説明

血糖計及び血糖値測定方法

【課題】血糖計の周囲の温度変動を確実に検出し、適切な環境下で血糖値計測を実施できる。
【解決手段】血糖計の筐体内部に血糖計の筐体内温度を計測するための内部温サーミスタを設け、血糖計の筐体中心から離れた位置に、外気温を計測するための熱容量の小さい部品で構成した外気温サーミスタを設けた。そして、夫々の温度差から温度変動が許容範囲内であるか否かを判定し、許容範囲を超えていれば、血糖値計測直前までなら温度変動が許容範囲内になるまで処理を一時停止し、血糖値計測中なら血糖値計測処理を中断する処理を、血糖計のマイコンに含ませた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖計及び血糖値測定方法に適用して好適な技術に関する。
より詳細には、血糖計の周囲の温度変動を迅速且つ確実に検出し、温度変動が安定した状態で正確な血糖値測定を実現する血糖計及び血糖値測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、糖尿病は膵臓のインスリン分泌異常や、インスリンに対する感受性低下に起因する。完全にインスリン分泌が停止した1型の糖尿病患者では食事前に血糖値を測定し、その値に応じてインスリンを投与する必要がある。
従来、家庭内で患者自ら或はその家族によって血糖値を簡便に測定するために、出願人は、小型で自己測定を目的とした血糖値測定装置(以下「血糖計」)を開発し、製造販売している。また、出願人は病棟向けに複数の患者に対応可能な各種の管理機能を備えた血糖計の開発を進めている。
【0003】
血糖計は、血液を試薬に接触させて生じる生化学反応により、グルコース値を色濃度や電気信号に変換する原理を用いて、血糖値を測定する機器である。このような血糖計で使用される試薬の多くは、血糖値測定時点の周囲の温度に応じて、血液との反応速度が変化する。このため、血糖計は温度センサを内蔵し、測定時に得られた物性値を血糖値に換算する際に、温度補正演算を行う。
なお、本発明に関係すると思われる先行技術文献を特許文献1として記す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−10317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に自己測定用の血糖計では、例えば冬場に寒い部屋から暖かい部屋へ血糖計を持ち込む、というような、急激な温度変化が生じた環境の中で利用する、という状況がしばしば生じる。このような状況で血糖値計測を実施するとどうなるか、説明する。
試薬が染み込まれた血糖測定チップ自体は、血糖計の外部に露出するように装着されており、熱容量が小さい物品であるので、比較的早期に周囲の温度に追従する。一方で、血糖計自体は相応の容積を備える機器であるので、高い熱容量を備える。温度センサは血糖計内部の回路基板上に設けられるので、周囲の温度の変化に対し、緩やかに追従する。つまり、周囲の温度が急激に変化した直後は、温度センサが周囲の温度を正確に計測できない、という状況が発生する。したがって、温度補正が正確に働かず、血糖計が誤った血糖値を測定してしまう。
以上のように、血糖計の使用の際に血糖値計測に好ましくない温度変動が生じることが想定される。
【0006】
特許文献1では、筐体に内蔵された温度センサを外郭体に近接させて配置することで、外気の温度を計測し、正しく温度補正ができる血糖値計測機器の技術内容が開示されている。
しかしながら、血糖計の筐体内部に残っている熱量の影響は測定に及ぶので、単に外郭体の温度を計測するだけでは、温度補正が正確にならない虞がある。
望ましくは、血糖計の筐体が外気の温度と馴染む、つまり外気の温度とほぼ等しくなることが求められる。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、周囲の温度変動を迅速に検出し、温度変動に従って血糖値計測動作を制御することができる、新規且つ有用な血糖計及び血糖値計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の血糖計は、測定チップが装着された状態で血液を測定チップに付着させて血液中のグルコース量に応じた信号を出力する血糖値測定部と、測定チップが血糖値測定部に装着されたか否かを確認するチップ装着処理部と、測定チップに血液が付着したか否かを確認する点着待機処理部と、血糖値測定部から出力される信号から血糖値を得る測定処理部と、チップ装着処理部と点着待機処理部と測定処理部が収納される筐体と、筐体の内部に設けられる内部温センサと、内部温センサから離れた筐体の周縁部分に設けられる外気温センサと、内部温センサと外気温センサの温度差を所定の閾値と比較して、筐体周囲の温度変化が血糖値を測定するに適しているか否かを判定する温度チェック処理部と、チップ装着処理部或は点着待機処理部が稼動している時に温度チェック処理部が血糖値を測定するに適していないと判定した場合に、温度チェック処理部が血糖値を測定するに適していると判定するまでチップ装着処理部或は点着待機処理部の処理を一時停止する制御部とを具備する。
【0009】
即ち、血糖計の筐体内部に血糖計の筐体内温度を計測するための内部温センサを設け、血糖計の筐体中心から離れた位置に、外気温を計測するための熱容量の小さい部品で構成した外気温センサを設けた。そして、夫々の温度差から温度変動が許容範囲内であるか否かを判定し、許容範囲を超えていれば、血糖値計測直前までなら温度変動が許容範囲内になるまで処理を一時停止し、血糖値計測中なら血糖値計測処理を中断するように、血糖計を構成した。
このように血糖計を構成することで、血糖計の周囲の温度変動を確実に検出し、適切な環境下で血糖値計測を実施できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、周囲の温度変動を迅速に検出し、温度変動に従って血糖値計測動作を制御することができる、新規且つ有用な血糖計及び血糖値計測方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の例である、血糖計の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の例である、血糖計の上面図である。
【図3】光学測定部の模式図である。
【図4】血糖計の内部ブロック図である。
【図5】血糖計の機能ブロック図である。
【図6】血糖計の全体処理を示すフローチャートである。
【図7】チップ装着処理を示すフローチャートである。
【図8】点着待機処理を示すフローチャートである。
【図9】測定処理を示すフローチャートである。
【図10】温度チェック処理を示すフローチャートである。
【図11】温度チェック処理の条件を説明する概略図である。
【図12】例外判定処理を示すフローチャートである。
【図13】別の実施形態の測定処理のフローチャートである。
【図14】別の実施形態の例外判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図1乃至図14を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態の例である、血糖計の外観斜視図である。
図2は、本発明の実施形態の例である、血糖計の上面図である。
【0014】
血糖計101は、医師や看護師或いは患者本人等が、携帯電話のように手に持って操作して、血糖値を計測するための携帯型機器であり、このために片手で容易に持てる形状及び重量で形成されている。
血糖計101は、単に血糖値を測定するだけでなく、付加的な機能として、患者の氏名やIDを確認し、患者毎に測定値データを格納し、必要である場合には患者毎に投与するべき適切な薬剤の確認等を行うことができる。
【0015】
血糖計101の筐体102は、細長い合成樹脂の容器である。筐体102の長手方向の先端には、血糖値等を測定する金属でできた円筒形状の光学測定部103が設けられている。血糖値測定部ともいえる光学測定部103の内部には、後述するLEDとフォトダイオードが内蔵されている。
光学測定部103は血糖測定チップ(以下「測定チップ」)の着脱が可能なように形成されている。使用済みの測定チップは、イジェクトレバー104を操作することで光学測定部103から取り外すことができる。
また、筐体102の前面には測定結果や確認事項等を表示する、LCDよりなる表示パネル105が設けられている。表示パネル105の横には、複数のボタンを有する操作パネル106が設けられている。
血糖計101の内部には、この他に筐体102に内蔵される図示しないリチウムイオンバッテリや、バーコードを読み取る図示しないバーコードリーダユニット、患者データや計測した血糖値データ等の送受信を行う図示しないIrDAインターフェース等を有するが、本発明に直接的には関係しないので詳細は割愛する。
【0016】
図2には、血糖計101の外観からは直接的には見えないものの、測定器本体の内部にはプリント基板である回路基板202が内蔵されている。回路基板202には周知のマイコンが実装されている。マイコンはリチウムイオンバッテリの電力で動作し、操作パネル106から操作命令信号を受け、光学測定部103の内部のLEDを駆動し、フォトダイオードを通じて所定の血糖値測定を行い、表示パネル105に測定結果等を表示する。
【0017】
血糖計101の基本的な血糖測定の仕組みは、従来技術と同様である。以下、概略を簡単に説明する。
光学測定部103に測定チップを取り付け、測定対象者の血液を測定チップに吸引させる。この測定チップには、ポリエーテルサルホン等の多孔質膜でできた試験紙511が内蔵されている。そして、測定チップに吸引された血液は、試験紙511に到達すると、試験紙511に含まれている試薬と反応して、発色する。この発色反応には数秒から10数秒前後の時間を要するが、この反応は、周囲の気温によって影響を受ける。
発光素子であるLEDが発光する光を試験紙に当て、試験紙からの反射光を受光素子であるフォトダイオードにて受光する。そして、所定の反応時間を経過した後に、受光素子から得られたアナログの受光強度信号をデジタル値に変換した後、このデジタル値を血糖値に変換して表示パネル105に表示する。
なお、血糖値計側の仕組みは、発色試薬を利用した前記光学測定方式に限らず、電気化学センサー方式など、従来から血糖測定に使用され得る仕組みを採用することができる。
【0018】
前述のように、血糖値を測定する際、気温の高低によって試験紙に含まれている試薬の反応時間が変化する。このため、血糖計101内部のマイコンの構成要素であるROMには、周囲の気温に対する反応の補正値が記憶されている。そして、ROMに格納されているマイコンのプログラムは、血糖値計測時の気温を検出して適切な計測値を算出するように構成されている。
ところが、測定中に気温が変化してしまうと、この補正値が正しく導き出せない。このため、誤った血糖値を導き出してしまう虞が極めて高い。つまり、測定中に気温が変化してはならない。勿論、測定の直前においても、気温に変化が生じていれば、その変化が落ち着くまで血糖値計測処理は控えなければならない。
【0019】
血糖計101の周囲の気温が安定していることを正しく検出するために、血糖計101には二つの温度計測素子が設けられている。
一つは、血糖計101の筐体の中心部分から離れ、筐体から熱的に独立した位置に設けられ、外気の温度(以下「外気温」)を計測する外気温センサである。
もう一つは、血糖計101の筐体の中心部分に設けられ、筐体内部の温度(以下「内部温」)を計測する内部温センサである。
この二つの温度センサが、ある一定時間を経過しても変化せず、且つ温度センサ同士の値の差が小さければ、血糖計101の筐体全体が外気温に「馴染んだ」、つまり外気温と血糖計101の筐体内部との温度差が、血糖値を正しく測定するに必要な程度に十分小さくなったことと判断できる。
【0020】
回路基板202には、内部温センサである内部温サーミスタ203が、マイコン等を構成する他の回路部品と同様に実装されている。
一方、外気温センサである外気温サーミスタ307は光学測定部103の中に設けられている。
図3は、光学測定部103の概略図である。
ステンレス等の金属製の筒302の中には、LED303とフォトダイオード304が基台305に設けられている。この基台305は、防塵のために薄いガラス板でできたガラス窓306によって外気から遮断されている。ガラス窓306には白金のワイヤーが印刷されており、これが外気温サーミスタ307を構成する。
外気温サーミスタ307は、外気温を迅速且つ適切に計測するために、熱容量を小さくする必要がある。このため、外気温サーミスタ307を構成するガラス板は、直径6mm、厚み0.5mmという大きさで構成されている。このガラス板の熱容量はおよそ4mJ/Kである。
筒302の内部には、測定チップ308を脱着可能にするための図示しない保持機構が組み込まれている。測定チップ308は装着されると、試験紙511がガラス窓306に相対するように配置される。
【0021】
[ハードウェア]
図4は血糖計101の内部ブロック図である。
血糖計101は、マイコンよりなるシステムであり、CPU402、ROM403及びRAM404と、それらを接続するバス405から構成されている。バス405には、上記の構成以外に、主にデータ入力機能を提供する部分と、データ出力機能を提供する部分も接続されている。
【0022】
血糖計101のデータ入力機能に該当する部位には、血糖計101にとって重要な血糖値測定データを得るための光学測定部103と、温度データを得るための内部温サーミスタ203及び外気温サーミスタ307、リアルタイムクロック407、そして操作パネル106であるボタン操作部408がある。
光学測定部103を構成するLED303には、LED303を発光駆動するためのドライバ410が接続されている。ドライバ410はD/A変換器411によって駆動制御される。
光学測定部103を構成するフォトダイオード304には、I/V変換器416を介してA/D変換器413が接続されている。
LED303は、適切な強度の光を測定チップ308内の試験紙511に照射する必要があるので、予め後述する不揮発性ストレージ414に記憶してある発光強度データに基づいて発光するように制御される。つまり、発光強度データを不揮発性ストレージ414から読み出し、D/A変換器411でアナログの電圧信号に変換後、ドライバ410で電力増幅して、LED303を発光駆動する。
LED303が発する光は、測定チップ308の試験紙511に照射され、試験紙511で反射した反射光はフォトダイオード304で検出される。
フォトダイオード304が受光した光の強度によって変化する、フォトダイオード304の信号電流はI/V変換器416で信号電圧に変換され、さらにA/D変換器413によって数値データに変換される。そして、この変換された数値データがRAM404及び不揮発性ストレージ414の所定領域に記録される。
【0023】
また、血糖計101は内部温サーミスタ203と外気温サーミスタ307を備えており、これらのサーミスタの抵抗変化によって、血糖計101が存在する環境の外気温と、血糖計101自体の内部温を測定できる。前述のフォトダイオード304と同様に、サーミスタの抵抗値はA/D変換器413によって数値化され、数値データはRAM404及び不揮発性ストレージ414の所定領域に記録される。なお、受光強度と気温を同時に測定する必要はないので、A/D変換器413はフォトダイオード304とサーミスタとで時分割で共用されている。
【0024】
リアルタイムクロック407は周知の日時データ出力機能を提供するICであり、多くのマイコンやパソコン等に標準搭載されているものである。
本発明の実施の形態の血糖計101では、患者データと血糖値を測定した時点の日時情報を紐付けて、不揮発性ストレージ414に記憶する必要があるので、リアルタイムクロック407が設けられている。
【0025】
血糖計101のデータ出力機能としては、表示パネル105であるLCD表示部415がある。
LCD表示部415には、ROM403に格納され、CPU402によって実行されるプログラムによって、様々な画面が表示される。
【0026】
血糖計101内部のマイコンを構成する要素のうち、データ入出力機能の他に、データ記憶機能を提供する、EEPROMよりなる不揮発性ストレージ414がある。この不揮発性ストレージ414には、患者の情報や血糖計101の設定データ、精度試験データ等が格納される。不揮発性ストレージ414に格納されたデータは、図示しない赤外線インターフェース或は無線インターフェース等を通じて、外部機器とやり取りされる。
【0027】
[ソフトウェア]
図5は血糖計101の機能ブロック図である。マイコンが提供する機能に着目した図である。
内部温サーミスタ203と外気温サーミスタ307は、それぞれ分圧抵抗R502及びR503を通じて電源電圧が印加されている。周知のように、サーミスタは周囲の温度によって抵抗値が変化するので、抵抗値の変化によってサーミスタの端子間電圧が変化する。
A/D変換器413aは、外気温サーミスタ307と内部温サーミスタ203の端子間電圧をデジタルデータに変換する。
なお、A/D変換器413aと後述するA/D変換器413bは、図4のA/D変換器413と等しい。単一のA/D変換器413を、時分割でサーミスタ用のA/D変換器413aとフォトダイオード用のA/D変換器413bと、機能的に分けて説明している。
【0028】
温度チェック処理部504は、割り込みクロック生成器505から1秒毎に出力される割り込みクロックを受けて、外気温サーミスタ307と内部温サーミスタ203のデータを基に、温度チェック処理を行う。温度チェック処理の結果は、RAM内に設けられるフラグ変数である第一フラグ506及び第二フラグ507に書き込まれる。
【0029】
第一フラグ506は、血糖値計測の際に必要な、気温が安定した状態であると、温度チェック処理部504が判断した場合、論理の「偽」に設定される(フラグが下ろされる)。逆に、気温の変動が血糖値計測に必要な変動範囲を超えていると、温度チェック処理部504が判断した場合、論理の「真」に設定される(フラグが上げられる)。
【0030】
第二フラグ507は、血糖値を計測している最中に気温の変動が発生してしまい、その変動が血糖値計測に必要な変動範囲を超えてしまったと、温度チェック処理部504が判断した場合に、論理の「真」に設定される。それ以外の場合では論理の「偽」に設定される。
【0031】
LED303は、分圧抵抗R508と駆動トランジスタ509を通じて電源電圧が印加されている。駆動トランジスタ509のベースにはD/A変換器411が接続されており、LED303はベース電流の変化に応じて発光の有無と輝度が制御される。
フォトダイオード304は、分圧抵抗R510を通じて電源電圧が印加されている。フォトダイオード304は測定チップ308内部の試験紙511からLED303の反射光を受光すると、信号電流を生じる。この信号電流はI/V変換器416で電圧変換され、さらにA/D変換器413bでデジタルデータに変換される。
【0032】
チップ装着処理部512は、測定チップ308が光学測定部103に装着されたか否か、もし装着されたのであれば測定チップ308が正常に装着されたか否かを検証する。このために、D/A変換器411を通じてLED303を駆動制御すると共に、A/D変換器413bからフォトダイオード304の反射光量のデータを得て、測定チップ308の装着状態を判断する。
【0033】
点着待機処理部513は、測定チップ308の試験紙511に血液が点着したか否かを検証する。このために、D/A変換器411を通じてLED303を駆動制御すると共に、A/D変換器413bからフォトダイオード304の反射光量のデータを得て、測定チップ308内の試験紙511の状態を判断する。
【0034】
測定処理部514は、血糖値の計測を実行する。このために、D/A変換器411を通じてLED303を駆動制御すると共に、A/D変換器413bからフォトダイオード304の反射光のデータを得て、計測処理開始から所定時間を経過した末に血糖値を算出する。また、正常に計測処理が完遂した場合には、計測データを不揮発性ストレージ414に記録する。
【0035】
制御部515は、第一フラグ506及び第二フラグ507の状態を監視し続け、チップ装着処理部512、点着待機処理部513及び測定処理部514の実行を制御する。
【0036】
LCD表示部415には、チップ装着処理部512、点着待機処理部513、測定処理部514そして制御部515によって必要な文字や図形等の表示が行われる。
ボタン操作部408は押しボタンスイッチの集合体であり、主に制御部515がその操作入力を受け付けて、動作制御を実行する。ボタン操作部408には、カーソルボタン、エンターボタン、ファンクションボタンと、電源ボタンが設けられている。
【0037】
[処理の流れ]
これより、図6乃至図9を参照して、血糖計101の動作の流れを説明する。
図6は血糖計101の全体処理を示すフローチャートである。
処理を開始すると(S601)、血糖計101は測定チップ308が正常に装着されたか否かを確認する、チップ装着処理を実行する(S602)。
チップ装着処理を終了すると、血糖計101は測定チップ308内の試験紙511に患者の血液が点着したか否かを確認する、点着待機処理を実行する(S603)。
点着待機処理を終了すると、血糖計101は所定時間が経過した後、その時点の反射光量から血糖値を測定する、測定処理を実行して(S604)、一連の処理を終了する(S605)。
処理を終了した後(S605)、次の測定を行う場合は、再度、全体処理を開始することとなる(S601)。
【0038】
図7はチップ装着処理を示すフローチャートである。図6のチップ装着処理S602の詳細な処理内容を示す図であると共に、図5のチップ装着処理部512の処理内容を示す図でもある。
先ず、説明の都合上、図7中に記されている例外判定処理であるステップS709a、S709b、S709c及びS709dを飛ばして、処理の流れを説明する。
【0039】
処理を開始すると(S701)、チップ装着処理部512は測定チップ308が光学測定部103に装着されたか否かを確認する(S702)。具体的には、チップ装着処理部512はLED303駆動制御データをD/A変換器411へ出力し、ドライバを通じてLED303を間歇的に発光制御する。そして、フォトダイオード304から得られる反射光に基づく電圧信号がA/D変換器413bを通じてデータ化される。チップ装着処理部512は、この反射光データを所定の閾値と比較して、測定チップ308が光学測定部103に装着されたか否かを判定する。
【0040】
ステップS702で、チップ装着処理部512が、測定チップ308が光学測定部103に装着されたと判断した場合(S702のYES)は、次にチップ装着処理部512は測定チップ308が光学測定部103に正常に装着されたか否かを確認する(S703)。測定チップ308が光学測定部103に正常に装着された場合には(S703のYES)、チップ装着処理部512はLCD表示部415に「OK」の文字列を表示させた後(S704)、一連の処理を終了して全体処理に戻る(S705)。
【0041】
ステップS702で、チップ装着処理部512が、測定チップ308が光学測定部103に装着されていないと判断した場合(S702のNO)は、次にチップ装着処理部512はLCD表示部415に「チップエラー」の文字列が表示されているか否かを確認する(S706)。もし、「チップエラー」文字列がLCD表示部415に表示されている場合には(S706のYES)、チップ装着処理部512はLCD表示部415に表示されている「チップエラー」の文字列表示を消去させた後(S707)、再度チップ装着を確認する(S702)。
【0042】
ステップS703で、チップ装着処理部512が、測定チップ308が光学測定部103に正常に装着されてはいないと判断した場合(S703のNO)は、次にチップ装着処理部512はLCD表示部415に「チップエラー」の文字列を表示させた後(S708)、再度チップ装着を確認する(S702)。
【0043】
測定チップ308の光学測定部103への装着状態は以下の三つの状態が存在する。
一つは、測定チップ308が光学測定部103に装着されていない状態(未装着状態)であり、ステップS702ではNOとなる。
もう一つは、測定チップ308が光学測定部103に装着されているが、正常には装着されていない状態(不完全装着状態)であり、ステップS702ではYESとなるものの、ステップS703ではNOとなる。
もう一つは、測定チップ308が光学測定部103に装着されており、且つ正常に装着されている状態(完全装着状態)であり、ステップS702ではYESとなり、ステップS703でもYESとなる。
チップエラーを消去するために、一旦測定チップ308を外してから再度測定チップ308の光学測定部103への装着を試みるので、未装着状態になった時点で「チップエラー」がLCD表示部415に表示されていたら、この時点でその表示を消す。
【0044】
以上が、チップ装着処理の通常の処理の流れである。しかし、ステップS702の直前、S703の直前、そしてS704の直前と直後に、それぞれ例外判定処理S709a、S709b、S709c及びS709dが介在している。これら例外判定処理S709a、S709b、S709c及びS709dは、全て同じ処理内容のサブルーチンであり、制御部515によって実行される処理内容である。この例外判定処理の詳細は図12にて後述する。
【0045】
図8は点着待機処理を示すフローチャートである。図6の点着待機処理S603の詳細な処理内容を示す図であると共に、図5の点着待機処理部513の処理内容を示す図でもある。
先ず、説明の都合上、図8中に記されている例外判定処理であるステップS804を飛ばして、処理の流れを説明する。
【0046】
処理を開始すると(S801)、点着待機処理部513は測定チップ308内の試験紙511に血液が点着したか否かを確認する(S802)。具体的には、点着待機処理部513はLED303駆動制御データをD/A変換器411へ出力し、ドライバを通じてLED303を間歇的に発光制御する。そして、フォトダイオード304から得られる反射光に基づく電圧信号がA/D変換器413bを通じてデータ化される。点着待機処理部513は、この反射光データを所定の閾値と比較して、試験紙511に血液が点着したか否かを判定する。
【0047】
ステップS802で、点着待機処理部513が、試験紙511に血液が点着したと判断した場合(S802のYES)は、一連の処理を終了して全体処理に戻る(S803)。
ステップS802で、点着待機処理部513が、試験紙511に血液が点着していないと判断した場合(S802のNO)は、再度試験紙511に血液が点着したか否かを確認する(S802)。つまり、点着が確認できるまでループする。
【0048】
以上が、点着待機処理の通常の処理の流れである。しかし、ステップS802の直前に、例外判定処理のステップS804が介在している。このステップS804は図7の例外判定処理であるS709a、S709b、S709c及びS709dと同じ処理内容のサブルーチンであり、詳細は図12にて後述する。
【0049】
図9は測定処理を示すフローチャートである。図6の測定処理S604の詳細な処理内容を示す図であると共に、図5の測定処理部514の処理内容を示す図でもある。
【0050】
処理を開始すると(S901)、測定処理部514は測定に必要な時間を計測するために、内蔵する図示しないタイマを起動する(S902)。次に、測定処理部514はタイマの示す時間(測定時間)を見て、測定が終了したか否かを確認する(S903)。
【0051】
もし、ステップS903において測定時間が測定終了に至った場合(S903のYES)は、測定処理部514は、血糖値の測定処理が正常に完遂した場合の処理を進める。
測定処理部514は、フォトダイオード304から得られる反射光に基づく電圧信号を、A/D変換器413bによって変換されたデジタルデータを読み取り、所定の演算処理を実行して、測定データを得る。測定処理部514は、この測定データを不揮発性ストレージ414に記録する(S904)。
【0052】
次に、測定処理部514は測定データを血糖測定値としてLCD表示部415に表示する(S905)。そして、測定処理部514は使用済みの測定チップ308が光学測定部103から外されたか否かを確認し続ける(S906)。具体的には、測定処理部514はLED303駆動制御データをD/A変換器411へ出力し、ドライバを通じてLED303を間歇的に発光制御する。そして、フォトダイオード304から得られる反射光に基づく電圧信号がA/D変換器413bを通じてデータ化される。測定処理部514は、この反射光データを所定の閾値と比較して、測定チップ308が光学測定部103から離脱されたか否かを判定する。
測定チップ308が外されたと確認したら(S906のYES)、一連の処理を終了して全体処理に戻る(S907)。
【0053】
もし、ステップS903において測定時間が測定終了に至っていない場合(S903のNO)は、測定処理部514は例外判定処理(S908)を経て、第二フラグ507が立っているか否かを確認した後(S909のNO)、再度測定時間を確認する(S903)。
第二フラグ507とは、ステップS908の例外判定処理の中で、温度変動が許容範囲を超えており、且つ血糖値の測定中である場合に、温度チェック処理部504によって設定されるフラグである。したがって、温度変動が許容範囲内であれば、測定処理部514はステップS908とS909を素通りして、実質的にステップS903のループ処理を実行することとなる。
【0054】
ステップS909において第二フラグ507が立っていることが確認できた場合(S909のYES)、測定処理部514は、血糖値の測定処理が失敗した場合の処理を進める。
先ず、測定処理部514は測定動作を中断する(S910)。具体的には、ステップS902にて起動したタイマを止めて、D/A変換器411に出力していたLED303駆動制御データの出力を止める。そして、A/D変換器413bの動作も止めて、フォトダイオード304の出力電流に基づくデータの読み取りを中断する。また、不揮発性ストレージ414に「測定失敗」を示す旨の情報を記録する。
【0055】
次に、測定処理部514はLCD表示部415に「測定を中断しました」という文字列を表示する(S911)。そして、測定処理部514は使用済みの測定チップ308が光学測定部103から外されたか否かを確認し続ける(S912)。この処理はステップS906と同様なので詳細な説明は割愛する。
測定チップ308が外されたと確認したら(S912のYES)、測定処理部514はLCD表示部415に表示されている「測定を中断しました」という文字列表示を消去する(S913)。そして、測定処理部514は第二フラグ507を下ろして(S914)、一連の処理を終了して全体処理に戻る(S907)。
【0056】
図10は温度チェック処理を示すフローチャートである。この温度チェック処理は、図5の温度チェック処理部504の処理内容を示す図である。
図5にて説明したように、温度チェック処理部504は、割り込みクロック生成器505から1秒毎に出力される割り込みクロックを受けて、処理を行う。つまり、図10の温度チェック処理は、図6の全体処理の流れとは無関係に、一秒毎に実行される割り込み処理である。
【0057】
温度チェック処理部504は、割り込みクロックを受けて処理を開始すると(S1001)、外気温と内部温を測定する(S1002)。具体的には、外気温サーミスタ307と内部温サーミスタ203の電圧をA/D変換器413bでデータに変換し、それらのデータを基に外気温データと内部温データを得る。
次に、温度チェック処理部504は取得した外気温データを図示しないメモリに記憶する(S1003)。
【0058】
次に、温度チェック処理部504は外気温データから内部温データを引き算し、その絶対値、つまり外気温と内部温の温度差を得る。この温度差が閾値である1℃以上であるか、確認する(S1004)。
もし、ステップS1004で温度差が閾値である1℃以上でない場合(S1004のNO)は、直前の4秒間に取得した外気温の変動を積分した値を算出し、この積分値が閾値である1℃以上であるか、確認する(S1005)。
ステップS1004とS1005のいずれかの条件に合致した場合(S1004のYES又はS1005のYES)は、温度チェック処理部504は第一フラグ506を上げて(S1006)、一連の処理を終了する(S1007)。
この、ステップS1004とS1005は、温度変動が許容範囲を超えたか否かを検証するステップであり、夫々の条件がOR条件で結ばれていることを意味する。
【0059】
ステップS1005で積分値が閾値である1℃以上でなかった場合(S1005のNO)、温度チェック処理部504は、ステップS1004にて算出した外気温と内部温の温度差が閾値である0.5℃以下であるか、確認する(S1008)。
もし、ステップS1008で温度差が閾値である0.5℃以下である場合(S1008のYES)は、更に直前の30秒間に取得した外気温の変動を積分した値を算出し、この積分値が閾値である0.5℃以下であるか、確認する(S1009)。
ステップS1008とS1009の条件に、両方とも合致した場合(S1009のYES)は、温度チェック処理部504は第一フラグ506を下ろして(S1010)、一連の処理を終了する(S1007)。
この、ステップS1008とS1009は、温度変動が許容範囲に収まったか否かを検証するステップであり、夫々の条件がAND条件で結ばれていることを意味する。
【0060】
なお、ステップS1008とS1009のいずれの場合も、条件に合致しなければ第一フラグ506の変更は行わずに、一連の処理を終了する(S1007)。
【0061】
図11は温度チェック処理の条件を説明する概略図である。
グラフの横軸は時間であり、縦軸は温度である。
【0062】
今、外気温が時刻t1の時点で温度P1から温度P2に急激に変化したとする。
外気温センサは熱容量が小さく作られており、更には血糖計101の筐体中心部分から離れ、筐体から熱的に独立した箇所に設けられているので、迅速に外気温に近似していく。
一方、内部温センサは血糖計101の筐体中心部分に配置される回路基板202上に設けられているので、血糖計101の筐体内部の空気の熱容量を含む遅い熱応答により、中心部分の緩やかな温度変化を表す。
したがって、温度変化が生じた時点から僅かな時間で、外気温センサと内部温センサとの差は大きくなることが判る。この現象を利用して、第一フラグ506を立てる条件として、温度差が1℃以上であるか、或は4秒間の外気温の変動分の積分値が1℃以上であることとした。
【0063】
温度変化が生じて時刻t2で第一フラグ506が上がった後、血糖計101の筐体が外気温に近似したら、第一フラグ506を下ろす(時刻t3)。この判定に用いる閾値は、第一フラグ506を上げた時の閾値よりも小さいことが望ましい。閾値を全く同じにしてしまうと、第一フラグ506を上げる条件と下げる条件が一致してしまうので、振動してしまう(第一フラグ506を上げる動作と下げる動作を繰り返してしまう)虞があるからである。そこで、第一フラグ506を下げる条件として、温度差が0.5℃以下であるか、或は30秒間の外気温の変動分の積分値が0.5℃以下であることとした。
【0064】
図12は例外判定処理を示すフローチャートである。この例外判定処理は、図5の制御部515の処理内容を示す図である。
図5にて説明したように、制御部515は、第一フラグ506及び第二フラグ507の状態を監視し続け、チップ装着処理部512、点着待機処理部513及び測定処理部514の実行を制御する。その際、チップ装着処理部512、点着待機処理部513及び測定処理部514から例外判定処理の依頼を受けると、この例外判定処理を実行し、その結果次第で呼び出し元に制御を返すか、或は制御を返さずに所定の条件が整うまで待つ。
【0065】
処理を開始すると(S1201)、制御部515は第一フラグ506が上がっているか否か、チェックする(S1202)。
もし、第一フラグ506が上がっていれば(S1202のYES)、温度チェック処理部504によって、温度変動は血糖値を計測する許容範囲を超えていることが判る。そこで、制御部515は次に、既にLCD表示部415に警告のためのメッセージを表示済みであるか否か、確認する(S1203)。未だ表示をしていなければ(S1203のNO)、制御部515は「温度が安定する場所においてエラーが消えるまでお待ちください」という、警告のメッセージをLCD表示部415に表示する(S1204)。
【0066】
ステップS1204で警告のメッセージをLCD表示部415に表示した後、制御部515は再び第一フラグ506の状態をチェックする(S1202)。温度チェック処理部504は外気温と内部温を計測しており、内部温の変化は外気温と比べて緩やかである。このため、温度チェック処理部504が判定する温度変動は、直ぐに落ち着く性質のものではない。結果として、内部温が外気温に近づくまで、制御部515はステップS1202とS1203をループし続けることとなる。
【0067】
内部温が外気温に近づくと、温度変動が許容範囲に収まる。すると、一秒毎に実行される温度チェック処理部504が、第一フラグ506を下ろす。
ステップS1202において、もし、第一フラグ506が上がっていなければ(S1202のNO)、温度チェック処理部504によって温度変動は血糖値を計測する許容範囲内に収まっていることが判る。つまり、ここでようやくステップS1202とS1203のループから抜け出すことができる。そこで、制御部515は次に警告のメッセージをLCD表示部415に表示済みであるか否か、確認する(S1205)。表示済みであれば(S1205のYES)、LCD表示部415に表示されているメッセージの表示を消去する(S1206)。
【0068】
次に、制御部515は現在測定処理中であるか否か、確認する(S1207)。もし、測定処理中であれば(S1207のYES)、制御部515は第二フラグ507を上げて(S1208)、呼び出し元に処理を戻す(S1209)。
なお、ステップS1205で警告のメッセージが表示されていない場合(S1205のNO)、及びステップS1207で測定中でない場合(S1207のNO)は、何もせずに呼び出し元に処理を戻す(S1209)。
【0069】
図7、図8及び図9にて説明したように、例外判定処理は、全体処理を構成する各処理の合間に実行される。温度変動が許容範囲内であれば、何事もなく次の処理に移行する。しかし、温度変動が許容範囲を超えると、例外判定処理のステップS1202とS1203をループすることとなり、温度変動が許容範囲内に収まるまでこのループから抜け出せなくなり、次の処理に移行できなくなる。
【0070】
更に、図9に示した測定処理で呼び出される例外判定処理は、測定処理中である。測定処理中に温度変動が生じた場合は、その時の血糖測定値は大きな誤差を含んでいる可能性が高いので、正確な測定値として採用できない。したがって、血糖値計測処理を中断する必要がある。
そこで、例外判定処理中に、計測処理中に温度変動が生じたことを示す第二フラグ507を上げる処理を含めた。
もし、計測処理中に温度変動が生じると、ステップS1204で警告メッセージを表示することとなる。温度変動が落ち着けば、ステップS1206で警告メッセージを消去することとなるが、「警告メッセージを消去する」という処理は、この時点で既にその直前で温度変動が生じていたことが判明している。このため、ステップS1206の直後に測定中であるか否かを確認して(S1207)、測定中であれば第二フラグ507を上げる(S1208)。
【0071】
本実施形態には、以下のような応用例が考えられる。
(1)例外判定処理はチップ装着処理と点着待機処理からのみ呼び出されることとして、測定処理中には例外判定処理とは異なる測定中断処理を行えば、第二フラグ507は不要になる。
図13は別の実施形態の測定処理のフローチャートであり、図14は別の実施形態の例外判定処理のフローチャートである。これらはそれぞれ図9の測定処理と図12の例外判定処理と差し替えることができる。
【0072】
これより、図13の、図9と異なる点についてのみ、説明する。
もし、ステップS1303において測定時間が測定終了に至っていない場合(S1303のNO)は、測定処理部514は第一フラグ506が立っているか否かを確認する(S1308)。第一フラグ506が立っていなければ(S1308のNO)、温度変動が許容範囲内であるので、測定処理部514はステップS1308を素通りして、実質的にステップS1303のループ処理を実行することとなる。
【0073】
ステップS1308において第一フラグ506が立っていることが確認できた場合(S1308のYES)、測定処理部514は、血糖値の測定処理が失敗した場合の処理を進める。
先ず、測定処理部514は測定動作を中断する(S1309)。具体的には、ステップS1302にて起動したタイマを止めて、D/A変換器411に出力していたLED303駆動制御データの出力を止める。そして、A/D変換器413bの動作も止めて、フォトダイオード304の出力電流に基づくデータの読み取りを中断する。また、不揮発性ストレージ414に「測定失敗」を示す旨の情報を記録する。
【0074】
次に、測定処理部514はLCD表示部415に「測定を中断しました」という文字列を表示する(S1310)。そして、測定処理部514は使用済みの測定チップ308が光学測定部103から外されたか否かを確認し続ける(S1311)。
測定チップ308が外されたと確認したら(S1311のYES)、測定処理部514はLCD表示部415に表示されている「測定を中断しました」という文字列表示を消去する(S1312)。そして、測定処理部514は一連の処理を終了して全体処理に戻る(S1307)。
【0075】
図13では、図9とは異なり、例外判定処理を呼び出さず、測定処理部514が第一フラグ506を直接確認して、第一フラグ506が上がっていれば直ちに測定動作を中断する。このため、図13の測定処理の中では、例外判定処理で表示された「温度が安定する場所においてエラーが消えるまでお待ちください」という警告のメッセージは、LCD表示部415には表示されない。
【0076】
これより、図14の、図12と異なる点についてのみ、説明する。
ステップS1402において、もし、第一フラグ506が上がっていなければ(S1402のNO)、温度チェック処理部504によって温度変動は血糖値を計測する許容範囲内に収まっていることが判る。そこで、制御部515は次に警告のメッセージをLCD表示部415に表示済みであるか否か、確認する(S1405)。表示済みであれば(S1405のYES)、LCD表示部415に表示されているメッセージの表示を消去する(S1406)。そして、一連の処理を終了する(S1407)。
なお、ステップS1405で警告のメッセージが表示されていない場合(S1405のNO)は、何もせずに呼び出し元に処理を戻す(S1407)。
図14のフローチャートは、図12と異なり、測定中であるか否かを確認して第二フラグ507を操作する手順がない。
【0077】
図13と図14のフローチャートで処理手順を差し替えた場合の、血糖計101の動作を説明する。
測定処理中に温度変動が許容範囲を超えると、図13のステップS1308で第一フラグ506が上がっていることが確認され、ステップS1309で測定が中断される。ステップS1311で測定チップ308を外すと、ステップS1307で全体処理に戻る。しかし、ステップS1308からステップS1312を経てステップS1307に戻る処理の流れの中で、例外判定処理にある「温度が安定する場所においてエラーが消えるまでお待ちください」という警告のメッセージをLCD表示部415に表示する処理と、第一フラグ506が下がる迄ループで待ち続ける処理は含まれていない。つまり、測定に失敗して測定チップを光学測定部103から外した時点では、未だ温度変動が許容範囲内に収まっていない可能性が高い。
この処理は、測定処理の次に実行されるチップ装着処理の、最初の段階で実行される例外判定処理(図7のステップS709a)で実行されることとなる。
以上の説明で判るように、図9と図12の処理を図13と図14のフローチャートの内容に差し替えても、実質的に同じ作用効果をもたらす。
【0078】
(2)前述の実施形態では病棟向けの血糖計を説明したが、簡易型の自己測定用血糖計であっても同様の実施形態にすることができる。
【0079】
本実施形態においては、血糖計を開示した。
血糖計の筐体内部に血糖計の筐体内温度を計測するための内部温サーミスタを設け、血糖計の筐体中心から離れ、筐体から熱的に独立した位置に、外気温を計測するための熱容量の小さい部品で構成した外気温サーミスタを設けた。そして、夫々の温度差から温度変動が許容範囲内であるか否かを判定し、許容範囲を超えていれば、血糖値計測直前までなら温度変動が許容範囲内になるまで処理を一時停止し、血糖値計測中なら血糖値計測処理を中断する処理を、血糖計のマイコンに含ませた。
このように血糖計を構成することで、血糖計の周囲の温度変動を確実に検出し、適切な環境下で血糖値計測を実施できる。
【0080】
以上、本発明の実施形態例について説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
【符号の説明】
【0081】
101…血糖計、102…筐体、103…光学測定部、104…イジェクトレバー、105…表示パネル、106…操作パネル、202…回路基板、203…内部温サーミスタ、302…筒、303…LED、304…フォトダイオード、305…基台、306…ガラス窓、307…外気温サーミスタ、308…測定チップ、402…CPU、403…ROM、404…RAM、405…バス、407…リアルタイムクロック、408…ボタン操作部、410…ドライバ、411…D/A変換器、413…A/D変換器、414…不揮発性ストレージ、415…LCD表示部、R502、R503、R508、R510…分圧抵抗、504…温度チェック処理部、505…割り込みクロック生成器、506…第一フラグ、507…第二フラグ、509…駆動トランジスタ、511…試験紙、512…チップ装着処理部、513…点着待機処理部、514…測定処理部、515…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定チップが装着された状態で血液を前記測定チップに付着させて血液中のグルコース量に応じた信号を出力する血糖値測定部と、
前記測定チップが前記血糖値測定部に装着されたか否かを確認するチップ装着処理部と、
前記測定チップに血液が付着したか否かを確認する点着待機処理部と、
前記血糖値測定部から出力される前記信号から血糖値を得る測定処理部と、
前記チップ装着処理部と前記点着待機処理部と前記測定処理部が収納される筐体と、
前記筐体の内部に設けられる内部温センサと、
前記内部温センサから離れた前記筐体の周縁部分に設けられる外気温センサと、
前記内部温センサと前記外気温センサの温度差を所定の閾値と比較して、前記筐体周囲の温度変化が血糖値を測定するに適しているか否かを判定する温度チェック処理部と、
前記チップ装着処理部或は前記点着待機処理部が稼動している時に前記温度チェック処理部が血糖値を測定するに適していないと判定した場合に、前記温度チェック処理部が血糖値を測定するに適していると判定するまで前記チップ装着処理部或は前記点着待機処理部の処理を一時停止する制御部と
を具備する血糖計。
【請求項2】
前記血糖値測定部は前記筐体の周縁に設けられており、
前記外気温センサは前記血糖値測定部に設けられる、
請求項1記載の血糖計。
【請求項3】
前記温度チェック処理部は、前記温度差が第一の閾値以上である場合には前記筐体周囲の温度変化が血糖値を測定するに適していないと判断し、前記温度差が前記第一の閾値より小さい第二の閾値以下である場合には前記筐体周囲の温度変化が血糖値を測定するに適していると判断する、請求項1又は2記載の血糖計。
【請求項4】
前記温度チェック処理部は、直近の第一の時間内の温度変動の積分値が第三の閾値以上である場合には前記筐体周囲の温度変化が血糖値を測定するに適していないと判断し、直近の前記第一の時間より長い第二の時間内の温度変動の積分値が前記第三の閾値よりも小さい第四の閾値以下である場合には前記筐体周囲の温度変化が血糖値を測定するに適していると判断する、請求項1又は2記載の血糖計。
【請求項5】
前記制御部は、前記測定処理部が稼動している時に前記温度チェック処理部が血糖値を測定するに適していないと判定した場合に、前記測定処理部に処理を中断させるものである、請求項1乃至4のいずれかに記載の血糖計。
【請求項6】
測定チップが装着された状態で血液を前記測定チップに付着させて血液中のグルコース量に応じた信号を出力する血糖値測定部に前記測定チップが装着されたか否かを確認するチップ装着処理と、
前記チップ装着処理の後、前記測定チップに血液が付着したか否かを確認する点着待機処理と、
前記点着待機処理の後、前記血糖値測定部から出力される前記信号から血糖値を得る測定処理と、
前記チップ装着処理、前記点着待機処理及び前記測定処理とは独立して、所定時間間隔で、血糖計の筐体の内部に設けられる内部温センサと、前記内部温センサから離れた前記筐体の周縁部分に設けられる外気温センサの温度差を所定の閾値と比較して、前記筐体周囲の温度変化が血糖値を測定するに適しているか否かを判定し、判定結果をフラグに設定する温度チェック処理と、
前記チップ装着処理及び前記点着待機処理から呼び出され、前記フラグが血糖値を測定するに適していないことを示している場合には、前記フラグが血糖値を測定するに適していることを示す状態に変化するまで前記チップ装着処理或は前記点着待機処理の処理を一時停止する制御処理と
を含む血糖値測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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