説明

血管閉塞カテーテルの操作

【課題】血管内に配置されたバルーンカテーテルの膨張を制御する際、血管を安全に閉塞しながら血管壁に過度の応力を加えないような方法で、バルーンの充填を制御するのに実行可能な方法を提供すること。
【解決手段】血管の安全な閉塞を達成しながら血管壁が不可逆的に変形しないような方法で、バルーンの充填を制御する制御及び膨張装置を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2010年2月16日出願の欧州特許出願第10450019.4号に対する優先権を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本発明は、体管内に配置された血管閉塞カテーテル装置のバルーンを膨張させ、収縮させるシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
バルーンカテーテルは、多くの医療用途に使用されてきた。バルーンカテーテルは、流体の導入によって収縮状態から拡張状態にし、排気によって拡張状態から収縮状態に戻すことができるバルーンを備える。流体は、気体又は液体で構成することができる。
【0004】
バルーンカテーテルは、例えば経皮経管的血管形成術の状況で狭窄した血管をバルーン拡張するために使用される。その場合、血管カテーテルに取り付けられたバルーンは、病的に狭窄した血管部位まで血管内で前進し、バルーンは高圧(6〜20バール)で狭窄部位に配備される。これにより、主に動脈硬化性血管硬化による狭窄部が、もはや血流を損なわなくなるか、又は血流を損なう程度が低下するまで拡張する。
【0005】
しかし、バルーンカテーテルは、体管、及び特に冠状静脈洞を圧力制御下で断続的に閉塞させる状況でも使用することができる。冠状静脈洞を圧力制御下で断続的に閉塞させる方法は、例えばEP609914A1号、EP230996A2号、EP1406683A2号、EP1753483A1号、EP1755702A1号及びWO2008/064387A1号の文献に記載されている。これらの方法では、バルーンを使用することによって冠状静脈洞を周期的に閉塞して解放し、冠状静脈洞の閉塞が、閉塞期に流れを虚血領域に再分配することができるように、圧力増加を誘発し、したがって各静脈を介して血液をこれらの領域の栄養毛管内に逆還流させる。閉塞部を解放すると、逆還流した血液が流出する一方、それと同時に代謝老廃物が排出される。閉塞した冠状静脈洞内の圧力は、閉塞期、閉塞の解放、及び閉塞の発生開始時に、測定圧力値の関数としてそれぞれ測定される。
【0006】
経皮経管的血管形成術の状況でのバルーン拡張とは反対に、血管、特に冠状静脈洞の圧力制御下での断続的閉塞は、それぞれの血管領域の不可逆的変形、特に拡張を引き起こすほど高圧でバルーンを膨張させることを目的としていない。むしろ、バルーンの膨張は、バルーンが血管を十分安全な程度まで閉塞し、血液がバルーンを越えて流れるのを防止するのにちょうど良いだけ血管壁に圧力を加えるような方法で制御される。バルーンに供給される圧力が高すぎると、これは血管に強すぎる半径方向の拡張を引き起こし、それにより血管壁にかかる各機械負荷が不可逆的損傷につながることがあり、それは何らかの方法で防止すべきである。他方で、バルーンへの圧力供給が小さすぎると、血管壁を保護するが、バルーンが血管を完全には閉塞しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP609914A1号
【特許文献2】EP230996A2号
【特許文献3】EP1406683A2号
【特許文献4】EP1753483A1号
【特許文献5】EP1755702A1号
【特許文献6】WO2008/064387A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
血管内に配置されたバルーンカテーテルの膨張を制御するシステム又は方法の幾つかの実施形態は、血管を安全に閉塞しながら血管壁に過度の応力を加えないような方法で、バルーンの充填を制御するのに実行可能なプロセスを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
特定の実施形態では、血管閉塞カテーテルを操作する幾つかのシステム及び方法は、血管の安全な閉塞を達成しながら血管壁が不可逆的に変形しないような方法で、バルーンの充填を制御する制御及び膨張装置を含んでもよい。例えば、冠状静脈洞閉塞カテーテルは、冠状静脈洞を断続的に閉塞するために繰り返し膨張し、収縮するバルーン装置を含んでもよい。閉塞カテーテルの制御システムは、冠状静脈洞の血管壁に過度の応力を加える可能性を低下させる安全な方法でバルーン装置を膨張し、収縮する構成要素を有する制御及び膨張装置を含むことができる。
【0010】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細を添付の図面及び以下の説明で示す。本発明の他の特徴、目的及び利点は、図面及び説明から及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ある実施形態による、心組織を治療するシステムの一部の斜視図である。
【図2】図1のシステムの別の部分の斜視図である。
【図3】図2のシステムの制御及び膨張装置のブロック図である。 様々な図面で、同様の参照記号は同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜図2を参照すると、心組織を治療するシステム100の実施形態は、冠状静脈洞閉塞カテーテル120及び制御システム140(図2)を含むことができる。特定の実施形態では、制御システム140は、圧力制御下の断続的冠状静脈洞閉塞(PICSO)を提供するためにカテーテル120の動作を制御し、表示するために心拍センサのデータを受信するように構成することができる。冠状静脈洞閉塞カテーテル120は遠位先端部分121(図1に示す遠位端に通じる)及び近位部分131を含み、近位部分は幾つかの流体又はセンサライン133、134及び135を介して制御システム140に結合された近位ハブ132を含む。したがって、制御システム140を使用して、冠状静脈洞閉塞カテーテル120の遠位先端部分121にある1つ又は複数の構成要素を操作しながら、心臓の特徴(例えば冠状静脈洞の圧力、心電図(ECG)情報など)を示すデータを提供する1つ又は複数のセンサ信号を受信することもできる。
【0013】
簡単に述べると、使用時に冠状静脈洞閉塞カテーテル120の遠位先端部分121を心臓10の冠状静脈洞20内に配置し、その後遠位先端部分121を作動させて、冠状静脈洞20から出て右心房11に入る血流を断続的に閉塞することができる。このように冠状静脈洞20を閉塞している間に、正常時には冠状静脈洞20から出る静脈血流が、血液の欠如により損傷している心筋組織30の一部に再分配されることができる。例えば、心筋組織30の一部は、冠状動脈40における阻害35により血流の欠乏を被ることがある。その結果、局所動脈41を介した患部心筋組織30への動脈血流が有意に減少することがあり、したがって心筋組織30が虚血性又はその他の損傷を受けてしまう。さらに、動脈血流が減少するので、局所静脈21から出る静脈血流も同様に減少する。心臓10に沿った様々な領域に位置する他の分枝静脈22は血流を受け続け、それにより冠状静脈洞20を通って出る静脈血流の供給を生成することがある。幾つかの実施形態では、冠状静脈洞閉塞カテーテル120を冠状静脈洞20内に送出し、その後、動脈側の阻害35を治療する前、治療中、又は治療後に冠状静脈洞20を断続的に閉塞するように作動させることができる。このような閉塞により、局所静脈21へ、次に冠状動脈40内の阻害35により血流の欠乏を被ることがある心筋組織30の部分への静脈血流の再分配を行うことができる。したがって、正常な冠状動脈の血流を回復するために阻害35を修復又は除去する前、中、及び後に心筋組織30が改良された血流再分配を受けるという点で、虚血性又は他の損傷を受けた心筋組織30を、再分配した静脈血流で治療することができる(例えば境界帯の梗塞サイズの減少)。
【0014】
さらに、使用時に、制御システム140(図2)は、冠状静脈洞閉塞カテーテル120の閉塞構成要素(例えば膨張式バルーン122など)の自動制御を提供するように構成される。以下でさらに詳細に記載するように、制御システム140は特定のパターンに従って冠状静脈洞20内で閉塞を作動又は作動解除するように、コンピュータのメモリデバイスに記憶されたコンピュータ可読命令を実行するコンピュータプロセッサを含む。例えば、制御システム140は、冠状静脈洞の圧力に関係なく閉塞期間及び解放期間の所定のパターンの一部として、又は少なくとも一部は処置中の冠状静脈洞圧力読み取り値によって定義される圧力依存性のパターンの一部として、冠状静脈洞20内でカテーテル120の閉塞構成要素を作動させるように構成することができる。また、制御システム120は、冠状静脈洞閉塞手順の進行及び心臓10の状態を示す、時間に依存する関連データを心臓病専門医又は他の使用者に提供するグラフィカルユーザインタフェースを有する表示装置142を備えている。したがって、使用者は、グラフィカルユーザインタフェースを見ながら患者の状態及び冠状静脈洞20を断続的に閉塞する効果を容易に監視することができ、同時に冠状静脈洞閉塞カテーテル120及び他の心臓治療機器(例えば血管形成カテーテル、ステント送出機器など)を扱うことができる。本明細書の説明から、幾つかの実施形態では、正常な冠状動脈の血流を回復するために阻害35を修復又は除去する前、中、及び後に、制御システム140及び冠状静脈洞閉塞カテーテル120を心筋組織治療システムの一部として使用できることを理解されたい。
【0015】
図1をさらに詳細に参照すると、冠状静脈洞閉塞カテーテル120は、冠状動脈40の阻害35を修復又は治療する前、中、又は後に、静脈系を介して冠状静脈洞20に送出することができる。このような状況では、(阻害35の治療又は除去の結果として)正常な動脈血流を回復しながら、(阻害の結果として)動脈血流の欠乏により損傷した心筋組織30の部分を静脈血の供給により治療することができる。
【0016】
システム100は、患者の静脈系を通って前進し、右心房11に入るガイド部材110を含んでもよい。この実施形態のガイド部材110は、遠位端111(図1)と近位端(図示せず)の間に延在する管腔を有するガイドシースを備える。代替実施形態では、ガイド部材110は遠位端と近位端の間に延在する外面を有するガイドワイヤを含むことができる。任意選択で、ガイド部材110は、静脈系を通って右心房11に入る遠位端111を操縦するように、遠位端の方向を制御する操縦機構を含む。また、ガイド部材110は、遠位端111に沿って1つ又は複数のマーカバンドを含むことができ、したがって前進中に撮像装置を使用して遠位端の位置を監視することができる。
【0017】
ガイド部材110が右心房11内へと前進した後、遠位端111を冠状静脈洞20内に一時的に位置決めすることができる。そこから、冠状静脈洞20の内部に位置決めするために、冠状静脈洞閉塞カテーテル120の遠位先端部分121をガイド部材110に沿って摺動可能に前進させることができる。ガイド部材110がガイドシースを備える実施形態では、冠状静脈洞閉塞カテーテル120の遠位先端部分121は、冠状静脈洞20に向かって前進する間に、管腔の内面と摺動可能に係合することができる。ガイド部材110がガイドワイヤ構造を備える代替実施形態では、冠状静脈洞閉塞カテーテル120の遠位先端部分121が、冠状静脈洞20に向かって前進する間に、ガイドワイヤの外面上を摺動可能に前進することができる(例えばカテーテル120の管腔がガイドワイヤ上を通過する)。冠状静脈洞閉塞カテーテル120が冠状静脈洞20に到達した後、ガイド部材110の遠位端111を冠状静脈洞20から引っ込め、冠状静脈洞閉塞カテーテル120の使用中は右心房11内に留まらせることができる。
【0018】
さらに図1を参照すると、冠状静脈洞20内に位置決めされた冠状静脈洞閉塞カテーテル120の遠位先端部分121は閉塞構成要素122を含み、これはこの実施形態では膨張式バルーン装置の形態である。閉塞構成要素122は、冠状静脈洞20を閉塞するように作動させ、それにより動脈血流の欠乏により損傷した心筋組織30内への静脈血の再分配を行うことができる。以下でさらに詳細に記載するように、膨張式バルーン装置122は冠状静脈洞閉塞カテーテル120の内腔と流体連通することができ、これは次に制御システム140(図2)の空気圧サブシステムと連通している。したがって、制御システム120を使用して、冠状静脈洞内でバルーン装置122を拡張又は収縮させることができる。
【0019】
遠位先端部分121は、膨張式バルーン装置の遠位側前方に位置決めされた1つ又は複数の遠位部分129も含む。例示としての実施形態では、遠位部分129の面は概ね半径方向外側の方向であり、遠位先端の周囲に沿って相互から実質的に等間隔である。以下でさらに詳細に記載するように、遠位ポート129はすべて、冠状静脈洞閉塞カテーテル120を通って延在する1つの圧力センサの管腔と流体連通していてもよい。したがって、遠位ポート129と流体連通している圧力センサ装置を介して、冠状静脈洞の圧力を監視することができる。
【0020】
次に図2を参照すると、冠状静脈洞閉塞カテーテル120の近位部分131及び制御システム140は患者の外側に位置決めされ、その一方、遠位先端部分121は前進して冠状静脈洞20に入る。近位部分131は、一組の流体又はセンサライン133、134及び135を介して制御システム140に結合された近位ハブ132を含む。したがって、制御システム140は、冠状静脈洞閉塞カテーテル120の遠位先端部分121にある閉塞構成要素122を作動又は作動解除し、その一方で、心臓の特徴(例えば冠状静脈洞の圧力、心電図(ECG)情報など)を示すデータを提供する1つ又は複数のセンサ信号を受信することもできる。
【0021】
冠状静脈洞閉塞カテーテル120の近位ハブ132は、複数の流体又はセンサライン133、134及び135を、患者の静脈系内へと延在する冠状静脈洞閉塞カテーテル120の部分と接続する働きをする。例えば、制御システム140と近位ハブ132の間に延在する第1のライン133は流体ラインを備え、それを通して加圧された流体(例えばヘリウム、別の気体、又は安定した液体)を送出し、(例えば膨張式バルーン装置122を膨張させるために)閉塞構成要素を作動させることができる。流体ライン133は制御システム140の対応するポート143(例えばこの実施形態ではドライブ管腔ポート)に接続され、したがってライン133は、少なくとも部分的に制御システム140内に収容された制御及び膨張装置200(図3参照)と流体連通している。近位ハブ132は第1のライン133を、冠状静脈洞閉塞カテーテル120を通って膨張式バルーン装置122へと延在するバルーン制御管腔に接合する。
【0022】
別の例では、制御システム140と近位ハブ132の間に延在する第2のライン134は、バルーン装置122内の流体圧力を測定するように膨張式バルーン装置122の内部と流体連通しているバルーンセンサラインを備える。近位ハブ132は第2のライン134を、冠状静脈洞閉塞カテーテル120を通って膨張式バルーン装置122へと延在するバルーン圧力管腔に接合する。バルーン装置122の圧力は、少なくとも部分的に制御システム140に収容されている制御及び膨張装置200(図3参照)の構成要素によって監視することができる。バルーンセンサライン134は制御システム140の対応するポート144に接続され、したがって制御システム140内に配置された圧力センサがバルーン装置122内の流体圧力を検出することができる。あるいは、圧力センサを遠位先端部分121内又は近位ハブ132内に配置することができ、したがってセンサ線のみが制御システム140の対応するポート144に接続される。
【0023】
近位ハブは、制御システム140から延在する第3のライン135にも接続している。第3のライン135は、バルーン装置122の膨張時及び収縮時の両方で冠状静脈洞内の流体圧力を測定するために使用される冠状静脈洞圧力ラインを備える。近位ハブ132は第3のライン135を、冠状静脈洞閉塞カテーテル120を通ってバルーン装置122の前方にある遠位ポート129へと延在する冠状静脈洞圧力管腔に接合する。したがって、冠状静脈洞圧力管腔125及び第3のライン135の少なくとも一部は、冠状静脈洞20内の血圧を第3のライン135の近位部分に沿って圧力センサ装置136へと転送する流体充填経路(例えば生理食塩水又は別の生体適合性液体)として作動することができる。圧力センサ装置136は、(冠状静脈洞の圧力を示す)圧力測定値をサンプリングし、内部制御回路(制御システム140内に収容された1つ又は複数のコンピュータメモリデバイスに記憶された命令を実行する1つ又は複数のプロセッサを含んでもよい)に入力するために、冠状静脈洞の圧力を示すセンサ信号を制御システム140の対応するポート145へと出力する。以下でさらに詳細に記載するように、冠状静脈洞の圧力データはグラフィカルユーザインタフェース142によってグラフの形態で表示され、したがって心臓病専門医又は他の使用者は、冠状静脈洞20が閉塞状態及び非閉塞状態である間に冠状静脈洞の圧力の傾向を容易に監視することができる。任意選択で、制御システム140のグラフィカルユーザインタフェース142は、画面に数値の圧力測定値も出力することができ、したがって心臓病専門医は冠状静脈洞の最大圧力、冠状静脈洞の最小圧力、又はその両方を容易に見ることができる。代替実施形態では、圧力センサ装置136を制御システム140のハウジングに組み込むことができ、したがって第3のライン135は対応するポート145へとつながる流体充填経路であり、内部圧力センサ装置(装置136と非常に似ている)は圧力測定値をサンプリングし、冠状静脈洞の圧力を示す信号を出力する。
【0024】
さらに図2を参照すると、システム100は制御システム140にECG信号を出力する1つ又は複数のECGセンサ149を含んでもよい。この実施形態では、システム100は、心臓10に近接した患者の皮膚に接着された1対のECGセンサパッド149を含む。ECGセンサ149は、制御システム140のハウジングに沿って対応するポート149と嵌合するケーブルを介して制御システム140に接続される。以下でさらに詳細に記載するように、ECGデータはグラフィカルユーザインタフェース142によってグラフの形態で表示することができ、したがって心臓病専門医又は他の使用者は、冠状静脈洞が閉塞状態又は非閉塞状態である間に患者の心拍数及び他の特徴を容易に監視することができる。任意選択で、制御システム140のグラフィカルユーザインタフェース142は、(ECGセンサデータに基づいて画面に数値の心拍数データも出力することができ、したがって心臓病専門医は(例えば1分当たりの拍数の単位で)心拍数を容易に見ることができる。また、制御システム140が受信するECGセンサ信号は、閉塞期間の開始(例えばバルーン装置122を膨張させる開始時間)及び非閉塞期間の開始(例えばバルーン装置122を収縮させる開始時間)のタイミングを適切にとるように内部制御回路によって使用されている。
【0025】
図2に示すように、冠状静脈洞閉塞カテーテル120は、幾つかの静脈アクセス点のうちいずれか1つを使用して、静脈系を介して心臓10へと送出される。このようなアクセス点を、幾つかの実施形態ではPICSOアクセス点と呼ぶことができ、その実施例ではカテーテル120が冠状静脈洞20内で位置決めされている時間の少なくとも一部で冠状静脈洞閉塞カテーテル120を制御し、PICSO処置を実行する。例えば、ガイド部材110及び遠位先端部分121を静脈系に挿入し、上腕静脈のアクセス点、鎖骨下静脈のアクセス点、又は頚静脈のアクセス点に入れることができる。これらのアクセス点のいずれかから、ガイド部材110は上大静脈を通って右心房11内へと前進することができる。ガイド部材110は冠状静脈洞20の入口部分内へと操縦し、次にガイド部材110が右心房11内に留まるように後退させる前に、カテーテル120の遠位先端部分121がガイド部材110に沿って冠状静脈洞20内へと摺動可能に前進することが好ましい。別の例では、ガイド部材110及び遠位先端部分121を静脈系に挿入し、大腿静脈のアクセス点に入れることができる。この例では、ガイド部材110は下大静脈を通って右心房11内へと前進することができる。上述したように、カテーテル120の遠位先端部分121は、ガイド部材110が右心房11内に留まるように後退させる前に、ガイド部材110に沿って冠状静脈洞20内へと摺動可能に前進する。
【0026】
幾つかの実施形態では、血管形成バルーンカテーテル、ステント送出機器などのような経皮的冠状介入(PCI)機器を使用し、心臓の阻害35を修復又は除去することができる。PCI機器は、図2に示すように幾つかのPCIアクセス点のいずれか1つを介して動脈系にアクセスすることができる。幾つかの実施例では、PCI機器を動脈系に挿入し、大腿動脈のアクセス点、橈骨動脈のアクセス点、又は鎖骨下動脈のアクセス点に入れることができる。したがって、上述したようにシステム100の幾つかの実施形態は、静脈系へのPICSOアクセス点を使用することができ、PCIアクセス点はPCI機器を動脈系に挿入するために使用される。
【0027】
次に図3を参照すると、制御システム140の幾つかの実施形態は、カテーテル120のバルーン装置122を膨張させ、収縮させる構成要素を有する制御及び膨張装置200を含む。上述したように、制御システムはさらに、少なくとも1つのメモリデバイス(図3には図示せず)に記憶された様々なソフトウェアモジュールを実行するように構成された1つ又は複数のプロセッサ(図3には図示せず)を含んでもよい。幾つかの実施形態では、バルーン膨張及び収縮ソフトウェアモジュールをメモリデバイスに記憶して、(埋め込まれた全マイクロプロセッサのような)プロセッサの1つによって実行された場合に、制御及び膨張装置200が選択された時間にバルーン装置122を膨張又は収縮させるようにするコンピュータ可読命令を提供することができる。幾つかの実施形態では、メモリデバイスに記憶されたバルーン膨張及び収縮ソフトウェアモジュールは、冠状静脈洞の圧力測定値に基づいて冠状静脈洞が閉塞状態及び非閉塞状態にある期間を計算し、更新するカスタマイズされたアルゴリズムを実施することができる。このような状況では、冠状静脈洞20は、患者と無関係の膨張時間及び収縮時間の所定のパターンにしたがって閉塞及び非閉塞状態にはならず、冠状静脈洞の圧力測定値は、冠状静脈洞が閉塞状態及び非閉塞状態である期間を少なくとも部分的に指示する。代替モードでは、メモリデバイスに記憶されたバルーン膨張及び収縮ソフトウェアモジュールは、患者及び冠状静脈洞の圧力測定値と無関係の膨張時間及び収縮時間の所定のパターンにしたがって、冠状静脈洞20を閉塞及び非閉塞状態にすることができる。制御システム140のプロセッサは、例えば制御システム140の制御命令を実行するようにマザーボード上に配置されたマイクロプロセッサを含んでもよい。制御システム140のメモリデバイスは、例えば様々なソフトウェアモジュールを記憶する1つ又は複数のディスク、RAMメモリデバイスを有するコンピュータハードドライブ装置を含んでもよい。
【0028】
図3に示すように、制御及び膨張装置200は、バルーン装置122を迅速に膨張又は収縮させるように構成することができる。バルーン装置122は、膨張管腔202を介して制御及び膨張装置の接続部203に接続される。膨張管腔202内の圧力は、略図で示した圧力測定装置204を介して測定することができる。バルーン圧力の他の測定値は、他の圧力測定装置205により入手することができる。圧力測定装置205は、別個の圧力測定管腔206を介してバルーン122に接続される。
【0029】
制御及び膨張装置は圧力タンク207を備え、これは制御弁208又は224を介し、ライン209を介して接続部203に、又はライン210を介して流体ループに接続することができる。圧力タンク207内で優勢な圧力を測定する圧力測定装置を、参照番号232及び233で示す。さらに、停止弁212(及び任意選択で絞り弁)と並列にポンプ211が設けられる。ポンプ211と真空タンク216の間の導電接続は、停止弁214及びライン215を介して確立することができる。真空タンク216内に溜まる可能性がある凝縮物は概略的に217に示され、凝縮物ポンプ219の助けにより停止弁218を介して汲み出すことができる。接続ライン220及び221は、停止弁222を介して真空タンク216と導電接続することができる。真空タンク216内で優勢な圧力を決定するために、圧力測定装置226が設けられる。
【0030】
応急弁が223で示されている。
【0031】
流体ループへの送り込みはライン227を介して実行され、例えばヘリウムシリンダなどの流体リザーバ230を絞り弁228及び停止弁229を介してこれに接続することができる。
【0032】
以下では、制御及び膨張装置の機能モードについてさらに詳細に説明する。
【0033】
セットアップモード
セットアップモードでは、システムの全構成要素を最初に空気などで充填し、弁を閉じる。
【0034】
排気
排気モードではシステム全体から排気される。そのために、停止弁223及び229は閉じられ、他の弁はすべて開かれる。システム内に存在している可能性がある空気は、凝縮物ポンプ219の助けにより排気され、システム内に存在している可能性がある空気は矢印231に沿って逃げる。バルーン122も排気され、収縮する。
【0035】
排気した状態で、気密試験を実行することができる。特に、制御及び膨張装置、バルーン及びカテーテル、及びそれらに接続することが可能である他のボリュームの気密性をチェックすることができ、これにより構成要素は、排気状態が所定の期間にわたって維持される場合、気密であると見なすことができる。
【0036】
システムの充填
次にシステムに、流体リザーバ230からの流体、例えばヘリウムを充填する。そのために、弁208、212、214、228及び229は開状態である。他の弁はすべて閉じられる。停止弁229が開いている限り、システムはリザーバ230からのヘリウムで充填され、したがって圧力タンク27、ポンプ211、ライン210及び215、及び真空タンク216はヘリウムで均一に充填される。
【0037】
バイアス付与
充填手順が終了した後、停止弁229が閉じられ、弁212もまた閉じられる。弁208は、圧力タンク207をライン210に接続した状態のままである。システムにバイアス付与するために、ポンプ211を作動状態にし、流体を真空タンク216から圧力タンク207に押し込む。解放された流体量が圧力タンク207に到達し、真空タンク216と圧力タンク207の間で所定の圧力差が調節されるか、圧力タンク207内で所定の圧力に到達するまで、それぞれプロセスを実行する。これは、例えば、圧力タンク207内で3バールの圧力に到達する一方、真空タンク216内の圧力が0.6バールに減少するように進めてもよい。システムのバイアス付与が完了すると、弁がすべて閉じられる。
【0038】
バルーンの膨張
バルーン122を膨張させるには、圧力タンク207が接続部203に、したがってライン209を介してバルーン122に接続されるように、弁224を開く。その結果、圧力タンク207とバルーン122の間に等圧化が起こり、圧力タンク207とバルーン122の間に十分な等圧化が起きるまで弁224は開状態に維持される。十分な等圧化が達成された後、バルーン122及び圧力タンク207は同じ圧力下に、例えば1.2バールの圧力下にある。
【0039】
バルーンの排気
バルーンを排気するには、弁222を開いて弁224を閉じ、それにより圧力タンク207を接続部203から切断する。次に、バルーン122と真空タンク216の間の等圧化によってバルーン122の排気が行われるように、バルーン122を真空タンク216に直接接続する。十分な等圧化が達成されると、バルーン122及び真空タンク216は同じ圧力下にあり、圧力レベルは例えば0.8バールであるが、いかなる場合でも1バール未満である。
【0040】
バルーン122の膨張及び排気のサイクルは、任意の回数だけ繰り返すことができる。バルーン122を改めて膨張させるために、システムに再びバイアスを付与することができ、そのために弁222を閉じ、弁14を開く。上記のように、弁208は開状態であり、ここで圧力タンク207はライン210に接続され、弁224は閉じている。ポンプ211が作動状態にされると、流体は真空タンク216から吸い出され、圧力タンク207に押し込まれる。バルーン122を充填するには、弁214を再び閉じ、弁208及び224は、圧力タンク207が接続部203に接続し、したがってバルーン122に接続されるように切り換えられる。圧力タンク207とバルーン122が等圧化した後、バルーンが再び充填される。バルーンの排気は、バルーン122を真空タンク216に接続し、したがってバルーン122と真空タンク216の間に等圧化が起こるまで流体をバルーン122から真空タンク216内に流すように、弁208及び224を切り換え、弁222を開くことによって再び実行される。
【0041】
本明細書の記述から、一方では圧力タンク207との、他方では真空タンク216との十分な等圧化により、バルーン122の充填及びバルーン122の排気が両方とも簡単に実行されることは明らかであろう。特に経済的な作動モード及びエネルギー消費量の削減を可能にするように、流体は簡単に再循環される。
【0042】
安全対策として、弁208及び224は相互に対してハードウェア的にブロックされ、したがってこれらは両方とも同時に開くことができないか、又は両方とも同時に閉じることができない。
【0043】
他の安全対策として、圧力測定装置204、205、213、225、232、233及び234の測定に基づいて圧力の過負荷が検出されると、応急弁223が開く。
【0044】
システムの洗浄
洗浄目的で、弁222を開き、弁208は、圧力タンク207がライン210に接続されるような位置に配置される。他の弁はすべて閉じられる。真空タンク216内に溜まる可能性のある凝縮物はその後、真空凝縮物ポンプ219によって汲み出すことができる。
【0045】
バルーン122を周期的に充填する方法は、マイクロコントローラ内のハードウェア回路(継電器及び双安定回路がある電子配線)又はソフトウェアとして実現することができる制御アルゴリズムの形態で実現することができる。通常、実現は、上記ソフトウェアモジュールのようなソフトウェアタイプの実現である。
【0046】
制御アルゴリズムは、以下の動作を実行するために(プロセッサがコンピュータソフトウェアの命令を実行すると)以下のように機能することができる。
−バルーンが収縮状態にある状態で、圧力タンク207内の2つの異なる圧力でその後の少なくとも2回の圧力測定に基づき、カテーテルの容積を決定する。それにより、少なくとも4つの測定値(204及び205における圧力)が測定される。
−232にて所定の圧力で、204における圧力を測定する。
−204における圧力に関して所定の、又は選択された目標値が得られるまで、圧力タンク207内の圧力を段階的に上昇させる。
【0047】
これは、制御システム140内のコンピュータ可読メモリデバイスに記憶されたソフトウェア命令として実施される制御アルゴリズムの形態で実行される。幾つかの実施形態では、制御及び膨張装置200は、1回の治療中に用途及び測定データを用途別に表現し、評価するためにMMIを制御する多重プロセッサシステム、空気圧流体回路及び組み込み式PCを備えているので有利である。多重プロセッサシステムは、フェールセーフ式に安全関連の機能を監視する少なくとも2つの独立した電子回路を備える。
【0048】
本明細書に記載する幾つかの実施形態によれば、体管内に配置されたバルーンカテーテルのバルーンを充填し、それを膨張させるために、患者及び/又はカテーテルに固有の最適化された流体量を決定する方法が提供される。この方法は以下のステップ、すなわち
a)バルーンを排気するステップと、
b)定義された開始量の流体を提供し、バルーンの充填及びバルーンの開始圧力の測定にこの開始量を使用するステップと、
c)以前の量に対して増加した流体量を提供し、バルーンの充填及び充填の結果としてのバルーン圧力の測定、又はその変化量の測定に増加した量を使用するステップと、
d)測定したバルーン圧力又はその変化量を所定の目標値と比較し、バルーン圧力又はその変化量が前記目標値に到達するまで、ステップc)を繰り返すステップと、
e)最後に提供した流体量を、バルーンを膨張させる基準値として記憶するステップと
を含むことができる。
【0049】
上記方法を使用して、閉塞手順の準備中にバルーンを充填するために、患者及び/又はカテーテルに固有の最適化された流体量を決定することができる。したがって、患者の治療を実行する前に、上記方法でバルーンを充填する最適な流体量を決定することができ、決定された最適な流体量は、患者のその後の治療の基準値として使用され、バルーンカテーテル122の制御及び膨張装置200は、この方法で患者又はカテーテルに固有の値に合わせて調節される。その後の閉塞サイクル中に、上記方法を使用して決定された値を維持するか、又は治療中に生じる状況の変化を考慮に入れるために調節する。例えば閉塞した血管の圧力状態が変化したり、血管の粘弾性が変化したり、又は治療が別の血管部位に移動する場合に、患者及び/又はカテーテルに固有の決定された値を調節することが適切である。
【0050】
上記方法の開始時に、バルーン122を上記方法のその後のステップの開始点としての役割を果たす、定義された圧力レベルにするために、バルーン122を排気してもよい。ステップb)により、定義された流体の開始量が提供され、開始量はバルーンの充填に使用される。その後、前記開始量の結果となるバルーンの圧力を測定する。ステップc)により、以前の流体量を増加させることができ、増加した流体量の結果となるバルーンの圧力を測定する。決定されたバルーンの圧力を所定の目標値と比較し、バルーンの圧力が所定の目標値に到達するまで、バルーンの充填に使用する流体量を徐々に増加させてもよい。目標値は、当該患者に関係なく、例えば少なくとも70mmHg、特に約80mmHgの絶対値とすることができる。しかし、目標値は患者の関数として選択してもよく、例えば最大圧力より10%高くてもよく、その結果、それぞれの患者で閉塞中に血管が閉塞する。
【0051】
所定の目標値に到達するために、血管の粘弾性、患者依存性の他の要素及びカテーテルのタイプの関数として、バルーンの様々な強度の膨張(例えば様々な大量の導入流体)を使用することができる。本発明に対応するようにバルーン122に流体を導入する間、漸進的アプローチは、バルーン内の圧力が所定の目標値を超えるのを防止する。バルーンに導入され、目標値に対応する流体量を基準値として定義することにより、その後の膨張手順中(状況によっては)バルーン内の圧力測定を不要にすることができ、膨張手順は導入された流体量のために限定的に制御することができる。導入される流体量を制限することにより、特に許容できない圧力状態のような許容できない作動状態に対して保護しながら、膨張手順の簡単な制御が実行可能である。その後の膨張手順で基準値を調節する場合、バルーン圧力を連続的に決定することができ、したがって目標値からのバルーン圧力の逸脱を検出することができ、それにより検出された逸脱が所定の許容限度を超える場合に、基準値が調節される。
【0052】
幾つかの実施形態では、目標値を保持することばかりでなく、安全関連の上限を超えることに関しても、バルーンの圧力を監視しなければならない場合、連続的な圧力測定も有用である。このような上限は、カテーテルの作動安全性に関して、例えばバルーン又は冠状静脈洞血管の破裂に関して、許容可能と見なされる値を見極め、例えば90mmHgと120mmHgの間の値を有することができる。上限値を超えた場合、システムを即座に停止することができる。
【0053】
代替実施形態によれば、バルーン内で優勢な絶対圧の代わりに、バルーン圧力の変化量を決定し、分析してもよい。バルーンが血管壁に接触する程度までバルーンが膨張し、それにより血管壁に近づくバルーンと血管壁との間の小さいギャップ中の血流が特徴的な流れの状態を引き起こし、その結果、バルーン内の圧力が変化すると、圧力の変化が生じることがある。このような圧力の変化は、バルーンが血管壁に到達したことを示す。
【0054】
幾つかの実施形態によれば、上記ステップb)からd)は、開始量の使用、及びバルーン開始圧力に起因するバルーン開始容積、及びそれぞれ漸進的に増加する流体量の使用、及びそれぞれのバルーン圧力に起因するバルーン容積から圧容積曲線を確立するステップを含んでもよい。圧容積曲線により、最適なバルーン充填への漸進的なアプローチを簡単な方法で観察し、追跡することが実行可能であり、圧容積曲線の経路は通常、バルーンがまだ血管壁に接触していない第1の領域では、導入される流体の体積がほぼ一定又はわずかに増加する圧力で上昇し、バルーンが血管壁に突き当たる第2の領域では、導入される流体の体積が増加する毎に、バルーンの内圧が有意に上昇するような経過をとる。
【0055】
幾つかの実施形態によれば、バルーン122は、上記ステップc)を実行するか、繰り返す度に、事前に排気してもよい。このような動作により、バルーン圧力の目標値に漸進的に近づく過程で、バルーン122に導入される流体量が漸進的に増加する毎に開始状態が確実に定義され、バルーン122は排気される毎に、以前の量に対して増加した流体量で充填される。排気手順毎に同じ排気状態を達成するために、バルーンの排気中にバルーン圧力を測定することができ、所定の負圧に到達するまで前記排気が実行される。所定の負圧は排気毎に同じになるように選択することができる。バルーン122の排気中に、バルーンの排気を担当している負圧源内で圧力を追加的に測定することもできる。所定の負圧が達成されたか否かを監視するために真空タンク216内の圧力を測定できるので有利である。
【0056】
また、バルーン122に導入される流体量が増加する度に、事前にバルーン122が排気される結果、本発明による方法の過程でバルーン122を定期的に収縮させ、したがって当該体管(例えば幾つかの実施形態では冠状静脈洞)内の流れの長すぎる障害又は中断を防止することもできる。
【0057】
特定の実施形態によれば、増加する毎に同じであることが好ましい値だけ、流体量の増加を漸進的に実行できることが規定される。
【0058】
幾つかの実施形態によれば、バルーン122の膨張は、開始量の流体及びそれぞれ増加する流体量が圧力タンク207に投与され、バルーン122が圧力タンク207とバルーン122の間の十分な等圧化によってのみ充填されるということで実行される。したがって流体はバルーンに直接充填されるのではない。何故なら、そうすると、誤動作の場合に制御されていない量の流体がバルーンに入るという危険を伴うからである。好ましく規定されているように、流体が最初に圧力タンク207に投与されると、流体量を精密に制御することができ、誤動作しても、その結果、圧力タンク207が過度の量で充填されるだけであるが、これはバルーン122の膨張前に検出又はチェックされる。それぞれ規定された量の流体が圧力タンク207に投与された状態で、バルーン122の充填は、圧力タンク207とバルーン122の間の接続部を開き、したがってバルーン122を圧力タンク207とバルーン122との間の十分な等圧化によってのみ充填することによって簡単に実行される。
【0059】
例示的動作モードによれば、圧力タンク207への所望の量の流体の投与を制御するために、圧力タンク207内で測定した圧力を使用することができる。基準値として記憶される流体の量に関して、これは、圧力タンク207の充填手順の制御を簡略化するように、基準量の流体で圧力タンク207を充填したことにより優勢である圧力が基準圧力として記憶され、基準圧力に到達するまで、充填を実行するという意味である。
【0060】
他の動作モードによれば、充填のために提供されたカテーテル管腔202とは別個のカテーテル管腔206を介して、バルーン圧力を測定することが規定される。これは、特に充填のために提供されたカテーテル管腔内でバルーン圧力も測定する場合に、安全性の向上につながる。この方法で、2つの独立した圧力測定が使用可能であり、これらの圧力値を比較することから、起こる可能性のある誤動作を結論づけることができる。
【0061】
本明細書で述べた特定の実施形態によれば、バルーンカテーテル120のバルーン122を膨張させ、排気する方法が提供され、ここでバルーン122は、膨張のための正圧源及び排気のための負圧源に接続され、正圧で流体が充填される圧力タンク207が前記正圧源として提供され、バルーン122の膨張が圧力タンク207とバルーン122の間の十分な等圧化によってのみ実行されることを特徴とする。バルーン122の膨張が圧力タンク207とバルーン122の間の十分な等圧化によってのみ実行されることにより、最大圧力を超えたバルーン122の過剰充填のような誤動作を効果的に回避することができる。圧力タンク207は最初に所定の流体量で充填され、前記流体量は、その結果としてバルーン122内が所定の充填状態及び圧力状態になるように測定される。予め充填した圧力タンク207とバルーン122の間の接続部が開かれると、圧力タンク207とバルーン122の間の十分な等圧化によりバルーン122の所定の充填状態が調節され、したがって体管(例えば冠状静脈洞)が閉塞される。バルーン122の充填が圧力タンク207とバルーン122の間の十分な等圧化によってのみ実行されることで、充填中に別個の調整及び制御措置を不要にすることができ、その後の等圧化により、最初に圧力タンク207に投与された流体量のみがバルーン122の接続ラインに到達するということから、バルーンの許容できない充填状態を防止することができる。
【0062】
膨張時間を監視すると、追加の制御を実行できるので有利である。膨張時間が例えば0.2秒のように下限値より低い場合は、エラーメッセージが生成されるか、システムが停止する。膨張が早すぎると、血管が損傷することがある。膨張時間が例えば0.50秒のように所定の上限値より高い場合も、エラーメッセージが生成されるか、又はシステムが停止する。継続時間が長すぎる膨張は、それぞれの血管中の血流が妨げられる時間が長すぎることがある。
【0063】
収縮時間を監視すると、他の制御を実行できるので有利である。収縮時間が例えば0.5秒のような所定の下限値より低い場合は、エラーメッセージが生成されるか、システムが停止する。バルーンが潰れるのが早すぎると、これは場合によっては血管の損傷につながることがある。
【0064】
幾つかの実施形態では、バルーンの排気及び膨張を含むサイクルを、以下のステップのシーケンスによって実行できるので有利である。
a)バルーンを負圧源に接続して、特に所定の負圧までバルーンを排気する。
b)バルーンと負圧源の間の接続部を中断する。
c)所定の流体量を圧力タンク内に投与し、したがって正圧で圧力タンクに流体を充填する。
d)圧力タンクとバルーンの間の接続部を開き、それによりバルーンの膨張は、圧力タンクとバルーンの間の十分な等圧化によってのみ実行される。
e)十分な等圧化が生じた後、圧力タンクとバルーンの間の接続部を閉じる。
【0065】
この方法の例示的な動作モードでは、前記負圧源として真空タンク216を使用することができ、流体は真空タンク216と圧力タンク207とバルーン122の間で再循環することが好ましく、したがって複数の膨張及び排気サイクルであっても、新しい流体をループに供給する必要がないという利点を提供する。これに関して有利な動作モードは、圧力タンク207の充填が、負圧源を形成する真空タンク216からの流体の吸引を含むことを規定する。
【0066】
幾つかの状況では、圧力タンク207の充填が、圧力タンク207と真空タンク216の間に配置されたポンプ211の助けにより実行されるとさらに規定される。
【0067】
流体システムは、圧力タンク207と、ポンプ211と、真空タンク216と、バルーン122とを備え、接続ラインは、全構成要素の十分な等圧化時にシステム内の圧力が2バールより小さいような流体の量で充填されるということで、上記方法を実行できるので有利である。これは動作の安全性の有意な向上につながる。何故なら、安全弁及び他の安全装置のすべてが故障しても、制御されない流体量がバルーン122に確実に入らないように確保されるからである。最も極端な事例では、弁の故障時に全システム内で等圧化が起こると、その結果、システム内に存在する流体の全体的な量により、2バール未満の圧力になり、したがってバルーン122のそれに応じた収縮状態が入手される。
【0068】
他の態様によれば、制御システム140の制御及び膨張装置200は、バルーンカテーテル120の膨張管腔202(図2の駆動管腔133も参照)への接続部を備えることができ、膨張管腔202への接続部が真空タンク216及び圧力タンク207と交互に接続可能であるように、切り換え弁が配置される。好ましい方法では、圧力タンク207は膨張管腔202への接続部、及びポンプ211を介して真空タンク216と交互に接続可能であると規定される。
【0069】
幾つかの実施形態では、膨張管腔とは別個のカテーテル管腔への接続部が提供され、これは圧力測定装置に接続される。
【0070】
幾つかの実施形態では、圧力タンク207、ポンプ211及び真空タンク216は、カテーテルの膨張管腔202と一緒に流体の閉ループを形成することが好ましい。閉ループは、ループを流体で充填する接続部を備えることが好ましい。
【0071】
幾つかの実施形態によれば、バルーンカテーテル120の膨張制御装置が提供され、これは流体の圧力タンク207と、流体を圧力タンク207に投与する投与ユニット(例えばポンプ211)と、切り換え可能な弁24を介して圧力タンク207に接続することができる、バルーンカテーテル120の充填管腔への接続部202と、バルーンカテーテル120のバルーン122内で優勢な流体圧力を測定する少なくとも1つの圧力測定装置と、圧力測定装置の測定値が供給され、圧力測定値の関数として定義された流体量を圧力タンク内に投与するために投与ユニットと協働する制御回路とを備える。
【0072】
1つの態様では、制御回路は切り換え可能な弁と協働し、したがって投与ユニットが流体を圧力タンク内に投与すると、切り換え可能な弁が閉じられる。投与ユニットは、例えばポンプで構成することができる。
【0073】
他の態様によれば、圧力タンク内で優勢な流体圧力を測定する圧力測定装置を備えることができ、その測定値は制御回路に供給され、高い圧力目標値の記憶装置を備え、圧力タンク内で測定された圧力が圧力目標値に到達すると、圧力タンクへの流体の投与が終了するように、制御回路が投与ユニットと協働する。
【0074】
本発明の幾つかの実施形態について説明してきた。しかし、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更ができることが理解される。したがって、他の実施形態も添付の特許請求の範囲に入る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体管内に配置されたバルーンカテーテルのバルーンを充填して、該バルーンを膨張させる流体の量を決定する方法であって、
a)前記バルーンを排気するステップと、
b)定義された開始量の流体を提供し、前記バルーンの充填及び前記バルーンの開始圧力の測定にこの開始量を使用するステップと、
c)前記以前の量に対して増加した流体量を提供し、前記バルーンを充填するために前記増加量を使用し、及び前記充填又はその変化量に起因する前記バルーン圧力を測定するステップと、
d)前記測定したバルーン圧力又はその変化量を所定の目標値と比較し、前記バルーン圧力又はその変化量が前記目標値に到達するまで、ステップc)を繰り返すステップと、
e)最後に得られた流体量を、前記バルーンを膨張させる基準値として記憶するステップと
を含む方法。
【請求項2】
ステップb)からd)が、前記開始量の使用、及び前記バルーン開始圧力に起因するバルーン開始容積、及びそれぞれ前記漸進的に増加する流体量の使用、及び前記各バルーン圧力に起因する前記バルーン容積から圧容積曲線を確立するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップc)を実行するか、又は繰り返す度に、事前に前記バルーンが排気される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記バルーンの前記排気中に前記バルーン圧力が測定され、所定の負圧に到達するまで前記排気が実行され、前記所定の負圧が、排気する度に同じになるように選択することが好ましい、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記流体量の前記増加が、増加する毎に同じであることが好ましい値だけ漸進的に実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記開始量の流体及びそれぞれ増加した流体量が圧力タンク内に投与され、前記バルーンが前記圧力タンクと前記バルーンとの間の十分な等圧化によってのみ充填される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記圧力タンクへの前記所望の量の流体の前記投与を制御するために、前記圧力タンク内で測定した前記圧力を使用する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記バルーン圧力が、充填のために提供された前記カテーテル管腔とは別個のカテーテル管腔を介して測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
バルーンカテーテルのバルーンを膨張及び、収縮させる方法であって、前記バルーンが膨張のための正圧源及び排気のための負圧源に接続され、前記正圧源として、正圧で流体が充填される圧力タンクが設けられ、前記圧力タンクと前記バルーンの間の十分な等圧化により前記バルーンを排他的に膨張させるステップを含む方法。
【請求項10】
a)前記バルーンを排気するために前記バルーンを負圧源に接続するステップと、
b)前記バルーンと前記負圧源との間の前記接続部を遮断するステップと、
c)所定の流体量を前記圧力タンク内に投与し、したがって正圧で前記圧力タンクに流体を充填するステップと、
d)前記圧力タンクと前記バルーンの間の前記接続部を開き、それにより前記バルーンの前記膨張が、前記圧力タンクと前記バルーンの間の十分な等圧化によってのみ実行されるステップと、
e)十分な等圧化が生じた後に、前記圧力タンクと前記バルーンの間の前記接続部を閉じるステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記圧力タンクの前記充填が、前記負圧源を形成する真空タンクから流体を吸引するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記圧力タンクの前記充填が、前記圧力タンクと前記真空タンクの間に配置されたポンプの助けにより実行される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記流体システムが、前記圧力タンクと、前記ポンプと、前記真空タンクと、前記バルーンとを備え、全構成要素の十分な等圧化時に前記システム内の前記圧力が2バールより小さくなるような流体量で前記接続ラインが充填される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記バルーンカテーテルが、冠状静脈洞の圧力制御下での断続的閉塞のために、前記冠状静脈洞に挿入される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
バルーンカテーテルの膨張管腔の接続部と、圧力タンクと、真空タンクと、ポンプとを備え、前記膨張管腔の前記接続部が前記真空タンク及び前記圧力タンクに交互に接続可能であるような態様で切り換え弁が配置される、バルーンカテーテルの制御及び膨張装置。
【請求項16】
前記圧力タンクが、前記膨張管腔の前記接続部に、及び前記ポンプを介して前記真空タンクに二者択一的に接続可能である、請求項15に記載の制御及び膨張装置。
【請求項17】
前記膨張管腔とは別個のカテーテル管腔の接続部が提供され、圧力測定装置に接続される、請求項15に記載の制御及び膨張装置。
【請求項18】
前記圧力タンク、前記ポンプ及び前記真空タンクが、前記カテーテルの前記膨張管腔と一緒に流体の閉ループを形成する、請求項15に記載の制御及び膨張装置。
【請求項19】
前記閉ループが、前記ループに流体を充填する接続部を備える、請求項18に記載の制御及び膨張装置。
【請求項20】
前記真空タンクに接続された凝縮物ポンプをさらに備える、請求項15に記載の制御及び膨張装置。
【請求項21】
バルーンカテーテルの制御及び膨張装置であって、流体の圧力タンクと、流体を前記圧力タンク内に投与する投与ユニットと、制御弁を介して前記圧力タンクに接続することができる前記バルーンカテーテルの前記充填管腔の接続部と、前記バルーンカテーテルの前記バルーン内で優勢な前記流体圧力を測定する少なくとも1つの圧力測定装置と、前記圧力測定装置の測定値が供給され、前記圧力値の関数として定義された流体の量を前記圧力タンク内に投与するために前記投与ユニットと協働する制御回路とを備える制御及び膨張装置。
【請求項22】
前記制御回路が前記制御弁と協働し、前記投与ユニットが流体を前記圧力タンク内に投与すると前記制御弁が閉じられる、請求項21に記載の制御及び膨張装置。
【請求項23】
前記投与ユニットがポンプを備える、請求項21に記載の制御及び膨張装置。
【請求項24】
前記圧力タンク内で優勢な前記流体圧力を測定する圧力測定装置を備え、その測定値が前記制御回路に供給され、高い圧力目標値の記憶装置を備え、前記圧力タンク内で測定された前記圧力が前記圧力目標値に到達すると、前記圧力タンクへの流体の投与が終了するように、前記制御回路が前記投与ユニットと協働する、請求項21に記載の制御及び膨張装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−245299(P2011−245299A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−115380(P2011−115380)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(510049746)ミラコー メディカル システムズ ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】