説明

衛生マスク

【課題】覆い部に横方向に延びる複数のヒダが形成された横ヒダ型衛生マスクにおいて、装着状態で側縁部の一部が顔の肌から浮き上がり、気密性に欠けるとともに見映えが悪いという問題を解決する。
【解決手段】口と鼻とを覆う覆い部10と、耳に掛けられる2つの耳掛部12とを含み、覆い部10が横方向に延びる複数の横ヒダ30,32,34が形成されたヒダ形成部24を含む横ヒダ型衛生マスクを改良する。覆い部10の両側縁部40に、上下方向に延び、横ヒダの側壁部を互いに接合して横ヒダが延びることを阻止する1本ずつの接合線52を形成する。それら接合線52の各々を、覆い部10の上下方向の中間部において左右方向の中央に向かって曲げ込まれた曲込部60を有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花粉,ほこり等の吸引防止、風邪の感染防止等の目的で使用される衛生マスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
衛生マスクには、例えば、下記の特許文献1に記載されているように、口と鼻とを覆う覆い部と、耳に掛けられる2つの耳掛部とを含み、覆い部が横方向に延びる複数のヒダが形成されたヒダ形成部を含むものがある。特許文献1に記載の衛生マスクは、覆い部が横長の長方形状を成し、ヒダ形成部は、覆い部の高さ方向の中間部分に設けられ、横方向に延びる1つの箱ヒダおよび2つの車ヒダを含む。箱ヒダは、互いに隣接する上向きのヒダおよび下向きのヒダを含む。箱ヒダのヒダおよび車ヒダはそれぞれ、山折り部と谷折り部とを1つずつ含み、側壁を3つずつ含む。上向きのヒダは谷折り部が上方へ開かれたヒダであり、下向きのヒダは谷折り部が下方へ開かれたヒダである。箱ヒダのヒダおよび車ヒダの3つずつ側壁の側縁部が互いに接合されて、延びない側縁部が形成されている。さらに、覆い部を形成する素材がヒダ形成部の最下端から内側へ折り返されるとともに、折り返された部分の側縁部の折返し点に隣接する部分がヒダ形成部の下端部に接合されて折返し部が形成されている一方、覆い部の上端部に塑性変形可能なバーが横方向に取り付けられている。
【0003】
この衛生マスクは、装着時には、箱ヒダおよび車ヒダがそれぞれ伸ばされ、ヒダ形成部が側縁部から中央部に向かうにつれて多く伸ばされて上下方向に広がらされるとともに、前方へ膨らまされ、口,鼻およびそれらの周辺部を覆う広い空間が形成される。また、折返し部が顎に掛けられることにより、覆い部の下端部が上方へずれることが防止され、塑性変形可能なバーが鼻に沿って曲げられることにより、覆い部の上端部が下方へずれることが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−51388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の衛生マスクは、覆い部に横方向に延びる複数のヒダが形成された横ヒダ型衛生マスクの一例であり、この種の衛生マスクにおいては、装着状態において、側縁部の一部が顔の肌から浮き上がり、気密性に欠けるとともに見映えが悪いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この問題は、従来の横ヒダ型衛生マスクの実用性を向上させる上で障害となり得る問題の一例であり、従来の横ヒダ型衛生マスクには未だ改良の余地がある。そこで、本発明はさらに実用性の高い衛生マスクを得ることを課題として為されたものであり、本発明によって、口と鼻とを覆う覆い部と、耳または後頭部に掛けられる2つの掛部とを含み、覆い部が横方向に延びる複数の横ヒダが形成されたヒダ形成部を含む横ヒダ型衛生マスクであって、前記覆い部の側縁部において上下方向に延び、横ヒダの側壁部を互いに接合して横ヒダが延びることを阻止する接合線が、前記覆い部の上下方向の中間部において左右方向の中央に向かって曲げ込まれた曲込部を有することを特徴とする横ヒダ型衛生マスクが得られる。
【発明の効果】
【0007】
上記構成の衛生マスクは、覆い部の側縁部において上下方向に延び、横ヒダの側壁部を互いに接合して横ヒダが延びることを阻止する接合線を、覆い部の上下方向の中間部において左右方向の中央に向かって曲げ込まれた曲込部を有するものとするという極めて簡単な手段によって、覆い部の側縁部が顔の肌から浮き上がることを良好に防止し得るという優れた効果を奏するものである。
【発明の態様】
【0008】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、特許請求の範囲に記載された発明である「本願発明」の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載,従来技術等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0009】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項が請求項2に、(4)項が請求項3に、(7)項が請求項4に、(9)項が請求項5に、(10)項が請求項6に、(11)項が請求項7に、それぞれ相当する。
【0010】
(1)口と鼻とを覆う覆い部と、耳または後頭部に掛けられる2つの掛部とを含み、覆い部が横方向に延びる複数の横ヒダが形成されたヒダ形成部を含む横ヒダ型衛生マスクであって、
前記覆い部の側縁部において上下方向に延び、横ヒダの側壁部を互いに接合して横ヒダが延びることを阻止する接合線が、前記覆い部の上下方向の中間部において左右方向の中央に向かって曲げ込まれた曲込部を有することを特徴とする横ヒダ型衛生マスク。
(2)前記覆い部の上下方向の中間部に、互いに隣接する上向きのヒダおよび下向きのヒダを含む箱ヒダが形成され、その箱ヒダの上下方向の中央部において前記接合線が最も深く左右方向の中央部に向かって曲げ込まれた(1)項に記載の横ヒダ型衛生マスク。
(3)前記箱ヒダ部の下側に下向きの車ヒダが形成される一方、上側にはヒダが形成されていない(2)項に記載の横ヒダ型衛生マスク。
(4)前記下向きの車ヒダが1つ形成された(3)項に記載の横ヒダ型衛生マスク。
(5)前記接合線の曲込部が、前記左右方向の中央部に向かって最も深く曲げ込まれた部分において、左右方向の中央部に向かって尖る状態に屈曲させられた(2)項ないし(4)項のいずれかに記載の横ヒダ型衛生マスク。
(6)前記曲込部が、前記屈曲させられた部分の両側において、左右方向の側方に凸に湾曲させられた湾曲部を含む(5)項に記載の横ヒダ型衛生マスク。
(7)前記接合線が、前記覆い部の上部と下部とにおいてそれぞれ左右方向の側方へ凸に湾曲した2つの凸曲部を含み、それら2つの凸曲部の互いに隣接する部分によって前記曲込部が形成された(6)項に記載の横ヒダ型衛生マスク。
上記2つの円弧は、接合線の中間部に曲込部を形成して覆い部の顔の肌への密着度を向上させる効果を奏する上に、見た目が優雅であるため、衛生マスクの美観を向上させる効果も奏する。下記の円弧とすれば一層美観が向上する。
(8)前記2つの凸曲部の各々が、それぞれ一円弧により形成された(7)項に記載の横ヒダ型衛生マスク。
(9)前記覆い部が、互いに重ねあわされた複数枚のシートにより形成され、前記接合線が、それら複数枚のシートがスポット状に溶着された溶着点の集合により形成された(1)項ないし(8)項のいずれかに記載の横ヒダ型衛生マスク。
(10)前記接合線が、前記覆い部の両側縁部にそれぞれ1本ずつ形成された(1)項ないし(9)項のいずれかに記載の横ヒダ型衛生マスク。
覆い部の上下方向の中間部に曲込部を有する接合線を1本とすれば、上記の各効果が得られる上、素材20がそれの表面に沿って曲がることを妨げることが少ないため、装着時に覆い部10の両側縁部が肌から浮き上がることを良好に回避し得る。従来は、接合線が複数本平行に形成されて、帯状の接合部が形成されることが多かったのであるが、その場合に比較して、覆い部10の両側縁部の変形の自由度が大きく、肌に密着し易いのである。
この観点からすれば、覆い部の両側縁部の接合線を1本とすることは、後述の態様におけるように、接合線が上下方向の中間部に曲込部を有しないものである場合にも有効である。
(11)前記覆い部が左右方向の中央において、顔に接する側を内側にして二つ折りにされ、その二つ折り部の上端部と下端部とに面取りが施されるとともにその面取部の縁が互いに接合された(1)項ないし(10)項のいずれかに記載の横ヒダ型衛生マスク。
二つ折り部の上端部と下端部との両方に面取りが施され、それら面取部の縁が互いに接合されることにより、二つ折り部が拡げられたとき、覆い部が外向きに凸の立体形状となり、その部分が鼻と顎とに掛かって、覆い部の上端部が下方にずれることと下端部が上方にずれることとが良好に防止される。覆い部の上下方向の寸法が小さいにもかかわらず、安定した装着状態が維持されるのであり、その結果、覆い部の周縁部が顔の肌から浮き上がることを良好に防止することが容易となる。
特に、覆い部の両側縁部の上下方向の寸法を小さくすることができ、両側縁部が肌から浮き上がることを良好に防止することができる。
その上さらに、次項の特徴と組み合わせて採用すれば、両側縁部が肌から浮き上がることを一層良好に防止することが可能となる。
(12)前記2つの掛部が、左右の耳に掛けられる2つの耳掛部であり、各耳掛部の前記覆い部への2つの接合部の上下方向の間隔が、耳の付け根部の上下方向の寸法と等しくされた(1)項ないし(11)項のいずれかに記載の横ヒダ型衛生マスク。
衛生マスクは、使用者の顔の大きさに見合ったものが選択され、使用されるのが普通であり、耳の付け根部の大きさは個人差はあるものの、概ね顔の大きさに見合っているため、各種サイズの衛生マスクにおいて、2つの接合部の上下方向の間隔を耳の付け根部の上下方向の寸法と等しくすることが可能である。
覆い部の側縁部が顔の肌に密着するようにするという観点からは、2つの接合部の上下方向の間隔を耳の付け根部の上下方向の寸法より小さくすることが望ましい。しかし、その場合には、耳が縮められる感じとなって、装着感がやや悪くなる。密着性と装着感とのいずれを重視するかによって、2つの接合部の上下方向の間隔を選定すべきである。
本項の構成によれば密着性と装着感との両方においてほぼ満足な衛生マスクが得られる。
その上、覆い部への2つの接合部が覆い部の上端角と下端角に設けられること、換言すれば、覆い部の両側縁部の上下方向の寸法が、装着者の耳の付け根の上下方向の寸法と等しいか、それより小さくされることが、覆い部の周縁部全体が肌に密着するという観点から望ましい。
(13)口と鼻とを覆う覆い部と、耳に掛けられる2つの耳掛部とを含み、覆い部が横方向に延びる複数の横ヒダが形成されたヒダ形成部を含む横ヒダ型衛生マスクであって、
前記耳掛部の、前記覆い部への2つの接合部の上下方向の間隔が、耳の付け根部の上下方向の寸法と等しくされたことを特徴とする横ヒダ型衛生マスク。
(14)口と鼻とを覆う覆い部と、耳または後頭部に掛けられる2つの掛部とを含み、覆い部が横方向に延びる複数の横ヒダが形成されたヒダ形成部を含む横ヒダ型衛生マスクであって、
前記覆い部の側縁部において上下方向に延び、横ヒダの側壁部を互いに接合して横ヒダが延びることを阻止する接合線が、前記覆い部の両側縁部にそれぞれ1本ずつ形成されたことを特徴とする横ヒダ型衛生マスク。
上記接合線は、(1)項に記載の要件を含むものとすることも、含まないもの例えば直線とすることも可能である。後者の場合には、接合線全体を、生産技術上あるいは美観上許される範囲で、できる限り覆い部の両側端に近い位置に形成することが、両側端部を肌に密着させる上で望ましい。具体的には、側端から8mm以下とされることが望ましく、6mm以下、5mm以下とされることがさらに望ましい。
(15)口と鼻とを覆う覆い部と、耳または後頭部に掛けられる2つの掛部とを含み、覆い部が横方向に延びる複数の横ヒダが形成されたヒダ形成部を含む横ヒダ型衛生マスクであって、
前記覆い部が左右方向の中央において、顔に接する側を内側にして二つ折りにされ、その二つ折り部の上端部と下端部とに面取りが施されるとともにその面取部の縁が互いに接合されたことを特徴とする横ヒダ型衛生マスク。
上記(13)項ないし(15)項の各々に記載の特徴はそれぞれ単独で採用しても有効なものであるが、これらの特徴を複数組み合わせて採用すれば一層有効であり、すべてを併せて採用すれば、非常に密着性に優れ、かつ装着感も良い横ヒダ型衛生マスクが得られる。
また、(1)項ないし(12)項の各々に記載の特徴は、(13)項ないし(15)項の各々に記載の発明にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】請求可能発明の一実施形態である衛生マスクが二つ折りにされた状態を示す図である。
【図2】上記衛生マスクがの覆い部を膨らますことなく、左右に拡げられた状態を示す正面図である。
【図3】図2に示す状態の衛生マスクの平面図である。
【図4】上記衛生マスクの覆い部を三次元形状に膨らます前における右端面の一部を拡大して示す側面図である。
【図5】衛生マスクの覆い部を三次元形状に膨らませた後における図4に示す部分の側面図である。
【図6】上記衛生マスクの装着状態を示す正面図である。
【図7】上記衛生マスクの装着状態を示す側面図である。
【図8】別の実施形態の衛生マスクを中央において切断した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、請求可能発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、上記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
【0013】
図1ないし図7に、請求可能発明の一実施例としての衛生マスク(以下、マスクと略称する)を示す。本マスクは、図6および図7に示すように、装着者の口,鼻およびそれらの周辺を覆う覆い部10と、その覆い部10の両側部から延び出して耳に掛けられる耳掛部12とを含む。覆い部10は、通気性を有するシートが複数枚、本マスクでは、図4および図5に示すように、3枚のシート14,16,18が重ね合わされて通気性を有する素材20から成る。シート14,16,18は、本マスクでは、熱可塑性合成繊維から成る不織布である。これらシート14,16,18のうち、外側および内側の各シート14,18は、真中のシート16より表面が滑らかで薄いものとされている。
【0014】
覆い部10は、図1ないし図3に示すように、ヒダ形成部24を含む。ヒダ形成部24は、横方向に延びる複数のヒダ、図示のマスクでは1つの箱ヒダ26および1つの車ヒダ28を含む。箱ヒダ26は、図4に示すように、互いに隣接する上向きのヒダ30および下向きのヒダ32を含み、箱ヒダ26の上方にはヒダが形成されず、下方にのみ車ヒダ28が形成されている。なお、「車ヒダ」なる用語は、通常、複数連続して形成される場合の呼称であるが、本発明においては複数のヒダを含む文字どおりの車ヒダを形成する態様も含むため、下向きのヒダ34が1つのみ形成される場合は、車ヒダの極限の形態であると考えて、1つのヒダのみが形成される場合も「車ヒダ」と称することとする。結局、ヒダ形成部24には、上向きのヒダ30が1つ、下向きのヒダ32,34が複数(図示のマスクでは2つ)形成されているのであり、ヒダ30,32,34が上下非対称に形成されている。
【0015】
これらヒダ30,32,34はそれぞれ、山折り部36と谷折り部38とを1つずつ含み、図4に示すように、各ヒダの符号にa,b,cを付して示すように、側壁を3つずつ含む。ヒダ30,32,34は、折り畳まれた状態における上下方向の寸法が同じであって、各側壁の寸法が互いに同じであり、各山折り部36は等間隔に形成され、谷折り部38も、山折り部36の形成間隔と同じ間隔で等間隔に形成されている。そのため、ヒダ30,32、34の形成が容易である。これら箱ヒダ26のヒダ30,32および車ヒダ28のヒダ34はそれぞれ、各両端部において3つの側壁同士が加圧,加熱されて溶着され、図1に示すように、上下方向に連続し、伸びない側縁部40とされている。
【0016】
上記3つの側壁同士の溶着は、図1に示すように、点状の溶着部である溶着点50が等間隔にかつ1列に形成されて、それら溶着点50の列により1本の接合線52が形成されている。この接合線52は、2つの円弧部54,56から成り、その結果、覆い部10の上下方向の中間部(図示の例では中央)において左右方向の中央に向かって曲げ込まれた曲込部60が形成されている。前記箱ヒダ26は、覆い部10の上下方向の中間部(図示の例では中央)に形成されており、前記接合線52の最も深く左右方向の中央部に向かって曲げ込まれ、尖った部分の位置が、箱ヒダ26の上下方向の中央と一致させられている。その理由は後に説明する。
【0017】
覆い部10は前述のように3枚のシートから成っているが、一番内側、すなわち顔の肌に接するシート14の上下方向の寸法が他のシート16,18より大きくされ、それらシート16,18より上下に突出した上端部および下端部がそれぞれ外側へ折り返されて、シート16,18の上端部および下端部を覆う折返し部62,64とされており、溶着点50の1本ずつの列から成る各接合線72,72により、シート14の本体部およびシート16,18と共に接合されている。
【0018】
覆い部10は、通常、図1に示すように、左右方向の中央において、顔に接する側を内側にして二つ折りにされている。その二つ折り部の上端部と下端部とに面取りが施されるとともにその面取部74の縁が互いに溶着により接合されて、接合部76、78が形成されている。この二つ折りにされた状態における覆い部10の左右方向の寸法が上下方向の寸法の1.2倍とされており、接合部76,78が形成される前に左右方向に拡げた状態では、左右方向の寸法(横寸法)が上下方向の寸法(縦寸法)の2.4倍とされている。覆い部10の縦横比が2倍以上とされているのであり、通常の横ヒダ型衛生マスクにおいては、この縦横比が2倍より小さくされているのと対照的である。これは、覆い部10の縦寸法が小さくされたためであり、本マスクの特徴の一つとなっているが、これは上記接合部76、78の形成により覆い部10のずれが良好に防止できることによって可能になったことである。
【0019】
覆い部10の両側端部の上角部と下角部とに、それぞれ耳掛部12の両端部が接合されている。各耳掛部12は熱可塑性合成樹脂材料により伸縮性の良い紐状に形成され、溶着により覆い部10に接合されている。各耳掛部12の両端部の接合部80,82の上下方向の間隔は、図7に示すように、耳掛部12が掛けられる耳84の付け根の上下方向の寸法と等しくされ、装着状態で耳掛部12に加えられる張力が、覆い部10の両側縁部40に、各側縁部40を上下方向において縮める向きの力の成分を発生させることがないようにされている。しかも、両接合部80,82はそれぞれ覆い部10の上角部と下角部とにあり、耳掛部12の張力は覆い部10の上端縁部と下端縁部とに伝達され、それら上端縁部と下端縁部とを肌に密着させる機能を果たす。この際、前述のように、覆い部10の左右方向の中央には接合76,78が形成されているため、上記上端縁部と下端縁部とに伝達される張力により、上端縁部と下端縁部とが真っ直ぐに引き延ばされてしまうことがなく、図7に示すように、覆い部10の左右方向の中央部の外向きに凸の3次元形状が良好に維持され、覆い部10の内面と装着者の鼻と口との間に十分な隙間が形成され、呼吸が妨げられることが少なく、良好な装着感が得られるとともに、装着者が女性の場合に口紅が覆い部10の内面に付着することが良好に回避される。
【0020】
その上、本マスクにおいては、前述のように、覆い部10の両側縁部40に形成された接合線52が、上下方向の中央に曲込部60を有するため、装着状態において、図7に示すように、箱ヒダ26の中央部が屈曲する。その際、箱ヒダ26の中央部は図6,図7に示すように、外向きに膨らみ、突部88を形成するため、一見、肌との密着性が悪いように見えるが、実際には、接合線52が形成されている部分においては肌に密着し、その上、接合線52の外側においては、図5に示すように、上向きのヒダ30と下向きのヒダ32との谷折り部38の近傍部同士が部分的に重なり合い、これらヒダ30,32と肌との間に隙間ができることが良好に防止される。また、見映えを良くすることを希望する装着者は、突部88を下向きに押せば、つぶれて目立たなくなり、美観が改善される。
【0021】
本マスクは、予め、覆い部10の左右方向の中央部を上下いっぱいに延ばして外向きに凸の三次元形状に膨らませた状態としてから装着することが推奨される。この膨らませた状態では、覆い部10の中央の膨らみに沿った長さが、側縁部40の長さの2倍となる。装着後、覆い部10の中央部の上端部を上方に引き上げ、下端部を下方に引き下げれば、上側の接合部76に隣接する部分により形成された水平横断面形状がV字形の部分が鼻の表面に密着する一方、下側の接合部78に隣接する部分より形成された水平横断面形状がV字形の部分が顎の面に沿って十分に広がり、覆い部10の全周縁部が顔の肌に密着する一方、覆い部10の中央部は鼻や口から十分に隔たり、十分な空間が形成される。
【0022】
上記接合部76,78の形成により、上記のように覆い部10の周縁部の密着性が向上する効果が得られるのであるが、不可欠ではない。例えば、上側の接合部76を設ける代わりに、図8に示すように、筒状部94を設け、その中にバー96を配設することが可能である。バー96は、幅が狭く、薄い長手形状の板状を成し、本マスクでは、添加物が添加されたポリエチレンにより形成され、塑性変形可能な公知の材料から成る塑性変形部材であり、筒状部94に挿入されて覆い部10の横方向に延びる状態で設けられている。本マスクを装着後、バー96を鼻の表面に沿って屈曲させれば、接合部76に類似の機能を果たす。
【0023】
あるいは、下側の接合部78の代わりに、図8に示すように、覆い部10を本体部102と折返し部104とを含むものとすることも可能である。折り返し部104と本体部102との両側端部は接合部106により互いに接合されており、上方に向かって開いた浅い袋状部108が形成されている。装着時には、この袋状部108が装着者の顎に掛かり、上方へずれることを防止し、下側の接合部78と類似の機能を果たす。
【符号の説明】
【0024】
10:覆い部 12:耳掛部 24:ヒダ形成部 26:箱ヒダ 28:車ヒダ 30:上向きのヒダ 32,34:下向きのヒダ 40:側縁部 50:溶着点 52:接合線 54:56:円弧部 60:曲込部 74:面取部 76,78:接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口と鼻とを覆う覆い部と、耳または後頭部に掛けられる2つの掛部とを含み、覆い部が横方向に延びる複数の横ヒダが形成されたヒダ形成部を含む横ヒダ型衛生マスクであって、
前記覆い部の側縁部において上下方向に延び、横ヒダの側壁部を互いに接合して横ヒダが延びることを阻止する接合線が、前記覆い部の上下方向の中間部において左右方向の中央に向かって曲げ込まれた曲込部を有することを特徴とする横ヒダ型衛生マスク。
【請求項2】
前記覆い部の上下方向の中間部に、互いに隣接する上向きのヒダおよび下向きのヒダを含む箱ヒダが形成され、その箱ヒダの上下方向の中央部において前記接合線が最も深く左右方向の中央部に向かって曲げ込まれた請求項1に記載の横ヒダ型衛生マスク。
【請求項3】
前記箱ヒダ部の下側に下向きの車ヒダが形成される一方、上側にはヒダが形成されていない請求項2に記載の横ヒダ型衛生マスク。
【請求項4】
前記接合線が、前記覆い部の上部と下部とにおいてそれぞれ左右方向の側方へ凸に湾曲した2つの凸曲部を含み、それら2つの凸曲部の互いに隣接する部分によって前記曲込部が形成された請求項2または3に記載の横ヒダ型衛生マスク。
【請求項5】
前記覆い部が、互いに重ねあわされた複数枚のシートにより形成され、前記接合線が、それら複数枚のシートがスポット状に溶着された溶着点の集合により形成された請求項1ないし4のいずれかに記載の横ヒダ型衛生マスク。
【請求項6】
前記接合線が、前記覆い部の両側縁部にそれぞれ1本ずつ形成された請求項1ないし5のいずれかに記載の横ヒダ型衛生マスク。
【請求項7】
前記覆い部が左右方向の中央において、顔に接する側を内側にして二つ折りにされ、その二つ折り部の上端部と下端部とに面取りが施されるとともにその面取部の縁が互いに接合された請求項1ないし6のいずれかに記載の横ヒダ型衛生マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−105872(P2012−105872A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257996(P2010−257996)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(507154114)
【Fターム(参考)】