説明

衛生マスク

【課題】顔とマスク本体の密着性を簡単確実に高められるマスクを提供する。
【解決手段】マスク本体(11)と、これを着用者に繋ぐ紐(3)からなるマスク(1)である。上側貫通孔(21)および下側貫通孔(22)を有する固定板(2)を前記マスク本体の左右に一対設ける。少なくとも1個の貫通孔(41,42)を有する調節板(4)を前記紐の途中に少なくとも1個設ける。前記紐は、前記一対の固定板の前記上側貫通孔同士を繋ぐ上側リング(3A)と、前記一対の固定板の前記下側貫通孔同士を繋ぐ下側リング(3B)と、前記上側リングおよび前記下側リングを繋ぐ前記固定板上の直線部からなり、1本の紐である。前記紐は、自然状態では前記調節板の前記貫通孔にひっかかる複数のコブ(31)を有するが、伸長状態ではそのコブが小さくなるか又は消滅して前記貫通孔を通過する弾性紐である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の塵、病原菌、花粉等が体内に侵入するのを予防したり、患者が周囲に病原菌をまき散らしたりしないようにするために、鼻や口に着用する衛生マスクに関する。特に、顔とマスク本体の密着性を簡単に高められるマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
顔とマスク本体の密着性を高めた立体マスクは周知であるが、そのようなマスクであっても長時間着用することによりどうしてもゆるみが出ることがあり、マスク本体の周辺で隙間が発生することがある。
【0003】
隙間の発生を防ぐために、紐の長さを変更可能としたマスクは、たとえば実用新案登録第3031667号により、公知である。この従来技術では、紐本体は紐外径よりも突出した幅の係止部を備えたストッパを有する。このストッパをマスク本体側の通し穴に挿通し、ストッパ間の間隔を調節することにより、紐の長さを調節する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、ストッパを製作するために、紐外径よりも突出した幅の係止部を製作する必要がある。この係止部はモールド成形により、合成樹脂を紐に付着させて形成する。このような係止部製作は工程数を増やし、マスクの価格を上昇させる。
【0005】
また、図示された係止部による調節箇所が4カ所もあり、1カ所の長さの調節をしてその部分の密着性を高めると、今度は別の箇所がゆるむというようなことがあった。そのため、すべての箇所で適度な密着性を持たせるのに時間がかかっていた。また幼い子供や手に障害を持っているような人にとっては調節が困難であった。
【0006】
本発明は、この問題を解決するために行われたもので、顔とマスク本体の密着性を簡単確実に高められるマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明請求項1は、マスク本体と、このマスク本体を着用者に繋ぐ紐からなるマスクにおいて、
(a) 上側貫通孔および下側貫通孔を有する固定板を前記マスク本体の左右に一対設けること、
(b) 少なくとも1個の貫通孔を有する調節板を前記紐の途中に少なくとも1個設けること、
(c) 前記紐は、前記一対の固定板の前記上側貫通孔同士を繋ぐ上側リングと、前記一対の固定板の前記下側貫通孔同士を繋ぐ下側リングと、前記上側リングおよび前記下側リングを繋ぐ前記固定板上の直線部からなり、1本の紐であること、
(d) 前記紐は、自然状態又は着用状態では前記調節板の前記貫通孔にひっかかる複数のコブを有するが、伸長状態ではそのコブが小さくなるか又は消滅して前記貫通孔を通過する弾性紐であること
を特徴とする。
【0008】
本発明請求項2のマスクは、前記調節板が前記上側リング又は下側リングの、着用者後頭部に相当する位置に取り付けられているものである。
【0009】
本発明請求項3のマスクは、前記固定板の上側貫通孔および下側貫通孔は前記紐のコブの存在している状態でも紐が通過可能な大きさであるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のマスクによれば、調節板1カ所において指で力を加えて紐を伸ばして長さを調節した後、力を加えるのを止めて自然状態に戻すことにより、コブが調節板にひっかかり、その位置が固定されるので、紐の長さ調節を簡単に行うことができる。また、そのような紐は、市販品を使用することができるので、別工程で紐を製作する必要がない。
【0011】
本発明請求項2のマスクによれば、後頭部の1個所で紐の長さ調節が可能となる。
【0012】
本発明請求項3のマスクによれば、固定部の貫通孔により、紐の調節が妨げられることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の1実施例に係る衛生マスクの、前方から見た斜視図である。
【図2】本発明の1実施例に係る衛生マスクの装着状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の1実施例に係る衛生マスクの(a)平面図、(b)側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0015】
図1に示すマスク1は、立体型で、医療従事者等がよく用いるタイプのものである。このマスク1は、マスク本体11および紐3を有する。
【0016】
マスク本体11は立体型であることが好ましいが、平面型でも適用可能である。マスク本体11には、着用者の鼻に相当する位置に顔との密着性を高めるための形状記憶樹脂5が取り付けられている。
【0017】
紐3は、1本のつながった紐であり、途中、3カ所で位置決めされる。
【0018】
第1および第2の位置決め個所は、マスク本体11の表側左右一対の固定板2である。固定板2は、合成樹脂シートであり、各固定板の上下2カ所に上側貫通孔21、下側貫通孔22が設けられている。また、中央の固定ボタン23において、マスク本体11に対して裏当板(図示せず)と共にかしめられて固定されている。固定ボタン23は中央の1カ所のみに設けられているから、固定板2の上下端部24、25は上下方向にある程度移動の自由がある。
【0019】
第3の位置決め個所は調節板4である。調節板4にも左右に2カ所貫通孔41、42が設けられている。調節板4はマスク本体11には固定されていないので、移動自在である。
【0020】
固定板2の貫通孔(「固定貫通孔」と呼ぶこともある)21,22は、調節板4の貫通孔(「移動貫通孔」と呼ぶこともある)41,42よりも直径が大きい。この実施例では、固定貫通孔21,22の直径は約6mm、可動貫通孔41,42の直径は約1〜1.5mmである。これらの貫通孔21,22;41,42は独立した完全孔でもよいが、切れ目25を設けた不完全孔でもよい。切れ目25があればそこから紐を簡単に挿入することができる。
【0021】
これらの貫通孔21,22;41,42を通過するように、多数のコブ31付きの弾性紐3が取り付けられている。このコブ付き弾性紐3は、通称「プードル紐」と呼ばれる紐でそれ自体公知であり、たとえば、結ぶ必要のない靴紐「Xtenex」(商標)としても市販されている。
【0022】
この紐3は全体が弾性を有していて、伸縮自在である。自然状態では、直径約2mmのゴム紐において直径約5mmのコブ31が約1〜2cm置きに設けられている。伸長状態では引っ張られてコブ31が小さくなるか、又は完全に消滅する。
【0023】
このコブ31の大きさと固定貫通孔21,22、可動貫通孔41,42の直径の関係は次のとおりである。すなわち、紐の直線部30およびコブ31は、自然状態(全くテンションがかかっていないとき)では可動貫通孔41,42にひっかかるが、着用状態(緩くテンションがかかっているとき)ではコブ31のみが可動貫通孔41,42にひっかかる。伸長状態(強くテンションがかかっているとき)では、紐の直線部30はもちろん、コブ31も、可動貫通孔41,42を通過することができる。しかし、前記のとおり、固定貫通孔21,22は可動貫通孔41,42に比べて比較的に大きいので、紐3は、伸長状態はもちろん、自然状態でも着用状態でも固定貫通孔21,22を通過することができる。
【0024】
紐3は、図1〜図3に示すように、固定板2の上孔21同士を繋ぐ上側リング3Aと、固定板2の下孔22同士を繋ぐ下側リング3Bが形成され、上下リング3A,3Bは固定板2上の直線部3Cで繋がっている。調節板4は、この実施例では上側リング3Aの、着用者の後頭部に相当する位置に取り付けられている。もちろん、下側リング3Bに取り付けてもよい。
【0025】
図2に示すように、このマスク1は、本体マスクを顔前面に当て、上下リング3A,3Bを後頭部に回して頭部により、マスク本体を支持する。従来のマスクと異なり、紐は耳により支持されていない。
【0026】
このマスク装着状態において、マスク本体11と顔の密着度を高めたいとき、両手を後頭部に回して、調節板4を押さえ、調節板4から飛び出ている小さなリング部3A1を引っ張る。紐3は伸長してコブ31が小さくなり、コブ31は、調節板4の可動貫通孔41,42を通過するので、紐の長さ調節が可能となる。紐3は繋がった1本の状態であるので、1個所で加えた力は容易に伝播し紐全体が均一のテンションを受ける。そのためにも、固定板2の貫通孔21,22は紐3の通過を妨げるものであってはならない。適当な長さに調節した後、力を加えるのを止めて自然状態に戻すことにより、コブ31が可動貫通孔41,42にひっかかり、その位置で紐3が固定されるのである。
【符号の説明】
【0027】
1 マスク
11 マスク本体
2 調節板
21,22 貫通孔
23 固定ボタン
3 紐
3A 上側リング
3A1 調節板の先の小さなリング
3B 下側リング
3C 直線部
31 コブ
4 調節板
41,42 貫通孔
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】実用新案登録第3031667号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク本体(11)と、このマスク本体を着用者に繋ぐ紐(3)からなるマスク(1)において、
(a) 上側貫通孔(21)および下側貫通孔(22)を有する固定板(2)を前記マスク本体(11)の左右に一対設けること、
(b) 少なくとも1個の貫通孔(41,42)を有する調節板(4)を前記紐(3)の途中に少なくとも1個設けること、
(c) 前記紐(3)は、前記一対の固定板(2)の前記上側貫通孔(21)同士を繋ぐ上側リング(3A)と、前記一対の固定板(2)の前記下側貫通孔(22)同士を繋ぐ下側リング(3B)と、前記上側リング(3A)および前記下側リング(3B)を繋ぐ前記固定板(2)上の直線部(3C)からなり、1本の紐であること、
(d) 前記紐(3)は、自然状態又は着用状態では前記調節板(4)の前記貫通孔(41,42)にひっかかる複数のコブ(31)を有するが、伸長状態ではそのコブ(31)が小さくなるか又は消滅して前記貫通孔(41,42)を通過する弾性紐であること
を特徴とする衛生マスク。
【請求項2】
前記調節板(4)が前記上側リング(3A)又は下側リング(3B)の、着用者後頭部に相当する位置に取り付けられている請求項1記載の衛生マスク。
【請求項3】
前記固定板(2)の上側貫通孔(21)および下側貫通孔(22)は前記紐(3)のコブの存在している状態でも紐(3)が通過可能な大きさである請求項1又は2記載の衛生マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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