血糖計
【課題】複数の患者に対するインスリン等投与処置のし忘れを迅速に警告し、また迅速に再度それらの処置を実行することができる、新規な血糖計を提供する。
【解決手段】血糖計内部の入出力制御部は、1秒毎に内部患者テーブルを監視する。そして、血糖値計測を実行してインスリン投与を行っていない患者のレコードを見つけると、血糖値測定作業等をしていない状態の時にブザーを鳴らし、警告画面を表示する。
【解決手段】血糖計内部の入出力制御部は、1秒毎に内部患者テーブルを監視する。そして、血糖値計測を実行してインスリン投与を行っていない患者のレコードを見つけると、血糖値測定作業等をしていない状態の時にブザーを鳴らし、警告画面を表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖計に適用して好適な技術に関する。
より詳細には、病院内で複数の患者を対象として、血糖値の測定とインスリンの投与を、安全且つ確実に実行できる、血糖測定値管理システムの一部を構成する血糖計に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、糖尿病は膵臓のインスリン分泌異常に起因する。そのため、糖尿病患者は食事前に血糖値を測定し、その値に応じてインスリンを投与する必要がある。
【0003】
従来、家庭内で患者或はその家族が血糖値を簡便に測定するために、出願人は、小型化した血糖値測定装置(以下「血糖計」)を開発し、製造販売している。出願人による血糖計の特許出願を、特許文献1及び2として示す。
【0004】
【特許文献1】特開平10−19888号公報
【特許文献2】特開平10−318928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの患者が入院している病院では、この家庭用血糖計をそのまま医療現場にて使用している、という実態が報告されている。
しかし、家庭用途の血糖計では、単に血糖値を測定する機能しか備わっておらず、患者の取り違えやインスリン重複投与等の事故を未然に防止するための、安全面の工夫が設けられていない。
更に、多くの患者の血糖値測定処理とインスリン投与処置をそれぞれまとめて行うような、医療作業効率を考慮した機能が設けられていない。
今、医療現場向けに、安全面や作業効率等の観点から機能を洗練させた、新たな血糖計が求められている。
【0006】
血糖計を病院で使う場合、血糖値測定を行う看護師は、複数の患者の血糖値を測定することが多い。また、その際、インスリン投与処置も同時に行うことが多い。
周知のように、医療現場における看護師の業務は激務である。このため、複数の患者に対する血糖値の測定や、インスリン投与処置をし忘れる、という医療事故が起こり易い。
特に、血糖値測定をまとめて行った後にインスリン投与をまとめて行う、という作業の流れでは、インスリン投与をし忘れる患者が発生する可能性が高い。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決し、複数の患者に対するインスリン等投与処置のし忘れを迅速に警告し、また迅速に再度それらの処置を実行することができる、新規な血糖計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の血糖計は、血糖値計測の指示の有無とインスリン投与の指示の有無とが患者毎に記録されている内部患者テーブルと、一定周期のパルスを発生するパルス発生部と、パルス発生部から生じるパルスを受けて、内部患者テーブルの中から血糖値計測を実行してインスリン投与を行っていない患者の存在を見つけて、警告を生じる入出力制御部とを備えるものである。
【0009】
入出力制御部は、一定周期毎、例えば1秒毎に内部患者テーブルを監視する。そして、内部患者テーブルの各レコード毎に、血糖値計測を実行してインスリン投与を行っていない患者のレコードを見つけると、警告を発生する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、複数の患者に対するインスリン等投与処置のし忘れを迅速に警告し、また迅速に再度それらの処置を実行することができる、新規な血糖計を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図1〜図21を参照して説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態の例である、血糖値計測システムの全体概略図である。
血糖値計測システム101は、血糖計102と、クレードル103と、測定データ管理装置104で構成される。
血糖計102は、リチウムイオンバッテリで動作する携帯型機器であり、概ね大人の手に収まる大きさである。
医師や看護師等が患者の血糖値を測定する場合には、通常、血糖計102を病院内の病棟に持ち込み、患者からごく微量の採血を行い、血糖値を測定する。
血糖計102は、血糖値の測定及びインスリンの投与を行った後、必ずクレードル103に載置する。
クレードル103は、血糖計102のバッテリを充電すると共に、データの送受信を行うインターフェースの役割を担っている。
この、クレードル103を介して血糖計102がデータを送受信する相手が、測定データ管理装置104である。
【0013】
パソコンよりなる測定データ管理装置104は、クレードル103とUSBケーブル105にて接続されている。
測定データ管理装置104には周知のOSが稼動している。更にOS上では、パソコンに測定データ管理装置104としての機能を実現するプログラムが稼動している。
【0014】
血糖計102をクレードル103に装着すると、直ちに測定データ管理装置104との通信が実行される。その際、血糖計102内に内部患者テーブル112が存在していれば、この内部患者テーブル112に記憶されている測定データが患者測定データ117に変換された後、直ちに測定データ管理装置104へ送信される。
また、測定データ管理装置104から所定のコマンドを送信することで、測定データ管理装置104は血糖計102から図示しない血糖計設定データをダウンロードすることができる。
更に、測定データ管理装置104は、患者データ114、使用者基礎データ115及びチップロットデータ116を血糖計102へアップロードすることができる。
これらデータの詳細は後述する。
【0015】
[血糖計102]
図2(a)及び(b)は、血糖計102の外観斜視図である。
図3(a)、(b)、(c)及び(d)は、血糖計102を四方向から見た図である。
なお、説明の便宜上、図2(a)及び図3(a)に示す、LCDが設けられている面を本体表面、図2(b)に示す、バッテリ蓋が設けられている面を本体裏面と称する。
【0016】
図3(a)及び(c)に示すように、血糖計102の先端には、光学測定部202が設けられている。
光学測定部202は血糖測定チップ212(以下「測定チップ」)が着脱可能な形状になっている。使用済みの測定チップ212は、イジェクトレバー302を操作することで光学測定部202から取り外すことができる。
図2(a)及び図3(a)に示す、液晶表示画面であるLCD203が設けられている側面には、LCD203の横に電源スイッチ204とカーソルキー205、エンターキー206、そしてバーコードキー207が設けられている。
電源スイッチ204は血糖計102の電源オン/オフのためのスイッチである。
カーソルキー205は、LCD203に表示される複数の項目のうちの一つを選択するために、カーソルを移動するキーである。
エンターキー206はカーソルで選択した項目を「実行する」或は「選択する」指示を行うキーである。
バーコードキー207は、図3(d)に示す、血糖計102の光学測定部202とは反対の側面に設けられているバーコードリーダ208を稼動させるためのボタンである。
バーコードリーダ208は、周知の赤色レーザダイオードと受光素子の組み合わせよりなるバーコード読取装置である。なお、受光素子に代えてCCD或はCMOS等のイメージセンサを用いることもできる。
【0017】
血糖計102の基本的な血糖測定の仕組みは、従来技術と同様である。以下、概略を簡単に説明する。
光学測定部202に測定チップ212を取り付け、測定対象者の血液を測定チップ212に吸引させる。この測定チップ212には、ポリエーテルサルホン等の多孔質膜等でできた試験紙が内蔵されている。そして、測定チップ212に吸引された血液は、試験紙に到達すると、試験紙に含まれている試薬と反応して、発色する。この発色反応には数秒から10数秒前後の時間を要するが、この反応は、周囲の気温によって影響を受ける。
所定の反応時間を経過した後に、発光素子により試験紙に光を当て、試験紙からの反射光を受光素子にて受光する。そして、受光素子から得られたアナログの受光強度信号をデジタル値に変換した後、このデジタル値を血糖値に変換してLCD203に表示する。
なお、血糖計102側の仕組みは、発色試薬を利用した前記光学測定方式に限らず、電気化学センサー方式など、従来から血糖測定に使用され得る仕組みを採用することができる。
【0018】
図2(b)に示すように、本体裏面の、バーコードリーダ208近傍には、電源端子209と赤外線通信窓210が設けられている。血糖計102をクレードル103に装着すると、電源端子209がクレードル103に設けられている充電端子402(図4参照)と接触し、充電が行われると共に、クレードル103との赤外線通信が行われる。なお、本体裏面にはバッテリ蓋211も設けられている。
【0019】
[クレードル103]
図4(a)及び(b)は、血糖計102をクレードル103から離脱した状態での、クレードル103の外観図であり、図5(a)及び(b)は、血糖計102をクレードル103に装着した状態での、クレードル103の外観図である。
図4(a)及び(b)に示すように、クレードル103の、血糖計102の電源端子209に相対する箇所には充電端子402が設けられている。同様に、クレードル103の、血糖計102の赤外線通信窓210に相対する箇所には赤外線通信窓403が設けられている。
血糖計102の赤外線通信窓210及びクレードル103の赤外線通信窓403の中には、それぞれ赤外線発光ダイオード619及び719とフォトトランジスタ620及び720が内蔵されている。これらは周知のIrDA(アイアールディーエー: Infrared Data Association)仕様に従う赤外線シリアル通信インターフェースを構成する。
【0020】
図1に示したように、クレードル103はUSBケーブル105を通じて、パソコンに接続されている。クレードル103は、血糖計102のバッテリを充電する役目をもっており、一台のパソコンに多数のクレードル103が接続され得ることから、パソコンのUSB端子から電源供給を受けないセルフパワードデバイスとして構成されている。
【0021】
[ハードウェア]
図6は血糖計102の内部ブロック図である。
血糖計102は、マイコンよりなるシステムであり、CPU602、ROM603及びRAM604と、それらを接続するバス605から構成されている。バス605には、上記の構成以外に、主にデータ入力機能を提供する部分と、データ出力機能を提供する部分も接続されている。
【0022】
血糖計102のデータ入力機能は、血糖計102にとって重要な血糖値測定データを得るための光学測定部202と、温度データを得るためのサーミスタ606、バーコードリーダ208、カレンダクロック607、そして操作部608がある。
光学測定部202は、発光ダイオード609、そのドライバ610、ドライバ610に接続されるD/A変換器611よりなる発光部と、フォトトランジスタ612とA/D変換器613よりなる受光部よりなる。発光ダイオード609は、適切な強度の光を測定チップ212内の試験紙に照射する必要があるので、予め後述する不揮発性ストレージ614に記憶してある強度データに基づいて発光するように制御される。つまり、発光強度データを不揮発性ストレージ614から読み出し、D/A変換器611でアナログの電圧信号に変換後、ドライバ610で電力増幅して、発光ダイオード609を発光駆動する。また、フォトトランジスタ612が受光した光の強度信号電圧は、A/D変換器613によって数値データに変換される。そして、この変換された数値データがRAM604及び不揮発性ストレージ614の所定領域に記録される。
【0023】
また、血糖計102はサーミスタ606を備えており、このサーミスタ606の抵抗変化によって血糖計102が存在する環境の気温を測定できる。前述のフォトトランジスタ612と同様に、サーミスタ606の抵抗値はA/D変換器613によって数値化され、数値データはRAM604及び不揮発性ストレージ614の所定領域に記録される。なお、受光強度と気温を同時に測定する必要はないので、A/D変換器613はフォトトランジスタ612とサーミスタ606とで共用されている。
【0024】
カレンダクロック607は周知の日時データ出力機能を提供するICであり、多くのマイコンやパソコン等に標準搭載されているものである。
本発明の実施の形態の血糖計102では、血糖値を測定した時点の日時情報を得る必要があるため、日時情報は重要な情報である。つまり、収集するデータと日時情報は極めて深い関係を有する。そして、血糖値を測定した時点の日時情報は、血糖値と共に内部患者テーブル112に記録する必要がある。このため、図中で敢えてカレンダクロック607を明記している。
【0025】
血糖計102のデータ出力機能としては、LCD203よりなる表示部615と、ブザー616と、赤外線通信部617がある。
表示部615には、ROM603に格納され、CPU602によって実行されるプログラムによって、様々な画面が表示される。表示画面の詳細は後述する。
ブザー616は、主にバーコードリーダ208がバーコードを正常に読み取ったことや、血糖値測定における測定完了、赤外線通信の完了、或はエラーメッセージを操作者に告知するために利用される。設定次第では、操作部608の操作の度毎に鳴らすこともできる。
赤外線通信部617は、前述の通り、IrDAのシリアルインターフェースを構成している。そして、電源回路618が、電源端子209の電圧変化によりクレードル103から電源供給を受けたことを検出すると、電源回路618はバス605を通じてCPU602に報告する。そして、CPU602の制御によって赤外線通信部617の赤外線通信機能が起動され、不揮発性ストレージ614に格納されている各種データファイルの送受信と更新が行われる。
つまり、赤外線通信の際は、血糖計102の操作部608などの操作は不要で、クレードル103に装着すると直ちに赤外線通信が実行される。
【0026】
血糖計102内部のマイコンを構成する要素のうち、データ入出力機能の他に、データ記憶機能を提供する、EEPROMよりなる不揮発性ストレージ614がある。この不揮発性ストレージ614には、使用者基礎データ115、チップロットデータ116、内部患者テーブル112、血糖計設定データ等が格納される。これらはクレードル103を介した測定データ管理装置104との通信の際に更新される。なお、EEPROMの代わりにフラッシュメモリ等を用いてもよい。不揮発性ストレージ614に格納されるデータの容量は少ないので、不揮発性ストレージ614に要求される記憶容量は数MB〜数十MB程度でよい。
【0027】
図7はクレードル103の内部ブロック図である。
図8は、血糖計102とクレードル103と測定データ管理装置104との接続状態を示すブロック図である。
クレードル103は、マイコンを構成するCPU702、ROM703、RAM704と、赤外線通信部717と、USBインターフェース706と、充電回路718と、これらを接続するバス705により構成される。
充電回路718は、充電端子402の電圧変化から負荷である血糖計102が接続されたことを検出すると、バス705を通じてCPU702にその旨を報告する。そして、CPU702の制御によって赤外線通信部717の赤外線通信機能が起動され、赤外線通信部717とUSBインターフェース706を介して、血糖計102と測定データ管理装置104との間の通信が行われる。
【0028】
以上説明したように、血糖計102とクレードル103の間はIrDAによって接続され、クレードル103と測定データ管理装置104の間はUSBによって接続されている。この点で、クレードル103は、測定データ管理装置104と血糖計102との間のデータ通信を仲介するインターフェースの役割を担っている。
【0029】
[測定データ管理装置104]
図9は、測定データ管理装置104のブロック図である。
測定データ管理装置104の実体も、周知のパソコンであり、本実施形態で後述する種々の警告機能や、測定データを管理する機能等を実現するに際し、特別な機能を備えるハードウェアは設けられていない。
パソコンである測定データ管理装置104の内部にはバス902がある。このバス902には、CPU903、ROM904、RAM905、ハードディスク装置等の不揮発性ストレージ906、LCD等の表示部907及びUSBインターフェース908が接続されている。USBインターフェース908には、キーボード及びマウス等の入力部909が接続されている他、クレードル103も接続されている。
【0030】
[血糖計102の血糖測定作業]
次に、図10を参照して、血糖計102にて行う血糖測定作業の流れを説明する。
図10は、血糖計102にて行う血糖測定作業の流れを説明する概略図である。
(1)患者1002の名札等に付されている、バーコードよりなる患者ID1003を、バーコードリーダ208で読み取る。
読み取った患者ID1003は、先ず、内部患者テーブル112の検索キーに用いられる。
予め測定データ管理装置104から送信された患者データ114は、血糖計102内部で内部患者テーブル112に変換されて、不揮発性ストレージ614に記憶されている。この内部患者テーブル112を、患者ID1003で検索する。検索にヒットしたレコードが、これから種々のデータを記録しようとする、内部患者テーブル112における、該当する患者のレコードである。
【0031】
(2)次に、看護師1004の名札等に付されている、バーコードよりなる使用者ID1005を、バーコードリーダ208で読み取る。
読み取った使用者ID1005は、使用者基礎データ115に含まれているか否かが検証される。使用者IDを検索キーとして使用者基礎データ115を検索して、当該使用者IDが存在すれば、内部患者テーブル112の先に特定したレコードの「使用者ID」フィールドに上書きする。
【0032】
(3)次に、測定チップ212の箱1006に印刷されている、バーコードよりなるチップロットナンバー1007を、バーコードリーダ208で読み取る。
読み取ったチップロットナンバー1007は、チップロットデータ116(図1参照)に含まれているか否かが検証される。チップロットナンバーを検索キーとしてチップロットデータ116を検索して、当該チップロットナンバーが存在すれば、内部患者テーブル112の先に特定したレコードの「チップロットナンバー」フィールドに上書きする。
【0033】
(4)(3)で内部患者テーブル112の「チップロットナンバー」フィールドにチップロットナンバーを記録した直後、サーミスタ606で外気温を測定する。そして、外気温が所定範囲内に収まっていると判断したら、内部患者テーブル112の先に特定したレコードの「測定時温度」フィールドに上書きする。
【0034】
(5)血糖計102の光学測定部に測定チップ212を装着し、血糖値を測定する。そして、測定した時点の日時データをカレンダクロック607から得る。
測定した血糖値を、内部患者テーブル112の先に特定したレコードの「血糖値」フィールドに上書きする。日時データを、内部患者テーブル112の先に特定したレコードの「測定日時」フィールドに上書きする。
また、「血糖値を測定した」という「事実」を示すフラグが、「測定・表示・投与フラグ」フィールドに記録される。
その後、LCD203(表示部615)に測定した血糖値を表示する。
【0035】
(6)測定した血糖値で、当該患者1002のスライディングスケール1009を検索し、当該患者1002に処方する、インスリン等の薬剤の種類とその投与量を、LCD203に表示する。スライディングスケール1009は内部患者テーブル112内に、患者ID毎に格納されている。スライディングスケール1009の詳細は図11にて後述する。
(7)看護師1004がLCD203に表示された処方に従って、注射器1008にてインスリン等の投与を行った後、その事実をエンターキー206で入力する。すると、「処方した」という「事実」を示すフラグが、内部患者テーブル112の「測定・表示・投与フラグ」フィールドに記録される。
【0036】
以上に示した測定作業によって、
・どの患者の、
・測定予定時刻に対し、
・どの測定者が、
・どのチップロットナンバーのチップを用いて、
・どんな外気温の環境下において、
・血糖値を測定したか否か、
・(血糖値を測定したなら)血糖値はどんな値か、
・(血糖値を測定したなら)そのときの日時はいつなのか、
・インスリン等の処方をしたか否か
が、内部患者テーブル112に記録される。
【0037】
血糖値測定作業とインスリン処方作業は、概ね患者の食後の決まった時間帯に行われる。また、食前の決まった時間帯に行うこともある。測定作業及び処方作業は、複数名の患者に対し、決まった時間帯にまとめて行われる。
この、複数名の患者に対し、所定の時間帯にまとめて行われる、血糖値測定及び/またはインスリン処方の作業単位を、「ラウンド」と呼ぶ。例えば、「朝食後30分の1ラウンド」等と呼び、取り扱われる。
血糖計102は、血糖値測定作業及びインスリン等処方作業の間違いを起こさないために、1ラウンドに必要なデータのみが、測定データ管理装置104から送信される。これが、患者データ114、使用者基礎データ115及びチップロットデータ116である。
そして、ラウンド終了後は、必ず血糖計102をクレードル103に載置しなければならない。血糖計102をクレードル103に載置すると、直ちに患者測定データ117が内部患者テーブル112の所定のフィールドを抜き出して作られた後、血糖計102から測定データ管理装置104に送信される。測定データ管理装置104はこれを受信して、内部の患者履歴テーブル1212に記録する。
【0038】
図11は、各テーブルの内部構成と関係を記す図である。Entity-Relationshipの頭文字より「ER図」とも呼ばれる図である。なお、この図11は、図1に示す、測定データ管理装置104と血糖計102との間で送受信されるテーブルの関係に基づいて描かれている。
測定データ管理装置104から送信される患者データ114は、「インスリン療法区分」フィールド以外の全てのフィールドがそのまま内部患者テーブル112に記録される。内部患者テーブル112は、血糖計102内部の不揮発性ストレージ614の中に設けられている。
患者データ114の「インスリン療法区分」フィールドは、所定の変換処理を経て、内部患者テーブル112の「測定・表示・投与フラグ」フィールドと「測定有無フラグ」フィールドに記録される。
測定データ管理装置104から送信されるチップロットデータ116及び使用者基礎データ115は、血糖計102内部の不揮発性ストレージ614にそのまま記憶される。そして、測定作業中にバーコードリーダ208から読み取ったもの(チップロットナンバー及び使用者ID)が、その都度内部患者テーブル112に記録される。
【0039】
[患者データ114]
これより、患者データ114の各フィールドを説明する。
患者データ114の「インスリン療法区分」フィールドには、
0:血糖値測定のみ
1:血糖値測定+スライディングスケールを使用したインスリン投与
2:血糖値測定+スライディングスケールを使用しない(以下「固定打ち」)インスリン投与
5:スライディングスケールを使用したインスリン投与のみ(血糖値測定せず)
6:固定打ちのインスリン投与のみ(血糖値測定せず)
の、いずれか一つが記録される。
【0040】
スライディングスケールとは、処方箋データを意味する。これは、計測した血糖値の範囲に対して、投与するインスリン等の薬剤の量を列挙したテーブルである。
「固定打ち」とは、血糖値の計測結果の如何にかかわらず、一定量のインスリン等の薬剤を投与することを意味する。
患者データ114の「スライディングスケール投与情報」フィールドには、このスライディングスケールが格納される。
【0041】
患者データ114の「インスリン療法区分」フィールドの値は、血糖計102に対し、患者毎に行うべき作業を指示するフラグ情報である。例えば:
・「0」であれば、当該患者には血糖値の測定だけを行う。
・「1」であれば、当該患者には血糖値の測定と、スライディングスケールを用いたインスリン投与を行う。
以下、「2」「5」「6」も同様である。
【0042】
「患者ID」フィールドは、患者を識別する番号であり、図10で説明したように、患者1002の着衣に付されているバーコードに記録されている。「患者フリガナ」フィールドは、患者の氏名のカタカナによるフリガナである。これは患者IDと共に血糖計102のLCD203に表示し、血糖計102を操作する測定者が目の前の患者を正しく識別するために用いられる。
「血糖測定予定時刻」フィールドは、ラウンドを実施する予定の時刻であると共に、測定データ管理装置104側でデータを特定する際の検索キーとしても使われる。
「測定値下限値」フィールドと「測定値上限値」フィールドは、インスリン投与を実施可能な、血糖値の範囲を示す。これは特に「インスリン療法区分」フィールドの値が「1」または「2」の場合に、患者の容態を間接的に知ると共に、不適切なインスリン投与による事故を未然に防ぐために設けられている。要するに、この血糖値の範囲外である場合、患者の容態が思わしくないので、インスリン投与の実施に適さないと判断できるのである。
「患者測定履歴データ」フィールドは、当該患者の直近の血糖値測定履歴情報が複数格納されるフィールドである。また、「インスリン療法区分」フィールドの値が「5」の時に、直近に測定した血糖値を格納しておき、この値を基にスライディングスケールを用いたインスリン投与を実施する。
以上が、患者データ114の各フィールドの説明である。
【0043】
[内部患者テーブル112]
これより、内部患者テーブル112の各フィールドを説明する。
「測定・表示・投与フラグ」フィールドは、「血糖値測定フラグ」、「インスリン投与量表示フラグ」及び「インスリン投与確認フラグ」の、三つのフラグが格納されているフィールドである。
「測定有無フラグ」フィールドには、
・患者データ114の「インスリン療法区分」フィールドが「0」、「1」または「2」の時は論理の「真」を示す「1」が、
・患者データ114のインスリン療法区分フィールドが「5」または「6」の時は論理の「偽」を示す「0」が、記録される。
「測定・表示・投与フラグ」フィールドは、(1)血糖値測定作業を完遂した直後、(2)インスリン投与量を表示したとき、(3)インスリン投与を実施した旨の入力をしたときに、それぞれ変化する。
「測定・表示・投与フラグ」フィールドと「測定有無フラグ」フィールドの内容は、患者測定データ117の「血糖測定フラグ」フィールドに反映される。
なお、これらフラグの内容と変化の詳細は、後述する。
【0044】
「患者ID」フィールド、「患者フリガナ」フィールド、「血糖測定予定時刻」フィールド、「測定値下限値」フィールド、「測定値上限値」フィールド、「スライディングスケール投与情報」フィールド及び「患者測定履歴データ」フィールドは、患者データ114からそっくりそのままコピーされる。
「使用者ID」フィールドは、バーコードリーダ208で読み取られた使用者IDが、チップロットデータ116による照合を経て、記録される。
「チップロットナンバー」フィールドは、バーコードリーダ208で読み取られたチップロットナンバーが、使用者基礎データ115による照合を経て、記録される。
「測定日時」フィールド、「血糖値」フィールド及び「測定時温度」フィールドの各フィールドの値は、図10にて説明したように、血糖計102の血糖値測定作業の際に記録される。
以上が、内部患者テーブル112の各フィールドの説明である。
【0045】
[患者測定データ117]
内部患者テーブル112のうち、測定データ管理装置104で必要となる、「患者ID」フィールド、「使用者ID」フィールド、「測定日時」フィールド、「血糖値」フィールド、「測定時温度」フィールド、「チップロットナンバー」フィールド及び「血糖測定予定時刻」フィールドは、そっくりそのまま患者測定データ117として出力される。
「測定・表示・投与フラグ」フィールドと「測定有無フラグ」フィールドの内容は、所定の変換処理を経て、「血糖測定フラグ」フィールドのデータとして出力される。
以上が、患者測定データ117の各フィールドの説明である。
【0046】
図12及び図13は、血糖計102と測定データ管理装置104との間で行われる通信の流れを示すフロー図である。
測定データ管理装置104はクレードル103に対して常にポーリングを行っている(S1201)。このような状態で、血糖計102をクレードル103に装着すると、血糖計102は測定データ管理装置104から発されるポーリングコマンドに反応する。測定データ管理装置104はこれを受けて、直ちに血糖計102の存在を識別する。この、血糖計102と測定データ管理装置104との間の通信確立までの動作を、ネゴシエーションと呼ぶ(S1202)。
看護師等の使用者は、測定データ管理装置104を操作して、ラウンドのためのデータを作成する(S1203)。そして、「転送」を指示すると、患者データ114、使用者基礎データ115及びチップロットデータ116が血糖計102へ送信される(S1204)。また、このとき、測定データ管理装置104内の患者情報テーブル1205に、患者データ114の一部内容が書き込まれる(S1206)。
【0047】
使用者はクレードル103から血糖計102を引き抜き、患者に対する血糖値測定及びインスリン処方を行う(S1207)。
使用者は、一通り測定と処方を終了したら、血糖計102をクレードル103に載置する。すると、先程と同様に、血糖計102と測定データ管理装置104との間のネゴシエーションが確立される(S1208及びS1209)。
測定データ管理装置104は、ネゴシエーション確立後、血糖計102に対して患者測定データ117の転送を要求する(S1210)。血糖計102はこれを受けて、内部患者テーブル112から患者測定データ117を作成し、これを測定データ管理装置104へ転送する(S1211)。
測定データ管理装置104は受信した患者測定データ117の内容を患者履歴テーブル1212に記録する(S1213)。そして、患者履歴テーブル1212に記録した内容と、先に患者情報テーブル1205に記録していた内容との照合を行う(S1214)。この照合は、血糖計102に対して指示した内容の通りに作業が遂行されたか否かを検証するための照合である。
例えば、指示内容が「血糖値測定のみ」であれば、血糖値の測定が行われたかを確認する。
同様に、指示内容が「血糖値測定とインスリン投与」であれば、血糖値の測定とインスリン投与が行われたかを確認する。
この照合作業の結果、一人でも指示内容と実行結果との間に不整合があれば、測定データ管理装置104はその表示部907に警告(ワーニング)を表示する(S1215)。
【0048】
図13を参照して、説明を続ける。
警告表示後、測定データ管理装置104は操作者に対して所定の操作を要求する(S1316)。これは、血糖値測定或はインスリン投与のいずれか或は両方が未実施である、つまり実施し忘れた患者に対し、再度実施を行うためのデータ転送をするか否かを問う操作である。操作者がデータの再転送を命ずる操作を行うと、測定データ管理装置104はデータを作成し(S1317)、再度、患者データ114等を血糖計102へ転送する(S1318)。また、先程と同様に患者情報テーブル1205にも所定のデータを書く(S1319)。
【0049】
この後は、先程と同様の動作が続く。
使用者はクレードル103から血糖計102を引き抜き、患者に対する血糖値測定及びインスリン処方を行う(S1320)。
使用者は、一通り測定と処方を終了したら、血糖計102をクレードル103に載置する。すると、血糖計102と測定データ管理装置104との間のネゴシエーションが確立される(S1321及びS1322)。
測定データ管理装置104は、ネゴシエーション確立後、血糖計102に対して患者測定データ117の転送を要求する(S1323)。血糖計102はこれを受けて、内部患者テーブル112から患者測定データ117を作成し、これを測定データ管理装置104へ転送する(S1324)。
【0050】
測定データ管理装置104は受信した患者測定データ117の内容を患者履歴テーブル1212に記録する(S1325)。そして、患者履歴テーブル1212に記録した内容と、先に患者情報テーブル1205に記録していた内容との照合を行う(S1326)。
この照合作業の結果、全ての患者について指示内容と実行結果との間の不整合がなければ、測定データ管理装置104はその表示部907に「OK」を表示する(S1327)。
【0051】
一方、血糖計102は、患者測定データ117を測定データ管理装置104へ転送した(S1324)後、内部患者テーブル112を削除する(S1328)。この動作により、血糖計102は常に最新のデータでのみ血糖値測定或はインスリン投与を行うことを担保できる。
【0052】
改めて、上記動作の流れを大まかに説明すると、以下のようになる。
(1)最初に、測定データ管理装置104から患者データ114等を血糖計102に転送する。
(2)血糖値測定及びインスリン処方等を遂行する。
(3)一通り測定と処方を終了したら、血糖計102をクレードル103に載置する。
(4)すると、受信した患者測定データ117の内容が記録された患者履歴テーブル1212と患者情報テーブル1205との照合を行い、不一致が見つかり、測定データ管理装置104の表示部907に警告が表示される。
(5)再度、未実施患者の分の患者データ114等を血糖計102に転送する。
(6)血糖値測定及びインスリン処方等を遂行する。
(7)一通り測定と処方を終了したら、血糖計102をクレードル103に載置する。
(8)すると、受信した患者測定データ117の内容が記録された患者履歴テーブル1212と患者情報テーブル1205との照合を行い、全患者について一致して、一連の処理を終了する。
【0053】
血糖計102は、1回のラウンドを行う対象となる患者のデータだけが記憶される。
仮に、一部の患者の血糖値計測やインスリン投与をし忘れてしまった場合、測定データ管理装置104は、受信した患者計測データを検証して、血糖値計測やインスリン投与が行われなかった患者を特定する。そして、その特定された患者に対して、行うべき必要な処置のためのデータだけを再度作成する。つまり「再ラウンド」を行う。
血糖計102の、「一回分のラウンドだけを実行する」という設計は、血糖値計測やインスリン投与の間違いを絶対に起こさせないとする思想に基づく。
【0054】
図14は、血糖計102の機能ブロック図である。
バーコードリーダ208、サーミスタ606、血糖センサともいえる光学測定部の一部であるフォトトランジスタ612及び操作部608から発されるデータ等は、入出力制御部1402に入力される。
また、入出力制御部1402は、不揮発性ストレージ614内の使用者基礎データ115、チップロットデータ116及び内部患者テーブル112との間で、データの入出力を行う。
使用者に見せたい内容は、入出力制御部1402にて作成され、表示制御部1403を通じて表示部615によって表示される。
内部患者テーブル112は、赤外線通信部617から受信される患者データ114を、患者データ変換部1404が変換することで作成される。また、内部患者テーブル112は、患者測定データ変換部1405によって患者測定データ117に変換され、赤外線通信部617を通じて測定データ管理装置104に送信される。
【0055】
カレンダクロック607は、入出力制御部1402に、1秒単位の割り込みパルスを供給する。
RAM604には、カウンタ変数テーブル1406が設けられている。カウンタ変数テーブル1406は内部患者テーブル112と関連付けられている。
また、入出力制御部1402には、使用者に警告すべき状態が発生したことを通知するための、ブザー616が接続されている。
【0056】
図15は、血糖計102の状態遷移図である。
先ず、電源を投入すると、血糖計102はメニュー表示状態S1501になる。メニュー表示状態S1501から所定の操作を行うことにより、血糖計102はバーコードリーダ208で患者IDを読み取る、患者IDスキャン状態S1502になる。
患者IDスキャン状態S1502において、バーコードリーダ208で患者IDを読み取ると、入出力制御部1402は内部患者テーブル112の当該患者IDのレコードにある、血糖値測定フラグとインスリン投与量表示フラグを見る(分岐点S1503)。ここで、血糖値測定フラグが真で、且つインスリン投与量表示フラグが偽である場合には、血糖計102は血糖値表示(3)状態S1504に移行する。そうでない場合、つまり血糖値測定フラグが偽か、或はインスリン投与量表示フラグが真のいずれかである場合には、血糖計102は血糖値測定状態S1505に移行する。
【0057】
血糖値測定状態S1505において血糖値の測定を行うと、入出力制御部1402は次にインスリン投与量表示フラグの確認を行う(分岐点S1506)。インスリン投与量表示フラグが偽であれば、血糖計102は血糖値表示(1)状態S1507に移行する。そうでない場合、つまりインスリン投与量表示フラグが真である場合には、血糖計102は血糖値表示(2)状態S1508に移行する。
【0058】
血糖計102は、血糖値表示(1)状態S1507からは、使用者の操作(分岐点S1509)によって次の状態に移行する。
血糖値計測をもう一度やり直す場合には、当該患者の血糖値測定フラグを偽のままにして、患者IDスキャン状態S1502に戻る。
現在血糖値を計測した患者に対するインスリン投与処方を行わず、次の患者の血糖値計測に移行する場合には、当該患者の血糖値測定フラグを真に設定した上で、患者IDスキャン状態S1502に戻る。
現在血糖値を計測した患者に対するインスリン投与処方を行う場合には、当該患者の血糖値測定フラグを真に設定した上で、インスリン投与量表示状態S1510に移行する。
【0059】
血糖値表示(3)状態S1504では、血糖計102は当該患者の血糖値を表示する。その後、血糖計102はインスリン投与量表示状態S1510に移行する。
【0060】
インスリン投与量表示状態S1510においては、血糖計102は内部患者テーブル112の内容に従って、当該患者に対するインスリン投与量を表示する。この表示処理を行った後、入出力制御部1402はインスリン投与量表示フラグを真に設定して(処理S1511)、インスリン投与確認状態S1512に移行する。
【0061】
インスリン投与確認状態S1512においては、血糖計102はインスリン投与を行ったか否かを使用者に問い合わせる入力待ち状態になる。使用者が操作部608を操作した結果、入出力制御部1402はインスリン投与確認フラグを真又は偽のいずれかに設定し(分岐点S1513)、それぞれ「投与しました」表示状態S1514、或は「投与しませんでした」表示状態S1515に移行する。なお、これらの状態からは、入力のやり直しのためにインスリン投与確認状態S1512に戻ることができる。
「投与しました」表示状態S1514、或は「投与しませんでした」表示状態S1515のいずれの状態でも、血糖計102は所定のメニュー画面を表示部615に表示して、使用者の操作を待つ。使用者の操作によって、これら状態からメニュー表示状態S1501、或は患者IDスキャン状態S1502に移行する。
【0062】
以上に説明した状態遷移図の中で、入出力制御部1402がフラグの内容を確認する場面が二箇所ある。
一つは、患者IDスキャン状態S1502で患者IDを読み取った後の、血糖値測定フラグとインスリン投与量表示フラグの論理の組み合わせを見る時(分岐点S1503)である。
もう一つは、血糖値測定状態S1505において血糖値の測定を行った後の、インスリン投与量表示フラグの論理を見る時(分岐点S1506)である。
【0063】
また、以上に説明した状態遷移図の中で、入出力制御部1402がフラグを書き換える場面が三箇所ある。
一つは、血糖値表示(1)状態S1507の後(S1507)の、血糖値測定フラグの設定(分岐点S1509)である。
もう一つは、インスリン投与量表示状態S1510の後(S1511)の、インスリン投与量表示フラグの設定(処理S1511)である。
もう一つは、インスリン投与確認状態S1512の後(S1513)の、インスリン投与確認フラグの設定(分岐点S1513)である。
【0064】
患者の血糖値を測定して、その後その患者にインスリンを投与する場合は、S1502−S1503−S1505−S1506−S1507−S1510−S1511−S1512−S1513−S1514−S1502という処理の流れを辿る。
患者の血糖値を測定して、その後その患者にインスリンを投与せずに次の患者の血糖値を測定する場合は、S1502−S1503−S1505−S1506−S1507−S1502という処理の流れを辿る。
血糖値を測定済の患者に対してインスリンを投与する場合や、最初からインスリンの投与のみを行うだけの場合は、S1502−S1504−S1510−S1511−S1512−S1513−S1514−S1502という処理の流れを辿る。
最初から患者の血糖値を測定するだけの場合や、既にインスリン投与量を表示した患者に対して再度血糖値を測定する場合は、S1502−S1503−S1505−S1508−S1502という処理の流れを辿る。
【0065】
図16及び図17は、血糖計102の処理の流れを示すフローチャートである。図15の状態遷移図の動作の流れを説明するものである。
電源スイッチ204を投入する等で処理を開始すると(S1601)、先ず、血糖計102はメニュー表示処理を行う(S1602=図15のS1501)。ここで電源スイッチ204をオフ操作すると、処理を終了する(S1603)。
メニュー表示処理(S1602)を終えると、血糖計102はバーコードリーダ208で患者IDを読み取る、患者IDスキャン処理を行う(S1604=図15のS1502)。
患者IDスキャン処理(S1604)で患者IDを読み取ると、入出力制御部1402は内部患者テーブル112の当該患者IDのレコードにある、血糖値測定フラグとインスリン投与量表示フラグを見る(S1605=図15のS1503)。ここで、血糖値測定フラグが真で、且つインスリン投与量表示フラグが偽である場合には(S1605のN)、血糖計102は血糖値表示(3)処理を行う(S1606=図15のS1504)。そうでない場合、つまり血糖値測定フラグが偽か、或はインスリン投与量表示フラグが真のいずれかである場合には(S1605のY)、血糖計102は血糖値測定処理を行う(S1607=図15のS1505)。
【0066】
血糖値測定処理(S1607)で血糖値の測定を行うと、入出力制御部1402は次にインスリン投与量表示フラグの確認を行う(S1608=図15のS1506)。インスリン投与量表示フラグが偽であれば(S1608のY)、血糖計102は血糖値表示(1)処理を行う(S1611=図15のS1507)。そうでない場合、つまりインスリン投与量表示フラグが真である場合には(S1608のN)、血糖計102は血糖値表示(2)処理を行う(S1609=図15のS1508)。
【0067】
図17を参照して説明を続ける。
血糖計102は、血糖値表示(1)処理(S1611)を終えると、使用者の操作によって次の状態に移行する。
血糖値計測をもう一度やり直す場合には(S1712のN及びS1713のN)、当該患者の血糖値測定フラグを偽のままにして(S1715)、患者IDスキャン処理(S1604)に戻る。
現在血糖値を計測した患者に対するインスリン投与処方を行わず、次の患者の血糖値計測に移行する場合には(S1712のN及びS1713のY)、当該患者の血糖値測定フラグを真に設定した上で(S1714)、患者IDスキャン処理(S1604)に戻る。
現在血糖値を計測した患者に対するインスリン投与処方を行う場合には(S1712のY)、当該患者の血糖値測定フラグを真に設定した上で(S1716)、インスリン投与量表示処理を行う(S1717=図15のS1510)。
ステップS1712、S1713、S1714、S1715及びS1716は、図15のS1509の処理内容を詳細に記したものである。
【0068】
血糖値表示(3)処理(S1606)を終えると、血糖計102は当該患者の血糖値を表示する。その後、血糖計102はインスリン投与量表示処理を行う(S1717)。
【0069】
インスリン投与量表示処理(S1717)では、血糖計102は内部患者テーブル112の内容に従って、当該患者に対するインスリン投与量を表示する。この表示処理を行った後、入出力制御部1402はインスリン投与量表示フラグを真に設定して(S1718=図15のS1511)、インスリン投与確認処理を行う(S1719=図15のS1512)。
【0070】
インスリン投与確認処理(S1719)では、血糖計102はインスリン投与を行ったか否かを使用者に問い合わせる入力を待つ。
使用者が操作部608を操作した結果、使用者がインスリン投与を行ったと入力したのであれば(S1720のY)、入出力制御部1402はインスリン投与確認フラグを真に設定し(S1721)、「投与しました」表示を行う(S1722=図15のS1514)。そして、入力のやり直しを可能にするために、確認入力を受け付け(S1723)、「戻る」(S1723のN)以外の選択肢が選ばれると(S1723のY)、選択結果に従って(S1727)、メニュー表示処理に戻るか(S1727のY)、或は患者IDスキャン処理から始める(S1727のN)。
使用者が操作部608を操作した結果、使用者がインスリン投与を行わなかったと入力したのであれば(S1720のN)、入出力制御部1402はインスリン投与確認フラグを偽に設定し(S1724)、「投与しませんでした」表示を行う(S1725=図15のS1515)。そして、入力のやり直しを可能にするために、確認入力を受け付け(S1726)、「戻る」(S1726のN)以外の選択肢が選ばれると(S1726のY)、選択結果に従って(S1727)、メニュー表示処理に戻るか(S1727のY)、或は患者IDスキャン処理から始める(S1727のN)。
【0071】
図18は、内部患者テーブル112とカウンタ変数テーブル1406のフィールドとその関係を示す図である。
図11に示した内部患者テーブル112のフィールド一覧と比べると、図18に示す内部患者テーブル112は、表示するフィールドを絞っている。「患者ID」フィールド、「測定・表示・投与フラグ」フィールドと「測定有無フラグ」フィールドのみ表示している。
前述の通り、「測定・表示・投与フラグ」フィールドは、「血糖値測定フラグ」、「インスリン投与量表示フラグ」及び「インスリン投与確認フラグ」の、三つのフラグが格納されているフィールドである。
カウンタ変数テーブル1406は、「患者ID」フィールドと、「カウンタ変数」フィールドのみを持つ。
【0072】
「血糖値測定フラグ」、「インスリン投与量表示フラグ」及び「インスリン投与確認フラグ」と、「測定有無フラグ」の組み合わせによって、
・当該患者は血糖値測定をする対象者であるのか、
・そして当該患者は血糖値測定を行ったのか、
・当該患者はインスリン投与をする対象者であるのか、
・そして当該患者はインスリン投与を行ったのか、
を知ることができる。
【0073】
図19は、血糖計102のインスリン投与確認処理のフローチャートである。この処理は、入出力制御部1402にカレンダクロック607から1秒ずつ与えられるパルスに呼応して起動される処理である。
カレンダクロック607が発するパルスによって処理が起動されると(S1901)、入出力制御部1402は内部患者テーブル112の先頭レコードを注目する(S1902)。
【0074】
これ以降はループ処理である。
入出力制御部1402は、内部患者テーブル112の、現在注目しているレコードの患者がどういう状態であるのかを確認する。具体的には、
・血糖値を測定すべき患者であって(測定有無フラグ=真)、
・血糖値を測定した(血糖値測定フラグ=真)にもかかわらず、
・インスリン投与量の表示が行われていない(インスリン投与量表示フラグ=偽)
状態であるか否かを確認する(S1903)。
以上の条件に当てはまる場合(S1903のY)は、カウンタ変数テーブル1406の、当該患者のカウンタ変数の値をインクリメントする(S1904)。
【0075】
次に、そのインクリメントしたカウンタ変数の値が、警告を表示すべき値に達したか否かを確認する(S1905)。カウンタ変数は1秒ごとにインクリメントされるので、その値は「血糖値計測後インスリン投与量表示が行われないまま経過した時間」である。これに対し、「警告を表示すべき値」すなわち閾値は、例えば30分、或は1時間等の、看護師の業務遂行に支障が生じない程度で、且つインスリン投与が忘れられていると思しき時間を、予め測定データ管理装置104から任意に設定しておく。
【0076】
カウンタ変数の値が閾値を越えたら(S1905のY)、その患者についてインスリン投与が忘れられている可能性がある。そこで、入出力制御部1402は今患者の血糖値測定等の作業をしていないか確認する(S1906)。その上で、そのような作業が行われていないのであれば(S1906のY)、ブザーを鳴らし、該当する患者のIDと氏名フリガナを表示部に表示する(S1907)。
以上の作業を、内部患者テーブル112のレコードの順番に行う(S1908のNからS1903)。以上の確認作業を全ての患者のレコードについて終えたら(S1908のY)、処理を終了する(S1909)。
【0077】
なお、ステップS1903の判断処理で、当該患者が前述の条件に合致していない場合(S1903のN)は、カウンタ変数をインクリメントする対象者ではないので、当該患者のカウンタ変数を0にリセットする(S1910)。
また、ステップS1905の判断処理で、カウンタ変数が閾値に達していなければ(S1905のN)、そのまま何もせずに次の患者の確認処理に移行する(S1908)。
更に、ステップS1906の判断処理で、現在患者の血糖値測定等の作業をしている時は(S1906のN)、そのような作業中にブザーを鳴らしてしまうと、看護師等の使用者を驚かせてしまい、却って医療事故を誘発してしまいかねない。そこで、そのまま何もせずに次の患者の確認処理に移行する(S1908)。ブザーを鳴らすのは、患者に対する所定の作業が終わってからにする。
【0078】
図20は、測定データ管理装置104と血糖計102の間に存在するデータやテーブルに含まれているフラグの変化を示す概略図である。
測定データ管理装置104の不揮発性ストレージに格納されている患者情報テーブル1205には、「実施中のラウンドタイプ」フィールドが設けられている。このフィールドには、
・血糖値の測定のみの場合は「1」が、
・インスリンの投与のみの場合は「2」が、
・血糖値の測定とインスリンの投与の療法を行う場合は「3」が、記録される。これらの内容は、血糖計102に指示する実施の内容を示すものである。
患者情報テーブル1205と患者履歴テーブル1212に記録した内容から、患者データ114は作成される。患者データ114には「インスリン療法区分」フィールドがある。このフィールドには、図11にて説明したように、
・血糖値測定のみの場合は「0」が、
・血糖値測定及びスライディングスケールを使用したインスリン投与の場合は「1」が、
・血糖値測定及び固定打ちのインスリン投与の場合は「2」が、
・スライディングスケールを使用したインスリン投与のみの場合は「5」が、
・固定打ちのインスリン投与のみの場合は「6」が、記録される。
【0079】
患者データ114は血糖計102に読み込まれると、内部患者テーブル112に記録される。ここで、患者データ114の「インスリン療法区分」フィールドの値は、「測定・表示・投与フラグ」フィールドの値である
・血糖値測定フラグ、
・インスリン投与量表示フラグ及び
・インスリン投与確認フラグ、
そして「測定有無フラグ」フィールドの値である
・測定有無フラグの、四つのフラグに変換される。
【0080】
血糖値測定のみの場合は、血糖値測定フラグを偽に設定すると共に、インスリン投与を行わせないために、インスリン投与量表示フラグを真に設定する。
インスリン投与確認フラグはインスリン投与確認処理によってのみ「真」に設定されるフラグなので、初期値は必ず「偽」である。
血糖値測定を行うので、測定有無フラグは真に設定する。
つまり、上述のフラグの順番に「0101」と設定される。
【0081】
インスリン投与のみの場合は、血糖値測定フラグを真に設定すると共に、インスリン投与を行う必要があるので、インスリン投与量表示フラグを偽に設定する。
前述の通り、インスリン投与確認フラグの初期値は「偽」である。
血糖値測定を行わないので、測定有無フラグは偽に設定する。
つまり、上述のフラグの順番に「1000」と設定される。
【0082】
血糖値測定とインスリン投与の両方を行う場合は、血糖値測定フラグが偽、インスリン投与量表示フラグが偽、インスリン投与確認フラグが「偽」、測定有無フラグが「真」である。したがって、「0001」となる。
【0083】
血糖値測定のみの場合に、血糖値測定を完遂すると、血糖値測定フラグは真に設定されるので、「0101」から「1101」に変化する。
【0084】
インスリン投与のみの場合に、インスリン投与を完遂すると、インスリン投与量表示フラグとインスリン投与確認フラグが夫々真に設定されるので、「1000」から「1110」に変化する。
【0085】
血糖値測定とインスリン投与の両方の場合に、その両方共完遂すると、血糖値測定フラグ、インスリン投与量表示フラグ、そしてインスリン投与確認フラグの全てが真に設定されるので、「0001」から「1111」に変化する。
【0086】
内部患者テーブル112の、これらフラグの値は、患者測定データ117の「血糖測定フラグ」フィールドの値に変換される。
・フラグが「1101」の場合は、血糖値測定のみ完遂した「1」に、
・フラグが「1110」の場合は、インスリン投与のみ完遂した「2」に、
・フラグが「1111」の場合は、血糖値測定とインスリン投与の両方を完遂した「3」に、
変換される。
この変換された値がそのまま患者履歴テーブル1212の「インスリン投与結果」フィールドに記録される。
【0087】
患者情報テーブル1205の「実施中のラウンドタイプ」フィールドの値と、患者履歴テーブル1212の「インスリン投与結果」フィールドの値とが比較され、一致していれば指示通りに作業が完遂されたと判断でき、一致していなければ指示通りの作業が行われなかったと判断できる。
【0088】
内部患者テーブル112の各フラグの値が「0101」のまま、「1000」のまま、或は「0001」のままであれば、それらは血糖値測定もインスリン投与も行われていないことを示す。その場合は、患者測定データ117の「血糖測定フラグ」フィールドには「0」が記録される。
また、「測定+投与」の時は、血糖値測定だけが行われ、インスリン投与をし忘れる場合がある。このとき、フラグは「0001」から血糖値測定だけを行い、インスリン投与量表示処理をし忘れた「1001」或はインスリン投与量表示は行ったもののインスリン投与確認を行わなかった「1101」のいずれかになる。これら二つのフラグの値は、患者測定データ117の「血糖測定フラグ」フィールドの「測定のみ実行」である「1」に対応する。
【0089】
患者情報テーブル1205の「実施中のラウンドタイプ」フィールドの値が血糖値測定のみを示す「1」の時に、患者履歴テーブル1212の「インスリン投与結果」フィールドの値が「0」の場合は、当該患者の血糖値測定をし忘れたと判断できる。
患者情報テーブル1205の「実施中のラウンドタイプ」フィールドの値がインスリン投与のみを示す「2」の時に、患者履歴テーブル1212の「インスリン投与結果」フィールドの値が「0」の場合は、当該患者のインスリン投与をし忘れたと判断できる。
患者情報テーブル1205の「実施中のラウンドタイプ」フィールドの値が血糖値測定及びインスリン投与を示す「3」の時に、患者履歴テーブル1212の「インスリン投与結果」フィールドの値が「0」の場合は、当該患者の血糖値測定とインスリン投与の両方をし忘れたと判断できる。
患者情報テーブル1205の「実施中のラウンドタイプ」フィールドの値が血糖値測定及びインスリン投与を示す「3」の時に、患者履歴テーブル1212の「インスリン投与結果」フィールドの値が「1」の場合は、当該患者のインスリン投与をし忘れたと判断できる。
【0090】
測定データ管理装置104は、以上のように患者情報テーブル1205の「実施中のラウンドタイプ」フィールドの値と患者履歴テーブル1212の「インスリン投与結果」フィールドの値とを照合することで、当該患者に対して実施すべき内容が行われたか否かを判断できる。
血糖値測定或はインスリン投与をし忘れた患者に対しては、再度自動的にラウンドデータを作成して血糖計102へ転送することで、実施漏れをなくすことができる。その際、ラウンドデータの作成処理は測定データ管理装置104が自動的に作成するので、使用者は実施し忘れた患者を再度確認する等の煩雑な作業をせずに、迅速に再ラウンドに臨むことができる。
【0091】
ラウンドデータの再作成は、以下の通りになる。
(1)血糖値測定のみ、インスリン投与のみの場合はそのまま同じデータを送信する。
(2)血糖値測定とインスリン投与の両方を指示したにもかかわらず、その両方共実施されていなかった場合は、そのまま同じデータを送信する。
【0092】
(3)血糖値測定とインスリン投与の両方を指示したにもかかわらず、血糖値測定だけが実施され、インスリン投与が実施されていなかった場合は、インスリン投与のみのデータを作成して送信する。
このとき、血糖計102から受信した患者測定データ117に含まれている、当該患者の血糖値を、新たに作成する患者データ114の「患者測定履歴データ」フィールドに、最新のデータとして記録する。
血糖計102は、患者データ114の「インスリン療法区分」フィールドが、スライディングスケールを使用したインスリン投与のみを示す「5」に設定されていることを検出すると、「患者測定履歴データ」フィールド中の最新の血糖値を読み出す。そして、その血糖値を用いて「スライディングスケール投与情報」フィールド内のスライディングスケール1009を照会(検索)し、当該患者に投与すべきインスリンの種類とインスリン投与量を得る。
【0093】
本実施形態では、
・患者データ114の「インスリン療法区分」フィールドの値が「1」或は「2」が指定された場合に、
・内部患者テーブル112のフラグは、「血糖値測定フラグ」、「インスリン投与量表示フラグ」、「インスリン投与確認フラグ」、「測定有無フラグ」の順に「0001」と設定される。
この状態において、血糖値計測だけが行われ、インスリン投与量の表示が行われないと、「1001」となってしまう。
入出力制御部1402は、1秒毎に内部患者テーブル112を監視し、フラグが「1001」となっている患者のレコードを見つけると、血糖値測定作業等をしていない状態、つまり図15のメニュー表示状態S1501、或は患者IDスキャン状態S1502の時にブザーを鳴らし、警告画面を表示する。
【0094】
図21は、血糖計102のLCD203に表示される警告画面の一例である。このように、内部患者テーブル112で見つけた、インスリン未投与患者の一覧を表示する。
LCD203にこの表示がなされた時に、使用者がカーソルキー205或はエンターキー206のいずれかを押すと、入出力制御部1402はこれを受けてブザーの鳴動を止める。そして、図15の患者IDスキャン状態S1502になる。バーコードリーダで患者IDを読み取り、一通りの認証処理が行われた後は、血糖値表示(3)状態S1504を経て、インスリン投与量表示状態S1510に移行する。インスリン投与量表示状態S1510の後はインスリン投与量表示フラグが設定される(処理S1511)ので、図19のチェックルーチンによって当該患者のカウンタ変数はリセットされる(図19のステップS1905)。
さもなくば、他の患者の処理が終わって、メニュー表示状態S1501或は患者IDスキャン状態S1502に移行する度に、警告のブザーは鳴動し、LCDには未実施患者が再度表示されることとなる。
【0095】
本実施形態は、以下のような応用例もある。
(1)内部患者テーブル112のチェック処理の際、血糖値計測を行わず、インスリン投与のみが指示されている患者に対しても前述と同様のチェックを行うことができる。この場合、測定有無フラグは偽であると共に、血糖値測定フラグは真になることはないので、カウンタ変数のインクリメントを開始する判断基準を別途設ける必要がある。具体的には、血糖計102をクレードルから引き抜いた後、最初の患者の患者ID読取処理、血糖値測定処理或はインスリン投与処理のいずれかで、作業が開始されたことを示すフラグを真に設定する。このフラグが真に設定されていれば、カウンタ変数をインクリメントする。そして、インスリン投与量表示フラグが真になったら、カウンタ変数をリセットする。
【0096】
本実施形態においては、血糖値計測システムを開示した。
血糖計102は、測定データ管理装置から受信した患者データを内部患者テーブル112に書き出す。その際、フラグを展開して保持しておく。
フラグは所定の作業を進めるにつれて変化する。
血糖計102は、1秒毎に内部患者テーブル112の全レコードのチェック処理を行う。チェックは、血糖値測定を実施しているにもかかわらず、インスリン投与量の表示が行われていない患者について、カウンタ変数を1秒ずつインクリメントする。カウンタ変数が所定の時間を越えたことを検出したら、警告のブザーを鳴らすと共に、未実施患者をLCDに表示する。
警告のブザーによってインスリン投与の未実施が使用者に明確に伝わる。そして、未実施患者の一覧をLCDに表示することで、どの患者に対して処置を行わなければならないのかが迅速に判る。
警告表示後、ブザーを止めるキー操作の直後に、直ちに患者IDをスキャンできるので、迅速なインスリン投与処置が実現できる。
更に、ブザーの鳴動は血糖値計測等の作業が行われていない時に限って行われるので、医療事故の誘発を防ぐ。
【0097】
以上、本発明の実施形態例について説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含むことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本実施の形態の例である、血糖値計測システムの全体概略図である。
【図2】血糖計の外観斜視図である。
【図3】血糖計を四方向から見た図である。
【図4】血糖計をクレードルから離脱した状態での、クレードルの外観図である。
【図5】血糖計をクレードルに装着した状態での、クレードルの外観図である。
【図6】血糖計の内部ブロック図である。
【図7】クレードルの内部ブロック図である。
【図8】血糖計とクレードルと測定データ管理装置との接続状態を示すブロック図である。
【図9】測定データ管理装置のブロック図である。
【図10】血糖計にて行う血糖測定作業の流れを説明する概略図である。
【図11】各テーブルの内部構成と関係を記す図である。
【図12】血糖計と測定データ管理装置との間で行われる通信の流れを示すフロー図である。
【図13】血糖計と測定データ管理装置との間で行われる通信の流れを示すフロー図である。
【図14】血糖計の機能ブロック図である。
【図15】血糖計の状態遷移図である。
【図16】血糖計の処理の流れを示すフローチャートである。
【図17】血糖計の処理の流れを示すフローチャートである。
【図18】内部患者テーブルとカウンタ変数テーブルのフィールドとその関係を示す図である。
【図19】血糖計のインスリン投与確認処理のフローチャートである。
【図20】測定データ管理装置と血糖計の間に存在するデータやテーブルに含まれているフラグの変化を示す概略図である。
【図21】血糖計のLCDに表示される警告画面の一例である。
【符号の説明】
【0099】
101…血糖値計測システム、102…血糖計、103…クレードル、104…測定データ管理装置、105…USBケーブル、112…内部患者テーブル112、114…患者データ、115…使用者基礎データ、116…チップロットデータ、117…患者測定データ、202…光学測定部、203…LCD、204…電源スイッチ、205…カーソルキー、206…エンターキー、207…バーコードキー、208…バーコードリーダ、209…電源端子、210…赤外線通信窓、211…バッテリ蓋、212…測定チップ、302…イジェクトレバー、402…充電端子、403…赤外線通信窓、602…CPU、603…ROM、604…RAM、605…バス、606…サーミスタ、607…カレンダクロック、608…操作部、609…発光ダイオード、610…ドライバ、611…D/A変換器、612…フォトトランジスタ、613…A/D変換器、614…不揮発性ストレージ、615…表示部、616…ブザー、617…赤外線通信部、618…電源回路、702…CPU、703…ROM、704…RAM、705…バス、706…USBインターフェース、717…赤外線通信部、718…充電回路、902…バス、903…CPU、904…ROM、905…RAM、906…不揮発性ストレージ、907…表示部、908…USBインターフェース、909…入力部、1002…患者、1003…患者ID、1004…看護師、1005…使用者ID、1006…箱、1007…チップロットナンバー、1008…注射器、1009…スライディングスケール、1205…患者情報テーブル、1212…患者履歴テーブル、1402…入出力制御部、1403…表示制御部、1404…患者データ変換部、1405…患者測定データ変換部、1406…カウンタ変数テーブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖計に適用して好適な技術に関する。
より詳細には、病院内で複数の患者を対象として、血糖値の測定とインスリンの投与を、安全且つ確実に実行できる、血糖測定値管理システムの一部を構成する血糖計に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、糖尿病は膵臓のインスリン分泌異常に起因する。そのため、糖尿病患者は食事前に血糖値を測定し、その値に応じてインスリンを投与する必要がある。
【0003】
従来、家庭内で患者或はその家族が血糖値を簡便に測定するために、出願人は、小型化した血糖値測定装置(以下「血糖計」)を開発し、製造販売している。出願人による血糖計の特許出願を、特許文献1及び2として示す。
【0004】
【特許文献1】特開平10−19888号公報
【特許文献2】特開平10−318928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの患者が入院している病院では、この家庭用血糖計をそのまま医療現場にて使用している、という実態が報告されている。
しかし、家庭用途の血糖計では、単に血糖値を測定する機能しか備わっておらず、患者の取り違えやインスリン重複投与等の事故を未然に防止するための、安全面の工夫が設けられていない。
更に、多くの患者の血糖値測定処理とインスリン投与処置をそれぞれまとめて行うような、医療作業効率を考慮した機能が設けられていない。
今、医療現場向けに、安全面や作業効率等の観点から機能を洗練させた、新たな血糖計が求められている。
【0006】
血糖計を病院で使う場合、血糖値測定を行う看護師は、複数の患者の血糖値を測定することが多い。また、その際、インスリン投与処置も同時に行うことが多い。
周知のように、医療現場における看護師の業務は激務である。このため、複数の患者に対する血糖値の測定や、インスリン投与処置をし忘れる、という医療事故が起こり易い。
特に、血糖値測定をまとめて行った後にインスリン投与をまとめて行う、という作業の流れでは、インスリン投与をし忘れる患者が発生する可能性が高い。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決し、複数の患者に対するインスリン等投与処置のし忘れを迅速に警告し、また迅速に再度それらの処置を実行することができる、新規な血糖計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の血糖計は、血糖値計測の指示の有無とインスリン投与の指示の有無とが患者毎に記録されている内部患者テーブルと、一定周期のパルスを発生するパルス発生部と、パルス発生部から生じるパルスを受けて、内部患者テーブルの中から血糖値計測を実行してインスリン投与を行っていない患者の存在を見つけて、警告を生じる入出力制御部とを備えるものである。
【0009】
入出力制御部は、一定周期毎、例えば1秒毎に内部患者テーブルを監視する。そして、内部患者テーブルの各レコード毎に、血糖値計測を実行してインスリン投与を行っていない患者のレコードを見つけると、警告を発生する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、複数の患者に対するインスリン等投与処置のし忘れを迅速に警告し、また迅速に再度それらの処置を実行することができる、新規な血糖計を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図1〜図21を参照して説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態の例である、血糖値計測システムの全体概略図である。
血糖値計測システム101は、血糖計102と、クレードル103と、測定データ管理装置104で構成される。
血糖計102は、リチウムイオンバッテリで動作する携帯型機器であり、概ね大人の手に収まる大きさである。
医師や看護師等が患者の血糖値を測定する場合には、通常、血糖計102を病院内の病棟に持ち込み、患者からごく微量の採血を行い、血糖値を測定する。
血糖計102は、血糖値の測定及びインスリンの投与を行った後、必ずクレードル103に載置する。
クレードル103は、血糖計102のバッテリを充電すると共に、データの送受信を行うインターフェースの役割を担っている。
この、クレードル103を介して血糖計102がデータを送受信する相手が、測定データ管理装置104である。
【0013】
パソコンよりなる測定データ管理装置104は、クレードル103とUSBケーブル105にて接続されている。
測定データ管理装置104には周知のOSが稼動している。更にOS上では、パソコンに測定データ管理装置104としての機能を実現するプログラムが稼動している。
【0014】
血糖計102をクレードル103に装着すると、直ちに測定データ管理装置104との通信が実行される。その際、血糖計102内に内部患者テーブル112が存在していれば、この内部患者テーブル112に記憶されている測定データが患者測定データ117に変換された後、直ちに測定データ管理装置104へ送信される。
また、測定データ管理装置104から所定のコマンドを送信することで、測定データ管理装置104は血糖計102から図示しない血糖計設定データをダウンロードすることができる。
更に、測定データ管理装置104は、患者データ114、使用者基礎データ115及びチップロットデータ116を血糖計102へアップロードすることができる。
これらデータの詳細は後述する。
【0015】
[血糖計102]
図2(a)及び(b)は、血糖計102の外観斜視図である。
図3(a)、(b)、(c)及び(d)は、血糖計102を四方向から見た図である。
なお、説明の便宜上、図2(a)及び図3(a)に示す、LCDが設けられている面を本体表面、図2(b)に示す、バッテリ蓋が設けられている面を本体裏面と称する。
【0016】
図3(a)及び(c)に示すように、血糖計102の先端には、光学測定部202が設けられている。
光学測定部202は血糖測定チップ212(以下「測定チップ」)が着脱可能な形状になっている。使用済みの測定チップ212は、イジェクトレバー302を操作することで光学測定部202から取り外すことができる。
図2(a)及び図3(a)に示す、液晶表示画面であるLCD203が設けられている側面には、LCD203の横に電源スイッチ204とカーソルキー205、エンターキー206、そしてバーコードキー207が設けられている。
電源スイッチ204は血糖計102の電源オン/オフのためのスイッチである。
カーソルキー205は、LCD203に表示される複数の項目のうちの一つを選択するために、カーソルを移動するキーである。
エンターキー206はカーソルで選択した項目を「実行する」或は「選択する」指示を行うキーである。
バーコードキー207は、図3(d)に示す、血糖計102の光学測定部202とは反対の側面に設けられているバーコードリーダ208を稼動させるためのボタンである。
バーコードリーダ208は、周知の赤色レーザダイオードと受光素子の組み合わせよりなるバーコード読取装置である。なお、受光素子に代えてCCD或はCMOS等のイメージセンサを用いることもできる。
【0017】
血糖計102の基本的な血糖測定の仕組みは、従来技術と同様である。以下、概略を簡単に説明する。
光学測定部202に測定チップ212を取り付け、測定対象者の血液を測定チップ212に吸引させる。この測定チップ212には、ポリエーテルサルホン等の多孔質膜等でできた試験紙が内蔵されている。そして、測定チップ212に吸引された血液は、試験紙に到達すると、試験紙に含まれている試薬と反応して、発色する。この発色反応には数秒から10数秒前後の時間を要するが、この反応は、周囲の気温によって影響を受ける。
所定の反応時間を経過した後に、発光素子により試験紙に光を当て、試験紙からの反射光を受光素子にて受光する。そして、受光素子から得られたアナログの受光強度信号をデジタル値に変換した後、このデジタル値を血糖値に変換してLCD203に表示する。
なお、血糖計102側の仕組みは、発色試薬を利用した前記光学測定方式に限らず、電気化学センサー方式など、従来から血糖測定に使用され得る仕組みを採用することができる。
【0018】
図2(b)に示すように、本体裏面の、バーコードリーダ208近傍には、電源端子209と赤外線通信窓210が設けられている。血糖計102をクレードル103に装着すると、電源端子209がクレードル103に設けられている充電端子402(図4参照)と接触し、充電が行われると共に、クレードル103との赤外線通信が行われる。なお、本体裏面にはバッテリ蓋211も設けられている。
【0019】
[クレードル103]
図4(a)及び(b)は、血糖計102をクレードル103から離脱した状態での、クレードル103の外観図であり、図5(a)及び(b)は、血糖計102をクレードル103に装着した状態での、クレードル103の外観図である。
図4(a)及び(b)に示すように、クレードル103の、血糖計102の電源端子209に相対する箇所には充電端子402が設けられている。同様に、クレードル103の、血糖計102の赤外線通信窓210に相対する箇所には赤外線通信窓403が設けられている。
血糖計102の赤外線通信窓210及びクレードル103の赤外線通信窓403の中には、それぞれ赤外線発光ダイオード619及び719とフォトトランジスタ620及び720が内蔵されている。これらは周知のIrDA(アイアールディーエー: Infrared Data Association)仕様に従う赤外線シリアル通信インターフェースを構成する。
【0020】
図1に示したように、クレードル103はUSBケーブル105を通じて、パソコンに接続されている。クレードル103は、血糖計102のバッテリを充電する役目をもっており、一台のパソコンに多数のクレードル103が接続され得ることから、パソコンのUSB端子から電源供給を受けないセルフパワードデバイスとして構成されている。
【0021】
[ハードウェア]
図6は血糖計102の内部ブロック図である。
血糖計102は、マイコンよりなるシステムであり、CPU602、ROM603及びRAM604と、それらを接続するバス605から構成されている。バス605には、上記の構成以外に、主にデータ入力機能を提供する部分と、データ出力機能を提供する部分も接続されている。
【0022】
血糖計102のデータ入力機能は、血糖計102にとって重要な血糖値測定データを得るための光学測定部202と、温度データを得るためのサーミスタ606、バーコードリーダ208、カレンダクロック607、そして操作部608がある。
光学測定部202は、発光ダイオード609、そのドライバ610、ドライバ610に接続されるD/A変換器611よりなる発光部と、フォトトランジスタ612とA/D変換器613よりなる受光部よりなる。発光ダイオード609は、適切な強度の光を測定チップ212内の試験紙に照射する必要があるので、予め後述する不揮発性ストレージ614に記憶してある強度データに基づいて発光するように制御される。つまり、発光強度データを不揮発性ストレージ614から読み出し、D/A変換器611でアナログの電圧信号に変換後、ドライバ610で電力増幅して、発光ダイオード609を発光駆動する。また、フォトトランジスタ612が受光した光の強度信号電圧は、A/D変換器613によって数値データに変換される。そして、この変換された数値データがRAM604及び不揮発性ストレージ614の所定領域に記録される。
【0023】
また、血糖計102はサーミスタ606を備えており、このサーミスタ606の抵抗変化によって血糖計102が存在する環境の気温を測定できる。前述のフォトトランジスタ612と同様に、サーミスタ606の抵抗値はA/D変換器613によって数値化され、数値データはRAM604及び不揮発性ストレージ614の所定領域に記録される。なお、受光強度と気温を同時に測定する必要はないので、A/D変換器613はフォトトランジスタ612とサーミスタ606とで共用されている。
【0024】
カレンダクロック607は周知の日時データ出力機能を提供するICであり、多くのマイコンやパソコン等に標準搭載されているものである。
本発明の実施の形態の血糖計102では、血糖値を測定した時点の日時情報を得る必要があるため、日時情報は重要な情報である。つまり、収集するデータと日時情報は極めて深い関係を有する。そして、血糖値を測定した時点の日時情報は、血糖値と共に内部患者テーブル112に記録する必要がある。このため、図中で敢えてカレンダクロック607を明記している。
【0025】
血糖計102のデータ出力機能としては、LCD203よりなる表示部615と、ブザー616と、赤外線通信部617がある。
表示部615には、ROM603に格納され、CPU602によって実行されるプログラムによって、様々な画面が表示される。表示画面の詳細は後述する。
ブザー616は、主にバーコードリーダ208がバーコードを正常に読み取ったことや、血糖値測定における測定完了、赤外線通信の完了、或はエラーメッセージを操作者に告知するために利用される。設定次第では、操作部608の操作の度毎に鳴らすこともできる。
赤外線通信部617は、前述の通り、IrDAのシリアルインターフェースを構成している。そして、電源回路618が、電源端子209の電圧変化によりクレードル103から電源供給を受けたことを検出すると、電源回路618はバス605を通じてCPU602に報告する。そして、CPU602の制御によって赤外線通信部617の赤外線通信機能が起動され、不揮発性ストレージ614に格納されている各種データファイルの送受信と更新が行われる。
つまり、赤外線通信の際は、血糖計102の操作部608などの操作は不要で、クレードル103に装着すると直ちに赤外線通信が実行される。
【0026】
血糖計102内部のマイコンを構成する要素のうち、データ入出力機能の他に、データ記憶機能を提供する、EEPROMよりなる不揮発性ストレージ614がある。この不揮発性ストレージ614には、使用者基礎データ115、チップロットデータ116、内部患者テーブル112、血糖計設定データ等が格納される。これらはクレードル103を介した測定データ管理装置104との通信の際に更新される。なお、EEPROMの代わりにフラッシュメモリ等を用いてもよい。不揮発性ストレージ614に格納されるデータの容量は少ないので、不揮発性ストレージ614に要求される記憶容量は数MB〜数十MB程度でよい。
【0027】
図7はクレードル103の内部ブロック図である。
図8は、血糖計102とクレードル103と測定データ管理装置104との接続状態を示すブロック図である。
クレードル103は、マイコンを構成するCPU702、ROM703、RAM704と、赤外線通信部717と、USBインターフェース706と、充電回路718と、これらを接続するバス705により構成される。
充電回路718は、充電端子402の電圧変化から負荷である血糖計102が接続されたことを検出すると、バス705を通じてCPU702にその旨を報告する。そして、CPU702の制御によって赤外線通信部717の赤外線通信機能が起動され、赤外線通信部717とUSBインターフェース706を介して、血糖計102と測定データ管理装置104との間の通信が行われる。
【0028】
以上説明したように、血糖計102とクレードル103の間はIrDAによって接続され、クレードル103と測定データ管理装置104の間はUSBによって接続されている。この点で、クレードル103は、測定データ管理装置104と血糖計102との間のデータ通信を仲介するインターフェースの役割を担っている。
【0029】
[測定データ管理装置104]
図9は、測定データ管理装置104のブロック図である。
測定データ管理装置104の実体も、周知のパソコンであり、本実施形態で後述する種々の警告機能や、測定データを管理する機能等を実現するに際し、特別な機能を備えるハードウェアは設けられていない。
パソコンである測定データ管理装置104の内部にはバス902がある。このバス902には、CPU903、ROM904、RAM905、ハードディスク装置等の不揮発性ストレージ906、LCD等の表示部907及びUSBインターフェース908が接続されている。USBインターフェース908には、キーボード及びマウス等の入力部909が接続されている他、クレードル103も接続されている。
【0030】
[血糖計102の血糖測定作業]
次に、図10を参照して、血糖計102にて行う血糖測定作業の流れを説明する。
図10は、血糖計102にて行う血糖測定作業の流れを説明する概略図である。
(1)患者1002の名札等に付されている、バーコードよりなる患者ID1003を、バーコードリーダ208で読み取る。
読み取った患者ID1003は、先ず、内部患者テーブル112の検索キーに用いられる。
予め測定データ管理装置104から送信された患者データ114は、血糖計102内部で内部患者テーブル112に変換されて、不揮発性ストレージ614に記憶されている。この内部患者テーブル112を、患者ID1003で検索する。検索にヒットしたレコードが、これから種々のデータを記録しようとする、内部患者テーブル112における、該当する患者のレコードである。
【0031】
(2)次に、看護師1004の名札等に付されている、バーコードよりなる使用者ID1005を、バーコードリーダ208で読み取る。
読み取った使用者ID1005は、使用者基礎データ115に含まれているか否かが検証される。使用者IDを検索キーとして使用者基礎データ115を検索して、当該使用者IDが存在すれば、内部患者テーブル112の先に特定したレコードの「使用者ID」フィールドに上書きする。
【0032】
(3)次に、測定チップ212の箱1006に印刷されている、バーコードよりなるチップロットナンバー1007を、バーコードリーダ208で読み取る。
読み取ったチップロットナンバー1007は、チップロットデータ116(図1参照)に含まれているか否かが検証される。チップロットナンバーを検索キーとしてチップロットデータ116を検索して、当該チップロットナンバーが存在すれば、内部患者テーブル112の先に特定したレコードの「チップロットナンバー」フィールドに上書きする。
【0033】
(4)(3)で内部患者テーブル112の「チップロットナンバー」フィールドにチップロットナンバーを記録した直後、サーミスタ606で外気温を測定する。そして、外気温が所定範囲内に収まっていると判断したら、内部患者テーブル112の先に特定したレコードの「測定時温度」フィールドに上書きする。
【0034】
(5)血糖計102の光学測定部に測定チップ212を装着し、血糖値を測定する。そして、測定した時点の日時データをカレンダクロック607から得る。
測定した血糖値を、内部患者テーブル112の先に特定したレコードの「血糖値」フィールドに上書きする。日時データを、内部患者テーブル112の先に特定したレコードの「測定日時」フィールドに上書きする。
また、「血糖値を測定した」という「事実」を示すフラグが、「測定・表示・投与フラグ」フィールドに記録される。
その後、LCD203(表示部615)に測定した血糖値を表示する。
【0035】
(6)測定した血糖値で、当該患者1002のスライディングスケール1009を検索し、当該患者1002に処方する、インスリン等の薬剤の種類とその投与量を、LCD203に表示する。スライディングスケール1009は内部患者テーブル112内に、患者ID毎に格納されている。スライディングスケール1009の詳細は図11にて後述する。
(7)看護師1004がLCD203に表示された処方に従って、注射器1008にてインスリン等の投与を行った後、その事実をエンターキー206で入力する。すると、「処方した」という「事実」を示すフラグが、内部患者テーブル112の「測定・表示・投与フラグ」フィールドに記録される。
【0036】
以上に示した測定作業によって、
・どの患者の、
・測定予定時刻に対し、
・どの測定者が、
・どのチップロットナンバーのチップを用いて、
・どんな外気温の環境下において、
・血糖値を測定したか否か、
・(血糖値を測定したなら)血糖値はどんな値か、
・(血糖値を測定したなら)そのときの日時はいつなのか、
・インスリン等の処方をしたか否か
が、内部患者テーブル112に記録される。
【0037】
血糖値測定作業とインスリン処方作業は、概ね患者の食後の決まった時間帯に行われる。また、食前の決まった時間帯に行うこともある。測定作業及び処方作業は、複数名の患者に対し、決まった時間帯にまとめて行われる。
この、複数名の患者に対し、所定の時間帯にまとめて行われる、血糖値測定及び/またはインスリン処方の作業単位を、「ラウンド」と呼ぶ。例えば、「朝食後30分の1ラウンド」等と呼び、取り扱われる。
血糖計102は、血糖値測定作業及びインスリン等処方作業の間違いを起こさないために、1ラウンドに必要なデータのみが、測定データ管理装置104から送信される。これが、患者データ114、使用者基礎データ115及びチップロットデータ116である。
そして、ラウンド終了後は、必ず血糖計102をクレードル103に載置しなければならない。血糖計102をクレードル103に載置すると、直ちに患者測定データ117が内部患者テーブル112の所定のフィールドを抜き出して作られた後、血糖計102から測定データ管理装置104に送信される。測定データ管理装置104はこれを受信して、内部の患者履歴テーブル1212に記録する。
【0038】
図11は、各テーブルの内部構成と関係を記す図である。Entity-Relationshipの頭文字より「ER図」とも呼ばれる図である。なお、この図11は、図1に示す、測定データ管理装置104と血糖計102との間で送受信されるテーブルの関係に基づいて描かれている。
測定データ管理装置104から送信される患者データ114は、「インスリン療法区分」フィールド以外の全てのフィールドがそのまま内部患者テーブル112に記録される。内部患者テーブル112は、血糖計102内部の不揮発性ストレージ614の中に設けられている。
患者データ114の「インスリン療法区分」フィールドは、所定の変換処理を経て、内部患者テーブル112の「測定・表示・投与フラグ」フィールドと「測定有無フラグ」フィールドに記録される。
測定データ管理装置104から送信されるチップロットデータ116及び使用者基礎データ115は、血糖計102内部の不揮発性ストレージ614にそのまま記憶される。そして、測定作業中にバーコードリーダ208から読み取ったもの(チップロットナンバー及び使用者ID)が、その都度内部患者テーブル112に記録される。
【0039】
[患者データ114]
これより、患者データ114の各フィールドを説明する。
患者データ114の「インスリン療法区分」フィールドには、
0:血糖値測定のみ
1:血糖値測定+スライディングスケールを使用したインスリン投与
2:血糖値測定+スライディングスケールを使用しない(以下「固定打ち」)インスリン投与
5:スライディングスケールを使用したインスリン投与のみ(血糖値測定せず)
6:固定打ちのインスリン投与のみ(血糖値測定せず)
の、いずれか一つが記録される。
【0040】
スライディングスケールとは、処方箋データを意味する。これは、計測した血糖値の範囲に対して、投与するインスリン等の薬剤の量を列挙したテーブルである。
「固定打ち」とは、血糖値の計測結果の如何にかかわらず、一定量のインスリン等の薬剤を投与することを意味する。
患者データ114の「スライディングスケール投与情報」フィールドには、このスライディングスケールが格納される。
【0041】
患者データ114の「インスリン療法区分」フィールドの値は、血糖計102に対し、患者毎に行うべき作業を指示するフラグ情報である。例えば:
・「0」であれば、当該患者には血糖値の測定だけを行う。
・「1」であれば、当該患者には血糖値の測定と、スライディングスケールを用いたインスリン投与を行う。
以下、「2」「5」「6」も同様である。
【0042】
「患者ID」フィールドは、患者を識別する番号であり、図10で説明したように、患者1002の着衣に付されているバーコードに記録されている。「患者フリガナ」フィールドは、患者の氏名のカタカナによるフリガナである。これは患者IDと共に血糖計102のLCD203に表示し、血糖計102を操作する測定者が目の前の患者を正しく識別するために用いられる。
「血糖測定予定時刻」フィールドは、ラウンドを実施する予定の時刻であると共に、測定データ管理装置104側でデータを特定する際の検索キーとしても使われる。
「測定値下限値」フィールドと「測定値上限値」フィールドは、インスリン投与を実施可能な、血糖値の範囲を示す。これは特に「インスリン療法区分」フィールドの値が「1」または「2」の場合に、患者の容態を間接的に知ると共に、不適切なインスリン投与による事故を未然に防ぐために設けられている。要するに、この血糖値の範囲外である場合、患者の容態が思わしくないので、インスリン投与の実施に適さないと判断できるのである。
「患者測定履歴データ」フィールドは、当該患者の直近の血糖値測定履歴情報が複数格納されるフィールドである。また、「インスリン療法区分」フィールドの値が「5」の時に、直近に測定した血糖値を格納しておき、この値を基にスライディングスケールを用いたインスリン投与を実施する。
以上が、患者データ114の各フィールドの説明である。
【0043】
[内部患者テーブル112]
これより、内部患者テーブル112の各フィールドを説明する。
「測定・表示・投与フラグ」フィールドは、「血糖値測定フラグ」、「インスリン投与量表示フラグ」及び「インスリン投与確認フラグ」の、三つのフラグが格納されているフィールドである。
「測定有無フラグ」フィールドには、
・患者データ114の「インスリン療法区分」フィールドが「0」、「1」または「2」の時は論理の「真」を示す「1」が、
・患者データ114のインスリン療法区分フィールドが「5」または「6」の時は論理の「偽」を示す「0」が、記録される。
「測定・表示・投与フラグ」フィールドは、(1)血糖値測定作業を完遂した直後、(2)インスリン投与量を表示したとき、(3)インスリン投与を実施した旨の入力をしたときに、それぞれ変化する。
「測定・表示・投与フラグ」フィールドと「測定有無フラグ」フィールドの内容は、患者測定データ117の「血糖測定フラグ」フィールドに反映される。
なお、これらフラグの内容と変化の詳細は、後述する。
【0044】
「患者ID」フィールド、「患者フリガナ」フィールド、「血糖測定予定時刻」フィールド、「測定値下限値」フィールド、「測定値上限値」フィールド、「スライディングスケール投与情報」フィールド及び「患者測定履歴データ」フィールドは、患者データ114からそっくりそのままコピーされる。
「使用者ID」フィールドは、バーコードリーダ208で読み取られた使用者IDが、チップロットデータ116による照合を経て、記録される。
「チップロットナンバー」フィールドは、バーコードリーダ208で読み取られたチップロットナンバーが、使用者基礎データ115による照合を経て、記録される。
「測定日時」フィールド、「血糖値」フィールド及び「測定時温度」フィールドの各フィールドの値は、図10にて説明したように、血糖計102の血糖値測定作業の際に記録される。
以上が、内部患者テーブル112の各フィールドの説明である。
【0045】
[患者測定データ117]
内部患者テーブル112のうち、測定データ管理装置104で必要となる、「患者ID」フィールド、「使用者ID」フィールド、「測定日時」フィールド、「血糖値」フィールド、「測定時温度」フィールド、「チップロットナンバー」フィールド及び「血糖測定予定時刻」フィールドは、そっくりそのまま患者測定データ117として出力される。
「測定・表示・投与フラグ」フィールドと「測定有無フラグ」フィールドの内容は、所定の変換処理を経て、「血糖測定フラグ」フィールドのデータとして出力される。
以上が、患者測定データ117の各フィールドの説明である。
【0046】
図12及び図13は、血糖計102と測定データ管理装置104との間で行われる通信の流れを示すフロー図である。
測定データ管理装置104はクレードル103に対して常にポーリングを行っている(S1201)。このような状態で、血糖計102をクレードル103に装着すると、血糖計102は測定データ管理装置104から発されるポーリングコマンドに反応する。測定データ管理装置104はこれを受けて、直ちに血糖計102の存在を識別する。この、血糖計102と測定データ管理装置104との間の通信確立までの動作を、ネゴシエーションと呼ぶ(S1202)。
看護師等の使用者は、測定データ管理装置104を操作して、ラウンドのためのデータを作成する(S1203)。そして、「転送」を指示すると、患者データ114、使用者基礎データ115及びチップロットデータ116が血糖計102へ送信される(S1204)。また、このとき、測定データ管理装置104内の患者情報テーブル1205に、患者データ114の一部内容が書き込まれる(S1206)。
【0047】
使用者はクレードル103から血糖計102を引き抜き、患者に対する血糖値測定及びインスリン処方を行う(S1207)。
使用者は、一通り測定と処方を終了したら、血糖計102をクレードル103に載置する。すると、先程と同様に、血糖計102と測定データ管理装置104との間のネゴシエーションが確立される(S1208及びS1209)。
測定データ管理装置104は、ネゴシエーション確立後、血糖計102に対して患者測定データ117の転送を要求する(S1210)。血糖計102はこれを受けて、内部患者テーブル112から患者測定データ117を作成し、これを測定データ管理装置104へ転送する(S1211)。
測定データ管理装置104は受信した患者測定データ117の内容を患者履歴テーブル1212に記録する(S1213)。そして、患者履歴テーブル1212に記録した内容と、先に患者情報テーブル1205に記録していた内容との照合を行う(S1214)。この照合は、血糖計102に対して指示した内容の通りに作業が遂行されたか否かを検証するための照合である。
例えば、指示内容が「血糖値測定のみ」であれば、血糖値の測定が行われたかを確認する。
同様に、指示内容が「血糖値測定とインスリン投与」であれば、血糖値の測定とインスリン投与が行われたかを確認する。
この照合作業の結果、一人でも指示内容と実行結果との間に不整合があれば、測定データ管理装置104はその表示部907に警告(ワーニング)を表示する(S1215)。
【0048】
図13を参照して、説明を続ける。
警告表示後、測定データ管理装置104は操作者に対して所定の操作を要求する(S1316)。これは、血糖値測定或はインスリン投与のいずれか或は両方が未実施である、つまり実施し忘れた患者に対し、再度実施を行うためのデータ転送をするか否かを問う操作である。操作者がデータの再転送を命ずる操作を行うと、測定データ管理装置104はデータを作成し(S1317)、再度、患者データ114等を血糖計102へ転送する(S1318)。また、先程と同様に患者情報テーブル1205にも所定のデータを書く(S1319)。
【0049】
この後は、先程と同様の動作が続く。
使用者はクレードル103から血糖計102を引き抜き、患者に対する血糖値測定及びインスリン処方を行う(S1320)。
使用者は、一通り測定と処方を終了したら、血糖計102をクレードル103に載置する。すると、血糖計102と測定データ管理装置104との間のネゴシエーションが確立される(S1321及びS1322)。
測定データ管理装置104は、ネゴシエーション確立後、血糖計102に対して患者測定データ117の転送を要求する(S1323)。血糖計102はこれを受けて、内部患者テーブル112から患者測定データ117を作成し、これを測定データ管理装置104へ転送する(S1324)。
【0050】
測定データ管理装置104は受信した患者測定データ117の内容を患者履歴テーブル1212に記録する(S1325)。そして、患者履歴テーブル1212に記録した内容と、先に患者情報テーブル1205に記録していた内容との照合を行う(S1326)。
この照合作業の結果、全ての患者について指示内容と実行結果との間の不整合がなければ、測定データ管理装置104はその表示部907に「OK」を表示する(S1327)。
【0051】
一方、血糖計102は、患者測定データ117を測定データ管理装置104へ転送した(S1324)後、内部患者テーブル112を削除する(S1328)。この動作により、血糖計102は常に最新のデータでのみ血糖値測定或はインスリン投与を行うことを担保できる。
【0052】
改めて、上記動作の流れを大まかに説明すると、以下のようになる。
(1)最初に、測定データ管理装置104から患者データ114等を血糖計102に転送する。
(2)血糖値測定及びインスリン処方等を遂行する。
(3)一通り測定と処方を終了したら、血糖計102をクレードル103に載置する。
(4)すると、受信した患者測定データ117の内容が記録された患者履歴テーブル1212と患者情報テーブル1205との照合を行い、不一致が見つかり、測定データ管理装置104の表示部907に警告が表示される。
(5)再度、未実施患者の分の患者データ114等を血糖計102に転送する。
(6)血糖値測定及びインスリン処方等を遂行する。
(7)一通り測定と処方を終了したら、血糖計102をクレードル103に載置する。
(8)すると、受信した患者測定データ117の内容が記録された患者履歴テーブル1212と患者情報テーブル1205との照合を行い、全患者について一致して、一連の処理を終了する。
【0053】
血糖計102は、1回のラウンドを行う対象となる患者のデータだけが記憶される。
仮に、一部の患者の血糖値計測やインスリン投与をし忘れてしまった場合、測定データ管理装置104は、受信した患者計測データを検証して、血糖値計測やインスリン投与が行われなかった患者を特定する。そして、その特定された患者に対して、行うべき必要な処置のためのデータだけを再度作成する。つまり「再ラウンド」を行う。
血糖計102の、「一回分のラウンドだけを実行する」という設計は、血糖値計測やインスリン投与の間違いを絶対に起こさせないとする思想に基づく。
【0054】
図14は、血糖計102の機能ブロック図である。
バーコードリーダ208、サーミスタ606、血糖センサともいえる光学測定部の一部であるフォトトランジスタ612及び操作部608から発されるデータ等は、入出力制御部1402に入力される。
また、入出力制御部1402は、不揮発性ストレージ614内の使用者基礎データ115、チップロットデータ116及び内部患者テーブル112との間で、データの入出力を行う。
使用者に見せたい内容は、入出力制御部1402にて作成され、表示制御部1403を通じて表示部615によって表示される。
内部患者テーブル112は、赤外線通信部617から受信される患者データ114を、患者データ変換部1404が変換することで作成される。また、内部患者テーブル112は、患者測定データ変換部1405によって患者測定データ117に変換され、赤外線通信部617を通じて測定データ管理装置104に送信される。
【0055】
カレンダクロック607は、入出力制御部1402に、1秒単位の割り込みパルスを供給する。
RAM604には、カウンタ変数テーブル1406が設けられている。カウンタ変数テーブル1406は内部患者テーブル112と関連付けられている。
また、入出力制御部1402には、使用者に警告すべき状態が発生したことを通知するための、ブザー616が接続されている。
【0056】
図15は、血糖計102の状態遷移図である。
先ず、電源を投入すると、血糖計102はメニュー表示状態S1501になる。メニュー表示状態S1501から所定の操作を行うことにより、血糖計102はバーコードリーダ208で患者IDを読み取る、患者IDスキャン状態S1502になる。
患者IDスキャン状態S1502において、バーコードリーダ208で患者IDを読み取ると、入出力制御部1402は内部患者テーブル112の当該患者IDのレコードにある、血糖値測定フラグとインスリン投与量表示フラグを見る(分岐点S1503)。ここで、血糖値測定フラグが真で、且つインスリン投与量表示フラグが偽である場合には、血糖計102は血糖値表示(3)状態S1504に移行する。そうでない場合、つまり血糖値測定フラグが偽か、或はインスリン投与量表示フラグが真のいずれかである場合には、血糖計102は血糖値測定状態S1505に移行する。
【0057】
血糖値測定状態S1505において血糖値の測定を行うと、入出力制御部1402は次にインスリン投与量表示フラグの確認を行う(分岐点S1506)。インスリン投与量表示フラグが偽であれば、血糖計102は血糖値表示(1)状態S1507に移行する。そうでない場合、つまりインスリン投与量表示フラグが真である場合には、血糖計102は血糖値表示(2)状態S1508に移行する。
【0058】
血糖計102は、血糖値表示(1)状態S1507からは、使用者の操作(分岐点S1509)によって次の状態に移行する。
血糖値計測をもう一度やり直す場合には、当該患者の血糖値測定フラグを偽のままにして、患者IDスキャン状態S1502に戻る。
現在血糖値を計測した患者に対するインスリン投与処方を行わず、次の患者の血糖値計測に移行する場合には、当該患者の血糖値測定フラグを真に設定した上で、患者IDスキャン状態S1502に戻る。
現在血糖値を計測した患者に対するインスリン投与処方を行う場合には、当該患者の血糖値測定フラグを真に設定した上で、インスリン投与量表示状態S1510に移行する。
【0059】
血糖値表示(3)状態S1504では、血糖計102は当該患者の血糖値を表示する。その後、血糖計102はインスリン投与量表示状態S1510に移行する。
【0060】
インスリン投与量表示状態S1510においては、血糖計102は内部患者テーブル112の内容に従って、当該患者に対するインスリン投与量を表示する。この表示処理を行った後、入出力制御部1402はインスリン投与量表示フラグを真に設定して(処理S1511)、インスリン投与確認状態S1512に移行する。
【0061】
インスリン投与確認状態S1512においては、血糖計102はインスリン投与を行ったか否かを使用者に問い合わせる入力待ち状態になる。使用者が操作部608を操作した結果、入出力制御部1402はインスリン投与確認フラグを真又は偽のいずれかに設定し(分岐点S1513)、それぞれ「投与しました」表示状態S1514、或は「投与しませんでした」表示状態S1515に移行する。なお、これらの状態からは、入力のやり直しのためにインスリン投与確認状態S1512に戻ることができる。
「投与しました」表示状態S1514、或は「投与しませんでした」表示状態S1515のいずれの状態でも、血糖計102は所定のメニュー画面を表示部615に表示して、使用者の操作を待つ。使用者の操作によって、これら状態からメニュー表示状態S1501、或は患者IDスキャン状態S1502に移行する。
【0062】
以上に説明した状態遷移図の中で、入出力制御部1402がフラグの内容を確認する場面が二箇所ある。
一つは、患者IDスキャン状態S1502で患者IDを読み取った後の、血糖値測定フラグとインスリン投与量表示フラグの論理の組み合わせを見る時(分岐点S1503)である。
もう一つは、血糖値測定状態S1505において血糖値の測定を行った後の、インスリン投与量表示フラグの論理を見る時(分岐点S1506)である。
【0063】
また、以上に説明した状態遷移図の中で、入出力制御部1402がフラグを書き換える場面が三箇所ある。
一つは、血糖値表示(1)状態S1507の後(S1507)の、血糖値測定フラグの設定(分岐点S1509)である。
もう一つは、インスリン投与量表示状態S1510の後(S1511)の、インスリン投与量表示フラグの設定(処理S1511)である。
もう一つは、インスリン投与確認状態S1512の後(S1513)の、インスリン投与確認フラグの設定(分岐点S1513)である。
【0064】
患者の血糖値を測定して、その後その患者にインスリンを投与する場合は、S1502−S1503−S1505−S1506−S1507−S1510−S1511−S1512−S1513−S1514−S1502という処理の流れを辿る。
患者の血糖値を測定して、その後その患者にインスリンを投与せずに次の患者の血糖値を測定する場合は、S1502−S1503−S1505−S1506−S1507−S1502という処理の流れを辿る。
血糖値を測定済の患者に対してインスリンを投与する場合や、最初からインスリンの投与のみを行うだけの場合は、S1502−S1504−S1510−S1511−S1512−S1513−S1514−S1502という処理の流れを辿る。
最初から患者の血糖値を測定するだけの場合や、既にインスリン投与量を表示した患者に対して再度血糖値を測定する場合は、S1502−S1503−S1505−S1508−S1502という処理の流れを辿る。
【0065】
図16及び図17は、血糖計102の処理の流れを示すフローチャートである。図15の状態遷移図の動作の流れを説明するものである。
電源スイッチ204を投入する等で処理を開始すると(S1601)、先ず、血糖計102はメニュー表示処理を行う(S1602=図15のS1501)。ここで電源スイッチ204をオフ操作すると、処理を終了する(S1603)。
メニュー表示処理(S1602)を終えると、血糖計102はバーコードリーダ208で患者IDを読み取る、患者IDスキャン処理を行う(S1604=図15のS1502)。
患者IDスキャン処理(S1604)で患者IDを読み取ると、入出力制御部1402は内部患者テーブル112の当該患者IDのレコードにある、血糖値測定フラグとインスリン投与量表示フラグを見る(S1605=図15のS1503)。ここで、血糖値測定フラグが真で、且つインスリン投与量表示フラグが偽である場合には(S1605のN)、血糖計102は血糖値表示(3)処理を行う(S1606=図15のS1504)。そうでない場合、つまり血糖値測定フラグが偽か、或はインスリン投与量表示フラグが真のいずれかである場合には(S1605のY)、血糖計102は血糖値測定処理を行う(S1607=図15のS1505)。
【0066】
血糖値測定処理(S1607)で血糖値の測定を行うと、入出力制御部1402は次にインスリン投与量表示フラグの確認を行う(S1608=図15のS1506)。インスリン投与量表示フラグが偽であれば(S1608のY)、血糖計102は血糖値表示(1)処理を行う(S1611=図15のS1507)。そうでない場合、つまりインスリン投与量表示フラグが真である場合には(S1608のN)、血糖計102は血糖値表示(2)処理を行う(S1609=図15のS1508)。
【0067】
図17を参照して説明を続ける。
血糖計102は、血糖値表示(1)処理(S1611)を終えると、使用者の操作によって次の状態に移行する。
血糖値計測をもう一度やり直す場合には(S1712のN及びS1713のN)、当該患者の血糖値測定フラグを偽のままにして(S1715)、患者IDスキャン処理(S1604)に戻る。
現在血糖値を計測した患者に対するインスリン投与処方を行わず、次の患者の血糖値計測に移行する場合には(S1712のN及びS1713のY)、当該患者の血糖値測定フラグを真に設定した上で(S1714)、患者IDスキャン処理(S1604)に戻る。
現在血糖値を計測した患者に対するインスリン投与処方を行う場合には(S1712のY)、当該患者の血糖値測定フラグを真に設定した上で(S1716)、インスリン投与量表示処理を行う(S1717=図15のS1510)。
ステップS1712、S1713、S1714、S1715及びS1716は、図15のS1509の処理内容を詳細に記したものである。
【0068】
血糖値表示(3)処理(S1606)を終えると、血糖計102は当該患者の血糖値を表示する。その後、血糖計102はインスリン投与量表示処理を行う(S1717)。
【0069】
インスリン投与量表示処理(S1717)では、血糖計102は内部患者テーブル112の内容に従って、当該患者に対するインスリン投与量を表示する。この表示処理を行った後、入出力制御部1402はインスリン投与量表示フラグを真に設定して(S1718=図15のS1511)、インスリン投与確認処理を行う(S1719=図15のS1512)。
【0070】
インスリン投与確認処理(S1719)では、血糖計102はインスリン投与を行ったか否かを使用者に問い合わせる入力を待つ。
使用者が操作部608を操作した結果、使用者がインスリン投与を行ったと入力したのであれば(S1720のY)、入出力制御部1402はインスリン投与確認フラグを真に設定し(S1721)、「投与しました」表示を行う(S1722=図15のS1514)。そして、入力のやり直しを可能にするために、確認入力を受け付け(S1723)、「戻る」(S1723のN)以外の選択肢が選ばれると(S1723のY)、選択結果に従って(S1727)、メニュー表示処理に戻るか(S1727のY)、或は患者IDスキャン処理から始める(S1727のN)。
使用者が操作部608を操作した結果、使用者がインスリン投与を行わなかったと入力したのであれば(S1720のN)、入出力制御部1402はインスリン投与確認フラグを偽に設定し(S1724)、「投与しませんでした」表示を行う(S1725=図15のS1515)。そして、入力のやり直しを可能にするために、確認入力を受け付け(S1726)、「戻る」(S1726のN)以外の選択肢が選ばれると(S1726のY)、選択結果に従って(S1727)、メニュー表示処理に戻るか(S1727のY)、或は患者IDスキャン処理から始める(S1727のN)。
【0071】
図18は、内部患者テーブル112とカウンタ変数テーブル1406のフィールドとその関係を示す図である。
図11に示した内部患者テーブル112のフィールド一覧と比べると、図18に示す内部患者テーブル112は、表示するフィールドを絞っている。「患者ID」フィールド、「測定・表示・投与フラグ」フィールドと「測定有無フラグ」フィールドのみ表示している。
前述の通り、「測定・表示・投与フラグ」フィールドは、「血糖値測定フラグ」、「インスリン投与量表示フラグ」及び「インスリン投与確認フラグ」の、三つのフラグが格納されているフィールドである。
カウンタ変数テーブル1406は、「患者ID」フィールドと、「カウンタ変数」フィールドのみを持つ。
【0072】
「血糖値測定フラグ」、「インスリン投与量表示フラグ」及び「インスリン投与確認フラグ」と、「測定有無フラグ」の組み合わせによって、
・当該患者は血糖値測定をする対象者であるのか、
・そして当該患者は血糖値測定を行ったのか、
・当該患者はインスリン投与をする対象者であるのか、
・そして当該患者はインスリン投与を行ったのか、
を知ることができる。
【0073】
図19は、血糖計102のインスリン投与確認処理のフローチャートである。この処理は、入出力制御部1402にカレンダクロック607から1秒ずつ与えられるパルスに呼応して起動される処理である。
カレンダクロック607が発するパルスによって処理が起動されると(S1901)、入出力制御部1402は内部患者テーブル112の先頭レコードを注目する(S1902)。
【0074】
これ以降はループ処理である。
入出力制御部1402は、内部患者テーブル112の、現在注目しているレコードの患者がどういう状態であるのかを確認する。具体的には、
・血糖値を測定すべき患者であって(測定有無フラグ=真)、
・血糖値を測定した(血糖値測定フラグ=真)にもかかわらず、
・インスリン投与量の表示が行われていない(インスリン投与量表示フラグ=偽)
状態であるか否かを確認する(S1903)。
以上の条件に当てはまる場合(S1903のY)は、カウンタ変数テーブル1406の、当該患者のカウンタ変数の値をインクリメントする(S1904)。
【0075】
次に、そのインクリメントしたカウンタ変数の値が、警告を表示すべき値に達したか否かを確認する(S1905)。カウンタ変数は1秒ごとにインクリメントされるので、その値は「血糖値計測後インスリン投与量表示が行われないまま経過した時間」である。これに対し、「警告を表示すべき値」すなわち閾値は、例えば30分、或は1時間等の、看護師の業務遂行に支障が生じない程度で、且つインスリン投与が忘れられていると思しき時間を、予め測定データ管理装置104から任意に設定しておく。
【0076】
カウンタ変数の値が閾値を越えたら(S1905のY)、その患者についてインスリン投与が忘れられている可能性がある。そこで、入出力制御部1402は今患者の血糖値測定等の作業をしていないか確認する(S1906)。その上で、そのような作業が行われていないのであれば(S1906のY)、ブザーを鳴らし、該当する患者のIDと氏名フリガナを表示部に表示する(S1907)。
以上の作業を、内部患者テーブル112のレコードの順番に行う(S1908のNからS1903)。以上の確認作業を全ての患者のレコードについて終えたら(S1908のY)、処理を終了する(S1909)。
【0077】
なお、ステップS1903の判断処理で、当該患者が前述の条件に合致していない場合(S1903のN)は、カウンタ変数をインクリメントする対象者ではないので、当該患者のカウンタ変数を0にリセットする(S1910)。
また、ステップS1905の判断処理で、カウンタ変数が閾値に達していなければ(S1905のN)、そのまま何もせずに次の患者の確認処理に移行する(S1908)。
更に、ステップS1906の判断処理で、現在患者の血糖値測定等の作業をしている時は(S1906のN)、そのような作業中にブザーを鳴らしてしまうと、看護師等の使用者を驚かせてしまい、却って医療事故を誘発してしまいかねない。そこで、そのまま何もせずに次の患者の確認処理に移行する(S1908)。ブザーを鳴らすのは、患者に対する所定の作業が終わってからにする。
【0078】
図20は、測定データ管理装置104と血糖計102の間に存在するデータやテーブルに含まれているフラグの変化を示す概略図である。
測定データ管理装置104の不揮発性ストレージに格納されている患者情報テーブル1205には、「実施中のラウンドタイプ」フィールドが設けられている。このフィールドには、
・血糖値の測定のみの場合は「1」が、
・インスリンの投与のみの場合は「2」が、
・血糖値の測定とインスリンの投与の療法を行う場合は「3」が、記録される。これらの内容は、血糖計102に指示する実施の内容を示すものである。
患者情報テーブル1205と患者履歴テーブル1212に記録した内容から、患者データ114は作成される。患者データ114には「インスリン療法区分」フィールドがある。このフィールドには、図11にて説明したように、
・血糖値測定のみの場合は「0」が、
・血糖値測定及びスライディングスケールを使用したインスリン投与の場合は「1」が、
・血糖値測定及び固定打ちのインスリン投与の場合は「2」が、
・スライディングスケールを使用したインスリン投与のみの場合は「5」が、
・固定打ちのインスリン投与のみの場合は「6」が、記録される。
【0079】
患者データ114は血糖計102に読み込まれると、内部患者テーブル112に記録される。ここで、患者データ114の「インスリン療法区分」フィールドの値は、「測定・表示・投与フラグ」フィールドの値である
・血糖値測定フラグ、
・インスリン投与量表示フラグ及び
・インスリン投与確認フラグ、
そして「測定有無フラグ」フィールドの値である
・測定有無フラグの、四つのフラグに変換される。
【0080】
血糖値測定のみの場合は、血糖値測定フラグを偽に設定すると共に、インスリン投与を行わせないために、インスリン投与量表示フラグを真に設定する。
インスリン投与確認フラグはインスリン投与確認処理によってのみ「真」に設定されるフラグなので、初期値は必ず「偽」である。
血糖値測定を行うので、測定有無フラグは真に設定する。
つまり、上述のフラグの順番に「0101」と設定される。
【0081】
インスリン投与のみの場合は、血糖値測定フラグを真に設定すると共に、インスリン投与を行う必要があるので、インスリン投与量表示フラグを偽に設定する。
前述の通り、インスリン投与確認フラグの初期値は「偽」である。
血糖値測定を行わないので、測定有無フラグは偽に設定する。
つまり、上述のフラグの順番に「1000」と設定される。
【0082】
血糖値測定とインスリン投与の両方を行う場合は、血糖値測定フラグが偽、インスリン投与量表示フラグが偽、インスリン投与確認フラグが「偽」、測定有無フラグが「真」である。したがって、「0001」となる。
【0083】
血糖値測定のみの場合に、血糖値測定を完遂すると、血糖値測定フラグは真に設定されるので、「0101」から「1101」に変化する。
【0084】
インスリン投与のみの場合に、インスリン投与を完遂すると、インスリン投与量表示フラグとインスリン投与確認フラグが夫々真に設定されるので、「1000」から「1110」に変化する。
【0085】
血糖値測定とインスリン投与の両方の場合に、その両方共完遂すると、血糖値測定フラグ、インスリン投与量表示フラグ、そしてインスリン投与確認フラグの全てが真に設定されるので、「0001」から「1111」に変化する。
【0086】
内部患者テーブル112の、これらフラグの値は、患者測定データ117の「血糖測定フラグ」フィールドの値に変換される。
・フラグが「1101」の場合は、血糖値測定のみ完遂した「1」に、
・フラグが「1110」の場合は、インスリン投与のみ完遂した「2」に、
・フラグが「1111」の場合は、血糖値測定とインスリン投与の両方を完遂した「3」に、
変換される。
この変換された値がそのまま患者履歴テーブル1212の「インスリン投与結果」フィールドに記録される。
【0087】
患者情報テーブル1205の「実施中のラウンドタイプ」フィールドの値と、患者履歴テーブル1212の「インスリン投与結果」フィールドの値とが比較され、一致していれば指示通りに作業が完遂されたと判断でき、一致していなければ指示通りの作業が行われなかったと判断できる。
【0088】
内部患者テーブル112の各フラグの値が「0101」のまま、「1000」のまま、或は「0001」のままであれば、それらは血糖値測定もインスリン投与も行われていないことを示す。その場合は、患者測定データ117の「血糖測定フラグ」フィールドには「0」が記録される。
また、「測定+投与」の時は、血糖値測定だけが行われ、インスリン投与をし忘れる場合がある。このとき、フラグは「0001」から血糖値測定だけを行い、インスリン投与量表示処理をし忘れた「1001」或はインスリン投与量表示は行ったもののインスリン投与確認を行わなかった「1101」のいずれかになる。これら二つのフラグの値は、患者測定データ117の「血糖測定フラグ」フィールドの「測定のみ実行」である「1」に対応する。
【0089】
患者情報テーブル1205の「実施中のラウンドタイプ」フィールドの値が血糖値測定のみを示す「1」の時に、患者履歴テーブル1212の「インスリン投与結果」フィールドの値が「0」の場合は、当該患者の血糖値測定をし忘れたと判断できる。
患者情報テーブル1205の「実施中のラウンドタイプ」フィールドの値がインスリン投与のみを示す「2」の時に、患者履歴テーブル1212の「インスリン投与結果」フィールドの値が「0」の場合は、当該患者のインスリン投与をし忘れたと判断できる。
患者情報テーブル1205の「実施中のラウンドタイプ」フィールドの値が血糖値測定及びインスリン投与を示す「3」の時に、患者履歴テーブル1212の「インスリン投与結果」フィールドの値が「0」の場合は、当該患者の血糖値測定とインスリン投与の両方をし忘れたと判断できる。
患者情報テーブル1205の「実施中のラウンドタイプ」フィールドの値が血糖値測定及びインスリン投与を示す「3」の時に、患者履歴テーブル1212の「インスリン投与結果」フィールドの値が「1」の場合は、当該患者のインスリン投与をし忘れたと判断できる。
【0090】
測定データ管理装置104は、以上のように患者情報テーブル1205の「実施中のラウンドタイプ」フィールドの値と患者履歴テーブル1212の「インスリン投与結果」フィールドの値とを照合することで、当該患者に対して実施すべき内容が行われたか否かを判断できる。
血糖値測定或はインスリン投与をし忘れた患者に対しては、再度自動的にラウンドデータを作成して血糖計102へ転送することで、実施漏れをなくすことができる。その際、ラウンドデータの作成処理は測定データ管理装置104が自動的に作成するので、使用者は実施し忘れた患者を再度確認する等の煩雑な作業をせずに、迅速に再ラウンドに臨むことができる。
【0091】
ラウンドデータの再作成は、以下の通りになる。
(1)血糖値測定のみ、インスリン投与のみの場合はそのまま同じデータを送信する。
(2)血糖値測定とインスリン投与の両方を指示したにもかかわらず、その両方共実施されていなかった場合は、そのまま同じデータを送信する。
【0092】
(3)血糖値測定とインスリン投与の両方を指示したにもかかわらず、血糖値測定だけが実施され、インスリン投与が実施されていなかった場合は、インスリン投与のみのデータを作成して送信する。
このとき、血糖計102から受信した患者測定データ117に含まれている、当該患者の血糖値を、新たに作成する患者データ114の「患者測定履歴データ」フィールドに、最新のデータとして記録する。
血糖計102は、患者データ114の「インスリン療法区分」フィールドが、スライディングスケールを使用したインスリン投与のみを示す「5」に設定されていることを検出すると、「患者測定履歴データ」フィールド中の最新の血糖値を読み出す。そして、その血糖値を用いて「スライディングスケール投与情報」フィールド内のスライディングスケール1009を照会(検索)し、当該患者に投与すべきインスリンの種類とインスリン投与量を得る。
【0093】
本実施形態では、
・患者データ114の「インスリン療法区分」フィールドの値が「1」或は「2」が指定された場合に、
・内部患者テーブル112のフラグは、「血糖値測定フラグ」、「インスリン投与量表示フラグ」、「インスリン投与確認フラグ」、「測定有無フラグ」の順に「0001」と設定される。
この状態において、血糖値計測だけが行われ、インスリン投与量の表示が行われないと、「1001」となってしまう。
入出力制御部1402は、1秒毎に内部患者テーブル112を監視し、フラグが「1001」となっている患者のレコードを見つけると、血糖値測定作業等をしていない状態、つまり図15のメニュー表示状態S1501、或は患者IDスキャン状態S1502の時にブザーを鳴らし、警告画面を表示する。
【0094】
図21は、血糖計102のLCD203に表示される警告画面の一例である。このように、内部患者テーブル112で見つけた、インスリン未投与患者の一覧を表示する。
LCD203にこの表示がなされた時に、使用者がカーソルキー205或はエンターキー206のいずれかを押すと、入出力制御部1402はこれを受けてブザーの鳴動を止める。そして、図15の患者IDスキャン状態S1502になる。バーコードリーダで患者IDを読み取り、一通りの認証処理が行われた後は、血糖値表示(3)状態S1504を経て、インスリン投与量表示状態S1510に移行する。インスリン投与量表示状態S1510の後はインスリン投与量表示フラグが設定される(処理S1511)ので、図19のチェックルーチンによって当該患者のカウンタ変数はリセットされる(図19のステップS1905)。
さもなくば、他の患者の処理が終わって、メニュー表示状態S1501或は患者IDスキャン状態S1502に移行する度に、警告のブザーは鳴動し、LCDには未実施患者が再度表示されることとなる。
【0095】
本実施形態は、以下のような応用例もある。
(1)内部患者テーブル112のチェック処理の際、血糖値計測を行わず、インスリン投与のみが指示されている患者に対しても前述と同様のチェックを行うことができる。この場合、測定有無フラグは偽であると共に、血糖値測定フラグは真になることはないので、カウンタ変数のインクリメントを開始する判断基準を別途設ける必要がある。具体的には、血糖計102をクレードルから引き抜いた後、最初の患者の患者ID読取処理、血糖値測定処理或はインスリン投与処理のいずれかで、作業が開始されたことを示すフラグを真に設定する。このフラグが真に設定されていれば、カウンタ変数をインクリメントする。そして、インスリン投与量表示フラグが真になったら、カウンタ変数をリセットする。
【0096】
本実施形態においては、血糖値計測システムを開示した。
血糖計102は、測定データ管理装置から受信した患者データを内部患者テーブル112に書き出す。その際、フラグを展開して保持しておく。
フラグは所定の作業を進めるにつれて変化する。
血糖計102は、1秒毎に内部患者テーブル112の全レコードのチェック処理を行う。チェックは、血糖値測定を実施しているにもかかわらず、インスリン投与量の表示が行われていない患者について、カウンタ変数を1秒ずつインクリメントする。カウンタ変数が所定の時間を越えたことを検出したら、警告のブザーを鳴らすと共に、未実施患者をLCDに表示する。
警告のブザーによってインスリン投与の未実施が使用者に明確に伝わる。そして、未実施患者の一覧をLCDに表示することで、どの患者に対して処置を行わなければならないのかが迅速に判る。
警告表示後、ブザーを止めるキー操作の直後に、直ちに患者IDをスキャンできるので、迅速なインスリン投与処置が実現できる。
更に、ブザーの鳴動は血糖値計測等の作業が行われていない時に限って行われるので、医療事故の誘発を防ぐ。
【0097】
以上、本発明の実施形態例について説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含むことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本実施の形態の例である、血糖値計測システムの全体概略図である。
【図2】血糖計の外観斜視図である。
【図3】血糖計を四方向から見た図である。
【図4】血糖計をクレードルから離脱した状態での、クレードルの外観図である。
【図5】血糖計をクレードルに装着した状態での、クレードルの外観図である。
【図6】血糖計の内部ブロック図である。
【図7】クレードルの内部ブロック図である。
【図8】血糖計とクレードルと測定データ管理装置との接続状態を示すブロック図である。
【図9】測定データ管理装置のブロック図である。
【図10】血糖計にて行う血糖測定作業の流れを説明する概略図である。
【図11】各テーブルの内部構成と関係を記す図である。
【図12】血糖計と測定データ管理装置との間で行われる通信の流れを示すフロー図である。
【図13】血糖計と測定データ管理装置との間で行われる通信の流れを示すフロー図である。
【図14】血糖計の機能ブロック図である。
【図15】血糖計の状態遷移図である。
【図16】血糖計の処理の流れを示すフローチャートである。
【図17】血糖計の処理の流れを示すフローチャートである。
【図18】内部患者テーブルとカウンタ変数テーブルのフィールドとその関係を示す図である。
【図19】血糖計のインスリン投与確認処理のフローチャートである。
【図20】測定データ管理装置と血糖計の間に存在するデータやテーブルに含まれているフラグの変化を示す概略図である。
【図21】血糖計のLCDに表示される警告画面の一例である。
【符号の説明】
【0099】
101…血糖値計測システム、102…血糖計、103…クレードル、104…測定データ管理装置、105…USBケーブル、112…内部患者テーブル112、114…患者データ、115…使用者基礎データ、116…チップロットデータ、117…患者測定データ、202…光学測定部、203…LCD、204…電源スイッチ、205…カーソルキー、206…エンターキー、207…バーコードキー、208…バーコードリーダ、209…電源端子、210…赤外線通信窓、211…バッテリ蓋、212…測定チップ、302…イジェクトレバー、402…充電端子、403…赤外線通信窓、602…CPU、603…ROM、604…RAM、605…バス、606…サーミスタ、607…カレンダクロック、608…操作部、609…発光ダイオード、610…ドライバ、611…D/A変換器、612…フォトトランジスタ、613…A/D変換器、614…不揮発性ストレージ、615…表示部、616…ブザー、617…赤外線通信部、618…電源回路、702…CPU、703…ROM、704…RAM、705…バス、706…USBインターフェース、717…赤外線通信部、718…充電回路、902…バス、903…CPU、904…ROM、905…RAM、906…不揮発性ストレージ、907…表示部、908…USBインターフェース、909…入力部、1002…患者、1003…患者ID、1004…看護師、1005…使用者ID、1006…箱、1007…チップロットナンバー、1008…注射器、1009…スライディングスケール、1205…患者情報テーブル、1212…患者履歴テーブル、1402…入出力制御部、1403…表示制御部、1404…患者データ変換部、1405…患者測定データ変換部、1406…カウンタ変数テーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血糖値計測の指示の有無とインスリン投与の指示の有無とが患者毎に記録されている内部患者テーブルと、
一定周期のパルスを発生するパルス発生部と、
前記パルス発生部から生じるパルスを受けて、前記内部患者テーブルの中から血糖値計測を実行してインスリン投与を行っていない患者の存在を見つけて、警告を生じる入出力制御部と
を備える血糖計。
【請求項2】
更に、
前記入出力制御部に接続されているブザーを備え、
前記入出力制御部は、血糖値計測作業とインスリン投与作業のいずれも行っていないときに、前記ブザーを鳴動させるものである、請求項1記載の血糖計。
【請求項1】
血糖値計測の指示の有無とインスリン投与の指示の有無とが患者毎に記録されている内部患者テーブルと、
一定周期のパルスを発生するパルス発生部と、
前記パルス発生部から生じるパルスを受けて、前記内部患者テーブルの中から血糖値計測を実行してインスリン投与を行っていない患者の存在を見つけて、警告を生じる入出力制御部と
を備える血糖計。
【請求項2】
更に、
前記入出力制御部に接続されているブザーを備え、
前記入出力制御部は、血糖値計測作業とインスリン投与作業のいずれも行っていないときに、前記ブザーを鳴動させるものである、請求項1記載の血糖計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2009−243898(P2009−243898A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87205(P2008−87205)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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