血管形成的に有効なFGF−2の単位用量および使用方法
【課題】冠状動脈疾患中および/または急性心筋梗塞を処置する方法を提供すること。
【解決手段】安全かつ血管形成的に有効な用量の組換えFGF−2、あるいはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを、冠状動脈疾患に対する処置を必要とするヒト患者の1つ以上の冠動脈管内または末梢静脈内に投与する工程を包含する、冠状動脈疾患についてヒト患者を処置するための方法。本発明の単回単位用量組成物は、再処置が必要とされる前に2ヶ月持続する、ヒトCAD患者での血管形成効果を提供する。別の局面において、本発明は、患者の安全を最適化する投与方法に関する。
【解決手段】安全かつ血管形成的に有効な用量の組換えFGF−2、あるいはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを、冠状動脈疾患に対する処置を必要とするヒト患者の1つ以上の冠動脈管内または末梢静脈内に投与する工程を包含する、冠状動脈疾患についてヒト患者を処置するための方法。本発明の単回単位用量組成物は、再処置が必要とされる前に2ヶ月持続する、ヒトCAD患者での血管形成効果を提供する。別の局面において、本発明は、患者の安全を最適化する投与方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、治療有効量のFGF−2もしくはその血管形成活性フラグメント(angiogenically active fragment)または血管形成活性ムテインを含む、ヒトにおいて心臓の血管新生を誘導するための単位用量の組成物に関する。本発明はまた、患者へ全身性のリスクを最小限にしながら、心臓の血管新生を誘導するために、ヒトへ1回の単位用量組成物を投与するための方法に関する。開示された単位用量の組成物およびその投与方法は血管形成術、冠状動脈疾患(CAD)の処置に対する外科的介入への代案を与え、そしてさらにヒトにおける心筋梗塞(MI)後の損傷を減少させるための補助を与えるので、本発明は有用である。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
線維芽細胞増殖因子(FGF)は、少なくとも18個の構造的に関連したポリペプチド(FGF−1からFGF−18と名づけられている)のファミリーであり、ヘパリンのようなプロテオグリカンに対する高い程度の親和性によって特徴付けられている。様々なFGF分子は、サイズが15〜23kDの範囲であり、神経細胞の接着および分化[Schubertら,J.Cell Biol.104:635−643(1987)]、創傷の治癒[米国特許第5,439,818号(Fiddes)]を含む正常および悪性状況下において、多くの中胚葉細胞型および外胚葉細胞型への分裂促進剤として、栄養因子として、分化誘導因子または分化阻害因子として[Clements,ら,Oncogene 8:1311−1316(1993)]、血管形成因子(angiogenic factor)として[Harada,J.Clin.Invest.,94:623−630(1994)、広範囲にわたる生物学的活性を示す。従って、FGFファミリーは、様々な範囲の線維芽細胞、平滑筋細胞、上皮細胞、神経細胞を刺激する多能性増殖因子のファミリーである。
【0003】
FGFは、胎児の発育または創傷の治癒のように正常な組織から放出される場合、時間的および空間的な制御に供される。しかし、FGFファミリーのメンバーの多くはまた、癌遺伝子でもある。したがって、時間的および空間的な制御なしではFGFファミリーのメンバーは血管新生を提供しながら、腫瘍の増殖を刺激する能力を有する。
【0004】
冠状動脈疾患は、一つ以上の冠状動脈がプラークの蓄積によって徐々に閉塞していく(アテローム性動脈硬化)、ヒトにおける進行的な状態である。この疾患を有する患者の冠状動脈は、よくバルーン血管形成や部分的に閉塞した動脈を開くためのステントの挿入によって処置される。結局、これらの患者の多くは、多大な出費およびリスクをかけて冠状動脈バイパス手術を行う必要がある。バイパス手術を行う必要性を減らすために、冠状動脈の血流を増やす薬物をこのような患者に提供することが望まれる。
【0005】
血塊などによって一つ以上の冠状動脈または小動脈が完全に閉塞するようになる心筋梗塞で患者が苦しむ場合、ヒトにおいてなおより重要な状況が生じている。閉塞した動脈または小動脈にさらされた心筋部分へ即座に循環を回復させる必要がある。失われた冠状循環が梗塞開始の数時間以内に回復されれば、閉塞より下流にある心筋に対する損傷のほとんどは防ぐことができる。組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼのような血塊溶解剤は、この場合に有益であることが立証されている。しかし、血塊溶解剤の補助物として、損傷を受けたか、または閉塞した心筋に血管新生によって副行循環を得ることも望ましい。
【0006】
従って、冠状動脈疾患中および/または急性心筋梗塞の後に、心臓の血管形成をヒトの患者に与える薬剤および投与様式を提供することが、本発明の目的である。より詳細には、有害な効果を最小限にしながら、心臓の脈管新生の望ましい特性を与える、FGFの治療用量およびヒトへの投与様式を提供することが本発明のさらなる目的である。
【0007】
様々なFGF分子の多くが単離され、そして変動しかつしばしば正反対の結果を有する様々な心筋虚血動物モデルへ投与されている。Battlerらによると、「イヌの心筋虚血モデルは天然に存在する副行循環が豊富であるので、批評の余地がある。天然の副行循環が相対的に欠乏しており、そしてヒトの副行循環に類似している点で優っているブタのモデルとは正反対である」。Battlerら‘Intracoronary Injection of Basic Fibroblast Growth Factor
Enhances Angiogenesis in Infarcted Swine Myocardium’JACC,22(7):2001−6(Dec.1993)2002頁、col.1。しかし、ウシのbFGF(すなわちFGF−2)を心筋梗塞モデルのブタに投与したBattlerらは、一つの動物種から別の動物種で得られる様々な結果を考慮し、そして互いに異なる結果を明白に開示し「従って、このように異なった動物モデルからの結果に基づいて推定する際に注意しなければならないという忠告を強調している」(Battlerら,2005頁,col.1)。さらに、Battlerは、「投薬とbFGF(すなわちウシのFGF−2)の投与様式は、達成される生物学的効果に対して深遠な含意を有し得る」(Battler,ら,2005頁,col.1)と指摘している。従って、ヒトの患者においてCADの処置および/またはMI創傷後の安全かつ効果的な処置を提供する線維芽細胞増殖因子の投薬量ならびに投与様式を発見することが、本発明のさらなる目的である。さらに一般的に、ヒトの心臓で血管新生を誘導する薬学的組成および方法を提供することが本発明の目的である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
冠血管形成を必要とするヒトの患者の一つ以上の冠脈管(IC)または,末梢静脈(IV)への約0.2μg/kg〜約48μg/kgの単回単位用量での、rFGF−2またはその血管形成的に活性な(angiogenically active)フラグメントもしくはムテインの投与が、思いがけなくヒトの患者に、予想外に長期間(これを書いている現在で6ヶ月になる)持続した処置患者の運動耐性時間(ETT)における予想外の大きな上昇(すなわち2ヶ月および6ヶ月の全グループでベースラインから平均的変化で96秒および100秒の上昇)を生じる、急速かつ治療的な冠血管形成を提供することを本願らは発見した。これらの変化は、標準的な血管再生手順の必要性の減少という結果になるはずである。本明細書中に使用される「冠血管形成」とは、冠循環において側副として作用する毛細血管から小動脈というサイズの範囲の、新しい血管の形成を意味する。比較のために血管形成は、プラセボと比較して30秒より長い患者のETTにおける上昇を提供する場合、治療的に成功であると考えられている。
【0009】
従って、一つの局面において本発明は、安全かつ治療有効量のrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む、単位用量のrFGF−2に関する。代表的に安全かつ治療的に有効な量は、理想的体重に基づいて、約0.2μg/kg〜約48μg/kgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む。他の実施形態において、単位用量の安全かつ治療的に有効な量は、0.2μg/kg〜2.0μg/kg、2.0μg/kgより上〜24μg/kg未満もしくは24μg/kg〜48μg/kg ICのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを含む。別の実施形態において、単位用量の安全かつ治療
的に有効な量は18μg/kgから36μg/kg IVのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを含む。完全な用語で表現すれば、本発明の単位用量は0.008mg〜7.2mg、より代表的には0.3mg〜3.5mgのFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む。適切なFGF−2は配列番号2のrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインである。
【0010】
別の局面において、本発明はCADについてヒト患者を処置する方法もしくはそこでの冠血管形成を誘導することに関する。その方法は安全かつ治療有効量の組み換えFGF−2(rFGF−2)またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを冠状動脈疾患の処置が必要な(または血管新生が必要な)ヒトの患者の一つ以上の冠脈管もしくは末梢静脈へ投与する工程を含む。代表的に安全かつ治療的に有効な量の部分が、二つの冠脈管の各々に投与される。安全かつ治療的に有効な量は、薬学的に受容可能なキャリアーにおいて約0.2μg/kg〜約48μg/kgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む。他の実施形態において、安全かつ治療的に有効な量は、薬学的に受容可能なキャリアーにおいて0.2μg/kg〜2μg/kg、2μg/kgより上〜24μg/kg未満、または24μg/kg〜48μg/kgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む。完全な用語では、上記の方法で使われているrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインの量は、0.008mg〜7.2mg、より代表的には0.3mg〜3.5mgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む。
【0011】
FGF−2はグリコサミノグリカン(例えばへパリン)結合タンパク質であり、そしてグリコサミノグリカンの存在は活性およびAUCを最適化するので(図3および4を参照のこと)、本発明のRFGF−2のIC投薬量は代表的にへパリンのようなグリコサミノグリカン投与の0〜30分前に投与される。へパリンはICもしくはIV、代表的にはIV投与される。必要に応じて、へパリンは単位
用量組成物と組み合わされる。
【0012】
rFGF−2が一酸化窒素、強力な血管拡張剤を放出するので、注入前(前方向的な)および注入の間の侵略的な流体治療技術は、患者の安全のために重要である。注入前の推定楔入圧12mmHgを確立するためのIV流体(例えば500〜1000mLの標準生理食塩水)の投与、および注入に関連した収縮期の血圧を下げる(例えば90mmHg未満)ためにIV流体(例えば200mLの標準生理食塩水)のボーラス投与は、IC注入またはIV注入によるヒトの患者に対するrFGF−2投与の安全性を最適化する。
【0013】
EDTAが正常な心筋収縮および心臓伝導に必要とされるカルシウムの強力なキレート剤なので、EDTA濃度を最小限にすることは患者の安全にとって重要である。単位用量組成物中100μg/ml未満のEDTA濃度は、IC注入またはIV注入によるヒトの患者に対するrFGF−2投与の安全性を最適化する。
【0014】
急激なrFGF−2のボーラス投与が動物において深い低血圧と関連しているので、注入の速度は、患者の安全に重要である。一分あたり0.5〜2mL、代表的には一分あたり1mLでの投与は、IC注入またはIV注入によるヒトの患者に対するrFGF−2投与の安全性を最適化する。
【0015】
ETT、「シアトル アンギナ質問表(Seattle Angina Questionnaire)」(SAQ)および心臓の標的領域のMRIのような当該分野で認識された臨床的終点の測定によって決定されるように、単位用量組成物および投与方法によっ
て冠血管形成を必要とするヒトの患者に提供された治療効果の予想外の大きさおよび持続時間は、単回単位用量が投与された後2週間の早さでみられ、そして単回単位用量がICまたはIV投与された後6ヶ月間持続した。例えば、Spertusらの(1995)JACC 25:333−341を参照のこと。特に、58人のヒトCAD患者のETTは、ベースラインでの単調な繰り返しによって評価されており、そしてICまたはIV経路による単回単位用量のrFGF−2の投与後1ヶ月、2ヶ月、および6ヶ月で全ての投薬郡中の患者幾人かにおいて臨床的効果が観察された。表1を参照のこと。運動能力における増加は、1ヶ月と2ヶ月との間で現れている。平均的ETTは、2ヶ月および6ヶ月において60秒より上に増加し、中用量群(6〜12μg/kg)または低用量群(0.33〜2.0μg/kg)より高用量群(24〜48μg/kg)においてより大きな効果が見られている。(表1を参照のこと)。特に、動物モデルによって予期せずかつ予想外であったのは、IVによる単位用量のrFGF−2を投与された患者について投薬後2ヶ月および6ヶ月で観察された、各々93.4秒と87.5秒のヒトの患者でのETTにおける平均的な上昇である。さらにプラセボ効果を想定しても、ETT秒についてのベースラインからの平均的な変化はなお、血管形成に関する結果の予想外で有望な比較を可能にした。
【0016】
48人のヒトCAD患者の生活の質は、有効な疾病特異的質問表、シアトル アンギナ質問表(SAQ)によってベースラインにおいて(すなわち投薬前に)評価され、そしてICまたはIV経路によって本発明の単回単位用量のrFGF−2を一回受けた後、2ヶ月および6ヶ月において評価された場合、SAQにより測定された5つのスケールに対するベースラインからの平均的変化は、IC投与であろうとIV投与であろうと全ての投薬範囲に対して臨床的に著しい方法で上昇していた(表2〜6)。特にSAQによって評価された5つのスケールは、労作性能力、アンギナ安定性、アンギナ頻度、処置満足感および疾患理解である。ベースラインと比較して、労作性能力に対する平均スコアは、2ヶ月で10.9から20.2まで;ならびに6ヶ月で16.5から24.1まで増加した。アンギナ安定度について、平均スコアは、2ヶ月で32.1から46.2まで;および6ヶ月で16.7から23.2まで増加した。アンギナ頻度について平均スコアは、2ヶ月で20.0から32.9まで;および6ヶ月で11.4から36.7まで増加した。処置満足感について、平均スコアは、2ヶ月で8.5から19.8まで;および6ヶ月で6.3から19.8まで増加した。疾病理解について、平均スコアは、2ヶ月で20.2から27.8まで;および6ヶ月で23.8から34.0まで増加した。一般的に、いずれのスケールでも8ポイントの変化は、臨床的に顕著であると考えられている。従って、8.5〜46.2の観察された変化は評価された5つのスケールの各々に対して臨床的に有意である。14ポイントのベースラインからの平均的変化によるプラセボ効果を想定したとしても臨床的に有意であると考えられ、その結果は、なお評価されたほとんど全てのスケールで予想外に優れた効果を提供する。
【0017】
本研究の一部として、心臓駆出率、局所的心筋機能、および灌流(遅延到着帯)に対するrFGF−2の単回単位用量を投与した効果を評価するために、MRIもCADと診断された33人のヒトの患者に実行された。詳細には、患者は、配列番号2のrFGF−2の単回単位用量0.33μg/kg〜48μg/kg ICまたは18μg/kg〜36μg/kg IVが投与された。33人のヒトのCAD患者が、ベースライン(すなわち処置前に)ならびにICまたはIV経路による本発明のrFGF−2の単回単位用量での処置後1ヶ月、2ヶ月および6ヶ月に、休止している心磁気共鳴映像法(MRI)によって評価された場合、増加した標的の壁肥厚、標的の壁運動および標的領域の副行範囲、ならびに減少した標的領域の遅延到着範囲によって客観的に測定されるように、それらの患者は、その処置方法に対してきわめて統計的に有意な応答を示した。まとめると1ヶ月、2ヶ月および6ヶ月において標的の壁肥厚は、ベースラインと比較してそれぞれ4.4%、6.3%および7.7%増加し;標的の壁運動は、ベースラインと比較してそれぞれ2
.7%、4.4%および6.4%増加し;標的領域の副行範囲は、ベースラインと比較してそれぞれ8.3%、10.9%、および11.2%増加した;そして標的領域の遅延到着範囲は、ベースラインと比較してそれぞれ−10.0%、−8.3%ならびに−10.0%減少した。
【0018】
上記のデータは、本発明に従ってICまたはIV投与した場合の、rFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントの本単位用量組成物のヒトにおける臨床的効果を証明している。
上記に加えて、本発明は、以下を提供する:
(項目1)
ヒトにおいて血管新生を誘導するための単位用量組成物であって、該組成物は、薬学的に受容可能なキャリア中に、約0.008mg〜約7.2mgのFGF−2あるいはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを含む、単位用量組成物。
(項目2)
0.3mg〜3.5mgのFGF−2あるいはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを含む、項目1に記載の単位用量組成物。
(項目3)
前記FGF−2が、配列番号2のアミノ酸配列を有する、項目1に記載の単位用量組成物。
(項目4)
薬学的に受容可能なキャリア中に、0.3mg〜3.5mgの配列番号2のFGF−2あるいはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを含む、項目3に記載の単位用量組成物。
(項目5)
薬学的に受容可能なキャリア中に、約0.008mg〜約7.2mgの前記配列番号2のFGF−2の前記血管形成的に活性なムテインを含む、項目3に記載の単位用量組成物。(項目6)
薬学的に受容可能なキャリア中に、0.3mg〜3.5mgの前記配列番号2のFGF−2の前記血管形成的に活性なムテインを含む、項目5に記載の単位用量組成物。
(項目7)
薬学的に受容可能なキャリア中に、約0.008mg〜約7.2mgの前記配列番号2のFGF−2の前記血管形成的に活性なフラグメントを含む、項目3に記載の単位用量組成物。
(項目8)
薬学的に受容可能なキャリア中に、0.3mg〜3.5mgの前記配列番号2のFGF−2の前記血管形成的に活性なフラグメントを含む、項目7に記載の単位用量組成物。
(項目9)
薬学的に受容可能なキャリア中に、約0.008mg〜約7.2mgの前記配列番号2のFGF−2を含む、項目3に記載の単位用量組成物。
(項目10)
冠状動脈疾患についてヒト患者を処置するための方法であって、該方法が、該冠状動脈疾患についての処置を必要とするヒト患者において、安全かつ治療有効量の組換えFGF−2、あるいはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを1つ以上の冠動脈管または末梢静脈に投与する工程を包含し、該治療有効量が患者の体重1kgにつき約0.2μg〜48μgである、方法。
(項目11)
前記組換えFGF−2が、配列番号2のアミノ酸配列を有する、項目10に記載の方法。(項目12)
前記方法がさらに、約10U/kg〜80U/kgのヘパリンを前記患者に、前記配列番号2の組換えFGF−2、あるいはその前記血管形成的に活性なフラグメントまたはムテ
インを投与する前約0〜30分以内に投与する工程を包含する、項目11に記載の方法。(項目13)
配列番号2の組換えFGF−2、あるいはその前記血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインの前記治療有効量が、1つ以上の冠動脈管に投与される、項目12に記載の方法。
(項目14)
配列番号2の組換えFGF−2、あるいはその前記血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインの前記治療有効量が、約24μg/kg〜48μg/kgである、項目13に記載の方法。
(項目15)
配列番号2の組換えFGF−2、あるいはその前記血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインの前記治療有効量が、末梢静脈に投与される、項目12に記載の方法。
(項目16)
配列番号2の組換えFGF−2、あるいはその前記血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインの前記治療有効量が、約18μg/kg〜36μg/kgである、項目15に記載の方法。
(項目17)
冠状動脈疾患についてヒト患者を処置するための方法であって、該方法は、単回単位用量の組換えFGF−2、あるいはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを、該冠状動脈疾患についての処置を必要とするヒト患者の1つ以上の冠動脈管または末梢静脈に投与する工程を包含し、該単位用量が約0.008mg〜7.2mgの組換えFGF−2、あるいはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを含む、方法。
(項目18)
前記FGF−2が、前記配列番号2のアミノ酸配列を有する、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記単回単位用量が、前記ヒト患者において少なくとも4ヶ月間持続する治療利益を生ずる、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記単回単位用量が、前記ヒト患者において6ヶ月間持続する治療利益を生ずる、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記単回単位用量が、前記ヒト患者において、第2の単位用量の投与が約6ヶ月間必要とされないような規模と持続期間の治療利益を生ずる、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記単位用量が、1つ以上の冠状動脈に投与される、項目20に記載の方法。
(項目23)
前記単位用量が、末梢静脈に投与される、項目20に記載の方法。
(項目24)
前記単位用量が、0.3mg〜3.5mgの配列番号2の組換えFGF−2、あるいはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを含む、項目20に記載の方法。
(項目25)
前記方法がさらに、10U/kg〜80U/kgのヘパリンを前記患者にIVまたはICで、前記単位用量を投与する約0〜30分前に投与する工程を包含する、項目19に記載の方法。
(項目26)
ヒト患者の心臓での血管新生を誘導するための方法であって、該方法は、単回単位用量の組換えFGF−2、あるいはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを、冠状動脈疾患についての処置を必要とするヒト患者の1つ以上の冠動脈管または末梢静脈に投与する工程を包含し、該単位用量が約0.008mg〜7.2mgの組換えFGF−2、あるいはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを含む、方法。
(項目27)
前記FGF−2が、配列番号2のアミノ酸配列を有する、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記単回単位用量が、少なくとも4ヶ月間持続する、前記ヒト患者での1つ以上の臨床上の終点における改善を生ずる、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記単回単位用量が、6ヶ月間持続する、前記ヒト患者での1つ以上の臨床上の終点における改善を生ずる、項目28に記載の方法。
(項目30)
心筋梗塞についてヒト患者を処置するための方法であって、該方法が、単回単位用量の組換えFGF−2、あるいはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを、該ヒト患者の1つ以上の冠動脈管または末梢静脈に投与する工程を包含し、該単位用量が、約0.008mg〜7.2mgの組換えFGF−2、あるいはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを含む、方法。
(項目31)
前記方法がさらに、10U/kg〜80U/kgのヘパリンを前記患者にIVまたはICで、前記単位用量を投与する約0〜30分前に投与する工程を包含する、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記FGF−2が、配列番号2のアミノ酸配列を有する、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記単位用量が、末梢静脈に投与される、項目30に記載の方法。
(項目34)
前記単位用量が、前記患者の1つ以上の冠動脈管内に投与される、項目30に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】図1Aは、20分周期でIC注入によりヒトに投与したrFGF−2(配列番号2)の8つの異なった用量についての、平均rFGF−2血漿濃度対時間プロフィールのプロットである。図1Aに示された8つの用量のrFGF−2は痩せたボディーマス(LBM)の0.33、0.65、2、6、12、14、36および48μg/kgである。
【図1B】図1Bは、20分周期でIV注入によりヒトに投与したrFGF−2(配列番号2)の2つの異なった用量についての平均FGF−2血漿濃度対時間プロフィールのプロットである。図1Bにおける2つのIV用量のrFGF−2は、18μg/kgおよび36μg/kgである。36μg/kgのrFGF−2のIC投与に続く平均的な濃度−時間プロフィールを比較のために含まれる。
【図2】図2は、図1Aと1Bに対応するpg*min/mlにおける曲線(AUC)下での平均的なFGF−2面積のプロットである。このプロットは、ICまたはIV注入に続く全身的なrFGF−2暴露の用量の直線化を示している。IC経路に対する全身的な暴露は、IV投与に続いて観察される暴露に類似している。
【図3】図3は、「rFGF−2注入前の分」におけるへパリン投与時間の関数としての、個々のヒトの患者FGF−2血漿クリアランス(CL)値のプロットであり、FGF−2血漿クリアランス(CL)に対するへパリン投与のタイミングの影響を示す。
【図4】図4は、「rFGF−2注入前の分」におけるへパリン投与時間の関数としての、曲線(AUC)下での個々のヒトの患者FGF−2用量正規化面積のプロットであり、FGF−2 AUCに対するへパリン投与のタイミングの影響を示す。
【図5】図5は、第II相臨床試験の分析計画を要約す。
【図6】図6は、第II相臨床試験における、患者集団についての患者の特質を要約する。
【図7】図7は、第II相臨床試験のコースにわたる患者の特性を示す。
【図8】図8は、第II相臨床試験に対する患者集団の安全変数を示す。
【図9】図9は、プラセボ処置群と3つのFGF−2処置群に対する運動時間における変化を示す。
【図10】図10は、プラセボ処置群および3つの処置群における患者のアンギナ頻度スコアにおける変化を示す。
【図11】図11は、プラセボ処置群および3つの処置群における患者の、シアトル アンギナ質問表の他の領域における変化を示している。
【図12】図12は、短縮型−36個の肉体構成要素の要約スコアにおける変化を示す。
【図13】図13は、ベースラインのCCSクラス3または4によって分類されたETTおよびアンギナ頻度スコアにおける変化を示す。
【図14】図14は、40以下のベースラインAFSによって分類されたETTおよびアンギナ頻度スコアにおける変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
本出願人は、単回用量のrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインが、安全かつ治療的に有効な量で、CADと診断されたヒト患者の1つ以上の冠状脈管内または末梢静脈内に投与された場合に、さらなる処置が必要とされる前に少なくとも4〜6ヶ月間、より代表的には少なくとも2ヶ月間持続する、患者の冠状動脈疾患に安全かつ治療的に有効な処置を患者に提供することを発見した。この効果の持続期間、ならびにETT、SAQ、およびMRIにおける改善の程度は、単回用量の医薬について予期外であった。
【0021】
句「治療的に有効な量」または「安全かつ治療的に有効な量」とは、rFGF−2に関して本明細書中で使用される場合、本発明に従って投与された場合に医学的に管理し得ない主要な合併症がなく、そして最適な医学的管理にも関わらずCADの症状を有する患者において客観的な心臓の改善を提供する、rFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインの量を意味する。従って、液体の投与によって管理され得る急性低血圧症は、本発明の目的に対して「安全」とみなされる。代表的に、rFGF−2の安全かつ治療的に有効な量は、約0.2μg/kg〜約48μg/kgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む。本発明における使用に適切なFGF−2は、配列番号2のrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインである。
【0022】
従って、本発明は複数の局面を有する。その第1の局面では、本発明は、ヒト患者における血管形成を誘導するための単位用量組成物に関する。この単位用量は、治療的に有効な(すなわち、血管形成に有効な)量のrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラ
グメントもしくはムテインを含み、この量は、約0.2μg/kg〜約48μg/kgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む。
【0023】
用語「単位用量組成物」とは、本明細書中で使用される場合、本発明の方法に従ってヒト患者に投与された場合に、少なくとも4〜6ヶ月間、代表的には6ヶ月間再処置を必要としないように、有意な効力の血管形成効果を血管形成の必要がある代表的なヒト患者に提供する組成物を意味する。本発明の単位用量組成物は、代表的に、1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤またはキャリアと組み合わせて提供される。単位用量組成物の他の実施形態では、安全かつ治療的に有効な量は、約0.2μg/kg〜約2μg/kg、約2μg/kg〜約24μg/kg、または約24μg/kg〜約48μg/kgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む。
【0024】
処置される患者の体重に依存しない、より絶対な用語で本発明の単位用量組成物を定義することは都合が良い。このように定義する場合、単位用量組成物は、0.008mg〜7.2mgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む。この実施形態では、単位用量組成物は、最小の患者(例えば、40kg)の最低用量(約0.2μg/kg)から、より大きな患者(例えば、150kg)の最高用量(約48μg/kg)までを範囲する、大多数のヒトCAD患者のいずれか一人に投薬することに適用させるために十分な量のFGF−2を含む。より代表的には、単位用量は、0.3mg〜3.5mgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む。単位用量組成物を、代表的に、上記で参照した量のrFGF−2、および本明細書中で後に記載されるような有効量の1つ以上の薬学的に受容可能な緩衝液、安定剤および/または他の賦形剤を含む、溶液形態または凍結乾燥形態で提供する。
【0025】
上記された単位用量組成物における活性因子は、組換えFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインである。組換えFGF−2を作製する方法は、当該分野において周知である。配列番号2の組換えFGF−2は、1992年10月13日に発行された「Basic Fibroblast Growth Factor」と表題付けられた米国特許第5,155,214号(そしてこれは、その全体において、本明細書中で明確に参考として援用される)に記載のように作製される。さらに、この文章の前に出ようと後に出ようと、本明細書中で引用されるすべての他の参考文献は、その全体において、本明細書中で明確に参考として援用される。’214特許に開示されるように、配列番号1のDNA(これは、配列番号2のbFGF(本明細書中以降「FGF−2」)をコードする)は、pBR322、pMB9、Col E1、pCRI、RP4、またはλ−ファージのようなクローニングベクター内に挿入され、そしてこのクローニングベクターは、真核生物細胞または原核生物細胞のいずれかを形質転換するために使用され、ここで、この形質転換細胞がFGF−2を発現する。1つの実施形態では、宿主細胞は、Saccharomyces cerevisiaeのような酵母細胞である。結果として生じた、発現される全長FGF−2は、配列番号2と一致して146個のアミノ酸を有する。配列番号2のFGF−2は4個のシステイン(すなわち、残基の25位、69位、87位、および92位)を有するが、内部ジスルフィド結合は存在しない。[’214、第6欄、第59〜61行]。しかし、酸化的条件の下で架橋が生じる場合には、25位と69位の残基の間で生じるようである。
【0026】
146個のアミノ酸残基を有する配列番号2のFGF−2は、天然に存在するヒトFGF−2とは、わずか2個のアミノ酸残基で異なる。詳細には、配列番号2のFGF−2の残基112位および128位のアミノ酸はそれぞれ、SerおよびProであるが、ヒトFGF−2では、それらはそれぞれThrおよびSerである。事実、対応するヒトFGF−2のように、ウシFGF−2は、最初に、155個のアミノ酸残基を有するポリペプチドとしてインビボで合成される。Abrahamら「Human Basic Fib
roblast Growth Factor:Nucleotide Sequence and Genomic Organization」、EMBO J.,5(10):2523−2528(1986)。配列番号2のFGF−2を、Abrahamの全長155残基のウシFGF−2と比較した場合、配列番号2のFGF−2は、対応する全長の分子のN末端で、最初の9個のアミノ酸残基のMet Ala Ala Gly Ser Ile Thr Thr Leu(配列番号3)を欠失する。本発明の組成物および方法において使用される組換えFGF−2は、90年9月11日に発行された「Bovine Fibroblast Growth Factor」と表題付けられた米国特許第4,956,455号(これは、その全体において、本明細書中で参考として援用される)に詳細に記載される技術を用いて、製薬用品質(98%以上の純度)に精製された。特に、出願人の単位用量組成物の組換えFGF−2の精製において使用される最初の2つの工程は、「以前に記載されたような、従来のイオン交換精製工程および逆相HPLC精製工程」である。[米国特許第4,956,455号、これは、Bolenら、PNAS USA 81:5364−5368(1984)を引用する]。第3の工程(これを、’455特許では「鍵となる精製工程」という[’455、第7欄、第5〜6行])は、ヘパリン−SEPHAROSE(登録商標)アフィニティクロマトグラフィーであり、ここではFGF−2の強力なヘパリン結合親和性は、約1.4Mおよび約1.95MのNaClで溶出した場合に、数1000倍の精製を達成するために使用される[’455、第9欄、第20〜25頁]。ポリペプチドの均質性は、逆相高圧液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)によって確認された。緩衝液の交換は、SEPHADEX(登録商標)G−25(M)ゲル濾過クロマトグラフィーによって達成された。
【0027】
配列番号2の146残基のrFGF−2に加えて、本発明の単位用量における活性因子はまた、FGF−2の「血管形成活性フラグメント(angiogenically active fragment)」を含む。用語FGF−2の「血管形成活性フラグメント」とは、配列番号2の146残基の約80%を有し、かつ配列番号2のFGF−2の血管形成活性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%を保持するFGF−2のフラグメントを意味する。
【0028】
血管形成に活性であるために、FGF−2フラグメントは、2つの細胞結合部位および2つのヘパリン結合部位のうちの少なくとも1つを有するべきである。類似体ヒトFGF−2の2つの推定細胞結合部位は、その残基36位〜39位および77位〜81位に存在する。Yoshidaら「Genomic Sequence of hst,a Transforming Gene Encoding a Protein Homologous to Fibroblast Growth Factors and the int−2−Encoded Protein」PNAS USA,84:7305−7309(1987年10月)の図3を参照のこと。hFGF−2の2つの推定ヘパリン結合部位は、その残基18位〜22位および107位〜111位に存在する。Yoshida(1987)の図3を参照のこと。天然に存在するヒトFGF−2(hFGF−2)およびrFGF−2(配列番号2)についてのアミノ酸配列の間の98%より高い類似性を考慮すると、rFGF−2(配列番号2)の2つの細胞結合部位はまた、その残基の36位〜39位および77位〜81位であり、そして2つのヘパリン結合部位は、その残基の18位〜22位および107位〜111位であることが予期される。上記と一致して、配列番号2のFGF−2のN末端短縮物(truncation)は、ウシにおいてその活性を除去しないことが当該分野で周知である。特に、当該分野では、いくつかの天然に存在しかつ生物学的に活性なFGF−2のフラグメントを開示し、そのフラグメントは、配列番号2のFGF−2に対するN末端短縮物を有している。配列番号2の残基12〜146を有する活性な短縮型bFGF−2はウシ肝臓において見出され、そして配列番号2の残基16〜146を有する、別の活性な短縮型bFGF−2はウシの腎臓、副腎、および精巣において見出された。[米国特許第5,155,214号の第6欄、第41〜
46行(これは、Uenoら、Biochem.and Biophys Res.Comm.138:580−588(1986)を引用する)を参照のこと]。同様に、FGF活性を有することが公知である配列番号2のbFGF−2の他のフラグメントは、FGF−2(24−120)−OHおよびFGF−2(30−110)−NH2である。[米国特許第5,155,214号の第6欄、第48〜52行]。これらの後者のフラグメントは、FGF−2(配列番号2)の細胞結合部分の両方およびヘパリン結合セグメントのうちの1つ(残基107〜111)を保持する。従って、FGF−2の血管形成活性フラグメントとは、代表的に、配列番号2のFGF−2の残基30〜110に対応し、より代表的には配列番号2のFGF−2の残基18〜146に対応する残基を少なくとも有する、FGF−2のそれらの末端短縮型フラグメントを包含する。
【0029】
本発明の単位用量はまた、配列番号2のrFGF−2の「血管形成活性ムテイン(angiogenically active mutein)」を含む。用語「血管形成活性ムテイン」とは、本明細書中で使用される場合、以下の検索パラメーター:12のギャップオープンペナルティおよび1のギャップ伸長ペナルティーを使用するアフィンギャップ検索を使用して、MSPRCHプログラム(Oxford Molecular)で実行されるようなSmith−Waterman相同性検索アルゴリズム(Meth.Mol.Biol.70:173−187(1997)によって決定される場合に、任意の天然に存在するFGF−2に対して65%の配列同一性(相同性)を有し、そして上記の少なくとも65%の配列同一性を有する天然に存在するFGF−2の少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%の血管形成活性を保持する、単離および精製された組換えタンパク質または組換えポリペプチドを意味する。好ましくは、血管形成活性ムテインは、天然に存在するFGF−2に対して少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、そして最も好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有する。他の周知であり慣用的に使用される相同性/同一性の走査アルゴリズムのプログラムとしては、以下が挙げられる:PearsonおよびLipman、PNAS USA,85:2444−2448(1988);LipmanおよびPearson,Science 222:1435(1985);Devereauxら、Nuc.Acids Res.12:387−395(1984);または、Altschulら、Mol.Biol.215:403−410(1990)のBLASTP、BLASTN、またはBLASTXアルゴリズム。これらのアルゴリズムを使用するコンピュータープログラムもまた利用可能であり、そして以下が挙げられるが、これらに限定されない:GAP、BESTFIT、BLAST、FASTAおよびTFASTA(これらは、Genetics Computing Group(GCG)パッケージ、バージョン8、Madison WI USAから市販されている);ならびに、CLUSTAL(Intellegenetics、Mountain View CAによるPC/Geneプログラム中)。好ましくは、配列同一性のパーセンテージを、プログラムによって決定されたデフォルトのパラメーターを用いることによって決定する。
【0030】
句「配列同一性」は、本明細書中で使用される場合、ムテインのアミノ酸配列の特定の連続的セグメントを、天然に存在するFGF−2のアミノ酸配列と整列および比較した場合に、ムテイン配列内に類似して位置付けられることが見出される同一のアミノ酸のパーセンテージをいうことが意図される。
【0031】
ムテインにおけるアミノ酸配列同一性のパーセンテージを考慮する場合、タンパク質またはタンパク質機能の特性に作用しない保存的アミノ酸置換の結果として、いくつかのアミノ酸残基位置が、参照タンパク質とは異なり得る。これらの場合、配列同一性のパーセンテージは、保存的に置換されたアミノ酸における類似性を説明するために、上方に調整され得る。このような調整は、当該分野において周知である。例えば、MeyrsおよびMiller、「Computer Applic.Bio.Sci.,4:11−17
(1988)を参照のこと。
【0032】
本発明の血管形成因子の「血管形成活性ムテイン」を調製するために、部位特異的変異誘発についての標準的な技術を使用し得る。これらの技術は、当該分野において公知であり、および/またはGilmanら、Gene 8:81(1979)またはRobertsら、Nature 328:731(1987)に教示される。部位特異的変異誘発技術のうちの1つを使用して、配列番号1のcDNA配列内に1つ以上の点変異を導入し、1つ以上のアミノ酸置換または内部欠失を導入する。保存的アミノ酸置換とは、置換されるアミノ酸の全体的電荷、疎水性/親水性、および/また立体的かさ高さを保存した置換である。例示のために、以下のグループの間の置換は保存的である:Gly/Ala、Val/Ile/Leu、Lys/Arg、Asn/Gln、Glu/Asp、Ser/Cys/Thr、およびPhe/Trp/Tyr。結果として生じるタンパク質またはポリペプチドが、上記に特定される制限内で血管形成活性を保持する限り、天然に存在する血管形成FGF−2の配列との有意な差異(35%まで)が許容される。
【0033】
システインを枯渇したムテインは、本発明の範囲内のムテインである。これらのムテインは、上記のような部位特異的変異誘発を使用するか、または「Cysteine−Depleted Muteins of Biologically Active Proteins」と表題付けられた米国特許第4,959,314号(「’314特許」)に記載の方法に従って構築される。’314特許は、生物学的活性および置換の効果を決定するための方法を開示する。システインの置換は、ジスルフィド形成に関与しない2つ以上のシステインを有するタンパク質において特に有用である。適切な置換としては、残基87位および92位のシステイン(これらは、ジスルフィド形成に関与しない)の1つまたは両方についてのセリンの置換が挙げられる。好ましくは、血管形成活性に関連しないFGF−2のN末端に置換を導入する。しかし、上記で考察されたように、保存的置換は、分子の全体にわたる導入に適切である。
【0034】
本発明の単位用量組成物は、安全かつ血管形成に有効な用量のrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテイン、および薬学的に受容可能なキャリアを含む。代表的に、本発明の薬学的組成物の安全かつ血管形成に有効な用量は、ヒト患者への投与に適切な形態およびサイズにある。そしてこれは、以下を含有する:(i)0.2μg/kg〜48μg/kgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテイン、(ii)および薬学的に受容可能なキャリア。他の実施形態では、安全かつ血管形成に活性な用量は、0.2μg/kg〜2μg/kg、2μg/kgより多い〜24μg/kg未満、または24μg/kg〜48μg/kgのFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテイン、および薬学的に受容可能なキャリアを含む。大多数のヒトCAD患者について絶対的な用語で表現すると、本発明の単位用量は、0.008mg〜7.2mg、より代表的には0.3mg〜3.5mgのFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む。
【0035】
本発明の単位用量組成物の2番目に列挙される成分は、「薬学的に受容可能なキャリア」である。用語「薬学的に受容可能なキャリア」とは、本明細書中で使用される場合、それ自体、その組成物を受容する患者に有害な抗体の産生を誘導せず、そして過度の毒性を伴わずに投与され得る、タンパク質様の医薬の安定化および/または投与のための当該分野において周知の任意のキャリアまたは希釈剤を意味する。薬学的に受容可能なキャリアの選択およびその後の加工は、本発明の単位用量組成物が、液状形態または固体形態のいずれかで提供されることを可能にする。
【0036】
単位用量組成物が液状形態である場合、薬学的に受容可能なキャリアは、静脈内(「IV」)または歯冠内(「IC」)の注射または注入に適切な、安定なキャリアまたは希釈
剤を含む。注射可能溶液または注入可能溶液について適切なキャリアまたは希釈剤は、使用される投薬量および濃度でヒトレシピエントに非毒性であり、そしてこれは滅菌水、糖溶液、生理食塩水溶液、タンパク質溶液、またはこれらの組み合わせを含む。
【0037】
代表的には、薬学的に受容可能なキャリアは、緩衝剤および1以上の安定化剤、還元剤、抗酸化剤および/または抗酸化キレート剤を含む。タンパク質ベースの組成物、特に薬学的組成物の調製における緩衝剤、安定化剤、還元剤、抗酸化剤およびキレート剤の使用は、当該分野において周知である。Wangら、「Review of Excipients and pHs for Parenteral Products Used
in the United States」、J.Parent.Drug Assn.、34(6):452〜462(1980);Wangら、「Parenteral
Formulations of Proteins and Peptides:Stability and Stabilizers」、J.Parent.Sci.and Tech.、42:S4〜S26(補遺1988);Lachmanら、「Antioxidants and Chelating Agents as Stabilizers in Liquid Dosage Forms−Part I」Drug
and Cosmetic Industry、102(1):36〜38、40および146〜148(1968);Akers,M.J.、「Antioxidants in Pharmaceutical Products」、J.Parent.Sci.and Tech.36(5):222〜228(1988);ならびにMethods in Enzymology、第XXV巻、ColowickおよびKaplan編、Konigsbergによる「Reduction of Disulfide Bonds in Proteins with Dithiothreitol」、185〜188頁を参照のこと。適切な緩衝剤には、酢酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、酒石酸塩、および種々のアミノ酸の塩が挙げられる。Wang(1980)455項を参照のこと。適切な安定化剤には、トレロース(threlose)またはグリセロールのような糖類が挙げられる。還元されたシステインの還元を維持する適切な還元剤には、0.01重量/重量%〜0.1重量/重量%のジチオスレイトール(クリランド試薬としても公知のDTT)またはジチオエリスリトール;0.1重量/重量%〜0.5重量/重量%のアセチルシステインまたはシステイン(pH2〜3);ならびに0.1重量/重量%〜0.5重量/重量%のチオグリセロール(pH3.5〜7.0)およびグルタチオンが挙げられる。Akers(1988)225〜226頁を参照のこと。適切な抗酸化剤には、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、およびアスコルビン酸が挙げられる。Akers(1988)225頁を参照のこと。還元されたシステインの微量金属触媒酸化を防ぐために微量金属をキレート化する、適切なキレート剤には、クエン酸塩、酒石酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の二ナトリウム塩、四ナトリウム塩、およびカルシウム二ナトリウム塩、ならびにジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)が挙げられる。例えば、Wang(1980)457〜458頁および460〜461頁、ならびにAkers(1988)224〜227頁を参照のこと。適切な糖には、グリセロール、トレハロース、グルコース、ガラクトース、およびマンニトール、ソルビトールが挙げられる。適切なタンパク質は、ヒト血清アルブミンである。
【0038】
液体形態において、本発明の代表的な単位用量組成物は、薬学的に受容可能なキャリアに溶解された、約0.001mg〜8mg、より代表的には0.03mg〜5mgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む。適切な薬学的に受容可能なキャリアは、10mM チオグリセロール、135mM NaCl、10mM クエン酸ナトリウム、および1mM EDTA、pH5を含む。上記の単位用量組成物についての適切な希釈剤または流剤(flushing agent)は、上記の
キャリアのいずれかである。代表的には、この希釈剤は、キャリア溶液である。rFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインは、長期間については液体形態で不安定である。液体形態の安定性および有効期間を最大化するために、この単位用量組成物は、−60℃で凍結して貯蔵されるべきである。融解された場合、この溶液は、冷蔵条件で6ヶ月間安定である。代表的な単位用量は、単位用量中に溶解された0.008〜7.2mgのrFGF−2または血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを有する、約1〜40ml、より代表的には10〜40mlの上記の組成物を含む。単位用量における使用に適切なrFGF−2は、配列番号2のrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインである。
【0039】
別の実施形態では、単位用量組成物は、凍結乾燥された(フリーズドライされた)形態で提供される。この形態では、rFGF−2の単位用量は、冷蔵温度にて、実質的に6ヶ月よりも長く、治療効力を損失することなく貯蔵され得る。凍結乾燥は、複数のバイアル(各々は、本発明の単位用量のrFGF−2の上記の液体形態をその中に含む)の減圧下での、迅速なフリーズドライ(すなわち、水分を除去する)によって達成される。上記の凍結乾燥を行う凍結乾燥機は、市販されており、そして当業者により容易に作動される。凍結乾燥されたケーク(cake)形態の、得られた凍結乾燥された単位用量組成物は、得られた凍結乾燥されたケーク内に、対応する液体処方物について上記の1以上の緩衝剤、安定化剤、抗酸化剤、還元剤、塩および/または糖を含むように処方される。全てのこのような他の成分を含む凍結乾燥された単位用量組成物は、滅菌水性希釈剤(例えば、滅菌水、滅菌糖溶液、または滅菌生理食塩水)で既知の容量または濃度に再構成されることのみを必要とする。あるいは、これは、上記のような滅菌緩衝溶液で再構成され得るが、キレート剤(例えば、EDTA)を欠く。凍結乾燥されたケークとして、この単位用量組成物は、冷蔵温度で6ヶ月から2年間安定である。従って、凍結乾燥形態のこの単位用量組成物の貯蔵は、従来の冷蔵装置を使用して容易に提供される。
【0040】
本発明の単位用量組成物は、心臓カテーテルまたは他の注入デバイス(これは、デッドスペース(dead space)を有する)を通じて投与されるので、この単位用量組成物を含むバイアルに処方して、その結果、これが、患者に投与されるよりも、約10〜50%多くのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含むことが都合がよい。例えば、投与されるrFGF−2の単位用量が7.2mgである場合に、このバイアルは、必要に応じて、50%までの余分(例えば、全体で約10.8mg)のrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含むように処方される。この余分な溶液は、送達装置のデッドスペースを充填するために適切である。デッドスペースを許容しない代替的な実施形態では、薬学的組成物は、心臓カテーテル内に、薬学的に受容可能な緩衝剤、希釈剤またはキャリアの前にロードされ、次いで、この薬学的に受容可能な緩衝剤、希釈剤またはキャリアは、適切な量の1以上の投薬を、血管形成を必要としている心筋における1以上の部位に送達するために使用される。
【0041】
上記で議論したように、上記の単位用量組成物について薬学的に受容可能なキャリアは、緩衝剤、ならびに1以上の安定化剤、還元剤、抗酸化剤および/または抗酸化キレート剤を含む。単位用量組成物がFGF−2および内皮細胞レセプターに結合して、その結果、FGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインの血管形成効力を増強するに効果的な量のグリコサミノグリカン(glycosoaminoglycan)(「プロテオグリカン」または「ムコ多糖」としても公知)(例えば、ヘパリン)を含むことは、本発明の範囲内である。投与されるヘパリンの量は、患者の体重1kgあたり約10〜80U(U/kg)、代表的には約40U/kgの量である。絶対的な用語で表されると、任意の1患者に投与されるヘパリンの総量は、5,000Uを超えない。従って、再構成の際に、本発明の単位用量組成物は、血管形成に効果的な量のrFGF−
2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含むのみならず、これはまた、約10〜80U/kg、代表的には約40U/kgのヘパリンを含む。希釈剤の代表的な容量は、約1〜40mlである。より多い容量の希釈剤が使用され得るが、このようなより多い容量は、代表的には、より長い投与時間を生じる。患者の体重kgに依存して、0.2μg/kg〜48μg/kgのrFGF−2、またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含有する単回用量が、患者への投与のために再構成された生成物としてバイアルから引き抜かれる。従って、24μg/kgを服用されている平均70kgの男性は、バイアルから引き抜かれた、(70kg×30μg/kg)2100μg(すなわち、2.1mg)のIC注射を受けるに十分な容量の再構成された生成物を有する。
【0042】
その第2の局面では、本発明は、上記の単位用量組成物を使用する、CADまたはMIについてヒト患者を処置するための方法に関する。特に、1つの実施形態では、本発明は、冠状動脈疾患についてヒト患者を処置するための方法に関し、この方法は、安全かつ治療的に有効な量の組換えFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを、冠状動脈疾患についての処置を必要とするヒト患者の、1以上の(代表的には2の)冠状血管または末梢静脈に投与する工程を包含する。冠状動脈疾患の処置を必要とするヒト患者は、代表的には、任意の医学管理にもかかわらずアンギナの症候のままである冠状動脈疾患を患うヒト患者である。好ましい冠状血管は、冠状動脈であるが、冠状血管形成術(coronary angioplasty)により提供されるように、移植された伏在静脈および移植された内胸動脈もまた、適切である。単位用量組成物を投与するために適切な末梢静脈には、流体および医薬品の投与のために、処置する医師および看護士によって慣用的に使用されるヒト身体の至る所に見出される末梢静脈を含む。このような静脈の例には、頭部、肘正中皮、および腕の尺側皮が挙げられる。
【0043】
冠状内(IC)注入として投与される場合、単位用量のrFGF−2またはその血管形成フラグメントもしくは血管形成活性ムテインは、代表的には、1時間以内、より代表的には約20分の時間にわたって、患者の1以上(代表的には、2)の冠状静脈中に投与される。20分の時間にわたって投与される場合、単位用量組成物は、代表的には、0.5〜2.0ml/分、より代表的には約1ml/分の速度で投与される。冠状静脈は、それらが閉塞されていない限り、ネイティブな血管または移植物であり得る。単位用量のrFGF−2またはその血管形成フラグメントもしくは血管形成活性ムテインの容量は、代表的には10〜40ml;より代表的には20mlである。この単位用量の注入の時間の長さは、重要ではなく、そして注入の速度および容量に依存して短縮または延長され得る。
【0044】
静脈(IV)内注射として投与される場合、単位用量のrFGF−2またはその血管形成フラグメントもしくは血管形成活性ムテインは、代表的には1時間以内、より代表的には20分の時間にわたって、従来のIV設定を使用して末梢静脈中に投与される。20分の時間にわたって投与される場合、単位用量組成物は、代表的には、1ml/分の速度で投与される。
【0045】
CADを処置するための上記の方法の第一相の臨床試験では、単回の単位用量組成物は、任意の医学管理にもかかわらずアンギナの症候のままであるCADを有するヒト患者にICまたはIVで投与された。本発明の方法は、血管形成を誘導するので、本発明の方法は、CADまたはMIにおける根本的な状態の処置を提供し、そして硝酸塩により提供されるような症状からの単なる一過性の解放ではない。代表的には、本発明の方法の安全かつ治療的に有効な量は、0.2μg/kg〜48μg/kgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを薬学的に受容可能なキャリア中に含む。他の実施形態において、この安全かつ治療的に有効な量は、0.2μg/kg〜2μg/kg、2μg/kgより多く〜24μg/kg未満、または24μg/kg〜48μg
/kgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを薬学的に受容可能なキャリア中に含む。絶対的な用語では、この安全かつ治療的に有効な量は、約0.008mg〜約7.2mgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテイン;より代表的には、0.3mg〜3.5mgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインである。適切なrFGF−2は、配列番号2のrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインである。
【0046】
別の局面では、本発明はまた、ヒト患者の心臓における血管形成を誘導するための方法に関する。この方法は、組換えrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインの単回の単位用量組成物を、冠状血管形成を必要とするヒト患者の1以上の冠状血管にまたは末梢静脈に投与する工程であって、上記の単位用量組成物は、約0.008mg〜7.2mgの組換えFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを薬学的に受容可能なキャリア中に含む、工程を包含する。より代表的には、この単位用量組成物は、約0.3〜3.5mgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを、薬学的に受容可能なキャリア中に含む。上記のように、治療的に有効な量のrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む、単回の単位用量組成物は、既に公知でありかつ医薬品(例えば、血栓崩壊剤、ストレプトキナーゼ、または冠状動脈を可視化するために使用される放射性を透過しない(radio−opaque)色素または磁気粒子)の冠状内投与について当該分野において使用される、標準的な心臓カテーテル技術を使用して、血管形成を必要とするヒト患者の少なくとも1つの冠状血管に投与される。例としては、冠状カテーテルは、処置を必要とする患者の動脈(例えば、大腿または鎖骨下)に挿入され、そしてこのカテーテルが、処置される患者の適切な冠状血管中に配置されるまで、見えるように前方に押し出される。明確な線を維持するために標準的な注意を使用して、溶液形態の薬学的組成物は、10〜30分の時間にわたって実質的に連続的に単位用量を注射することによって投与される。本発明の薬学的組成物は、より長い時間にわたって投与され得るが、本出願人らは、有益性も、そのようにすることによる血栓症の潜在的に増大した危険性も全く認知しない。代表的には、単位用量の一部(例えば、半分)は、第1の冠状血管に投与される。次いで、カテーテルは、第2の2次冠状血管に再び配置され、そしてこの単位用量の残留物は、このカテーテルを洗浄しながら投与される。上記の再配置手順を使用して、単位用量の一部は、その単位用量の全体が投与されるまで、複数の冠状血管に投与され得る。投与の後に、このカテーテルは、従来の当該分野で公知のプロトコルを使用して引き抜かれる。本明細書中に記載される第一相の臨床試験において、治療の有益性が、単回の単用量のIC rFGF−2投与に従う2週間程度の早さで患者により報告された。臨床的に有意な改善が、本発明の単回の単位用量のICまたはIV投与の後、30日程度の早さで、客観的な診断基準(ETTおよび/またはSAQ)により実証され、そして服用後の2ヶ月間維持された。進行性CAD疾患を患う特定の患者では、rFGF−2のさらなる単位用量を、最初の単位用量後の2または12ヶ月の間隔で投与し、しばらくの(interim)期間、CADの進行を克服するために必要または適切であり得る。非常に進行性のCADを患う数人の患者では、本発明の単位用量が、4ヶ月の間隔で再投与される。任意の例では、処置する担当医は、必要とされる場合、患者の臨床徴候の慣用的な評価に基づき再投与についての時間を決定し得る。
【0047】
本発明の方法の有益性の1つは、心臓の血管新生である。従って、別の局面において、本発明は、ヒト患者の心臓における血管新生を誘導するための方法に関し、この方法は、血管神聖的に有効な量のrFGF−2またはその血管新生活性フラグメントもしくはそのムテインを薬学的に受容可能なキャリア中に含む、単回単位用量組成物を、冠状血管新生を必要とするヒト患者の1以上の冠状血管(IC)中または末梢静脈(IV)中に投与する工程を包含する。上記の方法において、血管神聖的に有効な量は、約0.2μg/kg
〜約48μg/kg(または絶対的な用語では、約0.008mg〜約7.2mg)の組換えFGF−2またはその血管新生活性フラグメントもしくはそのムテインを含む。さらに代表的には、血管神聖的に有効な量は、約0.3mg〜約3.5mgの組換えFGF−2またはその血管新生に活性なフラグメントもしくはそのムテインを含む。上記で同定された方法における使用に適切なrFGF−2は、配列番号2のrFGF−2またはその血管新生的に活性なフラグメントである。上記の方法の1つの実施形態では、単位用量組成物は、患者の冠状血管にICで、または末梢静脈にIVで投与される。別の実施形態では、この単位用量組成物は、本明細書中に記載されるように、ヘパリンとともに投与される。
【0048】
上記の冠動脈新血管新生を提供する方法はまた、1つ以上の冠動脈において心筋梗塞(MI)を経験したヒト患者において有益である。従って、別の局面において、本発明はまた、MIについてヒト患者を処置するための方法に関し、この方法は、上記ヒト患者の1つ以上の冠動脈血管または末梢静脈に、治療有効量のrFGF−2またはその血管新生活性フラグメントもしくはそのムテインを含む単回単位用量組成物を投与する工程を包含する。上記の方法において、代表的には、単位用量組成物は、薬学的に受容可能なキャリア中に約0.2μg/kg〜約48μg/kg(または絶対的な用語では、約0.008mg〜約7.2mg)の組換えFGF−2またはその血管新生活性フラグメントもしくはそのムテインを含む。上記同定された方法における使用に対して適切なrFGF−2は、配列番号2のrFGF−2またはその血管新生活性フラグメントである。
【0049】
血管形成を必要とする、不安定なアンギナまたは急性心筋梗塞の事象において、本明細書中に開示されている同じ用量のrFGF−2またはその血管新生フラグメントまたはそのムテインは、それらの状態を処置する際の補助治療としても有用である。従って、別の局面において、本発明は、血管形成を必要とする、不安定なアンギナまたは急性心筋梗塞について患者を処置するための改善された方法に関し、この方法は、処置が必要な患者に血管形成を提供することを包含し;この改善は、前記ヒト患者の1つ以上の冠動脈血管または末梢静脈に、治療有効量のrFGF−2またはその血管新生活性フラグメントもしくはそのムテインを含む単回単位用量組成物を投与することを包含する。上記の方法において、単位用量組成物は、薬学的に受容可能なキャリア中に約0.2μg/kg〜約48μg/kg(または絶対的な用語では、約0.008mg〜約7.2mg)の組換えFGF−2またはその血管新生活性フラグメントもしくはそのムテインを含む。上記同定された方法における使用に対する適切なrFGF−2は、配列番号2のrFGF−2またはその血管新生活性フラグメントである。
【0050】
本発明の任意の上記方法において、rFGF−2またはその血管新生活性フラグメントもしくはそのムテインは、一酸化窒素(認知された平滑筋拡張薬)の放出に関連しており、患者に投与すると患者の血圧の急激な低下を引き起こす。従って、本発明の方法において、本発明の単位用量を投与する前に、IV液体を患者に補給をする(hydrate)ことが好ましい。さらに、単位用量の安全性および許容性のために、rFGF−2投与中および投与後の積極的な液体管理もまた好まれる。結局、有効量のグリコサミノグリカン(「プロテオグリカン」または「ムコポリサッカライド」としても公知である)を投与する工程(例えば、本発明の単位用量組成物を投与する前に、ヘパリンを0〜30分投与する工程)を包含することもまた、上記の方法の範囲内である。代表的には、投与されるグリコサミノグリカン(例えば、ヘパリン)の有効量は、約10〜80U/kgであり、より代表的には、約40U/kgである。しかし、一般的には、投薬する直前に任意の一人の患者に投与されるヘパリンの総量は、5,000Uを超えない。
【0051】
EDTAが、通常の心筋収縮および心臓伝導に必要なカルシウムの強力なキレーターであるという理由で、EDTAの濃度を最小化することは、患者の安全に対して重大である
。100μg/ml未満濃度のEDTAが、ヒト患者へのICまたはIV注入によりrFGF−2の投与の安全性を最適化した。
【0052】
rFGF−2の急激な大量瞬時投与は、動物における超低血圧(profound hypotension)と関連するので、注入速度は患者の安全に対して重大である。0.5〜2mL/分での投与(代表的には、1mL/分)が、ヒト患者へのICまたはIV注入によるrFGF−2の投与の安全性を最適化した。
【0053】
本発明の単回単位用量組成物を投与することにより、CADについてヒト患者を処置することに関するフェーズIの臨床試験が実施され、本明細書中の実施例1〜3に記載される。その試験において、CADと診断された66人のヒト患者(本明細書中の実施例2の基準を満たす)が、本発明の方法に従って、単回単位用量のrFGF−2を受けた。具体的には、52人のヒト患者に約20分間にわたって、IC注入により単位用量0.33μg/kg〜48μg/kgのrFGF−2が投与された。14人のヒト患者に、約20分間にわたって、IV注入により単位用量18μg/kgまたは36μg/kgのいずれかのrFGF−2が投与された。次いで、66人の処置された患者は、当該分野で認知された評価基準の3セット:1)患者らの運動許容時間(ETT)の変化;2)シアトルアンギナ質問表(Seattle Angina Questionnaire)(これは、客観的な基準と主観的な基準の混合された組み合わせに基づく評価を提供する):および3)MRIにより評価されるような心臓における物理的変化の測定を使用して、ベースライン(すなわち、単回単位用量での処置の前)と比較して、そして単回単位用量での処置の1ヶ月後、2ヶ月後、そして6ヶ月後に再び評価された。
【0054】
実施例1〜3のフェーズIの臨床試験の66人の患者のETTを、Bruceトレッドミルプロトコールを使用して、ベースライン時、(本発明の単回単位用量組成物の)投与後1ヶ月、2ヶ月、および6ヶ月に測定した。トレッドミルプロトコールがベースライン時に使用されたものと同じでない場合、その被験体はこの分析から除外された。従って、被験体の数は、時間が経つと変化した。さらに、緊急の血管再生を有するいずれの患者も、この分析から除外された。用量は、ベースラインからのETTの平均変化が60秒よりも大きな値で増加した場合、有効であると考えられた。ETT評価の結果は、表1に提供される。
【0055】
【表1】
表1を参照すると、1ヶ月におけるベースラインからの平均変化は、すべての投与群について60秒未満であった。しかし、アンギナによりトレッドミル試験を中止する患者の割合は、すべての群において時間とともに減少した。投与後2ヶ月および6ヶ月におけるベースラインからの平均変化は、用量の多いIC群およびIV群の患者において、用量が少ないかまたは中程度のIC群よりも大きかった。用量の多いIC群(24〜48:μg/kg)およびIV群(18および38:μg/kg)における各々の6ヶ月の増加したETTの持続性(133.1秒および87.5秒)は、予想外であった。ETTの最も大きな平均の増加は、それぞれ2ヶ月および6ヶ月の107.9秒および133.1秒であり、これらは、用量の多い(24〜48μg/kg)IC群において生じた。IV群は、それぞれ2ヶ月および6ヶ月にて93.4秒および87.5秒というETTの有意な平均増加を示し、このことは、本明細書中で使用したラットおよびブタの動物モデルによっては予想されなかった。全体としては、2ヶ月におけるこの効果(ETTの増加)の持続性およびIC群とIV群の両群のその大きさは、全く予想外であった。
【0056】
本明細書中の実施例1〜3に記載されるフェーズIの臨床試験の66人のヒト患者はまた、Seattle Angina Questionnaire(SAQ)を使用して、評価された。SAQは、認可され、疾患特異的な、クオリティーオブライフの手段であり、これは以下の5つのスケールを評価する:1)「労作耐容量(exertional
capacity)」=身体的活動の限界;2)「疾患認知」=MIの懸念;3)「処置の満足感(satisfaction)」;4)「アンギナ頻度(angina frequency)」=エピソード数およびニトログリセリンの舌下使用;および5)「アンギナ安定性」=最も激しい身体的活動でのエピソード数。各々の5つのスケールの得点の可能な範囲は、0〜100であり、より高い得点は、より良いクオリティーオブライフを示す。代表的には、平均ベースライン得点(すなわち処置前)と処置後の得点との間が8ポイント以上の平均変化は、「臨床的に有意」であると認識される。しかし、本分析に
おいて、ベースラインからの得点の平均変化が、14ポイントより大きな値で増加した場合、用量は「有効」と考えられた。14が選択された(8の代わりに)理由は、別の増殖因子(VEGF)の臨床試験の2ヶ月時のプラセボ群において見られた改善を考慮したためであった。
【0057】
SAQ評価を実施する際に、ETTについて評価された同じ投与量の群に従って患者を分類した(すなわち、0.33〜2.0μg/kgIC(低);6.0〜12.0μg/kgIC(中);24〜48μg/kgIC(高);ならびに18および36μg/kgIV)。このアンケート用紙を、ベースライン時(投与前)、ならびに本発明の方法に従ってrFGF−2の単回単位用量組成物を投与された後の2ヶ月および6ヶ月に各投与量群毎に被験体に与えた。
【0058】
第1のSAQスケールは「労作能力(exertional capacity)」である。労作能力に関するデータを、本明細書中の表2に要約する。表2において反映されるように、
【0059】
【表2】
平均得点のベースラインからの変化は、3つのIC投与量群の各々について2ヶ月および6ヶ月に増加し、そして6ヶ月にはすべての投与量群(ICおよびIV)について増加した。すべての投与量レベルにおける全得点は、2ヶ月から6ヶ月の日を追うごとに増加し、投与後6ヶ月においてベースラインと比較して最も良い増加(23.2、24.1、22.9および16.5)が見られた。
【0060】
評価されるべき第2のSAQスケールは、「アンギナ安定性」であった。アンギナ安定性を要約するデータを、本明細書中の表3に示す。
【0061】
【表3】
表3によると、アンギナ安定性についての得点の変化は、各群について2ヶ月および6ヶ月の両方でベースラインと比較して増加した。投与後2ヶ月において見られるアンギナ安定性の改善(46.2、32.1、34.3、および39.6)は、6ヶ月において見られる得点よりも有意に大きかった(21.4、16.7、17.7、および23.2)。しかし、投与後、2ヶ月および6ヶ月の両方で見られる得点は、アンギナ安定性の増加においてすべての投与量が有効(>14)であることが判明したことを示した。さらに、増加の大きさおよび6ヶ月間の持続は、予想外であった。
【0062】
評価されるべき第3のSAQスケールは、「アンギナ頻度」であった。アンギナの頻度を要約するデータを、本明細書中の表4に示す。
【0063】
【表4】
表4によると、アンギナ頻度についての患者の平均得点(27.9、32.9、28.9および20.0)は、2ヶ月で、すべての投与量群について、そしてすべての投与方法(ICまたはIV)について有効量(>14)で増加した(ベースラインと比較して)。患者の平均得点は、中程度の用量(6.0〜12.0μg/kg)群についてのみ6ヶ月で増加し続け、投与後2ヶ月のピーク効果を示唆する。しかし、中程度の用量(6.0〜12.0μg/kg)群および大量の用量(24.0〜48.0μg/kg)群について、2ヶ月および6ヶ月の変化は類似しており、アンギナ頻度の6ヶ月における持続効果を示唆する。
【0064】
評価されるべき第4のSAQスケールは、「処置満足感」であった。処置満足を要約するデータを、本明細書中の表5に示す。
【0065】
【表5】
表5によると、処置の満足についての得点は2ヶ月で、中程度および大量の用量のIC群ならびにIV群について有効量で増加した。投与後2ヶ月において、中程度の用量群ICについての得点だけが14よりも大きな得点を有し、2ヶ月の処置の満足についてのピーク効果を示唆する。
【0066】
評価されるべき第5のSAQスケールは、「疾患認知」であった。疾患認知を要約するデータを、本明細書中の表6に示す。表6によると、疾患認知についての得点は、2ヶ月でベースラインから20.2〜29.2という得点まで増加し、6ヶ月で23.8〜34.0まで増加した。これらの得点は、単回単位用量組成物を本発明の方法にしたがって投与することは、2ヶ月おいてと同じくらい6ヶ月において有効である(またはより有効)と考えられた。これらの得点は、単回単位用量組成物の投与後、6ヶ月以上までの、疾患認知に対する本発明の方法の効果の持続性を示唆する。
【0067】
【表6】
本明細書中の実施例1〜3に記載されるフェーズI臨床試験のヒト患者の60人まではまた、彼らの心臓を安静時(resting)磁気共鳴画像法(MRI)スキャンを使用して評価された。安静時MRIスキャンが、患者に対して、ベースライン時に、ならびに本発明の単回単位用量組成物の投与後1ヶ月、2ヶ月、および6ヶ月に実施された。用量は、統計学的有意性(p<0.05)に基づいて「有効」と考えられた。安静時MRIスキャンにより評価される客観的な基準は以下:(1)駆出率;(2)心筋梗塞の程度(%);(3)通常の壁厚;(4)通常の壁運動(%);(5)標的壁肥厚(%);(6)標的壁の運動(%);(7)標的壁領域側副程度(%);および(8)標的領域の遅着の程度(%)である。
【0068】
安静時MRIに基づくと、「駆出率」の変化は、すべての群について1ヶ月では観察されなかった。1ヶ月におけるすべての群(n=33)についてのベースラインからの平均変化は、2.0%(p=0.042)の増加であった。2ヶ月においては、少用量のIC群(n=13)についてのベースラインからの平均変化は、8.1%(p=0.007)の増加であった;そしてすべての群について(n=54)、ベースラインからの平均変化は、3.8%の増加であった(p=0.001)。6ヶ月において、大用量のIC群(n=19)についてのベースラインからの平均変化は、5.3%(p=0.023)であった;そしてIV群(n=3)について、11.1%(p=0.087)であった;そしてすべての群(n=33)について、5.7%(p=0.001)であった。
【0069】
安静時MRIに基づくと、いずれの群、または投与後の1ヶ月、2ヶ月、6ヶ月での組合せにおけるすべての群について「心筋梗塞の程度」%の統計学的に有意な変化は、存在しなかった。通常の壁運動(%)および通常の壁厚が評価された場合、いづれの一つの群についての1ヶ月、2ヶ月、または6ヶ月でのベースラインからの統計学的に有意な変化は、存在しなかった。しかし、標的壁運動において、1ヶ月(n=60)、2ヶ月(n=54)、または2ヶ月(n=33)でのすべての群について、ベースラインからの統計学的に有意な変化は存在し、これはそれぞれ、2.7%(p=0.015)、4.4%(p=<0.001)および6.4%(p<0.001)のベースラインからの平均増加として反映された。しかし、標的壁厚においてもまた、1ヶ月(n=60)、2ヶ月(n=54)、および2ヶ月(n=33)でのすべての群について、ベースラインからの統計学的に有意な変化が存在し、これはそれぞれ、4.4%(p=0.015)、6.3%(p=
<0.001)および7.7%(p<0.001)のベースラインからの平均増加として反映された。
【0070】
MRIにより評価された次の基準は、「標的領域側副の程度」(%)であった。標的領域側副の程度におけるすべての群についてベースラインからの平均増加は、1ヶ月(n=31)、2ヶ月(n=27)および2ヶ月(n=16)において高度な統計学有意があり、ここでその増加はそれぞれ8.3%(p=<0.001)、10.9%(p=<0.001)および11.2%(p=<0.001)であった。最も大きな側副の程度の増加は、少量および中程度のIC用量に対して観察され、すなわち、1ヶ月で(それぞれ10.4%および18.3%)、2ヶ月で(それぞれ14.7%および18.0%)および2ヶ月で(それぞれ16.0%および中程度の用量に対する値はなし)であり、これは全く予想外であった。投与後1ヶ月、2ヶ月および2ヶ月において、IC大用量群について観察された標的領域側副の程度における対応する割合の増加は、それぞれ6.3%、8.0%および9.0%であった。MRIにより評価された最後の基準は、「標的領域の遅着の程度」(%)であった。標的領域の遅着の程度におけるすべての群についてベースラインからの平均減少は、1ヶ月(n=60)、2ヶ月(n=54)および6ヶ月(n=34)において高度に統計学的有意性であり、ここでその減少は、それぞ−5.8%(p=<0.001)、−8.3%(p=<0.001)および−10.0%(p=<0.001)であった。最も大きな標的領域の遅延程度の減少は、少用量のIC群に対して観察され、これは高度に予想外であった。
【0071】
従って、本発明に従ってCAD患者にrFGF−2の単一ICまたはIV注入を提供することは、その患者に、MRIおよび他の従来の基準により客観的に測定されるような統計学的に有意な身体的改善を提供した。
【0072】
(薬物動態および代謝)
FGF−2の分子構造は、細胞表面および血管の内壁でプロテオグリカン鎖(ヘパリンおよびヘパリン様構造)に結合することが公知である正に荷電したテールを含む。Moscatelliら、「Interaction of Basic Fibroblast Growth Factor with Extracellular Matrix and Receptors」Ann.NY Acad.Sci.638:177〜181(1981)を参照のこと。
【0073】
腎臓および肝臓は、rFGF−2の排泄のための主な器官である。特に、腎臓は、約60kDのタンパク質カットオフを有し、従って血清アルブミン(MW60kD)を保持する。しかし、FGF−2(146残基)は、約16.5kDの分子量を有する。従って、腎排泄が予期される。市販のウシFGF−2(bFGF−2)の放射線標識した生体分布研究において、肝臓および腎臓の両方が、IV注射またはIC注射後1時間で高い計数の放射線標識したbFGF−2を含むことが示された。公表された研究において、bFGF−2の別の組換えヨウ素化形態がラットに与えられる場合、肝臓が排泄の主な器官であると同定された。Whalenら、「The Fate of Intravenously Administered bFGF and the Effect of Heparin」Growth Factors、1:157〜164(1989)。FGF−2が、全身循環においてα2−マクログロブリンに結合すること、そしてこの複合体がクッパー細胞上のレセプターにより内部移行されることもまた公知である。Whalenら(1989)およびLaMarreら「Cytokine Binding and Clearance Properties of Proteinase−Activated Alpha−2−Macroglobulins」Lab.Invest.,65:3〜14(1991)。標識されたFGF−2フラグメントは、血漿中で見出されないが、それらは、尿中で見出され、そして細胞内分解産物に対するサイズに対応してい
た。
【0074】
前臨床試験において、本発明者らは、家畜のヨークシャーブタへの静脈内(IV)投与および冠内(IC)投与後、およびSprague Dawley(「SD」)ラットにおけるIV投与後のrFGF−2(配列番号2)の薬物動態を決定した。このブタモデルは、ICおよびIVの線形の薬物動態を示した(0.65μg/kg〜20μg/kg)。このブタモデルにおけるFGF−2の終末半減期は、3〜4時間であった。ラットモデルは、30〜300μg/kg IVの範囲にわたる線形の薬物動態を示した。ラットモデルにおけるFGF−2の終末半減期は、1時間であった。両方の種が、2コンパートメントモデルを示唆する血漿濃度を示した。
【0075】
同様に、ヒトにおいて、IVおよび/またはIC注入後のFGF−2血漿濃度は、最初の急激な曲線および最初の1時間の数対数スケールにわたるかなりの低下(分布相))を有する二次指数関数的な曲線を伴い、続いて、より穏やかな減少を伴った(排泄相)。図1Aは、血漿濃度対時間の曲線を提供する。これは、以下の8つの用量のそれぞれの関数として、配列番号2のrFGF−2のIC投与後のヒトにおけるこれらの相を示す:除脂肪体重(LBM)の0.33μg/kg、0.65μg/kg、2μg/kg、6μg/kg、12μg/kg、24μg/kg、36μg/kgおよび48μg/kg。図1Aは、20分間にわたるIC注入により投与されるrFGF−2の8つの用量についての血漿用量直線性を示す。図1Aはまた、二相性の血漿レベル低下(すなわち、最初の1時間の速い分布相、その後の排泄相(5〜7時間のT1/2と評価))を示す。配列番号2のFGF−2の血漿濃度を、ヒトFGF−2の分析のために販売された市販のELISA(R&D Systems,Minneapolis MN)により決定した。このELISAアッセイは、配列番号2のrFGF−2と100%の交差反応性を示した。FGFファミリーの他のメンバーおよび多くの他のサイトカインは、このアッセイでは検出されなかった。さらに、ヘパリンはこのアッセイを妨害しない。
【0076】
図1Bは、IC投与した36μg/kgのrFGF−2と比較した、IV投与の18μg/kgおよび36μg/kgのrFGF−2についての時間の関数としての平均FGF−2血漿濃度のプロットである。IV経路およびIC経路による36μg/kg用量について、図1Bにおける血漿濃度対時間のプロフィールは、非常に印象的である。しかし、IC経路で初回通過効果は、排除されない。
【0077】
図2は、図1Aおよび図1Bに対応するpg*分/mlでの平均FGF−2曲線下面積(AUC)のプロットである。図2は、ICまたはIV注入後の全身性rFGF−2曝露(AUC)の用量直線性を示す。特に、図2は、IC経路およびIV経路での投与後のrFGF−2に対する全身性曝露が、実質的に類似であることを示す。
【0078】
図3は、「rFGF−2注入の直前」でのヘパリン投与の時間の関数としての個々のヒト患者血漿クリアランス(CL)値(ml/分/kg)のプロットである。図3は、FGF−2血漿クリアランス(CL)へのヘパリン投与のタイミングの影響を示す。図3は、rFGF−2前100分までのヘパリン投与がFGF−2クリアランスを減少することを示すが、ヘパリン投与のための好ましい時間は、rFGF−2投与前0〜30分である。ここでFGF−2クリアランス減少へのヘパリンの効果は最大である。
【0079】
図4は、「rFGF−2注入前の分単位で」のヘパリン投与の時間の関数としての個々のヒト患者のrFGF−2用量の正規化曲線下面積(AUC)のプロットであり、そしてrFGF−2 AUCへのヘパリン投与のタイミングの影響を示す。図4は、最大のAUC/用量が、有効量のグリコサミノグリカン(例えば、ヘパリン)がIC rFGF−2注入の30分以内に、より好ましくはICまたはIV rFGF−2注入の20分以内に
、前投与された場合に、達成されることを示す。代表的には、有効量のグリコサミノグリカンは、10〜80U/kgのヘパリンである。
【0080】
投与の投与量および様式の関数としてのヒトにおけるrFGF−2についての平均薬物動態パラメーターは、本明細書中の表7に要約される。表7についていえば、ヒトにおけるFGF−2のT1/2は、低用量(0.33〜2.0μg/kg)ICでの2.2±3.7時間から18〜36μg/kg IVの用量での7.0±3.5時間までの範囲に決定される;アッセイの限界を考慮して、終末半減期は、全ての群について5〜7時間と推定される。FGF−2のクリアランスは、70kg男性について13.2〜18.2L/時間にわたる範囲である。結局、定常状態容積(Vss)は、70kgの男性あたり11.3±10.4L〜16.8±10.7Lの範囲と決定された。
【0081】
【表7】
ヘパリン様構造へのFGF−2の結合は強力である(解離定数約2×10−9M)が、特定のチロシンキナーゼレセプターへのFGF−2の結合は、およそ2桁大きい(解離定数約2×10−11M)。Moscatelliら(1991)。従って、どのような理論にも束縛されることなく、グリコサミノグリカン(例えば、ヘパリン)とのrFGF−2の複合体化は、シグナル伝達および有糸分裂誘発を増加し得、そして/または酵素的分解からrFGF−2を防御する。
【0082】
本明細書中に開示されるようなFGF−2の投与についての本発明のさらなる局面としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ETTトレッドミル分析によって測定されるような運動能力の改善;SAQの労作性能力ドメインによって測定されるような運動能力の改善;アンギナの頻度の減少;およびMRIによって測定されるような灌流の増加。特に、運動能力は、鬱血性心不全を有する患者において有意に改善された。
【0083】
以下の実施例は、例示のために提供され、限定のために提供されるのではない。
【実施例】
【0084】
(実施例1)
(第I相臨床試験において使用される単位用量のrFGF−2)
配列番号2のrFGF−2を、単位用量として、かつ薬学的組成物として処方し、そしてラット、ブタおよび最終的には、本明細書に言及される第I相臨床試験でヒトに投与した。種々の処方物を以下に記載する。
【0085】
rFGF−2単位用量を、積層した灰色のブチルゴムの栓および赤色のフリップオフ(flip−off)オーバーシールを備える3ccのI型ガラスバイアル中の液体として
提供した。rFGF−2の単位用量は、10mMのクエン酸ナトリウム、10mMモノチオグリセロール、1mM EDTA二ナトリウム二水和物(分子量372.2)、135mM塩化ナトリウム(pH5.0)中に、1.2mlの0.3mg/mlの配列番号2のrFGF−2を含んでいた。従って、絶対的な用語では、それぞれのバイアル(および単位用量)は、0.36mgのrFGF−2を含んでいた。液体形態で単位用量を含有するバイアルを2℃〜8℃で保存した。
【0086】
rFGF希釈剤を、積層した灰色のブチルゴム栓および赤色のフリップオフオーバーシールを備える5ccI型バイアル中に供給した。rFGF−2希釈剤は、10mMのクエン酸ナトリウム、10mMモノチオグリセロール、135mMの塩化ナトリウム(pH5.0)を含む。各バイアルは、5.2mlのrFGF−2希釈溶液を含み、これを2℃〜8℃で保存した。
【0087】
注入されたrFGF−2薬学的組成物を、注入容量が10〜40mlになるように、rFGF−2単位用量をrFGF希釈剤で希釈することによって調製した。EDTA濃度を100μg/mlのプリセット限界未満に維持するために、この全注入容量を、より高い体重を有する患者に対して、比例的より高い絶対量のFGF−2が投与される場合には、最大40mlに増加させた。
【0088】
(実施例2)
(rFGF−2での処置についての、冠状動脈疾患を有する患者についての選択基準)
以下の選択基準を、冠状動脈疾患を有する第I相患者へ適用した。これらの患者の活動は、最適な医学的管理にもかかわらず冠状虚血によって制限され、そしてこれらの患者は、承認された脈管再生治療についての候補でなかった。
【0089】
(包含基準:)被験体は、以下である場合に適格である:
・18歳以上の男性または女性
・冠状動脈疾患(CAD)の診断
・承認された脈管再生治療手順(例えば、血管形成術、ステント、冠状動脈バイパス移植(CABG))についての準最適な候補(またはこれらの介入を拒否する)
・改変されたBruceプロトコルを使用して少なくとも3分間運動することが可能であり、そして冠状虚血によって制限される
・薬理学的に圧迫されたタリウムセスタミビ(sestamibi)スキャンに対する、少なくとも20%の心筋の誘導性かつ可逆性の欠陥
・必要な心臓カテーテル法について臨床的に受容可能である範囲内のCBC、血小板、血清化学
・正常INR、またはCoumadinで抗凝固である場合、INR<2.0
・全ての必要な研究手順および追跡訪問を含むこの研究に参加するための、意志および書面でのインフォームドコンセントを提供し得る。
【0090】
(除外基準:)被験体は、以下である場合に適格でない:
・悪性腫瘍:治癒的に処置された基底細胞癌を除く過去十年内の悪性腫瘍の何らかの病歴、
・眼の状態:増殖性網膜症、重篤な非増殖性網膜症、網膜静脈閉塞、イールズ病、または斑状浮腫、あるいは眼科医による検眼鏡検査法:2ヶ月以内の眼内手術の病歴
・腎臓機能:年齢について調整される正常範囲未満のクレアチニンクリアランス;タンパク質>250mgまたはミクロアルブミン>30mg/24時間 尿
・IVクラス心不全(New York Heart Association)
・心エコー図、タリウムスキャン、MRIまたはゲートされプールされた血液スキャン(gated pooled blood scan)(MUGA)により駆出率<20
%
・血流力学的関連不整脈(例えば、心室細動、持続性心室性頻脈)
・重篤な弁狭窄(大動脈領域<1.0cm2、僧帽弁領域<1.2cm2)、または重篤な弁不全
・3週間以内のアンギナまたは不安定アンギナの顕著な増加
・3ヶ月以内の心筋梗塞(MI)の病歴
・2ヶ月以内の一過性虚血発作(TIA)または発作(stroke)の病歴
・2ヶ月以内のCABG、血管形成術またはステントの病歴
・2ヶ月以内の経心筋レーザー脈管再生、rFGF−2、または血管内皮増殖因子(VEGF)での処置の病歴
・妊娠の可能性または保育中の母の女性
・任意の病理学的線維症、例えば、肺の線維症、強皮症
・既知の脈管奇形、例えば、AV奇形、血管腫
・CADの症状の評価を干渉し得る任意の疾患、例えば、心膜炎、肋軟骨炎、食道炎、全身性脈管炎、鎌状赤血球症の同時存在
・改変Bruceプロトコル運動ストレス試験の実行を制限する任意の疾患、例えば、下肢の麻痺または切断、下肢の重篤な関節炎、重篤な慢性閉塞性肺性疾患(COPD)の同時存在
・30日以内(または、研究薬物の60日以内に計画される)の、調査薬剤、デバイスまたは手順の臨床試験への参加
・rFGF−2または関連化合物に対する既知の過敏症
・調査員の意見において、本研究における参加について不適切な被験体を生じる任意の条件、例えば、精神病、重篤な精神遅滞、研究員とコミュニケーションが取れないこと、薬物またはアルコール乱用。
【0091】
(実施例3)
(ヒトへ投与される組換えFGF−2(配列番号2)についての第I相臨床試験)
本実施例の第I相CAD試験は、安全性、耐容性および薬物動態についての、組換え線維芽細胞増殖因子−2(FGF−2)の、オープンラベル(open label)の段階的用量研究である。この研究を以下の2つの場所で実施した:Boston、MAのBeth Israel Deaconess Hospital(Harvard)およびAtlanta、GAのEmory University Hospital。記録は完全である。被験体を、1日目にrFGF−2の単回注入で処置し、360日間続けた;追跡は、幾人かの被験体においてはなお不完全である。
【0092】
被験体集団は、冠状動脈虚血によって運動制限され、そして確立された血管再生手順(例えば、CABG、血管形成術(ステントを用いるかまたは用いない))の1つについての準最適候補とみなされた(またはこの手順を受けたがらない)、進行したCADを有する患者からなる。主な除外基準は、悪性腫瘍、非代償性心不全もしくは20%未満の左心室駆出率、腎不全もしくは蛋白尿、および種々の眼の状態(例えば、増殖性糖尿病性網膜症、重篤な非増殖性網膜症)の病歴または疑いであった。
【0093】
66人の被験体に、この試験において配列番号2のrFGF−2を受けさせた:52人にrFGF−2をIC注入として受けさせ、そして14人にrFGF−2をIV注入として受けさせた。各被験体を、病院内で少なくとも24時間観察し、次いで、追跡訪問で360日の間(15、29、57、180および360日)、外来患者として追跡した。少なくとも4人の被験体を各用量で研究した;被験体が2日以内にプロトコールにより規定されたような用量制限毒性を経験しなかった場合、用量を増大した。薬物を、冠状動脈血液供給(IC)の2つの主要な供給源間に分割された単回の20分間の注入として、(血管形成術で既に使用されているような)患者の冠状動脈中、または末梢静脈(IV)内に
カテーテルを配置するための標準的な技法を用いて投与した。IC投与したrFGF−2の用量(μg/kg)(および患者の数)は、配列番号2のrFGF−2の0.33(n=4)、0.65(n=4),2.0(n=8)、6.0(n=4)、12.0(n=4)、24(n=8)、36(n=10)および48(n=10)であった。IV投与したrFGF−2の用量(μg/kg)(および患者の数)は、配列番号2のrFGF−2の18.0(n=4)および36.0(n=10)であった。
【0094】
アンギナ頻度および生活の質は、ベースライン(rFGF−2投与前)、ならびにrFGF−2投与の2ヶ月後および6ヶ月後にSeattle Angina Questionnaire(SAQ)により評価した。運動許容時間(ETT)は、1ヶ月目、2ヶ月目、および6ヶ月目にトレッドミル試験により評価した。休止/運動核灌流およびゲート化セスタミビ−決定安静(gated sestamibi−determined rest)駆出率(EF)、ならびに休止磁気共鳴造影(MRI)を、ベースライン、ならびにrFGF−2投与の1ヶ月後、2ヶ月後および6ヶ月後に評価した。心臓機能および灌流における変化を%で客観的に測定すると考えられたMRI測定は;(1)駆出率;(2)心筋梗塞程度(%);(3)正常壁肥厚;(4)正常運動(%);(5)標的壁肥厚(%);(6)標的壁運動(%);(7)標的壁領域側副程度(%);および(8)標的領域遅延到達程度(%)を含めた。
【0095】
4人の被験体のうち1人が、(プロトコールにより規定されるような)用量制限毒性を経験した場合、その用量で4人のさらなる被験体を調査し;誰もが毒性を経験しなかった場合、用量を増大させ、そして別の群を研究した。最大許容用量(MTD)は、9/10の被験体が許容したIC用量、すなわち36μg/kg ICとして規定した。
【0096】
注入前の注意深い流体管理を、Swan−Ganzカテーテルを用いて処方し、そして生命徴候を、投薬の間に頻繁にモニタリングした。ヘパリンを、すべての群においてrFGF−2の注入の前にIV投与した。EDTA濃度は、単位用量組成物中で100μg/mlより少なかった。投与した研究薬物の容量は、用量および被験体の体重で変化し、そして低用量で10mlから高用量で40mlの範囲であった。
【0097】
(予備的結果)
本明細書に提示した結果は未検査であり、そして66人の被験体(すべての群(1〜10)について2ヶ月の追跡を伴う)についての第3回目の中間分析、およびChiron
Drug Safetyからの1999年7月29日の重症の有害事象(SAE)レポートに基づく。最後の来院(360日目)のデータ収集および最終解析は進行中である。
【0098】
0.33μg/kg ICの開始用量を、8つの系列の群にわたって48μg/kg ICまで増大させ、この用量で、10人の被験体のうち2人が、プロトコールにより規定されたような用量制限毒性(低血圧症)を経験した。低血圧症は、すべての被験体において流体単独で管理可能であった(昇圧剤も補助デバイスもなし)。36μg/kg ICで、10人の被験体のうち1人のみが、用量制限毒性を有し、このことは、この用量を最大許容用量(MTD)として規定した。2つのさらなる群をIV注入により試験した;4人の被験体はMTDの半分(18μg/kg)、そして10人の被験体はMTD(36μg/kg)。
【0099】
低血圧症は、Yorkshireブタにおける動物モデルにより予想されたように、ヒトにおける用量制限であった。しかし、36.0μg/kg rFGF−2 ICはヒトでは耐性であった;その一方ブタでは20.0μg/kg rFGF−2 ICは2匹の動物のうち1匹で意味深い低血圧症を引き起こした。ヒトにおけるより良好な耐容性は、積極的な流体管理および全身麻酔の不在に起因した。
【0100】
1999年7月29日付けで、33の重篤な有害事象(SAE)が24/66の被験体で生じたが、用量関連ではなかった。15のSAEは、少なくとも潜在的にはrFGF−2に関連したと考えられた;調査者および医療管理者により指定された関連性の間に差異が存在したときは、より保守的な関係が指定された。SAEは5人の被験体で複数であった:01103(0.33μg/kg IC)、01106(0.65μg/kg IC)、01113(2.0μg/kg IC)、01137(36.0μg/kg IV)、02101(0.65μg/kg IC)。
【0101】
1日目の最も頻繁な処置緊急有害事象(AE)は、一時的な収縮期低血圧症および一時的な徐脈であった。低血圧症は、用量依存性であり、そして24μg/kg IC以上の用量でより頻繁に生じた;徐脈は用量依存性ではなかった。少なくとも関連する可能性があると思われ、そして用量に関連したようであった他の有害事象(AE)は、注入後最初の数日または1週間以内に生じ、そして胸の痛み、息切れ、不眠、不安、および悪心を含んだ。これらの事象は重篤度において軽度〜中程度であり、そしてほとんどは特定の介入を必要としなかった。
【0102】
IC投与されたとき、この薬物を、カテーテルを患者の冠状動脈中に配置するための(血管形成術ですでに使用されているような)標準的な技法を用い、冠状血液供給(IC)の2つの主要な供給源間に分割した単回注入として、約20分間にわたって投与した。IV投与されるとき、この薬物は、末梢静脈中に20分間にわたる注入として投与された。
【0103】
予備的な安全性結果は、重篤な事象は用量に関連しなかったことを示す。これまで、8つのIC投薬群のうち低投薬群で3人が死亡し(すなわち、0.65μg/kg(23日)、2.0μg/kg(57日)および6.0μg/kg(63日))、そして最も高い用量群で1人が死亡(すなわち、48.0μg/kg(投薬後約4ヶ月))した。死亡のうち3人は心臓;1人の死亡は、群4(6.0μg/kg)の患者で投薬の3週間後に診断された大B細胞リンパ腫に起因し、この患者は投薬の2ヶ月後に死亡した。
【0104】
急性心筋梗塞(MI)が4人の患者で生じた。すなわち、群1(0.33μg/kg)、群3(2.0μg/kg)、群4(6.0μg/kg)および群7(36.0μg/kg)の各々からの1人の患者である。複数のMIが2人の患者で生じた。すなわち、群1(0.33μg/kg)から1人および群3(2.0μg/kg)から1人である。緊急血管再形成手順(ステントを用いるかまたは用いないCABGまたは血管形成術)を、4人の患者で追跡の間に実施した:群1(0.33μg/kg)、群3(2.0μg/kg)、群4(6.0μg/kg)および群7(36.0μg/kg)の各々から1人である。
【0105】
注入の間または直後により高い用量で観察された急性低血圧症は、昇圧剤の必要なしに流体のIV投与により管理された。ヒトにおける最大許容用量(MTD)を、36μg/kg ICと規定した(対照的に、ブタでは、このMTDは6.5μg/kg ICであった)。48μg/kg ICまでのrFGF−2の用量を、積極的な流体管理でヒト患者に投与したが、10人の患者のうち2人の急性低血圧症および/または起立性低血圧症に起因して、プロトコールにより「許容されない」と規定した。注入したrFGF−2の終末半減期は5〜7時間と推定された。
【0106】
本研究における配列番号2のrFGF−2の単回IC注入または単回IV注入で処置されたヒト患者は、ETTにおいて1.5〜2分の平均増加を示した。表1を参照のこと。これは特に顕著である。なぜなら、ETTにおける30秒より大きい増加は有意であり、そして血管形成術のような代替治療を評価するための基準と考えられているからである。
SAQにより測定されるような、アンギナ頻度および生活の質は、試験した66人の患者(n=66)に対する5つのサブスケールの全部において2ヶ月で有意な改善を示した。表2〜6を参照のこと。表2〜6中、14より高い平均変化は、「臨床的に有意」と考えられた。33人のヒトCAD患者を、ベースライン、ならびに本発明の単回単位用量組成物をICまたはIV経路により受けた1ヶ月後、2ヶ月後、および6ヶ月後、静止心臓磁気共鳴画像法(MRI)により評価したとき、統計的に高度に有意な増加が、標的壁肥厚、標的壁運動および標的領域側副程度において観察され;統計的に高度に有意な減少が標的領域遅延到達程度において観察され;そして正常壁運動、正常壁肥厚または心筋梗塞程度において統計的に有意な変化は観察されなかった。
【0107】
上記の規準(すなわち、ETT SAQ、MRI)に加えて、血管形成効果が少なくとも2ヶ月継続する場合に、処置を、非常に成功したとみなす。現在の第I相研究では、予期せぬ優れた血管形成効果が、すべての投薬群において幾人かの患者で6ヶ月まで継続することが観察された。既に得られた結果に基づいて、この血管形成効果は、患者において、12ヶ月以上続き得るが、少なくとも2ヶ月は続くことが予測され、必要であれば、その時点でこの手順が繰り返され得る。
【0108】
(実施例4)
(第II相ヒト臨床試験についてのrFGF−2の単位用量および薬学的組成物)
配列番号2のrFGF−2を、本明細書で参照される第II相臨床試験においてヒトへの投与のための単位用量の薬学的組成物として処方した。種々の処方物を以下に記載する。
【0109】
rFGF−2単位用量を、積層された灰色のブチルゴム栓および赤色のフリップオフオーバーシールを備えた5ccのI型ガラスバイアル中の液体として調製した。このrFGF−2処方物は、10mMクエン酸ナトリウム、10mMモノチオグリセロール、0.3mM EDTA二ナトリウム二水和物(分子量372.2)、135mM塩化ナトリウム、pH5.0中に配列番号2のrFGF−2の0.3mg/mlを含む。各バイアルは、3.7mlのrFGF−2薬物産物溶液を含んだ(バイアルあたり1.11mgのrFGF−2)。液体形態中の得られる単位用量を−60℃未満で貯蔵する。上記に記載した単位用量を、「rFGF−2 プラセボ(placebo)」で希釈する。患者のサイズに依存して、いくつかのバイアルの内容物を組み合わせて、第II相研究のための36μg/kgの単位用量を生成し得る。
【0110】
rFGF−2プラセボを、積層された灰色のブチルゴム栓および赤色のフリップオフオーバーシールを備えた5ccのI型ガラスバイアル中の透明無色の液体として供給する。このrFGF−2プラセボは、薬物製品と外見上識別不能であり、そして以下の処方を有する:10mMクエン酸ナトリウム、10mMモノチオグリセロール、0.3mM EDTA二ナトリウム二水和物(分子量372.2)、135mM塩化ナトリウム、pH5.0。各バイアルは、5.2mlのrFGF−2プラセボ溶液を含む。単位用量とは異なり、このrFGF−2プラセボを、2℃〜8℃で貯蔵する。
【0111】
注入されるrFGF−2薬学的組成物を、rFGF−2単位用量を、rFGF希釈剤で、注入容量が第II相用に20mlであるように希釈することにより調製する。
【0112】
(実施例5)
(冠状動脈疾患を処置するためにヒトに投与されるrFGF−2(配列番号2)に対する第II相臨床試験)
冠状動脈疾患についてヒト患者を処置するためのrFGF−2の第II相臨床試験を、4つのアーム:プラセボ、0.3μg/kg、3.0μg/kg、および30.0μg/
kgの1回IC投与、を用いる二重盲式/プラセボコントロール研究として実施した。
【0113】
(第一の目的)
ベースライン(スクリーニング期間の間)から90日までの運動許容試験(ETT)時間における変化によって測定されるような、運動能力に対するrFGF−2 対 プラセボの単回IC注入の効果を比較すること。
【0114】
(第二の目的)
・AEおよび実験室パラメータにおける変化によって測定されるような、rFGF−2の安全性を評価すること。
【0115】
・第I相研究から、rFGF−2の薬物動態(PK)を確認すること。
【0116】
・以下に対するrFGF−2の効果を評価すること:
ベースラインから180日までのETT時間の変化、
生活の質(QoL)におけるベースラインからの変化:Seattle Angina Questionnaire(SAQ)によって測定されるような認知されたアンギナ、ならびに90日目および180日目でのShort−Form−36(SF−36)によって測定されるような、全身的な健康、
静止時でのベースラインからの、90日目および180日目でのタリウム/sestamibi走査によるジピリダモールを用いた薬理学的ストレス時での虚血領域サイズにおける変化。
【0117】
・被験体のサブセットにおいて、EF、標的壁運動および壁厚、ならびに再灌流に対するrFGF−2の影響を、磁気共鳴画像化(MRI)走査によって評価すること。
【0118】
(調査計画)
(全体的な研究設計および計画)
この臨床試験を、CADを有する300人の被験体における、rFGF−2の2相、多施設、二重盲式、プラセボコントロール試験として設計した。全ての適格基準を満たした被験体を、プラセボを受ける群と、rFGF−2の3つの用量のうち1つを受ける群とにランダムに割り当てた(1アーム当たり約75人の被験体)。用量は、実際の体重に基づいて、0μg/kg(プラセボ)、0.3μg/kg、3.0μg/kgおよび30.0μg/kgであった。研究薬物は、心臓カテーテル法の間の、20分間にわたる単回IC注入として投与された。被験体を、その場所での投与後、少なくとも6時間病院内でモニタリングし、次いで180日間にわたる特定の間隔で追跡した。長期の安全性を、さらなる6ヶ月間の電話による連絡およびアンケートを使用する、別個の延長プロトコールで評価した。
【0119】
(包含基準)
試験への参加のためには以下の包含基準を必要とした:
・18歳以上の男性または女性。
・冠動脈造影による主冠状動脈の60%を超える狭窄によって規定した場合の、CADの診断。
・受け入れられている画像化技術(心室造影図(ventriculogram)、MRI、シングルフォトンエミッションCT[SPECT])スキャンでの最初の通過、心エコー図[ECHO]またはマルチゲート[MUGA]核評価(multigated[MUGA]nuclear assessment))による、30%以上の駆出率。
・アンギナまたはアンギナ等価物の症状。
・医師の管理の下で、CADに関する非侵襲性治療へと移すこと。
・医師が評価した場合に、標準的な手術による血管再生手順またはカテーテルベースの血管再生手順の候補でないこと
・12ヶ月以内に乳房撮影による悪性疾患の証拠がないこと(女性)。
・全ての女性に関して、スクリーニングの1年以内の子宮頸部スミアを用いた骨盤検査。・50歳以上の全ての被験体に関して、5年以内のS状結腸鏡検査。
・40歳以上の被験体に関して、糞便グアヤクを用いた毎年の直腸検査。
・ベースライントレッドミル運動試験で少なくとも3分間にわたって運動できるが、改変Bruceプロトコルを用いて13分間より長く運動できない、そして虚血の徴候または症状によって制限される。被験体は、ある程度のアンギナもしくはアンギナ同等物の病訴を有したかまたはETTの経過の間に1mm以上のSTセグメント低下を有する。二重のベースライン試験を、少なくとも24時間の間隔を置いて、しかし2週間を超える間隔を置かずに行い、そして2つの試験の間の相違は、2つの試験の平均の20%以下であるべきである。
・ランダム化前30日以内に、安静時/負荷時のタリウム/セスタミビ(sestamibi)スキャンでの、1つの主要心筋領域(前壁、下壁、側壁または中隔)の少なくとも半分の面積を含む、中程度以上のサイズの誘導性かつ可逆性の虚血性欠損、または複数の領域における複数の誘導性かつ可逆性の虚血性欠損(この合計は、安静時/負荷時のタリウム/セスタミビスキャンでの、1つの主要領域の少なくとも半分の面積の等価物を含む)。
・ランダム化前30日以内に、心臓カテーテル法に関して臨床的に受容可能な範囲内の、全血球算定(CBC)、血小板、血清化学、プロトロンビン時間および尿検査。
・ランダム化前30日以内に、尿サンプルについてタンパク質が陰性または微量。
・ランダム化前30日以内に、血清クレアチニンが2.0mg/dL以下。
・この全ての必要な研究手順および追跡訪問を含め、試験における参加への書面によるインフォームドコンセントに同意し、そしてこれを与え得る。
・ランダム化前30日以内に、以下の年齢特異的範囲に適合する、前立腺特異抗原(PSA)(男性):
【0120】
【表8】
・ランダム化前30日以内に、胸部X線で悪性疾患の証拠がないこと。
・完全な病歴および身体検査(American Cancer Societyのガイドラインに従って行われる)によって評価した場合、ランダム化の30日以内に、悪性疾患の証拠も疑いもないこと。
・調査責任者または現場の別の調査医師の意見による、被験体の心臓血管の解剖学的構造が、侵襲性手順を用いた処置に適切でないとのことの、心臓カテーテル法による、研究1日目での確認。
【0121】
(除外基準)
・悪性疾患:過去10年以内の悪性疾患の病歴または疑い(治癒的に処置された、基底細胞癌、太陽に露出した領域の皮膚の扁平上皮癌、または頸部癌を除く)。
・腎臓の状態:
−2.0mg/dLより高い血清クレアチニンによって規定した場合の、腎臓機能不全。
−ディップスティックで1+以上のタンパク質によって規定した場合の、蛋白尿。
・眼の状態:
−増殖性網膜症、中程度または重篤な非増殖性網膜症。
−網膜の静脈の閉塞。
−脈絡膜の新生血管形成を伴う、加齢性黄斑障害。
−眼科医による検眼鏡検査での黄斑水腫。
−4ヶ月以内の眼内手術。
・心臓血管状態:
−重篤な大動脈狭窄、すなわち、1.0cm2より小さい面積。
−3週間以内の不安定アンギナ(Braunwald,1984)。
−CABG、血管形成術、一過性虚血性発作または4ヶ月以内の発作。
−3ヶ月以内の心筋梗塞。
−スクリーニングの1年以内の経心筋レーザー血管再生を用いた処置。
−外部カウンターパルセイションを用いた現行の処置。
−その被験体が明らかにプラセボを受けたことを実証し得ない限り、何らかの調査薬剤を用いた何らかの治療的血管新生試験における過去の関与。
−原発性肺高血圧または拘束型もしくは閉塞型心筋症の診断。
・一般的医療状態:
−妊娠または授乳中の母親。
−任意の病理的線維症(例えば、肺線維症、強皮症)。
−既知の血管奇形(例えば、動静脈奇形、3mmを超える血管腫)。
−追跡訪問が完了していない他の調査薬剤、ICデバイスまたは手順の臨床試験における関与。
−臓器移植歴。
−被験体を、調査者の意見において、この研究における関与に関して不適切にする、任意の組合せ状態(例えば、平均余命を12ヶ月未満に制限する、同時の医療的疾病、精神病、重度の精神遅延、検査官とコミュニケーションできないこと、薬物濫用またはアルコール濫用)。
【0122】
(治療または評価からの被験体の除外)
被験体は、権利を害することなくいつでも、研究に参加する同意を取り下げ得る。さらに、調査者は、臨床判断に従うと、取り下げることが被験体の最良の目的である場合、または被験体がプロトコルに従えない場合、被験体を取り下げ得る。
【0123】
全ての包含必要条件および除外必要条件を満たし、そして1日目に試験薬物を受けた被験体が、その後研究から取り下げられた場合、180日間の終了訪問に関して列挙された試験および評価を、可能な限りいつでも実行した。
【0124】
被験体が、研究薬物投与を中止するに充分重篤であると調査者が考えるAEを10分間を超えて発症した場合、投薬を中断し、そしてこの被験体にはさらなる研究薬物処置を受けさせなかった。この被験体は、調査者によって決定された医療処置を受け、AEが消散するかまたは安定するまで観察されたままであり、そして180日目を越えるまで追跡された。
【0125】
(施された処置)
被験体を、プラセボまたは0.3、3.0もしくは30.0μg/kg rFGF−2を受けるようにランダムに割り当てた。研究薬物を、検定された精密注入ポンプを用いて、2本の開存性冠状血管または移植片の間で分割された、20分間にわたる20mLの注入として投与した。
【0126】
(調査製品の正体)
この研究において用いたrFGF−2は、遺伝子操作された酵母において発現された、146アミノ酸の非グリコシル化モノマーの、16.5kDaタンパク質であった。rFGF−2薬物製品は、灰色の積層ブチルストッパおよび赤色のフリップオフオーバーシールを伴った5mLのI型ガラスバイアル中の透明な無色の液体として供給された。rFGF−2処方物は、10mMクエン酸ナトリウム、10mMモノチオグリセロール、0.3mM EDTA 2ナトリウム二水和物(分子量372.2)、135mM塩化ナトリウム(pH5.0)中に0.3mg/mL rFGF−2を含んでいた。各バイアルは、3.7mLのrFGF−2薬物製品溶液を含んでいた(1バイアルあたり1.11mg rFGF−2)。rFGF−2薬物製品バイアルを、−60℃以下で保存した。rFGF−2を、被験体の実際の体重に従ってプラセボで希釈した。
【0127】
プラセボは、灰色の積層ブチルストッパおよび赤色のフリップオフオーバーシールを伴った5mLのI型ガラスバイアル中に透明な無色の液体として供給された。プラセボは、外観からは薬物製品と区別できなかった;プラセボは、10mMクエン酸ナトリウム、10mMモノチオグリセロール、0.3mM EDTA 2ナトリウム二水和物(分子量372.2)、135mM塩化ナトリウム(pH 5.0)を含んでいた。各バイアルは、5.2mLのプラセボ溶液を含んでいた。このプラセボバイアルを、2℃〜8℃で保存した。
【0128】
(研究における用量の選択)
選択した用量は、前臨床データおよび早期臨床データによって、最良の効力の可能性が示唆された範囲の用量を一括した用量であった。最大用量(30.0μg/kg)の安全性は、実施例3において報告された第一相試験の結果によって支持された。
【0129】
被験体は代表的に、カテーテルが適所にある持続時間に関連する血栓症の危険性を最小にするために試験薬物の注入の前に、10分間と20分間との間のヘパリンの1回のIVボーラスを受けた。
【0130】
(効力および安全性の変数)
(評価した効力および安全性の測定値、ならびにフローチャート)
効力の一次変数は、90日目にETT時間によって測定した場合の運動能力の変化であった。効力の二次変数は、以下を含んでいた:被験体のサブセットにおける、180日目でのETT時間の変化;90日目および180日目の、SAQのアンギナ頻度スコア(AFS)、処置満足スコア(TSS)、労作能力スコア(ECS)および疾患認知スコア(DPS)、ならびにSF−36の身体的要素および精神的構成要素によって測定した場合のQoLの変化;90日目および180日目でのタリウム/セスタミビスキャンによる安静時および薬理学的負荷時の虚血面積の変化;90日目および180日目でのMRIによる、EF、標的とされた壁の厚みおよび運動、ならびに灌流の変化。
【0131】
統計分析計画を実行した時点で追加した他の分析変数は、以下を含んでいた:アンギナの発症までの時間、1mmのSTセグメント低下の発症までの時間、ならびに90日目および180日目での、アンギナの発症時の速度−圧力の積、ピーク運動時の速度−圧力の積、および1mm STセグメントの低下時の速度−圧力の積におけるベースラインからの変化。New York Heart Association(NYHA)の分類およびCanadian Cardiovascular Class(CCC)における変化を分析した。ETT時間における60秒間以上の増加を伴う被験体(「応答者」)およびETT時間における60秒間未満の増加を伴う被験体(「非応答者」)の百分率を各群について分析した。
【0132】
カナダ人の心臓血管クラス(Canadian Cardiovascular Classification)は、クラス0〜クラスIVの範囲にわたる分類スキームに基づく。以下に分類される:クラス0、患者は、アンギナもアンギナに等価な症状も経験していない;クラスI、仕事時またはレクリエーション時に激しいか、迅速であるかまたは長期の労作に伴ってのみ生じる、通常の身体活動症状を伴う;クラスII、患者は、アンギナに起因して、通常活動の軽い制限を経験する;クラスIII、患者は、アンギナに起因して、著しい活動の制限を経験する;およびクラスIV、患者は、安静時または任意の身体活動時にアンギナを発症する。
【0133】
SAQは、5つのスケールを有する、承認された、疾患特異的自己管理式質問表である:アンギナ安定性スケール(ASS)、アンギナ頻度スケール(AFS)、運動能力スケール(ECS)、処置満足スケール(TSS)、および疾患認知スケール(DPS)(Spertus JAら)。ASSは、評価期間に該当しない4週間の間隔を言及しているので、ASSはこの試験の分析には含まれなかった。各要素は、1〜100のスケールを含む;より低いスコアは、より悪い症状に関連する;8点以上の変化は、臨床的に適切であるとみなされる。SF−36は、10のスケールを有し、そして2つのまとめの成分スケール(肉体的構成要素のまとめのスケール(PCSS)および精神的構成要素のまとめのスケール(MCSS))を有する、承認された、一般的生活の質(QoL)器具である。
【0134】
核画像化の結果を、承認された半定量的グレード付けシステムを用いて、20セグメント左心室モデル(Berman DSら)において分析した。各セグメントの灌流を、5点のスケールでグレード付けした:0=正常、1=わずかに減少、2=中程度に減少、3=大幅に減少、および4=存在しない。負荷時の、割り当てられた異常領域のグレードが、安静時画像で減少または正常化した場合(可逆性スコア:負荷時スコア−安静時スコア>1)、セグメントを、可逆的欠損を有すると決定し、そして負荷時の、割り当てられた局所グレードが異常であり、そして安静時画像化で同じままである場合、固定された欠損を有すると決定した。固定された欠損を、グレード付けされたスコアの重篤度に基づいてサブグループに分けた(すなわち、軽度から中程度(1、2および3のスコア)ならびに重篤(4のスコア))。灌流の異常性および虚血の全般的程度を、20セグメントからの個々のスコアを合計することによって評価し、そしてそれぞれ、平均負荷および平均可逆性として表現した。
【0135】
安全性を、AE、実験室データおよび身体検査の結果を評価することによってモニタリングした。データおよび安全性モニタリングボード(Data and Safety Monitoring Board:DSMB)によって、ほぼ6週間毎にSAEおよび実験室試験の結果を検討した。急性心臓事象は、Clinical Events Committee(CEC)によって判断された。中心の研究室は、血管造影図、ECG、眼科評価および核スキャンの結果を検討した。
【0136】
(人口統計学的および他の被験体特性)
表8は、この試験に参加した被験体の人口統計学的特徴をまとめる。これらの特徴は、4つの処置群の間で類似していた(表8)。
【0137】
【表9】
(分析)
(運動耐容性試験)
図9は、90日目のベースラインでのETT時間、および効力の一次変数である、ベースラインから90日目までのETT時間における変化を示す。この効力の変数および全ての効力の変数の作表において、血管再生を経験してきた被験体および評価のない被験体を、他に特定しない限り、分析から除外した。運動時間の平均増加は、プラセボ群に関して44.1秒間であり、低用量群において48.5秒間であり、中用量群において65.0秒間であり、そして高用量群において49.1秒間であった。
【0138】
図9はまた、180日目でのETT時間およびベースラインから180日目までの、ETT時間における変化を示す。運動時間における平均増加は、プラセボ群において54.8秒間であり、低用量群において75.3秒間であり、中用量群において76.3秒間であり、そして高用量群において51.3秒間であった。ETTにおける改善傾向は、3または4のベースラインCCSおよび/または40以下のSAQアンギナ頻度を有する被験体において180日目に観察された。
【0139】
(シアトルアンギナ質問表)
図10は、SAQの分析を示す。8点以上の変化は、臨床的に有意とみなされ、そしてより高いSAQスコアは、より良好な臨床状態と関連する。90日目でのAFS変化スコアに関して、P値は試験全体に基づいて0.035であり、そして全てのFGFに対するプラセボの試験に基づいて0.007であった。ベースラインからの平均変化は、プラセボ群について8.1であり、低用量群について16.0であり、中用量群について20.8であり、そして高用量群について16.7である(一対(pairwise)P値=それぞれ、0.080、0.004、0.054)。180日目でのAFS変化スコアに関して、平均変化は、プラセボ群について15.3であり、低用量群について18.7であり、中用量群について22.6であり、そして高用量群について20.2であった(一対P値=それぞれ、0.44、0.089、0.25)。残りのSAQスケール、労作耐容性、処置満足感および疾患認知を、図11においてFGF処置群について示す。
【0140】
(簡易型36)
図12は、SF−36肉体構成要素要約スケール(Physical Component Summary Scale)(PCSS)および精神的構成要素要約スケール(Mental Component Summary Scale)(MCSS)についての分析を示す。90日目でのPCSSに関して、全てのFGFに対するプラセボの試験に基づくP値は、0.033であった。ベースラインからの平均変化は、プラセボ群において3.4であり、低用量群において6.0であり、中用量群において5.9であり、そして高用量群において5.9であった(一対P値=それぞれ、0.072、0.091、0.095)。180日目でのPCSSに関して、ベースラインからの平均変化における差異は、プラセボ群とFGF群との間で2.2未満であった。処置効果は、SF−36のMCSS(精神的構成要素)において検出できなかった。
【0141】
(核画像化)
プラセボ群とFGF群との間で一貫した差異は検出できなかった。
【0142】
(亜群の検査)
(運動耐容性試験)
図13(左パネル)は、3または4のベースラインCCSを有する被験体についてのETT時間を示す。3または4のベースラインCCSを有する被験体についてベースラインから90日目までの運動時間における平均変化は、プラセボ群について36.1秒間であり、低用量群について47.6秒間であり、中用量群について57.1秒間であり、そして高用量群について44.5秒間である(一対P値=それぞれ、0.59、0.31、0.69)。ベースラインから180日目までの運動時間における平均変化は、プラセボ群について33.1秒間であり、低用量群について70.7秒間であり、中用量群について75.7秒間であり、そして高用量群について41.5秒間である(一対P値=それぞれ、0.15、0.086、0.74)。
【0143】
図13(右のパネル)は、3または4のベースラインCCSを有する被験体についてのSAQスコアを示す。3または4のベースラインCCSを有する被験体についてのベースラインから90日目までのAFSにおける平均変化は、プラセボ群について5.7であり、低用量群について17.0であり、中用量群について19.5であり、そして高用量群について20.5であった(一対P値=それぞれ、0.058、0.015、0.010)。180日目に、AFSにおける平均変化は、プラセボ群について11.7であり、低用量群について17.2であり、中用量群について22.3であり、そして高用量群について21.8であった(一対P値=それぞれ、0.34、0.059、0.076)。
【0144】
図14(左パネル)は、シアトルアンギナ質問表(Seattle Angina Questionnaire)(SAQ)を用いて測定した場合に40以下のベースラインアンギナ頻度スコア(AFS)を有する被験体についてのETT時間を示す。40以下(より低いスコアは、より高いアンギナ頻度を示す)のベースラインAFSを有する被験体についてのベースラインから90日目までの運動時間における平均変化は、プラセボ群について50.3秒間であり、低用量群について83.6秒間であり、中用量群について72.1秒間であり、そして高用量群について49.8秒間であった(一対P値=それぞれ、0.16、0.32、0.98)。ベースラインから180日目までの運動時間における平均変化は、プラセボ群について56.5秒間であり、低用量群について90.2秒間であり、中用量群について84.6秒間であり、そして高用量群について55.0秒間であった(一対P値=それぞれ、0.24、0.29、0.96)。これらのデータは、ベースライン時により高いアンギナ頻度を有し、かつプラセボを受けた被験体と比較して低用量または中用量のFGFを受けた被験体についてのETT時間における、より高い平均変化を示唆する。
【0145】
図14(右のパネル)は、40以下のベースラインAFSを有する被験体についてのAFSを示す。40以下(より低いスコアは、より高いアンギナ頻度を示す)のベースラインAFSを有する被験体についての、ベースラインから90日目までのAFSにおける平均変化は、プラセボ群について12.2、低用量群について27.7、中用量群について29.7、そして高用量群について22.0であった(一対P値=それぞれ、0.017、0.004、0.10)。180日目に、AFSにおける平均変化は、プラセボ群について16.3であり、低用量群について27.4であり、中用量群について30.7であり、そして高用量群について24.6であった(一対P値=それぞれ、0.089、0.019、0.18)。ベースラインでより低いAFSを有する被験体における、低用量群および中用量群とプラセボとの間のAFSにおける差異の大きさは、臨床的に適切である
と考えられた。
【0146】
(機能分析)
(解剖学的構造)
90日目で、3.0μg/kgの投薬量群および30μg/kgの投薬量群での左心室拡張終期径(LVEDD)において有意な低下があった(それぞれ、p=0.037および0.032)。0.3μg/kgの投薬量群(p=0.13)において、改善の傾向が見られた。コントロールにおいて、LVEDDは、僅かに増加した。これは、FGF処置患者(3.0μg/kg用量群および30μg/kg用量群)での虚血の軽減および機能の改善に一致する。90日目で、0.3μg/kg用量の群(p=0.042)および30μg/kg用量の群(p=0.024)での左心室収縮末期径(LVESD)において有意な低下が存在し、そして3.0μg/kg群において改善の傾向(p=0.17)が存在した。これはまた、FGF処置患者での虚血の軽減および機能の改善に一致する。コントロールは、(LVEDDにおける増加と一致する)LVESDにおける増加を示した。この効果は、6ヶ月では確かではない。左心室(LV)の質量は、予想通り変化しなかった(なぜなら、血圧に影響はなかったので、LV質量に対する影響も予想されなかった)。
【0147】
(壁運動)
正常な壁運動は、期待範囲(30〜40%)内であり、そして変化しなかった。正常な壁厚は、期待範囲(45〜50%)内であり、そして変化しなかった。標的壁(すなわち、虚血心筋層の壁)の安静時の運動は、正常と同じであった。
【0148】
(心筋灌流)
遅延到着ゾーン(delayed arrival zone)(DAZ)は、全ての群にわたりベースラインで同じであった(平均約15%)。それは、運動誘導性の核灌流欠損(nuclear perfusion defect)(約18%)のサイズと相関する。このDAZのサイズは、全ての群において減少した。最高の減少は、3.0μg/kg群において存在した。
【0149】
(要旨および結論)
第II相試験からのデータは、被験体が、低用量(0.3μg/kg)および中用量(3.0μg/kg)のFGF−2を用いて、最も改善することを示唆する、全体的パターンを示した。
【0150】
全体的に、より症候性の患者が、最高の改善を示した。例えば、CCSが3もしくは4のベースラインおよび/またはSAQアンギナ頻度が40以下の被験体は、ETTにおいて180日目で改善に向かう傾向を示した。
【0151】
被験体群全てついて、アンギナ頻度の減少(p=0.035)が、90日目で見られた。CCSが3もしくは4のベースラインおよび/またはSAQアンギナ頻度が40以下のこの被験体は、90日目と180日目との両方で最高の改善を示した。さらに、CCSが3または4のベースラインを有する被験体は、SF−36の肉体構成要素において、90日目と180日目との両方で改善を示した。
【0152】
さらに、MRIデータは、低下したLVEDDとLVESDとによって証明されるように、FGF群における改善したLV機能の証拠を提供した。灌流分析は、FGF群において改善に向かう傾向を示した。
【0153】
SAQの効力の二次変数について、8以上の変化は、臨床的に適切であるとみなされる
。統計学的に有意な差異は、アンギナ頻度スコア(angina frequency score)(AFS)の全体的分析で見られた。臨床的に適切かつ統計学的に有意な差異は、AFSにおいて、プラセボ群と中用量の群との間で、90日目で見られた。
【0154】
SF−36の効力の二次変数について、プラセボ処置群とFGFで処置した全ての群との間の有意な差異は、肉体構成要素要約スケール(PCSS)において、90日目で見られた(0.033)。
【0155】
さらに、うっ血性心不全を有する患者のサブセットにおいて、任意の用量のFGFを用いて改善が見られた。従って、FGFは、うっ血性心不全を有する患者において、より有益であり得る。第II相研究において、プラセボを受けた患者は、それぞれ、64.6および81.3の変化を示した低域用量および中域用量を受けた患者と比較した場合、総運動時間について、ベースラインから23.2秒の変化(最小二乗平均)を90日目で示した。180日目で、プラセボは、総運動時間において、低域用量群および中域用量群についての75.4秒および72.8秒と比較した場合、27.3秒の変化を示した。この結果は、90日目での中投薬量群および低投薬量群における統計学的傾向を確立する。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、治療有効量のFGF−2もしくはその血管形成活性フラグメント(angiogenically active fragment)または血管形成活性ムテインを含む、ヒトにおいて心臓の血管新生を誘導するための単位用量の組成物に関する。本発明はまた、患者へ全身性のリスクを最小限にしながら、心臓の血管新生を誘導するために、ヒトへ1回の単位用量組成物を投与するための方法に関する。開示された単位用量の組成物およびその投与方法は血管形成術、冠状動脈疾患(CAD)の処置に対する外科的介入への代案を与え、そしてさらにヒトにおける心筋梗塞(MI)後の損傷を減少させるための補助を与えるので、本発明は有用である。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
線維芽細胞増殖因子(FGF)は、少なくとも18個の構造的に関連したポリペプチド(FGF−1からFGF−18と名づけられている)のファミリーであり、ヘパリンのようなプロテオグリカンに対する高い程度の親和性によって特徴付けられている。様々なFGF分子は、サイズが15〜23kDの範囲であり、神経細胞の接着および分化[Schubertら,J.Cell Biol.104:635−643(1987)]、創傷の治癒[米国特許第5,439,818号(Fiddes)]を含む正常および悪性状況下において、多くの中胚葉細胞型および外胚葉細胞型への分裂促進剤として、栄養因子として、分化誘導因子または分化阻害因子として[Clements,ら,Oncogene 8:1311−1316(1993)]、血管形成因子(angiogenic factor)として[Harada,J.Clin.Invest.,94:623−630(1994)、広範囲にわたる生物学的活性を示す。従って、FGFファミリーは、様々な範囲の線維芽細胞、平滑筋細胞、上皮細胞、神経細胞を刺激する多能性増殖因子のファミリーである。
【0003】
FGFは、胎児の発育または創傷の治癒のように正常な組織から放出される場合、時間的および空間的な制御に供される。しかし、FGFファミリーのメンバーの多くはまた、癌遺伝子でもある。したがって、時間的および空間的な制御なしではFGFファミリーのメンバーは血管新生を提供しながら、腫瘍の増殖を刺激する能力を有する。
【0004】
冠状動脈疾患は、一つ以上の冠状動脈がプラークの蓄積によって徐々に閉塞していく(アテローム性動脈硬化)、ヒトにおける進行的な状態である。この疾患を有する患者の冠状動脈は、よくバルーン血管形成や部分的に閉塞した動脈を開くためのステントの挿入によって処置される。結局、これらの患者の多くは、多大な出費およびリスクをかけて冠状動脈バイパス手術を行う必要がある。バイパス手術を行う必要性を減らすために、冠状動脈の血流を増やす薬物をこのような患者に提供することが望まれる。
【0005】
血塊などによって一つ以上の冠状動脈または小動脈が完全に閉塞するようになる心筋梗塞で患者が苦しむ場合、ヒトにおいてなおより重要な状況が生じている。閉塞した動脈または小動脈にさらされた心筋部分へ即座に循環を回復させる必要がある。失われた冠状循環が梗塞開始の数時間以内に回復されれば、閉塞より下流にある心筋に対する損傷のほとんどは防ぐことができる。組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼのような血塊溶解剤は、この場合に有益であることが立証されている。しかし、血塊溶解剤の補助物として、損傷を受けたか、または閉塞した心筋に血管新生によって副行循環を得ることも望ましい。
【0006】
従って、冠状動脈疾患中および/または急性心筋梗塞の後に、心臓の血管形成をヒトの患者に与える薬剤および投与様式を提供することが、本発明の目的である。より詳細には、有害な効果を最小限にしながら、心臓の脈管新生の望ましい特性を与える、FGFの治療用量およびヒトへの投与様式を提供することが本発明のさらなる目的である。
【0007】
様々なFGF分子の多くが単離され、そして変動しかつしばしば正反対の結果を有する様々な心筋虚血動物モデルへ投与されている。Battlerらによると、「イヌの心筋虚血モデルは天然に存在する副行循環が豊富であるので、批評の余地がある。天然の副行循環が相対的に欠乏しており、そしてヒトの副行循環に類似している点で優っているブタのモデルとは正反対である」。Battlerら‘Intracoronary Injection of Basic Fibroblast Growth Factor
Enhances Angiogenesis in Infarcted Swine Myocardium’JACC,22(7):2001−6(Dec.1993)2002頁、col.1。しかし、ウシのbFGF(すなわちFGF−2)を心筋梗塞モデルのブタに投与したBattlerらは、一つの動物種から別の動物種で得られる様々な結果を考慮し、そして互いに異なる結果を明白に開示し「従って、このように異なった動物モデルからの結果に基づいて推定する際に注意しなければならないという忠告を強調している」(Battlerら,2005頁,col.1)。さらに、Battlerは、「投薬とbFGF(すなわちウシのFGF−2)の投与様式は、達成される生物学的効果に対して深遠な含意を有し得る」(Battler,ら,2005頁,col.1)と指摘している。従って、ヒトの患者においてCADの処置および/またはMI創傷後の安全かつ効果的な処置を提供する線維芽細胞増殖因子の投薬量ならびに投与様式を発見することが、本発明のさらなる目的である。さらに一般的に、ヒトの心臓で血管新生を誘導する薬学的組成および方法を提供することが本発明の目的である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
冠血管形成を必要とするヒトの患者の一つ以上の冠脈管(IC)または,末梢静脈(IV)への約0.2μg/kg〜約48μg/kgの単回単位用量での、rFGF−2またはその血管形成的に活性な(angiogenically active)フラグメントもしくはムテインの投与が、思いがけなくヒトの患者に、予想外に長期間(これを書いている現在で6ヶ月になる)持続した処置患者の運動耐性時間(ETT)における予想外の大きな上昇(すなわち2ヶ月および6ヶ月の全グループでベースラインから平均的変化で96秒および100秒の上昇)を生じる、急速かつ治療的な冠血管形成を提供することを本願らは発見した。これらの変化は、標準的な血管再生手順の必要性の減少という結果になるはずである。本明細書中に使用される「冠血管形成」とは、冠循環において側副として作用する毛細血管から小動脈というサイズの範囲の、新しい血管の形成を意味する。比較のために血管形成は、プラセボと比較して30秒より長い患者のETTにおける上昇を提供する場合、治療的に成功であると考えられている。
【0009】
従って、一つの局面において本発明は、安全かつ治療有効量のrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む、単位用量のrFGF−2に関する。代表的に安全かつ治療的に有効な量は、理想的体重に基づいて、約0.2μg/kg〜約48μg/kgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む。他の実施形態において、単位用量の安全かつ治療的に有効な量は、0.2μg/kg〜2.0μg/kg、2.0μg/kgより上〜24μg/kg未満もしくは24μg/kg〜48μg/kg ICのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを含む。別の実施形態において、単位用量の安全かつ治療
的に有効な量は18μg/kgから36μg/kg IVのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを含む。完全な用語で表現すれば、本発明の単位用量は0.008mg〜7.2mg、より代表的には0.3mg〜3.5mgのFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む。適切なFGF−2は配列番号2のrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインである。
【0010】
別の局面において、本発明はCADについてヒト患者を処置する方法もしくはそこでの冠血管形成を誘導することに関する。その方法は安全かつ治療有効量の組み換えFGF−2(rFGF−2)またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを冠状動脈疾患の処置が必要な(または血管新生が必要な)ヒトの患者の一つ以上の冠脈管もしくは末梢静脈へ投与する工程を含む。代表的に安全かつ治療的に有効な量の部分が、二つの冠脈管の各々に投与される。安全かつ治療的に有効な量は、薬学的に受容可能なキャリアーにおいて約0.2μg/kg〜約48μg/kgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む。他の実施形態において、安全かつ治療的に有効な量は、薬学的に受容可能なキャリアーにおいて0.2μg/kg〜2μg/kg、2μg/kgより上〜24μg/kg未満、または24μg/kg〜48μg/kgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む。完全な用語では、上記の方法で使われているrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインの量は、0.008mg〜7.2mg、より代表的には0.3mg〜3.5mgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む。
【0011】
FGF−2はグリコサミノグリカン(例えばへパリン)結合タンパク質であり、そしてグリコサミノグリカンの存在は活性およびAUCを最適化するので(図3および4を参照のこと)、本発明のRFGF−2のIC投薬量は代表的にへパリンのようなグリコサミノグリカン投与の0〜30分前に投与される。へパリンはICもしくはIV、代表的にはIV投与される。必要に応じて、へパリンは単位
用量組成物と組み合わされる。
【0012】
rFGF−2が一酸化窒素、強力な血管拡張剤を放出するので、注入前(前方向的な)および注入の間の侵略的な流体治療技術は、患者の安全のために重要である。注入前の推定楔入圧12mmHgを確立するためのIV流体(例えば500〜1000mLの標準生理食塩水)の投与、および注入に関連した収縮期の血圧を下げる(例えば90mmHg未満)ためにIV流体(例えば200mLの標準生理食塩水)のボーラス投与は、IC注入またはIV注入によるヒトの患者に対するrFGF−2投与の安全性を最適化する。
【0013】
EDTAが正常な心筋収縮および心臓伝導に必要とされるカルシウムの強力なキレート剤なので、EDTA濃度を最小限にすることは患者の安全にとって重要である。単位用量組成物中100μg/ml未満のEDTA濃度は、IC注入またはIV注入によるヒトの患者に対するrFGF−2投与の安全性を最適化する。
【0014】
急激なrFGF−2のボーラス投与が動物において深い低血圧と関連しているので、注入の速度は、患者の安全に重要である。一分あたり0.5〜2mL、代表的には一分あたり1mLでの投与は、IC注入またはIV注入によるヒトの患者に対するrFGF−2投与の安全性を最適化する。
【0015】
ETT、「シアトル アンギナ質問表(Seattle Angina Questionnaire)」(SAQ)および心臓の標的領域のMRIのような当該分野で認識された臨床的終点の測定によって決定されるように、単位用量組成物および投与方法によっ
て冠血管形成を必要とするヒトの患者に提供された治療効果の予想外の大きさおよび持続時間は、単回単位用量が投与された後2週間の早さでみられ、そして単回単位用量がICまたはIV投与された後6ヶ月間持続した。例えば、Spertusらの(1995)JACC 25:333−341を参照のこと。特に、58人のヒトCAD患者のETTは、ベースラインでの単調な繰り返しによって評価されており、そしてICまたはIV経路による単回単位用量のrFGF−2の投与後1ヶ月、2ヶ月、および6ヶ月で全ての投薬郡中の患者幾人かにおいて臨床的効果が観察された。表1を参照のこと。運動能力における増加は、1ヶ月と2ヶ月との間で現れている。平均的ETTは、2ヶ月および6ヶ月において60秒より上に増加し、中用量群(6〜12μg/kg)または低用量群(0.33〜2.0μg/kg)より高用量群(24〜48μg/kg)においてより大きな効果が見られている。(表1を参照のこと)。特に、動物モデルによって予期せずかつ予想外であったのは、IVによる単位用量のrFGF−2を投与された患者について投薬後2ヶ月および6ヶ月で観察された、各々93.4秒と87.5秒のヒトの患者でのETTにおける平均的な上昇である。さらにプラセボ効果を想定しても、ETT秒についてのベースラインからの平均的な変化はなお、血管形成に関する結果の予想外で有望な比較を可能にした。
【0016】
48人のヒトCAD患者の生活の質は、有効な疾病特異的質問表、シアトル アンギナ質問表(SAQ)によってベースラインにおいて(すなわち投薬前に)評価され、そしてICまたはIV経路によって本発明の単回単位用量のrFGF−2を一回受けた後、2ヶ月および6ヶ月において評価された場合、SAQにより測定された5つのスケールに対するベースラインからの平均的変化は、IC投与であろうとIV投与であろうと全ての投薬範囲に対して臨床的に著しい方法で上昇していた(表2〜6)。特にSAQによって評価された5つのスケールは、労作性能力、アンギナ安定性、アンギナ頻度、処置満足感および疾患理解である。ベースラインと比較して、労作性能力に対する平均スコアは、2ヶ月で10.9から20.2まで;ならびに6ヶ月で16.5から24.1まで増加した。アンギナ安定度について、平均スコアは、2ヶ月で32.1から46.2まで;および6ヶ月で16.7から23.2まで増加した。アンギナ頻度について平均スコアは、2ヶ月で20.0から32.9まで;および6ヶ月で11.4から36.7まで増加した。処置満足感について、平均スコアは、2ヶ月で8.5から19.8まで;および6ヶ月で6.3から19.8まで増加した。疾病理解について、平均スコアは、2ヶ月で20.2から27.8まで;および6ヶ月で23.8から34.0まで増加した。一般的に、いずれのスケールでも8ポイントの変化は、臨床的に顕著であると考えられている。従って、8.5〜46.2の観察された変化は評価された5つのスケールの各々に対して臨床的に有意である。14ポイントのベースラインからの平均的変化によるプラセボ効果を想定したとしても臨床的に有意であると考えられ、その結果は、なお評価されたほとんど全てのスケールで予想外に優れた効果を提供する。
【0017】
本研究の一部として、心臓駆出率、局所的心筋機能、および灌流(遅延到着帯)に対するrFGF−2の単回単位用量を投与した効果を評価するために、MRIもCADと診断された33人のヒトの患者に実行された。詳細には、患者は、配列番号2のrFGF−2の単回単位用量0.33μg/kg〜48μg/kg ICまたは18μg/kg〜36μg/kg IVが投与された。33人のヒトのCAD患者が、ベースライン(すなわち処置前に)ならびにICまたはIV経路による本発明のrFGF−2の単回単位用量での処置後1ヶ月、2ヶ月および6ヶ月に、休止している心磁気共鳴映像法(MRI)によって評価された場合、増加した標的の壁肥厚、標的の壁運動および標的領域の副行範囲、ならびに減少した標的領域の遅延到着範囲によって客観的に測定されるように、それらの患者は、その処置方法に対してきわめて統計的に有意な応答を示した。まとめると1ヶ月、2ヶ月および6ヶ月において標的の壁肥厚は、ベースラインと比較してそれぞれ4.4%、6.3%および7.7%増加し;標的の壁運動は、ベースラインと比較してそれぞれ2
.7%、4.4%および6.4%増加し;標的領域の副行範囲は、ベースラインと比較してそれぞれ8.3%、10.9%、および11.2%増加した;そして標的領域の遅延到着範囲は、ベースラインと比較してそれぞれ−10.0%、−8.3%ならびに−10.0%減少した。
【0018】
上記のデータは、本発明に従ってICまたはIV投与した場合の、rFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントの本単位用量組成物のヒトにおける臨床的効果を証明している。
上記に加えて、本発明は、以下を提供する:
(項目1)
ヒトにおいて血管新生を誘導するための単位用量組成物であって、該組成物は、薬学的に受容可能なキャリア中に、約0.008mg〜約7.2mgのFGF−2あるいはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを含む、単位用量組成物。
(項目2)
0.3mg〜3.5mgのFGF−2あるいはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを含む、項目1に記載の単位用量組成物。
(項目3)
前記FGF−2が、配列番号2のアミノ酸配列を有する、項目1に記載の単位用量組成物。
(項目4)
薬学的に受容可能なキャリア中に、0.3mg〜3.5mgの配列番号2のFGF−2あるいはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを含む、項目3に記載の単位用量組成物。
(項目5)
薬学的に受容可能なキャリア中に、約0.008mg〜約7.2mgの前記配列番号2のFGF−2の前記血管形成的に活性なムテインを含む、項目3に記載の単位用量組成物。(項目6)
薬学的に受容可能なキャリア中に、0.3mg〜3.5mgの前記配列番号2のFGF−2の前記血管形成的に活性なムテインを含む、項目5に記載の単位用量組成物。
(項目7)
薬学的に受容可能なキャリア中に、約0.008mg〜約7.2mgの前記配列番号2のFGF−2の前記血管形成的に活性なフラグメントを含む、項目3に記載の単位用量組成物。
(項目8)
薬学的に受容可能なキャリア中に、0.3mg〜3.5mgの前記配列番号2のFGF−2の前記血管形成的に活性なフラグメントを含む、項目7に記載の単位用量組成物。
(項目9)
薬学的に受容可能なキャリア中に、約0.008mg〜約7.2mgの前記配列番号2のFGF−2を含む、項目3に記載の単位用量組成物。
(項目10)
冠状動脈疾患についてヒト患者を処置するための方法であって、該方法が、該冠状動脈疾患についての処置を必要とするヒト患者において、安全かつ治療有効量の組換えFGF−2、あるいはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを1つ以上の冠動脈管または末梢静脈に投与する工程を包含し、該治療有効量が患者の体重1kgにつき約0.2μg〜48μgである、方法。
(項目11)
前記組換えFGF−2が、配列番号2のアミノ酸配列を有する、項目10に記載の方法。(項目12)
前記方法がさらに、約10U/kg〜80U/kgのヘパリンを前記患者に、前記配列番号2の組換えFGF−2、あるいはその前記血管形成的に活性なフラグメントまたはムテ
インを投与する前約0〜30分以内に投与する工程を包含する、項目11に記載の方法。(項目13)
配列番号2の組換えFGF−2、あるいはその前記血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインの前記治療有効量が、1つ以上の冠動脈管に投与される、項目12に記載の方法。
(項目14)
配列番号2の組換えFGF−2、あるいはその前記血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインの前記治療有効量が、約24μg/kg〜48μg/kgである、項目13に記載の方法。
(項目15)
配列番号2の組換えFGF−2、あるいはその前記血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインの前記治療有効量が、末梢静脈に投与される、項目12に記載の方法。
(項目16)
配列番号2の組換えFGF−2、あるいはその前記血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインの前記治療有効量が、約18μg/kg〜36μg/kgである、項目15に記載の方法。
(項目17)
冠状動脈疾患についてヒト患者を処置するための方法であって、該方法は、単回単位用量の組換えFGF−2、あるいはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを、該冠状動脈疾患についての処置を必要とするヒト患者の1つ以上の冠動脈管または末梢静脈に投与する工程を包含し、該単位用量が約0.008mg〜7.2mgの組換えFGF−2、あるいはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを含む、方法。
(項目18)
前記FGF−2が、前記配列番号2のアミノ酸配列を有する、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記単回単位用量が、前記ヒト患者において少なくとも4ヶ月間持続する治療利益を生ずる、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記単回単位用量が、前記ヒト患者において6ヶ月間持続する治療利益を生ずる、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記単回単位用量が、前記ヒト患者において、第2の単位用量の投与が約6ヶ月間必要とされないような規模と持続期間の治療利益を生ずる、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記単位用量が、1つ以上の冠状動脈に投与される、項目20に記載の方法。
(項目23)
前記単位用量が、末梢静脈に投与される、項目20に記載の方法。
(項目24)
前記単位用量が、0.3mg〜3.5mgの配列番号2の組換えFGF−2、あるいはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを含む、項目20に記載の方法。
(項目25)
前記方法がさらに、10U/kg〜80U/kgのヘパリンを前記患者にIVまたはICで、前記単位用量を投与する約0〜30分前に投与する工程を包含する、項目19に記載の方法。
(項目26)
ヒト患者の心臓での血管新生を誘導するための方法であって、該方法は、単回単位用量の組換えFGF−2、あるいはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを、冠状動脈疾患についての処置を必要とするヒト患者の1つ以上の冠動脈管または末梢静脈に投与する工程を包含し、該単位用量が約0.008mg〜7.2mgの組換えFGF−2、あるいはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを含む、方法。
(項目27)
前記FGF−2が、配列番号2のアミノ酸配列を有する、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記単回単位用量が、少なくとも4ヶ月間持続する、前記ヒト患者での1つ以上の臨床上の終点における改善を生ずる、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記単回単位用量が、6ヶ月間持続する、前記ヒト患者での1つ以上の臨床上の終点における改善を生ずる、項目28に記載の方法。
(項目30)
心筋梗塞についてヒト患者を処置するための方法であって、該方法が、単回単位用量の組換えFGF−2、あるいはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを、該ヒト患者の1つ以上の冠動脈管または末梢静脈に投与する工程を包含し、該単位用量が、約0.008mg〜7.2mgの組換えFGF−2、あるいはその血管形成的に活性なフラグメントまたはムテインを含む、方法。
(項目31)
前記方法がさらに、10U/kg〜80U/kgのヘパリンを前記患者にIVまたはICで、前記単位用量を投与する約0〜30分前に投与する工程を包含する、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記FGF−2が、配列番号2のアミノ酸配列を有する、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記単位用量が、末梢静脈に投与される、項目30に記載の方法。
(項目34)
前記単位用量が、前記患者の1つ以上の冠動脈管内に投与される、項目30に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】図1Aは、20分周期でIC注入によりヒトに投与したrFGF−2(配列番号2)の8つの異なった用量についての、平均rFGF−2血漿濃度対時間プロフィールのプロットである。図1Aに示された8つの用量のrFGF−2は痩せたボディーマス(LBM)の0.33、0.65、2、6、12、14、36および48μg/kgである。
【図1B】図1Bは、20分周期でIV注入によりヒトに投与したrFGF−2(配列番号2)の2つの異なった用量についての平均FGF−2血漿濃度対時間プロフィールのプロットである。図1Bにおける2つのIV用量のrFGF−2は、18μg/kgおよび36μg/kgである。36μg/kgのrFGF−2のIC投与に続く平均的な濃度−時間プロフィールを比較のために含まれる。
【図2】図2は、図1Aと1Bに対応するpg*min/mlにおける曲線(AUC)下での平均的なFGF−2面積のプロットである。このプロットは、ICまたはIV注入に続く全身的なrFGF−2暴露の用量の直線化を示している。IC経路に対する全身的な暴露は、IV投与に続いて観察される暴露に類似している。
【図3】図3は、「rFGF−2注入前の分」におけるへパリン投与時間の関数としての、個々のヒトの患者FGF−2血漿クリアランス(CL)値のプロットであり、FGF−2血漿クリアランス(CL)に対するへパリン投与のタイミングの影響を示す。
【図4】図4は、「rFGF−2注入前の分」におけるへパリン投与時間の関数としての、曲線(AUC)下での個々のヒトの患者FGF−2用量正規化面積のプロットであり、FGF−2 AUCに対するへパリン投与のタイミングの影響を示す。
【図5】図5は、第II相臨床試験の分析計画を要約す。
【図6】図6は、第II相臨床試験における、患者集団についての患者の特質を要約する。
【図7】図7は、第II相臨床試験のコースにわたる患者の特性を示す。
【図8】図8は、第II相臨床試験に対する患者集団の安全変数を示す。
【図9】図9は、プラセボ処置群と3つのFGF−2処置群に対する運動時間における変化を示す。
【図10】図10は、プラセボ処置群および3つの処置群における患者のアンギナ頻度スコアにおける変化を示す。
【図11】図11は、プラセボ処置群および3つの処置群における患者の、シアトル アンギナ質問表の他の領域における変化を示している。
【図12】図12は、短縮型−36個の肉体構成要素の要約スコアにおける変化を示す。
【図13】図13は、ベースラインのCCSクラス3または4によって分類されたETTおよびアンギナ頻度スコアにおける変化を示す。
【図14】図14は、40以下のベースラインAFSによって分類されたETTおよびアンギナ頻度スコアにおける変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
本出願人は、単回用量のrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインが、安全かつ治療的に有効な量で、CADと診断されたヒト患者の1つ以上の冠状脈管内または末梢静脈内に投与された場合に、さらなる処置が必要とされる前に少なくとも4〜6ヶ月間、より代表的には少なくとも2ヶ月間持続する、患者の冠状動脈疾患に安全かつ治療的に有効な処置を患者に提供することを発見した。この効果の持続期間、ならびにETT、SAQ、およびMRIにおける改善の程度は、単回用量の医薬について予期外であった。
【0021】
句「治療的に有効な量」または「安全かつ治療的に有効な量」とは、rFGF−2に関して本明細書中で使用される場合、本発明に従って投与された場合に医学的に管理し得ない主要な合併症がなく、そして最適な医学的管理にも関わらずCADの症状を有する患者において客観的な心臓の改善を提供する、rFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインの量を意味する。従って、液体の投与によって管理され得る急性低血圧症は、本発明の目的に対して「安全」とみなされる。代表的に、rFGF−2の安全かつ治療的に有効な量は、約0.2μg/kg〜約48μg/kgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む。本発明における使用に適切なFGF−2は、配列番号2のrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインである。
【0022】
従って、本発明は複数の局面を有する。その第1の局面では、本発明は、ヒト患者における血管形成を誘導するための単位用量組成物に関する。この単位用量は、治療的に有効な(すなわち、血管形成に有効な)量のrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラ
グメントもしくはムテインを含み、この量は、約0.2μg/kg〜約48μg/kgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む。
【0023】
用語「単位用量組成物」とは、本明細書中で使用される場合、本発明の方法に従ってヒト患者に投与された場合に、少なくとも4〜6ヶ月間、代表的には6ヶ月間再処置を必要としないように、有意な効力の血管形成効果を血管形成の必要がある代表的なヒト患者に提供する組成物を意味する。本発明の単位用量組成物は、代表的に、1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤またはキャリアと組み合わせて提供される。単位用量組成物の他の実施形態では、安全かつ治療的に有効な量は、約0.2μg/kg〜約2μg/kg、約2μg/kg〜約24μg/kg、または約24μg/kg〜約48μg/kgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む。
【0024】
処置される患者の体重に依存しない、より絶対な用語で本発明の単位用量組成物を定義することは都合が良い。このように定義する場合、単位用量組成物は、0.008mg〜7.2mgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む。この実施形態では、単位用量組成物は、最小の患者(例えば、40kg)の最低用量(約0.2μg/kg)から、より大きな患者(例えば、150kg)の最高用量(約48μg/kg)までを範囲する、大多数のヒトCAD患者のいずれか一人に投薬することに適用させるために十分な量のFGF−2を含む。より代表的には、単位用量は、0.3mg〜3.5mgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む。単位用量組成物を、代表的に、上記で参照した量のrFGF−2、および本明細書中で後に記載されるような有効量の1つ以上の薬学的に受容可能な緩衝液、安定剤および/または他の賦形剤を含む、溶液形態または凍結乾燥形態で提供する。
【0025】
上記された単位用量組成物における活性因子は、組換えFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインである。組換えFGF−2を作製する方法は、当該分野において周知である。配列番号2の組換えFGF−2は、1992年10月13日に発行された「Basic Fibroblast Growth Factor」と表題付けられた米国特許第5,155,214号(そしてこれは、その全体において、本明細書中で明確に参考として援用される)に記載のように作製される。さらに、この文章の前に出ようと後に出ようと、本明細書中で引用されるすべての他の参考文献は、その全体において、本明細書中で明確に参考として援用される。’214特許に開示されるように、配列番号1のDNA(これは、配列番号2のbFGF(本明細書中以降「FGF−2」)をコードする)は、pBR322、pMB9、Col E1、pCRI、RP4、またはλ−ファージのようなクローニングベクター内に挿入され、そしてこのクローニングベクターは、真核生物細胞または原核生物細胞のいずれかを形質転換するために使用され、ここで、この形質転換細胞がFGF−2を発現する。1つの実施形態では、宿主細胞は、Saccharomyces cerevisiaeのような酵母細胞である。結果として生じた、発現される全長FGF−2は、配列番号2と一致して146個のアミノ酸を有する。配列番号2のFGF−2は4個のシステイン(すなわち、残基の25位、69位、87位、および92位)を有するが、内部ジスルフィド結合は存在しない。[’214、第6欄、第59〜61行]。しかし、酸化的条件の下で架橋が生じる場合には、25位と69位の残基の間で生じるようである。
【0026】
146個のアミノ酸残基を有する配列番号2のFGF−2は、天然に存在するヒトFGF−2とは、わずか2個のアミノ酸残基で異なる。詳細には、配列番号2のFGF−2の残基112位および128位のアミノ酸はそれぞれ、SerおよびProであるが、ヒトFGF−2では、それらはそれぞれThrおよびSerである。事実、対応するヒトFGF−2のように、ウシFGF−2は、最初に、155個のアミノ酸残基を有するポリペプチドとしてインビボで合成される。Abrahamら「Human Basic Fib
roblast Growth Factor:Nucleotide Sequence and Genomic Organization」、EMBO J.,5(10):2523−2528(1986)。配列番号2のFGF−2を、Abrahamの全長155残基のウシFGF−2と比較した場合、配列番号2のFGF−2は、対応する全長の分子のN末端で、最初の9個のアミノ酸残基のMet Ala Ala Gly Ser Ile Thr Thr Leu(配列番号3)を欠失する。本発明の組成物および方法において使用される組換えFGF−2は、90年9月11日に発行された「Bovine Fibroblast Growth Factor」と表題付けられた米国特許第4,956,455号(これは、その全体において、本明細書中で参考として援用される)に詳細に記載される技術を用いて、製薬用品質(98%以上の純度)に精製された。特に、出願人の単位用量組成物の組換えFGF−2の精製において使用される最初の2つの工程は、「以前に記載されたような、従来のイオン交換精製工程および逆相HPLC精製工程」である。[米国特許第4,956,455号、これは、Bolenら、PNAS USA 81:5364−5368(1984)を引用する]。第3の工程(これを、’455特許では「鍵となる精製工程」という[’455、第7欄、第5〜6行])は、ヘパリン−SEPHAROSE(登録商標)アフィニティクロマトグラフィーであり、ここではFGF−2の強力なヘパリン結合親和性は、約1.4Mおよび約1.95MのNaClで溶出した場合に、数1000倍の精製を達成するために使用される[’455、第9欄、第20〜25頁]。ポリペプチドの均質性は、逆相高圧液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)によって確認された。緩衝液の交換は、SEPHADEX(登録商標)G−25(M)ゲル濾過クロマトグラフィーによって達成された。
【0027】
配列番号2の146残基のrFGF−2に加えて、本発明の単位用量における活性因子はまた、FGF−2の「血管形成活性フラグメント(angiogenically active fragment)」を含む。用語FGF−2の「血管形成活性フラグメント」とは、配列番号2の146残基の約80%を有し、かつ配列番号2のFGF−2の血管形成活性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%を保持するFGF−2のフラグメントを意味する。
【0028】
血管形成に活性であるために、FGF−2フラグメントは、2つの細胞結合部位および2つのヘパリン結合部位のうちの少なくとも1つを有するべきである。類似体ヒトFGF−2の2つの推定細胞結合部位は、その残基36位〜39位および77位〜81位に存在する。Yoshidaら「Genomic Sequence of hst,a Transforming Gene Encoding a Protein Homologous to Fibroblast Growth Factors and the int−2−Encoded Protein」PNAS USA,84:7305−7309(1987年10月)の図3を参照のこと。hFGF−2の2つの推定ヘパリン結合部位は、その残基18位〜22位および107位〜111位に存在する。Yoshida(1987)の図3を参照のこと。天然に存在するヒトFGF−2(hFGF−2)およびrFGF−2(配列番号2)についてのアミノ酸配列の間の98%より高い類似性を考慮すると、rFGF−2(配列番号2)の2つの細胞結合部位はまた、その残基の36位〜39位および77位〜81位であり、そして2つのヘパリン結合部位は、その残基の18位〜22位および107位〜111位であることが予期される。上記と一致して、配列番号2のFGF−2のN末端短縮物(truncation)は、ウシにおいてその活性を除去しないことが当該分野で周知である。特に、当該分野では、いくつかの天然に存在しかつ生物学的に活性なFGF−2のフラグメントを開示し、そのフラグメントは、配列番号2のFGF−2に対するN末端短縮物を有している。配列番号2の残基12〜146を有する活性な短縮型bFGF−2はウシ肝臓において見出され、そして配列番号2の残基16〜146を有する、別の活性な短縮型bFGF−2はウシの腎臓、副腎、および精巣において見出された。[米国特許第5,155,214号の第6欄、第41〜
46行(これは、Uenoら、Biochem.and Biophys Res.Comm.138:580−588(1986)を引用する)を参照のこと]。同様に、FGF活性を有することが公知である配列番号2のbFGF−2の他のフラグメントは、FGF−2(24−120)−OHおよびFGF−2(30−110)−NH2である。[米国特許第5,155,214号の第6欄、第48〜52行]。これらの後者のフラグメントは、FGF−2(配列番号2)の細胞結合部分の両方およびヘパリン結合セグメントのうちの1つ(残基107〜111)を保持する。従って、FGF−2の血管形成活性フラグメントとは、代表的に、配列番号2のFGF−2の残基30〜110に対応し、より代表的には配列番号2のFGF−2の残基18〜146に対応する残基を少なくとも有する、FGF−2のそれらの末端短縮型フラグメントを包含する。
【0029】
本発明の単位用量はまた、配列番号2のrFGF−2の「血管形成活性ムテイン(angiogenically active mutein)」を含む。用語「血管形成活性ムテイン」とは、本明細書中で使用される場合、以下の検索パラメーター:12のギャップオープンペナルティおよび1のギャップ伸長ペナルティーを使用するアフィンギャップ検索を使用して、MSPRCHプログラム(Oxford Molecular)で実行されるようなSmith−Waterman相同性検索アルゴリズム(Meth.Mol.Biol.70:173−187(1997)によって決定される場合に、任意の天然に存在するFGF−2に対して65%の配列同一性(相同性)を有し、そして上記の少なくとも65%の配列同一性を有する天然に存在するFGF−2の少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%の血管形成活性を保持する、単離および精製された組換えタンパク質または組換えポリペプチドを意味する。好ましくは、血管形成活性ムテインは、天然に存在するFGF−2に対して少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、そして最も好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有する。他の周知であり慣用的に使用される相同性/同一性の走査アルゴリズムのプログラムとしては、以下が挙げられる:PearsonおよびLipman、PNAS USA,85:2444−2448(1988);LipmanおよびPearson,Science 222:1435(1985);Devereauxら、Nuc.Acids Res.12:387−395(1984);または、Altschulら、Mol.Biol.215:403−410(1990)のBLASTP、BLASTN、またはBLASTXアルゴリズム。これらのアルゴリズムを使用するコンピュータープログラムもまた利用可能であり、そして以下が挙げられるが、これらに限定されない:GAP、BESTFIT、BLAST、FASTAおよびTFASTA(これらは、Genetics Computing Group(GCG)パッケージ、バージョン8、Madison WI USAから市販されている);ならびに、CLUSTAL(Intellegenetics、Mountain View CAによるPC/Geneプログラム中)。好ましくは、配列同一性のパーセンテージを、プログラムによって決定されたデフォルトのパラメーターを用いることによって決定する。
【0030】
句「配列同一性」は、本明細書中で使用される場合、ムテインのアミノ酸配列の特定の連続的セグメントを、天然に存在するFGF−2のアミノ酸配列と整列および比較した場合に、ムテイン配列内に類似して位置付けられることが見出される同一のアミノ酸のパーセンテージをいうことが意図される。
【0031】
ムテインにおけるアミノ酸配列同一性のパーセンテージを考慮する場合、タンパク質またはタンパク質機能の特性に作用しない保存的アミノ酸置換の結果として、いくつかのアミノ酸残基位置が、参照タンパク質とは異なり得る。これらの場合、配列同一性のパーセンテージは、保存的に置換されたアミノ酸における類似性を説明するために、上方に調整され得る。このような調整は、当該分野において周知である。例えば、MeyrsおよびMiller、「Computer Applic.Bio.Sci.,4:11−17
(1988)を参照のこと。
【0032】
本発明の血管形成因子の「血管形成活性ムテイン」を調製するために、部位特異的変異誘発についての標準的な技術を使用し得る。これらの技術は、当該分野において公知であり、および/またはGilmanら、Gene 8:81(1979)またはRobertsら、Nature 328:731(1987)に教示される。部位特異的変異誘発技術のうちの1つを使用して、配列番号1のcDNA配列内に1つ以上の点変異を導入し、1つ以上のアミノ酸置換または内部欠失を導入する。保存的アミノ酸置換とは、置換されるアミノ酸の全体的電荷、疎水性/親水性、および/また立体的かさ高さを保存した置換である。例示のために、以下のグループの間の置換は保存的である:Gly/Ala、Val/Ile/Leu、Lys/Arg、Asn/Gln、Glu/Asp、Ser/Cys/Thr、およびPhe/Trp/Tyr。結果として生じるタンパク質またはポリペプチドが、上記に特定される制限内で血管形成活性を保持する限り、天然に存在する血管形成FGF−2の配列との有意な差異(35%まで)が許容される。
【0033】
システインを枯渇したムテインは、本発明の範囲内のムテインである。これらのムテインは、上記のような部位特異的変異誘発を使用するか、または「Cysteine−Depleted Muteins of Biologically Active Proteins」と表題付けられた米国特許第4,959,314号(「’314特許」)に記載の方法に従って構築される。’314特許は、生物学的活性および置換の効果を決定するための方法を開示する。システインの置換は、ジスルフィド形成に関与しない2つ以上のシステインを有するタンパク質において特に有用である。適切な置換としては、残基87位および92位のシステイン(これらは、ジスルフィド形成に関与しない)の1つまたは両方についてのセリンの置換が挙げられる。好ましくは、血管形成活性に関連しないFGF−2のN末端に置換を導入する。しかし、上記で考察されたように、保存的置換は、分子の全体にわたる導入に適切である。
【0034】
本発明の単位用量組成物は、安全かつ血管形成に有効な用量のrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテイン、および薬学的に受容可能なキャリアを含む。代表的に、本発明の薬学的組成物の安全かつ血管形成に有効な用量は、ヒト患者への投与に適切な形態およびサイズにある。そしてこれは、以下を含有する:(i)0.2μg/kg〜48μg/kgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテイン、(ii)および薬学的に受容可能なキャリア。他の実施形態では、安全かつ血管形成に活性な用量は、0.2μg/kg〜2μg/kg、2μg/kgより多い〜24μg/kg未満、または24μg/kg〜48μg/kgのFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテイン、および薬学的に受容可能なキャリアを含む。大多数のヒトCAD患者について絶対的な用語で表現すると、本発明の単位用量は、0.008mg〜7.2mg、より代表的には0.3mg〜3.5mgのFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む。
【0035】
本発明の単位用量組成物の2番目に列挙される成分は、「薬学的に受容可能なキャリア」である。用語「薬学的に受容可能なキャリア」とは、本明細書中で使用される場合、それ自体、その組成物を受容する患者に有害な抗体の産生を誘導せず、そして過度の毒性を伴わずに投与され得る、タンパク質様の医薬の安定化および/または投与のための当該分野において周知の任意のキャリアまたは希釈剤を意味する。薬学的に受容可能なキャリアの選択およびその後の加工は、本発明の単位用量組成物が、液状形態または固体形態のいずれかで提供されることを可能にする。
【0036】
単位用量組成物が液状形態である場合、薬学的に受容可能なキャリアは、静脈内(「IV」)または歯冠内(「IC」)の注射または注入に適切な、安定なキャリアまたは希釈
剤を含む。注射可能溶液または注入可能溶液について適切なキャリアまたは希釈剤は、使用される投薬量および濃度でヒトレシピエントに非毒性であり、そしてこれは滅菌水、糖溶液、生理食塩水溶液、タンパク質溶液、またはこれらの組み合わせを含む。
【0037】
代表的には、薬学的に受容可能なキャリアは、緩衝剤および1以上の安定化剤、還元剤、抗酸化剤および/または抗酸化キレート剤を含む。タンパク質ベースの組成物、特に薬学的組成物の調製における緩衝剤、安定化剤、還元剤、抗酸化剤およびキレート剤の使用は、当該分野において周知である。Wangら、「Review of Excipients and pHs for Parenteral Products Used
in the United States」、J.Parent.Drug Assn.、34(6):452〜462(1980);Wangら、「Parenteral
Formulations of Proteins and Peptides:Stability and Stabilizers」、J.Parent.Sci.and Tech.、42:S4〜S26(補遺1988);Lachmanら、「Antioxidants and Chelating Agents as Stabilizers in Liquid Dosage Forms−Part I」Drug
and Cosmetic Industry、102(1):36〜38、40および146〜148(1968);Akers,M.J.、「Antioxidants in Pharmaceutical Products」、J.Parent.Sci.and Tech.36(5):222〜228(1988);ならびにMethods in Enzymology、第XXV巻、ColowickおよびKaplan編、Konigsbergによる「Reduction of Disulfide Bonds in Proteins with Dithiothreitol」、185〜188頁を参照のこと。適切な緩衝剤には、酢酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、酒石酸塩、および種々のアミノ酸の塩が挙げられる。Wang(1980)455項を参照のこと。適切な安定化剤には、トレロース(threlose)またはグリセロールのような糖類が挙げられる。還元されたシステインの還元を維持する適切な還元剤には、0.01重量/重量%〜0.1重量/重量%のジチオスレイトール(クリランド試薬としても公知のDTT)またはジチオエリスリトール;0.1重量/重量%〜0.5重量/重量%のアセチルシステインまたはシステイン(pH2〜3);ならびに0.1重量/重量%〜0.5重量/重量%のチオグリセロール(pH3.5〜7.0)およびグルタチオンが挙げられる。Akers(1988)225〜226頁を参照のこと。適切な抗酸化剤には、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、およびアスコルビン酸が挙げられる。Akers(1988)225頁を参照のこと。還元されたシステインの微量金属触媒酸化を防ぐために微量金属をキレート化する、適切なキレート剤には、クエン酸塩、酒石酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の二ナトリウム塩、四ナトリウム塩、およびカルシウム二ナトリウム塩、ならびにジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)が挙げられる。例えば、Wang(1980)457〜458頁および460〜461頁、ならびにAkers(1988)224〜227頁を参照のこと。適切な糖には、グリセロール、トレハロース、グルコース、ガラクトース、およびマンニトール、ソルビトールが挙げられる。適切なタンパク質は、ヒト血清アルブミンである。
【0038】
液体形態において、本発明の代表的な単位用量組成物は、薬学的に受容可能なキャリアに溶解された、約0.001mg〜8mg、より代表的には0.03mg〜5mgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む。適切な薬学的に受容可能なキャリアは、10mM チオグリセロール、135mM NaCl、10mM クエン酸ナトリウム、および1mM EDTA、pH5を含む。上記の単位用量組成物についての適切な希釈剤または流剤(flushing agent)は、上記の
キャリアのいずれかである。代表的には、この希釈剤は、キャリア溶液である。rFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインは、長期間については液体形態で不安定である。液体形態の安定性および有効期間を最大化するために、この単位用量組成物は、−60℃で凍結して貯蔵されるべきである。融解された場合、この溶液は、冷蔵条件で6ヶ月間安定である。代表的な単位用量は、単位用量中に溶解された0.008〜7.2mgのrFGF−2または血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを有する、約1〜40ml、より代表的には10〜40mlの上記の組成物を含む。単位用量における使用に適切なrFGF−2は、配列番号2のrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインである。
【0039】
別の実施形態では、単位用量組成物は、凍結乾燥された(フリーズドライされた)形態で提供される。この形態では、rFGF−2の単位用量は、冷蔵温度にて、実質的に6ヶ月よりも長く、治療効力を損失することなく貯蔵され得る。凍結乾燥は、複数のバイアル(各々は、本発明の単位用量のrFGF−2の上記の液体形態をその中に含む)の減圧下での、迅速なフリーズドライ(すなわち、水分を除去する)によって達成される。上記の凍結乾燥を行う凍結乾燥機は、市販されており、そして当業者により容易に作動される。凍結乾燥されたケーク(cake)形態の、得られた凍結乾燥された単位用量組成物は、得られた凍結乾燥されたケーク内に、対応する液体処方物について上記の1以上の緩衝剤、安定化剤、抗酸化剤、還元剤、塩および/または糖を含むように処方される。全てのこのような他の成分を含む凍結乾燥された単位用量組成物は、滅菌水性希釈剤(例えば、滅菌水、滅菌糖溶液、または滅菌生理食塩水)で既知の容量または濃度に再構成されることのみを必要とする。あるいは、これは、上記のような滅菌緩衝溶液で再構成され得るが、キレート剤(例えば、EDTA)を欠く。凍結乾燥されたケークとして、この単位用量組成物は、冷蔵温度で6ヶ月から2年間安定である。従って、凍結乾燥形態のこの単位用量組成物の貯蔵は、従来の冷蔵装置を使用して容易に提供される。
【0040】
本発明の単位用量組成物は、心臓カテーテルまたは他の注入デバイス(これは、デッドスペース(dead space)を有する)を通じて投与されるので、この単位用量組成物を含むバイアルに処方して、その結果、これが、患者に投与されるよりも、約10〜50%多くのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含むことが都合がよい。例えば、投与されるrFGF−2の単位用量が7.2mgである場合に、このバイアルは、必要に応じて、50%までの余分(例えば、全体で約10.8mg)のrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含むように処方される。この余分な溶液は、送達装置のデッドスペースを充填するために適切である。デッドスペースを許容しない代替的な実施形態では、薬学的組成物は、心臓カテーテル内に、薬学的に受容可能な緩衝剤、希釈剤またはキャリアの前にロードされ、次いで、この薬学的に受容可能な緩衝剤、希釈剤またはキャリアは、適切な量の1以上の投薬を、血管形成を必要としている心筋における1以上の部位に送達するために使用される。
【0041】
上記で議論したように、上記の単位用量組成物について薬学的に受容可能なキャリアは、緩衝剤、ならびに1以上の安定化剤、還元剤、抗酸化剤および/または抗酸化キレート剤を含む。単位用量組成物がFGF−2および内皮細胞レセプターに結合して、その結果、FGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインの血管形成効力を増強するに効果的な量のグリコサミノグリカン(glycosoaminoglycan)(「プロテオグリカン」または「ムコ多糖」としても公知)(例えば、ヘパリン)を含むことは、本発明の範囲内である。投与されるヘパリンの量は、患者の体重1kgあたり約10〜80U(U/kg)、代表的には約40U/kgの量である。絶対的な用語で表されると、任意の1患者に投与されるヘパリンの総量は、5,000Uを超えない。従って、再構成の際に、本発明の単位用量組成物は、血管形成に効果的な量のrFGF−
2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含むのみならず、これはまた、約10〜80U/kg、代表的には約40U/kgのヘパリンを含む。希釈剤の代表的な容量は、約1〜40mlである。より多い容量の希釈剤が使用され得るが、このようなより多い容量は、代表的には、より長い投与時間を生じる。患者の体重kgに依存して、0.2μg/kg〜48μg/kgのrFGF−2、またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含有する単回用量が、患者への投与のために再構成された生成物としてバイアルから引き抜かれる。従って、24μg/kgを服用されている平均70kgの男性は、バイアルから引き抜かれた、(70kg×30μg/kg)2100μg(すなわち、2.1mg)のIC注射を受けるに十分な容量の再構成された生成物を有する。
【0042】
その第2の局面では、本発明は、上記の単位用量組成物を使用する、CADまたはMIについてヒト患者を処置するための方法に関する。特に、1つの実施形態では、本発明は、冠状動脈疾患についてヒト患者を処置するための方法に関し、この方法は、安全かつ治療的に有効な量の組換えFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを、冠状動脈疾患についての処置を必要とするヒト患者の、1以上の(代表的には2の)冠状血管または末梢静脈に投与する工程を包含する。冠状動脈疾患の処置を必要とするヒト患者は、代表的には、任意の医学管理にもかかわらずアンギナの症候のままである冠状動脈疾患を患うヒト患者である。好ましい冠状血管は、冠状動脈であるが、冠状血管形成術(coronary angioplasty)により提供されるように、移植された伏在静脈および移植された内胸動脈もまた、適切である。単位用量組成物を投与するために適切な末梢静脈には、流体および医薬品の投与のために、処置する医師および看護士によって慣用的に使用されるヒト身体の至る所に見出される末梢静脈を含む。このような静脈の例には、頭部、肘正中皮、および腕の尺側皮が挙げられる。
【0043】
冠状内(IC)注入として投与される場合、単位用量のrFGF−2またはその血管形成フラグメントもしくは血管形成活性ムテインは、代表的には、1時間以内、より代表的には約20分の時間にわたって、患者の1以上(代表的には、2)の冠状静脈中に投与される。20分の時間にわたって投与される場合、単位用量組成物は、代表的には、0.5〜2.0ml/分、より代表的には約1ml/分の速度で投与される。冠状静脈は、それらが閉塞されていない限り、ネイティブな血管または移植物であり得る。単位用量のrFGF−2またはその血管形成フラグメントもしくは血管形成活性ムテインの容量は、代表的には10〜40ml;より代表的には20mlである。この単位用量の注入の時間の長さは、重要ではなく、そして注入の速度および容量に依存して短縮または延長され得る。
【0044】
静脈(IV)内注射として投与される場合、単位用量のrFGF−2またはその血管形成フラグメントもしくは血管形成活性ムテインは、代表的には1時間以内、より代表的には20分の時間にわたって、従来のIV設定を使用して末梢静脈中に投与される。20分の時間にわたって投与される場合、単位用量組成物は、代表的には、1ml/分の速度で投与される。
【0045】
CADを処置するための上記の方法の第一相の臨床試験では、単回の単位用量組成物は、任意の医学管理にもかかわらずアンギナの症候のままであるCADを有するヒト患者にICまたはIVで投与された。本発明の方法は、血管形成を誘導するので、本発明の方法は、CADまたはMIにおける根本的な状態の処置を提供し、そして硝酸塩により提供されるような症状からの単なる一過性の解放ではない。代表的には、本発明の方法の安全かつ治療的に有効な量は、0.2μg/kg〜48μg/kgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを薬学的に受容可能なキャリア中に含む。他の実施形態において、この安全かつ治療的に有効な量は、0.2μg/kg〜2μg/kg、2μg/kgより多く〜24μg/kg未満、または24μg/kg〜48μg
/kgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを薬学的に受容可能なキャリア中に含む。絶対的な用語では、この安全かつ治療的に有効な量は、約0.008mg〜約7.2mgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテイン;より代表的には、0.3mg〜3.5mgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインである。適切なrFGF−2は、配列番号2のrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインである。
【0046】
別の局面では、本発明はまた、ヒト患者の心臓における血管形成を誘導するための方法に関する。この方法は、組換えrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインの単回の単位用量組成物を、冠状血管形成を必要とするヒト患者の1以上の冠状血管にまたは末梢静脈に投与する工程であって、上記の単位用量組成物は、約0.008mg〜7.2mgの組換えFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを薬学的に受容可能なキャリア中に含む、工程を包含する。より代表的には、この単位用量組成物は、約0.3〜3.5mgのrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを、薬学的に受容可能なキャリア中に含む。上記のように、治療的に有効な量のrFGF−2またはその血管形成的に活性なフラグメントもしくはムテインを含む、単回の単位用量組成物は、既に公知でありかつ医薬品(例えば、血栓崩壊剤、ストレプトキナーゼ、または冠状動脈を可視化するために使用される放射性を透過しない(radio−opaque)色素または磁気粒子)の冠状内投与について当該分野において使用される、標準的な心臓カテーテル技術を使用して、血管形成を必要とするヒト患者の少なくとも1つの冠状血管に投与される。例としては、冠状カテーテルは、処置を必要とする患者の動脈(例えば、大腿または鎖骨下)に挿入され、そしてこのカテーテルが、処置される患者の適切な冠状血管中に配置されるまで、見えるように前方に押し出される。明確な線を維持するために標準的な注意を使用して、溶液形態の薬学的組成物は、10〜30分の時間にわたって実質的に連続的に単位用量を注射することによって投与される。本発明の薬学的組成物は、より長い時間にわたって投与され得るが、本出願人らは、有益性も、そのようにすることによる血栓症の潜在的に増大した危険性も全く認知しない。代表的には、単位用量の一部(例えば、半分)は、第1の冠状血管に投与される。次いで、カテーテルは、第2の2次冠状血管に再び配置され、そしてこの単位用量の残留物は、このカテーテルを洗浄しながら投与される。上記の再配置手順を使用して、単位用量の一部は、その単位用量の全体が投与されるまで、複数の冠状血管に投与され得る。投与の後に、このカテーテルは、従来の当該分野で公知のプロトコルを使用して引き抜かれる。本明細書中に記載される第一相の臨床試験において、治療の有益性が、単回の単用量のIC rFGF−2投与に従う2週間程度の早さで患者により報告された。臨床的に有意な改善が、本発明の単回の単位用量のICまたはIV投与の後、30日程度の早さで、客観的な診断基準(ETTおよび/またはSAQ)により実証され、そして服用後の2ヶ月間維持された。進行性CAD疾患を患う特定の患者では、rFGF−2のさらなる単位用量を、最初の単位用量後の2または12ヶ月の間隔で投与し、しばらくの(interim)期間、CADの進行を克服するために必要または適切であり得る。非常に進行性のCADを患う数人の患者では、本発明の単位用量が、4ヶ月の間隔で再投与される。任意の例では、処置する担当医は、必要とされる場合、患者の臨床徴候の慣用的な評価に基づき再投与についての時間を決定し得る。
【0047】
本発明の方法の有益性の1つは、心臓の血管新生である。従って、別の局面において、本発明は、ヒト患者の心臓における血管新生を誘導するための方法に関し、この方法は、血管神聖的に有効な量のrFGF−2またはその血管新生活性フラグメントもしくはそのムテインを薬学的に受容可能なキャリア中に含む、単回単位用量組成物を、冠状血管新生を必要とするヒト患者の1以上の冠状血管(IC)中または末梢静脈(IV)中に投与する工程を包含する。上記の方法において、血管神聖的に有効な量は、約0.2μg/kg
〜約48μg/kg(または絶対的な用語では、約0.008mg〜約7.2mg)の組換えFGF−2またはその血管新生活性フラグメントもしくはそのムテインを含む。さらに代表的には、血管神聖的に有効な量は、約0.3mg〜約3.5mgの組換えFGF−2またはその血管新生に活性なフラグメントもしくはそのムテインを含む。上記で同定された方法における使用に適切なrFGF−2は、配列番号2のrFGF−2またはその血管新生的に活性なフラグメントである。上記の方法の1つの実施形態では、単位用量組成物は、患者の冠状血管にICで、または末梢静脈にIVで投与される。別の実施形態では、この単位用量組成物は、本明細書中に記載されるように、ヘパリンとともに投与される。
【0048】
上記の冠動脈新血管新生を提供する方法はまた、1つ以上の冠動脈において心筋梗塞(MI)を経験したヒト患者において有益である。従って、別の局面において、本発明はまた、MIについてヒト患者を処置するための方法に関し、この方法は、上記ヒト患者の1つ以上の冠動脈血管または末梢静脈に、治療有効量のrFGF−2またはその血管新生活性フラグメントもしくはそのムテインを含む単回単位用量組成物を投与する工程を包含する。上記の方法において、代表的には、単位用量組成物は、薬学的に受容可能なキャリア中に約0.2μg/kg〜約48μg/kg(または絶対的な用語では、約0.008mg〜約7.2mg)の組換えFGF−2またはその血管新生活性フラグメントもしくはそのムテインを含む。上記同定された方法における使用に対して適切なrFGF−2は、配列番号2のrFGF−2またはその血管新生活性フラグメントである。
【0049】
血管形成を必要とする、不安定なアンギナまたは急性心筋梗塞の事象において、本明細書中に開示されている同じ用量のrFGF−2またはその血管新生フラグメントまたはそのムテインは、それらの状態を処置する際の補助治療としても有用である。従って、別の局面において、本発明は、血管形成を必要とする、不安定なアンギナまたは急性心筋梗塞について患者を処置するための改善された方法に関し、この方法は、処置が必要な患者に血管形成を提供することを包含し;この改善は、前記ヒト患者の1つ以上の冠動脈血管または末梢静脈に、治療有効量のrFGF−2またはその血管新生活性フラグメントもしくはそのムテインを含む単回単位用量組成物を投与することを包含する。上記の方法において、単位用量組成物は、薬学的に受容可能なキャリア中に約0.2μg/kg〜約48μg/kg(または絶対的な用語では、約0.008mg〜約7.2mg)の組換えFGF−2またはその血管新生活性フラグメントもしくはそのムテインを含む。上記同定された方法における使用に対する適切なrFGF−2は、配列番号2のrFGF−2またはその血管新生活性フラグメントである。
【0050】
本発明の任意の上記方法において、rFGF−2またはその血管新生活性フラグメントもしくはそのムテインは、一酸化窒素(認知された平滑筋拡張薬)の放出に関連しており、患者に投与すると患者の血圧の急激な低下を引き起こす。従って、本発明の方法において、本発明の単位用量を投与する前に、IV液体を患者に補給をする(hydrate)ことが好ましい。さらに、単位用量の安全性および許容性のために、rFGF−2投与中および投与後の積極的な液体管理もまた好まれる。結局、有効量のグリコサミノグリカン(「プロテオグリカン」または「ムコポリサッカライド」としても公知である)を投与する工程(例えば、本発明の単位用量組成物を投与する前に、ヘパリンを0〜30分投与する工程)を包含することもまた、上記の方法の範囲内である。代表的には、投与されるグリコサミノグリカン(例えば、ヘパリン)の有効量は、約10〜80U/kgであり、より代表的には、約40U/kgである。しかし、一般的には、投薬する直前に任意の一人の患者に投与されるヘパリンの総量は、5,000Uを超えない。
【0051】
EDTAが、通常の心筋収縮および心臓伝導に必要なカルシウムの強力なキレーターであるという理由で、EDTAの濃度を最小化することは、患者の安全に対して重大である
。100μg/ml未満濃度のEDTAが、ヒト患者へのICまたはIV注入によりrFGF−2の投与の安全性を最適化した。
【0052】
rFGF−2の急激な大量瞬時投与は、動物における超低血圧(profound hypotension)と関連するので、注入速度は患者の安全に対して重大である。0.5〜2mL/分での投与(代表的には、1mL/分)が、ヒト患者へのICまたはIV注入によるrFGF−2の投与の安全性を最適化した。
【0053】
本発明の単回単位用量組成物を投与することにより、CADについてヒト患者を処置することに関するフェーズIの臨床試験が実施され、本明細書中の実施例1〜3に記載される。その試験において、CADと診断された66人のヒト患者(本明細書中の実施例2の基準を満たす)が、本発明の方法に従って、単回単位用量のrFGF−2を受けた。具体的には、52人のヒト患者に約20分間にわたって、IC注入により単位用量0.33μg/kg〜48μg/kgのrFGF−2が投与された。14人のヒト患者に、約20分間にわたって、IV注入により単位用量18μg/kgまたは36μg/kgのいずれかのrFGF−2が投与された。次いで、66人の処置された患者は、当該分野で認知された評価基準の3セット:1)患者らの運動許容時間(ETT)の変化;2)シアトルアンギナ質問表(Seattle Angina Questionnaire)(これは、客観的な基準と主観的な基準の混合された組み合わせに基づく評価を提供する):および3)MRIにより評価されるような心臓における物理的変化の測定を使用して、ベースライン(すなわち、単回単位用量での処置の前)と比較して、そして単回単位用量での処置の1ヶ月後、2ヶ月後、そして6ヶ月後に再び評価された。
【0054】
実施例1〜3のフェーズIの臨床試験の66人の患者のETTを、Bruceトレッドミルプロトコールを使用して、ベースライン時、(本発明の単回単位用量組成物の)投与後1ヶ月、2ヶ月、および6ヶ月に測定した。トレッドミルプロトコールがベースライン時に使用されたものと同じでない場合、その被験体はこの分析から除外された。従って、被験体の数は、時間が経つと変化した。さらに、緊急の血管再生を有するいずれの患者も、この分析から除外された。用量は、ベースラインからのETTの平均変化が60秒よりも大きな値で増加した場合、有効であると考えられた。ETT評価の結果は、表1に提供される。
【0055】
【表1】
表1を参照すると、1ヶ月におけるベースラインからの平均変化は、すべての投与群について60秒未満であった。しかし、アンギナによりトレッドミル試験を中止する患者の割合は、すべての群において時間とともに減少した。投与後2ヶ月および6ヶ月におけるベースラインからの平均変化は、用量の多いIC群およびIV群の患者において、用量が少ないかまたは中程度のIC群よりも大きかった。用量の多いIC群(24〜48:μg/kg)およびIV群(18および38:μg/kg)における各々の6ヶ月の増加したETTの持続性(133.1秒および87.5秒)は、予想外であった。ETTの最も大きな平均の増加は、それぞれ2ヶ月および6ヶ月の107.9秒および133.1秒であり、これらは、用量の多い(24〜48μg/kg)IC群において生じた。IV群は、それぞれ2ヶ月および6ヶ月にて93.4秒および87.5秒というETTの有意な平均増加を示し、このことは、本明細書中で使用したラットおよびブタの動物モデルによっては予想されなかった。全体としては、2ヶ月におけるこの効果(ETTの増加)の持続性およびIC群とIV群の両群のその大きさは、全く予想外であった。
【0056】
本明細書中の実施例1〜3に記載されるフェーズIの臨床試験の66人のヒト患者はまた、Seattle Angina Questionnaire(SAQ)を使用して、評価された。SAQは、認可され、疾患特異的な、クオリティーオブライフの手段であり、これは以下の5つのスケールを評価する:1)「労作耐容量(exertional
capacity)」=身体的活動の限界;2)「疾患認知」=MIの懸念;3)「処置の満足感(satisfaction)」;4)「アンギナ頻度(angina frequency)」=エピソード数およびニトログリセリンの舌下使用;および5)「アンギナ安定性」=最も激しい身体的活動でのエピソード数。各々の5つのスケールの得点の可能な範囲は、0〜100であり、より高い得点は、より良いクオリティーオブライフを示す。代表的には、平均ベースライン得点(すなわち処置前)と処置後の得点との間が8ポイント以上の平均変化は、「臨床的に有意」であると認識される。しかし、本分析に
おいて、ベースラインからの得点の平均変化が、14ポイントより大きな値で増加した場合、用量は「有効」と考えられた。14が選択された(8の代わりに)理由は、別の増殖因子(VEGF)の臨床試験の2ヶ月時のプラセボ群において見られた改善を考慮したためであった。
【0057】
SAQ評価を実施する際に、ETTについて評価された同じ投与量の群に従って患者を分類した(すなわち、0.33〜2.0μg/kgIC(低);6.0〜12.0μg/kgIC(中);24〜48μg/kgIC(高);ならびに18および36μg/kgIV)。このアンケート用紙を、ベースライン時(投与前)、ならびに本発明の方法に従ってrFGF−2の単回単位用量組成物を投与された後の2ヶ月および6ヶ月に各投与量群毎に被験体に与えた。
【0058】
第1のSAQスケールは「労作能力(exertional capacity)」である。労作能力に関するデータを、本明細書中の表2に要約する。表2において反映されるように、
【0059】
【表2】
平均得点のベースラインからの変化は、3つのIC投与量群の各々について2ヶ月および6ヶ月に増加し、そして6ヶ月にはすべての投与量群(ICおよびIV)について増加した。すべての投与量レベルにおける全得点は、2ヶ月から6ヶ月の日を追うごとに増加し、投与後6ヶ月においてベースラインと比較して最も良い増加(23.2、24.1、22.9および16.5)が見られた。
【0060】
評価されるべき第2のSAQスケールは、「アンギナ安定性」であった。アンギナ安定性を要約するデータを、本明細書中の表3に示す。
【0061】
【表3】
表3によると、アンギナ安定性についての得点の変化は、各群について2ヶ月および6ヶ月の両方でベースラインと比較して増加した。投与後2ヶ月において見られるアンギナ安定性の改善(46.2、32.1、34.3、および39.6)は、6ヶ月において見られる得点よりも有意に大きかった(21.4、16.7、17.7、および23.2)。しかし、投与後、2ヶ月および6ヶ月の両方で見られる得点は、アンギナ安定性の増加においてすべての投与量が有効(>14)であることが判明したことを示した。さらに、増加の大きさおよび6ヶ月間の持続は、予想外であった。
【0062】
評価されるべき第3のSAQスケールは、「アンギナ頻度」であった。アンギナの頻度を要約するデータを、本明細書中の表4に示す。
【0063】
【表4】
表4によると、アンギナ頻度についての患者の平均得点(27.9、32.9、28.9および20.0)は、2ヶ月で、すべての投与量群について、そしてすべての投与方法(ICまたはIV)について有効量(>14)で増加した(ベースラインと比較して)。患者の平均得点は、中程度の用量(6.0〜12.0μg/kg)群についてのみ6ヶ月で増加し続け、投与後2ヶ月のピーク効果を示唆する。しかし、中程度の用量(6.0〜12.0μg/kg)群および大量の用量(24.0〜48.0μg/kg)群について、2ヶ月および6ヶ月の変化は類似しており、アンギナ頻度の6ヶ月における持続効果を示唆する。
【0064】
評価されるべき第4のSAQスケールは、「処置満足感」であった。処置満足を要約するデータを、本明細書中の表5に示す。
【0065】
【表5】
表5によると、処置の満足についての得点は2ヶ月で、中程度および大量の用量のIC群ならびにIV群について有効量で増加した。投与後2ヶ月において、中程度の用量群ICについての得点だけが14よりも大きな得点を有し、2ヶ月の処置の満足についてのピーク効果を示唆する。
【0066】
評価されるべき第5のSAQスケールは、「疾患認知」であった。疾患認知を要約するデータを、本明細書中の表6に示す。表6によると、疾患認知についての得点は、2ヶ月でベースラインから20.2〜29.2という得点まで増加し、6ヶ月で23.8〜34.0まで増加した。これらの得点は、単回単位用量組成物を本発明の方法にしたがって投与することは、2ヶ月おいてと同じくらい6ヶ月において有効である(またはより有効)と考えられた。これらの得点は、単回単位用量組成物の投与後、6ヶ月以上までの、疾患認知に対する本発明の方法の効果の持続性を示唆する。
【0067】
【表6】
本明細書中の実施例1〜3に記載されるフェーズI臨床試験のヒト患者の60人まではまた、彼らの心臓を安静時(resting)磁気共鳴画像法(MRI)スキャンを使用して評価された。安静時MRIスキャンが、患者に対して、ベースライン時に、ならびに本発明の単回単位用量組成物の投与後1ヶ月、2ヶ月、および6ヶ月に実施された。用量は、統計学的有意性(p<0.05)に基づいて「有効」と考えられた。安静時MRIスキャンにより評価される客観的な基準は以下:(1)駆出率;(2)心筋梗塞の程度(%);(3)通常の壁厚;(4)通常の壁運動(%);(5)標的壁肥厚(%);(6)標的壁の運動(%);(7)標的壁領域側副程度(%);および(8)標的領域の遅着の程度(%)である。
【0068】
安静時MRIに基づくと、「駆出率」の変化は、すべての群について1ヶ月では観察されなかった。1ヶ月におけるすべての群(n=33)についてのベースラインからの平均変化は、2.0%(p=0.042)の増加であった。2ヶ月においては、少用量のIC群(n=13)についてのベースラインからの平均変化は、8.1%(p=0.007)の増加であった;そしてすべての群について(n=54)、ベースラインからの平均変化は、3.8%の増加であった(p=0.001)。6ヶ月において、大用量のIC群(n=19)についてのベースラインからの平均変化は、5.3%(p=0.023)であった;そしてIV群(n=3)について、11.1%(p=0.087)であった;そしてすべての群(n=33)について、5.7%(p=0.001)であった。
【0069】
安静時MRIに基づくと、いずれの群、または投与後の1ヶ月、2ヶ月、6ヶ月での組合せにおけるすべての群について「心筋梗塞の程度」%の統計学的に有意な変化は、存在しなかった。通常の壁運動(%)および通常の壁厚が評価された場合、いづれの一つの群についての1ヶ月、2ヶ月、または6ヶ月でのベースラインからの統計学的に有意な変化は、存在しなかった。しかし、標的壁運動において、1ヶ月(n=60)、2ヶ月(n=54)、または2ヶ月(n=33)でのすべての群について、ベースラインからの統計学的に有意な変化は存在し、これはそれぞれ、2.7%(p=0.015)、4.4%(p=<0.001)および6.4%(p<0.001)のベースラインからの平均増加として反映された。しかし、標的壁厚においてもまた、1ヶ月(n=60)、2ヶ月(n=54)、および2ヶ月(n=33)でのすべての群について、ベースラインからの統計学的に有意な変化が存在し、これはそれぞれ、4.4%(p=0.015)、6.3%(p=
<0.001)および7.7%(p<0.001)のベースラインからの平均増加として反映された。
【0070】
MRIにより評価された次の基準は、「標的領域側副の程度」(%)であった。標的領域側副の程度におけるすべての群についてベースラインからの平均増加は、1ヶ月(n=31)、2ヶ月(n=27)および2ヶ月(n=16)において高度な統計学有意があり、ここでその増加はそれぞれ8.3%(p=<0.001)、10.9%(p=<0.001)および11.2%(p=<0.001)であった。最も大きな側副の程度の増加は、少量および中程度のIC用量に対して観察され、すなわち、1ヶ月で(それぞれ10.4%および18.3%)、2ヶ月で(それぞれ14.7%および18.0%)および2ヶ月で(それぞれ16.0%および中程度の用量に対する値はなし)であり、これは全く予想外であった。投与後1ヶ月、2ヶ月および2ヶ月において、IC大用量群について観察された標的領域側副の程度における対応する割合の増加は、それぞれ6.3%、8.0%および9.0%であった。MRIにより評価された最後の基準は、「標的領域の遅着の程度」(%)であった。標的領域の遅着の程度におけるすべての群についてベースラインからの平均減少は、1ヶ月(n=60)、2ヶ月(n=54)および6ヶ月(n=34)において高度に統計学的有意性であり、ここでその減少は、それぞ−5.8%(p=<0.001)、−8.3%(p=<0.001)および−10.0%(p=<0.001)であった。最も大きな標的領域の遅延程度の減少は、少用量のIC群に対して観察され、これは高度に予想外であった。
【0071】
従って、本発明に従ってCAD患者にrFGF−2の単一ICまたはIV注入を提供することは、その患者に、MRIおよび他の従来の基準により客観的に測定されるような統計学的に有意な身体的改善を提供した。
【0072】
(薬物動態および代謝)
FGF−2の分子構造は、細胞表面および血管の内壁でプロテオグリカン鎖(ヘパリンおよびヘパリン様構造)に結合することが公知である正に荷電したテールを含む。Moscatelliら、「Interaction of Basic Fibroblast Growth Factor with Extracellular Matrix and Receptors」Ann.NY Acad.Sci.638:177〜181(1981)を参照のこと。
【0073】
腎臓および肝臓は、rFGF−2の排泄のための主な器官である。特に、腎臓は、約60kDのタンパク質カットオフを有し、従って血清アルブミン(MW60kD)を保持する。しかし、FGF−2(146残基)は、約16.5kDの分子量を有する。従って、腎排泄が予期される。市販のウシFGF−2(bFGF−2)の放射線標識した生体分布研究において、肝臓および腎臓の両方が、IV注射またはIC注射後1時間で高い計数の放射線標識したbFGF−2を含むことが示された。公表された研究において、bFGF−2の別の組換えヨウ素化形態がラットに与えられる場合、肝臓が排泄の主な器官であると同定された。Whalenら、「The Fate of Intravenously Administered bFGF and the Effect of Heparin」Growth Factors、1:157〜164(1989)。FGF−2が、全身循環においてα2−マクログロブリンに結合すること、そしてこの複合体がクッパー細胞上のレセプターにより内部移行されることもまた公知である。Whalenら(1989)およびLaMarreら「Cytokine Binding and Clearance Properties of Proteinase−Activated Alpha−2−Macroglobulins」Lab.Invest.,65:3〜14(1991)。標識されたFGF−2フラグメントは、血漿中で見出されないが、それらは、尿中で見出され、そして細胞内分解産物に対するサイズに対応してい
た。
【0074】
前臨床試験において、本発明者らは、家畜のヨークシャーブタへの静脈内(IV)投与および冠内(IC)投与後、およびSprague Dawley(「SD」)ラットにおけるIV投与後のrFGF−2(配列番号2)の薬物動態を決定した。このブタモデルは、ICおよびIVの線形の薬物動態を示した(0.65μg/kg〜20μg/kg)。このブタモデルにおけるFGF−2の終末半減期は、3〜4時間であった。ラットモデルは、30〜300μg/kg IVの範囲にわたる線形の薬物動態を示した。ラットモデルにおけるFGF−2の終末半減期は、1時間であった。両方の種が、2コンパートメントモデルを示唆する血漿濃度を示した。
【0075】
同様に、ヒトにおいて、IVおよび/またはIC注入後のFGF−2血漿濃度は、最初の急激な曲線および最初の1時間の数対数スケールにわたるかなりの低下(分布相))を有する二次指数関数的な曲線を伴い、続いて、より穏やかな減少を伴った(排泄相)。図1Aは、血漿濃度対時間の曲線を提供する。これは、以下の8つの用量のそれぞれの関数として、配列番号2のrFGF−2のIC投与後のヒトにおけるこれらの相を示す:除脂肪体重(LBM)の0.33μg/kg、0.65μg/kg、2μg/kg、6μg/kg、12μg/kg、24μg/kg、36μg/kgおよび48μg/kg。図1Aは、20分間にわたるIC注入により投与されるrFGF−2の8つの用量についての血漿用量直線性を示す。図1Aはまた、二相性の血漿レベル低下(すなわち、最初の1時間の速い分布相、その後の排泄相(5〜7時間のT1/2と評価))を示す。配列番号2のFGF−2の血漿濃度を、ヒトFGF−2の分析のために販売された市販のELISA(R&D Systems,Minneapolis MN)により決定した。このELISAアッセイは、配列番号2のrFGF−2と100%の交差反応性を示した。FGFファミリーの他のメンバーおよび多くの他のサイトカインは、このアッセイでは検出されなかった。さらに、ヘパリンはこのアッセイを妨害しない。
【0076】
図1Bは、IC投与した36μg/kgのrFGF−2と比較した、IV投与の18μg/kgおよび36μg/kgのrFGF−2についての時間の関数としての平均FGF−2血漿濃度のプロットである。IV経路およびIC経路による36μg/kg用量について、図1Bにおける血漿濃度対時間のプロフィールは、非常に印象的である。しかし、IC経路で初回通過効果は、排除されない。
【0077】
図2は、図1Aおよび図1Bに対応するpg*分/mlでの平均FGF−2曲線下面積(AUC)のプロットである。図2は、ICまたはIV注入後の全身性rFGF−2曝露(AUC)の用量直線性を示す。特に、図2は、IC経路およびIV経路での投与後のrFGF−2に対する全身性曝露が、実質的に類似であることを示す。
【0078】
図3は、「rFGF−2注入の直前」でのヘパリン投与の時間の関数としての個々のヒト患者血漿クリアランス(CL)値(ml/分/kg)のプロットである。図3は、FGF−2血漿クリアランス(CL)へのヘパリン投与のタイミングの影響を示す。図3は、rFGF−2前100分までのヘパリン投与がFGF−2クリアランスを減少することを示すが、ヘパリン投与のための好ましい時間は、rFGF−2投与前0〜30分である。ここでFGF−2クリアランス減少へのヘパリンの効果は最大である。
【0079】
図4は、「rFGF−2注入前の分単位で」のヘパリン投与の時間の関数としての個々のヒト患者のrFGF−2用量の正規化曲線下面積(AUC)のプロットであり、そしてrFGF−2 AUCへのヘパリン投与のタイミングの影響を示す。図4は、最大のAUC/用量が、有効量のグリコサミノグリカン(例えば、ヘパリン)がIC rFGF−2注入の30分以内に、より好ましくはICまたはIV rFGF−2注入の20分以内に
、前投与された場合に、達成されることを示す。代表的には、有効量のグリコサミノグリカンは、10〜80U/kgのヘパリンである。
【0080】
投与の投与量および様式の関数としてのヒトにおけるrFGF−2についての平均薬物動態パラメーターは、本明細書中の表7に要約される。表7についていえば、ヒトにおけるFGF−2のT1/2は、低用量(0.33〜2.0μg/kg)ICでの2.2±3.7時間から18〜36μg/kg IVの用量での7.0±3.5時間までの範囲に決定される;アッセイの限界を考慮して、終末半減期は、全ての群について5〜7時間と推定される。FGF−2のクリアランスは、70kg男性について13.2〜18.2L/時間にわたる範囲である。結局、定常状態容積(Vss)は、70kgの男性あたり11.3±10.4L〜16.8±10.7Lの範囲と決定された。
【0081】
【表7】
ヘパリン様構造へのFGF−2の結合は強力である(解離定数約2×10−9M)が、特定のチロシンキナーゼレセプターへのFGF−2の結合は、およそ2桁大きい(解離定数約2×10−11M)。Moscatelliら(1991)。従って、どのような理論にも束縛されることなく、グリコサミノグリカン(例えば、ヘパリン)とのrFGF−2の複合体化は、シグナル伝達および有糸分裂誘発を増加し得、そして/または酵素的分解からrFGF−2を防御する。
【0082】
本明細書中に開示されるようなFGF−2の投与についての本発明のさらなる局面としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ETTトレッドミル分析によって測定されるような運動能力の改善;SAQの労作性能力ドメインによって測定されるような運動能力の改善;アンギナの頻度の減少;およびMRIによって測定されるような灌流の増加。特に、運動能力は、鬱血性心不全を有する患者において有意に改善された。
【0083】
以下の実施例は、例示のために提供され、限定のために提供されるのではない。
【実施例】
【0084】
(実施例1)
(第I相臨床試験において使用される単位用量のrFGF−2)
配列番号2のrFGF−2を、単位用量として、かつ薬学的組成物として処方し、そしてラット、ブタおよび最終的には、本明細書に言及される第I相臨床試験でヒトに投与した。種々の処方物を以下に記載する。
【0085】
rFGF−2単位用量を、積層した灰色のブチルゴムの栓および赤色のフリップオフ(flip−off)オーバーシールを備える3ccのI型ガラスバイアル中の液体として
提供した。rFGF−2の単位用量は、10mMのクエン酸ナトリウム、10mMモノチオグリセロール、1mM EDTA二ナトリウム二水和物(分子量372.2)、135mM塩化ナトリウム(pH5.0)中に、1.2mlの0.3mg/mlの配列番号2のrFGF−2を含んでいた。従って、絶対的な用語では、それぞれのバイアル(および単位用量)は、0.36mgのrFGF−2を含んでいた。液体形態で単位用量を含有するバイアルを2℃〜8℃で保存した。
【0086】
rFGF希釈剤を、積層した灰色のブチルゴム栓および赤色のフリップオフオーバーシールを備える5ccI型バイアル中に供給した。rFGF−2希釈剤は、10mMのクエン酸ナトリウム、10mMモノチオグリセロール、135mMの塩化ナトリウム(pH5.0)を含む。各バイアルは、5.2mlのrFGF−2希釈溶液を含み、これを2℃〜8℃で保存した。
【0087】
注入されたrFGF−2薬学的組成物を、注入容量が10〜40mlになるように、rFGF−2単位用量をrFGF希釈剤で希釈することによって調製した。EDTA濃度を100μg/mlのプリセット限界未満に維持するために、この全注入容量を、より高い体重を有する患者に対して、比例的より高い絶対量のFGF−2が投与される場合には、最大40mlに増加させた。
【0088】
(実施例2)
(rFGF−2での処置についての、冠状動脈疾患を有する患者についての選択基準)
以下の選択基準を、冠状動脈疾患を有する第I相患者へ適用した。これらの患者の活動は、最適な医学的管理にもかかわらず冠状虚血によって制限され、そしてこれらの患者は、承認された脈管再生治療についての候補でなかった。
【0089】
(包含基準:)被験体は、以下である場合に適格である:
・18歳以上の男性または女性
・冠状動脈疾患(CAD)の診断
・承認された脈管再生治療手順(例えば、血管形成術、ステント、冠状動脈バイパス移植(CABG))についての準最適な候補(またはこれらの介入を拒否する)
・改変されたBruceプロトコルを使用して少なくとも3分間運動することが可能であり、そして冠状虚血によって制限される
・薬理学的に圧迫されたタリウムセスタミビ(sestamibi)スキャンに対する、少なくとも20%の心筋の誘導性かつ可逆性の欠陥
・必要な心臓カテーテル法について臨床的に受容可能である範囲内のCBC、血小板、血清化学
・正常INR、またはCoumadinで抗凝固である場合、INR<2.0
・全ての必要な研究手順および追跡訪問を含むこの研究に参加するための、意志および書面でのインフォームドコンセントを提供し得る。
【0090】
(除外基準:)被験体は、以下である場合に適格でない:
・悪性腫瘍:治癒的に処置された基底細胞癌を除く過去十年内の悪性腫瘍の何らかの病歴、
・眼の状態:増殖性網膜症、重篤な非増殖性網膜症、網膜静脈閉塞、イールズ病、または斑状浮腫、あるいは眼科医による検眼鏡検査法:2ヶ月以内の眼内手術の病歴
・腎臓機能:年齢について調整される正常範囲未満のクレアチニンクリアランス;タンパク質>250mgまたはミクロアルブミン>30mg/24時間 尿
・IVクラス心不全(New York Heart Association)
・心エコー図、タリウムスキャン、MRIまたはゲートされプールされた血液スキャン(gated pooled blood scan)(MUGA)により駆出率<20
%
・血流力学的関連不整脈(例えば、心室細動、持続性心室性頻脈)
・重篤な弁狭窄(大動脈領域<1.0cm2、僧帽弁領域<1.2cm2)、または重篤な弁不全
・3週間以内のアンギナまたは不安定アンギナの顕著な増加
・3ヶ月以内の心筋梗塞(MI)の病歴
・2ヶ月以内の一過性虚血発作(TIA)または発作(stroke)の病歴
・2ヶ月以内のCABG、血管形成術またはステントの病歴
・2ヶ月以内の経心筋レーザー脈管再生、rFGF−2、または血管内皮増殖因子(VEGF)での処置の病歴
・妊娠の可能性または保育中の母の女性
・任意の病理学的線維症、例えば、肺の線維症、強皮症
・既知の脈管奇形、例えば、AV奇形、血管腫
・CADの症状の評価を干渉し得る任意の疾患、例えば、心膜炎、肋軟骨炎、食道炎、全身性脈管炎、鎌状赤血球症の同時存在
・改変Bruceプロトコル運動ストレス試験の実行を制限する任意の疾患、例えば、下肢の麻痺または切断、下肢の重篤な関節炎、重篤な慢性閉塞性肺性疾患(COPD)の同時存在
・30日以内(または、研究薬物の60日以内に計画される)の、調査薬剤、デバイスまたは手順の臨床試験への参加
・rFGF−2または関連化合物に対する既知の過敏症
・調査員の意見において、本研究における参加について不適切な被験体を生じる任意の条件、例えば、精神病、重篤な精神遅滞、研究員とコミュニケーションが取れないこと、薬物またはアルコール乱用。
【0091】
(実施例3)
(ヒトへ投与される組換えFGF−2(配列番号2)についての第I相臨床試験)
本実施例の第I相CAD試験は、安全性、耐容性および薬物動態についての、組換え線維芽細胞増殖因子−2(FGF−2)の、オープンラベル(open label)の段階的用量研究である。この研究を以下の2つの場所で実施した:Boston、MAのBeth Israel Deaconess Hospital(Harvard)およびAtlanta、GAのEmory University Hospital。記録は完全である。被験体を、1日目にrFGF−2の単回注入で処置し、360日間続けた;追跡は、幾人かの被験体においてはなお不完全である。
【0092】
被験体集団は、冠状動脈虚血によって運動制限され、そして確立された血管再生手順(例えば、CABG、血管形成術(ステントを用いるかまたは用いない))の1つについての準最適候補とみなされた(またはこの手順を受けたがらない)、進行したCADを有する患者からなる。主な除外基準は、悪性腫瘍、非代償性心不全もしくは20%未満の左心室駆出率、腎不全もしくは蛋白尿、および種々の眼の状態(例えば、増殖性糖尿病性網膜症、重篤な非増殖性網膜症)の病歴または疑いであった。
【0093】
66人の被験体に、この試験において配列番号2のrFGF−2を受けさせた:52人にrFGF−2をIC注入として受けさせ、そして14人にrFGF−2をIV注入として受けさせた。各被験体を、病院内で少なくとも24時間観察し、次いで、追跡訪問で360日の間(15、29、57、180および360日)、外来患者として追跡した。少なくとも4人の被験体を各用量で研究した;被験体が2日以内にプロトコールにより規定されたような用量制限毒性を経験しなかった場合、用量を増大した。薬物を、冠状動脈血液供給(IC)の2つの主要な供給源間に分割された単回の20分間の注入として、(血管形成術で既に使用されているような)患者の冠状動脈中、または末梢静脈(IV)内に
カテーテルを配置するための標準的な技法を用いて投与した。IC投与したrFGF−2の用量(μg/kg)(および患者の数)は、配列番号2のrFGF−2の0.33(n=4)、0.65(n=4),2.0(n=8)、6.0(n=4)、12.0(n=4)、24(n=8)、36(n=10)および48(n=10)であった。IV投与したrFGF−2の用量(μg/kg)(および患者の数)は、配列番号2のrFGF−2の18.0(n=4)および36.0(n=10)であった。
【0094】
アンギナ頻度および生活の質は、ベースライン(rFGF−2投与前)、ならびにrFGF−2投与の2ヶ月後および6ヶ月後にSeattle Angina Questionnaire(SAQ)により評価した。運動許容時間(ETT)は、1ヶ月目、2ヶ月目、および6ヶ月目にトレッドミル試験により評価した。休止/運動核灌流およびゲート化セスタミビ−決定安静(gated sestamibi−determined rest)駆出率(EF)、ならびに休止磁気共鳴造影(MRI)を、ベースライン、ならびにrFGF−2投与の1ヶ月後、2ヶ月後および6ヶ月後に評価した。心臓機能および灌流における変化を%で客観的に測定すると考えられたMRI測定は;(1)駆出率;(2)心筋梗塞程度(%);(3)正常壁肥厚;(4)正常運動(%);(5)標的壁肥厚(%);(6)標的壁運動(%);(7)標的壁領域側副程度(%);および(8)標的領域遅延到達程度(%)を含めた。
【0095】
4人の被験体のうち1人が、(プロトコールにより規定されるような)用量制限毒性を経験した場合、その用量で4人のさらなる被験体を調査し;誰もが毒性を経験しなかった場合、用量を増大させ、そして別の群を研究した。最大許容用量(MTD)は、9/10の被験体が許容したIC用量、すなわち36μg/kg ICとして規定した。
【0096】
注入前の注意深い流体管理を、Swan−Ganzカテーテルを用いて処方し、そして生命徴候を、投薬の間に頻繁にモニタリングした。ヘパリンを、すべての群においてrFGF−2の注入の前にIV投与した。EDTA濃度は、単位用量組成物中で100μg/mlより少なかった。投与した研究薬物の容量は、用量および被験体の体重で変化し、そして低用量で10mlから高用量で40mlの範囲であった。
【0097】
(予備的結果)
本明細書に提示した結果は未検査であり、そして66人の被験体(すべての群(1〜10)について2ヶ月の追跡を伴う)についての第3回目の中間分析、およびChiron
Drug Safetyからの1999年7月29日の重症の有害事象(SAE)レポートに基づく。最後の来院(360日目)のデータ収集および最終解析は進行中である。
【0098】
0.33μg/kg ICの開始用量を、8つの系列の群にわたって48μg/kg ICまで増大させ、この用量で、10人の被験体のうち2人が、プロトコールにより規定されたような用量制限毒性(低血圧症)を経験した。低血圧症は、すべての被験体において流体単独で管理可能であった(昇圧剤も補助デバイスもなし)。36μg/kg ICで、10人の被験体のうち1人のみが、用量制限毒性を有し、このことは、この用量を最大許容用量(MTD)として規定した。2つのさらなる群をIV注入により試験した;4人の被験体はMTDの半分(18μg/kg)、そして10人の被験体はMTD(36μg/kg)。
【0099】
低血圧症は、Yorkshireブタにおける動物モデルにより予想されたように、ヒトにおける用量制限であった。しかし、36.0μg/kg rFGF−2 ICはヒトでは耐性であった;その一方ブタでは20.0μg/kg rFGF−2 ICは2匹の動物のうち1匹で意味深い低血圧症を引き起こした。ヒトにおけるより良好な耐容性は、積極的な流体管理および全身麻酔の不在に起因した。
【0100】
1999年7月29日付けで、33の重篤な有害事象(SAE)が24/66の被験体で生じたが、用量関連ではなかった。15のSAEは、少なくとも潜在的にはrFGF−2に関連したと考えられた;調査者および医療管理者により指定された関連性の間に差異が存在したときは、より保守的な関係が指定された。SAEは5人の被験体で複数であった:01103(0.33μg/kg IC)、01106(0.65μg/kg IC)、01113(2.0μg/kg IC)、01137(36.0μg/kg IV)、02101(0.65μg/kg IC)。
【0101】
1日目の最も頻繁な処置緊急有害事象(AE)は、一時的な収縮期低血圧症および一時的な徐脈であった。低血圧症は、用量依存性であり、そして24μg/kg IC以上の用量でより頻繁に生じた;徐脈は用量依存性ではなかった。少なくとも関連する可能性があると思われ、そして用量に関連したようであった他の有害事象(AE)は、注入後最初の数日または1週間以内に生じ、そして胸の痛み、息切れ、不眠、不安、および悪心を含んだ。これらの事象は重篤度において軽度〜中程度であり、そしてほとんどは特定の介入を必要としなかった。
【0102】
IC投与されたとき、この薬物を、カテーテルを患者の冠状動脈中に配置するための(血管形成術ですでに使用されているような)標準的な技法を用い、冠状血液供給(IC)の2つの主要な供給源間に分割した単回注入として、約20分間にわたって投与した。IV投与されるとき、この薬物は、末梢静脈中に20分間にわたる注入として投与された。
【0103】
予備的な安全性結果は、重篤な事象は用量に関連しなかったことを示す。これまで、8つのIC投薬群のうち低投薬群で3人が死亡し(すなわち、0.65μg/kg(23日)、2.0μg/kg(57日)および6.0μg/kg(63日))、そして最も高い用量群で1人が死亡(すなわち、48.0μg/kg(投薬後約4ヶ月))した。死亡のうち3人は心臓;1人の死亡は、群4(6.0μg/kg)の患者で投薬の3週間後に診断された大B細胞リンパ腫に起因し、この患者は投薬の2ヶ月後に死亡した。
【0104】
急性心筋梗塞(MI)が4人の患者で生じた。すなわち、群1(0.33μg/kg)、群3(2.0μg/kg)、群4(6.0μg/kg)および群7(36.0μg/kg)の各々からの1人の患者である。複数のMIが2人の患者で生じた。すなわち、群1(0.33μg/kg)から1人および群3(2.0μg/kg)から1人である。緊急血管再形成手順(ステントを用いるかまたは用いないCABGまたは血管形成術)を、4人の患者で追跡の間に実施した:群1(0.33μg/kg)、群3(2.0μg/kg)、群4(6.0μg/kg)および群7(36.0μg/kg)の各々から1人である。
【0105】
注入の間または直後により高い用量で観察された急性低血圧症は、昇圧剤の必要なしに流体のIV投与により管理された。ヒトにおける最大許容用量(MTD)を、36μg/kg ICと規定した(対照的に、ブタでは、このMTDは6.5μg/kg ICであった)。48μg/kg ICまでのrFGF−2の用量を、積極的な流体管理でヒト患者に投与したが、10人の患者のうち2人の急性低血圧症および/または起立性低血圧症に起因して、プロトコールにより「許容されない」と規定した。注入したrFGF−2の終末半減期は5〜7時間と推定された。
【0106】
本研究における配列番号2のrFGF−2の単回IC注入または単回IV注入で処置されたヒト患者は、ETTにおいて1.5〜2分の平均増加を示した。表1を参照のこと。これは特に顕著である。なぜなら、ETTにおける30秒より大きい増加は有意であり、そして血管形成術のような代替治療を評価するための基準と考えられているからである。
SAQにより測定されるような、アンギナ頻度および生活の質は、試験した66人の患者(n=66)に対する5つのサブスケールの全部において2ヶ月で有意な改善を示した。表2〜6を参照のこと。表2〜6中、14より高い平均変化は、「臨床的に有意」と考えられた。33人のヒトCAD患者を、ベースライン、ならびに本発明の単回単位用量組成物をICまたはIV経路により受けた1ヶ月後、2ヶ月後、および6ヶ月後、静止心臓磁気共鳴画像法(MRI)により評価したとき、統計的に高度に有意な増加が、標的壁肥厚、標的壁運動および標的領域側副程度において観察され;統計的に高度に有意な減少が標的領域遅延到達程度において観察され;そして正常壁運動、正常壁肥厚または心筋梗塞程度において統計的に有意な変化は観察されなかった。
【0107】
上記の規準(すなわち、ETT SAQ、MRI)に加えて、血管形成効果が少なくとも2ヶ月継続する場合に、処置を、非常に成功したとみなす。現在の第I相研究では、予期せぬ優れた血管形成効果が、すべての投薬群において幾人かの患者で6ヶ月まで継続することが観察された。既に得られた結果に基づいて、この血管形成効果は、患者において、12ヶ月以上続き得るが、少なくとも2ヶ月は続くことが予測され、必要であれば、その時点でこの手順が繰り返され得る。
【0108】
(実施例4)
(第II相ヒト臨床試験についてのrFGF−2の単位用量および薬学的組成物)
配列番号2のrFGF−2を、本明細書で参照される第II相臨床試験においてヒトへの投与のための単位用量の薬学的組成物として処方した。種々の処方物を以下に記載する。
【0109】
rFGF−2単位用量を、積層された灰色のブチルゴム栓および赤色のフリップオフオーバーシールを備えた5ccのI型ガラスバイアル中の液体として調製した。このrFGF−2処方物は、10mMクエン酸ナトリウム、10mMモノチオグリセロール、0.3mM EDTA二ナトリウム二水和物(分子量372.2)、135mM塩化ナトリウム、pH5.0中に配列番号2のrFGF−2の0.3mg/mlを含む。各バイアルは、3.7mlのrFGF−2薬物産物溶液を含んだ(バイアルあたり1.11mgのrFGF−2)。液体形態中の得られる単位用量を−60℃未満で貯蔵する。上記に記載した単位用量を、「rFGF−2 プラセボ(placebo)」で希釈する。患者のサイズに依存して、いくつかのバイアルの内容物を組み合わせて、第II相研究のための36μg/kgの単位用量を生成し得る。
【0110】
rFGF−2プラセボを、積層された灰色のブチルゴム栓および赤色のフリップオフオーバーシールを備えた5ccのI型ガラスバイアル中の透明無色の液体として供給する。このrFGF−2プラセボは、薬物製品と外見上識別不能であり、そして以下の処方を有する:10mMクエン酸ナトリウム、10mMモノチオグリセロール、0.3mM EDTA二ナトリウム二水和物(分子量372.2)、135mM塩化ナトリウム、pH5.0。各バイアルは、5.2mlのrFGF−2プラセボ溶液を含む。単位用量とは異なり、このrFGF−2プラセボを、2℃〜8℃で貯蔵する。
【0111】
注入されるrFGF−2薬学的組成物を、rFGF−2単位用量を、rFGF希釈剤で、注入容量が第II相用に20mlであるように希釈することにより調製する。
【0112】
(実施例5)
(冠状動脈疾患を処置するためにヒトに投与されるrFGF−2(配列番号2)に対する第II相臨床試験)
冠状動脈疾患についてヒト患者を処置するためのrFGF−2の第II相臨床試験を、4つのアーム:プラセボ、0.3μg/kg、3.0μg/kg、および30.0μg/
kgの1回IC投与、を用いる二重盲式/プラセボコントロール研究として実施した。
【0113】
(第一の目的)
ベースライン(スクリーニング期間の間)から90日までの運動許容試験(ETT)時間における変化によって測定されるような、運動能力に対するrFGF−2 対 プラセボの単回IC注入の効果を比較すること。
【0114】
(第二の目的)
・AEおよび実験室パラメータにおける変化によって測定されるような、rFGF−2の安全性を評価すること。
【0115】
・第I相研究から、rFGF−2の薬物動態(PK)を確認すること。
【0116】
・以下に対するrFGF−2の効果を評価すること:
ベースラインから180日までのETT時間の変化、
生活の質(QoL)におけるベースラインからの変化:Seattle Angina Questionnaire(SAQ)によって測定されるような認知されたアンギナ、ならびに90日目および180日目でのShort−Form−36(SF−36)によって測定されるような、全身的な健康、
静止時でのベースラインからの、90日目および180日目でのタリウム/sestamibi走査によるジピリダモールを用いた薬理学的ストレス時での虚血領域サイズにおける変化。
【0117】
・被験体のサブセットにおいて、EF、標的壁運動および壁厚、ならびに再灌流に対するrFGF−2の影響を、磁気共鳴画像化(MRI)走査によって評価すること。
【0118】
(調査計画)
(全体的な研究設計および計画)
この臨床試験を、CADを有する300人の被験体における、rFGF−2の2相、多施設、二重盲式、プラセボコントロール試験として設計した。全ての適格基準を満たした被験体を、プラセボを受ける群と、rFGF−2の3つの用量のうち1つを受ける群とにランダムに割り当てた(1アーム当たり約75人の被験体)。用量は、実際の体重に基づいて、0μg/kg(プラセボ)、0.3μg/kg、3.0μg/kgおよび30.0μg/kgであった。研究薬物は、心臓カテーテル法の間の、20分間にわたる単回IC注入として投与された。被験体を、その場所での投与後、少なくとも6時間病院内でモニタリングし、次いで180日間にわたる特定の間隔で追跡した。長期の安全性を、さらなる6ヶ月間の電話による連絡およびアンケートを使用する、別個の延長プロトコールで評価した。
【0119】
(包含基準)
試験への参加のためには以下の包含基準を必要とした:
・18歳以上の男性または女性。
・冠動脈造影による主冠状動脈の60%を超える狭窄によって規定した場合の、CADの診断。
・受け入れられている画像化技術(心室造影図(ventriculogram)、MRI、シングルフォトンエミッションCT[SPECT])スキャンでの最初の通過、心エコー図[ECHO]またはマルチゲート[MUGA]核評価(multigated[MUGA]nuclear assessment))による、30%以上の駆出率。
・アンギナまたはアンギナ等価物の症状。
・医師の管理の下で、CADに関する非侵襲性治療へと移すこと。
・医師が評価した場合に、標準的な手術による血管再生手順またはカテーテルベースの血管再生手順の候補でないこと
・12ヶ月以内に乳房撮影による悪性疾患の証拠がないこと(女性)。
・全ての女性に関して、スクリーニングの1年以内の子宮頸部スミアを用いた骨盤検査。・50歳以上の全ての被験体に関して、5年以内のS状結腸鏡検査。
・40歳以上の被験体に関して、糞便グアヤクを用いた毎年の直腸検査。
・ベースライントレッドミル運動試験で少なくとも3分間にわたって運動できるが、改変Bruceプロトコルを用いて13分間より長く運動できない、そして虚血の徴候または症状によって制限される。被験体は、ある程度のアンギナもしくはアンギナ同等物の病訴を有したかまたはETTの経過の間に1mm以上のSTセグメント低下を有する。二重のベースライン試験を、少なくとも24時間の間隔を置いて、しかし2週間を超える間隔を置かずに行い、そして2つの試験の間の相違は、2つの試験の平均の20%以下であるべきである。
・ランダム化前30日以内に、安静時/負荷時のタリウム/セスタミビ(sestamibi)スキャンでの、1つの主要心筋領域(前壁、下壁、側壁または中隔)の少なくとも半分の面積を含む、中程度以上のサイズの誘導性かつ可逆性の虚血性欠損、または複数の領域における複数の誘導性かつ可逆性の虚血性欠損(この合計は、安静時/負荷時のタリウム/セスタミビスキャンでの、1つの主要領域の少なくとも半分の面積の等価物を含む)。
・ランダム化前30日以内に、心臓カテーテル法に関して臨床的に受容可能な範囲内の、全血球算定(CBC)、血小板、血清化学、プロトロンビン時間および尿検査。
・ランダム化前30日以内に、尿サンプルについてタンパク質が陰性または微量。
・ランダム化前30日以内に、血清クレアチニンが2.0mg/dL以下。
・この全ての必要な研究手順および追跡訪問を含め、試験における参加への書面によるインフォームドコンセントに同意し、そしてこれを与え得る。
・ランダム化前30日以内に、以下の年齢特異的範囲に適合する、前立腺特異抗原(PSA)(男性):
【0120】
【表8】
・ランダム化前30日以内に、胸部X線で悪性疾患の証拠がないこと。
・完全な病歴および身体検査(American Cancer Societyのガイドラインに従って行われる)によって評価した場合、ランダム化の30日以内に、悪性疾患の証拠も疑いもないこと。
・調査責任者または現場の別の調査医師の意見による、被験体の心臓血管の解剖学的構造が、侵襲性手順を用いた処置に適切でないとのことの、心臓カテーテル法による、研究1日目での確認。
【0121】
(除外基準)
・悪性疾患:過去10年以内の悪性疾患の病歴または疑い(治癒的に処置された、基底細胞癌、太陽に露出した領域の皮膚の扁平上皮癌、または頸部癌を除く)。
・腎臓の状態:
−2.0mg/dLより高い血清クレアチニンによって規定した場合の、腎臓機能不全。
−ディップスティックで1+以上のタンパク質によって規定した場合の、蛋白尿。
・眼の状態:
−増殖性網膜症、中程度または重篤な非増殖性網膜症。
−網膜の静脈の閉塞。
−脈絡膜の新生血管形成を伴う、加齢性黄斑障害。
−眼科医による検眼鏡検査での黄斑水腫。
−4ヶ月以内の眼内手術。
・心臓血管状態:
−重篤な大動脈狭窄、すなわち、1.0cm2より小さい面積。
−3週間以内の不安定アンギナ(Braunwald,1984)。
−CABG、血管形成術、一過性虚血性発作または4ヶ月以内の発作。
−3ヶ月以内の心筋梗塞。
−スクリーニングの1年以内の経心筋レーザー血管再生を用いた処置。
−外部カウンターパルセイションを用いた現行の処置。
−その被験体が明らかにプラセボを受けたことを実証し得ない限り、何らかの調査薬剤を用いた何らかの治療的血管新生試験における過去の関与。
−原発性肺高血圧または拘束型もしくは閉塞型心筋症の診断。
・一般的医療状態:
−妊娠または授乳中の母親。
−任意の病理的線維症(例えば、肺線維症、強皮症)。
−既知の血管奇形(例えば、動静脈奇形、3mmを超える血管腫)。
−追跡訪問が完了していない他の調査薬剤、ICデバイスまたは手順の臨床試験における関与。
−臓器移植歴。
−被験体を、調査者の意見において、この研究における関与に関して不適切にする、任意の組合せ状態(例えば、平均余命を12ヶ月未満に制限する、同時の医療的疾病、精神病、重度の精神遅延、検査官とコミュニケーションできないこと、薬物濫用またはアルコール濫用)。
【0122】
(治療または評価からの被験体の除外)
被験体は、権利を害することなくいつでも、研究に参加する同意を取り下げ得る。さらに、調査者は、臨床判断に従うと、取り下げることが被験体の最良の目的である場合、または被験体がプロトコルに従えない場合、被験体を取り下げ得る。
【0123】
全ての包含必要条件および除外必要条件を満たし、そして1日目に試験薬物を受けた被験体が、その後研究から取り下げられた場合、180日間の終了訪問に関して列挙された試験および評価を、可能な限りいつでも実行した。
【0124】
被験体が、研究薬物投与を中止するに充分重篤であると調査者が考えるAEを10分間を超えて発症した場合、投薬を中断し、そしてこの被験体にはさらなる研究薬物処置を受けさせなかった。この被験体は、調査者によって決定された医療処置を受け、AEが消散するかまたは安定するまで観察されたままであり、そして180日目を越えるまで追跡された。
【0125】
(施された処置)
被験体を、プラセボまたは0.3、3.0もしくは30.0μg/kg rFGF−2を受けるようにランダムに割り当てた。研究薬物を、検定された精密注入ポンプを用いて、2本の開存性冠状血管または移植片の間で分割された、20分間にわたる20mLの注入として投与した。
【0126】
(調査製品の正体)
この研究において用いたrFGF−2は、遺伝子操作された酵母において発現された、146アミノ酸の非グリコシル化モノマーの、16.5kDaタンパク質であった。rFGF−2薬物製品は、灰色の積層ブチルストッパおよび赤色のフリップオフオーバーシールを伴った5mLのI型ガラスバイアル中の透明な無色の液体として供給された。rFGF−2処方物は、10mMクエン酸ナトリウム、10mMモノチオグリセロール、0.3mM EDTA 2ナトリウム二水和物(分子量372.2)、135mM塩化ナトリウム(pH5.0)中に0.3mg/mL rFGF−2を含んでいた。各バイアルは、3.7mLのrFGF−2薬物製品溶液を含んでいた(1バイアルあたり1.11mg rFGF−2)。rFGF−2薬物製品バイアルを、−60℃以下で保存した。rFGF−2を、被験体の実際の体重に従ってプラセボで希釈した。
【0127】
プラセボは、灰色の積層ブチルストッパおよび赤色のフリップオフオーバーシールを伴った5mLのI型ガラスバイアル中に透明な無色の液体として供給された。プラセボは、外観からは薬物製品と区別できなかった;プラセボは、10mMクエン酸ナトリウム、10mMモノチオグリセロール、0.3mM EDTA 2ナトリウム二水和物(分子量372.2)、135mM塩化ナトリウム(pH 5.0)を含んでいた。各バイアルは、5.2mLのプラセボ溶液を含んでいた。このプラセボバイアルを、2℃〜8℃で保存した。
【0128】
(研究における用量の選択)
選択した用量は、前臨床データおよび早期臨床データによって、最良の効力の可能性が示唆された範囲の用量を一括した用量であった。最大用量(30.0μg/kg)の安全性は、実施例3において報告された第一相試験の結果によって支持された。
【0129】
被験体は代表的に、カテーテルが適所にある持続時間に関連する血栓症の危険性を最小にするために試験薬物の注入の前に、10分間と20分間との間のヘパリンの1回のIVボーラスを受けた。
【0130】
(効力および安全性の変数)
(評価した効力および安全性の測定値、ならびにフローチャート)
効力の一次変数は、90日目にETT時間によって測定した場合の運動能力の変化であった。効力の二次変数は、以下を含んでいた:被験体のサブセットにおける、180日目でのETT時間の変化;90日目および180日目の、SAQのアンギナ頻度スコア(AFS)、処置満足スコア(TSS)、労作能力スコア(ECS)および疾患認知スコア(DPS)、ならびにSF−36の身体的要素および精神的構成要素によって測定した場合のQoLの変化;90日目および180日目でのタリウム/セスタミビスキャンによる安静時および薬理学的負荷時の虚血面積の変化;90日目および180日目でのMRIによる、EF、標的とされた壁の厚みおよび運動、ならびに灌流の変化。
【0131】
統計分析計画を実行した時点で追加した他の分析変数は、以下を含んでいた:アンギナの発症までの時間、1mmのSTセグメント低下の発症までの時間、ならびに90日目および180日目での、アンギナの発症時の速度−圧力の積、ピーク運動時の速度−圧力の積、および1mm STセグメントの低下時の速度−圧力の積におけるベースラインからの変化。New York Heart Association(NYHA)の分類およびCanadian Cardiovascular Class(CCC)における変化を分析した。ETT時間における60秒間以上の増加を伴う被験体(「応答者」)およびETT時間における60秒間未満の増加を伴う被験体(「非応答者」)の百分率を各群について分析した。
【0132】
カナダ人の心臓血管クラス(Canadian Cardiovascular Classification)は、クラス0〜クラスIVの範囲にわたる分類スキームに基づく。以下に分類される:クラス0、患者は、アンギナもアンギナに等価な症状も経験していない;クラスI、仕事時またはレクリエーション時に激しいか、迅速であるかまたは長期の労作に伴ってのみ生じる、通常の身体活動症状を伴う;クラスII、患者は、アンギナに起因して、通常活動の軽い制限を経験する;クラスIII、患者は、アンギナに起因して、著しい活動の制限を経験する;およびクラスIV、患者は、安静時または任意の身体活動時にアンギナを発症する。
【0133】
SAQは、5つのスケールを有する、承認された、疾患特異的自己管理式質問表である:アンギナ安定性スケール(ASS)、アンギナ頻度スケール(AFS)、運動能力スケール(ECS)、処置満足スケール(TSS)、および疾患認知スケール(DPS)(Spertus JAら)。ASSは、評価期間に該当しない4週間の間隔を言及しているので、ASSはこの試験の分析には含まれなかった。各要素は、1〜100のスケールを含む;より低いスコアは、より悪い症状に関連する;8点以上の変化は、臨床的に適切であるとみなされる。SF−36は、10のスケールを有し、そして2つのまとめの成分スケール(肉体的構成要素のまとめのスケール(PCSS)および精神的構成要素のまとめのスケール(MCSS))を有する、承認された、一般的生活の質(QoL)器具である。
【0134】
核画像化の結果を、承認された半定量的グレード付けシステムを用いて、20セグメント左心室モデル(Berman DSら)において分析した。各セグメントの灌流を、5点のスケールでグレード付けした:0=正常、1=わずかに減少、2=中程度に減少、3=大幅に減少、および4=存在しない。負荷時の、割り当てられた異常領域のグレードが、安静時画像で減少または正常化した場合(可逆性スコア:負荷時スコア−安静時スコア>1)、セグメントを、可逆的欠損を有すると決定し、そして負荷時の、割り当てられた局所グレードが異常であり、そして安静時画像化で同じままである場合、固定された欠損を有すると決定した。固定された欠損を、グレード付けされたスコアの重篤度に基づいてサブグループに分けた(すなわち、軽度から中程度(1、2および3のスコア)ならびに重篤(4のスコア))。灌流の異常性および虚血の全般的程度を、20セグメントからの個々のスコアを合計することによって評価し、そしてそれぞれ、平均負荷および平均可逆性として表現した。
【0135】
安全性を、AE、実験室データおよび身体検査の結果を評価することによってモニタリングした。データおよび安全性モニタリングボード(Data and Safety Monitoring Board:DSMB)によって、ほぼ6週間毎にSAEおよび実験室試験の結果を検討した。急性心臓事象は、Clinical Events Committee(CEC)によって判断された。中心の研究室は、血管造影図、ECG、眼科評価および核スキャンの結果を検討した。
【0136】
(人口統計学的および他の被験体特性)
表8は、この試験に参加した被験体の人口統計学的特徴をまとめる。これらの特徴は、4つの処置群の間で類似していた(表8)。
【0137】
【表9】
(分析)
(運動耐容性試験)
図9は、90日目のベースラインでのETT時間、および効力の一次変数である、ベースラインから90日目までのETT時間における変化を示す。この効力の変数および全ての効力の変数の作表において、血管再生を経験してきた被験体および評価のない被験体を、他に特定しない限り、分析から除外した。運動時間の平均増加は、プラセボ群に関して44.1秒間であり、低用量群において48.5秒間であり、中用量群において65.0秒間であり、そして高用量群において49.1秒間であった。
【0138】
図9はまた、180日目でのETT時間およびベースラインから180日目までの、ETT時間における変化を示す。運動時間における平均増加は、プラセボ群において54.8秒間であり、低用量群において75.3秒間であり、中用量群において76.3秒間であり、そして高用量群において51.3秒間であった。ETTにおける改善傾向は、3または4のベースラインCCSおよび/または40以下のSAQアンギナ頻度を有する被験体において180日目に観察された。
【0139】
(シアトルアンギナ質問表)
図10は、SAQの分析を示す。8点以上の変化は、臨床的に有意とみなされ、そしてより高いSAQスコアは、より良好な臨床状態と関連する。90日目でのAFS変化スコアに関して、P値は試験全体に基づいて0.035であり、そして全てのFGFに対するプラセボの試験に基づいて0.007であった。ベースラインからの平均変化は、プラセボ群について8.1であり、低用量群について16.0であり、中用量群について20.8であり、そして高用量群について16.7である(一対(pairwise)P値=それぞれ、0.080、0.004、0.054)。180日目でのAFS変化スコアに関して、平均変化は、プラセボ群について15.3であり、低用量群について18.7であり、中用量群について22.6であり、そして高用量群について20.2であった(一対P値=それぞれ、0.44、0.089、0.25)。残りのSAQスケール、労作耐容性、処置満足感および疾患認知を、図11においてFGF処置群について示す。
【0140】
(簡易型36)
図12は、SF−36肉体構成要素要約スケール(Physical Component Summary Scale)(PCSS)および精神的構成要素要約スケール(Mental Component Summary Scale)(MCSS)についての分析を示す。90日目でのPCSSに関して、全てのFGFに対するプラセボの試験に基づくP値は、0.033であった。ベースラインからの平均変化は、プラセボ群において3.4であり、低用量群において6.0であり、中用量群において5.9であり、そして高用量群において5.9であった(一対P値=それぞれ、0.072、0.091、0.095)。180日目でのPCSSに関して、ベースラインからの平均変化における差異は、プラセボ群とFGF群との間で2.2未満であった。処置効果は、SF−36のMCSS(精神的構成要素)において検出できなかった。
【0141】
(核画像化)
プラセボ群とFGF群との間で一貫した差異は検出できなかった。
【0142】
(亜群の検査)
(運動耐容性試験)
図13(左パネル)は、3または4のベースラインCCSを有する被験体についてのETT時間を示す。3または4のベースラインCCSを有する被験体についてベースラインから90日目までの運動時間における平均変化は、プラセボ群について36.1秒間であり、低用量群について47.6秒間であり、中用量群について57.1秒間であり、そして高用量群について44.5秒間である(一対P値=それぞれ、0.59、0.31、0.69)。ベースラインから180日目までの運動時間における平均変化は、プラセボ群について33.1秒間であり、低用量群について70.7秒間であり、中用量群について75.7秒間であり、そして高用量群について41.5秒間である(一対P値=それぞれ、0.15、0.086、0.74)。
【0143】
図13(右のパネル)は、3または4のベースラインCCSを有する被験体についてのSAQスコアを示す。3または4のベースラインCCSを有する被験体についてのベースラインから90日目までのAFSにおける平均変化は、プラセボ群について5.7であり、低用量群について17.0であり、中用量群について19.5であり、そして高用量群について20.5であった(一対P値=それぞれ、0.058、0.015、0.010)。180日目に、AFSにおける平均変化は、プラセボ群について11.7であり、低用量群について17.2であり、中用量群について22.3であり、そして高用量群について21.8であった(一対P値=それぞれ、0.34、0.059、0.076)。
【0144】
図14(左パネル)は、シアトルアンギナ質問表(Seattle Angina Questionnaire)(SAQ)を用いて測定した場合に40以下のベースラインアンギナ頻度スコア(AFS)を有する被験体についてのETT時間を示す。40以下(より低いスコアは、より高いアンギナ頻度を示す)のベースラインAFSを有する被験体についてのベースラインから90日目までの運動時間における平均変化は、プラセボ群について50.3秒間であり、低用量群について83.6秒間であり、中用量群について72.1秒間であり、そして高用量群について49.8秒間であった(一対P値=それぞれ、0.16、0.32、0.98)。ベースラインから180日目までの運動時間における平均変化は、プラセボ群について56.5秒間であり、低用量群について90.2秒間であり、中用量群について84.6秒間であり、そして高用量群について55.0秒間であった(一対P値=それぞれ、0.24、0.29、0.96)。これらのデータは、ベースライン時により高いアンギナ頻度を有し、かつプラセボを受けた被験体と比較して低用量または中用量のFGFを受けた被験体についてのETT時間における、より高い平均変化を示唆する。
【0145】
図14(右のパネル)は、40以下のベースラインAFSを有する被験体についてのAFSを示す。40以下(より低いスコアは、より高いアンギナ頻度を示す)のベースラインAFSを有する被験体についての、ベースラインから90日目までのAFSにおける平均変化は、プラセボ群について12.2、低用量群について27.7、中用量群について29.7、そして高用量群について22.0であった(一対P値=それぞれ、0.017、0.004、0.10)。180日目に、AFSにおける平均変化は、プラセボ群について16.3であり、低用量群について27.4であり、中用量群について30.7であり、そして高用量群について24.6であった(一対P値=それぞれ、0.089、0.019、0.18)。ベースラインでより低いAFSを有する被験体における、低用量群および中用量群とプラセボとの間のAFSにおける差異の大きさは、臨床的に適切である
と考えられた。
【0146】
(機能分析)
(解剖学的構造)
90日目で、3.0μg/kgの投薬量群および30μg/kgの投薬量群での左心室拡張終期径(LVEDD)において有意な低下があった(それぞれ、p=0.037および0.032)。0.3μg/kgの投薬量群(p=0.13)において、改善の傾向が見られた。コントロールにおいて、LVEDDは、僅かに増加した。これは、FGF処置患者(3.0μg/kg用量群および30μg/kg用量群)での虚血の軽減および機能の改善に一致する。90日目で、0.3μg/kg用量の群(p=0.042)および30μg/kg用量の群(p=0.024)での左心室収縮末期径(LVESD)において有意な低下が存在し、そして3.0μg/kg群において改善の傾向(p=0.17)が存在した。これはまた、FGF処置患者での虚血の軽減および機能の改善に一致する。コントロールは、(LVEDDにおける増加と一致する)LVESDにおける増加を示した。この効果は、6ヶ月では確かではない。左心室(LV)の質量は、予想通り変化しなかった(なぜなら、血圧に影響はなかったので、LV質量に対する影響も予想されなかった)。
【0147】
(壁運動)
正常な壁運動は、期待範囲(30〜40%)内であり、そして変化しなかった。正常な壁厚は、期待範囲(45〜50%)内であり、そして変化しなかった。標的壁(すなわち、虚血心筋層の壁)の安静時の運動は、正常と同じであった。
【0148】
(心筋灌流)
遅延到着ゾーン(delayed arrival zone)(DAZ)は、全ての群にわたりベースラインで同じであった(平均約15%)。それは、運動誘導性の核灌流欠損(nuclear perfusion defect)(約18%)のサイズと相関する。このDAZのサイズは、全ての群において減少した。最高の減少は、3.0μg/kg群において存在した。
【0149】
(要旨および結論)
第II相試験からのデータは、被験体が、低用量(0.3μg/kg)および中用量(3.0μg/kg)のFGF−2を用いて、最も改善することを示唆する、全体的パターンを示した。
【0150】
全体的に、より症候性の患者が、最高の改善を示した。例えば、CCSが3もしくは4のベースラインおよび/またはSAQアンギナ頻度が40以下の被験体は、ETTにおいて180日目で改善に向かう傾向を示した。
【0151】
被験体群全てついて、アンギナ頻度の減少(p=0.035)が、90日目で見られた。CCSが3もしくは4のベースラインおよび/またはSAQアンギナ頻度が40以下のこの被験体は、90日目と180日目との両方で最高の改善を示した。さらに、CCSが3または4のベースラインを有する被験体は、SF−36の肉体構成要素において、90日目と180日目との両方で改善を示した。
【0152】
さらに、MRIデータは、低下したLVEDDとLVESDとによって証明されるように、FGF群における改善したLV機能の証拠を提供した。灌流分析は、FGF群において改善に向かう傾向を示した。
【0153】
SAQの効力の二次変数について、8以上の変化は、臨床的に適切であるとみなされる
。統計学的に有意な差異は、アンギナ頻度スコア(angina frequency score)(AFS)の全体的分析で見られた。臨床的に適切かつ統計学的に有意な差異は、AFSにおいて、プラセボ群と中用量の群との間で、90日目で見られた。
【0154】
SF−36の効力の二次変数について、プラセボ処置群とFGFで処置した全ての群との間の有意な差異は、肉体構成要素要約スケール(PCSS)において、90日目で見られた(0.033)。
【0155】
さらに、うっ血性心不全を有する患者のサブセットにおいて、任意の用量のFGFを用いて改善が見られた。従って、FGFは、うっ血性心不全を有する患者において、より有益であり得る。第II相研究において、プラセボを受けた患者は、それぞれ、64.6および81.3の変化を示した低域用量および中域用量を受けた患者と比較した場合、総運動時間について、ベースラインから23.2秒の変化(最小二乗平均)を90日目で示した。180日目で、プラセボは、総運動時間において、低域用量群および中域用量群についての75.4秒および72.8秒と比較した場合、27.3秒の変化を示した。この結果は、90日目での中投薬量群および低投薬量群における統計学的傾向を確立する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−53145(P2010−53145A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277091(P2009−277091)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【分割の表示】特願2002−559054(P2002−559054)の分割
【原出願日】平成14年1月25日(2002.1.25)
【出願人】(591076811)ノバルティス バクシンズ アンド ダイアグノスティックス,インコーポレーテッド (265)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【分割の表示】特願2002−559054(P2002−559054)の分割
【原出願日】平成14年1月25日(2002.1.25)
【出願人】(591076811)ノバルティス バクシンズ アンド ダイアグノスティックス,インコーポレーテッド (265)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]