全体を通して希釈されるような間隔で配置されるため、マーカの濃度が通常のバックグラウンドレベルにより大きく影響を受け、マーカ源を正確に識別することがさらに難しくなる。
【0003】
米国特許第5,533,516号は、生体試料、例えば細胞試料を患者の体内深くから採取し、体外で試料を集めて、患者の治療を促進することについて記載している。体外に保持される近位部と、体内で位置決め可能な遠位部とを有する細長カテーテル状の採取プローブが設けられる。遠位部は開口を有する膜を備え、この開口は吸引力源に連通する空間に連通する。カテーテルは体内で位置決めされる。生体試料を膜で受けるように、膜を所望の位置に近接して配置し露出させることにより、試料が採取される。カテーテルを患者から抜き取り、体外で試料を集めて処置し、グラフト、ステント、カテーテル等の装置上に配置し、再び体内の所望の部位に導入する。
【0004】
英国公報1405556号は、内部に連通する複数の採取口を含む採取端を有する中空チューブと、チューブを囲み、チューブに対して摺動可能なスリーブとを備え、スリーブとチューブとが、スリーブが採取口の少なくとも一つを露出させる採取位置と、スリーブがチューブの前止めに係合してすべての採取口を覆う第2の位置との間で互いに往復移動可能である子宮試料採取器について記載している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述した問題を少なくとも減らしつつ、改良された診断手段を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、血管の長さに沿った濃度レベルのプロファイルを提供するように、血液試料を血管の長さに沿った複数の位置で採取する、データプロファイルを提供する方法、オプションとして、診断方法の一部としてのデータプロファイルを提供する方法を提供する。
【0007】
複数の離間した試料を一回で(例えば、複数のシース孔を通して)採取し、これらの試料を混合せずに分離したままにしておくことが可能である。別個の採取口を分析用の複数の試料チャンバ内に突き出すことができる。
【0008】
このようにして血液試料を採取すると、血液に種々の検査を行って、所望の検査に関するプロファイルを提供することができる。例えば、プロファイルは、C-反応性タンパク質、熱ショックタンパク質、水素イオン濃度(pH)、コレステロール、細胞、細胞表面マーカ等に関するものとすることができる。プロファイルにより、血液試料のどのようなバックグラウンドレベルも求めることができ、問題部位の位置を正確に判定することができる。
【0009】
本方法が、診断カテーテルの既知の位置を参照して、識別された問題部位を正確に治療することができるように、既知の位置で血管に挿入されるカテーテルを使用して血液試料を得るステップを含むことが好ましい。このようにすることで、臨床医が血管を診断して識別された問題部位を特定して治療することが、きわめて容易になる。
【0010】
本発明によれば、血管に挿入するカテーテルが設けられ、カテーテルは、血管の長さに沿った複数の位置で血液試料を採取するように構成された採取部を有する。
【0011】
カテーテルは、1回に採取される試料の間隔を維持することができる。
【0012】
このように、このタイプのカテーテルをいくつかの異なる検査に使用することができる。実際には、この種の検査を同時に行うこともできる。血液試料の検査の結果として、血管内の問題部位が識別できるように、血液中の濃度プロファイルを提供することができる。
【0013】
通常、カテーテルは、少なくとも血管の長さに沿った3箇所で血液試料を採取するように構成されるが、20箇所や100箇所以上とまではいかないにしても、少なくとも5箇所で血液試料を採取するように構成されることが好ましい。100themの長さにわたって試料を採取することが考えられる。カテーテルは、その長さに沿って1them間隔の位置、あるいはそれ未満の例えば0.5them間隔の位置で血液試料を採取することが想定される。カテーテルは、ナノリットルからマイクロリットルの量を採取することができる。
【0014】
血管内から複数の位置で試料を採取することにより、血清内の真のバックグラウンドレベルを(マーカ源の上流で)見出すことができる。さらに、マーカが希釈される前にマーカ源により近い位置で集められるため、マーカをより高い局所濃度で検出することができる。また、前述したように、マーカ源は、血管の長さに沿って採取された試料の数によって、より正確に配置することができる。
【0015】
マーカをより高い局所濃度で検出することができるため、マーカのレベルをより高い感度で判定することができる。特に、マーカのレベルがバックグラウンドレベルよりも高くなる。したがって、患者の炎症マーカのバックグラウンドレベルが高い場合でも、マーカを検出することができる。
【0016】
この構成は、将来の冠動脈イベントをより正確に予測して、心筋梗塞および/または脳梗塞の危険のある患者を監視して予防的に治療することを可能にする。また、危険の少ない患者をより正確に識別して、従来よりも費用の負担を少なくすることができる。
【0017】
血管内の易損性プラークの位置を正確に特定することで、ステント配置等の局所的な治療が可能になる。
【0018】
本発明の構成により、化学療法の経過や有効性を従来よりも詳細に監視することができる。さらに、カテーテルは通常の診査処置中に血管内の試料を採取することができるため、このプロセスは臨床処置と両立する。本発明のカテーテルは、製造が比較的容易で安価であるため、このプロセスは臨床予算とも両立する。
【0019】
カテーテルは、血管壁と接触したり、吸引によって血管壁を装置に引き寄せたりする必要がない。実際には、このようなことは好ましくない。内皮(血管内壁)を傷つけずに、壁に近接した血液や生体試料を採取することが好ましい。
【0020】
採取部が軸方向に細長の試料部材を備え、試料部材は、前記血管の長さに沿って間隔をおいてカテーテル外側から血液を受けるための軸方向に並んだ複数の開口を有することが好ましい。
【0021】
このようにして、各開口が血管の長さに沿った異なる位置で血液試料を採取する。開口は、試料を順次または同時に採取するように構成される。
【0022】
採取部が、試料部材と同軸で試料部材を収容するための軸方向通路を画定する細長スリーブを備え、試料部材に沿って軸方向にスリーブが相対移動することにより開口が露出されて、前記血管の長さに沿った複数の試料を採取するようになっていることが好ましい。
【0023】
このようにして、カテーテルが所望の位置に位置決めされるまで、開口をスリーブによって閉鎖しておくことができる。このことは、血液試料を別個の開口に積極的に吸引する一部の実施例では非常に有利であるが、必須ではない。
【0024】
スリーブは、すべての開口がカテーテル外側の血液に同時に触れるように位置決めされた複数の貫通孔を有することができる。
【0025】
すなわち、貫通孔は開口の列に対応した列になって配置される。初めは、貫通孔は開口と位置合わせされていないが、試料部材に対してスリーブが移動することにより、貫通孔が開口に位置合わせされる。
【0026】
採取部は、開口から血液を受けるための複数のポケットを備えることが好ましい。
【0027】
このようにして、ポケットは、各開口に貯蔵チャンバを提供する。
【0028】
前記ポケットの各々が少なくとも部分的に真空化されて、スリーブによる露出時に、ポケットがカテーテル外側から血液を吸引することが好ましい。
【0029】
スリーブは、このように開口とポケットとを封止して、カテーテルが血管内に位置決めされる際にポケット内を(大気圧に対して)低圧に維持する。スリーブが移動してポケットを露出させると、低圧によりカテーテル外側から血液を吸引する。
【0030】
あるいは、採取部材が、各ポケットを接続する真空通路を備え、真空通路により各ポケットに対する吸引が可能になるようにしてもよい。
【0031】
このようにして、真空通路を外部低圧源に接続することにより、血液試料を必要に応じて開口を通して吸引することができる。
【0032】
ポケットと真空通路とに、生理食塩水等の液体が予め充填され、この液体をカテーテルから抜き出して、カテーテル外側からポケット内に血液を吸引することができるようにしてもよい。
【0033】
このようにポケットと真空通路に予め液体が充填されていることにより、ポケットを真空にするのと同様に、血流中への気泡の放出を減らすことができる。
【0034】
あるいは、採取部は、各開口に対する別個の吸引が可能になるように、各開口に接続された複数の真空通路を備えていてもよい。
【0035】
このようにして、各開口からの採取を別個に制御することができる。
【0036】
さらに、カテーテルは、カテーテル外側から開口を通して血液を吸引することができるように開口から離れることのできるプランジャを、前記真空通路または各真空通路内に備えていてもよい。
【0037】
真空通路内でのプランジャの移動により、血液が各開口に流入することを理解されたい。開口が別個の真空通路とプランジャとを備えている場合、これらの開口によって採取された試料を別個に制御することができる。
【0038】
採取部は、ポケット内に複数のピストンをさらに備え、ピストンが開口から離れることによりポケット内に血液を吸引する。
【0039】
ピストンは前述したプランジャと同様に作用するが、真空通路内ではなくポケット内に設けられる。
【0040】
ピストンがポケット内に血液を吸引するよう軸方向に移動可能であり、採取部が、すべてのピストンが取り付けられた、軸方向に延びるアクチュエータをさらに備え、アクチュエータによりピストンが移動可能であることが好ましい。
【0041】
これにより、すべてのポケットのピストンを同時に作動させる便利な構成が提供される。
【0042】
開口を覆う膜層を設けることができ、膜層は血漿を開口に通すことができる。
【0043】
このようにして、カテーテル外側の血小板等を残したまま血漿を採取することができる。これにより、検査試料の濃度が高くなり、採取量を減らすことができる。
【0044】
前述したように、採取部は、前記血管の長さに沿った複数の離散した試料を採取するように構成されることが好ましい。診断用化学プロセスの多くは、約50μlの試料を必要とし、したがって、多くの実施例では、離散した各試料がほぼこの値となる。しかし、離散した試料は0.1μl〜100μl、好ましくは20μlと50μlの間とすることができる。
【0045】
採取部は、連続吸収材を含む軸方向に細長の試料部材を備えることができる。この試料部材を、軸方向に並んだ開口と組み合わせて使用して、各開口が同一の連続吸収材の各部に各試料を供給するようにすることができる。スリーブをこれと組み合わせて使用してもよい。しかし、代わりに、連続吸収材をその長さに沿って連続して血液を採取するように設けることもできる。また、スリーブを設けて、カテーテル外側の血液に対する吸収材の露出を制御することができる。試料部材を直接分析して、装置の長さに沿った試料の差を測定することができる。
【0046】
カテーテルは、採取部の遠位端の入口と採取部の近位端の出口とを備えて、採取部が遠位端から近位端へ延びる軸方向流路を画定し、さらに出口に接続する吸引装置と近位端の位置決め装置とを備え、吸引装置が入口に血液を吸引するように構成され、位置決め装置が採取部、したがって入口を前記血管の長さに沿って移動するように構成される。
【0047】
したがって、カテーテルの一つの入口が血管の所定の長さに沿って移動する際に血液が入口に吸引される方法が提供される。
【0048】
このようにして、カテーテルに吸引された連続した血液試料は、血管の長さに沿った試料となる。
【0049】
カテーテルは、出口と流体連通した、入口からの連続した試料を採取するための試料採取器を備えることができる。
【0050】
すなわち、入口からの血流は出口で採取される際に分離されて、血管の長さに沿って離散した試料である離散試料となる。
【0051】
カテーテルが、血管に対して一定の位置で血管に挿入するレファレンスガイドを備え、レファレンスガイドにより、採取部が血液試料を採取するよう挿入され引き抜かれる軸方向管を画定し、参照スリーブと採取部とが、採取部が軸方向管に挿入されるときに採取部を参照スリーブに対して所定の位置に位置決めする位置合わせ部を備える。
【0052】
このようにして、カテーテルにより採取された血液試料を分析した結果を、レファレンスガイドを参照して正確に特定された位置を参照して考慮することができる。血液試料の検査を実施する際に、レファレンスガイドを定位置に残しておくことにより、臨床医が治療の位置を正確に決めることが容易になる。
【0053】
これに関し、カテーテルは、採取部の代わりに軸方向管に挿入する治療部をさらに備え、治療部が、レファレンスガイドの位置合わせ部を参照して、必要に応じて治療部を血管内に位置決めすることのできる位置合わせ部を有することが好ましい。
【0054】
したがって、血液試料の検査の結果を正確に参照して、血管の長さに沿って必要な治療の位置を決めることが容易になる。
【0055】
本発明は、また、前述したカテーテルにより採取された血液試料を分析するための装置を提供する。この装置は、前記血管の長さに沿った複数の位置から採取された血液を分析し、前記血管の長さに沿った濃度レベルのプロファイルを提供するように構成される。
【0056】
装置は、血管の長さに沿った心臓炎症マーカのプロファイルを提供するように構成されることが好ましい。
【0057】
装置は、さらに血液試料のマーカのバックグラウンドレベルをプロファイルから求めるように構成されることが好ましい。
【0058】
装置は、さらにプロファイルの上昇部から、血管の長さに沿った問題部位の位置を予測するように構成されることが好ましい。
【0059】
本発明によれば、前記カテーテルと前記装置とを含むカテーテルシステムがさらに提供される。
【0060】
本発明によれば、血管の長手方向軸に沿った直線路の複数の位置で全血の別個の試料を採取することにより、勾配を測定することができる。採取時または採取直後に、異なる位置から採取した試料を別個の離散存在物(entities)として保持する。採取された試料が体内から抽出され、例えば抗体ベースの方法を使用して分析されて別個の各試料の炎症マーカ濃度を判定する。採取カテーテルの長さに沿った位置に対してマーカ濃度をプロットすることができる。
【0061】
カテーテルは、血管の長さに沿って試料を採取するだけでなく、カテーテル外周で半径方向に試料を採取することもできる。この場合、濃度マーカを3次元の位置に対してプロットすることができる。
【0062】
プロットは、試料が採取された血管内の正確な位置について参照することができる。これは、X線透視検査により、または前述したように単にレファレンスガイドを参照することにより判定することができる。これにより、マーカの勾配が、血管の長さに沿った濃度変化率として示される。勾配を使用して従来技術よりも高い感度でマーカを判定することができ、また勾配により易損性プラークの位置を特定することができ、これにより、前述したようにステント配置等の局所的な治療が可能になる。
【0063】
カテーテルを、音響モダリティ(例えば、血管内超音波検査(IVUS))および/または磁気検出/画像モダリティ(例えば、光干渉断層法、血管内視鏡、サーモグラフィ、分光法、磁気共鳴画像法、電子ビームコンピュータ断層撮影)を組み込んだ他の診断および画像装置ならびにシステムと組み合わせて使用することができる。一つの装置、例えば端部にIVUSプローブを有する本発明のカテーテルの検出プラットフォームと組み合わせたハイブリッド装置を設けることができる。組み合わせた装置の利点は、臨床医が一つの手順でIVUS等の慣れた技術により血管を検査し、問題のある箇所で本発明のカテーテルにより血液を採取することができることである。
【0064】
カテーテルを血管内で使用することに関連して説明したが、体内の他の部位に挿入して使用してもよいことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1(a)】一般的な治療および診断方法を模式的に示す図である。
【図1(b)】一般的な治療および診断方法を模式的に示す図である。
【図1(c)】一般的な治療および診断方法を模式的に示す図である。
【図1(d)】一般的な治療および診断方法を模式的に示す図である。
【図1(e)】一般的な治療および診断方法を模式的に示す図である。
【図1(f)】一般的な治療および診断方法を模式的に示す図である。
【図1(g)】一般的な治療および診断方法を模式的に示す図である。
【図2(a)】カテーテルを示す図である。
【図2(b)】カテーテルを示す図である。
【図2(c)】カテーテルを示す図である。
【図2(d)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図2(e)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図3】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図4】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図5】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図6(a)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図6(b)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図7(a)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図7(b)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図8(a)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図8(b)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図9(a)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図9(b)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図10(a)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図10(b)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図11(a)】吸収平面部材を示す図である。
【図11(b)】吸収平面部材を示す図である。
【図12】本発明を具現化するカテーテルの開口を覆うための膜を示す図である。
【図13(a)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図13(b)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図13(c)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図14(a)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図14(b)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図14(c)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図15】位置決め装置と吸引装置とを有する、本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図16】試料採取器を有する、本発明を具現化するカテーテルを示す図である。 本発明は、添付図面を参照しながら例として挙げる以下の説明を読めばより明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本発明のカテーテルを使用してプロファイルデータを得る方法ならびに診断および治療方法について、模式的な図1(a)〜(g)を参照しながら説明する。
【0067】
図1に示すように、レファレンスガイド2が血管4に対して一定の位置で血管4内に挿入される。次に、図1(b)に示すように、採取部6がレファレンスガイド2の軸方向管8を通して挿入される。好ましい実施例では、採取部6が完全に挿入されたときに、レファレンスガイド2に対して所定の位置となるように、ある種の指標がつけられる。
【0068】
種々の異なる実施例について以下に説明するが、図1(b)に示すように、採取部は、レファレンスガイド2の位置によって決まる血管の長さ4に沿って複数の血液試料を採取するための複数の開口10を有する。後述するように、開口10により採取された血液試料は、プラーク12等の血管内の問題部位を識別するのに使用される。カテーテルは、血管壁に近接して(接触せずに)位置決めされるのみでよく、プラーク表面に近接した位置から生物学的および化学的存在物(entities)を採取する。採取部6は、図1(c)に示すようにレファレンスガイド2から後退させられて、図1(d)に模式的に示すように装置14に提供される。装置14は、血液試料を分析し、血管4の長さに沿った生化学的マーカ勾配16の一つまたは複数のマップを出力として提供する。図1(e)および(f)に示すように、次に、レファレンスガイド2からの信頼できる位置参照情報を使用し、かつ装置14からのマーカ勾配の情報を使用して、治療カテーテル18は、対象部位、例えば易損性プラークの正確な位置に配備される。
【0069】
図1(f)および(g)に示す例では、治療カテーテル18は、薬剤溶出ステント等の局所的薬剤送出体を配備する。薬剤溶出ステントの当業者は、これが永久的または一時的な生分解性装置であることを理解するだろう。
【0070】
本発明のカテーテルに、診断後の適切な位置に位置合わせ可能な一体型の治療部を設けることもできる。
【0071】
本発明は、バイオマーカが「病状に関する情報を与えることのできる生物存在物(entities)」と考えられる場合に、バイオマーカの観察に適用することができるだけでなく、これらの生物存在物(entities)によっても作られる化学存在物(entities)、例えば窒素酸化物の観察にも適用することができる。易損性プラークに関連するバイオマーカの例としては、CRP、PAPPA、ミエロペルオキシダーゼ、MMP9、sCD40L、PLGF、ネオプテリン、可溶性P-セレクチン、sVCAM-1、sICAM-1、可溶性CD40L、VCAM-1、ICAM-1、P-セレクチン、E-セレクチンがある。
【0072】
図2(a)、(b)、(c)は、本発明を理解するのに有用なカテーテル構成の一例を模式的に示す。
【0073】
採取部6は、軸方向に並んだ複数のポケット24が形成された試料部材22を備える。各ポケット24は、試料部材22の外面に、対応する開口26を形成している。
【0074】
採取部6は、試料部材22を収容するための軸方向通路(30)を画定する細長スリーブ28をさらに備える。これに関し、図2(a)、(b)、(c)は非常に模式化されており、細長スリーブ28の上流端(図の左側)が図を超えて延びている。採取部6は、図1(a)〜(g)を参照して説明したように配置することができる。試料部材を定位置に配置した状態で、矢印32で示すように、スリーブ28を試料部材22から引き抜くことができる。スリーブ28は貫通孔34を有する。図2(b)および(c)に示すようにスリーブ6を引き抜くことにより、貫通孔34が各開口26の上に順に移動し、各ポケット24にカテーテル外側から血液を充填することができるようになっている。
【0075】
本発明の対応する実施例が、図2(d)および(e)に示される。ここでは、複数の貫通孔35、特に、各開口26に対応する貫通孔35が設けられる。この場合、スリーブ28は、すべての貫通孔が試料部材22の開口26の設けられていない部分に隣り合って位置決めされるように、最初に位置決めされる。これに関し、貫通孔を、開口26から半径方向または軸方向にずらして位置決めすることができる。それからスリーブ28を移動させて、貫通孔を開口26に位置合わせすることができる。
【0076】
図3は、図2(a)、(b)、(c)に示したものと同様であるが、使用に先立ってポケット24が真空化されるカテーテルを示す。すなわち、ポケット24は、大気圧より低い内圧、好ましくは大気圧よりかなり低い内圧を有する。
【0077】
スリーブ28を移動させて、貫通孔34をポケット24の開口26に隣接させると、低圧空間は、カテーテル外側から血液を吸引する。これは、採取中の気泡の放出を防止し、ポケット内への血流を改善する。
【0078】
図4の構成では、ポケット24を予め真空化する変りに、すべてのポケット24が真空通路36に相互に接続されている。真空通路36は、吸引源に接続されて、いずれかの貫通孔34が一つのポケット24をカテーテル周囲の血液に連通したとき、血液は、減圧によりポケット24内に吸引されるようになっている。
【0079】
図5の構成では、ポケットと、好ましくは真空通路とに予め生理食塩水等の液体が充填されている。真空通路での吸引により、ポケットから液体が抜き出されて、カテーテル外側からの血液に置き換わる。液体38をこのように使用することで、採取中の気泡の放出を防止する助けとなる。
【0080】
前述したように、スリーブ28は、開口26とポケット24の各々に対応した複数の貫通孔34を備えることができる。図6(a)および(b)は、図3および図4をこのように修正した構成に基づく実施例を示す。図7(a)および(b)は、図5をこのように修正した構成に基づく実施例を示す。
【0081】
開口26を通して血液を吸引するために、真空通路38内のプランジャ40を使用することができる。図8(a)および(b)の実施例は、別個の真空通路38が各開口26に設けられる構成に基づく。図4および図5の実施例と同様に、外部真空源を使用して、開口26を通して血液を吸引することができる。しかし、図示した実施例では、各プランジャ40が各真空通路38に設けられる。プランジャ44を開口26から離して引き抜くことにより、図8(b)に示すように、血液試料が試料部材22に吸引される。別個のポケットが各開口26に設けられるが、図示した実施例では、真空通路38がポケットを効果的に形成する。本実施例では、ある種の適用ではスリーブがあることが望ましいが、必須ではないことを理解されたい。
【0082】
図9(a)および(b)の実施例では、別個のピストン42が各ポケット24に設けられる。ピストン42が別個に移動可能な構成が可能であるが、図示した実施例では、すべてのピストンが、軸方向に延びるアクチュエータ44に取り付けられる。アクチュエータ44をカテーテルの遠位端から、したがって開口26から軸方向に離すことにより、血液がポケット24に吸引される。採取前のポケット24を使用前に真空にして、ピストン42が移動できるようにする。あるいは、ピストン42によって出口流路または血管にまで送り出される液体をポケットに予め充填することができる。
【0083】
試料部材22に別個のポケットを形成する代わりに、試料部材22は、診断すべき血管の長さに沿って延びる一つの連続吸収部材を備えることができる。
【0084】
図10(a)および(b)は、試料部材22内に一つの連続する吸収部材46を備えた実施例を示す。図7(a)および(b)の実施例について説明したのと同様の方法で、貫通孔34を有するスリーブ28を、貫通孔34と開口26とが位置合わせされていない図10(a)に示す位置から、貫通孔34と開口26とが位置合わせされた図10(b)に示す位置へ移動することができる。貫通孔34と開口26とが位置合わせされると、血液が試料部材22に流入して、長さに沿った所定位置で吸収部材46に吸収される。続いて、試料をこれらの所定位置から採取することができる。また、吸収部材46を、蛍光タグ等を使用して外部装置のミクロン分解能で調べることができる。
【0085】
吸収部材46は、図11(b)に示すように広げることのできる平面部材を、図11(a)に示すように巻いて円筒状にして用いることができる。これにより、採取が血管の長さに沿って行われるだけでなく、血管周囲の異なる半径方向角度で行われるので、三次元情報をさらに提供することができる。図11(a)および(b)に示すように、問題部位12に隣接した試料の部分48は、問題部位12を示す濃度等の変化を含む。これに関し、吸収材を、蛍光タグ等を使用して外部装置のミクロン分解能で調べることができる。
【0086】
前述した実施例では、軸方向に並んだ開口およびポケットに関してのみ説明したが、カテーテル周囲に半径方向にさらに並んで延びていてもよいことを理解されたい。このようにして、三次元試料を採取することができる。
【0087】
図12に示すように、膜50を使用して開口26を覆うことができる。これは、ポケット24を使用しない場合にも適用することができる。膜は血漿を通すことができるが、血液の他の部分は通すことができない。このようにして、膜50は検査試料の有用な濃度を高くするため、必要な採取量を減らすことができる。
【0088】
図11(a)および(b)の実施例と同様の図13(a)、(b)、(c)に示す発明の一つの態様では、一つの連続吸収部材46が、スリーブ28を引き抜くことにより完全に露出されることが可能になる。これにより、吸収部材46に吸収された血液が、血管の長さに沿った複数の位置での試料となる。
【0089】
空気は通すが血液やバイオマーカは通さない膜により吸収部材から分離された吸引チューブを、吸収部材の中心に設けることもできる。これにより、血液が吸収材に吸収されるのを助け、かつ採取された試料が吸引チューブ内に溜まったり混合されたりすることを防止する。図4、5、6(b)、7(a)または7(b)に示すように、一つの吸引チューブを設けることができる。あるいは、図8(a)および(b)に示すように複数のチューブを設けることができ、または図9(a)および(b)に示すように別個の吸引チャンバを設けることができる。
【0090】
一つの開口または入口のみを使用して、血管の長さに沿った複数の位置で血液試料を採取することもできる。図14(a)、(b)、(c)は、遠位端に入口を形成する開口26と、入口から近位端に延びる軸方向流路を形成する真空通路38とを有する採取部を非常に模式的に示す。出口で軸方向流路に対して吸引を行いながら採取部6を血管4の長さに沿って引くことにより、連続した血液のスラグを公知の位置で採取することができる。軸方向流路を形成する真空通路38内に生じた血液のスラグは、血管の長さに沿った複数の位置での血液試料となる。図15は、これに必要な位置決め装置52と吸引装置54とを模式的に示す。
【0091】
軸方向通路を形成する真空通路38に含まれる血液を、複数の離散した試料溜めを有する試料採取器に分配することができる。
【0092】
これは、血液が連続して採取され、試料採取器58の試料溜め56に連続して分配される実施例に関連して図15に示される。これを位置決め装置と組み合わせて設けることが好ましいことは勿論である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル、そのカテーテルと共に使用する装置、ならびに該カテーテルおよび該装置を含むシステムに関する。詳細には、血管に挿入して血液試料を採取可能なカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、米国公開第2004/0102686号から、病的部位により生じるC反応性タンパク質やpHの変化等の異常マーカを識別することにより易損性プラークを識別する診断方法を実施することが知られている。米国公開第2004/0102686号は、第1および第2の検出器が血管を通して送られ、各検出器が異常マーカを検出するように選択される構成について記載している。両検出器は軸方向に離間して配置され、検出器によって測定された異常マーカの濃度差によって、検出器の少なくとも一方に近接して異常部位が存在することを示すようになっている。このような検出器の使用は、限定的でかなりの費用がかかる。検査ごとに特定の検出器を設けなければならず、これらの検出器をカテーテルに合わせることは非常に難しい。また種々のカテーテルを設ける場合、それぞれ別々の規制認可を受ける必要がある。さらに、検出器は、どのような検出用マーカでも血液量全体を通して希釈されるような間隔で配置されるため、マーカの濃度が通常のバックグラウンドレベルにより大きく影響を受け、マーカ源を正確に識別することがさらに難しくなる。
【0003】
米国特許第5,533,516号は、生体試料、例えば細胞試料を患者の体内深くから採取し、体外で試料を集めて、患者の治療を促進することについて記載している。体外に保持される近位部と、体内で位置決め可能な遠位部とを有する細長カテーテル状の採取プローブが設けられる。遠位部は開口を有する膜を備え、この開口は吸引力源に連通する空間に連通する。カテーテルは体内で位置決めされる。生体試料を膜で受けるように、膜を所望の位置に近接して配置し露出させることにより、試料が採取される。カテーテルを患者から抜き取り、体外で試料を集めて処置し、グラフト、ステント、カテーテル等の装置上に配置し、再び体内の所望の部位に導入する。
【0004】
英国公報1405556号は、内部に連通する複数の採取口を含む採取端を有する中空チューブと、チューブを囲み、チューブに対して摺動可能なスリーブとを備え、スリーブとチューブとが、スリーブが採取口の少なくとも一つを露出させる採取位置と、スリーブがチューブの前止めに係合してすべての採取口を覆う第2の位置との間で互いに往復移動可能である子宮試料採取器について記載している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述した問題を少なくとも減らしつつ、改良された診断手段を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、血管の長さに沿った濃度レベルのプロファイルを提供するように、血液試料を血管の長さに沿った複数の位置で採取する、データプロファイルを提供する方法、オプションとして、診断方法の一部としてのデータプロファイルを提供する方法を提供する。
【0007】
複数の離間した試料を一回で(例えば、複数のシース孔を通して)採取し、これらの試料を混合せずに分離したままにしておくことが可能である。別個の採取口を分析用の複数の試料チャンバ内に突き出すことができる。
【0008】
このようにして血液試料を採取すると、血液に種々の検査を行って、所望の検査に関するプロファイルを提供することができる。例えば、プロファイルは、C-反応性タンパク質、熱ショックタンパク質、水素イオン濃度(pH)、コレステロール、細胞、細胞表面マーカ等に関するものとすることができる。プロファイルにより、血液試料のどのようなバックグラウンドレベルも求めることができ、問題部位の位置を正確に判定することができる。
【0009】
本方法が、診断カテーテルの既知の位置を参照して、識別された問題部位を正確に治療することができるように、既知の位置で血管に挿入されるカテーテルを使用して血液試料を得るステップを含むことが好ましい。このようにすることで、臨床医が血管を診断して識別された問題部位を特定して治療することが、きわめて容易になる。
【0010】
本発明によれば、血管に挿入するカテーテルが設けられ、カテーテルは、血管の長さに沿った複数の位置で血液試料を採取するように構成された採取部を有する。
【0011】
カテーテルは、1回に採取される試料の間隔を維持することができる。
【0012】
このように、このタイプのカテーテルをいくつかの異なる検査に使用することができる。実際には、この種の検査を同時に行うこともできる。血液試料の検査の結果として、血管内の問題部位が識別できるように、血液中の濃度プロファイルを提供することができる。
【0013】
通常、カテーテルは、少なくとも血管の長さに沿った3箇所で血液試料を採取するように構成されるが、20箇所や100箇所以上とまではいかないにしても、少なくとも5箇所で血液試料を採取するように構成されることが好ましい。100themの長さにわたって試料を採取することが考えられる。カテーテルは、その長さに沿って1them間隔の位置、あるいはそれ未満の例えば0.5them間隔の位置で血液試料を採取することが想定される。カテーテルは、ナノリットルからマイクロリットルの量を採取することができる。
【0014】
血管内から複数の位置で試料を採取することにより、血清内の真のバックグラウンドレベルを(マーカ源の上流で)見出すことができる。さらに、マーカが希釈される前にマーカ源により近い位置で集められるため、マーカをより高い局所濃度で検出することができる。また、前述したように、マーカ源は、血管の長さに沿って採取された試料の数によって、より正確に配置することができる。
【0015】
マーカをより高い局所濃度で検出することができるため、マーカのレベルをより高い感度で判定することができる。特に、マーカのレベルがバックグラウンドレベルよりも高くなる。したがって、患者の炎症マーカのバックグラウンドレベルが高い場合でも、マーカを検出することができる。
【0016】
この構成は、将来の冠動脈イベントをより正確に予測して、心筋梗塞および/または脳梗塞の危険のある患者を監視して予防的に治療することを可能にする。また、危険の少ない患者をより正確に識別して、従来よりも費用の負担を少なくすることができる。
【0017】
血管内の易損性プラークの位置を正確に特定することで、ステント配置等の局所的な治療が可能になる。
【0018】
本発明の構成により、化学療法の経過や有効性を従来よりも詳細に監視することができる。さらに、カテーテルは通常の診査処置中に血管内の試料を採取することができるため、このプロセスは臨床処置と両立する。本発明のカテーテルは、製造が比較的容易で安価であるため、このプロセスは臨床予算とも両立する。
【0019】
カテーテルは、血管壁と接触したり、吸引によって血管壁を装置に引き寄せたりする必要がない。実際には、このようなことは好ましくない。内皮(血管内壁)を傷つけずに、壁に近接した血液や生体試料を採取することが好ましい。
【0020】
採取部が軸方向に細長の試料部材を備え、試料部材は、前記血管の長さに沿って間隔をおいてカテーテル外側から血液を受けるための軸方向に並んだ複数の開口を有することが好ましい。
【0021】
このようにして、各開口が血管の長さに沿った異なる位置で血液試料を採取する。開口は、試料を順次または同時に採取するように構成される。
【0022】
採取部が、試料部材と同軸で試料部材を収容するための軸方向通路を画定する細長スリーブを備え、試料部材に沿って軸方向にスリーブが相対移動することにより開口が露出されて、前記血管の長さに沿った複数の試料を採取するようになっていることが好ましい。
【0023】
このようにして、カテーテルが所望の位置に位置決めされるまで、開口をスリーブによって閉鎖しておくことができる。このことは、血液試料を別個の開口に積極的に吸引する一部の実施例では非常に有利であるが、必須ではない。
【0024】
スリーブは、すべての開口がカテーテル外側の血液に同時に触れるように位置決めされた複数の貫通孔を有することができる。
【0025】
すなわち、貫通孔は開口の列に対応した列になって配置される。初めは、貫通孔は開口と位置合わせされていないが、試料部材に対してスリーブが移動することにより、貫通孔が開口に位置合わせされる。
【0026】
採取部は、開口から血液を受けるための複数のポケットを備えることが好ましい。
【0027】
このようにして、ポケットは、各開口に貯蔵チャンバを提供する。
【0028】
前記ポケットの各々が少なくとも部分的に真空化されて、スリーブによる露出時に、ポケットがカテーテル外側から血液を吸引することが好ましい。
【0029】
スリーブは、このように開口とポケットとを封止して、カテーテルが血管内に位置決めされる際にポケット内を(大気圧に対して)低圧に維持する。スリーブが移動してポケットを露出させると、低圧によりカテーテル外側から血液を吸引する。
【0030】
あるいは、採取部材が、各ポケットを接続する真空通路を備え、真空通路により各ポケットに対する吸引が可能になるようにしてもよい。
【0031】
このようにして、真空通路を外部低圧源に接続することにより、血液試料を必要に応じて開口を通して吸引することができる。
【0032】
ポケットと真空通路とに、生理食塩水等の液体が予め充填され、この液体をカテーテルから抜き出して、カテーテル外側からポケット内に血液を吸引することができるようにしてもよい。
【0033】
このようにポケットと真空通路に予め液体が充填されていることにより、ポケットを真空にするのと同様に、血流中への気泡の放出を減らすことができる。
【0034】
あるいは、採取部は、各開口に対する別個の吸引が可能になるように、各開口に接続された複数の真空通路を備えていてもよい。
【0035】
このようにして、各開口からの採取を別個に制御することができる。
【0036】
さらに、カテーテルは、カテーテル外側から開口を通して血液を吸引することができるように開口から離れることのできるプランジャを、前記真空通路または各真空通路内に備えていてもよい。
【0037】
真空通路内でのプランジャの移動により、血液が各開口に流入することを理解されたい。開口が別個の真空通路とプランジャとを備えている場合、これらの開口によって採取された試料を別個に制御することができる。
【0038】
採取部は、ポケット内に複数のピストンをさらに備え、ピストンが開口から離れることによりポケット内に血液を吸引する。
【0039】
ピストンは前述したプランジャと同様に作用するが、真空通路内ではなくポケット内に設けられる。
【0040】
ピストンがポケット内に血液を吸引するよう軸方向に移動可能であり、採取部が、すべてのピストンが取り付けられた、軸方向に延びるアクチュエータをさらに備え、アクチュエータによりピストンが移動可能であることが好ましい。
【0041】
これにより、すべてのポケットのピストンを同時に作動させる便利な構成が提供される。
【0042】
開口を覆う膜層を設けることができ、膜層は血漿を開口に通すことができる。
【0043】
このようにして、カテーテル外側の血小板等を残したまま血漿を採取することができる。これにより、検査試料の濃度が高くなり、採取量を減らすことができる。
【0044】
前述したように、採取部は、前記血管の長さに沿った複数の離散した試料を採取するように構成されることが好ましい。診断用化学プロセスの多くは、約50μlの試料を必要とし、したがって、多くの実施例では、離散した各試料がほぼこの値となる。しかし、離散した試料は0.1μl〜100μl、好ましくは20μlと50μlの間とすることができる。
【0045】
採取部は、連続吸収材を含む軸方向に細長の試料部材を備えることができる。この試料部材を、軸方向に並んだ開口と組み合わせて使用して、各開口が同一の連続吸収材の各部に各試料を供給するようにすることができる。スリーブをこれと組み合わせて使用してもよい。しかし、代わりに、連続吸収材をその長さに沿って連続して血液を採取するように設けることもできる。また、スリーブを設けて、カテーテル外側の血液に対する吸収材の露出を制御することができる。試料部材を直接分析して、装置の長さに沿った試料の差を測定することができる。
【0046】
カテーテルは、採取部の遠位端の入口と採取部の近位端の出口とを備えて、採取部が遠位端から近位端へ延びる軸方向流路を画定し、さらに出口に接続する吸引装置と近位端の位置決め装置とを備え、吸引装置が入口に血液を吸引するように構成され、位置決め装置が採取部、したがって入口を前記血管の長さに沿って移動するように構成される。
【0047】
したがって、カテーテルの一つの入口が血管の所定の長さに沿って移動する際に血液が入口に吸引される方法が提供される。
【0048】
このようにして、カテーテルに吸引された連続した血液試料は、血管の長さに沿った試料となる。
【0049】
カテーテルは、出口と流体連通した、入口からの連続した試料を採取するための試料採取器を備えることができる。
【0050】
すなわち、入口からの血流は出口で採取される際に分離されて、血管の長さに沿って離散した試料である離散試料となる。
【0051】
カテーテルが、血管に対して一定の位置で血管に挿入するレファレンスガイドを備え、レファレンスガイドにより、採取部が血液試料を採取するよう挿入され引き抜かれる軸方向管を画定し、参照スリーブと採取部とが、採取部が軸方向管に挿入されるときに採取部を参照スリーブに対して所定の位置に位置決めする位置合わせ部を備える。
【0052】
このようにして、カテーテルにより採取された血液試料を分析した結果を、レファレンスガイドを参照して正確に特定された位置を参照して考慮することができる。血液試料の検査を実施する際に、レファレンスガイドを定位置に残しておくことにより、臨床医が治療の位置を正確に決めることが容易になる。
【0053】
これに関し、カテーテルは、採取部の代わりに軸方向管に挿入する治療部をさらに備え、治療部が、レファレンスガイドの位置合わせ部を参照して、必要に応じて治療部を血管内に位置決めすることのできる位置合わせ部を有することが好ましい。
【0054】
したがって、血液試料の検査の結果を正確に参照して、血管の長さに沿って必要な治療の位置を決めることが容易になる。
【0055】
本発明は、また、前述したカテーテルにより採取された血液試料を分析するための装置を提供する。この装置は、前記血管の長さに沿った複数の位置から採取された血液を分析し、前記血管の長さに沿った濃度レベルのプロファイルを提供するように構成される。
【0056】
装置は、血管の長さに沿った心臓炎症マーカのプロファイルを提供するように構成されることが好ましい。
【0057】
装置は、さらに血液試料のマーカのバックグラウンドレベルをプロファイルから求めるように構成されることが好ましい。
【0058】
装置は、さらにプロファイルの上昇部から、血管の長さに沿った問題部位の位置を予測するように構成されることが好ましい。
【0059】
本発明によれば、前記カテーテルと前記装置とを含むカテーテルシステムがさらに提供される。
【0060】
本発明によれば、血管の長手方向軸に沿った直線路の複数の位置で全血の別個の試料を採取することにより、勾配を測定することができる。採取時または採取直後に、異なる位置から採取した試料を別個の離散存在物(entities)として保持する。採取された試料が体内から抽出され、例えば抗体ベースの方法を使用して分析されて別個の各試料の炎症マーカ濃度を判定する。採取カテーテルの長さに沿った位置に対してマーカ濃度をプロットすることができる。
【0061】
カテーテルは、血管の長さに沿って試料を採取するだけでなく、カテーテル外周で半径方向に試料を採取することもできる。この場合、濃度マーカを3次元の位置に対してプロットすることができる。
【0062】
プロットは、試料が採取された血管内の正確な位置について参照することができる。これは、X線透視検査により、または前述したように単にレファレンスガイドを参照することにより判定することができる。これにより、マーカの勾配が、血管の長さに沿った濃度変化率として示される。勾配を使用して従来技術よりも高い感度でマーカを判定することができ、また勾配により易損性プラークの位置を特定することができ、これにより、前述したようにステント配置等の局所的な治療が可能になる。
【0063】
カテーテルを、音響モダリティ(例えば、血管内超音波検査(IVUS))および/または磁気検出/画像モダリティ(例えば、光干渉断層法、血管内視鏡、サーモグラフィ、分光法、磁気共鳴画像法、電子ビームコンピュータ断層撮影)を組み込んだ他の診断および画像装置ならびにシステムと組み合わせて使用することができる。一つの装置、例えば端部にIVUSプローブを有する本発明のカテーテルの検出プラットフォームと組み合わせたハイブリッド装置を設けることができる。組み合わせた装置の利点は、臨床医が一つの手順でIVUS等の慣れた技術により血管を検査し、問題のある箇所で本発明のカテーテルにより血液を採取することができることである。
【0064】
カテーテルを血管内で使用することに関連して説明したが、体内の他の部位に挿入して使用してもよいことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1(a)】一般的な治療および診断方法を模式的に示す図である。
【図1(b)】一般的な治療および診断方法を模式的に示す図である。
【図1(c)】一般的な治療および診断方法を模式的に示す図である。
【図1(d)】一般的な治療および診断方法を模式的に示す図である。
【図1(e)】一般的な治療および診断方法を模式的に示す図である。
【図1(f)】一般的な治療および診断方法を模式的に示す図である。
【図1(g)】一般的な治療および診断方法を模式的に示す図である。
【図2(a)】カテーテルを示す図である。
【図2(b)】カテーテルを示す図である。
【図2(c)】カテーテルを示す図である。
【図2(d)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図2(e)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図3】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図4】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図5】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図6(a)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図6(b)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図7(a)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図7(b)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図8(a)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図8(b)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図9(a)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図9(b)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図10(a)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図10(b)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図11(a)】吸収平面部材を示す図である。
【図11(b)】吸収平面部材を示す図である。
【図12】本発明を具現化するカテーテルの開口を覆うための膜を示す図である。
【図13(a)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図13(b)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図13(c)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図14(a)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図14(b)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図14(c)】本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図15】位置決め装置と吸引装置とを有する、本発明を具現化するカテーテルを示す図である。
【図16】試料採取器を有する、本発明を具現化するカテーテルを示す図である。 本発明は、添付図面を参照しながら例として挙げる以下の説明を読めばより明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本発明のカテーテルを使用してプロファイルデータを得る方法ならびに診断および治療方法について、模式的な図1(a)〜(g)を参照しながら説明する。
【0067】
図1に示すように、レファレンスガイド2が血管4に対して一定の位置で血管4内に挿入される。次に、図1(b)に示すように、採取部6がレファレンスガイド2の軸方向管8を通して挿入される。好ましい実施例では、採取部6が完全に挿入されたときに、レファレンスガイド2に対して所定の位置となるように、ある種の指標がつけられる。
【0068】
種々の異なる実施例について以下に説明するが、図1(b)に示すように、採取部は、レファレンスガイド2の位置によって決まる血管の長さ4に沿って複数の血液試料を採取するための複数の開口10を有する。後述するように、開口10により採取された血液試料は、プラーク12等の血管内の問題部位を識別するのに使用される。カテーテルは、血管壁に近接して(接触せずに)位置決めされるのみでよく、プラーク表面に近接した位置から生物学的および化学的存在物(entities)を採取する。採取部6は、図1(c)に示すようにレファレンスガイド2から後退させられて、図1(d)に模式的に示すように装置14に提供される。装置14は、血液試料を分析し、血管4の長さに沿った生化学的マーカ勾配16の一つまたは複数のマップを出力として提供する。図1(e)および(f)に示すように、次に、レファレンスガイド2からの信頼できる位置参照情報を使用し、かつ装置14からのマーカ勾配の情報を使用して、治療カテーテル18は、対象部位、例えば易損性プラークの正確な位置に配備される。
【0069】
図1(f)および(g)に示す例では、治療カテーテル18は、薬剤溶出ステント等の局所的薬剤送出体を配備する。薬剤溶出ステントの当業者は、これが永久的または一時的な生分解性装置であることを理解するだろう。
【0070】
本発明のカテーテルに、診断後の適切な位置に位置合わせ可能な一体型の治療部を設けることもできる。
【0071】
本発明は、バイオマーカが「病状に関する情報を与えることのできる生物存在物(entities)」と考えられる場合に、バイオマーカの観察に適用することができるだけでなく、これらの生物存在物(entities)によっても作られる化学存在物(entities)、例えば窒素酸化物の観察にも適用することができる。易損性プラークに関連するバイオマーカの例としては、CRP、PAPPA、ミエロペルオキシダーゼ、MMP9、sCD40L、PLGF、ネオプテリン、可溶性P-セレクチン、sVCAM-1、sICAM-1、可溶性CD40L、VCAM-1、ICAM-1、P-セレクチン、E-セレクチンがある。
【0072】
図2(a)、(b)、(c)は、本発明を理解するのに有用なカテーテル構成の一例を模式的に示す。
【0073】
採取部6は、軸方向に並んだ複数のポケット24が形成された試料部材22を備える。各ポケット24は、試料部材22の外面に、対応する開口26を形成している。
【0074】
採取部6は、試料部材22を収容するための軸方向通路(30)を画定する細長スリーブ28をさらに備える。これに関し、図2(a)、(b)、(c)は非常に模式化されており、細長スリーブ28の上流端(図の左側)が図を超えて延びている。採取部6は、図1(a)〜(g)を参照して説明したように配置することができる。試料部材を定位置に配置した状態で、矢印32で示すように、スリーブ28を試料部材22から引き抜くことができる。スリーブ28は貫通孔34を有する。図2(b)および(c)に示すようにスリーブ6を引き抜くことにより、貫通孔34が各開口26の上に順に移動し、各ポケット24にカテーテル外側から血液を充填することができるようになっている。
【0075】
本発明の対応する実施例が、図2(d)および(e)に示される。ここでは、複数の貫通孔35、特に、各開口26に対応する貫通孔35が設けられる。この場合、スリーブ28は、すべての貫通孔が試料部材22の開口26の設けられていない部分に隣り合って位置決めされるように、最初に位置決めされる。これに関し、貫通孔を、開口26から半径方向または軸方向にずらして位置決めすることができる。それからスリーブ28を移動させて、貫通孔を開口26に位置合わせすることができる。
【0076】
図3は、図2(a)、(b)、(c)に示したものと同様であるが、使用に先立ってポケット24が真空化されるカテーテルを示す。すなわち、ポケット24は、大気圧より低い内圧、好ましくは大気圧よりかなり低い内圧を有する。
【0077】
スリーブ28を移動させて、貫通孔34をポケット24の開口26に隣接させると、低圧空間は、カテーテル外側から血液を吸引する。これは、採取中の気泡の放出を防止し、ポケット内への血流を改善する。
【0078】
図4の構成では、ポケット24を予め真空化する変りに、すべてのポケット24が真空通路36に相互に接続されている。真空通路36は、吸引源に接続されて、いずれかの貫通孔34が一つのポケット24をカテーテル周囲の血液に連通したとき、血液は、減圧によりポケット24内に吸引されるようになっている。
【0079】
図5の構成では、ポケットと、好ましくは真空通路とに予め生理食塩水等の液体が充填されている。真空通路での吸引により、ポケットから液体が抜き出されて、カテーテル外側からの血液に置き換わる。液体38をこのように使用することで、採取中の気泡の放出を防止する助けとなる。
【0080】
前述したように、スリーブ28は、開口26とポケット24の各々に対応した複数の貫通孔34を備えることができる。図6(a)および(b)は、図3および図4をこのように修正した構成に基づく実施例を示す。図7(a)および(b)は、図5をこのように修正した構成に基づく実施例を示す。
【0081】
開口26を通して血液を吸引するために、真空通路38内のプランジャ40を使用することができる。図8(a)および(b)の実施例は、別個の真空通路38が各開口26に設けられる構成に基づく。図4および図5の実施例と同様に、外部真空源を使用して、開口26を通して血液を吸引することができる。しかし、図示した実施例では、各プランジャ40が各真空通路38に設けられる。プランジャ44を開口26から離して引き抜くことにより、図8(b)に示すように、血液試料が試料部材22に吸引される。別個のポケットが各開口26に設けられるが、図示した実施例では、真空通路38がポケットを効果的に形成する。本実施例では、ある種の適用ではスリーブがあることが望ましいが、必須ではないことを理解されたい。
【0082】
図9(a)および(b)の実施例では、別個のピストン42が各ポケット24に設けられる。ピストン42が別個に移動可能な構成が可能であるが、図示した実施例では、すべてのピストンが、軸方向に延びるアクチュエータ44に取り付けられる。アクチュエータ44をカテーテルの遠位端から、したがって開口26から軸方向に離すことにより、血液がポケット24に吸引される。採取前のポケット24を使用前に真空にして、ピストン42が移動できるようにする。あるいは、ピストン42によって出口流路または血管にまで送り出される液体をポケットに予め充填することができる。
【0083】
試料部材22に別個のポケットを形成する代わりに、試料部材22は、診断すべき血管の長さに沿って延びる一つの連続吸収部材を備えることができる。
【0084】
図10(a)および(b)は、試料部材22内に一つの連続する吸収部材46を備えた実施例を示す。図7(a)および(b)の実施例について説明したのと同様の方法で、貫通孔34を有するスリーブ28を、貫通孔34と開口26とが位置合わせされていない図10(a)に示す位置から、貫通孔34と開口26とが位置合わせされた図10(b)に示す位置へ移動することができる。貫通孔34と開口26とが位置合わせされると、血液が試料部材22に流入して、長さに沿った所定位置で吸収部材46に吸収される。続いて、試料をこれらの所定位置から採取することができる。また、吸収部材46を、蛍光タグ等を使用して外部装置のミクロン分解能で調べることができる。
【0085】
吸収部材46は、図11(b)に示すように広げることのできる平面部材を、図11(a)に示すように巻いて円筒状にして用いることができる。これにより、採取が血管の長さに沿って行われるだけでなく、血管周囲の異なる半径方向角度で行われるので、三次元情報をさらに提供することができる。図11(a)および(b)に示すように、問題部位12に隣接した試料の部分48は、問題部位12を示す濃度等の変化を含む。これに関し、吸収材を、蛍光タグ等を使用して外部装置のミクロン分解能で調べることができる。
【0086】
前述した実施例では、軸方向に並んだ開口およびポケットに関してのみ説明したが、カテーテル周囲に半径方向にさらに並んで延びていてもよいことを理解されたい。このようにして、三次元試料を採取することができる。
【0087】
図12に示すように、膜50を使用して開口26を覆うことができる。これは、ポケット24を使用しない場合にも適用することができる。膜は血漿を通すことができるが、血液の他の部分は通すことができない。このようにして、膜50は検査試料の有用な濃度を高くするため、必要な採取量を減らすことができる。
【0088】
図11(a)および(b)の実施例と同様の図13(a)、(b)、(c)に示す発明の一つの態様では、一つの連続吸収部材46が、スリーブ28を引き抜くことにより完全に露出されることが可能になる。これにより、吸収部材46に吸収された血液が、血管の長さに沿った複数の位置での試料となる。
【0089】
空気は通すが血液やバイオマーカは通さない膜により吸収部材から分離された吸引チューブを、吸収部材の中心に設けることもできる。これにより、血液が吸収材に吸収されるのを助け、かつ採取された試料が吸引チューブ内に溜まったり混合されたりすることを防止する。図4、5、6(b)、7(a)または7(b)に示すように、一つの吸引チューブを設けることができる。あるいは、図8(a)および(b)に示すように複数のチューブを設けることができ、または図9(a)および(b)に示すように別個の吸引チャンバを設けることができる。
【0090】
一つの開口または入口のみを使用して、血管の長さに沿った複数の位置で血液試料を採取することもできる。図14(a)、(b)、(c)は、遠位端に入口を形成する開口26と、入口から近位端に延びる軸方向流路を形成する真空通路38とを有する採取部を非常に模式的に示す。出口で軸方向流路に対して吸引を行いながら採取部6を血管4の長さに沿って引くことにより、連続した血液のスラグを公知の位置で採取することができる。軸方向流路を形成する真空通路38内に生じた血液のスラグは、血管の長さに沿った複数の位置での血液試料となる。図15は、これに必要な位置決め装置52と吸引装置54とを模式的に示す。
【0091】
軸方向通路を形成する真空通路38に含まれる血液を、複数の離散した試料溜めを有する試料採取器に分配することができる。
【0092】
これは、血液が連続して採取され、試料採取器58の試料溜め56に連続して分配される実施例に関連して図15に示される。これを位置決め装置と組み合わせて設けることが好ましいことは勿論である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管に挿入するカテーテルであって、血管のある長さに沿った複数の位置で血液試料を採取するように構成された採取部を有するカテーテル。
【請求項2】
前記採取部が、複数の離散した血液試料を採取するように構成され、かつ軸方向に細長の試料部材を備え、前記試料部材が、前記血管の長さに沿って間隔をおいて前記カテーテル外側から血液を受けるための軸方向に並んだ複数の開口を有する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記採取部が、前記試料部材と同軸で前記試料部材を収容するための軸方向通路を画定する細長スリーブを備え、前記スリーブが前記試料部材から軸方向に引き抜かれることにより開口が露出されて、前記血管の長さに沿った複数の試料を採取するようになっている、請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記スリーブが、すべての開口が前記カテーテル外側の血液に同時に触れるように位置決めされた複数の貫通孔を有する、請求項2に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記採取部は、前記開口から血液を受けるための複数のポケットを備える、請求項2、3または4に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記ポケットの各々は、少なくとも部分的に真空化されて、前記スリーブにより露出された時に、前記ポケットが前記カテーテル外側から血液を吸引する、請求項5に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記採取部材は、前記ポケットの各々を接続する真空通路をさらに備え、該真空通路により前記ポケットの各々が吸引される、請求項5に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記ポケットと前記真空通路とに液体が予め充填され、前記液体を前記カテーテルから抜き出して、前記カテーテル外側から前記ポケット内に血液を吸引することができる、請求項7に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記採取部は、各開口に対する別個の吸引が可能になるように、各開口に接続された複数の真空通路を備える、請求項2から5のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記カテーテル外側から前記開口を通して血液を吸引することができるように前記開口から離れることのできるプランジャを、各真空通路内にさらに備えた、請求項9に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記採取部が、前記ポケット内に複数のピストンをさらに備え、前記ピストンが開口から離れることにより前記ポケット内に血液を吸引する、請求項5に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記ピストンは前記ポケット内に血液を吸引するよう軸方向に移動可能であり、前記採取部が、すべてのピストンが取り付けられた、軸方向に延びるアクチュエータをさらに備え、前記アクチュエータにより前記ピストンが移動可能である、請求項11に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記ポケットを覆う膜層をさらに備え、前記膜層が血漿をポケット内に通すことができる、請求項2から12のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記採取部は、前記血管の前記長さに沿って離散した複数の試料を採取するように構成されている、前記請求項のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項15】
離散した各試料は、10μlから50μlのものである、請求項14に記載のカテーテル。
【請求項16】
前記採取部は、連続する吸収材を含む軸方向に細長の試料部材を備える、請求項2から13のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項17】
前記採取口の遠位端の入口と前記採取部の近位端の出口とをさらに備え、前記採取部が前記遠位端から前記近位端へ延びる軸方向流路を画定し、
前記出口に接続する吸引装置と前記近位端の位置決め装置とをさらに備え、前記吸引装置が前記入口に血液を吸引するように構成され、前記位置決め装置が前記採取部、したがって前記入口を前記血管の長さに沿って移動するように構成される、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項18】
前記出口と流体連通した、前記入口からの連続した試料を採取するための試料採取器を備える、請求項17に記載のカテーテル。
【請求項19】
前記カテーテルは、血管に対して一定の位置で該血管に挿入されるレファレンスガイドであって、前記採取部が血液試料を採取するよう挿入されかつ前記採取部が引き抜かれる軸方向管を画定する前記レファレンスガイドを含み、
前記レファレンススリーブと前記採取部は、前記採取部が軸方向管に挿入されるときに該採取部を該レファレンススリーブに対して所定の位置に位置決めする目盛り部をそれぞれ備える、前記請求項のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項20】
前記採取部の代わりに前記軸方向管に挿入される治療部をさらに備え、該治療部は、前記レファレンスガイドの前記目盛り部を参照して、前記治療部を前記血管内に所望のとおりに位置決めすることのできる前記目盛り部を有する、請求項19に記載のカテーテル。
【請求項21】
前記請求項のいずれかに記載のカテーテルにより採取された血液試料を分析するための装置であって、前記血管の長さに沿った複数の位置から採取された血液を分析し、前記血管の長さに沿った濃度レベルのプロファイルを提供するように構成される装置。
【請求項22】
前記血管の長さに沿った心臓炎症マーカのプロファイルを提供するようにさらに構成される、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記血液試料の前記マーカのバックグラウンドレベルを前記プロファイルから求めるように構成される、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記プロファイルの上昇部から、前記血管の長さに沿った問題部位の位置を予測するようにさらに構成される、請求項22または23に記載の装置。
【請求項25】
請求項1から20のいずれか一項に記載のカテーテルと、請求項21から24のいずれか一項に記載の装置とを含むカテーテルシステム。
【請求項26】
血管の長さに沿った濃度レベルのプロファイルを提供するように、複数の血液試料を血管の長さに沿った複数の位置で採取するカテーテルを使用するステップを含む、血管の長さをプロファイリングする方法。
【請求項27】
スリーブとスリーブに沿って挿入可能な採取部とを有するカテーテルを使用する方法であって、
前記複数の血液試料を前記スリーブにより参照位置で採取するステップと、
前記スリーブの前記参照位置を参照して位置を特定された血管の一部を治療するステップとを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
治療が必要な血管の部位の位置を特定するように前記複数の血液試料を分析するステップをさらに含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記分析するステップは、前記複数の血液試料で検出されるマーカのバックグラウンドレベルを求めるステップを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項21から24のいずれか一項に記載の装置等の分析用装置に、前記複数の血液試料を別個に供給するステップを含む、請求項26から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記複数の試料がほぼ同時に得られる、請求項26から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
請求項1から20のいずれか一項に記載のカテーテルを使用する、請求項26から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
血管に挿入するカテーテルであって、血管のある長さに沿った複数の位置で血液試料を採取するように構成された採取部を有するカテーテル。
【請求項2】
前記採取部が、複数の離散した血液試料を採取するように構成され、かつ軸方向に細長の試料部材を備え、前記試料部材が、前記血管の長さに沿って間隔をおいて前記カテーテル外側から血液を受けるための軸方向に並んだ複数の開口を有する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記採取部が、前記試料部材と同軸で前記試料部材を収容するための軸方向通路を画定する細長スリーブを備え、前記スリーブが前記試料部材から軸方向に引き抜かれることにより開口が露出されて、前記血管の長さに沿った複数の試料を採取するようになっている、請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記スリーブが、すべての開口が前記カテーテル外側の血液に同時に触れるように位置決めされた複数の貫通孔を有する、請求項2に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記採取部は、前記開口から血液を受けるための複数のポケットを備える、請求項2、3または4に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記ポケットの各々は、少なくとも部分的に真空化されて、前記スリーブにより露出された時に、前記ポケットが前記カテーテル外側から血液を吸引する、請求項5に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記採取部材は、前記ポケットの各々を接続する真空通路をさらに備え、該真空通路により前記ポケットの各々が吸引される、請求項5に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記ポケットと前記真空通路とに液体が予め充填され、前記液体を前記カテーテルから抜き出して、前記カテーテル外側から前記ポケット内に血液を吸引することができる、請求項7に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記採取部は、各開口に対する別個の吸引が可能になるように、各開口に接続された複数の真空通路を備える、請求項2から5のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記カテーテル外側から前記開口を通して血液を吸引することができるように前記開口から離れることのできるプランジャを、各真空通路内にさらに備えた、請求項9に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記採取部が、前記ポケット内に複数のピストンをさらに備え、前記ピストンが開口から離れることにより前記ポケット内に血液を吸引する、請求項5に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記ピストンは前記ポケット内に血液を吸引するよう軸方向に移動可能であり、前記採取部が、すべてのピストンが取り付けられた、軸方向に延びるアクチュエータをさらに備え、前記アクチュエータにより前記ピストンが移動可能である、請求項11に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記ポケットを覆う膜層をさらに備え、前記膜層が血漿をポケット内に通すことができる、請求項2から12のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記採取部は、前記血管の前記長さに沿って離散した複数の試料を採取するように構成されている、前記請求項のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項15】
離散した各試料は、10μlから50μlのものである、請求項14に記載のカテーテル。
【請求項16】
前記採取部は、連続する吸収材を含む軸方向に細長の試料部材を備える、請求項2から13のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項17】
前記採取口の遠位端の入口と前記採取部の近位端の出口とをさらに備え、前記採取部が前記遠位端から前記近位端へ延びる軸方向流路を画定し、
前記出口に接続する吸引装置と前記近位端の位置決め装置とをさらに備え、前記吸引装置が前記入口に血液を吸引するように構成され、前記位置決め装置が前記採取部、したがって前記入口を前記血管の長さに沿って移動するように構成される、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項18】
前記出口と流体連通した、前記入口からの連続した試料を採取するための試料採取器を備える、請求項17に記載のカテーテル。
【請求項19】
前記カテーテルは、血管に対して一定の位置で該血管に挿入されるレファレンスガイドであって、前記採取部が血液試料を採取するよう挿入されかつ前記採取部が引き抜かれる軸方向管を画定する前記レファレンスガイドを含み、
前記レファレンススリーブと前記採取部は、前記採取部が軸方向管に挿入されるときに該採取部を該レファレンススリーブに対して所定の位置に位置決めする目盛り部をそれぞれ備える、前記請求項のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項20】
前記採取部の代わりに前記軸方向管に挿入される治療部をさらに備え、該治療部は、前記レファレンスガイドの前記目盛り部を参照して、前記治療部を前記血管内に所望のとおりに位置決めすることのできる前記目盛り部を有する、請求項19に記載のカテーテル。
【請求項21】
前記請求項のいずれかに記載のカテーテルにより採取された血液試料を分析するための装置であって、前記血管の長さに沿った複数の位置から採取された血液を分析し、前記血管の長さに沿った濃度レベルのプロファイルを提供するように構成される装置。
【請求項22】
前記血管の長さに沿った心臓炎症マーカのプロファイルを提供するようにさらに構成される、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記血液試料の前記マーカのバックグラウンドレベルを前記プロファイルから求めるように構成される、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記プロファイルの上昇部から、前記血管の長さに沿った問題部位の位置を予測するようにさらに構成される、請求項22または23に記載の装置。
【請求項25】
請求項1から20のいずれか一項に記載のカテーテルと、請求項21から24のいずれか一項に記載の装置とを含むカテーテルシステム。
【請求項26】
血管の長さに沿った濃度レベルのプロファイルを提供するように、複数の血液試料を血管の長さに沿った複数の位置で採取するカテーテルを使用するステップを含む、血管の長さをプロファイリングする方法。
【請求項27】
スリーブとスリーブに沿って挿入可能な採取部とを有するカテーテルを使用する方法であって、
前記複数の血液試料を前記スリーブにより参照位置で採取するステップと、
前記スリーブの前記参照位置を参照して位置を特定された血管の一部を治療するステップとを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
治療が必要な血管の部位の位置を特定するように前記複数の血液試料を分析するステップをさらに含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記分析するステップは、前記複数の血液試料で検出されるマーカのバックグラウンドレベルを求めるステップを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項21から24のいずれか一項に記載の装置等の分析用装置に、前記複数の血液試料を別個に供給するステップを含む、請求項26から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記複数の試料がほぼ同時に得られる、請求項26から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
請求項1から20のいずれか一項に記載のカテーテルを使用する、請求項26から31のいずれか一項に記載の方法。
【図1(a)】
【図1(b)】
【図1(c)】
【図1(d)】
【図1(e)】
【図1(f)】
【図1(g)】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図2(c)】
【図2(d)】
【図2(e)】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図10(a)】
【図10(b)】
【図11(a)】
【図11(b)】
【図12】
【図13(a)】
【図13(b)】
【図13(c)】
【図14(a)】
【図14(b)】
【図14(c)】
【図15】
【図16】
【図1(b)】
【図1(c)】
【図1(d)】
【図1(e)】
【図1(f)】
【図1(g)】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図2(c)】
【図2(d)】
【図2(e)】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図10(a)】
【図10(b)】
【図11(a)】
【図11(b)】
【図12】
【図13(a)】
【図13(b)】
【図13(c)】
【図14(a)】
【図14(b)】
【図14(c)】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−63287(P2013−63287A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−262331(P2012−262331)
【出願日】平成24年11月30日(2012.11.30)
【分割の表示】特願2008−512921(P2008−512921)の分割
【原出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(508150935)プラークテック リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月30日(2012.11.30)
【分割の表示】特願2008−512921(P2008−512921)の分割
【原出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(508150935)プラークテック リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
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