説明

血液製剤から物質を除去するためのフィルター

血液製剤から物質を除去するためのフィルター
血液または血液成分から物質を除去するためのフィルターであって、特に白血球および血小板を除去するためのフィルターは、ポリウレタンが10,000Da以下の数平均分子量を有するポリウレタンコーティングを有するポリマーろ過材料を含む。ポリウレタンは、過剰のブタンジオールを用い、付加反応を化学量論的にアンバランスにすることによって、脂肪族ジイソシアネート、ポリエチレングレコールおよびブタンジオールの付加反応によって得られることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液または血液成分から物質を除去するためのフィルターに関し、より詳細には、全血を白血球除去血液成分に分離するために通常用いられる血液バッグシステムのような血液精製または浄化装置で使用することに適した、白血球および血小板を除去するためのフィルターに関する。
【0002】
本発明が関わる血液フィルターは通常、入口および出口を有するハウジング、ならびにそのハウジング内にあって、入口と出口との間に介在する少なくとも1つの多孔質要素を含む。多孔質要素は通常布帛(web)から成り、それはろ過材料(典型的には、ポリマー繊維材料で作られた不織布)の単一もしくは複数の層で形成されてよい。
【背景技術】
【0003】
ポリブチレンテレフタレート(PBT)およびポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステルは、現在好ましいポリマー材料である。PET繊維またはPBT繊維のようなポリエステルで作られた不織布は、血小板と強く相互作用することが知られている。従って、このような不織布を血液ろ過で用いると、血小板は高い割合で除去されることになる。他方、ろ過実験において、該ポリマーは白血球の除去能力が低いこと、およびそれらの湿潤性(ぬれ性)の低さは血液成分のブリーディング速度を小さくし、プライミング時間を増大させることも明らかになっている。従って、血液ろ過装置では、ポリエステル繊維の表面修飾が非常に好ましい。
【0004】
湿潤性または臨界湿潤表面張力(CWST)(材料の親水性の尺度)を増加させるために、PBTのような疎水性樹脂の繊維は、親水性のポリウレタンを含む、より親水性の高いポリマーで被覆される。
【0005】
ポリウレタン(PU)は生体適合性のあるポリマーとして広く用いられる。特に、ソフトブロックとしてポリエチレングリコール鎖を有するセグメント化ポリウレタンは、血栓形成が小さい生体適合性ポリマーとして認識されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリエチレングリコール(PEG)ソフトセグメントを含むセグメント化ポリウレタンの湿潤性は、ポリマー内のPEG含有量を変えることによって調整され得ることが知られている。他方、そのような湿潤性の増大はしばしば水浸出(water leachates)の増加を伴う。さらに、より湿潤性の高い材料は血小板親和性を増加させることができ、従って、ろ過する血液成分から除去される血小板は減少する。
【0007】
国際公開(WO)第2005/113136号は白血球吸着能力を向上させたポリウレタン材料を開示している。そのポリウレタン材料はジイソシアネート化合物の構造ユニット、ポリマージオール化合物の構造ユニット、および好ましくは第3アミノ基を含む鎖延長剤の構造ユニットから成る。その明細書および請求項によると、重量平均分子量が20,000より小さいポリウレタンの水溶解性は、白血球ろ過材料としてポリウレタンを使用する上で十分に低くないことが報告されているため、ポリウレタンは重量平均分子量が20,000以上、1,000,000以下でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、国際公開(WO)第2005/113136号の教示とは対照的に、数平均分子量が10,000Da以下であるならば、ジイソシアネート、ポリマージオール(例えばポリエチレングリコール)、およびモノマージオールの付加反応によって得られるポリウレタンは、血液フィルターに適した材料として使用するために必要な特性の最良の組み合わせを示すことが見出された。
【0009】
特に本発明のポリウレタンは異なり発散する以下のようなニーズの最適化を実現する。
−白血球および血小板の除去に関する最良の歩み寄り
−関連する水浸出を生じないこと
−血液成分のフィルターを介する確実なブリーディングのための良好な湿潤性
−短いプライミング時間
【0010】
従って、本発明の対象は、添付の請求項で規定されるフィルター材料を含み、血液または血液成分から物質を除去するフィルターである。
【0011】
本発明の対象はまた、添付の請求項で規定されるように、そのようなフィルターを含む血液精製または浄化システムおよび装置ならびに体外(ex vivo)手順にて、全血または血液成分のいずれかから白血球および血小板を除去するフィルターの使用にも及ぶ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で用いられる“ポリウレタン”という用語は、ポリウレタン共重合体を含む。
【0013】
ポリウレタンを製造するために使用されるジイソシアネートは、脂肪族のジイソシアネートが好ましく、特にイソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロエキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアノメチル)シクロエキサン、およびダイマー酸のジイソシアネートを例示できる。
【0014】
ポリマージオールはポリエチレングリコールが好ましい。しかし、他のジオールポリマー、例えばポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)共重合体、ポリ(エチレングリコール/テトラメチレングリコール)共重合体を使用できる。
【0015】
ポリマージオールおよび特に400Da以下の数平均分子量を有するポリエチレングリコールが好ましい。
【0016】
モノマージオールはブタンジオール、特に1,4−ブタンジオールが好ましい。しかし一般的に炭素原子を2〜6個有するモノマージオール化合物を使用できる。
【0017】
本発明に基づいて使用するポリウレタンは、10,000ダルトンより小さい数平均分子量を有し、好ましくは重量平均分子量も10,000ダルトンより小さい。低い重合度を得る好ましい方法は、ポリウレタン系において意図的に化学量論的にアンバランスにすることである。化学量論的にバランスのとれたポリウレタンでは、付加反応におけるイソシアネート基の数(当量)がポリマージオール(PEG)のヒドロキシル基とモノマージオール(ブタンジオール)のヒドロキシル基の合計とおよそ等しい。
【0018】
他方、化学量論的にアンバランスなポリウレタンは、反応において化学量論的に過剰なモノマージオールを用い、ポリマージオールおよびモノマージオールによる反応において用いられるヒドロキシル基の合計数(当量)がイソシアネート基の数(当量)に対して過剰となるようにすることによって、得られる。
【0019】
ポリウレタンは常套の方法によって合成できる。好ましい方法によると、まずジイソシアネートを化学量論的に少ない量のポリマージオール(PEG)と、無水メチルエチルケトンのような適切な有機溶媒中にて、還流温度で、ジブチルスズジアセテートのような触媒存在下で反応させる。反応混合物を還流温度とし、反応させる。次に、化学量論的に過剰なモノマージオール(ブタンジオール)を加え、反応混合物を再び還流温度で、ジイソシアネートの官能性が消失するまで反応させる。
【0020】
次に、混合物を室温で冷却し、反応混合物をヘキサンのような非極性溶媒中へ滴下することによって得られたポリマーを沈殿させる。次に、得られた沈殿物を乾燥し、アセトンのような極性溶媒中に溶解する。精製度合いをより高めるため、ポリマーを水中でさらに沈殿させてよい。特に、水中でポリウレタンを二度沈殿させることで、そのポリマーが水溶性ではないこと、そしてどのような水溶性物も充分に減少していることが確実となる。
【0021】
本発明で使用されるポリウレタンは、親水性疎水性バランスのため、ポリマージオール含有量(好ましくはPEG)が35重量%以下であることが好ましい。また、好ましい精製方法によって、合成されるポリウレタンは水溶性ではない。
【0022】
本発明の好ましい態様において、ポリウレタンはPETまたはPBTのメルトブローン繊維から得られるポリエステル不織布上のコーティングとして塗布される。以下の湿潤性試験で記述されるように、コーティングは通常の溶液コーティング技術に従って実施してよい。
【0023】
コーティングと基材(即ち、PBT)との相互作用は、疎水性相互作用だけに起因すると考えられ、コーティングのどの段階においても、コーティングと基板との間に共有結合は関与しないと思われる。
【0024】
本発明を、以下の非限定的な実施例によってさらに説明する。実施例1および2は、本発明のフィルターで使われる化学量論的にアンバランスなポリウレタン(UBポリマーと表記)の製造に関し、実施例3〜6は化学量論的にバランスがとれたポリウレタン(STポリマーと表記)に関する比較例である。
【実施例】
【0025】
実施例1
添加用漏斗および還流冷却器を備えた反応フラスコに、無水ブタノン(MEK)300ml、平均分子量204.4DaのPEG21.80g(0.107mol)、イソホロンジイソシアネート48.06g(0.216mol)およびジブチルスズジアセテート0.079gを加える。反応混合物を徐々に還流温度まで加熱した(内部温度は約82℃)。2時間後、加熱を中断し、MEK35ml中にブタンジオール10.98g(0.122mol)の溶液を滴下しながら加えた。次に、混合物が再び還流温度に達するまで再度加熱した。15時間後、IRスペクトルのイソシアネートバンドの消失を確認して、反応の完了を見極めた。混合物を室温まで冷やし、800mlのヘキサン中に反応混合物を滴下することによって、ポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を乾燥し、アセトン中に溶解して、20%溶液を得た。さらに精製されたポリマーを得るため、ポリマー(以後UB15)を2.2リットルの水中に沈殿させ、その後、乾燥した。
【0026】
実施例2
添加用漏斗および還流冷却器を備えた反応フラスコに、無水ブタノン(MEK)300ml、平均分子量204.4DaのPEG23.11g(0.113mol)、イソホロンジイソシアネート50.05g(0.225mol)およびジブチルスズジアセテート0.073gを加える。反応混合物を徐々に還流温度まで加熱した(内部温度は約82℃)。2時間後、加熱を中断し、MEK40ml中にブタンジオール11.72g(0.130mol)の溶液を滴下しながら加えた。次に、混合物が再び還流温度に達するまで再度加熱した。15時間後、IRスペクトルのイソシアネートバンドの消失を確認して、反応の完了を見極めた。混合物を室温まで冷やし、800mlのヘキサン中に反応混合物を滴下することによって、ポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を乾燥し、アセトン中に溶かして、20%溶液を得た。より精製されたポリマーを得るため、ポリマー(以後UB20)を2.2リットルの水中に沈殿させ、その後、乾燥した。
【0027】
実施例3−比較例
添加用漏斗および還流冷却器を備えた反応フラスコに、無水ブタノン(MEK)620ml、平均分子量202.2DaのPEG46.51g(0.230mol)、イソホロンジイソシアネート100g(0.450mol)およびジブチルスズジアセテート0.16gを加える。反応混合物を徐々に還流温度まで加熱した(内部温度は約82℃)。2時間後、加熱を中断し、MEK60ml中にブタンジオール19.83g(0.220mol)の溶液を滴下しながら加えた。次に、混合物が再び還流温度まで加熱した(内部温度は約82℃)。15時間後、IRスペクトルのイソシアネートバンドの消失を確認して、反応の完了を見極めた。混合物を室温まで冷やし、4リットルの脱イオン水中に反応混合物を滴下することによって、ポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を乾燥し、アセトン中に溶かして、20%溶液を得た。より精製されたポリマーを得るため、ポリマー(以後ST27)を水中に再び沈殿させ(水/ポリマー溶液=5/1重量比)、その後、乾燥した。
【0028】
実施例4−比較例
添加用漏斗および還流冷却器を備えた反応フラスコに、無水ブタノン(MEK)300ml、平均分子量204.4DaのPEG29.17g(0.143mol)、イソホロンジイソシアネート44.88g(0.202mol)およびジブチルスズジアセテート0.079gを加える。反応混合物を徐々に還流温度まで加熱した(内部温度は約82℃)。2時間後、加熱を中断し、MEK30ml中にブタンジオール4.94g(0.055mol)の溶液を滴下しながら加えた。次に、混合物が再び還流温度に達するまで再度加熱した。15時間後、IRスペクトルのイソシアネートバンドの消失を確認して、反応の完了を見極めた。混合物を室温まで冷やし、800mlのヘキサン中に反応混合物を滴下することによって、ポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を乾燥し、アセトン中に溶かして、20%溶液を得た。より精製されたポリマーを得るため、ポリマー(以後ST37)を2.2リットルの水中に沈殿させ、その後、乾燥した。
【0029】
実施例5−比較例
添加用漏斗および還流冷却器を備えた反応フラスコに、無水ブタノン(MEK)300ml、平均分子量204.4DaのPEG34.95g(0.171mol)、イソホロンジイソシアネート42.05g(0.189mol)およびジブチルスズジアセテート0.079gを加える。反応混合物を徐々に還流温度まで加熱した(内部温度は約82℃)。2時間後、加熱を中断し、MEK30ml中にブタンジオール1.3g(0.014mol)の溶液を滴下しながら加えた。次に、混合物が再び還流温度に達するまで再度加熱した。15時間後、IRスペクトルのイソシアネートバンドの消失を確認して、反応の完了を見極めた。混合物を室温まで冷やし、800mlのヘキサン中に反応混合物を滴下することによって、ポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を乾燥し、アセトン中に溶かして、20%溶液を得た。より精製されたポリマーを得るため、ポリマー(以後ST45)を2.2リットルの水中に沈殿させ、その後、乾燥した。
【0030】
実施例6−比較例
添加用漏斗および還流冷却器を備えた反応フラスコに、無水ブタノン(MEK)130ml、平均分子量403.4DaのPEG10.61g(0.026mol)、イソホロンジイソシアネート18.00g(0.081mol)およびジブチルスズジアセテート0.043gを加える。反応混合物を徐々に還流温度まで加熱した(内部温度は約82℃)。2時間後、加熱を中断し、MEK40ml中にブタンジオール4.93g(0.055mol)の溶液を滴下しながら加えた。次に、混合物が再び還流温度に達するまで再度加熱した。15時間後、IRスペクトルのイソシアネートバンドの消失を確認して、反応の完了を見極めた。混合物を室温まで冷やし、800mlのヘキサン中に反応混合物を滴下することによって、ポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を乾燥し、アセトン中に溶かして、20%溶液を得た。より精製されたポリマーを得るため、ポリマー(以後ST30-400)を2.2リットルの水中に沈殿させ、その後、乾燥した。
【0031】
製造したポリマーすべての分子量を、GPC分析で測定した。
【0032】
分析では、PL−Gel 5μm MIXED-DカラムとR.I.ディテクタを備えた島津HPLCシステム10Avpを使用した。GPC測定を30℃で、移動相としてテトラヒドロフランを用いて行なった。単分散の標準ポリスチレンに対して、システムを検量した。
【0033】
分析結果を表1にまとめる。
【表1】

ポリエチレングリコール(フィード中の重量%)
【0034】
水浸出の評価
本発明に基づくフィルターで使用するコーティング済みPBTファブリック(布帛)を、水浸出の評価のための下記の実施例で記述する方法に従って、水溶性物質の除去可能性についても首尾よく試験した。この方法は、ISO EN 10993/12に示される欧州薬局方(Ph.Eur.)の方法3.2.6をモディファイしたものである。
【0035】
水浸出の評価のため、表面積50cmを有するファブリック40層(アセトンを溶媒とした0.5%ポリウレタン溶液で被覆した)を、入口と出口を有するハウジングに導入する。
【0036】
蒸留水250mlをペリスタポンプを用い、1リットル/hの流量で、2時間、37℃にて、1つのフィルターを介して循環させた。得られた溶液を以下のように分析した。
【0037】
溶液の吸収を、230nm〜360nmで測定した。
【0038】
溶液20mlを0.01Nの過マンガン酸カリウム20mlと、硫酸の存在下、沸点にて3分間反応させた。溶液を冷却した後、過剰なヨウ化カリウムを加え、生成したヨウ素を0.01Nのチオ硫酸ナトリウムで滴定した。ブランク溶液を同様に処理した。過マンガン酸塩滴定量の差(ΔO、ml)を計算する。
【0039】
乾燥固体残留物の重量を測定した:溶液100mlを蒸発させ、残留物を定重量となるまで100〜105℃で乾燥した。
【0040】
試験を行なったポリマーすべてに対して、測定された吸収は全測定範囲において0.2より低く、ΔO<1mlであり、乾燥固体残留物<3mgであった。
【0041】
湿潤性試験
合成した材料のいずれもPBT系不織布を被覆するために用いた。アセトンを溶媒としたポリマー溶液中にファブリックを浸漬し、過剰の溶液を取り除くために絞り、その後、空気中にて70℃で16時間乾燥させた。
【0042】
ファブリック上に水滴を5滴配置し、ファブリックが液滴を吸収し終えるまでに必要とする時間を測定することによって、コーティング済みファブリックの湿潤性を評価した。湿潤性測定のためのコーティング溶液のポリマー濃度は2重量%であった。
【0043】
吸収時間を表2に示す。
【表2】

【0044】
血液ろ過試験
健康な任意のボランティアから、CPD70mlが入ったPVCバッグに全血(範囲450ml〜550ml)を集めた。
【0045】
スモールスケールにおけるろ過
2%で被覆したPBT不織布および被覆していないもののサンプルを直径3cmの円に切り抜き、ファブリックを通って血液が通過できるように入口と出口を有するホルダー内に設置した。
【0046】
ヒトの全血2mlを、不織布3層を含む装置を介してろ過した。
【0047】
各サンプルの細胞濃度を自動細胞計数器で測定した。
【0048】
記載した結果(表3)は、少なくとも5回のろ過実験の平均である。
【表3】

【0049】
記載したデータから、血小板(PLT)および白血球(WBC)を除去する最良の組み合わせは、UB系ポリウレタンで被覆したファブリックによって得られることが明らかである。
【0050】
血液バンクスケールにおけるろ過
フィルターの準備:表面積50cmを有するファブリック40層(アセトンを溶媒とする0.5%ポリウレタン溶液で被覆したものまたは被覆していないもの)を入口と出口を有するハウジングに導入し、重力の影響で血液をろ過した。
【0051】
献血されたすべての全血を1,4−ブタンジオールプレートの下で、20〜24℃に冷却した。全血小板(PLT)除去%を測定するために、ろ過前とろ過後の血液中の細胞濃度を自動細胞計数器で測定した。ろ過後の血液中の白血球(WBC)をナジェット(Nageotte)法で測定した。
【0052】
得られた結果を表4にまとめる。
【表4】

【0053】
従って、UB系ポリウレタンを使用すると、被覆したファブリックのろ過性能(細胞除去およびろ過時間)が向上することが確認される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンを含むコーティングを有するポリマーろ過材料を有する、血液または血液成分から物質を除去するためのフィルターであって、該ポリウレタンは10,000Da以下の数平均分子量を有することを特徴とするフィルター。
【請求項2】
該ポリウレタンはジイソシアネート、ポリマージオール、およびモノマージオールの付加反応によって得られる、請求項1に記載のフィルター。
【請求項3】
ジイソシアネートは脂肪族のジイソシアネートであり、好ましくはイソホロンジイソシアネートである、請求項2に記載のフィルター。
【請求項4】
ポリマージオールは400Da以下の数平均分子量を有する、請求項2または3に記載のフィルター。
【請求項5】
該ポリウレタンは35重量%以下のポリマージオール含有量を有する、請求項2〜4のいずれかに記載のフィルター。
【請求項6】
ポリマージオールはポリエチレングリコールである、請求項2〜5のいずれかに記載のフィルター。
【請求項7】
モノマージオールはブタンジオールである、請求項2〜6のいずれかに記載のフィルター。
【請求項8】
該ポリウレタンは化学量論的にアンバランスな付加反応で得られる、請求項2〜7のいずれかに記載のフィルター。
【請求項9】
該ポリウレタンは、過剰なモノマージオールを加えることで付加反応の化学量論をアンバランスにして得られる、請求項2〜8のいずれかに記載のフィルター。
【請求項10】
該ポリマーろ過材料は、該ポリウレタンコーティングで被覆されたポリエステル不織布を含む、前記の請求項のいずれかに記載のフィルター。
【請求項11】
該ポリエステル不織布は、メルトブローンポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレート繊維を含む、請求項10に記載のフィルター。
【請求項12】
該ポリウレタンは10,000Da以下の重量平均分子量を有する、前記の請求項のいずれかに記載のフィルター。
【請求項13】
体外(ex vivo)ろ過法にて、全血または血液成分から白血球および血小板を除去するための、請求項1〜12のいずれかに記載のフィルターの使用。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれかに記載のフィルターを有して成る血液精製装置。
【請求項15】
血液を白血球除去血液成分に分離するための血液バッグ装置を有して成り、請求項1〜12のいずれかに記載の白血球フィルターを介して第2バッグと流体が流れ得る状態で接続された第1バッグを有して成る、請求項14に記載の血液精製装置。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれかに記載されているように、ポリウレタンコーティングを有するポリエステル繊維材料の不織布からなる多孔質基材を被覆することを含む、請求項1〜12のいずれかに記載のフィルターを製造する方法。

【公表番号】特表2010−502327(P2010−502327A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527099(P2009−527099)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058729
【国際公開番号】WO2008/028807
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(505063533)フレゼニウス・ヘモケア・イタリア・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (7)
【氏名又は名称原語表記】FRESENIUS HEMOCARE ITALIA S.r.l.
【Fターム(参考)】