説明

血痕の検出および位置特定方法、並びに血痕の検出用に設計された合成物質

【課題】人間あるいは動物の血痕を検出するとともにDNAを分析するための合成物質に関し、実際的な条件および環境においても適用できる合成物質を提供する。
【解決手段】合成物質は、ルミノール化合物と、酸化剤と、塩基とを含み、好適な水溶液に希釈されている。ルミノール化合物は、最終合成物質中に1〜20mmol/Lの濃度で含まれ、酸化剤としての過酸化水素は、最終合成物質中に25〜100mmol/Lの濃度で含まれ、塩基としてのナトリウム化合物(NaOH)は、最終合成物質中に25mmol/L〜500mmol/Lの濃度で含まれていることを特徴としている。さらに、また、上記の合成物質を調製するためのキットと、人間あるいは動物の血痕を検出し、かつ、位置を特定する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、人間あるいは動物の血痕を検出するために設計された合成物質に関し、当該合成物質を調製するための現場キットおよび方法も含まれる。本発明は、さらに、人間あるいは動物の血痕の検出方法および、その位置を特定するための方法も含まれる。
【0002】
化学発光によって、人間および動物の血痕を検出し、存在場所を特定する方法は、すでに十分に確立され、文書化されている。
【0003】
ここで、発光とは、熱作用による誘発されるものを除く、紫外線域、可視光線域あるいは赤外域における電磁光線の発光現象の総称である。
【0004】
ある種の発光団分子は、励起状態に置かれた後に基底状態に戻る段階でいわゆる「冷光」と呼ばれる光を発光する特性を有する。この現象は様々な手法によって引き起こされ、分子を励起状態に至らしめるエネルギー源の性質に応じて、様々な型の発光が定義される。
【0005】
化学発光は、化学反応によって直接あるいは間接的に生成される光の発光を意味する。一般的には、化学発光反応は、酸化過程によって生じるものが多い。
【0006】
人間あるいは動物の血液を検出するために、一般的に最も使用される化学発光化合物は、ルミノール(5アミノ−2,3ジヒドロ−1,4フタラジンジオン)であるが、他の多くのルミノール化合物も同様に使用される。
【0007】
水溶液中においては、ルミノールの化学発光反応は、酸化の機構とアルカリ環境化を必要とする(White E.H. & Roswell, D.F. 1985. Luminol chemiluminescence. Chemi-and Bioluminescence (Burr, J.G., ed.), Marcel Dekker, New York, pp. 215-244)。
【0008】
ルミノールの酸化は、励起状態においてイオンアミノフタレートを形成する。このイオンアミノフタレートは、発光によって基底状態に戻る。
【0009】
この反応における量子効率収量は微弱(約0.01)で、発光スペクトルは最大430nm(明るい青色)を示す(White, E.H. & Roswell, D.F. 1985. Luminol chemiluminescence. Chemi-and Bioluminescence (Burr, J.G., ed.), Marcel Dekker, New York, pp. 215-244)。
【0010】
上記の発光反応において、触媒として作用することができる主要な化合物としては、遊離あるいは複合状態での遷移金属(Cr3+、Mn4+、Fe2+、Fe3+、CO2+、Ni2+、Cu2+、Hg2+)と、へミンと、ペルオキシタ−ゼ(例えば、ワサビから抽出された酵素)とがある。
【0011】
へミンは、ペルオキシタ−ゼの不可欠な部分を形成する特殊な生化学構造である。この構造は、ヘモグロビンにも同様に存在する。ヘモグロビンとは、血液中の酸素の輸送タンパク質であるとともに、血液中の二酸化炭素の一部の輸送タンパク質でもある。
【0012】
したがって、ルミノールの化学発光を触媒するヘミンの能力を活用することによって、ヘモグロビンの存在、つまり血液の存在を明らかにすることができる。
【0013】
すなわち、ルミノールと、酸化剤と、アルカリ(塩基)性物質(agent alcalin)との混合物質(合成物質)は、血液と接触すると発光するということである。
【0014】
すでに60年以上前に、この種の合成物質を用いて血液の有無を調査する方法は、犯罪および法廷取り調べにおける手段としての血痕検出用の実証的補助として提案されていた。
【0015】
1937年、Specht, W.のThe Chemiluminescence of hemin: an aid for finding and recognizing blood stains important for forensic purposes. Angewande Chemie, 10, 155-157において、初めて、犯行現場での血液の有無を犯罪および法廷取り調べにおける証拠として示することが提案された。上記の場合、以下のような組成の合成物質を用いている。すなわち、この合成物質は、0.1重量部(0.1 partie en poids)のルミノールと、アルカリ性物質としての3重量部の炭酸ナトリウムと、酸化剤としての15重量部の過酸化水素とを含んでいる。なお、この過酸化水素は、蒸留水100重量部中に30%濃度になるように希釈されたものである。
【0016】
The Chemiluminescence of hemin: an aid for finding and recognizing blood stains important for forensic purposes. Angewande Chemie, 10, 155-157(1937年、Specht, W.著)では、乾燥した血痕に対して上記の組成を有した反応剤(合成物質)を加えた場合の発光反応の感度について研究・提示している。この際、さらに、血痕を1:2,000の比率で希釈した場合のものについても、その発光反応の感度を研究・提示した。
【0017】
Detection of blood by means of chemiluminescence. Journal of Laboratory Clinical Medicine., 24, 1183-1189,(1939年、Proescher, F.および Moody, A.M.著)において、また、The Chemiluminescence of hemin: an aid for finding and recognizing blood stains important for forensic purposes. Angewande Chemie, 10, 155-157(1937年、Specht, W.)において、日光や雨にさらされたチケットおよび小枝中の血液の測定を行ったこと、また、このような多様な条件下であっても化学発光反応が発現することを指摘した。
【0018】
Proescher, F.および Moody, A.M.は、The Chemiluminescence of hemin: an aid for finding and recognizing blood stains important for forensic purposes. Angewande Chemie, 10, 155-157(1937年、Specht, W.)に記載された合成物質を用いて、1:1,000,000の比率まで希釈した動物および人間の血液に対して調査したところ、動物および人間の両方の場合において化学発光が起きたことを実証した。
【0019】
Simplified preliminary blood testing. An improved technique and comparative study of methods. Journal of the America Institute of Criminal Law and Criminalogy, 42, 95-104(1951年、Grodsky, M.、Wright, K.、Kirk, P.L.著)では、過酸化水素を酸化剤として使用する場合、ルミノールの感度およびその反応性が非常に制御しにくいことに注目し、過ホウ酸塩酸化剤の使用を提案した。さらに、上記ルミノールと、過ホウ酸塩酸化剤と、アルカリ性物質としての炭酸ナトリウムとを、それぞれ別の容器に独立して入れた現場キットも提案した。この現場キットには、プラスチックおよびガラスの気化手段、フィルター紙、蒸留水が入った瓶、暗闇の中で反応物質を混ぜることができるようにする懐中電灯、血痕あるいは他の微小な証拠を持ち運ぶためのプラスチック容器などの付属品も含まれていた。
【0020】
Simplified preliminary blood testing. An improved technique and comparative study of methods. Journal of the America Institute of Criminal Law and Criminalogy, 42, 95-104(1951年、Grodsky, M.、Wright, K.、Kirk, P.L.著)では、体積比率1:5,000,000という非常に希薄に希釈された血液に対するルミノールを用いた化学発光反応を最適化することに成功した。
【0021】
Detection of blood by means of chemiluminescence. Journal of Laboratory Clinical Medicine., 24, 1183-1189,(1939年、Proescher, F.およびMoody, A.M.著)では、さらに、Simplified preliminary blood testing. An improved technique and comparative study of methods. Journal of the America Institute of Criminal Law and Criminalogy, 42, 95-104(1951年、Grodsky, M.、Wright, K.、Kirk, P.L.著)では、まず塩化水素酸(塩酸)をその場所に噴霧することを薦めている。これによって、ヘモグロビンを分解し、測定感度を高めることができる。
【0022】
Die Anweldung der Chemiluminescenz des Luminols in der Gerichtlichen Medizin und Toxicologie. I. Der Nachweis von Blutspuren. Deutsche Zeitschrift fuer die gesamte Gerichtliche Medizin, 57, 410-423(1966年、Weber, K.)では、炭酸アルカリ性物質を用いることによって引き起こされるのは、ヘモグロビン酸化反応の速度低下だけであるという事実と、またこのため、この炭酸アルカリ性剤が使用されたときの発光は発光が非常に弱いものであったという事実とが明らかになった。よって、水酸化ナトリウムをアルカリ性物質として使用することが提案された。また、同文献では、The Chemiluminescence of hemin: an aid for finding and recognizing blood stains important for forensic purposes. Angewande Chemie, 10, 155-157(1937年、Specht, W.)に記載されている試薬中で使用されたルミノールおよび過酸化水素の濃度は非常に高濃度であり、試薬の濃度に関連するルミノール反応において濃縮抑止を引き起こして化学発光が消滅することによって、血痕の立証において著しい低下を引き起こすと指摘している。さらに同文献では、1:20,000,000の比率まで希釈して乾燥した血液、あるいは新鮮な血液の痕跡(血痕)を検出するための合成物質として、蒸留水に希釈した0.4mmol/Lのルミノールと、17.6mmol/Lの過酸化水素と、45mmol/Lの水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムとからなる合成物質が提案されている。
【0023】
Grispino, R.R.J.は、1990年、The effects of luminol on serological analysis of dried blood stains Crime Laboratory Digest, 17(1), 13-23(1990年、Grispino, R.R.J.)では、数日間乾燥させた血痕および新鮮な血痕であって、1:10,000から1:100,000まで希釈した血痕を検出するための合成物質として以下の組成のルミノール化合物を使用することを提案している。すなわち、このルミノール化合物は、蒸留水で希釈した5.6mmol/Lのルミノールと、472mmol/Lの炭酸カリウムあるいは炭酸ナトリウムと、100mmol/Lの過酸化水素Hとを含むものである。
【0024】
上述した全ては、過去長い間にさかのぼって、犯罪場面における血痕の検出の目的で、ルミノールを含む合成物質をアルカリ物質および酸化物質と組み合わせて利用されてきたことを示すものである。
【0025】
本発明では、酸化剤として過ホウ酸ナトリウムよりも過酸化水素を使用することが提案される。その理由としては、過ホウ酸ナトリウムは水に難溶性であるとともに、合成物質の気化(噴霧)を妨げるからである。同様に、アルカリ性物質として、炭酸塩の合成物質よりも水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムの使用が提案される。その理由は、炭酸塩を使った場合のルミノールの酸化反応は、水酸化物を使った場合に比べて非常に遅く、したがって、発光の強度が弱いためである。
【0026】
Die Anweldung der Chemiluminescenz des Luminols in der Gerichtlichen Medizin und Toxicologie. I. Der Nachweis von Blutspuren. Deutsche Zeitschrift fuer die gesamte Gerichtliche Medizin, 57, 410-423(1966年、Weber, K.)では、上記のタイプの合成物質ではあるが、ルミノールおよび過酸化水素の量が多すぎると、ルミノール反応における抑止を生み出し、これにより化学発光が消え、血痕の立証の著しい低下につながったということから、ルミノールと過酸化水素を少量しか含まない合成物質を提案した。
【0027】
さらに、米国特許5,770,116号及び5,833,887号において、Bryneは、明るさが欠けてよく見えない条件における狩猟場において、傷ついた狩猟獣が失った血の痕跡を検出するために、ルミノールの化学発光を使用することを提案した。
【0028】
この目的のため、Byrneは、米国特許5,770,116号および5,833,887号において、酸化剤として過ホウ酸ナトリウム、およびアルカリ物質として炭酸ナトリウムをルミノールに加えた合成物質の使用を提案した。
【0029】
しかしながら、この組成の合成物質では、過ホウ酸ナトリウムと炭酸ナトリウムとを使用することによって、上述したような、問題が生じる。
【0030】
すなわち、血液とルミノールとの反応によって発せられる光が十分顕著ではないため、狩猟者が、特に、真っ暗闇ではないが、日暮れ時のように光が少なくなってきている条件下で、追っている獣の残した血痕を探すのは難しくなる。
【0031】
さらに、過去の測定では、すべて非常に希薄に希釈された血液サンプルにおいて行われていた。
【0032】
本発明の目的は、過去の合成物質に存在していた問題を減らし、実際的な条件および環境において適用することができる合成物質を提案することにある。つまり、純粋な血痕がわずかである場合であっても、また、真っ暗闇のみではなく、日暮れ時の拡散した光に相当するような光が弱まっていくような条件下であっても、血液を、即座に、かつ、十分に明るい光の強度で見つけることができるようにすることである。この目的のために、本発明は、人間あるいは動物の血液を検出するための以下のような合成物質を提案している。すなわち、本発明の合成物質は、好適な水溶液に希釈した、ルミノールの化合物と、酸化剤と、塩基性物質とからなる合成物質であり、具体的には、ルミノール化合物が最終合成物質中に1から20mmol/L量含まれるように、また、酸化剤として過酸化水素を用い、これを最終合成物質中に25〜100mmol/Lの濃度で含まれるように、さらに、塩基としてナトリウム化合物(NaOH)を用い、これを最終合成物質中に25〜500mmol/Lの濃度で含まれるような合成物質を提案している。
【0033】
この化学式の応用が有用に実現されるために、ルミノール化合物は、1〜10mmol/L、望ましくは約5mmol/Lの濃度で含まれる。
【0034】
さらに、多くの応用において、ナトリウム化合物(NaOH)の量を25〜150mmol/Lに制限することが有用である。
【0035】
以下に述べるように、合成物質のpHを約11.5未満に抑えることが望ましい。
【0036】
もちろん、各構成成分の濃度は他の使用される構成成分の濃度と関連して決められることは、当業者にとっては十分理解されるものである。
【0037】
同様に、明細書と特許請求の範囲において使用される「ルミノール化合物」という名称は、ルミノール以外にも、そのすべての前駆化合物、ルミノール由来のすべての化合物を意味しており、例えば、アルキル、とりわけメチル、アミン、ヒドロキシルなどの少なくとも1つの置換しているルミノールの置換体を調製したもので、ルミノールにより生じるタイプの化学発光を生成することができる化合物も含まれる。これらの化合物の例としては、ジエチルイソルミノールおよびアミノブチルエチルイソルミノールがある。
【0038】
しかしながら、ルミノール化合物はルミノールからなるものであることが望ましい。
【0039】
第1の調製によれば、ナトリウム化合物(NaOH)が、最終合成物質中に約90mmol/Lの濃度で含まれることが好ましい。
【0040】
第2の調製によれば、ナトリウム化合物(NaOH)が、最終合成物質中に25〜50mmol/Lの濃度で含まれることが好ましい。
【0041】
すべての場合において、水溶液は水であるべきであり、最高の結果を得るためには非炭酸水であることが望ましい。
【0042】
本発明の別の目的は、人間あるいは動物の血痕を検出するための上記合成物質の使用にある。
【0043】
第1の調製により規定された合成物質は、とりわけ、狩猟における動物の血痕の検出用に好適である。
【0044】
第2の調製により規定された合成物質は、とりわけ、犯罪あるいは事故現場における人間の血痕の検出用に好適である。
【0045】
同様に、本発明は、この合成物質の調製のために設計された現場キットも提案する。第1の好適な現場キットは、
−少なくとも1回分の適用量である1〜20mmol量のルミノール化合物が含まれている第1の容器と、
−少なくとも1回分の適用量である25〜100mmolの過酸化水素が含まれている第2の容器と、
−少なくとも1回分の適用量である25〜500mmolのナトリウム化合物(NaOH)が含まれている第3の容器とからなる。
【0046】
第1の変形例では、本発明のキットとして第1に選択された形態は、上記第1の調製によって規定された合成物質に対して適用されるものであって、
−少なくとも1回分の適用量であるルミノール化合物が含まれており、当該ルミノール化合物は、ルミノールが1〜10mmolの供給されている第1の容器と、
−少なくとも1回分の適用量である25〜100mmolの過酸化水素が含まれた第2の容器と、
−少なくとも1回分の適用量である25〜150mmolのナトリウム化合物(NaOH)が含まれた第3の容器とからなる。
【0047】
第2の変形例では、本発明の現場キットとして、第1に選択した処方は、上記第2の調製によって規定された合成物質に対して適用されるものであって、とりわけ犯罪現場における使用のためのものであり、この現場キットは、
−少なくとも1回分の適用量である、約5mmolのルミノール化合物が含まれた第1の容器と、
−少なくとも1回分の適用量である約50mmolの過酸化水素を含む第2の容器と、
−少なくとも1回分の適用量である、25〜50mmolのナトリウム化合物(NaOH)が含まれている第3の容器とを備えるものである。
【0048】
好適な第2形態としては、発明の仕様に適する合成物質の調製用の現場キットであって、
−少なくとも1回分の適用量である、1〜20mmolを供給するのに十分な量の上記ルミノール化合物と、25〜500mmolのナトリウム化合物(NaOH)あるいは25〜100mmolの過酸化水素とが予め混合され固形の相溶形状(sous forme compatible solide)で含まれている第1の容器と、
−上記第1の容器における混合に応じて、少なくとも1回分の適用量である、25〜100mmolの過酸化水素あるいは25〜500mmolのナトリウム化合物が含まれている第2の容器とからなる。
【0049】
望ましくは、本発明の仕様に適用できる合成物質の調製用の上記キットは、
−少なくとも1回分の適用量である、1〜20mmolを供給するのに十分な量のルミノール化合物と、25〜150mmolのナトリウム化合物(NaOH)あるいは25〜100mmolの過酸化水素とが予め混合され固形の相溶形状で含まれている第1の容器と、
−上記第1の容器における混合に応じて、少なくとも1回分の適用量である、50mmolの過酸化水素あるいは25〜100mmolのナトリウム化合物が含まれている第2の容器とからなる。
【0050】
固形の過酸化水素は市場で入手可能である。具体的には、尿素付加物として、錠剤あるいは粉末の形態の「尿素アダクト(Urea Adduct)」とよばれるSIGMA-ALDRICH製のものが存在することが知られている。
【0051】
上述の代わりに、上記キットは、
−少なくとも1回分の適用量である、約5mmolのルミノール化合物と、25〜50mmolあるいは90mmolのナトリウム化合物(NaOH)、もしくは50mmolの過酸化水素とが予め混合され、固形の相溶形状で含まれている第1の容器と、
−上記第1の容器における混合に応じて、少なくとも1回分の適用量である、50mmolの過酸化水素もしくは、25〜50mmolあるいは90mmolのナトリウム化合物(NaOH)が含まれている第2の容器とからなる。
【0052】
さらなる本発明の好ましい形態によれば、本発明の3つの主要な構成成分を、1回の予備混合で製剤化することも可能である。早期に反応してしまうことなくこれら3化合物を混和(相溶)させる製剤化技術は、当業者にとっては周知の技術である。これにより、3つの構成成分を1つの容器に共に含めることができる。すなわち、早期に反応を回避するためのある種の包含技術が、良く知られている。このように、本発明は、1つの容器内で混合される本発明における3つの基本的な構成成分の形態に関するものでもある。
【0053】
全ての場合において、本発明によるキット各々の容器(上記第1および第2の容器)は、プラスチックあるいはガラスから成る再封可能なものであることが望ましい。
【0054】
これらの容器は、1回分の適用量を粉末状で含んだ小袋であっても良い。
【0055】
さらに、容器の少なくとも1つ、あるいは全ての容器が、少なくとも1つのブリスター包装内に設けられたくぼみ(alve´ole)によって形成されていることが好ましい。
【0056】
また、本発明のキットは、以下の構成であることがより好ましく。すなわち、少なくとも3つのくぼみを有する少なくとも1つのブリスター包装を有し、上記くぼみのうちの1つには、1回分の適用量である1〜20mmolを供給するのに十分な量のルミノール化合物が含まれており、3つのくぼみのうちの別のくぼみには、1回分の適用量である25〜500mmolのナトリウム化合物(NaOH)が含まれており、3つのくぼみのうちの第3のくぼみには、1回分の適用量である25〜100mmolの過酸化水素が含まれている。
【0057】
これに替えて、本発明によるキットは、一方のくぼみに、1回分の適用量である1〜20mmolを供給するのに十分な量のルミノール化合物と、25〜500mmolのナトリウム化合物NaOHあるいは25〜100mmolの過酸化水素とが、予め混合され、固形の相溶形状となって含まれており、他方のくぼみに、上記くぼみの混合に応じて、1回分の適用量である25〜100mmolの過酸化水素あるいは25〜500mmolのナトリウム化合物が含んでいる、少なくとも2つのくぼみが設けられた1つのブリスター包装を有している。
【0058】
第3の変形例においては、上記キットが、上記の3つの構成成分が予め混合された混合物が含まれた少なくとも1つのくぼみが設けられた少なくとも1つのブリスター包装を有している。
【0059】
本発明によるキットのすべての変形例において、少なくとも1回分の適用量が錠剤の形態となっていることが望ましい。
【0060】
また、本発明のキットにおいては、ルミノール、過酸化水素、ナトリウム化合物それぞれの1回分の適用量が、個々の錠剤の形態をしていることが望ましい。
【0061】
上記のすべての場合に、有用な用途としては、夫々の1回分の適用量はさらに錠剤の直接粉砕や粉末化を容易にする賦形剤を含むものであってもよい。
【0062】
本発明はさらに、上記合成物質再構成する方法について提案している。すなわち、この再構成方法は、1回分の適用量のルミノール化合物と、1回分の適用量のナトリウム化合物と、1回分の適用量の過酸化水素とを、本発明のキットの容器から取り出し、水に希釈するという工程を含むものである。
【0063】
また、本発明は、傷ついたあるいは打ち倒された動物を、視界が悪い条件下において探して位置を特定するための方法も提案している。この方法は、本発明に記載された合成物質、あるいは、本発明に記載されている再構成する方法によって得られる合成物質が気化するという特徴に基づいて行われる方法である。このような気化は、動物が通ったであろうと考えられる領域において行われ、上記の合成物質と追われた動物の血痕が接触することにより発光反応を起こす。
【0064】
同様に、本発明のもう1つの目的は、犯罪現場において血痕を探し、存在位置を特定するための方法である。この方法は、本発明に記載された合成物質、あるいは、本発明に記載されている再構成する方法によって得られる合成物質が気化するという特徴に基づいて行われる方法である。このような気化は、犯罪の場面において行われ、上記の合成物質と人間の血痕が接触することにより発光反応を起こす。
【0065】
本発明は、以下の発明の詳細な説明によってより理解できるようになる。また、本発明の他の目的、詳細あるいは効果についても、以下の説明により明確になる。
【0066】
本発明では、人間あるいは動物の血痕、新鮮な血液あるいは乾燥した血液、洗い落とされたあるいは洗い落とされない血痕を、望ましくは水溶液に希釈した合成物質を用いることによって、迅速かつ効果的に発見することができるという驚くべき効果を得た。この合成物質とは、1〜20mmol/Lのルミノール化合物と、酸化剤として作用する25〜100mmol/Lの過酸化水素(H)と、アルカリ物質としての25mmol/L〜500mmol/Lのナトリウム化合物(NaOH)とからなるものである。
【0067】
この合成物質において、1〜20mmolのルミノール化合物の濃度、望ましくは1〜10mmol/Lの濃度を採用すれば、ルミノール化合物の使用を多くすることなく、最適な光強度を得られることが明らかである。
【0068】
実際、最終合成物質中に、25から500mmol、好ましくは25から150mmol、より好ましくは約90mmol/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)と、25から100mmol/Lの過酸化水素(H)とを使用すれば、ルミノールの化合物の濃度に応じて光強度は上昇する。実際には、10〜20mmol/Lのルミノール化合物で最高レベルに達する。しかしながら、本発明の説明によれば、より低い濃度の場合、とりわけルミノール化合物が5mmol/Lである場合にも、光強度が最大で93%に到達できたということは予想外であった。
【0069】
酸化剤として過酸化水素Hが選択された理由は、手ごろな価格で入手可能である以外に、Grispino, R.R.J.著「The effects of luminol on serological analysis of dried blood stains Crime Laboratory Digest, 17(1), 13-23,」の記載に基づくものである。この記載とは、過ホウ酸塩酸化剤の使用は、水あるいは水溶液に容易に溶けないので、溶液の気化が妨げられ、実質的に役にたたないというものである。
【0070】
さらに驚くべき効果として、過酸化水素を使用することによって、最高度の光強度が得られることが明らかになった。
【0071】
発明をより理解しやすくするために、以下にいくつかの実施形態を記述する。しかしながら、それらは、一例を説明したものであり、発明を網羅するものではなく、制限するものでもない。実施例1から実施例4までは、本発明の一部であり、特許請求の範囲に属するものである。本発明の他の実施例で同等の結果をもたらすのは、以下の2つの場合である。すなわち、
−10〜20mmol/Lのルミノール化合物と、約40mmolのNaOHと、約50mmolのHとを含む合成物質。
−約5mmol/Lのルミノール化合物と、50mmol/LのHと、約120mmol/LのNaOHとを含む合成物質。
【0072】
〔実施例1〕
本発明により調製される合成物質は、5mmol/Lのルミノールと、50mmol/LのNaOHと、50mmol/LのHとからなり、これを1リットルの蒸留水に希釈したものが使用された。次に、この合成物質を、以下の3種類のサンプル上に噴霧した。
−1:1,000,000の比率で希釈された羊の血液(すなわち、羊の血液を1,000,000倍希釈したもの)、および、1:100,000の比率で希釈された羊の血液。
−羊の純粋な鮮血(すなわち、希釈されていない鮮血)。
−羊の純粋な乾燥血液。
【0073】
合成物質のpHを測定した。当該合成物質と上述の様々なサンプルとの間の反応中に得られる光強度をは、以下の手順に従って測定した。
【0074】
希釈された血液のサンプルに関しては、光強度の測定は、ルマックコーポレーション(Lumac corporation)が製造販売している照度計LUMAC モデル Biocounter M2500を使用して行われた。この装置を改造して、光電子倍増管HAMAMATSUに適合させ、任意の単位で光の強度を記録する記録装置に接続させた。これは、照度測定の専門家にとって一般的なやり方で行われた。
【0075】
純粋な鮮血のサンプル、あるいは純粋な乾燥血液のサンプルに対する光強度の測定に関しては、FUJIFILM製造のCCDカメラであるLAS−1000モデルを使用し、このカメラを最高の光の強度と反応時間とを自動的に記録するためのソフトウェア処理装置を搭載したコンピュータに接続した。
【0076】
上記合成物質と、それぞれのサンプルとの間の反応時間は、以下の方法により測定された。
【0077】
希釈された血液サンプルを用いて、照度計に接続された記録装置によって記録される光強度の曲線に沿って、光の強度が最高値に達したときに反応の完了とした。一方、純粋な血液のサンプルの場合では、コンピュータが出した値を採用することもできる。表1からわかるように、本発明の本実施例1では、純粋な鮮血および純粋な乾燥血液のサンプルでは、合成物質を噴霧して40秒後に光強度が最高値に達した。
【0078】
この測定の結果は、以下の表1に要約される。
【0079】
〔実施例2〕
本発明に係る合成物質は、5mmol/Lのルミノールと、90mmol/LのNaOHと、50mmol/LのHとからなり、これを、1リットルの蒸留水に希釈して調製した。
【0080】
上記実施例1の測定方法と同じ測定方法に従って測定した。
【0081】
これらの測定結果は、以下の表1に要約される。
【0082】
〔実施例3〕
本発明に係る合成物質は、5mmol/Lのルミノールと、25mmol/LのNaOHと、50mmol/LのHとからなり、これを、1リットルの蒸留水に希釈して調製した。
【0083】
上記実施例1の測定方法と同じ測定方法に従って測定した。
【0084】
これらの測定結果は、以下の表1に要約される。
【0085】
〔実施例4〕
本発明に係る合成物質は、5mmol/Lのルミノールと、40mmol/LのNaOHと、50mmol/LのHとからなり、1リットルの蒸留水に希釈して調製した。
【0086】
上記実施例1の測定方法と同じ測定方法に従って測定した。
【0087】
これらの測定結果は、以下の表1に要約される。
【0088】
〔比較例1〕
比較のために、5mmol/Lのルミノールと、10mmol/LのNaOHと、50mmol/LのHとからなる合成物質を調製し、これを、1リットルの蒸留水に希釈した。
【0089】
本比較例においても、上記実施例1の測定方法と同じ測定方法に従って測定した。
【0090】
これらの測定結果は、以下の表1に要約される。
【0091】
〔比較例2〕
従来において合成物質で、Grispino, R.R.J.著「The effects of luminol on serological analysis of dried blood stains Crime Laboratory Digest, 17(1), 13-23」において記載された合成物質を調製した。この合成物質は、5.6mmol/Lのルミノールと、472mmol/LのNaCOと、100mmol/LのHとからなり、これを、1リットルの蒸留水に希釈したものを使用した。
【0092】
本比較例においても、上記実施例1の測定方法と同じ測定方法に従って測定した。
【0093】
これらの測定結果は、以下の表1に要約される。
【0094】
〔比較例3〕
Grispino, R.R.J.著「The effects of luminol on serological analysis of dried blood stains Crime Laboratory Digest, 17(1), 13-23」に記載された上記比較例2の合成物質と同じ濃度のルミノールと、Hと、アルカリ物質とからなる合成物質を調製した。
【0095】
しかしながら、この合成物質においては、アルカリ物質として、NaCOの代わりにKCOである。
【0096】
本比較例においても、KCOが使用される以外は、上記実施例1の測定方法と同じ測定方法に従って測定した。
【0097】
これらの測定結果は、以下の表1に要約される。
【0098】
〔比較例4〕
Grodsky, M.と、Wright, K.およびKirk, P.L.著「Simplified preliminary blood testing. An improved technique and comparative study of methods. Journal of the America Institute of Criminal Law and Criminology, 42, 95-104」に記載された、およびByrneにより米国特許5,770,116号および5,833,887号に記載された合成物質を調製した。この合成物質は、5.6mmol/Lのルミノールと、472mmol/LのNaCOと、酸化剤として45.5mmol/LのNaBoとを含む。
【0099】
本比較例においても、上記実施例1の測定方法と同じ測定方法に従って測定した。
【0100】
これらの測定結果は、以下の表1に要約される。
【0101】
〔比較例5〕
1966年、Weber, K.著「Die Anweldung der Chemiluminescenz des Luminols in der Gerichtlichen Medizin und Toxicologie. I. Der Nachweis von Blutspuren. Deutsche Zeitschrift fuer die gesamte Gerichtliche Medizin, 57, 410-423」に記載された合成物質を調製した。この合成物質は、0.4mmol/Lのルミノールと、45mmol/LのNaOHと、17.6mmol/LのHとからなり、これを、1リットルの蒸留水に希釈したものを用いた。
【0102】
本比較例においても、上記実施例1の測定方法と同じ測定方法に従って測定した。
【0103】
これらの測定結果は、以下の表1に要約される。
【0104】
〔比較例6〕
合成物質は、0.4mmol/Lのルミノールと、45mmol/LのKOHと、17.6mmol/LのHとからなり、1リットルの蒸留水に希釈された。
【0105】
この合成物質は、1966年、Weber, K.著「Die Anweldung der Chemiluminescenz des Luminols in der Gerichtlichen Medizin und Toxicologie. I. Der Nachweis von Blutspuren. Deutsche Zeitschrift fuer die gesamte Gerichtliche Medizin, 57, 410-423」に記載され、上記比較例5の合成物質に相当するが、本比較例では、ナトリウム化合物(NaOH)1を水酸化カリウムに置き換えた。
【0106】
本比較例においても、上記実施例1の測定方法と同じ測定方法に従って測定した。
【0107】
これらの測定結果は、以下の表1に要約される。
【0108】
【表1】

【0109】
これらの測定の過程において、血液の存在下で攪拌後、水酸化物溶液は、透明な状態のままであり、炭酸塩を含む当該溶液がガスを発生することを確認した。
【0110】
表1より、アルカリ物質として、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムが用いられている場合よりも、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが含まれる場合の合成物質が、発光の強度において最高の値を示していることがわかる。
【0111】
同様に、純粋な鮮血または純粋な乾燥血液のサンプルに噴霧した場合にも、これらの合成物質が最大の光強度を示すことがわかる。
【0112】
表1に結果は報告されていないが、本発明の合成物質、あるいは従来使用されていた合成物質において、水酸化カリウムを含む場合では、血液が希釈されている間に瞬間的(par un flash a` retardement apparaissant)に発光がおこり、これによってアルカリ物質が捨てられる(失われる)こともわかる。
【0113】
漂白剤を混ぜた水で洗われ、水ですすがれ、乾かされた後の血液のしみであっても、上記の合成物質を噴霧することによって上記と同じ結果が得られた。
【0114】
表1より、本発明の好適な合成物質としては、すなわち、発光という意味において好適な合成物質としては、鮮血、あるいは約30分外気にさらして乾燥させた血液であっても、5mmol/Lのルミノールと、90mmol/LのNaOHと、50mmol/LのHを有する合成物質を水に希釈した場合のものであることも明らかとなった。
【0115】
実際、鮮血および、外気にさらされた乾燥血液のどちらにおいても、NaOHが90mmol/L以上である本発明に好適な合成物質の溶液が、最高レベルの非常に明るい光を誘発(発光)することができた。
【0116】
これゆえに、この合成物質であれば、例えば、全くの暗闇ではないが日暮れなどの光が次第に弱まってくる条件下、あるいは満月の夜であっても、傷ついた狩猟獣の血痕を発見することができるため、特に好適である。
【0117】
しかしながら、犯罪や事故現場における血痕の検出、その存在位置の特定を、上記のようなpH12以上の合成物質を用いて行った場合、このようなpH値が原因となって、見つけられた血液のDNAの解読を断念せざるをえない可能性が生じる。
【0118】
実際、pH12以上においては、ルミノール合成物質によって見つけられた血液は、信頼性があり、かつ再現性のある同定(解読)のためのDNA分析ができるという補償はできない。
【0119】
すなわち、pH12以上のルミノール合成物質で「処理された」血液のDNAは劣化してしまう。
【0120】
一方、5mmol/Lのルミノールと、50mmol/LのHと、25から50mmolのNaOHとからなる本発明の合成物質であって、pHが約11.5より低い場合は、信頼性のある、かつ再現性のあるDNA分析を行うことができる。このことは、国家警察犯罪捜査協会(Institut de Recherche Criminelle de la Gendarmerie National (IRCGN))によって確認されている。
【0121】
NaOH濃度が25mmol/L未満であるの合成物質を用いた場合における発光の光強度は、上述した今までの合成物質によって得られる発光の光の強度とほぼ同じである。
【0122】
これにより、犯罪捜査において用いる場合に好適な本発明の合成物質としては、5mmol/Lのルミノールと、50mmol/Lの過酸化水素と、25〜50mmol/LのNaOHとからなる合成物質を水に希釈したものであって、pHが最高でも約11.5である合成物質であることが好ましい。
【0123】
すなわち、NaOH(ナトリウム化合物)濃度は、最終溶液のpHが12未満になるようにする必要がある。実際、このナトリウム化合物の濃度は、以下に述べるような錠剤を調製するために使われる容器のタイプによって異なり、また、溶液のpHを変化させて最終的にpHを12未満とするために多少必要となるナトリウム化合物の量によって変化する。
【0124】
本発明の合成物質における別の効果として、合成物質の溶解させることができる、様々な組成を有した水溶性環境下において希釈できるという点にある。なお、この場合、反応を阻害する傾向があるため、海水、炭酸ガス水は例外とする。
【0125】
これに関して、湖水、川の水、池の水、プールの水、こぼれた水、蒸留水、水道水に発明の合成物質を希釈されて測定したが、いずれの場合にも上記した効果が損なわれることはなかった。
【0126】
本発明による合成物質は、過去の合成物質と同様の方法で使用されるべきであるので、本発明の合成物質は、水に希釈し、血痕を探索する現場において、スプレー器具を用いて噴霧されることが好ましい。
【0127】
すなわち、本発明の合成物質は、溶液の形態で使用されるべきである。
【0128】
溶液は、予め調製されて、調製された溶液を血痕が探索される場所に運んでもよい。また、合成物質のそれぞれの構成成分を個々の容器に固体形態として入れて運び、その場で調製してもよい。
【0129】
本発明の合成物質は、非炭酸塩のすべての淡水に希釈されるので、捜査現場に非炭酸塩淡水を十分な量持ち込むことも可能であるし、現場で直接これらのタイプの水を確保することも可能である。
【0130】
上述の内容を考慮して、本発明における別の特徴点としては、捜査域に噴霧することができ、人間あるいは動物の血痕を検出し、存在位置を特定することができる溶液の調製に適した現場キットであり、このキットは、すでに記述されあるいは特許請求の範囲において記述されるものである。
【0131】
狩猟を目的とする場合に有用となるように、本発明の現場キットは、以下の構成を含むことが好ましい。すなわち、
−少なくとも1回分の適用量である、5mmolのルミノール化合物が含まれた第1の容器と、
−少なくとも1回分の適用量である50mmolの過酸化水素を含む第2の容器と、
−少なくとも1回分の適用量である、25〜50mmolのナトリウム化合物(NaOH)が含まれている第3の容器とを有しているキット、あるいは、
−少なくとも1回分の適用量である約5mmolのルミノール化合物と、90mmolのナトリウム化合物(NaOH)、あるいは50mmolの過酸化水素とが予め混合され、固体の相溶形状で含まれている第1の容器と、
−上記第1の容器における混合に応じて、少なくとも1回分の適用量である、50mmolの過酸化水素もしくは、90mmolのナトリウム化合物(NaOH)が含まれている第2の容器とを有しているキット、もしくは、
−上記の3つの構成成分が、相溶可能な形態で予め混合されている1つの容器を有しているキット。
【0132】
一方、犯罪あるいは事故現場での血痕の探索の際に使用される場合、また、その血痕を後にDNA分析する必要がある場合は、本発明の現場キットは、以下の構成を含むことが好ましい。
−少なくとも1回分の適用量である5mmolのルミノールあるいはルミノール化合物が含まれている第1の容器と、
−少なくとも1回分の適用量である50mmolの過酸化水素が含まれている第2の容器と、
−少なくとも1回分の適用量である25〜50mmolのNaOHが含まれている第3の容器とからなるキット、あるいは、
−少なくとも1回分の適用量である、5mmolのルミノールあるいはルミノール化合物と、25〜50mmolのナトリウム化合物(NaOH)、あるいは50mmolの過酸化水素とが予め混合され、固体の相溶形状で含まれている第1の容器と、
−上記第1の容器における混合に応じて、少なくとも1回分の適用量である、50mmolの過酸化水素もしくは、25〜50mmolのナトリウム化合物(NaOH)が含まれている第2の容器とを有しているキット、もしくは、
−上記の3つの組成が、相溶可能な形態で予め混合されている1つの容器を有したキット。
【0133】
上述したように、それぞれ容器は、プラスチック、ガラス、磁器あるいはそれ以外の物質よりなる再封可能な容器でもよい。例えば、それぞれの組成を粉末状で含んだ小袋であってもよい。
【0134】
また、少なくとも1つの容器、あるいは全ての容器が、少なくとも1つのブリスター包装内に設けられた1つのくぼみによって形成されることが好ましい。
【0135】
この場合、第1の変形例として、3つのくぼみを有する少なくとも1つのブリスター包装を有する現場キットであって、くぼみには、本発明による合成物質の組成が別々のくぼみに含まれている。
【0136】
この場合、上記くぼみのうちの1つには、1回分の適用量のルミノールあるいはルミノール化合物が含まれており、3つのくぼみのうちの別のくぼみには、1回分の適用量の過酸化水素が含まれており、3つのくぼみのうちの第3のくぼみには、1回分の適用量であるナトリウム化合物が含まれている。
【0137】
第2の変形例においては、本発明による現場キットは、一方のくぼみに、1回分の適用量である1〜20mmolを供給するのに十分な量のルミノール化合物と、25〜500mmolのナトリウム化合物NaOHあるいは25〜100mmolの過酸化水素とが、予め混合され、固形の相溶形状となって含まれており、他方のくぼみに、上記くぼみの混合に応じて、1回分の適用量である25〜100mmolの過酸化水素あるいは25〜500mmolのナトリウム化合物が含んでいる、少なくとも2つのくぼみが設けられた1つのブリスター包装を有している。
【0138】
これらの2つの変形例において、1回分の適用量に相当する、ルミノールあるいはルミノール化合物、あるいは当該ルミノール化合物とナトリウム化合物の混合物、あるいは過酸化水素とナトリウム化合物の少なくとも1つが、錠剤の形態で構成されることが好ましい。
【0139】
さらに、望ましくは、上記の2つの変形例において、毎回分の用量が錠剤の形態となっていることが好ましい。
【0140】
第3の変形例においては、現場キットは、上記の3つの構成成分が予め混合された混合物が含まれた少なくとも1つのくぼみが設けられた少なくとも1つのブリスター包装を有している。しかしながら、この変形例においては、1回分の適用量が錠剤の形態となっていることが好ましい。
【0141】
特に、1回分の適用量が錠剤の形態である場合には、錠剤が容易に直接粉砕できるようにする賦形剤をさらに含んでもよい。すなわち、例えば、NaOH(ラクト−ス、セルロース、カルシウムリン酸塩他)が存在することによる湿性顆粒化(granulation humid)が起こることを避けることができる。しかしながら、これに限定されるものではない。
【0142】
さらに当該分野で知られている、錠剤の溶解を容易にするような賦形剤(クロスカルメローセ(croscarmellose)、エクスプロタブ(explotab)など)を含んでもよい。
【0143】
所望の溶液を再構成する、具体的には、本発明の現場キットを用いることによって所望の溶液を再構成するためには、下記(1)および(2)を、水あるいは水溶液に希釈することが必要である。
(1) 1回分の適用量のルミノールかルミノール化合物、あるいは1回分の適用量のルミノール化合物と、ナトリウム化合物か過酸化水素とを予め混合した固形の相溶形状の混合物、および、
(2) 上記混合物に応じた過酸化水素あるいはナトリウム化合物の1回分の適用量。
【0144】
もし、ナトリウム化合物あるいは過酸化水素が、1回分の適用量のルミノールかルミノール化合物と混合されていない場合は、1回分の適用量のナトリウム化合物あるいは過酸化水素を、上述したような現場キットの容器から取り出される。また、本発明の3つの構成成分を予め混合した1つの混合物として含めることも可能である。
【0145】
視界が悪くなった条件下において、傷ついたあるいは打ち倒された動物を探して、その位置を特定するためには、本発明の合成物質を、おそらくは本発明による現場キットから取り出し、動物が通り過ぎたであろう場所に噴霧する。これにより、動物が残した血痕と合成物質とが接触して発光反応を生じる。
【0146】
同様の手順が、犯罪あるいは事故現場における人間の血痕の検出および位置特定に使用される。
【0147】
本発明は、上記で説明された適用の方法に限定されるものではなく、ここに説明された利用は、単に一例であって全てを網羅しているものではない。
【0148】
それゆえに、上記の実施例ではルミノールのみについて触れたが、すべてのルミノール化合物を使用することができる。すなわち、ルミノールの使用によって、本発明で定義されたような発光と同等の発光を提供することが十分に可能なものであればルミノール化合物であっても本発明に含まれる。これらのルミノール化合物としては、例えば、ジエチルイソルミノールおよびアミノブチルエチルイソルミノールがある。
【0149】
すなわち、本発明は、その必要条件に従って行われる限り、上述した形態およびそれらの組み合わせが全て技術的に同等であるとして含むことを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間あるいは動物の血痕を検出するとともにDNAを分析するための合成物質であって、
水溶液に希釈された、ルミノール化合物と、酸化剤と、塩基性物質とを含んでおり、
上記ルミノール化合物は、最終合成物質中に1〜20mmol/Lの濃度で含まれており、
上記酸化剤は、過酸化水素を用いるとともに、最終合成物質中に25〜100mmol/Lの濃度で含まれており、
上記塩基性物質は、ナトリウム化合物、すなわちNaOHを用いるとともに、最終合成物質中に25mmol/L〜500mmol/Lの濃度で含まれており、
上記合成物質のpHは、11.5未満であることを特徴とする合成物質。
【請求項2】
上記ルミノール化合物は、ルミノール、ジエチルイソルミノール、アミノブチルエチルイソルミノールのいずれかより選択されていることを特徴とする請求項1に記載の合成物質。
【請求項3】
上記ナトリウム化合物(NaOH)は、最終合成物質の中に25〜150mmol/Lの濃度で含まれていることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の合成物質。
【請求項4】
上記ナトリウム化合物(NaOH)は、最終合成物質中に、25〜50mmol/L、あるいは90mmol/Lの濃度で含まれていることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の合成物質。
【請求項5】
上記ナトリウム化合物(NaOH)は、最終合成物質の中に25〜40mmol/Lの濃度で含まれていることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の合成物質。
【請求項6】
上記水溶液は、水であり、かつ非炭酸水であることを特徴とする上記請求項1ないし5のいずれか1項に記載の合成物質。
【請求項7】
人間あるいは動物の血痕を検出するための請求項1ないし6の何れか1項に記載の合成物質の使用。
【請求項8】
狩猟場において動物の血痕を検出するための請求項3に記載の合成物質の使用。
【請求項9】
犯罪あるいは事故現場において、人間の血痕を検出するための請求項4に記載の合成物質の使用。
【請求項10】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の合成物質を調製するための現場キットであって、
少なくとも1回分の適用量である1〜20mmolのルミノール化合物が含まれている第1の容器と、
少なくとも1回分の適用量である25〜100mmolの過酸化水素が含まれている第2の容器と、
少なくとも1回分の適用量である25〜500mmolのナトリウム化合物(NaOH)が含まれている第3の容器とを有していることを特徴とする現場キット。
【請求項11】
ルミノール化合物としてルミノールが用いられており、当該ルミノールが、少なくとも1回分の適用量である1〜10mmol含まれている第1の容器と、
少なくとも1回分の適用量である25〜100mmolの過酸化水素が含まれている第2の容器と、
少なくとも1回分の適用量である25〜150mmolのナトリウム化合物(NaOH)が含まれている第3の容器とを有していることを特徴とする請求項10に記載の現場キット。
【請求項12】
特に犯罪現場における、請求項10または請求項11に記載の現場キットの使用であって、
少なくとも1回分の適用量である5mmolを供給するのに十分な量のルミノール化合物が含まれている第1の容器と、
少なくとも1回分の適用量である50mmolの過酸化水素が含まれている第2の容器と、
少なくとも1回分の適用量である25〜50mmolのナトリウム化合物、すなわちNaOHが含まれている第3の容器と有していることを特徴とする現場キットの使用。
【請求項13】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の合成物質を調製するための現場キットであって、
少なくとも1回分の適用量である1〜20mmolを供給するのに十分な量の上記ルミノール化合物と、25〜500mmolのナトリウム化合物(NaOH)あるいは25〜100mmolの過酸化水素とが、予め混合されて、固形の相溶形状となって含まれている第1の容器と、
上記第1の容器における混合に応じて、少なくとも1回分の適用量である25〜100mmolの過酸化水素あるいは25〜500mmolのナトリウム化合物が含まれている第2の容器とを有していることを特徴とする現場キット。
【請求項14】
請求項3に記載の合成物質を調製するための現場キットであって、
少なくとも1回分の適用量である5mmolを供給するのに十分な量のルミノール化合物と、25〜150mmolのナトリウム化合物(NaOH)あるいは50mmolの過酸化水素とが、予め混合されて、固体の相溶形状となって含まれている第1の容器と、
上記第1の容器における混合に応じて、少なくとも1回分の適用量である50mmolの過酸化水素あるいは25〜150mmolのナトリウム化合物が含まれている第2の容器とを有していることを特徴とする現場キット。
【請求項15】
請求項4に記載の合成物質を調製するための現場キットであって、
少なくとも1回分の適用量である5mmolを供給するのに十分な量のルミノール化合物と、25〜50mmolあるいは90mmolのナトリウム化合物(NaOH)とが、もしくは、当該ルミノール化合物と、50mmolの過酸化水素とが、予め混合されて、固形の相溶形状となって含まれている第1の容器と、
上記第1の容器における混合に応じて、少なくとも1回分の適用量である50mmolの過酸化水素、もしくは、25〜50mmolあるいは90mmolのナトリウム化合物(NaOH)が含まれている第2の容器とを有していることを特徴とする現場キット。
【請求項16】
上記第1および第2の容器は、プラスチック材あるいはガラスからなる再封可能な容器であることを特徴とする請求項10ないし請求項15のいずれか1項に記載の現場キット。
【請求項17】
上記の少なくとも1つの容器あるいは全ての容器が、少なくとも1つのブリスター包装内部に設けられた1つのくぼみによって形成されていることを特徴とする請求項10ないし請求項15のいずれか1項に記載の現場キット。
【請求項18】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の合成物質を調製するための現場キットであって、
少なくとも3つのくぼみを有する少なくとも1つのブリスター包装を有し、
上記くぼみのうちの1つには、1回分の適用量である1〜20mmolを供給するのに十分な量のルミノール化合物が含まれており、残りのくぼみのうちの1つには、1回分の適用量である25〜500mmolのナトリウム化合物(NaOH)が含まれており、残った最後のくぼみには、1回分の適用量である25〜100mmolの過酸化水素が含まれていることを特徴とする現場キット。
【請求項19】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の合成物質を調製するための現場キットであって、以下の(1)あるいは(2)の構成を有していることを特徴とする現場キット。
(1)一方のくぼみに、1回分の適用量である1〜20mmolを供給するのに十分な量のルミノール化合物と、25〜500mmolのナトリウム化合物NaOHとが、あるいは、当該ルミノール化合物と、25〜100mmolの過酸化水素とが、予め混合され、固形の相溶形状となって含まれており、他方のくぼみに、上記くぼみの混合に応じて、1回分の適用量である25〜100mmolの過酸化水素あるいは25〜500mmolのナトリウム化合物が含んでいる、少なくとも2つのくぼみが設けられた1つのブリスター包装を有している。
(2)上記の3つの構成成分が予め混合された混合物が含まれた少なくとも1つのくぼみが設けられた少なくとも1つのブリスター包装を有することを特徴とする現場キット。
【請求項20】
少なくとも1回分の適用量が錠剤の形状となっていることを特徴とする請求項10ないし請求項19のいずれか1項に記載の現場キット。
【請求項21】
上記の3つの構成成分の1回分の適用量が、個々の錠剤の形状となっていることを特徴とする請求項10、11、13〜20のいずれか1項に記載の現場キット。
【請求項22】
請求項10、11、13〜21のいずれか1項に記載の現場キットであって、
NaOHの存在が原因による湿性顆粒の形成を回避するために、上記1回分の適用量には、さらに、錠剤の直接粉砕を容易にする、ラクト−ス、セルロース、カルシウムリン酸塩といった賦形剤が含まれており、
またさらに、錠剤の粉末化を容易にする、クロスカルメローセやエクスプロタブといった賦形剤を含んでいることを特徴とする現場キット。
【請求項23】
上記ルミノール化合物がルミノールであることを特徴とする請求項10、11、13〜22のいずれか1項に記載の現場キット。
【請求項24】
請求項10、11、13〜23のいずれか1項に記載の現場キットであって、
上記3つの構成成分であるルミノールと、ナトリウム化合物と、過酸化水素とが、早期に反応してしまうことなく、かつ、互いに相溶性があるように、それぞれ単一の予備混合体として形成されており、これにより、これらを1つの容器に共に封入することができることを特徴とする現場キット。
【請求項25】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の合成物質の再構成方法であって、
請求項10、11、13〜24のいずれか1項に記載の現場キットの容器から、
1回分の適用量のルミノール化合物と、1回分の適用量のナトリウム化合物と、1回分の適用量の過酸化水素とを、あるいは、
1回分の適用量のルミノール化合物とナトリウム化合物との混合物と、1回分の適用量の過酸化水素とを取り出して、水に希釈する工程を含むことを特徴とする手順。
【請求項26】
視界が悪い条件下において、傷ついたあるいは打ち倒された動物を検出し、その位置を特定する方法であって、
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の合成物質、あるいは、請求項25に記載の方法によって得られた合成物質を、動物が通りすぎたであろうと推測される場所に噴霧する工程を含んでおり、上記合成物質と、追われた動物が残した血痕との接触によって、発光反応を起こすことを特徴とする位置特定方法。
【請求項27】
視界が悪い条件下において、犯罪現場あるいは事件現場における人間の血痕を検出し、その位置を特定する方法であって、
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の合成物質、あるいは、請求項25に記載の方法によって得られた合成物質を上記の現場に噴霧する工程を含んでおり、上記合成物質と人間の血痕との接触によって発光反応を起こすことを特徴とする位置特定方法。
【請求項28】
人間あるいは動物の血痕を検出するとともにDNAを分析する方法であって、
請求項1〜6の何れか1項に記載の合成物質、あるいは、請求項25に記載の方法によって得られた合成物質を用いることを特徴とする方法。

【公開番号】特開2009−216713(P2009−216713A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115821(P2009−115821)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【分割の表示】特願2004−500028(P2004−500028)の分割
【原出願日】平成15年4月24日(2003.4.24)
【出願人】(504394962)
【Fターム(参考)】