説明

血液浄化システム

【課題】血液浄化手段の稼動状況に応じて当該血液浄化手段又は供給手段の動作を行わせることができる血液浄化システムを提供する。
【解決手段】患者に血液浄化治療を施すためのダイアライザ5が取り付けられる複数の監視装置1と、該監視装置1のそれぞれに透析液を供給可能な透析液供給装置2と、患者の治療スケジュールを入力及び記憶可能な中央監視システムPとを具備した血液浄化システムにおいて、監視装置1又は透析液供給装置2に対して中央監視システムPから治療スケジュールを送信し得るものとされ、当該治療スケジュールに基づき監視装置1又は透析液供給装置2が動作し得るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に血液浄化治療を施すための血液浄化器が取り付けられる複数の血液浄化手段と、該血液浄化手段のそれぞれに透析液又は透析液原液を供給可能な供給手段とを具備した血液浄化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、血液浄化システムは、病院等医療現場における機械室に透析液供給装置を設置しておき、これとは別の場所である透析室(治療室)に透析用監視装置を設置するとともに、これら透析液供給装置と透析用監視装置とを配管で連結させて構成されている。透析液供給装置は、清浄水が供給されて所定濃度の透析液を作製するものである一方、透析用監視装置は、患者に透析治療を施すための血液浄化器(ダイアライザ)の数に対応して複数設置され、透析液供給装置で作製された透析液を配管を介して導入し、血液浄化器に供給する。
【0003】
すなわち、機械室に設置された透析液供給装置から透析室に設置された複数の透析用監視装置に分配して透析液を送液し、それぞれにおいてダイアライザに透析液を供給するよう構成されているのである。このように機械室で作製された透析液を各透析用監視装置に分配する血液浄化システムは、通常、「透析治療用セントラルシステム」と称される一方、血液浄化器毎(即ち透析治療患者の各々)に透析液の作製を行い得るものは、通常、「個人用透析装置」と称される。
【0004】
しかるに、従来より、透析液供給装置と各透析用監視装置とを電気的に接続しておき、透析治療工程時、配管の洗浄工程又は消毒工程時において、当該透析液供給装置(供給手段)から各透析用監視装置(血液浄化手段)に対して電気信号(工程信号)を送信するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。これにより、各透析用監視装置は、所定の電気信号(工程信号)を受信すると、その信号に応じた動作(ポンプの駆動や電磁弁の開閉等)が行われることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−16412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の血液浄化システムにおいては、以下の問題があった。
すなわち、病院等医療現場においては、通常、予想される最大の患者数を受け入れ可能とすべく多数の透析用監視装置(血液浄化手段)が設置されていることから、当該透析用監視装置の稼動状況にばらつきが生じてしまうのであるが、従来の血液浄化システムにおいては、透析液供給装置(供給手段)から各透析用監視装置に対して電気信号を送信し、一律な動作を行わせるものであったため、監視装置の稼動状況に応じて当該監視装置又は透析液供給装置の動作を行わせることが困難であるという問題があった。かかる問題は、血液浄化手段が個人用透析装置とされたものにおいても同様である。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、血液浄化手段の稼動状況に応じて当該血液浄化手段又は供給手段の動作を行わせることができる血液浄化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、患者に血液浄化治療を施すための血液浄化器が取り付けられる複数の血液浄化手段と、該血液浄化手段のそれぞれに透析液、透析液原液、清浄水又は消毒液を供給可能な供給手段と、患者の治療スケジュールを入力及び記憶可能な管理手段とを具備した血液浄化システムにおいて、前記血液浄化手段又は供給手段に対して前記管理手段から前記治療スケジュールを送信し得るものとされ、当該治療スケジュールに基づき前記血液浄化手段又は供給手段が動作し得ることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の血液浄化システムにおいて、前記治療スケジュールは、血液浄化手段毎の血液浄化治療の有無又は頻度、治療開始時刻及び終了時刻、治療時間等、当該血液浄化手段の稼動状況に関わる情報から成ることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の血液浄化システムにおいて、前記血液浄化手段に対し前記管理手段から前記治療スケジュールが送信されるとともに、当該血液浄化手段は、送信された治療スケジュールに応じて当該血液浄化手段の電源のオン・オフを切り換え可能とされたことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化システムにおいて、前記血液浄化手段に対し前記管理手段から前記治療スケジュールが送信されるとともに、当該血液浄化手段は、送信された治療スケジュールに応じて洗浄又は消毒時間を変更可能とされたことを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れか1つに記載の血液浄化システムにおいて、前記供給手段に対し前記管理手段から前記治療スケジュールが送信されるとともに、当該供給手段は、送信された治療スケジュールに応じて透析液原液又は透析液の作製開始時刻を変更可能とされたことを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れか1つに記載の血液浄化システムにおいて、前記供給手段は、清浄水及び透析液原液を用いて所定濃度の透析液を作製し得る透析液供給装置を有して成るとともに、前記血液浄化手段は、当該透析液供給装置から供給された透析液を前記血液浄化器に供給する監視装置から成ることを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項1〜5の何れか1つに記載の血液浄化システムにおいて、前記供給手段は、清浄水を作製し得る水処理装置を有して成るとともに、前記血液浄化手段は、前記水処理装置から供給された清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し、前記血液浄化器に供給する個人用透析装置から成ることを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項1〜5の何れか1つに記載の血液浄化システムにおいて、前記供給手段は、清浄水を作製し得る水処理装置、及び該水処理装置で作製された清浄水を用いて所定濃度の透析液原液を作製し得る溶解装置を有して成るとともに、前記血液浄化手段は、当該溶解装置及び水処理装置から供給された透析液原液及び清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し、前記血液浄化器に供給する個人用透析装置から成ることを特徴とする。
【0016】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8の何れか1つに記載の血液浄化システムにおいて、前記管理手段と前記供給手段又は血液浄化手段とは双方向に通信可能とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、血液浄化手段又は供給手段に対して管理手段から治療スケジュールを送信し得るものとされ、当該治療スケジュールに基づき血液浄化手段又は供給手段が動作し得るので、血液浄化手段の稼動状況に応じて当該血液浄化手段又は供給手段の動作を行わせることができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、治療スケジュールは、血液浄化手段毎の血液浄化治療の有無又は頻度、治療開始時刻及び終了時刻、治療時間等、当該血液浄化手段の稼動状況に関わる情報から成るので、より精度よく血液浄化手段の稼動状況に応じて当該血液浄化手段又は供給手段の動作を行わせることができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、血液浄化手段に対し管理手段から治療スケジュールが送信されるとともに、当該血液浄化手段は、送信された治療スケジュールに応じて当該血液浄化手段の電源のオン・オフを切り換え可能とされたので、電力の消費を抑制でき、ランニングコストを低減させることができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、血液浄化手段に対し管理手段から治療スケジュールが送信されるとともに、当該血液浄化手段は、送信された治療スケジュールに応じて洗浄又は消毒時間を変更可能とされたので、洗浄水又は消毒液の消費を抑制でき、ランニングコストを低減させることができる。
【0021】
請求項5の発明によれば、供給手段に対し管理手段から治療スケジュールが送信されるとともに、当該供給手段は、送信された治療スケジュールに応じて透析液原液又は透析液の作製開始時刻を変更可能とされたので、透析治療開始直前に透析液原液又は透析液を作製することができ、当該透析液原液又は透析液の組成を安定させることができる。
【0022】
請求項6の発明によれば、供給手段は、清浄水及び透析液原液を用いて所定濃度の透析液を作製し得る透析液供給装置を有して成るとともに、血液浄化手段は、当該透析液供給装置から供給された透析液を血液浄化器に供給する監視装置から成るので、セントラルシステムに適用することができる。
【0023】
請求項7の発明によれば、供給手段は、清浄水を作製し得る水処理装置を有して成るとともに、血液浄化手段は、水処理装置から供給された清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し、血液浄化器に供給する個人用透析装置から成るので、当該個人用透析装置を有した血液浄化システムに適用することができる。
【0024】
請求項8の発明によれば、供給手段は、清浄水を作製し得る水処理装置、及び該水処理装置で作製された清浄水を用いて所定濃度の透析液原液を作製し得る溶解装置を有して成るとともに、血液浄化手段は、当該溶解装置及び水処理装置から供給された透析液原液及び清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し、血液浄化器に供給する個人用透析装置から成るので、当該個人用透析装置を有した血液浄化システムに適用することができる。
【0025】
請求項9の発明によれば、管理手段と供給手段又は血液浄化手段とは双方向に通信可能とされたので、管理手段と供給手段又は血液浄化手段との間で種々情報を通信させることができ、より適切且つ安全な血液浄化治療を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る血液浄化システムを示す全体模式図
【図2】同血液浄化システムにおける監視装置の構成を示す模式図
【図3】本発明の他の実施形態に係る血液浄化システムを示す全体模式図
【図4】本発明の他の実施形態に係る血液浄化システムを示す全体模式図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る血液浄化システムは、透析液原液から所定濃度の透析液を作製するとともに、その透析液を複数の透析用監視装置に供給するためのものであり、図1に示すように、病院等医療現場における透析室A(治療室)に設置された複数の監視装置1と、当該医療現場における透析室Aとは別の場所である機械室Bに設置された透析液供給装置2、溶解装置3及び水処理装置4と、事務管理等を行う管理室等に設置された中央監視システムPとから主に構成される。
【0028】
監視装置1(血液浄化手段)は、患者に血液浄化治療(血液透析治療)を施すためのダイアライザ5(血液浄化器)が取り付けられ、透析液供給装置2から供給された透析液を当該ダイアライザ5に供給するためのもので、透析室Aに複数設置されている。かかる監視装置1は、血液透析治療や他の制御内容(洗浄又は消毒)の指示及び所定の表示を行わせ得るタッチパネル1aが配設されている。
【0029】
より具体的には、透析室Aに設置された複数の監視装置1の各々は、図2に示すように、透析液供給装置2から延設された配管L1が引き込まれるとともに、図示しない排液手段に接続された配管L2を具備し、これら配管L1、L2に跨って複式ポンプ12が配設されて構成されている。このうち監視装置1内における配管L1には、当該配管L1を流れる液体の流量を検出する流量検出センサ7、当該液体の給液圧を検出する液圧検出センサ8、及び当該液体の電導度(濃度)を検出する電導度検出センサ9が配設されている。
【0030】
また、複式ポンプ12からは、配管L1と連通した透析液導入ラインL4と、配管L2と連通した透析液排出ラインL5が延設されており、カプラCを介して当該透析液導入ラインL4の先端をダイアライザ5の透析液導入口5aに接続し得るとともに、カプラCを介して当該透析液排出ラインL5の先端をダイアライザ5の透析液排出口5bに接続し得るよう構成されている。このように、各監視装置1には、それぞれ患者に応じたダイアライザ5が取り付けられるようになっており、当該ダイアライザ5には、患者の血液を体外循環させる血液回路6が接続されることとなる。
【0031】
複式ポンプ12のポンプ室は、図示しない単一のプランジャにより、配管L1に接続された送液側ポンプ室と、配管L2に接続された排出側ポンプ室とに隔成されており、当該プランジャが往復動することにより、送液側ポンプ室に送られた透析液又は洗浄液をダイアライザ5に供給するとともに、ダイアライザ5内の透析液を排出側ポンプ室に吸入するよう構成されている。さらに、監視装置1内には、複式ポンプ12をバイパスしつつ配管L2と透析液排出ラインL5とを連通する配管L3が形成されており、この配管L3の途中に除水ポンプ13が配設されている。かかる除水ポンプ13を駆動させることにより、ダイアライザ5内を流れる患者の血液に対して除水を行わせることが可能とされる。
【0032】
なお、複式ポンプ12に代えて、所謂チャンバ形式のものとしてもよいとともに、流量検出センサ7、液圧検出センサ8或いは電導度検出センサ9等のセンサ類は、任意のものを配設してもよく若しくは他の汎用的なものを加えるようにしてもよい。さらに、本実施形態においては、当該センサ類を配管L1に配設するようにしているが、他の配管(例えば配管L2)に配設するものとしてもよい。例えば流量検出センサ7、液圧検出センサ8或いは電導度検出センサ9等のセンサ類を配管L1又は配管L2の何れか一方に配設させたもの或いは両方に配設させたものとしてもよい。
【0033】
水処理装置4は、内部に濾過膜等を内在したモジュール(浄化濾過器)を具備し、原水を浄化して清浄水(RO水)を得るためのものであり、配管L8を介して溶解装置3と連結されて当該溶解装置3に清浄水を供給し得るとともに、配管L6、L7を介して透析液供給装置2と連結されて当該透析液供給装置2に清浄水を供給し得るよう構成されている。かかる水処理装置4で得られた清浄水は、透析液供給装置2にて透析液を作製する際に用いられたり或いは当該透析液供給装置2や監視装置1の配管等を洗浄する洗浄水としても用いられる。なお、水処理装置4を図示しない個人用透析装置や粉末状透析用薬剤を溶解する溶解装置等と連結し、これらに清浄水を供給するよう構成してもよい。
【0034】
また、水処理装置4は、水処理に関する制御内容の指示及び所定の表示を行わせ得るタッチパネル4aが配設されているとともに、後述するLANケーブルβと電気的に接続されるインターフェイス部16及び制御部17を具備している。そして、インターフェイス部16にて透析液供給装置2や中央監視システムP(管理手段)等から所定の情報を受信すると、その情報に基づいて制御部17による所定の動作(清浄水の作製等)が行われるようになっている。
【0035】
溶解装置3は、例えば所定量の透析用粉体薬剤が投入されるとともに、その透析用粉体薬剤と水処理装置4から供給された清浄水とを混合(ミキシング)して所定濃度の透析液原液を作製するためのものである。この溶解装置3は、透析液原液作製に関する制御内容の指示及び所定の表示を行わせ得るタッチパネル3aが配設されているとともに、後述するLANケーブルβと電気的に接続されるインターフェイス部18及び制御部19を具備している。そして、インターフェイス部18にて透析液供給装置2や中央監視システムP(管理手段)等から所定の情報を受信すると、その情報に基づいて制御部19による所定の動作(透析液原液の作製等)が行われるようになっている。なお、溶解装置3は、配管L6を介して透析液供給装置2と接続されており、作製された透析液原液を透析液供給装置2に供給し得るよう構成されている。
【0036】
しかして、透析液供給装置2、溶解装置3、水処理装置4及びや中央監視システムP(管理手段)は、LAN(ローカルエリアネットワーク:構内通信網)にて接続されており、双方向の情報の通信が可能とされている。かかるLANは、本実施形態の如くLANケーブルβを用いるもの(有線)に限らず、無線で双方向の情報の通信が可能なもの(無線LAN)であってもよい。なお、当該LANに代えて、透析液供給装置2から溶解装置3及び水処理装置4に対して一方的に電気信号(工程信号)を送信し得るものとしてもよい。
【0037】
透析液供給装置2(供給手段)は、水処理装置4で得られた清浄水及び溶解装置3で作製された透析液原液を用いて所定濃度の透析液を作製し得るとともに、監視装置1(血液浄化手段)のそれぞれに作製した透析液を供給可能なものである。すなわち、透析液供給装置2は、配管L1を介して複数の監視装置1のそれぞれと接続されており、かかる配管L1を介して監視装置1のそれぞれに透析液、洗浄水及び消毒液等の所望の液体を供給し得るよう構成されているのである。なお、透析液供給装置2には、透析液供給や洗浄又は消毒に関する制御内容の指示及び所定の表示を行わせ得るタッチパネル2aが配設されている。
【0038】
中央監視システムP(管理手段)は、患者の治療スケジュールを入力可能な入力手段(例えばキーボード等)と、当該入力された治療スケジュールを記憶可能な記憶手段(例えばメモリ等)とを具備したコンピュータ等から成るものである。この中央監視システムPにて入力及び記憶される治療スケジュールは、監視装置1(血液浄化手段)毎の血液透析治療(血液浄化治療)の有無又は頻度、治療開始時刻及び終了時刻、治療時間等、当該監視装置1の稼動状況に関わる情報から成る。
【0039】
より具体的には、中央監視システムPは、血液浄化治療に際しての予約内容や予約の変更内容(治療開始時刻及び終了時刻)、その患者に必要な治療時間等を操作者が入力及び記憶可能とされた予約管理システムを兼用するもので、その記憶された情報に基づいて所定の日の治療スケジュールを設定可能とされたものである。そして、このように設定された治療スケジュールに基づいて監視装置1を稼動させることにより、血液浄化治療がスムーズに行われるようになっている。
【0040】
ここで、本実施形態に係る血液浄化システムにおいては、中央監視システムPとそれぞれの監視装置1(血液浄化手段)及び透析液供給装置2(供給手段)とが、LAN(ローカルエリアネットワーク:構内通信網)にて接続されており、双方向の情報の通信が可能とされている。すなわち、中央監視システムPとそれぞれの監視装置1、中央監視システムPと透析液供給装置2、及びそれぞれの監視装置1と透析液供給装置2とがLANケーブルαにて接続されていて、情報の通信が互いに可能とされているのである。
【0041】
なお、本実施形態においては、中央監視システムPと溶解装置3及び水処理装置4とが、LAN(ローカルエリアネットワーク:構内通信網)にて接続されており、双方向の情報の通信が可能とされている。すなわち、中央監視システムPは、それぞれの監視装置1及び透析液供給装置2とLANケーブルαにて接続されているのに加え、溶解装置3及び水処理装置4ともLANケーブルβにて接続されており、情報の通信が互いに可能とされているのである。
【0042】
これにより、本血液浄化システムにおいては、監視装置1又は透析液供給装置2に対して中央監視システムPから治療スケジュールを送信し得るものとされ、当該治療スケジュールに基づき監視装置1又は透析液供給装置2が動作し得る構成とされている。また、本実施形態においては、中央監視システムPから複数の監視装置1の個々に治療スケジュールを送信し得るよう構成されていることから、当該治療スケジュールに応じて個々の監視装置1を動作させ得るよう構成されている。
【0043】
すなわち、中央監視システムPと、透析液供給装置2と、それぞれの監視装置1との間は、LANケーブルαを介在してLAN接続されているとともに、透析液供給装置2にはLANケーブルαを介して中央監視システムP及び監視装置1との間で通信するためのインターフェイス部14及び制御部15が配設される一方、監視装置1のそれぞれにはLANケーブルαを介して中央監視システムP及び透析液供給装置2との間で通信するためのインターフェイス部10及び制御部11(図2参照)が配設されているのである。なお、かかるLANは、本実施形態の如くLANケーブルαを用いるもの(有線)に限らず、無線で双方向の情報の通信が可能なもの(無線LAN)であってもよい。
【0044】
そして、透析液供給装置2においては、インターフェイス部14にて中央監視システムP又は監視装置1から所定の情報を受信すると、その情報に基づいて制御部15による所定の動作(透析液の作製等)が行われるとともに、当該インターフェイス部14を介して所定の情報を中央監視システムP及び監視装置1に送信し得るようになっている。また、監視装置1においては、インターフェイス部10にて中央監視システムP又は透析液供給装置2から所定の情報を受信すると、その情報に基づいて制御部11による所定の動作(治療前のプライミング、血液透析治療、返血、洗浄・消毒等)が行われるとともに、当該インターフェイス部10を介して所定の情報を中央監視システムP及び透析液供給装置2に送信し得るようになっている。
【0045】
特に、本実施形態においては、中央監視システムPが保持する治療スケジュール(厳密には治療スケジュールを含む情報)を当該中央監視システムPから各監視装置1又は透析液供給装置2に対して送信し得るよう構成されているとともに、当該各監視装置1又は透析液供給装置2は、中央監視システムPから送信された治療スケジュールに基づいて動作し得るよう構成されている。以下に具体的構成について説明する。
【0046】
本実施形態においては、監視装置1に対し中央監視システムPから治療スケジュールが送信されるとともに、当該監視装置1は、送信された治療スケジュールに応じて当該監視装置1の電源のオン・オフを切り換え可能とされている。すなわち、治療スケジュールを参照すれば、監視装置1のうち稼動するものと稼動しないものとを判別することができることから、個々の監視装置1が制御手段11にて治療スケジュールに基づき稼動するのか否かを判別し、稼動する場合は、電源のオン状態を維持して通常の治療工程を行わせるとともに、稼動しない場合は、電源をオフして電力供給を自動的に遮断するようになっているのである。
【0047】
この場合、監視装置1に対し中央監視システムPから治療スケジュールが送信されるとともに、当該監視装置1は、送信された治療スケジュールに応じて稼動状況を判別して当該監視装置1の電源のオン・オフを切り換え可能とされたので、電力の消費を抑制でき、ランニングコストを低減させることができる。また、本実施形態によれば、各監視装置1が稼動状況を判断して自動的に電源のオン・オフを行うので、作業員が稼動状況に応じて手動で電源のオン・オフを行うものに比べ、作業性を大幅に向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態においては、監視装置1に対し中央監視システムPから治療スケジュールが送信されるとともに、当該監視装置1は、送信された治療スケジュールに応じて洗浄又は消毒時間を変更可能とされている。すなわち、治療スケジュールを参照すれば、監視装置1のうち稼動するものや稼動しないもの、及び稼動の程度を判別することができることから、個々の監視装置1が制御手段11にて治療スケジュールに基づき稼動状況を判別し、稼動する場合或いは稼動が多い場合は、洗浄又は消毒時間を長く設定するとともに、稼動しない場合或いは稼動が少ない場合は、洗浄又は消毒時間を短く設定することができるのである。
【0049】
この場合、監視装置1に対し中央監視システムPから治療スケジュールが送信されるとともに、当該監視装置1は、送信された治療スケジュールに応じて稼動状況を判別して洗浄又は消毒時間を変更可能とされたので、洗浄水又は消毒液の消費を抑制でき、ランニングコストを低減させることができる。また、本実施形態によれば、各監視装置1が稼動状況を判断して自動的に洗浄又は消毒時間を設定するので、作業員が稼動状況に応じて手動で洗浄又は消毒時間を設定するものに比べ、作業性を大幅に向上させることができる。
【0050】
さらに、本実施形態においては、透析液供給装置2に対し中央監視システムPから治療スケジュールが送信されるとともに、当該透析液供給装置2は、送信された治療スケジュールに応じて透析液原液の作製開始時刻を変更可能とされている。すなわち、治療スケジュールを参照すれば、監視装置1による治療開始時刻(稼動開始時刻)を判別することができることから、透析液供給装置2が制御手段15にて治療スケジュールに基づき稼動開始時刻を判別し、その時刻の直前に透析液原液を作製するよう溶解装置3及び水処理装置4に指示を出すことができるのである。
【0051】
この場合、透析液供給装置2に対し中央監視システムPから治療スケジュールが送信されるとともに、当該透析液供給装置2は、送信された治療スケジュールに応じて稼動開始時刻を判別して透析液原液の作製開始時刻を変更可能とされたので、透析治療開始直前に透析液原液を作製することができ、当該透析液原液の組成を安定させることができる。すなわち、透析治療開始直前に透析液原液を作製するようにすれば、透析液原液が作製された後の当該治療が開始されるまでの時間を短くすることができ、当該透析液原液の組成が変化してしまうのを抑制することができるのである。
【0052】
なお、透析液供給装置2は、中央監視システムPから送信された治療スケジュールに応じて稼動開始時刻を判別して透析液の作製開始時刻を変更可能とするものとしてもよい。この場合であっても、透析治療開始直前に透析液を作製することができ、当該透析液の組成を安定させることができる。すなわち、透析治療開始直前に透析液を作製するようにすれば、透析液が作製された後の当該治療が開始されるまでの時間を短くすることができ、当該透析液の組成が変化してしまうのを抑制することができるのである。
【0053】
上記実施形態によれば、監視装置1又は透析液供給装置2に対して中央監視システムPから治療スケジュールを送信し得るものとされ、当該治療スケジュールに基づき監視装置1又は透析液供給装置2が動作し得るので、監視装置1の稼動状況に応じて当該監視装置1又は透析液供給装置2の動作を行わせることができる。特に、本実施形態においては、送信された治療スケジュールに基づいて各監視装置1又は透析液供給装置2が個々に判断して動作を行うものとされているので、安全性をより向上させることができる。
【0054】
また、治療スケジュールは、監視装置1毎の血液浄化治療の有無又は頻度、治療開始時刻及び終了時刻、治療時間等、当該血液浄化手段の稼動状況に関わる情報から成るので、より精度よく監視装置1の稼動状況に応じて当該監視装置1又は透析液供給装置2の動作を行わせることができる。なお、中央監視システムPが保持する治療スケジュールに加え、当該中央監視システムPが保持する他の情報も監視装置1又は透析液供給装置2に送信するよう構成してもよい。
【0055】
さらに、本実施形態によれば、供給手段は、清浄水及び透析液原液を用いて所定濃度の透析液を作製し得る透析液供給装置2から成るとともに、血液浄化手段は、当該透析液供給装置2から供給された透析液をダイアライザ5(血液浄化器)に供給する監視装置1から成るので、セントラルシステムに適用することができる。また、中央監視システムPと、監視装置1又は透析液供給装置2とは双方向に通信可能とされたので、当該中央監視システムP、監視装置1及び透析液供給装置2との間で種々情報を通信させることができ、より適切且つ安全な血液浄化治療を行わせることができる。
【0056】
以上、本実施形態に係る血液浄化システムついて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば上記の如きセントラルシステムから成るものに代えて、図3に示すように、供給手段は、清浄水を作製し得る水処理装置4を有して成るとともに、血液浄化手段は、水処理装置4から供給された清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し、ダイアライザ5(血液浄化器)に供給する個人用透析装置20から成るものに適用してもよい。この場合、個人用透析装置20は、それぞれ透析液原液或いは消毒液を収容したタンクT1を具備するとともに、水処理装置4と配管L9で連結され、当該水処理装置4から送液された清浄水及びタンクT1内の透析液原液を用いて所定濃度の透析液を作製し或いは希釈した消毒液を作製し得るようになっている。
【0057】
すなわち、図1で示される実施形態においては、監視装置1のそれぞれに透析液を供給可能な透析液供給装置2(溶解装置3及び水処理装置4を含む)にて供給手段を構成させているが、血液浄化手段がダイアライザ5(血液浄化器)を有し、タンクT1内の透析液原液から透析液を作製可能な個人用透析装置20から成る血液浄化システムとしてもよいのである。
【0058】
さらに、例えば上記の如きセントラルシステムから成るものに代えて、図4に示すように、供給手段は、清浄水を作製し得る水処理装置4、及び該水処理装置4で作製された清浄水を用いて所定濃度の透析液原液を作製し得る溶解装置3を有して成るとともに、血液浄化手段は、当該溶解装置3及び水処理装置4から供給された透析液原液及び清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し、ダイアライザ5(血液浄化器)に供給する個人用透析装置21から成るものに適用してもよい。この場合、個人用透析装置21は、それぞれ消毒液を収容したタンクT2を具備するとともに、溶解装置3及び水処理装置4と配管L10、L11でそれぞれ連結され、当該溶解装置3及び水処理装置4から送液された透析液原液及び清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し或いは希釈した消毒液を作製し得るようになっている。
【0059】
すなわち、図1で示される実施形態においては、監視装置1のそれぞれに透析液を供給可能な透析液供給装置2(溶解装置3及び水処理装置4を含む)にて供給手段を構成させているが、血液浄化手段がダイアライザ5(血液浄化器)を有し、供給手段側から送液された透析液原液及び清浄水から透析液を作製可能な個人用透析装置21から成る血液浄化システムとしてもよいのである。
【0060】
また、本実施形態においては、中央監視システムPと監視装置1及び透析液供給装置2とはLAN接続されて双方向に通信可能とされているが、監視装置1又は透析液供給装置2に対して中央監視システムPから治療スケジュールを送信し得るものであれば足り、中央監視システムPから監視装置1又は透析液供給装置2に一方的に治療スケジュールが送信されるものとしてもよい。なお、本実施形態においては、血液透析治療を行うシステムとされているが、他の血液浄化治療を行う血液浄化システムに適用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
血液浄化手段又は供給手段に対して管理手段から治療スケジュールを送信し得るものとされ、当該治療スケジュールに基づき血液浄化手段又は供給手段が動作し得る血液浄化システムであれば、他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 監視装置(血液浄化手段)
2 透析液供給装置(供給手段)
3 溶解装置
4 水処理装置
5 ダイアライザ(血液浄化器)
6 血液回路
7 流量検出センサ
8 液圧検出センサ
9 電導度検出センサ
10 インターフェイス部
11 制御部
12 複式ポンプ
13 除水ポンプ
14 インターフェイス部
15 制御部
16 インターフェイス部
17 制御部
18 インターフェイス部
19 制御部
P 中央監視システム(管理手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に血液浄化治療を施すための血液浄化器が取り付けられる複数の血液浄化手段と、
該血液浄化手段のそれぞれに透析液、透析液原液、清浄水又は消毒液を供給可能な供給手段と、
患者の治療スケジュールを入力及び記憶可能な管理手段と、
を具備した血液浄化システムにおいて、
前記血液浄化手段又は供給手段に対して前記管理手段から前記治療スケジュールを送信し得るものとされ、当該治療スケジュールに基づき前記血液浄化手段又は供給手段が動作し得ることを特徴とする血液浄化システム。
【請求項2】
前記治療スケジュールは、血液浄化手段毎の血液浄化治療の有無又は頻度、治療開始時刻及び終了時刻、治療時間等、当該血液浄化手段の稼動状況に関わる情報から成ることを特徴とする請求項1記載の血液浄化システム。
【請求項3】
前記血液浄化手段に対し前記管理手段から前記治療スケジュールが送信されるとともに、当該血液浄化手段は、送信された治療スケジュールに応じて当該血液浄化手段の電源のオン・オフを切り換え可能とされたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の血液浄化システム。
【請求項4】
前記血液浄化手段に対し前記管理手段から前記治療スケジュールが送信されるとともに、当該血液浄化手段は、送信された治療スケジュールに応じて洗浄又は消毒時間を変更可能とされたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化システム。
【請求項5】
前記供給手段に対し前記管理手段から前記治療スケジュールが送信されるとともに、当該供給手段は、送信された治療スケジュールに応じて透析液原液又は透析液の作製開始時刻を変更可能とされたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の血液浄化システム。
【請求項6】
前記供給手段は、清浄水及び透析液原液を用いて所定濃度の透析液を作製し得る透析液供給装置を有して成るとともに、前記血液浄化手段は、当該透析液供給装置から供給された透析液を前記血液浄化器に供給する監視装置から成ることを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載の血液浄化システム。
【請求項7】
前記供給手段は、清浄水を作製し得る水処理装置を有して成るとともに、前記血液浄化手段は、前記水処理装置から供給された清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し、前記血液浄化器に供給する個人用透析装置から成ることを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載の血液浄化システム。
【請求項8】
前記供給手段は、清浄水を作製し得る水処理装置、及び該水処理装置で作製された清浄水を用いて所定濃度の透析液原液を作製し得る溶解装置を有して成るとともに、前記血液浄化手段は、当該溶解装置及び水処理装置から供給された透析液原液及び清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し、前記血液浄化器に供給する個人用透析装置から成ることを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載の血液浄化システム。
【請求項9】
前記管理手段と前記供給手段又は血液浄化手段とは双方向に通信可能とされたことを特徴とする請求項1〜8の何れか1つに記載の血液浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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