血液粘度測定用採血管
【課題】採血管内の採取血液を粘度測定装置の測定容器内に移し替える操作を省略できて、血液を採取したのち非常に短時間で血液の粘度測定を開始することを可能ならしめる血液粘度測定用採血管を提供する。
【解決手段】この発明の血液粘度測定用採血管1は、粘度測定用落体2が封入されていることを特徴とする。血液粘度測定用採血管1は、有底管体3の上端開口部が密封栓6によって密栓されると共に有底管体3の内部に略針状の粘度測定用落体2が封入されてなり、有底管体3の底面壁の内面側の中央部に略針状落体2の少なくとも一端部を受容し得る受容凹部4が形成されると共に、底面壁の内面は、その周縁部から中央部の受容凹部4に向かって上から下に傾斜する傾斜面5に形成された構成であるのが好ましい。
【解決手段】この発明の血液粘度測定用採血管1は、粘度測定用落体2が封入されていることを特徴とする。血液粘度測定用採血管1は、有底管体3の上端開口部が密封栓6によって密栓されると共に有底管体3の内部に略針状の粘度測定用落体2が封入されてなり、有底管体3の底面壁の内面側の中央部に略針状落体2の少なくとも一端部を受容し得る受容凹部4が形成されると共に、底面壁の内面は、その周縁部から中央部の受容凹部4に向かって上から下に傾斜する傾斜面5に形成された構成であるのが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、血液を採取したのち非常に短時間で血液の粘度測定を開始することを可能ならしめる血液粘度測定用採血管に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人の血液の粘度に関して非常に関心が高まっている。例えば、一般に「ドロドロ血液」では健康状態が良くない状態であるとされ、これを「サラサラ血液」にするために効果のある食品や成分の紹介が新聞やテレビ等で多く行われている。このような血液の粘度特性を把握することができれば、血液疾患の予測が可能になったり、病気を早期に発見することも可能になると言われている。
【0003】
従来、血液の粘度を測定するために内部に鋼球が入ったシリンジで採血し、鋼球を磁力を用いてシリンジ内の上方位置に上昇させた後、鋼球を落下させてこの落下する鋼球の落下終端速度を測定することにより血液の粘度を求める落球式血液粘度測定装置が公知である(特許文献1参照)。
【0004】
また、流体の粘度を測定する装置としては、流体を満たした円筒状測定容器内を落下する円柱状落体の落下終端速度を測定することにより流体の粘度を求める落体式粘度測定装置が公知である(特許文献2参照)。
【特許文献1】米国特許4388823号公報
【特許文献2】特開平8−219973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の血液粘度測定装置ではシリンジが使用されており、このシリンジをそのまま測定に使用する場合には、採血後に採血針を取り外すか、或いは採血針を覆うカバーを取り付ける必要があるが、その際に検査者が誤って採血針に触れたり、採血針で刺してしまう危険性がある。また、粘度測定に際しては容器の容積が一定であることが望ましいが、シリンジを用いた場合には容積が変動してしまって精度高い粘度測定を行うことができないという問題もあった。
【0006】
また、血液は、空気に触れると凝固作用によって徐々に凝固していくことから、通常の血液検査においては採取血液に抗凝固剤を添加している。この抗凝固剤の添加は、成分分析にはそれほど影響しないが、血液の状態を評価する粘度測定には大きく影響する。そのため、血液の粘度を測定するためには、抗凝固剤を添加せず、且つ血液の凝固が始まらないように血液を採取してから3分以内に粘度測定を完了するのが望ましい。
【0007】
しかるに、上記特許文献2に記載の粘度測定装置では、血液の粘度測定に際し、採血管内に採取した血液を粘度測定装置の測定容器内に移し替える操作を要するために、血液を採取してから3分を超えないまでも、粘度測定開始までに少なからず時間を要するものとなっていた。また、採取血液の測定容器内への移し替えの際に、採取血液の空気との接触機会が増大して血液凝固を促進させることも懸念されるところである。
【0008】
このような背景から、シリンジよりも容易かつ安全で精度良く血液粘度が測定できると共に、血液を採取してから粘度測定を開始するに至るまでの時間を短縮できる手段、方法の開発が求められていた。
【0009】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、採血管を使用した粘度測定を可能にすると共に、採血管内の採取血液を粘度測定装置の測定容器内に移し替える操作を省略できて、血液を採取したのち非常に短時間で血液の粘度測定を開始することを可能ならしめる血液粘度測定用採血管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0011】
[1]粘度測定用落体が封入されていることを特徴とする血液粘度測定用採血管。
【0012】
[2]前記粘度測定用落体は、略針状体からなる前項1に記載の血液粘度測定用採血管。
【0013】
[3]有底管体の上端開口部が密封栓によって密栓されると共に前記有底管体の内部に略針状の粘度測定用落体が封入されてなり、前記有底管体の底面壁の内面の中央部に前記略針状落体の少なくとも一端部を受容し得る受容凹部が形成されると共に、前記底面壁の内面は、その周縁部から中央部の受容凹部に向かって上から下に傾斜する傾斜面に形成されていることを特徴とする血液粘度測定用採血管。
【0014】
[4]有底管体の上端開口部が密封栓によって密栓されると共に前記有底管体の内部に略針状の粘度測定用落体が封入されてなり、前記密封栓の内面の中央部に前記略針状落体の少なくとも一端部を受容し得る受容凹部が形成されると共に、前記密封栓の内面は、その周縁部から中央部の受容凹部に向かって下から上に傾斜する傾斜面に形成されていることを特徴とする血液粘度測定用採血管。
【0015】
[5]前記粘度測定用落体は、金属製錘を中に封入した合成樹脂製の略針状体からなる前項1、3、4のいずれか1項に記載の血液粘度測定用採血管。
【0016】
[6]前記粘度測定用落体は、磁性体を中に封入した合成樹脂製の略針状体からなる前項1、3、4のいずれか1項に記載の血液粘度測定用採血管。
【0017】
[7]有底管体の上端開口部が密封栓によって密栓されると共に前記有底管体の内部に粘度測定用落体が封入されてなり、前記有底管体の底面壁の内面又は/及び前記密封栓の内面が平坦面に形成されると共に、前記粘度測定用落体は、その少なくとも一部に平坦面部を有することを特徴とする血液粘度測定用採血管。
【0018】
[8]前記粘度測定用落体は、略針状本体部の一端部に該本体部の軸線に対して直交する状態に平板部が連接されたものからなり、該平板部における少なくとも非連接面が平坦面に形成されている前項7に記載の血液粘度測定用採血管。
【0019】
[9]前記粘度測定用落体は、金属製錘を中に封入した合成樹脂製の落体からなる前項7または8に記載の血液粘度測定用採血管。
【0020】
[10]前記粘度測定用落体は、磁性体を中に封入した合成樹脂製の落体からなる前項7または8に記載の血液粘度測定用採血管。
【発明の効果】
【0021】
[1]の発明では、採血管の中に粘度測定用落体が封入されているから、この採血管内に血液を採取した後は、この採血管をそのまま粘度測定容器として粘度測定に供することができ、これにより血液の粘度測定に際し採血管内の採取血液を粘度測定装置の測定容器内に移し替える操作をする必要がなくなるので、この血液粘度測定用採血管を用いれば、血液を採取したのち非常に短時間で(速やかに)血液の粘度測定を開始することができる。従って、この発明の血液粘度測定用採血管を用いれば、血液の粘度測定を精度高く行うことが可能となる。
【0022】
[2]の発明では、粘度測定用落体は、略針状体からなる構成が採用されており、落体が球体である場合と比較して血液の粘度測定をより精度高く行うことができる。
【0023】
[3]の発明では、採血管の中に粘度測定用落体が封入されているから、この採血管内に血液を採取した後は、この採血管をそのまま粘度測定容器として粘度測定に供することができ、これにより血液の粘度測定に際し採血管内の採取血液を粘度測定装置の測定容器内に移し替える操作をする必要がなくなるので、この血液粘度測定用採血管を用いれば、血液を採取したのち非常に短時間で血液の粘度測定を開始することができる。従って、この発明の血液粘度測定用採血管を用いれば、血液の粘度測定を精度高く行うことが可能となる。また、有底管体の底面壁の内面側の中央部に略針状落体の少なくとも一端部を受容し得る受容凹部が形成されているから、採血管内の該受容凹部において略針状落体を安定状態に保持することができ、これにより粘度測定の際に採血管内の落体を安定状態に落下させることができる。また、有底管体の底面壁の内面は、その周縁部から中央部の受容凹部に向かって上から下に傾斜する傾斜面に形成されているから、略針状落体を有底管体の底面壁の受容凹部にスムーズにかつ確実に誘導案内することができる。
【0024】
[4]の発明では、採血管の中に粘度測定用落体が封入されているから、この採血管内に血液を採取した後は、この採血管をそのまま粘度測定容器として粘度測定に供することができ、これにより血液の粘度測定に際し採血管内の採取血液を粘度測定装置の測定容器内に移し替える操作をする必要がなくなるので、この血液粘度測定用採血管を用いれば、血液を採取したのち非常に短時間で血液の粘度測定を開始することができる。従って、この発明の血液粘度測定用採血管を用いれば、血液の粘度測定を精度高く行うことが可能となる。また、密封栓の内面の中央部に略針状落体の少なくとも一端部を受容し得る受容凹部が形成されているから、採血管内の該受容凹部において略針状落体を安定状態に保持することができ、これにより粘度測定の際に採血管内の落体を安定状態に落下させることができる。また、密封栓の内面は、その周縁部から中央部の受容凹部に向かって下から上に傾斜する傾斜面に形成されているから、略針状落体を密封栓の内面の受容凹部にスムーズにかつ確実に誘導案内することができる。
【0025】
[5]の発明では、粘度測定用落体は、金属製錘を中に封入した合成樹脂製の略針状体からなる構成が採用されており、落体の外側が合成樹脂であることで落体の表面に血液がこびり付くことがなく、従って血液の粘度測定をより精度高く行うことができる。
【0026】
[6]の発明では、粘度測定用落体は、磁性体を中に封入した合成樹脂製の略針状体からなる構成が採用されており、落体の外側が合成樹脂であることで落体の表面に血液がこびり付くことがなく、従って血液の粘度測定をより精度高く行うことができる。
【0027】
[7]の発明では、採血管の中に粘度測定用落体が封入されているから、この採血管内に血液を採取した後は、この採血管をそのまま粘度測定容器として粘度測定に供することができ、これにより血液の粘度測定に際し採血管内の採取血液を粘度測定装置の測定容器内に移し替える操作をする必要がなくなるので、この血液粘度測定用採血管を用いれば、血液を採取したのち非常に短時間で血液の粘度測定を開始することができる。従って、この発明の血液粘度測定用採血管を用いれば、血液の粘度測定を精度高く行うことが可能となる。また、有底管体の底面壁の内面又は/及び密封栓の内面が平坦面に形成されると共に、粘度測定用落体は、その少なくとも一部に平坦面部を有するから、有底管体の底面壁の内面又は/及び密封栓の内面において落体を安定状態に保持することが可能となる。これにより、粘度測定の際に採血管内の落体を安定状態に落下させることができる。
【0028】
[8]の発明では、粘度測定の際に採血管内の落体をより安定状態に落下させることができる。
【0029】
[9]の発明では、粘度測定用落体は、金属製錘を中に封入した合成樹脂製の落体からなる構成が採用されており、落体の外側が合成樹脂であることで落体の表面に血液がこびり付くことがなく、従って血液の粘度測定をより精度高く行うことができる。
【0030】
[10]の発明では、粘度測定用落体は、磁性体を中に封入した合成樹脂製の落体からなる構成が採用されており、落体の外側が合成樹脂であることで落体の表面に血液がこびり付くことがなく、従って血液の粘度測定をより精度高く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
この発明に係る血液粘度測定用採血管(1)の一実施形態を図1に示す。この血液粘度測定用採血管(1)は、合成樹脂からなる有底管体(3)の上端開口部が弾性体からなる密封栓(6)によって密栓されると共に有底管体(3)の内部空間に粘度測定用落体(2)が封入されたものからなる。本実施形態では、前記粘度測定用落体(2)は略針状に形成されている。前記密栓された有底管体(3)の内部空間は、減圧状態になるように減圧処理されている。
【0032】
前記略針状落体(2)は、金属製錘(12)を中に封入した合成樹脂製の略針状体(11)からなる。本実施形態では、図3に示すように、有底円筒状の合成樹脂製の略針状体(11)の内部に金属製錘(12)が配置されると共に略針状体(11)の上部開口端にキャップ(13)が嵌合されてなる略針状落体(2)が用いられている。
【0033】
また、前記有底管体(3)の底面(21)の上面に合成樹脂からなる底部(22)が接合されることによって有底管体(3)の底面壁(23)が形成されている。前記底部(22)の上面の中央部に前記略針状落体(2)の一端部を受容し得る受容凹部(4)が形成されている。この受容凹部(4)は、前記底部(22)の上面の中央部に円柱形状の孔が穿設されて形成されたものである。更に、前記底部(22)の上面(即ち底面壁(23)の内面)は、その周縁部から中央部の受容凹部(4)に向かって上から下に傾斜する傾斜面(5)に形成されている。
【0034】
上記構成の血液粘度測定用採血管(1)では、採血管の中に粘度測定用落体(2)が封入されているから、この採血管(1)内に血液を採取した後は、この採血管(1)をそのまま粘度測定容器として粘度測定に供することができ、これにより血液の粘度測定に際し採血管(1)内の採取血液を粘度測定装置の測定容器内に移し替える操作をする必要がなくなることから、この血液粘度測定用採血管(1)を用いれば、血液を採取したのち非常に短時間で血液の粘度測定を開始することができる。これにより血液の粘度測定を精度高く行うことが可能となる。採血管(1)内の採取血液を粘度測定装置の測定容器内に移し替える操作を省略できるので、採取血液の空気との接触を極力回避し得て、血液凝固の進行を緩和できる利点もある。また、有底管体(3)の底面壁(23)の内面の中央部に略針状落体(2)の少なくとも一端部を受容し得る受容凹部(4)が形成されているから、採血管(1)内の該受容凹部(4)において略針状落体(2)を安定状態に保持することができ、これにより粘度測定の際に採血管(1)内の落体(2)を安定状態に落下させることができる。また、有底管体(3)の底面壁(23)の内面は、その周縁部から中央部の受容凹部(4)に向かって上から下に傾斜する傾斜面(5)に形成されているから、略針状落体(2)を有底管体(3)の底面壁(23)内面の受容凹部(4)にスムーズにかつ確実に誘導案内することができる。
【0035】
次に、本発明の血液粘度測定用採血管(1)を用いて粘度測定を行うための血液粘度測定装置(30)の一実施形態を図8に示す。この血液粘度測定装置(30)は、中に粘度測定用落体(2)が封入された血液粘度測定用採血管(1)、保持手段(31)、検出手段(32)、反転手段(33)及び固定手段(34)を備えてなる。前記血液粘度測定用採血管(1)は、前述した図1に示す構成を備えてなる。
【0036】
前記保持手段(31)は、前記血液粘度測定用採血管(1)を保持する手段であり、本実施形態では、両端が開口された円筒状の筒状体(41)の一端が固定手段(34)で封止されたものが保持手段(31)として用いられている。この保持手段(31)の他端の開口部からその内部空間に前記血液粘度測定用採血管(1)を挿入配置し得るものとなされている。また、前記保持手段(31)の筒状体(41)の内部にヒーター(図示しない)が配置されている。このヒーターは、前記保持手段(31)で保持した採血管(1)内の血液の温度を所定温度に維持するためのものである。
【0037】
前記固定手段(34)は、前記血液粘度測定用採血管(1)内の落体(2)を採血管(1)内の一端側に固定するための手段である。本実施形態では、前記固定手段(34)として電磁石が用いられている。即ち、電磁石(34)のスイッチをONにした状態では、電磁石(34)から発せられる磁力により、金属製錘(12)を内包した落体(2)を採血管(1)内の一端側に固定した状態を維持することができる。即ち、電磁石(34)のスイッチをONにしておけば、その磁力により、図9(ロ)に示すように、粘度測定のために採血管(1)を180度回転させて上下反転状態にしても略針状落体(2)は受容凹部(4)内に安定状態に保持固定される。
【0038】
また、前記保持手段(31)を構成する筒状体(41)には、前記採血管(1)内を落下する落体(2)の落下終端速度を検出する検出手段(32)が取り付けられている。本実施形態では、検出手段(32)として、相互に離間して配置された一対の磁気センサー(32A)(32B)及び計測装置(図示しない)が用いられている。即ち、図8に示すように、上側の磁気センサー(32A)は保持手段(31)の上方位置に配置される一方、下側の磁気センサー(32B)は前記上側の磁気センサー(32A)より下の位置で且つ上側の磁気センサー(32A)と所定間隔をあけて配置されている。前記計測装置は、前記磁気センサー(32B)からの検知信号を受けたのちもう一方の磁気センサー(32A)からの検知信号を受けるまでの時間を計測する装置である(図9(ハ)参照)。この計測装置により、落体(2)が一方の磁気センサー(32B)からもう一方の磁気センサー(32A)の位置まで落下するのに要した時間を計測することができる。なお、前記「落下終端速度」とは、流体中を等速度落下運動をしているときの速度のことである。
【0039】
また、前記反転手段(33)は、土台部(42)と、該土台部(42)の上面から上方に向けて延ばされた棒状の枢支手段(43)(43)とを備えている。前記保持手段(31)の筒状体(41)の外周面の高さ方向の中間位置から相互対向状態に一対の軸部(44)(44)が外方に向けて突設形成されており、これら軸部(44)(44)がそれぞれ前記枢支手段(43)(43)の上端部に穿設された軸受け孔(45)(45)に挿入配置されることによって、前記保持手段(31)が前記反転手段(33)によって回転自在に枢支されている。
【0040】
次に、上記構成からなる血液粘度測定装置(30)を用いた血液の粘度測定方法の一例について説明する。
【0041】
まず、図7に示すように、ホルダ(27)の先端部に貫通状態に固定された針(28)を人体の皮膚(29)に刺し入れた後、前記血液粘度測定用採血管(1)をホルダ(27)内に挿入していくことによって前記針(28)を前記密封栓(6)に貫通せしめて該針(28)の先端を採血管(1)の内部空間内に配置せしめる。この時、採血管(1)の内部空間は減圧状態になっているので採血管(1)の内部に血液(60)が採血される。
【0042】
次に、図9(イ)に示すように、内部に血液(60)が採血された前記採血管(1)を前記測定装置(30)の保持手段(31)の上端開口部からその内部に挿入していき、前記採血管(1)の底面壁(23)が前記固定手段(34)に当接する状態に挿入嵌合せしめる。この時、前記略針状落体(2)は、採血管(1)内を落下していき底面壁(23)の傾斜面(5)に誘導案内されて略針状落体(2)の一端部が受容凹部(4)内に嵌まり込むので、前記略針状落体(2)は該受容凹部(4)によって安定状態に保持される。
【0043】
次の反転操作の前に、前記固定手段(34)である電磁石のスイッチをONにして該電磁石からの磁力によって、金属製錘(12)を内包した落体(2)を採血管(1)内の一端側の受容凹部(4)内に固定した状態を維持する。
【0044】
次いで、図9(ロ)に示すように、保持手段(31)を180度回転させて上下反転させることによって採血管(1)を上下反転状態にしてこの状態を維持する。この時、前記電磁石(34)からの磁力により、前記略針状落体(2)は受容凹部(4)内に安定状態に保持固定されている(落下しない)。
【0045】
しかる後、電磁石(34)のスイッチをOFFにすると、採血管(1)内の受容凹部(4)内に保持されていた略針状落体(2)が落下する(図9(ハ)参照)。この時、略針状落体(2)は、採血管(1)内の血液(60)中を鉛直下方向に向けて安定状態に落下する。しかして、落体(2)が一方の磁気センサー(32B)を通過した時に計測装置は該磁気センサー(32B)からの検知信号を受け、その後落体(2)がもう一方の磁気センサー(32A)を通過した時に計測装置は該磁気センサー(32A)からの検知信号を受け、これらにより、計測装置は、落体(2)が一方の磁気センサー(32B)から他方の他方の磁気センサー(32A)の位置まで落下するのに要した時間を算出する。求められた落下時間と磁気センサー(32A)(32B)間の距離とから落体(2)の落下終端速度Utを算出する。
【0046】
次に、前記得られた落体(2)の落下終端速度Utを用いて血液粘度を求める方法について説明する。
【0047】
図11は、略針状落体(2)が落下している時の状態を示す概念図であり、図12は、落下する略針状落体(2)が押し退ける血液(60)の移動方向を示す速度断面図である。これら図11、図12において、「L」は略針状落体(2)の長さ、「kR」は略針状落体(2)の半径、「R」は有底管体(3)の半径であり、また(50)は落下する落体により押し退けられる落体周囲の流体要素としての微小円柱殻であり、「r」は微小円柱殻の内半径、「r+dr」は微小円柱殻の外半径、「L」は微小円柱殻の長さである。
【0048】
略針状落体(2)の落下速度が0.1×10-3m/s〜0.18m/sと非常に小さく、血液と落体の間および血液と有底管体内壁面の間には滑りが発生せず、血液は非圧縮性であり、管内流動は層流であるという条件(仮定)の下で、有底管体(3)に満たされた血液の中央を略針状落体(2)が落下終端速度Utで落下すると、図11に示すように、微小円柱殻(50)の上面及び下面にはそれぞれ圧力p1、p2が働き、内側面及び外側面にはそれぞれ剪断応力τ、τ+dτが働く。また、血液は等速落下運動をしているので、運動量増加速度は0となる。従って、このときの微小円柱殻(50)に働く力の釣り合いから以下の関係式<1>が成り立つ。
【0049】
【数1】
【0050】
但し、△p=p1−p2 (△p<0)である。
【0051】
また、このとき、落体(2)の壁面と有底管体(3)の内壁面には滑りが生じないと仮定しているので、速度に関する境界条件として以下の関係式<2>が成り立つ。
【0052】
【数2】
【0053】
また、落体(2)の壁面と有底管体(3)の内壁面との間に形成される環状流路を単位時間当たりに通過する血液の量は落体(2)が押し退ける血液の量と等しいので、以下の関係式<3>が成り立つ。
【0054】
【数3】
【0055】
さらに、落体(2)の壁面において、重力、浮力、圧力及び粘性力が釣り合っているので、以下の関係式<4>が成り立つ。
【0056】
【数4】
【0057】
以上の式<1>〜<4>に、血液の構成方程式(Newton流体の構成方程式)である式<5>を連立させることによって、血液の粘度を解析することができる。即ち、血液は、凝固する前の状態であればNewton流体であるから、式<1>〜<4>にNewton流体の構成方程式である式<5>を連立させることによって、血液の粘度を解析することができる。
【0058】
【数5】
【0059】
式<5>において、τは剪断応力、γ(ガンマ)は剪断速度、μ(ミュー)は血液の粘度である。
【0060】
なお、前記実施形態(図1)では、受容凹部(4)は、前記有底管体(3)の底面壁(23)の内面に形成されていたが、特にこのような構成に限定されるものではなく、例えば、図2に示すように受容凹部(4)は前記密封栓(6)の内面に形成されていても良い。即ち、図2に示す実施形態では、前記密封栓(6)の内面の中央部に前記略針状落体(2)の少なくとも一部を受容し得る受容凹部(4)が形成されると共に、前記密封栓(6)の内面は、その周縁部から中央部の受容凹部(4)に向かって下から上に傾斜する傾斜面(5)に形成されている。
【0061】
また、前記血液粘度測定用採血管(1)としては、図4に示すような構成を採用することもできる。即ち、この血液粘度測定用採血管(1)は、有底管体(3)の上端開口部が弾性体からなる密封栓(6)によって密栓されると共に前記有底管体(3)の内部に粘度測定用落体(2)が封入されてなり、前記有底管体(3)の底面壁(23)の内面が平坦面に形成される一方、前記粘度測定用落体(2)は、略針状本体部(51)の一端部に該本体部(51)の軸線に対して直交する状態に平板部(52)が連接されたものからなり、該平板部(52)における非連接面が平坦面に形成されて平坦面部(53)を備えている。また、図5の詳細図に示すように、前記粘度測定用落体(2)の略針状本体部(51)の内部に金属製錘(12)が配置されていると共に、前記略針状本体部(51)の上部開口端にキャップ(13)が嵌合されている。
【0062】
図4に示す構成の採血管(1)では、有底管体(3)の底面壁(23)の内面が平坦面に形成されると共に、粘度測定用落体(2)は、その少なくとも一部に平坦面部(53)を有するから、有底管体(3)の底面壁(23)の内面において落体(2)を安定状態に保持することが可能となり(図10(イ)参照)、これにより粘度測定に際し採血管(1)を上下反転させた時に採血管(1)内の落体(2)を鉛直下方向に向けて安定状態に落下させることができる(図10(ロ)(ハ)参照)。
【0063】
また、前記血液粘度測定用採血管(1)としては、図6に示すような構成を採用することもできる。即ち、図6(イ)に示す血液粘度測定用採血管(1)は、有底管体(3)の上端開口部が弾性体からなる密封栓(6)によって密栓されると共に前記有底管体(3)の内部に半球状の粘度測定用落体(2)が封入されてなり、前記有底管体(3)の底面壁(23)の内面が平坦面に形成される一方、前記半球状の落体(2)の一部に平坦面部(53)を有している。また、図6(ロ)に示す血液粘度測定用採血管(1)は、有底管体(3)の上端開口部が弾性体からなる密封栓(6)によって密栓されると共に前記有底管体(3)の内部に円錐状の粘度測定用落体(2)が封入されてなり、前記有底管体(3)の底面壁(23)の内面が平坦面に形成される一方、前記円錐状の落体(2)の一部(円錐の底面)に平坦面部(53)を有している。
【0064】
これら図6(イ)(ロ)に示す構成の採血管(1)では、有底管体(3)の底面壁(23)の内面が平坦面に形成されると共に、粘度測定用落体(2)は、その少なくとも一部に平坦面部(53)を有するから、有底管体(3)の底面壁(23)の内面において落体(2)を安定状態に保持することが可能となり、これにより粘度測定に際し採血管(1)を上下反転させた時に採血管(1)内の落体(2)を鉛直下方向に向けて安定状態で落下させることが可能となる。
【0065】
この発明において、前記有底管体(3)を構成する素材は、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂を用いるのが好ましい。この場合には、有底管体(3)の内面への血液のこびり付きを十分に防止することができるので、血液の粘度測定をより精度高く行うことができる。
【0066】
また、前記略針状体(11)を構成する合成樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂を用いるのが好ましい。この場合には、落体(2)の表面への血液のこびり付きを確実に防止することができ、従って血液の粘度測定をより精度高く行うことができる利点がある。なお、合成樹脂からなる略針状体(11)の表面に、気泡が付着するのを防止するためのコーティング層が形成されても良い。このような気泡付着防止コーティング層としては、例えば親水性コーティング層を例示できる。また、前記金属製錘(12)は、塊状、粒体、粉体等どのような形態であっても良い。
【0067】
なお、前記実施形態では、落体(2)として、金属製錘(12)を中に封入した合成樹脂製の落体を用いているが、特にこのような構成に限定されるものではなく、例えば磁性体を中に封入した合成樹脂製の落体を用いても良い。
【0068】
前記略針状落体(2)の大きさとしては、特に限定されないものの、より少量の血液量での粘度測定を可能にすると共に粘度測定の精度を向上させる観点から、外径(m1、m2)が0.5〜3mm、長さ(L)が5〜100mmの範囲に設定されるのが好ましい。図3において、m1=m2、m1>m2、m1<m2、いずれの関係が成立する構成であっても良い。
【0069】
なお、前記落体(2)の密度とは、見かけ密度を意味するものであり、落体(2)の質量を落体の体積(空隙部を含めた体積)で除した値である。
【実施例】
【0070】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0071】
<実施例1>
45歳の男性の血液を図1に示す構成からなる血液粘度測定用採血管(1)内に採取した後、図8に示す構成からなる血液粘度測定装置(30)を用いて前項で説明した手順に従って血液の粘度測定を行った。採血管(1)の内径は8mm、長さは90mmであり、採血管(1)の内容量は5mLであった。略針状落体(2)の長さ(L)は20mm、上方側の外径(m1)は2.0mm、下方側の外径(m2)は2.0mmであった。また、略針状落体(2)の密度は1.460g/cm3であった。また、採取した血液の密度は1.0571g/cm3であった。採血管(1)内の血液の温度が37.0℃になるようにヒーターを制御して測定を行った。
【0072】
略針状落体(2)が一方の磁気センサー(32B)から他方の磁気センサー(32A)の位置まで落下するのに要した時間は0.219秒であり、これより求められた落体(2)の落下終端速度Utは15.4cm/秒であった。
【0073】
式<1>〜式<4>の4式とNewton流体の構成方程式<5>とを連立させて血液の粘度μを算出した。その結果、この血液の粘度μは6.29mPa・secであることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
この発明の血液粘度測定用採血管は、血液の採血に用いられると共に、中に粘度測定用落体が封入されているので、採血後の採血管はそのまま粘度測定容器として粘度測定に供される。即ち、この発明の血液粘度測定用採血管は、採血管としての機能を有するのみならず、粘度測定容器としての機能も兼ね備えている。この発明の血液粘度測定用採血管を用いれば、血液の粘度測定を精度高く行うことができるので、血液疾患の予測や病気の早期発見に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】この発明に係る血液粘度測定用採血管の一実施形態を示す断面図である。
【図2】この発明に係る血液粘度測定用採血管の他の実施形態を示す断面図である。
【図3】略針状落体の一実施形態を示す断面図である。
【図4】この発明に係る血液粘度測定用採血管のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図5】図4の採血管で用いた落体の拡大断面図である。
【図6】(イ)(ロ)いずれも血液粘度測定用採血管のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図7】図1の血液粘度測定用採血管を用いた採血状態を示す模式図である。
【図8】血液粘度測定装置の構成を示す断面図である。
【図9】(イ)は図1の血液粘度測定用採血管を保持手段に装着した状態、(ロ)は保持手段を180度回転させて採血管を上下反転させた状態、(ハ)は落体を落下させた途中状態、をそれぞれ示す図である。
【図10】(イ)は図4の血液粘度測定用採血管を保持手段に装着した状態、(ロ)は保持手段を180度回転させて採血管を上下反転させた状態、(ハ)は落体を落下させた途中状態、をそれぞれ示す図である。
【図11】略針状落体が落下している時の状態を示す概念図である。
【図12】落下する略針状落体が押し退ける血液の移動方向を示す速度断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1…血液粘度測定用採血管
2…粘度測定用落体
3…有底管体
4…受容凹部
5…傾斜面
6…密封栓
11…略針状体
12…金属製錘
23…底面壁
51…略針状本体部
52…平板部
53…平坦面部(落体の)
【技術分野】
【0001】
この発明は、血液を採取したのち非常に短時間で血液の粘度測定を開始することを可能ならしめる血液粘度測定用採血管に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人の血液の粘度に関して非常に関心が高まっている。例えば、一般に「ドロドロ血液」では健康状態が良くない状態であるとされ、これを「サラサラ血液」にするために効果のある食品や成分の紹介が新聞やテレビ等で多く行われている。このような血液の粘度特性を把握することができれば、血液疾患の予測が可能になったり、病気を早期に発見することも可能になると言われている。
【0003】
従来、血液の粘度を測定するために内部に鋼球が入ったシリンジで採血し、鋼球を磁力を用いてシリンジ内の上方位置に上昇させた後、鋼球を落下させてこの落下する鋼球の落下終端速度を測定することにより血液の粘度を求める落球式血液粘度測定装置が公知である(特許文献1参照)。
【0004】
また、流体の粘度を測定する装置としては、流体を満たした円筒状測定容器内を落下する円柱状落体の落下終端速度を測定することにより流体の粘度を求める落体式粘度測定装置が公知である(特許文献2参照)。
【特許文献1】米国特許4388823号公報
【特許文献2】特開平8−219973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の血液粘度測定装置ではシリンジが使用されており、このシリンジをそのまま測定に使用する場合には、採血後に採血針を取り外すか、或いは採血針を覆うカバーを取り付ける必要があるが、その際に検査者が誤って採血針に触れたり、採血針で刺してしまう危険性がある。また、粘度測定に際しては容器の容積が一定であることが望ましいが、シリンジを用いた場合には容積が変動してしまって精度高い粘度測定を行うことができないという問題もあった。
【0006】
また、血液は、空気に触れると凝固作用によって徐々に凝固していくことから、通常の血液検査においては採取血液に抗凝固剤を添加している。この抗凝固剤の添加は、成分分析にはそれほど影響しないが、血液の状態を評価する粘度測定には大きく影響する。そのため、血液の粘度を測定するためには、抗凝固剤を添加せず、且つ血液の凝固が始まらないように血液を採取してから3分以内に粘度測定を完了するのが望ましい。
【0007】
しかるに、上記特許文献2に記載の粘度測定装置では、血液の粘度測定に際し、採血管内に採取した血液を粘度測定装置の測定容器内に移し替える操作を要するために、血液を採取してから3分を超えないまでも、粘度測定開始までに少なからず時間を要するものとなっていた。また、採取血液の測定容器内への移し替えの際に、採取血液の空気との接触機会が増大して血液凝固を促進させることも懸念されるところである。
【0008】
このような背景から、シリンジよりも容易かつ安全で精度良く血液粘度が測定できると共に、血液を採取してから粘度測定を開始するに至るまでの時間を短縮できる手段、方法の開発が求められていた。
【0009】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、採血管を使用した粘度測定を可能にすると共に、採血管内の採取血液を粘度測定装置の測定容器内に移し替える操作を省略できて、血液を採取したのち非常に短時間で血液の粘度測定を開始することを可能ならしめる血液粘度測定用採血管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0011】
[1]粘度測定用落体が封入されていることを特徴とする血液粘度測定用採血管。
【0012】
[2]前記粘度測定用落体は、略針状体からなる前項1に記載の血液粘度測定用採血管。
【0013】
[3]有底管体の上端開口部が密封栓によって密栓されると共に前記有底管体の内部に略針状の粘度測定用落体が封入されてなり、前記有底管体の底面壁の内面の中央部に前記略針状落体の少なくとも一端部を受容し得る受容凹部が形成されると共に、前記底面壁の内面は、その周縁部から中央部の受容凹部に向かって上から下に傾斜する傾斜面に形成されていることを特徴とする血液粘度測定用採血管。
【0014】
[4]有底管体の上端開口部が密封栓によって密栓されると共に前記有底管体の内部に略針状の粘度測定用落体が封入されてなり、前記密封栓の内面の中央部に前記略針状落体の少なくとも一端部を受容し得る受容凹部が形成されると共に、前記密封栓の内面は、その周縁部から中央部の受容凹部に向かって下から上に傾斜する傾斜面に形成されていることを特徴とする血液粘度測定用採血管。
【0015】
[5]前記粘度測定用落体は、金属製錘を中に封入した合成樹脂製の略針状体からなる前項1、3、4のいずれか1項に記載の血液粘度測定用採血管。
【0016】
[6]前記粘度測定用落体は、磁性体を中に封入した合成樹脂製の略針状体からなる前項1、3、4のいずれか1項に記載の血液粘度測定用採血管。
【0017】
[7]有底管体の上端開口部が密封栓によって密栓されると共に前記有底管体の内部に粘度測定用落体が封入されてなり、前記有底管体の底面壁の内面又は/及び前記密封栓の内面が平坦面に形成されると共に、前記粘度測定用落体は、その少なくとも一部に平坦面部を有することを特徴とする血液粘度測定用採血管。
【0018】
[8]前記粘度測定用落体は、略針状本体部の一端部に該本体部の軸線に対して直交する状態に平板部が連接されたものからなり、該平板部における少なくとも非連接面が平坦面に形成されている前項7に記載の血液粘度測定用採血管。
【0019】
[9]前記粘度測定用落体は、金属製錘を中に封入した合成樹脂製の落体からなる前項7または8に記載の血液粘度測定用採血管。
【0020】
[10]前記粘度測定用落体は、磁性体を中に封入した合成樹脂製の落体からなる前項7または8に記載の血液粘度測定用採血管。
【発明の効果】
【0021】
[1]の発明では、採血管の中に粘度測定用落体が封入されているから、この採血管内に血液を採取した後は、この採血管をそのまま粘度測定容器として粘度測定に供することができ、これにより血液の粘度測定に際し採血管内の採取血液を粘度測定装置の測定容器内に移し替える操作をする必要がなくなるので、この血液粘度測定用採血管を用いれば、血液を採取したのち非常に短時間で(速やかに)血液の粘度測定を開始することができる。従って、この発明の血液粘度測定用採血管を用いれば、血液の粘度測定を精度高く行うことが可能となる。
【0022】
[2]の発明では、粘度測定用落体は、略針状体からなる構成が採用されており、落体が球体である場合と比較して血液の粘度測定をより精度高く行うことができる。
【0023】
[3]の発明では、採血管の中に粘度測定用落体が封入されているから、この採血管内に血液を採取した後は、この採血管をそのまま粘度測定容器として粘度測定に供することができ、これにより血液の粘度測定に際し採血管内の採取血液を粘度測定装置の測定容器内に移し替える操作をする必要がなくなるので、この血液粘度測定用採血管を用いれば、血液を採取したのち非常に短時間で血液の粘度測定を開始することができる。従って、この発明の血液粘度測定用採血管を用いれば、血液の粘度測定を精度高く行うことが可能となる。また、有底管体の底面壁の内面側の中央部に略針状落体の少なくとも一端部を受容し得る受容凹部が形成されているから、採血管内の該受容凹部において略針状落体を安定状態に保持することができ、これにより粘度測定の際に採血管内の落体を安定状態に落下させることができる。また、有底管体の底面壁の内面は、その周縁部から中央部の受容凹部に向かって上から下に傾斜する傾斜面に形成されているから、略針状落体を有底管体の底面壁の受容凹部にスムーズにかつ確実に誘導案内することができる。
【0024】
[4]の発明では、採血管の中に粘度測定用落体が封入されているから、この採血管内に血液を採取した後は、この採血管をそのまま粘度測定容器として粘度測定に供することができ、これにより血液の粘度測定に際し採血管内の採取血液を粘度測定装置の測定容器内に移し替える操作をする必要がなくなるので、この血液粘度測定用採血管を用いれば、血液を採取したのち非常に短時間で血液の粘度測定を開始することができる。従って、この発明の血液粘度測定用採血管を用いれば、血液の粘度測定を精度高く行うことが可能となる。また、密封栓の内面の中央部に略針状落体の少なくとも一端部を受容し得る受容凹部が形成されているから、採血管内の該受容凹部において略針状落体を安定状態に保持することができ、これにより粘度測定の際に採血管内の落体を安定状態に落下させることができる。また、密封栓の内面は、その周縁部から中央部の受容凹部に向かって下から上に傾斜する傾斜面に形成されているから、略針状落体を密封栓の内面の受容凹部にスムーズにかつ確実に誘導案内することができる。
【0025】
[5]の発明では、粘度測定用落体は、金属製錘を中に封入した合成樹脂製の略針状体からなる構成が採用されており、落体の外側が合成樹脂であることで落体の表面に血液がこびり付くことがなく、従って血液の粘度測定をより精度高く行うことができる。
【0026】
[6]の発明では、粘度測定用落体は、磁性体を中に封入した合成樹脂製の略針状体からなる構成が採用されており、落体の外側が合成樹脂であることで落体の表面に血液がこびり付くことがなく、従って血液の粘度測定をより精度高く行うことができる。
【0027】
[7]の発明では、採血管の中に粘度測定用落体が封入されているから、この採血管内に血液を採取した後は、この採血管をそのまま粘度測定容器として粘度測定に供することができ、これにより血液の粘度測定に際し採血管内の採取血液を粘度測定装置の測定容器内に移し替える操作をする必要がなくなるので、この血液粘度測定用採血管を用いれば、血液を採取したのち非常に短時間で血液の粘度測定を開始することができる。従って、この発明の血液粘度測定用採血管を用いれば、血液の粘度測定を精度高く行うことが可能となる。また、有底管体の底面壁の内面又は/及び密封栓の内面が平坦面に形成されると共に、粘度測定用落体は、その少なくとも一部に平坦面部を有するから、有底管体の底面壁の内面又は/及び密封栓の内面において落体を安定状態に保持することが可能となる。これにより、粘度測定の際に採血管内の落体を安定状態に落下させることができる。
【0028】
[8]の発明では、粘度測定の際に採血管内の落体をより安定状態に落下させることができる。
【0029】
[9]の発明では、粘度測定用落体は、金属製錘を中に封入した合成樹脂製の落体からなる構成が採用されており、落体の外側が合成樹脂であることで落体の表面に血液がこびり付くことがなく、従って血液の粘度測定をより精度高く行うことができる。
【0030】
[10]の発明では、粘度測定用落体は、磁性体を中に封入した合成樹脂製の落体からなる構成が採用されており、落体の外側が合成樹脂であることで落体の表面に血液がこびり付くことがなく、従って血液の粘度測定をより精度高く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
この発明に係る血液粘度測定用採血管(1)の一実施形態を図1に示す。この血液粘度測定用採血管(1)は、合成樹脂からなる有底管体(3)の上端開口部が弾性体からなる密封栓(6)によって密栓されると共に有底管体(3)の内部空間に粘度測定用落体(2)が封入されたものからなる。本実施形態では、前記粘度測定用落体(2)は略針状に形成されている。前記密栓された有底管体(3)の内部空間は、減圧状態になるように減圧処理されている。
【0032】
前記略針状落体(2)は、金属製錘(12)を中に封入した合成樹脂製の略針状体(11)からなる。本実施形態では、図3に示すように、有底円筒状の合成樹脂製の略針状体(11)の内部に金属製錘(12)が配置されると共に略針状体(11)の上部開口端にキャップ(13)が嵌合されてなる略針状落体(2)が用いられている。
【0033】
また、前記有底管体(3)の底面(21)の上面に合成樹脂からなる底部(22)が接合されることによって有底管体(3)の底面壁(23)が形成されている。前記底部(22)の上面の中央部に前記略針状落体(2)の一端部を受容し得る受容凹部(4)が形成されている。この受容凹部(4)は、前記底部(22)の上面の中央部に円柱形状の孔が穿設されて形成されたものである。更に、前記底部(22)の上面(即ち底面壁(23)の内面)は、その周縁部から中央部の受容凹部(4)に向かって上から下に傾斜する傾斜面(5)に形成されている。
【0034】
上記構成の血液粘度測定用採血管(1)では、採血管の中に粘度測定用落体(2)が封入されているから、この採血管(1)内に血液を採取した後は、この採血管(1)をそのまま粘度測定容器として粘度測定に供することができ、これにより血液の粘度測定に際し採血管(1)内の採取血液を粘度測定装置の測定容器内に移し替える操作をする必要がなくなることから、この血液粘度測定用採血管(1)を用いれば、血液を採取したのち非常に短時間で血液の粘度測定を開始することができる。これにより血液の粘度測定を精度高く行うことが可能となる。採血管(1)内の採取血液を粘度測定装置の測定容器内に移し替える操作を省略できるので、採取血液の空気との接触を極力回避し得て、血液凝固の進行を緩和できる利点もある。また、有底管体(3)の底面壁(23)の内面の中央部に略針状落体(2)の少なくとも一端部を受容し得る受容凹部(4)が形成されているから、採血管(1)内の該受容凹部(4)において略針状落体(2)を安定状態に保持することができ、これにより粘度測定の際に採血管(1)内の落体(2)を安定状態に落下させることができる。また、有底管体(3)の底面壁(23)の内面は、その周縁部から中央部の受容凹部(4)に向かって上から下に傾斜する傾斜面(5)に形成されているから、略針状落体(2)を有底管体(3)の底面壁(23)内面の受容凹部(4)にスムーズにかつ確実に誘導案内することができる。
【0035】
次に、本発明の血液粘度測定用採血管(1)を用いて粘度測定を行うための血液粘度測定装置(30)の一実施形態を図8に示す。この血液粘度測定装置(30)は、中に粘度測定用落体(2)が封入された血液粘度測定用採血管(1)、保持手段(31)、検出手段(32)、反転手段(33)及び固定手段(34)を備えてなる。前記血液粘度測定用採血管(1)は、前述した図1に示す構成を備えてなる。
【0036】
前記保持手段(31)は、前記血液粘度測定用採血管(1)を保持する手段であり、本実施形態では、両端が開口された円筒状の筒状体(41)の一端が固定手段(34)で封止されたものが保持手段(31)として用いられている。この保持手段(31)の他端の開口部からその内部空間に前記血液粘度測定用採血管(1)を挿入配置し得るものとなされている。また、前記保持手段(31)の筒状体(41)の内部にヒーター(図示しない)が配置されている。このヒーターは、前記保持手段(31)で保持した採血管(1)内の血液の温度を所定温度に維持するためのものである。
【0037】
前記固定手段(34)は、前記血液粘度測定用採血管(1)内の落体(2)を採血管(1)内の一端側に固定するための手段である。本実施形態では、前記固定手段(34)として電磁石が用いられている。即ち、電磁石(34)のスイッチをONにした状態では、電磁石(34)から発せられる磁力により、金属製錘(12)を内包した落体(2)を採血管(1)内の一端側に固定した状態を維持することができる。即ち、電磁石(34)のスイッチをONにしておけば、その磁力により、図9(ロ)に示すように、粘度測定のために採血管(1)を180度回転させて上下反転状態にしても略針状落体(2)は受容凹部(4)内に安定状態に保持固定される。
【0038】
また、前記保持手段(31)を構成する筒状体(41)には、前記採血管(1)内を落下する落体(2)の落下終端速度を検出する検出手段(32)が取り付けられている。本実施形態では、検出手段(32)として、相互に離間して配置された一対の磁気センサー(32A)(32B)及び計測装置(図示しない)が用いられている。即ち、図8に示すように、上側の磁気センサー(32A)は保持手段(31)の上方位置に配置される一方、下側の磁気センサー(32B)は前記上側の磁気センサー(32A)より下の位置で且つ上側の磁気センサー(32A)と所定間隔をあけて配置されている。前記計測装置は、前記磁気センサー(32B)からの検知信号を受けたのちもう一方の磁気センサー(32A)からの検知信号を受けるまでの時間を計測する装置である(図9(ハ)参照)。この計測装置により、落体(2)が一方の磁気センサー(32B)からもう一方の磁気センサー(32A)の位置まで落下するのに要した時間を計測することができる。なお、前記「落下終端速度」とは、流体中を等速度落下運動をしているときの速度のことである。
【0039】
また、前記反転手段(33)は、土台部(42)と、該土台部(42)の上面から上方に向けて延ばされた棒状の枢支手段(43)(43)とを備えている。前記保持手段(31)の筒状体(41)の外周面の高さ方向の中間位置から相互対向状態に一対の軸部(44)(44)が外方に向けて突設形成されており、これら軸部(44)(44)がそれぞれ前記枢支手段(43)(43)の上端部に穿設された軸受け孔(45)(45)に挿入配置されることによって、前記保持手段(31)が前記反転手段(33)によって回転自在に枢支されている。
【0040】
次に、上記構成からなる血液粘度測定装置(30)を用いた血液の粘度測定方法の一例について説明する。
【0041】
まず、図7に示すように、ホルダ(27)の先端部に貫通状態に固定された針(28)を人体の皮膚(29)に刺し入れた後、前記血液粘度測定用採血管(1)をホルダ(27)内に挿入していくことによって前記針(28)を前記密封栓(6)に貫通せしめて該針(28)の先端を採血管(1)の内部空間内に配置せしめる。この時、採血管(1)の内部空間は減圧状態になっているので採血管(1)の内部に血液(60)が採血される。
【0042】
次に、図9(イ)に示すように、内部に血液(60)が採血された前記採血管(1)を前記測定装置(30)の保持手段(31)の上端開口部からその内部に挿入していき、前記採血管(1)の底面壁(23)が前記固定手段(34)に当接する状態に挿入嵌合せしめる。この時、前記略針状落体(2)は、採血管(1)内を落下していき底面壁(23)の傾斜面(5)に誘導案内されて略針状落体(2)の一端部が受容凹部(4)内に嵌まり込むので、前記略針状落体(2)は該受容凹部(4)によって安定状態に保持される。
【0043】
次の反転操作の前に、前記固定手段(34)である電磁石のスイッチをONにして該電磁石からの磁力によって、金属製錘(12)を内包した落体(2)を採血管(1)内の一端側の受容凹部(4)内に固定した状態を維持する。
【0044】
次いで、図9(ロ)に示すように、保持手段(31)を180度回転させて上下反転させることによって採血管(1)を上下反転状態にしてこの状態を維持する。この時、前記電磁石(34)からの磁力により、前記略針状落体(2)は受容凹部(4)内に安定状態に保持固定されている(落下しない)。
【0045】
しかる後、電磁石(34)のスイッチをOFFにすると、採血管(1)内の受容凹部(4)内に保持されていた略針状落体(2)が落下する(図9(ハ)参照)。この時、略針状落体(2)は、採血管(1)内の血液(60)中を鉛直下方向に向けて安定状態に落下する。しかして、落体(2)が一方の磁気センサー(32B)を通過した時に計測装置は該磁気センサー(32B)からの検知信号を受け、その後落体(2)がもう一方の磁気センサー(32A)を通過した時に計測装置は該磁気センサー(32A)からの検知信号を受け、これらにより、計測装置は、落体(2)が一方の磁気センサー(32B)から他方の他方の磁気センサー(32A)の位置まで落下するのに要した時間を算出する。求められた落下時間と磁気センサー(32A)(32B)間の距離とから落体(2)の落下終端速度Utを算出する。
【0046】
次に、前記得られた落体(2)の落下終端速度Utを用いて血液粘度を求める方法について説明する。
【0047】
図11は、略針状落体(2)が落下している時の状態を示す概念図であり、図12は、落下する略針状落体(2)が押し退ける血液(60)の移動方向を示す速度断面図である。これら図11、図12において、「L」は略針状落体(2)の長さ、「kR」は略針状落体(2)の半径、「R」は有底管体(3)の半径であり、また(50)は落下する落体により押し退けられる落体周囲の流体要素としての微小円柱殻であり、「r」は微小円柱殻の内半径、「r+dr」は微小円柱殻の外半径、「L」は微小円柱殻の長さである。
【0048】
略針状落体(2)の落下速度が0.1×10-3m/s〜0.18m/sと非常に小さく、血液と落体の間および血液と有底管体内壁面の間には滑りが発生せず、血液は非圧縮性であり、管内流動は層流であるという条件(仮定)の下で、有底管体(3)に満たされた血液の中央を略針状落体(2)が落下終端速度Utで落下すると、図11に示すように、微小円柱殻(50)の上面及び下面にはそれぞれ圧力p1、p2が働き、内側面及び外側面にはそれぞれ剪断応力τ、τ+dτが働く。また、血液は等速落下運動をしているので、運動量増加速度は0となる。従って、このときの微小円柱殻(50)に働く力の釣り合いから以下の関係式<1>が成り立つ。
【0049】
【数1】
【0050】
但し、△p=p1−p2 (△p<0)である。
【0051】
また、このとき、落体(2)の壁面と有底管体(3)の内壁面には滑りが生じないと仮定しているので、速度に関する境界条件として以下の関係式<2>が成り立つ。
【0052】
【数2】
【0053】
また、落体(2)の壁面と有底管体(3)の内壁面との間に形成される環状流路を単位時間当たりに通過する血液の量は落体(2)が押し退ける血液の量と等しいので、以下の関係式<3>が成り立つ。
【0054】
【数3】
【0055】
さらに、落体(2)の壁面において、重力、浮力、圧力及び粘性力が釣り合っているので、以下の関係式<4>が成り立つ。
【0056】
【数4】
【0057】
以上の式<1>〜<4>に、血液の構成方程式(Newton流体の構成方程式)である式<5>を連立させることによって、血液の粘度を解析することができる。即ち、血液は、凝固する前の状態であればNewton流体であるから、式<1>〜<4>にNewton流体の構成方程式である式<5>を連立させることによって、血液の粘度を解析することができる。
【0058】
【数5】
【0059】
式<5>において、τは剪断応力、γ(ガンマ)は剪断速度、μ(ミュー)は血液の粘度である。
【0060】
なお、前記実施形態(図1)では、受容凹部(4)は、前記有底管体(3)の底面壁(23)の内面に形成されていたが、特にこのような構成に限定されるものではなく、例えば、図2に示すように受容凹部(4)は前記密封栓(6)の内面に形成されていても良い。即ち、図2に示す実施形態では、前記密封栓(6)の内面の中央部に前記略針状落体(2)の少なくとも一部を受容し得る受容凹部(4)が形成されると共に、前記密封栓(6)の内面は、その周縁部から中央部の受容凹部(4)に向かって下から上に傾斜する傾斜面(5)に形成されている。
【0061】
また、前記血液粘度測定用採血管(1)としては、図4に示すような構成を採用することもできる。即ち、この血液粘度測定用採血管(1)は、有底管体(3)の上端開口部が弾性体からなる密封栓(6)によって密栓されると共に前記有底管体(3)の内部に粘度測定用落体(2)が封入されてなり、前記有底管体(3)の底面壁(23)の内面が平坦面に形成される一方、前記粘度測定用落体(2)は、略針状本体部(51)の一端部に該本体部(51)の軸線に対して直交する状態に平板部(52)が連接されたものからなり、該平板部(52)における非連接面が平坦面に形成されて平坦面部(53)を備えている。また、図5の詳細図に示すように、前記粘度測定用落体(2)の略針状本体部(51)の内部に金属製錘(12)が配置されていると共に、前記略針状本体部(51)の上部開口端にキャップ(13)が嵌合されている。
【0062】
図4に示す構成の採血管(1)では、有底管体(3)の底面壁(23)の内面が平坦面に形成されると共に、粘度測定用落体(2)は、その少なくとも一部に平坦面部(53)を有するから、有底管体(3)の底面壁(23)の内面において落体(2)を安定状態に保持することが可能となり(図10(イ)参照)、これにより粘度測定に際し採血管(1)を上下反転させた時に採血管(1)内の落体(2)を鉛直下方向に向けて安定状態に落下させることができる(図10(ロ)(ハ)参照)。
【0063】
また、前記血液粘度測定用採血管(1)としては、図6に示すような構成を採用することもできる。即ち、図6(イ)に示す血液粘度測定用採血管(1)は、有底管体(3)の上端開口部が弾性体からなる密封栓(6)によって密栓されると共に前記有底管体(3)の内部に半球状の粘度測定用落体(2)が封入されてなり、前記有底管体(3)の底面壁(23)の内面が平坦面に形成される一方、前記半球状の落体(2)の一部に平坦面部(53)を有している。また、図6(ロ)に示す血液粘度測定用採血管(1)は、有底管体(3)の上端開口部が弾性体からなる密封栓(6)によって密栓されると共に前記有底管体(3)の内部に円錐状の粘度測定用落体(2)が封入されてなり、前記有底管体(3)の底面壁(23)の内面が平坦面に形成される一方、前記円錐状の落体(2)の一部(円錐の底面)に平坦面部(53)を有している。
【0064】
これら図6(イ)(ロ)に示す構成の採血管(1)では、有底管体(3)の底面壁(23)の内面が平坦面に形成されると共に、粘度測定用落体(2)は、その少なくとも一部に平坦面部(53)を有するから、有底管体(3)の底面壁(23)の内面において落体(2)を安定状態に保持することが可能となり、これにより粘度測定に際し採血管(1)を上下反転させた時に採血管(1)内の落体(2)を鉛直下方向に向けて安定状態で落下させることが可能となる。
【0065】
この発明において、前記有底管体(3)を構成する素材は、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂を用いるのが好ましい。この場合には、有底管体(3)の内面への血液のこびり付きを十分に防止することができるので、血液の粘度測定をより精度高く行うことができる。
【0066】
また、前記略針状体(11)を構成する合成樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂を用いるのが好ましい。この場合には、落体(2)の表面への血液のこびり付きを確実に防止することができ、従って血液の粘度測定をより精度高く行うことができる利点がある。なお、合成樹脂からなる略針状体(11)の表面に、気泡が付着するのを防止するためのコーティング層が形成されても良い。このような気泡付着防止コーティング層としては、例えば親水性コーティング層を例示できる。また、前記金属製錘(12)は、塊状、粒体、粉体等どのような形態であっても良い。
【0067】
なお、前記実施形態では、落体(2)として、金属製錘(12)を中に封入した合成樹脂製の落体を用いているが、特にこのような構成に限定されるものではなく、例えば磁性体を中に封入した合成樹脂製の落体を用いても良い。
【0068】
前記略針状落体(2)の大きさとしては、特に限定されないものの、より少量の血液量での粘度測定を可能にすると共に粘度測定の精度を向上させる観点から、外径(m1、m2)が0.5〜3mm、長さ(L)が5〜100mmの範囲に設定されるのが好ましい。図3において、m1=m2、m1>m2、m1<m2、いずれの関係が成立する構成であっても良い。
【0069】
なお、前記落体(2)の密度とは、見かけ密度を意味するものであり、落体(2)の質量を落体の体積(空隙部を含めた体積)で除した値である。
【実施例】
【0070】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0071】
<実施例1>
45歳の男性の血液を図1に示す構成からなる血液粘度測定用採血管(1)内に採取した後、図8に示す構成からなる血液粘度測定装置(30)を用いて前項で説明した手順に従って血液の粘度測定を行った。採血管(1)の内径は8mm、長さは90mmであり、採血管(1)の内容量は5mLであった。略針状落体(2)の長さ(L)は20mm、上方側の外径(m1)は2.0mm、下方側の外径(m2)は2.0mmであった。また、略針状落体(2)の密度は1.460g/cm3であった。また、採取した血液の密度は1.0571g/cm3であった。採血管(1)内の血液の温度が37.0℃になるようにヒーターを制御して測定を行った。
【0072】
略針状落体(2)が一方の磁気センサー(32B)から他方の磁気センサー(32A)の位置まで落下するのに要した時間は0.219秒であり、これより求められた落体(2)の落下終端速度Utは15.4cm/秒であった。
【0073】
式<1>〜式<4>の4式とNewton流体の構成方程式<5>とを連立させて血液の粘度μを算出した。その結果、この血液の粘度μは6.29mPa・secであることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
この発明の血液粘度測定用採血管は、血液の採血に用いられると共に、中に粘度測定用落体が封入されているので、採血後の採血管はそのまま粘度測定容器として粘度測定に供される。即ち、この発明の血液粘度測定用採血管は、採血管としての機能を有するのみならず、粘度測定容器としての機能も兼ね備えている。この発明の血液粘度測定用採血管を用いれば、血液の粘度測定を精度高く行うことができるので、血液疾患の予測や病気の早期発見に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】この発明に係る血液粘度測定用採血管の一実施形態を示す断面図である。
【図2】この発明に係る血液粘度測定用採血管の他の実施形態を示す断面図である。
【図3】略針状落体の一実施形態を示す断面図である。
【図4】この発明に係る血液粘度測定用採血管のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図5】図4の採血管で用いた落体の拡大断面図である。
【図6】(イ)(ロ)いずれも血液粘度測定用採血管のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図7】図1の血液粘度測定用採血管を用いた採血状態を示す模式図である。
【図8】血液粘度測定装置の構成を示す断面図である。
【図9】(イ)は図1の血液粘度測定用採血管を保持手段に装着した状態、(ロ)は保持手段を180度回転させて採血管を上下反転させた状態、(ハ)は落体を落下させた途中状態、をそれぞれ示す図である。
【図10】(イ)は図4の血液粘度測定用採血管を保持手段に装着した状態、(ロ)は保持手段を180度回転させて採血管を上下反転させた状態、(ハ)は落体を落下させた途中状態、をそれぞれ示す図である。
【図11】略針状落体が落下している時の状態を示す概念図である。
【図12】落下する略針状落体が押し退ける血液の移動方向を示す速度断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1…血液粘度測定用採血管
2…粘度測定用落体
3…有底管体
4…受容凹部
5…傾斜面
6…密封栓
11…略針状体
12…金属製錘
23…底面壁
51…略針状本体部
52…平板部
53…平坦面部(落体の)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度測定用落体が封入されていることを特徴とする血液粘度測定用採血管。
【請求項2】
前記粘度測定用落体は、略針状体からなる請求項1に記載の血液粘度測定用採血管。
【請求項3】
有底管体の上端開口部が密封栓によって密栓されると共に前記有底管体の内部に略針状の粘度測定用落体が封入されてなり、
前記有底管体の底面壁の内面の中央部に前記略針状落体の少なくとも一端部を受容し得る受容凹部が形成されると共に、前記底面壁の内面は、その周縁部から中央部の受容凹部に向かって上から下に傾斜する傾斜面に形成されていることを特徴とする血液粘度測定用採血管。
【請求項4】
有底管体の上端開口部が密封栓によって密栓されると共に前記有底管体の内部に略針状の粘度測定用落体が封入されてなり、
前記密封栓の内面の中央部に前記略針状落体の少なくとも一端部を受容し得る受容凹部が形成されると共に、前記密封栓の内面は、その周縁部から中央部の受容凹部に向かって下から上に傾斜する傾斜面に形成されていることを特徴とする血液粘度測定用採血管。
【請求項5】
前記粘度測定用落体は、金属製錘を中に封入した合成樹脂製の略針状体からなる請求項1、3、4のいずれか1項に記載の血液粘度測定用採血管。
【請求項6】
前記粘度測定用落体は、磁性体を中に封入した合成樹脂製の略針状体からなる請求項1、3、4のいずれか1項に記載の血液粘度測定用採血管。
【請求項7】
有底管体の上端開口部が密封栓によって密栓されると共に前記有底管体の内部に粘度測定用落体が封入されてなり、
前記有底管体の底面壁の内面又は/及び前記密封栓の内面が平坦面に形成されると共に、前記粘度測定用落体は、その少なくとも一部に平坦面部を有することを特徴とする血液粘度測定用採血管。
【請求項8】
前記粘度測定用落体は、略針状本体部の一端部に該本体部の軸線に対して直交する状態に平板部が連接されたものからなり、該平板部における少なくとも非連接面が平坦面に形成されている請求項7に記載の血液粘度測定用採血管。
【請求項9】
前記粘度測定用落体は、金属製錘を中に封入した合成樹脂製の落体からなる請求項7または8に記載の血液粘度測定用採血管。
【請求項10】
前記粘度測定用落体は、磁性体を中に封入した合成樹脂製の落体からなる請求項7または8に記載の血液粘度測定用採血管。
【請求項1】
粘度測定用落体が封入されていることを特徴とする血液粘度測定用採血管。
【請求項2】
前記粘度測定用落体は、略針状体からなる請求項1に記載の血液粘度測定用採血管。
【請求項3】
有底管体の上端開口部が密封栓によって密栓されると共に前記有底管体の内部に略針状の粘度測定用落体が封入されてなり、
前記有底管体の底面壁の内面の中央部に前記略針状落体の少なくとも一端部を受容し得る受容凹部が形成されると共に、前記底面壁の内面は、その周縁部から中央部の受容凹部に向かって上から下に傾斜する傾斜面に形成されていることを特徴とする血液粘度測定用採血管。
【請求項4】
有底管体の上端開口部が密封栓によって密栓されると共に前記有底管体の内部に略針状の粘度測定用落体が封入されてなり、
前記密封栓の内面の中央部に前記略針状落体の少なくとも一端部を受容し得る受容凹部が形成されると共に、前記密封栓の内面は、その周縁部から中央部の受容凹部に向かって下から上に傾斜する傾斜面に形成されていることを特徴とする血液粘度測定用採血管。
【請求項5】
前記粘度測定用落体は、金属製錘を中に封入した合成樹脂製の略針状体からなる請求項1、3、4のいずれか1項に記載の血液粘度測定用採血管。
【請求項6】
前記粘度測定用落体は、磁性体を中に封入した合成樹脂製の略針状体からなる請求項1、3、4のいずれか1項に記載の血液粘度測定用採血管。
【請求項7】
有底管体の上端開口部が密封栓によって密栓されると共に前記有底管体の内部に粘度測定用落体が封入されてなり、
前記有底管体の底面壁の内面又は/及び前記密封栓の内面が平坦面に形成されると共に、前記粘度測定用落体は、その少なくとも一部に平坦面部を有することを特徴とする血液粘度測定用採血管。
【請求項8】
前記粘度測定用落体は、略針状本体部の一端部に該本体部の軸線に対して直交する状態に平板部が連接されたものからなり、該平板部における少なくとも非連接面が平坦面に形成されている請求項7に記載の血液粘度測定用採血管。
【請求項9】
前記粘度測定用落体は、金属製錘を中に封入した合成樹脂製の落体からなる請求項7または8に記載の血液粘度測定用採血管。
【請求項10】
前記粘度測定用落体は、磁性体を中に封入した合成樹脂製の落体からなる請求項7または8に記載の血液粘度測定用採血管。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図11】
【公開番号】特開2007−127470(P2007−127470A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319127(P2005−319127)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(399030060)学校法人 関西大学 (208)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(399030060)学校法人 関西大学 (208)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
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