説明

血行動態パラメータのためのインピーダンスに基づく測定方法

本発明は、特に、血行動態パラメータを決定するための電気機械的カルジオグラフィ(ELMEC)またはインピーダンスカルジオグラフィ(IKG)測定を行うための、身体または身体セグメントの電気インピーダンスに基づいて、導電性体液の、体積、組成および移動(HZV)を測定する方法に関する。当該方法によれば、少なくとも1つの周波数の交流測定電流(52)が身体(60、70)に導入され、および、少なくとも2つの異なる測定長さ(L、L2、L3、L4、L5)について、本質的に身体の長手方向において、本質的に同じ身体セグメントのインピーダンスおよびその時間的変化(AZ)が測定され、該身体セグメントを通って該交流測定電流が流れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体または身体セグメントの電気インピーダンスに基づいて、導電性体液の体積、組成および移動を測定するための方法に関し、特に、血行動態パラメータを決定するための電気機械的カルジオグラフィ(electromechanocardiography、ELMEC)またはインピーダンスカルジオグラフィ(IKG)測定を行うためのものに関する。
【背景技術】
【0002】
医療の実施において、心臓の機械的な活動を測定することがしばしば必要である。拍動力(stroke force)、変力作用(inotropism)、収縮性(contractility)および駆出率(ejection fraction)を測定するために、心エコー検査法などの異なる方法がある。さらに、一回の心拍で心臓が駆出する血液量、一回拍出量(stroke volume)および他の血行動態(hemodynamic)パラメータがしばしば測定される。従って、心拍数が知られている場合、心拍出量(心拍出量=1分当たりの心拍出量=CO)が計算され得る。これらの値から、心機能が導かれ得、これは、心疾患の診断および新しい生理学的所見の基礎である。しかし、心エコー検査法は、医療職員の常時の存在を必要とするので、ICUにいるかまたは麻酔中の重篤な心疾患を有する患者をモニターするのにはあまり適切ではない。これは重要な問題を構成するので、医者らは、COを決定するために、裁量で多くの他の方法を有している。このような方法の1つは、肺動脈および/または大動脈にカテーテルを導入することを含み、ここで指示薬の値または物質(これは、熱、低温度、塩化ナトリウムまたは塩化リチウムであり得る)によって、測定距離内での該指示薬物質の減少が決定され得、続いてフィックの原理に従ってCOが決定される。この方法の不利な点は、ヒトの管にカテーテルを導入すること、およびそれから生じる合併症(出血および感染など)に関する。従って、この侵襲性の方法は、使い捨てカテーテルに関する高いコストおよび患者に対する高いリスクを含む[ii]。熱希釈または色素希釈の原理もまた、間違いを起こしやすく、従って、通常、もっともらしい結果を得るためには、いくつかの測定の平均が要求される。さらに、体温の変化を生じる身体的な緊張または他の状況もまた、熱希釈において悪い結果を生じる。
【0003】
近年、フィック(Fick)の原理を用いて、肺胞の空気中のガスを測定することによって心拍出量を決定する試みがなされている。これは、血液と肺胞の空気との間の急速なガス交換によって可能とされ、それによって、これらの2つの媒体中の濃度は実質的に等しくなり得る。ガスが肺胞の空気に添加されると、その血液濃度も同様に増加し、ガスの添加が停止されると、血液中および肺胞の空気中のガス含有量は減少し、ここで、フィックの原理に従って、所定の時間単位内での濃度の減少からCOが計算され得る。特にうまくいくと分かっている1つの方法は、CO再呼吸である。ここでは、患者の気道にループが導入され、患者は、血液中のCO濃度を増加させるために、特定の時間、患者自身が呼気した空気を再呼吸する。この方法の不利な点は、患者がマウスピースを装着して呼吸をむしろ定常に保ち、肺胞の空気中および血液中の呼吸ガスの一定の濃度を保証しなければならないことである。従って、この方法は、主として、定常の一回呼吸量および定常の呼吸率を保証する麻酔中で使用される。自然呼吸する患者では、マウスピースを有するチューブシステムを介しての呼吸という不利な点が残っており、これは、呼吸死腔および気道抵抗をかなり増大させ、結果として呼吸の努力をもかなり増大させる。さらに、この方法の精度は、自発呼吸によって有意に低下する。COを測定するための別の方法は、COの代わりに不活性ガスが使用される類似の技術にあり、この不活性ガスは、吸入されて血液中で急速に平衡状態になる。
【0004】
別の方法は、一回拍出量および他の血行動態パラメータをパルス形状から決定することを含んでおり、これは末梢動脈で感知される。パルス形状の変化は、一部は、一回拍出量および他の血行動態パラメータの変化によるものであり、これは、一回拍出量および他の血行動態パラメータの変化の、変換関数による間接的な微分を可能にする。しかし、この方法は、最初に上記技術の1つによる較正を必要とし、十分なほど正確ではない。別の周知の方法は、耳または指の毛細血管における指示薬物質(インジゴグリーンなど)の経皮測定に関するが、これは、フィックの原理の精度を有意に低下させる。
【0005】
当該分野でよく知られた別の方法は、インピーダンスカルジオグラフィ(IKG)である。この方法では、一定の交流電界が胸郭に印加され、交流電界により生じる交流電圧変化は、胸郭液含量の変化を示す。より詳細には、この方法を用いて、交流電流に対する抵抗(インピーダンス)が測定され、これは、胸郭液含量の変化の尺度である。一方、胸郭液含量の変化は、1回の拍動あたりに駆出された血液量の尺度である。一回拍出量および他の血行動態パラメータ(SV)ならびに心拍数(HR)から、心拍出量(CO=SV*HR)が計算され得る。
【0006】
通常、身体に電流を通す一対の電極は、胸郭の上方または上限部および下方または下限部に取り付けられる。この一対の電極間に、第二の1対の電極が、生じる交流電流を測定するために取り付けられる。電極の内側の対は、特定の距離で保持されなければならず、それによって、上方の電圧電極は少なくとも声門のレベルに位置決めされ、下方の電極は剣状突起のレベルに位置決めされる。2つの電極間の距離はまた、胸郭の長さに依存し、以後、電極測定長さLと呼ぶ。インピーダンスは、次の式:Z(t)=u(t)/I(ここで、u(t)は変化する交流電流であり、Iは身体に印加された交流の定実効電流強度である)に従って計算される。
【0007】
今まで、ECG電極に類似の円形電極またはスポット電極のいずれかがこの目的のために使用されている。医療用電極に関する特許出願[iii]には、新しい電極配置が記載されており、ここでは、2つのストリップ(帯状)電極が、同一のシート上に短い距離にわたって互いに平行に延びており、互いからの距離は、共通のキャリアシートによって正確に予め設定されており、再現可能である。共通のキャリアシート上にマウントされたこれらの平行なストリップ電極の1つは、測定電流の適用のために働き、他方の平行なストリップ電極は、測定電圧を感知するよう意図されている。電極の上方の対(または二連電極)は、例えば頸部に位置決めされ得、電極の下方の対は、それぞれ胸郭下口の左右に位置決めされる。この電極配置は、SRAMEKの特許出願US4,450,527[iv](図1aおよび図1b)に記載の以前の円形電極およびスポット電極よりも、結果のより良好な再現性を示す。
【0008】
上記インピーダンス技術の不利な点は、それぞれKUBICEK式[vvi]またはSRAMEK式[viiviii]に従って結果が計算され、両式とも、ヒトの身体について強調して単純化された仮定に基づいているという事実に関する。これらの仮定は、一部しか真実ではなく、これは、一回拍出量および他の血行動態パラメータならびに心拍出量の計算においてかなりの誤差を生じる。
【0009】
式1は、インピーダンス信号の変化から一回拍出量および他の血行動態パラメータを計算するためのKUBICEK式を示す。
【0010】
【数1】

【0011】
ここで、Lは身体表面上の2つの電極間の測定長さ[cm]であり、ρは血液中の抵抗率[Ωcm]であり、Zはベースインピーダンス[Ω]であり、(dZ/dt)maxは、心臓活動による時間に対する電気抵抗およびインピーダンスの変化の一次導関数の最大[Ω/sec]であり、LVETは左心室の駆出時間[sec]である。
【0012】
見たとおり、電極測定長さLは二次の値として式に入力され、ここで、現時点では、この電極測定長さは胸郭表面上で決定される。さらに血液抵抗率ρは、式中において線形値であり、これは、血液抵抗率が主として赤血球の血液含有量に依存することを意味する。
【0013】
LAMBERTSらによる法則[ix]によれば、ρは下式によってヘマトクリットHctからおよそ計算することができる。
【0014】
【数2】

【0015】
あるいは、ρは、類似の式によって概算することができ、または、他の方法では、単に一定に保持される。血液の導電率が、ヘマトクリットによって影響を受けるだけでなく、血漿中のイオン濃度ならびにその中に含まれるタンパク質によっても影響を受けることは、ここでは考慮されない。従って、実験的に決定された式(これは、ただ1つ(全てではない)の血液成分を考慮に入れる)は、血液の正確な導電率も抵抗も、決して与えないであろう。さらに、血液の導電率は、流量によっても影響を受ける。なぜなら、より高い速度の赤血球は、長手方向に配向し、結果として流動断面を増加させるからである。より高い速度および生じる乱流を伴ってもなお、血液抵抗はなおさらに増大し得る。
【0016】
SRAMEKによる式は、胸郭長さが全身体長さの約17%に相当することが実験的に示されているので、電極測定長さの代わりに、身長の17%を使用する。この式における別の仮定は、除数4.25であり、これは、電極測定長さと腰周りとの間の概算関係、ならびに円筒状胸郭モデルと円錐台胸郭モデルとの間の概算一定関係から生じる(US4,450,527、第5欄、50行以降)。従って、身体長さHは、三次値として式に入力される。
【0017】
【数3】

【0018】
BERNSTEIN[]は、この式を、上式に補正因子δを乗じることによって「補正」した。
δ=β(Wreal/Wideal) (4)
ここで、βは血液量指数であり、WidealおよびWrealは、個人の理想の体重および実際の体重である。
【0019】
男性について、理想の体重は、
ideal=0.534H−17.36 (5)
であり、
女性について、理想の体重は、
ideal=0.534H−27.36 (6)
である。
ここで、Hは身長[cm]である。
【0020】
これは、全ての式において、異なる測定単位が混合していることを示す。結果として、得られる式は、正確に誘導された信頼できる数学とは無関係である。人体測定値をこのような式に導入することによって、健康な個人の心臓の一回拍出量および他の血行動態パラメータの間接的な尺度は、一回拍出量および他の血行動態パラメータの計算に直接関係する。健康な心臓を有する個人では、COは身体表面と完璧な関係を示す。結果として、式は、一回拍出量および他の血行動態パラメータの測定、すなわち患者の身体測定とは無関係であるパラメータを含む。従って、身長および声門と剣状突起との間の得られる電極測定長さLに基づいて、背の高い患者は、背の低い患者よりも、より大きな一回拍出量およびより高い他の血行動態パラメータを自動的に有する。KUBICEKによる上式は、同様に身体の寸法の尺度を直接的に含む。
【0021】
図1に示すように、電極間の測定長さは、電極が胸郭上口と胸郭下口との間に正確に配置される場合、驚くべきことに、患者の身長と良好に相関する。
【0022】
上記によれば、心疾患を有しない個人では、出血性で測定された一回拍出量および他の血行動態パラメータは、実際の身長が心拍出量の尺度であるので、インピーダンスカルジオグラフィの結果と良好に対応する。背の高い大柄な個人は、実際、華奢な個人よりも、ある時間単位内でより多くの血液を組織に輸送しなければならない。心疾患の場合、この原理はもはや維持されず、従って、実際の心拍出量とインピーダンスカルジオグラフィによって測定された心拍出量との間の相関は、悪いかまたは存在しない。なぜなら、式に導入された身体測定値はそれらの重要性を失うからである。心疾患を有する個人では、これは、正常でそれゆえ不正確な高い値に向かって非常に大きな偏りを生じる。
【0023】
加えて、インピーダンスカルジオグラフィによって決定された値は、以下の現象のせいで、間違った方向に、すなわち高すぎるCO値に向かって歪む。心不全を有する患者は、疾患のせいで、通常、健康な心臓を有する個人よりも、胸郭中により多くの体液を有する。増加した胸郭液含量は、本来ベースインピーダンスZ(Ω)を低下させる。この値は、逆変換(SRAMEK)または二次の逆変換形態でそれぞれの計算式に入力され、そして高すぎるCO値を与え、これは致命的な診断の誤りを生じ得る。健康な心臓を有する個人では、Zは胸郭幾可学的形状の尺度であり、それは、胸郭液含量が増加した患者の場合ではない。
【0024】
このことは、図2に示されている。ここでは、心不全を有する患者および心不全を有しない患者において、駆出率EFが、Simpson技術に従って心エコー検査法で測定され、COと比較されている。心エコー検査パラメータEFは、この値がよりいっそう正確に決定され得るので、心エコー検査法で測定されたCOの代わりに使用された。見たとおり、COと駆出率との間に関係はないが、インピーダンスカルジオグラフィが心不全にとって適切な方法であった場合は、関係が存在することが予想されるであろう。
【0025】
結果として、インピーダンスカルジオグラフィは、現実的には、少なくとも欧州では、心臓病専門医に受け入れられるようにはならなかった。なぜなら、実際の一回拍出量および他の血行動態パラメータとの一致は、健康な心臓を有する個人では良好であり得るが、心疾患を有する個人(ここでは、結果は診断にとって真に決定的に重要である)では、正確性はむしろ乏しい。米国では、それにも関わらず、その技術はますます使用されている。なぜなら、一回拍出量および他の血行動態パラメータの相対的な変化は、むしろ都合よくモニターされ得、その結果、薬物療法(pharmacological interventions)の効果が、絶対値が間違っている場合でさえ、非常に良く測定され得ることが示されているからである。
【0026】
さらに、市場で現在入手可能な機器のいずれも、身長または電極間の胸郭長さ(すなわち、身長の異なる尺度)を最初に入力することなく、一回拍出量および他の血行動態パラメータまたはCOの結果を提供することができない。特に集中治療室では、患者の体重および身長は、しばしば測定されも要求されもし得ない。間違った値の入力は、実際には容易に起こり得、よりいっそう結果を歪ませる。
【0027】
しかし、心拍出量を測定するための機器または方法は、熱希釈のゴールドスタンダードおよびフィックの原理を用いた他の方法、例えば、CO再呼吸技術または他の呼吸ガス方法と同様に、身長および体重に関する演繹的知識なしに信頼できる結果を与えることができるべきである。身体測定に関する演繹的知識が使用されるとすぐに、測定結果は、CO値が押し進められるべき方向へと押し進められ、すなわち、健康な心臓を有する個人においてそれぞれの方法の良好な結果をシミュレートする式に偏りが導入される。さらに、電気的に測定された心拍出量の場合、電気的に測定されたパラメータのみが式に導入されるべきである。
【0028】
従って、本発明の目的は、最初に述べたような方法、特に、インピーダンスカルジオグラフィによって一回拍出量を決定するための、および一般的に他の血行動態パラメータ(変力性または駆出率など)を測定するための方法(これは、上記の不利な点を克服するのに役立つ)を提供することである。
【0029】
本発明によれば、このことは、少なくとも1つの周波数の交流測定電流を身体に導入することによって、および、少なくとも2つの異なる測定長さについて、本質的に身体の長手方向において、本質的に同じ身体セグメントのインピーダンスおよびその時間的変化を測定することによって達成され、この身体セグメントを通って交流測定電流が流れる。
【0030】
2つの異なる測定長さについてインピーダンスおよびその変化を測定することによって、実際に電気的に関与する「操作上の身体セグメント長さ(operational body segment length)」と、実際に関与する電気的に「操作上の身体セグメント体積(operational body segment volume)」と、血液の実際に測定した「操作上の抵抗率(operational resistivity)」とが、数個の未知数を有する式を解くことによって電気的に決定され得、あるいは、この追加の情報は、実験的に決定された式を用いて、いわゆる「ブラックボックス」モデルに入力され得、このブラックボックスには、電気的に測定された値のみが入力される。結果として、身体測定および身体の他の情報に対する依存が排除される。
【0031】
胸郭領域でのインピーダンスの変化は心拍出量の決定において特別な重要性を有するので、および血液の主たる流動方向における電極測定長さを変化させることが有利であると分かったので、本発明のさらなる態様は、本質的に同じ身体セグメントの少なくとも2つの異なる測定長さについて、胸郭下口および胸郭上口に近接する胸郭にてインピーダンスが感知されることにある。
【0032】
本発明の別の態様(ここでは、本質的に同じ身体セグメント上の少なくとも2つの異なる測定長さについて、体幹の上端部および下端部に近接する体幹上でインピーダンスが測定される)は、さらに、2つの異なる距離にわたって四肢のインピーダンスが測定され得、同様にこの領域について、それぞれ操作上の長さおよび電気的に関与する体積を提供するという利点を有する。
【0033】
胸郭または体幹領域における測定電流の導入は、身体内部に電流波腹を生じ、一方、通常、強度に線形の電流伝搬は、測定にとって好ましく、これは四肢での電流導入によって達成され得る。本発明の別の態様は、胸郭下口の代わりに下半身端部にてまたは下半身端部の近傍に電流を導入すること、ならびに、2つの異なる測定長さについて、胸郭でのおよび/または体幹でのおよび/または四肢でのインピーダンス測定を含み得る。
【0034】
いくつかの血行動態パラメータまたは体液バランスに関するパラメータの決定において、身体全体のインピーダンス、すなわち下半身端部と上半身端部との間のインピーダンスをさらに測定することが有利であり得る。このさらなる身体全体のインピーダンスの測定は、本発明の方法だけでなく、任意の他の従来のインピーダンスカルジオグラフィ測定方法にも適用可能であり、従って、異なる電極測定長さを有する本発明の測定方法、すなわち公知の先行技術の方法のカテゴリーに関しても、独立してクレームされる。
【0035】
インピーダンス測定の、最高の精度(Maximum accuracy)および再現性(reproducibility)はまた、2つの異なる測定長さ間の差が、測定した身体部分の長さと比較して小さい場合に、特に、長さの差に対する試験した身体部分の長さの比が3:1〜50:1、最も好ましくは約10:1である場合に、提供される。
【0036】
身体上でのインピーダンス測定において、交流測定電流は、身体表面上に互いから間隔(電流電極測定長さ)を置いて配置された電流電極によって印加され得、測定電流によって生じる測定電圧は、身体表面(特に、胸郭表面)上に互いから間隔(電圧電極測定長さ)を置いて配置された電圧電極によって感知され得、その後、電気インピーダンスおよびその変化が測定電流および測定電圧から計算され得る。
【0037】
本発明の態様は、操作上の電極測定長さ、または必要であれば、電極間の操作上の距離を、電極間の異なる測定長さについて決定されたインピーダンス値から計算することを含み得る。身体において実際に有効なこれらの値に基づいて、インピーダンスまたはその変化の信頼できる決定が達成され得る。結果として、電極測定長さの変化は、もはや手動で決定される必要はない。
【0038】
これは、身体セグメントの電気的に操作上の長さを式L=d/(Z02/Z01−1)から計算することを可能とする。ここで、dは測定に使用される2つの電極測定長さ間の差であり、Z02は長いほうの電極測定長さについてのインピーダンスであり、Z01は短いほうの電極測定長さについてのインピーダンスである。
【0039】
患者の身体における非対称の電流分布を回避するために、別の態様は、胸郭の左側および右側それぞれの二連電極として、胸郭下口に電圧電極を備えることを含み得、ここで、長手方向に同じ距離で位置決めされた電極は、互いに電気的に接続されている。
【0040】
あるいは、胸郭口の左側および右側それぞれの電極が選択的に切り替えられ得ることが提供されてよい。
【0041】
体幹上に測定電極を位置決めする場合、本発明の方法の有利な態様は、体幹の下方端部の左側および右側それぞれの二連電極として、体幹の下方端部に電圧電極を備えることにあり、ここで、長手方向に同じ距離で位置決めされた電極は、互いに電気的に接続されている。結果として、測定は比較的大きな身体体積を含み得る。ここで、体幹のそれぞれ左右の下方端部の電極は、選択的に切り替えられ得る。
【0042】
少なくとも1つのさらなる電流電極および/または電圧電極の具備は、別の電極エレメントに関して、好ましくは身体の長手方向において、それゆえ血液の主たる流動方向において、電流電極および/または電圧電極の電極測定長さの変化を生じ、それによって、胸郭におけるインピーダンスまたはその時間的変化の測定は、短いほうおよび長いほうの電極測定長さについて同時にまたは順次的に行われ得る。電極測定長さLのこの変化は、一定であるか、既知であるかまたは計算可能であるべきである。
【0043】
上記方法では、本発明の目的は、2つ以上の測定周波数で電気インピーダンスを測定し、細胞内空間および細胞外空間の部分を決定し、続いて、一回拍出量および他の血行動態パラメータの計算のためにこれらの値を使用することによってもまた、達成され得る。この方法は、本発明の測定長さの規定された変化に関係なく、従来の2電極システムまたはそれとの組み合わせにもまた、適用され得る。2つの測定周波数を選択することによって、血液の抵抗率に応じて異なる血行動態パラメータを決定するために、異なる周波数で異なる抵抗を示す血液の特性が使用され得る。
【0044】
本発明の方法に適用可能な異なる周波数の数は、上記に束縛されず、好ましくは低い測定周波数から高い測定周波数までの周波数バンドの連続的な掃引は、本発明の範囲内にあり、ここで、本発明の好ましい態様による低い測定周波数は、約1kHzであり、高い測定周波数は、せいぜい約1000kHzである。
【0045】
異なる周波数での測定電流と測定電圧との間の位相角はまた、血行動態パラメータの決定のための尺度であってもよい。
【0046】
本発明の有利な態様は、2つの測定周波数にて、電気インピーダンスまたは時間に関するインピーダンス変化を同時に測定することを有していてもよい。2つの周波数は、例えば、周波数フィルター(周波数マルチプレクサー)によって分離されてもよい。あるいは、いくつかの測定周波数は、非常に短い時間枠内で交互に測定され得る。異なるインピーダンス値(これらは、異なる周波数にて測定され得る)から、体液分布が決定され得、これによって胸郭の幾可学的形状についての結論が可能となる。
【0047】
本発明の方法の別の態様は、3つの異なる周波数でのインピーダンスの測定を有してよく、ここで、異なる周波数は、1〜10kHz、30〜100kHzおよび200kHzを上回るものである。
【0048】
上述のように、インピーダンスカルジオグラフィの問題の1つは血液抵抗率の測定にあり、該抵抗率は、血行動態パラメータのための幾つかの計算式において役割を果たすものである。増加する周波数における時間に対するインピーダンスの最大時間的導関数(maximum temporal derivative)の決定は、血液抵抗率の尺度であるので、本発明の目的は、少なくとも2つの異なる測定周波数にて測定したインピーダンス値の最大時間的変化(dZ/dt)を決定すること、および身体中に存在する血液の抵抗率をこの最大時間的変化から決定することによって、達成され得る。このような測定は、電圧電極間または電流電極間の測定長さを変化させてまたは変化させることなく、行われ得る。
【0049】
例えば、高いおよび低い測定周波数におけるインピーダンス変化から、比が計算され得、これは、加速によって大動脈中で変形した赤血球の尺度である。この比から、別のパラメータが適切な数学的信号解析によって誘導され得、このパラメータは一回拍出量の計算にとって重要である。
【0050】
従って、本発明の改良した態様によれば、特に比較的小さい時間枠において、心周期の異なる時間にて測定したインピーダンス値の最大時間的変化が決定され得る。これは、心周期(cardiac cycle)にわたるインピーダンス値変化の時間平均を生じる。
【0051】
心周期の極値からの平均値の決定は、本発明のさらなる態様によれば、抵抗率の急上昇に、および拡張期の末期における最小血流の時間に、時間帯を設定することによって達成され得る。
【0052】
時間帯が小さな浮動時間帯の形態で心周期全体にわたって置かれる場合、本発明の方法の精度は上昇し得る。
【0053】
最後に、本発明の方法の重要な利点は、ゴールドスタンダード(一回拍出量についてのフィックの原理、または心エコー検査法、または他のパラメータ(駆出率、肺の楔入圧、拡張期の機能など)についてのアイソトープ法などのもの)によって決定された実験式が、血行動態パラメータの測定、水中重量技術またはDXA技術、および体液の希釈技術に使用され得ることである。これらの実験式は、例えば、部分相関および多重回帰式によって、あるいはニューラルネットワークまたは他の「機械学習」方法によって、得ることができる。
【0054】
2つの間隔を置いて配置された電極を用いる場合、第一電圧電極測定長さについて、および該第一長さとは異なる第二電圧電極測定長さについて、測定電圧が決定され、この測定値から、参照電極と対比して、インピーダンス決定のための操作上の長さが決定される。
【0055】
電気量を測定することによって電圧電極間の距離を決定することができるために、本発明の別の態様は、該第一および第二の長さとは異なる第三の電圧電極測定長さについての測定電圧の決定を提供する。
【0056】
さらに、末梢または四肢または上半身端部および下半身端部に電極を位置決めすることによって、体液とその比(例えば、細胞外空間と細胞内空間)に加えて、異なる周波数での全身のインピーダンスが決定され得、電気的に関与する胸郭体積と体液との間の関係が、実際の一回拍出量および他の血行動態パラメータに関するさらなる結論を可能にする。さらに、異なる周波数を用いる測定が四肢で行われる場合、細胞内空間および細胞外空間が決定され得、これらの値ならびに互いの関係は、心拍出量の計算のために式に導入され得る。細胞内空間および細胞外空間は、心疾患を患う個人において特徴的な変化を示すので、心機能に関するさらなる結論が導き出され得る。例えば、心不全は、細胞内空間の減少および細胞外空間の増加を生じる。
【0057】
本発明の別の態様は、2つの電流電極によって、身体の四肢(例えば、足首などの脚、および/または手首などの腕)のそれぞれ上端部および下端部において測定電流を印加することを含み得る。
【0058】
身体上でのインピーダンス測定に関与する全ての物質は周波数に依存し、これは、測定されるべき器官の構造に関する重要な情報を提供し得る。
【0059】
従って、測定電流は異なる測定周波数で印加されるべきであり、一致した測定電圧値およびその時間的変化は、特に心周期の間に決定されるべきである。ここで使用される周波数は、血液インピーダンス値の測定可能な変化を生じるべきである。
【0060】
測定値の決定における有利な信号対雑音比(SN比)は、本発明のさらなる態様によれば、いくつかの異なる電圧電極測定長さにわたって、いくつかの異なる測定周波数で測定電流を印加し、続いて、測定電流により生じる測定電圧を決定することによって、達成され得る。
【0061】
さらに、インピーダンス特性(誘導または容量)を決定して測定電流と測定電圧との間の位相角を決定することが有利であり得る。
【0062】
さらに、インピーダンス波B、C、XおよびOの、振幅、面積、および上昇する正接または下降する正接を、独立的にまたは一緒に用いることは、血行動態パラメータの計算に有利である。
【0063】
本発明の方法の別の変形例は、血清中のナトリウム含有量の決定および関連するパラメータの計算におけるその使用を含み得る。
【0064】
さらに、血清中のナトリウム濃度は、本発明の方法によって数学的に概算され得、その結果値として得られ得る。
【0065】
さらに、ホルモン(例えば、ADHおよびナトリウム排泄増加性ペプチド、特に心房性ナトリウム排泄増加性ホルモン、脳ナトリウム排泄増加性ペプチドおよび体液を調節するその前駆体、その分画および組成物)は、本発明の方法によって実験式によって概算され得、結果として得られ得る。
【0066】
現代の通信手段を用いて、本発明の方法によって得られるデータは、その結果をデジタル形式で、好ましくは電話または電子メールによって中央ステーションに送ることによって処理され得、ここで、それらはさらに処理および評価され、その後、全ての必要な測定および治療の変化が、遠隔地から患者に伝えられる。
【0067】
さらに、本発明は、特に血行動態パラメータを決定するための電気機械的カルジオグラフィまたはインピーダンスカルジオグラフィ(IKG)測定を行うために、ヒトの身体における電気インピーダンスまたはその時間的変化を測定するための装置に関する。
【0068】
本発明によれば、本発明の上記目的は、2つの電圧電極を備えることによって達成され、2つの電圧電極の少なくとも1つは、二連電圧電極(double voltage electrode)エレメントとして具備され、ここで、2つの電圧電極間のインピーダンスおよびその時間的変化が感知され得る。
【0069】
2つの電極(互いから既知の距離の間隔を置いて配置されている)を有する二連電圧電極エレメントの形態で電圧電極を備えることによって、他の電圧電極に関して2つの電極測定長さ間の差が予め規定され、それによって、操作上の電極測定長さは、二連電圧電極にて感知される2つの測定電圧から決定され得る。
【0070】
身体の形状に適合可能な二連電圧電極エレメントの態様は、少なくとも1つの二連電圧電極エレメントを共通の絶縁キャリアシートに取り付けることによって得られ得る。
【0071】
本発明のさらなる態様では、三連電極(triple electrode)エレメントを有する電圧電極の少なくとも1つが、1つの電流電極と、2つの電圧電極とからなり得る。従って、本発明の方法を実施する場合、交流測定電流の導入および測定電圧の感知は、単一の電極エレメントにて行われ得る。より詳細には、電流電極と二連電圧電極エレメントとは、三連電極エレメントとして共通のキャリアシートに固定されてよい。
【0072】
手動で再接続または切り換えすることなく本発明に従ってインピーダンス測定を可能とするために、本発明は、全ての電極エレメント端子が分配エレメントにおいて接続リードによって一緒にされていること、および分配エレメントが測定デバイスの測定ラインおよび制御ラインに接続されていることを提供し得る。
【0073】
本発明の方法を自動化する別の可能性は、制御可能な分配エレメントを含み得、それによって、電極エレメントは、測定デバイスの異なる測定ラインおよび制御ラインに接続可能である。
【0074】
本発明の測定システムによって測定可能なインピーダンス値は、空間におけるそれぞれのヒトの身体の位置に依存するので、長手方向の身体軸と水平線または垂線との間の角度を記録することが有利である。本発明の測定システムの別の態様は、身体の傾きを測定するための角度計を具備してよい。好ましくは、該角度計は分配エレメント上に位置決めされる。
【0075】
さらに、本発明は、特に血行動態パラメータを決定するための電気機械的カルジオグラフィまたはインピーダンスカルジオグラフィ(IGK)測定を行うために、第一電流電極と、該第一電流電極から間隔を置いて配置された第一電圧電極とによって、ヒトの身体における電気インピーダンスまたはその時間的変化を測定するための医療用電極エレメントに関する。該第一電流電極は、交流測定電流を印加するための電気端子を有し、該第一電圧電極は、電気的測定電圧を感知するための電圧端子を有し、ここで、本発明の方法を実施するために、電圧端子を有する少なくとも1つのさらなる電圧電極が備えられ、該少なくとも1つのさらなる電圧電極が該第一電圧電極から距離を置いて位置決めされ、ここで、該第一電圧電極および少なくとも1つのさらなる電圧電極は、平行な導電性ストリップとして備えられ、これらのストリップの幅は、これらのストリップ間の距離と等しく、好ましくはこの距離よりも小さい。
【0076】
ストリップ形状の電極を具備することは、例えば胸郭内で、比較的高い測定体積を生じ、それによって、身体のインピーダンスの決定についての重要な測定結果を得ることができる。
【0077】
従来の4点方法(2つの電流電極および2つの電圧電極)とは対照的に、ここではさらなる電圧電極と、必要に応じてさらなる電流電極とが配備され、これらは、これらの追加の電圧および/または電流電極の取り付けが、好ましくは身体の長手方向およびそれゆえ血液の主たる流動方向において、電圧電極間または患者の身体上に配置された少なくとも2つの電極エレメントの電流導入位置間の測定長さLの変化を生じることを確認するように、身体上に配置され、それによって、それぞれの電極間の短いほうおよび長いほうの測定長さについて、身体セグメントにおけるインピーダンスおよびその時間的変化の同時または連続測定が実施され得る。
【0078】
さらなる自由度、すなわち、電圧電極と通電している電極対との間の異なる測定長さを導入することによって、実際に電気的に関与する「操作上の胸郭長さ」および実際に関与する電気的な「操作上の」胸郭体積および血液の実際に測定した「操作上の抵抗率」はそれぞれ、いくつかの未知数を有する式を解くことによって電気的に決定され得、あるいは、この追加の情報は、実験的に決定した式を用いて、いわゆる「ブラックボックス」モデルに入力され得る。結果として、電気的に測定された値のみがこの式に入力される。身長の問題、すなわち、一回拍出量および他の血行動態パラメータが、事前の人体計測情報に基づいて健康な個人においてのみ正確に決定され得るという問題は、それによって排除される。
【0079】
別の態様では、少なくとも1つのさらなる電圧電極は、第二電圧電極によって形成されており、これは、第一電圧電極から既知か一定かまたは計算可能な距離(d)を置いて位置決めされている。
【0080】
従って、参照電圧に対する測定電圧(これは、異なる身体領域に導入される)は、第一電圧電極および第二電圧電極で感知され得、第一電圧電極と第二電圧電極との間の既知の距離dに基づいて、得られた測定値から、インピーダンス決定のための参照電圧電極についての操作上の測定長さが計算され得る。
【0081】
第一電圧電極と第二電圧電極との間の距離dは、本発明の電極エレメントの設計によって既知であるが、操作上の測定長さの決定に従って、第一電圧電極と第二電圧電極との間の操作上の距離をさらに決定することが有利であることが分かっている。
【0082】
本発明の別の態様によれば、このことは、少なくとも1つのさらなる電圧電極が第二電圧電極と第3の電圧電極とからなる場合に、かつ、その第3の電圧電極が第一電圧電極から距離を置いて位置決めされている場合に、達成され得る。
【0083】
ストリップ電極の使用は、電極間の距離に対するストリップ長さの比が約2(好ましくは4)と約15(好ましくは10)との間の範囲にある場合、本発明の電極エレメントによって測定される値の高いレベルの再現性を提供することが示されている。
【0084】
本発明のさらなる態様によれば、個々の電極間の距離は、第一電圧電極と第一電流電極とを、少なくとも1つのさらなる電圧電極および/または少なくとも1つのさらなる電流電極と共に、共通の電気絶縁性のキャリア材料上に位置決めすることによって、一定に維持され得る。
【0085】
キャリア材料は、キャリアシートからなるものであってもよく、ここで、第一電圧電極と第一電流電極は、少なくとも1つのさらなる電圧電極および/または少なくとも1つのさらなる電流電極と同様に、キャリアシートの一方の面上に固定され、好ましくは導電性粘着層が備えられる。このようにして、身体表面上での個々の電極の一定の間隔が、本発明の方法の実施の間に保証される。
【0086】
本発明の別の態様では、キャリア材料は、粘着面を有する複数のシートストリップを有していてもよく、この上に、第一電圧電極と第一電流電極とが、少なくとも1つのさらなる電圧電極および/または少なくとも1つのさらなる電流電極と同様に取り付けられ、その上に固定された電極を有するシートストリップが、実質的に平行な配置で共通のベースキャリアシートに接着されていてもよく、ここで、ベースキャリアシートは、シートストリップの取り付け後に身体表面から剥がされ得る。ベースキャリアシートを剥した後、1つの電極を有するシートストリップのみがそれぞれ患者の身体に接着したままであり、身体表面と電気接触した状態にある。それによって個々の電極の一定の間隔が保持されているが、小さな総接触表面は皮膚刺激の明らかな減少を生じ、電極は、患者とより長く接触した状態で保持され得る。
【0087】
本発明の電極エレメントの操作に必要とされるリードへの信頼できかつ取り扱いが容易な接続を達成するために、本発明の別の態様では、キャリアシートは、一方の長手方向端部においてテーパー状にされてプラグ型表面となり得、このプラグ型表面上に、第一電圧電極と第一電流電極とが、少なくとも1つのさらなる電圧電極および/または少なくとも1つのさらなる電流電極と同様に、密なる間隔で配置されている。
【0088】
別の態様では、第一電圧電極と第一電流電極とが、少なくとも1つのさらなる電圧電極および/または少なくとも1つのさらなる電流電極と共に、スペーサー(別のキャリアシート、張力をかけたバンドまたはケーブル、あるいは剛性スペーサー)によって互いから間隔を置いて配置されたスポット電極の形態にて備えられる。このようにして、身体表面上の非常に小さな接触領域において、インピーダンス測定が行われ得る。
【0089】
さらに、本発明は、特に血行動態パラメータを決定するためのインピーダンスカルジオグラフィ(IKG)測定を行うために、交流測定電流源および第一電圧測定デバイスならびに本発明の医療用電極エレメントによって、ヒトの身体における電気インピーダンスまたはその時間的変化を測定するための測定システムに関する。該測定電流源は、電流電極に接続可能であり、該電圧測定デバイスは、電極エレメントの第一電圧電極に接続可能である。
【0090】
身体の電気インピーダンスを測定するための現在用いられている測定システムでは、インピーダンス測定のための2つの電極エレメント間の測定長さまたは少なくとも患者の身長は、例えば巻尺によって決定されなければならない。測定の不正確性、および実際に電気的に操作上の測定長さが個々の電極間の距離(この距離は、身体表面上で測定されるべきである)とは著しくかつ予測不可能に異なるという事実は、測定誤差および不正確性を生じる。
【0091】
従って、本発明の目的は、上記の測定システムを提供することであり、これは上記問題を克服する。
【0092】
本発明は、セレクタスイッチを具備することによってこの目的を達成し、このセレクタスイッチは、第一電圧電極または少なくとも1つのさらなる電圧電極のいずれかに電圧測定デバイスを接続する。あるいは、測定システムはまた、異なる測定長さについて同時の測定を提供し得る。
【0093】
第一電圧電極とさらなる電圧電極との間の既知の距離から、参照電極に向かう実際の測定長さが決定され得、これは、印加した電流値および感知した電圧値によってインピーダンスを決定するために使用される。
【0094】
患者の身体上でのインピーダンス測定の結果は周波数に依存するので、本発明の改良された態様では、交流測定電流源は、必要に応じて連続的に可変の測定周波数を有し得る。従って、異なる測定周波数での測定結果に対する身体成分(血液、組織および骨など)の効果が決定され得る。
【0095】
これに関連して、位相角(測定電流源の測定電流と、電圧測定デバイスによって測定される測定電圧との間の角度)を決定するための位相検出器が、位相角から別の測定値を得るために具備されていてもよい。
【0096】
異なるインピーダンス値(これは、本発明の測定システムによって決定され得る)は空間におけるヒトの身体の位置に依存するので、長手方向の身体軸と水平線または垂線との間の角度を記録することが有利である。本発明の測定システムの別の態様は、身体の傾きを測定するための角度計を備え得る。これは、好ましくは、分配エレメントにおいて位置決めされ得る。
【0097】
本発明の測定電極は、他の目的のためにも使用され得、ここで、本発明の別の態様による電極エレメントをECG測定デバイスに接続することが有利であると思われる。
【0098】
本明細書中で記載した本発明の電極エレメントおよび本発明のそれゆえに実施可能な方法は、現在のインピーダンスカルジオグラフィと類似していないので、本明細書中で記載した本発明の方法および測定システムについて、新しい用語「マルチサイト(multi site)周波数電気機械的カルジオグラフィ(msf−ELMEC)」を提案する。これは、心機能の全ての決定可能なパラメータ(例えば、一回拍出量、変力性、駆出率、拡張期心機能、弁の変質)および可能な他の血行動態パラメータ(例えば、肺動脈圧)ならびに他の重要なパラメータ(異なる身体分画の体積、分布および組成など)の決定を可能にする。
【0099】
以下に、添付した図面に示す実施態様を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0100】
特に、血行動態パラメータを決定するための電気機械的カルジオグラフィ(ELMEC)またはインピーダンスカルジオグラフィ(IKG)測定を行うための、身体または身体セグメントの電気インピーダンスに基づいて、導電性体液の、体積、組成および移動を測定する本発明の方法において、少なくとも1つの周波数の交流測定電流が身体に導入され、そして、少なくとも2つの異なる測定長さについて、実質的に身体の長手方向において、実質的に同じ身体セグメントのインピーダンスおよびその時間的変化が測定され、該身体セグメントを通って該交流測定電流が流れる。
【0101】
より具体的には、心一回拍出量といった血行動態パラメータを決定するためのインピーダンスカルジオグラフィ(IKG)測定において、交流測定電流は、身体表面上に互いから電流電極測定長さの間隔を置いて配置される電流電極によって印加され、また測定電流によって生み出される測定電圧は、身体表面上(特に胸郭表面)に互いから電圧電極測定長さの間隔を置いて配置される電圧電極によって感知されうる。
【0102】
測定電流および測定電圧に基いて、電気インピーダンスおよびその時間的変化が計算される。
【0103】
本発明による方法においては、例えば、本質的に同じ身体セグメントまたは同じセグメント上の電圧電極間の異なる電圧電極測定長さについて測定電圧が決定される。得られた測定電圧値から、それぞれのインピーダンス値が計算される。測定長さの変化は主に身体の長手方向軸、つまりその中で輸送される血液の主たる流動方向においてなされる。
【0104】
さらに、少なくとも2つの異なる測定周波数、好ましくは少なくとも3つから4つの周波数で、インピーダンスおよびその変化を決定するのは有利なことである。このためには、測定に用いる交流測定電流源が、可変の、任意に連続的な、交流の測定周波数を有していなければならない。
【0105】
ここで、測定周波数は、測定可能な血液インピーダンスの変化およびより高い周波数の電流による身体膜の浸透の観察をすることができるように、充分にかけ離れているべきである。該当する周波数は、例えば、1と10kHzとの間、30と100kHZとの間、特に約40kHz、200kHzより大きい値(例えば約300kHzから1MHz)であるが、これらは所望の周波数範囲の単なる概括的なガイドラインを示すものである。さらに、1つの周波数を測定するのではなく、その代わりに可能なすべての周波数スペクトル、つまり低い測定周波数から高い測定周波数(例えば、約1kHzと約1000kHzの間)に、またはこの範囲内の興味のある部分に周波数の掃引を行うのが好ましい。測定中、好ましい信号対雑音比(SN比)を保つため、いくつかの長さおよびいくつかの周波数の、交互または同時の測定を行うのが有利である。さらに、特別設計の電子装置によりインピーダンス信号の位相角を決めることは有利でありうる。この目的のため、測定電流源からの測定電流と電圧測定装置によって測定される測定電圧との間の位相角を決定するための位相検出器が具備される。
【0106】
一般的に知られているように、抵抗率の定義によるとインピーダンスは、
【0107】
【数4】

【0108】
である。式中、ρは作動セクションの抵抗性であり、Lは測定長さであり、およびAは作動セクションの断面である。
【0109】
第二作動セクションが、測定長さ
【0110】
【数5】

【0111】
をもって提供される場合(式中、dは定数、または測定長さLとLとの間の計算可能な距離である)、操作上の電気測定長さLが次の式によって計算されうることは容易に導き出される。
【0112】
【数6】

【0113】
電気的に決定された測定長さLを、例えばKUBICEK式に入れる場合、式中のすべての未知の測定長さは、電極自体の設計により定義される差異d(電極間の距離)を例外として、すべて除外される。
【0114】
ヒトの身体において電気インピーダンスおよびその時間的変化を測定し、体液、その組成物、身体におけるその動態(例えば、血行動態パラメータ)を測定するための装置において、本発明は2つの電圧電極8a、80および81、82、80’、81’、82’、85、85’、85’’、7を備えており、それらのうち少なくとも1つは、二連電圧電極エレメント80、81、82、81’、82’、85、85’、85’’として備えられる。インピーダンスとその変化(時間に関する)は、2つの電極間で感知されうる。図9において、第一電圧電極は三連電極エレメント80によって形成され、第二電圧電極は、同じ高さに配置された2つの三連電極エレメント81、82によって形成される。
【0115】
電流電極70と、二連電圧電極エレメントを形成する2つの電圧電極72、73とからなる三連電極エレメント80、81、82の設計を図7に示す。ここで、電流電極70および2つの電圧電極72、73は定まった既知の距離をおいて固定される。好ましくは共通のキャリアシート2上に固定されて一定の距離を保つようにする。
【0116】
差異dは電極72、73の設計から既知であるが、これは胸郭表面で測定された長さLと同様に、電気的に妥当でない可能性もありうる。したがって、式(9)によるLの計算に従い、現存する測定電極のそれぞれの操作によって、操作上のdを計算することは有利なことである。これらの操作上の長さの計算中に、胸郭において、基本的に不均一な電界に介入しないということは有利なことであるため、通電している電極は変えるべきではなく、付加的な測定電極のみを用いるべきである。
【0117】
電流電極70および3つの電圧電極71、72、73からなる四連(quadruple)電極エレメントが胸郭上口に配置されるように、dの計算は、例えば、図12に示すように、付加的な測定電極71を本発明の電極エレメント80上に設けることを必要とする。測定電流は、交流測定電流源52により印加され、電流電極70および電極エレメント20の電流電極60の間に挿入される。電極エレメントは胸郭下口に固定されている。電流が、例えば、患者の下半身端部7または体幹下部の端部85、85’にて印加された場合、上または胸郭下口のどちらかに任意に配置された3つの電圧電極を有する三連電極エレメントは十分なものとなる。
【0118】
電圧測定装置51は電極エレメント20の電圧電極61に接続され、セレクタスイッチ50を介して、第一電圧電極73またはさらなる(例えば第二または第三)電圧電極72、71のいずれかに接続可能である。電圧電極61と第一電圧電極73との間の測定長さはLであり、電圧電極61と第二電圧電極72との間の測定長さはL2であり、また電圧電極61と第三電圧電極71との間の測定長さはL3である。ここで、L2=L+dおよびL3=L+d1である。
【0119】
セレクタスイッチ50を設定することによって、測定長さL、L2およびL3に応じた3つの測定電圧の合計を感知できる。
【0120】
が計算された後、この値は、式(9)においてdの代わりに用いることができる。
【0121】
本システムの測定システムの1つの実施態様であって、いくつかの電圧電極の代わりにいくつかの電流電極を備えるものを、図13に示す。
【0122】
開始点は再び四連電極エレメント80であり、その上に電圧電極33および互いから規定の距離で位置決めされた3つの電流電極30、31、32が具備される。電極エレメント20の電流電極60と電流電極32との間の測定長さはLであり、電流電極31ではL4に上がり、また電流電極30ではL5に上がる。ここで、L4=L+aおよびL5=L+a1である。
【0123】
測定電流は交流測定電流源52を介して印加され、かかる交流測定電流源は電極エレメント20の電流電極60に接続されており、セレクタスイッチ50を介して電流電極30、31、32に接続可能である。
【0124】
電圧測定装置51は、電極エレメント20の電流電極60および電圧電極33に接続されており、その結果、電流印加の3つの異なる測定長さL、L4およびL5についての電圧測定によって、インピーダンスおよび操作上の測定長さ(図11の実施態様と同様の考察に基づいたもの)を決定することができる。
【0125】
図3は、身体表面で測定した実際の長さ(cm)と、最先端の電極でオームの法則により計算した「操作上の長さ」Lとの間の、実際の実験において同定された差異を示す。見てわかるように、2つの長さの関係はむしろ不十分であり、これは、身体表面上で測定された長さと上記式から得られた操作上の長さとの間に臨床的に関連のある相互関係はないということを示している。特に、図3は、測定された長さはバーチャルな長さよりかなり大きいことを示しており、これは、電極間の電気的に関与する胸郭組織の直径における実質的な変化があり、この変化が「電気的波腹(electrical antinodes)」の形態で、電極間のバーチャル距離を予測できない方法にて明らかに減らしていることを示唆している。
【0126】
これは、インピーダンスカルジオグラフィが今まで完全に間違った理論的考察に基づいていたことを示している。胸郭における電気分配はかなり不均一であり、皮膚、骨、脂肪、肺、心臓および管のような異なった媒体を介する導電は異なるため、そのことは容易に理解できる。今まで、インピーダンスカルジオグラフィの再現性は、これらの不均一性のせいで非常に限られていた。一定の再現性を達成するため、電極は胸郭上のまったく同じスポットに置かれなければならなかった。これは短期間の実験においては可能だが、数日間若しくはそれ以上続く長期間の観察では不可能であった。
【0127】
本発明の方法では、電極の取り付け位置への依存性は除外することができる。なぜなら、本方法は、例えば異なった液体分布によって胸郭内の環境が変わったとしても、操作上の測定長さの決定によって常に訂正されるからである。
【0128】
特に有利な方法は、通電している電極の四肢7、8aへの取り付けを備えている。これは、そこから電流が主に大きな管および大動脈に沿って流れるためである。ここで、測定電流は、少なくとも1つの身体の四肢(例えば脚および/または腕)にそれぞれ置かれた2つの電流電極を介して印加される。
【0129】
このようにして、通電している電極を胸郭に直接置くよりも、より多くの均一な電界が胸郭において得られる。その結果、特許明細書A392/2001に記載されているように、胸郭上口に二連電極を置くために十分なものとなる。2つの二連電極(例えば、A392/2001に記載されているような電極または2つの隣接した単独の電極)を上半身端部(例えば、頸部、頭部、腕)または下半身端部に取り付けると、全身インピーダンスを同時に決定することによって、同時に体液を測定することができる。胸郭液含量は生物の液体バランスに関するものとみなされるべきであるため、これは重要である。特に心不全の場合、胸郭の液体分布と身体全体の液体との関係は非常に乱されており、そのため今までインピーダンスカルジオグラフィは心不全には適していなかった。
【0130】
インピーダンスカルジオグラフィのもう1つの大きな問題は、血液抵抗率の導入であり、これは式に定量的に入れるべきものである。従って、KUBICEK式は、ヘマトクリットから計算された血液抵抗率の値を含む。QUAILら[xi]は、KUBICEK式を修正し、心拍出量および他の血行動態パラメータ(彼らは犬で電磁磁束計(EMF)を用いて決定した)から抵抗率を計算した。
【0131】
【数7】

【0132】
QUAILらは、ρbloodがヘマトクリットによって決まるが、それ以外では一定であることを見出した。彼らはρbloodを平均胸郭抵抗ρと置き換えた。ρがKUBICEK式においておよそ一定である場合、次のように置き換えてもよい。
【0133】
【数8】

【0134】
これをKUBICEK式に入れる。
【0135】
【数9】

【0136】
ここで、抵抗率ρ(この決定はむしろ問題をはらむ)は、心拍出量およびその他の血行動態パラメータの方程式から数学的に除外された。このため、血液抵抗率が心臓の活動の間は一定であることが必要である。SHANKARら[xii]によれば、心臓の活動によって決まる抵抗率の変化は5.5%未満であり、そのため方程式が十分に正確なものとなる。
【0137】
1つの代用としては、心臓の活動の異なる時点、例えば、心拡張の終わりにおける最小血流時、並びに心収縮の間の最大血流時における、ρの測定を含む。インピーダンスカルジオグラフィにおけるものと同様に、時間(dZ/dt)maxに関するインピーダンス変化をモニターする方がよい。なぜなら、この値は心臓の活動によって、延いては心臓によってもたらされる血量(SV)によって決定されるためである。この新規な方法は、血液抵抗率ρ(特に赤血球(赤血球)のもの)が交流電流周波数によって変わるという性質にもっぱら基づいている。例えば、20kHzでは、血液の電気抵抗は、例えば100kHzのときより著しく高い。ここで、高い周波数では赤血球の膜は電気キャパシタのように作用するため、赤血球の導電性はより高い周波数でより高くなる。この性質は、ρを測るために用いられうる。またより正確には、(dZ/dt)maxの低減は、赤血球の数、すなわち、ヘマトクリットに関連した血液抵抗率の尺度である。特定の心拍について心拍出量は変わらないため、低周波数から高周波数へ上がる間の(dZ/dt)maxの低減が大きいほど、赤血球の数は多くなる。
【0138】
【数10】

【0139】
非線形の関係である場合は、測定は2つを超える周波数で行ってもよく、またそれらから得られうる全ての関数は非線形回帰方程式の形で表されてもよい。両方の場合において(2つの周波数、複数の周波数)、関数fは、測定結果をヘマトクリットHctの従来の決定と比較することによって実験的に決定してもよい。
【0140】
電気的に測定された信号から、心周期中の血液抵抗の変化を決定するためのもう1つの方法もまた、上記の技術に基づいている。WANGら[xiii]は、血液抵抗率の変化がインピーダンス変化の〜25%に対応していること、すなわち、それが正しいSVを決定するために重要な尺度であることを示した。この血液抵抗率の変化は、異なる周波数にて測定された2つの異なるインピーダンス信号間の比率(dZ/dt)freq1/(dZ/dt)freq2に基づいた直接的な尺度である。よって、付加的な信号Δρ(t)=(dZ/dt)freq1/(dZ/dt)freq2を継続的に得ることができ、これは心周期中の血液抵抗率の尺度である。この目的のため、小さな浮動時間帯が心周期上に置かれ、これらの小さな時間帯それぞれのΔρ(t)を決定する。この信号の最大偏差もまたCOを決定するために用いられうる。よって、関数fを実験的に予測することは必ずしも必要なことではない。
【0141】
【数11】

【0142】
本方法のもう1つの利点は、上記技術によるΔρ(t)信号の十分に正確な測定により、血液が流れているのかいないのか、およびどんなタイプの流れなのか決定することができることである。層流では、抵抗は流れの方向における赤血球の方向付けにより減少するが、その後、乱流によってより高い速度で再び増加する。継続的に測定されたΔρ(t)値のグラフからは、どのくらいの間血液が流れるのか、および血流が層流なのか乱流なのかということしか決定できない。したがって、従来はIGK信号または心音図から直接決定していたLVET(左心室駆出時間)もまた、測定によって変化するρ値から決定されうる。
【0143】
血液抵抗率ρ、正しい操作上の長さL、または、胸郭幾可学的形状の尺度であるベースインピーダンスZの正確な決定は、正しいSVを決定するために必要である。その理由としては、電気的に関与する胸郭体積Vthoraxがこれらの値から推定されうるからである。この電気的に関与する胸郭体積Vthoraxは、通常のIKG方程式(12c)からわかるように、インピーダンスカルジオグラフィでSVを決定する最も重要な尺度である。
【0144】
【数12】

【0145】
上記したように、KUBICEKは、電極L間の距離、血液抵抗率ρ、およびベースインピーダンスZからVthoraxを計算し、SRAMEKまたはBERNSTEINは身長Hおよび/または患者の体重WからVthoraxを推定した。異なるIKG装置に用いられるその他の「改善された」式は、Vthoraxを決定するために患者の年齢さえ用いる。
【0146】
上述したように、これらの値またはこれらの値の線形依存は電気的に測定した値からのみ決定されうる。よって、Vthoraxもまた様々な電気的な値からのみ決定されうる。
【0147】
【数13】

【0148】
電気的測定からのみ決定されるこれらの値は、心拍出量およびその他の血行動態パラメータを決定するための公知の式、例えばKUBICEK、SRAMEKまたはBERNSTEINによる式にのみ導入されうるのではなく、心拍出量およびその他の血行動態パラメータを決定するためのその他のいかなる方程式にも導入されうる。これには、例えばフィックの侵襲性法則、熱希釈、または呼吸ガス技術などの標準的な方法との比較により得られる、非誘導の、実験的に決定された方程式も含まれる。これにより、方程式には電気的に測定された値のみが残され、結果としてより高い正確性を得られる。ここで、測定はそれぞれの心拍、すなわち1分間に70回行われるため、個々の信号の質はあまり重要ではない。また、異なる心拍で得られる値は平均化されたものであってもよく、あるいは正確なテンプレートがインピーダンス信号から決定されてもよい。
【0149】
同様に、電気的に決定されたパラメータLおよびρは、心拍出量およびその他の血行動態パラメータを決定するための、いかなる公知の、あるいは新規に開発された方程式に導入されてもよい。さらに、このようにして電気的に決定された複数のパラメータは、例えば、駆出率、収縮性、変力性および肺動脈圧などの機械的心機能のその他の重要なパラメータを計算するために用いられうる。
【0150】
我々の実験において、一回拍出量、および上記の値についてのゴールドスタンダードを用いて得られた、例えば駆出率、変力性などのその他の血行動態パラメータの実験式を用いることは効を奏していることが実証された。ここで、決定された値、Z01 、Z02 、(dZ/dt)max_freq1 、(dZ/dt)max_freq2 、Zfreq1 、Zfreq2 、Zfreq3 などは、好ましくは、実際の一回拍出量並びに、多重回帰分析および/またはニューラルネットワークおよび/またはさらなる機械学習アルゴリズムにおける標準技術を用いて得られるその他の血行動態パラメータに関するものである。実際の一回拍出量およびその他の血行動態パラメータに適したゴールドスタンダードは、主としてフィックの原理、熱希釈、または呼吸ガス技術とされている。これに基づき、多重回帰方程式を作ることができ、これは上記パラメータと実際の一回拍出量との間の最もよい関係を純粋に実験的な方法にて表している。よって、例えば、胸郭は幾何学的にはっきりと定義された身体ではないという事実、並びに脂肪、筋肉、肋骨、皮膚、肺、維管束および心臓といった胸郭における異なった組織での電気伝播の不均一性が十分な正確さで数学的に決して表せないという事実のため、生物学的測定の不均一性はすべて排除できる。非線形性もまた多重多項方程式をもたらすこととなる。これらの式における重要な側面は、複数の周波数(例えば、約1〜10kHz、40kHzおよび200kHz、並びに状況に応じてより高い周波数)での全身インピーダンスの使用である。その理由は、体液、細胞外空間および細胞内液体、並びにそれらの胸郭液含量との関係がそれによって考慮に入れられるからである。偏相関分析において心臓の機械的効率と著しく関わっているすべての電気的に測定される値は、この式に入れられる。
【0151】
例えば、図4は、無作為に選んだ個体群、すなわち様々な疾患のため手術を受ける心不全を有する患者を含む群において、本明細書に記載した方法を単に適用することによる、COの計算を示す。手術の間、COは「ゴールドスタンダード」としてNICO装置によって決定され、該装置はCO再呼吸を介してCOを測定し、熱希釈に対し優れた対応関係を示す。図の上部において、X軸はNICO−COと従来のインピーダンスカルジオグラフィとの間の相関関係を示す。見てわかるように、rは0.58であり、臨床的によくない、そのため使い物にならない相関関係をなしている(身体測定を用い、COの数学的予測を提供してはいるが)。一方、図の下方は、NICO−COと、体重や身長などの身体パラメータを用いないmsf−ELMECの非常にシンプルな実施態様との比較を示す。ここで、相関係数rは0.84であり、臨床的に使用可能な相関からなっている。この相関は技術的により複雑な実施態様において強力に改善される。
【0152】
図5は、従来の命名法に従った従来のインピーダンス信号、すなわち時間A、B、C、X、YおよびO、並びに同時に記録されたECGおよび心音図を示す。最大血流時はR〜Zの間であり、最小血流時はA波の直前である。通常、インピーダンス曲線(ΔZおよびdZ/dt)の記号が逆にされることは留意されるべきである。
【0153】
msf−ELMECを改善するもう1つの可能性は、次のアプローチに基づくものである。
【0154】
現在、インピーダンス信号の形状はより多くの情報を含んでいるにもかかわらず、dZ/dtの高さのみがインピーダンスカルジオグラフィの解釈に用いられている。例えば心不全の場合、インピーダンス信号の形状は図6に示したように変化する。図6の上部は、健康な心臓を有する個体のdZ/dt信号を示し、下部は心不全を有する患者のdZ/dt信号を示す。見てわかるように、(dZ/dt)max(C点)が下がっているが、X波およびO波の振幅の上昇といったような付加的な変化もある。
【0155】
図において見られるように、(dZ/dt)maxのみを用いる代わりに、式は、負の波B、正の波C(実際の(dZ/dt)max)、負の波Xおよび正の波Oの増幅と、並びに一致する増減峻度および面積積分を含むべきである。
【0156】
さらに、異なる位置における異なるZは方程式に別に入れられる可能性があるため、空間におけるヒトの身体の位置を知る必要がありうる。したがって、身体の位置を同時に決定するのが有利でありうる。また、このために、角度計を身体に取り付けてもよく、かかる角度計は最も好ましくは、見えないようにするために例えば分配エレメント内に置かれ、別の患者に再利用してもよい。この場合、一回拍出量およびその他の血行動態パラメータを決定するための方程式は、異なる身体位置に対して訂正される。
【0157】
これらの新規な開発により、かかる方法は初めて、物理的に十分に正確で、電気的にのみ定義され、非常に明確で再現性のあるものとなり、そしてそのため、初めて、心疾患の診断並びに集中治療および麻酔効果をモニターするのに適したものとなる。その他すべての方法と異なり、この方法はほんの数個の、快適な電気電極を胸郭および四肢に置けばよく、これらの電極はECGsを実施するために同時に用いられる。すなわち、胸郭の非対称な形状のためおよび平均化を要する複数の電極を使用するため決して正確ではなかった、問題の多い、胸郭の長さの測定をもはや行う必要はない。また、患者の身長(これは、上記したように誤差を好む偏りを方程式に導入する)も、もはや挿入する必要はない。患者は肺動脈や別の動脈にカテーテルを導入する必要もなくなり、閉ざされたシステム内でマウスピースを介して呼吸する必要もなくなる。さらに、経皮で測定される色素の適用も不必要となる。
【0158】
図7は、本発明の必要な電極エレメントの例を示す。ここで、第一電流電極70は交流測定電流を印加するための電気端子90を有している一方で、そこから間隔を置いて配置される第一電圧電極73は電気測定電流を感知するための電圧端子93を有する。
【0159】
本発明によれば、電圧端子92を有する第二電圧電極72が具備され、かかる電極は第一電圧電極73から距離dのところに配置される。さらに、さらなる電圧電極またはさらなる電流電極を備えることも本発明の範疇である。
【0160】
第一電圧電極73と第一電流電極70とが、少なくともさらに1つの電圧電極72と共に、平行な、導電性ストリップとして具備され、かかるストリップは、共通の電気絶縁キャリア材料上に、最も好ましくはキャリアシート2上に並べられる。第一電圧電極73と第一電流電極70とは、第二電圧電極72と共に、キャリアシートの片側に固定され、好ましくは導電性粘着層とともに備えられる。
【0161】
測定電流源または測定電圧装置との電気的接触を簡易に確立するため、キャリアシート2は、一方の長手方向端部においてテーパー状にされてプラグ型表面6となっており、かかる面上に第一電圧電極73と第一電流電極70とは、第二電圧電極72と共に、接近して置かれている。図7の実施態様において示すように、好ましくは、キャリアシート2は、皮膚と相性のよい、非導電性の柔軟な材料で作られ、電極70、72、73の間に連続的に具備されうる。
【0162】
それに対して、図8の実施態様においては、キャリア材料は粘着面を有する複数のシートストリップ3を含み、かかる粘着面上には、第一電圧電極73および第一電流電極70並びに少なくともさらに1つの電圧電極72が固定されている。ここで、電極70、72、73を有するシートストリップ3は、共通のベースキャリアシート4に実質的に平行に並んで付着しており、かかるベースキャリアシート4はシートストリップを身体表面に取り付けた後、そこから剥がされてもよい。
【0163】
電極70、72、73間の一定の距離は、これら電極の胸郭への取り付け後にベースキャリアシート4が剥がされるということによって保証される。これは、図7による実施態様の、大きな表面積を有する非常に幅広いキャリアシート2によって引き起こされるような皮膚炎を、非常に小さな面積に減じるという利点を有する。
【0164】
まず、図8に示した本発明の電極エレメント80は、剥がせるシートを、好ましくは身体に向いた側に有し、かかるシートは、電極70、72、73の電導性コーティングおよびベースキャリアシート4の非電導性粘着剤を湿った状態に保ち、すべての医療用電極から一般的に知られているように、使用の直前に剥がされる。
【0165】
もちろん、付加的な電流電極または付加的な電圧電極といったさらなる電圧および電流の電極をキャリアシート4に取り付けて、操作上の電極測定長さLまたは操作上の距離dの数学的計算をより正確にできるようにしてもよい。いっぽう、共通の電流電極70の使用は、胸郭の電界がZ01またはZ02の測定中にその不均一性において変化しないという利点を有する。
【0166】
一定の距離を保証する本発明の電極エレメントのもう1つの実施態様は、身体には向いていない側への別のキャリアシートの取り付けを含んでいてもよい。これは指の形をしたキャリアシートが胸郭上に固定された後に初めて剥がされる。よって、キャリアシート間の表面もまた皮膚を刺激する粘着剤を有すべきではない。
【0167】
臨床の日課において実用的で安価な、細いプラグ接続7を用いることができるように、図8において見られるように電極70、72、73はインピーダンス測定装置のためのプラグ接続7エリアに、好ましくはシートストリップ3の横側のキャリア材料リング6に、まとめて導入される。
【0168】
図9は、本発明の測定システムを含む、患者の身体への測定セットアップを示す。腕または脚といったような四肢の遠位端部に、電極エレメント7および8aが取り付けられ、それらは最も適切には2、3またはそれ以上の周波数で全身のインピーダンスを測定する働きをし、電流並びに電圧電極を含む。身体における非対称な電流の分配を避けるため、示した実施例においては、電極エレメント7および8aは両脚と両腕に取り付けられており、ここで印加される電流は両方の半身において同じである。あるいは、測定電流は一方の腕または一方の脚のみを介して導入されうる。
【0169】
さらに、2つの三連電極エレメント81、82が胸郭下口に置かれ、また三連電極エレメント80が頸部領域に取り付けられ、それぞれは1つの電圧電極および2つの電流電極を含んでいる。上部(頸部領域)三連電極エレメント80の電流電極および胸郭下口の下部電極エレメント81の電流電極を介して、並びに上部三連電極エレメント80および下部三連電極エレメント82の電流電極間で、測定電流が印加される。ここで、左半身を流れる測定電流と右半身を流れる測定電流は好ましくは同等である。左右の下部電極エレメント81、82を取り付けることにより、比較的大きな身体体積が測定に含まれる。あるいは、胸郭下口に全身体の前方をカバーする電極エレメントが1つだけ備えられてもよいが、しかしながら、図9に示すように並んで配置される2つの電極エレメント81、82の方が測定結果のよりよい再現性を提供することが示された。測定電圧は電極エレメント80、81、82のそれぞれの第一および第二電圧電極で感知され、本発明による血行動態パラメータを決定するために処理される。
【0170】
電極エレメント7、8a、80、81、82(並びに図10の電極エレメント80’、81’、82’、85、85’、85’’)は、接続リード10を介して分配エレメント9にまとめて導入され、分配エレメント9は患者の身体に固定され、また水平位に関して患者の身体位置を決定し、測定結果に対するその効果を記録するための角度計11を含む。角度計11はまた、患者の身体のどこか別な場所や、患者が寝かされているベッドの上に置かれてもよい。インピーダンス12を測定するための測定装置は、分配エレメント9に接続された測定・制御ライン10aを介して、電極エレメント7、8a、80、81、82、85の電圧電極および電流電極のすべての操作モードを、例えばアナログスイッチ13を用いて、自動的に調節することができる。
【0171】
第一および第二電圧電極に加えて、電極エレメント80、81、82、81’、82’、85’、85’’は第三電圧電極またはさらなる電圧電極を有していてもよい。
【0172】
3つまたはそれ以上の一般的に知られている環状電極を身体上に固定すること、またはスポット電極の三連若しくは多連に実装することもまた可能である。任意の他の電極形態もまた、少なくとも電流または電圧電極間の可変距離を得るように導入されるべきである。
【0173】
パワーを末梢に供給するための電極配置のもう1つの実施例を図10に示す。ここで、図9による実施態様の胸郭下口にある2つの三連電極エレメント81、82は、電流が電極7を介して末梢に導入されている限り、対応する二連電極エレメント81’、82’と置き換えられてもよい。しかしながら、これらの二連電極エレメント81’、82’は二連電圧電極として操作され、2つの異なる距離における実質的に同一の胸郭セグメントのインピーダンスを測定しなければならない。
【0174】
したがって、図10は別の二連電極エレメント85を示し、これは、股あたりの高さで、体幹の下方端部に任意に置かれる。あるいは、図10aは、三連電極エレメント85’を体幹の下方端部に置くことを示しており、そこでは体幹に沿ったインピーダンス変化が2つの異なる距離で測定されうるように、電流が交互に導入されうる。この電極エレメント85または85’は二連または三連電極エレメントとして実装でき、かかるエレメントは必要に応じて短絡にて、体幹の左右に、若しくは体幹の片側のみに置かれる。この電極配置は、操作上の長さまたは電気的に関与している体積が計算できるように、2つの異なる距離について四肢のインピーダンスの測定を可能にするという利点を有する。これはまた、例えば四肢における補足的な止血帯86と合わせて、公知の方法で動脈および静脈の循環をプレチスモグラフィで測定してもよい。静脈循環を測定するためには、止血帯を、動脈圧より低いが静脈圧より高い約40mmHgとなるように膨らまし、インピーダンス変化から脚の体積増加を計算しなければならない。動脈循環を測定するためには、止血帯を静脈血圧より高くなるように膨らまさなければならない。その後、止血帯を外してインピーダンス変化を分析する。これにより、今まで循環変化をインピーダンス変化のパーセンテージでしか出せなかった技術は大幅に改善される。計算された電気的に関与している体積を用いて、現在体積変化はミリメーターなどで表される絶対体積として得ることができる。両方の脚は実質的に同じ体積を有しているので、両方の脚に対する両面測定もまた省略してもよく、電極エレメント7は図10で示したように一方の四肢の周辺に取り付けるだけでよい。次いでこの単独電極エレメントを単独電極エレメント85または85’と、或いは図10bに示したように二連スポット電極エレメント85’’と組み合わせてもよい。脚のインピーダンスに関連性がない場合、電流電極を1つだけ含むが電圧電極を有さない電極エレメント7が具備されうる。腕の電極もまた、図10に示されるように省略してもよい。
【0175】
これはおそらく、腕は小さくて、導電性体液の極めて定まった部分を含んでおり、そのため腕を直接測定することすらなく、全身インピーダンス、ひいては全体液を身体の残りの部分から推定しうるからである。これには、患者が本発明による方法や装置によってモニターされていても腕を自由に使え、腕にさらなる治療を受けることも可能になるという利点がある。これは特に集中治療室において有用である。したがって、本発明において上半身端部と言及するときは、任意に、頸部、胸郭上口、腕および頭部を含むものとする。
【0176】
さらに、胸郭下口における左および/または右電極エレメント81、82、81’、82’のスイッチを選択的に切って、胸郭内の血流の方向および心臓の左側と右側の機能に関する情報を、インピーダンス曲線における得られた結果から得てもよい。一般的に知られているように、心臓は左下側へ心臓から左にある大動脈中へと血液をポンプして、一番大きな血液のベクトルが左下へいくようにする。このベクトルは、胸郭下口における電極エレメント81、82、81’、82’のうちの1つのスイッチが切られた場合、より容易に認識される可能性がある。
【0177】
二連または三連電極エレメントとして電極エレメントを実際に配置および実装することは、個別の要求に基づく。目的はとにかく、可能な限り少ない電極エレメントで可能な限り多くの情報を得ることである。電極の数が少ないということは集中治療において特に重要であり、そこで患者は、二連電極エレメントを頸部80’に、そして1つまたは2つの三連電極エレメントを体幹81に付けなければならない。最多の情報を提供するもう1つの非常に経済的な別の方法は、頸部に付けた二連電極エレメント80’、胸郭下口の左側と右側につけたさらに2つの電極エレメント81’、82’、並びに、体幹の下方端部の片側につけた単独の二連電極エレメント85および同じく下肢7の対応する端部につけたもう1つのエレメントを含む。二連電極エレメントを5つだけ含む、集中治療室に適したこの別法は、正確な心臓性能の決定を下すだけではなく、細胞外空間および細胞内空間に分けられた身体中の液体分布、並びに身体の片側からもう一方の側への液体移動の決定を提供する。電流は常に体幹の上端部における電極エレメント80’および下肢における電極エレメント7を介して導入される。身体の中央に向くように置かれた電極エレメント80’、7の電極は、電極エレメント81’、82’の2つの電極およびエレメント85と共に、それぞれに、もっぱら電圧電極として操作される。
【0178】
さらに、液体体積の計算には血清ナトリウムも考慮する。一般的に知られているように、これは細胞外空間において主なイオンの構成要素であり、そのため導電性およびインピーダンスを決定するものである。本発明の方法および装置を適応する1つの分野である心疾患では、血清ナトリウムはしばしば標準値140mmol/Lから115mmol/Lの低さにまで減り、そのためイオン性ひいては導電性が20%まで下がる。必要であれば、これは、血清ナトリウムまたはイオン性を用いる方程式に入れることによって考慮に入れられるべきである。しかしながら、ヘマトクリットは血液導電性にも影響を与え、それが通常そうであるように一定である場合、血清ナトリウムの変化は、様々な周波数で心臓の活動中のインピーダンス変化を測定することによって決定されうる。
【0179】
本方法の重要な適用は、一回拍出量、駆出率、拡張期の機能、肺の楔入圧、全体液、細胞外空間および液体移動に加えて、血液中のホルモン濃度の間接的な計算を含んでいてもよい。例示としては、ナトリウム排泄増加性ペプチド、例えば、脳ナトリウム排泄増加性ペプチド、またはプロペプチド、心房性ナトリウム排泄増加性ペプチド(ADHとも称される)の濃度が挙げられる。臨床的適用においては、ナトリウム排泄増加性ペプチドは通常心不全をスクリーニングおよび診断するために用いられる。かかる決定は、血液サンプルの摂取が必要とされ、非常に費用がかかる(現在で約40ユーロ)。外来部門における標準的な数である約20人の心疾患患者/日に基づき、本発明の1つの装置の償却時間を容易に計算できる。これらのホルモンの調節は、液体バランスおよびこれらの液体による心臓の拡張に密接に関わっている。液体バランスおよび心臓の活動による液体移動が詳細にわかっている場合は、血液中のこれらのホルモン濃度を予測することが可能であり、それにより費用のかかる血液分析を避けることができる。本発明の方法のこれらのパラメータはすべて、例えば、標準技術でかかるパラメータを測定することによって実験的に、またはホルモンの場合、典型的な人数の患者で関心のあるパラメータを推定することによって、および、例えば、多重回帰方程式もしくはニューラルネットワーク、その他の「機械学習」アルゴリズムもしくはその他の任意のブラックボックスモデルで測定された電気的パラメータに基づいて関心のあるパラメータを推定することによって、決定される。
【0180】
本発明の電極配置は、Kichul Chaによる米国特許US5335667Aに対し顕著な差異を示す。かかる文献においては、身体は身体組成物を測定するために確かにセグメントに分けられているが、本質的に同じセグメント上で異なる長さに対する測定を行うのは不可能であり、そのため電気的に操作上の長さを計算できない。こういった理由で、US5335667Aはセグメント上の周辺測定分析および手動でする長さの測定分析をいまだ必要としている。これは、US5335667Aの図5に示されているように、巻尺およびキャリパーを用いて行われている。
【0181】
しかしながら、本発明は、表面で測定されたセグメントの長さは、図3に見られるように、計算された「電気的に操作上の長さ」とは、全くまたは殆ど関係ないことを示している。これが本発明の方法の主な利点である。図9および図10において見られるように、本発明による方法の膨大な情報値にも関わらず、電極の数は極めて実用的であり、これは特に、それらが多連電極として実装されているからである。さらに、図10に示した電極配置は、身体の長手方向軸に沿ったそれぞれの位置変化が顕著な液体移動を引き起こすため、身体の長手方向軸に沿った位置変化が初めて自動的に認識されたという重要な利点を有している。これらの液体移動は心臓への静脈還流に影響し、それにより心臓性能にも影響を与える。また身体が垂直に立ったとき、静脈不全は長手方向軸に沿った顕著に大きな液体移動を引き起こすため、静脈不全は容易に認識されうる。特に角度計と組み合わせると、得られた位置変化に対し液体移動が適正であるか不適正であるか、および、測定された心臓性能変化が測定された液体移動に対し適正であるかを容易に決定できる。
【0182】
これらの試験は例えば傾斜テーブル上で容易に行うことができる。種々の周波数での測定および1つの電極から別のものへの切り替えは費用のかかる複雑な装置を必要としないため、電気的必要条件もまた最小である。よって、かかる装置を患者の自宅に提供することによって、ホームケアにおいてこの装置を用いることも可能である。そのために、ECGsの同時導電を可能にすることは有利である。図9および10に示したように、身体上の電極の位置は、ECGsの導電に適していることが好ましい。それにより、患者に安価で再利用可能である自分の電極を提供できる。これらの電極は例えば導電性材料でできていてもよく、スポーツにおけるパルスメーターで知られているような、柔軟なバンドで固定されていてもよい。非電導性材料でできていてもよいこれらの柔軟なバンドへ、電導性材料をストリップまたはスポットの形態(例えば、電導性ゴム)で組み込み、次いで、延長可能で、開閉可能な環状バンドを用いて身体に固定する。これらの電極はまた、患者、その肉親、または看護スタッフによって容易に取り付けることができる。
【0183】
結果は必ずしも患者の自宅において装置中で処理される必要はなく、またこの装置によって完全に処理される必要もない。例えば、ラジオ通信や専用回路(例えば、電話または電子メール)によってセントラルオフィスへ送信され、そこで結果の最終評価が行われてもよい。
【0184】
「遠隔治療(telemedicine)」として知られるこの開発は、心疾患を有する患者に特に関連している。彼らは現在のところ、費用のかかる特別外来部門で細かいコントロールシステムを必要としている。通常、心臓患者は、治療を最適化するために、月に一回またはそれ以上救急車によって費用のかかる施設に送られる。これらの心臓患者の予後は、癌患者のそれと同じくらいか、それよりもひどいことがしばしばある。また患者を生かし続けるために、治療は絶え間なく状況に合わせて変化させなければならない。さらに、高齢化により心疾患、特に心不全を有する患者が劇的に増えており、心疾患は産業国において全国的に蔓延している。本発明の方法および装置で決定され、遠隔医療を介してセントラルオフィスへ送信される、変化に関する情報(例えば心臓性能の退化、水分過剰など)は、患者を十分早い時期にセンターへ運ぶことを確実にするか、または電話や電子メールを介して治療を最適にできる。このため、循環が正常な場合はセンターでのチェックアップが省略されうる。新しい技術の使用にも関わらず、費用を大きくセーブすることができる。生データまたは患者の装置で大雑把に前処理されたデータがセンターに送信された場合、測定装置12における現場の知能装置は省略されうるため、装置をより低い値段で提供することも可能である。
【0185】
インピーダンストモグラフィと本発明の方法および装置との間の差異は、容易に認識できる。なぜなら、インピーダンストモグラフィにおいては、複数の電極が、同じ高さで固定され、身体の長手方向で測られ、同じ平面におけるインピーダンス値に基づいてその平面における液体分布のイメージを作り、また複数の平面から三次元の液体分布を決定する。それに対し、我々の方法は、平面の復元や空間における液体分布の復元ではなく、長手方向軸に沿った液体移動の測定を目的としており、そこで、電気的操作距離が初めて考慮に入れられる。
【0186】
図11は多連スポット電極14の典型的な実施態様を示す。ここで、電極間の接続ケーブルは電極が身体に取り付けられている場合に一番伸長しているということ、および電極の取り付けモードによって身体の長手方向軸に沿った電極間の距離の変化が達成されるということによって、電極間の定まった距離は保証される。使用者が電極間の距離に本当に対応することを確かにするために、比較的強固なスペーサー16が電極間に備えられてもよく、これは、強固な接続ケーブルを提供し、それを電極スペーサー16として用い、それにより定まった距離が保証されることによるものである。操作距離dを計算する場合、電極はお互いにどのような距離をとって置かれてもよく、スペーサーは必要とされない。
【0187】
i DALEN J.E: “The Pulmonary Artery Catheter-Friend, Foe, or Accomplice?” JAMA, 2001年7月18日-Vol.286, No.3: 348-350
ii POLANCZYK CA, ROHDE LE, GOLDMAN L, COOK EF, THOMAS EJ, MARCANTONIO ER, MANGIONE CM, LEE TH: “Right Heart Cathertization and Cardiac Complications in Patients Undergoing Noncardiac Surgery”. JAMA, 2001年7月18日-Vol.286, No.3: 309-314
iii FORTIN J, NESSLER B, NESSLERW, SKRABAL F: “Medizinische Elektrode”, A 392/2001, KL. A61B, 2001年3月13日出願
iv SRAMEK B: “Noninvasive Continuous Cardiac Output Monitor”., US 4,450,527, 1984年5月22日
v KUBICEK, W.G., I.N.KARNEGIS, R.P. PATTERSON, D.A. WITSOE, R.H. MATTSON: Development and evaluation of an impedance cardiac output system. Aerospace Medicine 37, 1208-1212(1966)
vi KUBICEK, W.G., F.J. KOTTE, M.U. RAMOS, R.P. PATTERSON, D.A. WITSOE, J.W. LA BREE, W. REMOLE, T.E. LAYMAN, H. SCHOENING, D. SMITH: The minnesotaimpedance cardiograph-theory and applications. Biomed. Eng., 9, 410-416,(1974)2
vii SRAMEK, B: Noninvasive technique for measurement of cardiac output by means of electrical impedance. Proceedings of the VthICEBI Tokyo (1981)
viii SRAMEK, B.Bo, D.M. ROSE, A. MIYAMOTO: Stroke volume equation with a linear base impedance model and ist accuracy, as compared to thermodilutionand magnetic flowmeter techniques in humans and animals. Proceedings of the Vth ICEBI, Zadar, Yugoslavia, p.38 (1983)
ix LAMBERTS, R., K.R. VISSER, W.G. ZIJLSTRA: Impedance cardiography. Van Gorcum, Assen, Holland (1984)
x BERNSTEIN, D.P.: A new stroke volume equation for thoracic electrical bioimpedance: Theory and rational. Critical Care Medicin 14, p.904-909 (1986)
xi QUAIL, A.W., F.M. TRAUNGOTT, W.L. PORGES: Thoracic resistivity for stroke volume calculation in impedance cardiography J Appl. Physiol. (1981)
xii SHANKAR, T.M.R., J.G. WEBSTER, S.Y. SHAO: The contribution of vessel volume change and resistivity change to the electrical impedance pulse. IEEE Trans Biomed Engl, BME32: 192. (1985)
xiii Wang L, Patterson R: “Multiple Source of the Impedance Cardiogram Based on 3-D Finite Difference Human Thorax Models”. IEEE Transactions on Biomedical Engineering Vol.42, No.2, 1995年2月2日, 141-148
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】図1に示すように、電極間の測定長さは、電極が胸郭上口と胸郭下口との間に正確に配置される場合、驚くべきことに、患者の身長と良好に相関する。
【図2】心不全を有する患者および心不全を有しない患者において、駆出率EFが、Simpson技術に従って心エコー検査法で測定され、COと比較されている。
【図3】図3は、身体上で決定された測定長さと、2つの電圧または電流電極間で決定された操作測定長さとの間の関係を示す図である。
【図4A】図4Aは、従来のインピーダンスカルジオグラフィおよび再呼吸法による、心一回拍出量測定間の比較を示す図である。
【図4B】図4Bは、本発明(msf−ELMEC)のインピーダンスカルジオグラフィおよび再呼吸法による、心一回拍出量測定間の比較を示す図である。
【図5】図5は、患者の、時間由来のインピーダンス信号、心電図、および心音図を示す。
【図6】図6は、健康な個体と病気の個体との間の時間由来インピーダンス信号の比較である。
【図7】図7は、本発明の電極エレメントの実施態様である。
【図8】図8は、本発明の電極エレメントの別の実施態様である。
【図9】図9は、本発明の測定システムの実施態様の概略図である。
【図10】図10は、本発明の測定システムの実施態様の別の概略図である。図10aは、図10の本発明の測定システムの改良された実施態様の詳細図である。図10bは、図10の本発明の測定システムの改良された実施態様の詳細図である。
【図11】図11は、本発明の測定システムの別の実施態様の概略図である。
【図12】図12は、本発明の測定システムの別の実施態様の概略図である。
【図13】図13は、本発明の測定システムの別の実施態様の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体または身体セグメントの電気インピーダンスに基づいて、導電性体液の、体積、組成および移動を測定するための方法であって、特に、血行動態パラメータを決定するための電気機械的カルジオグラフィ(ELMEC)またはインピーダンスカルジオグラフィ(IKG)測定を行うための方法であって、その特徴が、
少なくとも1つの周波数の交流測定電流が身体に導入されること、および、
本質的に同じ身体セグメントを通って該交流測定電流が流れ、その身体セグメントのインピーダンスおよびその時間的変化が、少なくとも2つの異なる測定長さ(L、L2、L3、L4、L5)について、身体の本質的に長手の方向に測定されることである、
前記方法。
【請求項2】
本質的に同じ身体セグメントの少なくとも2つの異なる測定長さ(L、L2、L3、L4、L5)について、胸郭下口および胸郭上口に近接する胸郭にてインピーダンスが感知されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
頸部、頭部、腕などの上半身端部および脚などの下半身端部に、またはこれらの近傍に電流が導入されること、および、少なくとも2つの異なる測定長さ(L、L2、L3、L4、L5)について、胸郭および/または体幹にてインピーダンスが測定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの下肢のインピーダンスが、本質的に同じ身体セグメントの少なくとも2つの異なる測定長さ(L、L2、L3、L4、L5)について感知されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
従来のインピーダンスカルジオグラフィ測定を行うための方法または請求項1〜4のいずれかに記載の方法であって、さらに下半身端部と上半身端部との間の全身のインピーダンスが測定されることを特徴とする、前記方法。
【請求項6】
2つの異なる測定長さ間の長さの差(d、d1、a、a1)が、検査した身体部分の長さと比較して小さいことを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
長さの差(d、d1、a、a1)に対する検査した身体部分の長さの比が、3:1と、30:1との間であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
長さの差(d、d1、a、a1)に対する検査した身体部分の長さの比が、近似的に10:1であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
電極間の異なる測定長さ(L、L2、L3、L4、L5)について決定されたインピーダンス値から、操作上の電極測定長さ(L)および必要に応じて操作上の電極距離(d)が計算され、該電極測定長さが身体セグメントの電気的に操作上の長さに相当することを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
身体セグメントの電気的に操作上の長さが式L=d/(Z02/Z01−1)に従って計算され、ここで、dが測定に使用される2つの電極測定長さ間の差であり、Z02が長いほうの電極測定長さについてのインピーダンスであり、Z01が短いほうの電極測定長さについてのインピーダンスであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
胸郭下口の電圧電極が、胸郭の左側および右側にそれぞれに二連電極(81、82、81’、82’)として備えられ、ここで、長手方向に同じ距離で位置決めされた電極が互いに電気的に接続されていることを特徴とする、請求項2、3、5および6〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
胸郭口の左側および右側それぞれの電極(81、82、81’、82’)が選択的に切り替えられ得ることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
体幹の下方端部の電圧電極(85、85’、85’’)が、体幹の下方端部の左側および右側にそれぞれに二連電極として備えられ、ここで、長手方向に同じ距離で位置決めされた電極が互いに電気的に接続されていることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
体幹の下方端部の左側および右側それぞれの電極(85、85’、85’’)が選択的に切り替えられ得ることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
時間に対するインピーダンスの変化が少なくとも2つの周波数にて測定されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
インピーダンスが3つの異なる周波数にて測定されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
異なる周波数が、1kHzと10kHzとの間のもの、約30kHzと100kHzとの間のもの、および200kHzを上回るものであることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
測定したインピーダンス値の最大時間的変化(dZ/dt)が少なくとも2つの異なる測定周波数にて決定されること、および身体中に存在する血液の抵抗率が該最大時間的変化から決定されることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
測定したインピーダンス値の、特に比較的小さい時間枠における最大時間的変化が、心周期の異なる時間にて決定されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
時間枠が、抵抗率の急上昇に、および拡張期の末期における最小血流の時間に設定されることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
時間帯が小さな滑り帯として心周期全体にわたって置かれることを特徴とする、請求項19および20に記載の方法。
【請求項22】
交流測定電流の周波数を、低い測定周波数から高い測定周波数へと連続的に変化させることを特徴とする、請求項15から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
低い測定周波数が約1kHzであり、高い測定周波数が約1000kHzであることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
測定電流が、少なくとも別の電流電極距離についていくつかの異なる測定周波数で印加されること、およびインピーダンスが、異なる電圧測定長さについて異なる周波数で測定されることを特徴とする、請求項15から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
測定電流と測定電圧との間の位相角が決定されることを特徴とする、請求項1から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
インピーダンス波B、C、XおよびOの振幅、面積、および上昇正接または下降正接が、血行動態パラメータを計算するために独立してまたは一緒に使用されることを特徴とする、請求項1から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
一回心拍出量についてのフィックの原理または心エコー検査法または駆出率、肺の楔入圧、拡張期の機能などの他のパラメータについてのアイソトープ方法などのゴールドスタンダードによって決定された実験式が、血行動態パラメータを測定するために使用されることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
血清中のナトリウム含有量が決定され、関連するパラメータの計算に使用されることを特徴とする、請求項1から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
血清中のナトリウム濃度が、請求項1から27のいずれかに記載の方法によって数学的に概算され、結果として得られることを特徴とする、請求項1から28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
ADHおよびナトリウム排泄増加性ペプチド、特に脳ナトリウム排泄増加性ペプチドおよび体液を調節するその前駆体、その分画および組成物などのホルモンが、請求項1から29のいずれかに記載の方法によって実験式によって概算され、計算結果として得られることを特徴とする、請求項1から29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
結果がデジタル形式で、好ましくは電話または電子メールによって中央ステーションに送られ、ここで、該結果がさらに処理および評価され、その後、全ての必要な測定および治療の変化が遠隔地から患者に伝えられることを特徴とする、請求項1から30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
細胞外空間および細胞内空間などのその分画を有する体液が決定され、読み出されることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
ヒトの身体における電気インピーダンスまたはその時間的変化を測定するための装置であって、特に、血行動態パラメータを決定するための電気機械的カルジオグラフィまたはインピーダンスカルジオグラフィ(IKG)測定を行うための装置であって、特に、請求項1から32のいずれかに記載の方法を実施するための装置であって、その特徴が、
少なくとも2つの電圧電極(80、81、82、80’、81’82’)が備えられ、該電圧電極の少なくとも1つが二連電圧電極エレメントとして備えられており、該2つの電圧電極間のインピーダンスおよびその時間的変化が感知され得ることである、
前記装置。
【請求項34】
少なくとも1つの二連電圧電極エレメントが、共通の絶縁キャリアシート(2)に取り付けられていることを特徴とする、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
三連電極エレメントを有する電圧電極(80)の少なくとも1つが、1つの電流電極(70)と2つの電圧電極(72、73)とから形成されていることを特徴とする、請求項33および34に記載の装置。
【請求項36】
電流電極(70)および二連電圧電極エレメント(72、73)が、三連電極エレメントとして共通のキャリアシート(2)に固定されていることを特徴とする、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
全ての電極エレメント端子が分配エレメント(9)において接続リード(10)によって一緒にされていること、および分配エレメント(9)が測定デバイス(12)の測定ラインおよび制御ライン(10a)に接続されていることを特徴とする、請求項33から36のいずれかに記載の装置。
【請求項38】
分配エレメント(9)が制御可能であり、それによって、電極エレメントが測定デバイス(12)の異なる測定ラインおよび制御ライン(10a)に接続可能であることを特徴とする、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
身体の傾きを測定するための角度計(11)が備えられていることを特徴とする、請求項33から38のいずれかに記載の装置。
【請求項40】
角度計(11)が分配エレメント(9)上に位置決めされていることを特徴とする、請求項39に記載の装置。
【請求項41】
ヒトの身体における電気インピーダンスまたはその時間的変化を測定するための医療用電極エレメントであって、特に、血行動態パラメータを決定するための電気機械的カルジオグラフィまたはインピーダンスカルジオグラフィ(IGK)測定を行うためのものであって、
第一電流電極(70)と、該電流電極から間隔を置いて配置された第一電圧電極(73、15)とによって測定が行なわれるものであり、該第一電流電極は、交流測定電流を印加するための電気端子(90)を有しており、該第一電圧電極は、電気的測定電圧を感知するための電圧端子(93)を有しており、
少なくとも1つのさらなる電圧電極(71、72)が、電圧端子を有して備えられており、かつ、その少なくとも1つのさらなる電圧電極(71、72)は、第一電圧電極(73、15)から距離(d、d1)を置いて位置決めされており、請求項1から40のいずれかに記載の方法を実施するためのものであって、
その特徴が、
第一電圧電極(73)が、少なくとも1つのさらなる電圧電極(71、72)と共に、平行な導電性ストリップとして備えられており、該ストリップの幅が、該ストリップ間の距離と等しく、好ましくは該距離よりも小さいことである、
前記医療用電極エレメント。
【請求項42】
電極間の距離(a、a1、d、d1)に対するストリップの長さの比が、2と15との間の範囲であることを特徴とする、請求項41に記載の医療用電極エレメント。
【請求項43】
第一電圧電極(73)と第一電流電極(70)とが、少なくとも1つのさらなる電圧電極(71、72)および/または少なくとも1つのさらなる電流電極と共に、平行な導電性ストリップとして備えられており、該ストリップの幅が、該ストリップ間の距離と等しく、好ましくは該距離よりも小さいことを特徴とする、請求項41および42に記載の医療用電極エレメント。
【請求項44】
第一電圧電極(73)と第一電流電極(70)とが、少なくとも1つのさらなる電圧電極(71、72)と共に、共通の電気絶縁性のキャリア材料(2、3、4)上に位置決めされていることを特徴とする、請求項41から43のいずれかに記載の医療用電極エレメント。
【請求項45】
キャリア材料がキャリアシート(2)からなること、および、
第一電圧電極(73)と第一電流電極(70)とが、少なくとも1つのさらなる電圧電極(72)および/または少なくとも1つのさらなる電流電極と共に、キャリアシート(2)の一方の面上に固定されており、好ましくは導電性粘着層が備えられていることを特徴とする、請求項41から44のいずれかに記載の医療用電極エレメント。
【請求項46】
キャリア材料が、粘着面を有する複数のシートストリップ(3)を有し、該シートストリップ上に、第一電圧電極(73)と第一電流電極(70)とが、少なくとも1つのさらなる電圧電極(72)と共に取り付けられていること、および、
その上に固定された電極(70、72、73)を有するシートストリップ(3)が、実質的に平行な配置で共通のベースキャリアシート(4)に接着することができるものであり、該ベースキャリアシート(4)が、シートストリップ(3)の取り付け後に身体表面から剥がされ得ることを特徴とする、請求項1から44のいずれかに記載の医療用電極エレメント。
【請求項47】
キャリアシート(2、4)が、一方の長手方向端部においてテーパー状にされてプラグ型表面(6)となり得、該プラグ型表面上に、第一電圧電極(73)と第一電流電極(70)とが、少なくとも1つのさらなる電圧電極(72)および/または少なくとも1つのさらなる電流電極と共に、密な間隔で配置されていることを特徴とする、請求項1から46のいずれかに記載の医療用電極エレメント。
【請求項48】
第一電圧電極と第一電流電極とが、少なくとも1つのさらなる電圧電極および/または少なくとも1つのさらなる電流電極と共に、共通のキャリアシート(85’’)などのスペーサー(16、17)によって互いから間隔を置いて配置されたスポット電極(14)の形態で備えられていることを特徴とする、請求項33から40のいずれかに記載の医療用電極エレメント。
【請求項49】
電極エレメントが、円環状で開閉可能なバンドから作製されており、該バンドは、再利用可能で、少なくとも部分的に可撓性を有しおよび/または弾性を有し、電気絶縁性を有しまたは低い導電性であり、該電極エレメント中に、電極の導電性材料がストリップまたはスポットの形態で組み込まれていることを特徴とする、請求項33から40、および請求項41から43、および請求項48のいずれかに記載の医療用電極エレメント。
【請求項50】
電極または電極エレメントがECG電極として操作されることを特徴とする、請求項33から49のいずれかに記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公表番号】特表2006−501892(P2006−501892A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−540364(P2004−540364)
【出願日】平成15年10月7日(2003.10.7)
【国際出願番号】PCT/AT2003/000302
【国際公開番号】WO2004/030535
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(503334345)ツェーエヌジュステームス メディツィンテヒニーク ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】