説明

血液透析装置における2流路−差込結合部材を有する使い捨て重炭酸塩容器

【課題】血液透析装置への2流路差込結合部材(3)を有する硬質プラスチック容器として形成された使い捨て重炭酸塩容器を提供する。
【解決手段】該容器は、重炭酸塩充填槽部分(11)を有する基体部分(1)、蓋体部分(2)及び蓋体部分に一体に形成した差込結合部材から成り、基体部分及び蓋体部分はそれぞれを取り囲み溶着などの手段で互いに接合されたフランジ(13、23)を有し、容器端部の領域に差込結合部材が設けられており、両フランジは両者の間に容器内部からは隔離された流路(15)を形成し、この流路は2つの差込結合部材導液路の1つ(33、34)から容器の他端に達し、この他端で容器内部と連通し、差込結合部材とは反対側の容器端部で容器内部へ開口する(16)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液洗浄用透析装置における使い捨て重炭酸塩容器、詳しくは硬質プラスチック容器として形成され、且つ透析装置と結合するための2流路差込結合部材を有する上記のような重炭酸塩容器に係わる。
【0002】
2流路差込結合部材を有する重炭酸塩容器は欧州特許出願公開第0 575 970号明細書から公知であり、この公知例では可撓性バッグとして構成されている。透析装置に結合するための2流路差込結合部材であるため、溶液循環の入口と出口が容器の同一の位置にあるから、容器内で差込結合部材の両流路の一方から反対側の容器端部への流路を、溶液が重炭酸塩容器全体を貫流できるように形成しなければならない。この条件を満たすため、この公知技術では、差込結合部材の両流路の1つから可撓性チューブがバッグ内部へ延び、差込結合部材とはほぼ反対側のバッグ端部に通ずるように構成している。
【0003】
この構成は比較的高い製造コストを必要とするだけでなく、バッグ内に延びるチューブの自由端が重炭酸塩を充填されたバッグ内で所定の位置を維持できず、事実上溶液が容器の一部だけを貫流する結果となる恐れがある。
【0004】
本発明の目的は、特に製造が極めて簡単であること、及び差込結合部材からこれとは反対側の容器端部に至る流路の位置が確実に画定されるという点で改良された重炭酸塩容器を提供することにある。
【0005】
本発明は上記目的を特許請求の範囲1に記載の重炭酸塩容器によって達成する。本発明の好ましい実施態様は従属請求項にそれぞれ記載されている。
【0006】
本発明の重炭酸塩容器は硬質のプラスチック容器として形成されており、基体部分とこれに溶着した蓋体部分とから成り、差込結合部材からこれと反対側の容器端部に至る流路が基体部分と蓋体部分との間に形成されている。たとえば射出成形機などで得られた基体部分に蓋体部分を溶着するだけで、容器を簡単に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の詳細を添付の図面に示す2つの実施例を例に取って以下に説明する。
【0008】
図1乃至5に示す第1実施例の重炭酸塩容器は基体部分(図1及び図2)と、これに被せ、これにジグ溶接された蓋体部分2(図3及び図4)とから成る。両部分は射出成形によるプラスチック製品である。
【0009】
基体部分1は底12及び上方フランジ13を有する槽状部11として形成されている。図示例においては槽状部11が、丸みを帯びた隅部を有し、底に向かってややテーパーするほぼ直方体の形状を呈しているが、他の任意の形状、例えば、円形や半球形などであってもよい。フランジ13は槽状部11の開口平面内を平坦に、且つ槽開口を囲むように延びている。フランジ13の上面はこれと対応する蓋体部分2のフランジ面と溶接される溶接面を画定する。
【0010】
図3及び4に示す蓋体部分2は扁平な槽状部21として形成されており、底壁22及び槽状部の開口平面内にあってこの開口を囲む平坦なフランジ23を有する。槽状部21の短い1辺において、フランジ23が大きく張出し、この張出したフランジに差込結合部材3が形成されている。図4の断面図が示すように、差込結合部材3は外側ガイド・ブッシュと、その内側にこれと同心関係に配置された2つの同軸導液ブッシュ32,33とを有する。外側ガイド・ブッシュ31は重炭酸塩容器をガイド・ブッシュ31とは補完関係に構成された透析装置側の差込結合部材受けへ案内し、機械的に固定し、ロックする機能を有する。外側導液ブッシュ32及び内側導液ブッシュ33は互いに協働して2つの同軸流路、即ち、溶液の入口と出口とを画定する。内側導液ブッシュ33によって画定される内側流路はフランジ平面内の中心孔34で終わっており、内側導液ブッシュ33と外側導液ブッシュ32の間に形成される環状流路はフランジ23の扁平な円形凹部24に達する流路36を有する底壁35によって遮断されている。
【0011】
基体部分1のフランジ13は、図1及び2に示すように、槽状部分11の一方の短辺に扇形の張出域14を有し、この張出域14は差込結合部材3が一体的に形成されている蓋体部分2のフランジ23の領域と補完関係となるように形成されている。また、基体部分1のフランジ13には、フランジ張出域14の中心を基点として槽状部分の長編に沿って沿う開口周りを、フランジ張出域14と対向する短辺にまで延びる溝15が形成されている。溝15は槽開口との間に延びる帯状のフランジ領域によって槽開口から隔てられている。この溝は槽状部分11のフランジ張出域14と対向する短辺側のほぼ全幅に亘って延び、この短辺に沿って形成された一連のバイパス孔16を介して槽開口と連通する。
【0012】
図1及び2から明らかなように、槽状部11はフランジ張出域14に対応する短辺側に、槽開口に向かって膨らむ突出部17を有する。
【0013】
図5は基体部分1に蓋体部分2を載置し、蛾遺体部分と基体部分とを、互いに当接するそれぞれのフランジ面において溶着することによって完成した本発明の重炭酸塩容器の俯瞰図である。
【0014】
基体部分のフランジ13が蓋体部分のフランジ23と溶着されるフランジ領域を、図5では陰影線で示している。これに対応する蓋体部分の溶着面を図3においても陰影線で示している。図示のように、蓋体部分2のフランジ23では、蓋体部分1のフランジ13における溝15に対応する帯状域が空白となっている。
【0015】
図5から、特に他の図との照合から明らかなように、基体部分1及び蓋体部分2のそれぞれのフランジ13及び23を溶着すると、それまでは開放状態にあった基体部分フランジ13における溝15が蓋体部分フランジ23によって閉鎖され、その結果、基体部分及び蓋体部分の槽状部分11、21によって形成される内部空間にではなく、差込結合部材3とは反対側の短辺に達し、ここで初めて差込結合部材3とは反対側の短辺に形成されているバイバス孔16を介して容器内部と連通する。差込結合部材3の領域において、溝15によって形成される流路は中心孔34と、従って、内側ガイド・ブッシュ33に囲まれた流路と連通する。底壁35の開口36を介して内側ガイド・ブッシュ33と外側ガイド・ブッシュ32との間の環状流路と連通する蓋体部分フランジ23の凹部24は重炭酸塩容器の完成した状態で、突出部17を含む槽状部分11の対応端部の上に位置する。
【0016】
従って、一方の、即ち、差込結合部材3の環状流路は容器内部の差込結合部材側端部と連通し、差込結合部材3の内側導液路は溝15によって形成される流路及びバイパス孔16を介して、重炭酸塩容器の反対端部と連通する。
【0017】
図6乃至10に示す第2実施例の重炭酸塩容器では、同じかまたは類似の構成部分には第1実施例と同じ符号を付してある。第2実施例の重炭酸塩容器もまた基体部分1とその上に載置され、溶着される蓋体部分2から成り、双方共にプラスチックを射出成形することで製造される。第1実施例と同様に、基体部分1は底壁12と上部フランジ13を有する槽状部11として形成され、隅部が丸みを帯び、底壁12に向かってややテーパーする、ほぼ直方体の形状を呈するが、この形状は直方体以外の任意の形状であってもよい。フランジ13は槽状部11の開口平面内をこの開口を囲んで平坦に延びている。フランジ13の上面は蓋体部分2の対応フランジ面と溶着される溶着面を画定する。
【0018】
蓋体部分2はこの実施例でもその周囲に基体部分1のフランジ13と協働する平坦なフランジ23を有する。基体部分1のフランジ13に溝15を形成する第1実施例とは逆に、蓋体部分2のフランジ23に溝25が形成され、フランジ23をフランジ13と溶着すると、フランジ13と協働して流路を形成する。
【0019】
第2実施例においても、図6、8及び9から明らかなように、第1実施例の場合と同様に、差込結合部材3が蓋体部分2に一体的に形成されており、この結合部材は図9に断面図で示すように、外側ガイド・ブッシュ31と、そのうちがわにあってこれと同心関係にある2つの同軸導液路32,33とを有する。内側ガイド・ブッシュ33によって画定される差込結合部材3の内側導液路は第2実施例においてもフランジ23の平面内に位置して容器内部、即ち、基体部分1の槽状部11の内部空間に通ずる中心行34に達している。但し、この中心行34は蓋体部分2の下側に設けた保持リング26に嵌着したフィルター・ディスク4によって槽状部内部空間から遮断されている。
【0020】
差込結合部材の内側ガイド・ブッシュ33と外側ガイド・ブッシュ32の間に形成される環状流路はこの実施例においても底壁35によって閉鎖されており、底壁35は、第2実施例の場合、フランジ23に形成した溝25と直接連通するバイパス孔36を有する。
【0021】
第1実施例の場合と同様に、第2実施例においても、基体部分1の槽状部11の差込結合部材3とは反対側の端部に突出部17を設けてある。蓋体部分2のフランジ23に形成されている溝25は突出部17の領域において、バイパス孔27を介して突出部17の内部空間に通ずる。図10に拡大断面図で示すように、突出部17の内部空間は槽状部11及び蓋体部分2の下側にこれらと一体に形成した保持用成形具18、28間に挟持されたフィルター・ディスク5によって槽状体11の残余の内部空間から遮断されている。
【0022】
本発明の重炭酸塩容器の第2実施例において、フィルター・ディスク4、5を設けることにより,基体部分の槽状部11から重炭酸塩(図では重炭酸塩充填状態を陰影線で示す)が、溶解されていない状態で流出するおそれを伴うことなく、重炭酸塩容器を任意の態様で透析装置に対して配向することができる。
【0023】
本発明の重炭酸塩容器(図示の両実施例)では、射出成形された2つの成分、即ち、基体部分と蓋体部分のそれぞれのフランジを、例えば、超音波溶着することによって合体させる(予め重炭酸塩を充填した後)だけでよく、別に製造されて容器内に挿入され、重炭酸塩の充填を妨げたり、意図に反して位置ずれしたりするおそれのある、容器内に突出するチューブを必要としない。
【0024】
いずれの図示実施例においても、差込結合部材は蓋体部分から上方へ突出するように蓋体部分にこれと一体に形成される。ロック素子37を除いて、差込結合部材3にアンダーカット、従って、スライダーは不要であるから、射出成形のための工具が簡単な工具で済むという点で、この構成は有益である。
【0025】
但し、差込結合部材3は蓋体部分及び基体部分のいずれに取り付けるにしても、(透析装置の差込結合部材受けの態様に応じて)図示の構成とは異なる実施態様、例えば、非同軸流路を有する差込結合部材であってもよい。
【0026】
差込結合部材3を蓋体部分にではなく基体部分に設け、溝15も基体部分のフランジ13に形成する実施態様においては、基体部分だけをプラスチック射出成形部分として形成するだけで充分である。このような実施態様においては、蓋体部分をホイルの形に簡略化し、基体部分の槽状部に重炭酸塩を充填した後、基体部分の槽開口を囲むフランジにホイルを重ね、溶着するだけで槽開口を塞ぐと同時に基体部分のフランジの溝と協働させて槽状部分の両端間に流路を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の重炭酸塩容器の第1実施例における基体部分の俯瞰図である。
【図2】基体部分を図1のII-II線に沿って示す断面図である。
【図3】第1実施例の重炭酸塩容器における蓋体部分の底面図である。
【図4】蓋体部分を図3のIV-IV線に沿って示す断面図である。
【図5】基体部分と蓋体部分との溶接面を点斜線で示す、第1実施例の重炭酸塩容器全体の俯瞰図である。
【図6】本発明の重炭酸塩容器の第2実施例の俯瞰図である。
【図7】図6の重炭酸塩容器の底面図である。
【図8】第2実施例の重炭酸塩容器を図7のVIII-VIII線に沿って示す縦断面図である。
【図9】図8における部分IXの拡大図である
【図10】図8における部分Xの拡大図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液透析装置への2流路差込結合部材を有する硬質プラスチック容器として形成された、血液透析装置における使い捨て重炭酸塩容器であって、
基体部分(1)、蓋体部分(2)及び好ましくは蓋体部分にこれと一体に形成した差込結合部材から成り、
基体部分(1)が重炭酸塩を充填される槽状部(11)及び槽開口を囲むフランジ(13)を有し、基体部分と蓋体部分とがそれぞれのフランジの溶着などによって互いに結合されており、
両フランジ(13、23)が両者の間に、容器内部からは隔離されて容器の一端に設けた差込結合部材(3)の2つの差込結合部材導液路の1つ(33、34)から容器の他端に達し、この他端において容器内部と連通する流路(15)を形成する一方、他方の差込結合部材導液路(32、36)が容器の差込結合部材側端部において容器内部と連通することを特徴とする前記重炭酸塩容器。
【請求項2】
一方の差込結合部材導液路(33、34)から反対側の容器端部に至る流路(15または25)が、一方のフランジ(13または23)に形成され、両フランジの溶着後、他方のフランジ(23または13)によって被覆される溝によって画定されることを特徴とする請求項1に記載の重炭酸塩容器。
【請求項3】
容器がほぼ直方基本形状を有し、この基本形状の一方の短辺の領域に差込結合部材(3)を有し、容器内部への前記流路(15または25)の開口が直方基本形状の反対側の短辺に位置することを特徴とする請求項1または2に記載の重炭酸塩容器。
【請求項4】
上記流路(15または25)が直方基本形状の、差込結合部材(3)とは反対側の短辺のほぼ全長に沿って延び、一連のバイパス孔(16)を介して容器内部に開口することを特徴とする請求項3に記載の重炭酸塩容器。
【請求項5】
流路(15または25)が容器の差込結合部材(3)とは反対側の端部において、フィルター・ディスク(5)によって残余の容器内部空間から隔離され、例えば、突出部として形成された容器内部空間へ開口することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の重炭酸塩容器。
【請求項6】
直接的に容器内部に通ずる差込結合部材導液路の開口と容器内部との間にフィルター・ディスク(4)を介在させたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の重炭酸塩容器。
【請求項7】
基体部分(1)と蓋体部分(2)を、それぞれのフランジ(13、23)に沿って超音波溶着によって互いに結合したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の重炭酸塩容器。
【請求項8】
差込結合部材(3)を、好ましく羽はロック素子(37)を含む外側ガイド・ブッシュ(31)と、2つの同軸流路を画定する、前記外側ガイド・ブッシュと同心関係にある2つの同軸ガイド・ブッシュ(32、33)とを有する同軸プラグとして形成したことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の重炭酸塩容器。
【請求項9】
基体部分(1)も差込結合部材(3)と一体の蓋体部分(2)もプラスチック射出成形部品として形成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の重炭酸塩容器。
【請求項10】
差込結合部材を一体に形成されている基体部分がプラスチック射出成形部品として形成され、蓋体部分が基体部分に溶着または接着されたホイルだけから成ることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の重炭酸塩容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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